説明

活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤

【課題】紫外線等の活性エネルギー線で硬化して被膜を形成する顔料含有組成物に添加して十分な顔料分散性と長期保存安定性とを付与できる顔料分散剤であって、得られたその被膜の耐揮発油性、耐薬品性、耐水性、耐擦傷性等の特性を損なわせることなく被膜に光沢性及び着色性を付与する顔料分散剤を提供する。
【解決手段】活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤は、側鎖に極性基を有する極性の繰返し単位と、側鎖に(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の少なくとも一種類の不飽和基を有する架橋性の繰返し単位と、極性基及び架橋性不飽和基を有しない繰返し単位とで付加共重合した主鎖を形成している共重合物が、含有されており、その重量平均分子量を2,000〜100,000とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線で硬化させて顔料含有被膜を形成するための組成物に含有させるもので、組成物中でこの顔料を十分に分散させ、組成物を硬化させた被膜の物性を損なわせない顔料分散剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
顔料を含んだ活性エネルギー線硬化被膜形成組成物は、塗料、コーティング剤、印刷インキ、成型材料として汎用されている。このような組成物は、無溶媒のまま、活性エネルギー線を短時間照射するだけで効率よく硬化することができる。
【0003】
被膜形成組成物中の顔料の分散が不十分であると、顔料が凝集してしまう結果、組成物の長期保存安定性の低下や粘度の増大を惹き起こす。このような組成物を基材に塗布して硬化させて製造したブラックマトリクス、カラーフィルター、或いはカラープラスチック成形品等の被膜は、顔料が不均一に分散していることに起因して、それらの表面で光沢性や着色性が低下したり、または色分かれを生じたりする。
【0004】
そこで、顔料の分散性を高めるため、被膜形成組成物に予め界面活性剤、高分子顔料分散剤、又は顔料誘導体の分散剤が添加される。
【0005】
このような顔料分散剤として、特許文献1に、2環以上の飽和脂環と有機色素原子団又は複素環とを有するアクリル系共重合体が、開示されている。また、特許文献2に、(メタ)アクリレート系単量体と、アミノアルキル(メタ)アクリレート単量体又は/及び四級アンモニウム(メタ)アクリレート単量体と、末端に(メタ)アクリロイル基を有しているマクロモノマーとが共重合したメタクリル系共重合物が、開示されている。
【0006】
概して、顔料分散剤を含む被膜形成組成物は、顔料分散性、長期保存安定性に優れる。また、この組成物を硬化させた被膜は、光沢性及び着色性に優れる。
【0007】
しかし、その被膜を有機溶剤などの揮発油で払拭したり、温水に浸漬したりすると、白化したり、耐擦傷性が低下したりして、被膜が劣化してしまう。
【0008】
消費者のニーズの多様化に伴い、製品表面に形成されるこの被膜は、綺麗であるだけでなく、耐揮発油性、耐薬品性、耐水性、耐擦傷性、光沢性、着色性等の高付加価値を有することが求められている。
【0009】
【特許文献1】特開平6−65521号公報
【特許文献2】特開平8−253540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、紫外線等の活性エネルギー線で硬化して被膜を形成する顔料含有組成物に添加して十分な顔料分散性と長期保存安定性とを付与できる顔料分散剤であって、得られたその被膜の耐揮発油性、耐薬品性、耐水性、耐擦傷性等の特性を損なわせることなく被膜に光沢性及び着色性を付与する顔料分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤は、側鎖に極性基を有する極性の繰返し単位の0.03〜0.8モル当量と、側鎖に(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の少なくとも一種類の不飽和基を有する架橋性の繰返し単位の0.01〜0.4モル当量と、極性基及び架橋性不飽和基を有しない繰返し単位の0.19〜0.96モル当量とで付加共重合した主鎖を形成している共重合物が、含有されており、その重量平均分子量を2,000〜100,000とすることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤は、請求項1に記載されたもので、前記極性基が、アミノ基、イミダゾイル基、ピリジル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、及びそれらの何れかから形成されるイオン性基の少なくとも何れか一種類であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤は、請求項1に記載されたもので、前記不飽和基がウレタン基、エステル基又はエーテル基を介して前記主鎖に結合していることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤は、請求項1〜3の何れかに記載されたもので、前記共重合物のヨウ素価が、2〜100であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物は、請求項1〜4の何れかに記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤が、顔料重量に対して0.5%〜60%含有されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の硬化被膜は、請求項5に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物を基材上に塗布した膜が、紫外線、赤外線、遠赤外線、電子線、放射線から選ばれる活性エネルギー線の照射により、硬化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の顔料分散剤は、紫外線等の活性エネルギー線で硬化して顔料含有被膜を形成する組成物へ添加されて、その組成物に十分な顔料分散性と長期保存安定性とを付与することができるというものである。さらに、その組成物を硬化させた被膜に耐揮発油性、耐水性、耐擦傷性等の特性を損なわせることなく、被膜に光沢性及び着色性を付与することができる。
【0018】
この顔料分散剤を含有する組成物は、長期間、顔料が分散したまま安定して保存できるので、使用直前に撹拌する面倒な操作を必要としない。この組成物を塗布し、紫外線等の活性エネルギー線で照射すると、短時間に効率よく硬化して、被膜を形成する。
【0019】
その被膜は、光沢性や着色性が付与されていて綺麗なうえ、揮発油、薬品又は水に対し化学的に安定で、又、硬くて傷付き難いために擦ったり引掻いたり叩いたりしても物理的に安定である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤の一例は、ジメチルアミノエチルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとプロピルアクリレートとの共重合中間体に残存する水酸基へ、イソシアナトエチルアクリレートを反応させた共重合物が、含有されたものである。
【0022】
このような共重合物は、例えばジメチルアミノエチルアクリレートに由来して側鎖に極性基を有している極性の繰返し単位と、ヒドロキシエチルアクリレートに由来しておりそのヒドロキシ基にイソシアナトエチルアクリレートが反応することにより側鎖にアクリル基又はメタクリル基を指称する(メタ)アクリロイル基や炭素数2〜12のアルケニル基のような不飽和基を有している架橋性の繰返し単位と、極性基及び架橋性不飽和基を有さずプロピルアクリレートに由来している繰返し単位とで、ランダム付加共重合又はブロック付加共重合した主鎖を形成している。
【0023】
別な極性基として、アミノ基、イミダゾイル基、ピリジル基;それらに、硫酸、酢酸、塩酸、リン酸及びアルキルスルホン酸のような酸性化合物がイオン反応したイオン性基や、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、炭酸ジメチル、ハロゲン化メチル及びハロゲン化エチルのような第四級化剤でアルキル化されたイオン性基が挙げられる。また、極性基として、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基;それらに塩基性化合物がイオン反応したイオン性基も挙げられる。
【0024】
この共重合物は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量を2,000〜100,000とするものである。この重量平均分子量が、4,000〜50,000であるとより好ましい。
【0025】
この共重合物は、ヨウ素価、すなわち共重合物の固形分100gへハロゲンを反応させたときに結合するハロゲンの量をヨウ素のg数に換算した値が、2〜100とするものであると好ましい。ヨウ素価は、JIS K0070に準拠して測定される。このヨウ素価が、6〜50であるとより好ましい。
【0026】
この共重合物の重量平均分子量やヨウ素価が前記範囲から外れると、この顔料分散剤を添加した活性エネルギー線硬化被膜形成組成物の顔料分散性や減粘性や保存安定性等の基本特性が不十分になる。そのうえ、そのことに起因して、その組成物を硬化させた被膜の光沢性・着色性・耐揮発油性・耐薬品性・耐水性・耐擦傷性が不十分となってしまう。
【0027】
共重合物の製造方法の好ましい例は、以下の通りである。先ず、極性基を有する付加共重合性モノマー(A)の0.03〜80モル当量と、水酸基、カルボキシル基、オキシムのようなブロック剤でイソシアネート基が保護され加熱によって脱保護されるイソシアネート等価体であるブロック化イソシアネート基のような反応性官能基を有する付加共重合性モノマー(C)の0.1〜0.4モル当量と、水酸基やカルボキシル基やブロック化イソシアネート基である反応性官能基も極性基も有しない付加共重合性モノマー(B)の0.19〜0.96モル当量とで、付加共重合による主鎖を形成している共重合中間体を得る。次いで、その架橋性官能基へ反応して結合する結合性官能基とラジカル重合性の不飽和基とを有する化合物(D)を、共重合中間体に反応させることにより、その不飽和基を有する架橋性の繰返し単位を形成させて、所望の共重合物を得るというものである。極性基を有する付加共重合性モノマー(A)及び反応性官能基と極性基とを有しない付加共重合性モノマー(B)は、(メタ)アクリル酸誘導体、又はそれ以外の不飽和基含有誘導体であることが好ましく、反応性官能基を有する付加共重合性モノマー(C)は、(メタ)アクリル酸誘導体であることが好ましい。
【0028】
極性基を有する付加共重合性モノマー(A)は、アミノ基、イミダゾイル基、ピリジル基、及びそれらから形成されるイオン性基を有するものが挙げられ、より具体的には、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドで例示されるアミノ基含有化合物と、1−ビニルイミダゾールで例示されるイミダゾイル基含有化合物と、2−ビニルピリジンで例示されるピリジル基含有化合物とのような塩基性モノマー;
これら塩基性モノマーと、硫酸、酢酸、塩酸、リン酸及びアルキルスルホン酸から選ばれた少なくとも一種類の酸とを反応させたアンモニウムイオン基含有モノマーのようなイオン性基含有モノマー;
これら塩基性モノマーと、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、炭酸ジメチル、ハロゲン化メチル及びハロゲン化エチルから選ばれた少なくとも一種類の四級化剤とを反応させた四級アンモニウムイオン基含有モノマーのようなイオン性基含有モノマーが挙げられる。
【0029】
極性基を有する付加共重合性モノマー(A)は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、及びそれらから形成されるイオン性基を有するものが挙げられ、より具体的には、
(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸のようなカルボキシル基含有化合物;
2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェートのようなリン酸基含有化合物;
ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸のようなスルホン酸基含有化合物;
が挙げられる。
【0030】
反応性官能基と極性基とを有しない付加共重合性モノマー(B)として、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルプロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−オクトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ラウロキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(例えば、エチレングリコール繰返し単位の数が1〜50のもの)、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステル(例えば、プロピレングリコール繰返し単位の数が1〜50のもの)、(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコールエステル(例えば、エチレングリコール繰返し単位の数とプロピレングリコール繰返し単位の数との合計が2〜50のもの)、(メタ)アクリル酸メトキシポリ(エチレン−テトラメチレン)グリコールエステル(例えば、エチレングリコール繰返し単位の数とテトラメチレングリコール繰返し単位の数との合計が2〜50のもの)、(メタ)アクリル酸ブトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコールエステル(例えば、エチレングリコール繰返し単位の数とプロピレングリコール繰返し単位の数との合計が2〜50のもの)、(メタ)アクリル酸オクトキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコールエステル(例えば、エチレングリコール繰返し単位の数とプロピレングリコール繰返し単位の数との合計が2〜50のもの)、(メタ)アクリル酸ラウロキシポリエチレングリコールエステル(例えば、エチレングリコール繰返し単位の数が2〜50のもの)、(メタ)アクリル酸ラウロキシポリ(エチレン−プロピレン)グリコールエステル(例えば、エチレングリコール繰返し単位の数とプロピレングリコール繰返し単位の数との合計が2〜50のもの)、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸エステル化合物;
マクロモノマーAB−6(東亞合成株式会社製、商品名)のようなマクロモノマーと称される反応性高分子;
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン1〜10モルが2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに付加されたラクトン変性(メタ)アクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名:プラクセルFシリーズ)のような水酸基含有化合物;
アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクロイルモルフォリンのようなアクリルアミド;
スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンのような芳香族ビニル化合物;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートのようなビニルエステル化合物又はアリル化合物;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ノルマルプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ターシャリーブチルビニルエーテル、ノルマルオクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルのようなビニルエーテル化合物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミドのような不飽和炭化水素系化合物;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4ヒドロキシブチルグリシジルエーテルアクリレート(日本化成株式会社製、商品名:4HBAGE)、C12,13混合アルコール性グリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、商品名:エポライトM−1230)のようなカチオン重合性のあるエポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0031】
反応性官能基を有する付加共重合性モノマー(C)として、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン1〜10モルが2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに付加されたラクトン変性(メタ)アクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名:プラクセルFシリーズ)のような水酸基含有化合物;
(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸のようなカルボキシル基含有化合物;
メタクリル酸2−(O−〔1’メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名:カレンズMOI−BM)で例示されるようなもので、イソシアネート基をケトオキシムであるブロック剤で保護したブロック化イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0032】
結合性官能基とラジカル重合性の不飽和基とを有する化合物(D)は、反応性官能基を有する付加共重合性モノマー(C)中の反応性官能基が水酸基である場合に結合性官能基がイソシアネート基やブロック化イソシアネート基である化合物が挙げられ、同じく反応性官能基がカルボキシル基である場合に結合性官能基がエポキシ基である化合物が挙げられ、同じく反応性官能基がブロック化イソシアネート基である場合に結合性官能基が水酸基である化合物が挙げられる。
【0033】
より具体的には、結合性官能基とラジカル重合性の不飽和基とを有する化合物(D)として、
2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのようなイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;
(メタ)アクリル酸2(O−〔1’−メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノ)エチルのようなブロック化イソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルグリシジルエーテルアクリレート(日本化成株式会社製、商品名:4HBAGE)のようなエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、カプロラクトン1〜10モルが2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに付加されたラクトン変性(メタ)アクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名:プラクセルFシリーズ)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートPE−3A)のような水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。
【0034】
より具体的に、共重合物の製造例について、説明する。
【0035】
その第一例は、化学反応式(1)を参照して説明すると、反応性官能基が水酸基である付加共重合性モノマー(C)から共重合中間体へ誘導し、結合性官能基がイソシアネート基である化合物(D)を反応させて、所望の共重合物を製造したものである。
【0036】
【化1】

【0037】
先ず、極性基としてジメチルアミノ基を有する付加共重合性モノマー(A)であるジメチルアミノエチルアクリレートと、反応性官能基として水酸基を有する付加共重合性モノマー(C)である2−ヒドロキシエチルアクリレートと、反応性官能基と極性基とを有しない付加共重合性モノマー(B)であるノルマルプロピルアクリレートとを、付加共重合させて、主鎖を形成させ、共重合中間体を得る。次いで、その共重合中間体に残存している反応性官能基である水酸基へ反応して結合する結合性官能基であるイソシアネート基と不飽和基とを有する化合物(D)として、2−イソシアナトエチルアクリレートを反応させる。すると、モノマー(A)に由来し側鎖に極性基を有する極性の繰返し単位と、モノマー(C)に由来し側鎖にアクリロイル基である不飽和基を有する架橋性の繰返し単位と、モノマー(B)に由来し極性基及び架橋性不飽和基を有しない繰返し単位とで共重合した主鎖を形成している所望の共重合物が得られる。なお、化学反応式(1)中の共重合物は、模式的に表したものであり、ブロック共重合体又はランダム共重合体である。また、それのf,g,hは、前記のモル当量の範囲及び前記重量平均分子量の範囲を満たす任意の数である。
【0038】
第二例は、化学反応式(2)を参照して説明すると、反応性官能基がカルボキシル基である付加共重合性モノマー(C)から共重合中間体へ誘導し、結合性官能基がエポキシ基である化合物(D)を反応させて、所望の共重合物を製造したものである。
【0039】
【化2】

【0040】
先ず、極性基としてジメチルアミノ基を有する付加共重合性モノマー(A)であるジメチルアミノエチルアクリレートと、反応性官能基としてカルボキシル基を有する付加共重合性モノマー(C)であるアクリル酸と、反応性官能基と極性基とを有しない付加共重合性モノマー(B)であるノルマルプロピルアクリレートとを、付加重合させて、主鎖を形成させ、共重合中間体を得る。次いで、その共重合中間体に残存している反応性官能基であるカルボキシル基へ反応して結合する結合性官能基であるエポキシ基と不飽和基とを有する化合物(D)として、グリシジルアクリレートを反応させると、所望の共重合物が得られる。なお、化学反応式(2)中の共重合物は、模式的に表したものであり、ブロック共重合体又はランダム共重合体である。また、それのi,j,kは、前記のモル当量の範囲及び前記重量平均分子量の範囲を満たす任意の数である。
【0041】
第三例は、化学反応式(3)を参照して説明すると、反応性官能基がブロック化イソシアネート基である付加共重合性モノマー(C)から共重合中間体へ誘導し、結合性官能基が水酸基である化合物(D)を反応させて、所望の共重合物を製造したものである。
【0042】
【化3】

【0043】
先ず、極性基としてジメチルアミノ基を有する付加共重合性モノマー(A)であるジメチルアミノエチルアクリレートと、反応性官能基としてブロック化イソシアネート基を有する付加共重合性モノマー(C)であるメタクリル酸2−(O−〔1’メチルプロピリデンアミノ〕カルボキシアミノ)エチルと、反応性官能基と極性基とを有しない付加共重合性モノマー(B)であるノルマルプロピルアクリレートとを、付加重合させて、主鎖を形成させ、共重合中間体を得る。次いで、100℃〜160℃で熱処理を施し、ブロック化イソシアネート基からオキシムを解裂させ、イソシアネート基を再生させる。同時に、そのイソシアネート基へ反応して結合する結合性官能基である水酸基と不飽和基とを有する化合物(D)として、2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させると、所望の共重合物が得られる。なお、化学反応式(3)中の共重合物は、模式的に表したものであり、ブロック共重合体又はランダム共重合体である。また、それのl,m,nは、前記のモル当量の範囲及び前記重量平均分子量の範囲を満たす任意の数である。
【0044】
共重合体は、共重合触媒存在下で製造されてもよく、その触媒を適切に選択することにより、ブロック共重合体又はランダム共重合体となる。
【0045】
共重合物中、結合性官能基と不飽和基とを有する化合物(D)に由来する不飽和基は、アクリル基、メタクリル基又はアリル基であってもよく、それらを任意の比率で含むものであってもよい。中でも、アクリル基であると一層好ましい。
【0046】
活性エネルギー線硬化被膜形成組成物は、顔料分散剤と、顔料と、被膜形成高分子成分と、活性エネルギー線の照射によりラジカルあるいはカチオンを発生する光重合開始剤とを混練したものである。必要に応じて熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤を含んでいてもよい。
【0047】
被膜形成高分子成分は、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系の高分子成分が挙げられる。
【0048】
光重合開始剤の好ましい例として、ベンゾインやその誘導体、ベンゾフェノンやその誘導体、アセトフェノンやその誘導体、ミヒラーケトン、ベンジル誘導体、テトラアルキルチウラムモノスルフィド、チオキサン誘導体のようなラジカル発生化合物;トリフェニルスルホニウムヘキサフロロフォスフォネート塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジフェニルヨードヘキサフロロフォスフォネート塩のようなカチオン種発生化合物が挙げられるが、これらに限定されない。熱重合開始剤の好ましい例として、過酸化物やアゾ化合物が挙げられるが、これらに限定されない。これら重合開始剤は、組成物中、0.5〜10重量%含まれていることが好ましい。
【0049】
基材上にこの組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射させると、硬化被膜が形成される。
【0050】
塗布は、塗り付けたり吹き付けたりして行われる。活性エネルギー線は、紫外線、赤外線、遠赤外線、電子線、放射線が挙げられる。硬化被膜の厚さは、0.1μm〜10mmであることが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を適用する分散剤を調製した例を示す。
【0052】
(分散剤の製造実施例1)
撹拌装置、還流冷却管、滴下ロート、温度計及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mLの反応容器に、メチルイソブチルケトン(以下、MIBK)の160重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら80℃に昇温した。そこへ、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰返し単位の数が23のもの)の100重量部、ノルマルブチルアクリレートの15重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレートの30重量部、プラクセルFA5(ダイセル化学工業株式会社製 カプロラクトン5モルが2−ヒドロキシエチルアクリレートに付加された水酸基含有アクリレート)の60重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.6重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの0.8重量部が混合された滴下溶液(a−1)を、滴下ロートにより、2時間で等速滴下した。滴下終了後、80℃で保持しつつ4時間反応させ重合物を得た。重合反応終了後、80℃で保持しつつ、2−イソシアナトエチルアクリレートの10重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し、5時間反応させた。赤外線吸収スペクトル測定法(IR)によりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK溶液(A−1)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は23,000であった。なお、共重合物の重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置(昭和電工株式会社製 Shodex GPC SYSTEM)を用いて測定した値である。共重合物の固形分ヨウ素価は8.3であった。
【0053】
(分散剤の製造実施例2)
製造実施例1中の共重合物(A−1)の製造の際の滴下溶液(a−1)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰返し単位の数が23のもの)の100重量部、ラウリルメタクリレートの15重量部、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの20重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートの21重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.6重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの1重量部が混合された滴下溶液(a−2)を用いたこと以外は、共重合物(A−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、2−イソシアナトエチルメタクリレートの25重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し80℃で5時間反応させた。IRによりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK液(A−2)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は18,000であった。共重合物の固形分ヨウ素価は22.3であった。
【0054】
(分散剤の製造実施例3)
製造実施例1中の共重合物(A−1)の製造例の滴下溶液(a−1)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰返し単位の数が3のもの)の40重量部、マクロモノマーAB−6(東亞合成株式会社製)の65重量部、ノルマルブチルアクリレートの15重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレートの20重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートの20重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.5重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの0.8重量部が混合された滴下溶液(a−3)を用いたこと以外は、共重合物(A−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、80℃で保持しつつ、2−イソシアナトエチルアクリレートの21重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し、5時間反応させた。IRによりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。共重合性不飽和結合導入の反応終了後、リン酸トリメチルの26重量部を追加し、115℃まで昇温して3時間反応させて、アミノ基とリン酸トリメチルとによる四級化反応を終了させた。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のキシレン液(A−3)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は21,000であった。共重合物の固形分ヨウ素価は18.2であった。
【0055】
(分散剤の製造実施例4)
製造実施例1中の共重合物(A−1)の製造例の滴下溶液(a−1)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰返し単位の数が9のもの)の100重量部、ノルマルブチルアクリレートの15重量部、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリドの30重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレートの12.5重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の2重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの4重量部が混合された滴下溶液(a−3)を用いたこと以外は、共重合物(A−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、1,1−ビス(アクリロイロキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名:カレンズBEI)の62重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し80℃で5時間反応させた。IRによりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のキシレン液(A−4)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は7,200であった。共重合物の固形分ヨウ素価は58.2であった。
【0056】
(分散剤の製造実施例5)
製造実施例1中の共重合物(A−1)の製造例の滴下溶液(a−1)に代えて、マクロモノマーAB−6の120重量部、ノルマルブチルアクリレートの30重量部、メタクリル酸の15重量部、2−イソシアナトエチルアクリレートの15重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.3重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの0.4重量部が混合された滴下溶液(a−5)を用いたこと以外は、共重合物(A−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、80℃で保持しつつ、アリルアルコールの5.6重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し、80℃で5時間反応させた。IRによりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK液(A−4)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は36,000であった。共重合物の固形分ヨウ素価は13.1であった。
【0057】
(分散剤の製造実施例6)
製造実施例1中の共重合物(A−1)の製造例の滴下溶液(a−1)に代えて、マクロモノマーAB―6の100重量部、ノルマルブチルアクリレートの15重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレートの40重量部、メタクリル酸の30重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1.2重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの1.4重量部が混合された滴下溶液(a−6)を用いたこと以外は、共重合物(A−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、80℃を保ちつつ、グリシジルメタクリレートの44重量部、触媒としてトリエチルアミン0.5重量部、重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し、80℃で7時間反応させた。酸価は4.0mg・KOH/gであり反応が終了していることが確認された。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK液(A−6)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は12,000であった。共重合物の固形分ヨウ素価は34であった。
【0058】
以下に分散剤の製造比較例を示した。
【0059】
(分散剤の製造比較例1)
撹拌装置、還流冷却管、滴下ロート、温度計及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mLの反応容器に、メチルイソブチルケトンの160重量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら80℃に昇温した。そこへ、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰返し単位の数が23のもの)の100重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレートの30重量部、プラクセルFA5(ダイセル化学工業株式会社製 カプロラクトン5モルが2−ヒドロキシエチルアクリレートに付加された水酸基含有アクリレート)の60重量部、2−エチルヘキシルメタクリレートの15重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.6重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの0.8重量部が混合された滴下溶液(B−1)を、滴下ロートにより、2時間で等速滴下した。滴下終了後、80℃で保持しつつ4時間反応させ重合物を得た。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK液(B−1)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は21,000であった。共重合物の固形分ヨウ素価は0であった。
【0060】
(分散剤の製造比較例2)
製造比較例1中の共重合物(B−1)の製造の際の滴下溶液(b−1)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰返し単位の数が3のもの)の100重量部、ノルマルブチルアクリレートの15重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレートの30重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートの20重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の5重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの8重量部が混合された滴下溶液(b−2)を用いたこと以外は、共重合物(B−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、2−イソシアナトエチルアクリレートの8重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し80℃で5時間反応させた。IRによりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。共重合性不飽和結合導入の反応終了後、MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK液(B−2)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は3,600であった。共重合物の固形分ヨウ素価は7.7であった。
【0061】
(分散剤の製造比較例3)
製造比較例1中の共重合物(B−1)の製造の際の滴下溶液(b−1)に代えて、マクロモノマーAB−6の100重量部、ノルマルブチルアクリレートの30重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの20重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートの15重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.2重量部が混合された滴下溶液(b−3)を用いたこと以外は、共重合物(B−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、2−イソシアナトエチルメタクリレートの18重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し80℃で5時間反応させた。IRによりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK液(B−3)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は120,000であった。共重合物の固形分ヨウ素価は16.1であった。
【0062】
(分散剤の製造比較例4)
製造比較例1中の共重合物(B−1)の製造の際の滴下溶液(b−1)に代えて、ラウリルメタクリレートの115重量部、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリドの30重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレートの15重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の0.6重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの0.9重量部が混合された滴下溶液(b−4)を用いたこと以外は、共重合物(B−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、2−イソシアナトエチルアクリレートの1.8重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し80℃で5時間反応させた。IRによりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK液(B−4)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は22,000であった。共重合物の固形分ヨウ素価は1.8であった。
【0063】
(分散剤の製造比較例5)
製造比較例1中の共重合物(B−1)の製造の際の滴下溶液(b−1)に代えて、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコール繰返し単位の数が9のもの)の65重量部、イソブチルメタクリレートの15重量部、ジメチルアミノエチルメタクリレートの30重量部、2−イソシアナトエチルアクリレートの60重量部、MIBKの80重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)の1重量部及びノルマルドデシルメルカプタンの1.3重量部が混合された滴下溶液(b−5)を用いたこと以外は、共重合物(B−1)の製造例と同様の方法により重合物を得た。重合反応終了後、ペンタエリスリトールトリアクリレートの115重量部、共重合禁止剤としてメトキノンの1重量部を追加し80℃で5時間反応させた。IRによりイソシアネート基のピーク2270cm−1が消滅しているのを確認した。MIBKで希釈して固形分の濃度を40%に調整し、共重合物のMIBK液(B−5)を製造した。この共重合物の重量平均分子量は24,000であった。共重合物の固形分ヨウ素価は102であった。
【0064】
以下の配合でミルベースを調製し、ミルベースの各シアレートにおける粘度をレオメーター(MCR−300:Physica社製)で測定し、分散剤の分散性能の評価を行った。
【0065】
(ミルベースの調製)
ミルベース1
ユニディックV−4391(大日本インキ化学工業株式会社製)を28g、MEKを17g、共重合体の液(A−1)〜(A−6)及び(B−1)〜(B−5)の分散剤(溶剤含まず)を3g、カーボンブラックとしてMA−7(三菱化学(株)社製)を12gとφ=1.5mmのガラスビーズ60gを140mlのガラス瓶に秤量し、ペイントシェイカーにより2時間撹拌した。2時間後ガラスビーズを取り除き、各分散剤を用いたミルベースを得た。なお、分散剤無添加のものを比較例6とした。
【0066】
ミルベース2
ユニディックV−4391を28g、MEKを18.2g、分散剤(溶剤含まず)を1.8g、イルガジンDPPレッドBO(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を12g、とφ=1.5mm〜2.0mmのガラスビーズ60gを140mlのガラス瓶に秤量し、ペイントシェイカーにより2時間撹拌した。2時間後ガラスビーズを取り除き、各分散剤を用いたミルベースを得た。なお、分散剤無添加のものを比較例6とした。
【0067】
(コーティング膜の光沢、耐揮発油性、耐水性評価)
表1に示した紫外線硬化被膜形成組成物用の配合成分と上記ミルベース又は共重合体の液(A−1)〜(A−6)及び(B−1)〜(B−4)の分散剤とを混練し、紫外線硬化被膜形成組成物を調製した。
【0068】
【表1】

【0069】
(紫外線硬化被膜形成組成物の調製1)
表1に示した紫外線硬化被膜形成組成物用成分の混合物に、各分散剤を添加したミルベース1及びミルベース2の8重量部を添加し、ラボディスパーを用いて2,000回転で2分間撹拌して、実施例1〜6及び比較例1〜5の分散剤が添加された紫外線硬化被膜形成組成物を調製した。
【0070】
調製1で得られた組成物を硬化させて被膜を形成させ、硬化被膜の光沢値を測定した。
【0071】
(光沢評価)
1時間冷暗所にて静置させた後、ガラス板に125μmアプリケーターで塗布し、高圧水銀灯(80W/cm、高さ10cm)を使用し、紫外線積算光量480mJ/cmの条件で硬化させて得た塗板を、ヘイズ−グロスメーター(BYK Gardner社製)を用いて20°グロスを測定し、光沢感を測定した。
【0072】
(紫外線硬化被膜形成組成物の調製2)
表1に示した紫外線硬化被膜形成組成物用成分の混合物に、分散剤((A−1)〜(A−5)及び(B−1)〜(B−5))の5重量部を添加し、ラボディスパーで2,000回転で2分間撹拌して、夫々実施例1〜6及び比較例1〜4の紫外線硬化被膜形成組成物を調製した。なお、紫外線硬化被膜形成組成物用成分のみの混合物を比較例6とした。
【0073】
調製2で得られた組成物を硬化させて被膜を形成させ、それの耐揮発油性、耐水性の物性評価を行った。
【0074】
(耐揮発油性評価)
1時間冷暗所にて静置させた後、ガラス板に125μmアプリケーターで塗布し、高圧水銀灯(80W/cm、高さ10cm)を使用し、紫外線積算光量480mJ/cmの条件で硬化させて得た塗板の被膜表面を、ノルマルヘキサンが染込んだガーゼで、数回軽く拭いた。拭いた部分の白化性を目視にて観察し、耐揮発油性を評価した。耐揮発油性評価は、全く白化しなかったものを○、やや白化したものを△、著しく白化したものを×とする3段階で評価した。また、拭く前からすでに被膜が濁っているものは評価不可能とし−とした。
【0075】
(耐水性評価)
耐揮発油性評価と同様にして得た塗板を80℃の温水浴中に1時間浸したのち、加熱を止め室温になるまで徐冷し、水浴中から塗板を取り出し、室温で乾燥させてから、水浸漬部分の白化性を目視にて観察した。耐水性評価は、全く白化しなかったものを○、やや白化したものを△、著しく白化したものを×とする3段階で評価した。また、浸漬前からすでに被膜が濁っているものは評価不可能とし−とした。
【0076】
(耐擦傷性)
表2に示した紫外線硬化被膜形成組成物用の配合成分と、分散剤((A−1)〜(A−5)及び(B−1)〜(B−5))の5重量部を添加し、紫外線硬化被膜形成組成物を調製した。
【0077】
【表2】

【0078】
(紫外線硬化被膜形成組成物の調製3)
表2に示した紫外線硬化被膜形成組成物用成分の混合物に、分散剤((A−1)〜(A−5)及び(B−1)〜(B−5))の5重量部を添加し、ラボディスパーで2,000回転で2分間撹拌して、夫々実施例1〜6及び比較例1〜4の紫外線硬化被膜形成組成物を調製した。なお、紫外線硬化被膜形成組成物用成分のみの混合物を比較例7とした。
【0079】
調製3で得られた組成物を硬化させて被膜を形成させ、それの耐擦傷性の物性評価を行った。
【0080】
(耐擦傷性評価)
1時間冷暗所にて静置させた後、ガラス板に125μmアプリケーターで塗布し、高圧水銀灯(80W/cm、高さ10cm)を使用し、紫外線積算光量480mJ/cmの条件で硬化させて得た塗板を、JIS試験法に準じ、鉛筆硬度計を用いて耐擦傷性の評価を行った。
【0081】
表3に顔料分散剤を配合したミルベースの分散性能試験結果を示した。
【0082】
【表3】

【0083】
表4に顔料分散剤を配合したミルベースの塗膜光沢試験結果を示した。
【0084】
【表4】

【0085】
表5に顔料分散剤を配合した紫外線硬化被膜形成組成物の性能試験結果を示した。
【0086】
【表5】

【0087】
表3、表4、表5から明らかな通り、本発明の顔料分散剤を含む組成物を硬化させた実施例の被膜は、本発明を適用外の組成物を硬化させた比較例の被膜より、耐揮発油性、耐水性、耐擦傷性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の顔料分散剤は、着色した被膜を形成する際に、その原料である顔料含有の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物に添加されて用いられる。
【0089】
このような組成物は、塗料、コーティング剤、印刷インキとして有用である。
【0090】
また、この組成物を基材上に塗布し活性エネルギー線照射により硬化させて形成された被膜は、ブラックマトリクスやカラーフィルターやカラープラスチック成形品の被膜として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に極性基を有する極性の繰返し単位の0.03〜0.8モル当量と、側鎖に(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の少なくとも一種類の不飽和基を有する架橋性の繰返し単位の0.01〜0.4モル当量と、極性基及び架橋性不飽和基を有しない繰返し単位の0.19〜0.96モル当量とで付加共重合した主鎖を形成している共重合物が、含有されており、その重量平均分子量を2,000〜100,000とすることを特徴とする活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤。
【請求項2】
前記極性基が、アミノ基、イミダゾイル基、ピリジル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、及びそれらの何れかから形成されるイオン性基の少なくとも何れか一種類であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤。
【請求項3】
前記不飽和基がウレタン基、エステル基又はエーテル基を介して前記主鎖に結合していることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤。
【請求項4】
前記共重合物のヨウ素価が、2〜100であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物用の顔料分散剤が、顔料重量に対して0.5%〜60%含有されていることを特徴とする活性エネルギー線硬化被膜形成組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の活性エネルギー線硬化被膜形成組成物を基材上に塗布した膜が、紫外線、赤外線、遠赤外線、電子線、放射線から選ばれる活性エネルギー線の照射により、硬化していることを特徴とする硬化被膜。

【公開番号】特開2008−31234(P2008−31234A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204179(P2006−204179)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000162076)共栄社化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】