説明

活性光線硬化型インクジェット用インクおよびインクジェット記録方法

【課題】濃度ムラが無く、記録媒体の種類による画像の階調や色濃度の差が無く、画像の光沢が高く、記録媒体との密着性が高く、記録媒体が普通紙であっても文字品質が高いインクジェット記録用インクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】ゲル化剤および活性光線硬化性組成物を含有する活性光線硬化型インクジェット用インクであって、該活性光線硬化型インクジェット用インクが温度により可逆的にゾルゲル相転移し、かつ該ゲル化剤が以下(A)、(B)及び(C)を含有する成分を縮合することによって合成されるオリゴエステル系ゲル化剤であり、該ゲル化剤が該活性光線硬化性組成物に吐出温度において溶解していることを特徴とする活性光線硬化型インクジェット用インク。
(A)グリセリン又はグリセリン縮合物
(B)炭素数16〜24の脂肪酸
(C)炭素数18〜22の二塩基酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性光線硬化型インクジェット用インク、詳しくは、温度によりゾルゲル相転移する特性を備えた活性光線硬化型インクジェット用インクとそれを用いたインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィスおよび軽印刷分野においては、記録媒体(例えば、普通紙、コート紙、アート紙、ラベル用紙、普通紙両面印刷等)の制約を受けずに高速フルカラー印字が行えるシステムのニーズが高まりつつある。
【0003】
画像記録装置の簡便性とランニングコストの観点から、インクジェット記録方式を用いたシステムが注目されつつあり、水系インクを用いたインクジェット方式や、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、記録後に紫外線(UV)光などの活性光線を照射して架橋させる紫外線硬化型インクジェット方式などが提案されている。
【0004】
これらのインクジェット方式のうち、水系インクを用いたインクジェットは、乾燥負荷が大きいことや、普通紙や印刷用コート紙に印字した際には、カールやコックリングといった紙媒体の変形が生じることや、インクが紙の奥に浸透して画像の濃度が上がらず不鮮明となる問題があった。
【0005】
一方、前記相変化インクジェット方式は、室温で固体のワックスインクを加熱(例えば、120℃以上)、溶融させ、溶融した状態でワックスインクを出射し、記録媒体上で瞬時に固化させる方法であり、乾燥負荷が無く、紙媒体の変形が無く、画像が鮮明という点で優れている。
【0006】
しかし、この方法は、形成された画像の耐擦過性が低く、この耐擦過性を向上させるためには、固化したワックスインクの硬度を高める必要がある。しかしながら、所望の硬度を得るためには、融点の高いワックスの使用が必要となる。例えば、融点が120℃以上のワックスを用いた場合、120℃以上という高温に加熱するため、インクジェット印字装置のヘッドの耐熱性、インク供給系の部材に負荷がかかり、印字装置の耐久性に難があり、その装置も大型にせざるを得ないという課題を抱えている。特に、インクジェット記録ヘッドにピエゾ素子を使用した方式では、高温限界点としてキュリー温度があり、自ずと加熱できる温度に上限が存在する。
【0007】
一方、紫外線硬化型インクジェット方式は、水系インクと比較して乾燥負荷が少ないため、消費エネルギーを抑えたシステムが構築できるという利点があり、紫外線によりインクを硬化させて画像形成を行う為、吸収性のない記録媒体に印字した場合でも耐擦性、密着性等の画像堅牢性が高く、また普通紙や印刷用コート紙に印字した際には、カールやコックリングといった紙媒体の変形を抑えられる利点もあるため、近年注目されている。
【0008】
しかしながら、紫外線照射方式では、装置の構成上、インクジェット記録ヘッドと紫外線照射装置の間に数cm〜数十cmの間隔が発生する為、インクジェット記録ヘッドから出射されたインクが記録媒体上に着滴してから紫外線が照射されるまでに数百ミリ秒〜数秒間のタイムラグが生じる。そのタイムラグの間に、インクが濡れ広がるため、記録ドットの大きさがタイムラグの長さ、つまり装置構成や記録速度に左右されるという問題が生じる。
【0009】
このため、例えば、低速記録モードと高速記録モードの二種類の記録速度を使い分ける場合、低速記録モードのドットの大きさが高速記録モードのドットの大きさと比較して大きくなるため、高速モードに合わせた画像変換処理を低速モードに適用すると、印字画像のシャドー部の階調性が悪化したり、色濃度が変化したりしてしまう。そのため、低速記録モードと高速記録モードのそれぞれにおいて、異なった画像変換を行わなければならず、画像変換処理が煩雑となる。
【0010】
また、様々な記録媒体に紫外線照射方式で印字した場合、記録媒体の種類によりインクの濡れ広がりが異なる為、記録媒体の種類によって記録ドットの大きさに差異が生じ、画像の階調性や色濃度が変化する。そのため画像品質が記録媒体の種類に左右されるといった問題が生じる。
【0011】
また、記録媒体が普通紙の場合、インクが着滴してから紫外線が照射されるまでの間に、インクが紙の表面から奥に浸透し、画像の濃度が上がらず、印字された文字が不鮮明で文字品質が低いといった問題がある。
【0012】
さらに、紫外線硬化型インクジェットシステムをシングルパス方式に適用する場合、紫外線を照射する前にインク液滴同士の合一が生じるため、濃度ムラが発生して画像品質が劣化するといった問題がある。
【0013】
上記問題に対し、ホットメルトインク中に有機ゲル化剤を含有し、ゲル化剤の固化能を利用して、インクの色ドット間での滲みを改良する方法が開示されている。しかしながら、上記提案されているようなゲル化剤のみを使用する方法では、印刷コート紙などの吸収性の低い記録媒体や、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの吸収性の全くない記録媒体に印字した際に、印字面における耐擦過性や記録媒体との密着性が十分ではない場合が多く、画像が劣化しやすいという問題点を抱えている。
【0014】
上記問題に対し、ゲル化剤を活性光線硬化型インクジェットインクに添加することにより、様々な記録媒体に印字したときの印字画像品質を改善する技術が開示されている(例えば、特許文献1および2参照。)が、ゲル化剤の種類によってはゲル化時の体積収縮にともない印字部の表面が荒れることにより、印字部の光沢が大幅に劣化するという問題や、記録媒体との密着性が低下する問題等があった。
【0015】
また、オリゴエステル系ゲル化剤の一種であるベヘン酸エイコサン二酸グリセリルを内包した乳化組成物をインクジェット用インクとして使用する技術が開示されている(例えば特許文献3参照)が、オリゴエステル系ゲル化剤が乳化された状態では、インク全体がゲル化または固化することはないため、記録媒体にインクが着弾してもドット間の滲みや濃度ムラは全く改善されない。また活性光線硬化型組成物を含有することに関して一切の記載がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−126507号公報
【特許文献2】特開2007−63553号公報
【特許文献3】特開2007−160287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、濃度ムラが無く、記録媒体の種類による画像の階調や色濃度の差が無く、画像の光沢が高く、記録媒体との密着性が高く、記録媒体が普通紙であっても文字品質が高いインクジェット記録用インクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0019】
1.ゲル化剤および活性光線硬化性組成物を含有する活性光線硬化型インクジェット用インクであって、該活性光線硬化型インクジェット用インクが温度により可逆的にゾルゲル相転移し、かつ該ゲル化剤が以下(A)、(B)及び(C)を含有する成分を縮合することによって合成されるオリゴエステル系ゲル化剤であり、該ゲル化剤が該活性光線硬化性組成物に吐出温度において溶解していることを特徴とする活性光線硬化型インクジェット用インク。
【0020】
(A)グリセリン又はグリセリン縮合物
(B)炭素数16〜24の脂肪酸
(C)炭素数18〜22の二塩基酸。
【0021】
2.前記(B)が炭素数18〜22の脂肪酸であることを特徴とする前記1に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【0022】
3.前記(B)がベヘン酸又はイソステアリン酸であり、前記(C)がエイコサン二酸であることを特徴とする前記1に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【0023】
4.前記(B)がベヘン酸及びイソステアリン酸を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【0024】
5.前記オリゴエステル系ゲル化剤の含有量がインク全質量に対して3〜30質量%であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【0025】
6.前記活性光線硬化型インクジェット用インクのゲル転移温度が20〜60℃であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【0026】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェット用インクを、インクジェット記録ヘッド内で該活性光線硬化型インクジェット用インクのゲル転移温度より10〜40℃高い温度範囲で加熱しながら、該インクジェット記録ヘッドより該活性光線硬化型インクジェット用インクを記録媒体上に吐出して、画像記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、濃度ムラが無く、記録媒体の種類による画像の階調や色濃度の差が無く、画像の光沢が高く、記録媒体との密着性が高く、記録媒体が普通紙であっても文字品質が高いインクジェット記録用インクとそれを用いたインクジェット記録方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明で用いることのできるインクジェット記録装置の主要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明で用いることのできるラインヘッド方式のインクジェット記録装置の主要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0030】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、活性光線硬化性組成物及びオリゴエステル系ゲル化剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェット用インクにより、様々な記録媒体に印字が可能で、特に印刷本紙やフィルムに印字した際に高い光沢を有するインクジェット記録用インクとインクジェット記録方法を実現できることを見出し、本発明に至った。
【0031】
本発明の活性光線硬化型インクジェット用インク(以下、インクジェットインクあるいは単にインクとも称す)は、出射時にはインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドとも称す)を加熱することにより低粘度で良好な流動性を有する。しかし、記録媒体へ着弾した後は、主にインク温度の低下により速やかにゾルからゲルへの相転移が起こり、流動性が著しく低下する。この結果、記録媒体上での濡れ広がりによる記録ドットの拡大を抑制し、なおかつ液滴同士の合一を抑える作用が働き、印刷物の印字画像品質を飛躍的に改良できたものと考えられる。
【0032】
また、印字後に活性光線を照射することでインク全体が固化し強固な皮膜を形成するため、耐擦過性に優れた画像を形成できたものと考えられる。
【0033】
さらに、本発明に記載のオリゴエステル系ゲル化剤を使用することにより、印字部の光沢を損なうことなく記録できる。理由は定かではないが、本発明に使用されるオリゴエステル系ゲル化剤は一般的なゲル化剤と比較してゲル転移時の体積収縮が少ないという特徴を有しており、そのために印字部の表面が平滑となり、結果として高い光沢を有すると推測される。
【0034】
以上のように、本発明のインクを使用して記録することにより、様々な記録媒体に印字が可能で、特に印刷本紙やフィルムに印字した際に高い光沢を有するインクジェット記録用インクとインクジェット記録方法を実現できた。
【0035】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0036】
前記活性光線硬化型インクジェットインクは、温度により可逆的にゾルゲル相転移することを特徴とする。
【0037】
該ゾルゲル相転移とは、高温では流動性を持つ溶液状態であるが、ゲル転移温度以下に冷却することでゲル化により流動性を失った状態に変化する現象を指す。
【0038】
該ゲル化とは、ラメラ構造、非共有結合や水素結合により形成される高分子網目、物理的な凝集状態によって形成される高分子網目、微粒子の凝集構造などの相互作用により、物質が独立した運動を失って集合した構造を指しており、急激な粘度上昇や弾性増加を伴って固化した、または半固化した、または増粘した状態のことをいう。
【0039】
前記活性光線硬化型インクジェットインクにおいては、ゲル化剤である前記オリゴエステル系ゲル化剤を前記活性硬化性光線硬化性組成物に、吐出温度において溶解した状態で含有することにより、温度降下に伴いインクをゾルゲル相転移させることが可能となる。ここで、吐出温度とはインクがノズルから吐出される直前の温度を意味する。
【0040】
インクの前記ゲル転移温度およびゲル化後の固化度は、使用するオリゴエステル系ゲル化剤の種類、インクに対するオリゴエステル系ゲル化剤の添加量、もしくはインクに使用される活性光線硬化性組成物の種類を変えることで調整することが可能である。
【0041】
前記ゲル転移温度とは、流動性のある溶液状態から急激に粘度が変化してゲル状態になる温度のことを言い、ゾル−ゲル転移温度、相転移温度、ゾル−ゲル転移点と称される用語と同義である。
【0042】
インクにおけるゲル転移温度の測定方法は、例えば、示差走査熱量計(DSC)で熱分析を行い、高温状態から冷却する際に観測される発熱ピークの中心温度を測定し、ゲル転移温度として求めることができる。
【0043】
本発明においてインクのゲル転移温度は任意に設定されるが、20℃〜60℃であることが好ましい。インクのゲル転移温度が20℃以上であれば、記録条件によるインク着弾後の十分なゲル転移を行うことができ、印字画像品質を十分に改善することができる。また60℃以下であれば、インクジェット記録装置を過度の高温に加熱する必要がなく、インクジェット記録装置のヘッドやインク供給系の部材への負荷を低減でき、記録ヘッドの良好な耐久性を実現することができる。
【0044】
また、前記ゲル転移温度は、ヘッド内でのインク保温温度と記録媒体の表面温度の間に存在することが好ましい。本発明のインクのゲル転移温度は、本発明に係るオリゴエステル系ゲル化剤の添加量により調整が可能である。
【0045】
〔オリゴエステル系ゲル化剤〕
次いで、前記オリゴエステル系ゲル化剤の詳細について説明する。
【0046】
前記活性光線硬化型インクジェット用インクにおいては、(A)グリセリン又はグリセリン縮合物、(B)炭素数16〜24の脂肪酸、(C)炭素数18〜22の二塩基酸を含有する成分を縮合することによって合成されるオリゴエステル系ゲル化剤を含有することを特徴とする。前記オリゴエステル系ゲル化剤は(A)、(B)及び(C)を含有する成分を公知の方法でエステル化することにより得られる。
【0047】
エステル化反応は、例えば酸、アルカリ又は金属触媒の存在下もしくは非存在下、該反応に不活性な有機溶媒中もしくは不活性ガス気流中において、副生成物である水を除去しながら100〜240℃で加熱して行う。エステル化には、例えば(A)グリセリン又はグリセリン縮合物と(B)炭素数16〜24の脂肪酸のエステルを合成した後に(C)炭素数18〜22の二塩基酸でエステル化する方法や、(A)グリセリン又はグリセリン縮合物と(C)炭素数18〜22の二塩基酸のエステルを合成した後に(B)炭素数16〜24の脂肪酸でエステル化する方法、及び(A)グリセリン又はグリセリン縮合物、(B)炭素数16〜24の脂肪酸、(C)炭素数18〜22の二塩基酸を同時に反応させてエステル化する方法などが使用できる。
【0048】
反応経過は系中の酸価又は水酸基価を測定することにより評価でき、これにより反応終了点を適宜決定できる。また(A)成分に重合度の高いグリセリン縮合物を用いる場合は、反応生成物は必ずしも完全にエステル化される必要はなく、例えばデカグリセリンではこれらの水酸基の半分以上がエステル化されれば良い。エステル化反応は未反応の(A)、(B)及び(C)成分や副生する脂肪酸、低分子量のグリセリド等を含むことがあるため、必要であればこれらを分離除去し、さらに脱色、脱臭処理をして精製する。
【0049】
(A)のグリセリン又はグリセリン縮合物としては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上の混合物として使用される。
【0050】
(B)の炭素数16〜24の脂肪酸としては、飽和、不飽和のどちらでも構わないが、飽和であることが好ましい。また炭素基は分岐、直鎖のいずれであっても構わない。具体的には、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エイコサン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、イソエイコ酸などが挙げられるが、ベヘン酸およびイソステアリン酸が特に好ましい。これらの脂肪酸は単独もしくは2種以上の混合物として使用できる。
【0051】
(C)の炭素数18〜22の二塩基酸としては、飽和、不飽和、直鎖、分岐のいずれであっても構わないが、飽和直鎖二塩基酸であることが好ましい。具体的には、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸などが挙げられるが、エイコサン二酸であることが特に好ましい。
【0052】
本発明で使用されるオリゴエステル系ゲル化剤としては、上記(A)、(B)及び(C)成分から構成されるものであればいずれも使用できるが、(A)がグリセリン、(B)がベヘン酸、(C)がエイコサン二酸から構成されるベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル、(A)がグリセリン縮合物、(B)がベヘン酸、(C)がエイコサン二酸から構成されるベヘン酸/エイコサン二酸ポリグリセリル、又は(A)がグリセリン、(B)がベヘン酸およびイソステアリン酸、(C)がエイコサン二酸から構成されるベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸グリセリルが特に好ましく使用できる。
【0053】
これらのオリゴエステル系ゲル化剤は市販品を購入して利用することもできる。好ましい市販品としては、例えば日清オイリオ株式会社製「ノムコートHK−G(ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル)」や「ノムコートHK−P(ベヘン酸エイコサン二酸ポリグリセリル)」及び「ノムコートSG(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸グリセリル)」などが挙げられる。
【0054】
これらのオリゴエステル系ゲル化剤は、単独もしくは2つ以上を組み合わせて使用することができ、また他のゲル化剤、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸や脂肪酸デキストリン、脂肪酸イヌリン、金属石鹸、無水ケイ酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−α,γ−ジブチルアミド、ステアロン等や各種ワックス、例えばカルナウバワックス、キャンデリラワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸ワックス、脂肪酸アミドワックス等と組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本発明に係るオリゴエステル系ゲル化剤のインク中への添加量は、本発明の目的効果に合わせて適宜調整されるが、インク全質量に対して3〜30質量%であることが好ましい。本発明のインクにおいて、インク全質量に対して、オリゴエステル系ゲル化剤の添加量が3質量%以上であれば、記録媒体に着弾した際の所望の増粘やゲル化を得ることができ、記録媒体上での印字品質を高くすることが出来る。また、インク全質量に対し、オリゴエステル系ゲル化剤の添加量が30質量%以下であれば、出射安定性に優れ、また色材に顔料を使用した場合に、顔料の分散安定性を確保することができる。インク全質量に対するオリゴエステル系ゲル化剤の添加量は、3〜30質量%であれば所望の効果が得られるが、より好ましくは4〜20質量%であり、さらに好ましくは5〜15質量%である。
【0056】
本発明に係るオリゴエステル系ゲル化剤を2種類以上用いる時には、その総量がインク全質量に対して30質量%未満であることが好ましい。
【0057】
〔活性光線硬化性組成物〕
本発明のインクにおいては、オリゴエステル系ゲル化剤、色材と共に、活性光線で硬化する活性光線硬化性組成物を含有することを特徴とする。
【0058】
本発明に用いられる活性光線硬化性組成物(以下、光重合性化合物ともいう)について説明する。
【0059】
本発明でいう活性光線とは、例えば、電子線、紫外線、α線、γ線、エックス線等が挙げられるが、人体への危険性や、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している紫外線または電子線が好ましい。
【0060】
前記活性光線硬化性組成物は、活性光線の照射により架橋または重合する光重合性化合物を含有する。該光重合性化合物としては、特に制限なく用いることができるが、中でも光カチオン重合性化合物または光ラジカル重合性化合物を用いることが好ましい。
【0061】
前記活性光線硬化性組成物は、活性光線として紫外線等を用いる場合には、少なくとも1種の光重合開始剤を含有することが好ましい。だたし、活性光線として電子線を用いる場合には、多くの場合、光重合開始剤を必要としない。
【0062】
前記光カチオン重合性化合物を用いる場合は、光重合開始剤としてカチオン重合開始剤を用いることができ、前記光ラジカル重合性化合物を用いる場合は、光重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0063】
本発明に係る活性光線硬化型インクにおいては、紫外線に対する感度を向上するために、カチオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤と併せて、300nmよりも長波長に紫外線スペクトル吸収を有する増感剤を使用することも出来る。
【0064】
光重合開始剤を使用する場合の配合量は、活性光線硬化性組成物の0.01〜10.00質量%の範囲が好ましい。
【0065】
本発明にかかる光重合開始剤群は公知の様々な化合物を使用することができるが、上記重合性化合物に溶解するものから選択する。
【0066】
(光カチオン重合性化合物)
光カチオン重合性化合物としては、各種公知のカチオン重合性化合物が使用できる。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0067】
本発明においては、インク硬化の際の記録媒体の収縮を抑える目的で、光重合性化合物として少なくとも1種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有することが好ましい。
【0068】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0069】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することにより得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0070】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0071】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0072】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0073】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0074】
本発明でいうオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物のことであり、特開2001−220526号、特開2001−310937号に記載されているような公知のあらゆるオキセタン化合物を使用できる。
【0075】
本発明で用いることのできるオキセタン化合物において、オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、インク組成物の粘度が高くなるため、取扱いが困難になること、またインク組成物のガラス転移温度が高くなるため、得られる硬化物の粘着性が十分でなくなることがある。本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0076】
本発明で好ましく用いることのできるオキセタン環を有する化合物としては、特開2005−255821号公報の段落番号0089に記載されている、一般式(1)で表される化合物、同じく同号公報の段落番号0092に記載されている、一般式(2)、段落番号0107の一般式(7)、段落番号0109の一般式(8)、段落番号0166の一般式(9)等で表される化合物を挙げることができる。
【0077】
具体的には、同号公報の段落番号0104〜0119に記載されている例示化合物1〜6及び段落番号0121に記載されている化合物を挙げることができる。
【0078】
(カチオン重合開始剤)
本発明に係る活性光線硬化型インクにおいて、光重合性化合物としてカチオン重合性化合物を使用する場合は、光重合開始剤としてカチオン重合開始剤を含有することが好ましい。
【0079】
カチオン重合開始剤としては、具体的には光酸発生剤を挙げることができ、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。
【0080】
第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなどの芳香族オニウム化合物のB(C、PF、AsF、SbF、CFSO塩を挙げることができる。
【0081】
本発明で用いることのできるオニウム化合物の具体的な例としては、特開2005−255821号公報の段落番号0134に記載されている化合物を挙げることができる。
【0082】
第2に挙げられる、スルホン酸を発生するスルホン化物の具体的な化合物としては、特開2005−255821号公報の段落番号0136に記載されている化合物を挙げることができる。
【0083】
第2に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができ、その具体的な化合物としては、特開2005−255821号公報の段落番号0138に記載されている化合物を挙げることができる。
【0084】
第3に、特開2005−255821号公報の段落番号0140に記載されている鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0085】
(光ラジカル重合性化合物)
本発明に適用可能な光ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であればどの様なものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態をもつものが含まれる。ラジカル重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。また、単官能化合物よりも官能基を2つ以上持つ多官能化合物の方がより好ましい。更に好ましくは多官能化合物を2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0086】
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩、エステル、ウレタン、アミドや無水物、アクリロニトリル、スチレン、さらに種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。具体的には、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリンエポキシアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体、その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体が挙げられ、さらに具体的には、山下晋三編,「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編,「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」,79頁,(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著,「ポリエステル樹脂ハンドブック」,(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。上記ラジカル重合性化合物の添加量は好ましくは1〜97質量%であり、より好ましくは30〜95質量%である。
【0087】
(ラジカル重合開始剤)
本発明に係る活性光線硬化型インクにおいて、光重合性化合物としてラジカル重合性化合物を使用する場合は、光重合開始剤としてラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
【0088】
ラジカル重合開始剤としては、特公昭59−1281号、特公昭61−9621号、及び特開昭60−60104号等の各公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号及び特開昭61−243807号等の各公報に記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号、特公昭44−6413号、特公昭44−6413号及び特公昭47−1604号等の各公報並びに米国特許第3,567,453号明細書に記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号、同第2,852,379号及び同2,940,853号各明細書に記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号、特公昭37−13109号、特公昭38−18015号、特公昭45−9610号等の各公報に記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号、特開昭59−14023号等の各公報及び「マクロモレキュルス(Macromolecules)、第10巻、第1307頁(1977年)に記載の各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報に記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109,851号、ヨーロッパ特許第126,712号等の各明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス」(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)に記載の金属アレン錯体、特許第2711491号及び特許第2803454号明細書に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号公報に記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)及び特開平2−182701号公報に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤はラジカル重合可能なエチレン不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.01から10質量部の範囲で含有されるのが好ましい。
【0089】
(増感剤)
増感剤としては、例えば、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体、チオキサントン誘導体等を挙げることができる。
【0090】
本発明で用いることのできる多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、特に炭素数7〜8のベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が好ましい。
【0091】
本発明に用いることのできるこれらの増感剤を例示すると、カルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−ビニルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、1−ステアリルオキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−ドデシルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール、グリシジル−1−ナフチルエーテル、2−(2−ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,1′−チオビス(2−ナフトール)、1,1′−ビ−2−ナフトール、1,5−ナフチルジグリシジルエーテル、2,7−ジ(2−ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4−メトキシ−1−ナフトール、ESN−175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体、1,4−ジメトキシクリセン、1,4−ジエトキシクリセン、1,4−ジプロポキシクリセン、1,4−ジベンジルオキシクリセン、1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン誘導体、9−ヒドロキシフェナントレン、9,10−ジメトキシフェナントレン、9,10−ジエトキシフェナントレン等のフェナントレン誘導体等を挙げることができる。これら誘導体の中でも、特に、炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していてもよい9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0092】
また、チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン2−クロロチオキサントン等を挙げることができる。
【0093】
次いで、本発明のインクについて、上記項目を除いた構成要素について説明する。
【0094】
(色材)
本発明のインクにおいては、インクを構成する色材としては、染料あるいは顔料を制限なく用いることができるが、インク成分に対し良好な分散安定性を有し、かつ耐候性に優れた顔料を用いることが好ましい。顔料としては、特に限定されるわけではないが、本発明には、例えば、カラーインデックスに記載される下記の番号の有機又は無機顔料が使用できる。
【0095】
赤或いはマゼンタ顔料としては、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36、
青又はシアン顔料としては、pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17−1、22、27、28、29、36、60、
緑顔料としては、Pigment Green 7、26、36、50、
黄顔料としては、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193、
黒顔料としては、Pigment Black 7、28、26などが目的に応じて使用できる。
【0096】
具体的に商品名を示すと、例えば、クロモファインイエロー2080、5900、5930、AF−1300、2700L、クロモファインオレンジ3700L、6730、クロモファインスカーレット6750、クロモファインマゼンタ6880、6886、6891N、6790、6887、クロモファインバイオレット RE、クロモファインレッド6820、6830、クロモファインブルーHS−3、5187、5108、5197、5085N、SR−5020、5026、5050、4920、4927、4937、4824、4933GN−EP、4940、4973、5205、5208、5214、5221、5000P、クロモファイングリーン2GN、2GO、2G−550D、5310、5370、6830、クロモファインブラックA−1103、セイカファストエロー10GH、A−3、2035、2054、2200、2270、2300、2400(B)、2500、2600、ZAY−260、2700(B)、2770、セイカファストレッド8040、C405(F)、CA120、LR−116、1531B、8060R、1547、ZAW−262、1537B、GY、4R−4016、3820、3891、ZA−215、セイカファストカーミン6B1476T−7、1483LT、3840、3870、セイカファストボルドー10B−430、セイカライトローズR40、セイカライトバイオレットB800、7805、セイカファストマルーン460N、セイカファストオレンジ900、2900、セイカライトブルーC718、A612、シアニンブルー4933M、4933GN−EP、4940、4973(大日精化工業製)、KET Yellow 401、402、403、404、405、406、416、424、KET Orange 501、KET Red 301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、336、337、338、346、KET Blue 101、102、103、104、105、106、111、118、124、KET Green 201(大日本インキ化学製)、Colortex Yellow 301、314、315、316、P−624、314、U10GN、U3GN、UNN、UA−414、U263、Finecol Yellow T−13、T−05、Pigment Yellow1705、Colortex Orange 202、Colortex Red101、103、115、116、D3B、P−625、102、H−1024、105C、UFN、UCN、UBN、U3BN、URN、UGN、UG276、U456、U457、105C、USN、Colortex Maroon601、Colortex BrownB610N、Colortex Violet600、Pigment Red 122、Colortex Blue516、517、518、519、A818、P−908、510、Colortex Green402、403、Colortex Black 702、U905(山陽色素製)、Lionol Yellow1405G、Lionol Blue FG7330、FG7350、FG7400G、FG7405G、ES、ESP−S(東洋インキ製)、Toner Magenta E02、Permanent RubinF6B、Toner Yellow HG、Permanent Yellow GG−02、Hostapeam BlueB2G(ヘキストインダストリ製)、Novoperm P−HG、Hostaperm Pink E、Hostaperm Blue B2G(クラリアント製)、カーボンブラック#2600、#2400、#2350、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#850、MCF88、#750、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA77、#52、#50、#47、#45、#45L、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、#44、CF9(三菱化学製)などが挙げられる。
【0097】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。
【0098】
また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としては、例えば、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズが挙げられる。更には、下記のものが挙げられる。
【0099】
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
【0100】
具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0101】
又、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」;共栄化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」;楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」等が挙げられる。
【0102】
更には、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」;ゼネカ社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000」;日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」等が挙げられる。
【0103】
これらの顔料分散剤は、インク中に0.1〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明のインクでは、印字後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0104】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0105】
また、本発明のインクにおいては、従来公知の染料、好ましくは油溶性染料を必要に応じて用いることができる。本発明で用いることのできる油溶性染料として、以下にその具体例を挙げるが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。
【0106】
〈マゼンタ染料〉
MS Magenta VP、MS Magenta HM−1450、MS Magenta HSo−147(以上、三井東圧社製)、AIZENSOT Red−1、AIZEN SOT Red−2、AIZEN SOTRed−3、AIZEN SOT Pink−1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学社製)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬社製)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成社製)、HSR−31、DIARESIN Red K(以上、三菱化成社製)、Oil Red(BASFジャパン社製)。
【0107】
〈シアン染料〉
MS Cyan HM−1238、MS Cyan HSo−16、Cyan HSo−144、MS Cyan VPG(以上、三井東圧社製)、AIZEN SOT Blue−4(保土谷化学社製)、RESOLIN BR.Blue BGLN 200%、MACROLEX Blue RR、CERES Blue GN、SIRIUS SUPRATURQ.Blue Z−BGL、SIRIUS SUPRA TURQ.Blue FB−LL 330%(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Blue FR、KAYASET Blue N、KAYASET Blue 814、Turq.Blue GL−5 200、Light Blue BGL−5 200(以上、日本化薬社製)、DAIWA Blue 7000、Oleosol Fast Blue GL(以上、ダイワ化成社製)、DIARESIN Blue P(三菱化成社製)、SUDAN Blue 670、NEOPEN Blue 808、ZAPON Blue 806(以上、BASFジャパン社製)。
【0108】
〈イエロー染料〉
MS Yellow HSm−41、Yellow KX−7、Yellow EX−27(三井東圧)、AIZEN SOT Yellow−1、AIZEN SOT YelloW−3、AIZEN SOT Yellow−6(以上、保土谷化学社製)、MACROLEX Yellow 6G、MACROLEX FLUOR.Yellow 10GN(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Yellow SF−G、KAYASET Yellow2G、KAYASET Yellow A−G、KAYASET Yellow E−G(以上、日本化薬社製)、DAIWA Yellow 330HB(ダイワ化成社製)、HSY−68(三菱化成社製)、SUDAN Yellow 146、NEOPEN Yellow 075(以上、BASFジャパン社製)。
【0109】
〈ブラック染料〉
MS Black VPC(三井東圧社製)、AIZEN SOT Black−1、AIZEN SOT Black−5(以上、保土谷化学社製)、RESORIN Black GSN 200%、RESOLIN BlackBS(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Black A−N(日本化薬社製)、DAIWA Black MSC(ダイワ化成社製)、HSB−202(三菱化成社製)、NEPTUNE Black X60、NEOPEN Black X58(以上、BASFジャパン社製)等である。
【0110】
顔料あるいは油溶性染料の添加量は0.1〜20質量%が好ましく、更に好ましくは0.4〜10質量%である。0.1質量%以上であれば、良好な画像品質を得ることができ、20質量%以下であれば、インク出射における適正なインク粘度を得ることができる。又、色の調整等で2種類以上の着色剤を適時混合して使用できる。
【0111】
(その他の添加剤)
本発明のインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、退色防止剤、防バイ剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
【0112】
〔記録媒体〕
本発明のインクによる画像形成に用いることのできる記録媒体としては、特に制限はなく、コピー等で使用されている普通紙、アート紙等の紙製の基材、通常の非コート紙、基紙の両面を樹脂等で被覆したコート紙、合成紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONYフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。また、金属類やガラス類にも適用可能である。
【0113】
〔インクジェット記録方法〕
次いで、本発明のインクジェット記録方法について説明する。
【0114】
本発明のインクジェット記録方法は、活性光線硬化型インクジェット用インクを、インクジェット記録ヘッド内で該活性光線硬化型インクジェット用インクのゲル転移温度より10〜40℃高い温度範囲で加熱しながら、該インクジェット記録ヘッドより該活性光線硬化型インクジェット用インクを記録媒体上に吐出して、画像記録することが好ましい。
【0115】
本発明に係るインクを用いて、記録ヘッド内でのインク温度と記録媒体の温度に差を付けて画像形成を行うことで、記録媒体上に着弾した本発明のインクを温度低下により増粘あるいはゲル化により固定化し、次いで記録面に紫外線、あるいは電子線等の活性光線を照射してインクを硬化する方式である。
【0116】
上記の増粘またはゲル化による固定化手段としては、例えば、インクジェット記録に用いるインクジェット記録装置を、室温等の比較的低温度環境下において、記録ヘッドを所定の温度に加熱した後、記録媒体上に着弾させて、環境温度により自然冷却して固定化させる方法や、記録媒体を予め冷却したり、あるいは冷風を強制的に着弾部に吹き付けて固定化したりする方法等を適宜選択して用いることができるが、本発明のインクジェット記録方法においては、記録ヘッド内のインクを室内温度よりも高い所定の温度範囲内に加熱することが好ましい。記録ヘッド内のインクを加熱する方法としては、記録ヘッドの内部または外部にヒーターを付けて直接または間接的にインクを加熱する方法、記録ヘッド駆動時に発生する発熱を利用する方法などを挙げることが出来る。
【0117】
また、本発明のインクジェット記録方法の特徴である記録ヘッド内のインクを所定の温度に加熱する方法に加えて、インクジェット記録ヘッドと記録媒体の間にローラー等の中間転写媒体を設ける方式も、本発明の好ましい形態の一つである。この方式では、本発明のインクを記録ヘッドよりも低い温度に設定された中間転写媒体上に吐出し、該中間転写媒体上でインクを増粘またはゲル化により固定化し、次いで固定化したインクを記録媒体に転写する。そのため印字環境の温度変化に伴う画質の変動を比較的小さくすることが可能となる。
【0118】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明では、記録媒体上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜25μmであることが好ましい。尚、ここで「総インク膜厚」とは記録媒体に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0119】
(インクの吐出条件)
インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを本発明に係るインクのゲル転移温度より10〜40℃高い温度で加熱し、吐出することが吐出安定性および画質向上の点で好ましい。インクの吐出温度をゲル転移温度よりも10℃以上高くすることで、温度変動による記録ヘッド内におけるインクのゲル化を防ぐことができ、吐出不良を抑えることが可能となる。また40℃以下とすることで、記録媒体に着弾後にインクがゲル転移温度に達するまでの時間を短くでき、ゲル化速度を高めることが可能となるため、結果として高い画像品質が得られる。
【0120】
前記インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴出射速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、前記インクジェット記録方法はインク温度をインクのゲル転移温度+10℃以上、+40℃以下の温度範囲に保ち、その状態で出射することを特徴とする。この温度の管理範囲としては、好ましくは設定温度±5℃、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。ここでいう設定温度とは、インクを出射する際のインクの温度として設定された基準の温度をいう。
【0121】
また本発明では、記録ヘッドの各ノズルより吐出する液滴量を記録画像に合わせて適宜変化させることが可能であるが、高精細画像を形成する場合は1pl〜15plの範囲であることが好ましい。
【0122】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後10秒以内に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜5秒であり、更に好ましくは0.001秒〜2秒である。
【0123】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が、特開昭60−132767号に開示されており、具体的には、記録ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式で記録ヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源を記録ヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0124】
また、活性光線の照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性光線を照射し、かつ、全印字終了後、更に活性光線を照射する方法も好ましい態様の1つである。活性光線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録媒体の収縮を抑えることが可能となる。
【0125】
(電子線照射)
活性光線として電子線を用いる場合の照射方法としては、例えば、スキャニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などがあるが、処理能力の観点からカーテンビーム方式が好ましい。
【0126】
電子線照射の加速電圧は、30〜250kVの範囲に設定することにより硬化皮膜の形成が可能であるが、より低い被照射線量で同等な硬化性が得られる30〜100kVに設定するのが好ましい。加速電圧が30〜100kVの電子線を照射することにより、硬化阻害を生じやすい記録媒体表面に電子線が集中し、硬化性を向上させることができる。よって、高酸素濃度下での高硬化性を得るためには、30〜100kVの加速電圧の電子線を照射することが好ましい。
【0127】
また、電子線照射の加速電圧を30〜100kVの範囲に設定した場合には、電子線の被照射線量を通常より低い値とし、高エネルギー効率による省エネルギー化と、印字速度の高速化による生産効率向と上を図ることも可能である。加速電圧が100〜250kVの通常の電子線照射では、電子線照射量としては30〜100kGyであることが好ましく、より好ましくは30〜60kGyである。なお、電子線照射量の測定は、例えば、厚さ44.5μmの線量測定フィルム(FARWEST社製RADIACHROMIC FILM FWT−60−00)にCo60のγ線を標準線源として照射し、フィルム着色による吸光度と線量との関係を求めた検量線を作製し、この検量線と吸光度により電子線照射線量を求めることができる。
【0128】
本発明で用いることのできる電子線照射手段としては、例えば、日新ハイボルテージ(株)製の「キュアトロンEBC−200−20−30」、AIT(株)製の「Min−EB」等を挙げることができる。
【0129】
本発明のインクジェット記録方法においては、1000ppm以下の酸素濃度雰囲気下で電子線を照射することが好ましく、より好ましくは500ppm以下である。本発明における1000ppm以下の酸素濃度とは、窒素やアルゴン等の不活性ガスによるイナーティングを行うことにより達成された濃度範囲を含んでいる。
【0130】
(紫外線照射)
活性光線として紫外線を用いる場合、その紫外線照射光源としては、例えば、数100Paから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が用いられるが、光源の波長分布という観点で高圧水銀灯、メタルハライドランプが好ましく、メタルハライドランプがより好ましい。また、300nm以下の波長光をカットするフィルターをもうけることが好ましい。ランプの出力としては400W〜30kW、照度としては10mW/cm〜10kW/cm、照射エネルギーとしては0.1〜500mJ/cmが好ましく、1〜100mJ/cmがより好ましい。
【0131】
光源波長に300nm以下の紫外線が含まれる場合や、照射エネルギーとして500mJ/cmを超える場合は、活性光線架橋性樹脂の母核、または共存させる各種添加剤を紫外線により分解してしまい、本発明の効果を得られないだけでなく、分解物に由来する臭気などの問題を起こす可能性があるので好ましくない。照射エネルギーが0.1mJ/cmに満たない場合は架橋効率が不足し、本発明の効果が十分にえられない。
【0132】
紫外線照射の際の照度は0.1mW/cm〜1W/cm好ましい。照度が1W/cmを超える場合、塗膜の表面硬化性は向上するが、深部硬化性が低下し表面のみ硬い膜が得られる。その場合は、膜の深度方向の硬さのバランスが崩れ、カールなどが起こり、好ましくない。
【0133】
照度が0.1mW/cmより低い場合は、膜中の散乱等により架橋が十分進まず、本発明の効果が得られないため好ましくない。
【0134】
同一積算光量(mJ/cm)を与える場合、照度に好ましい範囲があることは、その光の透過率が変化することに起因する。紫外線の透過性により、発生した架橋反応種の濃度分布が異なり、紫外線照度が高い場合、塗膜表層に高濃度の架橋反応種が発生し、塗膜表層のみに堅い緻密な膜が形成されてしまう。
【0135】
(インクジェット記録装置)
次いで、本発明のインクジェット記録方法で用いることのできるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について、紫外線照射方式の装置を一例として説明する。
【0136】
以下、本発明で用いることのできる記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明で好ましく用いることのできる記録装置の一態様であり、本発明はこの図面に限定されない。
【0137】
図1は、本発明で用いることのできるインクジェット記録装置の要部の構成を示す正面図である。インクジェット記録装置1は、記録ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、紫外線を照射する手段としての照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録媒体Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録媒体Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0138】
記録媒体Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。記録ヘッド走査手段(図示せず)は、記録ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、記録ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0139】
記録ヘッドキャリッジ2は記録媒体Pの上側に設置され、記録媒体P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口(ノズル)を下側に配置して収納する。記録ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、記録ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0140】
尚、図1では記録ヘッドキャリッジ2が、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)用の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際には記録ヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の数やそれに収容されるインクの色は適宜決められるものである。
【0141】
本発明のインクジェット記録方法においては、各記録ヘッド3は、充填する各インクのゲル転移温度+10℃以上、+40℃以下の温度範囲で加熱、保温される。
【0142】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された本発明のインクを、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録媒体Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるインクは、本発明に係るオリゴエステル系ゲル化剤の他に、色材、重合性モノマー、光重合開始剤等を含んで構成されており、記録媒体P上に着弾した後、冷却されてゲル化し、次いでこの例では照射手段として紫外線の照射を受けることで光重合開始剤が触媒として作用することに伴うモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0143】
記録ヘッド3は記録媒体Pの幅方向の一端から記録ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録媒体Pの他端まで移動するという走査の間に、記録媒体Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対して本発明のインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0144】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けて本発明のインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録媒体Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再び記録ヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対して本発明のインクの吐出を行なう。
【0145】
上述の操作を繰り返し、記録ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3から本発明のインクを吐出することにより、記録媒体P上に本発明のインクの集合体からなる画像が形成される。
【0146】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管及び殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行なうことができ好ましい。ブラックライトを照射手段4の活性光源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0147】
照射手段4は、記録ヘッド3が記録ヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0148】
照射手段4は記録ヘッドキャリッジ2の両脇に、記録媒体Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0149】
インク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録媒体Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録媒体Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4とを離間したり、両者間の距離を大きくしたりすることが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0150】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0151】
図2は、本発明で用いることのできるラインヘッドタイプのインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す上面図である。図1に示したものと同様の機能を有するものについては、図1と同様の符号を用いて説明する。
【0152】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、記録ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、それぞれ記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0153】
一方、記録ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面の幅方向全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0154】
この図2に示したラインヘッド方式では、記録ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録媒体Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0155】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0156】
実施例1
《顔料分散液の調製》
〔顔料分散液1の調製〕
顔料:ブラック顔料 Pigment Black 7(三菱化学社製#52)
20部
顔料分散剤:PB822(味の素ファインテクノ社製) 8部
重合性化合物:オキセタン221(OXT221 東亞合成社製) 72部。
【0157】
上記各添加剤を60℃で混合して加熱溶解した後、ビーズミルを用いて練肉して、顔料分散液1を調製した。このブラック顔料を含む顔料分散液1の顔料粒子の体積平均粒子径を、ゼータサイザー1000(マルバーン社製)を用いて測定した結果、80nmであった。
【0158】
《インクの調製:カチオン重合型インクジェットインク》
〔インク1の調製〕
下記の各添加剤を順次混合し、80℃に加熱して攪拌した後、得られた液体を加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過し、冷却して、カチオン重合型のブラックインクであるインク1を調製した。
【0159】
重合性化合物:オキセタン221(OXT221 東亞合成社製) 57.0部
重合性化合物:オキセタン212(OXT212 東亞合成社製) 10.0部
重合性化合物:脂環式エポキシ化合物1(EPR) 15.0部
光重合開始剤:CPI100P(サンアプロ社製) 2.5部
界面活性剤:X22−4272(信越化学工業社製) 0.05部
増感剤:ジエトキシアントラセン(DEA) 0.5部
顔料分散液1 15.0部
なお、上記化合物の内容を下記に示す。
【0160】
(重合性化合物)
OXT221:オキセタン化合物(ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル、東亞合成社製)
OXT212:オキセタン化合物(3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、東亞合成社製)
EPR:脂環式エポキシ化合物1。
【0161】
【化1】

【0162】
(光重合開始剤)
CPI100P:光重合開始剤(トリアリルスルホニウム塩のプロピレンカーボネート50%溶液、サンアプロ社製)。
【0163】
(界面活性剤)
X22−4272:界面活性剤(両末端ポリエーテル変性シリコン、信越化学工業社製)。
【0164】
(増感剤)
DEA:ジエトキシアントラセン。
【0165】
〔インク2の調製〕
上記インク1の調製において、添加剤として12−ヒドロキシステアリン酸(表1には12HSAと略記)を30.0部添加し、OXT221の添加量を27.0部に変更し、インク調製時の加熱温度を90℃に変更した以外は同様にして、インク2を調製した。
【0166】
〔インク3の調製〕
上記インク1の調製において、添加剤としてN−ラウロイル−L−グルタミン酸−α,γ−ジブチルアミド(表1には、LGBAと略記)を5.0部添加し、OXT221の添加量を52.0部に変更し、インク調製時の加熱温度を130℃に変更した以外は同様にして、インク3を調製した。
【0167】
〔インク番号4〜16の調製〕
上記インク1の調製において、OXT221の添加量、各添加剤の種類および添加量を表1に記載のように変更し、インク調製時の加熱温度を120℃に変更した以外は同様にして、インク4〜16を調製した。
【0168】
なお、表1に略称で記載した添加剤の詳細は、以下の通りであり、ゲル化剤1〜3はインク6〜16で、全て下記の測定により求めたインクのゲル転移温度より30℃高い温度において、活性光線硬化性組成物に溶解可能であった。
【0169】
(添加剤)
12−HSA:12−ヒドロキシステアリン酸
LGBA:N−ラウロイル−L−グルタミン酸−α,γ−ジブチルアミド
STR:ステアロン
ゲル化剤1:ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル(ノムコートHK−G、日清オイリオ社製)
ゲル化剤2:ベヘン酸/エイコサン二酸ポリグリセリル(ノムコートHK−P、日清オイリオ社製)
ゲル化剤3:ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸グリセリル(ノムコートSG、日清オイリオ社製)。
【0170】
《インクのゲル転移温度の測定》
以上により調製したインク2〜16について、以下の方法によりゲル転移温度の測定を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0171】
〔ゲル転移温度の測定〕
示差走査熱量計(セイコー電子製 SSC5200)に各試料20mgをセットし、熱量変化を測定した。−15℃〜180℃まで走査速度10℃/minで昇温した後、180℃〜−15℃まで20℃/minで冷却し、観測された発熱ピークの中心温度を各試料のゲル転移温度とし、表1に示した。
【0172】
【表1】

【0173】
《インクジェット画像の形成》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えたラインヘッド方式のインクジェット記録装置に、上記に記載のインク1〜16を装填し、PPC用紙(J PAPER コニカミノルタビジネスソリューションズ社製)、印刷用アート紙(SA金藤 王子製紙社製)、印刷用キャストコート紙(ミラーコート・ゴールド 王子製紙社製)、印刷用コート紙(OKマットコートグリーン100 王子製紙社製)、及びポリエチレンテレフタレート製フィルム(白ペット マルウ接着社製)に、抜き文字、ベタ画像、及びドット径測定用チャートを印字して、それぞれ画像1〜16を得た。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、記録ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクから記録ヘッド部分まで断熱して、上記で求めたインクのゲル転移温度+30℃に加温した。また、ピエゾヘッドもヒーターを内蔵させ、記録ヘッド内のインク温度をゲル転移温度+30℃に加温した。また、ゲル化を生じないインクについては、一律70℃にインクを加熱した。ピエゾヘッドはノズル径20μm、ノズル数512ノズル(256ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ360dpi)で、各々1滴の液滴量が2.5plとなる条件で、液滴速度約6m/secで出射させて、1440dpi×1440dpiの記録解像度で印字した。各記録媒体は室温(23℃)とした。各インクが着弾した後、キャリッジ上部に配置した高圧水銀ランプにより、インクが着弾した0.5秒後に照度60mJ/cmで紫外線を照射してインクを硬化した。なお、照射光源の照度は、岩崎電機社製のUV PF−A1を用いて、254nmの積算照度を測定して表示した。また、上記の画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0174】
《形成画像の評価》
上記作成した画像番号1〜16について、以下の方法に従って、普通紙文字品質、濃度ムラ、記録媒体種対応性、光沢性、密着性および出射安定性の評価を行った。
【0175】
〔普通紙文字品質の評価〕
上記方法により、PPC用紙(J PAPER コニカミノルタビジネスソリューションズ社製)に対して解像度1400dpi×1440dpiで、3ポイント、4ポイントおよび5ポイントのMS明朝体で、漢字「口、四、日、回、因、困、固、国、目、図、國」の抜き文字を印字し、印字した文字画像を目視観察し、下記の評価基準に従って文字品質の評価を行った。
【0176】
◎:3ポイントの抜き文字全てが、細部にまで明瞭に記録されている
○:3ポイントの抜き文字は一部しか判読できないが、4ポイントの抜き文字全てが判読可能である
△:4ポイントの抜き文字は一部しか判読できないが、5ポイントの抜き文字全てが判読可能である
×:5ポイントの抜き文字の中にも判読できないものがある。
【0177】
〔濃度ムラの評価〕
上記方法により、印刷用アート紙(SA金藤 王子製紙社製)、印刷用キャストコート紙(ミラーコート・ゴールド 王子製紙社製)、印刷用コート紙(OKマットコートグリーン100 王子製紙社製)、およびポリエチレンテレフタレート製フィルム(白ペット マルウ接着社製)に印字した2cm×2cmのベタ画像を目視評価し、下記の評価基準に従って濃度ムラの評価を行った。
【0178】
◎:15cm離れた位置から観測して、全ての記録媒体において濃度ムラが認められない
○:15cm離れた位置から観測すると、一部の記録媒体で濃度ムラが認められるが、30cm離した位置からは、全ての記録媒体において濃度ムラが認められない
△:30cm離した位置から観測して、一部の記録媒体で濃度ムラが認められる
×:30cm離した位置から観測して、全ての記録媒体で濃度ムラが認められる。
【0179】
〔記録媒体種対応性の評価〕
上記方法により、印刷用アート紙(SA金藤 王子製紙社製)、印刷用キャストコート紙(ミラーコート・ゴールド 王子製紙社製)、印刷用コート紙(OKマットコートグリーン100 王子製紙社製)及びポリエチレンテレフタレート製フィルム(白ペット マルウ接着社製)に、画素を360dpi間隔で配置したドット径測定用画像を印字して、光学顕微鏡(KEYENCE社製 VHX−500)を用いて各種用紙のドット径を20点ずつ測定し、平均ドット径を求めた。次いで下記により計算されるドット径ばらつき指標を用いて、記録媒体種対応性を評価した。
【0180】
ドット径ばらつき指標=(最も平均ドット径の大きい記録媒体の平均ドット径)/(最も平均ドット径の小さい記録媒体の平均ドット径)
上記ドット径ばらつき指標が小さいほど、記録媒体の種類によらず同じ画像を印画できるため、記録媒体種対応性に優れているといえる。
【0181】
◎:ドット径ばらつき指標が1.00以上、1.15未満である
○:ドット径ばらつき指標が1.15以上、1.30未満である
△:ドット径ばらつき指標が1.30以上、1.50未満である
×:ドット径ばらつき指標が1.50以上である。
【0182】
〔光沢性の評価〕
上記方法により、印刷用アート紙(SA金藤 王子製紙社製)に2cm×2cmのベタ画像を印字して、光沢度計(日本電色工業社製 PG−1M)を用いてベタ画像の60度光沢を測定し、下記の評価基準に従って光沢性の評価を行った。
【0183】
○:ベタ部の60度光沢が40以上である
△:ベタ部の60度光沢が20以上、40未満である
×:ベタ部の60度光沢が20未満である。
〔密着性の評価〕
上記ポリエチレンテレフタレート製フィルム(白ペット マルウ接着社製)に形成したベタ画像上に、セロテープ(登録商標)を貼り付けた後、垂直方法に剥離した時の画像状態を目視観察し、下記のように判定した。
【0184】
◎:画像の剥離は認められないし、画像の表面性にも変化がない
○:画像の剥離は認められないが、画像の少なくとも一部に曇りが見られる
△:画像の端などに僅かに剥離が認められた
×:明らかに画像の剥離が認められた。
【0185】
〔出射安定性の評価〕
上記調製した各インクを搭載したインクジェット記録装置で出射を行い、ノズル欠および出射曲がりの有無について目視観察を行い、下記の基準に則り、出射安定性の評価を行った。
【0186】
◎:ノズル欠の発生が全く認められなかった
○:全ノズル512中、1〜5個のノズルで出射方向の曲がりが認められた
△:全ノズル512中、1〜5個のノズルで出射不良が認められた
×:全ノズル512中、6個以上のノズルで出射不良が認められた。
【0187】
上記評価結果を表2に示した。
【0188】
【表2】

【0189】
表1、表2より、光カチオン重合性化合物を用いた本発明のインクは普通紙の文字品質に優れ、濃度ムラが小さく、様々な記録媒体に印字したときに記録媒体種の違いによるドットサイズの違いが小さく、画像の光沢が高く、密着性に優れていることが分かる。
【0190】
実施例2
《顔料分散液の調製》
〔顔料分散液2の調製〕
下記の各添加剤を混合した後、ビーズミルを用いて練肉して、顔料分散液2を調製した。
【0191】
顔料:ブラック顔料Pigment Black 7(三菱化学社製#52)20部
顔料分散剤:PB822(味の素ファインテクノ社製) 8部
重合性化合物:テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA) 72部。
【0192】
《インクの調製:ラジカル重合型インクジェットインク》
〔インク17の調製〕
下記の各添加剤を順次混合し、80℃に加熱して攪拌した後、得られた液体を加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過、冷却して、ラジカル重合型のブラックインクであるインク17を調製した。
【0193】
重合性化合物:テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA) 30部
重合性化合物:ラウリルアクリレート(RA) 25部
重合性化合物:NKエステル(A−400 新中村化学工業社製) 25部
光重合開始剤:IRGACURE907(I−907 チバジャパン社製) 5部
顔料分散液2 15部。
【0194】
〔インク18の調製〕
上記インク17の調製において、添加剤として12−ヒドロキシステアリン酸(表3には12HSAと略記)を30.0部添加し、テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)の添加量を20.0部に変更し、ラウリルアクリレート(RA)の添加量を15.0部に変更し、NKエステル(A−400)の添加量を15.0部に変更し、インク調製時の加熱温度を90℃に変更した以外は同様にして、インク18を調製した。
【0195】
〔インク19〜23の調製〕
上記インク17の調製において、重合性化合物の添加量、各添加剤の種類および添加量を表3に記載のように変更し、インク調製時の加熱温度を120℃に変更した以外は同様にして、インク19〜23を調製した。
【0196】
なお、表3に略称で記載した各添加剤の詳細は、以下の通りであり、ゲル化剤1〜3はインク19〜23で、全て下記の測定により求めたインクのゲル転移温度より30℃高い温度において、活性光線硬化性組成物に溶解可能であった。
【0197】
(重合性化合物)
RA:ラウリルアクリレート
TEGDA:テトラエチレングリコールジアクリレート
A−400:NKエステル(新中村化学工業社製)
I−907:IRGACURE907(チバジャパン社製)。
【0198】
(添加剤)
12−HSA:12−ヒドロキシステアリン酸
ゲル化剤1:ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル(ノムコートHK−G、日清オイリオ社製)
ゲル化剤2:ベヘン酸/エイコサン二酸ポリグリセリル(ノムコートHK−P、日清オイリオ社製)
ゲル化剤3:ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸グリセリル(ノムコートSG、日清オイリオ社製)。
【0199】
《インクのゲル転移温度の測定》
上記調製した各インクについて、実施例1に記載の方法と同様にして、ゲル転移温度の測定を行い、得られた結果を表3に示す。
【0200】
【表3】

【0201】
インク17〜23を用い、実施例1と同様に、インクジェット画像の形成と画像の評価を行い、得られた結果を表4に示す。
【0202】
【表4】

【0203】
表3、表4の結果より明らかなように、光ラジカル重合性化合物を用いた場合でも、本発明の活性光線硬化型インクジェット用インクは、比較例に対し、形成した画像の普通紙文字品質に優れ、コート紙やフィルム等の様々な記録媒体に高品質で印字が可能で、形成した画像の光沢性に優れており、加えて出射安定性が高いことが分かる。また、作成したJIS/SCID N5「自転車」画像を目視観察した結果、液滴同士の合一による画像劣化がなく、光沢性に優れ、また高い光学濃度が得られることを確認することができた。
【0204】
実施例3
《顔料分散液の調製》
〔イエロー顔料分散液1の調製〕
顔料:イエロー顔料(Pigment Yellow 180) 20部
顔料分散剤:PB822(味の素ファインテクノ社製) 8部
オキセタン化合物(OXT221 東亞合成社製) 72部
上記各添加剤を加熱混合した後、ビーズミルを用いて練肉して、イエロー顔料分散液1を調製した。
【0205】
〔マゼンタ顔料分散液1の調製〕
顔料:マゼンタ顔料(Pigment Red 122) 20部
顔料分散剤:PB822(味の素ファインテクノ社製) 8部
オキセタン化合物(OXT221 東亞合成社製) 72部
上記各添加剤を加熱混合した後、ビーズミルを用いて練肉して、マゼンタ顔料分散液1を調製した。
【0206】
〔シアン顔料分散液1の調製〕
顔料:シアン顔料(Pigment Blue 15:4) 20部
顔料分散剤:PB822(味の素ファインテクノ社製) 8部
オキセタン化合物(OXT221 東亞合成社製) 72部
上記各添加剤を加熱混合した後、ビーズミルを用いて練肉して、シアン顔料分散液1を調製した。
【0207】
〔ブラック顔料分散液1〕
実施例1に記載のブラック顔料分散液1を用いた。
【0208】
《本発明のインクからなるインクセット1の調製》
下記の各色インクからなるインクセットを調製した。
【0209】
〔イエローインク1の調製〕
下記の各添加剤を順次混合し、130℃に加熱、攪拌した後、得られた液体を加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後冷却して、イエローインクを調製した。
【0210】
重合性化合物:オキセタン221(OXT221 東亞合成社製) 49.0部
重合性化合物:オキセタン212(OXT212 東亞合成社製) 10.0部
重合性化合物:脂環式エポキシ化合物1(前出) 15.0部
光重合開始剤:CPI100P(サンアプロ社製) 2.5部
界面活性剤:X22−4272(信越化学工業社製) 0.05部
増感剤:ジエトキシアントラセン(DEA) 0.5部
イエロー顔料分散液1 15.0部
ゲル化剤1:ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル(ノムコートHK−G、日清オイリオ社製) 8.0部。
【0211】
〔マゼンタインク1の調製〕
下記の各添加剤を順次混合し、130℃に加熱、攪拌した後、得られた液体を加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後冷却して、マゼンタインクを調製した。
【0212】
重合性化合物:オキセタン221(OXT221 東亞合成社製) 49.0部
重合性化合物:オキセタン212(OXT212 東亞合成社製) 10.0部
重合性化合物:脂環式エポキシ化合物1(前出) 15.0部
光重合開始剤:CPI100P(サンアプロ社製) 2.5部
界面活性剤:X22−4272(信越化学工業社製) 0.05部
増感剤:ジエトキシアントラセン(DEA) 0.5部
マゼンタ顔料分散液1 15.0部
ゲル化剤1:ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル(ノムコートHK−G、日清オイリオ社製) 8.0部。
【0213】
〔シアンインク1の調製〕
下記の各添加剤を順次混合し、130℃に加熱、攪拌した後、得られた液体を加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後冷却して、シアンインクを調製した。
【0214】
重合性化合物:オキセタン221(OXT221 東亞合成社製) 49.0部
重合性化合物:オキセタン212(OXT212 東亞合成社製) 10.0部
重合性化合物:脂環式エポキシ化合物1(前出) 15.0部
光重合開始剤:CPI100P(サンアプロ社製) 2.5部
界面活性剤:X22−4272(信越化学工業社製) 0.05部
増感剤:ジエトキシアントラセン(DEA) 0.5部
シアン顔料分散液1 15.0部
ゲル化剤1:ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル(ノムコートHK−G、日清オイリオ社製) 8.0部。
【0215】
〔ブラックインク1の調製〕
下記の各添加剤を順次混合し、130℃に加熱、攪拌した後、得られた液体を加熱下、#3000の金属メッシュフィルターでろ過した後冷却して、ブラックインクを調製した。
【0216】
重合性化合物:オキセタン221(OXT221 東亞合成社製) 49.0部
重合性化合物:オキセタン212(OXT212 東亞合成社製) 10.0部
重合性化合物:脂環式エポキシ化合物1(前出) 15.0部
光重合開始剤:CPI100P(サンアプロ社製) 2.5部
界面活性剤:X22−4272(信越化学工業社製) 0.05部
増感剤:ジエトキシアントラセン(DEA) 0.5部
ブラック顔料分散液1 15.0部
ゲル化剤1:ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル(ノムコートHK−G、日清オイリオ社製) 8.0部。
【0217】
なお、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1及びブラックインク1において、ゲル化剤1は68℃(インクのゲル転移温度より30℃高い温度)で活性光線硬化性組成物に溶解可能であった。
【0218】
《比較例のインクからなるインクセット2の調製》
下記の各色インクからなるインクセットを調製した。
【0219】
〔イエローインク2の調製〕
イエローインク1の調製において、8.0部のゲル化剤1を30部の12−HSAに変更し、オキセタン221の添加量を27部に変更して、イエローインク2を調整した。
【0220】
〔マゼンタインク2の調製〕
マゼンタインク1の調製において、8.0部のゲル化剤1を30部の12−HSAに変更し、オキセタン221の添加量を27部に変更して、マゼンタインク2を調整した。
【0221】
〔シアンインク2の調製〕
シアンインク1の調製において、8.0部のゲル化剤1を30部の12−HSAに変更し、オキセタン221の添加量を27部に変更して、シアンインク2を調整した。
【0222】
〔ブラックインク2の調製〕
ブラックインク1の調製において、8.0部のゲル化剤1を30部の12−HSAに変更し、オキセタン221の添加量を27部に変更して、ブラックインク2を調整した。
【0223】
《インクの各特性値の測定》
以上により調製した各色インクについて、実施例1に記載の方法と同様にしてゲル転移温度の測定を行い、得られた結果を表5に示す。
【0224】
【表5】

【0225】
《インクジェット画像の形成及び評価》
実施例1のラインヘッド方式のインクジェットプリンターを用い、紙搬送方向に4列並べたラインヘッドプリンタに上記4色のインクを詰め、記録条件は実施例1と同様に、PPC用紙(J PAPER コニカミノルタビジネスソリューションズ社製)、印刷用アート紙(SA金藤 王子製紙社製)、印刷用キャストコート紙(ミラーコート・ゴールド 王子製紙社製)、印刷用コート紙(OKマットコートグリーン100 王子製紙社製)及びポリエチレンテレフタレート製フィルム(白ペット マルウ接着社製)に、抜き文字画像、ベタ画像、ドット径測定チャート及びJIS/SCID N5「自転車」画像をプリントし、実施例1に記載の方法と同様にして、普通紙文字品質の評価、濃度ムラの評価、記録媒体種対応性の評価、光沢性の評価、密着性の評価及び出射安定性の評価を行った。また、JIS/SCID N5「自転車」画像では、色滲みの評価も行った。
【0226】
その結果、インクセット1はインクセット2より、すべての評価項目において優れた効果を確認することができた。また、作成したJIS/SCID N5「自転車」画像を目視観察した結果、インクセット2は液敵同士の合一による色滲みが認められたのに対し、インクセット1は液滴同士の合一による画像劣化がなく、光沢性及び光学濃度においても、インクセット2に対して、インクセット1は優れた性能が得られることを確認することができた。
【符号の説明】
【0227】
1 インクジェット記録装置
2 記録ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤および活性光線硬化性組成物を含有する活性光線硬化型インクジェット用インクであって、該活性光線硬化型インクジェット用インクが温度により可逆的にゾルゲル相転移し、かつ該ゲル化剤が以下(A)、(B)及び(C)を含有する成分を縮合することによって合成されるオリゴエステル系ゲル化剤であり、該ゲル化剤が該活性光線硬化性組成物に吐出温度において溶解していることを特徴とする活性光線硬化型インクジェット用インク。
(A)グリセリン又はグリセリン縮合物
(B)炭素数16〜24の脂肪酸
(C)炭素数18〜22の二塩基酸。
【請求項2】
前記(B)が炭素数18〜22の脂肪酸であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【請求項3】
前記(B)がベヘン酸又はイソステアリン酸であり、前記(C)がエイコサン二酸であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【請求項4】
前記(B)がベヘン酸及びイソステアリン酸を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【請求項5】
前記オリゴエステル系ゲル化剤の含有量がインク全質量に対して3〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【請求項6】
前記活性光線硬化型インクジェット用インクのゲル転移温度が20〜60℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェット用インク。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェット用インクを、インクジェット記録ヘッド内で該活性光線硬化型インクジェット用インクのゲル転移温度より10〜40℃高い温度範囲で加熱しながら、該インクジェット記録ヘッドより該活性光線硬化型インクジェット用インクを記録媒体上に吐出して、画像記録することを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−116873(P2011−116873A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276193(P2009−276193)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】