説明

活性ナノ複合材料、及び活性ナノ複合材料を得るためのプロセス

本発明は、活性ナノ複合材料及びそれを得るための方法に関し、より具体的には、基質と添加剤とを含む新規の活性ナノ複合材料、さらには、当該ナノ複合材料を得るための方法及び様々な産業分野における当該ナノ複合材料の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ナノクレイをベースにした活性ナノ複合材料及び/又は生物活性ナノ複合材料に関する。この活性は、特定の種類の添加剤を調製することによって得られる。添加剤は、天然及び/又は合成のクレイに、抗菌活性能及び/又は酸素除去能を有する、金属及び/もしくはその塩、ならびに/又は、同様に抗菌特性及び抗酸化特性を示す有機化合物、無機化合物、又はそのような化合物の組み合わせが挿入された積層に基づくものである。
【0002】
また、プラスチックの製造方法もしくは加工方法、又はセラミックパウダーの調製方法及び加工方法のいずれかを用いて、上述の添加剤をプラスチック基質又はセラミック基質の中に混入することに基づく、ナノ複合材料の製法を記載する。例えば、溶媒の堆積法及び蒸発法(例えば、コーティング及びラミネーション)、すなわち、溶媒を塗布した後に重合させて、硬化もしくは架橋し、又は加硫することによって、添加剤をプラスチック基質の中に混入する。この操作は、典型的に、溶解混合プロセス(例えば、押出し、注入、吹きつけ)及び/又はインシチュ(in situ)重合法により、耐熱性及びエラストマー性がある材料を形成するときに用いられるものである。
【0003】
プラスチック基質を有するナノ複合材料は、様々なプロセスによって調製可能である。典型的には、キャスティング技術及び/又はラミネーションなど(溶解及び溶媒の蒸発)の、プラスチックの加工及び製造に用いられるプロセス、耐熱性及びエラストマー性のある材料の製法である溶解混合プロセス、及びインシチュ重合プロセスによって調製可能である。そのようなナノ複合材料の有効な用途としては、食物に関連する製品の包装、及び手術用機器における抗菌プラスチック製品、ならびに他の分野における用途がある。
【0004】
セラミック基質を有するナノ複合材料の場合、ナノ複合材料は、典型的には、セラミック製品の製造(粉砕、微粒化、プレス又は押出し、エナメル製品に関してはエナメル細工、及び焼成を含む)において用いられるパウダーの調製中に取り込まれる。
【0005】
また、本発明は、多分野の用途のためのこれら材料の使用に関する。
【0006】
〔背景技術〕
高分子化合物の分野において、多くの関心を集めている分野の1つに、化合物材料の開発、より具体的にはクレイをベースにしたナノ複合体の開発がある。ナノ複合体の調製に関する様々な技術が存在しており、この技術には、キャスティング法(Ogata N, Jimenez G, Kawai H, Ogihara T; J Polym Sci Part B: Polym Phys 1997)、溶解混合法(Sinha Ray S, Yamada K, Okamoto M, Ueda K. Nano Lett 2002; 2:1093-6)、及びインシチュ重合法(Messersmith PB, Giannelis EP. Chem Mater 1993; 5:1064-6)が含まれる。また、新規のナノ複合体及び加工技術が、米国特許第5747560号明細書、米国特許第4618528号明細書、米国特許第4528235号明細書、米国特許第4874728号明細書、米国特許第6391449号明細書、米国特許第6486253号明細書、米国特許第6376591号明細書、及び米国特許第6156835号明細書、国際公開第95/14733号パンフレット、国際公開第93/04117号パンフレットに記載されており、本発明に関連する国際公開第2007074184A1号パンフレットにおいてより具体的に記載されている。このPCT特許出願には、ナノ複合体(生物分解性の有無は不明)を製造するための新規の経路を記載されている。このナノ複合体は、天然の物質に基づいた抗菌特性、及び/又は他の活性物質もしくは生物活性物質を一定もしくは制御しながら放出する能力を有している。これらのナノ複合体はフィロ硅酸塩及び/又は合成水酸化物二重層をベースにしており、様々な有機変性剤が挿入される。一旦、熱可塑性基質及び/又は耐熱性基質の中に取り込まれると、ナノ複合体は気体及び蒸気に対するバリア特性を向上させ得る。上述の文献は、変性クレイから調製されたポリマー−クレイナノ複合体に関する特許及び文献のいくつかの例である。これらの文献には、ナノメートル寸法のタクトイド構造を有するナノ複合材料(剥離されたプレート又は挿入されたプレートなど)が記載されている。当該ナノ複合材料には、オリゴマー、ポリマー又はそれらの混合物などのポリマー基質に分散された、挿入クレイを含む。
【0007】
例えば、米国特許第4739007号明細書には、アルキルアンモニウム塩で処理されたモンモリロナイトから、溶解混合法によってナイロン−6−クレイナノ複合体を調製することが記載されている。
【0008】
微生物の作用に対する保護は、現在の多くのプラスチック用途の基本的要件であり、この要件には、包装された食品の品質を維持すること、生物医学的用途において無菌状態を確保すること、露出した作業面において微生物の増殖の低減を助けることを含む。繊維産業、製薬産業及び食品産業において使用するための、抗菌系製品に関する発明が見出されている。より具体的には、米国特許第6841244号明細書及び米国特許第7232777号明細書には、抗菌特性を有する銀含有繊維の製造について記載されている。韓国特許第20030038586号明細書、米国特許第6224898号明細書、及び米国特許第7306777号明細書には、抗菌特性を有する、金属銀とポリウレタンとデンドリマーポリマー状の金属銀とのナノ複合体の使用についてそれぞれ記載されている。米国特許第7306777号明細書及び独国特許第202005020859U号明細書には、包装材及び梱包材に適用される、銀ナノ粒子をベースにした殺菌材料の使用について記載されている。特許出願第200703101号には、不活性材料、(生物)活性材料及びインテリジェント材料の製品、ならびに銀ナノ粒子を含有するナノ繊維を混入することによって抗菌特性を有する包装製品が記載されている。しかし、今までのところ、微生物の作用に対する保護の用途において、層状の珪酸塩をベースにしたナノ複合体製品について記載した特定の構成は明らかになっていない。
【0009】
微生物(特に細菌)は、汚染された食品の摂取によって生じる疾病の主な原因である。微生物は、缶詰加工に必須の熱処理を生き延びたり、この熱処理の後に、容器の合わせ目又は漏口によって食品を汚染したりすることがある。微生物の繁殖は、健康に対する潜在的危険性に加えて、食品の変質を引き起こし得る。食品が変質すると、食品の物理的特性、化学的特性、及び感覚刺激に反応する特性が変化する。伝統的な保存方法、例えば、熱処理、照射、変性された雰囲気における包装、又は塩の付加による方法などのうちのいくつかは、野菜、果物及び新鮮な肉、又はインスタント製品といった、特定の種類の食品には適用できない。食品に抗菌性物質を直接適用しても、抗菌性物質が中和されて、食品の内部に急速に拡散するために効果が限られる。これらの点を考慮すると、活性包装は、抗菌物質が包装材料から製品表面にゆっくりと移動するために、食品における細菌増殖を制限し、また制御する実行可能且つ有効な一形態である。抗菌物質の移動を必要に応じて延長させることが可能であり、輸送、貯蔵の時間をカバーし、摂取を保証する。本発明において記載される抗菌性銀ナノ添加剤の場合、一旦、包装材料の中に取り込むと、当該添加剤が微生物の酵素代謝を不活性化することによって、微生物汚染を制御することができる。
【0010】
また、微生物の作用は他の分野においても望ましくない。医学分野では、開放創の侵襲的治療及び通常の治療において、感染の危険を取り除くことが重要である。そのような処理の例には、カテーテル及び聴診器を抗菌フィルムでコーティングすること、傷及び火傷の治療のために、硝酸銀又は広域抗生物質によって前処理された繊維において組織を調製することなどが挙げられる。ファッション又は作業着に関する繊維産業では、例えば、抗菌物質で前処理された繊維を使用することにより、汗、湿気及び温度の上昇によって誘発される微生物の増殖を制限し、酷い体臭を低減すると共に感染の危険を減少させる。様々な環境条件に曝される表面に生体物質が蓄積及び堆積することは、汚れとして知られている。これは、塗装されたボート、高い湿度条件に曝される対象物もしくはシステム、又は活性条件、悪性条件もしくは不利な環境条件に曝される他の表面において生じ得る。ボートの場合、船体に生体物質が蓄積することによって流体力学的抵抗が生じ、燃料消費量が最大50%増大することがある。ボートの表面に抗菌システムを層状に付着させた場合、抗菌システムは汚れ止めとして機能する。これによって、燃料消費量は最適化され、浄化作業及び維持作業の頻度の低減を確かにする。水の容器及びタンクの場合、内側を抗菌性化合物のフィルムでコーティングすることにより、藻の増殖及び悪臭の発生を大幅に低減する。これにより、容器内の水質は長期にわたって保証される。わずかな数の例しか挙げないが、例えば、研究室(臨床検査室、微生物検査室、水分析検査室、食品検査室)の作業台などの品物、新鮮な食品を取り扱う商業分野(肉屋、魚野など)の品物、ならびに病院及び健康センター病棟の品物を、抗菌性化合物のフィルムでコーティングすること、又は該フィルムによって製造することは、作業を実行するための適切な衛生状態、ならびに汚染及び感染の危険を取り除くことを保証する。また、抗菌特性を備えるプラスチック材料を、公共の交通機関の部品であるクランク、操作レバー、ハンドル及び肘掛けにおいて、混雑した場所の手を掛ける所及び足場において、大衆の利用のための衛生設備の製造において、公衆電話のヘッドフォン又はマイクロフォン及び公共の場のオーディオシステムにおいて、ならびに台所及び食品搬送機器において、使用することが可能である。これら全ての用途は、感染及び疾患の拡大の危険を低減することを目的とするものである。また、セラミック製品における微生物の増殖を阻害するセラミック品、例えば、セラミックタイルで覆われた表面又は該セラミックタイルが接合し合う位置におけるカビ及び白カビの増殖を阻害するセラミック品の製造にも、関心が増大している。
【0011】
セラミック材料の分野には、次の特許が存在している。すなわち、衛生設備に使用するための抗菌性セラミック化合物を、AgWO(銀ウォルフラム酸塩)により製造することについて記載している特許(中国特許第101062786号明細書)、抗菌特性、殺菌特性及び防臭特性を有する、ドロマイトと両親媒性複合体とを含有するセラミック化合物について記載している特許(日本国特許第2007169109号明細書)、抗菌剤として銀が混入されたガラス材料及びセラミック材料について記載している特許(米国特許第2007172661号明細書、欧州特許第1711060号明細書)、食品産業において使用するための低濃度ポリエチレンの抗菌ナノ複合体を調製するための、金属酸化物(AgO、Fe、MnOなど)の抗菌セラミック複合体について記載している特許(韓国特許第20010083418号明細書)、ならびに歯科医学的用途のための抗菌ガラスセラミック複合体について記載している特許(米国特許第2005142077号明細書)がある。上記の例は、潜在的な感染環境(例えば公共の利用のための衛生設備)、微生物の増殖の制御が作業を安全に行なうために重要である環境(例えば、診察室、臨床検査室及び毒検査室、魚の養殖センターの床及び壁のタイル)、及び、一時的又は永久的な歯の取替え部品(歯科医学)の調製及び/又は修復のための用途、ならびに、他の潜在的な用途において、感染及び汚染が広がる危険を取り除く又は低減する抗菌セラミックシステムのいくつかの用途を示すものである。
【0012】
関心の高い他の活性特性は、フリーラジカルの隔離によって作用し、そのため酸素の存在下であっても酸化プロセスを妨げる「抗酸化」性、及び、酸素の捕捉によって酸化を妨げる、酸素隔離能力である。
【0013】
〔発明の概要〕
上述のように、今までのところ、気体及び蒸気に対するバリア特性、難燃性、純粋なポリマーと比較して改善された機械特性及び熱特性を有するナノ複合材料の製造について開示されているものはない。また、さらなる性能として、電磁放射(紫外線−可視光)を遮断して、例えば抗菌特性及び/もしくは抗酸化特性及び/もしくは酸素隔離特性を提供する活性物質ならびに/又は生物活性物質を、一定及び/又は制御しながら放出可能なナノ複合材料の製造について開示されているものはない。活性能力は、上述の特性の全てを提供するナノ粒子及び/もしくは他の活性物質をナノクレイの中に挿入することによって、ならびに/又は、これらをプラスチックに直接添加することによって、ならびに/又は、これらをナノクレイの作製中に添加することによって、得られる。これら新規の材料は熱的に安定しており、製造プロセス及びプラスチック加工プロセスを許容し、さらにはセラミックプロセスにおける焼成を施すことが十分に可能である。
【0014】
本発明における活性特性は、ナノクレイの構造体に、例えば殺菌性、抗酸化性及び酸素隔離性を有する、天然又は合成の、銀、鉄もしくは他の金属をベースにした物質及び/又は有機物質を取り込むことによって得られるか、又は強化される。金属性の殺生剤をクレイの中に混入することは、このような添加剤をプラスチックに添加することに基づいたナノ複合体の製造にとって興味深いだけでなく、金属性の殺生剤が対応する金属に対する金属殺生剤の塩の還元を助長するために必要とされる熱処理に耐性を有している。そのため、金属性の殺生剤を、抗菌特性を有するセラミック製品及び磁器製品を製造するためのセラミック産業において使用することが可能である。いくつかの金属(鉄など)は容易に酸化されるため、酸素が製品の保存にとって問題となり得る用途において、酸素を隔離するために用いられ得る。リスベラトロールなどのいくつかの天然物質は、抗酸化特性及び生物活性特性を有している。すなわち、抗酸化特性に加えて、これら天然物質がプラスチックから移動するという条件において、そのフリーラジカルを固定するという能力によって、天然物質が取り込まれるときに健康上の利益をもたらす。
【0015】
セラミック産業における抗菌ナノ添加剤の利用可能性は、ナノ粒子がセラミック基質の中に広く拡散されるため、これら製品の効用を増大させることができる。したがって、より少ない比率のナノ添加剤によって、非常に良好な結果が得られるため、コストを大幅に削減する。
【0016】
また、上述した例では、金属、又は天然もしくは合成の物質に基づく活性特性を有する、新規のナノ複合材料の応用分野を規定することができる。これら新規のナノ複合材料を得るための手順を、本願において開示する。本発明では、食品と接触させてもよい金属と、いくつかのアンモニウム塩(例えばヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム)との抗菌ナノ複合体が、非常に強力な抗菌物質であることを発見した。そのため、包装(食品、薬品及び医学)、繊維及び織物、医学的−手術材料、汚れ止めシステムなどの幅広い用途範囲において、ならびに公共領域用のプラスチック備品の製造及びセラミック製品の製造において、微生物の発育、成長及び増殖を阻止すると共に、感染の広がりを阻止する。
【0017】
したがって、本発明は層状のナノ添加剤を導入することによって得られる活性ナノ複合材料に関する。層状のナノ添加剤は、抗菌性の4級アンモニウム塩、ならびに/又は、キトサン、ならびに/又は、金属ナノ粒子及び/もしくはその有機塩及び無機塩を有するこの抗菌剤の誘導体、ならびに/又は、生物活性特性を有する天然の耐熱性抗酸化剤(プラスチック基質又はセラミック基質に介在するリスベラトロールなど)によって、予め変性されているか、又は変性されていない。当該活性ナノ複合材料の有効な用途としては、塗装分野、薬剤分野、建築分野、抗臭繊維分野及び包装分野である。
【0018】
結果的に、本発明の第1の基本形態は、プラスチック基質又はセラミック基質を有するナノ複合材料であって、層状のクレイナノ添加剤を取り込むことによって構成されるナノ複合材料に関する。
【0019】
プラスチック基質は、限定されないが、耐熱性及びエラストマー性のある熱可塑性物質によって構成される次の群から選択される。すなわち、熱可塑性物質としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリケトン、ポリイソシアネート、ポリスルホン酸塩、スチレンプラスチック、フェノール樹脂、アミド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシド樹脂、ポリカーボネート、ポリビニールピロリドン、エポキシ樹脂、ポリアクリレート、ラバー及びゴム、ポリウレタン、シリコン、アラミド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリアクリロニトリル、PVDF、PVA、PVOH、EVOH、PVC、PVDC、又はバイオマス及び生物分解性材料の誘導体(例えば、タンパク質、多糖類、脂質及びバイオポリエステル)など、又は、これらすべてのうちの混合物を含む熱可塑性物質である。また、プラスチック基質は、その製造及び/もしくは加工、又はその特性を改善するために、プラスチックに典型的に添加されるあらゆる種類の添加剤を含み得る。加えて、この種の基質が占める割合は、5%から99.99%であり、好ましくは20%から99.99%であり、より好ましくは90%から99.99%である。
【0020】
セラミック基質としては、限定されないが、水、クレイ(好ましくはカオリナイト、また時にモンモリロナイト)、解膠剤、長石、長石砂(時にカオリン)、炭酸塩、ならびにジルコニウムを含むセラミック基質である。エナメルタイプのセラミック基質及び他の種類のセラミックコーティング複合体は、限定されないが、カオリン、又はカオリンクレイ(5%)もしくはモンモリロナイトクレイ(1%)、長石、ガラス原料、シリカ及び珪砂を含む。さらに、この種の基質が占める割合は、5%から99.99%であり、好ましくは20%から99.99%であり、より好ましくは65%から99.99%である。
【0021】
好ましい一実施形態によれば、プラスチック基質又はセラミック基質は、ナノクレイに加えて、電磁放射バリア特性もしくは耐燃特性を有する物質、又は他のさらなる活性物質もしくは生物活性物質を含んでいてもよい。これらの物質は、抗菌性の有機金属塩及び無機金属塩(好ましくは、銀、銅、ニッケル又はコバルトの有機金属塩及び無機金属塩)、酸素隔離剤(例えば、鉄及びその塩)、活性もしくは生物活性の低分子量物質(エタノール、エチレン又は精油(好ましくはチモール、カルバクロール、リナロール及び混合物)から選択される低分子量物質)、(好ましくは殺菌性の)小型の天然抗菌ペプチドもしくは遺伝子組み換えによって得られた小型の抗菌ペプチド(好ましくはナイシン、エンテロシン、ラクチシン及びリゾチーム)、4級アンモニウム塩(好ましくは食品と接触することが可能な4級アンモニウム塩)、天然もしくは合成の抗酸化剤(好ましくは、ポリフェノール(限定されないが、例えばリスベラトロール又はフラボノイド)、野菜エキス(限定されないが、例えばオイゲノール又はローズマリーのエキス)、及びビタミン(好ましくはトコフェロール及びトコトリエノール、又はアスコルビン酸/ビタミンC))、薬剤、酵素、生物が利用可能なカルシウム化合物、プロバイオティクス、魚油、シンバイオティクス、又はプレバイオティクス(非消化性繊維)によって構成される群から選択される物質である。
【0022】
これまでの一般的な説明に対して、プラスチックに直接添加されるか、又は無機基質(クレイ又はアモルファス材料)に担持もしくは介在されるリスベラトロールの使用における利点は、この成分が熱に安定であるためにプラスチック加工技術において活性を損なうことなく取り込むことができること、プラスチックの透明度又は光学特性にほとんど影響を及ぼさない(すなわち感覚受容特性又は製品の外観にほとんど影響を及ぼさない)こと、プラスチックの中に取り込んだ後で非常に強力な抗酸化特性を有していること、さらには生物活性特性を有しているために食品へ移動及び/又は取り込んだ場合に生物に機能特性を示すこと、ならびにクレイ型基質に効率よく取り込まれること、といった観点から極めて稀である。抗酸化剤(リスベラトロールなど)と、酸素隔離剤(鉄及び鉄塩など)とにおける主な違いは、抗酸化剤はフリーラジカルを捕捉し、酸素の存在下でも酸化を妨げるが、酸素隔離剤は酸素を捕捉し、これによって酸化を妨げる点である。いずれも安定性は向上され、これらの活性材料を含有するか、又はこれらの活性材料と接触する、プラスチック基質もしくはセラミック基質又は製品の耐用年数の延長に有用である。
【0023】
ナノクレイは、層状珪酸塩及び/又は層状複水酸化物より構成される群から選択される。これらの材料としては、限定されないが、モンモリロナイトクレイ、カオリナイト、ベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、海泡石、ギブサイト、ディッカイト、ネークライト、サポナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、雲母、及び/もしくは、これらの混合物、又は他のフィロ硅酸塩との混合物より構成される群から選択される材料である。これらは、予め有機表面改質又は無機表面改質をされていてもよいし、されていなくてもよい。これらの材料は、粒子の厚みが少なくともナノメートルの範囲の大きさを有し、新規の活性ナノ複合体を形成するために、プラスチック基質及びセラミック基質の中に層状の負荷として導入されることにより特徴づけられる。
【0024】
プラスチック基質において活性添加剤が占める割合は、0.01%〜95%であり、好ましくは0.01%〜80%であり、及びより好ましくは0.01%〜10%である。
【0025】
セラミック基質において活性添加剤が占める割合は、0.01重量%〜95重量%であり、好ましくは0.01重量%〜80重量%であり、及びより好ましくは0.01重量%〜35重量%である。
【0026】
エナメル型のセラミック基質において活性添加剤が占める割合は、0.01%〜50%であり、好ましくは0.01%〜20%であり、及びより好ましくは0.01%〜15%である。
【0027】
使用されるとき、クレイナノ添加剤の表面改質は、生物致死性を有する相溶化剤を混入することによって活性作用を導入又は強化することができることに加えて、クレイと基質との適合性を増大させて、クレイの良好な剥離作用を実現する。これは結果的に、活性物質、抗菌物質、及び/又は酸素隔離剤の、分散及び表面露出を向上させるための良好な形態を導く。これらの物質は、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛などの金属、及び/又はこれらの組み合わせ、及び/又はこれらの無機塩もしくは有機塩、有機化合物、好ましくは食品に接触可能な塩(すなわち、プラスチック材料及び対象物の製造に使用するための法律によって許可された、モノマー及び他の原材料物質の一覧に記載されている塩であり、例えばヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム(本発明は、これを抗菌剤自体であると示している)が挙げられるがこれに限定されない)、脂肪族系モノカルボン酸(C6−C22)を有するポリエチレングリコールのエステル、ならびにそれらの硫酸アンモニウム及び硫酸ナトリウム、ペルフルオロオクタン酸及びそのアンモニウム塩、及びN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチル塩化アンモニウムと、ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−ヒドロキシプロピル−3−(ドデシルオキシ)メチル塩化アンモニウムと、キトサンとの共重合体、及びその誘導体、ならびに、これらの組み合わせに基づく物質である。金属塩は、硝酸塩、酢酸塩、塩化物及び硫酸塩などの単一の塩、ならびに水と、硝酸塩、酢酸塩、アミノ及び塩化物の群とを含む無機錯体より構成される群から選択される金属塩であるが、これらに限定されない。
【0028】
プラスチック材料の場合、当該材料は活性作用を示し、純粋な材料と比べて、バリア特性、耐燃特性、及び他の物理的特性を向上させている。また、電磁放射の遮断を可能にすると共に、活性及び/又は生物活性特性を有するこれらの物質又は他の物質を制御しながら放出させることができる。セラミック材料の場合、生物致死性の金属のナノ微粒化のため、より効果的な抗菌特性が得られる。
【0029】
プラスチックの場合、これらのナノ複合材料は、ラミネーション技術又はコーティング技術(溶液の流し込み)によって、耐燃性物質の製法に典型的に用いられる操作である、単量体溶液を塗布した後に重合化して硬化する方法によって、同じく単量体溶液を塗布した後に、エラストマー材を製造する際に典型的に用いられる操作である架橋又は加硫によって、ポリマーペレット又はプラスチックペレットからプラスチックを加工する従来の技術を用いた溶解混合によって、又はインシチュ重合によって、調製される。
【0030】
セラミックにおいて用いられる場合、ナノ複合材料は、粉砕、微粒化、圧縮又は押出し、エナメル製品の場合はエナメル細工、及び焼成を含むセラミック製品の製造において典型的に用いられるパウダーの調製工程中に混入されるが、これらに限定されない。
【0031】
ナノ複合体プラスチックは、食品包装産業において特に関心が高い。なぜなら、これらの活性包装材料は、製品を微生物の作用から保護すること、フリーラジカルを隔離する抗酸化剤又は酸素を除去する酸素隔離剤の使用により、梱包及びその内容物を酸化から保護すること、ならびに/又は、これらの活性物質もしくは他の活性物質を一定及び/もしくは制御しながら放出させること、を可能にするためである。さらに、これらの活性包装材料は、気体及び蒸気のバリア特性、紫外線に対する機械的バリア特性、典型的にナノクレイの使用に関連する他の特性を、大幅に改善する。他の利用分野では、活性特性を有するナノクレイで補強されたプラスチック及びセラミックのナノ複合材料は、医学的手術分野、生物医学的分野、及び製薬分野において、通常の治療及び侵襲的治療に用いられる機器及び材料を製造及びコーティングするために有用である。また、これらのプラスチック及びセラミックのナノ複合材料は、浸水される表面及び水と湿気とに晒される表面に生物膜が形成されることを防ぐ、汚れ止め用途においても有用である。これらはまた、抗菌化合物、抗酸化剤もしくは酸素隔離剤を必要とする用途、一般的に、備品、部品又はコーティングにおける全ての用途において、細菌の増殖、ならびに、感染の危険、及び/又は、これらに接触した材料、及び/又は、内容物もしくは製品の酸化を妨げるために、有用である。
【0032】
本発明の第2の基本形態は、本発明において記載されるナノ複合材料の製造プロセスに関する。この製造プロセスは、層状のフィロ硅酸塩などの構造体に基づき得る。層状のフィロ硅酸塩には、層構造を有するクレイ(例えば、モンモリロナイト、カオリナイト、ベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、海泡石、サポナイト、ハロイサイト、バーミキュライト、雲母)、又は、合成もしくは天然の層状複水酸化物が含まれる。この製造プロセスは、次のステップを含む。
【0033】
1)機械的動作(例えば粉砕技術)によって層状粒子の寸法を低減するステップ。このプロセスを行なって、30ミクロン以下のd90粒径を得る。
【0034】
2)振動濾過布(vibrotamiz)、遠心分離機、加圧脱水機、又は他の任意の乾式もしくは湿式の濾過システムにおいて、0.1〜100ミクロンの間の範囲に分類するステップ。好ましくは、得られる粒径の低減は、いわゆるd90の測量単位において、25ミクロンよりも少なく、より好ましくは3ミクロンよりも少ない(材料のわずか10%が、この値よりも大きい直径を有している)。
【0035】
3)代替的に、有機材料を除去するステップ。これは、上澄みを収集するデカンテーション技術、又は、過酸化物などの酸化物質との化学反応技術によって行なわれるが、これらに限定されない。
【0036】
4)代替的に、変性されなかった結晶酸化物及び硬質の粒子を除去するステップ。これは、溶液における遠心分離プロセス及び/もしくは重量分析法によって、又はターボ乾燥機によって、好ましくは湿式又は乾式経路における遠心分離プロセスによって(この後に、沈降を制御することによる微粒化のプロセスを行なってもよいし、行なわなくてもよい)、又は凍結乾燥を含む他の任意の工業的乾燥プロセスによって、行なわれる。
【0037】
5)懸濁液において、又は、ステップ4)に記載の方法によってパウダー状に乾燥させた後に、層状の微粒子を得るステップ。これらのシステムでは、すなわち懸濁液状であってもパウダー状であっても、本発明の開始産物とみなされる。
【0038】
6)層状の構造体を、1つ又は複数のステップにおいて、表1に示される増量剤型の前駆体を使用することによって前処理するステップ。
【0039】
【表1】

【0040】

【0041】
増量剤は、DMSO、アルコール、酢酸塩又は水、及びこれらの混合物、ならびに、銀、銅、鉄、ニッケル、もしくはコバルトの金属塩から構成される群から選択されることが好ましい。これらは、初めに層の基本的間隔を増大させて粒子を活性化させて、クレイの表面特性を変性させる。前駆体の浸透は、限定されないが、熱、乱流ホモジナイザー、超音波、超臨界流体、解膠剤(例えば、アクリル酸塩及び/又はリン酸塩)、圧力又はこれらを組み合わせて用いることによって加速される。水又はアルコールで洗浄した後の乾燥は、炉内での蒸発、凍結乾燥、溶液中又はターボ乾燥機による遠心分離、及び/もしくは重量分析プロセス、又は微粒化によって行なうことができる。本発明の他の好ましい一実施形態によれば、挿入された前駆体の溶液を、前の洗浄プロセス及び/又は乾燥プロセスを施さずに、後の、変性剤を混入するためのステップのための原材料として用いることができる。
【0042】
7)追加的又は必要に応じて、無機物質、有機物質、又はハイブリッド物質を、塩基水溶液中の積層構造、又は極性溶媒を有する積層構造の中に挿入してもよい。この意味で、挿入される化合物は、PVOH、EVOH及び同じ族の誘導体、ならびに/又は生体高分子化合物から構成される群から選択されるが、これらに限定されない。生体高分子化合物としては、ペプチド、天然タンパク質、又は化学的もしくは遺伝的に改質された微生物もしくは植物の合成タンパク質、ポリペプチド、脂質、核酸、化学的もしくは遺伝的に改質された微生物又は植物の合成ポリマー、生物分解性ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸/グリコール酸)、ポリカプロラクトン、アジピン酸及び誘導体、ならびにポリヒドロキシアルカノアート、好ましくはポリヒドロキシブチラート、及びそのバレレート(valeriates)との共重合体)、生物医学的材料(例えば、ヒドロキシアパタイト及び有機塩のリン酸塩)、及び/又は、天然もしくは合成の抗酸化剤(好ましくはポリフェノール(例えば、リスベラトロール又はフラボノイドが挙げられるが、これらに限定されない)、野菜エキス(例えば、オイゲノール又はローズマリーのエキスが挙げられるが、これらに限定されない)、及びビタミン(好ましくはトコフェロール及びトコトリエノール又はアスコルビン酸/ビタミンC))が挙げられる。4級アンモニウム塩、好ましくは食品に接触させてもよい塩(すなわち、プラスチック材料及び対象物の製造に使用するための法律によって許可された、モノマー及び他の原材料物質の一覧に及び記載されている塩であり、例えば、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムが挙げられるがこれに限定されない)、脂肪族系モノカルボン酸(C6−C22)を有するポリエチレングリコールのエステル、ならびにそれらの硫酸アンモニウム及び硫酸ナトリウム、ペルフルオロオクタン酸及びそのアンモニウム塩、また、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチル塩化アンモニウムと、ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−ヒドロキシプロピル−3−(ドデシルオキシ)メチル塩化アンモニウムと、キトサンとの共重合体及びその誘導体、抗菌特性、抗酸化特性、又は酸素隔離特性を有する、銀、鉄、銅、ニッケル、及び/もしくは、これらの有機塩もしくは無機塩、他の粒子もしくはナノ粒子、ならびに/又は、これら全ての組み合わせを挿入してもよい。
【0043】
挿入される無機材料が、抗菌特性又は酸素隔離特性を有する金属をベースにしている場合、後に、物理的処理又は化学的処理を行なって、挿入された金属中心の酸化数を、全体的又は部分的に変えることが可能である。当該無機材料としては、銀などの金属、銀、銅、鉄、コバルト、ニッケルもしくは他の金属の有機塩及び/又は無機塩が挙げられる。処理は、限定されないが、高温(250℃〜1200℃)における再焼成、紫外線放射、赤外線放射、マイクロ波放射、エタノール及び/又はNaBH及び/又は他の化学的還元剤による化学的還元を含む。これらの処理のいずれかが完了した後、金属中心(使用される銀、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、コバルト又は他の金属)の酸化度は、全体的又は部分的に変わっており、材料に対して、より強い又はより弱い、抗菌特性及び/又は酸素隔離特性を提供する。
【0044】
挿入される有機材料が、EVOH又は同じ族の他の材料であり、エチレンのモル含有率が好ましくは48%よりも少なく、より好ましくは29%よりも少ない場合、当該材料は水溶性媒体又は特定のアルコール系溶剤、アルコールと水との混合物、より好ましくは水とイソプロパノールとの混合物(水の容量の比率は50%よりも多い)において、飽和される。
【0045】
生体高分子化合物は、可塑剤の有無、架橋剤の有無、及び、乳化剤もしくは界面活性剤又は他の種類のナノ添加剤の有無に関わらず、合成多糖類及び天然多糖類(野菜又は動物性)によって構成される群からなる。当該群は、例えば、カラゲナート及び誘導体、アルギナート、デキストラン、アラビアゴム(好ましくは天然及び合成のキトサン及びその誘導体のうちのいずれか、より好ましくはキトサン塩、さらに好ましくはキトサン酢酸塩)、植物又は動物に由来するタンパク質及びトウモロコシタンパク質(ゼイン)、グルテンの誘導体(例えば、グルテン又はそのグリアジン及びグルテン断片、及びより好ましくはゼラチン、カゼイン及び大豆タンパク質及び誘導体)、天然ポリペプチド又は合成ポリペプチド(好ましくは微生物又は植物の化学修飾又は遺伝子組み換えによって得られるエラスチン型のポリペプチド)、脂質(例えば、蜜蝋、カルナウバ蝋、カンデリラ蝋、セラック及び脂肪酸)、ならびにモノグリセリド及び/又は上記の全ての混合物を含む。
【0046】
キトサンの場合、脱アセチル化の程度は、好ましくは80%よりも高くすべきであり、より好ましくは87%よりも高くすべきである。前駆体の浸透は、熱、乱流ホモジナイザー、超音波、圧力又はこれらの組み合わせを用いることによって加速される。
【0047】
次のステップ、すなわち上述した前躯体及び変性剤によって前処理されることによる微粒子の変性に代わるステップでは、上述した方法によって洗浄及び乾燥させるか、又は液体溶媒において維持させていてもよく、活性又は生物活性の低分子量物質を添加してもよい。その目的は、挿入されると、一定もしくは制御しながら放出される状態を維持して、複合材料に活性特性又は生物活性特性をもたらすことである。活性物質としては、エタノール、エチレン、精油(好ましくはチモール、カルバクロール、リナロール又はこれらの組み合わせ)、(好ましくは殺菌性の)小型の天然抗菌ペプチドもしくは遺伝子組み換えによって得られた小型の抗菌ペプチド(好ましくはナイシン、エンテロシン、ラクチシン及びリゾチーム)、天然もしくは合成の抗酸化剤(好ましくはポリフェノール(例えば、リスベラトロール又はフラボノイドが挙げられるが、これらに限定されない)、植物エキス(例えば、オイゲノール又はローズマリーのエキスが挙げられるが、これらに限定されない)、及びビタミン(好ましくはトコフェロール及びトコトリエン又はアスコルビン酸/ビタミンC))、薬剤、酵素、生物が利用可能なカルシウム化合物、魚油、プロバイオティクス、シンバイオティクス、プレバイオティクス(非消化性繊維)、又は、有機金属塩及び無機金属塩(好ましくは銀、銅、鉄、ニッケル又はコバルトの金属塩)であり得る。これらの成分は、ナノ複合体から製品に対して、制御されながら、一定及び/又は後に放出される状態で維持され(基質制御)、これらの活性又は生物活性の役割を果たすこと、及び/又は、基質から放出され、ナノクレイが反応速度を制御すること(ナノ添加剤制御)が可能であることが予測される。添加される含有量は、一般に、溶液の容積において80%よりも少なく、好ましくは12%よりも少なく、より好ましくは8%よりも少ない。これらの物質の浸透は、限定されないが、熱、乱流ホモジナイザー、超音波、圧力、これらを組み合わせて用いることによって加速される。
【0048】
8)前のステップにおいて結果として生じた個体又は液体状態の物質を、プラスチック基質又はセラミック基質に添加する。代替的に、活性有機金属塩及び無機金属塩(好ましくは、銀、鉄、コバルト、ニッケル又はコバルトの金属塩)、及び/又は、他の任意の種類の活性物質もしくは生物活性物質(上述のものに限定されない)を、活性ナノクレイを含有する基質の中に添加剤として含めて、ナノ複合体の活性又は生物活性効果を強化又は補ってもよい。プラスチック基質の場合、ナノクレイ及び上述の補完的な化合物を、プラスチック加工産業に関連する任意の製造方法を用いたプロセスの間に添加してもよい。プラスチック加工産業に関連する任意の製造方法には、典型的に耐熱性材料及びエラストマー材料の製造及び成型工程に用いられる、押出しプロセス、塗布プロセス、及び硬化プロセス、射出法、吹込み法、圧縮成型法、樹脂トランスファ成型法、カレンダ加工法、熱衝撃法、内部混合法、超音波法、共押出し法、共射出法、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態、又は、ナノクレイにおける挿入剤としての使用に関する実施形態では、上述のような天然もしくは合成の抗酸化物質、より好ましくはリスベラトロールを、極性溶媒又は無極性溶媒に分散された液体又は固体で、ポリマーもしくはプラスチックに直接添加され得る。これらの抗酸化物質は、任意のプラスチック加工法によって加工して濃縮してもよいし、又は、プラスチック品を得るための任意のプラスチック加工法によって加工して、ペレットを得てもよい。
【0050】
好ましい一実施形態によれば、ポリマー基質又はプラスチック基質(本発明において、用語「プラスチック」と用語「ポリマー」とは区別することなく用いられる)は、任意の熱可塑性物質、耐熱性もしくはエラストマー性のあるプラスチック、又は、バイオマス及び生物分解性材料の誘導体(例えば、タンパク質、多糖類、脂質及びバイオポリエステル、又はこれら全ての組み合わせ)であり得、電磁放射バリア特性及び耐燃特性を改善する任意の種類の添加剤、及び/又は、それらの工程又は性質を改良するために典型的にプラスチックに加えられる別の異なるナノ添加剤を含み得る。代替的に、ナノ添加剤と変性剤との組み合わせから結果として生じる物質の蒸発により沈殿させてもよい。また、任意により、プラスチック基質を溶液中に沈殿させることを、重量乾燥法(例えば、加熱法及び/又は遠心分離法及び/又はターボ乾燥法及び/又は微粒化法)によって、冷却によって、又は沈殿剤を添加して、添加剤のパウダーもしくはマスターバッチを形成することによって(換言すると、プラスチック基質中のナノ添加剤を凝縮することによって)、行なってもよい。
【0051】
セラミック基質の場合、セラミック材料の製造又は加工ステップのいずれかにおいて、活性特性を有する有機金属塩及び/又は無機金属塩を、他の活性又は生物活性物質と共に加えてもよい。しかし、これらは、微粒化する前のパウダー調製工程の間に加えられることが好ましい。
【0052】
ポリマー基質中の添加剤濃縮は、以下の方法で処理することができる:
a)添加剤を粉砕によって砕いて、粒子産生物を生じさせる;
b)これらを、任意のプラスチック加工法によって加工して、個体ペレットを得る;
c)これらを、プラスチック加工産業に関連する任意の製造プロセス、例えば、押出し法、射出法、吹込み法、圧縮成型法、樹脂トランスファ成型法、カレンダ加工法、熱衝撃法、内部混合法、超音波法、共押出し法、共射出法、又はこれらを組み合わせて処理する;
d)これらを、任意のプラスチック基質(上述の、生体高分子材料及び生物医学的材料)において、上述の従来のプラスチック加工経路のいずれかによって、添加剤として用いる。
【0053】
最終的に、ナノ複合材料を、抗菌力を有する、銀などの金属、銀、銅、コバルト、ニッケルもしくは他の金属の有機塩及び/又は無機塩、鉄及び/又はその塩を含有するナノクレイで強化させた場合、成型工程の前、間もしくは後に、物理的処理又は化学的処理を行なって(以前に行なっていても、いなくても)、プラスチック基質又はセラミック基質内に挿入された金属中心の酸化数を、全体的又は部分的に変えてもよい。これらの処理には、高温(250℃〜1200℃)における再焼成、紫外線放射、赤外線放射、マイクロ波放射、エタノール及び/又はNaBH及び/又は他の化学的還元剤による化学的還元が含まれるが、これらに限定されない。これらの処理のいずれかが完了すると、金属中心(用いられる銀、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、コバルト又は他の金属)の酸化度が変えられ、材料に、有利な抗菌特性及び/又は酸素隔離特性を与えることになる。
【0054】
最後に、本発明の第3の基本形態は、プラスチック及びセラミックの複合材料の使用によって細菌の増殖を制限する必要がある多分野の用途において、抗菌作用を強化するための、プラスチック及びセラミックの複合材料の使用に関する。この使用は、特に、食品及び食品成分の一般的な包装及び梱包用途(ポリマー材料の場合)、生物医学的用途、医学的手術及び製薬用途、又は汚れ止めの用途、エナメル及びタイル張りのための建築用途、個人の衛生用品のための用途、混雑した場所(例えばスーパーマーケット、路面電車、スタンド、歩道、エスカレータ、又は空港)における接触に関する用途、繊維用途、気体、蒸気、溶媒及び有機製品(例えば、香料及び香料成分、油、グリース及び炭化水素)に対するバリアとしての用途、ならびに、生物分解性材料又は堆肥にできる材料が要求される使用に関する、有機物及び無機物を混合した製品用途、抗菌特性、抗酸化特性又は低分子量物質(好ましくは揮発性)を制御しながら放出する必要がある、他の種類の活性を必要とする活性包装の用途、生体高分子における使用(可塑化剤の使用を必要としないか、又はわずかな量の可塑化剤の使用を必要とする)のための抗菌性、抗酸化性、及び酸素隔離性を必要とする用途であるのための使用である。
【0055】
また、これらのナノ複合材料は、電磁放射に対するバリア特性、及び耐燃特性を有する材料としても機能する。
【0056】
記載した全ての特性及び利点、ならびに、他の本発明に派生する特性及び利点は、以下の実施例によって、よく理解されるであろう。以下に示される実施例は、本発明の本質を説明するのみであって限定されるものではなく、本発明をさらに理解するために提供するものである。
【0057】
〔図面の簡単な説明〕
以下に、本発明を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0058】
図1は、変性させたモンモリロナイト型クレイの試料と、変性されていない同じ型のクレイとのX線回折(WAXS)を示す。変性は、還元剤としてエタノールを使用し、実施例1に記載の方法を用いて、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム(有機抗菌剤、増量剤、及び相溶化剤)及び硝酸銀(温度耐性の抗菌剤)により行なった。この図は、抗菌システムがどのようにクレイの中に挿入され、該システムが、どのようにクレイの天然のピークを、より低い角度に変位させるかを示すものである。
【0059】
図2は、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscopy:TEM)によって得られた写真であり、本発明によって得られるナノ負荷に見られる主な形態を示す。この写真は、還元剤としてエタノールを使用し、実施例1に記載の方法を用いてヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム及び硝酸銀によって変性させた、モンモリロナイト型クレイ層の集合体に相当する。表面に形成された銀ナノ粒子が観察される。
【0060】
図3は、変性させた(DMSOで前処理された)カオリナイト型クレイの試料と、変性されていない(DMSOで前処理された)同じ型のクレイの試料とのX線回折(WAXS)を示す。変性は、還元剤として紫外線放射を用いて、実施例2に記載の方法によって、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム(有機抗菌剤、増量剤、及び相溶化剤)及び硝酸銀(温度−耐性抗菌)で行なった。このグラフは、抗菌システムがどのようにクレイの中に挿入され、結果的に、DMSOで前処理された天然クレイのピークが消失するかを示す。
【0061】
図4は、本発明に従って得られるナノ負荷において観察される、主要且つ典型的な形態を示す、透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真である。この写真は、還元剤として紫外線放射を用いて、実施例2に記載の方法によってヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム及び硝酸銀で変性させた(DMSOで前処理された)、カオリナイト型クレイの積層集合体を示すものである。
【0062】
図5は、硝酸銀を挿入したモンモリロナイト型クレイの層の集合体を示す透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真である。挿入は、還元剤としてエタノールを用いて、実施例3に記載の方法によって行なった。
【0063】
図6は、硝酸銀を挿入した(DMSOで前処理された)カオリナイト型クレイ層の集合体を示す、透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真である。挿入は、還元剤として紫外線放射を用いて、実施例4において記載の方法によって行なった。
【0064】
図7は、実施例5に記載の方法によって、硝酸銀を挿入した10%カオリナイト型クレイ(DMSOで前処理された)を含むポリ乳酸のナノ複合体をキャスティングすることによって得られたフィルムを示す、透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真である。
【0065】
図8は、硝酸銀が挿入された10%カオリナイト型クレイ(DMSOで前処理された)を含むポリ乳酸のナノ複合体のフィルムにおいて得られた、水蒸気に対する透過性の改善度を、純粋なポリ乳酸のフィルムと比較したところを示す図である(実施例5)。
【0066】
図9は、実施例8に記載の方法によって、10重量%(w/w)のトランスリスベラトロールで変性させたモンモリロナイト型クレイの試料から得られる、X線回折スペクトル(WAXS)を示す図である。
【0067】
図10は、実施例8及び9に記載の方法によって、モンモリロナイト型クレイと10%抗酸化剤(トランスリスベラトロール又はα−トコフェロール)との作用が、ヘッドスペースにおけるリノール酸の酸化を阻害することを示す図である。
【0068】
図11は、実施例9に記載の方法によって、10重量%(w/w)のα−トコフェロールで変性されたモンモリロナイト型クレイの試料から得られる、X線回折スペクトル(WAXS)を示す図である。
【0069】
図12は、実施例10に記載の方法によって、20重量%(w/w)のヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムと5%オイゲノールとで同時に変性させたモンモリロナイト型クレイの試料から得られる、X線回折スペクトル(WAXS)を示す図である。
【0070】
図13は、実施例11に記載のプロセスである沈殿法によって調製された、様々な含有量のトランスリスベラトロールを有するEVOHフィルムにおける、DPPHの阻害率(%)を示す図である。
【0071】
図14は、実施例12に記載のプロセスによって調製された、異なる含有量のカオリナイトと異なる含有量のリスベラトロールとを有するEVOHフィルムにおける、DPPHの阻害率(%)を示す図である。
【0072】
図15は、実施例13に記載のプロセスに従った、EVOH+1%抗酸化剤フィルムの作用による、ヘッドスペースにおけるリノール酸の酸化の阻害率(%)を示す図である。
【0073】
図16は、人工直接光、24℃、及び40%RHに曝された、1%抗酸化剤とカオリナイトとを有するEVOHフィルム、又は、1%抗酸化剤だけを有しカオリナイトを有さないEVOHフィルムに曝した0時間目と21日目とにおける、DPPHラジカルの阻害率を示す図である。
【0074】
図17は、パウダー状の0.1%〜1%のリスベラトロールが添加されたEVOHのフィルムが、18.8%と85.4%との間の抗酸化性を有していること(DPPH変色アッセイにおいて)、及び、1%のリスベラトロールが添加されたEVOHが、1%のBHT添加剤を有するフィルムよりも高い抗酸化性を有していることを示す図である。
【0075】
図18は、1%のt−リスベラトロールが液体で添加されたLDPEフィルムが、添加されていないLDPEフィルムよりも明らかに良好な、88%の抗酸化性(DPPH変色アッセイにおいて)を有していることを示す図である。
【0076】
〔実施例〕
<実施例1:還元剤としてエタノールを使用した、33重量%のヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムによって変性させたモンモリロナイト型クレイにおける、金属銀ナノ粒子の合成及び挿入>
まず、予め33%ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムによって変性させたクレイを、室温において、エタノールに分散させた。このとき、溶媒100g当たり1gのクレイを用いた。そして、この分散液に0.05gのAgNOを添加した。分散液を70℃で6時間還流させた後、分散液を静かに移し、余分な溶媒を除去し、クレイを対流オーブンにおいて70℃で1時間乾燥させた。その結果得られたクレイについて、X線回折(図1を参照)及び透過型電子顕微鏡(図2を参照)によって特徴づけを行なった。図1の回折図では、基本ピークが極めて低い角度(6.38から5.26に)に変位することから、変性剤(銀とヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムとの粒子)が層の間に挿入されたことを示す。TEM写真から、本例において、銀ナノ粒子が3nmと23nmとの間にあり(平均寸法は16nmである)、これらのナノ粒子が、推定上、クレイの表面及び辺部の、層間空間に位置していることがわかった。
【0077】
別の調査では、5%硝酸銀を有するクレイの、サルモネラ菌種(Salmonella spp)に対する抗菌性能を測定した。食物由来の病原微生物であるサルモネラ菌種CECT 554を用いた。これは、スペイン微生物株保護機関(Spanish Collection of Culture Types)(バレンシア、スペイン)から入手した。調査環境は、対数増殖期の中程であって、微生物の初期濃度が約10CFU/mLである細菌を使用するように設定した。実験部分は、1999年に国立臨床検査標準協議会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)によって承認され、抗菌物質の殺菌作用を測定するために確立された、マクロ希釈法を適用した。
【0078】
本方法に従って、最終的な銀の濃度が5%であり、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムの濃度が33%である100mgのクレイを、10mLの培養液ミューラーヒントンブロス(Mueller Hinton Broth:MHB)を含有する滅菌チューブの中に置いた。5時間後、このチューブに、上述の条件下の0.1mLのサルモネラ菌種の培養液を植菌した。これと並行して、銀を含まない試料を含有する2つのチューブ(一方は、変性されていない同じ型のクレイを含み、他方は、33%ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムによって変性された同じ型のクレイを含む)、及び試料を含まない別のチューブ(コントロールとして機能する)に植菌した。試料を植菌した後、全てのチューブを37℃で24時間培養した。次に、0.1mLの各試料を、トリプトソイ寒天培地(Tryptone Soy Agar:TSA)プレート上に播種した。37℃において24時間培養した後に、プレート上の生存細胞を計数した。37℃において24時間培養した後の生存細胞の数は、試料を有さないコントロール、及び変性されていないクレイコントロールを除いて、著しく減少した(表2を参照)。33%ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムによって変性されたクレイコントロールは、培養期間の後、3桁の数の生存細胞が減少することを示した。これは、この変性剤が、いくらかの抗菌作用を有していることを示している。5%硝酸銀と33%ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムとによって変性されたクレイの試料は、生存細胞数を99.9%以上減少させた。これは、このクレイの殺菌性を示すものである。
【0079】
【表2】

【0080】
<実施例2:還元剤として紫外線放射を用いて、ジメチルスルホキシド(DMSO)によって前処理され、33重量%のヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムによって変性させたカオリナイト型クレイにおける、金属銀ナノ粒子の合成及び挿入>
まず、カオリナイト型クレイをジメチルスルホキシドによって前処理し、層の間隔を増大させた。このために、60gのクレイを300mlのジメチルスルホキシド中に分散させ、65℃において24時間、磁力によって攪拌した。次に、クレイを吸引濾過し、メタノールで洗浄し、対流オーブン内で80℃において6時間乾燥させた。
【0081】
ジメチルスルホキシドで前処理したクレイを乾燥させると、100gの溶媒当たり1gのクレイを水の中に分散させ、0.05gのAgNO3及び0.33gのヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムを添加した。この分散液を、強力な磁力によって一定に攪拌し続け、30Wかつ波長235nmの強力な紫外線放射を当てた。紫外線放射に曝した時間は24時間であった。その後、固形体を吸引濾過して、対流オーブン中で70℃において1時間乾燥させた。結果として生じたクレイについて、X線回折(図3を参照)と透過型電子顕微鏡(図4を参照)とによって特徴づけを行なった。図3の回折図では、ジメチルスルホキシドで前処理され、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムで変性されていないカオリナイトの基本ピーク信号は消失している(2θ=8.06)。これは、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム及び銀粒子を同時に挿入した後、クレイ層は、近接した状態を維持することから、立体的に妨げられることを示している。TEM写真から、本例において、銀ナノ粒子は3nmと24nmとの間(平均寸法は10nmである)であり、また、これらのナノ粒子は、クレイの表面、辺部、及び、おそらくクレイの層間空間に位置していることが分かった。別の調査では、5%硝酸銀を有するクレイの、サルモネラ菌種に対する抗菌性能を判定した。食物由来の病原微生物であるサルモネラ菌種CECT 554を用いた。これは、スペイン微生物株保護機関(バレンシア、スペイン)から入手したものである。調査環境は、対数増殖期の中程であって、微生物の初期濃度が約10CFU/mLである細菌を使用するように設定した。実験部分は、1999年に国立臨床検査標準協議会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)によって承認され、抗菌物質の殺菌作用を測定するために確立された、マクロ希釈法の適用により行なった。本方法に従って、最終的に、硝酸銀の濃度が5%であり、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムの濃度が33%である100mgのクレイを、10mLの培養液ミューラーヒントンブロス(MHB)を含有する滅菌チューブの中に置いた。5時間後、このチューブに、上述の条件下の0.1mLのサルモネラ菌種の培養液を植菌した。これと並行して、銀を含まない試料を含有する2つのチューブ(一方は、変性されていないが、DMSOで前処理された同じ型のクレイを含み、他方は、DMSOで前処理されて33%ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムで変性された、同じ型のクレイを含む)、及び試料を含まない別のチューブ(コントロールとして機能する)に植菌した。試料を植菌した後、全てのチューブを37℃で24時間培養した。次に、0.1mLの各試料を、トリプトソイ寒天培地(TSA)プレート上に播種した。37℃において24時間培養した後に、プレート上の生存細胞を計数した。37℃において24時間培養した後の生存細胞数は、試料を有さないコントロール、及びジメチルスルホキシドで前処理されて変性されていないクレイコントロールを除いて、DMSOで前処理されてヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムで変性されたコントロールクレイ、及びDMSOで前処理されてヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムと硝酸銀とで変性されたクレイの試料の両方において、著しく減少した(>99.9%)(表3を参照)。これらの結果は、カオリナイト中に挿入されたヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム及び銀ナノ粒子が、どちらも強い抗菌作用を有していることを示している。
【0082】
【表3】

【0083】
<実施例3:還元剤としてエタノールを用いた、変性されていないモンモリロナイト型クレイにおける、金属銀のナノ粒子の合成及び挿入>
まず、室温において、100gの溶媒当たり1gのクレイをエタノール中に分散させ、この分散液に0.1gのAgNOを添加した。分散液を70℃で6時間還流させた後、分散液を静かに移し、余分な溶媒を除去し、クレイを対流オーブンにおいて70℃で1時間乾燥させた。得られたクレイについて、X線回折(図5を参照)によって特徴づけを行なった。図5の回折図は、基本ピーク信号(6.38;2θ)が、銀ナノ粒子を該クレイの中に混入した後でも変位しなかったことを示している。
【0084】
別の調査では、5%の硝酸銀を有するクレイの、サルモネラ菌種に対する抗菌性能を測定した。食品由来の病原微生物であるサルモネラ菌種CECT 554を用いた。これは、スペイン微生物株保護機関(バレンシア、スペイン)から入手した。調査環境は、対数増殖期の中程であって、微生物の初期濃度が約10CFU/mLである細菌を使用するように設定した。実験部分は、1999年に国立臨床検査標準協議会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)によって承認され、抗菌物質の殺菌作用を測定するために確立されたマクロ希釈法の適用により行なった。本方法に従って、最終的な銀の濃度が5%である100mgのクレイを、10mLの培養液ミューラーヒントンブロス(MHB)を含有する滅菌チューブの中に置いた。5時間後、このチューブに、上述の条件下の0.1mLのサルモネラ菌種の培養液を植菌した。これと並行して、コンロールのために、銀を含まない試料を含有する1つのチューブと、試料を含まない別のチューブとを置いた。これらの試料を植菌した後、全てのチューブを、37℃で24時間培養した。次に、0.1mLの各試料を、トリプトソイ寒天培地(TSA)プレート上に播種した。37℃において24時間培養した後に、プレート上の生存細胞を計数した。37℃において24時間培養した後の生存細胞数は、両コントロールを除いて、著しく減少した(>99.9%)(表4を参照)。
【0085】
【表4】

【0086】
<実施例4:還元剤として紫外線放射を用いた、ジメチルスルホキシドで前処理されたカオリナイト型クレイにおける、金属銀のナノ粒子の合成及び挿入>
まず、カオリナイト型クレイをジメチルスルホキシドで前処理して、層の間隔を増大させた。このために、60gのクレイを300mlのジメチルスルホキシド中に分散させ、65℃において24時間、電磁攪拌した。次に、このクレイを吸引濾過し、メタノールで洗浄し、対流オーブン内で80℃において6時間乾燥させた。
【0087】
ジメチルスルホキシドで前処理したクレイを乾燥させると、100gの溶媒当たり1gのクレイを室温の水の中に分散させ、0.05gのAgNOを添加した。この分散液を強力な磁力によって一定で攪拌し続け、30Wかつ波長235nmの強力な紫外線放射を当てた。紫外線放射に曝した時間は24時間であった。その後、固形体を吸引濾過して、対流オーブン中で70℃において1時間乾燥させた。図6のTEM写真は、銀粒子の平均粒径が15nmであることを示すものであり、これらは、クレイ積層の表面及び辺部において確認される。別の調査では、DMSOで前処理され、5%硝酸銀で変性されたクレイの、サルモネラ菌種に対する抗菌性能を測定した。食物由来の病原微生物であるサルモネラ菌種CECT 554を用いた。これは、スペイン微生物株保護機関(バレンシア、スペイン)から入手したものである。調査環境は、対数増殖期の中程であって、微生物の初期濃度が約10CFU/mLである細菌を使用するように設定した。実験部分は、1999年に国立臨床検査標準協議会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)によって承認され、抗菌物質の殺菌作用を測定するために確立された、マクロ希釈法の適用により行なった。本方法に従って、DMSOで前処理された、最終的な銀の濃度が5%である100mgのクレイを、10mLの培養液ミューラーヒントンブロス(MHB)を含有する滅菌チューブの中に置いた。5時間後、このチューブに、上述の条件下の0.1mLのサルモネラ菌種の培養液を植菌した。これと並行して、ジメチルスルホキシドで前処理されているが、銀を有さない同じ種類のクレイの試料を含有する1つのチューブと、試料を有さない別の1つのチューブとを、コントロールのために植菌した。試料を植菌した後に、全てのチューブを37℃において24時間培養した。次に、0.1mLの各試料を、トリプトソイ寒天培地(TSA)プレート上に播種した。37℃において24時間培養した後に、プレート上の生存細胞を計数した。2つのコントロール以外において、生存細胞の数は、著しく減少した(>99.9%)(表5を参照)。
【0088】
【表5】

【0089】
<実施例5:ジメチルスルホキシドで前処理され、銀ナノ粒子が挿入された10%カオリナイト型クレイを有するポリ乳酸のフィルムの調製>
まず、クロロホルムにおいて、紫外線放射を用いた還元法によって銀ナノ粒子を挿入させたジメチルスルホキシドによって前処理された、10重量%(ポリマー乾燥重量)のクレイを含む分散液を調製した。次に、クレイをクロロホルムに含有させた分散液に、5重量%のポリマー(ポリ乳酸)を添加した。キャスティングプロセスを用いて溶媒を室温において蒸発させることによって、ポリ乳酸/銀ナノクレイのナノ複合体のフィルムを得た。これらのナノ複合体を、透過型電子顕微鏡によって形態を調査すると共に(TEM、図7を参照)、それらの水蒸気バリア特性及び抗菌特性を調査することによって特徴づけを行なった。さらに、微生物特性を有する10重量%のクレイを有するこのポリ乳酸フィルムの水に対する透過性を、ASTM E96規格を用いて、25℃及び75%の相対湿度において調査した(図8を参照)。抗菌性クレイをポリマー基質に付加することによって、透過性が26.8%減少した。このため、複合材料は、純粋なポリ乳酸よりも、良好な水バリア特性を示している。
【0090】
PLAフィルムの抗菌力を評価するために、クレイを含まないコントロールと、抗菌性クレイを含む試料との両方の場合の、600mgのフィルムの重量を計測し、10mLの滅菌培地に置いた。これらにサルモネラ菌種を植え付ける前に、4℃において4週間保存した。当該フィルムが10%のクレイを含み、このクレイが5%の硝酸銀を含むことを考慮すると、用いられる硝酸銀の最終的な濃度は300ppmであり、サルモネラの最小の殺菌濃度(この場合、母集団をゼロに減少させる)は約100ppmであった。フィルムは、懸濁液において用いられる場合の殺菌濃度よりも3倍高い濃度の銀を含む。4週間保存して連続的に放出させた後、これらのコントロールでは、生存細胞の数が3桁増加したが、銀が挿入された10%のクレイを含むPLAフィルムの試料では、生存細胞の数は3桁低減したことを示している(表6を参照)。
【0091】
【表6】

【0092】
<実施例6:ジメチルスルホキシドで前処理され、銀ナノ粒子が挿入された10%のカオリナイト型クレイを含むキトサンフィルムの調製>
まず、70℃で、1%酢酸に0.9%キトサンを含有させた溶液を用意した。この溶液を濾過して、ジメチルスルホキシドで前処理され、銀ナノ粒子が挿入された10重量%(ポリマー乾燥重量)のカオリナイト型クレイを水に分散させた分散液を、強く攪拌しながら添加した。これをペトリ皿の中に注ぎ、残った溶媒を、室温において蒸発させた。キトサン/銀ナノクレイのナノ複合体のフィルムを、キャスティングプロセスと呼ばれるプロセスによって得た。キトサンフィルムの抗菌力を評価するために、異なる量のフィルムの重量を量り、サルモネラ菌種を植菌する前に、4℃において12時間保存した。用いたフィルムの重量は、25mg、50mg及び75mgであり、これらを、10mLの滅菌培地チューブの中に置いた。キトサンフィルムが10%のクレイを含み、該クレイが、5%の銀を含有するため、用いられる硝酸銀の最終濃度は次の通りである。25mgのキトサンフィルムは0.125mgの硝酸銀を含み、50mgフィルムは0.25mgの銀を含み、75mgのフィルムは0.375mgの銀を含む。表7の結果は、コントロールのキトサンフィルム(クレイを有さない)が、多少の抗菌作用を有していたことを示している。すなわち、フィルムの重量が増えるにつれて、生存細菌の数が減少しているためである。75mgのフィルムは、上述の条件下の媒体において細菌増殖を完全に阻害するために十分である。10%のクレイを有する試料は、増殖を阻害する良好な能力を有しており、25mgのフィルムでは、生存細胞の数が3桁低減され、50mg以上のフィルムでは、増殖を完全に阻害することを実現できた。
【0093】
【表7】

【0094】
<実施例7:ジメチルスルホキシドで前処理され、銀ナノ粒子が挿入された10%カオリナイト型クレイを含む、PVOHフィルム及びEVOHフィルムの抗菌力の評価>
PVOH及びEVOHの5%溶液に、ジメチルスルホキシドで前処理され、銀ナノ粒子が挿入された10%(ポリマーの重量)のカオリナイト型クレイを、均一に混入した。次に、溶媒を蒸発させること(キャスティングプロセス)によって各フィルムを得て、これらを乾燥機内で、0%の相対湿度及び室温において保存した。
【0095】
抗菌力の評価のために、100mgの各フィルムを、10mLの滅菌培養液の中に置き、サルモネラ菌種を植菌する前に、4℃で72時間保存した。これと並行して、試料を有さないコントロールチューブ、ならびに、クレイを有さないPVOHのコントロールフィルム及びEVOHのコントロールフィルムを用意した。さらに、直ちに処理される、同じ条件下の一組の試料及びコントロールを用意して、抗菌剤の基質からの放出を長時間にわたって調査した。表8の結果は、クレイを有さないコントロールフィルムでは、生存細胞の数が、保存時間とは無関係に、最大2桁まで倍増し得ることを示している。硝酸銀が挿入された10%のクレイを有するEVOHフィルムの試料では、生存細胞の数が、植え付けの時間において100倍低減し、72時間の培養の後には、100倍以上低減した。10%の銀クレイを有するPVOHフィルムの試料では、生存細胞の数は、試料の植え付けのときに4桁低減し、72時間の培養の後には完全に阻害された。これらの結果は、EVOH基質及びPVOH基質の中に混入され、銀が挿入されたクレイの殺菌性を示しており、抗菌作用は、後者のポリマーにおいてより顕著であったことを示している。
【0096】
【表8】

【0097】
<実施例8:10重量%のトランス−リスベラトロール99%によるモンモリロナイト型クレイの変性>
まず、2gのトランス−リスベラトロールを、40℃における70%v/vエタノール溶液中に、電磁攪拌器を用いて溶融した。次に、このトランス−リスベラトロールの溶液に、20gのクレイを加えた。この混合物を還流させながら、40℃で24時間、強力に攪拌し続けた。そして、得られたクレイを吸引濾過して、対流オーブン内で60℃において6時間乾燥させた。変性されたクレイを乾燥させ、X線回折(図9参照)によって特徴づけを行なった。変性されていないクレイの基本ピークである6.38(2θ)が5.9(2θ)に変位したことを観察した。ブラッグの法則によれば、これは、層の間隔が0.09nm増大したことに相当する。その後、10%のトランス−リスベラトロールによって変性させたクレイの抗酸化作用を、リノール酸の上部のヘッドスペースにおいて判定した。このために、1.6ミリモルのリノール酸を容量300mLの太首ガラスフラスコの底部に置いて、この底部の周囲にリノール酸を散布した。3.2ミリモルのトランス−リスベラトロールに相当する量の変性されたクレイの重量を量り、該クレイを、リノール酸に接触しないように広口バイアル内に入れ、リノール酸を含有するフラスコの底部に置いた。その後、フラスコをプラスチックの栓で密封して封止した。同時に、コントロールとして機能する別の2つのフラスコを用意した。これらのフラスコの、一方は脂肪酸だけを含み、他方は脂肪酸に加えて変性されていないクレイのバイアルを含むものである。これら3つのフラスコを、24℃、75%RH、及び直接人工光の制御された条件下で、48時間保存した。この後、フラスコを開栓して、10mLの10重量%トリクロロ酢酸溶液及び20mMの2−チオバルビツール酸溶液7mLを添加した。フラスコを攪拌し、97℃で30分間培養した。次に、試料を遠心分離して、水相から一定量を取り出して10倍に希釈した。532nmにおける吸収度を測定し、リノール酸の酸化産物であるマロンアルデヒドの濃度を算定した。クレイを有さないコントロールに関してリノール酸の酸化の阻害率を計算したところ、68.61%の阻害率が得られた(図10)。
【0098】
<実施例9:モンモリロナイト型クレイの、10重量%のα−トコフェロールによる変性>
まず、2gのα−トコフェロールを、40℃における70%v/vエタノールの溶液中に、電磁攪拌器を用いて溶解した。次に、このα−トコフェロールの溶液に、20gのクレイを加えた。この混合物を還流させながら、40℃で24時間、強力に攪拌し続けた。そして、得られたクレイを吸引濾過して、対流オーブン内で60℃において6時間乾燥させた。変性させたクレイを乾燥させ、X線回折(図3参照)によって特徴づけを行なった。基本ピークの位置が6.38(2θ)から5.99(2θ)に変位したことにより、α−トコフェロールが、クレイ層の間に導入されたことが分かった。この変位は、0.09nmの開口に相当するものである。次に、10%のα−トコフェロールで変性させたクレイの抗酸化作用を、リノール酸の上部のヘッドスペースにおいて判定した。このために、1.6ミリモルのリノール酸を容量300mLの太首ガラスフラスコの底部に置き、この底部の周囲にリノール酸を散布した。3.2ミリモルのα−トコフェロールに相当する量の変性したクレイの重量を量り、該クレイをリノール酸に接触しないように広口バイアル内に入れて、リノール酸を含有するフラスコの底部に置いた。その後、フラスコをプラスチックの栓で密封して封止した。同時に、コントロールとして機能する別の2つのフラスコ、すなわち、一方は脂肪酸だけを含むバイアルであり、他方は脂肪酸に加えて変性されていないクレイのバイアルを含むものを用意した。これら3つのフラスコを、24℃、75%RH、及び直接人工光の制御された条件下で、48時間保存した。そして、フラスコを開栓して、10mLの10重量%トリクロロ酢酸溶液及び20mMの2−チオバルビツール酸溶液7mLを添加した。フラスコを攪拌し、97℃で30分間培養した。その後、試料を遠心分離して、水相から一定分量を取り出して10倍に希釈した。532nmにおける吸収度を測定し、リノール酸の酸化産物であるマロンアルデヒドの濃度を算定した。クレイを有さないコントロールに関してリノール酸の酸化の阻害率を計算したところ、41.72%の阻害率が得られた(図10)。
【0099】
<実施例10:モンモリロナイト型クレイの、20重量%のヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムと5重量%のオイゲノールとによる同時変性>
まず、4gのヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムを、40℃における20%v/vのエタノールの溶液中に、電磁攪拌器を用いて溶融した。次に、1gのオイゲノールと、20gのクレイとを加えた。高速ホモジナイザーを10分間用いて、溶液へのクレイの分散を促進させた。この混合物を還流させながら、40℃で24時間、強力に攪拌し続けた。そして、得られたクレイを吸引濾過して、対流オーブン内で60℃において6時間乾燥させた。変性されたクレイを乾燥させ、X線回折(図12を参照)によって特徴づけを行なった。基本ピークが7.07から5.66(2θ)に変位したことは、ブラッグの法則を用いて計算すると、層間間隔が0.31nmオーダー増大したことを示している。この間隔の変化は、変性剤がクレイの間に入り込んだことを証明するものである。
【0100】
<実施例11:沈殿法による、様々な負荷のトランス−リスベラトロールを含むEVOH32フィルム(32%エチレン)の調製>
EVOHを32%エチレンと共に、170mLの50%イソプロパノール溶液中に、80℃において還流させながら溶解した。別の容器には、全乾燥重量で1重量%当量のt−リスベラトロール(ポリマー+トランスリスベラトロール)を、80℃の熱い50%イソプロパノール溶液80mLにおいて溶解した。ポリマーを溶解すると、この熱い抗酸化剤溶液をEVOH溶液中に加え、1時間、電磁攪拌し続け、還流しながら加熱した。この熱い溶液を冷水の流れの中に滴下することによって、EVOH−抗酸化複合材料を沈殿させた。沈殿した複合材料から余分な水を除去して、沈殿した複合材料を小さな断片に切断し、対流オーブン内で60℃において14時間乾燥させた。このプロセスにより、表9に示される比率により、1%、5%及び10%のトランス−リスベラトロールを含むEVOH複合材料を調製することができた。その後、プレスを用いてフィルムを調製した。これらの試料を、水圧プレスにおいて、220℃及び2MPaの圧力により4分間圧縮成型することによって、約100ミクロンの厚さのシートに変形させた。流水によって、プレス内部において試料のシートをゆっくりと冷却させた。次に、EVOHフィルムと接触することによる抗酸化作用を、DPPH(2,2−ジフェニル1−ピクリルヒドラジル)ラジカルの変色法を用いて判定した。このために、各フィルムを計量して30mgずつ2つに分けて、1.5mLのプラスチックチューブにそれぞれ配置した。各チューブに、メタノールに0.05g/LのDPPHを含有させた原液1mLを添加した。517nmにおけるこの原液の吸収度は1.4であった。これと並行して、フィルムを有さない2つのコントロール試料(1mLのDPPHを含有する)を用意した。試料とコントロールとを、暗所において、24℃で24時間培養した。その後、517nmにおける吸収度を測定した。結果を、DPPHの阻害率%:DPPHの阻害率%=(コントロールの吸収度−試料の吸収度)/コントロールの吸収度、で表した。図13は、トランス−リスベラトロールを含有するフィルムが、平均74%の抗酸化作用を有していたことを示している。
【0101】
【表9】

【0102】
<実施例12:液状での押出しによる、5%カオリナイトと様々な負荷の抗酸化剤とを有するEVOH複合材料の調製>
粒径10μm(d90)のEVOH32及びカオリナイトを用いた。伝導率150μS/cmの水を用いた。ポリマーの添加方法は、カオリナイトを水中に懸濁させた液を、溶解させたポリマーに加えること(液体における押出し)を含む。得られた複合材料中のナノクレイの含有量を、熱重量分析における損失量(およそ5重量%)によって計算した。このプロセスにより、1%、5%及び10%のトランス−リスベラトロールを含むEVOH複合材料の調製ができた。次に、プレスを用いてフィルムを調製した。これらの試料を、220℃及び2MPaの圧力にて4分間圧縮成型することによって、約100ミクロンの厚さのシートに変形させた。流水によって、プレスの内部において試料のシートをゆっくりと冷却させた。次に、EVOHフィルムと接触することによる抗酸化作用を、DPPH(2,2−ジフェニル1−ピクリルヒドラジル)ラジカルの変色法を用いて判定した。このために、各フィルムを計量して30mgずつ2つに分けて、1.5mLのプラスチックチューブにそれぞれ配置した。各チューブに、メタノールに0.05g/LのDPPHを含有させた原液1mLを添加した。517nmにおけるこの原液の吸収度は、1.4であった。これと並行して、1mLのDPPHを含有する、フィルムを有さない2つのコントロール試料を用意した。試料とコントロールとを、暗所において24℃で24時間培養した。その後、517nmにおける吸収度を測定した。結果を、DPPHの阻害率%:DPPHの阻害率%=(コントロールの吸収度−試料の吸収度)/コントロールの吸収度、で表した。図14は、DPPHの最小阻害率85%が得られたこと(平均83%)により、5%カオリナイト、及び1%と10%との間のトランス−リスベラトロールを含有するEVOHフィルムが、著しい抗酸化作用を有していたことを示す。抗酸化性と関連するこの阻害力は、試験された3つの濃度において維持された。5%カオリナイトを有するEVOHフィルムは、クレイを含まないフィルムと比較してさらに約10%高い阻害性を有している(図14)。
【0103】
<実施例13:1%のトランスリスベラトロール又は1%のα−トコフェロールを含むEVOH複合材料の調製>
ポリマーに抗酸化剤を直接添加するための溶解混合法を用いて、EVOH32の複合材料を調製した。プラストグラフの3つの区域を、5rpmの剪断速度を維持したまま220℃まで予熱した。ポリマーと抗酸化剤とを交互にして、合計16gの材料を混合室の中に導入した。次に、剪断速度を100rpmまで増大させ、3分間連続して混合した。この後、熱い材料を回収した。次に、材料が冷却されると、プレスを用いてフィルムを調製した。これらの試料を、水圧プレスにおいて、220℃及び2MPaの圧力にて4分間圧縮成型することによって、約100ミクロンの厚さのシートに変形させた。流水によって、プレスの内部においてこれら試料のシートをゆっくりと冷却させた。次に、EVOHと、1%のトランスリスベラトロール又は1%のα−トコフェロールとの複合材料のフィルムの抗酸化作用を、リノール酸の上部のヘッドスペースにおいて測定した。このために、1.6ミリモルのリノール酸を、容量300mLの太首ガラスフラスコの底部に置き、この底部の周囲にリノール酸を散布した。重量約1.2gのフィルムを、フラスコのヘッドスペースの中にぶら下げた。その後、フラスコをプラスチックの栓で密封して封止した。同時に、コントロールとして機能する別の2つのフラスコを用意した。これらのフラスコの、一方は脂肪酸だけを含み、他方は脂肪酸に加えて純粋なEVOHを含むものである。各試料は2つずつ用意した。フラスコを、24℃、75%RH及び人工直接光という制御された条件下で10日間保存した。そして、これらのフラスコを開栓し、10mLの10重量%トリクロロ酢酸溶液及び20mMの2−チオバルビツール酸溶液7mLを添加した。これらのフラスコを攪拌して混合を促し、97℃にて30分間培養した。その後、試料を遠心分離し、水相から一定量を取り出して10倍に希釈した。532nmにおける吸収度を測定し、リノール酸の酸化産物であるマロンアルデヒドの濃度を算定した。リノール酸の酸化阻害率を計算し、フィルムを有さないコントロールと比較した。図15は、1%リスベラトロールを含有するEVOHのフィルムに曝した場合に、フィルムを有さない対象物と比較して、記載される条件に10日間曝した後のリノール酸の酸化が10.98%阻害されたことを示している。1%α−トコフェロールを含有するフィルムは、リノール酸の酸化を4.71%阻害した。これは、フリーラジカルが、フィルム内に含まれるリスベラトロールによって、ヘッドスペースから捕捉されたことを示すものである。このことは、添加されたフィルム、主に、トランス−リスベラトロールを含有するフィルムが、活性特性を有していることを示している。何も添加されていない、EVOHフィルムだけを含有する試料は、フィルムを有さない対象物と比較して25%劣化した。
【0104】
<実施例14:沈殿法による、トランス−リスベラトロールとカオリナイトとを含むEVOH32複合材料、又は、トランス−リスベラトロールだけを含みカオリナイトを含まないEVOH32複合材料の、長期にわたる抗酸化性の試験>
EVOHを32%エチレンと共に、170mLの50%イソプロパノール溶液中に、80℃において還流させながら溶解した。別の容器において、全乾燥重量で1重量%当量のトランス−リスベラトロール(ポリマー+トランス−リスベラトロール)を、80℃における80mLの熱い50%イソプロパノール溶液において溶解した。ポリマーが溶解すると、この熱い抗酸化剤溶液をEVOH溶液中に加え、1時間、電磁攪拌し続けて還流しながら加熱した。この熱い溶液を冷水の流れの中に滴下することによって、EVOH−トランス−リスベラトロール複合材料を沈殿させた。沈殿した複合材料から余分な水を除去して、沈殿した複合材料を小さな断片に切断し、対流オーブン内で60℃において14時間乾燥させた。5%カオリナイトと1%トランス−リスベラトロールとを含むEVOH複合材料の調製のために、32%エチレンと共にEVOHを80℃において還流させながら、170mLの50%イソプロパノール溶液に溶解した。別の容器には、全乾燥重量で1重量%当量のt−リスベラトロール(ポリマー+トランス−リスベラトロール)を、50%v/vイソプロパノールにカオリナイトを含有させた熱い分散液の中に溶解した。ポリマーが溶融すると、この抗酸化剤を有する熱い分散液をEVOH溶液に加え、1時間、電磁攪拌し続けて還流しながら加熱した。上述の方法と類似の沈殿法を行なった。次に、EVOHナノ複合体のフィルムを、プレスを用いて調製した。これらの試料を、水圧プレスにおいて、220℃及び2MPaの圧力で4分間圧縮成型することによって、約100ミクロンの厚さのシートに変形させた。流水によって、プレス内部においてこれら試料のシートをゆっくりと冷却させた。次に、EVOHフィルムと接触することによる抗酸化作用を、DPPH(2,2−ジフェニル1−ピクリルヒドラジル)ラジカルの変色法を用いて判定した。このために、各フィルムを計量して30mgずつ2つに分けて、1.5mLのプラスチックチューブにそれぞれ配置した。各チューブに、メタノールに0.05g/LのDPPHを含有させた原液1mLを添加した。517nmにおけるこの原液の吸収度は1.4であった。これと並行して、フィルムを有さない2つのコントロール試料(1mLのDPPHを含有する)を用意した。これらの試料とコントロールとを、暗所において24℃で24時間培養させた。そして、517nmにおける吸収度を測定した。結果を、DPPHの阻害率%:DPPHの阻害率%=(コントロールの吸収度−試料の吸収度)/コントロールの吸収度、で表した。これらのフィルムを24℃及び40%のRHにおいて人工直接光に曝して、21日間にわたる阻害率%を求めた。図16は、DPPHラジカルの阻害率を、0時間目と、試験条件に曝した21日目とにおいて示すものである。表10は、試験条件に曝した21日後に、フィルムの抗酸化性の喪失が7.7%(最大値)であったことを示している。カオリナイトを含有するナノ複合体のフィルムは、カオリナイトを含有しないフィルムと比較して、抗酸化性の低減が少ないことを示していた。これは、クレイがポリマー基質内に混入された抗酸化剤を安定させていることを示しており、ナノ複合体において、クレイを使用することのさらなる利点を意味している。
【0105】
【表10】

【0106】
<実施例15:パウダー状での添加を介した押出しによる、0.1%〜1%のリスベラトロールを含むEVOH複合材料の調製>
EVOH32(32モルのエチレンを有する)を基本ポリマーとして用いた。ポリマーの添加方法は、事前に乾燥させたパウダー状の抗酸化剤(97%リスベラトロール)を、溶解したポリマーに添加する方法であった。このプロセス条件は表11に示されている。同様に、EVOH32を押出し処理し、1%ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加して、市販の抗酸化剤を有するコントロール材料を調製した。次に、ホットプレートプレスを用いてフィルムを調製した。試料を、水圧プレスにおいて、220℃及び2MPaの圧力にて4分間圧縮成型することによって、約100ミクロンの厚さのシートに変形させた。これら試料のシートを、水によって室温まで冷却した。次に、得られたEVOHフィルムと接触することによる抗酸化作用を、DPPH(2,2−ジフェニル1−ピクリルヒドラジル)ラジカルの変色法を用いて判定した。このために、各フィルムを計量して30mgずつ3つに分けて、1.5mLのプラスチックチューブにそれぞれ配置した。各チューブに、メタノールに0.05g/LのDPPHを含有させた原液である1mLを添加した。517nmにおけるこの原液の吸収度はおよそ1.2であった。これと並行して、フィルムを有さない3つのコントロール試料(1mLのDPPHを含有する)を用意した。これらの試料とコントロールとを、暗所において24℃で24時間培養した。その後、517nmにおける吸収度を測定した。結果を、DPPHの阻害率%:DPPHの阻害率%=(コントロールの吸収度−試料の吸収度)/コントロールの吸収度、で表した。表12は、それぞれの場合に得られた吸収度と、平均値からの偏差とを示す。図17は、パウダー状の0.1%〜1%のリスベラトロールが添加されたEVOHのフィルムが、18.8%と85.4%との間の抗酸化性を有していること(DPPH変色アッセイ)、及び、1%のリスベラトロールが添加されたEVOHが、1%のBHT添加剤を有するフィルムよりも、高い抗酸化性を有していること、を示している。
【0107】
【表11】

【0108】
【表12】

【0109】
<実施例16:液体状での添加を介した押出し法による、1%t−リスベラトロールを有するLDPE複合材料の調製>
低密度ポリエチレン(LDPE)及び97%リスベラトロールを用いた。ポリマーの添加方法は、イソプロパノールにt−リスベラトロールを含有させた過飽和溶液を、溶解されたポリマー集団に添加することを含む。押出し条件は表13に示されている。このプロセスにより、1%t−リスベラトロールを含むLDPE複合材料を調製した。次に、ホットプレートプレスを用いてフィルムを調製した。これらの試料を、水圧プレスにおいて、220℃及び2MPaの圧力にて4分間圧縮成型することによって、約100ミクロンの厚さのシートに変形させた。水を流すことによって、これら試料のシートを室温までゆっくりと冷却した。次に、得られたLDPEフィルムと接触することによる抗酸化作用を、DPPH(2,2−ジフェニル1−ピクリルヒドラジル)ラジカルの変色法を用いて判定した。このために、各フィルムを計量して30mgずつ3つに分けて、1.5mLのプラスチックチューブにそれぞれ配置した。各チューブに、メタノールに0.05g/LのDPPHを含有させた原液1mLを添加した。517nmにおけるこの原液の吸収度は、およそ1.2であった。これと並行して、フィルムを有さない3つのコントロール試料(1mLのDPPHを含有する)を用意した。これらの試料とコントロールとを、暗所において24℃で24時間培養させた。その後、517nmにおける吸収度を測定した。結果を、DPPHの阻害率%:DPPHの阻害率%=(コントロールの吸収度−試料の吸収度)/コントロールの吸収度、で表した。表14は、それぞれの場合に得られた吸収度と、平均値からの偏差とを示す。
【0110】
図18は、液体にて1%t−リスベラトロールが添加されたLDPEフィルムが、88%の抗酸化性(DPPH変色アッセイ)を有しており、この抗酸化性は、何も添加されていないLDPEフィルムと比べて明らかに良好であることを示している。
【0111】
【表13】

【0112】
【表14】

【0113】
<実施例17:パウダー添加を介した押出しによる、40%ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムで変性された負荷5%のモンモリロナイトと、5%アンモニウム−鉄(II)硫酸塩とを有するLDPE複合材料の調製>
まず、窒素のバブリングを行ないながら、アンモニウム及び鉄(II)硫酸塩をエタノールに溶解した。続いて、窒素のバブリングを継続しながら、40%ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムで変性させたクレイを、鉄(II)溶液中において電磁攪拌することによって分散させた。使用した鉄(II)塩の比率は、変性されていないクレイ(溶媒100mL当たり20gのクレイを用いた)の重量の5%であった。この金属溶液中にクレイが分散された液を、70℃で6時間、不活性雰囲気において還流させた。次に、分散液を静かに注ぎ、余分な溶媒を除去し、真空炉においてクレイを70℃で1時間乾燥させた。このクレイを真空の暗所において保存した。
【0114】
フィルムの調製のために、低密度ポリエチレン(LDPE)を基本ポリマーとして用いた。ポリマーの添加方法は、40%ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム(C16)で変性させたモンモリロナイトクレイと、事前に乾燥させた5%のアンモニウム−鉄(II)硫酸塩とを、溶解したポリマーに添加することを含む。このプロセス条件は、表15に示されている。また、添加剤を有していないLDPEを基準として用いるために、同じ条件下で押出し処理した。
【0115】
次に、プレスを用いてフィルムを調製した。これらの試料を、水圧プレスにおいて、200℃及び2MPaの圧力にて4分間圧縮成型することによって、約100ミクロンの厚さのシートに変形させた。流水によって、プレスの内部においてこれら試料のシートをゆっくりと冷却させた。
【0116】
次に、LDPEフィルムの酸素隔離作用を判定した。このために、一片が4cm×2cmのフィルムを、大気条件の空気を含む20mlのバイアルの中に設置した。この20mlのバイアルは、ヘッドスペースにおいて空気の活性を生み出す水を有するバイアルを含む。C16とアンモニウム−鉄(II)硫酸塩とで変性された5%クレイのLDPEフィルムと、添加剤を有さないLDPEフィルムとを、3つずつ試験した。また、フィルムを有さない3つのコントロールを用いた。オキシメータを用いて酸素含有量を測定した。当初、バイアル中の酸素含有量は20.9%であった(表16)。コントロールと、添加剤を有さないLDPEフィルムを含むバイアルとの酸素の比率は、2日後も、最初の初期値で維持された。C16塩と鉄ナノ粒子とで変性されたクレイを含むバイアル中の酸素含有量は、20.1%まで減少した(3.8%の酸素含有量の減少)。この結果は、鉄ナノ粒子を含有するクレイは、ポリオレフィン基質内に混入されると、湿度の作用により、活性になることを示している。
【0117】
【表15】

【0118】
【表16】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】変性させたモンモリロナイト型クレイの試料と、変性されていない同型のクレイとのX線回折(WAXS)を示す。
【図2】透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真であり、本発明によって得られるナノ負荷に見られる主な形態を示す。
【図3】変性させた(DMSOで前処理された)カオリナイト型クレイの試料と、変性されていない(DMSOで前処理された)同型のクレイの試料とのX線回折(WAXS)を示す。
【図4】透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真であり、本発明に従って得られるナノ負荷において観察される、主要且つ典型的な形態を示す。
【図5】硝酸銀を挿入したモンモリロナイト型クレイ層の集合体を示す透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真である。
【図6】透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真であり、硝酸銀を挿入した(DMSOで前処理された)カオリナイト型クレイ層の集合体を示す。
【図7】透過型電子顕微鏡(TEM)によって得られた写真であり、実施例5に記載の方法によって、硝酸銀を挿入した10%カオリナイト型クレイ(DMSOで前処理された)を含むポリ乳酸のナノ複合体をキャスティングすることによって得られたフィルムを示す。
【図8】硝酸銀が挿入された10%カオリナイト型クレイ(DMSOで前処理された)を含むポリ乳酸のナノ複合体のフィルムにおいて得られた、水蒸気に対する透過性の改善度を、純粋なポリ乳酸のフィルムと比較したところを示す図である。
【図9】実施例8に記載の方法によって、10重量%(w/w)のトランスリスベラトロールで変性させたモンモリロナイト型クレイの試料から得られる、X線回折スペクトル(WAXS)を示す図である。
【図10】実施例8及び9に記載の方法によって、モンモリロナイト型クレイと10%抗酸化剤(トランスリスベラトロール又はα−トコフェロール)との作用が、ヘッドスペースにおけるリノール酸の酸化を阻害することを示す図である。
【図11】実施例9に記載の方法によって、10重量%(w/w)のα−トコフェロールで変性されたモンモリロナイト型クレイの試料から得られる、X線回折スペクトル(WAXS)を示す図である。
【図12】実施例10に記載の方法によって、20重量%(w/w)のヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウムと5%オイゲノールとで同時に変性させたモンモリロナイト型クレイの試料から得られる、X線回折スペクトル(WAXS)を示す図である。
【図13】実施例11に記載のプロセスである沈殿法によって調製された、様々な含有量のトランスリスベラトロールを有するEVOHフィルムにおける、DPPHの阻害率(%)を示す図である。
【図14】実施例12に記載のプロセスによって調製された、異なる含有量のカオリナイトと異なる含有量のリスベラトロールとを有するEVOHフィルムにおける、DPPHの阻害率(%)を示す図である。
【図15】実施例13に記載のプロセスに従った、EVOH+1%抗酸化剤フィルムの作用による、ヘッドスペースにおけるリノール酸の酸化の阻害率(%)を示す図である。
【図16】人工直接光、24℃、及び40%RHに曝された、1%抗酸化剤とカオリナイトとを有するEVOHフィルム、又は、1%抗酸化剤だけを有しカオリナイトを有さないEVOHフィルムに曝した0時間目と21日目とにおける、DPPHラジカルの阻害率を示す図である。
【図17】パウダー状の0.1%〜1%のリスベラトロールが添加されたEVOHのフィルムが、18.8%と85.4%との間の抗酸化性を有していること(DPPH変色アッセイにおいて)、及び、1%のリスベラトロールが添加されたEVOHが、1%のBHT添加剤を有するフィルムよりも高い抗酸化性を有していることを示す図である。
【図18】1%のt−リスベラトロールが液体で添加されたLDPEフィルムが、添加されていないLDPEフィルムよりも明らかに良好な、88%の抗酸化性(DPPH変色アッセイにおいて)を有していることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
a.基質;及び
b.添加剤又はナノ添加剤
を含むことを特徴とする、ナノ複合材料。
【請求項2】
上記基質が、ポリマー基質、プラスチック基質又はセラミック基質であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項3】
上記プラスチック基質は、限定されないが、熱可塑性物質、熱硬化物質、エラストマーならびにバイオマス及び/もしくは生物分解性物質に由来する材料のファミリー、又はこれらの混合物によって構成される群から選択され、プラスチック及びバイオプラスチックの製造時ならびに加工時に典型的に添加される添加剤を含むことを特徴とする、請求項2に記載のナノ複合材料。
【請求項4】
上記プラスチック基質の比率が5%〜99.99%であることを特徴とする、請求項2に記載のナノ複合材料。
【請求項5】
上記セラミック基質が、少なくとも以下の成分:
a.水;
b.クレイ;
c.解膠剤;
d.長石;
e.長石砂;ならびに
f.カオリン、炭酸塩及びジルコニウム
を含むことを特徴とする、請求項2に記載のナノ複合材料。
【請求項6】
上記セラミック基質が光沢のある形態である場合、当該セラミック基質は少なくとも以下の成分:
a.カオリン、カオリナイトクレイ又はモンモリロナイトクレイ;
b.長石;
c.ガラス原料;
d.シリカ;及び
e.珪砂
を含むことを特徴とする、請求項2に記載のナノ複合材料。
【請求項7】
上記セラミック基質の比率が5%〜99.99%であることを特徴とする、請求項2、5又は6に記載のナノ複合材料。
【請求項8】
上記基質が、電磁バリア特性を有する複合材料、耐燃性を有する複合材料、抗菌作用を有する複合材料、活性もしくは生物活性の低分子量物質、天然もしくは合成の抗酸化複合材料、酸素隔離剤、薬剤、酵素、生物が利用可能なカルシウム複合材料、プロバイオティクス、魚油、シンバイオティクス、又はプレバイオティクスから選択される物質を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノ複合材料。
【請求項9】
上記基質に含まれる活性物質が、リスベラトロールであることを特徴とする、請求項8に記載のナノ複合材料。
【請求項10】
上記添加剤又はナノ添加剤が、電磁バリア特性を有する複合材料、耐燃性を有する複合材料、抗菌作用を有する複合材料、活性もしくは生物活性の低分子量物質、天然もしくは合成の抗酸化複合材料、酸素隔離剤、薬剤、酵素、生物が利用可能なカルシウム複合材料、プロバイオティクス、魚油、シンバイオティクス、又はプレバイオティクスから選択される活性物質であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノ複合材料。
【請求項11】
上記活性物質が、リスベラトロールであることを特徴とする、請求項10に記載のナノ複合材料。
【請求項12】
上記添加剤の性質が層状であり、予め変性されているか、もしくは変性されておらず、
電磁バリア特性を有する複合材料、耐燃性を有する複合材料、抗菌作用を有する複合材料、活性もしくは生物活性の低分子量物質、天然もしくは合成の抗酸化複合材料、酸素隔離剤、薬剤、酵素、生物が利用可能なカルシウム複合材料、プロバイオティクス、魚油、シンバイオティクス、又はプレバイオティクスから選択される、少なくとも1つの活性物質を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノ複合材料。
【請求項13】
層状の上記ナノ添加剤が合成のフィロ硅酸塩又は複水酸化物から選択され、層構造によって積層することを特徴とする、請求項12に記載のナノ複合材料。
【請求項14】
上記添加剤の比率が0.01%〜95%であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項15】
上記基質の性質がセラミックである場合、上記添加剤の比率が0.01%〜95%であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項16】
上記セラミック基質が光沢のある性状である場合、上記添加剤の比率が0.01%〜50%であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合材料。
【請求項17】
上記活性剤が抗菌性及び/又は酸素吸収性を有する化合物であり、
上記化合物は、金属の有機塩及び/もしくは無機塩、有機化合物、ならびに/又はこれらの混合物により構成される群から選択されるか、または抗酸化剤であることを特徴とする、請求項12に記載のナノ複合材料。
【請求項18】
上記金属が、銀、銅、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はこれらの組み合わせにより構成される群から選択されることを特徴とする、請求項17に記載のナノ複合材料。
【請求項19】
上記抗酸化剤がリスベラトロールであることを特徴とする、請求項17に記載のナノ複合材料。
【請求項20】
上記有機化合物が、4級アンモニウム塩(相溶化剤であると共に抗菌特性を示すため、好ましくは、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム)、脂肪族系モノカルボン酸(C6−C22)を有するポリエチレングリコールのエステル、また、その硫酸アンモニウム及び硫酸ナトリウム、ペルフルオロオクタン酸及びそのアンモニウム塩、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチル塩化アンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−ヒドロキシプロピル−3−(ドデシルオキシ)メチル塩化アンモニウム、及びキトサンの共重合体、またその誘導体、ならびに/又は、これらの組み合わせにより構成される群から選択されることを特徴とする、請求項17に記載のナノ複合材料。
【請求項21】
上記無機化合物が、水と、硝酸塩、酢酸塩、アミン及び塩化物の群とを含む無機錯体、ならびに単体の硝酸塩、酢酸塩、塩化物及び硫酸塩により構成される群から選択されることを特徴とする、請求項17に記載のナノ複合材料。
【請求項22】
請求項1〜21に記載のナノ複合材料を得るためのプロセスであって、
a.機械的動作によって、層状添加剤の寸法を低減するステップと、
b.上記層状添加剤の寸法を低減するステップにおいて得られた粒子を、乾式または湿式の方法によって、濾過するステップと、
c.代替的に、積層構造が得られるまで、有機材料、ならびに、変性されていない結晶酸化物及び硬質の粒子を除去するステップと、
d.上記積層構造を前駆体によって前処理するステップと、
e.プラスチック基質又はセラミック基質に添加するステップとを含むことを特徴とする、ナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項23】
上記層状の添加剤の寸法を低減するステップでは、粒径を、D90において、30ミクロン以下にすることを特徴とする、請求項22に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項24】
上記濾過するステップでは、粒径を、D90測度において、0.1〜100ミクロン、好ましくは25ミクロン以下、より好ましくは3ミクロン以下にすることを特徴とする、請求項22に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項25】
上記有機材料の除去は、上澄みを収集するデカンテーション技術、又は、酸化物質との化学反応技術によって行なうことを特徴とする、請求項22に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項26】
上記変性されていない結晶酸化物及び硬質の粒子の除去は、溶液中において、遠心分離プロセス、及び/又は重量分析プロセスを、ターボ乾燥機によって行なうことを特徴とする、請求項22に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項27】
上記前駆体は、活性特性及び/もしくは生物活性特性を有しているか、有していない増量剤ならびに/又は相溶化剤であることを特徴とする、請求項22に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項28】
上記積層構造を前駆体によって前処理するステップの後、乾燥ステップを含むことを特徴とする、請求項22に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項29】
上記積層構造を前駆体によって前処理するステップの後、ポリマー変性剤、生体高分子変性剤、活性もしくは生物活性の変性剤を挿入するステップ、又はこれらの混合物を挿入するステップを含み、任意により、続いて洗浄ステップ及び/又は乾燥ステップを含むことを特徴とする、請求項22に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項30】
上記挿入するステップの後、同一のもしくは別の、活性及び/又は生物活性の低分子量物質を添加するステップを含むことを特徴とする、請求項29に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項31】
上記変性剤を挿入するステップ、及び/又は、上記低分子量物質を添加するステップの後、蒸発、遠心分離、冷却、又は沈殿剤の添加によって沈殿させるステップを含むことを特徴とする、請求項22、29又は30に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項32】
上記プラスチック基質又はセラミック基質に添加するステップでは、金属、金属塩、抗菌無機塩、及び/もしくは抗菌有機製品、及び/もしくは酸素隔離剤、ならびに/又は抗酸化化合物から選択される活性もしくは生物活性の物質を混入することを特徴とする、請求項22に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項33】
上記基質に混入される金属中心の酸化数を、全体的または部分的に変更するために、物理的処理または化学的処理を行なうステップを含むことを特徴とする、請求項22、29、30又は32に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項34】
上記変性剤は、バイオマス及び/又は生物分解性材料に由来する材料を含む、無機材料、有機材料、及び/もしくは有機塩、無機塩、又は他の抗菌性化合物により構成される物質の群から選択されることを特徴とする、請求項29に記載のナノ複合材料を得るためのプロセス。
【請求項35】
請求項1〜21に記載のナノ複合材料の使用であって、
食品及び食品成分の包装及び梱包の用途、生物医学的用途、医学的手術及び製薬用途、汚れ止め用途、エナメル、つや出し及びタイル張りのための建築用途、個人衛生のための用途、混雑した場所(スーパーマーケット、路面電車、スタンド、歩道、エスカレータ又は空港)における接触に関する用途、繊維用途、気体、蒸気、溶媒及び有機製品(香料、香料成分、油、グリース及び炭化水素)に対してバリア特性を必要とする用途、有機製品と無機製品とを混合させるための用途、生物分解特性又は堆肥にできる材料が必要な用途、抗菌特性、抗酸化特性又は低分子量物質(好ましくは揮発性)を制御しながら放出する必要がある他の特性を必要とする活性包装の用途、生体高分子における使用(可塑化剤の使用を必要としないか、又はわずかな量の可塑化剤の使用を必要とする)のための抗菌性、抗酸化性、及び酸素隔離性を必要とする用途、ならびに電磁放射バリア特性及び耐火特性を有する材料としての用途、を含む使用。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−526939(P2011−526939A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515723(P2011−515723)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053929
【国際公開番号】WO2009/156975
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510339153)ナノバイオマターズ,エス.エル. (3)
【氏名又は名称原語表記】NANOBIOMATTERS,S.L.
【住所又は居所原語表記】Avda.Louis Pasteur,11,nave 6,E−46980 Paterna(Valencia) Spain
【Fターム(参考)】