説明

活性化合物の送達のためのコロイド系の調製方法

本発明は、粒径を小さくするホモジナイズ処理の工程を取り入れた、ナノカプセル及びナノ粒子などのコロイド系の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径を小さくするホモジナイズ処理の工程を取り入れた、ナノカプセル及びナノ粒子などのコロイド系の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
治療目的の生物学的活性分子の投与は、投与の経路、並びに分子の物理化学的及び形態学的特徴の両方に依存する多くの困難を呈する。ヒト及び動物の体における上皮バリアの浸透性が限られているために、一部の薬物(その中にはペプチド、タンパク質、及び多糖がある)は粘膜表面を通して効果的に吸収されない。
【0003】
巨大分子をナノメートルサイズの系に取り込むことによって、それらが上皮バリアに浸透するのが容易となり、それらが分解されるのを防護することが実証されている。したがって、前記バリアと相互作用することができるナノ粒子系の設計は、粘膜を通した活性成分の浸透を実現するための有望な方策として提示される。
【0004】
その意味で、正味の正電荷を有し、したがってカチオン性の生物学的環境及び/又は自体の生体膜(粘膜及び皮膚)への接着を介して吸収されることを可能にするようなコロイド系を開発する目的で、重要な研究活動が行われてきた。
【0005】
そのため、異なる経路による活性成分の投与における、親油性の核から成りキトサンでコーティングされたナノエマルジョン及びナノカプセルに基づく数多くの系が記載されている[WO96/37232; Calvoら、Colloid. Polym. Sci.、1997年、275、46〜53頁; El-Shabouri, Intern. J. Pharmac.、2002年、249、101〜8頁; Filipovic-Grcic, J. Microencap.、2001年、18(1)、3〜12頁]。親水性のキトサンポリマーを水性相に取り入れると、正味の正電荷が前記系に与えられる。
【0006】
しかし、これらのナノカプセル系の使用によっていくつかの不安定性の問題が生じる。なぜなら、1カ月を超える期間の保存の間に、それらの組成は活性成分が親油性相から徐々に放出されることを引き起こすためである。
【0007】
文献EP 1834635 A1は、リン脂質及び油の親油性核、並びにキトサンの親水性相を含むナノカプセル系を記載しており、このナノカプセル系は、活性親油性分子が会合するための大きい受容量及び適切な生物学的環境中でのそれらの放出に加えて、その保存中及び輸送中の両方で明らかに改善された安定性を有する。
【0008】
前記ナノカプセル系の調製において使用されるあらゆる方法は、親油性相及びキトサン含有水性相を混合するとナノカプセルが自然に生成する、溶媒置換法に基づく。
【0009】
しかし、この溶媒置換法に由来する1つの欠点は、親油性相の有機溶媒が水性相へ拡散し、活性成分を一緒に押し流すことである。したがってその後の溶媒蒸発の段階及び水性相の濃縮の際、活性成分は析出し結晶を生成する。したがって、使用される有機溶媒は、その水性相への拡散しやすさに強く依存する。例えば、シクロスポリンをカプセル化する場合、好ましいエタノール/メタノール混合物は急速に水性相へ拡散するため、アセトンの使用がその毒性にもかかわらず必要とされる。
【0010】
さらに、親油性相に取り込むことができる油の量はかなり限られており、なぜなら多量に使用するとキトサンによって被覆されずにエマルジョンの表面に凝集体を形成する傾向がある独立した小球体の形成を生じさせるからである。この特徴はナノカプセル中に取り込もうとする活性成分の量をかなり制限するが、それは前記油が前記活性成分を溶解させる媒体を構成するからである。
【0011】
この方法の別の欠点は、親油性相及び水性相を混合すると生成する懸濁液が高度に希釈されており、いったんナノカプセルが形成されると、多量の有機溶媒及び水をその後の工程で蒸発させなければならないことである。蒸発のプロセスは非常に時間がかかるため、このことは工業的な観点からプロセスを実現不可能なものとする。さらに、撹拌-蒸発プロセス後の配合物の不安定化、遊離油の存在、及びキトサン凝集物の形成を避けるために、多量の水が必要とされる。
【0012】
キトサンは、天然かつ生体適合性のポリマーとしてもナノ粒子の配合物中で使用されている(WO01/32751、WO99/47130)。キトサンはまた、グリコサミノグリカンなどの負電荷ポリマー(WO2004/112758、WO2007/135164)、又はコンドロイチン硫酸などのアニオン性多糖(WO2007/031812)との組合せでも使用されている。
【0013】
キトサンのナノ粒子の調製方法は、イオンチャンネル型ゲル化法に基づいており、この方法ではキトサンを含有する水溶液と負電荷を有するポリマー及び架橋剤を含有する別の水溶液とを混合すると、キトサンと負電荷分子との間の静電相互作用によってナノ粒子が自然に生成される。
【0014】
しかし、溶液が高濃度であるほどナノ粒子のサイズは大きくなるので、この方法はキトサン濃度と直接関連している。したがって、ナノメートルの範囲の粒子を得るためには、プロセスの収率に負の影響を与える低濃度のキトサンが必要とされる。
【0015】
一方で、ナノ粒子系を調製するためのホモジナイズ処理プロセスが従来技術において広く記載されている[WO98/07414、WO02/051390、WO03/042251、WO01/89522, WO2005/072709、WO2007/069272、WO2007/059118]。ホモジナイズ処理は、臨床効果の向上のために活性成分の分散をより一層安定にするように、動的高圧ホモジナイズ処理を用いて液体医薬製品の粒径を減少させる方法である。
【0016】
しかし、上記で挙げた文献はどれも、キトサンの親水性相によって取り囲まれたリン脂質及び油の親油性核を含むナノカプセル、又は網状キトサンのナノ粒子などの、コロイド系を調製するホモジナイズ処理プロセスを記載しておらず、この方法が前記コロイド系にもたらす具体的な利点も示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO96/37232
【特許文献2】EP 1834635 A1
【特許文献3】WO01/32751
【特許文献4】WO99/47130
【特許文献5】WO2004/112758
【特許文献6】WO2007/135164
【特許文献7】WO2007/031812
【特許文献8】WO98/07414
【特許文献9】WO02/051390
【特許文献10】WO03/042251
【特許文献11】WO01/89522
【特許文献12】WO2005/072709
【特許文献13】WO2007/069272
【特許文献14】WO2007/059118
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Calvoら、Colloid. Polym. Sci.、1997年、275、46〜53頁
【非特許文献2】El-Shabouri、Intern. J. Pharmac.、2002年、249、101〜8頁
【非特許文献3】Filipovic-Grcic、J. Microencap.、2001年、18(1)、3〜12頁
【非特許文献4】Roberts、Chitin Chemistry、Macmillan、1992年、166頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
これらのデータを考慮して、最先端技術に記載される方法から生じる問題を克服する前記コロイド系の調製方法を開発することが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の著者らは、溶媒置換法及び古典的なイオンチャンネル型ゲル化法などの従来技術の方法から生じる問題の多くを克服する、ホモジナイズ処理の工程を取り入れたコロイド系の新しい調製方法を開発した。
【0021】
したがって、親油性相及び水性相の混合によってナノカプセルが自然に生成する溶媒置換法とは対照的に、本発明の方法はナノメートルの系において析出結晶を生成させることなく、少なくとも2重量%、最大で4重量%の活性成分をナノカプセル中に封入することを可能にする。
【0022】
本発明の方法によって、各活性分子のための好ましい溶媒を、はるかに少ない量であっても使用することが可能であり、このことは高い活性成分濃度を有すること及びコロイド系の調製を容易にすることを可能にし、なぜなら溶媒蒸発の段階が事実上避けられるからである。
【0023】
本発明の方法から得られる別の利点は、ナノカプセルの平均有効サイズが溶媒置換法と比較した場合に著しく小さくなることである。この特徴は系の有効性、ひいては活性成分の放出において実に有利であり、なぜならナノカプセルのサイズが減少すると親油性相と水性相との間の比表面積が増加し、その結果親油性相と生物学的環境(皮膚及び粘膜)との間の接触が改善され、活性成分の放出を容易にするからである。
【0024】
さらに、本発明の方法は凝集物を生成させずにより多量の油を親油性相に取り込むことも可能にし、このことは系に長期安定性をもたらし、より多量の親油性活性成分の添加を可能にする。より多量のキトサン(2.5重量%までも)を水性相に取り込むことも可能であり、これは取り込もうとする活性成分及び治療しようとする適応症によっては何らかの重要性がある。加えて、初期の水溶液中の水を溶媒置換法と比較して35重量%減少させることができるため、系を不安的化させることなくはるかに高濃度の配合物を得ることができる。
【0025】
実際に、本発明の方法はエマルジョンの濃度を12倍に増加させることを可能にし、したがって、これはプロセスをより経済的で、より安全、高速、費用効果的でもあるものにする、蒸発のプロセスの大幅な短縮をもたらす。
【0026】
一方で、2つの水性相を混合することによって自然にナノ粒子が生成する古典的なイオンチャンネル型ゲル化法と比較した場合、本発明の方法は、キトサンの濃度を著しく増加させた場合であってもナノメートル範囲の粒子の調製を可能にする。
【0027】
したがって、本発明の態様は、
a)有機溶媒の不存在下又は存在下で、
a.1)少なくともリン脂質成分と;
a.2)油と;
a.3) 親油性生物学的活性分子と;
を含む親油性相を提供する工程と、
b) b.1)キトサン又はその誘導体と;
b.2)ポリオキシアルキレン化化合物と;
を含む水性相を提供する工程と;
c)エマルジョンを生成するように、前記親油性相及び水性相を混合する工程と;
d)前記エマルジョンに、ホモジナイズ処理プロセスを施して、平均有効粒径が1μm未満であるナノカプセルを形成させる工程;あるいは
e)キトサン又はその誘導体と、場合により、グルコマンナン、ヒアルロン酸、ポリオキシアルキレン化化合物、及びそれらの誘導体から選択されるポリマーとを含む水溶液を提供する工程と;
f)架橋剤及び生物学的活性分子を含む水溶液を提供する工程と;
g)凝集物を生成させるように前記両水溶液を混合する工程と;
h)前記凝集物に、ホモジナイズ処理プロセスを施して、平均有効粒径が1μm未満である粒子を生成させる工程と
を含む、サイズが1μm未満であるコロイド系の調製方法から成る。
【0028】
別の実施形態において、本発明は上記で定義される方法によって得ることができるコロイド系に関する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の文脈において、以下の用語は下記に詳細に述べる意味を有する。
【0030】
用語「コロイド系」は、平均有効サイズが1μm未満である物理的実体のことを言う。これにはナノカプセル及びナノ粒子が含まれる。本発明の特定の実施形態において、平均有効サイズは350nm未満、より好ましくは300nm未満、さらにより好ましくは250nm未満である。
【0031】
用語「ナノカプセル」は、核を「カプセルに包む」正電荷を有する親水性ポリマーを含む親水性相によって取り囲まれた親油性の核として理解される。ナノカプセルは水性媒体に分散され、前記水性媒体は溶解したさらなる量の親水性ポリマーを含んでいてもよい。ナノカプセルの異なる親油性及び親水性成分の間で生じるイオンの相互作用は、特徴的な物理的実体を生じさせ、この物理的実体は独立していて観測可能であり、その平均有効サイズは1μm未満、すなわち平均サイズは1〜999nmである。
【0032】
用語「ナノ粒子」は、キトサンと活性成分との間の静電相互作用によって、及び網状化剤(reticulating agent)の添加によって得られる複合体のイオンチャンネル型ゲル化によって形成される構造と理解される。ナノ粒子の両成分間で生じる静電的相互作用、及びその後の網状化は特徴的な物理的実体を生じさせ、この物理的実体は独立していて観測可能であり、その平均有効サイズは1μm未満、すなわち平均サイズは1〜999nmである。
【0033】
用語「平均有効サイズ」は、水性媒体中を動くコロイド粒子の平均直径として理解される。これらの系の平均サイズは当業者に既知の標準的手順を用いて測定することができ、これは例えば以下の実験の部に記載されている。
【0034】
「ホモジナイズ処理プロセス」は、機械的手段によって、本発明のプロセスの工程a)〜d)を行うことで生じるエマルジョン中で生成する小球体のサイズを減少させること、又は工程e)〜h)を実行する結果として生成する凝集物のサイズを減少させることを可能にする任意の方法と理解される。ホモジナイズ処理プロセスの例としては、高圧ホモジナイズ処理、超音波処理、高せん断混合、又は衝撃力若しくは機械的応力を加えることが挙げられる。
【0035】
別法1
コロイド系を調製するための本発明の方法は、以下の工程:
a)有機溶媒の不存在下又は存在下で、
a.1)少なくともリン脂質成分と;
a.2)油と;
a.3) 親油性生物学的活性分子と;
を含む親油性相を提供する工程と、
b) b.1)キトサン又はその誘導体と;
b.2)ポリオキシアルキレン化化合物と;
を含む水性相を提供する工程と;
c)エマルジョンを生成するように、前記親油性相及び水性相を混合する工程と;
d)前記エマルジョンに、ホモジナイズ処理プロセスを施して、平均有効粒径が1μm未満であるナノカプセルを形成させる工程と;
を含む、1つの別法を含む。
【0036】
この方法は、親油性相がナノカプセルの核を構成し、この核がナノカプセルの表面に正電荷を与える親水性相によって取り囲まれている、ナノカプセルの形態のコロイド系の生成をもたらす。
【0037】
本発明の方法の工程a)〜d)を行うことによって得られるナノカプセルは、1μm未満の平均有効サイズを有すること、好ましくは1〜999nm、好ましくは50〜800nm、より好ましくは100〜300nmの平均サイズを有することを特徴とする。カプセルの平均サイズは、主にリン脂質成分の量によって(量が多いほど得られるサイズが小さい)、キトサンの量及び分子量によって(量が多いほど、又は分子量が大きいほどサイズは増加する)、使用される油の密度、及びホモジナイズ処理プロセスのパラメータ(圧力、温度、又は加えられる機械的な力の大きさなど)によって影響を受ける。
【0038】
さらに、ナノカプセルはキトサンのアミン基に起因する表面電荷(ゼータ電位によって測定される)を有していてもよく、その大きさは+1mV〜+70mVの間で異なっていてもよい。
【0039】
親油性相
親油性相は、少なくとも1つのリン脂質成分、油、及び生物学的活性分子を物理的に混合することにより調製される。親油性相の機能は、後で適切な生物学的環境中に放出されることになる活性親油性成分を収容する機能である。
【0040】
特定の実施形態において、親油性相の成分を有機溶媒に溶解させることができる。溶媒置換法とは対照的に、本発明の方法は水溶液に拡散させることなく各活性成分に対して好ましい溶媒を使用することを可能にする。しかし、例えばエタノール及びイソプロパノールなどの、薬学的に許容可能な有機溶媒の使用が好ましい。
【0041】
あるいは、親油性相の成分は何らかの有機溶媒に溶解させずに、それ自体として使用され混合される。この相に存在する油は残りの成分の溶媒としても作用し得る。
【0042】
リン脂質成分
本出願の文脈において、リン脂質成分はイオン性脂質の一種であると理解され、これはその最も単純な形において、2つの脂肪酸(1,2-ジアシルグリセロール)及びリン酸基が結合したグリセリンから成る。通常、リン酸基はホスホジエステル結合によって、コリン、セリン、又はエタノールアミンなどの別の基の原子(多くの場合窒素を含有する)に結合している。他のリン脂質は、アミノアルコールスフィンゴシン又はジヒドロスフィンゴシン(スフィンゴ脂質)に由来し、必ずしもグリセリンに由来していない。得られる化合物は、脂肪酸の鎖に由来する親油性部分、及びリン酸基に由来する親水性部分、及び電荷を有する。
【0043】
本発明の方法で使用されるリン脂質成分は、好ましくはホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、セファリン、及びそれらの混合物から選択される。ホスファチジルコリン, ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、及びホスファチジン酸などのホスホグリセリドは、脂肪酸、グリセリン、リン酸、及びアルコール(例えばコリン、セリン、エタノールアミン、グリセリン、又はイノシトール)から形成される脂質である。スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質は、スフィンゴシン、脂肪酸、リン酸、及びアルコール又はアミノアルコールから形成される。セファリンは、グリセリン、リン酸、2つの脂肪酸、及び2つのアルコール塩基(コリン及びスフィンゴシン)から形成される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、リン脂質成分はホスホグリセリドを含む。より好ましくはリン脂質成分はホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、及びホスファチジン酸、又はそれらの混合物から選択されるホスホグリセリドを含む。
【0045】
好ましい変形形態において、リン脂質成分はレシチンである。好ましくは市販の大豆レシチンが使用されるが、卵レシチンも使用できる。
【0046】
レシチンは脂質化合物の複雑な混合物であり、その大部分はリン脂質化合物、具体的にはホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びリゾホスファチジルコリンである。一般にレシチンは、それらの商品名、及びそれら組成物中のホスファチジルコリンのパーセンテージを示す数によって指定される。レシチン中のホスファチジルコリンのパーセンテージは35%から実質的に100%までの間で異なっていてもよいが、しかしながら本発明で使用されるレシチンは、ホスファチジルコリンのパーセンテージが35%〜75%、好ましくは35%〜55%である。非常に高いパーセンテージのホスファチジルコリン(80%を超える)含むレシチンの使用は、それがナノカプセル懸濁液中の遊離油の存在を引き起こすので望ましくない。この点において、ホスファチジルコリンのパーセンテージが80%を超えないいくつかのレシチンが市販されている。このように、好ましくはEpikuron 135F、Epikuron 145V、Epikuron 170、Lipoid S30、Lipoid S45、及びLipoid S75が使用される。
【0047】
同様に、ホスファチジルコリン/ホスファチジルエタノールアミン比は適切な安定性を有するナノカプセルの形成に影響を与える。そのため、ホスファチジルコリン/ホスファチジルエタノールアミン比がおよそ7/1であり、組成物中のホスファチジルコリンの割合が35%を超えるEpikuron 135Fを使用すると、最も良好な安定性の結果をもたらすことが実証されている。
【0048】
特定の実施形態において、コロイド系におけるリン脂質成分の割合は、水を含む全重量に対して0.5重量%〜20重量%であり、より好ましくは10重量%を超える。
【0049】

親油性相の調製に使用される油としては植物系油が挙げられ、植物源から得られる任意の油のようなものとして理解される。植物系油の例としては、ヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、綿実油、ピーナッツ油、ダイズ油、月見草油、ボリジ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、麻実油、杏仁油又はアンズ種子油、小麦胚芽油、トウモロコシ胚芽油、カカオバター油、マカダミア油、アーモンド油、アボカド油、カレンデュラ油、ブドウ種子油、ゴマ油、ホホバ油、又はヘーゼルナッツ油が挙げられる。
【0050】
しかし、本発明の文脈において、油という用語は1つ又は複数の不飽和及び/又は飽和鎖脂肪酸又はその誘導体を有する油を含むことも意図する。前記脂肪酸の例としては、限定はされないが、飽和脂肪酸、例えばMygliol、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アカシン酸(acacidic acid)、carnacilic acid、アラキジン酸(araquidic acid)、ベヘン酸、リグノセリン酸、又はセロチン酸など;一価不飽和脂肪酸、例えばラウロレイン酸(lauroleic acid)、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、セトレイン酸、又はエルカ酸など;多価不飽和脂肪酸、例えばリノール酸、リノレン酸、ガンマリノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸(araquidonic acid)、クルパノドン酸、又はドコサヘキサエン酸など、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0051】
同様に、これらの脂肪酸の誘導体を使用でき、この定義によれば、高い親油性を有し、酸性基とアルコール又はアミンとの反応の結果として生成する、例えば前記脂肪酸のエステル又はアミドなどの化合物と理解される。同様に、脂肪酸誘導体の定義には、ヒドロキシル、エーテル基、又はアルキル基を炭化水素鎖の置換基として有する脂肪酸、それらのエスエル、又はそれらのアミド、例えばセレブロン酸、ヒドロキシネルボン酸、リシノール酸、ツベルクロステアリン酸、又はフィタン酸など;又は環状構造を炭化水素鎖中に有する脂肪酸、ラクトバシル酸又はchaulmogric acidなどが含まれる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態において、親油性溶液中に含まれる油はヒマシ油である。前記油は市販されてはいるが、ヒマシ種子を冷圧搾することによって得られる。これは、長鎖脂肪酸(C16-C18): 2%(最大)のパルミチン酸、2.5%(最大)のステアリン酸、2.5〜6.0%のオレイン酸、2.5〜7.0%のリノール酸、1%(最大)のリノレン酸、及び85〜92%のリシノール酸の組成を有する。
【0053】
本発明の特定の実施形態において、コロイド系の配合物中の油の割合は、系の全重量に対して少なくとも7重量%である。この油の割合は、析出する結晶を生成させずに少なくとも2重量%、最大で4重量%の活性成分を封入することを可能にする。
【0054】
好ましくは、コロイド系の油の割合は、系の全重量に対して20重量%を上回る、より好ましくは少なくとも25重量%である。溶媒置換法とは対照的に、これらの多量の油の存在がコロイド系に長期安定性を与え、凝集物の形成も回避する。
【0055】
生物学的活性親油性分子
親油性相はさらに少なくとも1つの生物学的活性親油性分子を含む。この分子の取り込みは、成分を加える順番には関係なく、それをリン脂質成分及び油と共にこの親油性相に溶解させることによって行われる。
【0056】
用語「生物学的活性親油性分子」は、処置、治療、疾患の予防又は診断に使用される、又はヒト及び動物の身体的及び精神的な健康を向上させるのに使用される、任意の親油性の物質に関する。親油性を有するこれらの分子としては、タンパク質、ペプチド、脂質、修飾オリゴヌクレオチド(脂溶化)、コルチコステロイド、脂溶性ビタミン(A、D、K、及びEなど)、抗真菌薬、静菌剤、治癒剤、抗ヒスタミン剤、麻酔薬、鎮痒剤、乾癬治療薬、抗生剤、抗ウイルス剤、消毒剤、抗ニキビ剤、脱色剤、抗脂漏剤、免疫抑制剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、トウガラシ由来抗炎症薬を挙げることができる。
【0057】
特定の実施形態において、生物学的活性親油性分子はシクロスポリンである。
【0058】
別の特定の実施形態において、生物学的活性親油性分子はエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、ジリスロマイシンなどの抗生剤である。
【0059】
別の好ましい実施形態において、生物学的活性親油性分子は、例えばヒドロコルチゾン、プレドニゾン、フルチカゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾンなどのコルチコステロイドである。
【0060】
特定の実施形態において、コロイド粒子中の生物学的活性親油性化合物の割合は、水を含む全重量に対して0.5重量%〜20重量%、より好ましくは1重量%〜10重量%、さらにより好ましくは2重量%〜10重量%、さらにより好ましくは2〜5%である。
【0061】
好ましくは、親油性相は系の保存及び活性成分の溶解にも寄与するベンジルアルコールをさらに含む。
【0062】
親水性相
親水性相は、キトサン及びポリオキシアルキレン化化合物を水に溶解させることによって調製される。この水性相の機能は、カチオン性の生物学的環境を介して又は生物学的環境への吸収を介して、ナノカプセルが吸収されることを可能にする正電荷をナノカプセルに付与することに加えて、ナノカプセルをコーティングすることである。
【0063】
キトサン
キトサンはキチン(ポリ-N-アセチル-D-グルコサミン)に由来する天然由来のポリマーであり、重要な部分であるNのアセチル基が加水分解によって脱離している。脱アセチル化の度合いは好ましくは40%を上回り、より好ましくは60%を上回る。変形形態において、これは60〜98%である。したがってキトサンはアミノ多糖構造及びカチオン性を有する。キトサンは式(I):
【0064】
【化1】

【0065】
のモノマー単位(式中、nは整数である)の繰り返し、及びさらにアミン基がアセチル化されているm個の単位を含む。n+mの和は重合度、すなわちキトサン鎖中のモノマー単位の数を表す。
【0066】
ナノカプセルの生成のために本発明の方法で使用されるキトサンは、分子量が2〜2000kDa、好ましくは2〜500kDa、より好ましくは5〜150kDaである。使用することができる市販のキトサンの例は、NovaMatrix, Drammen, Norwayから入手できるUP G 113、UP CL 213、及びUP CL113; Manhtani Chitosan PVT. LTDから入手できるChitosan Chlorhydrate; Kitozymeから入手できるKiOmedine-CsU; Cognis GmbHから入手できるChitopharm S、Chitopharm L、及びChitopharma Mである。
【0067】
キトサンの代替として、その誘導体を使用することもでき、キトサンの溶解性を向上させる、又はその接着性を向上させることを目的として、1つ又は複数のヒドロキシル基及び/又は1つ又は複数のアミン基が修飾されているキトサンのようなものとして理解される。これらの誘導体としてはとりわけ、Roberts、Chitin Chemistry、Macmillan、1992年、166頁に記載のような、アセチル化、アルキル化、又はスルホン化されたキトサン、チオール化誘導体が挙げられる。好ましくは、誘導体を使用する場合、O-アルキルエーテル、O-アシルエステル、トリメチルキトサン、ポリエチレングリコールで修飾されたキトサンなどから選択される。他の考えられる誘導体は、クエン酸塩、硝酸塩、乳酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩などの塩である。いずれの場合も、最終配合物の安定性及び商業的可能性に影響を及ぼすことなくキトサンに施すことができる修飾をいかにして特定するかは、当業者に知られている。
【0068】
本発明の特定の実施形態において、コロイド系におけるキトサンの割合は、水を含む全重量に対して0.1重量%〜4重量%、より好ましくは0.25重量%〜2.5重量%である。
【0069】
ポリオキシアルキレン化化合物
用語「ポリオキシアルキレン化化合物」は、その構造中にアルキレンオキシドの単位を有する非イオン性の合成親水性ポリマーと理解され、ポリオキシエチレン(PEO)又はエチレンオキシド-プロピレンオキシド(PEO-PPO)コポリマーの使用が好ましい。PEO及びPPOのコポリマーを使用する場合、コポリマー中のPEOの割合は10重量%〜80重量%の範囲であってもよく、残り(100%まで)はPPOである。
【0070】
これらのポリマーは異なる分子量で市販されているが、しかしながら本発明においては分子量が1000〜25000であるポリオキシエチレン化誘導体の使用が好ましい。好ましい実施形態において、ポリオキシエチレン化誘導体は、トリブロックコポリマー(PEO-PPO-PEO)、例えば商業上Poloxamerと呼ばれるものなどである。例えばPluronic F68(Poloxamer 188)について、良好な結果が得られている。
【0071】
ポリオキシアルキレン化化合物は系の界面活性剤として使用され、その存在は系に安定性を与えるのに特に必要であり、それがない場合、ナノカプセルは貯蔵中に凝集する。
【0072】
特定の実施形態において、コロイド系におけるポリオキシアルキレン化化合物の割合は、水を含む全重量に対して0.5重量%〜10重量%、より好ましくは1重量%〜5重量%である。
【0073】
別の特定の実施形態において、水の量を減らすことによって水性相の濃度を30〜35重量%に増加させることができ、その結果コロイド系を不安定化させることなくより高濃度の配合物が得られ、その結果蒸発プロセスの大幅な短縮をもたらす。
【0074】
親油性及び水性相が上記の手順に従って調製されるとすぐ、水性相は好ましくは30〜60℃の温度に加熱され、親油性相は好ましくは40〜90℃の温度に加熱され、次いでそれらが混合される。もし親油性相をこの最大値を超えて加熱した場合、得られる製剤は懸濁液中の遊離油の存在が原因で適切なものではないことになる。対照的に、3O℃未満で加熱する場合、親油性成分の固体化が始まるのが観察される。この混合段階は、水性相の親油性相への添加、及び親油性相の水性相への添加の両方によって行うことができ、なぜなら添加する順番はナノカプセルの特性に影響を与えないからである。両方の相を混合するとすぐ、20〜50μmに含まれるサイズのカプセル/小球体が水性媒体中に分散している、水中油エマルジョンが生成する。
【0075】
その後の工程で、カプセルのサイズをナノメートル範囲、すなわち1μm未満のサイズに減少させ、系の安定性を向上させるために、こうして得られたエマルジョンに当業者に既知の任意方法によってホモジナイズ処理プロセスを施す。
【0076】
3つの要因がホモジナイズ処理したエマルジョンのこの安定性の向上に寄与する。すなわち、最初に生成する小球体の平均径の減少、小球体のサイズ分布の減少、及び小球体の濃度の増加である。さらに、クラスター生成の傾向の大幅な減少が見られる。
【0077】
特定の実施形態において、ホモジナイズ処理プロセスは、高圧ホモジナイズ処理、超音波処理、高せん断混合、又は衝撃力若しくは機械的応力を加えることによって行われる。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、高圧ホモジナイズ処理が用いられる。ホモジナイザー、押出機、マイクロフルイダイザーなどの、当業者に既知の任意の装置を使用できる。
【0079】
特定の実施形態において、ホモジナイズ処理プロセスは、サイズバッチ装置に応じて50/800〜50/3000バールの間に含まれる差圧P1/P2のもとでエマルジョンをホモジナイザーのオリフィスに通すことによる、生成した前記エマルジョンの機械的処理を含む。
【0080】
ナノカプセルが生成するとすぐ、粘度調整剤(viscosing agent)、保存料、香料などの追加の薬剤を加えることができる。本発明の特定の実施形態において、粘度調整剤は水性媒体に加える。これらの化合物の添加は、特にジェル、クリーム、軟膏、又はバルム剤などの半固体の医薬組成物又は化粧組成物の製造が必要とされる場合に、水性媒体中に分散したナノカプセルが場合によってはその塗布の観点から高流動性すぎる結果になるという事実に基づく。粘度調整剤の中で、親水性ポリマーが特に好ましい。親水性ポリマーの例としては、炭水化物及び誘導体、カルボン酸、ポリビニルアルコールなどのポリグリコール、ポリビニルピロリドンの誘導体、キトサン又はその誘導体、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸セルロース及び誘導体、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0081】
さらに、水性相に分散させたナノカプセルは、その安定性には影響を与えずに高温殺菌プロセスを施してもよい。前記プロセスとしては、例えばオートクレーブ法、チンダル処理(tyndallization)、HTST(高温短時間)、及びUHT(超高温)が挙げられる。これらのプロセスは当業者に既知である。
【0082】
別法2
コロイド系を調整するための本発明の方法は、以下の工程:
e)キトサン又はその誘導体と、場合により、グルコマンナン、ヒアルロン酸、ポリオキシアルキレン化化合物、及びそれらの誘導体から選択されるポリマーとを含む水溶液を提供する工程と;
f)架橋剤及び生物学的活性分子を含む水溶液を提供する工程と;
g)凝集物を生成させるように前記両水溶液を混合する工程と;
h)前記凝集物に、ホモジナイズ処理プロセスを施して、平均有効粒径が1μm未満である粒子を生成させる工程と
を含む第2の別法を含む。
【0083】
この方法は、ナノ粒子の形態のコロイド系の生成をもたらし、ナノ粒子がキトサン及び活性成分の共沈プロセスによって、架橋剤の添加により生じるポリマーナノクラスターの形態で生成することを特徴とする。
【0084】
本発明の方法の工程e)〜h)を行うことによって得られるナノ粒子は、平均有効サイズが1μm未満、好ましくは平均サイズが1〜999nm、好ましくは50〜800nm、より好ましくは200〜700nmであることを特徴する。平均粒径は主に、キトサンの分子量によって、キトサンの脱アセチル化の度合いによって、キトサンの割合によって、及び粒子の生成条件(キトサン濃度、架橋剤濃度、及びそれらの比)によっても影響を受ける。
【0085】
ナノ粒子は、キトサン及び生物学的活性分子の割合に応じて変化する表面電荷(ゼータ電位によって測定される)を有する場合がある。キトサン/活性分子の割合に応じて、特に脱アセチル化の度合いに応じて、及び無機塩の存在の有無に応じて、電荷の大きさは0mV〜+60 mV、好ましくは+1〜+50 mVの間で変化する場合がある。
【0086】
水溶液
工程e)で提供される水溶液は、キトサンを水に溶解させることによって調製される。この工程で使用されるキトサンは、別法1について先に述べたものと同じである。
【0087】
特定の実施形態において、水溶液は別法1について先に述べたものと同じであってもよいポリオキシエチレン化化合物も含む。
【0088】
別の特定の実施形態において、水溶液はさらにヒアルロナンを含み、これは交互になったβ-1,4及びβ- 1,3グリコシド結合を介して互いに連結した、D-グルクロン酸及びD-N-アセチルグルコサミンが交互に付加されることによって形成される二糖構造の繰り返しを含む直鎖ポリマーとして理解される。
【0089】
本明細書で使用される用語「ヒアルロナン」は、ヒアルロン酸又はその共役塩基(ヒアルロナート)のいずれかを含む。この共役塩基はヒアルロン酸のアルカリ塩であってもよく、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウム、及びリチウム塩などの無機塩、並びに塩基性アミノ酸塩などの有機塩が挙げられる。
【0090】
高分子量のヒアルロナンは市販されているが、一方低分子量のヒアルロナンは、例えばヒアルロニダーゼ酵素を用いて高分子量のヒアルロナンの断片化によって得ることができる。
【0091】
別の特定の実施形態において、水溶液はさらにグルコマンナンを含み、グルコマンナンは主として、β-1,4グリコシル結合を介して互いに結合したD-マンノース及びD-グルコースを1.6:1の比で加えることによって形成される、サッカライド構造の繰り返しを含む直鎖ポリマーとして理解される。グルコマンナンは針葉樹の木に多量に存在し、双子葉植物の木にはよ少量で存在する。
【0092】
特定の実施形態において、キトサンの割合は好ましくは水を含む水溶液の全重量に対して0.1重量%〜4重量%、好ましくは0.2%〜2%、より好ましくは0.5重量%〜1.2重量%である。
【0093】
ポリオキシエチレン化化合物、ヒアルロナン、及びグルコマンナンから選択される他のポリマーが存在する場合、そういった他のポリマーに対するキトサンの割合は、1/0.001〜1/10、好ましくは1/0.1〜1/4の範囲で非常に異なっていてもよい。
【0094】
一方で、工程f)で提供される水溶液は、架橋剤及び生物学的活性分子を水に溶解させることによって調製される。架橋剤の存在はキトサン-生物学的活性分子複合体の架橋を可能にする。さらに架橋剤は、ナノ粒子を前記活性分子の投与系として適切なものにするサイズ、電位、及び構造的特徴をナノ粒子に与える。
【0095】
特定の実施形態において、架橋剤はイオン性ゲル化によってキトサン-活性分子複合体の網状化を可能にするアニオン塩であり、ナノ粒子の自発的な生成を引き起こす。好ましくはポリリン酸塩が使用され、トリポリリン酸ナトリウム(TPP)が特に好ましい。前述の組成物の特定の実施形態において、架橋剤/キトサンの重量比は0.001/1〜0.5/1の間に含まれ、配合物に比較的低い多分散性を与える0.01/1〜0.20/1の重量比が好ましい。
【0096】
工程f)で提供される水溶液は、さらに生物学的活性分子を含む。用語「生物学的活性分子」は、処置、治療、疾患の予防又は診断に使用される、又はヒト及び動物の身体的及び精神的な健康を向上させるのに使用される、任意の物質に関する。本発明によれば、別法2のプロセスによって得られるナノ粒子は、生物学的活性分子をその溶解特性とは関係なく取り込むのに適している。会合能は取り込まれる分子によって決まることになるが、一般論として親水性分子及びさらには著しい疎水性の分子の両方に対して高いものとなる。これらの分子としては、多糖、タンパク質、ペプチド、脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、及びそれらの混合物を挙げることができる。本発明の好ましい実施形態において、生物学的活性分子はポリヌクレオチドであり、好ましくはpEGFP、pBgal、及びpSEAPなどのDNA-プラスミドである。別の好ましい実施形態において、生物学的活性分子はヘパリンなどの多糖である。
【0097】
特定の実施形態において、生物学的活性分子の割合は好ましくは水を含む水溶液の全重量に対して0.001重量%〜4重量%である。
【0098】
両方の水溶液が提供されると、それらは撹拌下で混合される。この混合段階は工程e)の水溶液を工程f)の水溶液に加えること、又は工程f)の水溶液を工程e)の水溶液に加えることの両方によって行うことができ、なぜなら添加する順番はナノ粒子の特性に影響を与えないからである。両方の相を混合すると凝集物が生成し、50〜100μmの間に含まれるサイズの粒子が水性媒体中に分散している。
【0099】
その後の工程で、粒子のサイズをナノメートル範囲、すなわち1μm未満のサイズに減少させるために、こうして得られる凝集物に、当業者に既知の任意の方法によってホモジナイズ処理プロセスを施す。
【0100】
特定の実施形態において、別法1の場合のように、高圧ホモジナイズ処理、超音波処理、高せん断混合によって、又は衝撃力若しくは機械的応力を加えることによって、ホモジナイズ処理プロセスを行う。
【0101】
本発明の好ましい実施形態において、高圧ホモジナイズ処理が用いられる。ホモジナイザー、押出機、マイクロフルイダイザーなどの、当業者に既知の任意の装置を使用できる。
【0102】
特定の実施形態において、ホモジナイズ処理プロセスは、サイズバッチ装置に応じて50/800〜50/3000バールの間に含まれる差圧P1/P2のもとでエマルジョンをホモジナイザーのオリフィスに通すことによる、生成した前記エマルジョンの機械的処理を含む。
【0103】
別の特定の実施形態において、いったんナノ粒子が生成されると、コロイド粒子中のキトサンの割合は水を含む全重量に対して0.01重量%〜4重量%、より好ましくは0.1重量%〜1重量%である。
【0104】
別の特定の実施形態において、いったんナノ粒子が生成されると、コロイド粒子中の生物学的活性化合物の割合は水を含む全重量に対して0.01重量%〜5重量%、より好ましくは0.05重量%〜2重量%である。
【0105】
以下に、本発明の特徴及び利点を明らかにする例示的な実施例をいくつか記載するが、それらは特許請求の範囲で定義される本発明の目的を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0106】
以下に詳細に述べる実施例に共通のプロセスとして、ナノカプセル及びナノ粒子のサイズ分布測定は光子相関分光法(PCS; Zeta Sizer、Nano series、Nano-ZS、Malvern Instruments、UK)を用いて行われ、ナノ粒子集団の平均サイズ値を得る。
【0107】
実施例で使用されるキトサン(Protasan UP Cl 113)はNovaMatrix-FMC Biopolymer製、ヒマシ油はPanreac製、MigliolはSasol Germany GmbH製、LabrafacはGatefosse製、ホスファチジルコリン(Epikuron 135F)はCargill製、ポロキサマー188はBASF Corporation製、シクロスポリンA及び抗生剤はTEVA製、ベタメタゾン(betametasona)はGuinama製、アセトンはCostoya製(J. T. Baker)のものであり、使用される残りの製品はSigma Aldrich製のものである。
【0108】
ホモジナイズ処理の工程を行うのに使用されるホモジナイザーは、Laboratory Homogenizer niro-soavi Panda 2Kである。
【0109】
さらに、他の装置を使用した:化学天秤(AND GR 202)、pHメーターPB-11(Sartorious)、実験用乳化反応器(「BIAGI-5」、Lleal、S. A.)、メカニカルオーバーヘッド撹拌器(RW20DZM、IKA)、実験用スケール(LBP、Baxtran)。
【0110】
(実施例1)
シクロスポリンAを含むキトサンナノカプセルの調製
本発明の手順に従い、異なる割合のリン脂質成分(Epikuron)、油(ヒマシ油)、キトサン、及び活性成分(シクロスポリンA、CyA)を用いてナノカプセルを調製した。0.5〜5Lの間に含まれるバッチを調製した。
【0111】
ナノカプセルを調製するための共通の工程は以下の通りである:
【0112】
1. 親油性相の調製
最初に、対応する量のレシチン(Epikuron 135F)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ベンジルアルコール(BA)、及びヒマシ油を、メカニカルオーバーヘッド撹拌器、及び50℃の温度の加熱プレートを用いて、機械的撹拌下でステンレス鋼のフラスコ中で溶解させた。
【0113】
次いで、温度が80℃に上昇した時点でシクロスポリン及びエタノールを上記の溶液にゆっくり加える。すべての成分が溶解し、エタノールの一部が除去されるまで撹拌を続ける。
【0114】
2. 水性相の調製
対応する量のキトサン(CS)、ポロキサマー(Polox)、及び乳酸(LA)を、反応器中で40℃にて撹拌下(錨型撹拌器)、水に溶解させることによって、水性相を調製する。
【0115】
3. エマルジョンプロセス
真空下、最も速い撹拌スピードで、親油性相を反応容器に入った水性相にゆっくり加え、その結果エマルジョンが生成される。
【0116】
4. エマルジョンのホモジナイズ処理
前の工程で得られるエマルジョンを、高圧下でホモジナイザーに通すことによってホモジナイズ処理し、これは小球体サイズの減少をもたらし、その結果ナノカプセルが得られる。
1圧力比P1/P2は50/1000〜1200バールである。
【0117】
5. 0.5%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)を用いた高粘度化
高粘度化プロセスは、乳化反応器中で、ホモジナイズ処理を行ったエマルジョンに強い撹拌下及び真空にてHECを加えることによって行われる。
【0118】
重量パーセントで表されるナノカプセルの組成を以下に示す:
【0119】
【表1】

【0120】
(実施例2)
抗生剤を含むキトサンナノカプセルの調製
この調製に使用される活性分子は、例えばエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、ジリスロマイシンなどのマクロライド抗生物質である。
【0121】
1. 親油性相の調製
最初に、6.Ogの活性分子及び0.3gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、3.0gのベンジルアルコール及び6mlのエタノールの入った容器中で、50℃にて磁気撹拌しながら溶解させる。次いで、6.0gのレシチン(Epikuron 135F)及び43.2gのヒマシ油を上記の溶液に加え、すべての成分が溶解するまで撹拌を続ける。
【0122】
2.水性相の調製
磁気撹拌し、50℃の温度にて加熱プレートで加熱しながら、3.0gのキトサン、7.5gのポロキサマー、及び531.0gの0.2M酢酸を容器中で溶解させることによって、水性相を調製する。
【0123】
3. エマルジョンプロセス
最も速い撹拌スピードでTurrax乳化装置を用いて、反応容器に入れた水性相へ親油性相をゆっくり加え、その結果エマルジョンが生成する。
【0124】
4. エマルジョンのホモジナイズ処理
前の工程で得られるエマルジョンを、高圧下でホモジナイザーNiro-Soavi Panda 2Kに通すことによってホモジナイズ処理し、これは小球体サイズの減少をもたらし、その結果ナノカプセルが得られる。
【0125】
ナノカプセルの組成を以下に示す:
【0126】
【表2】

【0127】
これらのナノカプセルのサイズは300〜600nmの範囲であり、45〜60mVの正のゼータ電位を有する。
【0128】
(実施例3)
Mygliol及びLabrafacを親油性相中の油として用いたキトサンナノカプセルの調製
1. 親油性相の調製
最初に、12.5gのレシチン(Epikuron 135F)、0.1gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2.5gのベンジルアルコール(BA)、125gのトリカプリル/カプリン酸グリセリル(Mygliol 840)(実施例3a)又はLabrafac (実施例3b)、0.25gの活性成分、及び5gのエタノールを、機械的撹拌下(メカニカルオーバーヘッド撹拌器)、40〜60℃の温度の加熱プレートを用いて、ガラスビーカー中で溶解させる。
【0129】
すべての成分が溶解し、親油性溶液の外観が完全に均一になるまで撹拌を続ける。
【0130】
2. 水性相の調製
2.5gのキトサン、6.25gのポロキサマー、及び1.3gの乳酸を、40〜60℃、機械的撹拌下(メカニカルオーバーヘッド撹拌器)でガラスビーカー中の351.15gの水に溶解させることによって、水性相を調製する。
【0131】
水溶液の最適なpHは4.8(4.6〜5.2の範囲)である。
【0132】
3. エマルジョンプロセス
親油性相を水性相にゆっくり加え、より高速の撹拌スピード(2000rpm)で3分間機械的撹拌(メカニカルオーバーヘッド撹拌器)を行うことによってエマルジョンが生成する。次いで500rpmまで減速させ、10分まで撹拌する。
【0133】
4. エマルジョンのホモジナイズ処理
前の工程で得られるエマルジョンを、高圧下でホモジナイザーに通すことによってホモジナイズ処理し、これは小球体サイズの減少をもたらし、その結果ナノカプセルが得られる。
【0134】
1圧力比P1/P2は50/1000〜1200バールである。
【0135】
ナノカプセルの組成を以下に示す:
【0136】
【表3】

【0137】
これらのナノカプセルのサイズは250〜550nmの範囲であり、45〜60mVの正の電位を有する。
【0138】
(実施例4)
ナノカプセル配合物中のカプセル化活性親油性分子の割合の評価
ナノカプセルを下記に詳細に述べる通りに溶媒置換法によって調製した。
【0139】
1. 親油性相の調製:
最初に、250mgのレシチン(2.5% w/w)、720mgのヒマシ油(7.2% w/w)、及び225mgのシクロスポリンA(2.25% w/w)を、磁気撹拌下、フラスコ中の25mlのアセトンに溶解させ、成分が溶解するまで50℃の温度の加熱プレートで加熱した。
【0140】
2. 水性相の調製
50mgのキトサン(0.5% w/w)及び125mgのポロキサマー(1.25%)を磁気撹拌下、フラスコ中の100mlのmiliQ水に溶解させることによって水溶液を調製し、成分が溶解するまで50℃の温度の加熱プレートで加熱した。
【0141】
両方の相が調製されると、磁気撹拌下、50℃の温度で親油性相を水性相に加える。
【0142】
両方の相を混合するとすぐ、得られるエマルジョンを蒸発によって10mlの最終体積まで濃縮する。
【0143】
さらに、ナノカプセルも実施例1aに記載の方法に従って調製した。
【0144】
両方の方法によってナノカプセルが得られると、続いて系におけるシクロスポリン結晶の存在を評価した。このように、水性相中に結晶形成が存在するかを観察し、封入される活性成分に応じてシクロスポリン濃度をHPLCにより定量して(外部の相における最大溶解度は16μg/ml)、ナノカプセルからのシクロスポリンAの放出を視覚的に評価する。このように、外部の相中の定量される量が活性成分の最大溶解度と等しい場合、目には見えないが結晶形成が存在すると推測される。結果をTable I(表4)に示す。
【0145】
【表4】

【0146】
Table I(表4)で見ることができるように、エマルジョン/ホモジナイズ処理プロセスに基づく本発明の方法は、溶媒置換によって得られるものよりも小さい直径を有し、シクロスポリンAの結晶形成がないナノカプセルをもたらし、これは分子が水性相へ拡散することなくナノカプセルの油の核に残っていることを示す。
【0147】
(実施例5)
ナノカプセルの形成における有機溶媒の影響。
異なる有機溶媒及び異なる割合のシクロスポリンを用いる以外は実施例1a及び4に記載の方法に従って、ナノカプセルを得た。溶媒置換法の場合、アセトン、並びにエタノール及びイソプロパノールの混合物を使用したが、一方エマルジョン/ホモジナイズ処理プロセスでは、シクロスポリンに対して好ましい溶媒、すなわちエタノールのみを使用した。結果をTable II (表5)に示す。
【0148】
【表5】

【0149】
Table II (表5)で見ることができるように、本発明の方法によって、凝集物が形成されることなく高濃度の活性成分及び最小のナノカプセルを有することを可能にするエタノールを、親油性相中の有機溶媒として使用することが可能である。エタノールの使用から生じる利点は、前記溶媒が完全に無害であるので化粧品及び皮膚科用品において使用される一般的な賦形剤であることである。溶媒置換法の場合、凝集物を形成させずにエタノールを使用することは不可能であり、なぜならこの溶媒が水性相へ拡散するからである。
【0150】
(実施例6)
ナノカプセルの平均有効サイズの評価
0.5重量%のシクロスポリン及び4.8重量%のヒマシ油を取り込む以外は実施例1a及び4に記載の方法に従って、ナノカプセルを得た。続いて、ナノカプセル及びナノ粒子のサイズ分布を上記に示したように測定した。
【0151】
【表6】

【0152】
Table III (表6)で見ることができるように、エマルジョン/ホモジナイズ処理プロセスによって、ナノカプセルの平均有効サイズは溶媒置換法と比較して大幅に減少する。この特徴は系の有効性において、ひいては活性成分の放出において実に有利であり、なぜならナノカプセルのサイズが減少すると親油性相と水性相との間の比表面積が増加し、その結果親油性相と生物学的環境(皮膚及び粘膜)との間の接触が改善され、活性成分の放出が容易となる。
【0153】
(実施例7)
ナノカプセル系に存在する遊離油の評価
実施例1e及び1fに記載の方法に従ってナノカプセルを得た。さらに、25重量%のヒマシ油を取り込む以外は実施例4に記載の手順に従って、ナノカプセルを調製した。すべての場合において、活性成分を配合物に加えなかった。続いて系における遊離油の存在を評価した。
【0154】
【表7】

【0155】
Table IV (表7)で見ることができるように、本発明の方法は凝集物を形成させずにより多量の油を親油性相に取り込むことも可能にし、このことは系に長期安定性を与え、より多量の親油性活性成分を加える可能性を与える。
【0156】
(実施例8)
ナノカプセル系における水の割合の影響
水溶液中の水の量を減らし、ナノカプセル系に取り込まれるシクロスポリンの割合を変化させること以外は実施例1a及び4に記載の方法に従って、ナノカプセルを得た。結果をTable VI及びTable VIIに示す。
【0157】
【表8】

【0158】
【表9】

【0159】
溶媒置換法とは対照的に、エマルジョン/ホモジナイズ処理プロセスの初期の水溶液における水の存在は35重量%減らすことができ、その結果系を不安定化させずにはるかにより高濃度の配合物が得られる。
【0160】
(実施例9)
キトサン及びヘパリンのナノ粒子の調製
1. 溶液の調製
21gのキトサンを、3Lの酢酸溶液(1%)の入った反応器中に約30分間、メカニカル撹拌器(およそ1500rpm)を用いて室温で溶解させた。
【0161】
室温、磁気撹拌器にて、miliQ水を用いて50mlの体積まで3gのトリポリリン酸塩を水に溶解させ、トリポリリン酸ナトリウム(TPP)溶液を調製した。
【0162】
室温、磁気撹拌器にて、miliQ水溶液(又は超純水)を用いて500mlの体積まで50gのヘパリンを水に溶解させることにより、活性多糖溶液を調製した。
【0163】
磁気撹拌器を用いて210mlの活性多糖及び17.5mlのTPPをフラスコ中で混合することにより、負の化合物、TPP及びヘパリンの水溶液を調製する。
【0164】
2. マクロ凝集物懸濁液の調製
キトサン溶液の入った反応器中で反応プロセスを行った。真空下(最大スピードで15分撹拌)でTPP-CS溶液(227.5 ml)をキトサン溶液(3L)に加えてマクロ凝集物の水性懸濁液を生成させた(室温)。
【0165】
3. 懸濁液のホモジナイズ処理
懸濁液の粒子サイズを減少させてナノ粒子(1〜1000 nm)を得るために、配合物をホモジナイザーNS1001L-PANDA2K(Niro Soavi S.p.A)に通し、これは凝集物を破壊し、したがって水性懸濁液の粒径を0.5〜1μm(1μmまでではない)の範囲に減少させる。50/1200〜1300バールの圧力で配合物を2回ホモジナイザーに通すことが必要である。
【0166】
4. 噴霧乾燥用配合物のコンディショニング
磁気撹拌下、室温にて、アスコルビン酸を工程3で得られたナノ粒子懸濁液に補助剤として加える。1Lの配合物に対して2Ogのアスコルビン酸が必要である。
【0167】
配合物を2〜8℃で保存し、これは3週間安定である。
【0168】
噴霧乾燥することになる配合物の組成は以下の通りである:
【0169】
【表10】

【0170】
(実施例9)
ナノ粒子サイズにおけるキトサン濃度の影響。
以下に詳細に述べられているイオン性ゲル化プロセスによってナノ粒子を得た。
【0171】
5分間の機械的撹拌下(1500rpm、室温)、活性多糖及びトリポリリン酸塩から成るアニオン性溶液をキトサンのカチオン性溶液に加えた。成分の比(CS:活性多糖:TPP)は(1:1:0.015)である。
【0172】
ナノ粒子が自然に生成した(1ミクロン未満のサイズ)。粒子サイズはキトサン濃度に依存していた。すなわち、7.5 mg/mlを超えるキトサン濃度では、系は凝集する傾向がある(Table VIII(表11)に記載の通り)。
【0173】
さらに、異なるキトサンの濃度を用いる以外は実施例8に記載の方法に従って、同様にナノ粒子を調製した。
【0174】
ナノ粒子を両方の方法によって得ると、平均粒径を測定した。結果をTable VIII(表11)及びTable IX(表12)に示す。
【0175】
【表11】

【0176】
【表12】

【0177】
Table VIII(表11)及びTable IX(表12)に示す結果から導き出され得るように、本発明の方法はキトサンの濃度が著しく増加している場合であってもナノメートル範囲の粒子の調製を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)有機溶媒の存在下又は不存在下で、
a.1)少なくともリン脂質成分と;
a.2)油と;
a.3)生物学的親油性活性分子と
を含む親油性相を提供する工程と、
b) b.1)キトサン又はその誘導体と;
b.2)ポリオキシアルキレン化化合物と
を含む水性相を提供する工程と;
c)エマルジョンを生成するように、前記親油性相及び水性相を混合する工程と;
d)前記エマルジョンに、ホモジナイズ処理プロセスを施して、平均有効粒径が1μm未満であるナノカプセルを形成させる工程;あるいは
e)キトサン又はその誘導体と、場合により、グルコマンナン、ヒアルロン酸、ポリオキシアルキレン化化合物、及びそれらの誘導体から選択されるポリマーとを含む水溶液を提供する工程と;
f)架橋剤及び生物学的活性分子を含む水溶液を提供する工程と;
g)凝集物を生成させるように前記両水溶液を混合する工程と;
h)前記凝集物に、ホモジナイズ処理プロセスを施して、平均有効粒径が1μm未満である粒子を生成させる工程と
を含む、サイズが1μm未満であるコロイド系の調製方法。
【請求項2】
リン脂質成分がレシチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水を含むコロイド系の全重量に対して少なくとも7重量%の割合で油を加える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
油がヒマシ油である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリオキシアルキレン化化合物が、ポリオキシエチレン又はエチレンオキシド-プロピレンオキシドコポリマーである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
リン脂質成分の割合が、水を含むコロイド系の全重量に対して0.5重量%〜20重量%である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
リン脂質成分の割合が、水を含むコロイド系の全重量に対して10重量%を超え20重量%までである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
油の割合が、水を含むコロイド系の全重量に対して20重量%を超える、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
生物学的活性親油性分子の割合が、水を含むコロイド系の全重量に対して0.5重量%〜20重量%である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
親油性相がベンジルアルコールをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
生物学的活性親油性分子が、シクロスポリン、ベタメタゾン、及び抗生剤から選択される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程b.1)のキトサンの割合が、水を含むコロイド系の全重量に対して0.1重量%〜4重量%である、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程b.2)のポリオキシアルキレン化化合物の割合が、水を含むコロイド系の全重量に対して0.5重量%〜10重量%である、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
工程a)〜d)から生じるコロイド系がナノカプセルである、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
工程e)のキトサンの割合が、水を含むコロイド系の全重量に対して0.01重量%〜4重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程f)の生物学的活性分子の割合が、水を含むコロイド系の全重量に対して0.001重量%〜5重量%である、請求項1又は13に記載の方法。
【請求項17】
工程e)〜h)から生じるコロイド系がナノ粒子である、請求項1、15及び16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の方法によって得られるコロイド系。

【公表番号】特表2012−529458(P2012−529458A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514433(P2012−514433)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057873
【国際公開番号】WO2010/142620
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511297878)アドヴァンセル・アドヴァンスド・イン・ヴィトロ・セル・テクノロジーズ・ソシエダー・アノニマ (1)
【Fターム(参考)】