説明

活性化ハロ含有アラルキルシラン

本発明は、ケイ素原子へと結合した少なくとも一つの加水分解基および炭素原子へと結合した少なくとも一つのハロ官能基を持ち、ケイ素原子および芳香族基の両方が共有結合している活性化ハロ含有アラルキルシランに関する。本発明はまた、そのようなシランを作製するプロセスならびにそれのゴム組成物での使用およびそのようなゴム組成物を含有するタイヤのような物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は活性化ハロ含有アラルキルシランおよびその調製に関する。本開示はまた、そのようなシランを含有するゴム組成物およびそれらから作製されるタイヤのような物品に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり抵抗の減少のためおよび乗用車タイヤの濡れた路面での静止摩擦を向上させるための、シリカ/シラン充填剤システムの使用は当分野に周知である。転がり抵抗の減少およびそれゆえのより少ない燃料の消費はまた、トラックタイヤにおける強い関心事である。しかしながら、トラックトレッド化合物のような配合を含有する天然ゴム(NR)におけるカーボンブラック充填剤に取って代わるシリカの使用は、貧弱な耐摩耗性のために限定される。現在では、トラックタイヤトレッドは、最大の強化および優れた摩耗への抵抗性のために高度に強化されるカーボンブラックを用いる。トラック用途におけるカーボンブラックのシリカへの置換は、天然ゴムのポリマー鎖へのシリカの効果的でないカップリングによって阻まれる。
【0003】
ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィトのようなポリ硫化アルコキシシラン、および3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシランのようなブロック化メルカプト官能性シランは、現在では、タイヤのためのゴム組成物、特にスチレンブタジエンゴムもしくはブタジエンゴムを含有するそれらの組成物において、もっとも効果的でそしてもっとも広く使われるカップリング剤であるとみなされている。しかしながら、シリカ充填され、硫黄含有シランによってカップリングされた加硫物の強化効果および耐摩耗性は、高含量の天然ゴムを含有する配合物中のカーボンブラックの取り替えを正当化するには不十分である。
【0004】
非硫黄の、ハロ官能性シランの使用は、同時係属の出願、すなわち米国特許出願番号11/703969および11/981371に開示される。これらの開示は、特に天然ゴムにおいて充填剤とポリマーとのカップリングを向上させるための活性化二重結合の使用に焦点を当てる。ハロ官能性シランは、強化指数、60℃でのtanδのような力学的特性、高含量の天然ゴムを含有するシリカ充填剤入りゴム組成物の耐摩耗性を向上させることが見出された。残念な事にこれらのハロ官能性シランは、低コストで高い収量の製造が困難である中間体であるハロメチルスチレンもしくはその誘導体のヒドロシリル化に依存しているため、未だに容易に利用可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々なゴムもしくは接着剤、封止剤、コート剤、グラスファイバーサイズ剤および充填剤処理などの他の用途での使用にハロ含有シランを用いる事は望ましい。次に必要なのは、ハロメチルスチレン中間体をその製造において使用しないので容易に製造できるハロシランである。本発明はその必要性に対し解決をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施態様は、ケイ素原子に結合した少なくとも一つの加水分解性基および炭素原子に結合した少なくとも一つのハロ官能性基を持ち、芳香族基およびケイ素原子の両方が共有結合している活性化ハロ含有アラルキルシランに関する。
【0007】
本発明のハロ含有アラルキルシランは一般構造式(1):
Si−C(R2−a(Z)−G−(CR3−c−Z (1)
であり、
ここで、
は、Cl−、Br−、I−、RO―、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる群より選択される加水分解性部分であり、ここでそれぞれのRは独立して、水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
それぞれのXおよびXは独立して、XおよびR基から選択され、ここでそれぞれのRは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは、1から10個の炭素原子と、そして任意選択で酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
およびZの各々は独立して、F−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択されるハロゲン原子であり;
Gは、式(2):
(−)1+b5−b (2)
の一価のもしくは多価の芳香族炭化水素基であり、
ここで、6個の炭素原子は芳香族環構造の部分であり、Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子を含有し;
Rの各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは1から30個の炭素原子を含有し;そして
a、bおよびcは整数であり、そしてaが1、bが0から5、そしてcは1から3である。
【0008】
本発明の他の実施態様は、(a)構造式(1)で式中aが1である、少なくとも一つのハロ含有アルキルシラン;および(b)構造式(1)で式中aが0である少なくとも一つのシランを含有する組成物に関する。
【0009】
本発明の他の実施態様は、ハロ含有アラルキルシランの調製プロセスに関する。プロセスは、
(a)ヒドリドシラン(i)を炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)とアルファ選択性ヒドロシリル化触媒(iii)の存在下で反応させ、アラルキルシラン(iv)を提供するステップ;
(b)ステップ(a)の反応産物を塩素(v)と、任意選択で塩素化触媒(vi)の存在下で反応させ、ハロ含有アラルキルシランを得るステップ;
(c)任意選択で、ステップ(b)の反応産物とX1−H(vii)〔式中、XはCl−、Br−、I−、RO−、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる加水分解性基から選択され、ここで、Rは、独立して、水素、直鎖、環状もしくは分岐の、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で酸素よび硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有する〕と反応させるステップ
のステップを含有する。
【0010】
本発明のさらに他の実施態様は:
(a)少なくとも一つのゴム成分;
(b)少なくとも一つの充填剤;
(c)任意選択で少なくとも一つの活性化剤;および
(d)式(1)のハロ含有アラルキルシラン
を含有する、ゴム組成物に関する。一実施態様において、充填剤(b)はシラン反応性である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハロ含有アラルキルシランは、非限定的な例としてタイヤのような、硬化される物品において使用されるゴム組成物に対し向上した性能をもたらす。加えて、それらのシランは、アラルキルシランの直接の塩素化を含むプロセスによって高収量で作製される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特に他に指示の無い限り、すべての重量パーセントは、ここでのゴム組成物の全重量パーセントに基づくものであることは理解されよう。
【0013】
ここで列挙される任意の数値範囲は、その範囲中のすべてのサブ範囲(sub−range)とそのような範囲および/もしくはサブ範囲のさまざまな終点の任意の組み合わせとを含むことは理解されよう。
【0014】
本発明の一実施態様によると、ケイ素原子に結合した少なくとも一つの加水分解性基および炭素原子に結合した少なくとも一つのハロ官能性基を持ち、芳香族基およびケイ素原子の両方が共有結合しているハロ含有アラルキルシランが提供される。
【0015】
ハロ含有アラルキルシランは一般構造式(1):
Si−C(R2−a(Z)−G−(CR3−c−Z (1)
であり、
ここで、
は、Cl−、Br−、I−、RO―、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる群より選択される加水分解性部分であり、ここでそれぞれのRは独立して、水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
それぞれのXおよびXは独立して、XおよびR基から選択され、ここでそれぞれのRは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは、1から10個の炭素原子と、そして任意選択で酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
およびZの各々は独立して、F−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択されるハロゲン原子であり;
Gは、式(2):
(−)1+b5−b (2)
の一価のもしくは多価の芳香族炭化水素基であり、
ここで、6個の炭素原子は芳香族環構造の部分であり、Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子を含有し;
Rの各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは1から30個の炭素原子を含有し;そして
a、bおよびcは整数であり、そしてaが1、bが0から5、そしてcは1から3である。
【0016】
式(1)のシランと関連するとき、「アルキル」は、直鎖、分岐、および環状のアルキル基を含み;「アルケニル」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する任意の直鎖、分岐、もしくは環状のアルケニル基であって、ここで置換の位置が炭素−炭素二重結合もしくは基内のどこかのいずれでもあり得るものを含み;「アルキニル」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素三重結合を含有する、任意の直鎖、分岐のもしくは環状のアルキニル基であって、ここで置換の位置が炭素−炭素三重結合もしくは基内のどこかのいずれでもあり得るものを含み;「アリール」は、そこから一つの水素原子が取り除かれた任意の芳香族炭化水素の非限定的な群を含み;「アラルキル」は、その中で一つもしくはそれ以上の水素原子が同じ数の類似のおよび/もしくは異なった(ここで定義されるような)アリール置換基によって置換されている、上述のアルキル基の任意のものを含むがそれらには限定されない。アルキルの具体的な非限定的例はメチル、エチル、プロピルおよびイソブチルを含むがそれらには限定されない。アルケニルの具体的な非限定的例はビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、およびエチリデンノルボルネニルを含むがそれらには限定されない。アリールの具体的な非限定的例は、トリル、キシリル、フェニル、およびナフタレニルを含むがそれらには限定されない。アラルキルの具体的な非限定的例は、ベンジルおよびフェネチルを含むがそれらには限定されない。
【0017】
一般式(1)のXは、加水分解性基である。Xのいくつかの非限定的な代表例は、非限定的な例のメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、フェノキシおよびベンジルオキシのようなアルコキシ基;ヒドロキシ基;非限定的な例のクロロ、ブロモおよびイオドのようなハロ基;非限定的な例のメチルエチルオキシマト、フェニルメチルオキシマトおよびジメチルオキシマトのようなオキシマト基;非限定的な例のジメチルアミンオキシ、ジエチルアミンオキシおよびメチルフェニルアミンオキシのようなアミンオキシ基;ならびに非限定的な例のフォルミルオキシ、アセトキシおよびプロパノイルオキシのようなアシルオキシ基を含む。
【0018】
式(1)のXおよびXのいくつかの代表的な非限定的な例は、上にXのために列挙された代表例、ならびに水素、非限定的な例のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチルおよびシクロヘキシルのようなアルキル基;ブチル、ヘキシル、オクチル、ラウリルおよびオクタデシルのような高級直鎖アルキル;非限定的な例のビニル、アリル、メタリルおよび3−ブテニルのようなアルケニル基;非限定的な例のフェニルおよびトリルのようなアリール基;そして、非限定的な例のベンジルおよびフェネチルのようなアラルキル基を含む。
【0019】
式(1)のそれぞれのZおよびZは独立して、ハロゲン原子、F−、Cl−、Br−およびI−であってよい。一実施態様において、ZおよびZはハロゲン原子Cl−である。
【0020】
式(1)のRは水素;好ましくは30個までの炭素原子、より好ましくは10個までの炭素原子、さらにより好ましくは6個までの炭素原子、そしてもっとも好ましくは3個の炭素原子の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基;一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する直鎖、分岐もしくは環状のアルケニル基で、ここで置換の位置が炭素−炭素二重結合もしくは基内のどこかのいずれでもあり得、そして、アルケニル基は、好ましくは30個までの炭素原子、より好ましくは10個までの炭素原子、さらにより好ましくは6個までの炭素原子、そしてもっとも好ましくは3個の炭素原子を含有し;または、好ましくは30個までの炭素原子、より好ましくは20個までの炭素原子、さらにより好ましくは12個までの炭素原子、そしてもっとも好ましくは8個までの炭素原子を含有するアリール基であってよい。
【0021】
Rの代表的で非限定的な例は、非限定的な例のメチル、エチル、プロピルおよびイソブチルのようなアルキル基;非限定的な例のビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルのようなアルケニル基;非限定的な例のフェニルおよびナフタレニルのようなアリール基;ならびに非限定的な例のベンジルおよびフェネチルのようなアラルキル基を含む。「環状アルキル」および「環状アルケニル」のいくつかの代表例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシルおよびシクロドデカトリエニルを含むが、それらには限定されない。
【0022】
式(1)のRは水素;好ましくは10個までの炭素原子と、より好ましくは6個までの炭素原子と、さらにより好ましくは3個までの炭素原子と、そしてもっとも好ましくは1個の炭素原子と、任意選択で酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子との直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基;一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する直鎖、分岐もしくは環状のアルケニル基であり、ここで置換の位置が炭素−炭素二重結合もしくは基内のどこかのいずれでもあり得、そして、アルケニル基が好ましくは10個までの炭素原子、より好ましくは6個までの炭素原子、そしてさらにより好ましくは3個までの炭素原子を含有し;または、好ましくは10個までの炭素原子、そしてより好ましくは8個までの炭素原子、そしてさらにより好ましくは6個までの炭素原子を含有するアリール基であってよい。
【0023】
の代表的な非限定的例は、非限定的な例のメチル、エチル、プロピル、3−クロロプロピル、3−オキサブチル、2−およびイソブチルのようなアルキル基;非限定的な例のビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルのようなアルケニル基;非限定的な例のフェニルおよびナフタレニルのようなアリール基;ならびに非限定的な例のベンジルおよびフェネチルのようなアラルキル基を含む。「環状アルキル」および「環状アルケニル」のいくつかの代表例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニルおよびシクロヘキシルシクロヘキシルを含むが、それらには限定されない。
【0024】
式(1)のRは、水素;好ましくは18個までの炭素原子、より好ましくは10個までの炭素原子、さらにより好ましくは3個までの炭素原子そしてもっとも好ましくは2個の炭素原子の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基;一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する任意の直鎖、分岐、もしくは環状のアルケニル基であって、ここで置換の位置が炭素−炭素二重結合もしくは基内のどこかのいずれでもあり得、そしてアルケニル基が好ましくは18個までの炭素原子、より好ましくは6個までの炭素原子そしてさらにより好ましくは3個までの炭素原子を含有し;好ましくは10個までの炭素原子、そしてより好ましくは8個までの炭素原子、そしてさらにより好ましくは6個の炭素原子を含有するアリール基であってよい。
【0025】
の代表的な非限定的例は、非限定的な例のメチル、エチル、プロピルおよびイソブチルのようなアルキル基;非限定的な例のビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルのようなアルケニル基;非限定的な例のフェニルおよびナフタレニルのようなアリール基;ならびに非限定的な例のベンジルおよびフェネチルのようなアラルキル基を含む。「環状アルキル」および「環状アルケニル」のいくつかの代表例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニルおよびシクロヘキシルを含むが、それらには限定されない。
【0026】
式(1)のRは、水素;好ましくは18個までの炭素原子、より好ましくは10個までの炭素原子、さらにより好ましくは3個までの炭素原子そしてもっとも好ましくは1個の炭素原子の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基;一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する任意の直鎖、分岐、もしくは環状のアルケニル基であって、ここで置換の位置が炭素−炭素二重結合もしくは基内のどこかのいずれでもあり得、そしてアルケニル基が好ましくは18個までの炭素原子、より好ましくは6個までの炭素原子そしてさらにより好ましくは3個までの炭素原子を含有し;好ましくは10個までの炭素原子、そしてより好ましくは8個までの炭素原子、そしてさらにより好ましくは6個の炭素原子を含有するアリール基であってよい。
【0027】
の代表的な非限定的例は、非限定的な例のメチル、エチル、プロピルおよびイソブチルのようなアルキル基;非限定的な例のビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルのようなアルケニル基;非限定的な例のフェニルおよびナフタレニルのようなアリール基;ならびに非限定的な例のベンジルおよびフェネチルのようなアラルキル基を含む。「環状アルキル」および「環状アルケニル」のいくつかの代表例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニルおよびシクロヘキシルを含むが、それらには限定されない。
【0028】
式(1)のRは、水素;好ましくは18個までの炭素原子、より好ましくは10個までの炭素原子、さらにより好ましくは3個までの炭素原子そしてもっとも好ましくは2個の炭素原子の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基;一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有する任意の直鎖、分岐、もしくは環状のアルケニル基であって、ここで置換の位置が炭素−炭素二重結合もしくは基内のどこかのいずれでもあり得、そしてアルケニル基が好ましくは18個までの炭素原子、より好ましくは6個までの炭素原子そしてさらにより好ましくは3個までの炭素原子を含有し;好ましくは10個までの炭素原子、そしてより好ましくは8個までの炭素原子、そしてさらにより好ましくは6個の炭素原子を含有するアリール基であってよい。
【0029】
の代表的な非限定的例は、非限定的な例のメチル、エチル、プロピルおよびイソブチルのようなアルキル基;非限定的な例のビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルのようなアルケニル基;非限定的な例のフェニルおよびナフタレニルのようなアリール基;ならびに非限定的な例のベンジルおよびフェネチルのようなアラルキル基を含む。「環状アルキル」および「環状アルケニル」のいくつかの代表例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニルおよびシクロヘキシルを含むが、それらには限定されない。
【0030】
Gは、環状構造に配置された6個の炭素原子およびb+1価を含有する一価の、二価のもしくは多価の芳香族基である。Gの代表例は、1,4−フェニレニル、1,3−フェニレニル、1,2−フェニレニル、3−メチル−1,4−フェニレニル、2−メチル−1,4−フェニレニル、2,3,5−トリメチル−1,4−フェニレニル、3−ブチル−1,4−フェニレニルおよび3−エチル−1,4−フェニレニルを含む。
【0031】
一実施態様において、ハロ含有アルキルシランは式(1)であり、ここでRはメチル、エチルもしくはプロピルであり;Rはメチル、エチルもしくはプロピルであり、そしてより好ましくはエチルであり;Rはメチルであり;Rは水素もしくはメチルであり;X1はエトキシであり;XおよびXはエトキシもしくはメチルであり、そしてより好ましくはエトキシであり;aは1であり;bは0もしくは1であり、そしてcは1から3である。実例として式(1)の活性化ハロ含有アラルキルシランにおいて、aが1であり、bが1であり、そしてcが1である。
【0032】
活性化ハロ含有アラルキルシランの代表的な非限定的例は、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−ジエトキシ−メチル−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−エトキシ−ジメチル−シラン、[1−ブロモ−1−(4−ブロモメチル−フェニル)−エチル]−ジエトキシ−メチル−シラン、[1−ブロモ−(4−ブロモメチル−フェニル)−エチル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−メチル−フェニル)−エチル]−ジエトキシ−メチル−シラン、[1−クロロ−1−(4−メチル−フェニル)−エチル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−プロピル]−ジエトキシ−メチル−シラン、{1−クロロ−1−[4−(1−クロロ−エチル)−フェニル]−プロピル}−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−ジクロロメチル−フェニル)−プロピル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−トリクロロメチル−フェニル)−プロピル]−ジエトキシ−メチル−シラン、[1−クロロ−1−(4−トリクロロメチル−フェニル)−プロピル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−トリメトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−トリプロポキシ−シラン、およびクロロ−[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−プロピル]−ジメチル−シランを含む。
【0033】
本発明によるハロ含有アラルキルシランの混合物は、充填剤入りエラストマー(例えばゴム)、コーティング剤、接着剤、封止剤、グラスファイバーサイズ剤などへの添加剤として有用である。混合物は、アラルキルシラン中間体の異なる場所に起こるとき、すなわち、aが1でありかつbが0であるか、またはaが0でありかつbが1であるとき、ならびにハロゲン化が1回以上起こるとき、すなわち、aが1であり、cが1から3であり、かつbが1から5であるときに、ハロゲン化の結果生じる。ハロ含有アラルキルシランが一つ以上の活性化ハロ官能基を持つので、これらの混合物は有利である。
【0034】
本発明の一実施態様において、(a)少なくとも一つの式Iでaが1である活性化ハロ含有アラルキルシラン;および(b)少なくとも一つの式Iでaが0である活性化ハロ含有シラン、を含有する組成物が提供される。
【0035】
本発明の他の実施態様は、ハロ含有アラルキルシランの部分加水分解物に関する。これらの加水分解物は、活性化ハロ含有アラルキルシランが大気中の湿気へと曝される時に生じる。部分加水分解物は、湿気が加水分解性X−Si基と、X−Si基の全モル量の50モルパーセント未満の度合いで、より好ましくは20モルパーセント未満で、そしてもっとも好ましくは5モルパーセント未満で反応し、SiOHもしくはSi−O−Si結合を生じる時にもたらされる。反応は、製造および/もしくは保管、または加水分解および縮合反応が起きるように水を敢えて添加した結果として、活性化ハロ含有アラルキルシランが大気の湿気へと曝されることによって起こる。
【0036】
本発明の他の実施態様は、ハロ含有アラルキルシランを調製するプロセスに関する。プロセスは、
(a)一般式(3):
HSiX (3)
〔式中、XはF−、Cl−、Br−およびI−からなる加水分解性基より選択され、それぞれのXおよびXは独立してXおよびR基より選択され、ここでそれぞれのRは、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、任意選択で酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有する〕
のヒドリドシランを、一般式(4):
C=C(R)−C5−b(CR (4)
〔式中、Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から30個の炭素原子を含有し;Rは水素、アルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキルからなる群より選択され、水素以外のRは1から10個の炭素原子を含有し;Rの各々は水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より独立して選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは1から18個の炭素原子を含有し;それぞれのRおよびRは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキルからなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRおよびRは、1から9個の炭素原子を含有し;そしてbが0から5の整数である〕
の炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)と、有効量のアルファ選択性ヒドロシリル化触媒の(iii)存在下で、式(5):
Si−C(R−C5−b−(CR (5)
のアラルキルシランを提供するステップ;
(b)ステップ(a)の反応産物をハロゲン(iv)と、任意選択で有効量のハロゲン化触媒(v)の存在下で反応させ、式(6):
Si−C(R2−a(Z)−G−(CR3−c−Z (6)
〔式中、ZおよびZの各々は独立して、F−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択されるハロゲン原子であり;Gは式(2):
(−)1+b5−b (2)
の一価もしくは多価の芳香族炭化水素基であり、ここで6個の炭素原子は芳香族環構造の部分であり、Rの各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは1から18個の炭素原子を含有し;そしてaおよびcは整数であり、aが0もしくは1であり、bが0から5であり、そしてcが1から3であり、ただし、a+bが1と等しいかもしくはそれよりも大きい〕
のハロ含有アラルキルシランを得るステップ;そして
(c)任意選択でステップ(b)のハロ含有アラルキルシランをX−H
〔式中、XはCl−、Br−、I−、RO−、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる加水分解性基より選択され、ここでそれぞれのRは独立して水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、任意選択で酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有する〕
と反応させて、式(1)のハロ含有アラルキルシランをもたらすステップ
のステップを含有する。
【0037】
他の実施態様において、ハロ含有アラルキルシランは、
(a)式(7):
ZCR−C5−b(CR (7)
〔式中、Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは1から30個の炭素原子を含有し;Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは1から10個の炭素原子を含有し;Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは1から18個の炭素原子を含有し;Zは塩素、臭素およびヨウ素からなる群より選択されるハロゲンであり;そしてbは0から5の整数である〕
のハロ含有アラルカン化合物を、マグネシウム、カルシウム、チタン、鉄、コバルト、ニッケルおよび亜鉛からなる群より選択される活性金属Mと、任意選択で溶媒の存在下において反応させ、式(8)
ZMCR−C5−b(CR (8)
の化合物を提供するステップ;
(b)ステップ(a)の反応産物を一般式(3):
HSiX (3)
〔XはF−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択される加水分解性部分であり;それぞれのXおよびXは独立してXおよびR基より選択され、ここでそれぞれのRは、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、任意選択で酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有する〕
のヒドリドシラン(i)と反応させ、式(5):
Si−C(R−C5−b−(CR (5)
のアラルキルシランを提供するステップ;
(c)ステップ(b)の反応産物をハロゲン(iv)と、任意選択で有効量のハロゲン化触媒の存在下において反応させ、式(6):
Si−C(R2−a(Z)−G−(CR3−c−Z (6)
〔式中、ZおよびZの各々は独立して、F−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択されるハロゲン原子であり;Gは式(2):
(−)1+b5−b (2)
の一価もしくは多価の芳香族炭化水素基であり、ここで6個の炭素原子は芳香族環構造の部分であり、Rの各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは1から18個の炭素原子を含有し;そしてa、bおよびcは整数であり、aが0もしくは1であり、bが0から5であり、そしてcが1から3であり、ただし、a+bが1と等しいかもしくはそれよりも大きい〕
のハロ含有アラルキルシランを得るステップ;そして
(d) 任意選択でステップ(c)のハロ含有アラルキルシランをX−H
〔式中、XはCl−、Br−、I−、RO−、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる加水分解性基より選択され、ここでそれぞれのRは独立して水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、任意選択で酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有する〕
と反応させて、式(1)のハロ含有アラルキルシランをもたらすステップ
のステップを含有するプロセスによって作製できる。このプロセスはRが水素であるとき、特に有用である。
【0038】
ヒドリドシラン(i)の代表的な非限定的例は、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリブロモシラン、メチルジブロモシラン、フルオロジメチルシラン、エチルジクロロシラン、フェニルジクロロシランおよびイソプロピルジクロロシランを含む。
【0039】
炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)の代表的な非限定的例は、1−メチル−4−ビニル−ベンゼン、1,2−ジメチル−4−ビニルベンゼン、1−イソプロペニル−4−メチル−ベンゼン、1−メチル−4−プロペニル−ベンゼン、1−エチル−4−(1−メチル−プロペニル)−ベンゼン、1−メチル−2−ビニル−ベンゼン、2,4−ジメチル−1−ビニル−ベンゼンおよびメチル−4−スチリル−ベンゼンを含む。
【0040】
アルファ選択性ヒドロシリル化触媒(iii)は、シリル基の、炭素−炭素二重結合基の部分であり、そして(−)1+b5−bへと結合し、アルファ炭素と呼ばれる炭素原子への付加と、水素の、炭素−炭素二重結合基の部分であり、ベータ炭素と呼ばれる他の炭素原子への付加とを促進する。アルファ選択性ヒドロシリル化触媒(iii)は、ベータ炭素より優先してヒドリドシランのアルファ炭素への付加を促進する。好ましくはアルファ炭素へと結合するシリル基対ベータ炭素へと結合するシリル基の比率は、1.1:1と1:0の間であり、より好ましくは10:1と1:0の間であり、そしてもっとも好ましくは20:1と1:0の間である。
【0041】
アルファ選択性ヒドロシリル化触媒(iii)は金属錯体を含み、不均一であっても均一であっても良い。ヒドロシリル化触媒のリストは、たとえばB. Marciniec編集「Comprehensive Handbook of Hydrosilylation」(Pergamon Press、New York)1992に与えられ、参照によりすべての内容が組み入れられる。好ましいアルファ選択性ヒドロシリル化触媒(iii)は、パラジウムの錯体である。参照によりその全ての内容をここに組み入れられる、Ojima I.によって著作され、Patai SとRappoport Z.とによって編集される「The Chemistry of Organic Silicon Compounds」(John Wiley Chichester)1989の第25章に開示されるように、パラジウムに触媒されるスチレン誘導体のヒドロシリル化は通常、π−ベンジルパラジウム中間体の関与によって、α異性体もしくは1−アリール−1−シリルエタンを作製する位置選択性を伴って進行する。
【0042】
触媒(iii)の代表的な非限定的例は、塩化アリルパラジウム(II)ダイマー、トリフロロ酢酸アリルパラジウム(II)ダイマー、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタール1,5−ジエン)パラジウム(II)、ジアセトビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジシアノビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ[ビス(1,2−ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジイオドビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ベンジルクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ベンジルブロモビス(トリフェニルホスフィンパラジウム(II)、ベンジルイオドビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)および(シクロフェニル)クロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を含む。
【0043】
α選択性ヒドロシリル化触媒(iii)の有効量は、炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)に基づいて約0.001重量パーセントから2重量パーセントの触媒(iii)、好ましくは炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)に基づいて約0.01重量パーセントから1重量パーセントの触媒(iii)、そしてより好ましくは炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)に基づいて約0.1重量パーセントから0.5重量パーセント触媒(iii)である。好ましくは、α選択性ヒドロシリル化触媒(iii)が炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)に添加され、そしてヒドリドシラン(i)がこの混合物に添加される。アルファ選択性ヒドロシリル化触媒(iii)は一度に全て添加されても良く、または反応の過程中に部分として添加されても良い。
【0044】
ヒドロシリル化反応は室温で実施できるし、または高温下でも実施でき、そして大気圧以下、大気圧もしくは大気圧以上において実施できる。好ましい温度範囲は、室温(約20℃)から250℃であり、好ましくは60℃から180℃であり、そしてより好ましくは70から130℃である。好ましい圧は大気圧から50メガパスカルまでであり、そしてより好ましくは大気圧から10メガパスカルまでである。反応は、例えば、アルカン、芳香族溶媒、ハロゲン化溶媒、エーテル、エステルなどのような非プロトン性の溶媒の非存在下もしくは存在下において実施され得る。代表的な溶媒はヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフサ、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、エチルアセタートなどを含む。
【0045】
有用なハロゲン(iv)は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。例示的に、塩素が用いられるハロゲンである。ハロゲンの量は、所望のハロゲン化の量に依存する。反応物の量は、アラルキルシランのモル当たり約0.5モルから約10モルのハロゲンであり、好ましくはアラルキルシランのモル当たり約1.0モルから約3モルのハロゲンであり、そしてもっとも好ましくはアラルキルシランのモル当たり約1.1モルから2.0モルのハロゲンである。反応は大気圧以下、大気圧もしくは大気圧以上で実施でき、そして−40℃から200℃、好ましくは20℃から100℃、そしてもっとも好ましくは30℃から60℃の範囲である。典型的に反応は溶媒の非存在下において実施される。しかしながら、もし望むなら、溶媒は、例えばハロゲン化溶媒、芳香族溶媒などのように、ハロゲンの反応に対して不活性であるべきである。
【0046】
ハロゲン化触媒(v)はハロゲンとアラルキルシランとの反応を、シリル基を含有するアルファ炭素および/もしくは−CR基のアルファ炭素からの水素の引抜を触媒し、それによって、ハロゲンをそれらの位置へと化学結合するさらなる反応をもたらす事によって促進する。ハロゲン化触媒(v)は、触媒が強ルイス酸であるときに起こり得るような芳香族環の塩素化を促進するべきではない。典型的なハロゲン化触媒(v)はペルオキシドおよびリンのハライドである。ハロゲン化触媒(v)の量は、アラルキルシラン中間体の重量に基づいて約0.01重量パーセントから約10重量パーセント、好ましくは、アラルキルシラン中間体の重量に基づいて約0.1重量パーセントから約5重量パーセント、そしてもっとも好ましくは、アラルキルシラン中間体の重量に基づいて1重量パーセントから約3重量パーセントである。
【0047】
ハロゲン化触媒(v)の代表的な非限定的例は、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバラート、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサノアート、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−ブチルペロキシベンゾアート、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルオキシアセタート、terr−ブチルペルオキシベンゾアート、ジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ(tert−ブチル−ペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−3,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3およびジ−tert−ブチルペルオキシド、五塩化リン、三塩化リンなどを含む。好ましいハロゲン化触媒(v)は五塩化リンおよび三塩化リンを含む。
【0048】
ステップ(b)の活性化ハロ含有アラルキルシランはさらにX−H化合物と反応してもよい。この反応はエステル化反応と呼ばれる。SiX基を含有するステップ(b)の活性化ハロ含有アラルキルシランを、SiXを含有する活性化ハロ含有アラルキルシランへと転換するため、反応は望まれる。ステップ(b)の活性化ハロ含有アラルキルシランが湿気に曝されるとき、それは毒性でありそして腐食性であるX−Hを発生する。好ましいX−H化合物は、RO−H、R(=O)O−H、RC=NO−HおよびRNO−H〔式中、それぞれのRは独立して水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で酸素よび硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有する〕からなる群より選択される。
【0049】
ステップ(c)で用いられるX−Hの量は、典型的にはSi−Xの量に基づいた化学量論的な量かもしくは過剰量においてである。好ましくは、X−Hの量は、SiXのモル当たり約1.0モルから約10モルのX−Hであり、そしてより好ましくはSiXのモル当たり約1.5モルから5モルのX−Hである。過剰の試薬X−Hは反応を完遂するよう推進する。
【0050】
反応は、周囲温度以下、周囲温度もしくは高温において、そして大気圧以下、大気圧もしくは大気圧以上において実施できる。X−HがRO−Hであるとき、X−Hはその分解を触媒し、水を生じるような、望まれない副反応が起きる。それゆえ、X−Hが生じると除去するために、反応を高温下で、大気圧以下もしくは大気圧において実施する事が望ましい。好ましくは、反応は室温(約20℃)から150℃で、そして約66.7Pa(0.5torr)から1大気圧の範囲の圧で、そしてより好ましくは約50℃から100度でかつ266.6Pa(2torr)から66.7kPa(500torr)で実施される。一般に溶媒が望まれるなら過剰のX−Hを使用できる。
【0051】
本発明の他の実施態様は、活性化ハロ含有アラルキルシランを含有するゴム組成物に関する。ゴム組成物は:
(a)少なくとも一つのゴム成分;
(b)少なくとも一つの充填剤;
(c)任意選択で、少なくとも一つの活性化剤;
(d)一般構造式(1):
Si−C(R2−a(Z)−G−(CR3−c−Z (1)
〔式中、Xは、Cl−、Br−、I−、RO―、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる群より選択される加水分解性部分であり、ここでそれぞれのRは独立して、水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
それぞれのXおよびXは独立して、XおよびR基から選択され、ここでそれぞれのRは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは、1から10個の炭素原子を含有し;
およびZの各々は独立して、F−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択されるハロゲン原子であり;
Gは、式(2):
(−)1+b5−b (2)
の一価のもしくは多価の芳香族炭化水素基であり、
ここで、6個の炭素原子は芳香族環構造の部分であり、Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子を含有し;
Rの各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは1から30個の炭素原子を含有し;そして
a、bおよびcは整数であり、そしてaが1、bが0から5、そしてcは1から3である〕
の少なくとも一つのハロ含有アラルキルシラン
を含有する。
【0052】
成分(a)、(b)、任意選択で(c)、そして(d)を混合するステップを含有する上述のゴム組成物を調製するプロセスがここで提供される。
【0053】
本発明のゴム組成物は、任意選択でシラン反応性充填剤(b)を疎水化し分散を助ける一つもしくはそれ以上の加水分解性オルガノシランを含有できる。これらの加水分解性オルガノシランは少なくとも一つのアルキル基を含有し、好ましくは3から18個の炭素原子、そしてより好ましくは約6から10個の炭素原子を含有し、そして少なくとも一つのRO−加水分解性基を含有し、ここでRは水素もしくは1から10個の炭素原子のアルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキルである。これらの加水分解性オルガノシランは、例えば、好ましくは約0.5から約10phrの量で、そしてより好ましくは約1から約5phrの量で使用できる。
【0054】
ここでのゴム組成物は、成分(a)、(b)、任意選択で(c)、そして(d)の混合物および/もしくは反応産物を含有する。
【0055】
ここでのさらなる実施態様において、ゴム組成物中において、シラン(d)は充填剤(b)へとある官能性を介して結合し、そしてゴム成分(a)(例えばジエンポリマー)へと他の官能性を介して結合する。
【0056】
一実施態様において、ゴム成分(a)とシラン(d)との間のカップリング反応を促進するように、少なくとも一つの活性化剤(c)をゴム配合プロセスにおいて用いても良い。活性化剤は遷移金属塩の中から選択できる。遷移金属塩は、一般式(1)のシラン上のZおよびZ基の除去を助ける化合物であり、金属オキシド、金属ハライド、金属カルボキシラート、金属ヒドロキシドおよび他の好適な金属錯体を含む。代表的で非限定的な遷移金属塩の例は、亜鉛オキシド、アルミニウムオキシドおよびチタンオキシドのような金属オキシド;亜鉛クロリド、亜鉛ブロミド、ヨウ化亜鉛、アルミニウムクロリド、アルミニウムブロミド、チタンクロリド、チタンブロミドおよびスズクロリドのような金属ハライド;そして亜鉛ステアラート、亜鉛アセタートおよびスズオクタノアートのような金属カルボキシラートを含む。
【0057】
一実施態様において、ゴム成分(a)は、少なくとも一つのジエン系エラストマーおよびゴムからなる群より選択される有機ポリマーであってよい。ここでの一実施態様において、ゴム成分(a)は当分野に周知されているものの任意のものであってよく、それらの多くはR.F.Ohm編集、「The Vanderbilt Rubber Handbook」、R.T.Vanderbilt Company, Inc.、Norwalk、CT、1990年、およびT.Kempermann、S.Koch、J.Sumner編集、「Manual For The Rubber Industry」、BayerAG、Leverkusen、Germany、1993年に記載され、参照により両方のすべての内容は組み入れられる。さらに他のさらなる実施態様において、好適なゴム成分(a)(有機ポリマー)の代表的な非限定的例は、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンの様々なコポリマー、イソプレンの様々なコポリマーおよびそれらのエラストマーの混合物;液体スチレン−ブタジエンゴム(SSBR)、エマルションスチレン−ブタジエンゴム(ESBR)、エチレン−プロピレンターポリマー(EPDM)およびアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)を含む。
【0058】
ここでの一実施態様において、ゴム成分(a)は少なくとも一つのジエン系エラストマーもしくはゴムからなる。ゴム成分(a)は少なくとも一つのジエン系エラストマーもしくはゴムからなる。さらにより具体的な実施態様において、ゴムの調製に適切なモノマーは、非限定的な例としてイソプレンおよび1,3−ブタジエンのような共役ジエン;そして非限定的な例としてスチレンおよびアルファメチルスチレンのような適切なビニル芳香族化合物;そしてそれらの組み合わせである。より具体的な実施態様において、ゴム成分(a)は硫黄硬化性ゴムである。さらなる実施態様において、ジエン系エラストマーもしくはゴムは、非限定的な例として、シス−1,4−ポリイソプレンゴム(天然および/もしくは合成)、そして好ましくは天然ゴム、エマルション重合で調製されたスチレン/ブタジエン共重合体ゴム、有機溶液重合で調製されたスチレン/ブタジエンゴム、3,4−ポリイソプレンゴム、イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエン三元重合体ゴム、シス−1,4−ポリブタジエン、中含量ビニルポリブタジエンゴム(35から50パーセントのビニル)、高含量ビニルポリブタジエンゴム(50から75パーセントのビニル)、スチレン/イソプレン共重合体、エマルション重合で調製されたスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル三元重合体ゴム、ならびにブタジエン/アクリロニトリル共重合体ゴムの少なくとも一つから選択してよい。エマルション重合により誘導されたスチレン/ブタジエン(ESBR)は、約20から約29パーセントの結合スチレンという比較的低含量から中含量のスチレン含有量を有するESBRが、または用途によっては、中程度から比較的高い結合スチレン含有量、すなわち30から45パーセントの結合スチレン含有量を有するESBRが、ここでの使用にジエン系ゴムとみなされる。さらに具体的な実施態様において、三元重合体において約2から約40重量パーセントの結合アクリロニトリルを含含有する、エマルション重合で調製されたスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル三元重合体ゴムも、ここでの使用のためのジエン系ゴムとみなされる。
【0059】
ここでの他の実施態様において、溶液重合で調製されたSBR(SSBR)は典型的には、好ましくは約5から約50、より好ましくは約9から約36、そして最も好ましくは約20から約30の重量パーセントの結合スチレンの範囲の結合スチレン含有量を有する。より具体的な実施態様において、ポリブタジエンエラストマーは、例えば少なくとも約90重量パーセントのシス−1,4−含有量を有することによって好都合に特徴づけられ得る。
【0060】
ここでのさらに他の実施態様において、ゴム成分(a)はアルコキシシラン誘導体によって官能化されるかもしくは修飾される、ジエンポリマーである。従って、シラン官能化有機溶液重合調製のスチレン−ブタジエンゴムおよびシラン官能性の有機溶液重合調製の1,4−ポリブタジエンゴムが用いられ得る。これらのゴム組成物は公知であり、例えば、米国特許第5,821,290号を参照できる。
【0061】
ここでのさらに他の実施態様において、ゴム成分(a)は、スズ誘導体によって官能化されるかもしくは修飾されるジエンポリマーである。スチレンおよびブタジエンのスズ結合のコポリマーは、例えば、有機溶媒溶液におけるスチレンおよび1,3−ブタジエンモノマー共重合化反応の間に、通常は重合化反応の最後もしくは最後近くにおいて、スズカップリング剤を導入することによって調製できる。そのようなスズ結合スチレン−ブタジエンゴムは当分野に周知であり、例えば米国特許第5,268,439号を参照できる。実施において、少なくとも約50パーセント、そしてより好ましくは約60から約85パーセントのスズが、スチレンブタジエンゴムのブタジエン単位へと結合し、スズジエニル結合を作り出す。
【0062】
さらにもっと他の実施態様において、ゴム成分(a)は、天然ゴムおよび合成ポリイソプレンからなる群より選択される。
【0063】
一実施態様において、本発明のゴム組成物および/もしくは充填剤/シラン組成物の充填剤(b)(以下、単純に「充填剤(b)」と呼ぶ)はシラン反応性充填剤である。「シラン反応性充填剤」という表現は、シラン(d)と反応して安定なSi−O−充填剤結合を形成できる物質を意味すると理解されるべきである。シラン反応性充填剤は、ゴム成分(a)に添加され、エラストマーネットワークを強化する物質を含む。強化充填剤は、そのモジュラスがゴム組成物のゴム成分(a)よりも高く、ゴム成分が歪められたときにゴム成分(a)から応力を吸収できる物質である。一実施態様において、シラン反応性充填剤(b)は線維、微粒子およびシート状構造を含み、無機鉱物、シリカート、シリカ、粘土、セラミック、カーボン、有機ポリマーおよび珪藻土からなる。一実施態様において、シラン反応性充填剤(b)は、個別の粒子または凝集体および/もしくは集塊の形の粒子の群であり得る。シラン反応性充填剤(b)は、シラン(d)と反応しない他の充填剤と混合できる。これらの充填剤はゴム成分(a)を引き伸ばすか、またはエラストマーネットワークを強化するのに用いられ得る。いくつかの代表的で非限定的なシラン反応性充填剤(b)の例は、シリカ(焼成および/もしくは沈降)、二酸化チタン、アルミノシリカート、アルミナならびに、粘土及び滑石のようなシリカ含有物質のような金属オキシドを含む。ここでの具体的な実施態様において、微粒子沈降シリカがシランと関連して用いられる。一実施態様においてシラン反応性充填剤(b)は、単独で用いられるかもしくは一つもしくはそれ以上の他の充填剤と用いられるシリカである。他の具体的な実施態様において、一つの非限定的な実施態様では、シリカとカーボンブラックとの組み合わせは、タイヤのトレッドの非限定的例を含む様々なゴム製品に対する強化充填剤としてのように用いられる。他の実施態様において、アルミナは単独でもしくはシリカと組み合わせて用いられ得る。用語「アルミナ」は、ここでは酸化アルミニウムまたはAlを指す。さらに具体的な実施態様において、充填剤は水和されていても、無水の形でもよい。ゴム組成物中でアルミナを使用することは公知であり、例えば米国特許第5,116,886号および欧州特許第631982号を参照できる。
【0064】
ここで用いるとき、用語「担体」は、高い吸着または吸収の能力を有し、その自由流動性および乾性を維持する一方で、約75パーセントの液体のシランを担持することができる、多孔性もしくは大表面積の、充填剤もしくは有機ポリマーを意味する。一実施態様において、ここでの担体充填剤もしくは担体ポリマーは、シランに対し本質的に不活性であり、エラストマー組成物に添加されるとき、液体シランを放出するか、脱離することができる。
【0065】
一実施態様において、ここでのシラン反応性充填剤(b)は、そこでここでのシラン(d)が表面と反応するか結合できる、液体シランに対する担体およびエラストマーに対する強化充填剤として使用できる。他の実施態様において、担体として使用する充填剤は本発明のシランと非反応性である。他の実施態様において、充填剤の非反応性の性質は、担持されたシラン(d)の50パーセント以上のシラン(d)が有機溶媒を用いて抽出される能力によって説明される。具体的な実施態様において、抽出手順は、米国特許第6,005,027号に記載されている。具体的な実施態様において、担体は、多孔性の有機ポリマー、カーボンブラック、珪藻土およびシリカを含むがそれらに限定されず、それらは、米国特許第6,005,027号で記載されるように、105℃で測定された時および500℃で測定された時の、シリカの3502cm−2における赤外線吸光度の差が1.3未満と比較的小さいことによって特徴づけられる。一つの実施態様において、担体に担持させることができるシラン(d)の量は、0.1と70パーセントの間である。他の実施態様において、シラン(d)は、約10と約50パーセントの間の濃度で担体上に担持される。
【0066】
ここでの一つの非限定的な実施態様において、シラン反応性充填剤(b)は、シラン(d)が充填剤表面と反応性である充填剤を含む。ここでの具体的な実施態様において、微粒子沈降シリカは、特にシリカが反応性表面シラノールを持つとき、シラン反応性充填剤(b)として有用である。ここでのさらなる実施態様において、ここでのシラン反応性充填剤(b)は水和物の形であってよい。
【0067】
ここでの一つの非限定的な実施態様において、シラン反応性充填剤(b)と混合できる他の充填剤は、シラン(d)に対して本質的に不活性であってよく、それらはカーボンブラックもしくは有機ポリマーとのケースのように混合でき、または、例えば、金属ヒドロキシル表面官能性を含有する担体との場合、例えば、表面シラノール官能性を持つシリカもしくは他のシリカ含有微粒子の場合、例えば、アルミナ、シリカおよび他のシリカ含有充填剤のような、金属ヒドロキシル表面官能性を含有する強化充填剤と組み合わせて、少なくとも二つの異なるシラン反応性充填剤は一緒に混合でき、そしてそれらと反応させることが出来る。
【0068】
ここでの一実施態様において、沈降シリカはシラン反応性充填剤(b)として用いることが出来る。より具体的な実施態様において、ここでのシリカ充填剤は、好ましくは約40から約600m/gまでの範囲の、より好ましくは約50から約300m/gまでの範囲の、そしてもっとも好ましくは約100から約150m/gまでの範囲の、窒素ガスを使用して測定されるBrunauer、EmmettおよびTeller(BET)表面積を持つものとして特徴付けられる。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society, Volume 60, page 304(1930)に記載されており、これがここで用いた方法である。さらに他の実施態様において、シリカは典型的に、好ましくは約100から約350まで、より好ましくは約150から約300まで、そしてもっとも好ましくは約200から約250までの範囲でフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を持つものとして特徴付けられる。さらにより具体的な実施態様において、シラン反応性充填剤(b)ならびに前述のアルミナおよびアルミノシリカートの充填剤は、約100から約220m/gまでの範囲のCTAB表面積を持つと予想できる。CTAB表面積は、pH9を持つ臭化セチルトリメチルアンモニウムによって測定される外部表面積であり;その測定のための方法はASTM D 3849に記載されている。
【0069】
水銀細孔度比表面積(mercury porosity surface area)は、水銀ポロシメトリーによって測定される具体的な表面積である。この方法において、水銀は、揮発性物質を除去するための熱処理の後に試料の細孔に浸透される。より詳細な実施態様において、測定条件は100mgの試料を使用し、105℃および周囲の大気圧で2時間にわたって揮発物質を除去し、そして大気圧から200MPa(2000bar)の圧力の測定範囲を使用する。他の実施態様において、そのような測定は、Winslow, et al., ASTM bulletin, p.39(1959)に記載される方法、またはDIN 66133によって行ってよく、そのような測定に、CARLO−ERBAポロシメーター2000を使用してよい。一実施態様において、選択されるシラン反応性充填剤(b)(例えばシリカ)の平均水銀細孔度比表面積は、好ましくは約100から約300m/gまで、より好ましくは約150から約275m/gまで、そしてもっとも好ましくは約200から約250m/gまでの範囲である。
【0070】
一実施態様において、そのような水銀細孔度測定による、シラン反応性充填剤(b)(たとえば非限定的な例としてのシリカ、アルミナおよびアルミノシリカート)にとっての好適な細孔径分布はここでは:その細孔の5パーセントもしくはそれ以下が約10nm以下の直径を有し;その細孔の約60から約90パーセントまでが約10から約100nmまでの直径を有し;その細孔の10から約30パーセントまでが約100から約1,000nmまでの直径を有し;そしてその細孔の約5から約20パーセントまでが約1,000nmを超える直径を有するものであると考えられる。第二の実施態様において、電子顕微鏡によって測定される、例えば約0.01から約0.05μmまでの範囲で平均究極粒径をシラン反応性充填剤(b)(例えばシリカ)は持つと予想されるが、粒子(例えばシリカ)はサイズにおいてより小さいかより大きくてもよい。一実施態様において、HI−SIL、特にHI−SIL 210および243の商標でPPG Industriesから入手できるもの;例えばZEOSIL 1165MPのRhone−Poulencから入手可能なシリカ;例えばVN2およびVN3などのDegussaから入手可能なシリカ、そして、例えばHUBERSIL−8745のHuberから入手可能なシリカのような種々の市販のシリカを、ここでの使用を企図することができる。
【0071】
一実施態様において、シリカ、アルミナおよび/もしくはアルミノシリカートのようなシリカ含有の充填剤と、さらにカーボンブラック補強顔料との両方を含むゴム組成物が、補強顔料としてのシリカによって主として強化されることが望まれる場合、カーボンブラックに対するシリカ含有充填剤の重量比は、少なくとも約3/1であり、そして好ましくは少なくとも約10/1であり、すなわち約3/1から約30/1の範囲である。さらに具体的な実施態様において、シラン反応性充填剤(b)は、約15から約95重量パーセンの沈降シリカ、アルミナおよび/もしくはアルミノシリカートと、これに対応して約5から約85重量パーセントまでのCTAB値が約80から約150までの範囲であるカーボンブラックを含有してよい。一つの具体的な実施態様において、代替的に、シラン反応性充填剤(b)は、約60から約95重量パーセントまでの前記シリカ、アルミナおよび/もしくはアルミノシリカートと、これに対応して約40から約5重量パーセントまでのカーボンブラックを含有してよい。他の具体的な実施態様において、シリカ含有充填剤およびカーボンブラックは、加硫ゴムの製造の最中に、前もって混合するか、または一緒に混合してよい。
【0072】
一実施態様において、ここに定義されるように、(a)、(b)、任意選択で(c)、そして(d)の有効量を混合することを含有するゴム組成物を調製するプロセスが提供される。ここでの一実施態様において、シラン(d)の有効量は、ここでのゴム組成物の全重量に基づいて、好ましくは約0.2から約20、より好ましくは約0.5から約15まで、そしてもっとも好ましくは、約2から約10重量パーセントの範囲である。他の実施態様においてシラン反応性充填剤(b)の有効量は、好ましくは約2から約70まで、より好ましくは約5から約50まで、そしてもっとも好ましくは約20から約40重量パーセントまでのシラン反応性充填剤(b)であり、ここで前記重量パーセントはここでのゴム組成物の全重量に基づく。ここでのさらに他の実施態様において、ゴム組成物(a)の有効量は、ここでのゴム組成物の全重量に基づいて、好ましくは約30から約98重量パーセントまで、より好ましくは、約50から約95重量パーセントまで、そしてもっとも好ましくは約60から約80重量パーセントのゴム成分(a)である。ここでの他の実施態様において、ゴム組成物の調製のためのここに記載されるプロセスは、ゴム組成物の成型の前、その最中および/もしくはその後にゴム組成物を硬化するステップをさらに含有してもよい。ここでの一実施態様において、加硫ゴム組成物は、それらの妥当な高さのモジュラスおよび高い引き裂き抵抗に寄与するのに充分な量のシラン反応性充填剤(b)を含むべきである。具体的な実施態様において、シラン反応性充填剤(b)の全重量は、ゴム成分(a)100部当たり約5から約100部(phr)と少なくてよいが、しかしより好ましくは約25から約85phrまで、そしてもっとも好ましくは約50から約70phrまでである。
【0073】
一実施態様において、シラン(d)は、シラン反応性充填剤(b)の粒子、凝集体、および/もしくは集塊体と前もって混合または前もって反応させてもよいし、またはゴム(a)とシラン反応性充填剤(b)との加工中もしくは混合中にゴム混合物に対して添加してもよい。他の実施態様においてシラン(d)とシラン反応性充填剤(b)とが、ゴム成分(a)とシラン反応性充填剤(b)との混合中に加工混合物に対して別々に添加されるなら、シラン(d)はシラン反応性充填剤(b)とその場で結合すると考えられ得る。
【0074】
ここでの一実施態様において、実際上、硫黄加硫化ゴム産物は典型的には、ゴムと様々な成分とを連続的で段階的な方法によって熱機械的に混合し、続いて配合ゴムを成形し、硬化して加硫産物を作成することによって調製される。より具体的な実施態様において、最初に、ゴム成分(a)および種々の成分の前述の混合のために、硫黄および硫黄加硫促進剤(まとめて「硬化剤」)を典型的には除外したゴムおよび種々のゴム配合成分が、適切なミキサー中における、少なくとも一つの、そして、任意選択で二つもしくはそれ以上の予備的な熱機械的な混合段階で混合される。そのような予備的混合は、非硬化発現混合(non−productive mixing)、または非硬化発現混合の工程もしくは段階と呼ばれる。より具体的な実施態様において、そのような予備的混合は、好ましくは約130℃から約180℃まで、そしてより好ましくは約140℃から約160℃までの範囲の温度で、通常は行われる。
【0075】
一実施態様において、そのような予備的混合段階の後に続いて、しばしば硬化発現混合段階と呼ばれる最終混合段階において、硬化剤と、任意選択で一つもしくはそれ以上の追加的な成分とが、典型的には約50℃から約130℃の範囲の温度でゴム化合物または組成物と混合され、この温度は、しばしばゴム組成物のスコーチ(scorching)と呼ばれる硫黄硬化性ゴムの時期尚早の硬化を防ぐかまたは遅らせるために、予備的混合段階で用いられるものより低い。
【0076】
他の実施態様において、ゴム組成物は、しばしば中間的なミル混合のプロセスの後でもしくはプロセスの途中で、前述の種々の混合工程の間に、例えば約50℃もしくはそれ以下の温度に典型的には冷却される。
【0077】
ここでの他の実施態様において、ゴム組成物の成型および硬化が望まれる場合、ゴム組成物は所望の鋳型に入れられ、少なくとも約130℃、そして約200℃にまで加熱され、ゴムの加硫をもたらす。
【0078】
熱機械的な混合によって意味することは、ゴム化合物またはゴムとゴム配合成分との組成物がゴムミキサーにおいて高い煎断条件下で混合され、ここでそれらが、主としてゴムミキサー中のゴム混合物内でのせん断および関連する摩擦が原因で、混合の結果として自発的に発熱することである。
【0079】
一実施態様において、例えば硫黄源の独立した添加は、それの添加量によって、および他の成分の添加と比較した添加の順序によってコントロールされる。
【0080】
ここでの他の実施態様において、ここでのゴム組成物は、
a)第一の実施態様において約140℃から約180℃までの温度までの、そして第二の実施態様において約150℃から約170℃までの温度までの、第一の実施態様において約1から約20分まで混合時間で、そして第二の実施態様において約4から約15分までの混合時間で、少なくとも一つの予備的混合操作における熱機械的混合ステップであって、そのような混合操作のために:
i)共役ジエンホモポリマーおよびコポリマー、ならびに少なくとも一つの共役ジエンと芳香族ビニル化合物とのコポリマーからなる群より選択される、約100重量部の少なくとも一つの硫黄加硫化ゴム;
ii)第一の実施態様において約5から約100重量部のシラン反応性充填剤(b)、第二の実施態様において約25から約80重量部のシラン反応性充填剤(b)であって、ここでシラン反応性充填剤(b)は好ましくは0から約85重量パーセントのカーボンブラックを含有する;
iii)第一の実施態様において約0.05から約20のゴム重量部の、第二の実施態様において約2から10のゴム重量部の、少なくとも一つの上述のような一般式(1)のシラン(d);
iv)任意選択で、第一の実施態様において約0.01から約15重量部の活性剤(c)、第二の実施態様において約1から約5重量部の活性剤
を混合するステップ;
b)約50℃から約130℃の温度におけるゴム成分(a)を混合するのに十分な時間、例えば第一の実施態様における約1から約30分間の、第二の実施態様における約1から約5分間の最後の熱機械的混合ステップにおける、ステップ(a)からの混合物と0から約5重量部の硬化剤との混合ステップ;そして
c)約130℃から約200℃の範囲の温度における約5から約60分間の時間の、任意選択での前記混合物を硬化するステップ
を含有するプロセスによって調製される。
【0081】
ここでのゴム組成物は、混合成分(a)(様々な硫黄加硫可能な成分ゴム)と、例えば硫黄、活性剤、遅延剤、および促進剤のような硬化助剤;オイル、例えば粘着付与樹脂のような樹脂、シリカ、可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤、およびオゾン劣化防止剤のような加工添加剤;素練り促進剤;ならびに、例えばカーボンブラックのような強化物質などのような様々な一般に使用される添加物質とを混合するような、ゴム配合技術における公知の方法によって配合してよい。ゴム組成物(硫黄加硫可能)および硬化したゴム組成物(硫黄加硫された物質)の意図した用途に従って、ここに記述した添加剤は選択され、汎用の量で一般に使用される。
【0082】
加硫は、追加の硫黄加硫剤の存在下で実施できる。一つの具体的な実施態様において、適切な硫黄加硫剤のいくつかの非限定例は、例えば元素硫黄(遊離硫黄)または、非限定的な例としてアミノジスルフィド、重合体のポリスルフィドもしくは硫黄−オレフィン付加物のような硫黄を供与する加硫剤とを含み、それらは、最終の、すなわち硬化発現のゴム組成物混合ステップにおいて一般に添加される。他の具体的な実施態様において、硫黄加硫剤(当分野に一般的である)は、約0.4から約3phrの、また状況によって約8phrまでの範囲の量で硬化発現の混合ステップにおいて使用出来るか、または添加でき、そして約1.5から約2.5phrの範囲が、そしてあるケースでは約2から約2.5phrの範囲が一般的に好適である。
【0083】
加硫促進剤、つまり追加の硫黄供与体も所望なら使用してよい。加硫促進剤の非限定的な例は、ベンゾチアゾール、アルキルチウラムジスルフィド、グアニジン誘導体、およびチオカルバマートを含む。そのような促進剤の他の具体例は、メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、ベンゾチアゾールジスルフィド、ジフェニルグアニジン、ジチオカルバミン酸亜鉛、アルキルフェノールジスルフィド、ブチルキサントゲン酸亜鉛、N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N,N−ジフェニルチオ尿素、ジチオカルバミルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、亜鉛−2−メルカプトールイミダゾール、ジチオビス(N−メチルピペラジン)、ジチオビス(N−ベータ−ヒドロキシエチルピペラジン)、ジチオビス(ジベンジルアミン)、およびそれらの組み合わせを含むが、それらには限定されない。他の実施態様において、例えばチウラムおよびモルホリン誘導体を含む他の追加の硫黄供与体を利用できる。より具体的な実施態様において、そのような供与体の代表例は、ジモルホリンジスルフィド、ジモルホリンテトラスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンゾチアジル−2,N−ジチオモルホリド、チオプラスト、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、ジスルフィドカプロラクタム、およびそれらの組み合わせであるが、それらに限定されない。
【0084】
促進剤は、加硫に必要な時間および/もしくは温度を制御し、そして加硫物の性能を向上させるために使用される。一実施態様において、単一の促進剤システム、つまり一次促進剤を使用してよい。他の実施態様において、汎用的にそしてより具体的に、一次促進剤は、約0.5から約4、そして好ましくは約0.8から約1.5phrの範囲の合計量で使用される。より具体的な実施態様において、加硫物の性能を活性化しそして向上させる目的で、一次促進剤と二次促進剤とを組み合わせて使用してよく、二次促進剤は、より少ない量(例えば約0.05から約3phr)で使用される。さらに他の実施態様において、遅延作用の促進剤も使用して良い。さらに他の実施態様において、加硫遅延剤も使用してよい。一実施態様において、適切な促進剤のタイプは、非限定的な例の、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバマート、キサントゲン酸塩、およびそれらの組み合わせを含む。より具体的な実施態様において、一次促進剤はスルフェンアミドである。他の具体的な実施態様において、二次促進剤が使用される場合、その二次促進剤はグアニジン化合物、ジチオカルバマート化合物またはチウラム化合物である。
【0085】
任意選択の粘着付与剤樹脂を、約0.5から約10phr、そして通常は約1から約5phrで使用して良い。一つの具体的な実施態様において、典型的な加工助剤の量は約1から約50である。好適な加工助剤は、非限定的な例として、芳香族、ナフテン系および/またはパラフィン系の加工オイル、およびそれらの組み合わせを含む。さらに他の具体的な実施態様において、典型的な酸化防止剤の量は約1から約5phrである。代表的な酸化防止剤は、非限定的な例として、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、および、例えばVanderbilt Rubber Handbook(1978),pages344−346に開示される他のものを含む。さらに他の実施態様において、典型的なオゾン劣化防止剤の量は約1から約5phrである。典型的な任意選択の脂肪酸の量は、約0.5から約3phrまでであり、非限定的な例としてステアリン酸を含む。一実施態様において、酸化亜鉛の典型的な量は約2から約5phrまでである。さらに他の具体的な実施態様において、例えば微結晶ワックス(microcrystalline wax)のようなワックスの典型的な量は約1から約5phrである。素練り促進剤の典型的な量は約0.1から約1phrである。好適な素練り促進剤は、非限定的例として、ペンタクロロチオフェノール、ジベンズアミドジフェニルジスルフィドおよびそれらの組み合わせを含む。
【0086】
ここでのゴム組成物は、様々な目的に使用できる。ここでの一つの具体的な実施態様において、少なくとも一つの構成部品がここに記載される硬化したゴム組成物である物品が提供される。ここでの他の具体的な実施態様において、その少なくとも一つの構成部品、例えばトレッドがここに記載される硬化したゴム組成物を含有するタイアが提供される。さらに他の実施態様において、例えば、ここでのゴム組成物を、足底、ホース、シール、ケーブルジャケット、ガスケットおよび他の工業製品のような物品の製造のために使用できる。そのような物品は、当業者に明白なさまざまな公知で汎用の方法によって、組み立てられ、成形され、成型され、硬化され得る。
【0087】
本発明は、下記の実施例を参照することによって一層よく理解することができ、実施例中では特に指示がない限り、部と百分率は重量による。
【実施例】
【0088】
カップリング剤の合成
実施例1
(1−p−トリル−エチル)トリクロロシランの調製
還流冷却器、添加ロートおよびマグネチックスターラーバーを備える3リットルの丸底フラスコに、4−メチルスチレン(900g、7.6モル)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.8g、0.2重量%)が充填された。反応混合物は70℃へと加熱され、そしてトリクロロシラン(1031g、7.6モル)が反応混合物へと滴下された。添加中、反応混合物は80から100℃に維持された。添加が終了した後、反応混合物は70℃でさらなる2時間維持された。蒸留の後、純粋な(1−p−トリル−エチル)トリクロロシラン(1400g、5.53モル)が得られた(75℃/133.3Pa(1mmHg)で回収された)。産物の構造は、GC−MSおよび13C NMR(δ〜14ppm、CDCl、ClSi−CH(CH)−Ph;δ〜35ppm、CDCl、ClSi−CH(CH)−Ph)によって解析された。
【0089】
比較例2
(2−p−トリル−エチル)トリクロロシラン
還流冷却器、添加ロートおよびマグネチックスターラーバーを備える3リットルの丸底フラスコに、4−メチルスチレン(904.4g、7.65モル)、VCAT(2.25g、50ppm)およびフェノチアジン(1.94g、1000ppm)を充填した。反応混合物は70℃へと加熱され、トリクロロシラン(1036.6g、7.65モル)が反応混合物に対し滴下された。添加中、反応混合物は80から100℃の間に維持された。添加が完了した後、反応混合物はさらに2時間70℃に維持された。蒸留の後98%以上純粋な(2−p−トリル−エチル)トリクロロシラン(1565g、6.19モル)が得られた(75℃/133.3Pa(1mmHg)で回収された)。産物の構造はGC−MSによって解析された。
【0090】
実施例3
(1−フェニルエチル)トリクロロシランの調製
還流冷却器、添加ロートおよびマグネチックスターラーバーを備える2リットルの丸底フラスコに、スチレン(410g、3.94モル)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.2g、0.3重量%)が充填された。反応混合物は70℃に加熱され、そしてトリクロロシラン(532.8g、3.94モル)が反応混合物へと添加された。添加の間、反応混合物は80から110℃の間に維持された。添加が完了した後、反応混合物はさらに2時間70℃で維持された。蒸留の後98%以上純粋な(1−フェニルエチル)トリクロロシラン(840g、99%純度)が得られた(78℃/399.9Pa(3mmHg)で回収された)。産物の構造はGC−MSによって解析された。
【0091】
比較例2
(2−p−トリル−エチル)トリクロロシラン
還流冷却器、添加ロートおよびマグネチックスターラーバーを備える3リットルの丸底フラスコに、4−メチルスチレン(904.4g、7.65モル)、VCAT(2.25g、50ppm)およびフェノチアジン(1.94g、1000ppm)が充填された。反応混合物は70℃に加熱され、そしてトリクロロシラン(1036.6g、7.65モル)が反応混合物に滴下された。添加の間、反応混合物は80から100℃の間に維持された。添加が完了した後、反応混合物はさらに2時間70℃で維持された。蒸留の後、98%以上純粋な(2−p−トリル−エチル)トリクロロシラン(1565g、6.19モル)が得られた(75℃/133.3Pa(1mmHg)で回収された)。産物の構造はGC−MSによって解析された。
【0092】
実施例3
(1−フェニルエチル)トリクロロシラン
還流冷却器、添加ロートおよびマグネチックスターラーバーを備える2リットルの丸底フラスコに、スチレン(410g、3.94モル)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.2g、0.3重量%)が充填された。反応混合物は70℃まで加熱され、そしてトリクロロシラン(532.8g、3.94モル)が反応混合物へと滴下された。添加の間、反応混合物は80から110℃へと維持された。添加が完了した後、反応混合物はさらなる2時間70℃に維持された。蒸留の後、98%以上純粋な(1−フェニルエチル)トリクロロシラン(840g、99%純度)が得られた(78℃/399.9Pa(3mmHg)で回収された)。産物の構造はGC−MSによって解析された。
【0093】
実施例4
ラウロイルペルオキシドおよびC1を用いる(1−p−トリル−エチル)トリクロロシランの塩素化
(1−p−トリル−エチル)トリクロロシラン(100g、0.4モル)およびラウロイルペルオキシド(1.0g、1重量%のシラン)が反応フラスコへと充填された。室温において、攪拌しながら、レクチャーボトル(lecture bottle)から塩素ガスが反応混合物を泡立てながら導入された。1時間のCl注入の後の塩素ガスによる泡立てが終わるまで、反応温度は40℃以下で制御された。GCスペクトルは、塩素化産物である、トリクロロ−[1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−シラン、トリクロロ−(1−クロロ−1−p−トリル−エチル)−シランおよびトリクロロ−[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−シランが2.6:1.7:1.0の比率で得られたことを示している。産物の構造は、GC−MSおよび13C NMR(例えば、δ〜14ppm、CDCl、Ph−C−Cl)によって解析された。Clとのより長い反応は高レベルの塩素化の産物の生成を導く。
【0094】
実施例5
PClとClを用いる(1−p−トリル−エチル)トリクロロシランの塩素化
(1−p−トリル−エチル)トリクロロシラン(100、0.4モル)およびPCl(1.0g、1重量%のシラン)が反応フラスコへと充填された。室温において、攪拌しながら、レクチャーボトル(lecture bottle)から塩素ガスが反応混合物を泡立てながら導入された。塩素ガスによる泡立てが終わるまで、反応温度は40℃以下で制御された。1時間のCl注入の後、GCスペクトルは、産物の混合物である、トリクロロ−[1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−シラン、トリクロロ−(1−クロロ−1−p−トリル−エチル)−シランおよびトリクロロ−[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−シランが、3.6:2.0:1.0の比率で得られたことを示している。産物の構造は、GC−MSによって解析された。
【0095】
実施例6
PCl、ラウロイルペルオキシドおよびClを用いる(1−p−トリル−エチル)トリクロロシランの塩素化
(1−p−トリル−エチル)トリクロロシラン(100、0.4モル)、ラウロイルペルオキシド(1.0g、1重量%のシラン)およびPCl(1.0g、1重量%のシラン)が反応フラスコへと充填された。室温において、攪拌しながら、レクチャーボトル(lecture bottle)から塩素ガスが反応混合物を泡立てながら導入された。塩素ガスによる泡立てが終わるまで、反応温度は40℃以下で制御された。1時間のCl注入の後、GCスペクトルは、産物の混合物である、トリクロロ−[1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−シラン、トリクロロ−(1−クロロ−1−p−トリル−エチル)−シランおよびトリクロロ−[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−シランが、3.2:1.7:1.0の比率で得られたことを示している。産物の構造は、GC−MSによって解析された。
【0096】
実施例7
臭素を用いる(1−p−トリル−エチル)トリクロロシランの臭素化
100mlのヘプタン中の(1−p−トリル−エチル)トリクロロシラン(25.3g、0.1モル)は、熱制御器、添加ロートおよび還流を備える500mlの3口反応フラスコへと充填された。ポットは攪拌しながら70℃まで加熱され、その後、100mlのヘプタン中の臭素(16g、0.1モル)が反応混合物中に滴下された。臭素の茶色は添加の後すぐに消えた。臭素の添加が終了した時、反応混合物はさらに2時間70℃に保たれた。反応混合物のGCスペクトルは、産物が未反応の開始物質、ならびに1.0:0.83:0.44:0.20の比率で臭素化した産物、トリクロロ−[1−(メチル−フェニル)−エチル]−シラン、トリクロロ−[1−(4−ブロモメチル−フェニル)−エチル]−シラン、トリクロロ−(1−ブロモ−1−p−トリル−エチル)−シランおよびトリクロロ−[1−ブロモ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]シランを含有する事を示している。産物の構造は、GC−MSによって解析された。
【0097】
実施例8
実施例6の反応産物のエステル交換
実施例6で調製された塩素化されたトリクロロシラン(589g)がマグネチックスターラー、蒸留ヘッドおよび受容フラスコを備える3リットルの丸底フラスコへと充填された。反応容器が、開始時に26.7kPa(200mmHg)の真空下で50℃に加熱される一方で、エタノール(707g)が容器へと滴下された。添加が終了するとき、過剰のエタノールは蒸留で出され、そして対応するトリエトキシシラン混合物(642g)が透明な液体として得られた。産物の構造は、GC−MSによって解析された。
【0098】
実施例9
実施例6の蒸留された反応産物のエステル交換
未反応の(1−p−トリル−エチル)トリクロロシラン(316g)を含有しない実施例6の蒸留された反応産物が、マグネチックスターラー、蒸留ヘッドおよび受容フラスコを備える2リットルの丸底フラスコへと充填された。反応容器が、開始時に26.7kPa(200mmHg)の真空下で50℃に加熱される一方で、エタノール(379g)が容器へと滴下された。添加が終了するとき、過剰のエタノールは蒸留で出され、そして対応するトリエトキシシラン混合物(348g)が透明な液体として得られた。産物の構造は、GC−MSによって解析された。
【0099】
比較例10および11、実施例12および13
ゴム組成物の調製
以下の実施例において、他に指示の無い限り、反応物の量はゴムの100部当たりの部(phr)である。以下のゴム組成物は天然ゴムを基にして調整され、高分散性の沈降シリカによって強化され、前記組成物はトラックタイヤのトレッド合成物を意図されている。これらの例のゴム組成物の配合は下の表1に記載される。ゴム組成物はシリカを強化充填剤として含有する。
【0100】
【表1】

【0101】
表1の表記は以下のように定義される:NR:天然ゴム(SMR−L);シリカ:RhodiaからのZeosil 1165MP;CB:カーボンブラック(N−220);プロセスオイル:Sun OilからのSundex 8125;酸化亜鉛:ZincCorpからのKadox 720C;ステアリン酸:Witco、CromptonからのIndustrene R;6 PPD:(UniroyalからのFlexzone 7P);ワックス:Uniroyal、CromptonからのSunproof Improved;Naugurd Q:Uniroyalからのもの;硫黄:HarwickからのRubbermakers Sulfur104;TBBS:Uniroyal、CromptonからのDelac S;DPG;Uniroyal、Cromptonからのもの;Silquest A−1289:Momentive Performance Materialsからのもの。
【0102】
ゴムのマスターバッチの混合は、1550平方センチメーター(cc)のチャンバー容量のKruppミキサーを用いて、以下に記載されるような2パス(two−pass)の手順によってなされた。第一のパスにおいて、ミキサーは、ミキサーを30rpmにして、冷却水をフルにして稼動された。ゴムポリマーはミキサーへと添加され、60秒間ラムダウン混合された。シリカの半分およびシランの全ては、エチルビニルアセタート(EVA)バッグ中のおおよそ35〜40グラムのこの部分のシリカとともに添加されそして60秒間ラムダウン混合された。EVAバッグ中の残りのシリカおよびプロセスオイルは次に添加され、そして60秒間ラムダウン混合された。ミキサーの入口はゴミを落とされ、ミキサーの混合スピードは、ゴムのマスターバッチの温度を140℃へと上昇させるのに必要なように90rpmへと増加された。マスターバッチはダンプされ(ミキサーから取り出され)、約60から65℃に設定されるロールミル上でシートが形成され、シートは周囲温度へと冷やされた。
【0103】
第二のパスにおいて、第一のパスからのシートは、ミキサーへと添加され、60秒間ラムダウン混合された。硬化剤以外の成分の残りが一緒に添加され、そして60秒間ラムダウン混合された。ミキサーの入り口はゴミが落とされ、ミキサーの混合速度は、ゴムのマスターバッチの温度を135℃と140℃の間へと上昇させるのに必要な90rpmへと上昇された。ゴムのマスターバッチは5分間混合され、Kruppミキサーの速度は温度を135℃と140℃の間に維持するように調整された。
【0104】
ゴムのマスターバッチおよび硬化剤は60度と65℃の間に加熱されたロールミル上で混合された。硫黄および促進剤はゴムのマスターバッチへと添加され、ロールミル上で完全に混合され、シートを形成するようにされた。シートは硬化前に周囲温度へと冷やされた。
【0105】
測定とゴム組成物の試験
ゴム組成物の解析のための測定は以下に記載される。以下に示されるようにゴム組成物は硬化前と後に解析された。
【0106】
組成物の流動学的特性は、Monsanto R−100 Oscilating Disk RheometerおよびMonsanto M1400 Mooney Viscometer上で測定された。物理的特性の測定のためのサンプルは、(t90+1)分間149℃で硬化された6mmのプラークより切り取られた。プラークの形状の硬化ゴム組成物の硬化および試験は、ASTM標準によって実施された。さらに、動的小歪テストはRheometrics Dynamic Analyzer(ARES−Rheometrics Inc.)上で実施された。Payne硬化歪スウィープは、0.01%の動的歪み度数から約25%せん断歪み度数まで、10Hzおよび60℃で実施された。動的パラメーターG’initial、ΔG’、G’’maxおよびtanδmaxは、小歪でのゴム組成物の非線形反応より抽出された。いくつかの例では、安定状態のtanδ値は、歪み度数35%(60℃で)の15分の動的振動の後に測定された。動的性質の温度依存性はまた、約−80℃から+80℃で、小歪度数(1もしくは2%)で、10Hzの周波数で測定された。
【0107】
具体的な硬化手順および測定手順は以下の通りであった:
硬化手順/測定 試験規格
ムーニー粘度およびスコーチ ASTM D1646
振動ディスクレオメトリー ASTM D2084
試験プラークの硬化 ASTM D3182
応力−歪み特性 ASTM D412
発熱性 ASTM D623
【0108】
結果は表2から4に示される。
【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
表2、3および4に示された組成物のデータの調査は、以下の観察を導き出す:実施例12および13のムーニー粘度値は全て低く、これは、未効果で加工される組成物の優れた性能と、スコーチ時間が良好で安全な余裕をもたらすのに十分長いということを示す。
【0113】
比較例10(Silquest A−1289シランのための対照組成物)の組成物と比較して、実施例12および13の組成物は、有意により良い全般的な性質を持つ。実施例12および13によって得られる強化の力の利点は、当業者には容易に明らかであろう。特に、強化指数(300%/100%)は実施例12および13が比較例10よりもかなり高く、後者と比較して前者のより優れた強化を示している。
【0114】
比較例11の組成物と比較して、実施例12および13のものはまた、すぐれた全般的な性質を持っている。しかしながら実施例12および13の組成物中のシランはより多い収量で、かつより低廉なコストによって製造できる。従って、本発明による化合物は、低廉なコストによる容易な製造と共に優れた全般的な性質を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のゴム組成物は、特にトレッドが天然ゴム系もしくは合成ポリイソプレン系であるとき、低い転がり抵抗と高い耐摩耗性を示すタイヤトレッドの製造での使用に特に有利である。
【0116】
本発明は、多数の例示的な実施態様に関して記載されているが、当業者は、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更を行なってよく、そしてそれの要素を等価物と置き換えてよいことを理解するであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱せずに、特定の状況や物質を本発明の教示に適応させるために多くの修正を行ってもよい。したがって、本発明は、ここに開示した特定の代表的な実施態様に限定されるのではない、と意図するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造式(1):
Si−C(R2−a(Z)−G−(CR3−c−Z (1)
〔式中、
は、Cl−、Br−、I−、RO―、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる群より選択される加水分解性部分であり、ここでそれぞれのRは独立して、水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
それぞれのXおよびXは独立して、XおよびR基から選択され、ここでそれぞれのRは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
は、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは、1から10個の炭素原子と、そして任意選択で酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
それぞれのZおよびZは独立して、F−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択されるハロゲン原子であり;
Gは、式(2):
(−)1+b5−b (2)
の一価のもしくは多価の芳香族炭化水素基であり、
ここで、6個の炭素原子は芳香族環構造の部分であり、Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子を含有し;
Rの各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは1から30個の炭素原子を含有し;そして
a、bおよびcは整数であり、そしてaが1、bが0から5、そしてcは1から3である〕
のハロ含有アラルキルシラン。
【請求項2】
がアルコキシ基である、請求項1に記載のハロ含有アラルキルシラン。
【請求項3】
およびZの両方がハロゲン原子Clである、請求項1に記載のハロ含有アラルキルシラン。
【請求項4】
がメチル、エチルもしくはプロピルであり;それぞれのRが独立してメチル、エチルもしくはプロピルであり;それぞれのRが独立してメチルであり;それぞれのRが独立して水素もしくはメチルであり;Xがエトキシであり;それぞれのXおよびXが独立してエトキシもしくはメチルであり;bが0であり、そしてcが1から3である、請求項1に記載のハロ含有アラルキルシラン。
【請求項5】
がエチルであり;XおよびXがエトキシであり;bが1であり、そしてcが1である、請求項4に記載のハロ含有アラルキルシラン。
【請求項6】
[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−ジエトキシ−メチル−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−エトキシ−ジメチル−シラン、[1−ブロモ−1−(4−ブロモメチル−フェニル)−エチル]−ジエトキシ−メチル−シラン、[1−ブロモ−(4−ブロモメチル−フェニル)−エチル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−メチル−フェニル)−エチル]−ジエトキシ−メチル−シラン、[1−クロロ−1−(4−メチル−フェニル)−エチル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−プロピル]−ジエトキシ−メチル−シラン、{1−クロロ−1−[4−(1−クロロ−エチル)−フェニル]−プロピル}−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−ジクロロメチル−フェニル)−プロピル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−トリクロロメチル−フェニル)−プロピル]−ジエトキシ−メチル−シラン、[1−クロロ−1−(4−トリクロロメチル−フェニル)−プロピル]−トリエトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−トリメトキシ−シラン、[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−エチル]−トリプロポキシ−シラン、およびクロロ−[1−クロロ−1−(4−クロロメチル−フェニル)−プロピル]−ジメチル−シランからなる群より選択される請求項1に記載のハロ含有アラルキルシラン。
【請求項7】
請求項1に記載のハロ含有アラルキルシランの少なくとも一つの部分もしくは完全加水分解物を含有する混合物。
【請求項8】
(a)構造式(1):
Si−C(R2−a(Z)−G−(CR3−c−Z (1)
〔式中、
は、Cl−、Br−、I−、RO―、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる群より選択される加水分解性部分であり、ここでそれぞれのRは独立して、水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
それぞれのXおよびXは独立して、XおよびR基から選択され、ここでそれぞれのRは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、そして任意選択で、酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
それぞれのRは、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは、1から10個の炭素原子と、そして任意選択で酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有し;
それぞれのZおよびZは独立して、F−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択されるハロゲン原子であり;
Gは、式(2):
(−)1+b5−b (2)
の一価のもしくは多価の芳香族炭化水素基であり、
ここで、6個の炭素原子は芳香族環構造の部分であり、Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子を含有し;
Rの各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のRは1から30個の炭素原子を含有し;そして
bおよびcは整数であり、そしてbが0から5、そしてcは1から3であり、但しa+bが1と等しいかもしくはそれより大きい〕
でaが1である、ハロ含有アラルキルシランの少なくとも一つ;ならびに
(b)構造式(1)でaが0である、ハロ含有アラルキルシランの少なくとも一つ
を含有する組成物。
【請求項9】
(a)一般式(3):
HSiX (3)
〔式中、XはF−、Cl−、Br−およびI−からなる加水分解性基より選択され、それぞれのXおよびXは独立してXおよびR基より選択され、ここでそれぞれのRは、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、任意選択で酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有する〕
のヒドリドシランを、一般式(4):
C=C(R)−C5−b(CR (4)
〔式中、Rの各々は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキルからなる群より選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは、1から30個の炭素原子を含有し;Rは水素、アルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキルからなる群より選択され、水素以外のRは1から10個の炭素原子を含有し;Rの各々は水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より独立して選択され、ここで水素以外のそれぞれのRは1から18個の炭素原子を含有し;それぞれのRおよびRは独立して、水素、アルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキルからなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRおよびRは、1から9個の炭素原子を含有し;そしてbが0から5の整数である〕
の炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)と、有効量のアルファ選択性ヒドロシリル化触媒(iii)の存在下で、式(5):
Si−C(R−C5−b−(CR (5)
のアラルキルシランを提供するステップ;
(b)ステップ(a)の反応産物をハロゲン(iv)と、任意選択で有効量のハロゲン化触媒(v)の存在下で反応させ、式(6):
Si−C(R2−a(Z)−G−(CR3−c−Z (6)
〔式中、それぞれのGは式(2):
(−)1+b5−b (2)
の一価もしくは多価の芳香族炭化水素基であり、ここで6個の炭素原子は芳香族環構造の部分であり、Rの各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは1から18個の炭素原子を含有し;
およびZの各々は独立して、F−、Cl−、Br−およびI−からなる群より選択されるハロゲン原子であり;そして
a、bおよびcは整数であり、そしてaが0もしくは1であり、bが0から5であり、そしてcが1から3であり、ただし、a+bが1と等しいかもしくはそれよりも大きいという条件であり〕
のハロ含有アラルキルシランを得るステップ;そして
(c)任意選択でステップ(b)のハロ含有アラルキルシランをX−H
〔式中、XはCl−、Br−、I−、RO−、R(=O)O−、RC=NO−およびRNO−からなる加水分解性基より選択され、ここでそれぞれのRは独立して水素、直鎖、環状もしくは分岐のアルキル、アルケニル、アリールおよびアラルキル基からなる群より選択され、水素以外のそれぞれのRは、1から18個の炭素原子と、任意選択で酸素および硫黄からなる群より選択される少なくとも一つのヘテロ原子とを含有する〕
と反応させるステップ
のステップを含有するハロ含有アラルキルシランを調製するプロセス。
【請求項10】
ヒドリドシラン(i)が、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、トリブロモシラン、メチルジブロモシラン、フルオロジメチルシラン、エチルジクロロシラン、フェニルジクロロシランおよびイソプロピルジクロロシランからなる群より選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
炭素−炭素二重結合含有アラルカン(ii)が、1−メチル−4−ビニル−ベンゼン、1,2−ジメチル−4−ビニルベンゼン、1−イソプロペニル−4−メチル−ベンゼン、1−メチル−4−プロペニル−ベンゼン、1−エチル−4−(1−メチル−プロペニル)−ベンゼン、1−メチル−2−ビニル−ベンゼン、2,4−ジメチル−1−ビニル−ベンゼンおよびメチル−4−スチリル−ベンゼンからなる群より選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
(a)少なくとも一つの充填剤;および
(b)成分(a)の充填剤と混合されるか、もしくは成分(a)の充填剤へと化学結合している、少なくとも一つの請求項1に記載のシラン
を含有する組成物。
【請求項13】
前記充填剤がシリカ、二酸化チタン、アルミノシリカート、アルミナおよびシリカ含有物質、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともひとつである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
(a)少なくとも一つのゴム成分;
(b)少なくとも一つの充填剤;
(c)任意選択で、少なくとも一つの活性化剤;
(d)少なくとも一つの請求項1に記載のシラン
を含有する、ゴム組成物。
【請求項15】
充填剤(b)が、シラン反応性である、請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項16】
成分(d)が、ゴム組成物の全重量に基づいて、約0.2から約20%の量で存在する請求項14に記載のゴム組成物。
【請求項17】
(a)少なくとも一つのゴム組成物;(b)少なくとも一つの充填剤;(c)任意選択で、少なくとも一つの活性化剤;そして(d)少なくとも一つの請求項1に記載のシラン、を有効量で混合する事を含有する、ゴム組成物を調製するプロセス。
【請求項18】
成分(a)、(b)および(d)の有効量が、それぞれ、約30〜98%、約2〜70%、および約0.2〜2%である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
ゴム組成物(a)と任意選択で活性化剤(c)との混合の前に、充填剤(b)とシラン(d)が予め混合されているか、または予め反応させられている、請求項19に記載のプロセス。
【請求項20】
ゴム組成物を硬化して硬化した産物を提供するステップをさらに含有する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項21】
その少なくとも一つの構成部分が請求項14に記載の硬化したゴム組成物である、タイヤ、工業製品、靴底、ホース、シール、ガスケットおよびケーブルジャケットからなる群より選択される製品。
【請求項22】
前記製品がタイヤである、請求項21に記載の製品。


【公表番号】特表2011−530530(P2011−530530A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522242(P2011−522242)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/052976
【国際公開番号】WO2010/017370
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】