説明

活性成分の放出時間が長い組成物、その調製方法および利用方法

本発明による活性成分の放出時間が長い薬学的組成物または栄養補助組成物は少なくとも一つのコーティングされた顆粒を含み、前記コーティングされた顆粒は、前記活性成分を含んだ粒子で構成されており、該粒子は、賦形剤の組み合わせを含んだ少なくとも二つのコーティング材でコーティングされている。また、本発明は前記組成物の調製方法にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分の放出時間が長い薬学的組成物または栄養補助用組成物と、該組成物の調製方法および治療における該組成物の利用方法に関するものである。活性成分は、好ましくはミネラルと微量要素のグループから選択され、より詳細には、活性成分は硫酸鉄である。
【背景技術】
【0002】
鉄はすべての栄養素の中で、必要量のカバーが、ヒトという種において、解決すべき実際的な問題を最も多く呈するものの一つである。鉄の欠乏は、世界で非常に広まっている栄養障害となっており、該栄養障害は第一に開発途上国に関わるが、程度は確かに低くとも先進国にも同様に関係している。開発のレベルがどの程度であれ、人口の中には鉄欠乏を発症させるリスクに特にさらされているグループがいる。それは主として出産期の女性、とりわけ妊娠中の女性、幼児そして青年期の人である。
【0003】
鉄は人体に非常に少量存在している(男性では50mg/kg、女性では35mg/kg)。この鉄の一部は人体の必要量を満たすために毎日使われており、その必要量は生涯の中で変動する。適切な鉄のレベルを維持するためには、損失を食品による供給で補わなければならない。そうでなければ、結果として、鉄欠乏の軽度な段階または進行した段階に応じて、エネルギーの減退、身体能力および知的能力の低下、感染症にかかる高い感度、妊娠期間中の変調などとなって不均衡が定着することになる。このバランスは、不十分な供給または吸収の減少、損失量の増加、必要量の増加など、さまざまな要因によって不足の方向へと傾く可能性がある。鉄欠乏の臨床的な結果の一つは、よく知られた有害な影響を持つ、鉄分欠乏による貧血症(すなわち鉄欠乏性貧血症)である。したがって、食事によってだけではなく、栄養補助品および医薬品によっても、十分で各個人に適合した鉄供給量を保証することが必要である。
【0004】
しかし、鉄は人体にほとんど吸収されない(10〜20%という低い腸内吸収率)。したがって、この低い吸収率を克服するために、鉄の放出特性は持続的なものでなければならない。
【0005】
今日、当業者によって知られ、用いられている方法は、主として、ポリマー、ゼラチン、アミドンなどによって活性成分をカプセル化する方法、ポリマー系の中で活性成分を溶解させる方法、またはこれら二つの方法の組み合わせである。また、生体接着性の形状も見られ、該形状によって、吸収部位に調製物を固定することが可能になる。接触時間の増加によって、局所的な濃度、したがって浸透する量を増加させることが可能となる。ポリマーの性質は非常に多様であり(セルロース誘導体、メタクリル酸樹脂など)、求められる放出特性に応じて決められる。米国特許第6402997号明細書は、脂肪酸エステル(モノステアリン酸ポリグリセリン)の利用によって、溶解可能な鉄をベースとするマイクロカプセルの調製方法を範囲としており、これらのマイクロカプセルは食品補助の分野で用いられている。
【0006】
国際公開第03/055475号パンフレットは、ベンラファクシンを含有する、放出が制御された薬学的調製物に関するものであり、この調製物は、ベンラファクシンとさまざまなセルロース系ポリマーを含んだ核の形状を呈し、前記核は、少なくとも二つのポリマーで構成されたポリマー・コーティング材でコーティングされている。この組成物は、核およびコーティングの中に、特定のかつさまざまな比率で、多くの(少なくとも四つ)異なったポリマーを含んでおり、このことが調製方法を長く、厄介なものにしている。
【0007】
現状では、ピエール・ファーブル・メディカモン(Pierre Fabre Medicament)研究所によって市販されている特許売薬TARDYFERON(登録商標)が鉄欠乏の治療に指定されている。硫酸鉄をベースとするこの製品は、副作用の心配がなく、時間経過の中で安定しており(硫酸鉄の酸化現象がない)、人体において長時間で放出されるという利点を有している。しかし、用いられる賦形剤の一つは動物由来のムコプロテオースである。そして、正確には、得られた放出特性に貢献し、酸化に対して硫酸鉄を保護することに貢献しているのはこのムコプロテオースである。しかし、動物原料を利用することによって、微生物学的な安全性、ウイルス性の安全性、そして場合によっては供給の困難さといった問題のような、無視できない不都合が生じることになる。
【特許文献1】米国特許第6402997号明細書
【特許文献2】国際公開第03/055475号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、薬学的組成物または栄養補助用組成物において動物原料を利用することに関連した問題を克服するために、より詳細には活性成分が鉄の供給源であるときに該問題を克服するために、活性成分の放出時間が長い新たな調製物を利用可能にすることが必要であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのため、本発明は、ムコプロテオースの代わりに、賦形剤の組み合わせと関連させた活性成分をベースとし、前記活性成分の長い放出時間を保証できるようにする薬学的組成物または栄養補助用組成物に関するものである。
【0010】
また、本発明は、活性成分の放出時間が長い薬学的製品または栄養補助製品を調製するための、該組成物の調製方法および利用方法にも関するものである。
【0011】
本発明による活性成分の放出時間が長い薬学的組成物または栄養補助用組成物は、少なくとも一つのコーティングされた顆粒を含み、前記コーティングされた顆粒は、少なくとも二つのコーティング材でコーティングされた、前記活性成分を含む粒子で構成されている組成物であって、該二つのコーティング材が、賦形剤の組み合わせを含み、該組み合わせが、
−モル・パーセントで8%以下の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの少なくとも一つの共重合体(a)と、
−モル・パーセントで8%超の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの第二の共重合体(b)との組み合わせで構成され、
−質量比(a)/(b)が60/40と80/20の間に含まれ、
−そして、(a)の量が組成物の重量全体の2.5乾燥重量%と5.0乾燥重量%の間に含まれることを特徴としている。
【0012】
共重合体(a)および(b)に含有される第4級アンモニウム基は異なった量で存在しており、このことによって、これらのポリマーで得られるコーティング材に異なった浸透特性が与えられる。共重合体(a)単独では弱い浸透性を有するコーティング材が形成されるのに対し、共重合体(b)単独では強い浸透性を有するコーティング材が形成される。
【0013】
ここで興味深いことに、賦形剤の選択、詳細には特定の割合で二つのポリマー(a)および(b)を選択することによって、製剤または栄養補助を目的とする治療処置用の利用のために、より詳細には、活性成分が鉄の供給源であるときに、活性成分の欠乏の治療および/または予防を目的とした利用のために、活性成分の放出時間が長い特性を有する組成物を得ることが可能になることが分かった。さらに、驚くべきことに、前記組成物が優れた安定性も有し、酸化に対する活性成分の保護を保証することが予測外にも確認された。
【0014】
好適には、本発明による二つのポリマーの質量比(a)/(b)はおよそ70/30であり、より好適にはおよそ65/35である。
【0015】
好適には、共重合体(a)の質量は組成物の重量全体の約3.5乾燥重量%と約4.0乾燥重量%の間に含まれ、好ましくは、組成物の重量全体の約3.9乾燥重量%に等しい。
【0016】
本発明による共重合体(a)における第4級アンモニウム基のモル・パーセントは、好ましくは約2%と約8%の間に含まれ、より好ましくは約4%と約6%の間に含まれ、さらに好ましくは約5%に等しい。好適には、共重合体(a)は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体を含むグループから選択され、より好適には、たとえばEudragit RS30D(登録商標)である。
【0017】
本発明による共重合体(b)における第4級アンモニウム基のモル・パーセントは、好ましくは約8%と約12%の間に含まれ、より好ましくは約9%と約11%の間に含まれ、さらに好ましくは約10%に等しい。好適には、共重合体(b)はアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体を含むグループから選択され、より好適には、たとえばEudragit RL30D(登録商標)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明および本発明の目的、利点および特徴は、本発明の非制限的な実施例を示す添付図面を参照してなされる以下の説明によってより良く理解され、明らかになるものである。
【0019】
図1は、本発明の実施例1にしたがって調製された二つのロットG93(△)とG94(▲)、および、ムコプロテオースを伴うTARDYFERON(登録商標)の二つのロットG6406(●)とG6372(○)について、時間経過に応じた硫酸鉄の溶解パーセントを示している(測定点は1時間、2時間、3時間および6時間に選択されている)。また、参考の特許売薬TARDYFERON(登録商標)に関する最小および最大の仕様(×)も示している。本発明による組成物における第一鉄の溶解曲線がTARDYFERON(登録商標)の二つのロットで得られる溶解曲線に非常に類似していることが観察される。そこから、本発明による組成物によって、望まれる放出特性を得ることが可能になると結論付けられる。
【0020】
また、驚くべきことに、本発明によって説明される組成物によって、酸化現象に対して活性成分を保護するパラメータを保持することもできる。実際、本発明の特筆すべき点は、活性成分の安定性を保証するために、いかなる抗酸化剤も必要ではないということである。
【0021】
図2および図3は、本発明の実施例1にしたがって調製された二つのロットについて、36ヶ月間で得られた安定性の結果を概略的に示しており、図2および図3はそれぞれ、第二鉄の配分と鉄全体の配分に関するものである。
【0022】
図2は時間経過における第二鉄の配分(第一鉄の酸化後産物)を示しており、第二鉄の測定は、先と同一のロットG93(□)とG94(■)に由来する錠剤に基づき、錠剤毎mg単位で、0、3、6、9、12、18、24および36ヶ月目に実施した。得られた結果がすべて、参考の特許売薬TARDYFERON(登録商標)に関する仕様で課せられている3.0mg/錠という上限を下回ること、したがって、本発明による組成物では第一鉄から第二鉄への有意な変性がないことが観察される。この結果は、用いられた組成物の、酸化に対する予想していなかった保護効果を証明している。
【0023】
最後に、図3で証明されているのは、これら二つの同じロットG93(□)およびG94(■)の時間経過における良好な安定性である。実際、これらの錠剤に含有される、錠剤毎mg単位で示された鉄全体は、さまざまな時間T(0、3、6、9、12、18、24および36ヶ月目)で配合されている。参考の特許売薬TARDYFERON(登録商標)に関する仕様は、鉄の量が一錠あたり76mgと84mgの間に含まれなければならないと指示している。実施されたすべての配合は確かにこの値の範囲に含まれていることが観察される。ここから、本発明による組成物では、鉄全体の有意な損失はないと結論づけられる。
【0024】
さらに、動物由来のムコプロテオースの利用に対して、本発明による賦形剤調製の利点は、とりわけ、
−製品の安全性の向上、とりわけウイルス性の安全性の向上、
−高められた原料の利用能と比例した産業的な実現可能性の向上、
−ムコプロテオースを得るために動物由来の原料から抽出する作業が必要ではなくなるため、安全性が与えられた産業上の方法、
である。
【0025】
本発明による組成物のもう一つの利点は、前記組成物が質的かつ量的に特許売薬TARDYFERON(登録商標)より少ない賦形剤を必要とするということに存し、これはこの場合、より低い原価コストとして現れる。
【0026】
先述の図面は、活性成分の唯一の供給源として硫酸鉄をベースとしている、本発明による組成物から得られた結果を示している。しかし、本発明の利益は、長い放出時間の特性を与えようとする薬学的、栄養補助的、美容的または獣医学的な活性成分を含んだあらゆる組成物に拡大することができると考えることも当然ながらできる。たとえば、抗うつ剤、解熱剤、ビタミン剤および抗炎症剤が挙げられるだろう。好ましくは、活性成分は、単独または混合で用いられるミネラルおよび微量要素を含むグループから選択される。
【0027】
好適には、ミネラルは、塩または錯体の形をした鉄(II)または鉄(III)の供給源である。さらに好適には、鉄の塩は、硫酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、グリセロリン酸塩およびフェレデテートを含むグループから選択される。
【0028】
より好適には、活性成分は硫酸鉄である。
【0029】
さらに好適には、鉄の錯体は、鉄−デキストラン錯体、鉄−ポリマルトース錯体および鉄−タンパク質錯体で構成されるグループから選択される。
【0030】
好適には、組成物は、単独または混合で用いられる希釈剤、結合剤、潤滑剤、凝結防止剤、可塑剤から選択される、一つまたは複数の薬学的または栄養補助的に受容可能な物質を含んでいる。
【0031】
好適には、可塑剤はこの場合、単独または混合で用いられる、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、アセチル化脂肪酸グリセリド、ヒマシ油、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、グリセリルトリアセテート、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体、プロピレングリコール、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチルで形成されるグループから選択され、好ましくはクエン酸トリエチルである。
【0032】
好適には、希釈剤はセルロースとラクトースで形成されるグループから選択され、好ましくはセルロースである。
【0033】
好適には、結合剤はマルトデキストリンまたはポビドンから選択され、好ましくはマルトデキストリンである。
【0034】
また、本発明は、活性成分の放出時間が長い薬学的調製物または栄養補助用調製物における、本発明による組成物の利用法にも関するものである。より詳細には、本発明は、活性成分の欠乏、より詳細にはミネラルおよび微量要素の欠乏の治療および/または予防における、そのような調製物の利用法に関するものである。
【0035】
本発明の意味における「薬学的」という用語は、医学および獣医学における予防処置または治療処置を目的とした医薬品を調製するための調製物を含む。
【0036】
より詳細には、活性成分が鉄の供給源である場合、本発明による組成物は、貧血症を伴うまたは伴わない鉄欠乏の治療および/または予防を目的とした医薬品を調製するために用いられる。
【0037】
さらに詳細には、鉄の欠乏は鉄分欠乏による貧血症である。より詳細には、鉄分欠乏による貧血症は妊娠中の女性に見られるものであり、食事による鉄の十分な供給が保証できない場合には、このような利用法に頼ることになる。
【0038】
好適には、本発明による組成物は経口用の形状をしていることを特徴としている。
【0039】
経口用の形状は、好ましくは、錠剤、ゼラチン質カプセル、カプセル、トローチ、内服用懸濁液およびシロップにするための粉末から選択される。
【0040】
本発明は、最終的に、本発明による薬学的調製物または栄養補助用調製物のための、コーティングされた顆粒の調製方法に関するものであり、該方法は、
1)質量比(a)/(b)が60/40と80/20の間に含まれ、(a)の量が組成物の重量全体の2.5乾燥重量%と5.0乾燥重量%の間に含まれる二つの共重合体(a)および(b)の水分散液を用いて、ブレードミキサーの中で活性成分をコーディングする過程と、
2)1)で得られた顆粒を粉砕する過程と、
3)3.5%以下の残留湿度が得られるまで、2)で得られた顆粒を乾燥させる過程と、
4)質量比(a)/(b)が60/40と80/20の間に含まれ、(a)の量が組成物の重量全体の2.5乾燥重量%と5.0乾燥重量%の間に含まれる、二つの共重合体(a)および(b)の水分散液を噴霧することで、3)で得られた乾燥顆粒を空気流動層でコーティングする過程と、
5)3.5%以下の残留湿度が得られるまで、4)で得られたコーティングされた顆粒を乾燥させる過程と、
6)乾燥した顆粒を大きさ別に分類し、均等にする過程、
を含むことを特徴としている。
【0041】
本発明の方法の根本的な特徴は、溶媒として水のみを用いるということに存している。このことによって、前記方法の実施が容易になり、製造時に、有機溶媒の利用に関連する潜在的な危険から操作者が保護される。
【0042】
したがって、本発明の方法は二つの主要な過程1)および4)を伴う。活性成分の粒子をこのように二重にコーティングすることによって、前記活性成分の放出特性が調整される。
【0043】
「コーティング」とは、本発明の意味では、とりわけ活性物質を含む粒子にフィルム形成剤の層を堆積させることを意味する。
【0044】
過程1)〜3)によって第一の顆粒を得ることが可能となり、該第一の顆粒は、過程3)の最後における混合物の残留湿度が約3.5%以下であり、好ましくは約2.5%と約3.5%の間に含まれることを特徴としている。好適には、過程1)の間に用いられるミキサーはFIELDER(登録商標)タイプのミキサーまたは当業者に知られている同等のものである。本発明のある特定の実施態様では、粉砕する過程2)は、網目のサイズが所望の特性に応じて決定される格子を備えた、振動造粒機で行われる。続く乾燥過程は、当業者に知られたさまざまな仕方で実施することができ、より詳細には乾燥は空気流動層で実施される。
【0045】
過程4)および5)によって、第二の顆粒を得ることが可能になり、該第二の顆粒は、過程5)の最後で混合物の残留湿度が約3.5%以下であり、好ましくは約2.5%と約3.5%の間に含まれることを特徴としている。
【0046】
好適には、大きさ別の分類6)は、網目のサイズが所望の特性に応じて決定される格子を備えた、振動造粒機で実施される。
【0047】
たとえば、内服用懸濁液またはシロップ用に、過程6)の最後に得られた顆粒を直接調整し、粉末の形にすることも考えられる。
【0048】
本発明のある特定の実施態様では、過程6)の最後に得られた顆粒は潤滑剤を施される。したがって大きさ別の分類の後、振動造粒機に、薬学および栄養補助の分野で一般的に利用されている潤滑剤の中から選択された少なくとも一つの潤滑物質が導入され、より詳細には、潤滑物質はタルクとジベヘン酸グリセロールの混合物である。
【0049】
こうして、これら上記の顆粒を、たとえば錠剤、ゼラチン質カプセルまたはトローチの形状に調整することが考えられる。この場合、錠剤またはトローチを得るために、これら同一の顆粒を圧縮する追加の過程が必要となる.
【0050】
本発明のある特定の実施態様では、共重合体(a)および(b)の質量比(a)/(b)は、本発明による方法の過程1)の間と過程4)の間で同一である。
【0051】
また、本発明の方法の過程4)を複数回、連続して実施し、「複数層」のシステム、つまり、過程1)〜過程3)による活性成分の顆粒と、過程4)による一連の層で構成されたシステムを得ることも考えることができる。このシステムは、求められる活性成分の放出特性に応じて用いられるものである。
【0052】
以下の実施例は非限定的な例示として示される。
【実施例1】
【0053】
硫酸鉄をベースとする本発明による薬学的組成物。
【0054】
【表1】

【実施例2】
【0055】
組成物が実施例1で与えられている錠剤を調製するための、本発明による方法の実施態様。
【0056】
A)乾燥混合。
FIELDER(登録商標)ミキサーに、
−硫酸鉄、
−マルトデキストリン、
−微結晶セルロース、
を導入し、均質な混合物を得るために低速で10分間混合する。
【0057】
B)コーティング用懸濁液の調製。
十分な容量のある容器に、
−Eudragit RS30D(登録商標)/Eudragit RL30D(登録商標)の質量比が約65/35に等しく、網目のサイズが0.4mmのふるいに前もって通してある、64%のEudragit(登録商標)混合物と、
−クエン酸トリエチル(錠剤あたりの乾燥重量でEudragit(登録商標)の量の20%)、
を導入し、10分間にわたって、穏やかなブレードスピードで攪拌して混合する。
【0058】
C)コーティング。
懸濁液B)を用いて混合物A)のコーティングを実施する。
−内部の相のコーティング時間=およそ20分。
必要な場合には、顆粒にするのに適した塊が得られるまで精製された水を用いてコーティングを完了する。
【0059】
D)粉砕。
網目のサイズが3.15mmの格子を備えた振動造粒機で湿った塊を粉砕する。
【0060】
E)乾燥。
2.5%と3.5%の間に含まれる乾燥顆粒の残留湿度が得られるまで、粉砕された顆粒を空気流動層で乾燥させる。
【0061】
F)大きさ別の分類。
E)の乾燥顆粒を、網目のサイズが1.5mmの格子を備えた振動造粒機で大きさ別に分類する。
【0062】
G)空気流動層でコーティングするための懸濁液の調製。
十分な容量を持つ容器に、
−Eudragit RS30D(登録商標)/Eudragit RL30D(登録商標)の質量比が約65/35に等しく、網目のサイズが0.4mmのふるいに事前にかけられている、36%のEudragit(登録商標)混合物を導入し、
Eudragit(登録商標)の懸濁液を撹拌し、そして、
−タルク、
−クエン酸トリエチル(錠剤あたりの乾燥重量でEudragit(登録商標)の量の20%)、
を導入し、完全な均一性が得られるまで撹拌状態で置いておく。
【0063】
H)空気流動層での顆粒のコーティング。
空気流動層の漕に、F)で得られた、乾燥され、大きさ別に分類された顆粒を導入する。
G)で調製されたコーティング用懸濁液(コーティングの時間全体にわたって撹拌状態で維持されている)を、
−挿入される空気の温度:40℃、
−霧化圧力:2バール、
−噴霧流量:30グラム/分、
−噴霧ノズルの直径:1.2mm、
というパラメータにしたがって顆粒に噴霧する。
2.5%と3.5%の間に含まれる、コーティングされた顆粒の残留湿度が得られるまで、空気流動層で先にコーティングされた顆粒を乾燥させる。
【0064】
I)大きさ別の分類。
網目のサイズが1.5mmの格子を備えた振動造粒機で、コーティングされた顆粒の大きさ別の分類を実施する。
【0065】
J)潤滑。
大きさ別の分類の最後に、網目のサイズが1.5mmの格子を備えた振動造粒機に、
−タルク、
−ジベヘン酸グリセロールを導入し、
25分間混合する。
こうして得られた粒度のレベルは、
顆粒の100%<1.5mm、
顆粒の30%>0.71mm、
顆粒の50%<0.355mmであり、
平均直径は0.25mmと0.355mmの間に含まれている。
【0066】
K)圧縮。
打ち抜き器D9 R9を備えた回転プレス上で潤滑剤を施された顆粒を圧縮する。
【0067】
医薬品製造学的パラメータ。
−平均硬度(PTB301タイプのPharmatest(登録商標)で実施した測定):63N(最大:71N、最小:51N)、
−脆弱度:100回転(0.14%)(現行の欧州薬局方のモノグラフ2.9.7にしたがった錠剤の脆弱性試験)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1にしたがって調製された二つのロットG93(△)とG94(▲)、ムコプロテオースを伴うTARDYFERON(登録商標)の二つのロットG6406(●)とG6372(●)について、時間経過に応じた硫酸鉄の溶解パーセントを示す図である。
【図2】本発明の実施例1にしたがって調製された二つのロットについて、第二鉄に関する36ヶ月間で得られた安定性の結果を概略的に示す図である。
【図3】本発明の実施例1にしたがって調製された二つのロットについて、鉄全体に関する36ヶ月間で得られた安定性の結果を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分の放出時間が長い、少なくとも一つのコーティングされた顆粒を含む薬学的組成物または栄養補助組成物であり、前記コーティングされた顆粒が、少なくとも二つのコーティング材でコーティングされた、前記活性成分を含んだ粒子で構成されている組成物であって、該二つのコーティング材が賦形剤の組み合わせを含み、該組み合わせが、
−モル・パーセントで8%以下の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの少なくとも一つの共重合体(a)と、
−モル・パーセントで8%超の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの第二の共重合体(b)との組み合わせで構成され、
−質量比(a)/(b)が60/40と80/20の間に含まれ、
−そして、(a)の量が、組成物の重量全体の2.5乾燥重量%と5.0乾燥重量%の間に含まれることを特徴とする組成物。
【請求項2】
活性成分が、単独または混合で用いられる、抗うつ剤、解熱剤、ビタミン剤、抗炎症剤、ミネラルおよび微量要素で構成されるグループから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
活性成分が、塩または錯体の形をした鉄(II)または鉄(III)の供給源であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
鉄の塩が、硫酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、グリセロリン酸塩およびフェレデテートで構成されるグループから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
鉄の錯体が、鉄−デキストラン錯体、鉄−ポリマルトース錯体および鉄−タンパク質錯体で構成されるグループから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
活性成分の供給源が硫酸鉄であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
抗酸化剤を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
共重合体(a)における第4級アンモニウム基のモル・パーセントが2%と8%の間に含まれ、好ましくは5%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
共重合体(a)がEudragit RS30D(登録商標)であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
共重合体(b)における第4級アンモニウム基のモル・パーセントが8%と12%の間に含まれ、好ましくは10%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
共重合体(b)がEudragit RL30D(登録商標)であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
最終的な組成物中の質量比(a)/(b)が70/30であり、好ましくは65/35であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
共重合体(a)の量が、組成物の重量全体の3.5乾燥重量%と4.0乾燥重量%の間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
賦形剤の組み合わせが、単独または混合で用いられる、希釈剤、結合剤、潤滑剤、凝結防止剤、可塑剤を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
可塑剤が、単独または混合で用いられる、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、アセチル化脂肪酸グリセリド、ヒマシ油、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、グリセリルトリアセテート、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン共重合体、プロピレングリコール、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチルで形成されるグループから選択され、好ましくはクエン酸トリエチルであることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
希釈剤がセルロースおよびラクトースで形成されるグループから選択され、好ましくはセルロースであることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
結合剤がマルトデキストリンおよびポビドンで形成されるグループから選択され、好ましくはマルトデキストリンであることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
活性成分の放出時間が長い、薬学的製品または栄養補助製品を調製するための、請求項1〜請求項17のいずれか一つに記載の組成物の利用法。
【請求項19】
ミネラルおよび微量要素の欠乏の治療および/または予防を目的とする薬学的製品、栄養補助製品、美容製品または獣医学的製品を調製するための、請求項1〜請求項17のいずれか一つに記載の組成物の利用法。
【請求項20】
薬学的調製物、栄養補助調製物、美容調製物または獣医学的調製物が経口用の形状をしていることを特徴とする、請求項18に記載の利用法。
【請求項21】
経口用の形状が、錠剤、ゼラチン質カプセル、カプセル、トローチ、内服用懸濁液およびシロップにするための粉末から選択されることを特徴とする、請求項20に記載の利用法。
【請求項22】
貧血症を伴うまたは伴わない鉄欠乏の治療および/または予防を目的とした医薬品を調製するための、請求項3〜請求項17のいずれか一つに記載の組成物の利用法。
【請求項23】
鉄分欠乏による貧血症の治療および/または予防を目的とした医薬品を調製するための、請求項3〜請求項17のいずれか一つに記載の組成物の利用法。
【請求項24】
食事による十分な鉄の供給が保証できないときに、妊娠中の女性の鉄分欠乏を治療および/または予防することを目的とした医薬品を調製するための、請求項3〜請求項17のいずれか一つに記載の組成物の利用法。
【請求項25】
請求項1〜請求項17のいずれか一つに記載の薬学的組成物または栄養補助組成物の調製方法であり、
1)質量比(a)/(b)が60/40と80/20の間に含まれ、(a)の量が組成物の重量全体の2.5乾燥重量%と5.0乾燥重量%の間に含まれる二つの共重合体(a)および(b)の水分散液を用いて、ブレードミキサーの中で活性成分をコーティングする過程と、
2)1)で得られた顆粒を粉砕する過程と、
3)2)で得られた顆粒を乾燥させる過程と、
4)質量比(a)/(b)が60/40と80/20の間に含まれ、(a)の量が組成物の重量全体の3.5乾燥重量%と5.0乾燥重量%の間に含まれる二つの共重合体(a)および(b)の水分散液の噴霧によって、3)で得られた乾燥顆粒を空気流動層でコーティングする過程と、
5)4)で得られたコーティングされた顆粒を乾燥させる過程、
を含んでいることを特徴とする方法。
【請求項26】
有機溶媒を介在させないことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
過程1)および過程4)での質量比(a)/(b)が同一であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
得られた顆粒を直接調整して、内服用懸濁液またはシロップ用の粉末状にすることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
錠剤、ゼラチン質カプセルおよびトローチを得るために、顆粒に潤滑剤を施す追加の過程を含むことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
錠剤およびトローチを得るための、顆粒を圧縮する追加の過程を含むことを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
過程4)が複数回、連続して実施されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−517445(P2009−517445A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542790(P2008−542790)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002577
【国際公開番号】WO2007/063200
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(504249145)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE MEDICAMENT
【Fターム(参考)】