説明

活性剤の中枢神経系への鼻内投与

ポリペプチドを、鼻内投与を介して哺乳動物の中枢神経系へ送達するための製薬学的組成物および方法が提供される。このポリペプチドは触媒的に活性なタンパク質または抗体、抗体のフラグメントまたは抗体のフラグメントの融合タンパク質であることができる。ポリペプチドは1もしくは複数の特別な作用物質で調合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2005年2月23日に出願された米国仮出願第60/655,809号および2006年1月1日に出願された米国実用出願第11/342,058号の利益を主張する。両出願は引用することによりそっくりそのまま、本明細書に編入される。
【0002】
技術分野
本明細書に記載する主題は、哺乳動物の中枢神経系への活性剤の鼻内投与のための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
薬物の中枢神経系(CNS)への送達は、薬物送達における最近の進歩および薬物の脳への送達メカニズムに関する知識にもかかわらず難題が残る。例えばCNSの標的は、大部分の、特に極性の薬物の循環血液から脳への拡散に対する効果的な遮断を提供する血液脳関門(BBB)のために、末梢の循環からはほとんど接近できない。薬物をCNSへ送達するために、BBBに付随する問題を回避する試みには:1)関門を容易に通過して拡散する600Da未満の分子量の脂溶性薬物のような脂肪親和性分子の設計;2)トランスフェリン、インスリン、IGF−1およびレプチンのような浸透可能な輸送系を介してBBBを渡る輸送分子への薬物の結合;および3)負に荷電した内皮表面に優先的に結合する正に荷電したタンパク質のような、ポリカチオン性分子への薬物の結合(例えば、非特許文献1およびそこに引用されている参考文献;非特許文献2「血液脳関門ドラッグターゲッティング:脳の薬物開発の将来;非特許文献3「トロイアの木馬の分子を用いた薬物および遺伝子の脳へのターゲッティング」を参照にされたい)がある。
【0004】
鼻内経路は、CNSへの薬物輸送にBBBを回避するための非侵襲的方法として探求されてきた。CNSへの鼻内送達は多数の低分子および数種のペプチドおよび低分子タンパク質について示されてきたが、恐らく各巨大分子または巨大分子種に独自な、より大きなサイズおよび変動する物理化学的特性(これが直接的な鼻から脳への送達を妨害し得る)により、鼻内経路を介するCNSへのタンパク質巨大分子の送達を示す証拠はほとんどない。
【0005】
鼻内送達に関する主要な物理的障壁は、鼻の気道上皮および嗅覚上皮である。体内の上皮接着結合部の浸透性は変動性であり、そして多くは3.6A未満の流体力学的半径を持つ分子に限られることが示され;浸透性は15Aより大きな半径を持つ球状分子については無視できると考えられる(非特許文献4)。したがって投与される分子のサイズは、中枢神経系へ巨大分子を鼻内輸送を行うための重要な因子と考えられる。20kDのデキストラン分子量を有する線状分子であるフルオレセイン標識化デキストランは、ラットの鼻腔から脳脊髄液へ送達することができるが、40kDaのデキストランはできない(非特許文献5)。ウイルスなどの感染性有機体は、鼻の嗅覚領域を通って脳へ入ることができると報告された(非特許文献6)。
【0006】
今日までに公開された送達研究では、CNSへの鼻内送達効率は大変低く、しかも抗体およびそれらのフラグメントのような大きな球状巨大分子の送達は示されていない。しかし抗体、抗体フラグメントおよび抗体融合分子は、CNSに標的を有する障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脳卒中、癲癇ならびに代謝および内分泌障害の処置に潜在的に有用な治療となるので、これらの大型の巨大分子をCNSへ非侵襲的に送達する方法を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Illum,Eur.J.Pharm.Sci.11:1−18(2000)
【非特許文献2】W.M.Partridge,Mol Interv.3(2):90−105(2003)
【非特許文献3】W.M.Partridge,et al.,Nature Reviews−Drug Discovery 1:131−139(2002)
【非特許文献4】B.R.Stevenson et al.,Mol.Cell.Biochem.83,129−145(1988)
【非特許文献5】Sakane et al.,J.Pharm.Pharmacol.47,379−381(1985)
【非特許文献6】S.Perlman et al.,Adv.Exp.Med.Biol.,380:73−78(1995)
【発明の概要】
【0008】
簡単な要約
本発明の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖の、動物の中枢神経系への鼻内投与を強化するために十分な濃度の浸透強化剤を含んでなる製薬学的組成物である。
【0009】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約0.1〜約1gのキトサングルタメート(chitosan glutamate)を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物である。
【0010】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約0.125g〜約1gの1−O−n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、1−O−n−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド、1−O−n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドおよびベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートからなる群から選択される化合物を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物である。
【0011】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約5ml〜約20mlのプロピレングリコールを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであり、そしてプロピレングリコールが標準状態である製薬学的組成物である。
【0012】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約5gのヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−ベータ−シクロデキストリンを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物である。
【0013】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約2gの1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであり、そして1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが
水性バッファー中に乳化されている製薬学的組成物である。
【0014】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約0.1〜約1gのグリココール酸ナトリウム水和物、タウロコール酸ナトリウム塩水和物およびタウロウルソデオキシコール酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物である。
【0015】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約1ml〜約10mlのテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであリ、そしてテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールが標準状態である製薬学的組成物である。
【0016】
これらのおよび他の観点および態様は、本明細書の記載、図面および配列から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1にさらに十分に記載するように、ラットに125I−α−MSHミメティボディを鼻内投与してから25分(白棒)および5時間(点付棒)後の125I−α−メラニン細胞刺激ホルモン(125I−α−MSH)の分布を示すグラフである。
【図2】実施例1にさらに十分に記載するように、送達後の時間(分で)の関数として、125I−α−MSHミメティボディをラットに鼻内(菱形)または静脈内(四角)投与した後の125I−α−MSHミメティボディの血中濃度をナノモルで示すグラフである。
【図3】実施例1にさらに十分に記載するように、125I−α−MSHミメティボディを鼻内(白棒)または静脈内(点付棒)投与した後のラットの中枢神経系または末梢組織における125I−α−MSHミメティボディの分布を比較するグラフである。
【図4】実施例1にさらに十分に記載するように、125I−α−MSHミメティボディを鼻内(図4A、4C)または静脈内(図4B、4D)のどちらかに投与してから25分後のラット脳の冠状切片のコンピューターが作成したオートラジオグラフを示す。
【図5】用量を変えた(ナノモルで)α−MSHミメティボディで鼻内処置してから24時間後のラットの累積的食物摂取の減少を(グラムで)示すグラフである。
【図6】2.5ナノモル(菱形)、6.25ナノモル(四角)、25ナノモル(三角)または50ナノモル(丸)の用量のα−MSHミメティボディで鼻内処置してからの時間の関数として(時間で)、ラットの累積的食物摂取の減少割合を示すグラフである。
【図7】鼻内投与したα−MSHミメティボディ(白棒)または生理食塩水(点付棒)で処置した後に、示した時間のラットにおける累積的食物摂取をグラムで示す棒グラフである。
【図8】イソフルランで麻酔をかけたラットを対象として、5(容量/容量)%のテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールまたは1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物を含んでなるhFc製剤の鼻投与後に、中枢神経系組織への抗体フラグメント送達の増加を示す棒グラフである。
【図9】1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物を含んでなる製剤の鼻投与が、生物学的に活性な高分子量の酵素の、イソフルランで麻酔をかけた動物の中枢神経系組織への送達を可能にしたことを示す棒グラフである。
【図10】イソフルランで麻酔をかけたラットを対象として、0.125(重量/容量)%〜0.5(重量/容量)%の1−O−n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド(A3と命名)、1−O−n−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド(A1と命名)、1−O−n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシド(A5と命名)およびベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエート(B3と命名)を含んでなるhFc製剤の鼻投与後に、の中枢神経系組織への抗体フラグメントの送達が増加したことを示す棒グラフである。
【図11】抗体のFcフラグメントを含んでなる代表的ペプチド鎖の該略図である。選択したペプチド鎖の特徴を記す。
【0018】
詳細な説明
本明細書の主題に対する理解を促す目的で、好適な態様に言及し、そして特定の用語を使用してそれを説明する。にもかかわらず、それによる本発明の範囲の限定は意図されず、主題のそのような変更およびさらなる改変、ならびに本明細書で具体的に説明するような原理のさらなる応用は、主題が関連する技術分野の当業者が通常行うように企図されるものである。
【0019】
治療用ペプチドまたはタンパク質に連結された抗体フラグメントのような球状タンパク質分子は、哺乳動物の中枢神経系へ直接送達することができ、それにより血液脳関門をバイパスすることが見いだされた。したがって治療用組成物を哺乳動物の中枢神経系へ送達する方法が提供される。この方法は広範な疾患または状態の処置に有利である。したがって処置法も提供される。
【0020】
非全身的経路、例えば身体全体に送達するか、または別の方法で身体全体に影響を及ぼす経路以外の経路による治療用組成物の、哺乳動物の脳および脊髄および頚部節(cervical node)を含む中枢神経系への送達法が提供される。したがってこの送達法は、鼻の通路を介して治療用組成物の脳への局所化および標的化された送達を可能にする。その結果、この方法は静脈内、筋肉内、経皮的、腹腔内または組成物が通過して送達される類似の経路、例えば血液循環系以外の経路による組成物の送達に関する。治療用ポリペプチドに結合した(conjugated)、または別の方法で連結された(linked)抗体フラグメントが、哺乳動物の脳および脊髄および頚部節を含む中枢神経系に、融合分子を鼻内投与することにより送達できることが見いだされた。
【0021】
本明細書で使用する用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを意図し、そしてアミノ酸のポリマーの具体的な長さを指すものではない。したがって例えば、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質および酵素という用語は、ポリペプチドの定義に含まれる。またこの用語はポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等も含む。場合によりタンパク質、ペプチドおよびポリペプチドという用語は、互換的に使用される。
【0022】
組成物は鼻内に適用されるので、組成物は非全身経路によるように脳へ直接輸送される。したがって、哺乳動物の中枢神経系への治療用組成物の送達方法も本明細書では提供される。治療用組成物の哺乳動物の中枢神経系への適用による処置に応答する障害の処置法も提供され、そして以下に説明される。
【0023】
A.組成物成分
鼻内送達用の治療用組成物は、ポリペプチドおよび抗体または抗体フラグメントを含んでなる融合ポリペプチドである。一つの態様では、ポリペプチドは生物学的に活性であり、そして好ましくは治療効果のような特定の生物学的効果を生じるか、またはもたらす。ポリペプチドの様々な例を以下に与える。ポリペプチドは内因性の標的に直接向けられる抗体もしくは抗体フラグメントに連結されている。抗体もしくは抗体フラグメントは細胞標的に対する結合親和性を有することに加え、治療効果を生じるために生物学的に活性である。このポリペプチドおよび付加される抗体もしくは抗体フラグメントは一緒に、治療用化合物または治療用融合ポリペプチドを構成し、これは鼻内送達に望まれるように配合することができる。以下に具体的に説明するように、個々の成分に比べて増大したサイズおよび/または親水性の融合ポリペプチドは、ポリペプチドの血中生物学的利用能を下げ、同時に中枢神経系への送達を可能とし、すなわち薬物のターゲッティングを改善すると同時に、全身的暴露および随伴する副作用を下げる。
【0024】
i.抗体または抗体フラグメント
治療用融合化合物中の抗体または抗体フラグメントは、ターゲッティング剤として役立てるために、生物学的に望まれる効果を提供するために、あるいはその両方のために選択することができる。抗体または抗体フラグメントはポリクローナルまたはモノクローナル抗体でよく、そして例となる抗体およびフラグメント、その起源および調製をこれから記載する。
【0025】
ポリクローナル抗体は当該技術分野で十分に確立されているように、所望する抗原を個体、典型的にはマウスのような動物に注射することにより得られる。抗原は処置する障害に基づき選択される。例えばアルツハイマー病の処置には、抗原はβ−アミロイドタンパク質またはそのペプチドであることができる。ガンの処置では、抗原は当該技術分野で知られている種々のペプチドのような腫瘍関連抗原であることができ、それらには例えばインターロイキン13レセプター−α(Joshi,B.H.et al.,Cancer
Res.60:1168−1172(2000)で検討されているような悪性の星状細胞腫/多形グリア芽腫に)、BF7/GE2(ミクロソームのエポキシドヒドロラーゼ:mEH)(Kessler,R.et al.,Cancer Res.60:1403−1409(2000)で検討されているような異常なmEH発現を含む腫瘍の処置に)、チロシナーゼ関連タンパク質−2(TRP−2)(多形グリア芽腫の処置に)、MAGE−1、3もしくは6(髄芽腫に)およびMAGE−2(多形グリア芽腫に)(両方ともScarcella,D.L.,et al.,Clin.Cancer Res.5:331−341(1999)で検討されているような)、およびサバイビン(Bodey,B.B.,In Vivo,18(6)713−718(2004)に記載されているような髄芽腫に)がある。脊髄損傷および急性脳損傷のような炎症を抑えるための神経外傷の処置に、抗原は−TNF−アルファおよびインターロイキン−1□を含む種々のインターロイキンでよい。抗原はフロインド完全アジュバントのようなアジュバントと一緒に、個体に多回にわたり皮下または腹腔に注射することができる。
【0026】
抗原の免疫原性を上げる別の方法は、抗体を生産する特定種で免疫原となるタンパク質に抗原を結合するか、または別の方法で連結させることである。例えば抗原は、マウスで合成ペプチドの免疫原性を上げることが示された天然のイムノモジュレーターツフシン(tuftsin)の合成ポリマーであるポリツフシン(polytuftsin)(TKPR40)に結合することができる(Gokulan K.et al.,DNA Cell Biol.18(8):623−630(1999))。結合の方法は二官能性または誘導化剤、例えばシステイン残基を介する結合にはマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル、リシン残基を介する結合にはN−ヒドロキシスクシンイミド、グルタルアルデヒドまたは無水コハク酸の使用を含むことができる。
【0027】
例えば約1カ月といった初回注射から十分な時間が経った後、動物にペプチド抗原の元の量の画分(例えば1/10量)を追加免疫感作することができ、そして約7〜14日後に採血し、そして抗体は動物の血液から例えばプロテインAまたはプロテインGセファロース(sepharose)を使用するアフィニティクロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーまたはゲル電気泳動を含む当該技術分野で知られている標準的方法により単離することができる。抗体精製手順は例えば、Harlow,D.and Lane E.,抗体を使用して:ア ラボラトリーマニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual),Cold Springs Harbor Laboratory Press,ウッドベリー、NY(1998);およびSubramanian,G.,抗体:生産および精製(Antibodies:Production and Purification),Kluwer Academic/Plenum Publishers)、ニューヨーク、NY(2004)に見いだすことができる。
【0028】
非ヒト抗体は、様々な方法によりヒト化することができる。例えば非ヒト抗体中の超可変領域の配列を、例えばJones et al.,Nature,321:522−525(1986);Reichmann et al.,Nature,332:323−327(1988)およびVerhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988)に記載されているようにヒト抗体の対応する配列に置き換えることができる。抗体がヒトの治療を意図する場合、抗体の抗原性を下げるために、ヒト化抗体の作成では指標としてヒト可変ドメインを選択することが好ましい。これを達成するために、非ヒト抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリーに対してスクリーニングすることができる。動物の可変ドメイン配列に最も近いヒト可変ドメインの配列が同定され、そしてその中のヒトのフレイムワーク領域が、例えばSims et al.,J.Immunol.,151:2296−2308(1993)およびChothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901−917(1987)に記載されているようにヒト抗体で利用される。
【0029】
抗体は完全長の抗体またはフラグメントでよい。完全長の抗体またはフラグメントを修飾して、抗体またはフラグメントの改善された安定性を可能とし、そしてFcレセプターへの結合のようなエフェクター機能をモジュレートすることができる。これは例えば、エフェクター機能を失い、そしてそれでもIgG構造を維持するために、ヒトもしくはマウスのアイソタイプ、またはそのような分子のバリアント、例えばAla/Ala変異を有するIgG4を利用することにより達成することができる。抗体フラグメントはモノマーまたはダイマーでよく、そしてFab、Fab’、F(ab’)2、FcまたはFvフラグメントを含む。これらのフラグメントは、例えば完全な抗体のタンパク質分解性分解により生産することができる。例えば、完全な抗体をパパインで消化すると2つのFabフラグメントが生じる。完全な抗体をペプシン処理すると、F(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2フラグメントはジスルフィド結合によりVH−CH1に連結されている軽鎖であるFabのダイマーである。F(ab)’2を穏やかな条件下で還元してヒンジ領域のジスルフィド結合を壊すことができ、これにより(Fab’)2ダイマーはFab’モノマーに変換される。Fab’モノマーは本質的にヒンジ領域の一部を含むFabフラグメントである(他の抗体フラグメントに関するさらなる詳細は、Fundamental Immunology,W.E.Paul,ed.,Raven Press,N.Y.(1993)を参照にされたい)。
【0030】
Fc部分を有するものを含む多くのフラグメントは、当該技術分野で既知の組換えDNA技術法によっても生産することができる。
【0031】
広範な抗体を使用して、本明細書に記載する中枢神経系への鼻内送達のための組成物に利用される抗体フラグメントを得ることができる。抗体の例にはIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEがある。これら抗体のサブクラスも抗体フラグメントを得るために使用することができる。サブクラスの例には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2がある。抗体フラグメントは、本明細書中で前述したように生産できる抗体のタンパク質分解性分解により得ることができる。1つの態様では、抗体フラグメントはポリペプチドの半減期を上げるために利用され、そして抗体は免疫感作していない個体から単離することができ、そして本明細書中で前述した抗体の単離手順により単離することができる。あるいは抗体フラグメントは、キメラまたは融合ポリペプチドを生産するために、本明細書中で前述した組換えDNA法により生産することができる。例えば抗体フラグメントと治療用ポリペプチドを含む融合分子は、ミメティボディを生産するために、個々のタンパク質をコードするプラスミドを使用して生産することができる。
【0032】
抗体、抗体フラグメントまたはポリペプチドに連結された抗体フラグメント、またはそれらの生物学的に活性な部分は、例えばプロテインAカラムの使用を含むアフィニティ精製、および例えばSuperoseカラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィーにより精製できる。精製法は当該技術分野では周知である。特異的モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Eur.J.Immunol.,:511−519(1976)の技法およびその改良および修飾により調製することができる。簡単に説明すると、そのような方法には、所望の抗体を生産することができる不死化細胞株の調製を含む。不死化細胞株は、選択した抗原をマウスのような動物に注射し、B細胞を動物の脾臓から回収し、そして細胞とミエローマ細胞とを融合させてハイブリドーマを形成することにより生産できる。コロニーは所望のエピトープに対して高い親和性抗体を分泌する能力について当該技術分野で日常的な手順により選択し、そして試験する。選択手順の後、モノクローナル抗体は本明細書中で前述した手順を含む当該技術分野で既知の抗体精製法により、培養基または血清から分離することができる。
【0033】
あるいは抗体は、当該技術分野で既知の様々な方法により発現ライブラリーから組換え的に生産することができる。例えばcDNAは、リンパ球、好ましくはBリンパ球、そして好ましくは所望の抗原を注射した動物から単離されたリボ核酸(RNA)から生産することができる。様々な免疫グロブリン遺伝子をコードするようなcDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させ、そしてファージディスプレイベクターのような適切なベクターにクローン化することができる。そのようなベクターをバクテリア懸濁液、好ましくは大腸菌(E.coli)を含むものに加えることができ、そしてファージ粒子の表面に連結した対応する抗体フラグメントを提示するバクテリオファージまたはファージ粒子が生産され得る。サブライブラリーは、例えばパンニングのようなアフィニティ精製技法を含め、当該技術分野で知られている方法により、所望の抗体を含むファージ粒子をスクリーニングすることにより構築することができる。次いでサブライブラリーは、バクテリア細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞のような所望の細胞型から抗体を単離するために利用できる。本明細書に記載する組換え抗体の生産法、およびその修飾に関する方法は、例えばGriffiths,W.G.et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994);Marks,J.D.et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991);Winter,G.and Milstein,C.,Nature,349:293−299(1991);およびHoogenboom,H.R.and Winter,G.,J.Mol.Biol.,227(2):381−388(1992)に見いだすことができる。
【0034】
またヒト抗体は、トランスジェニック動物でも生産できる。例えば、キメラおよび生殖細胞系列変異マウスの抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合体欠損は、内因性の抗
体生産の完全な阻害を生じるので、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子アレイのそのような変異体マウスへの転移は、抗原で免疫感作した時にヒト抗体の生産をもたらす。例えばJakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551−2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);米国特許第5,545,806;5,569,825;5,591,669;5,545,807号明細書、およびPCT出願国際公開第WO97/17852号パンフレットを参照にされたい。
【0035】
ii.ポリペプチド
上記のように、抗体または抗体フラグメントはポリペプチドに連結される。好ましくはポリペプチドは中枢神経系の領域に結合できるものである。さらにポリペプチドは、中枢神経系に有利な効果を有するものが好ましく、そして治療目的のように哺乳動物の中枢神経系により調節される機能に有利な効果を有するものを含む。ポリペプチドはその効果を、例えば脳の様々な領域の細胞レセプターに結合することにより発揮することができる。一例として、α−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)がその効果を体重の減少で発揮するために、ポリペプチドは視床下部のニューロン上のメラノコルチン4レセプター(MCR−4)に結合する。さらなる例として、エリスロポエチン(EPO)については、活性なEPOフラグメントまたはEPO類似体が脳卒中または急性脳損傷後に神経機能を改善するために、神経レセプター、例えば海馬細胞、星状細胞または類似細胞に結合しなければならない。
【0036】
広範なタンパク質またはペプチドを使用することができる。ポリペプチドは約200ダルトンから約200,000ダルトンの分子量を有することができるが、典型的には約300ダルトンから約100,000ダルトンである。
【0037】
一つの態様では、ポリペプチドおよび抗体または抗体フラグメントは、結合後、約25kDaより大きい、より好ましくは約30kDaより大きい、さらにより好ましくは約40kDaより大きな合わせた分子量を有する。
【0038】
別の態様では、ポリペプチドは約25kDa未満の分子量を有し、そして疎水性である。
【0039】
広範な種々の治療用タンパク質、またはその生物学的に活性な部分は、本明細書に記載する方法に利用できる抗体フラグメントに連結または別の方法で結合する(attached)ことが可能である。タンパク質は好ましくはペプチドの状態である。選択される特定の治療用ペプチドは、処置する疾患または状態(集合的に「障害」と言う)に依存する。例えばアルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病のような神経変性障害、あるいは運動または記憶のような認知機能が関与する他の疾患には、神経保護もしくは神経栄養剤が好適である。神経保護または神経栄養剤はニューロンの生存を促進し、神経発生および/またはシナプス発生を刺激し、海馬ニューロンをベータアミロイドが誘導する神経毒から救済し、かつ/またはtauリン酸化を下げるものであることができる。そのような神経変性障害および神経学的障害の処置に適する作用物質の例には、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、およびLHRHのアゴニスト、例えばデスロレリン;神経栄養因子、例えばニューロトロフィンファミリーに由来するもので、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3およびニューロトロフィン−4/5を含む;酸性繊維芽細胞増殖因子および塩基性繊維芽細胞増殖因子を含む繊維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF);毛様体神経栄養因子、白血病阻害因子およびカルジオトロフィン−1を含むニューロカインファミリー;トランスフォーミング増殖因子−β−1−3(TGF−ベータ)、骨形成タンパク質(BMP)、成長分化因子5〜15のような成長/分化因子、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン
、アルテミン、アクチビンおよびペルセフィンを含むトランスフォーミング増殖因子−βファミリー;上皮増殖因子、トランスフォーミング増殖因子−αおよびニューレグリンを含む上皮増殖因子ファミリー;インスリン様増殖因子−1(IGF−1)およびインスリン様増殖因子−2(IGF−2)を含むインスリン様増殖因子ファミリー;PACAP−27、PACAP−38、グルカゴン、GLP−1およびGLP−2のようなグルカゴン様ペプチド、成長ホルモン放出因子、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、ペプチドヒスチジンメチオニン、分泌およびグルコース依存性インスリン分泌ポリペプチドを含む下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)/グルカゴンスーパーファミリー;ならびに活性依存性神経栄養因子および血小板由来増殖因子(PDGF)を含む他の神経栄養因子を含む。このような作用物質は急性脳損傷、慢性脳損傷(神経発生)および鬱のような神経心理学的障害の処置にも適する。
【0040】
脳卒中の処置の場合、治療薬は皮質ニューロンを一酸化窒素が媒介する神経毒から保護し、ニューロンの生存を促進し、神経発生および/またはシナプス発生を刺激し、かつ/またはニューロンをグルコースの奪取から救済するものであることができる。そのような作用物質の例には、本明細書ですでに記載した神経栄養因子、その活性フラグメント、ならびにエリスロポエチン(EPO)、EPOの類似体、例えばカルバミル化EPO、およびEPOの活性フラグメントがある。使用できるEPOの類似体の例は当業者に知られており、そして例えば米国特許第5,955,422および同第5,856,298号明細書に記載されているものを含む。例えば本発明で有用なEPO、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)およびトロンボポエチンのペプチドの増殖因子ミメティックスおよびアンタゴニストは、K.Kaushansky,Ann.NY Acad.Sci.,938:131−138(2001)に総説されているように、そしてEPOミメティックペプチドリガンドについてWrighton et al.,Science,273(5274):458−450(1996)に記載されているようにスクリーニングすることができる。ペプチド増殖因子、または本明細書に記載する他のペプチドもしくはタンパク質に対するミメティックス、アゴニストおよびアンタゴニストは、ミメティックス、アゴニストまたはアンタゴニストの元になるペプチド増殖因子、または他のポリペプチドよりも長さが短くなるかもしれない。
【0041】
摂食障害の処置、例えば体重の減少(食欲不振)および体重増加(肥満)の防止のための治療用ポリペプチドには、メラノコルチンレセプター(MCR)アゴニストおよびアンタゴニストを含む。適切なMCRアゴニストには、α−メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、ならびにベータおよびガンマMSH、およびそれらの誘導体で、ヒトα−MSH(配列番号1 SYSMEHFRWGKPV)のアミノ酸1〜13、そして特に副腎皮質刺激ホルモン(MSH/ACTH4−10)におけるようなレセプター結合アミノ酸配列4〜10、メラノコルチンレセプター3(MCR3)またはメラノコルチンレセプター4(MCR4)アゴニスト、例えばメラノタンII(MTII)、有力な非選択的MCRアゴニストであるMRLOB−0001、ならびにペプチドおよび/またはタンパク質の活性フラグメントを含む。肥満を処置するための他のペプチドには、ホルモンペプチドYY(PYY)、特にこのペプチドのアミノ酸3〜36、レプチンおよびグレリン、毛様体神経栄養因子またはその類似体、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、インスリンミメティックスおよび/または刺激物質、レプチン、レプチン類似体および/または刺激物質およびドパミン作動性、ノルアドレナリン作動性およびセロトニン作動性物質がある。
【0042】
体重の恒常性を調節する対応するMCRアンタゴニストには、エンドカンナビノイドレセプターアンタゴニスト、脂肪酸合成レセプターインヒビター、グレリンアンタゴニスト、メラニン−濃縮ホルモンレセプターアンタゴニスト、PYYレセプターアンタゴニストおよびチロシンホスファターゼ−1Bインヒビター(J.Korner et al.,J.Clin.Invest.,111:565−570(2003))がある。内因性
のMCR3およびMCR4アンタゴニストであるアグーチシグナリングタンパク質(ASIP)およびアグーチ関連タンパク質(AGRP)のようなMCRアンタゴニスト、ならびにそれらのペプトイドバリアントおよびミメティックスは、体重の恒常性を管理し、そして食欲不振のような摂食障害を処置するために使用することができる(YK Yang
et al.,Neuropeptides,37(6):338−344(2003);DA Thompson et al,Bioorg Med Chem Lett.,13:1409−1413(2003);およびC.Chen et al,J.Med.Chem.,47(27):6821−30(2004))。
【0043】
メラノコルチンレセプター(MCR)に結合するこれまで挙げたペプチドホルモンおよびそれらの類似体は、炎症を制御し、そして男性および女性の性的機能不全を改善するためにも有用となり得る(A.Catania et al.,Pharmacol Rev,56(1):1−29(2004))。
【0044】
糖尿病のような内分泌障害を処置するための治療用タンパク質には、例えばグルカゴン様ペプチド1(GLP−1);下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、血管作動性腸管ペプチド(VIP)、エキセンディン−3およびエキセンディン−4を含むGLP−1ファミリーに由来するペプチド;およびインスリン様増殖因子(IGF−1)、IGF結合タンパク質3(IGFBP3)およびインスリン、ならびにそれらの活性フラグメントを含む。
【0045】
不眠のような睡眠障害を処置するための治療用ポリペプチドには、成長ホルモン放出因子、バソプレッシン、およびバソプレッシンの誘導体があり、デスモプレッシン、グリプレッシン、オルニプレッシンおよびテルニプレシン(ternipressin)を含む;含まれるのは、同じレセプター標的に結合して、同じ/類似または反対の生物学的応答のいずれかを生じるペプチドバリアントおよびミメティックペプチドリガンドである。多発性硬化症のような自己免疫障害の処置のための治療用タンパク質には、インターフェロンがあり、β−インターフェロンおよびトランスフォーミング増殖因子βを含む。
【0046】
統合失調症のような精神医学的障害の処置のための治療用ポリペプチドには、ニューレグリン−1、EPO、カルバミル化EPOのようなEPOの類似体、および本明細書にすでに記載したようなEPOの活性フラグメントおよびEPOのミメティックスを含む。種々の神経栄養因子および調節ペプチドホルモン、例えば脳由来神経栄養因子(BDGF)およびインスリンを、鬱および精神内分泌的および代謝障害を処置するために使用することができる。
【0047】
脳のリソソーム貯蔵障害を処置するための治療用ポリペプチドには、例えばリソソーム酵素がある。
【0048】
食欲不振のような摂食障害を処置するための治療用ポリペプチドには、例えばアグーチシグナリングタンパク質(ASIP)およびアグーチ関連タンパク質(AGRP)のようなメラノコルチンレセプター(MCR)アンタゴニストを含む。
【0049】
治療用ポリペプチドは、ヒトのポリペプチドでよいが、ポリペプチドは他の種に由来してもよく、または合成的もしくは組換え的に生産されてもよい。また元のアミノ酸配列も、改善された効力または改善された特異性(例えば多くのレセプターへの結合を排除する)、および安定性のためのように、修飾または再操作することができる。
【0050】
また本明細書で使用する治療用ポリペプチドは、同じレセプターに結合するが、内因性のヒトペプチドとは相同的でないアミノ酸配列を有する分子のようなミメティックスでよ
い。例えば、メラノコルチンレセプター、成長ホルモン放出因子レセプター、バソプレッシンレセプター、ホルモンペプチドYYレセプター、ニューロペプチドYレセプター、またはエリスロポエチンレセプターのアゴニストおよびアンタゴニストを含むアゴニストおよびアンタゴニストは、天然のアミノ酸、例えばL−アミノ酸、または非天然アミノ酸、例えばD−アミノ酸を含むことができる。ポリペプチド中のアミノ酸は、ペプチド結合により連結されるか、あるいは非ペプチド結合により修飾されたペプチド(ペプチドミメティックスを含む)でよい(J.Zhang et al.,Org.Lett.,(17):3115−8(2003))。
【0051】
ポリペプチドミメティックス、およびレセプターアゴニストおよびアンタゴニストは、特異的な生物学的機能およびレセプター結合について当該技術分野で知られている高処理スクリーニングを使用して選択し、そして生産することができる。そのような方法を利用すると、無作為に生産された数百万の有機化合物およびペプチドを迅速にスクリーニングして、さらなる開発のためのリード化合物の同定が可能となる。低分子およびペプチドのライブラリーをスクリーニングするために使用する方法、およびミメティックスおよびアンタゴニスト、例えばEPO、GCSFおよびトロンボポエチンのミメティックスおよびアンタゴニストを見いだす成功法は、K.Kaushansky,Ann.NY Acad.Sci.,938:131−138(2001)に総説されている。
【0052】
アミノ酸を連結するアミド結合に対する広範な様々の修飾は、本明細書に記載するアゴニストおよびアンタゴニストにも行うことができ、そのような修飾は当該技術分野では周知である。例えばそのような修飾は、Freidinger,R.M.「新規な生物学的に活性なペプチドおよびペプチドミメティックスの設計と合成(Design and Synthesis of Novel Bioactive Peptides and Peptidomimetics)」、J.Med.Chem.,46:5553(2003)、およびRipka,A.S.,Rich,D.H.「ペプチドミメティックデザイン(Peptidomimetic Design)」Curr.Opin.Chem.Biol.,:441(1998)を含む一般的な総説で検討されている。多くの修飾が、コンフォメーションの柔軟性を拘束することによりペプチドの効力を上げるように設計されている。
【0053】
例えばアゴニストおよびアンタゴニストは、Zuckerman et al,のペプトイド法のようにアミド結合の窒素またはアルファ−炭素上にさらなるアルキル基を加えること、および例えばGoodman,M.et.al.(Pure Appl.Chem.,68:1303(1996))のアルファ修飾を含むことにより修飾することができる。アミド窒素およびアルファ炭素は一緒に連結されて、さらなる制約を提供することができる(Scott et al,Org.Letts.,:1629−1632(2004))。
【0054】
iii.連結(Linkage)
ポリペプチドは抗体または抗体フラグメントに連結されて送達のための治療用化合物を形成する。一つの態様では、抗体または抗体フラグメントはポリペプチドの安定性を上げ、これにより、哺乳動物の鼻腔および中枢神経系を含む生体内でのその半減期を上げる。組合わさったポリペプチド−抗体フラグメント化合物は、本明細書中で「ミメティボディ(mimetibody)」とも呼ぶ。この章では、2つの分子を連結する取り組みについて記載する。
【0055】
抗体フラグメントおよびポリペプチドは、当該技術分野で知られている方法により、そして典型的には共有結合を介して互いに連結することができる。連結または結合(conjugation)法には、グリシンおよびセリンの使用を含むアミノ酸リンカーの使用
を含むことができる。フラグメントおよびポリペプチドは結合されるか、あるいはそうではなく架橋結合により、または当該技術分野で知られ、そして例えばWong,S.S.,タンパク質の結合および架橋結合の化学(Chemistry of Protein
Conjugation and Cross−Linking),CRC Press,Boca Raton,FL(1991)で検討されている他の連結法により連結できる。例えばポリペプチドは、当該技術分野で知られているホモ二官能性および/またはヘテロ二官能性または多官能性架橋リンカーを使用して結合することができる。架橋結合剤の例には、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロライド)のようなカルボジイミド;イミドエステル、N−ヒドロキシスクシンイミド−エステル、マレイミド、ピリジルジスルフィド、ヒドラジドおよびアリールアジドがある。ペプチドのN−末端と抗体フラグメントのC末端との連結を含め、活性剤であるポリペプチドと抗体フラグメントとの間に幾つかの結合点が構想される。あるいはポリペプチドは、そのC末端を抗体フラグメントのN末端に付けてもよい。さらに結合は、システインもしくは他のアミノ酸残基を介しても、あるいは抗体の炭水化物の官能基部分を介してもよい。
【0056】
iv.治療用ポリペプチド−抗体化合物の組成
治療用組成物中の活性剤であるポリペプチドを、製薬学的に許容され得る担体もしくは他の賦形剤と混合することができる。担体は、例えば点鼻薬として、または鼻スプレーとしての投与に適する液体でよく、そして水、生理食塩水または他の水性もしくは有機性、そして好ましくは滅菌溶液を含む。担体は粉末、ゲルもしくは軟膏のような固体でもよく、そしてカオリン、ベントナイト、酸化亜鉛および酸化チタンのような無機充填剤;粘性調整剤、酸化防止剤、pH調整剤、凍結保護剤およびスクロース、アンチオキシダント、錯化剤を含む他の安定性強化補形剤;グリセロールおよびプロピレングリコールのような湿潤剤;および必要および/または所望により包含できる他の添加物を含むことができる。
【0057】
治療用化合物がゲルまたは軟膏として投与される場合、担体には例えば天然もしくは合成のポリマー、例えばヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、デキストリン、カルボキシメチルスターチ、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドンを含むそのような担体の使用について知られている製薬学的に許容できる基材物質のような適切な固体;蜜蝋、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、ダイズ油、ツバキ油、落花生油、牛脂、ラードおよびラノリンのような脂肪および油;白色ワセリン;パラフィン;炭化水素のゲル軟膏;ステアリン酸のような脂肪酸;セチルアルコールおよびステアリルアルコールのようなアルコール;ポリエチレングリコール;および水を含むことができる。
【0058】
治療用化合物が粉末として投与される場合、担体はオキシエチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドンポリビニルアルコール;ポリアクリル酸ナトリウム、カリウムもしくはアンモニウムを含むポリアクリレート;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール;セルロース、微晶質セルロースおよびアルファ−セルロースを含むセルロース類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースを含むセルロース誘導体;アルファ−、ベータ−もしくはガンマ−シクロデキストリン、ジメチル−ベータ−シクロデキストリンを含むデキストリン;ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチを含むスターチ類
;デキストラン、デキストリンおよビアルギン酸を含む多糖;ヒアルロン酸;ペクチン酸;マンニトール、グルコース、ラクトース、フルクトース、スクロースおよびアミロースを含む炭水化物;カゼイン、ゼラチン、キチンおよびキトサンを含むタンパク質;アラビアガム、キサンタンガム、トラガカントガムおよびグルコマンナンのようなガム;リン脂質およびそれらの組み合わせのような適切な固体でよい。
【0059】
粉末の粒子サイズは、適切なサイズのメッシュを通してスクリーニングまたはふるい分けすることを含め、当該技術分野の標準法により測定することができる。粒子サイズが大きすぎれば、サイズは刻み、切断、破砕、砕き、挽きおよび微粉化を含む標準法により調整することができる。粉末の粒子サイズは典型的には約0.05μmから約100μmの範囲である。粒子は好ましくは約400μm以下である。
【0060】
さらに組成物は、組成物の粘膜付着性(mucoadhesivity)、鼻の耐容または流動特性を改善する作用物質、粘膜付着剤、吸収強化剤、消臭剤、湿潤剤および保存剤を含むことができる。水性担体中で組成物の流動特性を上げる適切な作用物質には、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ゼラチン、アルギン、カラゲーナン、カルボマー、ガラクトマンナン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ナトリウムカルボキシメチルデキストランおよびキサンタンガンを含む。適切な吸収強化剤には胆汁酸塩、リン脂質、グリチルリチン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、酒石酸アンモニウム、ガンマ.アミノレブリン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸およびオキザロ酢酸を含む。水性組成物に適切な湿潤剤には、例えばグリセリン、多糖およびポリエチレングリコールを含む。適切な粘膜付着剤には、例えばポリビニルピロリドンポリマーを含む。
【0061】
本発明の別の観点は、タンパク質物質の鼻内投与を介する中枢神経系への送達を強化する浸透強化剤をさらに含むことができる製薬学的組成物である。タンパク質物質は全抗体、Fabフラグメントのような当業者に知られている抗体フラグメント、またはミメティボディのようなFc含有タンパク質物質であることができる。さらにタンパク質物質は酵素のような触媒的に活性なタンパク質であることができる。投与されるタンパク質物質は、予防、治療または診断目的に有用である。
【0062】
吸収強化剤は、粘液を含む粘膜および上皮細胞膜を介した分子の輸送を促進する。種々のクラスの吸収強化剤が記載され、それらには粘膜付着剤、線毛運動インヒビター(ciliary beat inhibitor)、粘液流動剤、膜流動剤および密着結合(tight junction)モジュレーターを含む。本発明では、膜流動剤および密着結合モジュレーターが、鼻上皮に配置されたタンパク質物質のCNSへの送達を最も効果的に増加する。
【0063】
密着結合は、上皮層の先端と基底外側との間、またはニューロン、活性化免疫細胞および幾つかの内皮細胞を含む特定の分化した細胞のアスペクト間の傍細胞輸送を制限する細胞内構造である。密着結合の浸透性は体内の組織間で変動し;密着結合は一般に3.6A未満の流体力学的半径を持つそのような分子の輸送を限定し、そして15Aよりも大きい半径を持つ分子の有意な輸送を不可能にする(Stevenson,B.R.et al.,Mol.Cell Biochem 83:129−145(1988))。またIllum L,J.Pharm.Pharmacol,56:3−17(2004)も参照にされたい。
【0064】
密着結合は、組み込まれた膜貫通および細胞内タンパク質および隣接する膜様のミクロドメインからなる。密着結合の浸透性は、密着結合のタンパク質または脂質を修飾する細胞内−および外−の刺激によりモジュレートされ、これによりそれらの互いの物理的相互
作用を変化させ、そしてより制限された、または制限されない傍細胞輸送を導く。幾つかの化学物質がこれら細胞内−および外−の刺激を模倣して、一時的な変化を密着結合内のタンパク質または脂質のいずれかに誘導し、傍細胞輸送に可逆的な増加を生じることが示された。これら化学物質を配合中に補形剤として含むことは、鼻上皮を介して、あるいは軸索と隣接細胞との間を通って傍細胞および神経周膜空間(細胞外空間)に入る分子の量を上げることを可能とする。
【0065】
そのような膜モディファイヤーの機能性は、それらの障壁破壊能力(barrier disruption potential)(TEERの減少)により測定でき、そして顕微鏡法により視覚化される(例えば蛍光顕微鏡、電子顕微鏡)。この機能性には、脂質二重層の抽出または流動化、または例えば混乱(perturbation)を介する細胞膜タンパク質相互作用の破壊、水素結合または特異的結合のような細胞間イオン力の破壊がある。これはプロピレングリコール、グリコフロールおよびグリセロール、または胆汁酸塩、イオン性もしくは非イオン性表面活性剤、例えばグリココール酸塩、タウロコール酸塩およびタウロウルソデオキシコール酸塩、およびデシル、ドデシルおよびテトラデシルマルトシドのようなアルキルグルコシド、またはリソホスファチジルコリン(LPC)、1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DDPC)のような脂質、およびオレイン酸のような脂肪酸、またはキトサンのような荷電化合物、および当該技術分野でよく記載されているその他のもののような溶媒を介して行うことができる。
【0066】
本明細書で実施例7に記載し、そして表Aに列挙する強化剤は、膜モディファイヤーの代表例であり、そしてキトサングルタメート、n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、ベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエート、プロピレングリコール、ヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−ベータ−シクロデキストリン、1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、グリココール酸ナトリウム水和物、タウロコール酸ナトリウム塩水和物、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウムおよびテトラヒドロフルフリルポリエチレングリコールを含む。これらの化合物に関する慣用名、起源および他の関連情報を表Aに提供する。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
用語「ペプチド鎖」とは、ペプチド結合により連結されて鎖を形成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含んでなる分子を意味する。50アミノ酸より多い大きなペプチド鎖は、「ポリペプチド」または「タンパク質」と呼ぶことができる。50アミノ酸未満の小さいペプチド鎖を「ペプチド」と呼ぶことができる。
【0070】
用語「触媒的に活性」とは、化学反応の速度を上げることができる分子を意味する。そのような化学反応には、合成、分解、燃焼、単一置換、二重置換、酸−塩基平衡、還元−酸化、または粒子放出(例えばイオン放出)のような他の物理的プロセス、または熱力学的に有利な他の変化を含む。「触媒的に活性な」ペプチド鎖の例には、ベータラクタマーゼまたはリソソーム酵素のような酵素、およびアロステリックエフェクターを含む。当業者は他のそのような触媒的に活性なペプチド鎖を認識している。
【0071】
用語「抗体のFcフラグメント」とは、プロテインAに結合するために十分な免疫グロブリン重鎖C2定常領域ペプチド鎖と免疫グロブリン重鎖C3定常領域ペプチド鎖の一部を含んでなるペプチド鎖を意味する。そのような定常領域ペプチド鎖は、IgGのような任意のアイソタイプの抗体重鎖に由来することができ、そして「Fcドメイン」(例えば図11を参照)または「Fcペプチド鎖」とも呼ぶことができる。抗体のFcフラグメントは、プロテインAに結合するために十分な免疫グロブリン重鎖C2定常領域ペプチド鎖と免疫グロブリン重鎖C3定常領域ペプチド鎖の両方を含んでなる各個のペプチド鎖(例えば単鎖抗体)、あるいは2つのそのような各個のペプチド鎖の結合体(例えば抗体もしくはミメティボディ)でよい。「抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖」は、例えばFcドメインを含んでなる抗体分子、Fcドメインを含んでなるFc融合ペプチド鎖およびFcドメインを含んでなるミメティボディペプチド鎖を含む分子種を表す(図11)。用語「抗体のFcフラグメント」とは、非集合(unaggregated)Fcペプチド鎖、集合(aggregated)Fcペプチド鎖、または集合および非集合Fcペプチド鎖の両方を記載するために使用することができる。
【0072】
用語「乳液」とは、1つの物質(分散相)がもう1つの物質(連続相)に分散されるように、少なくとも2つの非混和性物質の混合物を意味する。化合物は、乳液中に、典型的には分散相に存在する場合、「乳化されている」と言われる。
【0073】
本発明は、動物またはヒト患者へ鼻投与するために有用で、しかも許容され得る様々な配合を含んでなる液体の製薬学的組成物を提供する。そのような製薬学的組成物は、希釈剤として「標準状態」の水性バッファー、そして本発明の幾つかの観点では、プロピレングリコールまたはテトラヒドロフルフラニル−ポリエチレングリコールエーテルのような液体化合物を標準状態で使用して調製される。本発明の液体の製薬学的組成物は、当業者に周知な日常的方法を使用して調製することができる。例えば製薬学的組成物の水性バッファー成分が最初に提供され、続いて製薬学的組成物の他の成分の適切な質量または容量が「標準状態」で提供される。次いで触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖の所望量を加えることができる。最後に製薬学的組成物の容量を所望の最終容量に、希釈剤として水性バッファーを「標準状態」の条件下で使用して調整する。当業者は特許請求する製薬学的組成物の調製に適する多くの他の方法を認識し、そしてまた本発明の製薬学的組成物が粉末または凍結乾燥状態で調製できることも認識するだろう。
【0074】
本発明の製薬学的組成物および方法に使用するために適当な水性バッファーは、鼻投与のために生理学的に許容され得る。そのようなバッファーのpHは鼻投与のために生理学的に許容されなければならず、しかも触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖の中枢神経系への鼻送達と適合しなければならない。そのような水性バッファーのpHはpH4.0からpH8.0の間であり、約6.0から7.6のpHが好適である。リン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、フタル酸塩およびアミノ酸に基づく水性バッファー、例えばヒスチジンに基づくバッファーが生理学的に許容され得るバッファーの例である。「標準状態」でpH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)は、本発明の製薬学的組成物で使用するために適する水性バッファーの一例で
あり、そして好適な水性バッファーである。PBSは0.138MのNaCl、0.0027MのKClを含んでなり、pH7.4の「標準状態」である。当業者は特許請求する製薬学的組成物の調製、および本発明の方法での使用に適する他の水性バッファーを認識している。
【0075】
特許請求する製薬学的組成物は、水溶液または乳液のような懸濁液でよく、水容量の単位あたり示した質量または容量の各成分を含んでなるか、あるいは「標準状態で」示したpHを有する。本明細書で使用する用語「標準状態」は、25℃+/−2℃の温度および1気圧の圧力を意味する。用語「標準状態」は、当該技術分野では温度または圧力を一つの技術的に認識される組として示すために使用するのではなく、代わりに特定の組成を有する溶液または懸濁液が参照の「標準状態」の条件下であることを記載するために使用する温度および圧力を特定する参照状態である。これは溶液の容積が部分的に温度および圧力の関数となるからである。当業者は本明細書に開示するものと等価の製薬学的組成物が、他の温度および圧でも製造できると認識するだろう。そのような製薬学的組成物が本明細書に開示するものと等価であるかどうかは、上に定める「標準状態」条件下で測定すべきである(例えば25℃+/−2℃の温度および1気圧の圧力)。さらに本発明の製薬学的組成物は、100ml容量の製薬学的組成物あたりの所与の成分の標準状態での質量または容量で記載される。当業者は、これが単に本発明の製薬学的組成物の記載を容易にする一つの方法であり、特許請求の範囲をどのようにも限定しないと解釈すべきである(例えば100ml容量の製薬学的組成物に対して)。
【0076】
重要であるのは、本発明の製薬学的組成物が成分の質量を製薬学的組成物の単位容量あたり「約」の特定値(例えば「約1gのタウロウルソデオキシコール酸ナトリウム」)で含み、または「約」の特定値のpHを有することができる点である。製薬学的組成物中に存在する成分の質量または容量、またはpHの値は、製薬学的組成物中に存在する触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖が生物学的に活性であり、同時にそのようなペプチド鎖が製薬学的組成物中に存在するか、またはそのようなペプチド鎖が製薬学的組成物から取り出された後の(例えば希釈または送達により)、「約」の所与の数値である。別の言い方をすれば、成分の質量値、容量値またはpH値のような値は、製薬学的組成物中に単離した抗体を置いた後、触媒的に活性なペプチド鎖の触媒的活性、または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖の結合活性が維持され、そして検出可能である場合の、「約」の所与の数値である。
【0077】
あるいは成分の質量値、容量値またはpH値のような値は、値が所与の化合物調製物中の成分化合物の質量または容量による純度について補正されていない値、および所与の化合物調製物中の成分化合物の質量または容量による純度について補正された値を含む範囲内の値である時、「約」の所与数値となる。例えば所与の化合物調製物が、所与の成分化合物について質量により90%純度である場合、次の値は上記範囲内にあるので、値である「約」1gには0.9g、1gおよび1.1gを含む。これは多くの化合物調製物について、調製物中の所与の化合物の質量または容量による実際の純度は絶対的な確実性では分からず、代わりに使用するアッセイ技術の限界内で分かるだけであるという事実を反映している。さらにポリマーおよび水和物のような幾つかの化合物の異質(heterogenous)な性質により、調製物中のポリマーのような化合物の質量、または調製物の水和物の質量および化学的量論は変動性であるか、または定まらないので、化合物の質量による純度を記載することは難しいことが多い。
【0078】
最後に、ダルトンに基づく単位での分子量のような値は、ペプチド鎖の分子量を測定するためにSDS−PAGEのような技術を使用した場合、値が観察される標準偏差を含む範囲内にある時、「約」の所与数値である。例えばSDS−PAGEにより測定した時に
ペプチド鎖のダルトンでの平均分子量が(+/−)5,000のダルトンの標準偏差を持つ25,000ダルトンであるならば、この「約」25,000ダルトンという値は、20,000ダルトン;25,000ダルトン;および30,000ダルトンの範囲内のものである。
【0079】
本発明の一つの観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約0.1〜約1.0g,例えば0.5gのキトサングルタメートまたは対応する量の別のキトサン塩を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物である。本明細書の製薬学的組成物および方法において有用なキトサングルタメートのようなキトサン塩には、例えば50,000g/モル〜60,000g/モルの分子量を持つキトサンを含め、種々の分子量を持ち、そして約90%脱アシル化されたキトサンを含む。例えばキトサンクロライドのような他のキトサン塩、および当業者により認識される他のものも、本明細書の組成物および方法に使用することができる。
【0080】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約0.125g〜約1g、例えば約0.5g以下のn−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドおよびベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートからなる群から選択される化合物を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物である。
【0081】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約5ml〜約20ml、例えば約10ml〜約20mlのプロピレングリコールを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであり、そしてプロピレングリコールが標準状態である製薬学的組成物である。
【0082】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約1g〜約10g、例えば約5gのヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−ベータ−シクロデキストリンを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物である。
【0083】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約1g〜約5g、例えば約2gの1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであり、そして1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが水性バッファー中に乳化されている製薬学的組成物である。超音波のような乳化法、安定化表面活性剤等の使用は当該技術分野では周知であり、そして1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを乳液に含んでなる本発明の製薬学的組成物の調製に適切である。
【0084】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約01g〜約1g、例えば約1gのグリココール酸ナトリウム水和物、タウロコール酸ナトリウム塩水和物およびタウロウルソデオキシコール酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物である。当業者には容易に認識されるこれら化合物の他の塩も、本発明の組成物および方法に使用することができる。
【0085】
本発明の別の観点は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および100mlの製薬学的組成物あたり約1ml〜約10mlのテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであリ、そしてテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールが標準状態である製薬学的組成物である。
【0086】
本発明の製薬学的組成物の別の態様では、ペプチド鎖が配列番号2に示すアミノ酸配列を含んでなるメラノコルチン4レセプターに結合する抗体のFcフラグメントを含んでなる。そのような結合は、例えばELISA、ウエスタンブロット、BIACORE(商標)(GE Healthcare,Piscataway,NJ)装置に基づく技術等のような種々の周知技法によりアッセイすることができる。
【0087】
本発明の製薬学的組成物の別の態様では、抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が、配列番号3に示すアミノ酸配列を含んでなる。
【0088】
この製薬学的組成物の一態様では、水性バッファーが約pH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)である。
【0089】
B.鼻送達
用語「鼻腔」とは、動物の鼻内の空気が満たされる大きな空間を意味する。
【0090】
用語「中枢神経系」とは、脳および脊髄を含んでなる脊椎動物の神経系の部分を意味し、これに感覚インパルスが伝わり、そしてそこから運動インパルスが出て行き、そして中枢神経系が全神経系の活動を調和する。特に用語「中枢神経系」には、嗅球、左脳半球、右脳半球、小脳、および脳幹、ならびにそれらのサブ構造を含む。また頚部節、皮相および腋窩結節を含むことができる。
【0091】
用語「動物」とは、中枢神経系を有し、そして通常は空気を満たす鼻腔があり、そしてヒトを含む動物界のメンバーを意味する。
【0092】
ポリペプチドに連結された抗体または抗体フラグメントを含んでなる治療用組成物は、広範な方法により投与することができ、そして幾つかの例示的方法を以下に提供する。いったん鼻腔に導入されれば、融合ポリペプチドの吸収は鼻腔の1/3に見いだされる嗅覚上皮をわたる吸収を介して生じることができる。また吸収は、鼻腔の下部2/3で三叉神経が分布している鼻の呼吸上皮をわたっても生じることができる。また三叉神経は、結膜、口腔粘膜および顔面および頭の真皮の特定領域にも分布し、そしてこれら領域からも融合ペプチドの鼻内投与後の吸収が起こり得る。
【0093】
融合ポリペプチドの鼻内送達用の製剤の一例は、液体調製物、好ましくは鼻腔へ液滴として適用するために適する水性基材の調製物である。例えば点鼻薬は頭を後ろに十分に傾け、そして液滴を鼻に適用することにより鼻腔にたらすことができる。この液滴は鼻を介して吸入することもできる。
【0094】
あるいは液体調製物は、鼻腔を介して吸入するためにそれをエーロゾル化することができるような適切なデバイス中に配置してもよい。例えば治療薬はプラスチック製のビンの噴霧器に入れてもよい。一つの態様では、噴霧器は実質的な噴霧量を鼻腔の上1/3の領域または部分に向けることができるように有利に形成される。あるいはスプレーは噴霧器から、実質的な噴霧量が鼻の弁を通り、そして鼻腔の上1/3の領域または部分に向けることができるような方法で噴霧器から投与される。「実質的な噴霧量」とは、本明細書で
は少なくとも約50%、さらに少なくとも約70%、しかし好ましくは少なくとも約80%以上の噴霧が鼻の弁を通り、そして鼻腔の上部および遠位に向けられ、約10%以上が鼻腔の上部1/3に到達することを意味する。
【0095】
さらに液体調製物はエーロゾル化され、そして定量吸入器のような吸入器を介して適用することができる。好適なデバイスの一例は、Djupeslandへの米国特許第6,715,485号明細書に開示されているものであり、これには二方向の送達概念が関与する。このデバイスを使用して、封止ノズルを有するデバイスの先端が一方の外鼻孔に挿入され、そして患者または被験体がマウスピースに息を吹く。呼気の間、陽圧により軟口蓋が閉鎖し、これにより鼻腔と口腔とを分離する。閉鎖された軟口蓋と封止ノズルとの組み合わせにより気流が生じ、ここに薬剤粒子が放出され、一方の外鼻孔に進入し、連絡通路を介して180度曲がり、そして他方の鼻孔を通って出て行き、これにより二方向流が達成される。
【0096】
融合ポリペプチドは、当該技術分野で知られているように乾燥粉末状態で送達されることもできる。適切なデバイスの例は、DIRECTHALER(商標)ナザールという名前で販売されており、国際特許出願第96/222802号明細書に開示されている乾燥粉末の鼻送達デバイスである。またこのデバイスは、用量送達中に鼻腔と口腔との間の通路を閉じることもできる。乾燥もしくは液体調製物の送達用の別のデバイスは、OPTINOSE(商標)という登録名で販売されているデバイスである。
【0097】
本発明の一態様は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖を、動物の中枢神経系に送達する方法であり、この方法は触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖の、動物の中枢神経系への鼻内投与を強化するために十分な濃度の浸透強化剤を準備し;そして製薬学的組成物を動物の鼻腔に投与することを含んでなり;これにより触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖が動物の中枢神経系に入る。本発明の製薬学的組成物は、上で検討したように動物の鼻腔に点鼻薬、エーロゾル調製物等の状態で投与することができる。カニューレまたはDIRECTHALER(商標)もしくはOPTINOSE(商標)デバイスのような他のデバイスを本発明の方法に使用して、本発明の製薬学的組成物の分散および鼻送達を促進することができる。本発明の方法では、動物は齧歯類、霊長類、ヒトまたは鼻腔を有する他の動物であることができる。
【0098】
本発明の別の方法は、触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖を、動物の中枢神経系に送達する方法であり、この方法は、本発明の製薬学的組成物を準備し;そして動物の鼻腔に製薬学的組成物を投与することを含んでなり;これにより触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖が動物の中枢神経系に入る。
【0099】
本発明の別の態様は、抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖を、動物の中枢神経系に送達する方法であり、この方法は本発明の製薬学的組成物を準備し、ここで抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖は、配列番号2に示すアミノ酸配列を含んでなるメラノコルチン4レセプターに結合し;そして製薬学的組成物を動物の鼻腔に投与することを含んでなり;これにより抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が動物の中枢神経系に入る。
【0100】
本発明の別の態様は、抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖を、動物の中枢神経系に送達する方法であり、この方法は本発明の製薬学的組成物を準備し、ここで抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖は、配列番号3に示すアミノ酸配列を含んで
なり;そして製薬学的組成物を動物の鼻腔に投与することを含んでなり;これにより触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が動物の中枢神経系に入る。
【0101】
C.処置法
さらに別の観点では、処置法が提供される。処置法は、脳および/または脊髄のような中枢神経系への治療薬の投与により処置の影響を受け易い哺乳動物における障害を処置するために有利に使用され得る。すなわちこの障害は、症状が減少するか、またはそうではなく排除されるもの、障害の進行の速度が下がるもの、および/または中枢神経系へ作用する作用物質により排除される障害である。
【0102】
一つの態様では、この方法は哺乳動物の鼻腔、例えば上鼻甲介により占有される哺乳動物の鼻腔の領域または部分にある細胞および/または組織に、ポリペプチドに連結されているか、またはそうではなく結合された抗体フラグメントの治療に有効な量を投与することを含む。
【0103】
この方法は広範な障害を処置するために使用できる。適切な障害には、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病のような神経学的または神経変性障害、ならびに多発脳梗塞性痴呆、クロイツフェルト−ヤコブ病、レヴィ小体疾患、正常圧水頭症およびHIV痴呆のような当該技術分野で記憶喪失を引き起こすことが知られている他の障害;あるいは脳卒中、筋委縮性側索硬化症、重症筋無力症およびデュシェーヌジストロフィーのような運動の喪失;肥満、糖尿病および不眠を含む睡眠障害のような内分泌、代謝またはエネルギーバランス障害;多発性硬化症のような自己免疫障害;食欲不振および脳卒中または脊髄損傷に由来する急性損傷の処置を含む。
【0104】
一つの態様では、治療用組成物を哺乳動物の中枢神経系へ送達する方法には、組成物を哺乳動物に鼻内で、好ましくは上鼻甲介に位置する鼻腔の領域にある嗅覚および/または三叉神経終末、細胞および鼻上皮に投与することを含む。この領域または範囲は、限定するわけではないが典型的には鼻腔の上部1/3に位置する。
【0105】
この方法がそれにより有利な結果を達成するいかなる理論に限定するわけではないが、本明細書に記載する方法に従い鼻内に投与される作用物質は、細胞外または細胞内経路により脳に直接到達することができる。例えばThorne,R.G.et al.,Neuroscience,127:481−496(2004)を参照にされたい。細胞内経路には、嗅覚感覚ニューロンを介する輸送を含む。これには例えば吸収またはレセプター媒介型の嗅覚感覚ニューロンへのエンドサイトーシス、および続いて嗅球糸球体への輸送が関与し得る。別の例として、そのような輸送には、組成物が三叉神経節および尾側副核のような三叉神経脳幹核複合体(trigeminal brainstem nuclear complex)の一部に送達されるように三叉神経内の神経細胞内輸送が関与し得る。こうした細胞内経路では、治療薬は最初に鼻粘膜を介して輸送され得る。免疫グロブリンのFc部分(定常領域)を包含する抗体フラグメントは前述の経路の1つによってもまた送達され得るが、送達経路の1つは、機構に依存して嗅覚上皮を横断する組成物の輸送を助長もしくは妨げる新生児Fc受容体(FcRn)を有する鼻粘膜上皮中の細胞により取り込まれることを含むことができる。
【0106】
鼻腔を介する中枢神経系への組成物の進入の細胞外経路には、脳脊髄液への直接進入、細胞外空間および通路(channel)、鼻通路(nasal passage)を嗅球および吻側脳領域とつなぐ系を包含する末梢嗅覚系のような嗅覚系と関連する路(tract)もしくは区画を通るCNS実質中への進入;ならびに細胞外空間および通路、脳幹および脊髄と鼻通路をつなぐ系を包含する末梢三叉神経系のような三叉神経系と関連す
る路もしくは区画を通るCNS実質への進入(Thorne,R.G.et.al.,Neuroscience 127:481−496(2004))を包含する。本明細書で使用する直接輸送は、本明細書に記載する非全身経路の1もしくは複数を介する輸送を包む。
【0107】
本明細書に記載する機構の1もしくは複数による中枢神経系への組成物の直接輸送は、血液脳関門が迂回されることを可能にし、そして中枢神経系への作用物質の全身輸送を取り巻く関連する課題および欠点を克服する。加えて、本明細書に記載する方法により組成物を輸送することは、投与された用量のより大きな比率が中枢神経系の標的に達するので、使用される組成物をより少なくできる。処置される個体で内的に産生される作用物質を投与する場合、その生理学的効果は典型的には該内因性作用物質に匹敵する。
【0108】
治療に有効な量の治療用組成物が提供される。本明細書で使用するように、組成物の治療上有効な量は、特定の治療効果を達成するのに必要とされる組成物の量である。例えばこの量は、典型的には障害の進行の減少、障害の症状の重篤度の低下および/または障害の排除のような特定された、または所望の臨床エンドポイントに達するのに必要とされるものである。この量は、当該技術分野で既知である投与の時期、投与経路、処置の持続期間、使用する特定の組成物および患者の健康状態に依存して変動し得る。当業者は至適の投薬量を決定することが可能である。
【0109】
本明細書に記載する方法により組成物を鼻内投与することにより、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、経皮などを含む全身投与に比較して、より少量の組成物を投与しうることが実現される。本明細書に記載するように鼻内投与される場合に、所望の臨床エンドポイントもしくは治療効果を達成するのに必要とされる活性剤および/または組成物の量は、全身投与によりも少なくてよい。加えて、本明細書に記載する送達および処置方法で鼻内への組成物の投与に際して、同じ量の全身投与に比較して約5倍ないし約500倍、そしてさらに約10倍ないし約100倍少ない全身的曝露を得ることができる。さらに、同じ量の全身投与に比較して最低約5倍、さらに最低約10倍、好ましくは最低約20倍、そしてさらに最低約50倍少ない全身的曝露を得ることができる。組成物の治療的有効性の決定において、特定の障害について当該技術分野で既知の臨床エンドポイントをモニターすることができる。例えば、痴呆およびアルツハイマー病に関して適する臨床エンドポイントには、例えば、標準的方法により測定される記憶喪失、言語障害、混乱、情動不安および気分の揺れの低下;ならびに視覚情報を精神的に操作する能力の改善を含む。
【0110】
ハンチントン病の適する臨床エンドポイントは、制御されない動きの低下、および知的能力の改善もしくはさらなる低下が無いことを含む。
【0111】
パーキンソン病の適する臨床エンドポイントには、例えば、とりわけ身体が休息している場合の四肢の特徴的振戦(震え(trembling)すなわち震え(shaking))の低下、(動作緩慢を克服するのを助けるために)動きの増加、(無動を克服するのを助けるために)改善された動く能力、より少ない四肢の硬直性、ひきずり歩行の改善、および改善された姿勢(特徴的な前傾姿勢の是正)を含む。こうした臨床エンドポイントは標準的方法により観察することができる。他の適する臨床エンドポイントは、神経細胞変性の低下および/または神経細胞変性のさらなる低下のないことを含み、そして例えば、コンピュータ支援断層撮影(CAT)走査、磁気共鳴画像化法、または当該技術分野に既知の類似の方法を含む脳画像化技術により観察することができる。
【0112】
肥満の適する臨床エンドポイントには、例えば体重、体脂肪、食物摂取の低下、または痩せたボディマス、代謝速度の増加またはそれらの組合せを含む。
【0113】
不眠のような睡眠障害の適する臨床エンドポイントには、例えば、睡眠する能力の改善、そしてとりわけ改善されたレム(REM)睡眠を包含する。
【0114】
多発性硬化症のような自己免疫障害の適する臨床エンドポイントには、例えば、脳損傷の数の減少、増大した四肢の強さ、または四肢の振戦もしくは麻痺の低下を含む。脳損傷の数の減少は、本明細書で前に記載した脳画像化技術により観察できる。他の適する臨床エンドポイントには、例えば当該技術分野で既知の腰椎穿刺技術および脳脊髄液のその後の分析により決定されうる神経組織の炎症の低下を含む。
【0115】
卒中を経験した個体において、適する臨床エンドポイントは、当該技術分野で既知かつ例えばNabavi,D.G.et al.,Radiology 213:141−149(1999)に記載されるコンピュータ断層撮影法により測定される影響を受けた血管における血流の増大を含む。さらなる臨床エンドポイントには、顔面、腕もしくは脚のしびれの低下;または脳卒中と関連する頭痛の強度の低下を含む。さらに別の臨床エンドポイントには、脳卒中による細胞、組織もしくは器官の損傷または死亡の減少を含む。細胞もしくは組織の損傷のこうした減少は、本明細書で前述した脳画像化技術または当該技術分野に既知の類似方法により評価できる。
【0116】
統合失調症のような神経心理学的障害の適する臨床エンドポイントには、例えば異常行動の改善ならびに幻覚および/もしくは妄想の減少を包含する。
【0117】
本発明の方法により処置される患者または被験体は、典型的にはそのような方法による処置の影響を受けやすい特定の障害を有するものを含め、こうした処置が必要なものである。患者もしくは被験体は、典型的にはヒトのような哺乳動物であるが、他の哺乳動物もまた処置できる。
【実施例】
【0118】
今、特定の具体的説明の実施例を参照にする。またこの実施例は好ましい態様を具体的に説明するために提供されること、およびそれにより範囲を限定することを意図していないと理解されるべきである。加えて、本明細書で引用される全ての文書は当業者の水準を示し、そして引用により全部、編入される。
【実施例1】
【0119】
鼻内投与後のα−メラニン細胞刺激ホルモンミメティボディの脳分布
本実施例は、α−メラニン細胞刺激ホルモンミメティボディ(α−MSHミメティボディ)が本発明の方法により脳中の多様な領域に輸送され、そして鼻内投与から約25分後に検出され、同時に全身曝露を低下させたことを示す。本実施例は、さらに脳に送達されたα−MSHミメティボディが送達後最低5時間まで脳中に保持されることを示す。
【0120】
方法
特許請求する方法を具体的に説明するためのモデルおよび例示の治療用化合物として供するため、α−MSHミメティボディを調製した。α−MSHミメティボディは、本明細書で配列番号1として同定される治療用α−MSHポリペプチド、およびヒト免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体のFc部分よりなるホモ二量体の融合分子である。工作された融合ポリペプチドは組換えDNA法を使用して製造した。
【0121】
α−MSHミメティボディを、クロラミンT法を使用して、Amersham Biosciencesのヨウ素125カスタム標識サービスによりヨウ素化した。125I標識したα−MSHミメティボディは、コールドの担体としての未標識α−MSHミメティボディと一緒に、8匹の麻酔をかけたラット(Sprague Dawley、200〜
250g)に鼻内または静脈内投与した。鼻内薬物投与はドラフト中、鉛含浸シールドの後ろで実施した。各ラットを37℃の直腸プローブを伴う加熱パッド上に仰向けに置き;ラットの頭部を巻いた4x4ガーゼによりわずかに上げた。PBSに溶解した未標識ミメティボディに39μCiの125I標識α−MSHミメティボディを添加した。およそ13nmolすなわち0.8mgのα−MSHミメティボディを含有する総容量100μlを、麻酔をかけ、かつ仰向けに寝かせながら若齢オスラットに15〜20分間にわたり2分ごとに交互の鼻孔に10μlの点鼻で投与した。静脈内投与には、125I標識α−MSHミメティボディを総容量0.5ml(生理的食塩水で希釈した)中で尾静脈を介してボーラス注入として送達した。ラットに全用量(鼻内と均等)または鼻内用量の1/10(39μCiを含有する0.08mgすなわち1.3nmolのα−MSHミメティボディ)いずれかを投与した。血液サンプルを5分ごとに25分まで採血した。薬物投与を開始してから約27分または5時間後に、ラットを灌流して血液に運ばれる標識を除去し、そして固定した。
【0122】
CNSおよび末梢器官中の125I標識α−MSHミメティボディの分布を、ラットでの鼻内または静脈内送達後に評価した。脳、器官および末梢組織からの組織片を慎重に摘出し、重量測定し、そしてガンマ計数した。α−MSHミメティボディの濃度は、ガンマ計数(定量分析)または冠状脳切片のオートラジオグラフィー(定性分析)いずれかを使用して評価した。各組織片および血液中のナノモル濃度を、組織重量あたりのカウントの量および放射標識タンパク質の比活性に基づき決定した。
【0123】
結果
図1から分かるように、125I標識α−MSHミメティボディは、若齢オスラットへの鼻内送達後、投与後25分以内に多様なCNS組織中で検出できる。図1は、125I標識α−MSHミメティボディの大部分が鼻内送達から5時間後に保持されていることをさらに示し、α−MSHミメティボディの半減期が5時間以上であることを示唆する。125I標識α−MSHミメティボディが、α−MSHペプチド作用の標的部位である視床下部に達したことが、より具体的に分かる(視床下部ニューロンのMCR4への結合)。加えて、視床下部(3nMのミメティボディ)が鼻内送達で標的とされるが、全脳領域、特に脳髄質、橋および前頭皮質への有意の送達が存在する。
【0124】
表1では、鼻内および静脈内投与した125I標識α−MSHミメティボディの分布をさらに比較する。
【0125】
【表3】

【0126】
静脈内送達もまた視床下部を標的とする。しかしながら、静脈内投与での13.5より多い血液曝露(AUC)(表1ならびに図1および2を参照されたい)にもかかわらず、鼻内投与はより大きなCNS送達をもたらす。視床下部、前頭皮質および脳髄質へのペプチドの送達は、鼻内で静脈内投与よりそれぞれ7.5、6.5および18倍より高かった。
【0127】
表2は、ポリペプチドの組織濃度の様々な比を比較することにより、鼻内(i.n.)および静脈内(i.v.)送達の相対的有効性を示す。とりわけ、送達から25分後の血中ポリペプチド濃度に対する視床下部のポリペプチド濃度の比を、鼻内および静脈内送達の双方について表2に示す。送達から25分後の肝のポリペプチド濃度に対する視床下部のポリペプチド濃度の比もまた、鼻内および静脈内送達の双方について表2に示す。鼻内送達は、視床下部にポリペプチドを送達するのに、48および75倍の比により明示されるように、静脈内送達よりも有意により効果的であった。
【0128】
【表4】

【0129】
表1および図2中のデータは、125I標識α−MSHミメティボディの全身曝露が、鼻内投与した場合にも低かったことを示す。静脈内の1/10量の鼻内用量は、血液AUC(静脈内)/AUC(鼻内)比に基づき13.5倍より低い全身曝露、および鼻内投与された場合の肝のタンパク質濃度に対する静脈内投与された場合の肝のタンパク質濃度の比に基づき10.5倍より低い曝露をもたらした。さらに、ミメティボディの一貫した蓄積(17.1+/−μM)が、14動物全体で嗅覚上皮で生成され(上の表1を参照されたい)、また試験タンパク質の嗅覚経路および三叉神経路の濃度は鼻内投与に際して同様であり、該タンパク質が嗅覚経路および三叉神経路を介してCNSに移動することを示す。等しい鼻内および静脈内用量を比較すれば、全身曝露は、CNSおよび視床下部に送達されるほぼ等量のタンパク質で、血中AUC(i.v.)/AUC(i.n.)比に基づき約96倍より低かった。
【0130】
図3は、125I標識α−MSHミメティボディの中枢神経系への送達が血液により二次的とはなりそうにないことを示す。例えば、図3から分かるように、静脈内投与に比較して鼻内投与により10倍より高い投薬量の125I標識α−MSHミメティボディにラットが曝露される場合、鼻内投与により中枢神経系中の125I標識α−MSHミメティボディのより高い蓄積が存在した。
【0131】
図4A−4Dは、鼻内(図4A、4C)または静脈内(図4B、4D)での125I標
識α−MSHミメティボディの投与から25分後のラット脳の冠状切片のコンピュータ作成オートラジオグラフィーを示す。オートラジオグラフ中の色の暗い領域は高画像強度の領域に対応し、融合ポリペプチド送達の領域と相関する。鼻内で処置した動物に対応する図4A、4Cから分かるように、最高の画像強度は嗅索、視床下部および前頭皮質で観察された。これらの画像は定量的測定からの知見を確認する。
【実施例2】
【0132】
α−MSHの鼻内投与後の正常ラットを対象とした累積食物摂取の用量依存的減少
本実施例は、N−アセチル化α−メラニン細胞刺激ホルモン(Ac−Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH2、配列番号1、Phoenix Pharmaceuticals,INCにより供給される)の単一用量の鼻内投与が、用量依存性の薬力学的応答;特に累積食物摂取量の減少を達成するのに十分であり、24時間で6〜7nmolのED50であったことを示す。
【0133】
方法
2群(各9匹のラット)を集成した。交差デザインで、各週一方の群はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)賦形剤を投与し、そして他群はα−MSHペプチドを投与し;次週は各群に投与する処置を反転させた。試験前に、2週の馴化期間内に光周期をゆっくりと反転させた。ラットを各実験前24時間絶食させ(水は常に摂取可能であった)、そして暗周期(すなわち消灯期間)の開始30分前に麻酔を受けた。2.5から50nmolまでの範囲にわたる薬物の単回投与またはリン酸塩−生理食塩水緩衝化賦形剤対照を、実施例1に示される手順に準じて、麻酔の間に約20分にわたり鼻内投与した。ラットを加熱パット上に仰向けに置き、そしてそれらが活動性になるまで監視し、そしてその後予め重量測定した量の食物を含むそれらのケージに入れた。食物摂取量の測定を2、4、8、24、48および72時間に行った。水の摂取量および体重を投与から24および48時間後に測定した。
【0134】
結果および結論
図5から分かるように、鼻内α−MSHペプチドは、6〜7nmolのED50で、24時間に2.5〜25nmolの間で用量依存性に累積食物摂取量を減少させる。
【0135】
図6に示されるとおり、25〜50nmolの単回投与は累積食物摂取量パーセントの低下に最大に有効であった。25nmol用量で、累積食物消費量を2時間で30%まで、8時間で18%まで、および24時間で9%まで減少させた。水の消費量および体重は不変であった。本実験は、哺乳動物への鼻内投与後のポリペプチドの用量依存性の薬力学的効果を示す。
【実施例3】
【0136】
α−MSHミメティボディの鼻内投与後の正常ラットを対象とした累積食物摂取量の減少
本実施例は、25nmol(5mg/kg)のα−MSHミメティボディの単一用量の鼻内投与が、8および24時間に累積食物摂取量を有意に減少させるのに十分であることを示す。水の消費量および体重は不変であった。
【0137】
方法
使用した実験手順および方法は、実施例2に記載したものと同一であった。ラットの総数は14であった。
【0138】
結果および結論
図7に見られるとおり、25nmolの鼻内送達されるα−MSHミメティボディの単回投与は、48および72時間で減少に向かう統計学的に有意でない傾向を伴い、8および24時間に累積食物摂取量の減少に対する有意の効果を有した。後の時点での有意性は、この実験で使用した動物が比較的少数(n=14)であったため失なわれたようであった。この実験は、α−MSHミメティボディのような62kDaの巨大タンパク質が、鼻投与経路を介してCNSに送達され得ることを示す。
【0139】
多数の例示的観点および態様を上で考察したが、当業者はそれらのある種の改変、置換、付加およびサブコンビネーションを認識するであろう。従って以下の添付する請求の範囲および今後導入される請求の範囲は、全部このような改変、置換、追加およびサブコンビネーションを、それらの真の精神および範囲内にあるように包含すると解釈されることを意図している。
【実施例4】
【0140】
5(容量/容量)%のテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールまたは1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物を含んでなる製剤の鼻投与は、中枢神経系組織への抗体フラグメントの送達を増加する
ホモ サピエンス(Homo sapiens)由来の抗体Fcフラグメント(hFc)の中枢神経系(CNS)組織への鼻投与は、5(容量/容量)%のテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールまたは1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物のいずれかをhFc製剤に包含することにより、対照と比べて増加した(図8)。
【0141】
ラットのモデルを脳への鼻内薬剤送達を評価するために使用した。オスのSprague−Dawleyラットは、hFcを含んでなる液体製剤の鼻投与を容易にするために、動物の体重1kgあたり40mgのペントバルビタールナトリウム(NEMBUTAL(商標))を腹腔投与(i.p.)することにより、または3.0%のイソフルラン吸入により麻酔をかけた。麻酔をかけたラットは、Thorne and Frey(Thorne et al,127 Neuroscience 481(2004))に記載されているように、仰向けにし、そして評価のために首枕で支え、この状態で60μLの液体製剤を滴下様式で各動物の鼻孔に交互に2分間毎に滴下した。加熱パットを使用して麻酔をかけた動物の体温を維持した。
【0142】
hFc製剤の鼻投与開始から25分後、動物にはプロテアーゼインヒビター(10mlのPBSあたり1個のプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤/Roche)および5nM EDTA四ナトリウム塩を含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を心穿刺を介して潅流した。脳および他の組織を切開し、そしてhFc含量の分析用に集めた。血液は実験前に集め、これは典型的にはhFc製剤の鼻投与の1日前、および潅流の開始前であった。組織はプロテアーゼインヒビター(10mlのPBSあたり1個のプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤/Roche)、5nM EDTA四ナトリウム塩および1(容量/容量)%のTween20を含有するホモジネーションバッファーでホモジネートした。次いでホモジネートした組織サンプルまたは血液を遠心し、そしてhFcアッセイに上清を集めた。hFc濃度は、組織ホモジネートおよび血漿サンプルについて、ホモ サピエンス(Homo sapiens)のIgG1アイソタイプの抗体Fc鎖に特異的な標準ELISAアッセイを使用して測定した。
【0143】
hFcは、IgG1アイソタイプのFcフラグメントを含んでなるホモ サピエンス(Homo sapiens)の抗体フラグメントであり、そして52,862Dalの分子量を有し、そして真核細胞により発現された後に標準的技術を使用して精製された。
【0144】
対照hFc製剤は、pH7.4のPBS中に30mg/mlのhFcを含んでなった。
hFc製剤を含んでなるテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールは、pH7.4のPBSバッファー中5%(容量/容量;例えば100mlのPBSバッファーに希釈された5mlのテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコール)のテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールおよび30mg/mlのhFcを含んだ。hFc製剤を含んでなるグリココール酸ナトリウム水和物は、pH7.4のPBSバッファー中1%(重量/容量;例えば100mlのPBSバッファー希釈物中に1gの純度97%のグリココール酸ナトリウム水和物)のグリココール酸ナトリウム水和物および30mg/mlのhFcを含んだ。
【0145】
本明細書で報告するパーセント(重量/容量)およびパーセント(容量/容量)値は、製剤中の所与の化合物の質量または容量による純度について、補正されていない。例えば97%純度のスクロース調製物から作成された100mlの1(重量/容量)%スクロース溶液は、0.97グラムのスクロースしか100ml中に含まない。これは多くの化合物調製物について、調製物中、所与の化合物の質量または容量による実際の純度は絶対的な確実性では分からず、代わりに使用するアッセイ技術の限界内で分かるだけであるという事実を反映している。さらにポリマーおよび水和物といったある種の化合物の異質性により、調製物中のポリマーのような化合物の質量、または調製物中の水和物の質量および化学量論的量は、変動し、すなわち定まらないので、化合物の純度を質量により記載することは難しいことが多い。
【0146】
グリココール酸ナトリウム水和物は、Sigma−Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)から供給され、そして質量による97%より高い純度を有した(表3)。「グリココール酸ナトリウム」は、略称または図面で使用する名であり、そして表では「グリココール酸ナトリウム水和物」を指す。
【0147】
テトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールはAlchymars SpA(ミラノ、イタリア)から供給された(表3)。「グリコフロール」は、略称または図面で使用する名であり、そして表では「テトラヒドロフルフリルポリエチレングリコール」を指す。
【0148】
図8から分かるように、5(容量/容量)%のテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールまたは1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物を含んでなるhFc製剤の、イソフルランで麻酔をかけた動物への鼻投与は、イソフルランで麻酔をかけ対照hFcを受けた動物よりも高いCNS組織中でのhFc濃度を生じた。
【0149】
図8では、「グリココール酸ナトリウム」を「グリココール酸ナトリウム水和物」を示すために使用し、そして「グリコフロール」を「テトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコール」を示すために使用する。図8で使用する略号は以下の通り:「イソ=イソフルラン」;「ペント=ペントバルビタール」;OB=嗅球;LH=左脳半球;RH=右脳半球;CB=小脳;BS=脳幹;TN=三叉神経。誤差棒は与えたデータ組に関する標準偏差を表す。平均値は必要に応じて尺度外の棒の上に示す。各群の動物数は図8に示す通りである。
【実施例5】
【0150】
1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物を含んでなる製剤の鼻投与は、生物学的に活性な高分子量酵素の中枢神経系組織への送達を可能にする
生物学的に活性な高分子量酵素の中枢神経系(CNS)組織への鼻投与が達成された(図9)。図9に示すように、32,000Daのベータラクタマーゼ酵素のCNS組織への送達は、1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物を、この酵素を含んでなる鼻に投与する製剤に包含させることにより、対照と比べて増加した(図9)。
【0151】
ベータ−ラクタマーゼ酵素を含んでなる製剤は、上記実施例4に記載する方法を使用して麻酔をかけたラットに鼻から投与された:60μLの製剤が投与された。組織および血漿サンプルも実施例4に記載のように調製された。ベータ−ラクタマーゼ酵素の活性および濃度は、組織ホモジネートおよび血漿サンプル中で標準的な蛍光基質に基づくアッセイ技術を使用して測定した。
【0152】
ベータ−ラクタマーゼは、ベータ−ラクタム環を含有する特定の抗生物質(例えばペニシリン)のベータ−ラクタム環を加水分解する酵素である。ベータ−ラクタマーゼは約32,000Daの分子量を有する。
【0153】
対照ベータ−ラクタマーゼ製剤は、pH7.4のPBS中に20mg/mlのベータ−ラクタマーゼを含んでなった。ベータ−ラクタマーゼ製剤を含んでなるグリココール酸ナトリウム水和物は、1%(重量/容量;例えば100mlのPBSバッファー希釈剤中に1gの97%純度のグリココール酸ナトリウム水和物)のグリココール酸ナトリウム水和物、またはpH7.4のPBSバッファー中に0.1%のグリココール酸ナトリウム水和物および20mg/mlのベータ−ラクタマーゼのいずれかを含んだ。本明細書で報告するパーセント(重量/容量)およびパーセント(容量/容量)値は、製剤中の所与の化合物の質量または容量による純度について、補正されていない。
【0154】
グリココール酸ナトリウム水和物は、Sigma(セントルイス、ミズーリ州)から供給され、そして質量による97%より高い純度を有した(表3)。「グリココール酸ナトリウム」は、略称または図面で使用する名であり、そして表では「グリココール酸ナトリウム水和物」を指す。
【0155】
図9から分かるように、生物学的に活性な高分子量酵素の中枢神経系(CNS)組織への鼻投与が達成された。さらに0.1〜1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物を含んでなるベータ−ラクタマーゼ製剤の、イソフルランで麻酔をかけた動物への鼻投与は、PBS中に対照のベータ−ラクタマーゼ製剤のみを受容したイソフルランで麻酔をかけた動物よりも高いCNS組織中のベータ−ラクタマーゼ濃度を生じた。
【0156】
図9で使用する略号および化合物名は、上記実施例4で図8に記載するものと同じである。誤差棒は与えたデータの組に関する標準偏差を示す。平均値は図9で必要に応じて尺度外の棒の上に示す。統計分析に使用するP値を図9に示す。各群の動物数は図9に示すとおりである。
【実施例6】
【0157】
0.125(重量/容量)%〜0.5(重量/容量)%のn−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、またはベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートを含んでなる製剤の鼻投与は、中枢神経系組織への抗体フラグメント送達を増加する
ホモ サピエンス(Homo sapiens)由来の抗体Fcフラグメント(hFc)の中枢神経系(CNS)組織への鼻投与は、0.125(重量/容量)%〜0.5(重量/容量)%のn−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、またはベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートをhFc製剤に包含させることにより、対照と比べて増加した(図10)。
【0158】
ラットのモデルを脳への鼻内薬剤送達を評価するために使用した。オスのSpragu
e−Dawleyラットは、hFcを含んでなる液体製剤の鼻投与を容易にするために、3.0%のイソフルラン吸入により麻酔をかけた。麻酔をかけたラットは、仰向けにし、そしてそれらの首および頭部を台で支えて、それらの頭を45゜の角度に上げた。次いでマイクロ−カニューレを動物の右鼻孔に1cm挿入し、そして液体製剤の50μlのボーラスを1分間のスパンで投与した。加熱パットを使用して麻酔をかけた動物の体温を維持した。
【0159】
hFc製剤の鼻投与から20分後、動物にはプロテアーゼインヒビター(10mlのPBSあたり1個のRocheプロテアーゼインヒビターカクテル錠剤)および5nM EDTA四ナトリウム塩を含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を心穿刺を介して潅流した。次いで脳、血液および他の組織を切開し、集め、そして上記実施例4に記載したようにhFc含量について分析した。
【0160】
対照hFc製剤は、pH7.4のPBS中に36mg/mlのhFcを含んでなった。hFc製剤を含んでなるn−デシル−ベータ−D−マルトピラノシドは、pH7.4のPBSバッファー中に0.125(重量/容量)%〜0.5(重量/容量)%のデシル−ベータ−D−マルトピラノシドおよび36mg/mlのhFcを含んだ。hFc製剤を含んでなるn−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシドは、pH7.4のPBSバッファー中に0.125(重量/容量)%〜0.5(重量/容量)%のn−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシドおよび36mg/mlのhFcを含んだ。hFc製剤を含んでなるn−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドは、pH7.4のPBSバッファー中に0.125(重量/容量)%〜0.5(重量/容量)%のn−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドおよび36mg/mlのhFcを含んだ。hFc製剤を含んでなるベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートは、pH7.4のPBSバッファー中に0.125(重量/容量)%〜0.5(重量/容量)%のベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートおよび36mg/mlのhFcを含んだ。本明細書で報告するパーセント(重量/容量)およびパーセント(容量/容量)値は、製剤中の所与の化合物の質量または容量による純度について、補正されていない。
【0161】
n−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド(表3)はAegis Therapeutics.LLC(サンディエゴ、カリフォルニア州)から得た。n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシドはInalco SpA(ミラノ、イタリア)から得、そして質量により99%より高い純度を有した(表3)。n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドは、Inalco SpA(ミラノ、イタリア)から得、そして質量により99%より高い純度を有した。ベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートはAnatrace,Inc.(マウミー、オハイオ州)から得、そして質量により98.90%より高い純度を有した。
【0162】
図10から分かるように、0.125(重量/容量)%〜0.5(重量/容量)%のn−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、1−O−n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドまたはベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートを含んでなるhFc製剤の、イソフルランで麻酔をかけた動物への鼻投与は、イソフルランで麻酔をかけて対照hFc製剤を受けた動物よりも高いCNS組織中でのhFc濃度を生じた。
【0163】
図10において、“A1”表記はn−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド製剤について使用する。“A3”はn−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド製剤に使用する。“A5”はn−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドについて使用する。“B3”はベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエー
ト製剤について使用する。その他、図10で使用する略号および命名は、上記実施例4の図8で使用するものと同じである。誤差棒は与えたデータの組に関する標準偏差を示す。平均値は図10で必要に応じて尺度外の棒の上に示す。各群の動物数は図10に示す。
【実施例7】
【0164】
中枢神経系組織への抗体フラグメントの送達を増す製剤の鼻投与
ホモ サピエンス(Homo sapiens)由来の抗体Fcフラグメント(hFc)の中枢神経系(CNS)組織への鼻投与は、以下の表3に列挙する化合物をhFc製剤中に包含させることにより、対照hFc製剤に比べて増大した。
【0165】
【表5】

【0166】
上記表3で確認される化合物を含んでなる製剤を、上記実施例6に記載した方法を使用して麻酔をかけたラットに鼻から投与し;各製剤の50μLボーラスを投与した。動物は上記実施例6に記載したように潅流された。次いで脳、血液および他の組織を切開し、集め、そして上記実施例4に記載したようにhFc含量について分析した。
【0167】
対照のhFc製剤はpH7.4のPBS中に36mg/mlのhFcを含んでなった。上記表3に記載する製剤は、それぞれ確認される化合物調製物を表に示した量で含んだ。化合物調製物中の化合物の質量による純度およびそれらの供給元は、上記表Aにに示した通りである。本明細書で報告するパーセント(重量/容量)およびパーセント(容量/容量)値は、製剤中の所与の化合物の質量または容量による純度について、補正されていない。製剤は希釈剤としてpH7.4のPBSを使用して作成され、そして最終濃度36mg/mlのhFcを含んだ。
【0168】
表4から分かるように、0.5(重量/容量)%のキトサングルタメート、0.5(重量/容量)%のn−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、0.5(重量/容量)%のn−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド、10%〜20(容量/容量)%のプロピレングリコール、0.5(重量/容量)%のヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−ベータ−シクロデキストリン、2(重量/容量)%の1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1(重量/容量)%のグリココール酸ナトリウム水和物;1(重量/容量)%のタウロコール酸ナトリウム塩水和物、または1(重量/容量)%のタウロウルソデオキシコール酸ナトリウムを含んでなるhFc製剤の、イソフルランで麻酔をかけた動物への鼻投与は、イソフルランで麻酔をかけ、PBS中の対照hFc製剤のみを受容した動物よりもCNS組織中のhFc濃度が増加した。平均の増加倍数値および各実験群中の動物数を表3に示す。
【0169】
本発明は、今、完全に記載され、当業者が添付する請求の範囲の範囲および精神から逸脱することなく、本発明に対する変更および修飾を行うことができることは明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および
b)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖の、動物の中枢神経系への鼻内投与を強化するために十分な濃度の浸透強化剤
を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項2】
触媒的に活性なペプチド鎖が酵素である請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項3】
抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖が完全な抗体である、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項4】
抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖がミメティボディである請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項5】
液体状態の請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項6】
粉末または凍結乾燥状態の請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項7】
a)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および
b)100mlの製薬学的組成物あたり約0.1〜約1gのキトサングルタメートまたは対応する量の別のキトサン塩を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物。
【請求項8】
100mlの製薬学的組成物あたり約0.5gのキトサングルタメートを含んでなる請求項7に記載の製薬学的組成物。
【請求項9】
a)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および
b)100mlの製薬学的組成物あたり約0.125g〜約1.0gの1−O−n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、1−O−n−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド、1−O−n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドおよびベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートからなる群から選択される化合物を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物。
【請求項10】
100mlの製薬学的組成物あたり約0.125g〜約0.5gの1−O−n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド、1−O−n−デシル−ベータ−D−マルトピラノシド、1−O−n−テトラデシル−ベータ−D−マルトピラノシドおよびベータ−D−フルクトピラノシル−アルファ−グルコピラノシドモノドデカノエートからなる群から選択される化合物を含んでなる請求項9に記載の製薬学的組成物。
【請求項11】
a)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および
b)100mlの製薬学的組成物あたり約5ml〜約20mlのプロピレングリコールを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであり、そしてプロピレングリコールが標準状態である製薬学的組成物。
【請求項12】
100mlの製薬学的組成物あたり約10ml〜約20mlのプロピレングリコールを含んでなる請求項11に記載の製薬学的組成物。
【請求項13】
a)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および
b)100mlの製薬学的組成物あたり約1g〜約10gのヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−ベータ−シクロデキストリンを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物。
【請求項14】
100mlの製薬学的組成物あたり約5gのヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル)−ベータ−シクロデキストリンを含んでなる請求項13に記載の製薬学的組成物。
【請求項15】
a)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および
b)100mlの製薬学的組成物あたり約1g〜約5gの1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであり、そして1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが水性バッファー中に乳化されている製薬学的組成物。
【請求項16】
100mlの製薬学的組成物あたり約2gの1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであり、そして1,2−ジデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンが水性バッファー中に乳化されている、請求項15に記載の製薬学的組成物。
【請求項17】
a)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および
b)100mlの製薬学的組成物あたり約0.1g〜約1gのグリココール酸ナトリウム水和物、タウロコール酸ナトリウム塩水和物およびタウロウルソデオキシコール酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである製薬学的組成物。
【請求項18】
100mlの製薬学的組成物あたり約1gのグリココール酸ナトリウム水和物、タウロコール酸ナトリウム塩水和物およびタウロウルソデオキシコール酸ナトリウムからなる群から選択される化合物を含んでなり、ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーである、請求項17に記載の製薬学的組成物。
【請求項19】
a)触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖;および
b)100mlの製薬学的組成物あたり約1ml〜約10mlのテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールを含んでなり;ここで希釈剤が標準状態の水性バッファーであリ、そしてテトラヒドロフルフリル−ポリエチレングリコールが標準状態である製薬学的組成物。
【請求項20】
抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が、配列番号2に示すアミノ酸配列を含んでなるメラノコルチン4レセプターに結合する、請求項1、7、9、11、13、15、17または19に記載の製薬学的組成物。
【請求項21】
抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が、配列番号3に示すアミノ酸配列を含んでなる請求項1、7、9、11、13、15、17または19に記載の製薬学的組成
物。
【請求項22】
触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖の、動物の中枢神経系への送達法であって:
a)請求項1、7、9、11、13、15、17または19に記載の製薬学的組成物を準備し;そして
b)製薬学的組成物を動物の鼻腔に投与し、これにより触媒的に活性なペプチド鎖または抗体のFcもしくはFabフラグメントを含んでなるペプチド鎖が動物の中枢神経系へ入る、上記方法。
【請求項23】
抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖の、動物の中枢神経系への送達法であって:
a)請求項1、7、9、11、13、15、17または19に記載の製薬学的組成物を準備し、ここで抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が、配列番号2に示すアミノ酸配列を含んでなるメラノコルチン4レセプターに結合し;そして
b)製薬学的組成物を動物の鼻腔に投与し、これにより抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が動物の中枢神経系へ入る、上記方法。
【請求項24】
抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖の、動物の中枢神経系への送達法であって:
a)請求項1、7、9、11、13、15、17または19に記載の製薬学的組成物を準備し、ここで抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が、配列番号3に示すアミノ酸配列を含んでなり;そして
b)製薬学的組成物を動物の鼻腔に投与し、これにより抗体のFcフラグメントを含んでなるペプチド鎖が動物の中枢神経系へ入る、上記方法。

【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−502164(P2011−502164A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532233(P2010−532233)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/081722
【国際公開番号】WO2009/058957
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】