説明

活性ビタミンD化合物単独または他の治療薬との併用による、免疫介在疾患の治療法

本発明は、活性ビタミンD化合物を動物に投与することにより、動物において免疫介在疾患を治療、改善、または予防する方法に関する。本発明はさらに、他の治療薬と併用して活性ビタミンD化合物を動物に投与することにより、動物における免疫介在疾患を治療、改善、または予防する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、活性ビタミンD化合物を動物に投与することによって、動物における免疫介在疾患を治療または改善する方法に関する。本発明はさらに、他の治療薬と併用して活性ビタミンD化合物を動物に投与することによって、動物における免疫介在疾患を治療または改善する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
ビタミンDは、カルシウム恒常性の正の調節因子として不可欠な脂溶性ビタミンである(Harrison's Principles of Internal Medicine:Part Thirteen、「Disorders of Bone and Mineral Metabolism」、Chapter 353、pp.2214〜2226、A.S.Fauciら(編)、McGraw-Hill、New York(1998)を参照)。ビタミンDの活性型は、カルシトリオールとしても知られる1α,25-ジヒドロキシビタミンD3である。活性型ビタミンD化合物に対する特異的な核受容体は、カルシウム恒常性に関与しない多様な臓器の細胞で発見されている(Millerら、Cencer Res. 52:515-520(1992))。カルシウム恒常性に影響を及ぼすことに加えて、活性型ビタミンD化合物は、骨形成、免疫応答の調節、脾臓B細胞によるインスリン分泌過程の調節、筋肉細胞の機能、ならびに上皮組織および造血組織の分化および成長と関連づけられている。
【0003】
また、過増殖疾患(例えば癌、乾癬)の治療における活性型ビタミンD化合物の有用性を示す、いくつかの報告がある。例えば、一部のビタミンD化合物および類似体が、悪性細胞(具体的には白血病細胞)の非悪性マクロファージ(単球)への分化を誘導することによる強力な抗白血病活性を有し、かつ白血病の治療に有用であることが報告されている(Sudaら、米国特許第4,391,802号;Partridgeら、米国特許第4,594,340号)。カルシトリオールおよび他のビタミンD3類似体の抗増殖作用および分化作用は前立腺癌の治療についても報告されている(Bishopら、米国特許第5,795,882号)。活性型ビタミンD化合物は、皮膚癌(Chidaら、Cancer Research 45:5426-5430(1985))、大腸癌(Dismanら、Cancer Research 47:21-25(1987))、および肺癌(Satoら、Tohoku J.Exp.Med. 138:445-446(1982))の治療にも関連づけられている。活性型ビタミンD化合物の治療用途が重要な役割を果たすことを示唆する他の報告は、Rodriguezら、米国特許第6,034,079号にまとめられている。
【0004】
活性ビタミンD化合物は、過増殖疾患治療用の他の薬剤、特に細胞毒性剤を併用して投与されてもいる。例えば、活性ビタミンD化合物による過増殖細胞の前治療と、続く細胞毒性剤による治療は、細胞毒性剤の有効性を高めることがわかっている(米国特許第6,087,350号;WO 01/64251)。
【0005】
ビタミンDは、正常な細胞の増殖および成熟に関与している。その免疫調節剤としての役割には注目が集まりつつある。例えば、多発性硬化症、シェーグレン症候群、関節リウマチ、甲状腺炎、クローン病のようないくつかの免疫介在疾患は、ビタミンDレベルの低下と関連付けられている。概説として、Deluca et al., FASEB J. 15:2579-2585 (2001); Long et al., Pediat. Infect. Dis. J. 18:283-290 (1999); Cantona, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 223:230-233 (2000)を参照されたい。
【0006】
活性型ビタミンD化合物の投与は実質的な治療上の利益をもたらす可能性があるが、このような化合物を使用した過増殖疾患、免疫介在疾患、および他の疾患の治療は、これらの化合物がカルシウム代謝に影響を及ぼすために制限されている。抗増殖剤/免疫抑制剤としての効果的な使用のためにインビボで必要とされるレベルでは、活性型ビタミンD化合物は、固有のカルシウム血症作用によって、著しく高値で危険性を秘めた血中カルシウム濃度を招く場合がある。すなわち、抗増殖剤としてのカルシトリオールおよび他の活性型ビタミンD化合物の臨床使用は、高カルシウム血症のリスクをふまえて極めて限られている。
【0007】
抗増殖作用を維持しつつもカルシウム代謝に対する作用が低い、ビタミンDの類似体および誘導体を同定すべく多くの研究が行われている。高カルシウム血症作用の低いものが多い数百種類の化合物が作製されているが、高カルシウム血症作用が完全に除去された一方で抗増殖活性が保たれた化合物は発見されていない。
【0008】
全身性の高カルシウム血症の問題が、重度の高カルシウム血症の発症を避けつつ抗増殖作用が認められるような、十分な用量の活性型ビタミンD化合物の「パルス投与」によって克服可能であることが報告されている。米国特許第6,521,608号によれば、活性型ビタミンD化合物は、3日に1回以下、例えば週に1回の少なくとも0.12 μg/kg/日(体重70 kgの場合、8.4 μg)の用量で投与可能である。米国特許第6,521,608号に記載されたパルス投与法に使用される薬学的組成物は、5〜100 μgの活性型ビタミンD化合物を含み、経口、静脈内、筋肉内、局所、経皮、舌下、経鼻、腫瘍内投与の剤形、または他の調製物の状態で投与可能である。
【0009】
自己免疫疾患
自己免疫疾患は、細菌、ウイルス、および任意の他の異物に対して体を防御するはずの体の免疫系が機能不全を起こし、健康な組織、細胞、および臓器に対して抗体を産生するときに起きる。抗体、T細胞、およびマクロファージは有益な保護を与えるが、有害で致死的な免疫応答も引き起こす場合がある。
【0010】
自己抗体が自己免疫疾患を引き起こし得る主な機構は、標的細胞の補体依存的溶解性破壊、オプソニン作用、免疫複合体の形成、生理的リガンドの受容体部位の遮断、および細胞表面受容体の刺激である。自己抗体は、細胞表面受容体に結合し、細胞の特化した機能を阻害または刺激することができる(Paul, W.E., ed., Fundamental Immunology, Raven Press, New York, Chapter 31, p.839 (1989))。
【0011】
自己免疫疾患は、臓器特異的または全身性の可能性があり、異なる病原性機構により発生する。臓器特異的自己免疫は、T細胞区画内での寛容および抑制、主要組織適合性複合体(MHC)抗原の異常発現、抗原擬態、およびMHC遺伝子における対立遺伝子の多様性によって特徴づけられる。全身性自己免疫疾患は、ポリクローナルなB細胞の活性化、ならびに免疫調節T細胞、T細胞受容体、およびMHC遺伝子の異常を伴う。臓器特異的自己免疫疾患の例には、糖尿病、甲状腺機能亢進症、自己免疫性副腎不全、赤芽球癆、多発性硬化症、およびリウマチ性心臓炎が含まれる。代表的な全身性自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、慢性炎症、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、および強皮症が含まれる。
【0012】
自己免疫疾患の現在の治療法では、コルチゾン、メトトレキセート、アザチオプリン、およびシクロホスファミド、またはその組み合せのような免疫抑制剤が投与される。しかし、免疫抑制剤投与のジレンマは、自己免疫疾患が効果的に治療されればされるほど、患者を感染の攻撃から守ることができなくなるということである。したがって、自己免疫疾患の予防および治療の効果が長期に持続する、より安全な改善された方法が必要とされている。特に、現在利用できる治療薬よりも特異性が高く毒性の低い治療が必要である。
【0013】
炎症性疾患
宿主の防御および免疫介在疾患の進行において、炎症は重要な役割を果たす。炎症反応は、傷害(例えば外傷、虚血、および異物粒子)および感染(例えば細菌またはウイルスの感染)に応答して複雑な事象のカスケードにより開始するが、これには化学的介在物質(例えばサイトカインおよびプロスタグランジン)および炎症細胞(例えば白血球)が含まれる。炎症反応は、血流の上昇、毛細血管の透過性上昇、および食細胞の流入という特徴を持つ。これらの事象により、傷害または感染部位において、腫脹、発赤、温覚(熱パターンの変化)、および膿の形成が生じる。
【0014】
サイトカインおよびプロスタグランジンは、炎症反応を制御し、規律正しい自己制御式カスケードで血中または罹患組織に放出される。サイトカインおよびプロスタグランジンのこの放出により、傷害または感染部位への血流が増加し、その結果、発赤および温覚が生じる。これらの化学物質の中には、組織への体液の漏出を引き起こすものがあり、その結果、腫脹が生じる。この保護過程は神経を刺激して疼痛を引き起こすことがある。これらの変化が適切な領域で限られた期間生じると、身体には有益である。
【0015】
炎症反応における液性免疫要素と細胞性免疫要素との間の精巧で釣り合いのとれた相互作用により有害な物質が除去され、損傷を受けた組織の修復が開始される。この精巧な釣り合いのとれた相互作用が混乱すると、炎症反応は正常組織に著しい損傷を与え、その反応を開始させた当初の傷害よりも有害になる場合がある。このような制御のない炎症反応では、組織の損傷および臓器不全を予防するために臨床的介入が必要である。関節リウマチ、変形性関節症、クローン病、乾癬、および炎症性腸疾患のような疾患は、慢性炎症により特徴づけられる。
【0016】
炎症性疾患の現在の治療法では、対症薬および免疫抑制剤を用いて症状を抑制する。例えば、アスピリン、イブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、トルメチン、スリンダック、メクロフェナム酸ナトリウム、ピロキシカム、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、オキサプロジン、ナブメトン、エトドラク、およびケトプロフェンのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、鎮痛および抗炎症効果を持つ。しかし、NSAIDは疾患の進行を変える能力はないと考えられている(Tierney et al., eds., Current Medical Diagnosis & Treatment, 37 ed., Appleton & Lange (1998), p.793)。さらに、NSAIDはしばしば胃腸管の副作用を引き起こし、下部消化管に影響を与えて穿孔を生じるか炎症性腸疾患を悪化させ、腎毒性を生じさせ、出血時間を延長する。コルチコステロイドは、炎症性の症状を抑えるために一般的に使用される、もう1つのクラスの薬剤である。コルチコステロイドは、NSAIDと同様に疾病の自然の進行は変化させず、そのため、薬剤を中止すると、一般的に活動性の疾患の臨床発現が再び見られる。長期のコルチコステロイド治療を行うと生じる重篤な有害反応(例えば骨粗鬆症、感染リスクの上昇、食欲増加、高血圧、浮腫、消化性潰瘍、精神病)のために、長期的な使用は強く制限されている。
【0017】
細胞毒性薬のような低容量の免疫抑制剤もまた、炎症性疾患の治療に一般的に使用されている。例えば、葉酸拮抗薬であるメトトレキセートは、乾癬、関節リウマチ、および他の炎症性疾患の治療にしばしば使用される。他の細胞毒性薬と同様に、メトトレキセートは、口内炎、紅斑、脱毛、悪心、嘔吐、下痢、ならびに腎臓および肝臓のような主要臓器の損傷を頻繁に引き起こす。免疫抑制剤を長期使用すると、通常、患者は感染に対して防御されなくなる。
【0018】
炎症性疾患の新しい治療法は、常に求められている。特に、炎症性疾患の原疾患を標的とし、現在使用されている薬剤の用量および/または頻度を低下させ、または現在使用されている治療法の効果を高めるような新しい治療が、常に求められている。
【0019】
移植拒絶反応
移植拒絶反応は遺伝的に同一ではない個体から組織を移植された個体において起こり、T細胞に依存した機構で仲介される。同種移植片の拒絶反応を予防するために、カルシニューリンホスファターゼ阻害剤(例えばシクロスポリンA、FK506、およびラパマイシン)、ならびに直接または間接的にインターロイキン(IL)-2シグナル伝達に干渉するグルココルチコイドが移植受容者に投与される(例えばBorel, Pharmacol. Rev. 42:260-372 (1989); Morris, P.J., Curr. Opin. Immunol. 3:748-751 (1991); Sigal et al., Ann. Rev. Immunol. 10:519-560 (1992);およびL'Azou et al., Arch. Toxicol. 73:337-345 (1999)を参照されたい)。免疫抑制剤の効果は短時間しか継続しないため、移植拒絶反応を予防するために、移植受容者には通常、一生にわたり免疫抑制剤の治療が必要となる。免疫抑制剤を長期間投与する結果、移植受容者は、例えば感染および腫瘍のような重篤な副作用に苦しむ。
【0020】
シクロスポリンA、FK506、およびラパマイシンは、現在最も一般的に使用されている免疫抑制剤に含まれる。これらの免疫抑制剤は、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達を損なうことにより、すべてのT細胞に区別なく作用する。シクロスポリンAまたはFK506を移植受容者に長期間投与すると、腎尿細管の変化、震え、多毛、高血圧、高脂血症、歯肉肥厚、神経毒性、胃腸管の合併症、高カリウム血症、高血糖、および糖尿病を含むがこれらに限定されない、数多くの重篤な副作用が発生する。例えば、Hardman et al., eds., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Therapeutics, 10th Ed, Mc-Graw-Hill, New York (2001), pp.1468-1470を参照されたい。同種移植片の拒絶反応を予防するための、シクロスポリンAまたはFK506のような免疫抑制剤を投与する以外の方法の1つは、TCRの活性化、Tヘルパー(Th) 1/Th2細胞の増殖、および/またはTh1/Th2細胞の分化を調節する薬剤を投与することである。そのような薬剤の例には、CTLA-4Ig、抗CD40抗体、抗CD40リガンド抗体、抗IL-2受容体抗体、および抗CD28抗体を含むが、これらに限定されない。これらの薬剤はより標的特異的ではあるが、個体への投与後に、アナフィラキシー反応が起こりうり、かつ現実に起こる。さらに、リンパ組織増殖性および日和見感染は、そのような薬剤に伴う一般的な副作用である。
【0021】
したがって、移植拒絶反応の予防および治療のための、長期間持続する効果を持つ、より安全な改善された治療が必要とされている。特に、現在使用されている治療法よりも特異的で毒性の少ない治療が必要とされている。
【発明の開示】
【0022】
発明の概要
本発明の1つの局面は、活性ビタミンD化合物を動物に投与する段階を含む、動物における免疫介在疾患を治療、改善、または予防する方法である。本発明の第2の好ましい局面では、活性ビタミンD化合物は高カルシウム血症作用が低下しているため、高カルシウム血症を誘導することなく、動物に、より高い用量の化合物の投与ができる。本発明の別の態様では、活性ビタミンD化合物はパルス投与されるため、高カルシウム血症を誘導することなく、動物に高用量の活性ビタミンD化合物の投与ができる。本発明の別の局面は、1つまたは複数の治療薬と併用して活性ビタミンD化合物を動物に投与する段階を含む、動物において免疫介在疾患を治療、改善、または予防する方法である。
【0023】
本発明の好ましい態様では、免疫介在疾患は自己免疫疾患、炎症性疾患、または移植拒絶反応である。好ましい態様では、1つまたは複数の治療薬は、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗炎症薬、または外皮用剤からなる群より選択される。別の態様では、治療薬の併用が実施される。本発明の1つの態様では、ビタミンD投与は1つまたは複数の治療薬の投与の前に開始し、および/または1つまたは複数の治療薬の投与中および投与後に継続する場合がある。本発明の別の態様では、1つまたは複数の治療薬と組み合わせたビタミンD化合物の投与方法は複数回繰り返される。
【0024】
本発明の活性ビタミンD化合物と1つまたは複数の治療薬との併用は、相加的な効力または相加的な治療効果を持つ可能性がある。本発明はまた、治療の有効性が相加的効果を上回る、相乗効果のある組み合わせも含む。好ましくは、そのような組み合わせはまた、望まないまたは有害な効果を低下させるかまたは回避する。特定の態様では、本発明に含まれる併用治療は、活性ビタミンD化合物または任意の治療薬単独の投与と比較して、全般的に改善した治療を提供する。特定の態様では、既存または実験的な治療薬の用量は低下するかまたは頻度が低下するため患者のコンプライアンスが向上し、そのため治療が改善し、望まないかまたは有害な効果が低下する可能性がある。
【0025】
さらに、本発明の方法は、以前に治療を受けていない患者のみならず、免疫介在疾患のための現在の標準的および/または実験的治療に部分的または完全に不応性の患者の治療にも有効である。好ましい態様では、本発明は他の治療法に抵抗性または不応性であることが示された、またはそのような可能性のある免疫介在疾患の、治療または改善のための治療法を提供する。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明の1つの局面は、活性ビタミンD化合物を動物に投与する段階を含む、動物における免疫介在疾患を治療、改善、または予防する方法である。本発明の第2の好ましい局面では、活性ビタミンD化合物は、高カルシウム血症作用が低下しているため、高カルシウム血症を誘導することなく、動物に、より高い用量の化合物の投与ができる。本発明の別の局面は、活性ビタミンD化合物を動物にパルス投与するため、高カルシウム血症を誘導することなく、動物に高用量の活性ビタミンD化合物の投与ができる段階を含む、動物における免疫介在疾患を治療または改善する方法である。
【0027】
本発明の別の局面は、1つまたは複数の治療薬と併用して活性ビタミンD化合物を動物に投与する段階を含む、動物において免疫介在疾患を治療、改善、または予防する方法であり、この治療薬は現在使用されている、過去に使用されていた、または免疫介在疾患の治療、改善、または予防に有用であることが知られているものである。
【0028】
本明細書に記述される方法は、円形脱毛症、強直性脊椎症、抗リン脂質症候群、自己免疫アジソン病、副腎自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労性免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、円板状狼瘡、本態性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgAニューロパシー、若年性関節炎、扁平苔癬、メニエール病、混合型結合組織病、多発性硬化症、I型または免疫介在真性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、全身性進行性硬化症、シェーグレン症候群、グッドパスチャー症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、高安動脈炎、一過性動脈炎、巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、疱疹状皮膚炎のような脈管炎、白斑、ならびにヴェーゲナー肉芽腫症を含むがこれらに限定されない自己免疫疾患の、治療または改善に有用である。本明細書に記述される方法は、罹患した真皮または表皮組織へのリンパ球のT細胞の浸潤の増加によって特徴づけられる自己免疫疾患、T細胞活性化および/または異常な抗原提示で特徴づけられる自己免疫疾患、またはB細胞活性化の上昇および/または異常な抗体産生で特徴づけられる自己免疫疾患の治療または改善に特に有用である。
【0029】
本明細書に記述される方法は、喘息、脳炎、炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎)、慢性閉塞性肺疾患、炎症性骨溶解、アレルギー性疾患、敗血症性ショック、肺線維症(例えば特発性肺線維症)、炎症性脈管炎(例えば多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、一過性動脈炎、およびリンパ腫様肉芽腫症)、外傷後血管形成(例えば血管形成後の再狭窄)、未分化脊椎関節症、未分化関節炎、関節炎、骨溶解、慢性肝炎、および慢性のウイルスまたは細菌感染による慢性炎症を含むがこれらに限定されない炎症性疾患の治療または改善に有用である。特に、本明細書に記述される方法は、T細胞活性化および/または異常な抗原提示によって特徴づけられる炎症性疾患の治療または改善に有用である。本明細書に記述される方法は、炎症性骨溶解、異常な骨吸収によって特徴づけられる他の疾患、または骨損失によって特徴づけられる他の疾患(例えば骨粗鬆症)に伴う、1つまたは複数の症状の治療または改善にも適用できる。
【0030】
本明細書に記述される方法は、肝臓移植拒絶反応、腎臓移植拒絶反応、骨移植拒絶反応、皮膚移植拒絶反応、心臓移植拒絶反応、輸血拒絶反応、および眼移植拒絶反応を含むがこれらに限定されない移植拒絶反応の治療、改善、または予防に有用である。
【0031】
本明細書に記述される本発明の方法は、例えば、乾癬、紫外線障害、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激物接触性皮膚炎、扁平苔癬、円形脱毛症、壊疽性膿皮症、白斑、瘢痕性類天疱瘡、エリテマトーデス、強皮症、ならびに蕁麻疹のような、T細胞もしくはB細胞活性化の増加、および/または異常なT細胞もしくはB細胞活性化によって特徴づけられる皮膚の状態にも適用できる。本発明の組成物および方法にしたがって治療できる乾癬の種類の例には、プラーク乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、滴状乾癬、および逆位乾癬が含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書では、「免疫介在疾患」および「免疫介在疾病」および類似した用語は、体の免疫応答によって生じる疾患または疾病を意味する。特定の態様では、免疫介在疾患は、異常または制御されないT細胞を介する反応によって引き起こされる疾患である。別の特定の態様では、疾患は、異常または制御されないB細胞を介する応答によって引き起こされる。免疫介在疾患の例には、自己免疫疾患、炎症性疾患、免疫介在皮膚疾患、および移植拒絶反応が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様では、免疫介在疾患は乾癬または過剰増殖疾患ではない。本発明では、「免疫介在疾患」は癌を含まない。
【0033】
本明細書で使用される「治療に有効な量」と言う用語は、疾患の1つまたは複数の症状の改善を誘導するか、または疾患の進行を予防するか、または疾患の退行を誘導するために十分な治療薬の量を意味する。例えば、炎症性疾患または炎症で特徴づけられる自己免疫疾患の治療に関しては、治療に有効な量は好ましくは、関節、臓器、または組織の炎症を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%低下させる治療薬の量を意味する。乾癬の治療に関しては、治療に有効な量は、好ましくはヒトの乾癬面積重症度指数(PASI)スコアを、少なくとも20%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%低下させる、治療薬の量を意味する。または、乾癬の治療に関しては、治療に有効な量は好ましくは、ヒトの総合評価指数を少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%改善する治療薬の量を意味する。関節リウマチに関しては、治療に有効な量は、好ましくはヒトの疾患活動性スコア(DAS)を少なくとも20%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%低下させる、治療薬の量を意味する。全身性エリテマトーデスに関しては、治療に有効な量は好ましくは、ヒトの全身性ループス活動指標(SLAM)スコアを少なくとも20%、少なくとも35%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%低下させる、治療薬の量を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「移植拒絶反応」、「臓器拒絶反応」、および「移植片対宿主疾患」という用語は互換的に用いられ、受容者の免疫系が、遺伝的に同一ではない組織、臓器、または移植片を拒絶することを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「治療する」および「治療」という用語は、1つまたは複数の治療薬の投与によって引き起こされる、免疫介在疾患に伴う1つまたは複数の症状の改善を意味する。特定の態様では、そのような用語は、そのような疾患を持つ動物に対して1つまたは複数の治療薬を投与することにより誘導される、1つまたは複数の関節の腫脹の軽減、または免疫介在疾患に伴う疼痛の軽減を意味する。別の態様では、そのような用語はヒトのPASIスコア、DASスコア、またはSLAMスコアの低下を意味する。他の態様では、そのような用語はヒトの総合評価指数の改善を意味する。
【0036】
本明細書で用いる「活性ビタミンD化合物」という用語は、被験対象に投与時に、または細胞に接触時における、生物学的に活性のあるビタミンD化合物を意味する。ビタミンD化合物の生物学的活性は、例えば、ビタミンDの調節を受ける遺伝子の発現を測定する免疫アッセイ法などの、当業者に周知のアッセイ法によって評価することができる。ビタミンD化合物は、身体における活性のレベルが異なる複数の形状で存在する。例えばビタミンD化合物は、最初に肝臓で炭素25位が水酸化を受けて部分的に活性化される場合があり、次に腎臓で炭素1位におけるさらなる水酸化を受けて完全に活性化される場合がある。プロトタイプの活性ビタミンD化合物は、1α,25-ヒドロキシビタミンD3(カルシトリオールとも呼ばれる)である。他の多くの活性ビタミンD化合物の存在が知られており、本発明の実施に使用可能である。本発明の活性ビタミンD化合物は、それぞれが参照により組み入れられる、以下の特許に記載されたビタミンD化合物の類似体、ホモログ、および誘導体を含むがこれらに限定されない:米国特許第4,391,802号(1α-ヒドロキシビタミンD誘導体);第4,717,721号(コレステロールまたはエルゴステロールの側鎖より側鎖が17残基長い1α-ヒドロキシ誘導体);第4,851,401号(シクロペンタノ-ビタミンD類似体);第4,866,048号および第5,145,846号(アルキニル側鎖、アルケニル側鎖、およびアルカニル側鎖を有するビタミンD3類似体);第5,120,722号(トリヒドロキシカルシフェロール);第5,547,947号(フルオロ-コレカルシフェロール化合物);第5,446,035号(メチル置換ビタミンD);第5,411,949号(23-オキサ-誘導体);第5,237,110号(19-ノル-ビタミンD化合物);第4,857,518号(水酸化24-ホモ-ビタミンD誘導体)。具体例には、ROCALTROL(Roche Laboratories社);CALCIJEX注射用カルシトリオール;EB 1089(24a,26a,27a-トリホモ-22,24-ジエン-1αa,25-(OH)2-D3、KH 1060(20-エピ-22-オキサ-24a,26a,27a-トリホモ-1α,25-(OH)2-D3)、MC 1288(1,25-(OH)2-20-エピ-D3)、およびMC 903(カルシポトリオール、1α24s-(OH)2-22-エン-26,27-デヒドロ-D3)を含むLeo Pharmaceuticals社の治験薬;1,25-(OH)2-16-エン-D3、1,25-(OH)2-16-エン-23-イン-D3、および25-(OH)2-16-エン-23-イン-D3を含むRoche Pharmaceuticals社の薬剤;中外製薬の22-オキサカルシトリオール(22-oxa-1α,25-(OH)2-D3);イリノイ大学の1α-(OH)-D5;ならびにZK 161422(20-メチル-1,25-(OH)2-D3)、およびZK 157202(20-メチル-23-エン-1,25-(OH)2-D3)を含むInstitute of Medical Chemistry-Schering AG社の薬剤;1α-(OH)-D2;1α-(OH)-D3および1α-(OH)-D4が含まれる。他の例には、

などがある。他の例については米国特許第6,521,608号に記載されている。例えば

も参照されたい。
【0037】
本発明の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物は、ビタミンDと比較して高カルシウム血症作用が低いので、高用量の化合物を、高カルシウム血症を引き起こすことなく動物に投与することができる。低い高カルシウム血症作用は、等量の1α,25-ヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)の投与によって誘導される高カルシウム血症作用に満たない作用であると定義される。一例としてEB 1089は、カルシトリオールの高カルシウム血症作用の50%の高カルシウム血症作用を有する。低い高カルシウム血症作用を有する他の活性ビタミンD化合物には、Hoffman La Roche社から入手可能なRo23-7553やRo24-5531などがある。高カルシウム血症作用が低い活性ビタミンD化合物の他の例は、米国特許第4,717,721号に記載されている。活性ビタミンD化合物の高カルシウム血症作用を決定することは、当技術分野でごく一般に行われており、またHansen et al., Curr. Pharm. Des. 6: 803-828 (2000)に記載された手順で実施することができる。
【0038】
活性ビタミンDの投与
活性ビタミンD化合物は好ましくは、約1μg〜約285μg、より好ましくは約15μg〜約105μgの用量で投与される。特定の態様では、有効量の活性ビタミンD化合物は、3μg、4μg、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg、260μg、265μg、270μg、275μg、280μg、もしくは285μg、またはこれ以上である。ある態様では、有効量の活性ビタミンD化合物は、約1μg〜約285μgであり、より好ましくは約15μg〜約250μgであり、より好ましくは約15μg〜約200μgであり、より好ましくは約15μg〜約105μgであり、より好ましくは約20μg〜約80μgであり、より好ましくは約30μg〜約60μgであり、またさらにより好ましくは約45μgである。ある態様では、本発明の方法は、活性ビタミンD化合物を、約0.12 μg/kg体重〜約3 μg/kg体重の用量で投与する段階を含む。このような化合物は、経口、筋肉内、静脈内、腸管外、直腸内、鼻内、局所的、または経皮的な経路を含む任意の経路で投与することができる。
【0039】
仮に活性ビタミンD化合物が毎日投与される場合は、高カルシウム血症の誘導を避けるか、または抑えるために、用量は低く(例えば約0.5μg〜約5μgに)維持することができる。仮に、活性ビタミンD化合物が、低い高カルシウム血症作用を有する場合は、高カルシウム血症を発症させることなく、高い1日量(例えば約10μg〜約20μgまたはこれ以上;最大約50μg〜約100μg)を投与することができる。
【0040】
本発明の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物はパルス投与法で投与されることで、高用量の活性ビタミンD化合物を、高カルシウム血症を誘導することなく投与することができる。パルス投与とは、活性ビタミンD化合物を、連続的な間欠的投与スケジュールか、または非連続的な間欠的投与スケジュールのいずれかによって間欠的に投与することを意味する。高用量の活性ビタミンD化合物は、上記セクションで述べたように、約3μgを上回る用量を含む。したがって、本発明のある態様では、免疫介在疾患の治療または改善の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を間欠的に投与する段階を含む。パルス投与による投与の頻度は、化合物または剤形の薬物動態学的パラメータ、および動物に対する活性ビタミンD化合物の薬力学的作用を含むがこれらに限定されない諸因子によって制限される場合がある。例えば、腎機能が損なわれた免疫介在疾患を有する動物はカルシウム排出能力が低いために、それほど高頻度ではない活性ビタミンD化合物の投与が必要となる場合がある。
【0041】
以下の記述は例示的に示すだけであり、「パルス投与」という表現が、当業者によって指定される任意の不連続投与法を含む場合があることを説明するに過ぎない。
【0042】
1つの例では、活性ビタミンD化合物は、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日毎に1回まで投与することができる。投与は、1週間、2週間、3週間、もしくは4週間、または1か月間、2か月間、もしくは3か月間、もしくはこれ以上の期間、継続することができる。任意選択で、安静期間を設けた後に、活性ビタミンD化合物を、同じか、または異なるスケジュールで投与することができる。安静期間は、動物における活性ビタミンD化合物の薬力学的作用に従って、1週間、2週間、3週間、または4週間、またはこれ以上の期間とすることができる。
【0043】
別の例では、活性ビタミンD化合物を週に1回、3か月間にわたって投与することができる。
【0044】
好ましい態様では、活性ビタミンD化合物を週に1回、4週間のサイクルの3週間にわたって投与することができる。1週間の安静期間後に、活性ビタミンD化合物を、同じか、または異なるスケジュールで投与することができる。
【0045】
本発明の方法に使用可能な投与スケジュールの他の例は、全体が参照により組み入れられる、公開された米国特許第6,521,608号に記載されている。
【0046】
上記の投与スケジュールは、説明目的でのみ提供されるものであり、制限する意図はないと解釈されるべきである。当業者であれば、あらゆる活性ビタミンD化合物が本発明の範囲内にあること、また活性ビタミンD化合物の正確な用量および投与スケジュールが多くの因子によって変動する場合があることを容易に理解すると思われる。
【0047】
疾患または障害の急性疾患または慢性疾患としての管理における治療的有効量の薬物量は、治療対象の疾患または障害、薬剤の種類、および投与経路を含むがこれらに限定されない諸因子に依存して異なる場合がある。本発明の方法では、有効量の活性ビタミンD化合物は、免疫介在疾患の治療もしくは改善に有効な任意の用量の化合物である。高用量の活性ビタミンD化合物の用量は、約3μg〜約285μgである場合があるほか、上述した範囲内の任意の用量の場合がある。用量、投与頻度、期間、またはこれらの任意の組み合わせも、動物の年齢、体重、反応、および病歴、ならびに薬剤の投与経路、薬物動態、および薬力学的作用によって変化する場合がある。これらの因子は、当業者によってルーチンに考慮される。
【0048】
ビタミンD化合物の吸収およびクリアランスの速度は、当業者に既知のさまざまな因子の影響を受ける。上述したように、活性ビタミンD化合物の薬物動態学的特性は、高カルシウム血症の発症を誘導することなく、血液中に取り込まれうるビタミンD化合物のピーク濃度を制限する。活性ビタミンD化合物の組織における吸収、分布、結合、または局在の速度および規模、生物学的変換、ならびに排出はいずれも、薬剤を投与可能な頻度に影響する可能性がある。ある態様では、活性ビタミンD化合物は、免疫介在疾患を治療または改善する方法として、上述の投与スケジュールに従ってパルス投与法によって高用量が投与される。
【0049】
本発明のある態様では、活性ビタミンD化合物は、約0.1 nM〜約20 nMの活性ビタミンD化合物のピーク血漿濃度を十分達成する用量で投与される。ある態様では、本発明の方法は、活性ビタミンD化合物を0.1 nM、0.2 nM、0.3 nM、0.4 nM、0.5 nM、0.6 nM、0.7 nM、0.8 nM、0.9 nM、1 nM、2 nM、3 nM、4 nM、5 nM、6 nM、7 nM、8 nM、9 nM、10 nM、12 .5nM、15 nM、17.5 nM、もしくは20 nM、またはこれらの任意の範囲の濃度のピーク血漿濃度を達成する用量で投与する段階を含む。他の態様では、活性ビタミンD化合物は、約0.5 nMを超える、好ましくは約0.5 nM〜約20 nM、より好ましくは約1 nM〜約10 nM、より好ましくは約1 nM〜約7 nM、またさらにより好ましくは約3 nM〜約5 nMの活性ビタミンD化合物のピーク血漿濃度を達成する用量で投与される。
【0050】
別の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物は、少なくとも約0.12μg/kg体重の用量で、より好ましくは少なくとも約0.5μg/kg体重の用量で投与される。
【0051】
当業者であれば、このような標準的な用量が、約70 kgの平均サイズの成体に対するものであること、また上述のようにルーチンに考慮される因子に鑑みて調節可能なことを理解すると思われる。
【0052】
ある態様では、本発明の方法は、ピーク血漿濃度に速やかに(例えば4時間以内に)達する用量の活性ビタミンD化合物を投与する段階をさらに含む。別の態様では、本発明の方法は、迅速に除去される用量(例えば、除去半減期が12時間未満)の活性ビタミンD化合物を投与する段階を含む。
【0053】
高濃度の活性ビタミンD化合物が得られることが有益な一方で、臨床上の安全性(例えば高カルシウム血症)とのバランスをとらなければならない。したがって、本発明の1つの局面では、本発明の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を、免疫介在疾患を有する動物に間欠的に投与する段階、および高カルシウム血症関連症状に関して動物をモニタリングする段階を含む。このような症状には、軟部組織(例えば心臓組織)の石灰化、骨密度の上昇、および高カルシウム血漿性腎症などがある。さらに別の態様では、本発明の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を、免疫介在疾患を有する動物に間欠的に投与する段階、および血漿カルシウム濃度を約10.2 mg/dL未満に確実に抑えるために、動物の血漿カルシウム濃度をモニタリングする段階を含む。
【0054】
ある態様では、高血中レベルのビタミンD化合物を、血液へのカルシウム輸送を減じながら安全に得ることができる。ある態様では、例えばカルシウム摂取が1日当たり600mg未満、好ましくは1日当たり約400から500mgである低カルシウム食とともに投与した場合に、より高い活性ビタミンD化合物濃度を高カルシウム血症を発症させることなく安全に得ることができる。もう1つの態様では、カルシウムの吸収を最小限とするために活性ビタミンD化合物を夜間就寝前に投与してもよい。例として、米国特許第5,891,865号を参照されたい。1つの例では、カルシウムは、小腸を介して血液中に輸送されない吸着剤、吸収剤、リガンド、キレート、または他の結合部分に捕捉される場合がある。別の例では、溶骨細胞の活性化の速度は、ビスホスホネート(例えばゾレドロン酸、パミドロン酸、もしくはアレンドロン酸など)を活性ビタミンD化合物と併用投与することで抑えられる場合がある。
【0055】
ある態様では、高血中レベルの活性ビタミンD化合物は、カルシウムのクリアランス速度を最大化するとともに安全に得られる。1つの例では、カルシウムの排出は、適切な水分補給および塩分摂取を確実に行うことで高めることができる。別の例では、利尿療法でカルシウムの排出を高めることができる。
【0056】
活性ビタミンD化合物は、薬学的に許容可能な担体を含む薬学的組成物の一部として投与することができる(活性ビタミンD化合物は、意図した目的を達成するのに有効な量で存在する)。薬学的組成物は、1種類もしくは複数の賦形剤、希釈剤、または当業者に既知の、また本発明の製剤化方法に関する他の任意の成分をさらに含む場合がある。
【0057】
薬学的組成物は1つの単位剤形として調製することができる。このような投与剤形は、経口投与、粘膜(鼻内、舌下、膣内、頬内、直腸内)投与、非経口(静脈内、筋肉内、動脈内)投与、または局所投与に適している。本発明の好ましい投与剤形には、経口投与剤形および静脈内投与剤形などがある。
【0058】
静脈内剤形には、ボーラス注射および点滴注射などがあるがこれらに限定されない。好ましい態様では、静脈内投与剤形は無菌的であるか、または被験対象への投与前に無菌的にすることができる(典型的には、汚染に対して被験対象が備える天然の防御を迂回するため)。静脈内投与剤形の例には、注射用水USP;塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウムの注射液、および乳酸加リンゲル注射液を含むがこれらに限定されない水性溶媒;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールを含むがこれらに限定されない水混和性溶媒;ならびにコーンオイル、綿実油、ピーナッツオイル、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルを含むがこれらに限定されない非水性溶媒などがあるがこれらに限定されない。
【0059】
本発明の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物を含む薬学的組成物は、乳濁液の事前濃縮製剤である。本発明の組成物は、患者への投与時における、化合物の望ましくない薬物動態パラメータを特に含む、当技術分野で遭遇する活性ビタミンD化合物療法に付随する問題に対処するか、またはこの問題を実質的に減少させる。
【0060】
本発明の1つの局面により、(a)親油相成分、(b)1種または複数種の界面活性物質、(c)活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を提供する(組成物はエマルジョン前濃縮物であり、組成物に対する比が約1:1またはそれ以上の水で希釈時に、400 nmにおける吸光度が0.3を上回るエマルジョンを生成する)。本発明の薬学的組成物は、親水相成分をさらに含む場合がある。
【0061】
本発明の別の局面では、水(または他の水溶液)、およびエマルジョン前濃縮物を含む薬学的エマルジョン組成物を提供する。
【0062】
本明細書で用いる「エマルジョン前濃縮物」という表現は、例えば水と接触時にエマルジョンを提供可能な系を意味することを意図する。本明細書で用いる「エマルジョン」という表現は、水と、疎水性(親油性)有機成分を含む有機成分を含むコロイド分散体を意味することを意図する。「エマルジョン」という表現は、当業者によって理解される従来のエマルジョン、ならびに以下に定義する「サブミクロン液滴エマルジョン」の両方を含むことを意図する。
【0063】
本明細書で用いる「サブミクロン液滴エマルジョン」という表現は、水と、疎水性(親油性)有機成分を含む有機成分を含む分散体を意味することを意図する(有機成分から生成する液滴または粒子の平均最大径は約1000 nm未満である)。
【0064】
サブミクロン液滴エマルジョンは、以下の1種または複数種の特性を有するものとして同定可能である。これらは、その成分が接触する際に自然に、または実質的に自然に生成する、すなわち、実質的なエネルギー供給なしに、例えば加熱せずに、高剪断装置(high shear equipment)を使用せずに、または他の実質的な攪拌を行わずに、生成する。これらは熱力学的な安定性を示し、かつ単相性である。
【0065】
サブミクロン液滴エマルジョンの粒子は球状の場合があるが、層状、六方晶系、または等方対称の液晶などの他の構造もとりうる。一般に、サブミクロン液滴エマルジョンは、最大径(例えば平均径)が約50 nm〜約1000 nm、また好ましくは約200 nm〜約300 nmの液滴または粒子を含む。
【0066】
本明細書で用いる「薬学的組成物」という表現は、個々の成分または内容物そのものが、薬学的に許容される特定の組成物であると理解される(例えば、経口投与が推定される場合は経口使用が許容され、また局所使用が推定される場合は局所使用が許容される)。
【0067】
本発明の薬学的組成物は一般に、水で希釈されるとエマルジョンを生成する。このエマルジョンは、エマルジョン前濃縮物を、組成物に対する比が約1:1またはそれ以上の水で希釈時に、本発明にしたがって生成する。本発明にしたがって、水と組成物の比は例えば1:1〜5000:1の間とすることができる。例えば、水と組成物の比は約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、200:1、300:1、500:1、1000:1、または5000:1とすることができる。当業者は、任意の状況または環境に適した、水と組成物の特定の比を容易に確認することができる。
【0068】
本発明によれば、エマルジョン前濃縮物を水で希釈時に、400 nmにおける吸光度が0.3を上回るエマルジョンを生成する。本発明のエマルジョン前濃縮物を1:100で希釈時に生成するエマルジョンの、400 nmにおける吸光度は例えば0.3〜4.0の間でありうる。例えば、400 nmにおける吸光度は、例えば約0.4、0.5、0.6、1.0、1.2、1.6、2.0、2.2、2.4、2.5、3.0、または4.0の場合がある。溶液の吸光度を決定する方法は当業者に周知である。当業者であれば、水で希釈時に、本発明の範囲に含まれる任意の特定の吸光度を有するエマルジョンを得るために、本発明のエマルジョン前濃縮物の内容物の相対的な割合を確認して調整することができる。
【0069】
本発明の薬学的組成物は、例えば半固体状製剤、または液体状製剤の場合がある。本発明の半固体状製剤は、例えばゲル、ペースト、クリーム、および軟膏を含む、当技術分野で周知の任意の半固体状製剤の場合がある。
【0070】
本発明の薬学的組成物は親油相成分を含む。親油相成分としての使用に適した成分は、水と非混和性の任意の薬学的に許容される溶媒を含む。このような溶媒は、適切には界面活性物質の機能を含まないか、または実質的に含まない。
【0071】
親油相成分は、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリドを含む場合がある。本発明の範囲内で使用可能なモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドは、C6、C8、C10、C12、C14、C16、C18、C20、およびC22の脂肪酸に由来する化合物を含む。例示的なジグリセリドは、特にジオレイン、ジパルミトレイン(dipalmitolein)、およびカプリリン-カプリン(caprylin-caprin)混合型ジグリセリドを含む。好ましいトリグリセリドは、植物油、魚油、動物性脂肪、水素添加植物油、部分的水素添加植物油、合成トリグリセリド、改変トリグリセリド、分画したトリグリセリド、中鎖および長鎖のトリグリセリド、構造トリグリセリド、およびこれらの混合物を含む。
【0072】
上述のトリグリセリドのなかで、好ましいトリグリセリドは以下を含む:アーモンド油;ババス油;ルリヂサ油;ブラックカラント種子油;キャノラ油;ヒマシ油;ココナッツ油;コーン油;綿実油;メマツヨイグサ油;グレープシード油;ラッカセイ油;カラシ種子油;オリーブ油;パーム油;パーム核油;ピーナッツ油;ナタネ油;ベニバナ油;ゴマ油;鮫肝油;ダイズ油;ヒマワリ油;水素添加ヒマシ油;水素添加ココナッツ油;水素添加パーム油;水素添加ダイズ油;水素添加植物油;水素添加綿実油およびヒマシ油;部分的水素添加ダイズ油;部分的ダイズ油および綿実油;トリカプロン酸グリセリル;トリカプリル酸グリセリル;トリカプリン酸グリセリル;トリウンデカン酸グリセリル;トリラウリン酸グリセリル;トリオレイン酸グリセリル;トリリノール酸グリセリル;トリリノレン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/リノール酸グリセリル;ならびにトリカプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸グリセリル。
【0073】
好ましいトリグリセリドは、商品名LABRAFAC CCとして入手可能な中鎖トリグリセリドである。他の好ましいトリグリセリドは、中性油、例えば中性植物油、特に製品:MIGLYOL 810;MIGLYOL 812;MIGLYOL 818;およびCAPTEX 355を含む、商品名MIGLYOLとして既知の、かつ市販されているような、分画したココナッツ油を含む。
【0074】
製品MYRITOL 813を含む、商品名MYRITOLとして既知の、かつ市販のカプリル酸-カプリン酸トリグリセリドなども適している。このクラスのさらに適切な製品は、CAPMUL MCT、CAPTEX 200、CAPTEX 300、CAPTEX 800、NEOBEE M5、およびMAZOL 1400である。
【0075】
親油相成分として、特に製品MIGLYOL 812(米国特許第5,342,625号を参照)が好ましい。
【0076】
本発明の薬学的組成物は、親水相成分をさらに含む場合がある。親水相成分は、例えば薬学的に許容される、低分子量のモノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオールの、C1-5アルキルもしくはテトラヒドロフルフリルジエーテル、または部分エーテルを含む場合がある。適切な親水相成分は、例えばモノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオール、特にモノ-もしくはジ-オキシ-アルカンジオール(2〜12個(特に4個)の炭素原子を含む)の、ジエーテルまたは部分エーテル(特に部分エーテル)を含む。好ましくは、モノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオール部分は直鎖状である。本発明に関連して使用される例示的な親水相成分は、TRANSCUTOLおよびCOLYCOFUROL(米国特許第5,342,625号を参照)の商品名で知られており、かつ市販されている。
【0077】
特に好ましい態様では、親水相成分は、1,2-プロピレングリコールを含む。
【0078】
本発明の親水相成分は、1種または複数種の追加内容物を追加的に含む場合も当然ある。しかし好ましくは、任意の追加内容物は、活性型ビタミンD化合物担体溶媒としての親水性相の効力が物質的に損なわれないように、活性型ビタミンD化合物が十分可溶性である材料を含む。可能な追加的な親水相成分の例には、低級(例えばC1-5)アルカノール(特にエタノール)などがある。
【0079】
本発明の薬学的組成物は、1種または複数種の界面活性物質も含む。本発明と併せて使用可能な界面活性物質は、親水性または親油性の界面活性物質、またはこれらの混合物を含む。特に、非イオン性の親水性界面活性物質、および非イオン性の親油性界面活性物質が好ましい。
【0080】
適切な親水性界面活性物質には、天然植物油または水素添加植物油とエチレングリコールとの反応産物(例えば、ポリオキシエチレングリコール化された天然植物油または水素添加植物油(例えばポリオキシエチレングリコール化された天然ヒマシ油または水素添加ヒマシ油)などがある。このような産物は、既知の手順で、例えば天然ヒマシ油または水素添加ヒマシ油、またはこの分画をエチレンオキシドと、例えば約1:35〜約1:60のモル比で反応させ、この産物から遊離のポリエチレングリコール成分を、例えばGerman Auslegeschriften 第1,182,388号および第1,518,819号に記載された方法で任意選択で除去することで、得られる場合がある。
【0081】
本発明の薬学的化合物に使用される適切な親水性界面活性物質は、例えば以下の製品を含む、既知の、かつ商品名TWEENで市販されているタイプのポリオキシエチレン-ソルビタン-脂肪酸エステル、例えばモノ-およびトリラウリルエステル、パルミチルエステル、ステアリルエステル、およびオレイルエステルも含む:
TWEEN 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、
TWEEN 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、
TWEEN 60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、
TWEEN 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、
TWEEN 65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、
TWEEN 85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート)、
TWEEN 21(ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート)、
TWEEN 61(ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート)、および
TWEEN 81(ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート)。
【0082】
本発明の組成物に使用される、このクラスの特に好ましい産物は、上記の製品TWEEN 40およびTWEEN 80(Hauerら、米国特許第5,342,625号を参照)である。
【0083】
本発明の薬学的化合物に使用される親水性界面活性物質としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素添加植物油;ポリオールと、例えば脂肪酸、グリセリド、植物油、水素添加植物油、およびステロールとの反応混合物;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;コハク酸ジオクチル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ジ-[2-エチルヘキシル]-コハク酸、またはラウリル硫酸ナトリウム;リン脂質(特に、例えばダイズレシチンなどのレシチン);プロピレングリコールのモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステル(例えば、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ヒドロキシステアリン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコール、リシノレイン酸プロピレングリコール、ステアリン酸プロピレングリコール、および特に好ましくはカプリル酸-カプリン酸プロピレングリコールジエステル、ならびに胆汁酸塩(例えばタウロコール酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩)も適している。
【0084】
適切な親油性界面活性物質には、アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;脂肪酸;胆汁酸;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;モノ/ジグリセリドの乳酸エステル;プロピレングリコールジグリセリド;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;トランスエステル化植物油;ステロール;糖エステル;糖エーテル;スクログリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素添加植物油;ポリオールと、脂肪酸、グリセリド、植物油、水素添加植物油、およびステロールからなる群の少なくとも1つの要素(member)との反応混合物;ならびにこれらの混合物などがある。
【0085】
本発明の薬学的化合物に使用される、適切な親油性界面活性物質は、天然の植物油トリグリセリドとポリアルキレンポリオールのトランスエステル化産物も含む。このようなトランスエステル化産物は当技術分野で周知であり、例えば米国特許第3,288,824号に記載された一般的な手順で得られる。これには、さまざまな天然(例えば非水素添加)の植物油(例えば、トウモロコシ油、核油、アーモンド油、すり潰したナッツ油、オリーブ油、およびパーム油、およびこれらの混合物)と、ポリエチレングリコール(特に、平均分子量が200〜800のポリエチレングリコール)のトランスエステル化産物が含まれる。2モルの天然の植物油トリグリセリドと、1モルのポリエチレングリコール(例えば平均分子量が200〜800)のトランスエステル化によって得られる産物が好ましい。特定のクラスのさまざまな状態のトランスエステル化産物は既知であり、商品名LABRAFILとして市販されている。
【0086】
本発明の薬学的組成物との併用に適した他の親油性界面活性物質には、脂溶性ビタミン誘導体、例えばコハク酸トコフェロールPEG-1000(「ビタミンE TPGS」)などがある。
【0087】
本発明の薬学的化合物中に使用する親油性界面活性物質として、モノグリセリド、ジグリセリド、およびモノ/ジグリセリド、特にカプリル酸またはカプリン酸とグリセロールのエステル化産物;ソルビタン脂肪酸エステル;ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、およびポリアルキレングリコールエーテル、例えばペンタエリトリット-ジオレエート、-ジステアレート、-モノラウレート、-ポリグリコールエーテル、および-モノステアレート、ならびにペンタエリトリット脂肪酸エステル;モノグリセリド(例えば、モノオレイン酸グリセロール、モノパルミチン酸グリセロール、およびモノステアリン酸グリセロール;トリ酢酸グリセロール、または(1,2,3)-トリアセチン;ならびにステロールおよびそれらの誘導体(例えば、コレステロール、およびこの誘導体、特にフィトステロール(例えば、シトステロール、カンペステロール、またはスチグマステロール))、およびこのエチレンオキサイド付加物(例えばダイズステロール、およびこの誘導体)を含む産物も適している。
【0088】
複数の市販の界面活性物質組成物が、典型的には、例えばトランスエステル化反応におけるトリグリセリド出発材料の不完全な反応の結果として、少量〜中程度の量のトリグリセリドを含むことが当業者に理解される。したがって、本発明の薬学的組成物における使用に適した界面活性物質には、トリグリセリドを含むこのような界面活性物質などがある。トリグリセリドを含む市販の界面活性物質組成物の例には、界面活性物質ファミリーGELUCIRES、MAISINES、およびIMWITORSの一部の物質などがある。このような化合物の具体例は、GELUCIRE 44/14(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 50/13(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 53/10(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 33/01(C8〜C18飽和脂肪酸の半合成トリグリセリド);GELUCIRE 39/01(半合成グリセリド);他のGELUCIRE(37/06、43/01、35/10、37/02、46/07、48/09、50/02、62/05など);MAISINE 35-I(リノール酸グリセリド);ならびにIMWITOR 742(カプリル酸/カプリン酸グリセリド)(米国特許第6,267,985号を参照)である。
【0089】
有意なトリグリセリド量を有する、さらに他の市販の界面活性物質組成物は当技術分野で周知である。トリグリセリドならびに界面活性物質を含む、このような組成物が、本発明の親油相成分の全体または一部、ならびに界面活性物質の全体または一部を提供するために適していることが理解されるはずである。
【0090】
本発明の組成物中の内容物の相対的な割合が、対象となる特定の種類の組成物に依存して相当変動することは言うまでもない。相対的な割合は、組成物中の内容物の特定の機能に依存しても変動する。相対的な割合はまた、使用される特定の内容物、および産物組成物の所望の物理的特性に依存しても変動する(例えば、局所使用に用いる組成物の場合であれば、これが流動性の液体か、またはペーストであるかによって変動する)。任意の特定の状況における実行可能な割合の決定は通常、当業者の能力の範囲内にある。したがって、後述する指定の割合および相対重量範囲はいずれも、好ましい発明の教示を示すか、または個別に発明の教示を示すに過ぎず、最も広い局面において本発明を制限しないと理解される。
【0091】
本発明の親油相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約30重量%〜約90重量%の量で存在する。好ましくは、親油相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約50重量%〜約85重量%の量で存在する。
【0092】
本発明の界面活性物質(1種類または複数)は、適切には、組成物の総重量に対して約1重量%〜50重量%の量で存在する。好ましくは、界面活性物質(1種類または複数)は、組成物の総重量に対して約5重量%〜約40重量%の量で存在する。
【0093】
本発明の組成物中の活性型ビタミンD化合物の量が、例えば意図された投与経路、および他の成分が存在する規模に依存して変動することは言うまでもない。しかし一般に、本発明の活性型ビタミンD化合物は、適切には、組成物の総重量に対して約0.005重量%〜20重量%の量で存在する。好ましくは、活性型ビタミンD化合物は、組成物の総重量に対して約0.01重量%〜15重量%の量で存在する。
【0094】
本発明の親水相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約2重量%〜約20重量%の量で存在する。好ましくは、親水相成分は、組成物の総重量に対して約5重量%〜15重量%の量で存在する。
【0095】
本発明の薬学的組成物は半固体状製剤の場合がある。本発明の範囲に含まれる半固体状製剤は、例えば、組成物の総重量に対して約60重量%〜約80重量%の量で存在する親油相成分、組成物の総重量に対して約5重量%〜約35重量%の量で存在する界面活性物質、および組成物の総重量に対して約0.01重量%〜約15重量%の量で存在する活性型ビタミンD化合物を含む場合がある。
【0096】
本発明の薬学的組成物は液体状製剤の場合がある。本発明の範囲内の液体状製剤は例えば、組成物の総重量に対して約50重量%〜約60重量%の量で存在する親油相成分、組成物の総重量に対して約4重量%〜約25重量%の量で存在する界面活性物質、組成物の総重量に対して約0.01重量%〜約15重量%の量で存在する活性型ビタミンD化合物、ならびに組成物の総重量に対して約5重量%〜約10重量%の量で存在する親水相成分を含む場合がある。
【0097】
使用可能な他の組成物には、以下のようなものがある(各成分のパーセンテージは、活性ビタミンD化合物を除く組成物の総重量に基づく重量パーセント):
a. Gelucire 44/14 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
b. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
c. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
d. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
e. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
f. Gelucire 44/14 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
g. Gelucire 44/14 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
h. ビタミンE TPGS 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
i. Gelucire 44/14 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
j. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%;
k. Gelucire 50/13 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
l. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
m. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
n. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
o. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
p. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
q. Gelucire 50/13 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
r. Gelucire 50/13 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
s. Gelucire 44/14 約50%
PEG 4000 約50%;
t. Gelucire 50/13 約50%
PEG 4000 約50%;
u. ビタミンE TPGS 約50%
PEG 4000 約40%;
v. Gelucire 44/14 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.3%;
w. Gelucire 50/13 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.3%;
x. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
y. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
z. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約95%;
aa. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%
PEG 4000 約30%;
ab. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約90%;
ac. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約85%
PEG 4000 約10%;および
ad. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約80%
PEG 4000 約10%。
【0098】
本発明のある態様では、薬学的組成物は、活性ビタミンD化合物、親油性成分、および界面活性物質を含む。親油性成分は、約1%〜約100%の任意のパーセンテージで存在する場合がある。親油性成分は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%で存在する場合がある。界面活性物質は、約1%〜約100%の任意のパーセンテージで存在する場合がある。界面活性物質は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%で存在する場合がある。ある態様では、親油性成分はMIGLYOL 812であり、また界面活性物質はビタミンE TPGSである。好ましい態様では、薬学的組成物は、50%のMIGLYOL 812と50%のビタミンE TPGS、90%のMIGLYOL 812、および10%のビタミンE TPGS、または95%のMIGLYOL 812および5%のビタミンE TPGSを含む。
【0099】
本発明の別の態様では、薬学的組成物は、活性ビタミンD化合物および親油性成分、例えば約100%のMIGLYOL 812を含む。
【0100】
好ましい態様では、薬学的組成物は、50%のMIGLYOL 812、50%のビタミンE TPGS、ならびに少量のBHAおよびBHTを含む。この剤形は、化学的かつ物理的に意外なほど安定なことがわかっている(実施例3参照)。安定性が高くなることで、組成物の有効期間はより長くなる。重要な点として、安定性は、組成物の室温保存も可能とすることで、冷蔵保存時の煩雑さの回避および費用の節約につながる。加えて同組成物は経口投与に適しており、また高用量の活性ビタミンD化合物を可溶化可能なために、過増殖疾患および他の障害の治療のための、活性ビタミンD化合物の高用量パルス投与が可能なことがわかっている。
【0101】
本発明の活性ビタミンD化合物を含む薬学的組成物は、1種または複数種の添加物をさらに含む場合がある。当技術分野で周知の添加物は、例えば減粘剤(detackifier)、消泡剤(antifoaming agent)、緩衝剤、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、およびトコフェロール(例えばα-トコフェロール(ビタミンE))、保存剤、キレート剤、粘性調整剤(viscomodulator)、等張剤(tonicifier)、香味剤(flavorant)、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、およびこれらの混合物を含む。これら添加物の量は、当業者であれば、所望の特定の特性にしたがって容易に決定することができる。例えば、抗酸化剤は組成物の総重量に基づいて約0.05重量%〜約0.35重量%の量で存在してもよい。
【0102】
添加物には濃化剤(thickening agent)を含めることもできる。適切な濃化剤は、例えば薬学的に許容されるポリマー材料、および無機濃化剤を含む、当技術分野で公知であり、かつ使用されている化合物の場合がある。本発明の薬学的組成物に使用される例示的な濃化剤には、ポリアクリレート、およびポリアクリレートコポリマー樹脂(例えばポリアクリル酸、およびポリアクリル酸/メタクリル酸樹脂);アルキルセルロース(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、およびプロピルセルロース)を含むセルロースおよびセルロース誘導体;ヒドロキシアルキルセルロース(例えばヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシプロピルアルキルセルロース);アシル化セルロース(例えば酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース);ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの、これらの塩;ポリビニルピロリドン(例えばポリ-N-ビニルピロリドンを含む)、およびビニルピロリドンコポリマー(ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーなど);例えば、ポリビニル樹脂(例えばポリ酢酸ビニルおよびアルコールを含む)、ならびに他のポリマー材料(トラガカントガム、アラビアゴム、アルギン酸塩(例えばアルギン酸、および例えばアルギン酸ナトリウムなどの、この塩)を含む);ならびにアタパルジャイト(atapulgite)、ベントナイト(bentonite)、およびケイ酸塩(親水性二酸化ケイ素産物、例えばアルキル化(例えばメチル化)シリカゲル、特にコロイド状二酸化ケイ素産物を含む)などの無機濃化剤が含まれる。
【0103】
上記のような濃化剤は、例えば徐放性効果をもたらすことを目的として含めることができる。しかし、経口投与が意図される場合は、上述の濃化剤の使用は通常必要とされず、一般にはそれほど好まれない。濃化剤の使用は一方で、例えば局所塗布が推定される場合に指示される。
【0104】
本発明による組成物は、任意の適切な手段での投与に使用することができる。例えば、例として単位投与剤形(例えば溶液中、ゼラチンに包まれた状態を含む硬カプセルもしくは軟カプセル状)での経口投与、非経口投与、または例としてクリーム、ペースト、ローション、ゲル、軟膏、湿布剤、パップ剤、膏薬、経皮パッチなどでの、例えは皮膚への局所投与に使用してもよい。または眼科的使用の場合は、例えば点眼剤(液体、ローション、またはゲル)の状態で行う。容易に流動可能な形状(例えば溶液およびエマルジョン)を、例えば病巣内への注入に使用することもできるほか、例えば浣腸として直腸から投与することができる。
【0105】
本発明の組成物を単位投与剤形に製剤化する場合は、活性型ビタミンD化合物の量は、好ましくは単位用量あたり1〜200μgとする。より好ましくは、単位用量あたりの活性型ビタミンD化合物の量は約1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、または200μg、またはこれらの中間の任意の量である。好ましい態様では、単位剤形当たりの活性ビタミンD化合物の量は、約5μg〜約180μg、より好ましくは約10μg〜約135μg、より好ましくは約45μgである。ある態様では、単位剤形は45μg、90μg、135μg、または180μgのカルシトリオールを含む。
【0106】
組成物の単位剤形がカプセルの場合、カプセル中に存在する内容物の総量は、好ましくは約10〜1000μLである。より好ましくは、カプセル中に存在する内容物の総量は約100〜300μLである。別の態様では、カプセル中に存在する内容物の総量は、好ましくは約10〜1500 mgであり、好ましくは約100〜1000 mgである。ある態様では、総量は約225 mg、約450 mg、約675 mg、または約900 mgである。ある態様では、単位剤形は45μg、90μg、135μg、または180μgのカルシトリオールを含むカプセルである。
【0107】
活性ビタミンD化合物と併用して使用される治療薬
本発明の1つの局面は、1つまたは複数の治療薬と併用して、活性ビタミンD化合物をそれを必要とする動物に投与する段階を含む、免疫介在疾患を治療、改善、または予防する方法を提供する。治療薬は、小分子、合成薬、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えばアンチセンスヌクレオチド配列、3重らせん、および生物活性を持つタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするヌクレオチドを含むがこれらに限定されない、DNAおよびRNAヌクレオチド)、抗体、合成または天然の無機分子、模倣薬、合成または天然の有機分子、および小分子を含むがこれらに限定されない。免疫介在疾患に伴う1つまたは複数の症状の治療、改善、または予防に有用なことが既知であるか、使用されてきたか、現在使用されている任意の薬剤は、本明細書に記述される本発明にしたがって、活性ビタミンDと併用して使用できる。免疫介在疾患の治療に使われてきたか現在使われている治療薬に関する情報は、例えば、Hardman, et al., eds., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Therapeutics, 10th Ed, Mc-Graw-Hill, New York (1996), pp.643-754, 1381-1484, 1649-1678、およびemedicineのウェブサイト(www.emedicine.com)を参照されたい。そのような薬剤には、免疫調節剤(例えば有機小分子、T細胞受容体調節剤、サイトカイン受容体調節剤、T細胞除去剤、サイトカイン拮抗剤、モノカイン拮抗剤、リンパ球阻害剤、抗癌剤、コルチコステロイド、細胞毒性薬、および免疫抑制剤);アンジオスタチンのような抗血管新生剤、TNFα拮抗剤(例えば抗TNFα抗体)、インテグリンαvβ3拮抗剤(例えば非触媒性メタロプロテイナーゼ断片のようなタンパク様薬剤、RGDペプチド、ペプチド模倣物、融合タンパク質、ディスインテグリン、またはその誘導体もしくはアナログ、およびインテグリンαvβ3に免疫特異的に結合する抗体、核酸分子、有機分子、および無機分子);抗炎症薬(例えば非ステロイド性抗炎症薬、アセトアミノフェンおよびフェナセチンのような非麻薬性鎮痛剤、クロロキン、金塩、メトトレキセート、D-ペニシラミン、アロプリノール、コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン、抗ヒスタミン薬、ヒドロキシクロロキンのような抗マラリア剤、抗ウイルス薬、抗生物質、およびPPARγ作動薬);ならびに発疹および腫脹のための外皮用剤(例えば光線療法、光線化学療法、ならびに皮膚軟化薬、サリチル酸、コールタール、局所ステロイド、局所コルチコステロイド、タザロテン、および局所レチノイドのような局所剤)が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様では、治療薬には、例えば、コルチコステロイド、アザチオプリン、メトトレキセート、シクロホスファミド(Cytoxan)、クロラムブシル、ミコフェノレートモフェチル(CellCept)、メルカプトプリン、ラパミューン、タクロリムス(FK506)、サイクロスポリン、レチノイド、ナイトロジェンマスタード、インターフェロン、抗生物質、抗ヒスタミン、PUVA、化学療法、および紫外線のような、全身投与薬が含まれる。
【0108】
免疫調節剤
本発明の方法および組成物には、当業者に周知の任意の免疫調節剤が使用できる。免疫調節剤とは、宿主の免疫系を調節する薬剤である。特に、免疫調節剤は、対象者の免疫系が、1つまたは複数の外来抗原に応答する能力を変化させる薬剤である。特定の態様では、免疫調節剤は、対象者の免疫応答の1つの局面を移行させる、例えば、免疫応答をTh1からTh2応答に移行させる薬剤である。特定の態様では、免疫調節剤は、対象者の免疫系を阻害または低下させる薬剤である(すなわち、免疫抑制剤)。別の特定の態様では、免疫調節剤は、対象者の免疫系を活性化または増強する薬剤である(すなわち、免疫刺激剤)。本発明では、本発明の併用治療で使用される免疫調節剤は、ビタミンD誘導体またはアナログを含まない。
【0109】
免疫調節剤は、対象者の免疫応答の1つまたは複数またはすべての局面に影響を与え得る。免疫応答の局面には、炎症反応、補体カスケード、白血球およびリンパ球の分化、増殖、および/またはエフェクター機能、単球および/または好塩基球数、ならびに免疫系の細胞間での細胞コミュニケーションが含まれるが、これらに限定されない。本発明の特定の態様では、免疫調節剤は、免疫応答の1つの局面を調節する。他の態様では、免疫調節剤は、免疫系の複数の局面を調節する。本発明の1つの好ましい態様では、動物に免疫調節剤を投与すると、動物の免疫応答能力の1つまたは複数の局面が阻害されるまたは低下する。本発明の特定の態様では、免疫調節剤は、動物の免疫応答を阻害または抑制する。本発明では、免疫調節剤は、例えばカルシトリオールのような活性ビタミンD化合物ではない。
【0110】
免疫調節剤は、T細胞および/またはB細胞の機能に干渉するように選択できる。免疫調節剤は、T細胞とB細胞の間の相互作用に干渉するように、例えば、Tヘルパーサブセット(TH1またはTH2)とB細胞の間の相互作用に干渉して中和抗体の形成を阻害するようにも選択できる。免疫調節剤は、TH1細胞と細胞障害性リンパ球(CTL)の間の相互作用を阻害するように選択し、CTLの介在する死の発生を低下させることができる。免疫調節剤は、CD4および/またはCD8T細胞の増殖、分化、活性、および/または機能を変化させる(例えば阻害または抑制)ように選択できる。例えば、T細胞特異的抗体を免疫調節剤として使用して、CD4および/またはCD8T細胞の増殖、分化、活性、および/または機能を除去または変化させることができる。免疫調節剤の例には、サイトカイン、ペプチド模倣物、および抗体(例えばヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体、Fv、ScFv、Fab、またはF(ab)2断片、またはエピトープ結合断片)のようなタンパク様薬剤、核酸分子(例えばアンチセンス核酸分子および3重らせん)、小分子、有機化合物、ならびに無機化合物が含まれるがこれらに限定されない。特に、免疫調節剤には、メトトレキセート、レフルノマイド、シクロホスファミド(Cytoxan)、アザチオプリン(Immuran)、サイクロスポリン、ミノサイクリン、抗生物質、タクロリムス(FK506)、メチルプレドニゾロン、コルチコステロイド、ステロイド、ミコフェノレートモフェチル(CellCept)、ラパマイシン(シロリムス)、クロラムブシル、ミゾリビン、デオキシスパーガリン、ブレキナール、マロノニトリロアミド、T細胞調節剤、B細胞調節剤、およびサイトカイン受容体調節剤が含まれるが、これらに限定されない。T細胞調節剤の例には、抗T細胞受容体抗体(例えば抗CD4抗体(例えばcM-T412 (Boeringer), IDEC- CE9.1 (IDECおよびSKB)、mAB 4162W94, OrthocloneおよびOKTcdr4a (Janssen-Cilag))、抗CD3抗体(例えばNuvion (Product Design Labs), OKT3 (Johnson & Johnson)), 抗CD5抗体(例えば抗CD5リシン結合免疫複合体)、抗CD7抗体(例えばCHH-380 (Novartis))、抗CD8抗体、抗CD40リガンドモノクローナル抗体(例えばIDEC-131 (IDEC))、抗CD52抗体(例えばCAMPATH 1H (Ilex))、抗CD2抗体、抗CD11a抗体(例えばXanelim (Genentech))、および抗B7抗体(例えばIDEC-114 (IDEC))、およびCTLA4-免疫グロブリン(CTLA4-Ig)が含まれるがこれらに限定されない。B細胞免疫調節剤の例には、抗B細胞受容体抗体、抗CD19抗体、および抗CD20抗体(例えばリタキサン(IDEC), Bexxar)が含まれるがこれらに限定されない。サイトカイン受容体調節剤の例には、可溶性サイトカイン受容体(例えばTNFα受容体の細胞外ドメインまたはその断片、IL-1受容体の細胞外ドメインまたはその断片、およびIL-6受容体の細胞外ドメインまたはその断片)、サイトカインまたはその断片(例えばIL-2, IL-3, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-9, IL-10, IL-11, IL-12, IL-15, TNF-α、TNF-β、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-γ、およびGM-CSF)、抗サイトカイン受容体抗体(例えば抗IFN受容体抗体、抗IL-2受容体抗体(例えばZenapax (Protein Design Labs))、抗IL-4受容体抗体、抗IL-6受容体抗体、抗IL-10受容体抗体、および抗IL-12受容体抗体)、抗サイトカイン抗体(例えば抗IFN抗体、抗TNF-α抗体、抗IL-1抗体、抗IL-6抗体、抗IL-8抗体(例えばABX-IL-8 (Abgenix))、抗IL-9抗体、および抗IL-12抗体)が含まれるがこれらに限定されない。特定の態様では、サイトカイン受容体調節剤はIL-4、IL-10、またはその断片である。別の態様では、サイトカイン受容体調節剤は、抗IL-1抗体、抗IL-6抗体、抗IL-12受容体抗体、または抗TNF-α抗体である。別の態様では、サイトカイン受容体調節剤は、TNF-α受容体の細胞外ドメインまたはその断片である。好ましい態様では、免疫調節剤として使用するタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド(抗体を含む)は、それらのタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに対する免疫応答の可能性を低下させるために、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの受容者と同じ種に由来する。別の好ましい態様では、動物がヒトの時に、免疫調節剤として使用されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、ヒトのものまたはヒト化されたものである。
【0111】
本発明では、本発明の活性ビタミンD化合物および他の治療薬の前、その後、または同時に、1つまたは複数の免疫調節剤が、免疫介在疾患を持つ動物に投与される。好ましくは、1つまたは複数の免疫調節剤は、必要ならば免疫応答の1つまたは複数の局面を低下または阻害するために、免疫介在疾患を持つ動物に投与される。当業者に周知の任意の技術を使用して、特定の動物における免疫応答の1つまたは複数の局面を測定し、それにより、いつ動物に免疫調節剤を投与することが必要かを決定できる。1つの好ましい態様では、対象者において、約500細胞/mm3、好ましくは600細胞/mm3、650細胞/mm3、700細胞/mm3、750細胞/mm3、800細胞/mm3、900細胞/mm3、1000細胞/mm3、1100細胞/mm3、または1200細胞/mm3の平均絶対リンパ球数が維持される。別の好ましい態様では、絶対リンパ球数が500細胞/mm3もしくはそれ以下、550細胞/mm3もしくはそれ以下、600細胞/mm3もしくはそれ以下、650細胞/mm3もしくはそれ以下、700細胞/mm3もしくはそれ以下、750細胞/mm3もしくはそれ以下、または800細胞/mm3もしくはそれ以下の場合には、免疫介在疾患を持つ動物には、免疫調節剤は投与されない。
【0112】
好ましい態様では、免疫介在疾患を持つ動物に1つまたは複数の免疫調節剤を投与し、免疫応答の1つまたは複数の局面を一時的に低下または阻害する。そのような免疫系の1つまたは複数の局面の一時的な阻害または低下は、数時間、数日間、数週間、または数ヶ月間継続する可能性がある。好ましくは、免疫応答の1つまたは複数の局面の阻害または低下は、数時間(例えば2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、14時間、16時間、18時間、24時間、36時間、または48時間)、数日間(例えば3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、または14日間)、または数週間(例えば3週間、4週間、5週間、または6週間)継続する。
【0113】
本発明の1つの態様では、T細胞、好ましくはメモリーT細胞を低下させるまたは除去する免疫調節剤が、本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ動物に投与される。本発明の別の態様では、CD8T細胞を不活化する免疫調節剤が、本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ動物に投与される。特定の態様では、CD8T細胞を低下または除去するために、抗CD8抗体が使用される。TH細胞によるB細胞の活性化に必要な相互作用に干渉または遮断し、中和抗体の産生を遮断する抗体は、本発明の方法において、免疫調節剤として有用である。例えば、T細胞によるB細胞の活性化には、Tヘルパー細胞上のCD40リガンドのB細胞上のCD40抗原への結合、およびT細胞上のCD28および/またはCTLA4リガンドのB細胞上のB7抗原への結合のような、特定の相互作用が必要である(Durie et al., Immunol. Today, 15(9):406-419 (1994))。両方の相互作用がなければ、B細胞は活性化して中和抗体の産生を誘導することができない。CD40リガンド(CD40L)-CD40相互作用は、Tヘルパー細胞の活性化および機能に広い活性を持ち、シグナル伝達経路に冗長性がないため、免疫応答を遮断する場所として望ましい。したがって、本発明の特定の態様では、1つまたは複数の免疫調節剤の投与の時に、CD40LのCD40との相互作用が一時的に遮断される。これは、TH細胞上のCD40リガンドを遮断しTH細胞上のCD40リガンドのB細胞上のCD40抗原への正常な結合に干渉する薬剤で処理することによって実施できる。CD40リガンドに対する抗体(抗CD40L)(Bristol-Myers Squibb Coから販売されている;例えば、1993年8月18日公開の欧州特許出願第555,880号を参照されたい)または可溶性CD40分子を選択し、本発明の方法にしたがう免疫調節剤として使用できる。別の態様では、CD4Tヘルパー細胞のTH0、TH1、および/またはTH2サブセットの1つまたは複数の生物活性(例えば分化、増殖、および/またはエフェクター機能)を低下または阻害する免疫調節剤を、本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ動物に投与できる。そのような免疫調節剤の1例はIL-4である。IL-4はTH1細胞機能を犠牲にして、TH2細胞の抗原特異的活性を増強する(例えばYokota, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:5894-5898 (1986); および米国特許第5,017,691号を参照されたい)。Tヘルパー細胞(特にTH1および/またはTH2細胞)の生物活性(例えば増殖、分化、および/またはエフェクター機能)に影響を与える免疫調節剤の他の例には、IL-2, IL-6, IL-9, IL-10, IL-12, IL-15、およびIFN-γが含まれるが、これらに限定されない。別の態様では、本発明の方法にしたがって免疫介在疾患を持つ動物に投与される免疫調節剤は、抗原提示を阻害するサイトカインである。1つの好ましい態様では、本発明の方法で使用される免疫調節剤はIL-10である。IL-10はまた、細菌の除去に関与するマクロファージ活性も低下または阻害する。本発明にしたがって使用できる他の免疫調節剤の例には、コルチコステロイド(例えばベクロメタゾン、ベタメタゾン、コルチゾン、デゾキシコルチコステロン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、ハイドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、およびトリアムシノロン)、アザチオプリン、ミコフェノレートモフェチル、サイクロスポリンA、FK506、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、6-チオグアニン、シタラビン、メルファラン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、プロカルバジン、デカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、レフルノマイド、およびサイクロホスファミドが含まれるが、これらに限定されない。サイクロホスファミドの短期間治療は、アデノウイルスのカプシドタンパク質に対するCD4およびCD8T細胞の両方の活性化を妨害することが示されており(Jooss et al., Hum. Gene Ther. 7:1555-1566 (1996))、高用量では、中和抗体の形成が阻害された。ハイドロコルチゾンまたはサイクロスポリンA治療は、細菌感染の除去に関与する場合もあるサイトカインの誘導を低下させるために使用されている。本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ動物に、免疫調節活性を持つタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードする核酸分子、または免疫調節活性を持つタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドを投与することができる。さらに、本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ動物に、免疫調節活性を持つタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの誘導体、アナログ、断片、もしくは変異型をコードする核酸分子、または免疫調節活性を持つタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの誘導体、アナログ、断片、もしくは変異型を投与することができる。好ましくは、そのような誘導体、アナログ、変異型、および断片は、全長の野生型のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの免疫調節活性を保持している。免疫調節剤として使用できるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、当技術分野で周知の任意の技術を用いて生産できる。例えば、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの生産方法を記述し、全体が参照により本明細書に組み入れられる、Ausubel et al., eds., Short Protocols in Molecular Biology, Fourth Edition, John Wiley & Sons, NY (1999)のChapter 16を参照されたい。免疫調節剤として使用できる抗体は、例えば、全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,245,527号およびHarlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)に記述された方法により、生産できる。好ましくは、本発明の組成物および方法では、市販されており、免疫調節剤として機能することが知られている薬剤が用いられる。薬剤の免疫調節活性は、例えば、CTLアッセイ、増殖測定、および同時刺激分子およびサイトカインのような特定のタンパク質の発現に関する免疫アッセイ(例えばELISA)を含む、当業者に周知の任意の技術によって、インビトロおよび/またはインビボで決定できる。
【0114】
抗血管新生剤
本発明の組成物および方法では、当業者に周知の任意の抗血管新生剤が使用できる。抗血管新生剤の非限定的な例には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、抗体(例えばヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体、Fv、ScFv、Fab断片、F(ab)2断片、およびその抗原結合断片)、核酸分子(例えばアンチセンス分子または3重らせん)、有機分子、無機分子、および血管新生を低下または阻害または中和する小分子が含まれる。特に、抗血管新生剤の例には、エンドスタチン、アンジオスタチン、アポミグレン、抗血管新生性アンチトロンビンIII、フィブロネクチンのN末端の29 kDaおよびC末端の40 kDaのタンパク分解断片、uPA受容体拮抗剤、プロラクチンの16 kDaのタンパク分解断片、血小板因子4の7.8 kDaのタンパク分解断片、血小板因子4の抗血管新生性24アミノ酸断片、13.40と呼ばれる抗血管新生因子、トロンボスポンジンIの抗血管新生性22アミノ酸ペプチド断片、SPARCの20アミノ酸のペプチド断片、RGDおよびNGR含有ペプチド、ラミニン、フィブロネクチン、プロコラーゲン、ならびにEGFの小さな抗血管新生ペプチド、インテグリンαvβ3拮抗剤(例えば抗インテグリンαvβ3抗体)、TNF-α拮抗剤、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)拮抗剤、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)拮抗剤、血管内皮増殖因子(VEGF)拮抗剤、およびVEGF受容体(VEGFR)拮抗剤(例えば抗VEGFR抗体)が含まれるがこれらに限定されない。
【0115】
本発明の特定の態様では、抗血管新生剤はエンドスタチンである。天然に存在するエンドスタチンは、コラーゲンXVIIIのC末端の〜180アミノ酸を含む(コラーゲンXVIIIの2つのスプライス型をコードするcDNAは、GenBankアクセッション番号AF18081およびAF18082を持つ)。本発明の別の態様では、抗血管新生剤はプラスミノゲン断片である(プラスミノゲンのコード配列は、GenBankアクセッション番号NM_000301およびA33096に見られる)。アンジオスタチンペプチドは、天然ではプラスミノゲンの4つのクリングルドメイン、クリングル1からクリングル4を含む。組換えクリングル1、2、および3は天然ペプチドの抗血管新生の性質を持っているが、クリングル4にはそのような活性がないことが示されている(Cao et al., J. Biol. Chem. 271:29461-29467 (1996))。したがって、アンジオスタチンペプチドは、クリングル1、クリングル2、およびクリングル3からなる群より選択される、少なくとも1つ、および好ましくは複数のクリングルドメインを含む。特定の態様では、抗血管新生ペプチドは、ヒトアンジオスタチン分子の40 kDaのアイソフォーム、ヒトアンジオスタチン分子の42 kDaのアイソフォーム、ヒトアンジオスタチン分子の45 kDaのアイソフォーム、またはその組み合わせである。別の態様では、抗血管新生剤は、プラスミノゲンのクリングル5ドメインであり、これはアンジオスタチンよりも強力な血管新生阻害剤である(アンジオスタチンはクリングルドメイン1〜4を含む)。本発明の別の態様では、抗血管新生剤はアンチトロンビンIIIである。以下、本明細書ではアンチトロンビンと呼ばれるアンチトロンビンIIIは、このタンパク質を血管壁につなぎ留めるヘパリン結合ドメイン、およびトロンビンと相互作用する活性部位ループを含む。アンチトロンビンがヘパリンに結合すると、このタンパク質は立体配座の変化を誘発し、それにより活性ループがトロンビンと相互作用できるようになり、トロンビンはそのループのタンパク分解性の開裂を行う。タンパク分解性の開裂により、アンチトロンビンの立体配座がさらに変化し、それによって (i) トロンビンとアンチトロンビンの相互作用の領域が変化し、(ii) 複合体がヘパリンから離れる(Carrell, Science 285:1861-1862 (1999)、およびその参考文献)。O'Reilly et al., Science 285:1926-1928 (1999)は、開裂したアンチトロンビンは強力な抗血管新生活性を有することを発見した。したがって、1つの態様では、抗血管新生剤は、アンチトロンビンの抗血管新生型である。本発明の別の態様では、抗血管新生剤はフィブロネクチンの40 kDaおよび/または29 kDaのタンパク分解断片である。
【0116】
本発明の別の態様では、抗血管新生剤はウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)受容体拮抗剤である。この態様の1つの様式では、拮抗剤はuPAのドミナントネガティブな変異体である(例えば、Crowley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5021-5025 (1993)を参照されたい)。この態様の別の様式では、拮抗剤はペプチド拮抗剤またはその融合タンパク質である(Goodson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:7129-7133 (1994))。この態様のさらに別の様式では、拮抗剤はドミナントネガティブな可溶性uPA受容体である(Min et al., Cancer Res. 56:2428-2433 (1996))。本発明の別の態様では、本発明の治療用分子は、約120アミノ酸を含むプロラクチンの16 kDaのN末端断片、またはその生物活性のある断片である(プロラクチンのコード配列は、GenBankアクセッション番号NM_000948に見られる)。本発明の別の態様では、抗血管新生剤は7.8 kDaの血小板因子4断片である。本発明の別の態様では、本発明の治療用分子は、血小板因子4の抗血管新生性の13アミノ酸断片、13.40と呼ばれる抗血管新生因子、トロンボスポンジンIの抗血管新生性の22アミノ酸のペプチド断片、SPARCの抗血管新生性の20アミノ酸ペプチド断片、ラミニン、フィブロネクチン、プロコラーゲン、もしくはEGFの小さな抗血管新生ペプチド、またはインテグリンαvβ3もしくはVEGF受容体の小さなペプチド拮抗剤に対応する、小さなペプチドである。別の態様では、小さなペプチドはRGFまたはNGRモチーフを含む。特定の態様では、抗血管新生剤は、TNF-α拮抗剤である。
【0117】
TNFα拮抗剤
本発明の組成物および方法では、当業者に周知の任意のTNF-α拮抗剤が使用できる。TNF-α拮抗剤の非限定的な例には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、抗体(ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体、Fv、ScFv、Fab断片、F(ab)2断片、およびその抗原結合断片)、核酸分子(例えばアンチセンス分子および3重らせん)有機化合物、無機化合物、およびTNF-αの機能、活性、および/または発現を遮断、低下、阻害、または中和する小分子が含まれる。さまざまな態様では、TNF-α拮抗剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような対照と比較して、TNF-αの機能、活性、および/または発現を、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%低下させる。
【0118】
TNF-αに免疫特異的に結合する抗体の例には、インフリキシマブ(REMICADE(商標); Centacor)、D2E7 (Abbott Laboratories/Knoll Pharmaceuticals Co., Mt. Olive, N.J.)、 HUMICADE(商標)としても知られるCDP571、およびCDP-870(いずれもCelltech/Pharmacia, Slough, U.K.)、およびTN3-19.12(William et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:2762-2766 (1994); Thorbecke et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7375-7379 (1992))が含まれるがこれらに限定されない。本発明は、本発明の組成物および方法における、以下の米国特許に開示されたTNF-αに免疫特異的に結合する抗体の使用も含む:米国特許第5,136,021; 5,147,638; 5,223,395; 5,231,024; 5,334,380; 5,360,716; 5,426,181; 5,436,154; 5,610,279; 5,644,034; 5,656,272; 5,658,746; 5,698,195; 5,736,138; 5,741,488; 5,808,029; 5,919,452; 5,958,412; 5,959,087; 5,968,741; 5,994,510; 6,036,978; 6,114,517; および6,171,787号。各々はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。可溶性TNF-α受容体の例には、sTNF-RI (Amgen)、エタネルセプト(ENBREL(商標); Immunex)、およびそのラットホモログRENBREL(商標)、TNFrIから得られるTNF-αの可溶性阻害剤、TNFrII(Kohno et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8331-8335 (1990)、およびTNF-αInh(Seckinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:5188-5192 (1990))が含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
1つの態様では、本発明の方法で使用されるTNF-α拮抗剤は、可溶性TNF-α受容体である。特定の態様では、本発明の組成物および方法で使用されるTNF-α拮抗剤は、エタネルセプト(ENBREL(商標); Immunex)またはその断片、誘導体、もしくはアナログである。別の態様では、本発明の組成物および方法で使用されるTNF-α拮抗剤は、TNF-αに免疫特異的に結合する抗体である。特定の態様では、本発明の組成物および方法で使用されるTNF-α拮抗剤は、インフリキシマブ(REMICADE(商標); Centacor)またはその誘導体、アナログ、もしくは抗原結合断片である。本発明の範囲に含まれる他のTNF-α拮抗剤には、インターフェロン活性化マクロファージを介してTNF-α生産を遮断することが知られているIL-10(Oswald et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:8676-8680 (1992))、TNFR-IgG(Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535-10539 (1991))、マウス産物TBP-1(Serono/Yeda)、ワクチンCytoTAb (Protherics)、アンチセンス分子104838 (ISIS)、ペプチドRDP-58 (SnagStat)、サリドマイド(Celgene)、CDC-801 (Celgene), DPC-333 (Dupont), VX745 (Vertex), AGIX-4207 (AtheroGenics), ITF-2357 (Italfarmaco), NPI-13021-31 (Nereus), SCIO-469 (Scios) TACEターゲッター(Immunix/AHP)、CLX-120500 (Calyx), チアゾロピリム (Dynavax), アウラノフィン(Ridaura; SmithKline Beecham Pharmaceuticals), キナクリン(メパクリンジクロロハイドレート)、テニダップ(Enablex)、メラニン(Large Scale Biological)、およびUriachの抗p38 MAPK剤が含まれるが、これらに限定されない。TNF-α拮抗剤活性を持つタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードする核酸分子、またはTNF-α拮抗剤活性を持つタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドは、本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ動物に投与できる。さらに、TNF-α拮抗剤活性を持つタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの誘導体、アナログ、断片、もしくは変異型をコードする核酸分子、またはTNF-α拮抗剤活性を持つタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの誘導体、アナログ、断片、もしくは変異型は、本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ動物に投与できる。好ましくは、そのような誘導体、アナログ、変異型、および断片は、全長の野生型タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドのTNF-α拮抗剤活性を保持している。TNF-α拮抗剤として使用できるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、当技術分野で周知の任意の技術によって生産できる。TNF-α拮抗剤活性を持つタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、当技術分野で周知の技術を用いて、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドのインビボでの半減期を上昇するように操作できる。好ましくは、本発明の組成物および方法では、市販されており、TNF-α拮抗剤として機能することが周知の薬剤が使用される。薬剤のTNF-α拮抗剤活性は、当業者に周知である任意の技術によって、インビトロおよび/またはインビボで決定できる。
【0120】
インテグリンαvβ3拮抗剤
本発明の方法および組成物では、当業者に周知の任意のインテグリンαvβ3拮抗剤が使用できる。本明細書で使用される「インテグリンαvβ3拮抗剤」という用語および類似語は、インテグリンαvβ3拮抗剤の機能、活性、および/または発現を、遮断、阻害、低下、または中和する、任意のタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、抗体、抗体断片、大分子、または小分子を意味する。さまざまな態様では、インテグリンαvβ3拮抗剤は、インテグリンαvβ3の機能、活性、および/または発現を、PBSのような対照と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%低下させる。本発明は、本発明の組成物および方法における、1つまたは複数のインテグリンαvβ3拮抗剤の使用を含む。インテグリンαvβ3拮抗剤の例には、非触媒性メタロプロテイナーゼ断片のようなタンパク様の薬剤、RGDペプチド、ペプチド模倣物、融合タンパク質、ディスインテグリン、またはその誘導体もしくはアナログ、およびインテグリンαvβ3に免疫特異的に結合する抗体、核酸分子、有機分子、および無機分子が含まれるがこれらに限定されない。インテグリンαvβ3に認識されるRGDペプチドの非限定的な例には、トリフラビン(Triflavin)が含まれる。インテグリンαvβ3に免疫特異的に結合する抗体の例には、11D2 (Searle)およびLM609 (Scripps)が含まれるがこれらに限定されない。小分子ペプチド模倣物のインテグリンαvβ3拮抗剤の非限定的例には、S836 (Searle)およびS448 (Searle)が含まれる。ディスインテグリンの例にはAccutinが含まれるが、これに限定されない。本発明は、本発明の方法において、各々その全体が参照により本明細書に組み入れられる以下の米国特許の方法の部分に開示される、任意のインテグリンαvβ3拮抗剤の使用も含む:米国特許第5,149,780; 5,196,511; 5,204,445; 5,262,520; 5,306,620; 5,478,725; 5,498,694; 5,523,209; 5,578,704; 5,589,570; 5,652,109; 5,652,110; 5,693,612; 5,705,481; 5,767,071; 5,770,565; 5,780,426; 5,817,457; 5,830,678; 5,849,692; 5,955,572; 5,985,278; 6,048,861; 6,090,944; 6,096,707; 6,130,231; 6,153,628; 6,160,099;および6,171,588号。特定の態様では、インテグリンαvβ3拮抗剤は、有機小分子である。1つの好ましい態様では、インテグリンαvβ3拮抗剤は、インテグリンαvβ3に免疫特異的に結合する抗体である。1つの好ましい態様では、インテグリンαvβ3拮抗剤は、血管新生を阻害または低下させる。
【0121】
1つの好ましい態様では、インテグリンαvβ3拮抗剤として利用されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチド(抗体および融合タンパク質を含む)は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの受容者と同じ種に由来し、そのため、それらのタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに対する免疫応答の可能性が低下している。別の好ましい態様では、動物がヒトの場合、インテグリンαvβ3拮抗剤として利用されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、ヒトのもの、またはヒト化されたものである。
【0122】
本発明では、活性ビタミンD化合物の前、後、または同時に、1つまたは複数のインテグリンαvβ3拮抗剤が免疫介在疾患を持つ動物に投与され、使用される1つまたは複数の治療薬は、その免疫介在疾患の治療に現在使用されているか、有用であることが知られている。インテグリンαvβ3拮抗剤として機能するタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードする核酸分子、またはインテグリンαvβ3拮抗剤として機能するタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドは、本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ動物に投与できる。さらに、インテグリンαvβ3拮抗剤として機能するタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの誘導体、アナログ、断片、もしくは変異型をコードする核酸分子、またはインテグリンαvβ3拮抗剤として機能するタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの誘導体、アナログ、断片、もしくは変異型は、本発明の方法にしたがって、免疫介在疾患を持つ対象者に投与できる。好ましくは、そのような誘導体、アナログ、変異型、および断片は、全長の野生型タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドのインテグリンαvβ3拮抗剤活性を保持している。
【0123】
抗炎症薬
抗炎症薬は、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療に成功を示しており、現在、そのような疾患の一般的で標準的な治療法となっている。本発明の組成物および方法では、当業者に周知の任意の抗炎症剤が使用できる。抗炎症剤の非限定的な例には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アセトアミノフェンおよびフェナセチンのような非麻薬性鎮痛剤、ステロイド性抗炎症薬、β拮抗剤、抗コリン薬、メチルキサンチン、クロロキン、金塩、メトトレキセート、D-ペニシラミン、アロプリノール、コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン、抗ヒスタミン薬、ヒドロキシクロロキンのような抗マラリア剤、抗ウイルス薬、抗生物質、およびPPARγ作動薬が含まれる。NSAIDの例には、アスピリン、イブプロフェン、セレコキシブ(CELEBREX(商標))、ジクロフェナク(VOLTAREN(商標))、エトドラク(LODINE(商標))、フェノプロフェン(NALFON(商標))、インドメタシン(INDOCIN(商標))、ケトララク(TORADOL(商標))、オキサプロジン(DAYPRO(商標))、ナブメトン(RELAFEN(商標))、スリンダック(CLINORIL(商標))、トルメチン(TOLECTIN(商標))、ロフェコキシブ(VIOXX(商標))、ナプロキセン(ALEVE(商標)、NAPROSYN(商標))、ケトプロフェン(ACTRON(商標))、およびナブメトン(RELAFEN(商標))が含まれるが、これらに限定されない。そのようなNSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素を阻害することによって作用する。ステロイド性抗炎症薬の例には、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRON(商標))、コルチゾン、ハイドロコルチゾン、プレドニゾン(DELTASONE(商標))、プレドニゾロン、およびトリアムシノロンが含まれるが、これらに限定されない。抗ヒスタミン剤には、アルキルアミン(例えばブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニラミン、およびトリプロリジン)、エタノールアミン(例えばカルビノキサミン、クレマスチン、ジメンヒドリネート、ジフェンヒドラミン、およびドキシルアミン)、エチレンジアミン(例えばトリペレンナミンおよびピリラミン)、フェノチアジン(例えばメトジラジン、プロメタジン、およびチメプラジン)、ピペラジン(例えばシクリジン、ヒドロキシジン、およびメクリジン)、ピペリジン(例えばアザタジンおよびシプロヘプタジン)、テルフェナジン、アステマゾール、ロラチジン、およびセチリジンが含まれるが、これらに限定されない。抗ウイルス剤には、アマンタジン、リバビリン、リマンタジン、アシクロビル、ファムシクロビル、フォスカルネット、ガンシクロビル、トリフルリジン、ビダラビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシルタビン、ジドブジン、およびインターフェロンが含まれるが、これらに限定されない。抗生物質には、癌療法で使用される抗生物質(例えばダクチノマイシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、およびプリカマイシン)、代謝阻害剤(例えばスルフォンアミドおよびトリメトプリム)、細胞壁合成の阻害剤(例えばβラクタムおよびバンコマイシン)、タンパク合成の阻害剤(例えばテトラサイクリン、アミノグリコシド、マクロライド、クリンダマイシン、およびクロラムフェニコール)、および核酸の機能または合成の阻害剤(例えばフルオロキノロンおよびリファンピン)が含まれるが、これらに限定されない。PPARγ作動薬には、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、およびロジグリタゾンのようなチアゾリジンジオンが含まれる。米国特許第5,594,015、5,478,852、および5,326,770号を参照されたい。
【0124】
外皮用剤
本発明の方法では、当技術分野の当業者に周知の任意の外皮用剤が使用できる。外皮用剤とは、皮膚の疾患および病訴の治療に役立つ薬剤である。好ましくは、外皮用剤は、皮膚の状態、特にT細胞浸潤の増加、T細胞活性化の増加、および/または異常な抗原提示を伴う皮膚の状態を、予防、治療、または改善するために使用される局所薬を意味する。特に好ましい態様では、外皮用剤は乾癬またはその1つもしくは複数の症状を予防、治療、または改善するために使用される局所薬を意味する。外皮用剤の例には、皮膚の状態を治療または改善するために使用される、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、抗体(例えばヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一ドメイン抗体、Fv、ScFv、Fab断片、F(ab)2断片、またはその抗原結合断片)、核酸分子(例えばアンチセンス核酸分子および3重らせん)有機分子、無機分子、および小分子が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様では、外皮用剤は光線療法(すなわちB紫外線照射)または光線化学療法(例えばPUVA)である。本発明では、外皮用剤はビタミンD化合物ではない。
【0125】
好ましい態様では、外皮用剤は局所薬である。局所薬の例には、皮膚軟化薬、サリチル酸、コールタール、アントラリン、局所ステロイド、局所コルチコステロイド、(例えば酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸ハロベタゾール、ジプロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノニド、ハルシノニド、デスオキシメタゾン、トリアムシノロン、プロピオン酸フルチカゾン、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、モメタゾンフロエート、ベタメタゾン、ジプロピオン酸アクロメタゾン、デソニド、およびハイドロコルチゾン)、および局所レチノイド(例えばタザロテン)が含まれるが、これらに限定されない。特定の態様では、外皮用剤は全身に投与される薬剤である。全身投与される外皮用剤の例には、全身性コルチコステロイド(例えばトリアムシノロン)、葉酸拮抗剤(例えばメトトレキセート)、レチノイド(例えばアセトレチン)、およびサイクロスポリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
併用療法
本発明の併用療法は、活性ビタミンD化合物、および活性ビタミンD化合物とは異なる作用機序を持つ少なくとも1つの他の治療薬を含む。本発明の併用療法で使用できる活性ビタミンD化合物以外の治療薬の機序は、文献に記述されている(例えば、Hardman et al., eds., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics 10th Ed, Mc-Graw-Hill, New York, pp643-754, 1381-1484, 1649-1678, 1996; Physician's Desk Reference (PDR) 55th Ed., Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJ (2001) (www.pdr.net)、およびemedicineウェブサイトを参照されたい)。本発明の併用療法は、活性ビタミンD化合物および活性ビタミンD化合物と共に作用して相加効果または相乗効果を示すことにより、活性ビタミンD化合物の治療効果を改善する少なくとも1つの他の治療薬も含む。本発明では、少なくとも1つのビタミンD化合物および活性ビタミンD化合物とは異なる機能を持つ1つの他の治療薬は、免疫介在疾患の治療または改善のために、組み合わせて有利に利用される。活性ビタミンD化合物は、活性ビタミンD化合物以外の1つまたは複数の治療薬の投与の前(例えば0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、5日、1週間、2週間、1ヶ月、またはそれ以上前)、投与の後(例えば0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、5日、1週間、2週間、1ヶ月、またはそれ以上後)、または投与と同時に投与できる。
【0127】
本発明では、1つまたは複数の活性ビタミンD化合物は、1つもしくは複数の抗血管形成因子(例えばアンジオスタチンまたはエンドスタチン)、1つもしくは複数のTNF-α拮抗剤(例えば抗TNF-α抗体)、1つもしくは複数のインテグリンαvβ3拮抗剤、1つもしくは複数の抗炎症剤、1つもしくは複数の免疫調節剤、および/または1つもしくは複数の外皮用剤と組み合わせて、有利に使用できる。そのような併用は、活性ビタミンD化合物および他の治療薬の両方の投与に伴う有害な副作用を軽減させる可能性がある。
【0128】
特定の態様では、1つまたは複数の活性ビタミンD化合物の投与は、特定の免疫介在疾患の治療または改善のための既知の治療薬の1つまたは複数の投薬の投与量および/または投与頻度を低下させる。例えば、実質性臓器の同種移植片の治療のための、タクロリムス(FK506、免疫抑制剤)注入の通常推奨される開始用量は、連続注入で1日あたり0.03から0.05 mg/kgであるが、活性ビタミンD化合物の投与により減少する可能性がある。さらに、成人の腎移植患者(1日あたり0.2 mg/kg)、成人の肝移植患者(1日あたり0.1から0.15 mg/kg)、および小児肝移植患者(12時間の間をおいて2回に分けて1日あたり0.15から0.2 mg/kg)のタクロリムスの推奨される開始経口用量は、活性ビタミンD化合物の投与によって減少する可能性がある。好ましい態様では、活性ビタミンD化合物は、タクロリムスの治療の際に、3日またはそれ以上に1回投与され、タクロリムスはその治療効果を損なうことなくより低い用量またはより少ない頻度で投与できる。
【0129】
関節リウマチを治療または改善するために使用される治療薬の例には、レミケード、コルチコステロイド、タクロリムス、ビスホスホネート、NSAID(例えばイブプロフェン、フェンプロフェン、インドメタシン、およびナプロキセン)、抗マラリア薬(例えばヒドロキシクロロキンおよびスルファサラジン)、アナンキラ(Anakinra)、アザチオプリン、Enbrel, Celbrex、およびサイクロホスファミドが含まれるがこれらに限定されない。クローン病を治療または改善するために使用される治療薬の例には、スルファサラジン(Azulfidine)、アミノサリチル酸、ステロイド(例えばプレドニゾン)、およびインフリキシマブが含まれるがこれらに限定されない。全身性エリテマトーデスを治療または改善するために使用される治療薬の例には、NSAID、抗マラリア薬(例えばヒドロキシクロロキン)、コルチコステロイド、グルココルチコイド(例えばトリアムシノロン)、メトトレキセート、およびアザチオプリンが含まれるがこれらに限定されない。喘息を治療または改善するために使用される治療薬の例には、コルチコステロイド(Azmacort, Vanceril, AeroBid, Flovent, プレドニゾン、メチルプレドニゾン、およびハイドロコルチゾン)、ロイコトリエン阻害剤、アミノフィリン、およびテオフィリンが含まれるがこれらに限定されない。自己免疫性肝炎を治療または改善するために使用される治療薬の例には、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)、アザチオプリン、およびメルカプトプリンが含まれるがこれらに限定されない。移植拒絶反応を治療、改善、または予防するために使用される治療薬の例には、アザチオプリン、サイクロスポリン、ミコフェノレートモフェチル、ラパミューン、コルチコステロイド、およびOKT2モノクローナル抗体が含まれるがこれらに限定されない。多発性硬化症を治療または改善するために使用される治療薬の1つの例は、IFN-1a (Avonex)である。
【0130】
水疱性全身性狼瘡を治療または改善するために使用される治療薬の例には、ダプソン、コルチコステロイド(例えばプレドニゾンおよびトリアムシノロン)、およびメトトレキセートが含まれるがこれらに限定されない。強皮症を治療または改善するために使用される治療薬の例には、プレドニゾン、アザチオプリン、メトトレキセート、サイクロホスファミド、およびペニシラミンが含まれるがこれらに限定されない。壊疽性膿皮症を治療または改善するために使用される治療薬の例には、プレドニゾン、アザチオプリン、サイクロホスファミド、クロラムブシル、タクロリムス、免疫グロブリン、およびサリドマイドが含まれるがこれらに限定されない。円形脱毛症を治療または改善するために使用される治療薬の例には、サイクロスポリン、メトキサレン、アントラリン、プロピオン酸クロベタゾール、プレドニゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびミノキシジルが含まれるがこれらに限定されない。白斑を治療または改善するために使用される治療薬の例には、トリアムシノロン、ハイドロコルチゾン、プレドニゾン、メトキサレン、およびトリオキサレンが含まれるがこれらに限定されない。接触性皮膚炎を治療または改善するために使用される治療薬の例には、クロベタゾール、ハイドロコルチゾン、プレドニゾン、トリアムシノロン、ヒドロキシジン、ドキセピン、およびジスルフィラムが含まれるがこれらに限定されない。乾癬の既知の治療薬の例には、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、サイクロスポリン、アシトレチン、B紫外線光療法、光化学療法、局所コルチコステロイド(例えば酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸ハロベタゾール、ジプロピオン酸ベタメタゾン、フルオシノニド、ハルシノニド、デスオキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸フルチカゾン、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、モメタゾンフロエート、ベタメタゾン、ジプロピオン酸アクロメタゾン、デソニド、およびハイドロコルチゾン)、ジトラノール(アントラリン)、コールタール、サリチル酸、局所レチノイド(例えばタザロテン)、マクロライド系抗生物質(例えばタクロリムス)、抗CD3モノクローナル抗体、抗CD4モノクローナル抗体、抗CD11aモノクローナル抗体、抗IL-2Rαモノクローナル抗体、抗ICAM 1抗体、抗LFA1抗体、抗CD80モノクローナル抗体、CTLA4Ig、および皮膚軟化薬が含まれるがこれらに限定されない。乾癬の治療の総説は、例えば、Ashcroft et al., J. of Clin. Pharm. and Therap. 25:1-10 (2000); Karasek, Cutis 64:319-322 (1999): Drew, Primary Care 27:385-406 (2000); Lebwohl, Dermatologic Clinics 18:13-19 (2000); およびPeters et al., Am. J. Health-Sys. Pharm. 57:645-659 (2000)を参照されたい。特定の態様では、1つまたは複数の活性ビタミンD化合物は、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、サイクロスポリン、アシトレチン、B紫外線光療法、光化学療法、1つもしくは複数の局所コルチコステロイド、ジトラノール、コールタール、サリチル酸、IL-10、1つもしくは複数の局所レチノイド、1つもしくは複数のマクロライド系抗生物質、1つもしくは複数の抗CD3モノクローナル抗体、1つもしくは複数の抗CD4モノクローナル抗体、1つもしくは複数の抗CD11aモノクローナル抗体、1つもしくは複数の抗IL-2Rαモノクローナル抗体、1つもしくは複数の抗ICAM 1抗体、1つもしくは複数の抗LFA1抗体、1つもしくは複数の抗CD80モノクローナル抗体、CTLA4Ig、または1つもしくは複数の皮膚軟化薬をヒトに投与する前(例えば0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、5日、1週間、2週間、1ヶ月、またはそれ以上前)、投与した後(例えば0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、5日、1週間、2週間、1ヶ月、またはそれ以上後)、または投与と同時に投与できる。別の態様では、1つまたは複数の活性ビタミンD化合物は、Xanelim (Genentech/Xoma), Enbril (Immunex, Inc.), Remicade (J&J/Centocor), ABX-IL-8 (Abgenix), IDEC-114 (IDEC Pharmaceuticals, Inc.), Novim (PDL, Inc.), Zenapax (PDL, Inc.), および/またはAmevive (Biogen, Inc.)を、乾癬を患う動物、好ましくはヒトに投与する、前(例えば0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、5日、1週間、2週間、1ヶ月、またはそれ以上前)、投与した後(例えば0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、5日、1週間、2週間、1ヶ月、またはそれ以上後)、または投与と同時に投与できる。
【0131】
本発明の併用療法の活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、動物に同時または順次投与できる。本発明の併用療法の活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、周期的に投与しても良い。サイクリング療法では、1つの薬剤に対する抵抗性の発生を低下させ、1つの薬剤に対する副作用を回避もしくは低下させ、および/または治療の有効性を改善するために、一定期間第1の治療薬を投与し、その後、一定期間第2の治療薬を投与し、この順次投与、すなわちサイクルを繰り返す。本発明の併用療法の活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、対象者に同時に投与しても良い。「同時に」という用語は、完全に同時に治療薬を投与することに限定せず、活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬が活性ビタミンD化合物が他の薬剤と共に作用し、そのように投与されなかった場合と比較して利点が多いように、一定の間隔内で順次投与されることを意味する。活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、適当な剤形で、適当な経路で、別々に投与しても良い。好ましい態様では、活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、患者の同一の診療時に投与される。併用療法の活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、同一の薬学的組成物中で投与される場合がある。または、併用療法の活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、別の薬学的組成物中で同時に動物に投与される場合もある。活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、同一かまたは異なる投与経路で動物に投与してもよい。
【0132】
本発明では、1つまたは複数の治療薬の投与の前に、活性ビタミンD化合物で任意の期間治療できる。活性ビタミンD化合物の治療期間は、使用する活性ビタミンD化合物、免疫介在疾患、患者、および他の関連する要素によって異なる。活性ビタミンD化合物は、1つまたは複数の治療薬が投与される前に、わずか12時間投与されても良いし、3ヶ月間投与されても良い。活性ビタミンD化合物が連日投与される場合には、1つまたは複数の治療薬が投与される前に、約1日間から約10日間、投与される場合がある。特定の態様では、本発明の方法は、1つまたは複数の治療薬の投与の前に、活性ビタミンD化合物が連日、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間投与される。活性ビタミンD化合物がパルス投与される場合には、1つまたは複数の治療薬の投与の少なくとも1日前に投与してもよく、1つまたは複数の治療薬の投与の前に3ヶ月間投与してもよい。特定の態様では、本発明の方法は、1つまたは複数の治療薬の投与の前に、活性ビタミンD化合物を、3日間から60日間の期間にわたり、3、4、5、6、7、8、9、または10日ごとに投与する段階を含む。
【0133】
活性ビタミンD化合物の投与は、連日またはパルス投与のいずれでも、1つまたは複数の治療薬の投与と同時に継続できる。さらに、活性ビタミンD化合物の投与は、1つまたは複数の治療薬の投与の後も継続できる。
【0134】
本発明の特定の態様では、1つまたは複数の治療薬と組み合わせた活性ビタミンD化合物の投与方法は、少なくとも1回繰り返すことができる。この方法は、治療上の応答を得るまたは維持するために必要なだけ、例えば1回から約10回まで繰り返すことができる。本方法を繰り返す際に、活性ビタミンD化合物および1つまたは複数の治療薬は、前回の投与で使用されたものと同一でも良いし、異なっても良い。また、活性ビタミンD化合物の投与期間および投与様式(すなわち、連日またはパルス投与)は、繰り返しごとに異なっていてもよい。
【0135】
特定の態様では、本発明の治療用または薬学的組成物は、疾病の症状の存在または診断の前に投与される。特定の態様では、本発明の併用療法は、単剤療法または他の既知の併用療法と比較して、以下の1つまたは複数の望ましくないまたは有害な効果を誘導しない:生命徴候の異常(発熱、頻脈、徐脈、高血圧、低血圧)、高カルシウム血症、血液学的事象(貧血、リンパ球減少、白血球減少、血小板減少)、頭痛、悪寒、眩暈、悪心、無力、背痛、胸痛(胸部圧迫)、下痢、筋痛、疼痛、掻痒、乾癬、鼻炎、発汗、注射部位の反応、血管拡張、日和見感染リスクの上昇、および特定の種類の癌の発症リスクの上昇。
【0136】
本発明にしたがって治療できる動物には、本発明の化合物の投与の恩恵を受けられるすべての動物が含まれる。そのような動物には、ヒト、イヌ、およびネコのようなペット、ならびにウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、および同様な動物のような家畜が含まれる。
【0137】
以下の実施例は、本発明の方法を説明するためのものであり、これらを制限するものではない。医療および薬学において通常遭遇するようなさまざまな条件およびパラメータの他の適当な改変および適応であって当業者に明白なものは、本発明の精神および範囲に含まれる。
【0138】
実施例1
半固体状カルシトリオール製剤
表1に記載された内容物を含む5種類の半固体状カルシトリオール製剤(SS1〜SS5)を調製した。最終製剤は、半固体状製剤1 gあたり0.208 mgのカルシトリオールを含む。
【0139】
(表1)半固体状カルシトリオール製剤の組成

量はグラムで示す。
【0140】
1.溶媒の調製
表1に記載された、100グラムの5種類の半固体状カルシトリオール製剤(SS1〜SS5)量を以下の手順で調製した。
【0141】
記載された内容物(カルシトリオールを除く)を、適切なガラス容器内で混合し、均一になるまで混ぜた。ビタミンE TPGSおよびGELUCIRE 44/14を60℃で加熱してホモジナイズした後に、秤量して製剤に添加した。
【0142】
2.活性製剤の調製
半固体状溶媒を60℃以下で加熱してホモジナイズした。弱い光の下で、12±1 mgのカルシトリオールの重量を、スクリューキャップ付きの別のガラスボトル内で、各製剤について1本のボトルに入れて測定した(カルシトリオールは光感受性なので、カルシトリオール/カルシトリオール製剤を扱う際は、弱い光/赤色光を使用すべきである。正確な重量を0.1 mg単位まで測定した。カルシトリオールがボトル内に収まったら、直ちにボトルのキャップを締めた。次に、0.208 mg/gの濃度にするために必要な各溶媒の量を以下の公式から算出した:
Cw/0.208=溶媒の必要重量
上式で、Cw=カルシトリオールの重量(mg)、ならびに
0.1208=カルシトリオールの最終濃度(mg/g)。
【0143】
最後に適量の各溶媒を、カルシトリオールを含む各ボトルに添加した。この製剤を、カルシトリオールを溶解させるために混合しながら加熱した(≦60℃)。
【0144】
実施例2
他の製剤の調製
実施例1の方法に続いて、表2に挙げた内容物を含む、カルシトリオールの12種類の異なる製剤を調製した。
【0145】
(表2)組成物の剤形

量はパーセンテージで示す。
【0146】
実施例3
安定な単位剤形
カルシトリオールの剤形を調製して得られた組成物を表3に示す。ビタミンE TPGSを約50℃に加熱し、MIGLYOL 812と適切な比で混合した。BHAおよびBHTを各剤形に添加し、最終調製物中における割合をそれぞれ0.35%(w/w)とした。
【0147】
(表3)カルシトリオールの剤形

【0148】
製剤の調製後に、製剤2〜4を約50℃に加熱し、カルシトリオールと混合して、0.1μgカルシトリオール/mg全製剤を得た。次に、カルシトリオールを含む製剤を25 mL容のメスフラスコに添加し(約250μL)、脱イオン水を25 mLの目盛りまで加えた。次に同溶液をボルテックスミキサーで攪拌し、混合直後と、混合後の最長10分間まで、400 nmにおける各剤形の吸光度(初期)を測定した。表4に示すように、全3種類の剤形について、水の混合時に乳白色の溶液が得られた。剤形4については、10分後の時点において400 nmにおける吸光度に観察可能な変化が見られず、安定な懸濁物を生成したように見受けられた。
【0149】
(表4)水に懸濁した製剤の吸光度

【0150】
カルシトリオールの製剤をさらに評価するために、溶解性試験を実施して、各製剤に溶解するカルシトリオールの量を評価した。0.1〜0.6μgカルシトリオール/mg製剤のカルシトリオール濃度を、製剤を50℃に加熱後に適切な重量のカルシトリオールを添加することで調製した。次に同製剤を室温まで冷却し、不溶性のカルシトリオールの存在を光学顕微鏡で確認した(必要に応じて偏光を使用)。各製剤について、カルシトリオールは、検討した最高濃度(0.6μgカルシトリオール/mg製剤)において可溶性であった。
【0151】
進行中の第2相ヒト臨床試験では、45μgのカルシトリオール用量が使用されている。この投与量のカプセルを作製するために、0.2μgカルシトリオール/mg製剤と、各0.35%(w/w)のBHAおよびBHTの各製剤を調製した。バルクの製剤混合物をサイズ3の硬ゼラチンカプセルに225 mgの重量(カルシトリオールとして45μg)となるように充填した。次に同カプセルの5℃、25℃/60%相対湿度(RH)、30℃/65% RH、および40℃/75% RHにおける安定性を解析した。適切な時点で、安定性試料を対象に、完全なカルシトリオールの含量およびカプセルの溶解を解析した。カプセルのカルシトリオール含量を、3個の開いたカプセルを5 mLのメタノールに溶解し、解析まで5℃で維持することで決定した。次に、溶解した試料を逆相HPLCで解析した。Phemonex Hypersil BDS C18カラム(30℃)を、アセトニトリル勾配(55%アセトニトリル〜95%アセトニトリル;溶媒は水)で使用した(溶出時の流速は1.0 mL/分)。ピークが265 nmで検出され、25μLの試料を各実験用に注入した。試料のピーク面積を標準と比較することで、カルシトリオール量を算出した(表5)。1個のカプセルを、0.5%ドデシル硫酸ナトリウムを含む50 mLの脱イオン水を入れた6つの低容量溶解試験用容器のそれぞれに収容して溶解試験を行った。試料を75 rpmで37℃で混合した30分後、60分後、および90分後に採取した。100μLの試料を、30℃で1 mL/分で操作したBetasil C18カラム(移動相は50:40:10のアセトニトリル:水:テトラヒドロフラン)に注入することで、試料のカルシトリオール含量を決定した(ピーク検出波長265 nm)。6個のカプセルを対象とした90分の溶解試験の結果の平均値を得た(表6)。
【0152】
(表5)硬ゼラチンカプセル中におけるカルシトリオール製剤の化学的安定性(1カプセル当たりの総重量225 mg、カルシトリオールは45μg)

a.アッセイ法の結果は、1カプセル当たり45μgの含量に基づく期待値に対するカルシトリオールの割合(%)を示す。値は、カルシトリオールの活性異性体であるプレカルシトリオールを含む。
【0153】
(表6)硬ゼラチンカプセル中におけるカルシトリオール製剤の物理的安定性(1カプセル当たりの総重量225 mg、カルシトリオールは45μg)

a.記載の手順でカプセルの溶解を行い、カルシトリオールの割合(%)を、1カプセル当たり45μgのカルシトリオールの標準量および予想含量を元に算出する。活性異性体であるプレカルシトリオールは、溶解したカルシトリオールの割合(%)の計算に含まれない。報告値は90分時点の試料についての値。
【0154】
化学的安定性試験の結果から、表5に示すように、MIGLYOL 812含量の減少と、これに伴うビタミンE TPGS含量の増加が、完全なカルシトリオールの回収率の促進につながることがわかった。剤形4(50:50 MIGLYOL 812/ビタミンE TPGS)が、化学的に最も安定な剤形であり、25℃/60% RHで3か月後の時点における完全なカルシトリオールの回収率は、わずかに低下しただけであり、室温での保存が可能となる。
【0155】
剤形の物理的安定性は、各安定性条件での保存後におけるカプセルの溶解性によって評価した。化学的安定性に関しては、MIGLYOL 812含量の減少とビタミンE TPGS含量の増加は、製剤の溶解性を改善した(表6)。剤形4(50:50 MIGLYOL 812/ビタミンE TPGS)が、室温保存で適切な安定性を示し、最良の溶解性を示した。
【0156】
本発明について十分説明したが、本発明が、広範囲かつ等価な条件、製剤、および他のパラメータの範囲で、本発明の範囲または本発明の任意の態様に影響することなく実施可能なことが当業者には理解される。本明細書に引用された、すべての特許、特許出願、および刊行物は、全体が参照として本明細書に完全に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3日に1回以下の頻度で、パルス投与様式で、活性ビタミンD化合物の治療に有効な量を動物に投与する段階を含む、動物における免疫介在疾患を治療または改善する方法。
【請求項2】
免疫介在疾患が、自己免疫疾患または炎症性疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
3日に1回以下の頻度で、パルス投与様式で、活性ビタミンD化合物の治療に有効な量を動物に投与する段階を含む、動物における移植拒絶反応を治療、改善、または予防する方法。
【請求項4】
1つまたは複数の治療薬を投与する段階をさらに含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項5】
活性ビタミンD化合物がカルシトリオールである、請求項1または3記載の方法。
【請求項6】
活性ビタミンD化合物の高カルシウム血症作用が低下している、請求項1または3記載の方法。
【請求項7】
活性ビタミンD化合物が、EB 1089、Ro23-7553、およびRo24-5331からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
パルス投与が4日に1回以下の頻度で行われる、請求項1または3記載の方法。
【請求項9】
パルス投与が1週間に1回以下の頻度で行われる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
活性ビタミンD化合物が、約15μgから約105μgの用量で投与される、請求項1または3記載の方法。
【請求項11】
活性ビタミンD化合物が、約15μgから約90μgの用量で投与される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
活性ビタミンD化合物が、約25μgから約75μgの用量で投与される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
活性ビタミンD化合物が、約30μgから約60μgの用量で投与される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
活性ビタミンD化合物が、約45μgの用量で投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
活性ビタミンD化合物の最高血漿濃度が少なくとも0.5 nMとなるために十分な用量で、活性ビタミンD化合物が投与される、請求項1または3記載の方法。
【請求項16】
活性ビタミンD化合物が経口、静脈内、非経口、直腸、局所、鼻内、または経皮的に投与される、請求項1または3記載の方法。
【請求項17】
活性ビタミンD化合物が経口的または静脈内に投与される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
動物の血中カルシウムレベルを低下させる段階をさらに含む、請求項1または3記載の方法。
【請求項19】
低下させる段階が、低カルシウム食を摂取する段階、小腸を介して血中に運搬されない吸着剤、吸収剤、リガンド、キレート、もしくは他のカルシウム結合成分によってカルシウムを捕獲する段階、ビスホスホネートを投与する段階、水分補給および塩摂取を増加させる段階、または利尿療法を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の治療薬が、免疫調節剤、抗血管新生剤、抗炎症剤、外皮用剤、およびその任意の組み合せからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項21】
活性ビタミンD化合物が、1つまたは複数の治療薬の投与の少なくとも12時間前に投与される、請求項4記載の方法。
【請求項22】
活性ビタミンD化合物が、1つまたは複数の治療薬の投与の前に、パルス投与様式で1日間から約3ヶ月間投与される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
活性ビタミンD化合物が、1つまたは複数の治療薬の投与と同時に投与される、請求項4記載の方法。
【請求項24】
活性ビタミンD化合物の投与が、1つまたは複数の治療薬の投与以降も継続される、請求項4記載の方法。
【請求項25】
活性ビタミンD化合物が、1つまたは複数の治療薬の投与の後に投与される、請求項4記載の方法。
【請求項26】
方法が少なくとも1回繰り返される、請求項4記載の方法。
【請求項27】
方法が1回から約10回繰り返される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
活性ビタミンD化合物が繰り返しごとに同一かまたは異なっていてもよく、また1つまたは複数の治療薬が繰り返しごとに同一かまたは異なっていてもよい、請求項26記載の方法。
【請求項29】
活性ビタミンD化合物の投与期間が、繰り返しごとに同一かまたは異なっていてもよい、請求項26記載の方法。
【請求項30】
活性ビタミンD化合物が、約10μgから約75μgのカルシトリオール、約50%のMIGLYOL 812、および約50%のトコフェロールPEG-1000コハク酸塩(ビタミンE TPGS)を含む、単位剤形として投与される、請求項1記載の方法。
【請求項31】
単位剤形が、約45μgのカルシトリオールを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
単位剤形が、抗酸化剤、緩衝剤、消泡剤、デタッキファー(detackifier)、保存剤、キレート剤、粘性調整剤(viscomodulator)、等張剤(tonicifier)、香味剤(flavorant)、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、充填剤、可塑剤、濃化剤、潤滑剤、およびこれらの混合物からなる群より選択される、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
添加剤の1つが抗酸化剤である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
抗酸化剤がブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびブチルヒドロキシトルエン(BHT)からなる群より選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
単位剤形がBHAおよびBHTを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
単位剤形がカプセルである、請求項30記載の方法。
【請求項37】
カプセルがゼラチンカプセルである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
カプセル中の成分の総体積が10〜1000μlである、請求項36記載の方法。
【請求項39】
単位剤形が、約45μgのカルシトリオール、約50%のMIGLYOL 812、約50%のビタミンE TPGS、BHA、およびBHTを含む、請求項30記載の方法。

【公表番号】特表2007−501864(P2007−501864A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533614(P2006−533614)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018184
【国際公開番号】WO2004/110380
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505458234)ノバセア インコーポレイティッド (7)
【Fターム(参考)】