説明

活性リンフォトキシン−βレセプター免疫グロブリンキメラタンパク質の高レベルの発現およびそれらの精製のための方法

【課題】低親和性形態の存在を最少化する一方、高親和性で結合する形態のより高い収率を生じる方法を提供する。
【解決手段】本発明は、低温度の培養系において所望の融合物をコードするDNAを用いて形質転換された宿主を培養し、それにより、誤って折り畳まれたタンパク質形態または誤って架橋されたタンパク質形態の量を最少化することによって、そのリガンドへの高親和性結合を有するタンパク質−Ig融合物の形態の高い収率の発現のための方法に関する。この宿主細胞は、形質転換された哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞または細菌細胞であり得る。タンパク質−免疫グロブリン融合物は、TNFファミリーまたはTNFレセプターファミリーのメンバー(例えば、リンフォトキシン−βまたはリンフォトキシン−βレセプター)を含み得る。本発明はまた、このタンパク質−免疫グロブリン融合物を含む薬学的組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
TNFファミリーは、TNFファミリーリガンドおよびTNFファミリーレセプターといわれるリガンドおよびそれらの特異的なレセプターのペアからなる(BazzoniおよびBeutler,1996;AggarwalおよびNatarajan,1996)。TNFのようなリガンドは、代表的に細胞表面において膜結合形態として見出されるか、またはいくつかの場合において、TNFは、細胞表面から選択的に切断され、そして分泌される。特異的なレセプターに結合するリガンドおよび結合事象は、2つ以上のレセプターを凝集するために働く。これらのレセプターの細胞内ドメインは、この変化をいくつかの方法により検出し得、そしてこの情報をシグナル伝達機構を介して細胞に伝達し得る。このファミリーは、免疫系およびおそらく他の非免疫学的系の調節に関与する。この調節はしばしば、「マスタースイッチ(master switch)」レベルであるので、TNFファミリーシグナル伝達は、TNFに最も代表される多くの続いて起こる最善の事象を生じ得る。TNFは、細胞輸送に関与する接着分子の改変された表示、特定の区画に特定の細胞を駆動するためのケモカイン産生および種々のエフェクター細胞のプライミングに関与する外部からの侵入に対して、生物体の一般的な防御性炎症性応答を開始し得る。このように、これらの経路の調節は、臨床的な可能性を有する。
【0002】
TNFレセプターファミリーは一般的に、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインからなる、関連タンパク質のコレクションである。細胞外ドメインは、2〜6コピーの密接にジスルフィド結合したドメインで形成され、そしてシステイン残基の独特の配列に基づいて認識する(Bannerら、1993)。1つのリガンドは、いくつかのレセプターを共有し得るが、各レセプターは、対応するリガンドに結合する。いくつかの場合において、膜貫通領域および/または細胞内ドメインを欠失しているレセプターの可溶性形態が天然に存在することは、明らかである。事実上、これらのレセプターの短縮型のバージョンが、直接的な生物学的な調節の役割を有し得る。このプロセスの例は、オステオプロテゲリン(osteoprotegerin)系によって提供される。オステオプロテゲリンは、RANK−L(TRANCEとも呼ばれる)および/またはTRAILを介するレセプターへのシグナル伝達をブロックする分泌TNFファミリーレセプターであり、破骨細胞活性化を誘発する。これらのレセプター(おそらく、RANKレセプター)をブロックすることにより、骨吸収を妨害し、そして骨質量を増加する(Bucayら、1998)。明らかに、ウイルスは、この手段を使用し、それらの宿主生物体におけるTNF活性を阻害する(Smithら、1994)。これらのレセプターは、細胞分化シグナル、細胞死シグナルまたは細胞生シグナルを含む多くの事象をシグナル伝達し得る。しばしは細胞死シグナル伝達は、FasレセプターおよびTNFレセプターの場合、比較的直接結びつくカスパーゼプロテアーゼのカスケードを介して、誘発される。
【0003】
TNFレセプターは、生物学的経路を解明するための強力なツールである。なぜなら、TNFレセプターは、長い血清の半減期(halflive)を有する免疫グロブリン融合タンパク質に容易に変換されるからである。ダイマー可溶性レセプター形態は、天然の分泌リガンドまたは天然の表面結合リガンドのいずれかにより、媒介される事象のインヒビターであり得る。これらのリガンドに結合することにより、これらの融合タンパク質は、リガンドが細胞会合レセプターと相互作用するのを妨げ、そして会合シグナルを阻害する。これらのレセプターIg融合タンパク質は、実験的な判断(experimental sense)において有用であり、そしてまた臨床的に首尾よく用いられる。例えば、TNF−R−Igを使用して、OKT3投与に付随する炎症腸管疾患、慢性関節リウマチおよび急性の臨床的症候群が処置される(Easonら、1996;Feldmannら、1997;van Dullemenら、1995)。TNFファミリーのレセプターを通じるシグナル伝達により媒介される多くの事象の処置は、免疫系の関与に起因する病理的な後遺症を有する免疫に基づく疾患ならびに広範なヒトの疾患の処置において適用を有し得る。例えば、最近記載されたレセプターである、オステオプロテゲリンの可溶性形態が、骨質量の損失をブロックすることが示された(Simmonetら、1997)。従って、TNFファミリーレセプターシグナル伝達により制御された事象は、免疫系の調節に必ずしも限定されない。レセプターに対する抗体は、リガンド結合をブロックし得、従って、臨床的な適用もまた有する。このような抗体はしばしば、非常に長く生存し、そして血液中でより短い半減期を有する可溶性レセプターIg融合タンパク質を超える利点を有し得る。
【0004】
レセプター媒介経路の阻害が、これらのレセプターの最も開発された治療の適用を示す一方、本来、これは、臨床的な裏付けが示されたTNFレセプターの活性化であった(AggarwalおよびNatarajan,1996)。TNFレセプターの活性化は、標的細胞において、細胞死を開始し得、そしてそれ故に、腫瘍への適用は、魅力的であったし、なお魅力的である(Eggermontら、1996)。このレセプターは、リガンドの投与(すなわち、天然の経路)によるか、またはレセプターと架橋し得る抗体の投与によるかのいずれかで活性化され得る。抗体は、例えば、癌の処置に有効であり得る。なぜなら、抗体は、血液中で長期間、リガンドとは対照的に、持続し得るからである。リガンドは、一般的に、血液中で短い寿命を有する。アゴニスト抗体は、癌の処置における有用な対抗手段である。なぜなら、レセプターは、腫瘍においてより選択的に発現し得るか、またはレセプターは、腫瘍において、細胞死または分化のみシグナル伝達し得るためである。同様に、多くの陽性の免疫学的事象は、TNFファミリーレセプターにより媒介され(例えば、宿主炎症反応、抗体産生など)、従って、アゴニストの抗体は、他の非腫瘍学的な適用において、有益な効果を有し得る。
【0005】
逆説的に、経路の阻害はまた、腫瘍の処置において、臨床学的な有益を有し得る。例えば、Fasリガンドは、いくつかの腫瘍により発現され、そしてこの発現は、Fas陽性リンパ球の死滅を導き得、従って、腫瘍が免疫系を回避する能力を促進する。この場合、次いで、Fas系の阻害は、接近が可能である他の方法で、免疫系が腫瘍に反応することを可能にし得る(GreenおよびWare,1997)。
【0006】
このレセプターのファミリーの1つのメンバーである、リンフォトキシンβレセプター(LTβR)は、表面リンフォトキシン(LT)に結合する。リンフォトキシンは、リンフォトキシンα鎖およびβ鎖の三量体の複合体からなっている(Croweら、1994)。このレセプター−リガンド対は、末端免疫系の発達および成熟免疫系において、リンパ節および脾臓における事象の調節に関与する(Wareら、1995;Mackayら、1997;Rennertら、1996;Rennertら、1997;ChaplinおよびFu,1998)。リンフォトキシン−βレセプター−免疫グロブリン融合タンパク質は、LTβRとIgG(LTβR−Ig)との間で形成され得る。このIgGは、表面LTリガンドと、小胞樹状細胞の機能的状態に対して重要なレセプターとの間のシグナル伝達をブロックする(MackayおよびBrowning 1998)。このブロッキングは、齧歯動物モデルにおいて、減少した自己免疫疾患をさらに導き得る(Mackayら、1998、1995年7月21日に出願された米国特許第08/505,606号および1996年10月26日に出願された米国特許第60/029,060号)。ヘルペスウイルス侵入伝達物質についてHVEMと言われるこのレセプターファミリーの第2のメンバーは、ライト(Light)と言われるリガンド(Mauriら、1998)ならびにヘテロマーの(herteromeric)LTリガンドに結合する。このレセプターの機能は、現在、未知であるが、HVEM−Ig融合タンパク質は、免疫学的疾患の処置のために有用であり得、そしてこの構築物は、インビトロで免疫機能アッセイに影響することが示された(Harrop,J.Aら、1998)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記で議論したようにTNFファミリーのメンバーの臨床学的進歩にもかかわらず、臨床学的セッティングにおける使用のための適切なレセプターIg融合物の所望する収率を得る方法についての必要が残っている。例えば、サルCOS細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞のいずれかにおいて発現される場合、LTβR−Igタンパク質は、2つの形態で機能し得る。一方の形態は、高親和性でリガンドと結合するが、他方は結合しない。従って、低親和性形態の存在を最少化する一方、高親和性で結合する形態のより高い収率を生じる方法についての必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、そのリガンドへの高親和性結合を有するタンパク質−Ig融合物の形態の高い収率の発現のための方法に関し、低温度での培養系において所望する融合物をコードするDNAを用いて形質転換された宿主を培養し、それにより、誤って折り畳られたタンパク質形態または誤って架橋されたタンパク質形態の量を最少化することによって、その形態は、「活性な」形態であると本明細書中でいわれる。種々の実施形態における本発明は、約27℃〜約35℃の温度で、形質転換した宿主を培養することにより、哺乳動物発現系において高収率で発現する方法に関する。好ましくは、哺乳動物宿主を、約27℃〜約32℃の温度で培養する。
【0009】
なお他の実施形態において、本発明は、低温度で酵母発現系において形質転換された宿主を培養することにより活性な融合タンパク質の高収率の発現のための方法に関する。所望されたタンパク質を酵母において発現する場合、好ましい温度は、約10℃〜約25℃であり、より好ましくは、約15℃〜約20℃である。
【0010】
本願発明の特定の方法において、タンパク質−Ig融合は、TNFレセプターファミリーのメンバー(例えば、リンフォトキシン−βレセプターまたはそのフラグメント)を含む。あるいは、本願方法は、低温度での任意の発現系(例えば、昆虫系または細菌系)における所望する融合タンパク質の発現を含み得る。
【0011】
他の実施形態において、本願発明は、本願方法により得られる活性なタンパク質−Ig融合物およびそれらを含む薬学的組成物を含む。なお他の実施形態において、本発明は、約27℃〜約35℃、好ましくは27℃〜32℃の低温度を有する培養系において、所望されるタンパク質−Ig融合物をコードするDNAを用いて形質転換された宿主を培養して、高収率の活性融合タンパク質を発現する工程、培養系から活性なタンパク質融合物を回収する工程、および回収された活性な融合タンパク質を薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせる工程を包含する、薬学的調製物を作製する方法に関する。好ましい実施形態において、タンパク質−Ig融合物は、リンフォトキシン−βもしくはそのフラグメント、またはHVEM、もしくはそのフラグメントを含む。
【0012】
なお他の実施形態において、本願発明は、記載された方法を用いて得られた薬学的組成物に関する。
【0013】
異なる実施形態において本願発明は、哺乳動物発現系ならびに他の発現系(例えば、酵母系、細菌系、または昆虫系)に関する。
【0014】
特定の実施形態において、本発明は、約10℃〜約25℃、より好ましくは、約15℃〜約20℃の低温度で培養することにより、酵母において活性な融合タンパク質の高レベルの発現のための方法に関する。酵母における発現のこの方法によって、得られた活性な融合物、およびこれらの活性な融合物を含む薬学的組成物をまた含む。薬学的調製物を作製するための方法は、好ましくは約10℃〜約25℃、より好ましくは約15℃〜約20℃の低温度で、所望する融合物をコードするDNAを用いて形質転換された酵母細胞を培養する工程を含む活性なタンパク質−Ig融合物を含む本発明の範囲内に含まれる。本発明の全ての組成物および方法の最も好ましい実施形態において、タンパク質−Ig融合物は、リンフォトキシン−βレセプター、HVEM、またはそのフラグメントを含む。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1) 高収率の活性なタンパク質−Ig融合物の発現のための方法であって、約27℃〜約35℃の低温を有する培養系において、所望のタンパク質−Ig融合物をコードするDNAを用いて形質転換された宿主を培養する工程を包含する、方法。
(項目2) 項目1に記載の方法であって、上記温度が約27℃〜約32℃である、方法。
(項目3) 項目1に記載の方法であって、上記形質転換された宿主が、まず、約33℃より高い温度で、該宿主の増殖を可能にするに十分な期間培養される、方法。
(項目4) 項目1に記載の方法であって、上記タンパク質−Ig融合物が、TNFレセプターファミリーのメンバーを含む、方法。
(項目5) 項目3に記載の方法であって、上記TNFレセプターファミリーのメンバーが、リンフォトキシン−βレセプター、TNFR−55、HVEMまたはそれらのフラグメントである、方法。
(項目6) 項目1に記載の方法であって、該方法がさらに、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより上記培養系から活性なタンパク質−Ig融合物を回収する工程を包含する、方法。
(項目7) 項目1に記載の方法であって、上記培養系が、昆虫細胞または細菌細胞を含有する、方法。
(項目8) 約27℃〜約35℃の低温を有する培養系において、融合物をコードするDNAを用いて形質転換された宿主を培養することにより得られる、活性なタンパク質−Ig融合物。
(項目9) TNFファミリーのメンバーを含有する、項目8に記載の融合物。
(項目10) LT−βレセプターまたはそのフラグメントを含有する、項目9に記載の融合物。
(項目11) HVEMまたはそのフラグメントを含有する、項目9に記載の融合物。
(項目12) 活性なタンパク質−Ig融合物を含有する薬学的調製物を作製する方法であって、該方法は、以下:
(a)約27℃〜約32℃の低温を有する培養系において、該タンパク質−Ig融合物をコードするDNAを用いて形質転換された宿主を培養し、それにより活性なタンパク質−Ig融合物を発現する、工程;
(b)該培養系から活性なタンパク質−Ig融合物を回収する、工程;および
(c)工程(b)の活性なタンパク質−Ig融合物と薬学的に受容可能なキャリアとを組み合わせる、工程
を包含する、方法。
(項目13) 項目12に記載の方法であって、上記タンパク質−Ig融合物が、TNFファミリーのメンバーまたはそのフラグメントを含有する、方法。
(項目14) 項目13に記載の方法であって、上記タンパク質−Ig融合物が、リンフォトキシン−βレセプターまたはそのフラグメントを含有する、方法。
(項目15) 項目13に記載の方法であって、上記タンパク質−Ig融合物が、HVEMまたはそのフラグメントを含有する、方法。
(項目16) 薬学的調製物であって、該薬学的調製物が、以下:
(a)約27℃〜約32℃の低温を有する培養系において、タンパク質−Ig融合物をコードするDNAを用いて形質転換された宿主を培養し、それにより活性なタンパク質−Ig融合物を発現させる、工程;
(b)該培養系から活性なタンパク質−Ig融合物を回収する、工程;および
(c)工程(b)の活性なタンパク質−Ig融合物と薬学的に受容可能なキャリアとを組み合わせる、工程
により得られる、薬学的調製物。
(項目17) 項目16に記載の薬学的調製物であって、上記タンパク質−Ig融合物が、TNFファミリーのメンバーを含有する、薬学的調製物。
(項目18) 項目17に記載の薬学的調製物であって、上記タンパク質−Ig融合物が、リンフォトキシン−βレセプターまたはそのフラグメントを含有する、薬学的調製物。
(項目19) 項目17に記載の薬学的調製物であって、上記タンパク質−Ig融合物が、HVEMまたはそのフラグメントを含有する、薬学的調製物。
(項目20) 高収率の活性なタンパク質−Ig融合物を発現するための方法であって、約10℃〜約25℃の低温を有する培養系において、所望のタンパク質−Ig融合物をコードするDNAを用いて形質転換された酵母を培養する工程を包含する、方法。
(項目21) 項目20に記載の方法であって、上記温度が、約15℃〜約20℃である、方法。
(項目22) 項目20に記載の方法であって、上記形質転換された宿主が、まず、約30℃より高い温度で、該宿主の増殖を可能にするに十分な期間培養される、方法。
(項目23) 項目20に記載の方法であって、上記タンパク質−Ig融合物が、上記TNFレセプターファミリーのメンバーを含有する、方法。
(項目24) 項目23に記載の方法であって、上記TNFレセプターファミリーのメンバーが、リンフォトキシン−βレセプターまたはそのフラグメントである、方法。
(項目25) 項目20に記載の方法であって、該方法がさらに、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより上記培養系から活性なタンパク質−Ig融合物を回収する工程を包含する、方法。
(項目26) 約10℃〜約25℃の低温を有する培養系において、融合物をコードするDNAを用いて形質転換された酵母を培養することにより得られる、活性なタンパク質−Ig融合物。
(項目27) TNFファミリーのメンバーを含有する、項目26に記載の融合物。
(項目28) LT−βレセプターまたはそのフラグメントを含有する、項目27に記載の融合物。
(項目29) HVEMまたはそのフラグメントを含有する、項目26に記載の融合物。
(項目30) Ig Fcドメインおよびペプチド鎖を有する活性なタンパク質−Ig融合物を含有する薬学的調製物であって、ここで、該Ig Fcドメインが、改変され、それにより該タンパク質−Ig融合物のヒンジ領域におけるジスルフィド形成の速度を改変する、薬学的調製物。
(項目31) 項目30に記載の調製物であって、上記Ig Fcドメインが、少なくとも1つのシステイン残基をアラニンで置換することによって改変される、調製物。
(項目32) TNFファミリー由来のペプチドに架橋されたIg−Fcドメインを含有するタンパク質−Ig融合物であって、ここで、該Ig−Fcドメイン上の少なくとも1つのシステイン残基がアラニンで置換される、タンパク質−Ig融合物。
(項目33) 上記ペプチドが、リンフォトキシン−βレセプター由来である、項目32に記載のタンパク質−Ig融合物。
(項目34) 少なくとも1つのシステイン残基をアラニンへ変異誘発し、それにより発現された活性な形態の融合物の収率を増大させる工程により、TNFレセプターファミリー由来のペプチドに架橋されたIg Fcドメインを含むタンパク質−Ig融合物を作製する、方法。
(項目35) 上記ペプチドがLTβRであり、そして位置101および位置108のシステインが、アラニンへ変異誘発される、項目34に記載の方法。
(項目36) 上記LTβRペプチドの位置101および位置108にアラニンを含有する、LTβR−Ig融合タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、レセプター−免疫グロブリンキメラタンパク質の概略図である。左のパネルは、代表的なIgG分子のアニメーション画像を示し、Fcドメインは、黒で塗られ、重鎖可変ドメインは、灰色で塗られ、そして軽鎖は、白色のままにしてある。真中のパネルは、細胞内ドメイン(ねずみ色)および細胞外ドメイン(薄灰色)を含むLTβR分子の概略図を含む。右のパネルは、LTβR−Ig融合タンパク質の概略図を示す。
【図2】図2は、実際に誤って折り畳まれたアミノ酸または誤って架橋されたアミノ酸は、同定されていないが、おおよその死滅LTβR−Ig形態の欠損を示す概念図である。
【図3】図3は、PNGase Fでの処理前後のヒトLTβR−IgのSDS−PAGE分析である。レーン1およびレーン2は、37℃で増殖されたCHO細胞培養上清からProteinAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製されたヒトLTβR−Igを含む。レーン3は、PNGase Fを用いて処理して、全てのN結合型オリゴ糖を除去した後と同じ調製物を示す。レーン1は、非還元条件下で電気泳動し、レーン2およびレーン3は、還元条件下で電気泳動する。タンパク質のバンドを、クマシーブリリアントブルーを用いてゲルを染色することにより、可視化する。
【図4】図4は、AGH1アフィニティーカラムレーンを素通りするタンパク質およびpH3.5リン酸緩衝液を用いて溶出されたタンパク質の非還元SDSポリアクリルアミドゲル分析である。アフィニティー精製前のタンパク質をゲルの右側のレーンに示す。クマシーブリリアントブルーを用いてゲルを染色することにより、タンパク質バンドを可視化する。
【図5】図5は、表面リンフォトキシンに結合するAGHIアフィニティーカラムから素通りしたフラクション(下)および溶出したフラクション(上)の能力である。平均蛍光強度値は、記載されたようにFACS分析から得た。FACSプロフィールの例を、右に示し、ここでLTβR−Igは、コントロールのLFA−3−Igタンパク質の結合と比較される。
【図6】図6は、POROSエーテルカラムおよび硫酸アンモニウムの減少勾配を用いる、ヒトLTβR−Igの分析的HICカラムクロマトグラフィーである。ピーク1は、ヒトLTβR−Igの低い、不活性化形態であり、ピーク2は、ヒトLTβR−Igの高い、活性な形態を示す。ピーク1およびピーク2に対応するフラクションをそれぞれ収集し、そして4〜20%のSDS−PAGEゲルにて分析した(挿入したパネル)。「1」と表示されたレーンは、HICクロマトグラフィーのピーク1の「不活性な」物質を含み、レーン2は、HICクロマトグラフィーのピーク2の「活性な」物質を含む。出発物質は、レーン「L」に示される。「M」と表示されたレーンは、分子量マーカーを含む。
【図7】図7は、Pharmacia Source 15 PHEカラムを用いるヒトLTβR−Igの分離用HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)クロマトグラフィーである。ヒトLTβR−Igを含むプロテインA溶出物を、5M NaClを用いて終濃度1.5M NaCl、20mM リン酸ナトリウム、pH7.0に調節し、そしてカラムに載せる。カラムを、5倍量の1.5M NaCl、20mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で洗浄し、そして20mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0で溶出した。X軸は、時間(分)を示し、Y軸は、280nmの吸光度を示す。図中に示された挿入図は、素通り(FT)収集物および溶出(E)収集物のクマシーブリリアントブルーを用いて染色された非還元4〜20%SDS−PAGEゲルの画像である。「生存」形態および「死滅」形態の移動の位置を、矢印を用いて示す。
【図8】図8は、異なる温度で増殖されたCHO細胞から分泌されたヒトLTβR−IgのSDS−PAGE/ウエスタンブロッティング分析である。ヒトLTβR−Igを含む示された培養温度で増殖されたCHO細胞上清を、4〜20%勾配ゲルを用いる非還元SDS−PAGE電気泳動とそれに続く、ウエスタンブロッティングとにより、二連で分析された。
【図9】図9は、哺乳動物細胞から分泌された全量のヒトLTβR−Ig中の死滅物質のパーセンテージに対する培養温度の効果である。組換えヒトLTβR−Igを分泌するCHO細胞を含む二連のフラスコを示された温度で培養し、そして分泌されたヒトLTβR−IgをプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。ヒトLTβR−Igの「不活性」形態のパーセンテージを分析的HICクロマトグラフィーを用いて繰り返し評価した。X軸は、培養温度を示し、Y軸は、細胞により分泌された全量のヒトLTβR−Igのパーセンテージとして発現された「不活性」物質の量を示す。
【図10】図10は、28℃、32℃および37℃で調製されたHVEM−Igの非還元SDS−PAGE分析を示す:28℃、32℃および37℃で培養された細胞由来のHVEM−IgのプロテインA精製調製物を、非還元SDS−PAGEサンプル緩衝液と混合して、そしてあらかじめ形成しておいた4〜20%SDS−PAGEゲル上で電気泳動した。タンパク質のバンドをクマシーブルーを用いて可視化した。矢印を用いて示されたバンドは、非凝集化HVEM−Igを示す。ゲル上に見える高分子量のバンドは、凝集形態に相当する。
【図11】図11は、表面に37℃対32℃で産生されたHVEM−Igの結合のFACS分析を示す(Lightおよび/またはLTα/β)。A).32℃で産生された物質が、37℃の物質よりもより結合することを示す、ヒトLIGHTを用いてトランスフェクトされた293細胞に対する濃度の関数としてのHVEM−Igの結合。B).LIGHTをトランスフェクトされた293細胞に対する2μg/mlの濃度でのHVEM−Ig結合が観察されたFACSプロフィールの例。C).32℃で産生されたHVEM−Igの、LIGHTおよび表面リンフォトキシン−α/β(LTα/β)複合体の両方を示すII−23T細胞ハイブリドーマ株の表面への改善された結合のさらなる例。
【図12】図12は、LIGHTまたはリンフォトキシンα(LTα)リガンドのいずれかの、3つの異なる温度で産生されたHVEM−Igを固定化したBIA core chipへの結合のBIAcore分析である。各々の曲線は、リガンドの1つの濃度での結合事象を示し、以下の濃度を使用した:30μg/ml、15μg/ml、7.5μg/ml、3.75μg/ml、1.87μg/ml、0.93μg/ml、0.47μg/ml、0.23μg/ml、0.11μg/mlおよび0.0μg/ml。各々のチップを、レセプターIgの等量が結合することを示す、同じRUレベルにロードした。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(詳細な説明)
ここで、本願発明に対する言及が詳細になされる。本発明は、TNFファミリーにおけるレセプターの免疫グロブリン融合タンパク質の高レベルの機能的形態または高レベルの活性化形態を生じる能力に関する。レセプター−Ig融合タンパク質を用いた臨床介入の成功は、長期間の存在および慢性的に処置する能力または疾患期間の拡大の最小化を必要とする。理想的に、ヒトの使用ためのこのような融合タンパク質の調製は、いかなる凝集体形態、不活性形態または誤って折り畳まれた形態も有さない。何故なら、そのタンパク質の存在は、薬物の効力を減少し、そして改変された構造は、薬物の除去を容易にし、それによってその効力を減少し得る抗体応答を誘発し得るためである。さらに、抗レセプター抗体は、細胞表面上の天然レセプターに直接に架橋し得、それによってそれら(すなわち、Browningら、1996,JEMに記載のようなアゴニスト抗体)を活性化する。アゴニスト抗体は、その系を活性化し、従って、さらに、レセプター−Ig処理は、より非効果的であり得または有害でさえあり得る。「免疫グロブリン融合タンパク質」によって、本発明者らは、ポリペプチドの細胞外ドメインの任意の機能的部分と免疫グロブリン定常領域の任意の部分(例えば、CH1、CH2またはCH3ドメイン、あるいはその組み合せ)との任意の融合物をいう。好ましくは、このポリペプチドは、TNFファミリーのレセプターのメンバーである。Ig分子の部分は、種々の免疫グロブリンアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgM、IgAなどを含む)のいずれか由来であり得る。「TNFファミリーのレセプター」によって、本発明者らは、このレセプターが、天然に膜結合されようとまたは分泌されようと(オステオプロテゲリンの場合のように)、規範的なTNFファミリーシステイン架橋パターンを有する任意のレセプター、またはTNFファミリーのリガンドの定義されたメンバーに結合する任意のレセプター(例えば、Bannerら、1993)をいう。他の実施形態において、本願発明は、本明細書中で議論される方法によって得られたTNFファミリーレセプター−Ig融合物およびそれらを含む薬学的調製物に関する。
【0017】
LtβR−Igタンパク質は、サルのcos細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞において2つの形態で発現される。1つの形態である「活性な」形態は、高い親和性でリガンドに結合し、一方、もう一方の形態である「不活性な」形態は、リガンドに結合しない。生存形態と死滅形態のこの混合物は、どのTNFレセプター−Ig融合タンパク質についても、以前は記載されなかったが、不活性形態の性質は、明らかでない。この2つの形態は、SDS−PAGE分析の2つのバンドの存在によって発見された。この発現された物質は、かなりのグリコシル化不均一性を含む;しかし、この不均一性は、本明細書中で記載される機能的問題をおそらく生じないだろう。例えば、このレセプターが、膜通過ドメインおよび免疫グロブリンFc領域を欠失する可溶なモノマー形態として発現される場合、非N結合グリコシル化形態、モノN結合グリコシル化形態およびジN結合グリコシル化形態が観測される。単一グリコシル化形態および二重グリコシル化形態の両方は、BDA8(機能性形態のみを認識する抗体)によって免疫沈降され得る。さらに、アフィニティーで精製された形態は、同様なグリコシル化不均一性を有する。むしろ、本発明者らは、非膜固定形態の発現が、レセプター−Igダイマーの2つのアーム間で不適切な架橋を生じるいくつかの異常なジスルフィド結合をもたらすと予測する。
【0018】
TNFファミリーのレセプターは、一般的に、ドメインあたり約3つのジスルフィド架橋を有する細胞外のリガンド結合部分のドメインを3〜4繰り返した。不適当な折り畳みは、ジスルフィド結合の不正確なパターンまたはジスルフィド結合のいくつかの形成の欠失のいずれかをもたらす(図2中に図解的に図示される)ことが、考えられる。レセプター−Ig融合タンパク質の場合、Fcドメインの早い折り畳みが、2つのLTBR鎖(すなわち、2つのレセプターアーム)をきわめて近接させる、引き続く2量化を可能にするようである。レセプタードメインが、折り畳みをまだ完成していない場合、遊離スルフヒドリルがこれらのアームの間で対になる(すなわち、アーム間架橋)可能性がある。このような不正確な折り畳みが起こり得るか、またはジスルフィドスクランブル(scrambling)が、すでに形成されたジスルフィド結合の隣に並んだ遊離スルフヒドリルの間で生じ得、両方の場合において、これらは、折り畳みエラーをもたらす。不正確な折り畳みは、1つのアーム内で起こる(すなわち、アーム内折り畳みエラー)こともまた可能であるが、このようなエラーは、根本的に異なる最終分子形状を生じないかもしれない。この場合、活性形態および不活性形態は、従来のサイズ化方法を用いて、容易に分散できないかもしれない。
【0019】
最後に、TNFR55レセプターにおいて、第4のドメイン(すなわち、膜貫通領域に最も近接したドメイン)は、このレセプターが、Ig融合タンパク質として発現された場合、リガンド結合のために不可欠であると実証された(Marstersら、1992年)。このドメインは、多くのTNFレセプターのために不可欠であり得る。TNFR555に関する別の研究は、このドメインが、Ig融合タンパク質に関連してのみ不可欠であり、この第4のドメインを欠失する膜形態が、TNFリガンドを結合する際に完全に活性であることを示唆した(Corcoranら、1994年)。しかし、より最近では、結晶学的分析により、第4のドメインに関してあり得る不可欠な機能が指摘された(Naismithら、1996)。この第4のドメインは、リガンドとの直接の接触をなお欠く種の間で比較的に保存される(Bannnerら、1993年)。ヒンジおよびCH2+CH3 Fcドメインの隣に存在する2つの第4のドメインの間のこの領域におけるアーム間架橋は、分子の全形状を認知できるほどには改変せず、それ故、サイズに基づいた分離方法において不可視であり得ることが可能である。それにもかかわらず、この分子は、損なわれたリガンド結合を示す。3つのドメインのみ有するレセプターは、同様の様式でふるまい得る。
【0020】
細胞培養の間の温度減少は、分泌される顕著により少ない誤って折りたたまれたより小さい形態(すなわち、不活性形態)を生じた。この改善は、おそらく、ポリペプチドの折り畳み速度の減少に起因し、この速度の減少は、レセプター−Ig融合タンパク質を予期されたダイマー形態へとアセンブルする前に、LTβR部分の個々のドメインをより時間をかけて折り畳むことを可能にする。折り畳みプロセスを遅くするために必要とされる絶対温度は、宿主依存性である。哺乳動物細胞(すなわち、CHO)に関して、本願の方法は、好ましくは、約27℃〜約35℃の温度で起こり、さらに好ましくは、この温度は、約27℃〜約32℃である。本願の方法はまた、酵母培養系において使用され得る。酵母培養物は、有意な利益を達成するために、約10℃〜約25℃の温度で、好ましくは、約15℃〜約20℃で増殖されることを必要とする。
【0021】
本願発明の活用は、活性タンパク質Ig融合物の正確な折り畳みを可能にする。いくつかの場合、その間に非常に低いレベルのクローニングされた遺伝子の発現しか起らない、より高い温度(例えば、約37℃〜約43℃)での細胞増殖を可能にすることが、望ましくあり得る。所望の増殖期間の後、この融合物は、低温度で発現され、活性融合物の増大された収率を生じ得る。哺乳動物系における低温度は、上で議論されたように、好ましくは約27℃〜約35℃であり、より好ましくは約27℃〜約32℃である。
【0022】
従って、タンパク質−Ig融合物が発現される温度を低下させることにより、本願の方法は、当業者がそのタンパク質および所望のタンパク質のIg部分の両方の折り畳みを調節することを可能にする。
【0023】
さらに、アフィニティークロマトグラフィー技術および/または従来のクロマトグラフィー技術を含む本願の方法を用いて、当業者は、今や、種々の臨床上の状況において、免疫学的機能をブロックするキメラタンパク質を使用するのに十分活性なフラクションを精製し得る。さらに、低温(すなわち、≦32℃(CHOについて)および≦25℃(酵母について))細胞培養条件を有する本願の方法を用いて、ヒトLTβR−Igのより大きい活性な形態で高度に濃縮された培養上清を調製することが、今や、可能である。さらに、このファミリーのレセプターの他のメンバーは、同様な問題を欠点としてもつことがあり得る。例えば、本発明者らは、TNFR55−Ig(p55 TNFRまたはp60 TNFRとも呼ばれる)についての非還元SDS PAGE上で2つの類似したバンドを観察する。同様に、HVEMと呼ばれる別のTNFファミリーレセプターの特性は、より低温での分泌により改善される。このレセプターは、種々の温度で作製された物質において明らかなサイズの差異が存在しない場合、アーム内折り畳みエラーの例を形成し得る。それにもかかわらず、機構に関係なく、TNFファミリーのこれらのメンバー他のメンバーの調製において、低下された分泌温度を有する本願の方法は、より高いパーセンテージの活性な融合タンパク質を生じる。
【実施例】
【0024】
(実施例)
(実施例1 ヒトLTβ−Igの生存形態を特異的に認識するmAb)
LTβ−Igタンパク質(図1)は、プラスミドでトランスフェクトされたCOS細胞またはCHO細胞のいずれかから分泌される場合、標準的プロテイン質Aに基づくアフィニティークロマトグラフィー方法を用いて精製し得る。精製されたタンパク質は、非還元SDSアクリルアミドゲル上で約100kDaの密接な間隔の2つのバンドからなる(図3)。この2つのバンドは、見かけの大きさで約5kDa異なる。このタンパク質が、還元される場合、約50kDaの、不均一なグリコシル化から生じた本質的な2つのバンドが、分離される(図3)。しかし、非還元条件下で観測された2つのバンドは、還元されたバンドの対を生じるグリコシル化の差異から直接には生じない。ヒトLTβRに対するモノクローナル抗体のパネルを用いて、本発明者らは、グループI由来の抗体(すなわち、AGH1およびBDA8)がレセプターの大きいMW形態のみを認識することを示した(表I;上のバンドおよび下のバンドに対する選択性を除くすべてのデータは、Browningら、1996年により得られた)。このグループ由来の抗体は、BDA8のFabフラグメントが、なおブロックし得るという観測により証明されるようにリガンド結合領域に直接結合する。グループIIのmAbもまた、リガンド結合をブロックし得るが、生物学的アッセイにおいて、これらのmAbは、混合したアゴニスト性質およびアンタゴニスト性質を示す。これらのmAb(AGHIを、本実験において使用した)からアフィニティーカラムを作製し、そしてLTβR−Igの大きな形態および小さな形態の混合物を適用する場合、レセプターの小さい方の形態は、流れ、そして大きい方の形態は、カラムマトリクスに留まる。低pH溶出によって、大きな形態の純粋な調製物が生じる(図4)。この2つのフラクションを、表面ホルボールエステル活性化II−23 T細胞ハイブリドーマ細胞(すなわち、表面リンフォトキシン複合体を発現する細胞)に結合する能力についてアッセイした(Browningら、1995年に記載のように)。そしてこのmAbへ結合したフラクションのみが、表面のリンフォトキシンに結合し得た。フロースルーフラクション(すなわち、低い方のMWのバンド)は、完全に不活性であった(図5)。詳細には、LtβR−Ig構築物を用いて安定にトランスフェクトされたCHO細胞からの上清を、このタンパク質を単離するためにプロテインAカラムを通過させた。純粋なタンパク質を25mMのリン酸ナトリウム緩衝液を用いてpH2.8で溶出し、そしてこのタンパク質を含むフラクションを1/10容量の0.5Mリン酸ナトリウム(pH8.6)を用いて中和した。免疫沈降を、3μgのLTβR−Igおよび4μgの抗LTβR mAbを用いて0.25mlの容量で行い、続いて、マウスmAb上のκ鎖のみを認識し、ヒトFcドメインを認識しないKappaLockセファロースビーズを用いてmAbを捕捉した。このビーズを遠心分離により除去し、上清から、プロテインAセファロースを用いて残存の免疫グロブリンを除去した。ビーズを、SDS PAGEサンプル緩衝液(非還元剤)を用いて処理し、緩衝液を、SDS−PAGEゲル上へロードした。ゲルを泳動させ、Hybond上へトランスファーさせ、そして西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した抗ヒトIgG Fcフラグメントを用いてウェスターンブロットした(LTβR mAbに続いて、抗マウスIgG−HPRを加え、そしてHRPの化学発光検出(Amersham))。
【0025】
LTβR:Igの活性形態を排他的に認識するAGH1の能力を活用するために、AGH1アフィニティーカラムを、製造者のプロトコルに従って、CNBr活性化セファロース(Pharmacia,Piscataway,NJ)を用いて、調製した。このカラムを徹底的にPBSで洗浄し、プロテイン質A精製したLTβR−Igを適用し、そしてフロースルーを収集した。このカラムをPBSで洗浄し、次いで、25mMのリン酸ナトリウム(pH2)を用いて溶出した。溶離液を含有するフラクションを、上記のように即座に中和した。タンパク質濃度を280nmでの吸光度により決定し、1OD溶液が1mg/mlに等しいと決めた。LTβR−Igを含有するフロースループールおよび溶出プールを、Browningら、1995年に記載のようにFACS分析による結合について試験した。このフロースルーフラクションは、表面LTを発現する細胞を染色するFACSを示さなかったが、一方、溶出プールは、完全な結合活性を保持した。
【0026】
(実施例2 ヒトLTβR−Igの生存成分および死滅成分の従来のクロマトグラフィー分離)
上記のように同定される大きなMW成分と小さなMW成分との間の潜在的な構造の差異を、従来のクロマトグラフィーの工程を用いる分離方法の設計において活用する。例として、このタンパク質を、PBS中でゲル濾過によりサイズ分類して、大きい方の形態および小さい方の形態の部分的な分離を達成し得る。次いで、これらの調製物を、再び同じカラムへ適用し、それぞれの化合物において90%より大きく濃縮されたヒトLTβR−Igの大きい方の形態および小さい方の形態の調製物を入手し得る。あるいは、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して、同じ結果を達成し得る。このタンパク質の混合物を、硫酸アンモニウムで希釈し、HICカラム上にロードし、そして大きい成分および小さい成分を、減少する塩勾配で示差的に溶出する。これらの条件下で、この2つのヒトLTβ−Ig成分のベースライン分離を達成する(図6)。これらの方法および上記のような免疫アフィニティー方法は、mg量のヒトLTβR−Igの大きな調製物および小さな調製物を調製するために有用であるが、薬学的用途のための多量のこれらの成分の調製について所望される多くの事を残す。出願者らは、このHIC方法を大量に得られる樹脂へ適応させることにより、新規の方法を発明し、そしてクロマトグラフィー条件を同定した。このクロマトグラフィー条件は、大きな成分は維持され、そして選択的に溶出され得る間、ヒトLTβR−Ig物質の小さな形態がカラムを通って流れることを可能にする(図6)。溶出された物質を、サイズ排除クロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーのような最終の工程へ供して、凝集物質および他の不純物を除去し得、適切な生理学的緩衝液への処方の後、これをインビンボでの作業に使用し得る。下記の第1の実施例(A)は、LTβR−Igの調製の際に、不活性物質の量を分析的に評価するために使用した特定の条件を記載する。第2の実施例(B)は、活性成分が非常に濃縮されたLTβR−Ig調製物を生じる分離用の精製プロセスを記載する。
【0027】
A).分析的疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を、不活性LTβR−Igの量を評価するための定量的アッセイとして使用し得る)
組換えヒトLTβR−Igの小さい方の不活性成分および大きい方の活性成分のベースライン分離を、1.5Mの硫酸アンモニウムで平衡にしたPerseptive Biosystems Poros エーテル/m カラム(4.6×100mm、カタログ番号P091M526)、そして硫酸アンモニウムの減少勾配において引き続く溶出で達成した。このLTβR−Ig調製物を0.1mg/mlの濃度へ希釈し、そして1.5Mの硫酸アンモニウム、20mMのリン酸ナトリウム(pH9)(緩衝液A)の最終緩衝液組成物にした。一部(100μgのタンパク質を含む1ml)をPorosエーテル/m カラム上へロードした。このカラムを、8.3mlの緩衝液Aで洗浄した。活性成分および不活性成分を、100%の緩衝液Aから100%の緩衝液B(20mMのリン酸ナトリウム、pH9)までの直線勾配(全勾配容量16.6ml)で、示差的に溶出し、続いて、緩衝液B 16.6mlを用いて洗浄した。カラムの溶出物を、214nmでの吸光度についてモニターした。全手順を、カラム流速1ml/分を用いて、周囲気温で実行した。代表的な分析的HICクロマトグラムの溶出プロフィールが、図5中に示される。ピーク1は、LTβR−Igの不活性フラクションを含み、そしてピーク2は、LTβR−Igの活性フラクションを含む。この2つの形態の相対的寄与を定量するために、ピーク面積を、Perseptive機器Vison積分ソフトウェアを用いて、積分した。
【0028】
B).ヒト組換えLTβR−Igの分離用精製)
馴化培地の清澄化および濃縮:細胞の細片を、5μのポリプロピレン 5sqft. Calyxフィルターカプセル(Microseparations Inc,Westborogh,MA)を通すデッドエンド濾過、続いて、0.2μ Opticap 4インチフィルターカートリッジ(Millipore Corp.,Bedford,MA)を用いて、組換えLTβR−Igを分泌するCHO細胞から収集した10Lの馴化培地から除去した。清澄化した培地を、限外濾過により、直列に連結された3つのS1Y30 Spiral Ultrafiltrationカートリッジ(Amicon,Beverly,MA)を用いて、約1Lへ濃縮した。
【0029】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィー:濃縮した馴化培地を、4℃で10mlのプロテインAセファロース速流(Pharmacia)カラムを重力により通過させた。このカラムを、50mlのPBS、0.5MのNaClを含有する50mlのPBS、そして50mlのPBSで洗浄した。混入したウシIgGを除去するために、このカラムを25mMのリン酸ナトリウム(pH5.5)50mlで洗浄した。結合したLTβR−Igを、3mlのフラクション中で25mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl(pH2.8)を用いて重力により溶出し、そして即座に、0.5Mのリン酸ナトリウム(pH8.6)0.3mlで中和した。タンパク質を含有するフラクションを、吸収分光法により同定し、プールし、そして−70℃で保存した。
【0030】
疎水性相互作用クロマトグラフィー:プロテインA溶出プール(2.5mg/mlの濃度で40ml)を、3Mの塩化ナトリウム、40mMのリン酸ナトリウム(pH7)40mlおよび1.5Mの塩化ナトリウム、20mMのリン酸ナトリウム(pH7)20ml(全ての溶液は、周囲気温であった)を用いて、希釈した。希釈したプールを、10×100mm(7.8ml)Source PH15(Pharmacia、Piscataway NJ)上へ、流速2ml/分でロードした。このカラムを1.5Mの塩化ナトリウム79ml、20mMのリン酸ナトリウム(pH7)を用いて流速20ml/分で洗浄した。結合したタンパク質を、流速2ml/分で20mMのリン酸ナトリウム(pH7)を用いて溶出した。溶出物の吸光度を、280nmでモニターし、そして9mlのフラクションを収集した。タンパク質を含有する溶出物のフラクションを、UV吸収分光法で同定し、プールし、そして−70℃で保存した。図7は、典型的なHIC溶出のプロフィールを表す。これらの条件下で、不活性物質は、カラムを素通りし、そして活性物質は、樹脂に結合される。図7の挿入図は、フォロースルーおよび溶出プールそれぞれのクマシーブルー染色されたNR SDS−PAGE分析のスキャンを含む。
【0031】
サイズ排除クロマトグラフィー:LTβR−Igの活性成分を含有する約100ml(1.3mg/ml)のHIC溶出プールを、セントリプレップ30コンセントレーター(Amicon,Beverly,MA)を用いて、限外濾過により9mlに濃縮した。この濃縮物(10.3mg/ml)を、PBSで平衡にした1.6×100cm Superose−6プレップグレードカラム(Pharmacia,Upps ala,Sweden)上へ流速1ml/分でロードした。この溶出物を3mlのフラクションに収集した。タンパク質を含有するフラクションを、UV吸収分光法で同定した。選択したフラクションを、NR SDS−PAGEゲル電気泳動を用いて、3μg/レーンロードで凝集物含有量について分析した。最小の可視凝集物を有するフラクションを、プールし、そして−70℃で凍結保存した。
【0032】
この様式で、粗培養培地中に存在する不活性LTβR−Ig成分の最小量を含有するLTβR−Igを、調製し得る。
【0033】
(実施例3.低温発酵条件が、細胞培養期の間のヒトLTβR−Igの大きく活性な成分を濃縮する)
従来の哺乳動物細胞培養条件下で、ヒトLTβR−Igは、約50%の小さい成分と約50%の大きい成分の混合物として分泌される。同じタンパク質を発現するために、バキュロウイルスに感染した昆虫細胞を使用することにより、激烈に減少したレベルの小さい形態を生じる。昆虫細胞を28℃で培養する場合に、低温で増殖した哺乳動物細胞から分泌されたヒトLTβR−Igが、大きい形態および小さい形態の変化した比を有するかどうかを、本発明者らは探究した。ウエスタンブロットによって分析された、28℃、30℃、33℃、35℃および37℃にて、Tフラスコ中で培養したヒトLTβR−Igを分泌するCHO細胞由来の上清が、図8に示される。大きい形態および小さい形態(矢印で示される)が、33℃、35℃および37℃で増殖した培養物中に存在する。小さい形態の非常にわずかな形跡が、30℃および28℃で増殖した細胞由来の培養上清を含むレーンにおいて、見られ得る。従って、細胞培養の間の温度の低下が、小さく不活性な形態のヒトLTβR−Igの量を劇的に減少させる。細胞培養温度と、より大きく活性な形態のヒトLTβR−Igの濃縮の程度との間の関係を定量するために、複数の培養フラスコをセットアップし、そして1℃の間隔で、28℃〜37℃の範囲の温度で増殖させた。プロテインAアフィニティー精製したヒトLTβR−Igサンプルを、分析的HICクロマトグラフィーによって分析し、異なる温度で増殖した細胞由来の調製物中に存在するヒトLTβR−Igの小さい成分および大きい成分の比を定量した。図9に図表を用いて示されるように、培養温度が、37℃から32℃に低下する場合に、低い方のバンドの量が、約1/5倍に急速に減少する。28℃までの培養温度の低下は、低い方の形態の量を減少させるが、さほど劇的な様式ではない。これらの結果は、37℃からほんのわずかだけの培養温度の低下が、劇的により小さいのmw成分の量を減少させることを示し、従って、ヒトLTβR−Igのより大きい活性な成分の収率が増加する。これらのデータに基づいて、これらの観察が、懸濁液中の増殖に適応している組換えヒトLTβR−Igを分泌するCHO細胞を用いて製造するに適した条件下で、ラージスケールで複製され得るかを試験するために、32℃および28℃の培養温度が選択された。これらの実験について、細胞を、37℃で、1ml当たり約2×106個の細胞の密度にまで増殖させ、培養物を、細胞生存率が80%未満に低下するまで、増殖培地の約4容量で希釈し、そして32℃でインキュベートした。産生期の間、28℃まで温度を低下させることにより、また、最終的な収集において、顕著により低いレベルの理想的な(ideadi)成分を生じる。28℃または32℃での産生期の間に、細胞数はあまり増加しないが、37℃で排他的に増殖した培養物に対する産生力価における数倍の増加が、収集された馴化培地において得られたことに注意することは興味深い。32℃および28℃でのプロセスにおいて使用された特定の条件を、以下に記載する。
【0034】
初期のデータは、培養温度の低下が、酵母のような他の宿主系において類似の利点を生じることを示唆する。酵母において、低温産生の有益な効果が、哺乳動物細胞においてよりもさらに低い温度で観察されることは興味深い。30℃で培養された酵母は、主に不活性な形態を産生し、25℃で増殖した培養物は、不活性な形態および活性な形態のほぼ等しい割合の混合物を含み、そして16℃で発酵した培養物は、ヒトLTβR−Igの活性な形態を主に産生する。これらの観察は、低温発酵が、任意の分泌宿主系において、ヒトLTβR−Igの活性な成分の顕著により高い収率を生じることを示唆する。当業者は、各々の系について、最適な産生温度を容易に決定し得る。
【0035】
ここで本発明者らは、このプロセスが、LTβR−Igの産生にどのように適用されたかについての詳細な例を提供する。細胞培養温度の低下が、宿主細胞から分泌されるLTβR−Igにおいて存在する不活性な成分の量を顕著に減少させるという事実を利用する、2つの細胞培養方法が開発された。さらに、低温発酵の予期しない利点は、36℃〜37℃で行われた伝統的な発酵作業と比較した場合の、力価における数倍の向上である。表IIは、グリコシル化の程度において変化する異なるLTβR−Ig構築物でトランスフェクトされた、2つの異なる細胞株を用いて得られた、不活性なLTβR−Ig成分の比較収率および相対的な量を要約する(この実施例の趣旨と密接に関係しない)。
【0036】
32℃の細胞培養プロセス:懸濁液中での増殖に適応したヒトLTβR−Igを分泌するCHO細胞を、10%のFBS、140mg/Lのストレプトマイシンおよび50mg/Lのゲンタマイシンを補充した、DME/HAM’s F−12増殖培地(以下の表IIIを参照のこと)中で増殖させた。スケールアップのために、2つの750mlのスピナーフラスコを、増殖培地において、1ml当たり約2×105個の細胞で播種した。培養物を、37℃で、5% CO2雰囲気下で、1ml当たり約3×106個の細胞の密度まで増殖させた。両方のスピナー培養物由来の細胞懸濁液を合わせて、約10Lの増殖培地を含むスケールアップバイオリアクターを播種した。培養物を、11% O2で酸素化し、そして1ml当たり約2×106個の細胞の密度まで、37℃で3日間増殖させた。この培養物を、1ml当たり6.4×105個の細胞の密度で、33Lの増殖培地を含む生産用バイオリアクターを播種するために用いた。次いで、生産用バイオリアクターを、8日間、32℃の有利な温度で、11% O2で設定された酸素散布速度を用いて培養した。収集日(8日目)の細胞密度は、1ml当たり約2×106個の細胞であり、約60%の生存率であった。これらの条件下で、12mg/LのLTβR−Igの力価を達成し、この力価は、37℃の伝統的な温度で同じ細胞を培養した場合よりも、2倍高かった。LTβR−Ig調製物における不活性な成分の相対的な量は17%であり、この相対的な量は、37℃の培養から得られた産物と比較した場合に、60%より大きな減少を表した。
【0037】
28℃の細胞培養プロセス:懸濁液中での増殖に適応したヒトLTβR−Igを分泌するCHO細胞を、10%のFBS、140mg/Lのストレプトマイシンおよび50mg/Lのゲンタマイシンを補充した、DME/HAM’s F−12増殖培地(以下の表IIIを参照のこと)中で増殖させた。スケールアップのために、2つの800mlのスピナーフラスコを、増殖培地において、1ml当たり約2×105個の細胞で播種した。培養物を、37℃で、5% CO2において、1ml当たり約3.5×106個の細胞の密度まで増殖させた。両方のスピナー培養物由来の細胞懸濁液を合わせて、約10Lの増殖培地を含むスケールアップバイオリアクターを播種した。培養物を、11% O2で酸素化し、そして1ml当たり約1.7×106個の細胞の密度まで、37℃で2日間増殖させた。この培養物を、1ml当たり2.5×105〜3×105個の細胞の開始細胞密度で、1:9の分割比を用いて、2つの40Lの生産用バイオリアクターおよび1つの10Lの生産用バイオリアクターを播種するために用いた。生産用バイオリアクターを、1ml当たり約2×106個の細胞の細胞密度に達するまで(2日間)37℃で培養し、そして11% O2で酸素化した。2日目の終わりに、バイオリアクターの温度を、28℃に低下させ、そしてこのバイオリアクターを、さらに5日間培養した。7日目に、1ml当たり約3×106個の細胞の細胞密度および75%を超える細胞生存率で、このバイオリアクターを収集し、そして馴化培地を上記の通りに処理した。これらの条件下で、約20mg/LのLTβR−Igの最終力価が達成され、この力価は、37℃で同じ細胞を培養した場合に得られた力価に対して3.3倍の増加を示す。不活性な成分の相対的な比率は10%であり、この値は、37℃で調製された物質に対して80%の減少を示す。
【0038】
(実施例4:産生の間の死滅形態を最小にするための、Fcドメインにおける変更)
死滅した分子が、これらの調製物を生じる理由についての、本発明者らの仮定的な説明に基づいて、Fcドメインが二量体化する前の時間を引き伸ばすことが、正確に折り畳まれたレセプタードメインのフラクションを増加させることが推定される。本発明者らは、この結果に達するために、いくつかの方法を探究した。異なるIg Fcドメインは、異なる速度で折り畳まれるが、IgG4ドメインについてのIgG1ドメインの交換が、生死比を変化させなかったことが可能である。第2に、2つのペプチド鎖を架橋するヒンジ領域におけるシステイン残基が、変異誘発によって、IgG1 Fcドメインから取り除かれた。Fcドメインは、ヒンジのジスルフィド形成の非存在下において、首尾良く二量体化し得るが、この二量体化速度は、ヒンジのジスルフィド形成の非存在下において、より緩慢になり得る。アラニンによる2つのシステイン残基の置換は、SDS−PAGEおよびHICクロマトグラフィーによって定量されるように、減少した量の死滅形態を生じ、その結果、野生型のLTβR−Igが、37℃および28℃で、50%および5%の死滅形態を含む場合、IgG1のヒンジからのシステインの欠失が、これらのそれぞれの温度で産生される場合に、20%および5%の死滅形態を導く。従って、両方のシステイン残基の置換によるヒンジの改変が、調製物の質を改善し得、そしてさらに、1つのみのシステイン残基の置換が、有益な効果を有し得ることが可能である。このような遺伝的改変は、低温の産生方法によって、死滅形態のパーセンテージを減少し得る。
【0039】
(実施例5:折り畳みの問題を補正するためのシステイン架橋の欠失)
代表的には、タンパク質によって使用される折り畳み経路を決定し、最終的な正確な形態を得ることは、非常に困難である。それにもかかわらず、TNFレセプターファミリーにおけるいくつかのジスルフィド架橋は異常であり、そして最終的に折り畳まれた状態に必要とされないかもしれない。これらの架橋は、変異誘発の良好な候補である。LTβR−Igの3番目のドメインにおける1つのこのような架橋は、システイン101およびシステイン108(Wareら、1995において定義された配列からのナンバリングを用いて)の、アラニンへの従来の部位特異的変異誘発によって取り除かれ、SDS−PAGEによって証明されるように、死滅/生存の物質の改善された比を導いた。野生型では、LTβR−Igは、それぞれ37℃および28℃で産生される場合に、代表的には、50%および5%の死滅形態の存在を示す。欠失した1つのシステインジスルフィド架橋を有する変異形態は、これらの温度で産生される場合に、20%および5%の死滅形態を有した。
【0040】
(実施例6:HVEM−Igの調製物の質を改善させるためのより低い温度の使用)
ヘルペスウイルス侵入媒介物(entry mediator)(HVEM)は、LTβRに関連するTNFファミリーレセプターであり、そしてリガンドLIGHTに堅固に結合し、そしてリガンドリンフォトキシン−a(LTa)に弱く結合する(Mauriら、1998)。ヒトHVEMは、細胞外ドメインのPCR増幅によって、Ig融合タンパク質として調製され、そしてLTβR−Igについて記載されるように、ヒトIgG1 CH2領域およびヒトIgG1 CH3領域に融合された(Croweら、1994)。構築物を、EBNA系(293−E細胞)を用いた高コピー数ベクター発現を伴うヒト胚性腎細胞株293における一過性の発現のために、CH269と呼ばれるベクター(Chicheporticheら、1997)に挿入した。上清を収集し、そしてプロテインAアフィニティークロマトグラフィーおよび低pH溶出を用いて、HVEM−Igを精製した。組換えLTαを、記載されるように(Browningら、1996a)、昆虫細胞から調製した。組換え可溶性ヒトLIGHTを、活性化II23細胞由来のRNAを用いて、全体のcDNAのPCR増幅によって調製し、Mauriら、1998によって記載される、コード領域の配列を得た。LIGHTのレセプター結合ドメインを、PCRによって増幅させ、そしてα接合因子リーダー配列上で融合させ、そして他の関連したタンパク質について本質的に記載されるように、発現させた(Browningら、1996)。FLAGタグおよび(G4S)3スペーサーアミノ酸配列を、リーダーとレセプター結合ドメインの間に挿入し、その結果、分泌されたLIGHTが、N末端FLAG配列を有する。構築物は、以下の分子をコードした:
【0041】
【化1】


ここで、2つの点は、成熟タンパク質の推定N末端を示し、この成熟タンパク質は、次の2つのアミノ酸(EA)の除去によって、さらにプロセスされ得る。このタンパク質を、抗FLAG mAbカラム上のアフィニティークロマトグラフィー、および低pHまたはカルシウムキレート化のいずれかを用いた溶出によって、上清から精製した。全長のLIGHTをまた、記載されるように(Chicheporticheら、1997)、293−E細胞の表面上での発現のために、ベクターCH269に挿入した。細胞表面に対するレセプター−Igの検出のためのFACS結合方法、および固定化されたレセプター−Igに対する可溶性リガンドの結合を測定するためのBIAcore方法が、記載されている(Mackayら、1997)。BIAcore技術は、チップ(すなわち、レセプター)に結合したタンパク質の、リアルタイムの測定をもたらす。
【0042】
HVEM−Igを発現するCHO細胞を、10%のFBSを補充された増殖培地を用いて、ローラーボトル中で37℃で、コンフルエンシーまで増殖させた。細胞がコンフルエンスに達した時点で、使用済み培地を新鮮な増殖培地に交換し、そして培養物を、37℃、32℃および28℃でインキュベートした。28℃および32℃の培養物を、1週間に1度収集し、37℃の培養物を、4日ごとに収集した。分泌されたHVEM−Igを、記載されるように、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。精製された調製物を、分析まで−70℃で保存した。HVEM−Igを、28℃、32℃および37℃で産生し、そして精製した場合、すべての調製物は、SDS−PAGE分析において同様に挙動し(図10)、これは、タンパク質において大きな変化が生じなかったことを示唆する。従って、異常な折り畳み/ジスルフィド架橋が生じる場合、アーム内(intra−arm)またはFcドメインのヒンジ領域に近接して生じるかのいずれかであり(すなわち、アーム内架橋)、従って、SDS−PAGEにおいて、認めうるほどに分子の全体の形状に影響を及ぼさなかった。レセプター−Igが、293−E細胞上で発現されるLIGHTまたは活性化II23細胞上で発現されるLIGHTに結合する能力を、FACS結合アッセイにおいて評価した(図11)。両方の細胞型に対して、HVEM−Igが、細胞表面リガンドを結合する能力が、32℃での発現に対して、およそ2〜3倍改善された。BIAcore技術を用いて、BIAcoreチップを、HVEM−Igを用いて、同様のレベルまでロードした場合(RU値は、チップにおけるタンパク質の量を反映する)、より低い温度で産生されたHVEM−Igが、より高い温度で産生されたタンパク質よりもリガンドに結合することが観察された(図12)。LIGHTまたはLTαのいずれがリガンドであった場合でも、この結果が得られた。BIAcore結合曲線は、結合事象のリアルタイムでのオンおよびオフを示し、そして結合事象が、産生温度に関係なく類似であることが認められ得る。従って、調製物の一部(protion)が効率的に死滅し、そしてこの比率が、より低い産生温度によって最小化される。本発明者らは、より低い温度が、異常な折り畳み問題を補正し、そして、本発明者らは、死滅分子のフラクションを直接的に観察し得なかったが、生存分子のパーセンテージを改善したことを推測する。上記で概要を述べたように、アフィニティークロマトグラフィー技術は、低下させた増殖温度および/または不正確な折り畳みを防止するためのヒンジもしくはレセプター自体のいずれかにおける種々のシステインの変異誘発による調製物の最適化後に、生存/死滅の形態を分離するために役立ち得る。
【0043】
(実施例7:他のTNF−ファミリーレセプター−Ig融合タンパク質の死滅形態を最小化させるための、一般的なスキーム)
TNFファミリーの大半のレセプターは、免疫グロブリン−Fcドメインとの融合タンパク質構築物として調製された:
【0044】
【数1】


いくつかの場合、最も著しくは、Fas−IgおよびCD40−Ig(例えば、Fanslowら、1992)においては、キメラは、2つのTNFレセプターの可溶性のFc形態と比較して活性が乏しい。これらの調製物のいくつかは、種々の比において、生存形態および死滅形態の混合物であることが可能である。死滅形態とは、単に、生存形態よりも実質的に低い親和性(10〜1000倍)で結合する分子をいい、すなわち、結合活性を完全には欠かなくてもよいが、その代わりに、天然に細胞上で見出された高い親和性の形態と相対的に、リガンドへの減少した親和性を有する。異常なレセプターアーム間または異常なレセプターアーム内のジスルフィド結合が生じ得、より少ない活性タンパク質(protiein)を導く。
【0045】
これらのレセプター、またはいまだ不確定の他のレセプターのいずれかを用いて、抗レセプターmAbのパネルを、従来技術によって調製する。好ましくは、細胞表面上でのネイティブのレセプターに対するリガンド結合アッセイを用いて評価される場合(組換えレセプター形態を用いた他の方法が、十分であり得るとしても)、レセプターに対するリガンドの結合をブロックし得るこれらの抗体を、アフィニティーカラムを形成するために用いる。生存レセプター−Fc形態および死滅レセプター−Fc形態の混合物の調製物が、カラムを通過し、そしてフロースルーを収集する。カラムに結合した物質を、即時に中和された低pH緩衝液(代表的には、pH2.5〜pH4.0)を用いて、溶出する。2つのフラクションが、種々のタンパク質濃度で、FACS結合アッセイにおける細胞(または任意の他の標準的な結合様式)またはリガンドのいずれかに結合する。これらのmAbのいくつかが、選択的に生存形態に結合し、そしてフロースルー対溶出液の50%の結合を得るために必要とされる濃度の間に差が見られる。この結果は、一線を画するmAbとして、このmAbを特徴づける。フロースルーに対する溶出液中のタンパク質の比は、調製物中の生存形態のパーセントを示す。
【0046】
従って、同定されたこれらのmAbは、生存形態をアフィニティー精製するために用いられ得る。さらに、種々のイムノアッセイ様式におけるこれらの使用は、所望のレセプター−Fc形態の正確な形態の発現を最適化するために、使用され得る。このアッセイは、さらに、他の従来の精製方法と組み合わせて用いられ、アフィニティー技術に頼らずに、レセプターの活性形態を精製する方法を見出し得る。生存形態および死滅形態を線引きするために、これらのAbを用いて、培養温度が最適化され得、そしてクロマトグラフィー方法が、生存形態を富化するために開発された。あるいは、HICカラム方法が、生存形態および死滅形態を分離するために開発され得、そしてこの方法を用いて、培養条件を最適化し得る。同様に、これらのアッセイは、問題のジスルフィド結合を定義するために、レセプター部分のシステイン変異誘発についての基礎を形成し、除去に際してこのジスルフィド結合は、機能的に活性な物質を産出する。
【0047】
ヒトの疾患における治療的薬剤として、多くのこれらのレセプターが適用を有し、そして患者に適切に折り畳まれた形態のみを与えることが所望されるので、調製物を定義し、そして結合の乏しい形態を除去するためのこれらの方法は、有用性を有する。
【0048】
種々の改変および変化が、本発明の意図または範囲から逸脱することなく、本発明の方法においてなされ得ることが、当業者に明らかである。従って、本発明の改変および変化が、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内で生じるという条件で、本発明が、本発明の改変および変化を包含することが意図される。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−158252(P2010−158252A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79856(P2010−79856)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【分割の表示】特願2000−588341(P2000−588341)の分割
【原出願日】平成11年12月16日(1999.12.16)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】