説明

活性成分のための保護親水コロイド

部分的に脱アミド化されたイネ胚乳タンパク質または単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類と部分的に共役されているイネ胚乳タンパク質が、脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤のための新規の親水コロイドとして使用される。本発明はさらに、そのイネ胚乳タンパク質および少なくとも1つの脂溶性活性成分/着色剤を含む組成物ならびにそれらの製造、イネ胚乳タンパク質それ自体そしてその製造をも含む。これらの組成物は、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアまたは医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のために使用される。本発明は、これらの使用、およびそれぞれかかるイネ胚乳タンパク質およびかかる組成物を含有する、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、イネ胚乳タンパク質が単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されているかまたは部分的に脱アミド化されている脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤のための新規の保護親水コロイドとしてのイネ胚乳タンパク質の使用に関する。さらに、本発明は、部分的に共役されているかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質および少なくとも1つの脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤を含む組成物およびそれらの製造、ならびに部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質それ自体およびその製造にも関する。さらに本発明は、それぞれかかる部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質およびかかる組成物を含有する食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のための使用に関する。
【0002】
活性成分、特に脂溶性活性成分または脂溶性着色剤は、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物に、それ自体で添加されないことが多いが、化学安定性、(水)溶解性、易流動性、および徐放などの特性を増強する理由で、ヒドロプロテクト性コロイド中の活性成分調合物の形態で添加される。既知のヒドロプロテクト性コロイドは、例えば異なる起源(家禽、ウシ、ブタ、魚)のゼラチンおよびデンプンである。動物起源のヒドロプロテクト性コロイドは、宗教上のまたはアレルゲン性の理由から所望されないことが多く、デンプンベースのヒドロプロテクト性コロイドは、グルテンおよびコーンを含まない製品に関心のある消費者に好まれないため、代案のヒドロプロテクト性コロイドに対する継続する必要性がある。
【0003】
イネ胚乳タンパク質は、栄養的および低アレルギー性として認識され、したがって活性成分調合物のための保護親水コロイドの適切な代案の起源であることができる。しかし中性pHにおけるイネ胚乳タンパク質の高い非溶解性および機能不良は、食物および医薬製品中の機能性成分としてのその産業上の利用を制限する。本発明はこれらの制限を克服し、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を、脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤の調合物のための保護親水コロイドとして取込んでいる。
【0004】
米タンパク質は、トウモロコシおよび小麦をはじめとするその他の穀類と比較して栄養価が上位にあり、したがって食物成分として莫大な潜在的用途を有すると考えられる。穀物タンパク質は、必須アミノ酸システインおよびメチオニンに富む。リジンは、穀物タンパク質中の主要な制限アミノ酸であるが、米はその他の穀物タンパク質(小麦2.3、トウモロコシ2.5g/16gN)よりも多くのリジン(3.8g/16gN)を含有する(下に引用する参考文献4を参照されたい)。米は概して一般的な穀物(小麦10.6%、トウモロコシ9.8%、大麦11.0%、雑穀11.5%)中で、最も低いタンパク質含量(7.3%)を有すると見なされるが、米タンパク質の正味タンパク質利用率(73.8%)は穀物中で最も高い(小麦53.0%、トウモロコシ58.0%、大麦62.0%、雑穀56.0%)。
【0005】
米タンパク質の単離はその他の穀物タンパク質と比較して困難であり、したがって高価である。主要米タンパク質であるグルテリンは疎水性であり、ジスルフィド結合によって架橋している。抽出されるタンパク質は、本来高度に不溶性であり、タンパク質単離で使用される条件はそれらの溶解性をさらに低下させ、したがって機能性成分としての応用を制限してきた。高タンパク質米製品は、アルカリ抽出とそれに続くタンパク質の等電pHでの沈殿によって、米粉から得ることができる。α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、およびプルラナーゼなどのデンプン加水分解酵素を使用して、デンプンを可溶化および除去することで、米粉中のタンパク質を分離することが多い。デンプン加水分解酵素に加えて、米タンパク質濃縮物中のタンパク質含量をさらに増大させるために、セルラーゼおよびヘミセルラーゼ酵素が使われている。しかし適切な抽出方法、およびこのような単離物の機能性に関する情報は限られている。認可された食品等級酵素および薬品を使用した効率的な抽出方法は、米タンパク質の商業生産および応用にとって必須である。
【0006】
この必要性は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質および脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤を含む本発明の組成物により満たされる。
【0007】
[背景技術]
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13.ニールセン(Nielson),P.M.:「タンパク質加水分解物の機能性(Functionality of protein hydrolysates)」.:ダモダラン(Damodaran),S,パラフ(Paraf),A,編.「食品タンパク質とその応用(Food proteins and their applications)」.第1版,New York:Marcel Dekker Inc.1997年,443〜72頁.
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【0008】
[発明の詳細な説明]
[発明の組成物]
本発明の組成物は、固体組成物、すなわち安定した水溶性または水分散性粉末であっても良く、またはそれらは液体組成物、すなわち前述の粉末の水性コロイド溶液または水中油分散体であってもよい。水中油エマルジョンであってもよく、または懸濁された、すなわち固体粒子、および乳化された、すなわち液体小滴の混合物を特徴としてもよい安定化水中油分散体は、下述の方法によって、または類似した様式によって調製されてもよい。
【0009】
より詳細には、本発明は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質のマトリクス中に1つ以上の脂溶性活性成分および/または1つ以上の脂溶性着色剤を含む、粉末形態の安定した組成物に関する。
【0010】
好ましくは、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質の量は、組成物総量を基準にして、1〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%、さらにより好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは10〜20重量%であり(20重量%が最も好ましい量である)、かつ/または脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤の量は0.1〜90重量%、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは1〜20重量%である。トコフェロールおよび/またはパルミチン酸アスコルビルなどの追加的アジュバントおよび/または賦形剤が存在する場合、それらは組成物総量を基準にして、0.01〜50重量%の量、好ましくは0.1〜30重量%の量、より好ましくは0.5〜10重量%の量で存在する。
【0011】
[単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質]
本発明の好ましい実施態様では、イネ胚乳タンパク質は、その製造について下述する変性イネ胚乳タンパク質である。
【0012】
特に好ましい米タンパク質は、アルカリ抽出(特にアルカラーゼ(Alkalase)での酵素変性)、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類からなる群から(特に単糖類および多糖類からなる群から)選択される少なくとも1つの化合物での部分的架橋、遠心分離および限外ろ過といったステップによって得られる米タンパク質である。さらに好ましい米タンパク質は、アルカリ抽出、(特にアルカラーゼでの酵素変性)、部分的脱アミド化、遠心分離および限外ろ過によって得られる米タンパク質である。
【0013】
さらなる用途のために必要な場合は、このようにして得られた変性イネ胚乳タンパク質を乾燥させてもよい。
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されている使用されるイネ胚乳タンパク質は、≧0.2、好ましくは≧0.45、より好ましくは≧0.5、さらに一層好ましくは0.5〜1.0のエマルジョン活性を有する。エマルジョン活性の判定は、実施例1に記述される通りである。本発明は同様に、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているこれらのイネ胚乳タンパク質自体にも言及する。
【0015】
単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質の量は、以下で開示する通り組成物の総量を基準として1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは10〜20重量%の範囲内にあってよい。
【0016】
[脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤]
脂溶性活性成分は、好ましくは薬理学的効果のある成分、または一般にヒトまたは動物の身体に健康上の利点を提供する成分である。本発明に関連して「脂溶性」(脂溶性活性成分/脂溶性着色剤)は、その化合物が室温および大気圧下で水にほとんど溶解しないことを意味する。
【0017】
脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤は、好ましくはカロテンおよび構造的に関連したポリエン化合物、脂溶性ビタミン、補酵素Q10、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などの多価不飽和脂肪酸とそのエステル((同一または異なる脂肪酸を含有する)エチルエステルまたはトリグリセリドなど)、ポリ不飽和脂肪酸に富んだモノ−、ジ−、トリグリセリド、脂溶性UV−Aフィルター、UV−Bフィルター、ならびにそれらと特にC1〜20炭酸とのエステルなどのそれらの生理学的に許容可能な誘導体、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0018】
最も好ましい脂溶性ビタミンは、ビタミンAまたはEである。
【0019】
カロテンおよび構造的に関連したポリエン化合物の好ましい例は、α−カロテン、β−カロテン、8’−アポ−β−カロテナール、エチルエステルなどの8’−アポ−β−カロテン酸エステル、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、クロセチン、α−ゼアカロテン、β−ゼアカロテンなどのカロテノイド、ならびにそれらと特にC1〜20炭酸とのエステルなどのそれらの生理学的に許容可能な誘導体、およびそれらの任意の混合物である。
【0020】
最も好ましいカロテノイドはβ−カロテンである。
【0021】
「β−カロテン」という用語は、全てのシスならびに全てのトランス異性体、および全ての可能な混合したシス−トランス−異性体を包含する。その他のカロテノイドについても同様である。
【0022】
「ゼアキサンチン」という用語は、天然R,R−ゼアキサンチン、ならびにS,S−ゼアキサンチン、メソ−ゼアキサンチンおよびそれらの任意の混合物を包含する。ルテインについても同様である。
【0023】
(脂溶性)活性成分は天然起源であってもよく、すなわち植物から単離/抽出されて純化および/または濃縮されてもよく、ならびに化学および/または微生物学的(発酵性)経路によって合成されるものであってもよい。
【0024】
脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤の量は、以下で開示する通り組成物の総量を基準として0.1〜90重量%、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは1〜20重量%の範囲内にあってよい。
【0025】
[さらなる構成要素]
単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質および活性成分以外に、本発明の組成物は、好ましくはさらに、少なくとも1つの水溶性抗酸化剤および/または脂溶性抗酸化剤を含有していてよい。水溶性抗酸化剤および/または脂溶性抗酸化剤の量は、組成物の総量を基準として0.1〜10.0重量%好ましくは0.5〜5.0重量%、より好ましくは0.5〜3.0重量%の範囲内にあってよい。
【0026】
水溶性抗酸化剤は、例えばアスコルビン酸またはその塩、好ましくはアスコルビン酸ナトリウムであってもよく、ヒドロキシチロソール、およびオレウロペインアグリコンなどの水溶性ポリフェノールであっても、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)またはローズマリーまたはオリーブの抽出物であってもよい。
【0027】
脂溶性抗酸化剤は、例えばdl−α−トコフェロール(すなわち合成トコフェロール)、d−α−トコフェロール(すなわち天然トコフェロール)、β−またはγ−トコフェロール、またはこれらの2つ以上の混合物などのトコフェロールと、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)と、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)と、エトキシキン、没食子酸プロピルと、tert.ブチルヒドロキシキノリンと、または6−エトキシ−1,2−ジ−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(EMQ)、または好ましくはパルミチン酸アスコルビルまたはステアリン酸アスコルビルなどの脂肪酸のアスコルビン酸エステルであってもよい。
【0028】
本発明の組成物は、脂肪酸のモノ−およびジグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、レシチンと、N−アシル化アミノ酸およびそれらの誘導体、アルキルまたはアルケニルラジカルがあるN−アシル化ペプチド、およびそれらの塩と、硫酸アルキルまたはアルケニルエーテルまたはエステル、およびそれらの誘導体および塩と、ポリオキシエチレン化アルキルまたはアルケニル脂肪エーテルまたはエステルと、ポリオキシエチレン化アルキルまたはアルケニルカルボン酸およびそれらの塩と、N−アルキルまたはN−アルケニルベタインと、アルキルトリメチルアンモニウムまたはアルケニルトリメチルアンモニウムおよびそれらの塩と、ポリオールアルキルまたはアルケニルエーテルまたはエステルと、それらの混合物からなる群から選択される共乳化剤をさらに含有してもよい。
【0029】
ポリオールアルキルまたはアルケニルエーテルまたはエステルの好ましい例は、Seppic社によりMontanox 40 DFの商品名の下に販売されるパルミチン酸ソルビタン20 EOまたはポリソルベート40、ICI社によりトウィーン(Tween)20の商品名の下に販売されるラウリン酸ソルビタン20 EOまたはポリソルベート20などの少なくとも20単位の酸化エチレンでポリオキシエチレン化されたソルビタンアルキルまたはアルケニルエステル、およびモノステアリン酸ソルビタンである。
【0030】
共乳化剤の量は、組成物の総量を基準として0〜90重量%、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜20重量%の範囲内にあってよい。
【0031】
本発明に従った調合物はさらに錠剤に圧搾されてもよく、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類、グリセロール、およびトリグリセリドからなる群から選択される1つ以上の賦形剤および/またはアジュバントが添加されてもよい。
【0032】
本発明の組成物中に存在してもよいモノ−および二糖類の好ましい例は、スクロース、転化糖、キシロース、グルコース、フルクトース、乳糖、マルトース、ショ糖および糖アルコールである。
【0033】
オリゴ糖類および多糖類の好ましい例は、デンプン、加工デンプン、およびデンプン加水分解物である。デンプン加水分解物の好ましい例はデキストリンおよびマルトデキストリンであり、特に5〜65個の範囲のデキストロース同等物(DE)を有するもの、および特に20〜95個の範囲のDEを有するようなグルコースシロップである。「デキストロース同等物(DE)」という用語は加水分解度を意味し、乾燥重量を基準にしてD−グルコースとして計算される還元糖量の基準である。尺度は、0に近いDEを有する天然デンプン、および100のDEを有するグルコースを基準とする。
【0034】
トリグリセリドは、適切には、植物油または脂肪、好ましくはトウモロコシ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ベニバナ油、ナタネ油、落花生油、パーム油、パーム核油、綿実油、オリーブ油またはココナッツ油である。
【0035】
1つまたは複数の賦形剤および/または1つまたは複数のアジュバントの量は組成物の総量を基準として0.1〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜10重量%の範囲内にあってよい。
【0036】
固体組成物は、ケイ酸またはリン酸三カルシウムなどの固化防止剤、および10重量%までで通例2〜5重量%の水をさらに含んでもよい。
【0037】
固化防止剤の量は、組成物の総量を基準として0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、より好ましくは0.2〜3.0重量%の範囲内であってよい。
【0038】
[組成物の製造]
本発明の目的はまた、
I)単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質の水溶液またはコロイド溶液(かかるイネ胚乳タンパク質の製造については以下で記述されている)を調製するステップと、
II)場合によりステップI)で調製された溶液に、少なくとも水溶性賦形剤および/またはアジュバントを添加するステップと、
III)少なくとも脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤、および場合により少なくとも脂溶性アジュバントおよび/または賦形剤の溶液または分散体を調製するステップと、
IV)ステップI)〜III)で調製された溶液を互いに混合するステップと、
V)このようにして得られた混合物を均質化するステップと、
VI)場合により、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を部分的に架橋するために架橋剤を添加するステップと、
VIa)場合により、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を部分的に架橋するため、ステップVI)を実施した後得られる混合物に酵素処理または熱処理を施すステップと、
VII)場合によりステップV)および/またはVI)で得られた分散体を粉末に加工するステップと、
VIII)場合によりステップVII)で得られた粉末を乾燥するステップと、
IX)場合により乾燥粉末に酵素処理または熱処理を施して(変性)イネ胚乳タンパク質を架橋するステップと
を含み、ただしステップVI)が実施される場合、ステップVIa)またはステップIX)の双方でなく片方のみが実施される、本発明の組成物を製造する方法である。
【0039】
[ステップI]
このステップは、場合により撹拌下で、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質(製造については以下を参照のこと)に対し水を添加することによってかまたはその逆により単純に実施される。或いは、超音波処理を介して均質化を行なうことも可能であり得る。
【0040】
好ましくは、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質は、以上および以下で記述する通りの好適性で使用される。
【0041】
[ステップII]
添加してもよい水溶性賦形剤および/またはアジュバントは、例えば単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類、グリセロールおよび水溶性抗酸化剤である。それらの例は上に示した。
【0042】
[ステップIII]
脂溶性活性成分および脂溶性着色剤は、上述したようなものである。
【0043】
(脂溶性)活性成分および/または脂溶性着色剤および任意の脂溶性賦形剤およびアジュバント(adjuvents)は、それ自体として、またはトリグリセリドおよび/または(有機)溶剤に溶解または懸濁して使用される。
【0044】
適切な有機溶剤は、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族および環式炭酸塩、脂肪族エステルおよび環式エステル(ラクトン)、脂肪族および環式ケトン、脂肪族アルコール、およびそれらの混合物である。
【0045】
ハロゲン化脂肪族炭化水素の例は、モノ−またはポリハロゲン化直鎖、分枝または環式C1〜C15−アルカンである。特に好ましい例はモノ−またはポリ−塩素化または−ブロム化された直鎖、分枝または環式C1〜C15−アルカンである。より好ましいのはモノ−またはポリ塩素化直鎖、分枝または環式C1〜C15−アルカンである。最も好ましいのは塩化メチレンおよびクロロホルムである。
【0046】
脂肪族エステルおよび環式エステル(ラクトン)の例は、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびn−酢酸ブチル、およびγ−ブチロラクトンである。
【0047】
脂肪族および環式ケトンの例は、アセトン、ジエチルケトンおよびイソブチルメチルケトン、およびシクロペンタノンおよびイソホロンである。
【0048】
環式炭酸塩の例は、特に炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンおよびそれらの混合物である。
【0049】
脂肪族エーテルの例は、アルキル部分が1〜4個の炭素原子を有するジアルキルエーテルである。好ましい一例はジメチルエーテルである。
【0050】
脂肪族アルコールの例は、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、およびブタノールである。
【0051】
さらに溶剤として、任意の油(トリグリセリド)、オレンジ油、リモネンなどおよび水が使用できる。
【0052】
添加してもよい脂溶性賦形剤および/またはアジュバントは、例えばトウモロコシ油、モノ−または脂肪酸のジグリセリド、ポリグリセロール脂肪酸、および中鎖トリグリセリド(「MCT」)である。
【0053】
[ステップIV]
本発明の代案の方法ではステップIII)が実施されないが、脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤および任意の脂溶性賦形剤および/またはアジュバントが、ステップI)またはII)の溶液に直接添加される。
【0054】
[ステップV」
均質化のためには、高圧均質化、高剪断乳化(ロータ・ステータシステム)、微粒子化(micronisation)、湿潤製粉、マイクロチャネル(microchanel)乳化、膜乳化または超音波処理などの従来の技術を応用できる。食物、飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のために、(脂溶性)活性成分および/または脂溶性着色剤を含有する組成物の調製のために使用されるその他の技術については、その内容を参照によって本明細書に援用するEP−A 0 937 412号明細書(特に段落[0008]、[0014]、[0015]、[0022]から[0028])、EP−A 1 008 380号明細書(特に段落[0005]、[0007]、[0008]、[0012]、[0022]、[0023]から[0039])および米国特許第6,093,348号明細書(特に2欄24行から3欄32行、3欄48行から65行、4欄行53行から6欄60行)で開示される。
【0055】
[ステップVI]
架橋剤は、好ましくは還元糖、糖タンパク質、およびグリコペプチドからなる群から選択される。したがって(変性)イネ胚乳タンパク質と、糖タンパク質/グリコペプチドの糖または糖部分との分子間架橋が形成する。架橋剤の好ましい例としては、単糖類(フルクトース、グルコース、ガラクトース、キシロース)、二糖類(しょ糖、乳糖)、オリゴ糖類(デキストリン)および多糖類(キサンタンガム、ペクチン)があり、最も好ましいのは、フルクトース、グルコースおよびキサンタンガムである。
【0056】
糖タンパク質は、タンパク質に共有結合した炭水化物(またはグリカン)を含有する化合物である。炭水化物は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類またはそれらの誘導体(例えば、スルホまたはホスホ置換)の形をしていてよい。
【0057】
糖タンパク質の好ましい例は、卵アルブミン、牛乳カゼインである。
【0058】
糖ペプチドは、Lおよび/またはD−アミノ酸からなるオリゴペプチドに連結された炭水化物からなる化合物である。糖アミノ酸は、あらゆる種類の共有結合によって単一のアミノ酸に付着された糖類である。
【0059】
糖ペプチドの好ましい例としては、鉄結合糖ペプチドである牛乳ラクトフェリンがある。
【0060】
したがって、同時係属中のPCT/EP2006/011873号明細書とは対照的に、ここでは、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質は、さらに、還元糖、糖タンパク質または糖ペプチドからなる群から選択された少なくとも1つの化合物と部分的に架橋されていてよい。
【0061】
[ステップVIa]
架橋は、上述のように架橋剤をさらに含有する混合物を熱処理してメイラード型反応において糖とタンパク質との架橋を引き起こし、すなわち好ましくは約30〜約160℃の温度、より好ましくは約70〜約100℃の温度、最も好ましくは約80〜約90℃の温度で熱的に処理して達成できる。
【0062】
架橋は、タンパク質の利用可能なアミノ基と単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)のカルボニル基との間の初期縮合の結果として得られる酵素反応または非酵素反応である。架橋は、乳化、封入の改善といったようなタンパク質の物理化学特性および機能特性を改変させるために使用されている1つの特異的な型の変性である。
【0063】
単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは架橋剤で部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質のさらなる部分的架橋は、架橋酵素(アシルトランスフェラーゼ、EC2.3、例えばトランスグルタミナーゼ、EC2.3.2.13、タンパク質−グルタミン:γ−グルタミルトランスフェラーゼ)での処理によって、すなわち約0℃〜約70℃好ましくは約20℃〜約40℃の温度で適切に実施される酵素処理によっても達成可能である。好ましくは、ステップVIa)に従った酵素処理は、架橋酵素、特にトランスグルタミナーゼでの処理である。
【0064】
トランスグルタミナーゼの場合、酵素的架橋はε−(γ−グルタミル)−リジンイソペプチド結合の形成によって、安定したタンパク質含有多糖類網目状組織をもたらす。酵素的架橋のためには、糖タンパク質またはグリコペプチドの使用が好ましい。
【0065】
親油性部分の組み込みのため、メイラード型反応において糖とタンパク質の架橋を引き起こす熱処理、および酵素的架橋の双方の技術が使用でき、組成物の乾燥形態(ステップIX)、または水溶液または懸濁液(ステップVIa)中のどちらかで実施できる。酵素的架橋は、好ましくは水溶液または懸濁液中で実施される。
【0066】
[ステップVII]
水中油分散体であるこのようにして得られた分散体は、噴霧乾燥、流動床顆粒化と組み合わさった噴霧乾燥(後者の技術は一般に流動化噴霧乾燥またはFSDとして知られている)によって、または噴霧されたエマルジョン小滴がデンプン、ケイ酸カルシウム、および二酸化ケイ素などの吸収材の床に捕捉されて引き続いて乾燥される粉末捕捉技術などの任意の従来の技術を使用して、有機溶剤(存在する場合)の除去後に、例えば乾燥粉末などの固体組成物に転換できる。
【0067】
噴霧乾燥は、約100〜約250℃、好ましくは約150℃〜約200℃、より好ましくは約160〜約190℃の入口温度、および/または約45〜約160℃、好ましくは約55〜約110℃、より好ましくは約65〜約95℃の出口温度(製品温度)で実施されてもよい。
【0068】
[ステップVIII]
ステップVIIで得られた粉末の乾燥は、好ましくは≦100℃の温度、好ましくは20〜100℃の温度、より好ましくは60〜70℃の温度で実施される。乾燥が真空中で実施される場合、温度はより低い。
【0069】
[ステップIX]
熱処理を通じた架橋は、ステップVIaについて既に上述したようにして実施される。酵素処理についても同様であるが、好ましくは溶液/懸濁液中で実施される。
【0070】
[単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質の製造]
本発明は同様に、米糠が精粉前に除去されており、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されているかまたは粉砕米から出発して部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を製造する方法において、
a)粉砕米の水溶液または懸濁液を調製し、製粉前に米糠が除去されて溶液または懸濁液が好ましくは水溶液または懸濁液総量を基準にして0.1〜30重量%、好ましくは10〜15重量%の乾燥質量含量を有するステップと、
b)場合により粉砕米の非タンパク質部分またはタンパク質部分を除去してイネ胚乳タンパク質を得るステップであって、米糠が製粉前に除去されるステップと、
c)精粉前に米糠が除去されている粉砕米のタンパク質部分を、メイラード型の反応において、粉砕米を単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に反応させるかまたは粉砕米のタンパク質部分を部分的に脱アミド化させることによって変性させて、部分的に単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を得るステップと、
d)場合により、部分的に単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を単離するステップと、
e)場合により、部分的に単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と共役されるかまたは部分的に脱アミド化されるイネ胚乳タンパク質を固体形態へと加工するステップと;
を含む方法にも関する。
【0071】
[ステップa)]
製粉前に米糠が除去された粉砕米はまた、「米粉」の表現の下に知られている。
【0072】
このステップは、場合により米粉が完全に分散するまで激しく(機械的撹拌機で)撹拌しながら、または米粉懸濁液をホモジナイザーで例えば室温で5分間均質化して、単に米粉に水を添加して、または水に米粉を添加して実施される。
【0073】
[ステップb)]
ステップb)は、パラマン,I.,ヘティアラキ,N.S.,シーファー,C.,およびベック(Beck),M.I.,Cereal Chem.,2006年,第83号(6),663〜667頁:「化学および酵素法により抽出されたイネ胚乳タンパク質の物理化学特性(Physicochemical properties of rice endosperm proteins extracted by chemical and enzymatic methods)」により記述されている通りに実施してよい。
【0074】
[非タンパク質部分の除去]
ステップb)は、好ましくは米粉をいかなるpH調節もなしに(pH6〜7)非タンパク質分解酵素により、例えば0.5%ターマミル(Termamyl)(登録商標)水性懸濁液により温度90℃で2時間、次に0.1%セルラーゼ水性懸濁液により温度50℃で30分間処理して酵素を不活性化して、米粉のタンパク質部分から非タンパク質部分を分離し除去することによって行われてもよい。
【0075】
好ましい非タンパク質分解酵素の例は、α−アミラーゼなどのデンプン分解酵素、およびセルラーゼ、すなわちセルロース分解酵素、およびそれらの混合物である。α−アミラーゼの好ましい例は、米国のノボ・ノルディスク・バイオケム・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド(Novo Nordisk Biochem、North America,Inc.)から市販されるターマミル(登録商標)120、タイプLである。その他の好ましい例は、米国のノボ・ノルディスク・バイオケム・ノース・アメリカ・インコーポレーテッドから市販されるLiquzyme(登録商標)Supra、日本国名古屋市(Nagoya,Japan)の天野製薬株式会社(Amano Pharmaceutical Co.Ltd.)から市販されるアミラーゼS「アマノ」35G、米国のジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッド(Genencor International,Inc(USA))から市販されるMultifectセルラーゼ、および日本国名古屋市の天野製薬株式会社から市販されるセルラーゼT「アマノ」4である。
【0076】
酵素反応は、無機機酸(例えば塩酸)または有機酸(例えばクエン酸)または塩基が使用される場合は溶液または懸濁液を中性化することで、または加熱して酵素を変性させることで停止できる。
【0077】
変性は、溶液を80〜95℃の温度、好ましくは80〜85℃の温度に10〜15分加熱することで達成してもよい(特に3.5〜4.5の低pHで)。その後溶液を50℃に冷却してもよい。
【0078】
非タンパク質部分の分離は、遠心分離(5000gで15分間)(非タンパク質部分は水相中に存在する)と、それに続く脱イオン水での洗浄によって達成されてもよい。イネ胚乳タンパク質はペレットのままである。
【0079】
[タンパク質部分の除去]
あるいは、遠心分離または濾過前にいわゆる「アルカリ抽出」またはいわゆる「塩抽出」を実施してもよい。
【0080】
「アルカリ抽出」とは、最初に40〜60℃で3時間、米粉溶液または懸濁液のpHを7〜12の値、好ましくは8〜10の値、より好ましくは約9の値に、アルカリ溶液(例えばNaOH水溶液)で調節することを意味する。
【0081】
タンパク質収率がタンパク質機能性よりも重要な場合は、pHを好ましくは8〜12、より好ましくは9〜12、さらにより好ましくは10〜12の値に調節することが有利であり得る。
【0082】
好ましくはこのような塩基は、約0.1〜5M、好ましくは約0.5〜約2Mの濃度を有する。塩基は無機塩基であってもよい。無機塩基の例は、水酸化ナトリウム(好ましい)、水酸化カリウム、および水酸化カルシウムなどのアルカリ(土類)水酸化物である。
【0083】
「塩抽出」は「アルカリ抽出」に類似するが、塩基に加えて塩化ナトリウムなどの塩が使用される。好ましい本発明の実施態様では、0.08Mの塩化ナトリウム水溶液(NaOHでpH11に調節)が、抽出溶剤として使用される。
【0084】
(アルカリまたは塩抽出)どちらの場合もタンパク質部分は、水相に移動される。次に遠心分離または濾過によって、非タンパク質部分からタンパク質部分を分離してもよい。
【0085】
[タンパク質部分のさらなる変性]
米粉のさらなる変性は、(市販される)食品等級アルカリ性、中性および/または酸性タンパク質分解酵素で、それ(そのタンパク質部分)を処理することによって達成されてもよい。いくつかのタンパク質分解酵素について、酵素規格および最適条件を以下の表に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
タンパク質分解酵素は、細菌または真菌由来ならびに果実由来であってよく、または動物由来であってもよい。
【0090】
アルカリ性タンパク質分解酵素の例は、市販される米国ノースカロライナ州フランクリントン(Franklinton,NC,USA)のノボ・ノルディスク・バイオケムからのアルカラーゼ(Alkalase)(登録商標)、米国ニューヨーク州ニューヨーク(New York,NY,USA)のEnzyme Development CorporationからのAlkaline protease(登録商標)、米国ニューヨーク州ロチェスター(Rochester,NY,USA)のジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッドからのProtex 6L(登録商標)(ジェネンコア(登録商標)Bacterial Alkaline Protease)、および米国ニューヨーク州ロチェスターのジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッドからのジェネンコア(登録商標)Protease 899である。
【0091】
中性タンパク質分解酵素の例は、市販される米国ニューヨーク州ニューヨークのEnzyme Development CorporationからのBromelain(ブロメライン)(登録商標)、米国ニューヨーク州ニューヨークのEnzyme Development Corporationからのリキパノール(Liquipanol)(登録商標)、および米国ニューヨーク州ロチェスターのジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッドからの細菌中性タンパク質分解酵素である。中性タンパク質分解酵素のさらなる例は、植物であるパパイヤ(Carica papaya)からの製品、すなわち果実起源酵素である、オランダ国デルフト(Delft,Netherlands)のDSM Food Beveragesから市販されるCollupilin(登録商標)である。
【0092】
酸性タンパク質分解酵素の例は、米国シグマ(Sigma(USA))からのペプシンおよび日本国名古屋市の天野製薬株式会社からの酸性タンパク質分解酵素である。
【0093】
本発明の方法の好ましい実施態様では、米粉のタンパク質部分は、引き続いて7〜10の範囲のpHにおいて40〜60℃で10〜80分、2つの異なるアルカリ性タンパク質分解酵素によって処理される。
【0094】
好ましくはこれらのタンパク質分解酵素の1つは、アルカラーゼ(Alkalase)(登録商標)、Protex 6L(登録商標)などのセリン特異的タンパク質分解酵素、またはアルカリ性タンパク質分解酵素(登録商標)であり、もう1つはリキパノール(登録商標)またはブロメライン(登録商標)などのシステイン特異的タンパク質分解酵素である。
【0095】
この変性ステップはまた、酵素を一度に添加せず、それらを(引き続いてまたは同時に)小分けにして添加することで、修正されてもよい。
【0096】
[ステップc)]
ステップb)で得られたタンパク質部分は、ステップc)すなわち単糖類(二糖類またはオリゴ糖類)または多糖類との部分的反応かまたは部分的脱アミド化を実施するための出発材料として使用される。
【0097】
[単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と粉砕米のタンパク質部分の部分的反応]
単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類とタンパク質部分の反応は、メイラード型の反応の中で進行する。タンパク質部分の水性分散体とそれぞれ単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)の水溶液/分散体は、別々に調製しその後撹拌後に統合してよい。
【0098】
通常は、最も好ましくは10重量%という濃度を有する単糖類または多糖類(または二糖類またはオリゴ糖類)の水溶液を、撹拌しながら、最も好ましくは10重量%という濃度を有するタンパク質部分の水溶液に対しゆっくりと添加して、溶液/分散体の両方の混合物を得た。この混合は、好ましくは、20〜60℃、好ましくは30〜50℃、より好ましくは35〜45℃の範囲内の温度で、10分〜2時間、好ましくは30分〜90分、より好ましくは45分〜60分の範囲内の時間実施される。
【0099】
次に、混合物のpH値を、好ましくは水溶液の形で塩基を添加することにより、6.0〜9.0の範囲内の値まで、好ましくは6.5〜8.5の範囲内の値まで、好ましくは7.0〜8.0の範囲内の値まで調整する。好ましくは、かかる塩基は、約0.1〜3M、好ましくは約0.5〜約2Mの濃度を有する。
【0100】
塩基は無機塩基であってよい。無機塩基の例としては、(土類)アルカリ性水酸化物例えば水酸化ナトリウム(最も好ましい)、水酸化カリウム(好ましい)および水酸化カルシウムがある。
【0101】
このようにして得られたアルカリ性混合物を次に、好ましくは噴霧乾燥によって乾燥させる。噴霧乾燥は、50℃〜250℃、より好ましくは60℃〜100℃、最も好ましくは60〜90℃の範囲内の入口温度で実施される。
【0102】
次に、恒湿器内において30〜70℃、好ましくは40〜60℃、より好ましくは45〜55℃の温度まで乾燥済みタンパク質および単糖類または多糖類(または二糖類またはオリゴ糖類)混合物をインキュベートすることにより、反応(架橋)を実施してもよい。反応温度に応じて、反応時間は、2時間〜60時間、好ましくは4時間〜40時間、より好ましくは6時間〜30時間の時間範囲内にある。相対湿度は、水活性を0.5〜0.8の範囲に維持するように、39〜85%、より好ましくは44〜79%、最も好ましくは54〜69%の範囲内で変動し得る。
【0103】
架橋は、ステップVIaについてすでに上述した通り、酵素処理により実施されてもよい。
【0104】
単糖類の好ましい例としてはペントース類およびヘキソース類(フルクトース、グルコース、ガラクトース、キシロース、特にフルクトースおよびグルコース)がある。
【0105】
多糖類の好ましい例は、キサンタンガムおよびペクチンである。
【0106】
単糖類または多糖類の代りに、二糖類(しょ糖、乳糖)およびオリゴ糖類(デキストリン)を使用してもよい。
【0107】
タンパク質部分と単糖の重量比は、0.5〜12%(w/w)、好ましくは0.1〜8%(w、w)、より好ましくは0.5〜4%(w/w)の範囲内にある。
【0108】
タンパク質部分と多糖(または二糖またはオリゴ糖)の重量比は、0.1〜20%(w、w)、好ましくは0.5〜20%(w/w)の範囲内にある。
【0109】
単糖としてグルコースが使用される場合には、ステップb)で得られたタンパク質部分に対するグルコースの重量比は、好ましくは0.1〜8%(w/w)、より好ましくは0.5〜4%(w/w)の範囲内にある。
【0110】
多糖としてキサンタンガムが用いられる場合、ステップb)で得られたタンパク質部分に対するキサンタンガムの重量比は、好ましくは、0.1〜20%(w/w)、より好ましくは0.5〜10%(w/w)の範囲内にある。
【0111】
[粉砕米のタンパク質部分の部分的脱アミド化]
脱アミド化は、好ましくは水溶液の形で塩基を添加することにより、ステップb)で得たイネ胚乳タンパク質のタンパク質部分のコロイド水溶液のpH値を9.0〜13.0の範囲内の値、好ましくは9.5〜12.5の範囲内の値、好ましくは10.5〜12の範囲内の値に調整することにより実施される。好ましくは、かかる塩基は、約0.1〜3M、好ましくは約0.5〜約2Mの濃度を有する。塩基は、無機塩基であってよい。無機塩基の例としては、(土類)アルカリ性水酸化物例えば水酸化ナトリウム(最も好ましい)、水酸化カリウム(好ましい)そして水酸化カルシウムがある。
【0112】
かくして結果として得られた混合物を次に25〜90℃、好ましくは30〜80℃、より好ましくは40〜70℃の範囲内の温度にする。
【0113】
脱アミド化温度に応じて、脱アミド化の持続時間は、0.5時間〜24時間、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは0.5〜6時間の時間範囲内にある。
【0114】
[ステップd)]
ステップd)は、タンパク質を単離するため当業者にとって公知のあらゆる方法によって実施され得る。
【0115】
ステップd)は例えば遠心分離および/またはろ過により実施され得る。
【0116】
通常、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているタンパク質を単離することは必要ではない。
【0117】
[ステップe)]
例えば乾燥粉末などの固体形態への変換は、当業者に知られている任意の乾燥法によって達成できる。好ましいのは噴霧乾燥または凍結乾燥である。噴霧乾燥は好ましくは約200℃〜約210℃の入口温度、および約70℃〜約75℃の出口温度で実施される。凍結乾燥は好ましくは約−20℃〜約−50℃の温度で10〜48時間実施される。
【0118】
本発明の目的は同様に、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質自体、特に上述のようなあらゆる方法によって得ることのできるイネ胚乳タンパク質にもある。さらに一層好ましいのは、上述のようなあらゆる方法によって得られる単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質それ自体である。
【0119】
[産業上の利用可能性]
本発明は、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアまたは医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のための上述のような組成物の使用、ならびにこのような上述のような組成物を含有する食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物それ自体に関する。
【0120】
本発明は同様に、上述の通り単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類(特に単糖類または多糖類)と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を含有する食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物、ならびに脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤のための保護親水コロイドとしてのかかるイネ胚乳タンパク質(前述の通りの選好性を有する)の使用にも関する。
【0121】
ヒトをはじめとする動物は、本発明の文脈でヒトの他に、特にヒツジ、雌牛、ウマ、家禽(ブロイラーおよび卵の着色)、エビおよび魚(特にサケおよびニジマス)などの飼育動物、ならびにネコ、イヌ、鳥(例えばフラミンゴ)、および魚などのペットを包含する。
【0122】
本発明の組成物が、特に着色剤または機能性成分として使用できる飲料は、例えば、着香天然発泡ミネラルウォーター、清涼飲料またはミネラル飲料などの炭酸飲料、ならびに例えば着香水、果汁、フルーツポンチ、およびこれらの飲料の濃縮形態などの非炭酸飲料であることができる。それらは天然果汁または野菜汁または人工香料をベースにしてもよい。アルコール飲料および即席飲料粉末もまた含まれる。糖含有飲料の他に、ノンカロリーおよび人工甘味料を用いたダイエット飲料もまた含まれる。
【0123】
さらに天然起源または合成から得られる乳製品は、本発明の組成物が、特に着色剤としてまたは機能性成分として使用できる食品の範囲内である。このような製品の典型的な例は、乳飲料、アイスクリーム、チーズ、ヨーグルトなどである。豆乳飲料および豆腐製品などの乳代替製品もまた、この応用範囲に含まれる。
【0124】
菓子製品や、キャンデーや、ガムや、例えばアイスクリーム、ゼリー、プディング、即席プディング粉末などのデザートなど、本発明の組成物を着色剤としてまたは機能性成分として含有する甘み食品もまた含まれる。
【0125】
本発明の組成物を着色剤としてまたは機能性成分として含有する、穀類、スナック、クッキー、パスタ、スープ、およびソース、マヨネーズ、サラダドレッシングなどもまた含まれる。さらに乳製品および穀類のために使用される果実調製品もまた含まれる。
【0126】
本発明の組成物を通じて食品に添加される(脂溶性)活性成分および/または脂溶性着色剤の最終濃度は、食物組成物の総重量を基準にして0.1〜500ppm、特に1〜50ppmであってもよく、着色または強化される特定の食品、および意図される着色または強化の程度に左右される。
【0127】
本発明の食物組成物は、好ましくは食品に、本発明の組成物の形態の(脂溶性)活性成分および/または脂溶性着色剤を添加することによって得られる。食品または医薬品の着色または強化のために、本発明の組成物は、本発明の水分散性固体組成物の応用について知られている方法に従って使用できる。
【0128】
一般に組成物は、特定の応用に従って、水性原液、乾燥粉末混合物、またはその他の適切な食物成分とのプレブレンドのいずれかとして添加してもよい。混合は最終応用の配合次第で、例えば乾燥粉末ブレンダー、低剪断ミキサー、高圧ホモジナイザーまたは高剪断ミキサーを使用して実施できる。容易に明らかであるように、このような専門的事項は専門家の技能の範囲内である。
【0129】
組成物が着色剤として使用される錠剤またはカプセルなどの医薬組成物もまた、本発明の範囲内である。錠剤の着色は、錠剤コーティング混合物に液体または固体着色剤組成物の形態で本発明の組成物を別々に添加する、または錠剤コーティング混合物の構成要素の1つに着色剤組成物を添加することによって達成できる。着色硬質または軟質シェルカプセルは、着色剤組成物をカプセル塊水溶液に組み込むことによって調製できる。
【0130】
組成物が活性成分として使用される、チュアブル錠、発泡性錠剤またはフィルム被覆錠剤などの錠剤、または硬質シェルカプセルなどのカプセルのような医薬組成物もまた本発明の範囲内である。本発明の組成物は、典型的に錠剤化混合物に粉末として添加され、またはカプセルの製造について知られている様式でカプセル内に充填される。
【0131】
組成物が、例えば卵黄、食用家禽、ブロイラーまたは水産動物(特にエビ、サケ、ニジマス)を着色するための着色剤として、または活性成分として使用される、栄養成分プレミックス、複合飼料、ミルク代替え品、流動食または飼料調製品などの動物飼料製品もまた、本発明の範囲内である。
【0132】
組成物が着色剤として、または活性成分として使用される、化粧品、洗面用品、および皮膚用製品、すなわちクリーム、ローション、バス、リップスティック、シャンプー、コンディショナー、スプレーまたはジェルなどのスキンおよびヘアケア製品をはじめとするパーソナルケア組成物は、本発明の範囲内である。
【0133】
本発明を次の実施例によってさらに例示する。
【0134】
[実施例]
以下の略号が使用される:
DH=加水分解度
DI水=脱イオン水
dw=乾燥重量基準
RH=相対湿度
rpm=毎分回転数
SDS=硫酸ドデシルナトリウム
w/v=重量/体積
【0135】
長粒米で作った米粉は、アーカンソー州スタットガートのライスランドフーズ(Riceland Foods)によって提供された。乳漿タンパク単離物は、Biozate(登録商標),ミネソタ州のダビスコフーズインターナショナル(Davisco Foods International,INC.,)から、乾燥重量を基準として88.6%のタンパク質(N×6.25)を含有するベンチマーク標準として入手した。バシラス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来の細菌セリンプロテアーゼであるアルカラーゼ(Alcalase)2.4Lが、ノボ・ノルディスク・バイオケム(Novo Nordisk Biochem.)(ノースカロライナ州フランクリントン、2.4AU単位/g)により提供された。分析試薬は、フィッシャーサイエンティフィク(Fisher Scientific)(ペンシルバニア州ピッツバーグ)およびシグマケミカル(Sigma chemical Co.)(ミズーリ州セントルイス)から購入した。
【0136】
[(A)分析方法:実施例1〜5]
[実施例1:エマルジョン活性およびエマルジョン安定性の判定]
エマルジョン活性および安定性は、ピアスおよびキンセラ:Journal of Agric Food Chem.1978年,第26号,716〜722頁の比濁法により判定した。pH7.0の10mMのリン酸緩衝液中のイネ胚乳タンパク質の0.1%溶液6mLおよびトウモロコシ油2mLの混合物を設定6の超音波処理機(ビアティシア・テンペスト(Virtishear Tempest),米国ニューヨーク州のガーディナーのザ・ビアティス社(The Virtis Co.))を用いて1分間均質化した。均質化から0分および10分後に、50マイクロリットルの混合物をSDSの0.1%水溶液(w/v)中に移した。500nmでの溶液の吸光度をスペクトロメータ(京都の島津製作所、UV−1601型)で判定した。均質化後時間0での吸光度が、イネ胚乳タンパク質のエマルジョン活性である。エマルジョン安定性を計算するために、時間的間隔(10分)中の初期吸光度の濁度(吸光度)の減少を使用した。(ES)は、以下の通りに計算した。
エマルジョン安定性=To×Δt/ΔT
ここで、ΔTはΔt(10分)という時間的間隔中の初期吸光度(To)の濁度(吸光度)の減少である。
【0137】
[実施例2:加水分解度の判定]
ニールセンらの方法(ニールセン,P.M.,ピーターソン(Petersen),D.およびダンブマン(Dambmann),C,「食物タンパク質加水分解度を判定するための改善された方法(Improved method for determining food protein degree of hydrolysis)」.Journal of Food Science,2001年,66(5),642〜646頁)によってDHを判定した。次のようにしてo−フタルジアルデヒド(OPA)試薬を調製した。7.620gの四ホウ酸二ナトリウム十水和物(Na・10HO)および200mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を150mLの脱イオン水に溶解し、次に160mgのOPA(4mLのエタノールに事前溶解された97%OPA)および176mgの99%ジチオスレイトール(DTT)と混合した。脱イオン水で最終溶液を200mLにした。凍結乾燥されたタンパク質サンプル0.1gを10mLの脱イオン水に可溶化した。吸光度を測定するために、3mLのOPA試薬を10mL試験管に入れ、次に400μLのサンプル溶液、セリン標準(10mg/100mL)、および脱イオン水を4本の試験管の各サンプル、標準、およびブランクにそれぞれ添加した。この後、5秒間混合し、正確に2分間保持した。日本国京都市の島津製作所からの分光光度計(モデルUV−1601)によって、340nmで吸光度を読み取った。DHを次のようにして計算した。
【0138】
DH=h/htotal100%
式中、hは加水分解された結合数であり、htotalは、タンパク質当量あたりのペプチド結合の総数である。
h=(セリン−NH2−β)/α equiv/gタンパク質
式中、hは加水分解された結合数であり、htotalは、タンパク質当量あたりのペプチド結合の総数であり、穀物タンパク質ではαは1.00、βは0.40、および、htotalは8.0である。
【0139】
セリン−NH2=[(A340sample−A340blank)/(A340standard−A340blank)]0.9516meqv/L0.01100/(XP)
式中、セリン−NH2=meqvセリンNH2/gタンパク質;X=gサンプル;P=サンプル中の%タンパク質;0.01は1L中のサンプル体積である。
【0140】
[実施例3:タンパク質および総溶解度の判定]
タンパク質溶解度(またN−溶解度)は、いくつかの修正を加えて、ベラ,M.B.;ムーカジ(ベラ,M.B.;ムーカジ,R.K.、「米糠タンパク質濃縮物の溶解性、乳化、および起泡特性」.J Food Sci 1989年,54(1):142〜145頁)の方法によって判定した。200mgのタンパク質サンプルを10mLの脱イオン水中に分散し、1N HClまたは1N NaOHでpHを7.0に調節した。分散体を連続的に30分間撹拌し、米国カリフォルニア州(Calif.,U.S.A)のBeckman,Fullertonからの(モデルJ2−21)によって5000rpmで15分間遠心分離した。上清を回収し、上清中のタンパク質含量を自動ケルダール法(AACC 1990)によって判定した。タンパク質溶解度の百分率を次の式によって計算した。
【数1】

【0141】
タンパク質溶解度は、上清中のタンパク質と最初のサンプル中の総タンパク質との%比率として計算した。
【0142】
総溶解度はオーブン乾燥法によって判定し、上清中の総可溶性部分と、タンパク質単離物総重量との%比率として表した。
【数2】

【0143】
[実施例4:粘度の判定]
室温(26℃)で、MVDIN測定紡錘体(半径=19.36mm、高さ=58.08mm)を装着した、独国(Germany)のHaakeからの回転レオメータ(VT550)によって、タンパク質単離物の粘度を判定した。タンパク質単離物を脱イオン水と混合して10%スラリーを形成し、分析前にスラリーを60分間平衡状態に保った。サンプル(30ml)を円柱状カップ(半径=21.0mm)に充填して、コンピューター制御プログラムを使用して、3分間かけて0から4001/秒に変化する剪断速度をかけた。データを独国のHaake Mess TechからのRheowin Proデータ・マネージャ、バージョン2.84によって分析した。
【0144】
[実施例5:タンパク質含量の判定]
タンパク質含量を、自動ケルダール(Kjeldahl)法(AACC、1990年)により判定した。1時間420℃で触媒としてケルダール(登録商標)錠を用いて濃硫酸中で試料を消化させるために、ケルダール2006消化剤(スウェーデン、ホガナスのフォス・テカトール(Foss Tecator))を使用し、生成物の窒素含量を判定するために、ケルテック(Kjeltec)(登録商標)2300分析器ユニット(スウェーデン、ホガナスのフォス・テカトール)を使用した。タンパク質含量は、窒素含量に5.95という係数を乗じることによって自動的に計算された。
【0145】
[(B)イネ胚乳タンパク質単離物(RP)の製造(出発材料および比較例)]
[実施例6]
米粉1キログラムを、ホモジナイザー(米国ニューヨーク州ガーディナーのザ・ビアティス社、ビアティシア・テンペスト)内で1分間、8Lの脱イオン水(1:8、w/v)を用いて均質化した。1MのNaOHにより、スラリーのpHを11.0に調整し、懸濁液を40℃で3時間撹拌した。溶液中の可溶性タンパク質を遠心分離により分離した(5,000rpm、15分)。この手順を一回反復して残渣から付加的なタンパク質を抽出した。1回目および2回目の抽出の組合せ上清中のタンパク質をpH4.5で等電点沈殿させ、1時間4℃に保った。沈殿物を20分間5,000rpmの遠心分離により回収し、脱イオン水(1:4、w/v、pH4.5)で洗浄し、pH7.0に調整した。抽出したタンパク質(RP)を、以下の変性(C)および(D)の調製のための出発材料として使用した。
【0146】
[実施例(C)、(D)および(E)の実験的設計]
本研究は、(1)米タンパク質グリコシル化の最適化および(2)米タンパク質の物理化学的特性に対する制御されたグリコシル化、脱アミド化およびアルカラーゼ変性方法の比較(比較例)という2つの実験セットを含んでいる。グリコシル化実験の最適化は、3レプリケートでの反復的測定(7つの反応時間)を伴う2×7の2因子要因設計(グルコースおよびキサンタンガム)で実施した。グリコシル化、脱アミド化およびアルカラーゼ変性方法の比較は、1因子の完全に無作為化された設計で実施され、これには、選択された変性方法の有効性を評価し比較するために対照(未変性)米タンパク質およびベンチマーク乳漿タンパクが含まれていた。
【0147】
したがって、イネ胚乳タンパク質は、(1)D−グルコースでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化(RPGlu);(2)キサンタンガムでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化(RPXG);(3)アルカリ処理を用いたイネ胚乳タンパク質の脱アミド化(RPDA);(4)1.8%DHに至るまでのアルカラーゼによるイネ胚乳タンパク質の処理(RPAlc)という方法によって変性された。タンパク質誘導体の物理化学的および機能特性を評価し、未変性イネ胚乳タンパク質(RP)のものと比較し、ベンチマークとして乳漿タンパク単離物と比較した。
【0148】
[(C)部分的に加水分解したイネ胚乳タンパク質の製造]
[実施例7(比較例):1.8%DHに至るまでのアルカラーゼを用いたイネ胚乳タンパク質の処理(RPAlc)]
アルカラーゼ処理のための条件は、先行研究(パラマンら、2007年)および我々の予備データに基づいて選択した。イネ胚乳タンパク質単離物(RP)をDI水(8%w/v)で均質化し、pH6.5に調整した。タンパク質コロイド溶液を8.5分間40℃で0.1%のアルカラーゼを用いて処理した。酵素を7分間85℃で不活性化した。水を添加することにより加水分解物を直ちに30℃まで冷却し、pHを7.0に再調整した。タンパク質加水分解物を噴霧乾燥させ、使用するまで気密容器内に5℃で保管した(RPAlc)。
【0149】
[(D)単糖類または多糖類と部分的に共役されたイネ胚乳タンパク質の製造]
[実施例8:イネ胚乳タンパク質の部分的グリコシル化のための最適な反応条件の評価]
抽出された米タンパク質RP(dwで20g)を脱イオン水中に溶解させて、10%(w/v)のタンパク質コロイド溶液を得た。10mLのDI水中に溶解させたD−グルコース(0.465g)を、37℃でタンパク質溶液を撹拌させながらタンパク質溶液中に添加した。タンパク質グルコース混合物をpH8.0に調整し、37℃で1時間撹拌した。混合物を凍結乾燥させ、乾燥したタンパク質−糖混合物をアルミニウム皿内に入れ、相対湿度65%に維持したインキュベータ内で50℃でインキュベートした。およそ2.5gのタンパク質−グルコース混合物を試料として24時間にわたり4時間間隔で取り出した。グルコシル化タンパク質を、使用するまで気密容器内に5℃で保管した。
【0150】
タンパク質−キサンタンガム比が100:1であり、タンパク質−キサンタンガム溶液のpHが7.0の値に調整されたという点を除いて、以上で記述されたタンパク質−グルコース最適化方法と本質的に類似した形で、米タンパク質−キサンタンガム最適化を実施した。
【0151】
[実施例9:D−グルコースを用いたイネ胚乳タンパク質のグルコシル化(RPGlu)]
以下で記述するいくつかの修正を伴って、文献(加藤ら1990年、加藤ら1991年、アシュリ(Achouri)ら2005年、オリバーら2006年)から選択された条件および以上の最適化に基づいて、グリコシル化を実施した。アルカリ抽出された米タンパク質単離物RP(dwで200g)を水中に溶解させて10%(w/v)のタンパク質コロイド溶液を得た。100mLのDI水内に溶解させたD−グルコース(4.65g)を、37℃でタンパク質溶液を撹拌しながらタンパク質溶液に添加した。タンパク質−グルコース混合物をpH8.0に調整し、37℃で1時間撹拌した。混合物を噴霧乾燥させ、使用するまで気密容器内に5℃で保管した。噴霧乾燥したタンパク質−糖混合物をアルミニウム皿内に入れ、50℃および65%RHで8時間インキュベートした。グリコシル化したタンパク質(RPGlu)を、使用するまで5℃で保管した。
【0152】
[実施例10:キサンタンガムでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化(RPXG)]
dw基準で200gのイネ胚乳タンパク質単離物(RP)を水中に溶解させて10%(w/v)のタンパク質コロイド溶液を得た。キサンタンガム(2g)を水中に別途溶解させて1%(w/v)のキサンタンガム溶液を得た。37℃でタンパク質溶液を撹拌しながら、キサンタンガム溶液をタンパク質溶液中に添加した。タンパク質−キサンタンガム混合物を噴霧乾燥させ、使用するまで気密容器内に5℃で保管した。噴霧乾燥したタンパク質−キサンタンガム混合物をアルミニウム皿内に入れ、50℃および65%RHで20時間インキュベートした。グリコシル化したタンパク質(RPXG)を、分析するまで5℃で保管した。
【0153】
[実施例11:ポテトデキストリンでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化(RPPD)]
dw基準で200gのイネ胚乳タンパク質単離物(RP)を水中に溶解させて10%(w/v)のタンパク質コロイド溶液を得た。ポテトデキストリン(2g)を水中に別途溶解させて1%(w/v)のポテトデキストリン溶液を得た。37℃でタンパク質溶液を撹拌しながら、ポテトデキストリン溶液をタンパク質溶液中に添加した。タンパク質−デキストリン混合物をpH7.0に調整し、37℃で1時間攪拌し、噴霧乾燥させ、使用するまで気密容器内に5℃で保管した。噴霧乾燥したタンパク質−デキストリン混合物をアルミニウム皿内に入れ、50℃および65%RHで20時間インキュベートした。グリコシル化したタンパク質(RPPD)を、分析するまで5℃で保管した。
【0154】
[実施例12:シクロデキストリンでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化(RPCD)]
dw基準で200gのイネ胚乳タンパク質単離物(RP)を水中に溶解させて10%(w/v)のタンパク質コロイド溶液を得た。シクロデキストリン(2g)を水中に別途溶解させて1%(w/v)のシクロデキストリン溶液を得た。37℃でタンパク質溶液を撹拌しながら、シクロデキストリン溶液をタンパク質溶液中に添加した。タンパク質−シクロデキストリン混合物をpH7.0に調整し、37℃で1時間攪拌し、噴霧乾燥させ、使用するまで気密容器内に5℃で保管した。噴霧乾燥したタンパク質−シクロデキストリン混合物をアルミニウム皿内に入れ、50℃および65%RHで20時間インキュベートした。グリコシル化したタンパク質(RPCD)を、分析するまで5℃で保管した。
【0155】
[実施例13:ペクチンでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化(RP)]
dw基準で200gのイネ胚乳タンパク質単離物(RP)を水中に溶解させて10%(w/v)のタンパク質コロイド溶液を得た。ペクチン(2g)を水中に別途溶解させて1%(w/v)のペクチン溶液を得た。37℃でタンパク質溶液を撹拌しながら、ペクチン溶液をタンパク質溶液中に添加した。タンパク質−ペクチン混合物をpH7.0に調整し、37℃で1時間攪拌し、噴霧乾燥させ、使用するまで気密容器内に5℃で保管した。噴霧乾燥したタンパク質−ペクチン混合物をアルミニウム皿内に入れ、50℃および65%RHで20時間インキュベートした。グリコシル化したタンパク質(RP)を、分析するまで5℃で保管した。
【0156】
[(E)部分的に脱アミド化されたイネ胚乳タンパク質の製造]
実施例14;アルカリ処理を用いたイネ胚乳タンパク質の脱アミド化(RPDA
以下で記述する通りのいくつかの修正を加えて、文献情報(シュウェンク(Schwenke)1997年,カブラ(Cabra)ら2007年)に基づいて脱アミド化条件を選択した。アルカリ抽出米タンパク質単離物をDI水(8%w/v)と混合した。タンパク質コロイド溶液をpH11.0に調整し、12時間25℃で撹拌した。その後、タンパク質溶液の温度を70℃で30分間撹拌下にて上昇させた。氷を加えて溶液を直ちに30℃まで冷却し、pHを7.0まで再調整した。脱アミド化させたタンパク質溶液を噴霧乾燥させ、5℃で保管した(RPDA)。
【0157】
[(F)結果]
[統計分析]
全ての実験は、デュプリケートで実施された。JMP6ソフトウェア(SASInst2002)を用いて分散および多重平均比較のためデータを分析した。平均間の差異の有意性を、5%の有意性レベル(P<0.05)でTukey HSD手順により判定した。
【0158】
[イネ胚乳タンパク質のグリコシル化の最適化]
D−グルコースおよびキサンタンガムでの米タンパク質のグリコシル化を、上述のように最適化した。グリコシル化タンパク質の溶解度および乳化特性は、表3に提示されている。
【0159】
【表4】

【0160】
米タンパク質D−グルコース(2.25%、w/w)および米タンパク質−キサンタンガム(1%、w/w)共役体のグリコシル化を、さまざまなインキュベーション時間(0〜24時間)にわたって50℃および相対湿度65%で調製した。反応は非常に急速に開始することから、当初でさえ未処理のイネ胚乳タンパク質単離物と比較した差異が認められた。
【0161】
グリコシル化タンパク質の機能特性は、メイラード反応時間の一関数として有意な形で異なり、タンパク質をグリコシル化するために用いられた糖のタイプにより左右された。D−グルコースについては、最適メイラード反応時間は、50℃および65%RHで8時間であった。グリコシル化タンパク質は、最高8時間までメイラード反応の一関数としての溶解度および乳化特性の漸進的改善を実証した。この傾向は、反応時間が0時間から8時間まで進むにつれて23%から34%までの溶解度の増加および0.371から0.712までのエマルジョン活性の増加により例示された。これらの特性は、8時間のインキュベーションを超えると減少した。ただし、グリコシル化タンパク質のエマルジョン安定性は、0から24時間までのインキュベーション時間の関数として15.4時間から28時間まで漸進的に増大した。エマルジョン安定性の増分は、インキュベーション初期(0〜12時間)において、後期(12〜24時間)よりも高く、これは、メイラード反応の進行に伴うアミノ基の利用可能性の低下に起因するものと考えられる。
【0162】
キサンタンガムでグリコシル化されたタンパク質においては、溶解度および乳化特性は、それぞれ最高16時間および20時間まで漸進的に増加した。溶解度は、16時間のインキュベーションにおいて26%から33%まで増大し、乳化活性は、20時間のインキュベーションにおいて0.479から0.629まで増大した。グルコースと比較して、キサンタンガム媒介型グリコシル化は、より低い速度で機能特性を改善し、メイラード反応のためにより長い時間を要した。18〜20時間というインキュベーション時間は、50℃、65%RHおよび1:100のキサンタンガム対タンパク質比でキサンタンガムにとって最適な時間であった。最適な反応時間は変動し、反応物質および反応条件により左右された(オリバー、2006年)。単糖類は、多糖類に比べて早く反応することができ、短い時間しか必要としなかった。
【0163】
本研究においては、最適な反応時間は、以前に公開された研究よりもはるかに短かった。キサンタンガムでグリコシル化されたリゾチームは、7日間のメイラード反応の後より優れた乳化特性を実証した(中村ら、2000年)。同様にして、グルコースと共役されたオボアルブミンは1日で最大のエマルジョン活性に達し、14日間の反応時間でエマルジョン安定性に達した(加藤ら、1995年)。所要時間の差は、これらの実験で使用されたプレインキュベーション条件の差異に起因すると考えられる。例えば、これら2つの先行研究においては、タンパク質−糖混合物はpH7.0に調整され、直ちに凍結乾燥された。しかしながら、本研究では、タンパク質−糖混合物を乾燥に先立ち1時間撹拌した。糖−米タンパク質混合物のpHは、pH8.0に維持された。わずかにアルカリ性の条件(pH8.0)およびより長い混合条件(1時間)が、液体段階におけるメイラード反応を促進したものと考えられる。
【0164】
0時間のインキュベーションでの天然タンパク質およびグリコシル化タンパク質の溶解度および乳化データが、この推測を裏付けた(表3)。0時間のインキュベーションでのグリコシル化タンパク質の溶解度および乳化特性は、天然米タンパク質対照のものよりも高い溶解度および乳化特性を示した。グルコース−米タンパク質共役体については、溶解度は18%から24%まで改善し、エマルジョン活性はいかなる乾燥段階反応もなく、0.266から0.371まで改善した(表3);キサンタンガム米タンパク質共役体については、溶解度は18%から26%まで増加し、エマルジョン活性および安定性はそれぞれ0.266から0.479までおよび14.7から18.1分まで増大した。
【0165】
[グリコシル化架橋研究においては、D−グルコース、ポテト−デキストリン、シクロデキストリン、ペクチン、キサンタンガムで予備的実験が実施された]
(表4)に提示されている我々の予備データに基づくと、D−グルコースおよびキサンタンガム共役は、イネ胚乳タンパク質およびポテトデキストリン、シクロデキストリンまたはペクチンと共役された米タンパク質に比べて溶解度および乳化特性の両方を有意に改善した。したがって、さらなるグリコシル化プロセス最適化用としては、D−グルコースおよびキサンタンガムが選択された。
【0166】
ポテトデキストリン、シクロデキストリンおよびペクチン共役は、胚乳タンパク質の安定性を改善させなかったものの、対照のイネ胚乳タンパク質に比べて乳化特性を改善した。
【0167】
【表5】

【0168】
タンパク質:この実験において使用される炭水化物比は、グルコースについて100:2.265、ポテトデキストリン、シクロデキストリン、ペクチンおよびキサンタンガムについて100:1であった。
【0169】
最適化されたグリコシル化米タンパク質を、制御された酵素加水分解およびアルカリ脱アミド化により変性されたタンパク質の物理化学特性および機能特性について、さらに比較し評価した。表5には、変性の処理および簡易方法がまとめられている。
【0170】
【表6】

【0171】
イネ胚乳タンパク質は、以上の方法すなわち、(1)D−グルコースでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化(RPGlu);(2)キサンタンガムでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化(RPXG);(3)アルカリ処理を用いたイネ胚乳タンパク質の脱アミド化(RPDA);(4)溶解度および乳化特性を改善するための1.8%DHに至るまでのイネ胚乳タンパク質の処理によって変性された。
【0172】
[制御されたグルコシル化、脱アミド化およびアルカラーゼ変性が米タンパク質の物理化学特性および機能特性に対して及ぼす影響]
[物理化学特性]
米タンパク質生成物のタンパク質および含水量が表6に提示されている。
【0173】
【表7】

【0174】
グリコシル化タンパク質、RPGlu、RPXGは、その他のタンパク質よりも高い含水量(8.8〜9.0%)を有していた。これら2つの生成物、RPGlu、RPXGは、それぞれ8時間および18時間65%RHで実施されたグリコシル化プロセス中に水分を吸収した。タンパク質をグリコシル化するために低い割合のグルコース(2.25%、w/w)およびキサンタンガム(1%、w/w)しか使用されなかったことから、グリコシル化タンパク質(RPGlu、RPXG)のタンパク質含量は、対照の米タンパク質単離物(RP)と差がなかった。
【0175】
タンパク質の粘度は、表6と図1に提示されている。
【0176】
図1は、10%w/vの濃度での米タンパク質単離物(−RPcontrol)、加水分解物(◆RPAlc)、グリコシル化(●RPGluおよび■RPXG)および脱アミド化(▲RPDA)米タンパク質についてのせん断応力(y軸:Pa単位)とせん断速度(x軸;sec−1単位)の関係を示す;1Pas(パスカル秒)=1000cP(センチポイズ=mPas)。粘度は、直線のせん断応力とせん断速度の勾配であった。
【0177】
グリコシル化(RPGlu、RPXG)および脱アミド化(RPDA)タンパク質は、処理されたタンパク質分解酵素(RPAlc)および対照米タンパク質(RP)よりもはるかに高い粘度を示した。粘度の増加は、グリコシル化されたものの親水性の増大を示すものである。詳細には、キサンタンガムでのグリコシル化は、生成物の粘度を31.6mPasまで増大させ、これはグルコース媒介型グリコシル化(12.4mPas)および脱アミド化(14.0mPas)方法の粘度よりも有意に高いものであった。キサンタンガムと共役されたタンパク質の粘度が比較的高いことは、グリコシル残基の複合サイズに起因すると思われる。一般に、グリコシル化タンパク質の粘度の増加は、タンパク質における構造の変化を示していた。グリコシル化タンパク質は、より大きな流体力学的体積を有し、表面親水性の増大およびタンパク質の四次構造の部分的アンフォールディングの増加に起因して水和特性を増大させる(バニエル(Baniel)ら、1992年)。
【0178】
脱アミド化はまた、8.7から14.0mPasまで粘度を増大させた。このことは、脱アミド化タンパク質の水和特性の改善を示していた。アミド基からカルボキシル基の脱アミド化は、タンパク質の電荷量を改変させる可能性があると思われ、水分子とタンパク質の相互作用を改善させた。しかしながら、脱アミド化を実施するのに用いられる条件を考慮すると、脱アミド化タンパク質の粘度が、脱アミド化、変性(denaturation)およびペプチド結合開裂の最終的結果であったことは明白である。
【0179】
アルカラーゼ処理は、粘度をRPAlcにおいて8.7から7.0mPasまでわずかに減少させた。粘度の減少は、タンパク質の分子サイズに起因していた。しかしながら、タンパク質の加水分解は1.8%DHに制御されたことから、粘度変化は小さかった。
【0180】
[タンパク質の溶解度]
タンパク質の溶解度および乳化特性は、表7に提示されている。
【0181】
【表8】

【0182】
グルコースとキサンタンガムでのグルコシル化が、米タンパク質の溶解度を約40%まで増加させたが、グリコシル化による溶解度の増分は、予測されたレベルまで実質的なものではなかった。
【0183】
アルカラーゼ処理(1.8%、DH)は、溶解度を18%から33%まで改善した。溶解度の増加は、分子サイズの減少および極性基数の増大に起因していた(ニールセン、1997年)。先行研究では、アルカラーゼ酵素による13.5%DHの後でも高い割合の米タンパク質が不溶状態にとどまっていることが報告されており、このことは米タンパク質分解酵素により開裂されたいずれかのペプチドが、分子間疎水性またはスルフヒドリル相互作用を介して未加水分解タンパク質と会合されているかまたは唯一加水分解がアクセスできるタンパク質の無定形領域と会合されていることを示唆している。
【0184】
脱アミド化タンパク質は、その他のいずれの処理(28〜39%)よりも高い溶解度(68%)を示した。脱アミド化タンパク質は、68.3%の溶解度を示した。アルカリ性条件での脱アミド化は、アスパラギンおよびグルタミンアミノ酸の側鎖基を脱アミド化し、場合によってはタンパク質極性を改変させたと考えられる。脱アミド化は負の電荷を増大させ、疎水性および水素結合を分断できる(シュウェンク、1997年)。これらの構造的変化は、溶解度の増大に寄与し得る。詳細には、米グルテリン内に最も豊富なアミノ酸は、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、グルシンおよびアラニンである(ウェンおよびリュース1985年)。これらのアミノ酸残基の脱アミド化は、タンパク質の溶解度を促進でき、乳化特性の改善に寄与した。さらに、ペプチド結合の部分的開裂は、脱アミド化プロセスの中で可能であり得た。脱アミド化と加水分解の組合せ効果は、溶解度の大幅な改善に寄与したものと思われる。
【0185】
[乳化特性]
グリコシル化および脱アミド化タンパク質のエマルジョン活性および安定性は、米タンパク質分解酵素で処理された米タンパク質単離物のものよりも有意に高かった。グルコースでグリコシル化されたタンパク質は0.721のエマルジョン活性と26.8分のエマルジョン安定性を示した。脱アミド化タンパク質は0.776のエマルジョン活性と24.0分のエマルジョン安定性を示した。これら2つの米タンパク質単離物の乳化特性は、未変性の米タンパク質単離物および米タンパク質分解酵素で変性された米タンパク質単離物のものよりも高かった。グリコシル化は、タンパク質の親水性を高めた(加藤ら、1991年)。したがって、制御され制限された糖化は、乳化特性を改善させる。親水性の増加は、水和および溶解度を改善させ、かくして場合によってタンパク質の球状構造を開く。部分的アンフォールディングは、油水界面において安定した界面薄膜を形成するグリコシル化タンパク質の能力を改善させた。
【0186】
脱アミド化タンパク質の場合、エマルジョン特性の改善は、タンパク質の溶解度および極性を増大させることによってもたらされ得る(シュウェンク、1997年)。前述したような脱アミド化に加えて、ペプチド結合の部分的開裂もまた溶解度および乳化特性に寄与したと考えられる。脱アミド化タンパク質の溶解度の増大は、油水界面における安定した相互作用を生み出す一助となると考えられ、かくして、乳化特性を改善させた。脱アミド化およびペプチド結合開裂の適正な平衡は、脱アミド化により米タンパク質の乳化特性を改善させる上でのキーポイントであると考えられる。
【0187】
1.8%DHに至るアルカラーゼ処理(RPAlc)は、未変性米タンパク質(RP)と比べて、エマルジョン活性を0.266から0.468まで改善させ、エマルジョン安定性を17.7から17.5分まで改善した。一般に、食物タンパク質の機能性、特にエマルジョン安定性を改善させるためには、低い加水分解度が推奨される。限定的なタンパク質分解は、タンパク質の分子柔軟性および疎水性−親水性平衡を改善でき、その結果乳化はより良好になった(ニールセン1997年;シュウェンク、1997年)。ただし、溶解度および乳化特性の限定的な改善は、(1)高い疎水性およびスルフヒドリル相互作用に起因すると考えられ、高温酵素不活性化に随伴したタンパク質の埋没した疎水性領域の露出は、部分的に加水分解されたタンパク質の凝集および架橋を促したかもしれない(パラマンら、2007年)。さらに、タンパク質のコンパクト性に起因して、酵素アルカラーゼには内部ペプチド結合に対するアクセスが限定されていると考えられ、このため場合によっては、ペプチドの不均等なサイズの形成がもたらされ、結果として得られる加水分解物の乳化特性が低減される可能性がある。
【0188】
[結論]
イネ胚乳タンパク質の溶解度および乳化特性を改善させるためには、1.8%DHに至るまでのアルカラーゼによるタンパク質分解変性よりも、グリコシル化および脱アミド化タイプの変性の効果の方が高かった。イネ胚乳タンパク質のグリコシル化においては、最適なメイラード反応時間は、D−グルコースおよびキサンタンガムについて50℃および65%RHでそれぞれ8時間および20時間であった。脱アミド化タンパク質は、この研究において評価されたタンパク質の中でも最高の溶解度(68%)と乳化特性(0.776のエマルジョン活性、24分のエマルジョン安定性)を示した。アルカラーゼによる制御された酵素加水分解1.8%DHは、未変性の米タンパク質(RP)に比べ、エマルジョン活性を0.266から0.468まで、そしてエマルジョン安定性を14.7分から17.5分まで改善したにすぎなかった。脱アミド化タンパク質の最高の溶解度および乳化特性は、脱アミド化プロセス中に起こった脱アミド化、ペプチド結合開裂およびタンパク質変性(denaturation)の最終的結果であった。
【0189】
[(G)本発明に従った脂溶性活性成分または脂溶性着色剤の組成物の製造]
[実施例15:ビタミンE調合物(酢酸塩)の製造]
イネ胚乳タンパク質とビタミンEを含む調合物を以下の通りに調製してよい:
【0190】
[a)エマルジョンの調製]
実施例9に従ったRPGlu(D−グルコースでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化)20gを、60gのスクロースと混合し、15分間75℃で撹拌することによって140mlの水中に再度溶解させた。88.3gのdl−α−酢酸トコフェロールを70℃まで加熱し、勢いよく撹拌しながら水溶液に加えた。分散体をさらに15分間勢いよく撹拌した。穏やかな撹拌下で、さらなる225mLの水を加え、このように得られたエマルジョンを内部相の粒度に関して特性決定した。エマルジョンの内部相の平均粒度(ザウター(Sauter)径、D〔3,2〕)は、レーザー回折(マルバーン(Malvern)社、マスターサイザー(Mastersizer)によって測定したところ、1.86μmであった。12時間保管した後、エマルジョンを再度、内部相の粒度に関して特性決定した。保管後のエマルジョンの内部相の平均粒度(ザウター径、D〔3,2〕)は、レーザー回折(マルバーン社マスターサイザー)によって測定したところ1.81μmであった。
【0191】
[b)エマルジョンからの固体調合物の調製]
エマルジョンを、予冷したコーンスターチの流動床の中に噴霧してよい。ふるいにより余剰のコーンスターチを除去することができ、得られた粉末を室温で空気流の内で乾燥させることができる。0.16〜0.63mmの範囲内の粉末粒子画分を、ふるいにより収集することができる。或いは、かかる噴霧乾燥のさらなる周知の乾燥技術を用いることにより、エマルジョンを固体形態に加工することができる。
【0192】
[実施例16:ビタミンE調合物(酢酸塩)の製造]
イネ胚乳タンパク質とビタミンEを含む調合物を以下の通りに調製してよい:
【0193】
[a)エマルジョンの調製]
実施例10に従ったRPXG(キサンタンガムでのイネ胚乳タンパク質のグリコシル化)20gを、60gのスクロースと混合し、15分間75℃で撹拌することによって140mlの水中に再度溶解させた。83.2gのdl−α−酢酸トコフェロールを70℃まで加熱し、勢いよく撹拌しながら水溶液に加えた。分散体をさらに15分間勢いよく撹拌した。穏やかな撹拌下で、さらなる225mLの水を加え、このように得られたエマルジョンを内部相の粒度に関して特性決定した。エマルジョンの内部相の平均粒度(ザウター(Sauter)径、D〔3,2〕)は、レーザー回折(マルバーン(Malvern)社、マスターサイザー(Mastersizer)によって測定したところ、1.65μmであった。12時間保管した後、エマルジョンを再度、内部相の粒度に関して特性決定した。保管後のエマルジョンの内部相の平均粒度(ザウター径、D〔3,2〕)は、レーザー回折(マルバーン社マスターサイザー)によって測定したところ1.64μmであった。
【0194】
[b)エマルジョンからの固体調合物の調製:]
エマルジョンを、予冷したコーンスターチの流動床の中に噴霧してよい。ふるいにより余剰のコーンスターチを除去することができ、得られた粉末を室温で空気流内で乾燥させることができる。0.16〜0.63mmの範囲内の粉末粒子画分を、ふるいにより収集することができる。或いは、かかる噴霧乾燥のさらなる周知の乾燥技術を用いることにより、エマルジョンを固体形態に転換させることができる。
【0195】
[実施例17:ビタミンE調合物(酢酸塩)の製造]
イネ胚乳タンパク質とビタミンEを含む調合物を以下の通りに調製してよい:
【0196】
[a)エマルジョンの調製:]
実施例14に従ったRPDA(アルカリ処理を用いたイネ胚乳タンパク質の脱アミド化)20gを、60gのスクロースと混合し、15分間75℃で撹拌することによって140mlの水中に再度溶解させた。81.9gのdl−α−酢酸トコフェロールを70℃まで加熱し、勢いよく撹拌しながら水溶液に加えた。分散体をさらに15分間勢いよく撹拌した。穏やかな撹拌下で、さらなる225mLの水を加え、このように得られたエマルジョンを内部相の粒度に関して特性決定した。エマルジョンの内部相の平均粒度(ザウター(Sauter)径、D〔3,2〕)は、レーザー回折(マルバーン(Malvern)社、マスターサイザー(Mastersizer)によって測定したところ、1.77μmであった。12時間保管した後、エマルジョンを再度、内部相の粒度に関して特性決定した。保管後のエマルジョンの内部相の平均粒度(ザウター径、D〔3,2〕)は、レーザー回折(マルバーン社マスターサイザー)によって測定したところ1.68μmであった。
【0197】
[b)エマルジョンからの固体調合物の調製:]
エマルジョンを、予冷したコーンスターチの流動床の中に噴霧してよい。ふるいにより余剰のコーンスターチを除去することができ、得られた粉末を室温で空気流内で乾燥させることができる。0.16〜0.63mmの範囲内の粉末粒子画分を、ふるいにより収集することができる。或いは、かかる噴霧乾燥のさらなる周知の乾燥技術を用いることにより、エマルジョンを固体形態に転換させることができる。
【0198】
[実施例18:β−カロテンの調合物の製造]
イネ胚乳タンパク質とβ−カロテンを含む調合物を以下のように調製してよい:
【0199】
[a)(n油−ベースの)溶液1の調製:]
6.6gのトウモロコシ油と1.2gのdl−α−トコフェロールを混合した。13.8gの結晶性β−カロテンを180mlのクロロホルム(トリクロロメタン)中に分散させ、得られた分散体をトウモロコシ油とトコフェロールの混合物に添加した。混合物を穏やかに撹拌し、同時に約60℃まで加熱することにより、溶液を得た。
【0200】
[b)(n水)溶液2の調製]
実施例9に従った30gのRPGlu(D−グルコースでのイネ胚乳タンパク質のグルコシル化)を、60℃で撹拌することによって120mlの水中に再度溶解させた。
【0201】
[c)溶液1および2からのエマルジョン調製:]
激しく撹拌しながら、53℃で溶液1を溶液2に添加し、分散体をさらに30分間激しく撹拌した。撹拌される分散体を50〜55℃に30分間保った。残留トリクロロメタンを50〜55℃で除去した。閉じこめられた気泡を遠心分離によって除去した後、エマルジョンを50〜55℃でしばらく穏やかに撹拌し、次に内部相の粒度に関して特性決定した。エマルジョン内部相の平均粒度(ザウター(Sauter)径、D[3、2])は、レーザー回析(Malvern Masersizer)による測定で440nmであった。
【0202】
[d)エマルジョンからの固体調合物の調製:]
エマルジョンは、予冷したコーンスターチの流動床中に噴霧してもよい。過剰なコーンスターチはふるいによって除去でき、得られた粉末は室温において気流中で乾燥できる。0.16〜0.63mmの範囲内の粉末粒子画分をふるいにより収集し、カロテノイド含量、水性分散体中の色強度および色調、コーンスターチ含量、および残留湿度に関して特性決定することができる。
【0203】
【表9】

【0204】
[実施例19:β−カロテンの調合物の製造]
イネ胚乳タンパク質とβ−カロテンを含む調合物を以下のように調製してよい:
【0205】
[a)(n油−ベースの)溶液1の調製:]
6.6gのトウモロコシ油と1.2gのdl−α−トコフェロールを混合した。13.8gの結晶性β−カロテンを180mlのクロロホルム(トリクロロメタン)中に分散させ、得られた分散体をトウモロコシ油とトコフェロールの混合物に添加した。混合物を穏やかに撹拌し、同時に約60℃まで加熱することにより、溶液を得た。
【0206】
[b)(n水)溶液2の調製:]
実施例10に従った30gのRPXG(キサンタンガムでのイネ胚乳タンパク質のグルコシル化)を、60℃で撹拌することによって120mlの水中に再度溶解させた。さらに1.8gのパルミチン酸アスコルビルおよび36.6gのスクロースを添加した。pHを7.3の値に調整するために0.5mlの1Nの水性NaOHを添加した。
【0207】
[c)溶液1および2からのエマルジョンの調製:]
勢いよく撹拌しながら、53℃で溶液1を溶液2に添加し、分散体をさらに30分間勢いよく撹拌した。撹拌された分散体を50〜55℃に30分間保った。残留トリクロロメタンを50〜55℃で除去した。閉じこめられた気泡を遠心分離によって除去した後、エマルジョンを50〜55℃で数分間穏やかに撹拌し、次に内部相の粒度に関して特性決定した。エマルジョン内部相の平均粒度(ザウター径、D[3,2])は、レーザー回析(マルバーン社マスターサイザー)により測定したところ380nmであった。
【0208】
[d)エマルジョンからの固体調合物の調製:]
エマルジョンを、予冷したコーンスターチの流動床中に噴霧してよい。余剰のコーンスターチをふるいによって除去でき、得られた粉末を室温において気流中で乾燥できる。0.16〜0.63mmの範囲内の粉末粒子画分を、ふるいによって収集し、カロテノイド含量、水性分散体中の色強度および色調、コーンスターチ含量、および残留湿度について特性決定することができる。
【0209】
【表10】

【0210】
[実施例20:β−カロテンの調合物の製造]
イネ胚乳タンパク質とβ−カロテンを含む調合物を以下のように調製してよい:
【0211】
[a)(n油−ベースの)溶液1の調製:]
6.6gのトウモロコシ油と1.2gのdl−α−トコフェロールを混合した。13.8gの結晶性β−カロテンを180mlのクロロホルム(トリクロロメタン)中に分散させ、得られた分散体をトウモロコシ油とトコフェロールの混合物に添加した。混合物を穏やかに撹拌し、同時に約60℃まで加熱することにより、溶液を得た。
【0212】
[b)(n水)溶液2の調製:]
実施例16に従った30gのRPDA(アルカリ処理を用いたイネ胚乳タンパク質の脱アミド化)を、60℃で撹拌することによって120mlの水の中に再度溶解させた。さらに1.8gのパルミチン酸アスコルビルおよび36.6gのスクロースを添加した。pHを7.0の値に調整するために0.4mlの水性1NのNaOHを添加した。
【0213】
[c)溶液1および2からのエマルジョンの調製:]
勢いよく撹拌しながら、53℃で溶液1を溶液2に添加し、分散体をさらに30分間勢いよく撹拌した。撹拌された分散体を50〜55℃に30分間保った。残留トリクロロメタンを50〜55℃で除去した。閉じこめられた気泡を遠心分離によって除去した後、エマルジョンを50〜55℃で数分間穏やかに撹拌し、次に内部相の粒度に関して特性決定した。エマルジョン内部相の平均粒度(ザウター径、D[3,2])は、レーザー回析(マルバーン社マスターサイザー)により測定したところ500nmであった。
【0214】
[d)エマルジョンからの固体調合物の調製:]
エマルジョンを、予冷したコーンスターチの流動床中に噴霧してよい。余剰のコーンスターチをふるいによって除去でき、得られた粉末を室温において気流中で乾燥できる。0.16〜0.63mmの範囲内の粉末粒子画分を、ふるいによって収集し、カロテノイド含量、水性分散体中の色強度および色調、コーンスターチ含量、および残留湿度について特性決定することができる。
【0215】
【表11】

【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】10%w/vの濃度での米タンパク質単離物(−RPcontrol)、加水分解物(◆RPAlc)、グリコシル化(●RPGluおよび■RPXG)および脱アミド化(▲RPDA)米タンパク質についてのせん断応力(y軸:Pa単位)とせん断速度(x軸;sec−1単位)の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精粉前に米糠が除去されており、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類と部分的に共役されているかまたは粉砕米から出発して部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を製造する方法において、
a)精粉前に米糠が除去されており、溶液または懸濁液が水溶液または懸濁液の総量を基準にして好ましくは0.1〜30重量%の乾燥質量含量を有する、粉砕米の水溶液または懸濁液を調製するステップと、
b)場合により、精粉前に米糠が除去されている粉砕米の非タンパク質部分またはタンパク質部分を除去してイネ胚乳タンパク質を得るステップと、
c)精粉前に米糠が除去されている粉砕米のタンパク質部分を、メイラード型の反応において、粉砕米のタンパク質部分を単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類と部分的に反応させるかまたは粉砕米のタンパク質部分を部分的に脱アミド化させることによって変性させて、部分的に単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類と共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を得るステップと、
d)場合により、部分的に単糖類、二糖類、オリゴ糖類または二糖類と共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質を単離するステップと、
e)場合により、部分的に単糖類、二糖類、オリゴ糖類または二糖類と共役されるかまたは部分的に脱アミド化されるイネ胚乳タンパク質を固体形態へと加工するステップと;
を含む方法。
【請求項2】
前記非タンパク質部分の除去(ステップb)が、非タンパク質分解酵素で粉砕米を処理し、酵素を非活性化し、粉砕米の非タンパク質部分をタンパク質部分から分離して除去することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非タンパク質分解酵素が、デンプン分解酵素、セルロース分解酵素またはそれらの混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非タンパク質部分の分離が、遠心分離とそれに続くその洗い落としによって行われる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)が、前記粉砕米のタンパク質部分をアルカリ性、中性および/または酸性タンパク質分解酵素で処理することによって行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記粉砕米のタンパク質部分が、2つの異なるアルカリ性タンパク質分解酵素によって引き続いて処理される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
これらのタンパク質分解酵素の1つがセリン特異的タンパク質分解酵素であり、もう1つがシステイン特異的タンパク質分解酵素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質部分の除去(ステップb)が「粉砕米」溶液または懸濁液のpHを7〜12の値に調節することによって行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップe)が、乾燥によって、好ましくは凍結乾燥または噴霧乾燥によって行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップc)における単糖または多糖類との共役が、グルコースまたはキサンタンガムとの反応によって達成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記脱アミド化が、25〜90℃の範囲内の温度で、ステップb)で得られたイネ胚乳タンパク質のタンパク質部分のコロイド水溶液のpH値を9.0〜13.0の範囲内の値に調整することによって達成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜10または11のいずれか一項に記載の方法によって得ることのできる、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または二糖類と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質。
【請求項13】
≧0.6、好ましくは≧0.62、より好ましくは≧0.7のエマルジョン活性を有するイネ胚乳タンパク質。
【請求項14】
≧20分、好ましくは≧23分、より好ましくは≧25分のエマルジョン安定性を有するイネ胚乳タンパク質。
【請求項15】
単糖類、二糖類、オリゴ糖類または二糖類と部分的に共役されているかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質および脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤を含む、組成物。
【請求項16】
前記脂溶性活性成分および/または着色剤が、カロテンまたは構造的に関連したポリエン化合物、脂溶性ビタミン、多価不飽和脂肪酸に富んだトリグリセリド、油溶性UV−Aフィルター、UV−Bフィルターまたはその混合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記カロテンまたは構造的に関連したポリエン化合物が、α−カロテン、β−カロテン、8’−アポ−β−カロテナール、8’−アポ−β−カロテン酸エステル類、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、クロセチン、α−ゼアカロテン、β−ゼアカロテンまたはその混合物などのカロテノイドである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記カロテノイドがβ−カロテンである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記脂溶性ビタミンがビタミンAまたはEである、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、グリセロール、トリグリセリド類、水溶性抗酸化剤、および脂溶性抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物がさらに存在する、請求項15〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記単糖類または二糖類が、スクロース、転化糖、キシロース、グルコース、フルクトース、乳糖、マルトース、ショ糖、および糖アルコールである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記オリゴ糖類または多糖類が、デンプン、デンプン加水分解物または加工デンプンである、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記デンプン加水分解物が、デキストリン、マルトデキストリンまたはグルコースシロップである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記トリグリセリドが植物油または脂肪である、請求項16または20に記載の組成物。
【請求項25】
脂肪酸のモノ−およびジグリセリド類、脂肪酸のポリグリセロールエステル類、レシチン類、およびモノステアリン酸ソルビタンからなる群から選択される共乳化剤がさらに存在する、請求項15〜24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記イネ胚乳タンパク質が、≧0.6、好ましくは≧0.62、より好ましくは≧0.7のエマルジョン活性を有する、請求項15〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記イネ胚乳タンパク質が、≧20分、好ましくは≧23分、より好ましくは≧25分のエマルジョン安定性を有する、請求項15〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
単糖類、二糖類、オリゴ糖類または二糖類と部分的に共役されているかまたは部分的に脱アミド化されている前記イネ胚乳タンパク質の量が、組成物の総量を基準として約1〜約70重量%であり、かつ/または前記脂溶性活性成分および/または前記脂溶性着色剤の量が約0.1〜約90重量%である、請求項15〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
粉末の形態をした請求項15〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
I)単糖類、二糖類、オリゴ糖類または二糖類と部分的に共役されているかまたは部分的に脱アミド化されているイネ胚乳タンパク質の水溶液またはコロイド溶液を調製するステップと、
II)場合により、ステップI)で調製された前記溶液に、少なくとも水溶性賦形剤および/またはアジュバントを添加するステップと、
III)少なくとも脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤、そして場合により少なくとも脂溶性アジュバントおよび/または賦形剤の溶液または分散体を調製するステップと、
IV)ステップI)〜III)で調製された前記溶液を互いに混合するステップと、
V)このようにして得られた前記混合物を均質化するステップと、
VI)場合により、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または二糖類と部分的に共役されているかまたは部分的に脱アミド化されている前記イネ胚乳タンパク質を(さらに)架橋するための架橋剤を添加するステップと、
VIa)場合により、ステップVI)を実施した後に得られた混合物に酵素処理または熱処理を施して前記(変性)イネ胚乳タンパク質を架橋するステップと、
VII)場合により、ステップV)および/またはVI)で得られた前記分散体を粉末に加工するステップと、
VIII)場合により、ステップVII)で得られた前記粉末を乾燥するステップと、
IX)場合により、前記(乾燥)粉末に熱処理または酵素処理を施して、単糖類、二糖類、オリゴ糖類または二糖類と部分的に共役されているかまたは部分的に脱アミド化されている前記イネ胚乳タンパク質を架橋するステップと、
を含み、ただしステップVI)が実施される場合、ステップVIa)またはステップIX)の両方でなく一方のみが実施される、請求項15〜29のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項31】
ステップVIa)またはステップIX)に記載の前記酵素処理が、架橋酵素、特にトランスグルタミナーゼによる処理である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類と部分的に共役されるかまたは部分的に脱アミド化されている前記イネ胚乳タンパク質が請求項13および/または14で定義されているものである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアまたは医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のための請求項15〜29のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項34】
請求項15〜29のいずれか一項に記載の組成物を含有する、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケア、および医薬組成物。
【請求項35】
請求項12〜14のいずれか一項に記載のイネ胚乳タンパク質を含有する、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物。
【請求項36】
脂溶性活性成分および/または脂溶性着色剤のための保護親水コロイドとしての請求項12〜14のいずれか一項に記載のイネ胚乳タンパク質の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−522543(P2010−522543A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500128(P2010−500128)
【出願日】平成20年3月22日(2008.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002315
【国際公開番号】WO2008/119482
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】