説明

活性化リンパ球の特異性の検出方法

本発明は、活性化リンパ球の特異性を検出するための方法、及び活性化リンパ球の特異性を検出するための培地を提供するものである。本方法によれば、臓器移植後、病原微生物感染後又はワクチン接種後に、レシピエント又は患者の体内における活性化リンパ球の特異性を同定できる。また、本発明は、臓器移植の拒絶反応を速やかに診断し、臨床上の合理的投薬ガイダンスを提供し、しかも感染性疾患を速やかに診断できるものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、臓器移植後、又は生体がウィルス、細菌に感染したり、ワクチンを接種されたりした後で、生体内の活性化リンパ球の特異性を検出する方法に関する。
【0002】
背景技術
免疫(immune)又は免疫性(immunity)とは、生体が抗原性異物を認識し除去する生理的反応である。免疫を引き起こす抗原物質は、大部分生体自身の物質ではなく外因性の物質であり、それらが生体に入ると、生体の免疫システムに迅速に認識され、且つ一連の免疫応答過程により消滅させられ、生体を元のバランス状態に戻す。
【0003】
臓器移植を行う際、ドナーとレシピエントの間の抗原性の差異、例えば、主要組織適合性抗原(major histocompatibility antigen MHC)とマイナー組織適合性抗原(mH−antigen)の相違は、レシピエントを刺激し、ドナーの器官に存在しレシピエントと異なる抗原に対する特異性活性化リンパ球を産生し、これらの特異性活性化リンパ球はドナーの器官を攻撃し拒絶反応を引き起こす。生体が、病原性微生物、例えば、麻疹ウィルス、RSウィルス、A型肝炎ウィルス、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、E型及びF型肝炎ウィルス、水痘と帯状疱疹ウィルス、単純疱疹ウィルス、サイトメガロウィルス、EBウィルス、コロナウィルス、ロタウィルス、コクサッキ−ウィルス、エコーウィルス(ECHO)、エボラウィルス、黄熱ウィルス、アデノウィルス、ロシア春夏脳炎ウィルス、風疹ウィルス、デング熱ウイルス、流行性B型脳炎ウィルス、狂犬病ウィルス、SARSウィルス、インフルエンザウィルス(ヒト、鳥類を含む)、ムンプスウィルス(流行性耳下腺炎ウィルス)、出血熱ウィルス、エイズウィルス、灰白髄炎ウィルス、リケッチア、流行性脳炎双球菌、腸チフス又はパラチフス菌、結核菌、ジフテリア桿菌、百日咳桿菌、炭疽菌、Bacterium burgeri、ペスト菌(Yersinia pestis)、らい菌、異型ミコバクテリア、レプトスピラ、梅毒トレポネ−マ、回帰熱スピロヘータ、クラミジア、マイコプラズマ、クリプトスポリシウム、リーシュマニア、トキソプラズマ、日本住血吸虫、肺吸虫、肝吸虫、肥大吸虫、糸状虫等に感染した場合にも、同様に生体を刺激して、各種の病原性微生物のそれぞれに対応する特異性活性化リンパ球を生成する。多種の特異性を有し、それぞれが各種の異なる抗原に対応している活性化リンパ球が、同一の生体内に、同時に存在している可能性がある。例えば、心臓移植後に拒絶反応を起こした患者が疱疹ウィルスに感染した場合が挙げられる。その場合、当該患者の体内には、ドナー器官の主要組織適合性又はマイナー組織適合性抗原に対する特異的な活性化リンパ球が存在しているし、疱疹ウィルスに対する特異的な活性化リンパ球も存在している。
【0004】
臓器移植は多くの器官の末期状態の疾病を治療する唯一の方法である。臓器移植後に、ドナーとレシピエントの間のMHCとmH抗原の差異が拒絶反応を引き起こす。拒絶反応は、現在も、心臓、肝臓、腎臓、骨髄等の器官、又は細胞の移植後の3年、5年、10年生存率に大きな影響を与えている要素であるが、拒絶反応はまずリンパ球の活性化から始まる。もし、レシピエントの体内に抗ドナー特異性活性化リンパ球が生成されれば、生体がドナー器官を攻撃する反応を起動したことを示している。したがって、できるだけ早く適切な処置、例えば、免疫抑制剤の投与量を増加したり、免疫抑制剤の種類を替える等の処置をとるべきことを提示しているのであり、それによって、ドナー器官のレシピエントの体内での良好な機能状態が維持され、更には、移植レシピエントの生存品質と生存期限が向上する。
【0005】
現在、生検穿刺(生体組織検査)は、依然として、世界中の各移植センターにおける拒絶反応を診断するための根本的方法であり唯一の基準であるが、生検穿刺自身、一定のリスクを有することから、頻繁に生検穿刺を行うことはよろしくなく、しかも費用が高く、患者にとって苦痛を与えるものであるので、医者と患者、両者に受け入れられ難いものである。また、ある移植器官、例えば心臓、肝臓、腎臓等は、拒絶反応が発生しても、その病変は均一ではなく、ある部位にはあるが、ある部位にはないし、ある部位では軽いが、ある部位では重いというものでもある。生検穿刺は器官の局所のみから検体を採取するため、誤診しやすい。加えて、生検病理観察は、主に病理学的変化を看るものであり、一旦病理学的変化が出現すると、器官が既に損傷されていることを示していることになる。そこで、便利で、速く敏感な非侵襲性の臓器移植拒絶反応の診断方法を確立するために、国内外の研究者により多くの方法とマーカー探索が試みられているが、その結果は、いまだ理想的なものが得られていない状況である。したがって、便利で、速く、正確で、敏感な拒絶反応の非侵襲性の診断方法を提供することは、移植患者の生存品質を向上し、移植器官の使用期限を延長することに対して重要な意義を持っている。しかも、拒絶反応がまずリンパ球の活性化から始まり、病理変化よりも活性化リンパ球のほうが早く出現するはずである。本発明は、主に末梢血中のMHC又はmH抗原に活性化された特異性リンパ球を検出することによって、拒絶反応を診断するものであるので、本方法で拒絶反応を診断することは、移植器官の病理変化より早いはずである。また、本方法は、簡単で容易に実施でき、自動操作が可能で、標準化しやすく、前述の生検穿刺方法の欠点を克服し、拒絶反応診断において、早く、正確、且つ明瞭なテスト結果を提供できる。したがって、該方法の応用は、臨床における免疫抑制剤の投与量の調整ガイダンスを提供すると共に、移植物の生存期限を延長し、移植患者の生存品質を向上させることに対して、極めて重要な意義を有している。
【0006】
病原微生物の感染、例えばB型脳炎ウィルス、麻疹ウィルス、水痘ウィルス、結核菌等の感染性疾患においては、全て潜伏期を有し、この期間及び発病初期においては、大半が非特異症状、例えば発熱等で表わされるだけあって、特異的表現がなく、しかもこれらの疾患の診断は、常に該疾患の典型的な臨床症状(特異性表現)の出現に依存しているが、典型的な症状は一般的に割りと遅く出現し、あるものにいたっては、ずっと典型的な症状がないので、常に誤診を招き、処置が遅延し、重大な結果を引き起こす。
【0007】
本発明はまた、病原微生物感染の診断にも適用されて、潜伏期又は発病初期で早く正確に確定診断を行うことができる方法を提供でき、各種の伝染病を早く発見し、早く隔離し、早く治療し、伝染と流行を避けることに対しても、重要な意義を有している。
【0008】
発明の開示
本発明は、生体活性化リンパ球の特異性を検出する方法であって、以下のステップを含む:
1)細胞培養に必要とされる通常の成分の外、細胞増殖に対する刺激活性を有するサイトカインの中和抗体及び/又は単核細胞に対するアポトーシス誘導作用、活性化抑制作用、又は増殖抑制作用を有するサイトカインを含有する培地で生体のリンパ球を活性化させる検出用抗原を希釈する;
2)前記培地を用いて被検の活性化リンパ球を含む単核細胞懸濁液を調製する;
3)前記検出用抗原と被検の活性化リンパ球を含む単核細胞とを細胞培養板に加えて、一緒に培養する;
4)試験ウェルと陰性対照ウェルの検出可能な信号の差異を比較することによって、検体中に抗原特異性の活性化リンパ球が存在するかどうかを確認する。
【0009】
本発明の方法は、何らかの抗原にて刺激された生体が生成した活性化リンパ球の特異性検出に好適に用いられる。
【0010】
本発明で使用される抗原は、同種異系抗原,異種抗原、又は各種の病原性微生物の抗原である。同種異系抗原又は異種抗原検体は、一種類の抗原であってもよいし、単一の個体又は複数の個体からの混合抗原であってもよい。その存在様式は、顆粒抗原の形態で、ヒト又は動物の細胞膜上に存在するものであってもよいし、真菌、細菌の細胞膜又は細胞壁上に存在するものであってもよいし、ウィルスの膜又はキャプシド(capsid)上に存在するものであってもよい。また、可溶性抗原の形態で溶液に溶解したものであってもよい。
【0011】
同種異系抗原は対立遺伝子の直接又は間接生成物であり、該対立遺伝子の生成物は抗原として同一種の他のメンバーに認識される。該対立遺伝子の生成物には、ポリペプチドだけではなく、特異多糖類と、対立遺伝子にコードされた酵素にて合成される脂質も含まれる。本発明で使用される同種異系抗原は組織適合性抗原に属し、主要組織適合性抗原(MHC)(ヒトでは「HLA」と、ブタでは「SLA」と、サルでは「MAMU」と、キイロヒヒでは「PACY」と、マウスでは「H抗原」と、ラットでは「RT1抗原」等と呼ばれる)とマイナー組織適合性抗原(mH−antigen)の二群を含んでいる。
【0012】
異種抗原は、二つの種の一種だけにあり、他の種に認識され得て免疫応答物質を生成する物質、例えばポリペプチド、特異性多糖類、脂質等をいう。例えば、ブタの器官がヒト、サル、ヒヒ、チンパンジー等に移植された場合に、ブタの体内にはあるが、ヒト、サル、ヒヒ、チンパンジー等の体内にはない前記物質が、異種抗原である。
【0013】
病原性微生物抗原は、一種類の細菌又はウィルスの某かの特異性抗原であってよく、このような細菌又はウィルスの混合抗原(各種の細菌又はウィルスは多種の抗原を発現する)であってもよい。その存在形態は、非イオン性洗浄剤、脂溶剤又は10%ホルムアルデヒドで処理した細菌又はウィルス顆粒の形態であってよく、細菌又はウィルスの抗原をヒト又は動物の細胞株の細胞膜上に発現させてもよいし、溶液中に溶解させた可溶性抗原の形態であってもよい。
【0014】
本発明において、標的抗原とは、被験者の体内で特異的にリンパ球を活性化する可能性がある、検出により確認又は排除されることが期待される検出用抗原をいう。
【0015】
本発明において、無関係抗原とは、被験者の体内で特異的にリンパ球を活性化する可能性がない、検出における陰性対照としての抗原をいう。無関係抗原は検出目的によって異なり、別途添加してもよいし、同じ検出板内に陰性対照抗原として相互に添加されてもよい。
【0016】
本発明で使用される抗原は、顆粒状抗原、例えば、某かの又は若干のヒトHLA抗原を持つ細胞、細菌や、ウィルスであってよいし、某かのウィルス又は細菌抗原を持つ細胞、細菌や、ウィルス等であってもよい。また、可溶性抗原、例えば、同種異系又は異種抗原分子又は某かのウィルス又は細菌の某かの特異性蛋白質分子であってもよい。
【0017】
本発明で使用される抗原は、一種の同種異系又は異種抗原分子であってよく、多種又はヒトの全てのHLA及びmH抗原分子の混合物であってもよい;また、一種のウィルス又は細菌の特異性抗原であってよいし、数種のウィルス又は細菌の混合抗原であってもよい。単一抗原を用いる場合と混合抗原を用いる場合の区別は、それらの結果が提示する診断の精度が異なることである。例えば、同種異系抗原の混合抗原を用いて検出を行った場合の陽性結果は、同種異系抗原に特異的に活性化されたリンパ球があることしか提示しない、即ち生体はすでにドナーの器官を攻撃する拒絶反応を起動しているが、どの抗原がリンパ球の活性化を誘導し拒絶反応を引き起こしているのかを確定できない。一方、各単一抗原でヒトの全てのHLA及びmH抗原を含む検出板を調製して検出を行えば、陽性の結果は、生体内の活性化リンパ球がどの又はどれらの同種異系抗原に誘導され活性化されたかを明確に示してくれる。ウィルス又は細菌感染性疾患の診断も同様で、例えば、RSウィルス、コロナウィルス、アデノウィルス、インフルエンザウィルス及びパラインフルエンザウィルス、麻疹ウィルス、水痘ウィルス、ムンプスウィルス、疱疹ウィルス等の混合抗原で検出した場合、その結果としての陽性は、患者が前記ウィルス中の若干の病原体に感染したことしか示すことができず、どのウィルスに感染したのかを確定できない。しかし、単一の某かのウィルス特異性の蛋白質を抗原として使用する、又は相対的に単一の某かのウィルスを抗原として使用すると、どのウィルスに感染したかを確定することができる。
【0018】
本発明で使用される抗原は、以下のような方法にて得ることができる:
1.器官適合性を有する適当数のレシピエントを選定し、それらの末梢血のB細胞膜上のHLA抗原のコンビネーションにヒトの全てのHLA−クラスIとクラスII及びmH抗原を含有させると、各人のこれらHLA抗原のコンビネーションが自然と形成されるので、必要に応じていくつかのコンビネーションを選択して用いればよい。然る後に、彼らから末梢血0.5mlを採取し、適量の細胞培地(例えば、ウシ新生児又はウシ胎児の血清(GIBCO社)を10%含む1640培地(GIBCO社)又はDMEM(GIBCO社)又はEagle(GIBCO社)培地)を含む細胞培養瓶に入れ、同時に各培養瓶に適量のB958細胞株(ATCCから商業的に入手可能)の細胞培養上澄み液(該細胞株が培養過程においてEBウィルスを生成し培養液中へ放出する)を入れる。その量は、その中に含まれるEBウィルスが充分にレシピエントの0.5ml末梢血中の全部のB細胞を形質転換できる量を適量(一般的に、B958細胞(50万個/ml)の培養三日後の上澄み液が約5〜10mlあればよい)とする。その後、細胞培養瓶を37℃下で、CO2インキュベーター内に置き、5日おきに培養液5〜10mlを加えつつ15日程度培養する。その培養時間の長短は培養瓶中に塊状に浮遊成長する腫瘍細胞が観察できることを基準として決定される。塊状に浮遊成長する腫瘍細胞が出現した後、一般細胞を培養すべく液を取り替え、通常の細胞培養を同様に行う。EBウィルスを消滅させるために、これらの細胞及びB958細胞と接触した全ての物品と培養上澄み液に煮沸消毒を行うことを要求するにすぎない。EBウィルスは非常に広く分布しており、正常者の鼻咽喉等の部位にさえEBウィルスが存在しているにもかかわらず、前記消毒は依然として必要な予防措置である。レシピエントの末梢血に上述の処理を行って、各自のB細胞株が調製される。これらの細胞に対してクローン化、増殖、通常の細胞としての凍結保存を経て種を保存すると、いくつかのHLA抗原及び/又はmH抗原をそれぞれ安定して発現する細胞系を確立できる。
【0019】
2.ヒトHLAとmH抗原を含む細胞株は、さらに以下の遺伝子工学的方法にても得ることができる:
抗原担体として、ヒトHLA及び/又はmH抗原を発現しないヒト細胞株、例えばU937(ATCC社から商業的に入手可能)、K562(ATCC社から商業的に入手可能)等を選択し、分子生物学の通常の技術に従って、上述の選定されたレシピエントそれぞれの末梢血の白血球中mRNAを抽出し、逆転写PCR増幅、スプライシング、連結等の通常の遺伝子工学技術で、それぞれ各種のHLA抗原を発現できる発現ベクターを構築してから、前記発現ベクターをU937又はK562又は他のヒトHLAとmH抗原を発現しない細胞にトランスフェクションして発現させ、各種HLA抗原をそれぞれ発現できる細胞株を確立する、即ち、ヒトHLA抗原の全てをそれぞれ発現させる。その発現ベクターは、各種の逆転写ウィルスベクターから選択される一種を使用してもよく、文献(Immunogenetics 25:1−6,1987)等を参照して、文献に記載の方法でベクターを選択して抗原を発現させる。HLA抗原ごとにそれぞれ発現細胞株を確立し、細胞株ごとに一種のHLA抗原だけを発現させ、100程度の細胞株を確立することによって、これらに全てのヒトHLA抗原を含有させ、前記のHLA抗原を発現する細胞株に対して、クローン化、細胞増殖、通常の凍結保存を行って種を保存する。即ち、某かのヒトHLA抗原又はmH抗原をそれぞれ安定して発現する細胞系を確立できる。
【0020】
3.ヒトHLAとmH抗原を含む細胞株は、更に以下の方法でも得ることができる:
3.1 腫瘍細胞株として既知の、ヒトHLA又は/及びmH抗原を発現し又は発現しないヒト細胞株、例えばRaji(ATCC社から商業的に入手可能)、U937(ATCC社から商業的に入手可能)、K562(ATCC社から商業的に入手可能)、又はマウスの腹水腫瘍細胞系SP2/0等を選択し、某かの既知HLA抗原を含むヒト末梢血B細胞を選択し(文献(Abe等、J Immunol Methods、90:111−123)、『体外培養の原理と技術』(薛慶善編集、科学出版社発行、2001年初版)、『SELECTED METHODS IN CELLUAR IMMUNOLOGY』(Edited by BarbaraB. Mishell and StanleyM. Shiigi W. H. Freemanand Company, San Francisco,1980)、及び『簡明免疫学技術』(朱正美、劉輝編集、科学出版社発行、2002年7月初版)を参照)、若干の細菌リポ多糖類(LPS)(SIGMA)(培養液中の最終濃度:2〜25μg/ml)を添加し、B細胞成長因子(BCGF)(自分で調整、3.2を参照)、抗ヒトIgM(SIGMA社)、アメリカヤマゴボウ(PWM)(SIGMA社)(培養液中の最終濃度:1〜25μg/ml)、及びブドウ球菌A蛋白質(SIGMA社)(培養液中の最終濃度:1/1000〜1/10000)を用いて2〜3週間共培養した後、『モノクローナル抗体技術』(徐志凱編集、陝西科学出版社発行、1992年1月初版)を参照し、Raji、U937又はK562細胞を、前記選択し、B細胞成長因子(BCGF)、抗ヒトIgM、ブドウ球菌A蛋白質、細菌リポ多糖類、アメリカヤマゴボウ(PWM)で2〜3週間刺激された、既知HLA抗原を含むヒト単核細胞と共に融合させて、不死化したいくつかのHLA抗原を安定して発現する細胞株を得る。この方法により、各種のコンビネーションが異なるHLA抗原を発現する細胞株を得る。これにより、各種の細胞株を確立でき、前記細胞株に殆ど全てのヒトHLA抗原を含有させる。
【0021】
3.2 B細胞株の確立:『体外培養の原理と技術』(薛慶善編集、科学出版社発行、2001年初版)を参照
1)リンパ球の調製:既知のHLA抗原を有する患者の末梢血を採取し、ヘパリン(Sigma社)で抗凝集させ、リンパ球分離液(Sigma社)を用いてその単核細胞を分離し、10%FCSのRPMI 1640培養液(GIBCO社)で密度1〜106個/mlの細胞懸濁液とし、細胞培養瓶に入れ4〜8時間培養し、細胞培養瓶を揺り動かし細胞を浮遊させ、遠心管に注いで1000r/minで10分間遠心分離し、沈降物を精製されたリンパ球とする。
2)BCGFを含む培養上澄み液の調製:1%FCS(GIBCO社)を含むRPMI 1640細胞培養液を用い、リンパ球の密度が2×106個細胞/mlの懸濁液となるように配合した。最終濃度が2pg/mlになるまでPHA(SIGMA社の製品)を添加し、培養瓶に入れた。飽和湿度、37℃、5%CO2のインキュベーター中で3〜4日培養する。培養物を集めて遠心管に入れ、4℃、1500r/minで10min間遠心分離する。上澄み液を採集し、粗製BCGFとした。−20℃で保存する。
3)10%FCSを含むRPMI 1640培養液を用いて、リンパ球の密度が1×106個/mlの懸濁液となるように配合した。最終濃度が20μg/mlになるまで抗ヒトIgM F(ab)2フラグメント(Sigma社)を添加し、最終濃度が10%になるまで粗製BCGFを添加し、培養液中に最終濃度が2〜25μg/mlになるまで細菌リポ多糖類(LPS)(SIGMA社製品)を添加する。
4)24ウェル板に細胞懸濁液(1ml/各ウェル)を加え、37℃下、CO2インキュベーター中で培養する。3〜4日おきに一回、半量の液を取り替える、即ち、まず各ウェルから培養上澄み液0.5mlを吸取し捨て、次に20μg/ml抗ヒトIgM F(ab)2フラグメント、10%の粗製BCGF、及び培養液における最終濃度が2〜25μg/mlである細菌リポ多糖類(LPS)を含有する新鮮な培養液を添加する。約3〜5週間培養した。成長クローンが比較的大きい場合には、細胞を培養瓶に移送し培養する。即ち、確立されたものは、既知のHLA抗原を含むB細胞株である。
5)この方法でそれぞれ異なるHLA抗原を発現するB細胞株を調製できる。しかも、前記細胞株には殆ど全てのヒトHLA抗原が含まれている。
【0022】
4.ヒトHLA抗原とmH抗原を含む細胞株は、さらに以下の方法にても得ることができる:
集団から、若干の、他の人間と同じHLA抗原を持っていない個体又は十数個のHLA抗原に関して他の人間と同じHLA抗原が少ない個体を選択してそれらの末梢血を採取し、方法1に記載の方法に従って前記個体のB細胞株を確立し、次いで、前記細胞株を担体として、遺伝子工学の方法(例えば、方法2に記載の方法)によって、前記細胞株に存在しない若干のHLA又はmH抗原を該細胞株に発現させる。これによれば、用いる細胞株が少なくても、出来るだけ多くのHLA抗原を持たせることができる。結果的に、出来るだけ少ない細胞株で全てのヒトHLA抗原とmH抗原を発現させることを実現できる。また、このような考え方によれば、かなり多くHLAクラスII抗原を発現するRaji細胞株(ATCC社から商業的に入手可能)又はDandi細胞株(ATCC社から商業的に入手可能)を抗原ベクターとして選択し、数個の細胞株を確立するだけで、これまでに発見されているヒトの全18個のDR抗原を細胞の表面に含有させることができる。
【0023】
5.前記方法又は他の方法に従って得られた、例えば、直接、ヒト又は動物脾臓又は末梢血から得られた、全てのヒトHLA抗原を発現する細胞又は細胞株(培養、増幅後)を混合又は分別し、無菌ddH2Oを用い、37℃で0.5〜2hインキューベートし、細胞を充分に粉砕した後、低温高速遠心機(3000g〜20000g)で20分間、細胞膜の遠心・沈降を行い、上澄み液を捨て、沈降物を凍結乾燥して使用まで保管する。使用する場合には、細胞培地で希釈して単一又は混合HLA顆粒抗原を得る。実際上、脂質体上にHLA抗原を持っている。その希釈濃度は試験の要求に応じて決められる。
【0024】
6.本発明で使用されたHLA抗原は、前記の顆粒抗原の外、可溶性抗原であってもよく、前記抗原は以下の方法にて得ることができる:
方法2で構築されたHLA抗原発現ベクターは、培養したヒト細胞に発現されてよく、原核細胞又は他の真核細胞(例えば、酵母菌)に発現されてもよい。発現したHLA抗原(方法を問わない)は、10%ホルムアルデヒドでの固定、洗浄を経て、直接、抗原として使用される。また、通常の親和性クロマトグラフィ(例えば、抗B2マイクログロブリン抗体(第四軍医大学免疫教室提供)、抗HLA一次抗原又は二次抗原抗体にて調製された親和性クロマトグラフィカラム(第四軍医大学免疫教室提供)を調製)、又は他の蛋白質精製技術により精製し、HLA抗原分子精製品を得、次の試験に用いた。
【0025】
7.病原性微生物特異性抗原の調製:
各種病原体、例えば麻疹ウィルス、水痘ウィルス、結核桿菌等の調製については、『体外培養の原理と技術』(薛慶善編集、科学出版社発行、2001年初版)、『診断と実験ウィルス学』(鄭州大学出版社発行、2002年初版、楊占秋、劉建軍、肖紅、丁暁華編集)、『医用実験ウィルス学』(杜平編集、人民軍芸出版社発行、1985年初版)、『現代結核病学』(人民軍医出版社発行、2000年初版、張敦熔編集)等の資料を参照できる。各種病原性微生物のそれぞれ異なる成長増殖特性に応じて、動物の体内(in vivo)又は体外(in vitro)で培養し、それぞれの異なる方法に従って、精製することにより、前記病原体の精製品又は相対的精製品を得た。前記の相対的精製品としての病原体を、60CO照射、0.1〜10%ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、非イオン性洗浄剤又は脂溶剤(例えばエーテル、クロロホルム)による処理にて不活性化し、抗原として使用した。また、各種の病原性微生物の特異性抗原は、遺伝子工学によって発現させた前記病原性微生物の特異性抗原であってもよい。前記抗原は、ヒト又は動物細胞に発現されてもよいし、原核又は真核細胞に発現されてもよい。前記細胞を、直接、抗原として使用してよく、また親和性クロマトグラフィ又は他の蛋白質精製技術により前記病原微生物の特異性抗原を精製した後使用してもよい。
【0026】
8.本発明で使用する抗原は、異種抗原、例えばヒト異種移植における適合するドナーブタ(例えば、各種のトランスジェニックブタ、近交系ブタ等)の抗原、又はマウス抗原、ラット抗原、モルモット抗原等であってもよい。その抗原は、それぞれ、前記の方法で自分の細胞系を確立でき、異種移植時の検出抗原とし得る。
【0027】
9.本発明の抗原は、文献を参照して自分で調製することができるし、また商業的に入手することもできる。例えば、B型脳炎ウィルス、麻疹ウィルス、灰白髄炎ウィルス、ジフテリア桿菌等の抗原は、全て前記病原体のワクチンを商業的に入手することができる。
【0028】
本発明で使用できる抗原は含み広範囲にわたっており、全ての外来の、特異的に生体リンパ球を活性化させる物質が均しく本発明の抗原として使用でき、前記抗原に特異的に活性化されたリンパ球が生体内に存在するか否かの検出に用いることができる。
【0029】
上記の方法又は他の方法により得られる、単一又は混合の抗原、顆粒性抗原又は可溶性抗原、同種異系抗原又は異種抗原、ヒトHLA抗原又はマウス、ラット、ブタ等の動物抗原や、細菌、ウィルス等の病原性微生物抗原、及びヒトが用いる各種ワクチン抗原は、生体リンパ球を特異的に活性化させる抗原であれば、検出抗原として、抗原に対応する特異性活性化リンパ球が生体内に存在するか否かの検出に用いることができる。
【0030】
前記の方法により得られる、ヒト又は動物細胞に発現された抗原や、細菌細胞壁又はウィルス膜又はカプシド上に発現された抗原を、マイトマイシンによって、又は0.1〜10%ホルムアルデヒド又は非イオン洗浄剤及び脂溶剤(例えばアセトン、キシレン、クロロホルム等)によって、不活性化させた後で検出用抗原として使用でき、特別な場合には、このような処理をせずに直接使用してもよい。親和性クロマトグラフィ又は他の蛋白質精製方法により得られるかなり純粋な精製蛋白質抗原(可溶性抗原)及び脂質体上に吸着された標的抗原は、直接、検出抗原として使用できる。
【0031】
無菌操作を経て得られる前記の抗原を、個別に又は混合して(異なる目的に応じて各種の組合せを行う)使用できる。これらの抗原は、通常のリンパ球分離液で単核細胞を分離する方法により得られる患者又は被験者の末梢血の単核細胞と共に培養される。その単核細胞及び抗原を希釈した培養液に、通常の細胞培養時に添加される子牛又は牛胎児の血清(市販の無血清細胞培養液で培養してもよい)の外、サイトカイン活性中和抗体及び/又は細胞増殖抑制性サイトカインと、免疫抑制剤及び/又は制癌剤を添加してもよい。前記免疫抑制剤と制癌剤には、プログラフ(FK506)、シクロスポリンA、Cのようなシクロスポリンシリーズ、シクロホスファミド、アザチオプリン、ラパマイシン、RS−61443(ミコフェノール酸モフェチフ,MM,分子式C24H11NCLO7)(マイコフェノール酸(mycophenolic acid,MPA,分子式C17H11O)のエステル類誘導体)、BQR(6−フルオロ−2−3メチル−4−キノリン酸)、デオキシスペルグアリン(deoxyspergualin)、ヒト急性Tリンパ球白血病細胞株JMが分泌した免疫抑制因子、副腎皮質ホルモン(例えば、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン等)、トポイソメラーゼ(topoismerase)抑制剤[カンプトテシン(CAM)、エトポシド(VP-16)]、アルキル化剤[シスプラチン、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブチル、カルムスチン等]、代謝拮抗薬[メトソレキセート、シタラビン、チミジル酸シンテタ−ゼ抑制剤、ジニトロゲンテトラヒドロ葉酸等]、レチノイン酸類化合物−ビタミンA誘導体[オールトランスレチノイン酸、パルミテート キサントプシン(palmitate xanthopsin)、4−N−ヒドロキシベンゼン レチノイン酸−アンモニア(4-N-hydroxybenzene Retinoic-ammonia)]及びその他の潜在的に免疫抑制誘導作用又は腫瘍細胞アポトーシス誘導作用を有する薬物が含まれる。上述の各種抗原の作用は、その特異性活性化リンパ球の活性を抑制したり、その特異性活性化リンパ球のアポトーシスを誘導することであり、サイトカイン活性中和抗体及び/又は細胞増殖抑制性サイトカインの作用は、活性化リンパ球の受動アポトーシスを誘導することであり、後述する免疫抑制剤の作用は、試験結果をより安定、正確、且つ敏感なものとし、陰性結果と陽性結果のコントラストを顕著にすることである。
【0032】
培養液への各種免疫抑制剤と制癌剤の用量は全く同じにする必要はなく、各種薬物の特性及びメーカーの相違に応じて、薬物の濃度を調整・制御すればよい。その濃度は、一般的に、該薬物の説明書における最低血中薬物維持濃度(ボトム値)の約1000倍程度(その用量範囲:約0.001ng-100μg/ml)であり、例えば、FK506の用量範囲は約0.001ng-10μg/ml(最適使用範囲:約0.01ng-100ng/ml)、シクロスポリンAの用量範囲は約0.01ng-10μg/ml(最適用量範囲:約0.1ng-1μg/ml)である。その使用濃度は、検査結果の再現性を良好なものとする最低濃度をもって適合濃度とする。免疫抑制剤と制癌剤の選択・使用は、状況に応じて、その中から選択した一種を単独に使用してよく、数種を混合して使用してもよい。
【0033】
細胞増殖を刺激する活性を有するサイトカインの中和抗体は、インターロイキン1、2、4、3、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、インターフェロン(−α、β、ω、γ)、顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー形成刺激因子(M-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー形成刺激因子(GM-CSF),幹細胞因子(SCF)、血小板産生因子(TPO)、神経成長因子(NGF)等、リンパ球、単球細胞等の単核細胞に対する活性化促進作用と増殖促進作用を有する全てのサイトカインの中和抗体を含み;リンパ球、単球細胞等の単核細胞に対するアポトーシス誘導作用、活性化抑制作用、及び増殖抑制作用を有するサイトカインは、IL-2,IL-4、IL-10、IL−15、形質転換増殖因子β(TGF-β)、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子(TNF)、CTLA4、及びその他のサイトカイン又はサイトカイン融合蛋白質、例えば細胞傷害性T細胞関連抗原4(CTLA4)とヒト免疫グロブリンG(IgG)Fcフラグメントの融合蛋白質CTLA4.Ig等を含む。
【0034】
ここで、中和抗体とは、サイトカインの生物学的活性を抑制する作用を有する抗体をいう。中和抗体は、細胞の活性化・増殖を刺激する作用を有するサイトカインの生物学的活性を抑制して、その生物学的作用を発揮できないようにする。
【0035】
前記のような中和抗体と抑制性サイトカインの作用は、特異性抗原を補助して特異性活性化リンパ球に対する特異性抑制を誘導する、即ち、特異性抗原と協同して、抗原特異性活性化リンパ球及び単球細胞等の細胞活性を抑制できることである。ここで、異なるサイトカインはそれぞれ異なる作用を有しており、異なる施設で生産された同一のサイトカイン又はサイトカイン中和抗体の活性単位又は力価が異なる等を理由として、その培養液における中和抗体の最終濃度には大きな差があり、それは、1μg〜10mg/mlの範囲にある。その好ましい濃度は、高感度を有して検出結果の再現性が達成できる濃度である。抑制性サイトカインの使用濃度は活性単位で計算され、一般的に、最終濃度は、0.01〜1000個活性単位/ml(通常は0.1〜50個活性単位/ml)の範囲にある。その最適濃度は、もっとも敏感で正確な検出結果が得られる濃度である。
【0036】
前記免疫抑制剤、サイトカイン活性中和抗体及びリンパ球又は単球細胞の活性を抑制するサイトカインは、種類が多く、その作用も複雑であり、検出時に、選択した一種を単独で使用してもよいし、数種を組合せて使用してもよい。その組合せは制限されず、検出を敏感、正確にさせ、再現性に優れることを基準として行えばよい。
【0037】
前記の、各種の方法により得た標的抗原、無関係対照抗原、及びリンパ球分離液で分離された被験者の単核細胞を、濃度が適当で組合せが合理である免疫抑制剤と制癌剤、サイトカイン中和抗体又は/及び抑制性サイトカインを含む細胞培養液で、適当な濃度に希釈する。
【0038】
例えば、方法1、2、3、4により得られた抗原、すなわち標的抗原を持つ細胞を抗原とする時、抗原細胞の濃度は約0.001〜10×106/ml程度、好ましくは約1〜2×106/ml程度であるし、被験者の単核細胞の濃度は約0. 1〜5×106/ml程度、好ましくは約1〜3×106/ml程度である。可溶性精製抗原であれば、その特異性標的抗原の濃度(非特異性蛋白質を含まない)は約0.1μg/ml〜10mg/mlである。方法5により得られる抗原の使用濃度は、約0. 1〜100×106個−細胞を粉砕した後の細胞膜抗原/1ml−希釈後使用液であり、一般的には1〜100×106個−細胞を粉砕した後の細胞膜抗原/1ml−希釈後使用液である。方法6、7により得られる抗原は、一般的に標的抗原で計算され、0.1μg〜10mg/ml−使用液となるように配合される。
【0039】
前記の適当な濃度に希釈された標的抗原と無関係な陰性対照抗原を、それぞれ被検の単核細胞検体と共に、適当な細胞培養板に滴下し、混合培養する。 各ウェルに抗原と被検細胞をそれぞれ100μlずつ添加し、37℃下で、CO2インキュベーター中で培養する。本発明方法にて提供された細胞培養環境において、被検体に存在する活性化リンバ球がその特異性抗原に遇うと、前記活性化リンバ球の活性が顕著に抑制される。細胞培養3〜72時間(通常は20時間)後、試験ウェル、無関係抗原対照ウェル及び抗原無添加単核細胞のみを含むウェルの細胞活性を検出する。各ウェルの細胞活性の変化に基づき、被検単核細胞に既知の抗原に対応する活性化リンバ球が存在するか否かをただちに判定できる。その細胞活性の検出方法には直接法と間接法の二種がある。直接法とは、ある物質を直接ウェルに添加し、ウェル細胞のある物質に対する清浄化能(ある物質、例えばテトラブロモフルオレセイン、トリパンブルー、エオシンが細胞内に入ることを阻止する能力)又は転化能力(可溶性MTTをホルマザン類結晶に転化する能力)を検出可能な信号としてウェル細胞の活性を評価するものであり;間接法とは、本発明の反応原理に基づき、適当な検出方法と検出可能な信号を選択するもの、例えば、細胞アポトーシスにより細胞活性が低下するので、細胞アポトーシスを判定する各種の方法を検出可能信号として使用し、アポトーシスした細胞の数により、ウェル細胞の活性変化の逆推定を行うものである(『細胞アポトーシスの分子医学』(胡野、凌志強、単小雲編集、2002年8月、軍事医学科学出版社発行)を参照)。
【0040】
本発明における検出可能信号とは、ある方法により、又はある物質を添加し、試験ウェルにある被検単核細胞の反応・変化の結果を、直視又は観測機器を介して視認できる信号、即ち被検単核細胞の反応・変化の結果の表現(展示)方式である。
【0041】
本発明の検出可能信号には主に以下の数種がある:
1、MTT比色法:各ウェルにMTTを添加し、各群の細胞にて可溶性MTTから転化されてなるホルマザン類(formazane)結晶の量を観測し、これにより、各群の細胞の活性の変化(増加又は減衰)を把握する。
【0042】
2、細胞染色法:『細胞アポトーシスの分子医学』(胡野、凌志強、単小雲編集、2002年8月、軍事医学科学主出版社発行)を参照。本発明の方法の反応原理に基づき、ヘマトキシリン−エオシン染色法、メチルグリーン−ピロニン染色法、ギームザ染色法、ライト染色法により、各群の細胞に染色を行って、顕微鏡で直接観察し、アポトーシスした細胞の特徴変化に基づき、各群細胞におけるアポトーシスが発生した細胞の割合をカウントする。
【0043】
3、蛍光抗原染色法:『細胞アポトーシスの分子医学』(胡野、凌志強、単小雲編集、2002年8月、軍事医学科学主出版社発行)を参照。本発明の方法の反応原理に基づき、アクリジンオレンジ(Acridine orange)、プロピジウムヨージド(Propidium Iodide)、エチジウムブロマイド(Ethidium Bromide)、ローダミン123、フルオレセインイソチオシアナート(標識抗体)等により各群の細胞を標識し、アポトーシスした細胞の特徴変化に基づき、蛍光顕微鏡で各群細胞におけるアポトーシスが発生した細胞数を観察する。
【0044】
4、酵素結合免疫吸着測定法:『細胞アポトーシスの分子医学』(胡野、凌志強、単小雲編集、2002年8月、軍事医学科学主出版社発行)を参照。本発明の方法の反応原理に基づき、抗ヒストン抗体と抗DNA抗体を利用し、細胞アポトーシスの酵素結合免疫測定法により、各群細胞における、細胞アポトーシスが原因となった破断の単鎖又は二本鎖DNAの量を検出し、これにより、各群細胞におけるアポトーシスが発生する細胞数を推定する。
MTT方法と細胞アポトーシス検出方法の間には以下のような相互対応関係がある。即ち、MTT方法においては、生細胞が可溶性MTTを青紫色のホルマザン類(formazane)結晶物質に転化する原理(死細胞はこのような能力を有しない)を利用して各群細胞における生細胞の活性を検出する。生細胞が多いほど、細胞の活性が強く、可溶性MTTから転化した青紫色のホルマザン類(formazane)結晶物質の量が多い;細胞アポトーシス検出方法においては、各群細胞のアポトーシス状況、即ち死細胞の量を検出している;試験において、各群に投入される被検生細胞は一定であり、各群におけるアポトーシスが発生した細胞数が多いと、その中の生細胞が少なく、可溶性MTTから転化される青紫色のホルマザン類(formazane)結晶物質の量が少なくなり、逆の場合には、可溶性MTTから転化される青紫色のホルマザン類結晶物質の量が多くなる。
【0045】
上記分析の通り、本発明方法の試験結果は様々な方法と様式により各種の検出可能信号に転化されるが、比較の結果、本発明においては、テトラゾール塩比色がその中で最も便利で敏感な試験結果表示方法であると考えている。細胞培養が終わった後、各ウェルにテトラゾール塩(MTT 5mg/ml)10〜20μlを添加し、引き続き37℃のCO2インキュベーター中に置き0.5〜6h、一般的には1〜2h培養すれば、各ウェルの、黄色い可溶性MTTから転化した青紫色のホルマザン類結晶物質の量を倒立顕微鏡で直接観察できる。これとは別に、培養が終わった後、各ウェルの培養上澄み液を除去してから、各ウェルにジメチルスルホキシド(DMSO)100〜150μlを添加し、5分間軽く振とうし、ホルマザン類結晶を充分に溶解させてから、マイクロタイター・プレート・スペクトロフォトメーターを用いて、490nm〜590nmの間の最大の吸光度を有する波長(一般的には550nmの波長を用いる)を選択して各ウェルの吸光度を測定し、その後試験ウェルと陰性対照ウェルの間の差異を比較し、これにより、被検体中に既知の標的抗原特異性活性化リンパ球が存在するか否かを判定することもできる。本発明における陰性対照ウェルは、更に如何なる抗原も添加しない、被検細胞のみを含有するウェルを含む。
【0046】
本発明の独創性は、既知の抗原により特異性活性化リンパ球を検出する、又は既知の特異性活性化リンパ球により特異性抗原を検出する方法を確立したことにある。その各種の抗原を調製・獲得する方法は本発明の根幹内容ではない。如何なる方法であってもそれにより得られる如何なる形式の抗原も、全て本発明の試験に用いることができ、且つ相応する試験結果を得ることができる。異なる抗原で検出することは、その検出された活性化リンパ球が異なる特異性を有することのみを示す。異なる抗原を使用しても、本試験の操作、試験結果の獲得、及び陰性/陽性の判定には影響を与えない。故に、本発明の検出に好適に使用できる抗原は多いが、ここでは、数個の実施例に限定して、本発明の試験操作、目的、及び意味を具体的に説明することにする。本発明の方法は、活性化リンパ球特異性試験(activated lymphocyte specifity assay(ALSA))と呼ばれ、本発明の対照試験は混合リンパ球培養(mixed lymphocyte culture(MLC))(Science 143,813-814,1964;Blood,23(1):108-116,1964)である。
【0047】
発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明の目的、意義を詳細に説明するために実施例を挙げるが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではないということが理解させるべきである。
【0048】
[実施例1]本発明方法の確立
一方向混合リンパ球(MLC)培養方法による活性化リンパ球の調製:
反応細胞と刺激細胞は、それぞれ、関係のない健康な試験志願者の末梢血に由来し、前記志願者のリンパ球は、市販のリンパ球分離液でそれらの末梢血を分離して得たものである。刺激細胞(その細胞膜上に発現したHLA抗原を刺激抗原として、反応細胞の活性化(細胞活性を増強する)又はアポトーシス(細胞活性を減衰する)を刺激する)は、マイトマイシン25μg/mlで処理し、生理食塩水で洗浄した後、その一部を初回一方向混合リンパ球培養に用いて、活性化リンパ球を調製した;残りの一部は、通常の細胞凍結保存方法で−70℃未満の温度下で凍結保存し、初回混合リンパ球培養における活性化リンパ球に再刺激を行うことに用いた。
【0049】
通常の初回一方向混合リンパ球培養を4日間実施した後、活性化されたリンパ球として反応細胞を得、これらの活性化されたリンパ球を無血清1640培地で一回洗浄してから、再度、反応細胞として本発明とその対照研究に用いた;本発明とその対照研究における刺激細胞として、上述の凍結保存されている、初回一方向混合リンパ球反応に用いられた細胞を使用した。反応細胞と刺激細胞は、全て、10%牛胎児血清(FCS)を含む1640培養液にて2×106個細胞/mlの細胞懸濁液とした。精製されたIL−2中和モノクローナル抗体(neutralizational monoclonal antibody、N-mAb)5C9は8mg/ml(第四軍医大学免疫教室より購入)であり、試験と対照試験は、全て、試験群と対照群に分けられた。実際には、対照試験は二次MLCであり、ALSA試験は二次MLC試験系統に15μlのN-mAbを添加したものである。
【0050】
ALSA試験のグループ:
Bグループ、試験群:反応細胞100μl+刺激細胞100μl+15μl N−mAb;
Cグループ、対照群:反応細胞100μl+10%FCS 1640培養液100μl+15μl N−mAb;
MLC試験のグループ:
Aグループ、試験群:反応細胞100μl+刺激細胞100μl;
Dグループ、対照群:反応細胞100μl+10%FCS 1640培養液100μl;
【0051】
細胞培養板は96ウェルの丸底細胞培養板であり、各グループに3個の二重ウェルを割り当て、全てのウェルに反応細胞100μlを添加した。更に、二つの試験グループには、刺激細胞100μlを、二つの対象群には、刺激細胞に代えて10%FCS 1640培養液100μlを、それぞれ添加した。ALSA試験の二つのグループには、各ウェルにIL−2中和モノクローナル抗体15μlを添加した。37℃のCO2インキュベーター中に細胞培養板を置き20時間培養した後、各ウェルに10μlのMTTを添加し、引き続き1h培養し、倒立顕微鏡で結果を観察した。更に、各ウェルの培養液を除去し、各ウェルにジメチルスルホキシド150μlを添加して青紫色の結晶物質を充分に溶解させた後、マイクロプレート・リーダーにて各ウェルにおける550nmの吸光度を測定した。
【0052】
【表1】

注:試験群と対照群の数字は全て三つの二重ウェルの平均値である;抑制率は刺激細胞(HLA抗原)が特異性活性化リンパ球を抑制した程度を表している;ALSA試験において、各ウェルにメチルプレドニゾロン(methylprednisolone)とFK506をその最終濃度がそれぞれ5μg/mlと0.125ng/mlとなるように添加した。MLC試験においては、免疫抑制剤を使用しなかった。抑制率=(試験群の三つの二重ウェルのOD550nmの平均値/対照群の三つの二重ウェルのOD550nmの平均値)×100−1で、「−」が抑制を、「+」が増強を表している。以下同様。
【0053】
ALSA試験とMLC試験において、試験群は全て反応細胞と同量の刺激細胞を添加しており、現在の免疫学理論に従えば、MLC試験における試験群の細胞活性は顕著に増強されているはずであり、少なくとも、MTTに対する処理能が反応細胞のみを含有した対照群よりも低くないはずである。しかしながら、表1から分かる通り、MLC試験結果は増強又は減衰を示しており、安定した結果が得られなかった;実際、現在の免疫学分野においては、MLCを用いて特異性活性化リンパ球(つまり二次混合リンパ球培養)を検出する可能性は遍く否定されている、即ち、MLC方法は活性化リンパ球の特異性検出には好適な方法ではない。ALSA試験において、試験群の細胞活性が対照群よりも明らかに減衰しており、これはMLC試験において出現すべき結果と全く逆で、その陽性結果は抑制性を示している、即ち、反応細胞中に対応する抗原に活性化されたリンパ球が存在する時、その試験群の活性化リンパ球の活性は抑制を示し、その対照群よりも、その細胞活性が顕著に減衰していた。しかも、異なる個体に由来した細胞の試験結果が一致しており、これは該方法が安定していることを示している。これより、MLC試験系にインターロイキン2中和モノクローナル抗体を添加し確立したALSA試験は、MLC試験と関係はあるが、その反応系に添加した成分、反応結果の表現形式、及びその結果の意義等が全てMLCと異なっており、これはALSA試験がMLC試験とは完全に異なる新たな試験方法になったことを示している。その中に免疫抑制剤を使用する目的は、主に試験結果の敏感性、安定性、及び再現可能性を向上することにあるが、拒絶反応が強い場合には、免疫抑制剤を添加しなくても比較的良い結果を得ることができる(実施例2における表4参照)。
【0054】
実施例2.移植拒絶反応の診断への本発明方法の応用
1)刺激細胞(検出用HLA抗原の細胞として)の調製:
心臓移植時に、無菌操作でドナーの脾臓を採取し、200メッシュの研磨網で供与者の脾臓細胞を磨砕し、それを無血清1640培養液(GIBCO社)にて二回洗浄(1500rpm)し、上澄み液を捨て、沈降物を無血清1640培養液で約1×108個細胞/mlの細胞懸濁液とし、通常のヒトリンパ球分離液(GIBCO社)で単核細胞を分離し、それを遠心機(2000rpm)で20分間遠心分離し、分離液と1640培養液界面上にある細胞層細胞を吸取して他の無菌遠心管に移入し、無血清1640培養液にて二回遠心・洗浄(それぞれ1500rpm、1000rpm)し、上澄み液を捨て(赤血球があれば、37〜40℃の0.83%NH4Cl溶液で懸濁させ、37〜40℃の水浴で10分間処理し、その後、無血清1640培養液で二回遠心・洗浄(1000rpm)する)、沈降物をマイトマイシン(Sigma社)25μg/mlを含む無血清1640培養液で約1×107個細胞/mlの細胞懸濁液とし、37℃の水浴で40分間作用させ、1000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を捨て、沈降した細胞を無血清1640培養液で三回遠心・洗浄(1000rpm)し、沈降物を細胞凍結保存液(『実用モノクローナル抗体技術』(徐志凱編集、陝西科学出版社発行、1992年初版)における処方に従って製造した)で約2×107個細胞/mlの細胞懸濁液とし、凍結保存管内に分注し、−70℃の冷蔵庫又は液体窒素で凍結保存して将来の使用に備えた。
【0055】
2)インターロイキン2中和モノクローナル抗体(第四軍医大学免疫教室で生産)を精製し、無血清1640培養液又はPBS溶液で6mg/mlとなるように配合し、デイスポーザブル注射針フィルターで除菌後、凍結保存管内に分注し、−20℃で凍結保存して将来の使用に備えた;テトラゾール塩(MTT、Sigmaの製品)を生理食塩水で5mg/mlの使用液とし、デイスポーザブル注射針フィルターで除菌後、凍結保存管内に分注し、−20℃で凍結保存して将来の使用に備えた。
【0056】
3)反応細胞(活性化リンパ球を含む可能性がある被検単核細胞)の調製:
心臓移植6ヶ月後(一般的に、心臓移植5日後に定期的検査を開始する。また拒絶反応があると疑われた時にも行われてよい)に、生検で拒絶反応が発生していないと確認されたレシピエントと、生検で一級及び三級拒絶反応が発生したと確認されたレシピエントの静脈血5〜20mlをそれぞれ採取した。これとは別に、心臓移植を行わなかった正常者の末梢血10mlを採取した。上述の方法に従って、それらの単核細胞をそれぞれ分離し、ドナー抗原特異性活性化リンパ球を含むであろう反応細胞とし、移植を受けていない正常者に由来する単核細胞を特異性活性化リンパ球を含まない反応細胞であるとして陰性対照試験(その試験の刺激細胞は前記のいずれかの移植患者からのドナー細胞である)を行った;無血清1640培養液で二回遠心・洗浄し、沈降物を20%牛胎児血清(GIBCO社)を含む1640培養液(その中に、1ml当たり0.125ngのFK506(商品名 プログラフ、アイルランド藤沢薬品社製、Fujisawa Ireland Limited)、及び5μgのメチルプレドニゾロン(ベルギーファルマシア・アップジョン社製、Pharmacia & Upjohn)を含む)で約2×10個細胞/mlの細胞懸濁液とし、使用まで置いた。反応細胞を製造すると同時に、凍結保存しておいたドナーの脾臓細胞を蘇生させ、それを無血清1640培養液で一回遠心・洗浄(1000rpm)し、沈降物を、前記の20%牛胎児血清と免疫抑制剤を含む1640培養液にて約2×10個細胞/mlの細胞懸濁液とし、これを刺激細胞(供与者HLA抗原を含む)として、使用まで置いた。
【0057】
4)ドナー細胞(刺激細胞)、レシピエント細胞(反応細胞)、IL−2中和モノクローナル抗体を96ウェル丸底細胞培養板に添加した。グループ分け及び用量は下記の通りである;
Aグループ:反応細胞100μl+刺激細胞100μl;
Bグループ:反応細胞100μl+刺激細胞100μl +IL−2中和モノクローナル抗体15μl;
Cグループ:反応細胞100μl +IL−2中和モノクローナル抗体15μl +細胞希釈用1640培養液100μl;
Dグループ:反応細胞100μl+細胞希釈用1640培養液100μl。
【0058】
グループ毎に3個の二重ウェルを割り当てた。インターロイキン2中和モノクローナル抗体を添加したグループ、即ちBグループとCグループはそれぞれALSA試験の試験群と対照群であり、インターロイキン2中和モノクローナル抗体を添加しなかったグループ、即ちAグループとDグループはそれぞれMLC試験の試験群と対照群である。陰性対照試験の刺激細胞は前記の心臓移植患者のいずれかからのドナー細胞であり、反応細胞は心臓移植が行われていない正常者の末梢血の単核細胞に由来するものである。前記の操作が完了した後に、培養板を37℃のCO2インキュベーター中に置き、培養した。
【0059】
5)MTT発色法での発色試験の結果:
前記細胞を20h培養した後に各ウェルにMTT 10μlを添加し、引き続き1h培養した後、倒立顕微鏡で直接各ウェルの黄色い可溶性MTTから転化した青紫色のホルマザン類(formazane)結晶物質の量を観察した。
【0060】
また、検出は比色法にて行うこともできる:まず各ウェルの培養液を除去し、各ウェルにジメチルスルホキシド(DMSO)150μlを添加し、5分間軽く振とうし、ホルマザン類結晶物質を充分に溶解させてから、マイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度を測定した(リファレンス波長の範囲:550nm)。
【0061】
A、倒立顕微鏡で直接観察した結果を図1、2、3、4(各図のマークA、B、C、Dはグループ名と一致している、例えばAはAグループである)に示す。
【0062】
図1は、反応細胞が、なにも臓器移植がなされていない正常者に由来するALSA試験とMLC試験における結果を倒立顕微鏡で直接観察した写真(10×4)である。図1から分かるように、ALSAの試験群(図1B)と対照群(図1C)の結果、MLC試験の試験群(図1A)と対照群(図1D)の結果には両者共に明瞭な差異がなく、反応細胞中には、刺激細胞が持っているHLA抗原に対応する活性化リンパ球がないことを示している。然し、ALSA試験の対照群の細胞活性はMLC試験の対照群の細胞活性よりも明らかに減衰しており、インターロイキン2中和モノクローナル抗体が細胞活性を抑制する作用を有していることを示している。
【0063】
図2は、生検で拒絶反応が発生していないと確認された心臓移植患者のALSA試験とMLC試験における結果を倒立顕微鏡で直接観察した写真(10×10)である。ALSA試験の試験群(図2B)の結果は対照群(図2C)の結果よりも明らかに減衰しておらず、反応細胞中に、刺激細胞(ドナー細胞)が持っているHLA抗原に対応する活性化リンパ球がないことを示している、即ちレシピエントがドナー細胞を攻撃する免疫反応が出現していないことを示しており、生検結果と一致している。
【0064】
図3は、生検で一級拒絶反応(first degree rejection)が発生していると確認された心臓移植患者のALSA試験とMLC試験における結果を倒立顕微鏡で観察した写真(10×4)である。左側の二つの写真は、ALSA試験の試験群(図3B)と対照群(図3C)の試験結果を示し;右側の二つの写真は、対照試験MLC試験の試験群(図3A)と対照群(図3D)の試験結果を示している。ALSA試験の試験群細胞活性はその対照群よりも明らかに減衰しており、反応細胞(レシピエント細胞)中に、刺激細胞(ドナー細胞)が持っているHLA抗原に対応する活性化リンパ球があることを示している、即ちレシピエントがすでにドナー細胞を攻撃する免疫反応を起動していることを示しており、生検結果と一致している。MLC試験の試験群と対照群の細胞活性には明らかな差異がなく、MLC試験は臓器移植の拒絶反応の診断法として好適ではないことを示している。
【0065】
図4は、生検で三級拒絶反応(third degree rejection)が発生していると確認された患者のALSA試験とMLC試験における結果を倒立顕微鏡で観察した写真(10×10)である。左側の二つの写真は、ALSA試験の試験群(図4B)と対照群(図4C)の試験結果を示し;右側の二つの写真は、対照試験MLC試験の試験群(図4A)と対照群(図4D)の試験結果を示している。図から見ると、ALSA試験の試験群の細胞活性は全体的に抑制されているが(図4B)、その対照群(図4C)の細胞活性は依然としてかなり強く、反応細胞(レシピエント細胞)中に、刺激細胞(ドナー細胞)が持っているHLA抗原に対応する活性化リンパ球があること、即ちレシピエントがすでにドナー細胞を攻撃する免疫反応を起動していることを示している。そのMLC試験の試験群の細胞活性は対照群よりも明らかに減衰しており(図4A)、この現象は反応細胞中に、そのドナーの抗原に対する活性化リンパ球がかなり多いことを示している;これは一級拒絶反応の場合(図3参照)には前記のような現象の出現がかなり少ないからである。
【0066】
上述の結果から、拒絶反応が発生している場合、ALSAの試験群の細胞活性はその対照群よりも明らかに減衰している(図3B、C;図4B、C)。図3B、図4Bは、ホルマザン類結晶物質の産生を示しておらず、レシピエントの単核細胞中にすでにドナー細胞に発現されたHLA抗原が活性化したリンパ球が存在していること、即ちレシピエントがすでにドナーHLA抗原に対する免疫反応を起動したことを示している。生検により、患者に一級及び三級拒絶反応がそれぞれ発生していることが確認されている。MLCの試験群と対照群の結果は、あるときには差異があり(図3A、3D)、あるときにはなく(図4A、4D)と、結果の変動がかなり大きく、該方法は活性化リンパ球の検出と臓器移植の拒絶反応の診断に対する好適な方法ではないことを示している。
【0067】
拒絶反応が発生していない時には、ALSA試験の試験群及び対照群の細胞活性は、MLC試験の試験群及び対照群よりも減衰している(図1B、1C)が、ALSA試験の試験群と対照群との間の細胞活性には明らかな差異がない(図1B、1C;図2B、2C)。
【0068】
B、比色法による検出:
ALSA試験の結果は、倒立顕微鏡での直接観察の外、比色法によっても示すことができる。まず各ウェルの培養液を除去し、各ウェルにジメチルスルホキシド(DMSO)150μlを添加し、5分間軽く振とうし、ホルマザン類結晶物質を充分に溶解してから、マイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度を測定した(リファレンス波長:550nm)。
【0069】
生検で一級拒絶反応が発生していると確認されたレシピエントの静脈血を採取し、被検リンパ球を調製し、前記のステップ1)〜4)を繰り返して、その中の刺激細胞の濃度を変化させ、比色法で測定して得た試験結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

注:表1に同じ。
【0071】
表2の結果は、ALSA試験の試験群の細胞活性がその対照群よりも明らかに減衰しており、その反応細胞中にドナーHLA抗原が活性化したリンパ球が存在していることを示している、即ちレシピエントがすでにドナー器官を攻撃する免疫反応を起動していることを示しており、これは生検の結果と一致している。ALSA試験の刺激細胞の濃度は106〜102/mlの範囲にあってよい、即ちこのような範囲にある刺激細胞濃度が、反応細胞中に抗原に対応する活性化リンパ球が存在するか否かの検出に用いられ得る。刺激細胞の濃度が102/mlよりも少ないと、反応細胞中に抗原に対応する活性化リンパ球が存在するか否か検出できない、即ち拒絶反応の診断に用いることができない。つまり、活性化リンパ球を検出する際には、検出用抗原が一定の濃度に達しているべきであり、少な過ぎる場合には、偽陰性(表2、刺激細胞の濃度が10/mlと10/mlである時の結果が生検結果と一致しない)が出現し、正確な試験結果を得ることができない。表2から、刺激細胞の濃度がそれぞれ10/mlと102/mlである時に、抑制作用が最も強く、それぞれ−39%と−29%であり、これは、文献(Annu.Rev.Immunol.1999,17:221-3)に記載の、抗原が多過ぎる又は少な過ぎる場合に特異性活性化リンパ球の能動アポトーシスを誘導することに寄与するという結論を更に証明している。
【0072】
生検で一級拒絶反応が発生していると確認されたレシピエントの静脈血を採取して被検リンパ球を調製し、前記のステップ1)〜4)を繰り返して異なる細胞の培養時間における試験結果を観察し、比色法で測定して得た試験結果を表3に示す。
【0073】
【表3】

注:表1と同じ。
【0074】
表3の動態観察結果は、ALSA試験の試験群の細胞活性は、その対照群よりも、細胞培養2時間後に明らかに減衰しており、その反応細胞中にドナーHLA抗原が活性化したリンパ球(これまで繰り返し説明してきたように、ALSA試験群の細胞活性がその対照群よりも明らかに低い場合、反応細胞中に刺激細胞が持っているHLA抗原に特異的に対応する活性化リンパ球があることを示している)が存在していることを示している、即ちレシピエントがすでにドナー器官を攻撃する免疫反応を起動していることを示しており、これは生検の結果と一致している;細胞培養7時間後に最大の抑制作用が発生しており、その抑制率は74%に達している。同時に、該結果は、ALSA試験方法を臨床検出に応用すると、そのわずか2時間後には生検の結果と一致する試験結果を安定し得られることを示しており、その、高速に検出できるという特徴を表している。反対に、表3におけるMLCの試験結果は、ときには増強し、ときには減衰したりして、安定した試験結果を得ることが出来ず、更にそれは活性化リンパ球の検出に用いるべきではないことを示している。
【0075】
前記のステップ1)〜4)を繰り返し、異なる拒絶反応が発生した個体に対して検出を行い、上述の比色法で検出した結果を表4に示す。その中で、マーク“*”を付したグループのALSA試験とMLC試験では全て免疫抑制剤が使用されていない。、その結果は、72時間細胞培養した後にMTTを添加した結果を観察したものである。
【0076】
【表4】

【0077】
表4の結果から、ALSA試験方法は、臨床上における拒絶反応の診断における生検結果とよく一致しており、生検での拒絶反応のグレード(級数)と本発明方法の結果(抑制率)とはまるで特定の関係があるようである、即ち、拒絶反応が強いほど、抑制率が高い。
【0078】
本方法にて、心臓移植患者15ケースに追跡監視を100人・回あまり行った。対照生検をのべ56ケース行った。本試験の検出結果では、陽性がのべ29ケースで、その中で生検で拒絶反応症状がないと確認されたものがのべ18ケースである。その18ケースの内、4ケースがIII級拒絶反応(III degree rejection)であり、5ケースがII級拒絶反応(II degree rejection)で、9ケースがI級拒絶反応(I degree rejection)であった。他の陽性11ケースについては、生検結果が不正常であったが、I級拒絶反応の診断基準に到達していなかったものと考えられる。本試験の検出結果が陰性であるとされたものがのべ27ケースあったが、それらの生検結果は全て陰性であった。
【0079】
【表5】

【0080】
両者の試験結果の間の一致性は80.3%、特異性は71%、敏感性は100%であった。
【0081】
表1、2、3、4及び図1、2、3、4の結果から、ALSA方法にて得られた結果は、非常に客観的なものであり、明確で、疑義がなく、しかも簡便で、高速で、標準化に便利なものであることが分かる。
【0082】
上述の通り、拒絶反応の発生はりんぱ球の活性化から開始されるので、活性化リンパ球の出現は病理変化よりも早いはずである。本方法は主に患者の末梢血にドナー抗原特異性の活性化リンパ球があるか否かの検出に重きを置いているので、本試験の結果は生検病理変化よりも早い可能性があり、これは試験においていわゆる偽陽性が出現した理由となっている可能性がある。表中の11ケースの偽陽性結果の生検切片から、I級拒絶反応の診断基準に到達していなくても、全く正常ではないとは言えず、逆に言えば、生検自身の不十分な結果を示していると考えられる。つまり、本発明の特異性の低さは、その敏感性が高いことによるものと考えられる。
【0083】
テスト結果の説明:各心臓移植患者に動態監視を行い、その監視結果と生検病理結果との比較検討を行った。
真陽性(TP):本方法にて陽性で、生検ではI級以上の拒絶反応が発生していた。
真陰性(TN):本方法にて陰性で、生検でも拒絶反応が発生していなかった。
偽陽性(FP):本方法にて陽性で、生検では拒絶反応が発生していなかった。
偽陰性(FN):本方法にて陰性で、生検ではI級以上の拒絶反応が発生していた。
一致性=(TP+TN)/(TP+TN+FP+FN)
特異性=(TN)/(TN+FP)
敏感性=(TP)/(TP+FN)
【0084】
前記の手続きに従い、100回あまりのALSA試験、MLC試験の結果、及び数十回の生検結果との対比より、本試験が拒絶反応の診断に用いられる結果判定基準を以下のようにまとめた:
【0085】
【表6】

【0086】
II.マイクロプレートリーダーでの各ウェルの吸光度の測定
2時間細胞培養した後、MTTを添加(10μl/各ウェル)し、引き続き0.5〜1.5時間培養した後、各ウェルの培養液を吸引して捨て、各ウェルにジメチルスルホキシド(DMSO)150μlを添加し、5分間軽く振とうし、ホルマザン類結晶物質を充分に溶解させてから、マイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度(リファレンス波長:550nm)を測定する。150μlのジメチルスルホキシド(DMSO)のみを添加した無細胞ウェルを零点調整ウェルとする。抑制率で判定する:
−10%より大きい場合:陽性
−1〜−10%の場合:擬陽性。
【0087】
実施例3.B型脳炎ウィルスに感染された患者の診断
B型脳炎ウィルス特異性刺激抗原の調製:
文献(第四軍医大学学報、1984年Vol.5, No.4, 251〜254;Journal of Medical Colleges of PLA 1986,1(4):356-362)を参照して、精製したB型脳炎ウィルスを調製し、10%ホルムアルデヒドを添加して固定し、4℃でオーバーナイト(約12時間)し、4回にて、遠心・濃縮し、生理食塩水で洗浄し、紫外線分光光度計でタンパク質の含有量を測定し、凍結保存管に分注して凍結乾燥し、−70℃の冷蔵庫中に凍結保存して使用まで置いた。
【0088】
精製したインターロイキン−2中和モノクローナル抗体及びテトラゾール塩(MTT)の調製は実施例2の通り。
【0089】
被検単核細胞の調製:
確診された高熱期のB型脳炎患者の静脈血を5〜10ml採取し、実施例2の方法に従って、単核細胞を分離し、無血清1640培養液で2回洗浄し、沈降物を20%牛胎児血清を含む1640培養液(その中に、1ml当たり0.125ngのFK506、及び5μgのメチルプレドニゾロンを含む)で、約2×10個細胞/mlの細胞懸濁液とし、使用まで置いた。被検単核細胞を調製すると同時に、凍結保存しておいたB型脳炎ウィルスを取り出し、20%牛胎児血清(GIBCO社)を含む1640培養液(その中に、1ml当たり0.125ngのFK506、及び5μgのメチルプレドニゾロンを含む)で、ウィルスタンパク質濃度が約3mg/mlであるウィルス懸濁液を調製し、使用まで置いた。
【0090】
患者被検単核細胞懸濁液、ウィルス懸濁液、IL- 2中和モノクローナル抗体を96ウェル丸底細胞培養板にそれぞれ添加した。グループ及び用量は下記の通り;
試験群:患者被検細胞100μl+ウィルス懸濁液100μl+ IL- 2中和モノクローナル抗体35μl;
対照群:患者被検細胞100μl+ IL- 2中和モノクローナル抗体35μl+細胞希釈用1640培養液100μl。
【0091】
群毎に3個の二重ウェルを設けた。前記の操作が完了した後、培養板を37℃のCO2インキュベーター中に置き培養した。
【0092】
MTT発色法:前記細胞を7h培養した後、各ウェルにMTT 5μlを添加し、引き続き1h培養した後、各ウェルの培養液を除去し、各ウェルにジメチルスルホキシド(DMSO)100μlを添加し、5分間軽く振とうし、ホルマザン類結晶物質を充分に溶解させてから、上述と同様にして、マイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度を測定した。その結果を表6に示す。
【0093】
【表7】

注:試験群と対照群の数字は全て三つの二重ウェルの平均値である;抑制率は、B型脳炎ウィルス抗原がその特異性活性化リンパ球を抑制する程度を表している;ALSA試験において、各ウェルにメチルプレドニゾロンとFK506を添加した。その最終濃度は、それぞれ5μg/mlと0.125ng/mlである。
【0094】
表から、そのB型脳炎ウィルス抗原の被検単核細胞に対する抑制作用は、それぞれ64%と47%に達し、その反応細胞中、に大量のB型脳炎ウィルス抗原に対応するリンパ球が存在していること、即ち最近患者がB型脳炎ウィルスに感染されたことがある、又はB型脳炎ワクチンを接種したことがあることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、臓器移植がなにもなされていない正常者からの反応細胞を用いたALSA試験とMLC試験における結果を倒立顕微鏡で直接観察した写真(10×4)である。該試験は陰性対照試験(反応細胞にHLA抗原に対する活性化リンパ球がなにもない)であり、左側の二つの写真は、ALSA試験の試験群(図1B)と対照群(図1C)の試験結果を示し;右側の二つの写真は、対照試験MLC試験の試験群(図1A)と対照群(図1D)の試験結果を示している。
【図2】図2は、生検で拒絶反応が発生していないと確認された心臓移植患者のALSA試験とMLC試験における結果を倒立顕微鏡で直接観察した写真(10×10)である。左側の二つの写真は、ALSA試験の試験群(図2B)と対照群(図2C)の試験結果を示し;右側の二つの写真は、対照試験MLC試験の試験群(図2A)と対照群(図2D)の試験結果を示している。
【図3】図3は、生検で一級拒絶反応が発生していると確認された心臓移植患者のALSA試験とMLC試験における結果を倒立顕微鏡で直接観察した写真(10×4)である。左側の二つの写真は、ALSA試験の試験群(図3B)と対照群(図3C)の試験結果を示し;右側の二つの写真は、対照試験MLC試験の試験群(図3A)と対照群(図3D)の試験結果を示している。
【図4】図4は、生検で三級拒絶反応が発生していると確認された患者のALSA試験とMLC試験における結果を倒立顕微鏡で直接観察した写真(10×10)である。左側の二つの写真は、ALSA試験の試験群(図4B)と対照群(図4C)の試験結果を示し;右側の二つの写真は、対照試験の試験群MLC試験(図4A)と対照群(図4D)の試験結果を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体活性化リンパ球の特異性の検出方法であって、以下のステップを有することを特徴とする方法:
1)培地で検出用抗原を希釈し、前記抗原が生体のリンパ球を活性化させ、前記培地が、通常の細胞培養に必要する成分を含有するほかに、細胞増殖に対する刺激活性を有するサイトカインの中和抗体及び/又は単核細胞に対するアポトーシス誘導作用、又は活性化抑制作用、又は増殖抑制作用を有するサイトカインを添加する;
2)前記培地で被検の活性化リンパ球を含む単核細胞試料を調製する;
3)前記検出用抗原と、被検の活性化リンパ球を含む単核細胞試料を細胞培養板に加えて、一緒に培養する;
4)試験ウェルと陰性対照ウェルの検出可能な信号の差異を比較することによって、試料に前記抗原特異性の活性化リンパ球が存在するかどうか確認する。
【請求項2】
前記抗原がヒト主要組織適合性抗原、同種異系抗原,異種抗原、ウィルス抗原、又は細菌抗原から選択したものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原が顆粒抗原又は可溶性抗原であり、前記ヒト主要組織適合性抗原がHLAクラスI抗原又はクラスII抗原の中の一種であり、又は多種のHLAクラスI抗原とクラスII抗原の混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記培地に免疫抑制剤及び/又は制癌剤が更に添加されており、前記の培地の量を基準として、前記免疫抑制剤及び/又は制癌剤の用量が約0.001ng〜100μg/ml、前記の細胞増殖に対する刺激活性を有するサイトカインの中和抗体の用量が約1μg〜10mg/ml、前記の単核細胞に対するアポトーシス誘導作用、活性化抑制作用、又は増殖抑制作用を有するサイトカインの用量が約0.01-100個活性単位/mlである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記の検出可能な信号が各ウェルの細胞活性の変化を反映できる信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記免疫抑制剤が、プログラフ、シクロスポリン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ラパマイシン、RS−61443、BQR、ヒト急性Tリンパ球白血病細胞株JMが分泌した免疫抑制因子、デオキシスペルグアリン、又は副腎皮質ホルモンから選択したものであり、前記制癌剤が、トポイソメラーゼ、アルキル化剤、代謝拮抗薬、レチノイン酸類化合物−ビタミンA誘導体、又は潜在的に免疫抑制誘導作用又は腫瘍細胞アポトーシス誘導作用を有する薬物から選択したものである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫抑制剤と制癌剤を単独に使用した、又は併用した、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記副腎皮質ホルモンがメチルプレドニゾロン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、又はデキサメタゾンから選択したものである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記シクロスポリンがシクロスポリンA又はシクロスポリンCから選択したものである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記の細胞増殖を刺激する活性を有するサイトカインが、インターロイキン1、2、3、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23,α−インターフェロン,β−インターフェロン,ω−インターフェロン,γ−インターフェロン,顆粒球コロニー形成刺激因子, マクロファージコロニー形成刺激因子, 顆粒球マクロファージコロニー形成刺激因子, 幹細胞因子、又は血小板産生因子から選択したものである、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記の、単核細胞に対する活性化抑制作用、及び増殖抑制作用を有するサイトカインが、インターロイキン2, 4、10、15、又は形質転換増殖因子βから選択したものである、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
通常の細胞培養に必要する成分を含有するほかに、免疫抑制剤及び/又は制癌剤と、細胞増殖に対する刺激活性を有するサイトカインの中和抗体及び/又は単核細胞に対する活性化抑制作用及び増殖抑制作用を有するサイトカインを添加した、活性化リンパ球の特異性を検出するための培地。
【請求項13】
前記免疫抑制剤の用量が、前記培地の量を基準として約0.001ng〜100μg/mlである、請求項12に記載の培地。
【請求項14】
前記の細胞増殖に対する刺激活性を有するサイトカインの中和抗体の用量が、前記培地の量を基準として約1μg〜10mg/mlである、請求項12に記載の培地。
【請求項15】
前記の単核細胞に対する活性化抑制作用及び増殖抑制作用を有するサイトカインの用量が、前記培地の量を基準として約0.01-100個活性単位/mlである、請求項12に記載の培地。
【請求項16】
前記サイトカイン中和抗体を単独に使用した、又は併用した、請求項12に記載の培地。
【請求項17】
前記サイトカイン中和抗体と単核細胞に対する活性化抑制作用及び増殖抑制作用を有するサイトカインを、単独に使用した、又は併用した、請求項14又は15に記載の培地。
【請求項18】
前記免疫抑制剤が、プログラフ、シクロスポリン、シクロホスファミド、アザチオプリン、ラパマイシン、RS−61443、BQR、デオキシスペルグアリン、又は副腎皮質ホルモンから選択したものであり、前記制癌剤が、トポイソメラーゼ、アルキル化剤、代謝拮抗薬、レチノイン酸類化合物−ビタミンA誘導体、又は潜在的に免疫抑制誘導作用又は腫瘍細胞アポトーシス誘導作用を有する薬物から選択したものである、請求項13に記載の培地。
【請求項19】
前記免疫抑制剤と制癌剤を単独に使用した、又は併用した、請求項18に記載の培地。
【請求項20】
前記副腎皮質ホルモンがメチルプレドニゾロン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、又はデキサメタゾンから選択したものである、請求項18に記載の培地。
【請求項21】
前記シクロスポリンがシクロスポリンA又はシクロスポリンCから選択したものである、請求項18に記載の培地。
【請求項22】
前記の細胞増殖を刺激する活性を有するサイトカインが、インターロイキン1、2、3、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23,α−インターフェロン,β−インターフェロン,ω−インターフェロン,γ−インターフェロン,顆粒球コロニー形成刺激因子, マクロファージコロニー形成刺激因子, 顆粒球マクロファージコロニー形成刺激因子, 幹細胞因子、又は血小板産生因子から選択したものである、請求項14に記載の培地。
【請求項23】
前記の、単核細胞に対する活性化抑制作用、及び増殖抑制作用を有するサイトカインが、インターロイキン2, 4、10、15、形質転換増殖因子β、又は腫瘍壊死因子から選択したものである、請求項15に記載の培地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−512816(P2007−512816A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541786(P2006−541786)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【国際出願番号】PCT/CN2004/001427
【国際公開番号】WO2005/083427
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(502318434)
【氏名又は名称原語表記】HU,Jun
【Fターム(参考)】