説明

活性医薬成分の結晶形態

【課題】新規な結晶形態のシロドシンの提供。
【解決手段】新規な結晶形態δおよびεのシロドシン。特定の溶媒および貧溶媒を用いてこれら特定の結晶形態のシロドシンを調製する方法。シロドシンβ型およびε型を調製するためのシロドシンδ型の使用。さらに、有効量の結晶形態δおよび/またはεのシロドシンを含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、δ型およびε型と命名される新規な結晶形態δおよびεのシロドシンと、これらの調製方法とに関する。さらに、本発明は、β型およびε型を調製するためのδ型の使用に関する。さらに、本発明は、有効量の結晶形態δおよび/またはεのシロドシンを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
以下においてシロドシンと呼ぶ2,3−ジヒドロ−1−(3−ヒドロキシプロピル)−5−[(2R)−2−[[2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エチル]アミノ]プロピル]−1H−インドール−7−カルボキサミドは、アドレナリン受容体のアンタゴニストとして作用し、排尿障害のための治療薬として有用である(EP06006675A)。シロドシンは、商品名Urief(登録商標)の下で良性前立腺肥大症(BPH)を伴う排尿障害の治療のために日本において発売され(2006)、商品名Rapaflo(登録商標)の下でBPHの徴候および症状の治療のために米国において発売された(2009)。2010年2月に、欧州委員会は、BPHの徴候および症状の治療のためのシロドシン(Silodyx(登録商標))を認可した。シロドシンは経口投与され、シロドシンの化学構造を示す。
シロドシンの化学構造
【0003】
【化1】

【0004】
EP1541554Aに、結晶形態α、βおよびγのシロドシン、ならびにこれらの調製が記載されている。その文献は、3種すべての多形についての安定性および吸湿性のデータを提供しているが、溶解度特性について記載していない。
【0005】
多形性は、1種の分子についての様々な結晶形態の存在に関する現象である。様々な多形は、溶解度、化学的安定性、吸湿性、融点、密度等の物理的特性において異なる長所を有することがある。生物薬剤学の分類体系によれば、経口の原薬のバイオアベイラビリティーは、原薬の透過性および溶解度に依存する。したがって、高い溶解度と、結果として高いバイオアベイラビリティーとをもつシロドシンの多形形態が望まれる。しかし、さらなる結晶形態が存在するかどうか、存在するとしたら、それをどのようにして得ることができるか、それがどの特性を有するかは予見できない。
【0006】
EP1541554Aは、結晶形態α、βおよびγが、それらの吸湿性および安定性の特性により、経口の固体薬物の調製に適切な多形であるが、β型およびγ型のもつ特定の問題点のために、α型が好ましいことに言及している。例えば、EP1541554Aによれば、β型は、上記の文献に記載の方法により調製されたときに、工業的な調製において製造の問題点を有し、特に、β型の調製は、強制的で急激な沈殿と組み合わせた、溶媒の激しい混合を必要とする。それゆえに、工業的に適用可能である、結晶形態βを調製するための代替的な方法が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第06006675号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1541554号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、δ型およびε型と呼ばれる新規な結晶形態のシロドシンと、これらの調製方法とに関する。さらに、本発明は、β型およびε型を調製するためのδ型の使用に関する。さらに、本発明は、有効量の結晶形態δおよび/またはε型のシロドシンを含む医薬組成物に関する。
【0009】
本発明は、新規なδ型を経てβ型を調製するための工業的に適用可能な方法も提供する。δ型は、加熱によりβ型に転移するので、純粋なβ型を調製するために非常に役立つ形態である。
【0010】
さらに、δ型は、シロドシンの無水、非吸湿性および溶媒不含の形態であるので、医薬品の調製に特に適している。
【0011】
結晶形態εは、EP1541554の結晶形態α、βおよびγより高い溶解度と、したがって高いバイオアベイラビリティーとを示す。したがって、結晶形態εは、医薬品を調製するために非常に役立つ結晶形態である。
【0012】
結晶形態εは、結晶形態δから調製される。それゆえに、結晶形態δは、結晶形態εを調製するために非常に役立つ多形である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】結晶形態δのシロドシンのX線粉末回折(XRPD)パターンを示すグラフである。
【図2】結晶形態δのシロドシンの熱重量分析(TGA)曲線を示すグラフである。
【図3】結晶形態δのシロドシンの示差走査熱量(DSC)曲線を示すグラフである。
【図4】結晶形態δのシロドシンの水分収着等温線を示すグラフである。
【図5】結晶形態εのシロドシンのX線粉末回折(XRPD)パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の態様において、本発明は、シロドシンの結晶形態(以下においてδ型とも呼ぶ)に関する。
【0015】
δ型のシロドシンは、6.6±0.2°、10.5±0.2°、13.1±0.2°、21.3±0.2°および22.8±0.2°の2シータ角における特性ピークを含むXPRDパターンにより定義され得る。好ましくは、2.6±0.2°、6.6±0.2°、10.5±0.2°、13.1±0.2°、17.9±0.2°、18.7±0.2°、21.3±0.2°および22.8±0.2°の2シータ角に現れるピークを含むさらなるピークが認められ得る。シロドシンδ型のXRPDパターンを図1に図示する。
【0016】
シロドシンδ型は、場合によって、この熱重量分析によりさらに説明され得る。TGA曲線を図2に図示する。図2に示される通りに、著しい質量減少(約0.1重量%)は、約106℃の融点まで観測されず、これにより、溶媒和されていない無水の結晶形態のシロドシンの存在が確認される。
【0017】
δ型のシロドシンは、場合によって、示差走査熱量分析によりさらに説明され得る。DSC曲線を図3に図示する。DSC曲線により、δ型からβ型への転移によることが見出されている、約89℃におけるピーク最大値をもつ第1の吸熱線のすぐ後の、約92℃におけるピーク最大値をもつ発熱線が示されている。約106℃におけるピーク最大値をもつ第2の吸熱線は、β型の融解過程による。
【0018】
さらに、あるいは、シロドシンδ型は、場合によって、図4に図示するその水分収着等温線を特徴とすることがある。意義深いことに、シロドシンのδ型は、約90%の相対湿度において、約0.35重量%の極小で可逆的な吸湿しか示さないので、非吸湿性として分類され得る。
【0019】
本発明は、δ型を調製する方法にも関する。δ型のシロドシンは、
a)テトラヒドロフラン中にシロドシンを溶解するステップ、
b)場合によってこの溶液を濾過するステップ、
c)n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンおよびtert.−ブチルメチルエーテルからなる群から選択される貧溶媒をその溶液に添加するステップ、
d)生成懸濁液を撹拌するステップ、
e)場合によってこの懸濁液を冷却するステップ、
f)結晶形態δを単離するステップ、ならびに
g)結晶形態δを乾燥するステップ
を含む方法により調製され得る。
【0020】
任意の形態のシロドシン、例えば、非晶質シロドシン、結晶性シロドシン、または非晶質および結晶質のシロドシンの混合物が、溶解のステップにおいて適用され得る。シロドシンの適切な結晶形態は、例えば、EP1541554のα型、β型およびγ型、本発明のε型、またはこれらの混合物である。
【0021】
任意の形態のシロドシンが、THF中で容易に可溶化される。適切な初期濃度は、約10から200g/Lの範囲である。得られた溶液は、すべての溶解されなかった粒子を除去するために、場合によって濾過され得る。
【0022】
シロドシンは、n−ヘプタン中において不溶性であるので、δ型の結晶化は、n−ヘプタンをその溶液に添加することにより開始される。n−ヘプタンが好ましいが、他の適切な貧溶媒は、例えばn−ヘキサン、シクロヘキサンまたはtert.−ブチルメチルエーテルである。貧溶媒は、室温以下、好ましくは室温で添加され、THF/貧溶媒の比率は、1.0:0.5から1.0:4.0(v:v)の範囲である。
【0023】
得られた懸濁液は、室温以下、好ましくは室温で、約6から72時間、より好ましくは約6から48時間、最も好ましくは約6から24時間、撹拌される。
【0024】
次いで、結晶が、濾過、遠心分離、または溶媒混合物の蒸発等の任意の従来的な方法により単離される前に、その懸濁液は、より多くの材料を溶液の外に出すために場合によって冷却され得る。
【0025】
その後、結晶形態δは、好ましくは真空下において、好ましくは、約25−60℃、より好ましくは約30−55℃の範囲の温度で乾燥され、最も好ましくは、その材料は、約40−50℃で、好ましくは約1−72時間、より好ましくは約6−48時間、最も好ましくは約12−24時間の範囲の時間の間、乾燥される。
【0026】
驚いたことに、δ型は、約80−100℃の温度における加熱により純粋なβ型に容易に転移し、より好ましくは、この転移は、約85−95℃の温度で現れ、最も好ましくは、δ型は、約90℃でβ型に転移する。転移後に、試料は室温に冷却され、β型が収集される。
【0027】
β型は、EP1541554に開示されている通りに定義され、例えば、7.0±0.2°、12.5±0.2°、18.5±0.2°、19.5±0.2°、20.7±0.2°および21.1±0.2°の2シータ角における特性ピークを示す。さらなる参照が、EP1541554の図2に図示されている。
【0028】
δ型は、図3に表されるTGA曲線から参照され得る通りに、残留溶媒を実質的に含まない。したがって、δ型を約90℃にすることにより、残留溶媒を本質的に含まない純粋なβ型が生成される。
【0029】
それゆえに、δ型は、工業規模でβ型のシロドシンを製造するために役立つ多形である。
【0030】
第2の態様において、本発明は、別の結晶形態のシロドシン(以下においてε型とも呼ぶ)に関する。
【0031】
ε型のシロドシンは、3.1±0.2°、4.8±0.2°、6.2±0.2°、8.9±0.2°および11.6±0.2°の2シータ角における特性ピークを含むXRPDパターンにより定義され得る。好ましくは、3.1±0.2°、4.8±0.2°、6.2±0.2°、8.9±0.2°、11.6±0.2°、18.2±0.2°、18.7±0.2°、19.7±0.2°、20.8±0.2°、22.2±0.2°、23.4±0.2°および26.4±0.2°の2シータ角に現れるピークを含むさらなるピークが認められ得る。シロドシンε型のXRPDパターンを図5に図示する。
【0032】
本発明は、ε型を調製する方法も提供する。ε型のシロドシンは、
a)メタノール水溶液中でδ型をスラリー化するステップ、
b)ε型を単離するステップ、および
c)ε型を乾燥するするステップ
を含む方法により、上述の結晶形態δから調製され得る。
【0033】
ε型のみがメタノール水溶液中でδ型をスラリー化することにより得られるので、δ型が出発材料として適用される。ε型を、メタノール水溶液中でEP1541554のα型、β型またはγ型をスラリー化することにより得ることはできない。
【0034】
その方法のために用いられるメタノール水溶液の濃度は、約10−90%(v:v)、好ましくは約20−80%(v:v)、より好ましくは約30−70%(v:v)、最も好ましくは約40−60%(v:v)の範囲である。
【0035】
結晶形態δのε型への転移は、通常、急速に現れる。例えば0.5時間後に、水性メタノール懸濁液からの試料が取り出され、XRPDによりε型と同定された。それにもかかわらず、堅牢な工程を適切にするために、その懸濁液は、好ましくは、約1−72時間、より好ましくは約6−48時間、最も好ましくは約12−24時間、撹拌される。
【0036】
単離のステップのために、濾過、遠心分離、または溶媒の蒸発等の任意の従来的な方法が適用され得る。
【0037】
結晶形態εは、好ましくは真空下において、好ましくは、約25−60℃、より好ましくは約30−55℃の範囲の温度で乾燥されることがあり、最も好ましくは、その材料は、約40−50℃で、好ましくは約1−72時間、より好ましくは約6−48時間、最も好ましくは約12−24時間の範囲の時間の間、乾燥される。
【0038】
驚いたことに、本発明の結晶形態εは、EP1541554の公知の多形α、βおよびγより高い溶解度を示す。ε型は、メタノール/水の混合物中において、調査した結晶形態のうちで最も高い平衡溶解度を示した。メタノール水溶液中における60分後の平衡濃度を表1に示す。
【0039】
【表1】

メタノール/水の溶媒系は、水溶液系の中における固体状態のシロドシンの溶解を代表している。すべての結晶形態は、溶解実験後のそれらのXRPDパターンにおいていかなる変化も示さなかったので、試験溶液中で速度論的に安定である。
【0040】
結晶形態δおよびεのシロドシンは、多形性的に安定である。例えば、δ型およびε型は、環境温度で50日間貯蔵され、40℃で7日間負荷を与えても、この時間の間において、固体状態の相転移を受けなかった。
【0041】
上述の通りの本発明の結晶形態δおよび/またはεのシロドシンは、本発明による排尿障害および関連する疾患の治療における使用のための様々な医薬製剤の中において有利に用いられ得る。したがって、本発明は、上述の通りの結晶形態δおよび/またはεのシロドシン、および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物にも関する。
【0042】
したがって、本発明は、結晶形態δのシロドシンを含む医薬組成物にも関する。好ましくは、本発明は、95%を超えるシロドシンがδ型として安定的に存在する、より好ましくは、δ型が唯一の検出可能なシロドシンの結晶形態である、そのような医薬組成物に関する。
【0043】
さらに、本発明は、結晶形態εのシロドシンを含む医薬組成物に関する。好ましくは、本発明は、95%を超えるシロドシンがε型として安定的に存在する、より好ましくは、ε型が唯一の検出可能なシロドシンの結晶形態である、そのような医薬組成物に関する。
【0044】
本明細書において定義される「安定的に存在」は、医薬組成物を180日間貯蔵した後でさえ、好ましくは2年間貯蔵した後でさえ、その医薬組成物中に最初に含まれていたδ型またはε型と呼ぶ結晶形態のシロドシンが、示された期間の間の貯蔵の後においてもなお結晶形態δまたはεとして存在することを意味する。
【0045】
結晶形態δおよび/またはεのシロドシンを含む本発明の医薬組成物は、1種または複数の薬学的に許容できる賦形剤をさらに含むことができる。このような賦形剤は、好ましくは、増量剤、甘味料、緩衝剤、流動促進剤、流動化剤、香料、潤滑剤、保存剤、界面活性剤、湿潤剤、結合剤、崩壊剤および増粘剤からなる群から選択される。医薬組成物の分野において公知の他の賦形剤も用いられ得る。さらに、その医薬組成物は、上記の群の構成要素の1種の中にも2種以上の賦形剤の組合せを含むことができる。
【0046】
シロドシンのδ型および/またはε型を含む本発明の医薬組成物に適切な賦形剤の例は、例えば、本明細書に参照により組み込まれるEP1574215において、段落[0027]から[0030]に示されている。
【0047】
EP1574215の段落[0027]に、シロドシンのδ型および/またはε型を含む本発明の医薬組成物のための増量剤の例が開示されている。本発明の医薬組成物のためにも用いられ得る好ましい増量剤は、D−マンニトールである。
【0048】
EP1574215の段落[0028]に、シロドシンのδ型および/またはε型を含む本発明の医薬組成物のための崩壊剤の例が開示されている。本発明の医薬組成物のためにも用いられ得る好ましい崩壊剤は、澱粉、例えば、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、および部分アルファ化澱粉、例えばPCSまたはstarch1500である。
【0049】
EP1574215の段落[0030]に、シロドシンのδ型および/またはε型を含む本発明の医薬組成物のための潤滑剤の例が開示されている。本発明の医薬組成物のためにも用いられ得る好ましい潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクである。
【0050】
必要に応じて、本発明のδ型および/またはε型を含む医薬組成物のためにも用いられ得る適切な界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0051】
本発明の医薬組成物を調製するために適切な方法の例は、例えば、本明細書に参照により組み込まれるEP1574215において、段落[0049]および[0050]に示されている。
【0052】
本発明のカプセルまたは錠剤を製造するための具体例は、例えば、EP1574215、段落[0084]から[0086]に、またはEP1541554、段落[0052]から[0063]に示されている。これらの例は、本発明のδ型および/またはε型のシロドシンを用いて反復され得る。
【0053】
シロドシンは、光曝露に対して比較的不安定であることが知られている。したがって、遮光材料を含むカプセルが用いられる、または錠剤は遮光効果をもつ材料により被覆され、ここで、二酸化チタンが、好ましくは遮光材料である。
【0054】
(実施例)
X線粉末回折(XRPD)パターンを、入射ビーム側における透過構造のシータ/シータの結合されたゴニオメータ、ウェルプレートのホルダーをもつプログラム制御可能なXYZステージ、集束鏡をもつCu−Kα1,2の照射源(波長0、15419nm)、0.5°の発散スリット、0.02°のソーラースリットコリメータ、および1°の散乱防止スリットと、回折ビーム側における2mmの散乱防止スリット、0.02°のソーラースリットコリメータ、およびニッケルフィルターと、ソリッドステートのPIXcel検出器とを備えたX’Pert PRO回折計(オランダ、アルメロ、PANalytical)により得た。回折図を、2°から40°の2シータの角度範囲内で、1ステップあたり40sでステップ幅0.013°の2シータを適用し、管電圧40kV、管電流40mAで記録した。2シータの値の一般的な精度は、±約0.2°の2シータの範囲内である。したがって、5.0°の2シータに現れた回折ピークは、標準的な条件下におけるほとんどのX線回折計により4.8から5.2°の2シータの間に現れることがある。
【0055】
熱重量分析を、Thermogravimetric−system TGA−7、Windows(登録商標)NT用Pyris−Software、(米国、コネティカット州、ノーウォーク、Perkin−Elmer)により行った。4.986mgを白金試料ホルダー(50μL)の中に秤量した。窒素をパージガス(試料のパージ:20mL/分、天秤のパージ:40mL/分)として用いた。加熱速度は5K/分。
【0056】
示差走査熱量測定を(DSC)を、Mettler Toledo Polymer DSCにより行った。試料1.69gを、穴の開いた蓋をもつ40μLのAlパンの中で、25から120℃において10℃/分の速度で加熱した。窒素(パージ速度10mL/分)をパージガスとして用いた。
【0057】
水分収着等温線を、水分収着分析計SPS−11(ドイツ、ウルム、MD Messtechnik)により記録した。測定サイクルは、相対湿度(RH)40%で開始し、10%のステップで0%RHに減少させ、10%のステップで90%RHに増加させ、10%のステップで0%RHに減少させ、再度10%のステップで40%RHに増加させた。それぞれのステップについての平衡条件を、30分超で±0.01%の質量の定常性に設定した。温度は、25±0.1℃であった。
【実施例1】
【0058】
シロドシンδ型の調製
シロドシン100mgを、室温でTHF1mL中に溶解した。この溶液にn−ヘプタン1mLを添加し、この混合物を室温で撹拌する一方で、数分以内に結晶化を開始した。この懸濁液をさらに3時間撹拌した後に、固体材料を濾別し、n−ヘプタンで洗浄し、40℃で真空下において約17時間乾燥した。この方法に従って、結晶形態δ70mg(収率70%)を得た。
【実施例2】
【0059】
シロドシンδ型の調製
シロドシン100mgを、室温でTHF1mL中に溶解した。この溶液にn−ヘプタン2mLを添加し、得られた懸濁液を3時間撹拌した後に、固体材料を濾別し、40℃で真空下において約20時間乾燥した。この方法に従って、結晶形態δ84mg(収率84%)を得た。
【実施例3】
【0060】
シロドシンδ型のβ型への転移
シロドシンδ型300mgを、ガラスバイアル中に秤量し、次いで、これを密封した。試料を90℃で1時間貯蔵した。その材料を室温に冷却させ、XRPDによりβ型への転移が確認された。
【実施例4】
【0061】
シロドシンδ型からのシロドシンε型の調製
シロドシンδ型1.060g(例えば実施例1または2の方法により得られる)を、室温で50%メタノール水溶液(v:v)10mL中に懸濁させた。0.5時間後に、試料をその懸濁液から取り出し、XRPDによりシロドシンε型と同定した。MeOH50%(v:v)5mLを添加し、この混合物をさらに68時間撹拌した。最後に、固体を濾別し、真空下において40℃で乾燥して、結晶形態εを得た。
【実施例5】
【0062】
シロドシンα型、β型、γ型およびε型の溶解度測定
それぞれの結晶形態のシロドシン(α、βおよびγはEP1541554に記載の手順に従って得られ、εは本明細書の実施例3に従って得られた。)約400mgを、25±1℃でMeOH50%(v:v)10mL中で撹拌した。次に、1mLを、容積測定ピペットの助けにより15、30および60分後にそれぞれの懸濁液から取り出し、濾過した。濾液をMeOH50%(v:v)で50mLに希釈し、それぞれの濃度を269nmにおけるUV分光測定(装置:Perkin Elmer Lambda 35)により測定した。
【0063】
校正曲線を、同じ溶媒系の中における一連の既知の濃度に基づいて測定した。
【0064】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
6.6±0.2°、10.5±0.2°、13.1±0.2°、21.3±0.2°および22.8±0.2°の2シータ角におけるピークを含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態のシロドシン。
【請求項2】
約89℃における吸熱ピーク、および約92℃における発熱ピークを示すDSC曲線を特徴とする、請求項1に記載の結晶形態のシロドシン。
【請求項3】
本質的に図3によるDSC曲線を特徴とする、請求項1に記載の結晶形態のシロドシン。
【請求項4】
25±0.1℃での、0%から約90%の相対湿度における、0.5重量%未満の可逆的な吸湿により示される非吸湿特性を特徴とする、請求項1に記載の結晶形態のシロドシン。
【請求項5】
本質的に図4による水分収着等温線を特徴とする、請求項1に記載の結晶形態のシロドシン。
【請求項6】
a)テトラヒドロフラン中にシロドシンを溶解するステップ、
b)場合によって溶液を濾過するステップ、
c)n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンおよびtert.−ブチルメチルエーテルからなる群から選択される貧溶媒を溶液に添加するステップ、
d)生成懸濁液を撹拌するステップ、
e)場合によって生成懸濁液を冷却するステップ、
f)請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態のシロドシンを単離するステップ、ならびに
g)請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態のシロドシンを乾燥するステップ
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態のシロドシンを調製する方法。
【請求項7】
3.1±0.2°、4.8±0.2°、6.2±0.2°、8.9±0.2°および11.6±0.2°の2シータ角におけるピークを含むX線粉末回折パターンを有する結晶形態のシロドシン。
【請求項8】
a)メタノール水溶液中で、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態のシロドシンをスラリー化するステップ、
b)請求項7に記載の結晶形態のシロドシンを単離するステップ、および
c)請求項7に記載の結晶形態のシロドシンを乾燥するステップ
含む、請求項7に記載の結晶形態のシロドシンを調製する方法。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態のシロドシンを含む、および/または請求項7に記載の結晶形態のシロドシンを含み、少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤をさらに含む医薬組成物。
【請求項10】
経口投与形態、特に、カプセルまたは錠剤である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
医薬組成物を製造するための、請求項1から5のいずれか一項または請求項7に記載の結晶形態のシロドシンの使用。
【請求項12】
請求項9および10のいずれかに記載の、または請求項11に記載の使用により得られる、排尿障害の治療における使用のための医薬組成物。
【請求項13】
シロドシンβ型を調製する方法における中間体としての、請求項1から5のいずれかに記載の結晶形態のシロドシンの使用。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態のシロドシンを、約80℃から約100℃の温度に加熱することを含む、結晶形態βのシロドシンを調製する方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法を行うステップ、および
β型のシロドシンを少なくとも1種の薬学的に許容できる賦形剤と混合するステップ
を含む、結晶形態βのシロドシンを含む医薬組成物を調製する方法。
【請求項16】
請求項7に記載の結晶形態のシロドシンを製造する方法における中間体としての、請求項1から5のいずれか一項に記載の結晶形態のシロドシンの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131786(P2012−131786A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−268555(P2011−268555)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】