説明

活性型AREB1により植物の乾燥ストレス耐性を向上させる方法

【課題】植物体内で高発現することにより、植物の乾燥・塩・低温等の環境ストレス耐性を向上させる活性型AREB1の提供ならびに該活性型AREB1を利用して植物の環境ストレス耐性を向上させる方法の提供。
【解決手段】植物の環境ストレス応答性転写因子AREB1の活性化制御領域を欠失し、N末端の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥ストレス耐性を制御するタンパク質AREB1の活性型およびその利用法に関する。
【背景技術】
【0002】
水の欠乏はあらゆる生命に対して致死的なダメージを与える。このため、植物は乾燥ストレス等の環境ストレスに対応するための複雑なシグナル伝達ネットワーク機構を発達させ、致死的な傷害を回避している。
【0003】
植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)は植物において種々の機能を有しており、環境ストレスへの適応応答にも関与している。アブシジン酸は、水欠乏条件下で合成され、乾燥ストレスへの応答に対して重要な役割を果たしている。乾燥ストレスにより誘導される多くの遺伝子が知られており、それらの多くはアブシジン酸により活性化される。そのようなアブシジン酸により制御される遺伝子のプロモーターとしてABRE(ABA-responsive element)が知られている。
【0004】
AREBは、ABREに結合するタンパク質として最初にシロイヌナズナにおいてAREB1、AREB2およびAREB3が報告された(非特許文献1参照)。現在までにシロイヌナズナでAREB1/ABF2、AREB2/ABF4、AREB3/DPBF3、ABF1、ABF3/DPBF5、ABI5/DPBF1、EEL/DPBF4、DPBF2およびAT5G42910の9個のAREBのホモログが報告されている(非特許文献1〜8参照)。AREBはABAによる遺伝子発現を転写する制御因子であり、乾燥・塩・低温ストレス耐性遺伝子を制御する因子として知られており、乾燥・塩・低温ストレス耐性の制御に関してDREBと二分する機能を有している。AREBは、ABREに結合しその下流のストレス応答性遺伝子の発現を誘導することにより、植物に乾燥・塩・低温ストレス応答性を付与するが、植物体内でそのまま高発現しても下流のストレス応答性遺伝子の発現を誘導しない。AREB1の活性化には、ストレス誘導性のスプライシングおよびAREB1タンパク質のリン酸化が必要であると考えられている。
【0005】
【非特許文献1】Uno et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA97, 11632-11637 (2000)
【非特許文献2】Choi et al., J, Biol. Chem. 275, 1723-1730 (2000)
【非特許文献3】Finkelstein et al., Plant Cell 12, 599-609 (2000)
【非特許文献4】Lopez-Molina et al., Plant Cell Physiol. 41, 541-547 (2000)
【非特許文献5】Bensmihen et al., Plant Cell 14, 1391-1403 (2002)
【非特許文献6】Jakoby et al., Trends plant Sci. 7, 106-111 (2002)
【非特許文献7】Kim et al., Plant Physiol. 130, 688-697 (2002)
【非特許文献8】Suzuki et al., Plant Physiol. 132, 1664-1677 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、植物体内で高発現することにより、植物の乾燥・塩・低温ストレス耐性を向上させる活性型AREB1の提供ならびに該活性型AREB1を利用して植物の乾燥・塩・低温ストレス耐性を向上させる方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、AREB1の詳細なドメイン解析を行い、AREB1の転写活性化ドメインがN末端のアミノ酸1-60の領域であると特定した。また、転写活性化ドメインとDNA結合ドメインの間の活性化制御領域(アミノ酸65-277)を削除すると、AREB1が恒常的な活性型に変化することを見出した。この活性型AREB1を導入したシロイヌナズナを用いてマイクロアレイ解析を行い、AREB1のターゲット遺伝子を解析すると種々のストレス耐性遺伝子が高発現していることが示された。また、活性型AREB1導入シロイヌナズナのストレス耐性試験を行い、乾燥ストレス耐性が向上していることを確認した。さらに系統樹解析をもとにして、AREB1のホモログであるシロイヌナズナのAREB2およびABF3がABAシグナルを介した乾燥・塩・低温ストレス応答性の遺伝子であることを同定した。さらに双子葉植物のシロイヌナズナにとどまらず、単子葉植物のイネにおいても乾燥・塩・低温ストレス応答性の相同性遺伝子OsAREB1の同定に成功した。今回特定したN末端領域は、植物種にかかわらず相同性がきわめて高い領域であり、活性型AREB1を作出するのに用いた手法は、広く多様な植物種に適用できると考えられる。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 植物の環境ストレス応答性転写因子AREB1の活性化制御領域の一部または全部を欠失し、N末端の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
[2] 植物の環境ストレス応答性転写因子のQ、R、SおよびT領域の少なくとも1つの領域を欠失し、N末端の転写活性化ドメインを含むP領域およびDNA結合ドメインを含むU領域を含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
[3] シロイヌナズナ由来である[1]または[2]の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【0009】
[4] 配列番号2で表されるアミノ酸配列において65番目のアミノ酸から277番目のアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする[3]の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
[5] [3]または[4]の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、植物の環境ストレス応答性転写活性を有するタンパク質をコードする活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
[6] 配列番号1で表される塩基配列において312位の塩基から950位の塩基までの塩基配列が欠失した塩基配列からなる[3]の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
[7] [6]の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子の塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNAであって、植物の環境ストレス応答性転写活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【0010】
[8] イネ由来の環境ストレス応答性転写因子OsAREB1の活性化制御領域を欠失し、転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
[9] 環境ストレスが乾燥ストレス、塩ストレスまたは低温ストレスである[1]〜[8]のいずれかの活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
[10] [1]〜[9]のいずれかの遺伝子を含む植物形質転換用ベクター。
[11] [10]の植物形質転換用ベクターで形質転換された環境ストレス耐性が向上したトランスジェニック植物。
[12] [1]〜[9]のいずれかの遺伝子を植物に導入することにより、該植物の環境ストレス耐性を向上させる方法。
[13] 環境ストレス耐性が、乾燥耐性、塩耐性および/または低温耐性である、[12]の環境ストレス耐性を向上させる方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の植物の乾燥ストレス、塩ストレス、低温ストレス等の環境ストレス応答性転写因子AREB1の活性化制御領域を欠失し、N末端の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子を植物に導入し、過剰発現させることにより、植物の乾燥・塩・低温耐性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1. 本発明の遺伝子
植物の環境ストレス応答性転写因子AREB1の活性化制御領域の一部または全部を欠失し、N末端の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子は、植物のAREB1をコードする遺伝子から、活性化制御領域を欠失させることにより作製することができる。ここで、環境ストレスとは乾燥ストレス、塩ストレス、低温ストレス等をいう。
【0013】
植物のAREB1遺伝子は、図1Bに示すように、P(AREB1タンパク質の1番目のアミノ酸から約61番目のアミノ酸)、Q(AREB1タンパク質の約61番目のアミノ酸から約117番目のアミノ酸)、R(AREB1タンパク質の約117番目のアミノ酸から約200番目のアミノ酸)、S(AREB1タンパク質の約200番目のアミノ酸から約264番目のアミノ酸)、T(AREB1タンパク質の約264番目のアミノ酸から約316番目のアミノ酸)およびU(AREB1タンパク質の約316番目のアミノ酸から約417番目のアミノ酸)の6つの領域に分けることができる。このうち、U領域はDNA結合ドメインであるbZIPを含み、P領域は転写活性化ドメインを含む。Q、R、SおよびT領域は活性化制御領域を含む。
【0014】
本発明の遺伝子は、このうち少なくともP領域の転写活性化ドメインおよびU領域のDNA結合ドメインを含み、Q、R、SおよびT領域の活性化制御領域の一部または全部を欠失し、活性化制御領域の機能が失われている。本発明の遺伝子は、転写活性化ドメインを含む転写活性領域がその機能を有している。欠失領域としては、例えば上記のQ、R、SおよびTの少なくとも1つの領域が挙げられ、例えば、QからTまで、RからTまでの欠失が挙げられる。また、各領域の全てが欠失している必要は必ずしもなく、活性化制御機能が喪失している限り、各領域の一部が欠失していてもよい。本発明の遺伝子として、例えば、配列番号2で表されるシロイヌナズナ由来のAREB1タンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸61番目のアミノ酸から316番目のアミノ酸のうち、50番目から100番目、61番目から70番目または100番目から130番目のアミノ酸から始まる連続した100、150、200、250、300または350のアミノ酸配列を欠失したタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列において60〜70番目のいずれかのアミノ酸から270〜280番目のいずれかのアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質、60〜100番目のいずれかのアミノ酸から260〜320番目のいずれかのアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質、100〜130番目のいずれかのアミノ酸から260〜320番目のいずれかのアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質等があり、好ましくは65番目のアミノ酸から277番目のアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
【0015】
また、本発明の遺伝子は配列番号1で表されるシロイヌナズナのAREB1遺伝子の塩基配列において第270位の塩基から420位の塩基、第300位の塩基から330位の塩基、または第420位の塩基から510位の塩基までの塩基から始まる連続した300、450、600、750、900または1050の塩基配列を欠失した塩基配列からなる遺伝子であり、例えば、配列番号1で表される塩基配列において300〜330位のいずれかの塩基から920〜960位のいずれかの塩基までの塩基配列が欠失した塩基配列からなる遺伝子、300〜420位のいずれかの塩基から1000〜1080位のいずれかの塩基までの塩基配列が欠失した塩基配列からなる遺伝子または420〜510位のいずれかの塩基から1000〜1080位のいずれかの塩基までの塩基配列が欠失した塩基配列からなる遺伝子が挙げられる。好ましくは312位の塩基から950位の塩基を欠失した塩基配列からなる遺伝子である。
【0016】
このように活性化制御領域の一部または全部を欠失した遺伝子は、公知の遺伝子操作の手法により作製することができる。例えば、PCRを利用し転写活性化ドメインをコードするDNAとDNA結合ドメインをコードするDNAを結合すればよい(Innis et al., 1990, PCR Protocols, Academic Press, San Diego)。また、相互プライミング法により両DNAを連結することもできる(Uhlmann, 1988, Gene 71:29-40)。
【0017】
本発明において、植物の環境ストレス応答性転写因子AREB1の活性化制御領域の一部または全部を欠失し、N末端の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含むAREB1を活性型AREB1という。また、例えば上記のQからTまでの領域を欠失したAREB1をAREB1ΔQTという。
【0018】
また、本発明の遺伝子は、上記のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、植物の環境ストレス応答性転写活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も含む。ここで、数個とは20個以下、好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下、特に好ましくは2個若しくは1個を意味する。
【0019】
さらに、上記遺伝子の塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNAからなる遺伝子も、植物の環境ストレス応答性転写活性を有するタンパク質をコードする限り、本発明の遺伝子に含まれる。ここで、ストリンジェントな条件とは、ホルムアミド濃度が30〜50%、37〜50℃、6×SSCの条件、好ましくはホルムアミド濃度が50%、42℃、6×SSCの条件をいう。
【0020】
本発明の遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法や Gapped duplex法などの公知の手法又はこれに準ずる方法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製)など)を用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて行うことができる。
【0021】
本発明の遺伝子の由来植物種は限定されず、シロイヌナズナ等の双子葉植物のAREB1のオーソログ遺伝子であって、活性化制御領域を欠失し、N末端の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む遺伝子、イネ等の単子葉植物のAREB1のオーソログ遺伝子であって、活性化制御領域を欠失し、N末端の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む遺伝子が含まれる。由来植物種がシロイヌナズナ以外の植物種である場合、欠失させる領域は、シロイヌナズナのAREB1遺伝子において欠失させる領域に相当する領域であり、このような領域はシロイヌナズナ由来のAREB1遺伝子と他種植物由来のAREB1のオーソログ遺伝子をアラインメントさせることにより決定することができる。例えば、図4DにはシロイヌナズナのAREB1タンパク質とイネのAREB1(OsAREB1)タンパク質の転写活性領域の部分アミノ酸配列のアラインメントを示す。配列番号9にイネ由来のOsAREB1の塩基配列を、配列番号10にOsAREB1のアミノ酸配列を示す。OsAREB1タンパク質において、P領域は1番目のメチオニンから63番目のグルタミン酸、Q領域は64番目のセリンから126番目のセリン、R領域は127番目のトレオニンから192番目のロイシン、S領域は193番目のフェニルアラニンから236番目のセリン、T領域は237番目のアスパラギンから276番目のグルタミン酸、U領域は277番目のアルギニンから357番目のトリプトファンまでの部位である。すなわち、本発明の遺伝子は配列番号10で表されるイネ由来のOsAREB1タンパク質のアミノ酸配列のアミノ酸64番目のアミノ酸から357番目のアミノ酸のうち、50番目から100番目、60番目から70番目または100番目から130番目のアミノ酸から始まる連続した100、150、200、250または300のアミノ酸配列を欠失したタンパク質をコードする遺伝子が挙げられ、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列において60〜70番目のいずれかのアミノ酸から270〜280番目のいずれかのアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質、60〜100番目のいずれかのアミノ酸から260〜290番目のいずれかのアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質、100〜130番目のいずれかのアミノ酸から260〜290番目のいずれかのアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質を含む。好ましくは、64番目から276番目のアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質である。
【0022】
さらに、本発明の遺伝子は、配列番号9で表されるイネのOsAREB1遺伝子の塩基配列において第360位の塩基から520位の塩基、第390位の塩基から430位の塩基、または第510位の塩基から610位の塩基までの塩基から始まる連続した300、450、600、750または900の塩基配列を欠失した塩基配列からなる遺伝子であり、例えば、配列番号9で表される塩基配列において390〜420位のいずれかの塩基から1030〜1060位のいずれかの塩基までの塩基配列が欠失した塩基配列からなる遺伝子、390〜510位のいずれかの塩基から1000〜1090位のいずれかの塩基までの塩基配列が欠失した塩基配列からなる遺伝子または510〜600位のいずれかの塩基から1000〜1090位のいずれかの塩基までの塩基配列が欠失した塩基配列からなる遺伝子を含む。好ましくは406位から1045位の塩基配列が欠失した塩基配列からなる遺伝子である。
【0023】
本発明のタンパク質の転写活性化能は、シロイヌナズナのプロトプラストの系を用いるトランスアクチベーション実験法を用いることにより解析することができる。例えば、AREB1 cDNAをCaMV35Sプロモーターを含むpBI221プラスミド(Clonetech社製)に連結し、エフェクタープラスミドを構築する。一方、ABREを含むDNA断片を、β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子上流のTATAプロモーターのさらに上流に連結し、レポータープラスミドを構築する。次いでこの2種のプラスミドをシロイヌナズナのプロトプラストに導入した後、GUS活性を測定する。AREB1タンパク質を同時に発現させることにより、GUS活性の上昇が見られれば、プロトプラスト内で発現したAREB1タンパク質が、ABREの配列を介して転写を活性化していることがわかる。
【0024】
本発明において、プロトプラストの調製及び該プロトプラストへのプラスミドDNAの導入は、Abelらの方法[Abel,S.:Plant J. 5:421-427(1994)]により行うことができる。β-グルクロニダーゼ活性は、Jeffersonらの方法[Jefferson,R.A.:EMBO J. 83:8447-8451(1986)]により、ルシフェラーゼ活性はPicaGeneルシフェラーゼアッセイキット(Toyo-Ink社製)を用いることにより測定することができる。
【0025】
野生型のAREB1はアブシジン酸存在下でないとABRE下流の遺伝子の転写活性を誘導しないが、本発明の活性型AREB1はアブシジン酸非存在下でもABRE下流の遺伝子の転写活性を誘導しえる。
【0026】
2. 本発明の遺伝子を導入したトランスジェニック植物の作製
遺伝子工学的手法を用いて本発明のタンパク質をコードするDNAを植物宿主に導入することにより、乾燥耐性、塩耐性、低温耐性等の環境ストレスに対して抵抗性を有するトランスジェニック植物を作製することができる。本発明の遺伝子の植物宿主への導入方法としては、アグロバクテリウム感染法などの間接導入法や、パーティクルガン法、ポリエチレングリコール法、リポソーム法、マイクロインジェクション法などの直接導入法などが挙げられる。アグロバクテリウム感染法を用いる場合、以下のようにして本発明の遺伝子導入植物を作製ことができる。
【0027】
(1) 植物導入用組換えベクターの作製及びアグロバクテリウムの形質転換
植物導入用組換えベクターは、本発明の遺伝子を含むDNAを適当な制限酵素で切断後、必要に応じて適切なリンカーを連結し、植物細胞用のクローニングベクターに挿入することにより得ることができる。クローニング用ベクターとしては、pBE2113Not、pBI2113Not、pBI2113、pBI101、pBI121、pGA482、pGAH、pBIG等のバイナリーベクター系のプラスミドやpLGV23Neo、pNCAT、pMON200などの中間ベクター系のプラスミドを用いることができる。
【0028】
バイナリーベクター系プラスミドを用いる場合、上記のバイナリーベクターの境界配列(LB,RB)間に、目的遺伝子を挿入し、この組換えベクターを大腸菌中で増幅する。次いで、増幅した組換えベクターをアグロバクテリウム・チュメファシエンスC58、LBA4404、EHA101、C58C1RifR、EHA105等に、凍結融解法、エレクトロポレーション法等により導入し、該アグロバクテリウムを植物の形質導入用に用いる。
【0029】
上記の方法以外にも、本発明においては、三者接合法[Nucleic Acids Research, 12:8711(1984)]によって本発明の遺伝子を含む植物感染用アグロバクテリウムを調製することができる。すなわち、目的遺伝子を含むプラスミドを保有する大腸菌、ヘルパープラスミド(例えばpRK2013など)を保有する大腸菌、及びアグロバクテリウムを混合培養し、リファンピシリン及びカナマイシンを含む培地上で培養することにより植物感染用の接合体アグロバクテリウムを得ることができる。
【0030】
植物体内で外来遺伝子などを発現させるためには、構造遺伝子の前後に、それぞれ植物用のプロモーターやターミネーターなどを配置させる必要がある。本発明において利用可能なプロモーターとしては、例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)由来の35S転写物[Jefferson, R.A. et al.: The EMBO J 6:3901-3907(1987)]、トウモロコシのユビキチン[Christensen, A.H. et al.: Plant Mol. Biol. 18:675-689(1992)]、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子、オクトピン(OCT)合成酵素遺伝子のプロモーターなどが挙げられ、ターミネーター配列としては、例えばカリフラワーモザイクウイルス由来やノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネーターなどが挙げられる。但し、植物体内で機能することが知られているプロモーターやターミネーターであればこれらのものに限定されるものではない。
【0031】
ここで、用いるプロモーターが目的遺伝子の構成的発現を担うプロモーター(CaMV35Sプロモーターなど)で、これによって、遺伝子導入植物に生長の遅れや矮化が生じる場合は、目的遺伝子の一過性の発現をもたらすようなプロモーター(例えば、rd29A遺伝子プロモーターなど)を用いることができる。また、必要に応じてプロモーター配列と本発明の遺伝子の間に、遺伝子の発現を増強させる機能を持つイントロン配列、例えばトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ(Adh1)のイントロン[Genes& Development 1:1183-1200(1987)]を導入することができる。
【0032】
さらに、効率的に目的の形質転換細胞を選択するために、有効な選択マーカー遺伝子を本発明の遺伝子と併用することが好ましい。その際に使用する選択マーカーとしては、カナマイシン耐性遺伝子(NPTII)、抗生物質ハイグロマイシンに対する抵抗性を植物に付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(htp)遺伝子及びビアラホス(bialaphos)に対する抵抗性を付与するホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子等から選ばれる1つ以上の遺伝子を使用することができる。本発明の遺伝子及び選択マーカー遺伝子は、単一のベクターに一緒に組み込んでも良いし、それぞれ別個のベクターに組み込んだ2種類の組換えDNAを用いてもよい。
【0033】
(2) 宿主への本発明の遺伝子の導入
本発明の形質転換体の宿主は特に限定されないが、植物であることが好ましい。該植物は、植物培養細胞、栽培植物の植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、根茎、種子等)、又は植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束等)のいずれであってもよい。植物種は限定されず、双子葉植物、イネ、トウモロコシ、コムギ等の単子葉植物を用いることができる。形質転換する植物が双子葉植物の場合は、シロイヌナズナ等の双子葉植物由来の本発明の遺伝子を導入することが好ましく、形質転換する植物が単子葉植物の場合はイネ等の多因しよう植物由来の本発明の遺伝子を導入することが好ましい。植物培養細胞、植物体、植物器官又は植物組織を宿主とする場合、本発明のタンパク質をコードするDNAは、採取した植物切片にベクターをアグロバクテリウム感染法、パーティクルガン法又はポリエチレングリコール法などで導入し、植物宿主を形質転換することができる。あるいはプロトプラストにエレクトロポレーション法で導入して形質転換植物を作製することもできる。
【0034】
たとえばアグロバクテリウム感染法によりシロイヌナズナに遺伝子を導入する場合、目的の遺伝子を含むプラスミドを保有するアグロバクテリウムを植物に感染させる工程が必須であるが、これは、バキュームインフィルトレーション法[CR Acad. Sci. Paris, LifeScience, 316 :1194(1993)]により行うことができる。すなわち、シロイヌナズナをバーミキュライトとパーライトを等量ずつ合わせた土で生育させ、生育させたトウモロコシを本発明の遺伝子を含むプラスミドを含むアグロバクテリウムの培養液に直接浸し、これをデシケーターに入れバキュームポンプで65〜70mmHgになるまで吸引後、5〜10分間、室温に放置する。鉢をトレーに移しラップで覆い湿度を保つ。翌日ラップを取り、植物をそのまま生育させ種子を収穫する。
【0035】
次いで、種子を目的の遺伝子を保有する個体を選択するために、適切な抗生物質を加えたMS寒天培地に播種する。この培地で生育したシロイヌナズナを鉢に移し、生育させることにより、本発明の遺伝子が導入されたトランスジェニネック植物の種子を得ることができる。一般に、導入遺伝子は宿主植物のゲノム中に同様に導入されるが、その導入場所が異なることにより導入遺伝子の発現が異なるポジションイフェクトと呼ばれる現象が見られる。プローブとして導入遺伝子のDNA断片を用いたノーザン法で検定することによって、より導入遺伝子が強く発現している形質転換体を選抜することができる。
【0036】
本発明の遺伝子を導入したトランスジェニック植物及びその次世代に目的の遺伝子が組み込まれていることの確認は、これらの細胞及び組織から常法に従ってDNAを抽出し、公知のPCR法又はサザン分析を用いて導入した遺伝子を検出することにより行うことができる。
【0037】
(3) 本発明の遺伝子の植物組織での発現レベル及び発現部位の分析
本発明の遺伝子を導入したトランスジェニック植物における該遺伝子の発現レベル及び発現部位の分析は、これらの細胞及び組織から常法に従ってRNAを抽出し、公知のRT-PCR法又はノーザン分析を用いて導入した遺伝子のmRNAを検出することにより行うことができる。また、本発明の遺伝子産物を、該遺伝子産物に対する抗体を用いたウエスタン分析等により直接、分析することによっても行うことができる。
【0038】
(4) 本発明の遺伝子が導入されたトランスジェニック植物体内における各種遺伝子のmRNAレベルの変化
本発明の遺伝子が導入されたトランスジェニック植物体内において、本発明の転写因子の作用により、発現レベルが変化したと考えられる遺伝子はノーザンハイブリダイゼーションによって同定することができる。
【0039】
例えば、水耕栽培などで育てた植物に、所定期間(例えば1〜2週間)の環境ストレスを与える。環境ストレスとしては、乾燥、塩、低温等が挙げられる。例えば乾燥ストレスの負荷は、水耕栽培から植物体を、抜き取り濾紙上で10分〜24時間乾燥させることにより与えることができる。塩ストレスの負荷は、例えば50〜500mM NaCl溶液に変更し、10分〜24時間保持することによって与えることができる。また、低温ストレスの負荷は、例えば、シロイヌナズナの場合、-15〜5℃に10分〜24時間保持することにより与えることができる。低温ストレスの負荷温度は、植物種、植物の成長段階等に応じて適宜決定することができる。
【0040】
ストレスを与えないコントロール植物と環境ストレスを与えた植物から全RNAを調製して電気泳動を行い、発現をみたい遺伝子のプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーションを行えば、その発現パターンが解析できる。
【0041】
(5) トランスジェニック植物の環境ストレスに対する耐性の評価
本発明の遺伝子を導入したトランスジェニック植物の環境ストレスに対する耐性は、例えばバーミキュライト、パーライトなどを含む土を入れた植木鉢にトランスジェニック植物を植え、各種環境ストレスを負荷した場合の生存を調べることによって評価することができる。環境ストレスとしては、乾燥、塩、低温等が挙げられる。例えば、乾燥ストレスに対する耐性は、2〜4週間、水を与えずその生存を調べることにより評価することができる。また、塩ストレスは例えば100〜600mM NaClで1時間〜7日間おいた後、1〜3週間、20〜35℃で生育させその生存率を調べることにより評価することができる。さらに、低温ストレスは例えばシロイヌナズナの場合、-15〜5℃に、30分〜10日間おいた後、2日〜3週間、20〜35℃で生育させその生存率を調べることにより評価することができる。
【0042】
3. 植物のストレスレベルの測定
本発明の遺伝子は、乾燥ストレス、塩ストレス、低温ストレス等により転写が活性化されるため、本発明の遺伝子の転写レベルを調べることにより、植物の受けている乾燥・塩・低温などによる環境ストレスのレベルを調べることができる。
【0043】
本発明の遺伝子の転写レベルは、RNAゲルブロット分析、定量的PCRなどにより行うことができる。RNAゲルブロット分析に用いるプローブは、本発明の遺伝子及び/又は該遺伝子に隣接する特異的な配列を含む100〜1000bpの領域を基に、公知の方法を用いて作製することができる。また定量的PCRに用いるプライマーは、本発明の遺伝子のコード領域内又はそれに隣接する領域の配列を基に、公知の方法を用いて調整することができる。
【実施例】
【0044】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(1)方法および材料
本実施例において、用いた材料および方法は以下のとおりであった。
【0045】
植物と生育条件
植物(Arabidopsis thaliana ecotype Columbia)は、明期16時間/暗期8時間の照光条件下(40 ± 10μmol photons/m2/s)で、Osakabeら(2005, Plant Cell 17, 1105-1119)の方法に従い、2〜3週間GM寒天培地上で育成した(2005, Plant Cell 17, 1105-1119)。GM寒天培地には1%あるいは3%のスクロースを添加し、実験によってはABAをさらに必要量添加した。シロイヌナズナのT87培養細胞は、Satohら(2004, Plant Cell Physiol. 45, 309-317)の方法に従い、維持、管理を行った。シロイヌナズナのAREB1のT-DNA挿入変異株(SALK_002984; Col-0 ecotype)は、シロイヌナズナ生物資源センター(Arabidopsis Biological Resource Center, コロンブス, オクラホマ州, 米国)から入手した。また、このT-DNA挿入変異体についての情報は、米国カリフォリオニア州にあるソーク研究所ゲノム解析研究室(Salk Institute Genomic Analysis Laboratory)のウェブサイト(http://signal.salk.edu)から得た。さらに、AREB1遺伝子へのT-DNAの挿入部位は、T-DNAレフトボーダープライマー 5¢-GCGTGGACCGCTTGCTGCAACT-3¢(配列番号3)とAREB1-特異的プライマー 5¢-TCAAGCTCCACGGTGTAAGCC-3¢(配列番号4)を用いたPCRによって確認した。また、Ito および Shinozaki (2002, Plant Cell Physiol. 43, 1285-1292)の方法に従ってRT-PCR法を用いた解析を行い、areb1T-DNA挿入変異株においてAREB1遺伝子が発現していないことを確認した。
【0046】
RNAゲルブロット解析
植物体からの全RNAの抽出およびその全RNAを用いたRNAゲルブロット解析は、Satohら(2004, Plant Cell Physiol. 45, 309-317)の方法に従い、Shakemaster 破砕機 (Bio Medical Science, Tokyo, Japan)を用いて行った。また、RNAゲルブロット解析のプローブはMaruyama ら (2004, Plant J. 38, 982-993)の方法に従って調製した。
【0047】
シロイヌナズナのプロトプラストを用いた一過的発現解析
シロイヌナズナのT87細胞由来のプロトプラストを用いた一過的発現解析は、Fujita ら (2004, Plant J. 39, 863-876)およびSatohら (2004, Plant Cell Physiol. 45, 309-317)の方法に若干の改変を加えた方法を用いた。プロトプラストの単離、および遺伝子導入は、すべて室温(25〜28℃)にて行った。遺伝子を導入したプロトプラストは16〜20時間、22℃で暗所に静置した。酵素溶液[0.4 M mannitol, 1.5% (w/v) cellulase “Onozuka” R-10 (Yakult, Tokyo, Japan), 0.3% (w/v) macerozyme R-10 (Yakult), 0.1% (w/v) bovine serum albumin, 10 mM CaCl2, 20 mM KCl, and 20 mM MES, pH 5.7]はSheen (2002)の方法(http://genetics.mgh.harvard.edu/sheenweb/)に従って調製した。
【0048】
AREB1 cDNAの一部または全体を含むDNA断片をPCRで増やして、発現ベクターであるpBI35SΩ(Abe et al., 1997, Plant Cell 9, 1859-1868)のNotIサイトにクローニングすることにより、AREB1のbZIP DNA結合ドメインを持ったプラスミドを作製し、これを一過的発現解析実験に用いた。pBI35SΩ-AREB1プラスミドからEcoT14Iによって部分切断される640塩基対の断片を除くために、EcoT14Iで部分切断した後に自己結合リガーゼ反応を行った。その結果作製されたpBI35SΩ-AREB1ΔQTは、QからT領域にまたがる内部欠失(アミノ酸残基65-277)を持ったプラスミドである。以下の二組のプライマーによるPCRによってAREB1 cDNAの一部を持った2つのDNA断片が作製された: forward primer A、 5¢-GGGGCGGCCGCATGACACAAGCCATGGCTAGTG-3¢(配列番号5); reverse primer A、 5¢-GCAGAAGCACCTTGACTTCCCCCTACTCCAC-3¢(配列番号6); forward primer B、5¢-GTAGGGGGAAGTCAAGGTGCTTCTGCTGC-3¢(配列番号7); reverse primer B、5¢-GGGGAGCTCTCACCAAGGTCCCGACTCTG-3¢(配列番号8)。その結果作製された断片AとBはPCR用のチューブ内で混合し、94℃・10分間で変性、アニーリングの後、72℃・3分間でポリメラーゼ反応を行った。このDNA断片をforward primer A とreverse primer Bで増幅したものを、pBI35SΩに導入した。その結果作製されたpBI35SΩ-AREB1ΔP/RTは2箇所の内部欠失(アミノ酸残基1-60、117-277)を持ったプラスミドである。
【0049】
GAL4活性化ドメインに結合したGAL4DNA結合ドメインを持つ発現プラスミド(p35S-562)と、GAL4-GUSレポータープラスミド(pGUS-558)は服部束穂先生(名古屋大学、日本)から譲渡されたものを用いた。一過的発現解析実験で用いたGAL4結合ドメインを持つ発現プラスミドは、AREB1 cDNAの一部を含むPCR断片を発現ベクターp35S-562のBamHI/SacIサイトにクローニングして作製した。浦尾剛先生(国際農林水産業研究センター, 日本)から譲渡された植物の発現ベクターpBI221-(-46/Ω)LUCのHindIII/BamHIサイトに、pBI-35SLUC(Urao et al., 1996, Plant J. 10, 1145-1148)から得た900塩基対のHindIII/BamHI断片を挿入した。その結果作製されたpBI35SΩ-LUCは内部標準として一過的転写活性化実験に用いた。
【0050】
形質転換植物用のコンストラクト
pBE2113Not-AREB1プラスミドを作製するために、NotIリンカー付きのプライマーを用いて、PCRでAREB1のコード領域全体を増幅し、pBE2113Not(Liu et al., 1998, Plant Cell 10, 1391-1406)にセンス方向に導入した。pBE2113Not-AREB1ΔQTは、AREB1ΔQTのコード領域をXbaI、BamHIリンカー付きのプライマーを使ったPCRで増幅し、pBE2113NotのXbaI/BamHIサイトにセンス方向で導入して作製した。
【0051】
35S-AREB1および35S-AREB1ΔQTの形質換植物を作製するために、形質転換ベクターpBE2113Not-AREB1およびpBE2113Not-AREB1ΔQTをAgrobacterium tumefaciensのC58系統を用いた吸引浸潤法(Osakabe et al., 2005, Plant Cell 17, 1105-1119)によってシロイヌナズナ(Columbia) に導入した。
【0052】
乾燥耐性試験
乾燥耐性試験はSakamotoら (2004, Plant Physiol. 136, 2734-2746) の方法に若干の改変を加えた方法を用いた。植物は、明期16時間/暗期8時間の照光条件下(50 ± 10μmol photons/m2/s)で、22 ± 1 ℃、 相対湿度35 ± 5%の条件下で育成した。これらの植物への給水を12日間停止することで乾燥ストレスをかけた。
【0053】
急激な乾燥状態での植物の生存試験には、GM寒天培地上で播種後2〜3週間育成した植物を用いた。これらの植物を寒天培地から注意深くぬきとり(ふたをとりはらった)ペトリ皿に移した。その後、一定時間乾燥させ、乾燥処理終了後、給水を行った。急激な乾燥状態での生存試験は、9 ± 1μmol photons/s/m2の照光条件下で25 ± 2℃ (相対湿度20% ± 10%)の条件下で行った。再給水後、ペトリ皿ごと植物培養室に移し、22 ± 2 ℃、連続光 (50 ± 5μmol photons/s/m2)照射下で1〜3日間置き、植物の色で生存あるいは枯死を判断した。組織の50%以上が緑色であった植物は生きていると判断した。植物体の大きさによる影響を最小限にとどめるために、同程度の大きさの植物を使用した。全ての実験は少なくとも5回繰り返し、各比較実験で少なくとも3ライン、40植物体以上を用いた。
【0054】
マイクロアレイ解析
GM寒天培地で2週間得育てた35S-AREB1ΔQTとベクターコントロールの植物体をそのまま、あるいはABAで7時間処理した後に回収し、Agilent Arabidopsis 2 Oligo Microarray (Agilent Technologies, Palo Alto, CA, USA)で解析した。生物学的反復のために、RNA抽出では8個体をまとめて一つのサンプルとした。各実験では独立した2ラインの形質転換体を用いた。全RNAはTrizol 試薬 (Invitrogen)で抽出され、Cy5およびCy3でラベルしたcDNAプローブの調製に使用した。マイクロアレイ実験はデータ解析も含めて全て、製品に添付されたプロトコール(http://www.chem.agilent.com/scripts/generic.asp?lpage =11617&indcol=Nandprodcol=Y)に従って行った。マイクロアレイ解析の再現性を評価するために色素(Cy5とCy3)を交換しても同じ結果が出ることをそれぞれの実験に対して確認する実験を行った。私達の経験的な知見では、コントロール植物でCy5またはCy3のシグナル強度が500〜1000以下のものは、RNAゲルブロット解析での再現性が必ずしも確認できない場合があった。このため、我々の実験条件下では、コントロール植物においてCy5とCy3の両方でシグナル値が1000以下の遺伝子は解析に用いなかった。また、我々はP値が0.001以下のものについて解析を行った。また、これまでのわれわれの研究データから、マイクロアレイ実験における遺伝子発現の変化が3倍以上の遺伝子では、RNAゲルブロット解析と定量リアルタイムRT-PCR解析によって再現性よく顕著にその発現の変化を確認できた(Rabbani et al., 2003, Plant Physiol. 133, 1755-1767; Fujita et al., 2004, Plant J. 39, 863-876; Maruyama et al., 2004, Plant J. 3, 982-993など)。Feature extraction and image analysis software (version A.6.1.1; Agilent Technologies)を用いて、アレイ上の各スポットを特定して定量化し、Lowess 法による標準化を行った。遺伝子のクラスタリング解析にはGenespring 6.1 software (Silicon Genetics, San Carlos, カリフォルニア州, 米国)を用いた。シロイヌナズナのゲノム中にあるAt4g25580は、RD29Bと非常に良く似た塩基配列を持っている。RD29Bに特異的な配列を用いた定量リアルタイムRT-PCR解析とRNAゲルブロット解析によって、35S-AREB1ΔQTの植物体ではRD29Bの遺伝子発現だけが上昇していることを確認した。
【0055】
植物の水分生理学的解析
植物の水分の消失量と相対水分含量は、Yoshida ら (2002, Plant Cell Physiol. 43, 1473-1483) およびMa ら (2004, Plant J. 40, 845-859)の方法に若干の改変を加えた方法を用いて測定した。土を詰めたポットで育てた4週間目の植物体から地上部を切り取り、経時的に新鮮重の測定を行った。切り取った植物体の地上部は一定時間乾燥させた後、180℃で3.5時間乾熱処理を行って、その乾燥重量を測定した。植物の大きさや乾燥重量による値のばらつきの影響を最小限にするために、相対水分含量は[(FWi-DW)/ (FW0-DW)] ´100の式を用いて算出し、地上部の最初の水分含量に対する百分率で示した。FWiとFW0は、それぞれ特定の時間での新鮮重とはじめの新鮮重、また、DWは乾燥重量を示している。これらの試験は実験室のベンチの上で行った(24 ± 1 ℃、相対湿度65% ± 5%、照光条件は9 ± 1μmol photons/s/m2)。
【0056】
系統樹解析
3つのN末端保存領域(C1、C2およびC3:図1A)とbZIP領域の配列から、ClustalX プログラム(version 1.83)によってアラインメントを作製した。ただし変数は以下のように設定した:gap open penalty = 5.00, gap extension penalty = 0.05 (Supplemental Fig. 1)。なお、最終的には手作業でアラインメントを微調整した。系統樹は、 Fujita ら(2004, Plant J. 39, 863-876)の方法に従って、MEGA software (version 3)を用いて、近隣結合法により作製された。単系統群の信頼度は、ブーツストラップ解析(1000回反復)により計算した。
【0057】
(2)シロイヌナズナT87培養細胞AREB1由来プロトプラストを用いたAREB1のN末端保領域のトランスアクチベーション活性の検討
以前の研究で本発明者は、シロイヌナズナのプロトプラストで、AREB1タンパク質がRD29Bプロモーター‐GUSの融合遺伝子(RD29B-GUS)の転写を活性化したことを示した(Uno et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA97, 11632-11637)。今回、本発明者は、AREB1の転写活性化ドメインを同定するために、N末端に欠失を持った欠損型AREB1を、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターで恒常的に発現させるプラスミドを作製した(図1)。発現プラスミドはリポータープラスミドのRD29B-GUSとあわせて、シロイヌナズナのT87培養細胞から調整したプロトプラストに導入された。このリポータープラスミドは、RD29Bプロモーター中にある2つのABREを含む77塩基対を直列に5つ並べて、GUSレポーター遺伝子につないだ配列を持っている(図1A)。
【0058】
図1Aに、エフェクタープラスミドとリポータープラスミドのコンストラクトを示す。リポータープラスミドとして、GUS遺伝子の上流にRD29Bプロモーターである77bpのABRE配列を5回繰り返し配置したものを用いた。プロモーターは、-51RD29BminimalTATAプロモーター-GUSコンストラクトの上流に連結した。Nos-Tは、ノパリン合成酵素ターミネーターである。エフェクタープラスミドとしては、CaMV35S-TMV Ω 配列の下流にAREB1の全長またはbZIP DNA結合ドメインを含む一部を挿入したものを用いた。これら二つのプラスミドを、シロイヌナズナ T87細胞のプロトプラストに同時に導入した。プロトプラスト中で合成されたAREB1タンパク質は、リポータープラスミドのABRE配列に結合し、下流に存在するGUS遺伝子の転写を誘導する。AREB1タンパク質の転写誘導活性は、GUSタンパク質の活性を測定することで求められる。
【0059】
AREB1のN末端にある60アミノ酸残基の短い領域(P領域)を欠失させた場合では、100μMのABAを加えても加えなくても、プロトプラストでのレポーター遺伝子の転写活性が有意に低下し、この領域に正の制御ドメインがあることが示唆された(図1B)。
【0060】
図1Bに、N末端を欠失させたAREB1のトランスアクチベーションドメイン分析の結果を示す。プロトプラストをRD29B-GUSリポーターコンストラクトおよびエフェクターコンストラクトで同時トランスフェクトした。ベクターはpBI-35SΩである。相対活性はpBI-221-35SΩコントロールに対する発現を倍数で示す。図1Bの上の数字はアミノ酸番号を示す。P、Q、R、S、TおよびUはAREB1 cDNAの部分領域を示し、P、Q、RおよびU領域の黒部分は保存領域を示す。全長のAREB1タンパク質では、50μMのアブシジン酸(ABA)存在下で顕著にGUS活性の上昇がみられ、AREB1の転写誘導の活性化にはAREB1が機能することを示した。一方、AREB1タンパク質のN末端領域、アミノ酸1-60の領域が失われると、ABA存在下においてもGUS活性がバックグランドレベルまで低下し、この領域にAREB1タンパク質の転写活性化ドメインが存在することが示唆された。
【0061】
本発明者は、さらに、AREB1のP領域と結合ドメインを持った変異タンパクが、外的なABAの非存在下でRD29B-GUSレポーター遺伝子の転写を活性化させるかどうかを調べた。発現プラスミドとして、AREB1のbZIP DNA結合ドメインとPまたはQ領域をそれぞれ持った、AREB1ΔQTとAREB1ΔP/RTを作製した(図1C)。図1Cに、AREB1ΔQTおよびAREB1ΔP/RTのトランスアクチベーションの結果を示す。アミノ酸65-277の領域を削除したAREB1変異体(AREB1ΔQT)では、ABA非存在下においても顕著に転写活性が誘導された。AREB1ΔQTとRD29B-GUSを同時に導入することでABA非存在下でも有意にGUSレポーター遺伝子が活性化されたが、AREB1ΔP/RTの場合ではABAの有無に関わらずレポーター遺伝子は活性化されなかった。これらの結果から、AREB1のN末端にあるP領域は転写活性化ドメインを含んでいて、プロトプラストではAREB1ΔQTが恒常的な活性型であることが示唆された。
【0062】
また、AREB1ΔP/RTやその他N末端を欠失させた多くのAREB1変異体では、ABA存在下のベクターコントロールに比べて有意に転写活性化能が低下していた。これら変異体でみられる転写活性化能の低下は、AREB1ΔP/RTやN末端を欠失させたAREB1変異体が、レポータープラスミド中にあるABREモチーフへ優先的に結合することによって、植物細胞にもともとあるABA誘導性の内在性の転写因子がABREモチーフに結合することを妨げたことが原因であると考えられる(図1Bおよび図1C)。ただしN末端欠失変異体の中で、P領域の欠失変異体だけはABA存在下でレポーター遺伝子の活性化の抑制がほとんどみられなかった。この原因として、P領域の欠失変異体の配列が特異的になんらかの影響を与えている可能性が考えられる。
なお、すべのトランスアクチベーション実験は3から10回繰り返し、代表的な1回の結果を示してある。棒グラフのバーは標準偏差を示す。n=3〜5であった。
【0063】
(3)AREB1ΔQTの発現検討
本発明者は、これまでAREB1タンパク質がRD29Bプロモーターにある2つのABRE配列に結合し、遺伝子発現を活性化することを示した(Uno et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA97, 11632-11637)。一方、先に述べたように外的ABAの非存在下では、ABRE1は下流のRD29B遺伝子の発現を活性化しなかった。ここでは、シロイヌナズナでのABRE1ΔQTの過剰発現が、外的なABAの非存在下でRD29Bのような下流遺伝子の転写を活性化するかどうかを調べた。まず、ABRE1ΔQTのcDNAを、カリフラワーモザイクウィルスの35Sプロモーターで発現させた形質転換植物を作製した。この形質転換体の独立した33ラインにおいて、ストレス処理をしない状態で導入遺伝子のABRE1ΔQTと下流遺伝子のRD29Bについて発現を解析した。調べた全ての形質転換ラインにおいて外的にABAを添加しない条件でABRE1ΔQTとRD29Bの蓄積レベルが上昇していた。表現型の解析をするためにABRE1ΔQTの発現レベルが高い8ラインを選んだ。なお、また各ラインの種子数が統計的な解析をするには時に不十分だったため、この8ラインの表現型が同様であったことから、実験によって異なったラインを用いた場合があった。図2に、野生型、ベクターコントロールRNAゲルブロット分析の結果を示す。図1の実験において、ABA非存在下においても恒常的に転写活性を誘導する活性型AREB1(AREB1ΔQT)を、CaMV 35SプロモーターとTMV Ω配列によりシロイヌナズナ中で発現させた。2週間の実生をアブシジン酸で7時間処理するかまたは処理しなかった。図2Aに、ノーザン解析の結果を示す。各レーンは10μgのトータルRNAを含む。最下段はエチジウムブロミドで染色したコントロールである。ノーザン解析により、野生型(WT)およびベクターコントロール植物(vector)では、50μM ABA存在下においてのみプロモーター領域にABRE配列を持つ下流遺伝子RD29Bの発現を確認できた。一方、全長のAREB1cDNAを発現させた植物(35S-AREB1)ではABA非存在下でRD29B遺伝子の発現がみられなかったのに対し、活性型AREB1を発現させた植物(35S-AREB1ΔQT)ではABA非存在下においても下流のRD29B遺伝子の発現が誘導されていた。植物で過剰発現したABRE1ΔQTは外的なABAの非存在下で、下流遺伝子であるRD29Bの転写を活性化した。この結果から、ABRE1ΔQTが植物全体で見てもABRE1の恒常的な活性型であり、プロトプラストと同様に植物体でもABRE1のN末端にあるP領域が転写活性化ドメインとして機能していることが示された。
【0064】
図2Bに1%スクロースを含むGMK培地での生育を播種後3週間後の写真で示した。全長のAREB1 cDNAをシロイヌナズナ中で発現させた場合(35S-AREB1)、コントロール植物(WT)と生育の差はほとんどみられないが、活性型AREB1を発現させた植物(35S-AREB1ΔQT)では、若干の生育遅延がみられた。これは、環境ストレス耐性が改善されたDREB1A発現植物においてもみられる現象である。播種後3週間の時点で、35S-ABRE1ΔQT植物のロゼッタ葉の最大半径は、平均して野生型の70%であった。生育の全過程において、35S-ABRE1ΔQT植物は野生型よりわずかに小さかったが、35S-ABRE1植物は成長に関して野生型と同様な表現型を示した。
【0065】
(4)活性型AREB1発現シロイヌナズナのマイクロアレイ解析
活性型AREB1発現シロイヌナズナ(35S-AREB1ΔQT)を用いて、マイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイはシロイヌナズナの85%以上の遺伝子の発現プロファイルを調べることができるアジレント・テクノロジー社アジレント・アラビドプシス2オリゴマイクロアレイを用いた。ABA非存在下の無処理時の活性型AREB1発現植物においてベクターコントロール植物よりも発現量が4倍以上高く誘導されていた遺伝子は、8個あった(表1)。その8個の下流遺伝子のうち4個は、水ストレス耐性に関与するLEAタンパク質遺伝子であり、残りの4個は、シグナル制御関連遺伝子であった。これらの下流遺伝子は、いずれもABAおよび乾燥誘導性遺伝子であり、そのプロモーター領域には、AREB1タンパク質が結合するのに必要な2つ以上のABRE配列が存在していた。
【0066】
【表1】

【0067】
(5)活性型AREB1発現シロイヌナズナの乾燥ストレス耐性試験
ストレス応答遺伝子の中で、LEAタンパク質をコードする遺伝子は乾燥耐性に関係していると考えられている(Ingram and Bartels, 1996, Plant Mol. Biol. 47, 377-403; Thomashow, 1999, Plant Mol. Biol. 50, 571-599)。ストレス処理をしない状態の35S-ABRE1ΔQT植物で発現がきわめて顕著に上昇した8遺伝子の内、4遺伝子がLEAタンパク質だった。このため、35S-ABRE1ΔQT植物では乾燥耐性が向上していると予想された。このことを確認するために、本発明者はABRE1ΔQTの過剰発現が乾燥ストレスへの耐性に影響するかを調べた。いくつかの独立したライン間を比較しても同様の表現型を示したので(データは示していない)、ライン12と26について詳細な解析を行った。活性型DREB2A過剰発現シロイヌナズナのストレス耐性を確認した。播種後4週間の植物の灌水を2週間停止し、乾燥耐性試験を行った。灌水を停止して2週間経過後に、植物体の生死を明確に判別するために、再び灌水を開始し5日経過した後に撮影した。図3に示す写真の下の数字は、試験に用いた植物体数(分母)と生存していた植物個体数(分子)を示している。この乾燥ストレス実験において、多くののベクターコントロール植物(WT)が枯死したのに対し、ほとんどの活性型AREB1発現植物(35S-AREB1ΔQT)では健全な状態を保っていた。活性型AREB1を発現することにより、植物の環境ストレス耐性が改善されることが示された。図3に示したように、給水を12時間停止すると、ほとんど全ての野生型植物は完全に萎れてしまった。一方、ABRE1ΔQT植物の両ラインでは再吸水するとほぼかわりなく成長を続けた。乾燥ストレス実験の期間中、全てのポットの間で土壌水分含量の違いは5%以内に収まっていた(データは示していない)。このように、35S-ABRE1ΔQT植物は急激な脱水状態における生存能力が高く、乾燥ストレスへの耐性が向上していた。
【0068】
(6)シロイヌナズナとイネにおけるAREB1相同遺伝子の系統樹解析
図4Aは、双子葉植物のシロイヌナズナと単子葉植物のイネにおけるAREB1相同遺伝子の類縁関係を系統樹により示した。図4Bは、シロイヌナズナにおけるAREB1相同性遺伝子のABA、乾燥、塩、および水処理における遺伝子発現プロファイルを示す。実験には、GMK培地上で生育させた播種後2週間の植物を用い、ノーザン法により遺伝子発現を示した。数字は、処理時間を示している。図4Cは、イネにおけるAREB1相同性遺伝子の乾燥、塩および低温処理における遺伝子発現プロファイルを示す。実験には、水耕栽培で育てた播種後2週間の植物を用い、マイクロアレイ法により遺伝子発現を示した。発現レベルは、コントロール植物を1とした時の倍率で示した。数字は、処理時間を示している。図4Dは、シロイヌナズナとイネにおけるAREB1相同遺伝子の転写活性化領域のアミノ酸配列の比較を示す。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】シロイヌナズナ T87細胞のプロトプラストを用いたAREB1のドメイン解析に関する図である。図1Aは、エフェクタープラスミドとリポータープラスミドのコンストラクトを示す図である。図1Bは、N末端を欠失させたAREB1のトランスアクチベーションドメイン分析の結果を示す図である。図1Cは、AREB1ΔQTおよびAREB1ΔP/RTのトランスアクチベーションの結果を示す図である。
【図2】活性型AREB1発現シロイヌナズナの表現型を示す図である。図2Aに、ノーザン解析の結果を示す。図2Bは、GMK培地での生育を示す図である。
【図3】活性型AREB1発現シロイヌナズナの乾燥ストレス耐性試験の結果を示す図である。
【図4】シロイヌナズナとイネにおけるAREB1相同遺伝子の系統樹解析を示す図である。図4Aは、双子葉植物のシロイヌナズナと単子葉植物のイネにおけるAREB1相同遺伝子の類縁関係を系統樹により示した。図4Bは、シロイヌナズナにおけるAREB1相同性遺伝子のABA、乾燥、塩、および水処理における遺伝子発現プロファイルを示す。図4Cは、イネにおけるAREB1相同性遺伝子の乾燥、塩および低温処理における遺伝子発現プロファイルを示す。図4Dは、シロイヌナズナとイネにおけるAREB1相同遺伝子の転写活性化領域のアミノ酸配列の比較を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0070】
配列番号3〜8-プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の環境ストレス応答性転写因子AREB1の活性化制御領域の一部または全部を欠失し、N末端の転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項2】
植物の環境ストレス応答性転写因子のQ、R、SおよびT領域の少なくとも1つの領域を欠失し、N末端の転写活性化ドメインを含むP領域およびDNA結合ドメインを含むU領域を含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項3】
シロイヌナズナ由来である請求項1または2に記載の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項4】
配列番号2で表されるアミノ酸配列において65番目のアミノ酸から277番目のアミノ酸までのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする請求項3記載の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項5】
請求項3または4に記載の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、植物の環境ストレス応答性転写活性を有するタンパク質をコードする活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項6】
配列番号1で表される塩基配列において312位の塩基から950位の塩基までの塩基配列が欠失した塩基配列からなる請求項3記載の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項7】
請求項6記載の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子の塩基配列からなるDNAに相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNAであって、植物の環境ストレス応答性転写活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項8】
イネ由来の環境ストレス応答性転写因子OsAREB1の活性化制御領域を欠失し、転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインを含む、活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項9】
環境ストレスが乾燥ストレス、塩ストレスまたは低温ストレスである請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性型の環境ストレス応答性転写因子AREB1遺伝子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の遺伝子を含む植物形質転換用ベクター。
【請求項11】
請求項10記載の植物形質転換用ベクターで形質転換された環境ストレス耐性が向上したトランスジェニック植物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の遺伝子を植物に導入することにより、該植物の環境ストレス耐性を向上させる方法。
【請求項13】
環境ストレス耐性が、乾燥耐性、塩耐性および/または低温耐性である、請求項12記載の環境ストレス耐性を向上させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−124925(P2007−124925A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318871(P2005−318871)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(501174550)独立行政法人国際農林水産業研究センター (22)
【Fターム(参考)】