活性成分を制御放出するための自己沈澱製剤
本発明は、少なくとも一つの活性成分(AP)を数日または数週間の持続期間にわたって放出するための新規の製剤に関するものである。
本発明は、第1態様において、少なくとも一つの活性成分(AP)とポリマー(PO)のコロイド粒子を基にした水性懸濁液とを備える液体製剤に関するものであり、前記製剤は、以下の4つの条件:
(a)ポリマー(PO)が、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸であり、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよいこと、
(b)前記製剤のpHのpHf値が、3.0〜6.5の間であること;
(c)前記pHf値にて、ポリマー(PO)が、活性成分(AP)と自発的に非共有で会合しているコロイド溶液を形成すること;
(d)1mlの前記製剤が、体積1mlのテスト緩衝溶液Tpと混合する間に沈殿すること、
を満たす。
本発明はまた、かかる製剤を調製する方法と、かかる製剤を含む薬剤を調製する方法とに関するものである。
本発明は、第1態様において、少なくとも一つの活性成分(AP)とポリマー(PO)のコロイド粒子を基にした水性懸濁液とを備える液体製剤に関するものであり、前記製剤は、以下の4つの条件:
(a)ポリマー(PO)が、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸であり、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよいこと、
(b)前記製剤のpHのpHf値が、3.0〜6.5の間であること;
(c)前記pHf値にて、ポリマー(PO)が、活性成分(AP)と自発的に非共有で会合しているコロイド溶液を形成すること;
(d)1mlの前記製剤が、体積1mlのテスト緩衝溶液Tpと混合する間に沈殿すること、
を満たす。
本発明はまた、かかる製剤を調製する方法と、かかる製剤を含む薬剤を調製する方法とに関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ又は複数の活性成分(AP)、とくに一つ又は複数のタンパク質およびペプチド活性成分を持続放出する新規の製剤に関するものである。また、本願は、これらの製剤の用途または使用、とくに治療用途または使用に関するものである。これらの活性製剤は、ヒトの治療および動物の治療の両方に関するものである。
【0002】
本明細書を通して用いるAPは、少なくとも一つの活性成分を示す。
【背景技術】
【0003】
薬剤AP、とくに治療用ペプチド/タンパク質の持続放出の分野において、その目的は、多くが、患者に可能な限り健康体において観測される値に近い血漿ペプチドまたはタンパク質血漿濃度を再現することである。
【0004】
この目的は、血漿におけるタンパク質の短い寿命に抵触し、これによって、治療用タンパク質の反復投与を導く。その結果として、治療用タンパク質の血漿濃度は、高濃度ピークおよび最低濃度によって特徴づけられるプロファイルを示す。濃度ピークは、健康体における基本濃度よりずっと高く、サイトカイン等の治療用タンパク質の高毒性のために非常に有害である。さらに、最低濃度は、治療効果を与えるのに必要な濃度より低く、その結果、患者に対して低い治療範囲および長期間の重篤な副作用をもたらす。
【0005】
したがって、治療に対して理想的な値に近い治療用タンパク質の血漿濃度を患者において再現するため、製剤は、時間と共に血漿濃度の変動を制限するように、持続時間にわたって治療用タンパク質を放出できるようにすることが重要である。
【0006】
さらに、この活性製剤は、好ましくは、当業者には既知である以下の要件を満たすべきである。
1.活性および非変性治療用プロテイン、例えば、ヒトタンパク質または合成タンパク質を持続放出し、血漿濃度を治療用の濃度に維持すること
2.容易に注入可能とするのに十分に低い注射での粘度
3.優れた毒性・耐性プロファイルを示す生体適合性および生分解性
【0007】
これらの目的を達成する試みにおいて、従来技術において提示された最良のアプローチの一つは、治療用タンパク質を有するナノ粒子の比較的非粘性の液体懸濁液から成る治療用タンパク質の持続放出形態を開発することであった。これらの懸濁液によって、天然の治療用タンパク質を簡単に投与することが可能になる。
【0008】
このようにして、フラメル・テクノロジーズは、治療用タンパク質が、疎水基および親水基を有するコポリアミノ酸のナノ粒子と会合する手段を提供してきた。
【0009】
米国特許出願公開第2006/0099264号明細書(特許文献1)は、アスパラギン酸残基および/またはグルタミン酸残基を備える両親媒性ポリアミノ酸を開示し、これらの残基の少なくとも一部は、例えば、少なくとも一つのα−トコフェロール残基を有するグラフトを持つ(合成もしくは天然由来のα−トコフェロールとグラフトしたポリグルタミン酸塩またはポリアスパラギン酸塩)。これらの「疎水的に変性された」ホモポリアミノ酸は、pH7.4の水性懸濁液において少なくとも一つの活性タンパク質(インスリン)と容易に会合することができるナノ粒子のコロイド懸濁液を水中で自発的に形成する。
【0010】
特許文献1に記載の懸濁液によって「ベクトル化した」一つ又は複数の活性タンパク質(例えばインスリン)の生体内での放出時間は、長くなることによって効果が上がる。
【0011】
放出時間の増加は、とくに国際公開第05/051416号(特許文献2)に記載の製剤によって部分的に得られた。この出願は、皮下注射後、内因性アルブミンに接触してその患者のインサイチューでゲルを形成するような濃度で注射される疎水的に変性したポリ(L−グルタミン酸ナトリウム)のナノ粒子(0.001〜0.5μm)のコロイド懸濁液を開示する。タンパク質は、その後、1週間の標準的な期間をかけてゆっくりと放出される。しかしながら、投与される治療用タンパク質の濃度が比較的高い場合、例えばヒト成長ホルモンのような場合には、放出時間が数日に限定される。
【0012】
これらの製剤の放出時間は、さらに長くなることで効果が上がる。
【0013】
皮下注射後の生体内でのAPの放出時間を長くするために提示された別の経路は、注射温度では液体であるが、温度が37℃に上昇するとゲルを形成する製剤を使用するものである。
【0014】
国際公開第99/18142号(特許文献3)および国際公開第00/18821号(特許文献4)は、とくに注射によって温血動物に投与でき、また、生理的温度がゲル化温度より高いため生体内でゲル化した沈殿物を形成するポリマーを溶解状態又はコロイド状態で備えるAPの水溶液に関するものである。このようにして形成されるゲルは、持続的にAPを放出する。これらの特定の生分解性ポリマーは、ABAまたはBABのトリブロックであり、ここで、A=ポリ乳酸−co−グリコール酸(PLAGA)又はポリ乳酸(PLA)であり、B=ポリエチレングリコールである。これらトリブロックポリマーの液体からゲルへの転移温度は、例えば、36℃、34℃、30℃および26℃である。米国特許第6143314号明細書(特許文献5)に記載の類似のポリマー(A)は、これらABAまたはBABのトリブロックポリマーの生体内での加水分解によって、局所的に十分な耐性がない酸をもたらす。
【0015】
国際出願第PCT/FR2006/002443号(特許文献6)は、本出願人によるものであり、ヒスチジン誘導体および疎水基によって変性されたポリグルタミン酸塩およびそれらの用途を開示する。
【0016】
とくに、この出願は、ポリマーが酸性のpHで可溶であり、中性のpHで沈殿することを開示する。これにより、治療用タンパク質等の活性成分を放出するための製剤の調製が可能となる。
【0017】
かかるポリマーを用いて持続放出するための自己沈澱水性液体製剤の開発との関連で、予想外にも、厳しい要件を満たす製剤がある特定の条件下でしか得られないことを見出した。
【0018】
例えば、特許文献6に記載のポリマーpGluHisOEt α−トコフェロールは、pH5.5で処方され、45mg/mlのポリマーを備えるが、期待される結果につながらない。
【0019】
出願人の長期にわたる研究は、i)自己沈澱システムの要件を満たす陽イオン性ポリマー(PO)を備える製剤、及びii)かかる製剤を選択するための特定の条件の識別に至った。これらのポリマー(PO)は、特許文献6に記載のポリマーまたは陽イオン基を有し且つ疎水基を有する新規なポリマーの群のいずれか一方から選択できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第2006/0099264号明細書
【特許文献2】国際公開第05/051416号
【特許文献3】国際公開第99/18142号
【特許文献4】国際公開第00/18821号
【特許文献5】米国特許第6143314号
【特許文献6】国際出願第PCT/FR2006/002443号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的の一つは、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾され、活性成分(AP)を持ち、数日または数週間の持続期間を通して活性成分(AP)を放出するポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の液体製剤を提供することであり、該製剤は活性成分(AP)を持ち、該製剤の組成および濃度によって、活性成分の放出時間を皮下投与に対して最適化することができる。
【0023】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の液体製剤を提供することであり、該製剤は活性成分を持ち、製剤の組成は、活性成分(AP)の放出を数日または数週間にわたって可能とするようなものであり、ポリマーは可能な限り低い濃度である。
【0024】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の液体製剤を提供することであり、該製剤は活性成分(AP)を持ち、該製剤の組成および濃度によって、細い針を通して簡単に注入することができる。
【0025】
本発明の他の目的は、水溶液中で安定な疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の液体製剤を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、凍結乾燥された形態で貯蔵することができる疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、凍結乾燥後に容易に再分散させることのできる疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することであり、該製剤は活性成分(AP)を持ち、ここで、該製剤は、凍結乾燥された形態で安定である。
【0029】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することであり、ここで、該製剤は、その生物活性に影響を与えることなくタンパク質を放出する。
【0030】
本発明の他の目的は、活性成分(AP)を持続放出するための固体製剤、特に、例えば吸入および肺内投与のための乾燥粉末の形態で提供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための製剤を調製する新規の方法を提供することであり、この製剤は、とくに上述した製剤の内の一つである。
【0032】
本発明の他の目的は、これらの製剤を用いた薬剤を調製するための新規の方法を提供することである。
【0033】
長期にわたる広範囲の調査の後、出願人は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく製剤が治療用タンパク質およびペプチドの持続放出を最適化することを見出した。
【0034】
したがって、本発明は、第一に、例えば非経口経路を介して、容易に注入することができる少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための水性製剤に関するものであり、該製剤は、少なくとも一つの活性成分(AP)と、ポリマー(PO)又はその製剤可能な塩のコロイド粒子に基づく水性懸濁液とを備えてなり、ここで、前記製剤は、以下の4つの条件:
(a)ポリマー(PO)が、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸であり、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、前記中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であること;
(b)前記製剤のpH値(pHf)が、3.0〜6.5の間であること;
(c)pHfにて、ポリマー(PO)が、活性成分(AP)と自発的に非共有で会合しているコロイド溶液を形成すること;
(d)1mlの前記製剤が、体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿すること;
を満たす。
【0035】
好ましくは、かかる製剤は、200より大きい、好ましくは400より大きい、好ましくは800より大きい、さらに好ましくは1500より大きい沈殿因子PFを示す。
【0036】
また、本発明は、例えば非経口経路を介して、容易に注入することができる少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための水性液体製剤に関するものであり、該製剤は、少なくとも一つの活性成分(AP)と、ポリマー(PO)又はその製剤可能な塩のコロイド粒子に基づく水性懸濁液とを備えてなり、ここで、該製剤は、以下の4つの条件:
(a)ポリマー(PO)が、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸であり、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、該中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であること;
(b)前記製剤のpH値(pHf)が、3.0〜6.5の間であること;
(c)pHfにて、ポリマー(PO)が、活性成分(AP)と自発的に非共有で会合しているコロイド溶液を形成すること;
(d)前記製剤が、200より大きい、好ましくは400より大きい、好ましくは800より大きい、さらに好ましくは1500より大きい沈殿因子PFを示すこと;
を満たす。
【0037】
更に、この製剤は、好ましくは5より大きい、好ましくは10より大きい、好ましくは15より大きい、さらに好ましくは20より大きい保持因子RQを示す。
【0038】
ポリマーの所定の濃度については、活性因子(AP)の放出速度が、ポリマーの組成、すなわち陽イオン基、疎水性サイドグラフト部、並びに任意には中性基およびグルタミン酸塩基のそれぞれのモル分率に大きく依存する。
【0039】
また、本発明は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための製剤を調製する方法に関するものであり、この製剤は、特に上述の製剤であり、該方法は、
1)3〜6.5の間のpH値で、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸ポリマー(PO)の水性コロイド溶液を準備する工程であって、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、該中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であり;
陽イオン基(CG)、疎水基(GH)、任意の中性基(NG)および任意のグルタミン酸塩の各モル分率は、1mlの前記製剤が体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿するほどである工程と;
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を工程1において得られたポリマー(PO)に加える工程であって、前記活性成分が前記ポリマーのコロイド溶液の粒子と非共有で会合している工程と、
を備えてなり、前記製剤の最終的な治療上での使用の直前(例えば30分前)に前記活性成分を加える工程を行うことができる。
【0040】
また、本発明は、特に、非経口、粘膜、皮下、筋内、皮内、経皮、腹腔内もしくは大脳内投与用、または腫瘍への投与用、或いは経口、経鼻、肺、膣もしくは眼球経路による投与用の薬剤を調製する方法に関するものであり、前記方法は、ここに記載される少なくとも一つの製剤を用いることから本質的になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】例2.1(黒三角)、例2.3(黒菱形)、例3(黒四角)および例5(実線)に記載される製剤からのIFN−αの生体外での放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
本明細書において、「陽イオン基」という用語は、一つもしくはそれ以上のアミノ基又は一つもしくはそれ以上の第4級アンモニウムを備えるグルタミン酸基に共有結合している基を意味すると理解される。アミノ官能基の場合、該基は、主にそのpKa以下のどんなpHでもイオン化し、第4級アンモニウムの場合には、該基がどんなpHでもイオン化している。他に特に規定がなければ、アルキルラジカルは、1〜10の炭素原子を示す。
【0043】
本明細書において、「中性基」という用語は、3〜10の間のいずれのpHにおいても電荷を帯びない基を意味すると理解され、例えば、グルタミン酸残基のカルボキシル基でのエタノールアミノ、アルキレングリコール又はポリアルキレングリコールとの縮合によって得られる基が挙げられる。
【0044】
本発明に係るポリマーの「製剤可能な塩」という用語は、ポリマーのイオン化した官能基と会合した対イオンを持つ全てのポリマーを包含すると理解される。
【0045】
本明細書において、「溶液」という用語は、個々の鎖の形で溶媒とポリマーとの均一な溶液を意味すると理解される。
【0046】
本明細書において、「コロイド溶液」という用語は、T'テストで測定したときにその平均径が0.5μm未満か又はそれに等しい粒子の懸濁液を意味すると理解される。
【0047】
本明細書において、(例えば、非経口経路により)「容易に注入可能な製剤」という用語は、20℃での動的粘度が1000mPa.s.未満か又はそれに等しい製剤を意味すると理解される。好ましくは、20℃で測定した該製剤の動的粘度は、1000s−1のせん断勾配に対して、好ましくは500mPa.s.未満か又はそれに等しく、好ましくは2〜200mPa.s.の間であり、例えば1.0〜100mPa.s.の間であり、実際には1.0〜50mPa.s.の間である。
【0048】
本明細書において、「小分子」という用語は、分子量が1kDa未満の分子、特には非タンパク性分子を意味すると理解される。
【0049】
本明細書において、「pHf」という用語は、本発明に従う製剤のpHを意味すると理解される。
【0050】
本明細書において、「pH*」という用語は、Pテストを用いて測定されるポリマーPOに基づく製剤の沈澱のpHを意味すると理解される。
【0051】
500nmにて吸光度を測定することによって沈澱pH*のpHを測定するためのPテスト
0.15Mの塩化ナトリウムを含む1又は2mg/mlのポリマーPO濃縮液を、酢酸又は1Mの水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpH4にし、24時間攪拌しながら置いておく。その後、この溶液を0.8〜0.2μmフィルタに通して濾過する。次いで、この溶液を0.1Mの水酸化ナトリウム溶液で滴定し、ポリマーPO溶液の500nmでの吸光度の変化を、Perkin−Elmer Lambda 35UV Spectrometerタイプの装置を用いて、前記溶液のpHの関数として記録する。沈澱のpH(pH*)は、吸光度が急激に増加して1より大きな値に到達するときのpHの値に相当する。
【0052】
本明細書において、「テスト緩衝溶液Tp」という用語は、30mg/gウシアルブミン画分V(Aldrich)、0.01Mのリン酸緩衝液、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム(AldrichのPBS)および0.015Mの酢酸アンモニウム(Aldrich)を備える水性媒体を意味すると理解される。
【0053】
本明細書において、「Δn」という用語は、ポリマーPO 1mgを備えるコロイド溶液0.5mlをpHfからpH*にするのに必要な水酸化ナトリウムのモル数を意味すると理解され、前記数は、従来の酸/塩基滴定法TMによって得られる。
【0054】
0.15Mの塩化ナトリウムを含む2mg/mlに濃縮された高分子電解質の溶液を酢酸又は1Mの水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpH4にする。その後、この溶液を0.05Mの水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pHの変化を、加えた水酸化ナトリウムの量の関数として記録する。Δnの測定は、pHfからpH*にpHを変化させるのに必要な水酸化ナトリウムの量を単純に読み取ることで行われる。
【0055】
本明細書において、生理学的pHは、例えば、7.2±0.4に等しいと定義される。
【0056】
本明細書において、「高分子電解質」という用語は、水中でイオン化することが可能な基を有するポリマーであって、該ポリマー上で電荷を生成するポリマーを意味すると理解される。
【0057】
保持因子RQを測定するためのQテスト
本発明に従う体積Vの製剤は、すぐに投与できる状態にあり、25℃にて200μlのラット血清プールに加えられる。そのナノ粒子が沈殿した後、浮遊物中の遊離タンパク質濃度をELISAテストによって測定する。
体積Vの値を増大させるために同じテストを繰り返すことによって、製剤の体積のV*値を決定でき、該V*値では、浮遊物中の遊離タンパク質のモル分率が10%より大きくなることが認められている
保持因子RQは、200μlラット血清に対する体積V*の比によって与えられる。
例えば、V*=1mlに対して、RQ=5である。
【0058】
ポリマーPOコロイド溶液の粒子の大きさを評価するため、T'テストを用いることが好ましい。T'テストの結果は、平均流体力学的直径である。
【0059】
準弾性光散乱によってナノ粒子の大きさを測定するためのT'テスト
本発明に従うポリマーの粒子の平均流体力学的直径は、以下に規定される手法Mdに従って測定される。
0.15MのNaCl媒体中、ポリマー溶液を1または2mg/mlの濃度で準備し、24時間攪拌して置いておく。その次に、これらの溶液を0.8〜0.2μmのフィルタに通して濾過した後、波長632.8nmの垂直に偏光したHe−Neレーザービームで動作するMalvern Compact Goniometer System型の装置を用いた動的光散乱において分析する。ポリマーナノ粒子の流体力学的直径は、「Surfactant Science Series」,第22巻,Surfactant Solutions,編集R.Zana,第3章,M.Dekker,1984の研究に説明されるように、キュムラント法による電界の自己相関関数から算出される。
【0060】
本明細書において、「ナノ粒子」という用語は、T'テストに従って平均直径が2〜500nmの間である粒子を表現する。
【0061】
活性成分の放出を測定するためのLテスト
30mg/gのウシアルブミン画分V(Aldrich)、0.01Mのリン酸緩衝液、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム(AldrichのPBS)および0.015Mの酢酸アンモニウム(Aldrich)を備えた流量2.83ml/hの水性媒体によって水浴したポリウレタン/ポリエーテル(PU−PE)発泡体からなる辺長1.5cmの立方体中に、50μlの製剤を注入する。サンプルは、連続相から定期的に回収され、そのサンプルのタンパク質含有量をELISAによって分析する。
【0062】
次いで、課された流速で測定した濃度を分けてタンパク質の流量と、回収された各サンプルについて測定した値を加算することで放出されたタンパク質の全重量とをプロットすることができる。
【0063】
本発明の意義の範囲内で、「タンパク質」という用語は、タンパク質またはペプチドを意味し、ペプチドはオリゴペプチドであろうとポリペプチドであろうと問わない。このタンパク質またはこのペプチドは、例えば一つまたはそれ以上のポリオキシエチレン基をグラフトすることによって変性してもよいし、変性しなくてもよい。
【0064】
本明細書において、「を有する(to carry)」という表現は、有される基がペンダントであり(又は垂れ下がっており)、すなわち、前記基がグルタミン酸残基に関する側基であり、それを有するグルタミン酸残基のγ位におけるカルボニル官能基の置換基である。
【0065】
また、本発明のポリグルタミン酸塩は、陽イオン基を有する。この基は、好ましくはアミド又はエステル結合を介してグルタミン酸基にグラフト又は結合する。
【0066】
ポリマー(PO)は、pGlu(x)GH(y)CG(z)NG(1−x−y−z)の構造を示すことが好ましく、合計の重合度(DP)が50〜300の間、好ましくは100〜250の間、更に好ましくは150〜250の間である。
【0067】
本発明の代替の態様によれば、陽イオン基(CG)は、半中和pHが7.0未満の弱塩基から選択できる。
【0068】
かかる陽イオン基(CG)は、例えば、ヒスチジンエステル、好ましくはそのメチルエステル及びそのエチルエステル、ヒスチジノール、ヒスタミン、ヒスチジンアミド、ヒスチジンアミドのN−モノメチル誘導体及びヒスチジンアミドのN,N'−ジメチル誘導体から成る群から選択されたヒスチジン誘導体から得られる。
【0069】
この場合、x、y及びzの値は、xが0〜45%の間、yが2〜30%の間、zが40〜98%の間、1−x−y−zが0〜50%の間となるようにすることができる。
【0070】
また、x、y及びzの値は、xが0〜45%の間、yが2〜30%の間、zが40〜60%の間、1−x−y−zが0〜58%の間となるようにすることもできる。
【0071】
また、x、y及びzの値は、xが0〜45%の間、yが15〜30%の間、zが40〜60%の間、1−x−y−zが0〜45%の間となるようにすることもできる。
【0072】
ポリマーPOが中性基(NO)を有していない場合、x、y及びzの値は、xが0〜45%の間、yが2〜30%の間、zが40〜98%の間となるようにすることができる。
【0073】
本発明の他の代替の態様によれば、陽イオン基(CG)は、少なくとも一つの第4級アンモニウム又は半中和pHが8.0より大きい少なくとも一つの強塩基を備えるものから選択できる。
【0074】
かかる陽イオン基(CG)は、以下に示す前駆体から得られることができる。
2〜6の炭素原子を有する直鎖ジアミン、好ましくはプトレッシン
アグマチン
酸素を介して結合したエタノールアミン
酸素を介して結合したコリン
側鎖が中性のpHにて正に帯電しているアミノ酸のエステル又はアミド誘導体、すなわち、α位のアミン官能基を介して結合したリシン、アルギニン又はオルニチン
【0075】
この場合、x、y及びzの値は、
xが、10〜55%の間であり、
yが、2〜30%の間であり、
zが、10%より大きいか又は等しく、(x−10)%と(x+15)%の間であり、
中性基の数が、100%に到達するための追加のパーセンテージに相当しており、任意には0に等しく
なるようにすることができる。
【0076】
また、x、y及びzの値は、
xが、20〜55%の間であり、
yが、2〜7.5%の間であり、
zが、20%より大きいか又は等しく、(x−10)%と(x+15)%の間であり、
中性基の数が、100%に到達するための追加のパーセンテージに相当しており、任意には0に等しく
なるようにすることもできる。
【0077】
また、xが10〜55%の間、yが2〜30%の間、zが10〜55%の間、1−x−y−zが0〜60%の間となるように、x、y及びzを選択することもできる。
【0078】
また、x、y及びzの値は、xが10〜20%の間、yが2〜30%の間、zが10〜30%の間、1−x−y−zが20〜78%の間となるようにすることもできる。
【0079】
また、x、y及びzの値は、xが10〜20%の間、yが15〜30%の間、zが10〜30%の間、1−x−y−zが20〜65%の間となるようにすることもできる。
【0080】
ポリマーPOが中性基(NO)を有していない場合、x、y及びzの値は、xが10〜55%の間、yが2〜30%の間、zが40〜60%の間となるようにすることができる。
【0081】
有利には、本発明に従うポリアミノ酸は、例えば、α−L−グルタミン酸塩又はα−L−グルタミン酸のホモポリマーである。
【0082】
本発明のグルタミン酸塩残基を官能基化するのに使用できる陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
・ヒスチジンエステル、好ましくはそのメチルエステル及びそのエチルエステル、ヒスチジノール、ヒスタミン、ヒスチジンアミド、ヒスチジンアミドのN−モノメチル誘導体及びヒスチジンアミドのN,N'−ジメチル誘導体からなる群から選択されるヒスチジン誘導体と一致するか、又は
・下記一般式:
【化1】
(式中:
X=O又はNH
Y=独立してH又はCH3
L=カルボキシル官能基又はその誘導体で任意に置換される直鎖(C2〜C6)アルキレン)を有する。
【0083】
従って、本発明に使用できる陽イオン基は、下記式:
−NH−(CH2)w−NH3+,Z−(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH2)4−NH−C(=NH)−NH3+,Z−、
−O−(CH2)2−NH3+,Z−、
−O−(CH2)2−N+(CH3)3,Z−、
下記式:
【化2】
(式中、−R1は、アルコキシ、好ましくは−OMeもしくは−OEtであるか、または−R1は、−NH2、アルキルアミノ、好ましくは−NH−CH3もしくは−N(CH3)2であり;−R13は、−(CH2)4−NH3+,Z−、−(CH2)3−NH−C(=NH)−NH3+,Z−、−(CH2)3−NH3+,Z−である)のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体、
の内の一つを有することができ、ここで、Z−は、塩化物、硫酸塩、リン酸塩又は酢酸塩であり、好ましくは塩化物である。
【0084】
例えば、陽イオン基は、下記式:
【化3】
(式中、−R1は、アルコキシ又はアルキルアミノ基、好ましくは−OMe、−OEt、−NH2、−NHCH3又は−N(CH3)2であり、−R2は、水素又は−CH2OHもしくは−C(=O)−R1である)を有することができる。
【0085】
好ましい実施形態によれば、本発明のポリアミノ酸は、平均して、ポリマー鎖につき少なくとも三つの疎水基(GH)を有する。
【0086】
有利には、疎水基GHの少なくとも一つが、疎水基GHをポリグルタミン酸塩鎖(例えば、ポリグルタミン酸塩骨格の主鎖)に結合できる少なくとも一つのスペーサー接続部(または残基)(スペーサー)を備える疎水性グラフト部中に含まれる。この接続部は、例えば、少なくとも一つの直接的な共有結合及び/又は少なくとも一つのアミド結合及び/又は少なくとも一つのエステル結合を備えることができる。例えば、接続部は、ポリグルタミン酸塩の構成単量体単位以外の「アミノ酸」残基、アミノアルコールの誘導体、ポリアミン(例えばジアミン)の誘導体、ポリオール(例えばジオール)の誘導体及びヒドロキシ酸の誘導体からなる群に属するタイプとすることができる。
【0087】
GHのポリグルタミン酸塩鎖へのグラフトは、ポリグルタミン酸塩鎖に結合できるGH前駆体の使用を含むことができる。
【0088】
GHの前駆体は、実際には限定されず、アルコール及びアミンからなる群から選択され、当業者によれば容易に官能基化される。
【0089】
好ましい実施形態によれば、疎水性グラフト部の疎水基GHは、8〜30個の炭素原子を有する。
【0090】
これらの疎水基(GH)は、有利に、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができる直鎖又は分岐C8〜C30アルキル、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができるC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル、並びに
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができるC8〜C30(多)環式化合物、
からなる群から慎重に選択される。
【0091】
GHと共に疎水性グラフト部を形成する接続部は、二価、三価又は四価の接続部(実際には五価又はそれ以上さえもある)とすることができる。二価の接続部の場合、疎水性グラフト部は単一のGH基を有するのに対し、三価の接続部は、疎水性グラフト部上に二分の性質を与え、すなわち、該グラフト部が二つのGH「腕」を示す。三価の接続部の例には、「アミノ酸」残基、例えば「グルタミン酸」、又はポリオール残基、例えばグリセロールが含まれる。従って、二分のGHを備える疎水性グラフト部の有利であるが非限定的な二つの例は、ジアルキルグリセロール及びグルタミン酸ジアルキルである。
【0092】
疎水基GHは、例えば、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロール、及びコレステロールよりなる群から選択される基に由来する。
【0093】
上述のように、中性基(NG)は、ヒドロキシエチルアミノ−ラジカル、ヒドロキシアルキルオキシ−ラジカル又はポリオキシアルキレンの基から選択できる。
【0094】
他の代替の態様によれば、本発明に用いるポリグルタミン酸塩はまた、グルタミン酸塩残基に結合したポリアルキレン(好ましくはポリエチレン)グリコール型のグラフト部を少なくとも一つ有することができる。
【0095】
好ましくは、本発明に従うポリグルタミン酸塩の骨格は、α−L−グルタミン酸塩及び/又はα−グルタミン酸残基を備える。
【0096】
更に好ましくは、本発明に用いるポリグルタミン酸塩が、下記式(I):
【化4】
(式(I)中、
・Aは、独立して、
NHR基(ここで、RはH、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルを示す)、
次式:
【化5】
(式中:
R7は、OH、OR9又はNHR10であり、
R8、R9及びR10は、独立して、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルである)の末端アミノ酸残基又は末端アミノ酸誘導体、
であり;
・Bは、直接結合、又は二価、三価もしくは四価の結合基であり、好ましくは−O−、−NH−、−N(C1〜C5アルキル)−、アミノ酸(好ましくは天然アミノ酸)残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基、アミノアルコール残基又は1〜6の炭素原子を有するヒドロキシ酸残基から選択され;
・Dは、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アシル基又はピログルタミン酸塩であり;
・疎水基(GH)は、それぞれが互いに独立して、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができる直鎖または分岐C8〜C30アルキル、又は
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができるC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル、又は
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができるC8〜C30(多)環式化合物、
から選択される基であり;
好ましくは、疎水基(GH)の少なくとも一つが、グラフトによって、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロール及びコレステロールからなる群から選択される前駆体から得られ、Bが直接結合を表し;
・R70は、
−NH−(CH2)w−NH3+(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH2)4−NH−C(=NH)−NH3+、
−O−(CH2)2−NH3+、
−O−(CH2)2−N+(CH3)3、
下記式:
【化6】
(式中、−R11は、−H、−CO2H、アルキルエステル(好ましくは−COOMe及び−COOEt)、−C(=O)−NH2、−C(=O)−NH−CH3又は−C(=O)−N(CH3)2である)のラジカル、
次式:
【化7】
(式中、Xは、−O−又は−NH−で、R12は、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルで、−R13は、−(CH2)4−NH3+、−(CH2)3NH−C(=NH)−NH3+、−(CH2)3NH3+である)のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体、
から選択される基であり、
R70基の対アニオンが、便宜の基であり、特に塩化物、硫酸塩、リン酸塩又は酢酸塩から選択され、好ましくは塩化物であり;
・R90は、ヒドロキシエチルアミノ−、ヒドロキシアルキルオキシ−、又はポリオキシアルキレンであり;
・p,q,r及びsは、正の整数であり;
・(p)/(p+q+r+s)は、疎水基GHのモルグラフト度として定義され、2〜30モル%の範囲であり、但し、各コポリマー鎖は、平均して、少なくとも三つの疎水性グラフト部を有しており;
・(q)/(p+q+r+s)は、陽イオン基のモルグラフト度として定義され、10〜98モル%の範囲であり;
・(p+q+r+s)は、50〜300の範囲であり、好ましくは100〜250の間であり;
・(r)/(p+q+r+s)は、0〜78モル%の範囲であり;
・(s)/(p+q+r+s)は、0〜55モル%の範囲である)を有し、また、その製剤可能な塩を包含する。
【0097】
更に、ヒスチジンに由来する式(I)のポリアミノ酸の調製及び合成に関する詳細に関しては、特許出願FR 05 53302を参照されたい。
更に、ヒスチジンに由来するもの以外の式(I)のポリアミノ酸の調製及び合成に関する詳細に関しては、仏国特許出願FR 07 03185を参照されたい。
【0098】
好ましくは、疎水基GH及び陽イオン基は、ペンダント(又は垂れ下がっている)基としてランダムに位置している。
【0099】
概して、上述の一般式(I)は、単にブロックコポリマーだけでなく、ランダムコポリマー又はマルチブロックコポリマーをも示すものとして解釈されるべきである。
【0100】
好ましくは、本発明に従う製剤中のポリマー(PO)の濃度は、特に活性成分(AP)が治療用タンパク質である場合、4〜50mg/mlの間とすることができる。この濃度の範囲内では、小口径の針、例えばゲージ27、更にはゲージ29の針によって、製剤を容易に注入することができる。例2、3及び4は、かかる製剤を詳細に説明する。
【0101】
好ましくは、本発明に従う製剤中のポリマー(PO)の濃度が、5〜30mg/mlの間とすることができ、更に好ましくは5〜15mg/mlの間である。
【0102】
有利には、活性成分(AP)濃度のポリマー(PO)濃度に対する比Rが、0.0001〜1.5の間とすることができる。また、この比Rは、0.01〜1.2の間とすることもできる。
【0103】
代替の態様によれば、本発明に従う製剤は、陽イオン基(CG)のモル濃度に対して、の二価の陽イオンZn++を0.05〜2モル当量の割合で備えることができる。
【0104】
特に、本発明に従う製剤は、陽イオン基(CG)のモル濃度に対して、追加された二価の陽イオンZn++を0.25〜0.75モル当量の割合で備えることができ、好ましくは0.5eqに等しく、更に好ましくは、陽イオン基(CG)が、ヒスチジンエステル、好ましくはそのメチルエステル及びそのエチルエステル、ヒスチジノール、ヒスタミン、ヒスチジンアミド、ヒスチジンアミドのN−モノメチル誘導体及びヒスチジンアミドのN,N'−ジメチル誘導体からなる群から選択されたヒスチジン誘導体から得られる場合である。
【0105】
他の代替の態様によれば、本発明に従う製剤は、追加される二価の陽イオンを備えていない。
【0106】
本発明に用いるポリマーは、2000〜200000g/molの間のモル質量を有し、好ましくは5000〜100000g/molの間である。
【0107】
本発明の特に好適な実施形態によれば、陽イオン基(CG)が半中和pHが7.0未満の弱塩基から選択される場合、本発明に用いるポリマー(PO)は、pGlu(x)GH(y)CG(z)NG(1−x−y−z)の構造を示し、xは0〜20%の間で、yは2〜30%の間で、zは60〜95%の間で、1−x−y−zは0〜15%の間となる。
【0108】
また、x、y及びzの値は、xが0〜20%の間、yが2〜10%の間、zが75〜95%の間、1−x−y−zが0〜15%の間となるようにすることもできる。
【0109】
また、x、y及びzの値は、xが0〜20%の間、yが15〜25%の間、zが60〜80%の間、1−x−y−zが0〜15%の間となるようにすることもできる。
【0110】
ポリマーPOが中性基(NG)を有していない場合、x、y及びzの値は、xが0〜20%の間、yが2〜30%の間、zが60〜95%の間となるようにすることができる。
【0111】
本発明の他の好適な実施態様によれば、陽イオン基(CG)が第4級アンモニウム又は半中和pHが8.0より大きい少なくとも一つの強塩基を含む群から選択される場合、x、y及びzの値は、xが10〜50%の間、yが2〜30%の間、zが15〜50%の間、1−x−y−zが10〜55%の間となるようにすることができる。
【0112】
また、x、y及びzの値は、xが15〜30%の間、yが2〜30%の間、zが15〜25%の間、1−x−y−zが40〜55%の間となるようにすることもできる。
【0113】
また、x、y及びzの値は、xが25〜50%の間、yが2〜30%の間、zが25〜50%の間、1−x−y−zが10〜30%の間となるようにすることもできる。
【0114】
ポリマーPOが中性基(NG)を有していない場合、x、y及びzの値は、xが10〜55%の間、yが2〜30%の間、zが40〜60%の間となるようにすることもできる。
【0115】
陽イオン電荷が過剰であるため、本発明に用いるポリマーPOは、陽イオン性であり、製剤のpHf値で可溶である。この電荷は、中性pHにて部分的又は完全に中和されるため、ポリマーが沈殿する。理論によって制限されるものではないが、pHの上昇により誘発されるこの沈殿現象は、製剤pHと生理学的pHの間でポリマーに対する全電荷の減少と、疎水性側基の存在とに起因すると思われる。
【0116】
変性ポリグルタミン酸塩の残りのカルボキシル官能基は、pH及び組成に応じて、中性(COOH形態)であるか又はイオン化されている(COO−陰イオン)と理解すべきである。そのため、i)グルタミン酸塩残基もしくはグルタミン酸の残基又はii)ポリグルタミン酸もしくはポリグルタミン酸塩という用語の双方を同じ意味で用いることができる。
【0117】
同様に、アミノ基は、主にそのpKaより下のどんなpHでもイオン化されることになり、また、第4級アンモニウムはどんなpHでもイオン化されることになる。
【0118】
水溶液中では、対カチオンは、ナトリウム、カルシウムもしくはマグネシウム等の金属陽イオン、又はトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンもしくはポリエチレンイミン等のポリアミン等の有機陽イオンとなり得る。それが二価である場合、対カチオンは、二つの閉鎖した一価の陰イオン基を塩化することができる。
【0119】
陽イオン基の対アニオンは、塩化物、硫酸塩、リン酸塩又は酢酸塩からなる群から選択されるのが好ましい。
【0120】
それが二価である場合、対アニオンは、二つの閉鎖した一価の陽イオン基を塩化することができる。
【0121】
本明細書において、本発明に従うポリマーの「製剤可能な塩」という用語は、ポリマーのイオン化した官能基と会合した対イオンを持つ全てのポリマーを含むと理解される。
【0122】
本発明に用いるのに適切なポリアミノ酸は、例えば、当業者に知られた法によって得られる。第一に、α型のポリアミノ酸を得るために最も広く用いられている技術は、例えば、論文「Biopolymers,1976,15,1869」及びH.R.Kricheldorfによる研究「alpha−Amino acid N−carboxy Anhydride and related Heterocycles」,Springer Verlag(1987)に記載されるように、N−カルボキシアミノ酸無水物(NCA)の重合に基づいている。NCA誘導体は、好ましくは、NCA−Glu−O−R3(R3=メチル、エチル又はベンジル)である。その後、ポリマーは、酸の形でポリマーを得るための適切な条件下で加水分解される。これらの方法は、出願人の特許FR−A−2 801 226にて与えられた説明によって引き出される。
【0123】
本発明に従って使用できるいくらかのポリマーは、例えば、様々な重量を有するポリ(α−L−グルタミン酸)、ポリ(α−D−グルタミン酸)、ポリ(α−D,L−グルタミン酸塩)及びポリ(γ−L−グルタミン酸)のタイプであり、商業的に入手できる。
【0124】
GHグラフト部のポリマーの酸性基とのカップリングは、カップリング剤としてのカルボジイミド及び任意の4−ジメチルアミノピリジン等の触媒の存在下、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)等の適切な溶媒中でのポリアミノ酸の反応によって容易に行われる。カルボジイミドは、例えば、ジシクロへキシルカルボジイミド又はジイソプロピルカルボジイミドである。グラフト度は、成分及び反応物質の化学量論又は反応時間によって化学的に制御される。「スペーサー」によって官能基化した疎水性グラフト部は、通常のペプチドカップリング又は酸性触媒による直接縮合によって得られる。
【0125】
カチオン性基及び任意には中性基のポリマーの酸性官能基とのカップリングは、カップリング剤としてのクロロホルマートの存在下、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)等の適切な溶媒中、第二の段階において同時に行われる。
【0126】
カチオン性基が化学的に差異のない二つのアミノ官能基を有する場合(例えば、直鎖ジアミン)、二つの官能基のうち一つを保護する形でそれを導入することができる。その後、保護基を開裂する最終段階を加える。
【0127】
上記基をカップリングするための重合化学及び反応は、標準となっており、当業者によく知られている(例えば、上述の出願人による特許又は特許出願参照)。
【0128】
本発明に従う製剤の調製例については、以下に述べる実施例にて詳細に説明する。
【0129】
上述の本発明に従う製剤の特徴によって、当業者は、ポリマーPOに基づく全ての製剤から、条件(a)、(b)、(c)及び(d)を同時に満たし、このため、前述した要件に対して最適なものを選択することができる。
【0130】
条件(c)及び(d)は、特に選択的である。製剤がpHfでコロイド溶液を形成しない場合、当業者は、このpH値で、多くの非電離モノマーを示すポリマーを選択することになる。一方、ポリマーが沈殿する場合には、このpHでイオン化されるモノマーの数を増やすことが望ましい。
【0131】
しかしながら、直観で分かるものではないが、pHfにてコロイド溶液になり、生理学的pHで沈殿する製剤の中には、条件(d)を満たさないので除外されるものもあるはずであることを指摘することは重要である。従って、条件(d)は、当業者にとって本発明に従う製剤を選択するのに便利な方法である。
【0132】
条件(d)は、本発明に従う製剤が生理学的pHより低いか又はそれに等しいpHに対して沈殿することを意味することを指摘することは重要である。これは、本発明に従う酸性の製剤1mlと緩衝溶液Tp 1mlとを混合した後、その緩衝溶液のpHより低いか又はそれに等しいpH値、即ち<7.2で沈殿が見られるからである。
【0133】
本発明に従う製剤を選択する第二の方法は、沈殿因子PFを推定することである。この因子は、以下の方法で評価される。
a)pH*として記録される沈殿pHの測定
酸性pHf3〜6.5にて、APを持つコロイド溶液は、ナノ粒子を備える透明の液体として存在し、該ナノ粒子の平均流体力学的直径は、T'テストに従い動的光散乱によって測定したところ、0.5μm未満か又はそれに等しく、好ましくは5〜500nmの間であり、更に好ましくは10〜80nmの間である。pHを高めると、本発明に従う溶液は、生理学的pHより低いか又はそれに等しいpHに対して沈殿する必要がある。該溶液が沈殿するpH*値は、Pテストに従って測定される。
b)PFの測定
TM法に従って、ポリマーPO1mgを備えるコロイド溶液0.5mlをpHfからpH*にするのに必要な水酸化ナトリウムのモル数,Δnの測定である。
Cを製剤中のポリマーPOの濃度とし(mg/gで表す)、yを疎水性サイドグラフト部を有するポリマーPOの単量体のモル分率とすることによって、製剤の沈殿因子PFは、下記式:
【数1】
によって求められる。沈殿因子PFの計算例は、実施例において与えられる。
【0134】
本発明の特定の実施において、本発明に従う製剤は、沈殿因子PFが200より大きいことを特徴とし、好ましくは400より大きく、より好ましくは800より大きく、更に好ましくは1500より大きい。
【0135】
本発明に従う製剤の驚くべき態様は、生理学的pHにて沈殿する間に形成されるポリマー鎖の網状構造によって、活性成分(AP)の放出を遅らせることができるが、その粒子の中心でこの同じ活性成分(AP)を補足しない。従って、本発明に従う製剤は、活性成分(AP)の持続的放出と良好な生物学的利用能の両方を得ることができる。
【0136】
活性成分(AP)は、好ましくは、タンパク質、糖タンパク質、一つまたはそれ以上のポリアルキレングルコール鎖と結合したタンパク質[好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG):「PEG化タンパク質」]、ペプチド、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド及びそれらの混合物からなる群から選択され、
更に好ましくは、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダーベポエチン等のエリスロポエチン、ヘモグロビンラフィマー、それらの類似体又はそれらの誘導体;オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、造血を刺激する因子及びそれらの混合物の他、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、第VII(a)因子又は第VII因子等の血液因子;ヘモグロビン、シトクロム、アルブミン、プロラクチン、ルリベリンの他、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン又はナファレリン等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及び類似体;LHRHアンタゴニスト、LHRH競合体、ヒト、ブタ又はウシの成長ホルモン(GHs)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン又はその混合体(IL−2,IL−11,IL−12)の他、インターフェロンアルファ、アルファ−2b、ベータ、ベータ−1a又はガンマ等のインターフェロン;ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンジオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)の他、ベクラペルミン、トラフェルミン、アンセスチム又はケラチノサイト成長因子等の成長因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、VEG−F、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、エタネルセプト、イミグルセラーゼ、ドロトレコギンアルファ、シクロスポリン及び合成類似体、並びに酵素、サイトカイン、抗体、抗原及びワクチンの製剤可能な修飾体及び断片、リツキシマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、エファリズマブ及びセツキシマブ等の抗体の下位群から選択される。
【0137】
他の適切な活性成分は、多糖類(例えばヘパリン)及びオリゴ−又はポリヌクレオチド、DNA、RNA、iRNA、抗体及び生細胞である。活性成分の他の分類は、中枢神経系で作用する医薬品物質、例えば、リスペリドン、ズクロペンチキソール、フルフェナジン、ペルフェナジン、フルペンチキソール、ハロペリドール、フルスピリレン、クエチアピン、クロザピン、アミスルプリド、スルピリド、ジプラシドン等を含む。
【0138】
代替の態様によれば、活性成分は、アントラサイクリン、タキソイドもしくはカンプトテシンのファミリーに属するか又はロイプロリドもしくはシクロスポリン等のペプチドのファミリーに属する疎水性、親水性又は両親媒性の有機小分子、及びそれらの混合物である。
【0139】
他の代替の態様によれば、活性成分は、有利には、以下に示す活性物質のファミリーの内の少なくとも1種から選択される。アルコール依存症の治療薬、アルツハイマー病の治療薬、麻酔薬、末端肥大症の治療薬、鎮痛剤、抗ぜんそく薬、アレルギーの治療薬、抗癌剤、抗炎症薬、抗凝結剤及び抗トロビン薬、抗けいれん剤、抗てんかん薬、抗糖尿病薬、制吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン剤、抗感染薬、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗パーキンソン薬、抗コリン作用薬、咳止め、炭酸脱水酵素阻害薬、心血管作動薬、脂質低下薬、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、降圧剤、血管保護剤、コリンエステラーゼ阻害剤、中枢神経系疾患の治療薬、中枢神経系の刺激剤、避妊薬、受精促進剤、子宮陣痛の誘導剤及び阻害剤、嚢胞性線維症の治療薬、ドーパミン受容体作用薬、子宮内膜症の治療薬、勃起障害の治療薬、不妊治療の薬、消化器疾患の治療薬、免疫刺激剤及び免疫抑制剤、記憶障害の治療薬、抗片頭痛薬、筋弛緩剤、ヌクレオシド類似体、骨粗鬆症の治療薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、精神刺激薬、鎮静剤、睡眠薬及び精神安定剤、神経安定剤、抗不安薬、精神刺激薬、抗うつ剤、皮膚治療薬、ステロイド及びホルモン、アンフェタミン、食欲抑制剤、ノンアナルジージクペインキラー(nonanalgesic painkiller)、バルビツール酸系催眠薬、ベンゾジアゼピン、下剤、向精神薬、並びにこれらの製品の組み合わせである。
【0140】
本発明に従う製剤を、経口的に、非経口的に、経鼻的に、膣内に、眼球に、皮下に、静脈内に、筋肉内に、皮内に、経皮的に、腹腔内に、脳内に、又は口腔内に投与することができる。
【0141】
他の態様によれば、本発明は、少なくとも一つの活性成分を持続放出するためのポリマーPOに基づいた製剤を調製する方法を提供するものであり、該製剤は、特に上述のものであり、前記方法は、
1)3〜6.5の間のpH値で、ポリアミノ酸ポリマー(PO)の水性コロイド溶液を準備する工程であって、陽イオン基(CG)、疎水基(GH)、任意の中性基(NG)及び任意のグルタミン酸塩の各モル分率が、1mlの前記製剤が体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿するほどである工程と;
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を工程1において得られたポリマー(PO)に加える工程であって、前記活性成分が前記ポリマーのコロイド溶液の粒子と非共有で会合している工程と、
を備える。
【0142】
本発明に従う方法の必須の特徴は、高分子電解質ポリマー(PO)粒子のコロイド溶液と活性成分(AP)との単純な混合によって、活性成分を持つ粒子が3〜6.5の間のpHfにて自発的に形成されることである。
【0143】
タンパク質、ペプチド又は小分子等の活性成分は、ポリアミノ酸タイプのポリマー(PO)と自発的に会合することができる。
【0144】
本発明の特定の実施において、活性成分(AP)による高分子電解質ポリマー(PO)ナノ粒子の積み込みは、活性成分(AP)の溶液を高分子電解ポリマー(PO)のコロイド溶液と単純に混合することによって行われる。この会合は、純粋に物理的であり、活性成分(AP)とポリマー(PO)間の共有結合の形成を必要としない。理論に制限されるものではないが、この非特異的な会合は、ポリマー(PO)と活性成分(AP)間の疎水的及び/又は静電気的な相互作用によって起こると考えられる。ペプチドの性質を持つ特定の受容体又は抗原/抗体もしくは酵素/基質タイプの特定の受容体を介して、APをPOナノ粒子に結合する必要がなく、多くの場合、望ましくないことさえあることに注意すべきである。
【0145】
本発明に従う方法の好ましい実施形態においては、該方法は、得られた粒子の化学的な架橋の工程を含まない。従って、得られる粒子は、化学的に架橋されないが、それでも持続時間にわたって活性成分(AP)を放出する。この化学的な架橋がないことは、決定的な利点である。これは、化学的な架橋がないことによって、活性成分(AP)を備える粒子を架橋する工程の間に起こり得る活性成分(AP)の化学分解を避けることができるからである。これは、かかる化学的な架橋が一般に重合可能なものの活性化によって行われ、UV放射物又はグルタルアルデヒド等の変性剤を元来含むからである。
【0146】
有利には、本発明に従う方法は、乾燥粉末の形態で粒子を得るために、例えば凍結乾燥によって、液体製剤を脱水する工程を備える。
【0147】
また、本発明は、上述した水性懸濁液を備える液体製剤から得られた乾燥粉末の形態を備える少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための固体の製剤に関するものである。
【0148】
乾燥粉末は、本発明に従う液体製剤をpH7にして生体外でそれを沈殿させ、次いで、例えば凍結乾燥によってそれを脱水することで得られることができる。
【0149】
有利には、かかる固体製剤は、吸入投与及び肺内投与に使用される。
【0150】
他の態様によれば、本発明の対象は、薬剤を調製する方法であり、特に、経口、経鼻、肺、膣又は眼球経路による、非経口、粘膜、皮下、筋内、皮内、経皮、腹腔内もしくは脳内投与又は腫瘍への投与用の薬剤を調製する方法であり、前記方法は、上述の製剤の少なくとも一つを用いることから本質的になる。
【実施例】
【0151】
1)合成
a)比較:疎水基を有する陰イオン高分子電解質ポリマーPOの合成(合成起源のα−トコフェロールでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
ポリオキシエチレン基準に対して約16900Daに相当する重量のα−L−ポリグルタミン酸15gを80℃で加熱しながらジメチルホルムアミド(DMF)288ml中に溶解させ、ポリマーを溶解させた。その溶液を15℃に冷却し、あらかじめ8mlのDMF中に溶解させた2.5gのD,L-α−トコフェロール(>98%、Fluka(登録商標)から得られる)と、あらかじめ1mlのDMF中に溶解させた280mgの4−ジメチルアミノピリジンと、あらかじめ6mlのDMF中に溶解させた1.6gのジイソプロピルカルボジイミドとを続けて加える。3時間攪拌した後、反応媒体を、15%の塩化ナトリウムと塩酸を含む水1200ml(pH2)に注ぎ込む。その後、沈澱したポリマーを濾過によって回収し、0.1Nの塩酸、水、及びジイソプロピルエーテルで洗浄する。その後、ポリマーを真空下40℃のオーブン中で乾燥させる。およそ90%の収率を得る。モル質量を立体排除クロマトグラフィーによって測定したところ、ポリオキシエチレン基準に対して15500である。グラフトしたトコフェロールのレベルをプロトンNMR分光法によって測定したところ、5.1モル%である。
【0152】
b)陽イオン高分子電解質ポリマーPO−A1の合成(合成起源のα−トコフェロールとヒスチジンアミドとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化8】
指数及び基:m=11、p=209、q=0、T=D,L−α−トコフェロール(T)
【0153】
5%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)3gをNMP38ml中に80℃で加熱することにより溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、2.74gのクロロギ酸イソブチルと、次いで2.2mlのN−メチルモルホリンとを加える。0℃にて温度を維持しながら反応媒体を10分間攪拌する。同時に、8.65gのヒスチジンアミド・二塩酸塩を108mlのNMP中に懸濁させる。その次に、10.6mlのトリエチルアミンを加え、得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの溶液をヒスチジンアミド懸濁液に加える。反応媒体を0℃で2時間攪拌した後、20℃で一晩攪拌する。その後、0.62mlの35%HClと、次いで83mlの水とを加える。その後、得られた溶液をpH3〜4の水500mlに注ぎ込む。その後、その溶液を8分量の食塩水(0.9%のNaCl)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過する。その後、ポリマー溶液を300mlの体積に濃縮する(ポリマー濃度は18mg/gである)。グラフトしたヒスチジンアミドの割合は、D2O中での1H NMRにより測定したところ、95%である。
【0154】
c)陽イオン高分子電解質ポリマーPO−A2の合成(合成起源のα−トコフェロールとヒスチジンアミドとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化9】
指数及び基:m=44、p=154、q=22、T=D,L−α−トコフェロール(T)
【0155】
20%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)10gをNMP125ml中に80℃で加熱することにより溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、5.5gのクロロギ酸イソブチルと、次いで4.4mlのN−メチルモルホリンとを加える。0℃にて温度を維持しながら、反応媒体を10分間攪拌する。同時に、12.9gのヒスチジンアミド・二塩酸塩を161mlのNMP中に懸濁させる。その次に、15.8mlのトリエチルアミンを加え、得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの溶液をヒスチジンアミド懸濁液に加える。反応媒体を0℃で2時間攪拌した後、20℃で一晩攪拌する。その後、1.46mlの35%HClと、次いで200mlの水とを加える。更に、200mlの水と、その後に650mlのエタノールを加え、その次に、pH3〜4の水650ml中に注ぎ込む。その後、その溶液を8分量の食塩水(0.9%のNaCl)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過する。最終的に、ポリマー溶液を250mlの体積に濃縮する(ポリマー濃度は50mg/gである)。グラフトしたヒスチジンアミドの割合は、D2O中での1H NMRにより測定したところ、70%である。
【0156】
d)陽イオン高分子電解質ポリマーPO−Bの合成(合成起源のα−トコフェロールと、エタノールアミンと、アルギニンアミドとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化10】
指数及び基:T=D,L−α−トコフェロール(T)、p=11、q=88、r=48、s=73
【0157】
5%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)10gをNMP125ml中に80℃で溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、5.6mlのクロロギ酸イソブチルと、次いで4.8mlのN−メチルモルホリンとを加える。この反応混合物を0℃で15分間攪拌する。同時に、7.4gのアルギニンアミド・二塩酸塩をNMP93ml中に懸濁させ、次いで4.7mlのトリエチルアミンと、1.2mlのエタノールアミンとを加える。得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの乳濁液をこの懸濁液に加え、反応混合物を0℃で2時間攪拌した後、20℃で一晩攪拌する。2.07mlの35%HCl溶液と、次いで200mlの水とを加えた後、反応混合物を、HClによってpH=3まで酸性にされた水670ml中に滴下し、該pHは1NのHCl溶液で約3に維持される。得られた溶液を8分量の食塩水(0.9%)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過し、約250mlの体積に濃縮する。グラフトしたアルギニンアミドとグラフトしたエタノールアミンの割合は、D2O中でのプロトンNMRにより測定したところ、それぞれ40%と22%である。
【0158】
2)例1(比較):陽イオン誘導体を有していないポリマーPOに基づく製剤(合成a)
合成a)に従って得られたポリマーPOを用いる。
PO溶液12.64gを水2.19gで希釈することで、ポリマーPOのコロイド溶液24mg/gを得る。その次に、必要量のNaCl水溶液とNaOH溶液とをそれぞれ導入することによって、コロイドPO溶液のオスモル濃度及びそのpHを290mOsm及びpH6.95に調整する。
以下、得られた製剤の特性を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表1】
上述のポリマーPOに基づく製剤は、該製剤1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿しない。
【0159】
3)例2:ポリマーPO−A1に基づく製剤
3.1)例2.1:PO−A1の濃度が10mg/gと等しく、IFN-αを備える
a)PO−A1のコロイド溶液の調製
上述の合成b)に従って得られたポリマーPO−A1を用いる。
PO−A1を水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表2】
得られたポリマーPO−A1に基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、それは沈殿因子PF=860であることを特徴とする。ポリマーPO−A1は、pH*が6.5に等しいことを特徴とする。
【0160】
b)タンパク質のポリマーPO−A1との会合
2.4mg/gのタンパク質IFN−α2.18gをPO−A1のコロイド溶液8gに加え、適切なNaCl溶液(0.18g)で希釈することによって、最終濃度を調整する。
【0161】
c)25℃で一晩の会合
以下、最終製剤の特徴を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表3】
【0162】
3.2)例2.2:PO−A1の濃度が45mg/gに等しい
上述の合成b)に従って得られたポリマーPO−A1を用いる。
PO−A1を水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表4】
得られたポリマーPO−A1に基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿せず、沈殿因子PFが166に等しいことを特徴とする。
【0163】
3.3)例2.3:PO−A1の濃度が10mg/gに等しく、IFN-α及び陽イオンZn++を備える
a)0.5eq.のZn++を備えるPO−A1のコロイド溶液の調製
上述の合成b)に従って得られたポリマーPO−A1を用いる。
PO−A1を水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表5】
【0164】
b)タンパク質のポリマーPO−A1との会合
2.4mg/gのタンパク質IFN−α2.17gを段階a)で調製したPO−A1のコロイド溶液7.96gに加え、適切なNaCl溶液(0.18g)で希釈することによって、最終濃度を調整する。
【0165】
c)25℃で一晩の会合
【0166】
d)陽イオンZn++の添加
溶液中に存在する陽イオン誘導体当たり0.5モル当量の陽イオンZn++を達成するため、濃縮された204mg/gのZnCl2溶液の必要量を先の製剤に加える。
以下、最終製剤の特徴を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表6】
得られたポリマーPO−A1に基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、沈殿因子PFが860に等しいことを特徴とする。陽イオン誘導体当たり0.5モル当量の陽イオンZn++を備えるポリマーPO−A1は、pH*が4.8に等しいことを特徴とする。
【0167】
4)例3:IFN−αを備える30mg/gのポリマーPO−A2に基づく製剤
a)PO−A2のコロイド溶液の調製
上述の合成c)に従って得られたポリマーPO−A2を用いる。
PO−A2を水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表7】
得られたポリマーPO−A2に基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、沈殿因子PFが840に等しいことを特徴とする。ポリマーPO−A2は、pH*が6.5に等しいことを特徴とする。
【0168】
b)タンパク質のポリマーPO−A2との会合
2.4mg/gのタンパク質IFN−α2.18gをPO−A2のコロイド溶液8gに加え、適切なNaCl溶液(0.18g)で希釈することによって、最終濃度を調整する。
【0169】
c)25℃で一晩の会合
以下、最終製剤の特徴を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表8】
【0170】
5)例4:IFN−αを備えるか又は備えていないポリマーPO−Bに基づく製剤
5.1)例4.1:PO−Bの濃度が10mg/gに等しく、IFN-αを備える
a)PO−Bのコロイド溶液の調製
上述の合成d)に従って得られたポリマーPO−Bを用いる。
PO−Bを水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表9】
得られたポリマーPO−Bに基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、沈殿因子PFが1150に等しいことを特徴とする。ポリマーPO−Bは、pH*が5に等しいことを特徴とする。
【0171】
b)タンパク質のポリマーPO−Bとの会合
2.7mg/gのタンパク質IFN−α1.8gをPO−Bのコロイド溶液8gに加え、適切なNaCl溶液で希釈することによって、最終濃度を調整する。
【0172】
c)25℃で一晩の会合
粒径をT'テストに従って測定する。
以下、最終製剤の特徴を表に示す。
【表10】
上記のようにして得た製剤は、Qテストにおいて保持因子RQが5より大きいことを特徴とする(RQ=5での遊離IFN−αの割合についてのELISAテスト:8%)。
【0173】
5.2)例4.2:PO−Bの濃度が45mg/gに等しい
上述の合成d)に従って得られたポリマーPO−Bを用いる。
PO−Bを水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表11】
得られたポリマーPO−Bに基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、沈殿因子PFが256に等しいことを特徴とする。ポリマーPO−Bは、pH*が5に等しいことを特徴とする。
【0174】
6)例5(比較):IFN−αを備えるPOに基づく粒子の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPOを用いる。
ポリマーPOを水中に溶解することで、ポリマーPOのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.52に調整する。必要量のNaCl水溶液を導入することで溶液のオスモル濃度を108mOsmに調整する。ポリマーPOの濃度を29.05mg/gに調整する。
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−αを先のポリマーPOコロイド溶液に加える。25℃で一晩、会合を形成する。
以下、得られた粒子の特徴を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表12】
【0175】
7)例2、3及び5の生体外での結果
このために、本発明に従う製剤からの活性成分の放出をLテストによって測定する。
Lテストにおける放出を時間と共に放出されるタンパク質の割合の形式で図1に示す。
比較の例5の製剤は、POの粒子を23mg/gで含んでおり、10時間で放出されたタンパク質が93%であることを特徴とする放出プロファイルを示す。
例2.1及び3の製剤は、48時間でそれぞれ67%及び65%の注入されたタンパク質を放出するという遅延放出プロファイルを示す。
例2.3の粒子の場合、実験の終わりでゼロにならない放出流量の形成が観察され、48時間で注入されたタンパク質の59%が放出される。
【0176】
8)例2、3及び5の生体内での結果
44匹のラットを8又は12匹の5グループに分け、並行して即時放出IR製剤もしくは比較の例5に対応する持続放出製剤、又は本発明の例2及び3の製剤の一つを300μg/kgの投与量で受けた。
以下、薬物動態の結果を表に示す。
【表13】
【0177】
Cmaxは、すべての動物に対するタンパク質の平均最大血漿中濃度を示す。
Tmax中央値は、血漿中濃度が最大となる時間の中央値を示す。
AUCは、時間の関数として血漿中濃度の曲線下平均面積を示す。
T50%AUCは、曲線下面積がその合計値の50%に到する平均時間を示す。
RBAは、検討中の製剤の曲線下面積のIFN IR製剤の曲線下面積に対する比を示す。
【0178】
すべての製剤は、IRに対してCmaxの低下を伴う持続放出プロファイルを示す。
比較例5との比較すると、本発明に従う全ての製剤の終わりの傾きがより小さく、持続した残留吸着を示唆する。
例2.1及び例3の製剤(10mg/g PO−A1および30mg/g PO−A2)に関しては、それぞれのRBA値が57%及び約100%を示す5日以上かけての持続放出に(比較例5の製剤の約3日と比較して)注目すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つ又は複数の活性成分(AP)、とくに一つ又は複数のタンパク質およびペプチド活性成分を持続放出する新規の製剤に関するものである。また、本願は、これらの製剤の用途または使用、とくに治療用途または使用に関するものである。これらの活性製剤は、ヒトの治療および動物の治療の両方に関するものである。
【0002】
本明細書を通して用いるAPは、少なくとも一つの活性成分を示す。
【背景技術】
【0003】
薬剤AP、とくに治療用ペプチド/タンパク質の持続放出の分野において、その目的は、多くが、患者に可能な限り健康体において観測される値に近い血漿ペプチドまたはタンパク質血漿濃度を再現することである。
【0004】
この目的は、血漿におけるタンパク質の短い寿命に抵触し、これによって、治療用タンパク質の反復投与を導く。その結果として、治療用タンパク質の血漿濃度は、高濃度ピークおよび最低濃度によって特徴づけられるプロファイルを示す。濃度ピークは、健康体における基本濃度よりずっと高く、サイトカイン等の治療用タンパク質の高毒性のために非常に有害である。さらに、最低濃度は、治療効果を与えるのに必要な濃度より低く、その結果、患者に対して低い治療範囲および長期間の重篤な副作用をもたらす。
【0005】
したがって、治療に対して理想的な値に近い治療用タンパク質の血漿濃度を患者において再現するため、製剤は、時間と共に血漿濃度の変動を制限するように、持続時間にわたって治療用タンパク質を放出できるようにすることが重要である。
【0006】
さらに、この活性製剤は、好ましくは、当業者には既知である以下の要件を満たすべきである。
1.活性および非変性治療用プロテイン、例えば、ヒトタンパク質または合成タンパク質を持続放出し、血漿濃度を治療用の濃度に維持すること
2.容易に注入可能とするのに十分に低い注射での粘度
3.優れた毒性・耐性プロファイルを示す生体適合性および生分解性
【0007】
これらの目的を達成する試みにおいて、従来技術において提示された最良のアプローチの一つは、治療用タンパク質を有するナノ粒子の比較的非粘性の液体懸濁液から成る治療用タンパク質の持続放出形態を開発することであった。これらの懸濁液によって、天然の治療用タンパク質を簡単に投与することが可能になる。
【0008】
このようにして、フラメル・テクノロジーズは、治療用タンパク質が、疎水基および親水基を有するコポリアミノ酸のナノ粒子と会合する手段を提供してきた。
【0009】
米国特許出願公開第2006/0099264号明細書(特許文献1)は、アスパラギン酸残基および/またはグルタミン酸残基を備える両親媒性ポリアミノ酸を開示し、これらの残基の少なくとも一部は、例えば、少なくとも一つのα−トコフェロール残基を有するグラフトを持つ(合成もしくは天然由来のα−トコフェロールとグラフトしたポリグルタミン酸塩またはポリアスパラギン酸塩)。これらの「疎水的に変性された」ホモポリアミノ酸は、pH7.4の水性懸濁液において少なくとも一つの活性タンパク質(インスリン)と容易に会合することができるナノ粒子のコロイド懸濁液を水中で自発的に形成する。
【0010】
特許文献1に記載の懸濁液によって「ベクトル化した」一つ又は複数の活性タンパク質(例えばインスリン)の生体内での放出時間は、長くなることによって効果が上がる。
【0011】
放出時間の増加は、とくに国際公開第05/051416号(特許文献2)に記載の製剤によって部分的に得られた。この出願は、皮下注射後、内因性アルブミンに接触してその患者のインサイチューでゲルを形成するような濃度で注射される疎水的に変性したポリ(L−グルタミン酸ナトリウム)のナノ粒子(0.001〜0.5μm)のコロイド懸濁液を開示する。タンパク質は、その後、1週間の標準的な期間をかけてゆっくりと放出される。しかしながら、投与される治療用タンパク質の濃度が比較的高い場合、例えばヒト成長ホルモンのような場合には、放出時間が数日に限定される。
【0012】
これらの製剤の放出時間は、さらに長くなることで効果が上がる。
【0013】
皮下注射後の生体内でのAPの放出時間を長くするために提示された別の経路は、注射温度では液体であるが、温度が37℃に上昇するとゲルを形成する製剤を使用するものである。
【0014】
国際公開第99/18142号(特許文献3)および国際公開第00/18821号(特許文献4)は、とくに注射によって温血動物に投与でき、また、生理的温度がゲル化温度より高いため生体内でゲル化した沈殿物を形成するポリマーを溶解状態又はコロイド状態で備えるAPの水溶液に関するものである。このようにして形成されるゲルは、持続的にAPを放出する。これらの特定の生分解性ポリマーは、ABAまたはBABのトリブロックであり、ここで、A=ポリ乳酸−co−グリコール酸(PLAGA)又はポリ乳酸(PLA)であり、B=ポリエチレングリコールである。これらトリブロックポリマーの液体からゲルへの転移温度は、例えば、36℃、34℃、30℃および26℃である。米国特許第6143314号明細書(特許文献5)に記載の類似のポリマー(A)は、これらABAまたはBABのトリブロックポリマーの生体内での加水分解によって、局所的に十分な耐性がない酸をもたらす。
【0015】
国際出願第PCT/FR2006/002443号(特許文献6)は、本出願人によるものであり、ヒスチジン誘導体および疎水基によって変性されたポリグルタミン酸塩およびそれらの用途を開示する。
【0016】
とくに、この出願は、ポリマーが酸性のpHで可溶であり、中性のpHで沈殿することを開示する。これにより、治療用タンパク質等の活性成分を放出するための製剤の調製が可能となる。
【0017】
かかるポリマーを用いて持続放出するための自己沈澱水性液体製剤の開発との関連で、予想外にも、厳しい要件を満たす製剤がある特定の条件下でしか得られないことを見出した。
【0018】
例えば、特許文献6に記載のポリマーpGluHisOEt α−トコフェロールは、pH5.5で処方され、45mg/mlのポリマーを備えるが、期待される結果につながらない。
【0019】
出願人の長期にわたる研究は、i)自己沈澱システムの要件を満たす陽イオン性ポリマー(PO)を備える製剤、及びii)かかる製剤を選択するための特定の条件の識別に至った。これらのポリマー(PO)は、特許文献6に記載のポリマーまたは陽イオン基を有し且つ疎水基を有する新規なポリマーの群のいずれか一方から選択できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第2006/0099264号明細書
【特許文献2】国際公開第05/051416号
【特許文献3】国際公開第99/18142号
【特許文献4】国際公開第00/18821号
【特許文献5】米国特許第6143314号
【特許文献6】国際出願第PCT/FR2006/002443号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的の一つは、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾され、活性成分(AP)を持ち、数日または数週間の持続期間を通して活性成分(AP)を放出するポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の液体製剤を提供することであり、該製剤は活性成分(AP)を持ち、該製剤の組成および濃度によって、活性成分の放出時間を皮下投与に対して最適化することができる。
【0023】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の液体製剤を提供することであり、該製剤は活性成分を持ち、製剤の組成は、活性成分(AP)の放出を数日または数週間にわたって可能とするようなものであり、ポリマーは可能な限り低い濃度である。
【0024】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の液体製剤を提供することであり、該製剤は活性成分(AP)を持ち、該製剤の組成および濃度によって、細い針を通して簡単に注入することができる。
【0025】
本発明の他の目的は、水溶液中で安定な疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の液体製剤を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、凍結乾燥された形態で貯蔵することができる疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、凍結乾燥後に容易に再分散させることのできる疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することである。
【0028】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することであり、該製剤は活性成分(AP)を持ち、ここで、該製剤は、凍結乾燥された形態で安定である。
【0029】
本発明の他の目的は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく新規の製剤を提供することであり、ここで、該製剤は、その生物活性に影響を与えることなくタンパク質を放出する。
【0030】
本発明の他の目的は、活性成分(AP)を持続放出するための固体製剤、特に、例えば吸入および肺内投与のための乾燥粉末の形態で提供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための製剤を調製する新規の方法を提供することであり、この製剤は、とくに上述した製剤の内の一つである。
【0032】
本発明の他の目的は、これらの製剤を用いた薬剤を調製するための新規の方法を提供することである。
【0033】
長期にわたる広範囲の調査の後、出願人は、疎水性側基を有する陽イオン性アミノ酸誘導体によって修飾されたポリグルタミン酸塩ポリマーに基づく製剤が治療用タンパク質およびペプチドの持続放出を最適化することを見出した。
【0034】
したがって、本発明は、第一に、例えば非経口経路を介して、容易に注入することができる少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための水性製剤に関するものであり、該製剤は、少なくとも一つの活性成分(AP)と、ポリマー(PO)又はその製剤可能な塩のコロイド粒子に基づく水性懸濁液とを備えてなり、ここで、前記製剤は、以下の4つの条件:
(a)ポリマー(PO)が、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸であり、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、前記中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であること;
(b)前記製剤のpH値(pHf)が、3.0〜6.5の間であること;
(c)pHfにて、ポリマー(PO)が、活性成分(AP)と自発的に非共有で会合しているコロイド溶液を形成すること;
(d)1mlの前記製剤が、体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿すること;
を満たす。
【0035】
好ましくは、かかる製剤は、200より大きい、好ましくは400より大きい、好ましくは800より大きい、さらに好ましくは1500より大きい沈殿因子PFを示す。
【0036】
また、本発明は、例えば非経口経路を介して、容易に注入することができる少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための水性液体製剤に関するものであり、該製剤は、少なくとも一つの活性成分(AP)と、ポリマー(PO)又はその製剤可能な塩のコロイド粒子に基づく水性懸濁液とを備えてなり、ここで、該製剤は、以下の4つの条件:
(a)ポリマー(PO)が、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸であり、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、該中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であること;
(b)前記製剤のpH値(pHf)が、3.0〜6.5の間であること;
(c)pHfにて、ポリマー(PO)が、活性成分(AP)と自発的に非共有で会合しているコロイド溶液を形成すること;
(d)前記製剤が、200より大きい、好ましくは400より大きい、好ましくは800より大きい、さらに好ましくは1500より大きい沈殿因子PFを示すこと;
を満たす。
【0037】
更に、この製剤は、好ましくは5より大きい、好ましくは10より大きい、好ましくは15より大きい、さらに好ましくは20より大きい保持因子RQを示す。
【0038】
ポリマーの所定の濃度については、活性因子(AP)の放出速度が、ポリマーの組成、すなわち陽イオン基、疎水性サイドグラフト部、並びに任意には中性基およびグルタミン酸塩基のそれぞれのモル分率に大きく依存する。
【0039】
また、本発明は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための製剤を調製する方法に関するものであり、この製剤は、特に上述の製剤であり、該方法は、
1)3〜6.5の間のpH値で、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸ポリマー(PO)の水性コロイド溶液を準備する工程であって、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、該中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であり;
陽イオン基(CG)、疎水基(GH)、任意の中性基(NG)および任意のグルタミン酸塩の各モル分率は、1mlの前記製剤が体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿するほどである工程と;
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を工程1において得られたポリマー(PO)に加える工程であって、前記活性成分が前記ポリマーのコロイド溶液の粒子と非共有で会合している工程と、
を備えてなり、前記製剤の最終的な治療上での使用の直前(例えば30分前)に前記活性成分を加える工程を行うことができる。
【0040】
また、本発明は、特に、非経口、粘膜、皮下、筋内、皮内、経皮、腹腔内もしくは大脳内投与用、または腫瘍への投与用、或いは経口、経鼻、肺、膣もしくは眼球経路による投与用の薬剤を調製する方法に関するものであり、前記方法は、ここに記載される少なくとも一つの製剤を用いることから本質的になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】例2.1(黒三角)、例2.3(黒菱形)、例3(黒四角)および例5(実線)に記載される製剤からのIFN−αの生体外での放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
本明細書において、「陽イオン基」という用語は、一つもしくはそれ以上のアミノ基又は一つもしくはそれ以上の第4級アンモニウムを備えるグルタミン酸基に共有結合している基を意味すると理解される。アミノ官能基の場合、該基は、主にそのpKa以下のどんなpHでもイオン化し、第4級アンモニウムの場合には、該基がどんなpHでもイオン化している。他に特に規定がなければ、アルキルラジカルは、1〜10の炭素原子を示す。
【0043】
本明細書において、「中性基」という用語は、3〜10の間のいずれのpHにおいても電荷を帯びない基を意味すると理解され、例えば、グルタミン酸残基のカルボキシル基でのエタノールアミノ、アルキレングリコール又はポリアルキレングリコールとの縮合によって得られる基が挙げられる。
【0044】
本発明に係るポリマーの「製剤可能な塩」という用語は、ポリマーのイオン化した官能基と会合した対イオンを持つ全てのポリマーを包含すると理解される。
【0045】
本明細書において、「溶液」という用語は、個々の鎖の形で溶媒とポリマーとの均一な溶液を意味すると理解される。
【0046】
本明細書において、「コロイド溶液」という用語は、T'テストで測定したときにその平均径が0.5μm未満か又はそれに等しい粒子の懸濁液を意味すると理解される。
【0047】
本明細書において、(例えば、非経口経路により)「容易に注入可能な製剤」という用語は、20℃での動的粘度が1000mPa.s.未満か又はそれに等しい製剤を意味すると理解される。好ましくは、20℃で測定した該製剤の動的粘度は、1000s−1のせん断勾配に対して、好ましくは500mPa.s.未満か又はそれに等しく、好ましくは2〜200mPa.s.の間であり、例えば1.0〜100mPa.s.の間であり、実際には1.0〜50mPa.s.の間である。
【0048】
本明細書において、「小分子」という用語は、分子量が1kDa未満の分子、特には非タンパク性分子を意味すると理解される。
【0049】
本明細書において、「pHf」という用語は、本発明に従う製剤のpHを意味すると理解される。
【0050】
本明細書において、「pH*」という用語は、Pテストを用いて測定されるポリマーPOに基づく製剤の沈澱のpHを意味すると理解される。
【0051】
500nmにて吸光度を測定することによって沈澱pH*のpHを測定するためのPテスト
0.15Mの塩化ナトリウムを含む1又は2mg/mlのポリマーPO濃縮液を、酢酸又は1Mの水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpH4にし、24時間攪拌しながら置いておく。その後、この溶液を0.8〜0.2μmフィルタに通して濾過する。次いで、この溶液を0.1Mの水酸化ナトリウム溶液で滴定し、ポリマーPO溶液の500nmでの吸光度の変化を、Perkin−Elmer Lambda 35UV Spectrometerタイプの装置を用いて、前記溶液のpHの関数として記録する。沈澱のpH(pH*)は、吸光度が急激に増加して1より大きな値に到達するときのpHの値に相当する。
【0052】
本明細書において、「テスト緩衝溶液Tp」という用語は、30mg/gウシアルブミン画分V(Aldrich)、0.01Mのリン酸緩衝液、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム(AldrichのPBS)および0.015Mの酢酸アンモニウム(Aldrich)を備える水性媒体を意味すると理解される。
【0053】
本明細書において、「Δn」という用語は、ポリマーPO 1mgを備えるコロイド溶液0.5mlをpHfからpH*にするのに必要な水酸化ナトリウムのモル数を意味すると理解され、前記数は、従来の酸/塩基滴定法TMによって得られる。
【0054】
0.15Mの塩化ナトリウムを含む2mg/mlに濃縮された高分子電解質の溶液を酢酸又は1Mの水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpH4にする。その後、この溶液を0.05Mの水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pHの変化を、加えた水酸化ナトリウムの量の関数として記録する。Δnの測定は、pHfからpH*にpHを変化させるのに必要な水酸化ナトリウムの量を単純に読み取ることで行われる。
【0055】
本明細書において、生理学的pHは、例えば、7.2±0.4に等しいと定義される。
【0056】
本明細書において、「高分子電解質」という用語は、水中でイオン化することが可能な基を有するポリマーであって、該ポリマー上で電荷を生成するポリマーを意味すると理解される。
【0057】
保持因子RQを測定するためのQテスト
本発明に従う体積Vの製剤は、すぐに投与できる状態にあり、25℃にて200μlのラット血清プールに加えられる。そのナノ粒子が沈殿した後、浮遊物中の遊離タンパク質濃度をELISAテストによって測定する。
体積Vの値を増大させるために同じテストを繰り返すことによって、製剤の体積のV*値を決定でき、該V*値では、浮遊物中の遊離タンパク質のモル分率が10%より大きくなることが認められている
保持因子RQは、200μlラット血清に対する体積V*の比によって与えられる。
例えば、V*=1mlに対して、RQ=5である。
【0058】
ポリマーPOコロイド溶液の粒子の大きさを評価するため、T'テストを用いることが好ましい。T'テストの結果は、平均流体力学的直径である。
【0059】
準弾性光散乱によってナノ粒子の大きさを測定するためのT'テスト
本発明に従うポリマーの粒子の平均流体力学的直径は、以下に規定される手法Mdに従って測定される。
0.15MのNaCl媒体中、ポリマー溶液を1または2mg/mlの濃度で準備し、24時間攪拌して置いておく。その次に、これらの溶液を0.8〜0.2μmのフィルタに通して濾過した後、波長632.8nmの垂直に偏光したHe−Neレーザービームで動作するMalvern Compact Goniometer System型の装置を用いた動的光散乱において分析する。ポリマーナノ粒子の流体力学的直径は、「Surfactant Science Series」,第22巻,Surfactant Solutions,編集R.Zana,第3章,M.Dekker,1984の研究に説明されるように、キュムラント法による電界の自己相関関数から算出される。
【0060】
本明細書において、「ナノ粒子」という用語は、T'テストに従って平均直径が2〜500nmの間である粒子を表現する。
【0061】
活性成分の放出を測定するためのLテスト
30mg/gのウシアルブミン画分V(Aldrich)、0.01Mのリン酸緩衝液、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム(AldrichのPBS)および0.015Mの酢酸アンモニウム(Aldrich)を備えた流量2.83ml/hの水性媒体によって水浴したポリウレタン/ポリエーテル(PU−PE)発泡体からなる辺長1.5cmの立方体中に、50μlの製剤を注入する。サンプルは、連続相から定期的に回収され、そのサンプルのタンパク質含有量をELISAによって分析する。
【0062】
次いで、課された流速で測定した濃度を分けてタンパク質の流量と、回収された各サンプルについて測定した値を加算することで放出されたタンパク質の全重量とをプロットすることができる。
【0063】
本発明の意義の範囲内で、「タンパク質」という用語は、タンパク質またはペプチドを意味し、ペプチドはオリゴペプチドであろうとポリペプチドであろうと問わない。このタンパク質またはこのペプチドは、例えば一つまたはそれ以上のポリオキシエチレン基をグラフトすることによって変性してもよいし、変性しなくてもよい。
【0064】
本明細書において、「を有する(to carry)」という表現は、有される基がペンダントであり(又は垂れ下がっており)、すなわち、前記基がグルタミン酸残基に関する側基であり、それを有するグルタミン酸残基のγ位におけるカルボニル官能基の置換基である。
【0065】
また、本発明のポリグルタミン酸塩は、陽イオン基を有する。この基は、好ましくはアミド又はエステル結合を介してグルタミン酸基にグラフト又は結合する。
【0066】
ポリマー(PO)は、pGlu(x)GH(y)CG(z)NG(1−x−y−z)の構造を示すことが好ましく、合計の重合度(DP)が50〜300の間、好ましくは100〜250の間、更に好ましくは150〜250の間である。
【0067】
本発明の代替の態様によれば、陽イオン基(CG)は、半中和pHが7.0未満の弱塩基から選択できる。
【0068】
かかる陽イオン基(CG)は、例えば、ヒスチジンエステル、好ましくはそのメチルエステル及びそのエチルエステル、ヒスチジノール、ヒスタミン、ヒスチジンアミド、ヒスチジンアミドのN−モノメチル誘導体及びヒスチジンアミドのN,N'−ジメチル誘導体から成る群から選択されたヒスチジン誘導体から得られる。
【0069】
この場合、x、y及びzの値は、xが0〜45%の間、yが2〜30%の間、zが40〜98%の間、1−x−y−zが0〜50%の間となるようにすることができる。
【0070】
また、x、y及びzの値は、xが0〜45%の間、yが2〜30%の間、zが40〜60%の間、1−x−y−zが0〜58%の間となるようにすることもできる。
【0071】
また、x、y及びzの値は、xが0〜45%の間、yが15〜30%の間、zが40〜60%の間、1−x−y−zが0〜45%の間となるようにすることもできる。
【0072】
ポリマーPOが中性基(NO)を有していない場合、x、y及びzの値は、xが0〜45%の間、yが2〜30%の間、zが40〜98%の間となるようにすることができる。
【0073】
本発明の他の代替の態様によれば、陽イオン基(CG)は、少なくとも一つの第4級アンモニウム又は半中和pHが8.0より大きい少なくとも一つの強塩基を備えるものから選択できる。
【0074】
かかる陽イオン基(CG)は、以下に示す前駆体から得られることができる。
2〜6の炭素原子を有する直鎖ジアミン、好ましくはプトレッシン
アグマチン
酸素を介して結合したエタノールアミン
酸素を介して結合したコリン
側鎖が中性のpHにて正に帯電しているアミノ酸のエステル又はアミド誘導体、すなわち、α位のアミン官能基を介して結合したリシン、アルギニン又はオルニチン
【0075】
この場合、x、y及びzの値は、
xが、10〜55%の間であり、
yが、2〜30%の間であり、
zが、10%より大きいか又は等しく、(x−10)%と(x+15)%の間であり、
中性基の数が、100%に到達するための追加のパーセンテージに相当しており、任意には0に等しく
なるようにすることができる。
【0076】
また、x、y及びzの値は、
xが、20〜55%の間であり、
yが、2〜7.5%の間であり、
zが、20%より大きいか又は等しく、(x−10)%と(x+15)%の間であり、
中性基の数が、100%に到達するための追加のパーセンテージに相当しており、任意には0に等しく
なるようにすることもできる。
【0077】
また、xが10〜55%の間、yが2〜30%の間、zが10〜55%の間、1−x−y−zが0〜60%の間となるように、x、y及びzを選択することもできる。
【0078】
また、x、y及びzの値は、xが10〜20%の間、yが2〜30%の間、zが10〜30%の間、1−x−y−zが20〜78%の間となるようにすることもできる。
【0079】
また、x、y及びzの値は、xが10〜20%の間、yが15〜30%の間、zが10〜30%の間、1−x−y−zが20〜65%の間となるようにすることもできる。
【0080】
ポリマーPOが中性基(NO)を有していない場合、x、y及びzの値は、xが10〜55%の間、yが2〜30%の間、zが40〜60%の間となるようにすることができる。
【0081】
有利には、本発明に従うポリアミノ酸は、例えば、α−L−グルタミン酸塩又はα−L−グルタミン酸のホモポリマーである。
【0082】
本発明のグルタミン酸塩残基を官能基化するのに使用できる陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
・ヒスチジンエステル、好ましくはそのメチルエステル及びそのエチルエステル、ヒスチジノール、ヒスタミン、ヒスチジンアミド、ヒスチジンアミドのN−モノメチル誘導体及びヒスチジンアミドのN,N'−ジメチル誘導体からなる群から選択されるヒスチジン誘導体と一致するか、又は
・下記一般式:
【化1】
(式中:
X=O又はNH
Y=独立してH又はCH3
L=カルボキシル官能基又はその誘導体で任意に置換される直鎖(C2〜C6)アルキレン)を有する。
【0083】
従って、本発明に使用できる陽イオン基は、下記式:
−NH−(CH2)w−NH3+,Z−(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH2)4−NH−C(=NH)−NH3+,Z−、
−O−(CH2)2−NH3+,Z−、
−O−(CH2)2−N+(CH3)3,Z−、
下記式:
【化2】
(式中、−R1は、アルコキシ、好ましくは−OMeもしくは−OEtであるか、または−R1は、−NH2、アルキルアミノ、好ましくは−NH−CH3もしくは−N(CH3)2であり;−R13は、−(CH2)4−NH3+,Z−、−(CH2)3−NH−C(=NH)−NH3+,Z−、−(CH2)3−NH3+,Z−である)のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体、
の内の一つを有することができ、ここで、Z−は、塩化物、硫酸塩、リン酸塩又は酢酸塩であり、好ましくは塩化物である。
【0084】
例えば、陽イオン基は、下記式:
【化3】
(式中、−R1は、アルコキシ又はアルキルアミノ基、好ましくは−OMe、−OEt、−NH2、−NHCH3又は−N(CH3)2であり、−R2は、水素又は−CH2OHもしくは−C(=O)−R1である)を有することができる。
【0085】
好ましい実施形態によれば、本発明のポリアミノ酸は、平均して、ポリマー鎖につき少なくとも三つの疎水基(GH)を有する。
【0086】
有利には、疎水基GHの少なくとも一つが、疎水基GHをポリグルタミン酸塩鎖(例えば、ポリグルタミン酸塩骨格の主鎖)に結合できる少なくとも一つのスペーサー接続部(または残基)(スペーサー)を備える疎水性グラフト部中に含まれる。この接続部は、例えば、少なくとも一つの直接的な共有結合及び/又は少なくとも一つのアミド結合及び/又は少なくとも一つのエステル結合を備えることができる。例えば、接続部は、ポリグルタミン酸塩の構成単量体単位以外の「アミノ酸」残基、アミノアルコールの誘導体、ポリアミン(例えばジアミン)の誘導体、ポリオール(例えばジオール)の誘導体及びヒドロキシ酸の誘導体からなる群に属するタイプとすることができる。
【0087】
GHのポリグルタミン酸塩鎖へのグラフトは、ポリグルタミン酸塩鎖に結合できるGH前駆体の使用を含むことができる。
【0088】
GHの前駆体は、実際には限定されず、アルコール及びアミンからなる群から選択され、当業者によれば容易に官能基化される。
【0089】
好ましい実施形態によれば、疎水性グラフト部の疎水基GHは、8〜30個の炭素原子を有する。
【0090】
これらの疎水基(GH)は、有利に、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができる直鎖又は分岐C8〜C30アルキル、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができるC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル、並びに
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができるC8〜C30(多)環式化合物、
からなる群から慎重に選択される。
【0091】
GHと共に疎水性グラフト部を形成する接続部は、二価、三価又は四価の接続部(実際には五価又はそれ以上さえもある)とすることができる。二価の接続部の場合、疎水性グラフト部は単一のGH基を有するのに対し、三価の接続部は、疎水性グラフト部上に二分の性質を与え、すなわち、該グラフト部が二つのGH「腕」を示す。三価の接続部の例には、「アミノ酸」残基、例えば「グルタミン酸」、又はポリオール残基、例えばグリセロールが含まれる。従って、二分のGHを備える疎水性グラフト部の有利であるが非限定的な二つの例は、ジアルキルグリセロール及びグルタミン酸ジアルキルである。
【0092】
疎水基GHは、例えば、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロール、及びコレステロールよりなる群から選択される基に由来する。
【0093】
上述のように、中性基(NG)は、ヒドロキシエチルアミノ−ラジカル、ヒドロキシアルキルオキシ−ラジカル又はポリオキシアルキレンの基から選択できる。
【0094】
他の代替の態様によれば、本発明に用いるポリグルタミン酸塩はまた、グルタミン酸塩残基に結合したポリアルキレン(好ましくはポリエチレン)グリコール型のグラフト部を少なくとも一つ有することができる。
【0095】
好ましくは、本発明に従うポリグルタミン酸塩の骨格は、α−L−グルタミン酸塩及び/又はα−グルタミン酸残基を備える。
【0096】
更に好ましくは、本発明に用いるポリグルタミン酸塩が、下記式(I):
【化4】
(式(I)中、
・Aは、独立して、
NHR基(ここで、RはH、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルを示す)、
次式:
【化5】
(式中:
R7は、OH、OR9又はNHR10であり、
R8、R9及びR10は、独立して、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルである)の末端アミノ酸残基又は末端アミノ酸誘導体、
であり;
・Bは、直接結合、又は二価、三価もしくは四価の結合基であり、好ましくは−O−、−NH−、−N(C1〜C5アルキル)−、アミノ酸(好ましくは天然アミノ酸)残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基、アミノアルコール残基又は1〜6の炭素原子を有するヒドロキシ酸残基から選択され;
・Dは、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アシル基又はピログルタミン酸塩であり;
・疎水基(GH)は、それぞれが互いに独立して、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができる直鎖または分岐C8〜C30アルキル、又は
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができるC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル、又は
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができるC8〜C30(多)環式化合物、
から選択される基であり;
好ましくは、疎水基(GH)の少なくとも一つが、グラフトによって、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロール及びコレステロールからなる群から選択される前駆体から得られ、Bが直接結合を表し;
・R70は、
−NH−(CH2)w−NH3+(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH2)4−NH−C(=NH)−NH3+、
−O−(CH2)2−NH3+、
−O−(CH2)2−N+(CH3)3、
下記式:
【化6】
(式中、−R11は、−H、−CO2H、アルキルエステル(好ましくは−COOMe及び−COOEt)、−C(=O)−NH2、−C(=O)−NH−CH3又は−C(=O)−N(CH3)2である)のラジカル、
次式:
【化7】
(式中、Xは、−O−又は−NH−で、R12は、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルで、−R13は、−(CH2)4−NH3+、−(CH2)3NH−C(=NH)−NH3+、−(CH2)3NH3+である)のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体、
から選択される基であり、
R70基の対アニオンが、便宜の基であり、特に塩化物、硫酸塩、リン酸塩又は酢酸塩から選択され、好ましくは塩化物であり;
・R90は、ヒドロキシエチルアミノ−、ヒドロキシアルキルオキシ−、又はポリオキシアルキレンであり;
・p,q,r及びsは、正の整数であり;
・(p)/(p+q+r+s)は、疎水基GHのモルグラフト度として定義され、2〜30モル%の範囲であり、但し、各コポリマー鎖は、平均して、少なくとも三つの疎水性グラフト部を有しており;
・(q)/(p+q+r+s)は、陽イオン基のモルグラフト度として定義され、10〜98モル%の範囲であり;
・(p+q+r+s)は、50〜300の範囲であり、好ましくは100〜250の間であり;
・(r)/(p+q+r+s)は、0〜78モル%の範囲であり;
・(s)/(p+q+r+s)は、0〜55モル%の範囲である)を有し、また、その製剤可能な塩を包含する。
【0097】
更に、ヒスチジンに由来する式(I)のポリアミノ酸の調製及び合成に関する詳細に関しては、特許出願FR 05 53302を参照されたい。
更に、ヒスチジンに由来するもの以外の式(I)のポリアミノ酸の調製及び合成に関する詳細に関しては、仏国特許出願FR 07 03185を参照されたい。
【0098】
好ましくは、疎水基GH及び陽イオン基は、ペンダント(又は垂れ下がっている)基としてランダムに位置している。
【0099】
概して、上述の一般式(I)は、単にブロックコポリマーだけでなく、ランダムコポリマー又はマルチブロックコポリマーをも示すものとして解釈されるべきである。
【0100】
好ましくは、本発明に従う製剤中のポリマー(PO)の濃度は、特に活性成分(AP)が治療用タンパク質である場合、4〜50mg/mlの間とすることができる。この濃度の範囲内では、小口径の針、例えばゲージ27、更にはゲージ29の針によって、製剤を容易に注入することができる。例2、3及び4は、かかる製剤を詳細に説明する。
【0101】
好ましくは、本発明に従う製剤中のポリマー(PO)の濃度が、5〜30mg/mlの間とすることができ、更に好ましくは5〜15mg/mlの間である。
【0102】
有利には、活性成分(AP)濃度のポリマー(PO)濃度に対する比Rが、0.0001〜1.5の間とすることができる。また、この比Rは、0.01〜1.2の間とすることもできる。
【0103】
代替の態様によれば、本発明に従う製剤は、陽イオン基(CG)のモル濃度に対して、の二価の陽イオンZn++を0.05〜2モル当量の割合で備えることができる。
【0104】
特に、本発明に従う製剤は、陽イオン基(CG)のモル濃度に対して、追加された二価の陽イオンZn++を0.25〜0.75モル当量の割合で備えることができ、好ましくは0.5eqに等しく、更に好ましくは、陽イオン基(CG)が、ヒスチジンエステル、好ましくはそのメチルエステル及びそのエチルエステル、ヒスチジノール、ヒスタミン、ヒスチジンアミド、ヒスチジンアミドのN−モノメチル誘導体及びヒスチジンアミドのN,N'−ジメチル誘導体からなる群から選択されたヒスチジン誘導体から得られる場合である。
【0105】
他の代替の態様によれば、本発明に従う製剤は、追加される二価の陽イオンを備えていない。
【0106】
本発明に用いるポリマーは、2000〜200000g/molの間のモル質量を有し、好ましくは5000〜100000g/molの間である。
【0107】
本発明の特に好適な実施形態によれば、陽イオン基(CG)が半中和pHが7.0未満の弱塩基から選択される場合、本発明に用いるポリマー(PO)は、pGlu(x)GH(y)CG(z)NG(1−x−y−z)の構造を示し、xは0〜20%の間で、yは2〜30%の間で、zは60〜95%の間で、1−x−y−zは0〜15%の間となる。
【0108】
また、x、y及びzの値は、xが0〜20%の間、yが2〜10%の間、zが75〜95%の間、1−x−y−zが0〜15%の間となるようにすることもできる。
【0109】
また、x、y及びzの値は、xが0〜20%の間、yが15〜25%の間、zが60〜80%の間、1−x−y−zが0〜15%の間となるようにすることもできる。
【0110】
ポリマーPOが中性基(NG)を有していない場合、x、y及びzの値は、xが0〜20%の間、yが2〜30%の間、zが60〜95%の間となるようにすることができる。
【0111】
本発明の他の好適な実施態様によれば、陽イオン基(CG)が第4級アンモニウム又は半中和pHが8.0より大きい少なくとも一つの強塩基を含む群から選択される場合、x、y及びzの値は、xが10〜50%の間、yが2〜30%の間、zが15〜50%の間、1−x−y−zが10〜55%の間となるようにすることができる。
【0112】
また、x、y及びzの値は、xが15〜30%の間、yが2〜30%の間、zが15〜25%の間、1−x−y−zが40〜55%の間となるようにすることもできる。
【0113】
また、x、y及びzの値は、xが25〜50%の間、yが2〜30%の間、zが25〜50%の間、1−x−y−zが10〜30%の間となるようにすることもできる。
【0114】
ポリマーPOが中性基(NG)を有していない場合、x、y及びzの値は、xが10〜55%の間、yが2〜30%の間、zが40〜60%の間となるようにすることもできる。
【0115】
陽イオン電荷が過剰であるため、本発明に用いるポリマーPOは、陽イオン性であり、製剤のpHf値で可溶である。この電荷は、中性pHにて部分的又は完全に中和されるため、ポリマーが沈殿する。理論によって制限されるものではないが、pHの上昇により誘発されるこの沈殿現象は、製剤pHと生理学的pHの間でポリマーに対する全電荷の減少と、疎水性側基の存在とに起因すると思われる。
【0116】
変性ポリグルタミン酸塩の残りのカルボキシル官能基は、pH及び組成に応じて、中性(COOH形態)であるか又はイオン化されている(COO−陰イオン)と理解すべきである。そのため、i)グルタミン酸塩残基もしくはグルタミン酸の残基又はii)ポリグルタミン酸もしくはポリグルタミン酸塩という用語の双方を同じ意味で用いることができる。
【0117】
同様に、アミノ基は、主にそのpKaより下のどんなpHでもイオン化されることになり、また、第4級アンモニウムはどんなpHでもイオン化されることになる。
【0118】
水溶液中では、対カチオンは、ナトリウム、カルシウムもしくはマグネシウム等の金属陽イオン、又はトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンもしくはポリエチレンイミン等のポリアミン等の有機陽イオンとなり得る。それが二価である場合、対カチオンは、二つの閉鎖した一価の陰イオン基を塩化することができる。
【0119】
陽イオン基の対アニオンは、塩化物、硫酸塩、リン酸塩又は酢酸塩からなる群から選択されるのが好ましい。
【0120】
それが二価である場合、対アニオンは、二つの閉鎖した一価の陽イオン基を塩化することができる。
【0121】
本明細書において、本発明に従うポリマーの「製剤可能な塩」という用語は、ポリマーのイオン化した官能基と会合した対イオンを持つ全てのポリマーを含むと理解される。
【0122】
本発明に用いるのに適切なポリアミノ酸は、例えば、当業者に知られた法によって得られる。第一に、α型のポリアミノ酸を得るために最も広く用いられている技術は、例えば、論文「Biopolymers,1976,15,1869」及びH.R.Kricheldorfによる研究「alpha−Amino acid N−carboxy Anhydride and related Heterocycles」,Springer Verlag(1987)に記載されるように、N−カルボキシアミノ酸無水物(NCA)の重合に基づいている。NCA誘導体は、好ましくは、NCA−Glu−O−R3(R3=メチル、エチル又はベンジル)である。その後、ポリマーは、酸の形でポリマーを得るための適切な条件下で加水分解される。これらの方法は、出願人の特許FR−A−2 801 226にて与えられた説明によって引き出される。
【0123】
本発明に従って使用できるいくらかのポリマーは、例えば、様々な重量を有するポリ(α−L−グルタミン酸)、ポリ(α−D−グルタミン酸)、ポリ(α−D,L−グルタミン酸塩)及びポリ(γ−L−グルタミン酸)のタイプであり、商業的に入手できる。
【0124】
GHグラフト部のポリマーの酸性基とのカップリングは、カップリング剤としてのカルボジイミド及び任意の4−ジメチルアミノピリジン等の触媒の存在下、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)等の適切な溶媒中でのポリアミノ酸の反応によって容易に行われる。カルボジイミドは、例えば、ジシクロへキシルカルボジイミド又はジイソプロピルカルボジイミドである。グラフト度は、成分及び反応物質の化学量論又は反応時間によって化学的に制御される。「スペーサー」によって官能基化した疎水性グラフト部は、通常のペプチドカップリング又は酸性触媒による直接縮合によって得られる。
【0125】
カチオン性基及び任意には中性基のポリマーの酸性官能基とのカップリングは、カップリング剤としてのクロロホルマートの存在下、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)等の適切な溶媒中、第二の段階において同時に行われる。
【0126】
カチオン性基が化学的に差異のない二つのアミノ官能基を有する場合(例えば、直鎖ジアミン)、二つの官能基のうち一つを保護する形でそれを導入することができる。その後、保護基を開裂する最終段階を加える。
【0127】
上記基をカップリングするための重合化学及び反応は、標準となっており、当業者によく知られている(例えば、上述の出願人による特許又は特許出願参照)。
【0128】
本発明に従う製剤の調製例については、以下に述べる実施例にて詳細に説明する。
【0129】
上述の本発明に従う製剤の特徴によって、当業者は、ポリマーPOに基づく全ての製剤から、条件(a)、(b)、(c)及び(d)を同時に満たし、このため、前述した要件に対して最適なものを選択することができる。
【0130】
条件(c)及び(d)は、特に選択的である。製剤がpHfでコロイド溶液を形成しない場合、当業者は、このpH値で、多くの非電離モノマーを示すポリマーを選択することになる。一方、ポリマーが沈殿する場合には、このpHでイオン化されるモノマーの数を増やすことが望ましい。
【0131】
しかしながら、直観で分かるものではないが、pHfにてコロイド溶液になり、生理学的pHで沈殿する製剤の中には、条件(d)を満たさないので除外されるものもあるはずであることを指摘することは重要である。従って、条件(d)は、当業者にとって本発明に従う製剤を選択するのに便利な方法である。
【0132】
条件(d)は、本発明に従う製剤が生理学的pHより低いか又はそれに等しいpHに対して沈殿することを意味することを指摘することは重要である。これは、本発明に従う酸性の製剤1mlと緩衝溶液Tp 1mlとを混合した後、その緩衝溶液のpHより低いか又はそれに等しいpH値、即ち<7.2で沈殿が見られるからである。
【0133】
本発明に従う製剤を選択する第二の方法は、沈殿因子PFを推定することである。この因子は、以下の方法で評価される。
a)pH*として記録される沈殿pHの測定
酸性pHf3〜6.5にて、APを持つコロイド溶液は、ナノ粒子を備える透明の液体として存在し、該ナノ粒子の平均流体力学的直径は、T'テストに従い動的光散乱によって測定したところ、0.5μm未満か又はそれに等しく、好ましくは5〜500nmの間であり、更に好ましくは10〜80nmの間である。pHを高めると、本発明に従う溶液は、生理学的pHより低いか又はそれに等しいpHに対して沈殿する必要がある。該溶液が沈殿するpH*値は、Pテストに従って測定される。
b)PFの測定
TM法に従って、ポリマーPO1mgを備えるコロイド溶液0.5mlをpHfからpH*にするのに必要な水酸化ナトリウムのモル数,Δnの測定である。
Cを製剤中のポリマーPOの濃度とし(mg/gで表す)、yを疎水性サイドグラフト部を有するポリマーPOの単量体のモル分率とすることによって、製剤の沈殿因子PFは、下記式:
【数1】
によって求められる。沈殿因子PFの計算例は、実施例において与えられる。
【0134】
本発明の特定の実施において、本発明に従う製剤は、沈殿因子PFが200より大きいことを特徴とし、好ましくは400より大きく、より好ましくは800より大きく、更に好ましくは1500より大きい。
【0135】
本発明に従う製剤の驚くべき態様は、生理学的pHにて沈殿する間に形成されるポリマー鎖の網状構造によって、活性成分(AP)の放出を遅らせることができるが、その粒子の中心でこの同じ活性成分(AP)を補足しない。従って、本発明に従う製剤は、活性成分(AP)の持続的放出と良好な生物学的利用能の両方を得ることができる。
【0136】
活性成分(AP)は、好ましくは、タンパク質、糖タンパク質、一つまたはそれ以上のポリアルキレングルコール鎖と結合したタンパク質[好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG):「PEG化タンパク質」]、ペプチド、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド及びそれらの混合物からなる群から選択され、
更に好ましくは、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダーベポエチン等のエリスロポエチン、ヘモグロビンラフィマー、それらの類似体又はそれらの誘導体;オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、造血を刺激する因子及びそれらの混合物の他、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、第VII(a)因子又は第VII因子等の血液因子;ヘモグロビン、シトクロム、アルブミン、プロラクチン、ルリベリンの他、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン又はナファレリン等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及び類似体;LHRHアンタゴニスト、LHRH競合体、ヒト、ブタ又はウシの成長ホルモン(GHs)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン又はその混合体(IL−2,IL−11,IL−12)の他、インターフェロンアルファ、アルファ−2b、ベータ、ベータ−1a又はガンマ等のインターフェロン;ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンジオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)の他、ベクラペルミン、トラフェルミン、アンセスチム又はケラチノサイト成長因子等の成長因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、VEG−F、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、エタネルセプト、イミグルセラーゼ、ドロトレコギンアルファ、シクロスポリン及び合成類似体、並びに酵素、サイトカイン、抗体、抗原及びワクチンの製剤可能な修飾体及び断片、リツキシマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、エファリズマブ及びセツキシマブ等の抗体の下位群から選択される。
【0137】
他の適切な活性成分は、多糖類(例えばヘパリン)及びオリゴ−又はポリヌクレオチド、DNA、RNA、iRNA、抗体及び生細胞である。活性成分の他の分類は、中枢神経系で作用する医薬品物質、例えば、リスペリドン、ズクロペンチキソール、フルフェナジン、ペルフェナジン、フルペンチキソール、ハロペリドール、フルスピリレン、クエチアピン、クロザピン、アミスルプリド、スルピリド、ジプラシドン等を含む。
【0138】
代替の態様によれば、活性成分は、アントラサイクリン、タキソイドもしくはカンプトテシンのファミリーに属するか又はロイプロリドもしくはシクロスポリン等のペプチドのファミリーに属する疎水性、親水性又は両親媒性の有機小分子、及びそれらの混合物である。
【0139】
他の代替の態様によれば、活性成分は、有利には、以下に示す活性物質のファミリーの内の少なくとも1種から選択される。アルコール依存症の治療薬、アルツハイマー病の治療薬、麻酔薬、末端肥大症の治療薬、鎮痛剤、抗ぜんそく薬、アレルギーの治療薬、抗癌剤、抗炎症薬、抗凝結剤及び抗トロビン薬、抗けいれん剤、抗てんかん薬、抗糖尿病薬、制吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン剤、抗感染薬、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗パーキンソン薬、抗コリン作用薬、咳止め、炭酸脱水酵素阻害薬、心血管作動薬、脂質低下薬、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、降圧剤、血管保護剤、コリンエステラーゼ阻害剤、中枢神経系疾患の治療薬、中枢神経系の刺激剤、避妊薬、受精促進剤、子宮陣痛の誘導剤及び阻害剤、嚢胞性線維症の治療薬、ドーパミン受容体作用薬、子宮内膜症の治療薬、勃起障害の治療薬、不妊治療の薬、消化器疾患の治療薬、免疫刺激剤及び免疫抑制剤、記憶障害の治療薬、抗片頭痛薬、筋弛緩剤、ヌクレオシド類似体、骨粗鬆症の治療薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、精神刺激薬、鎮静剤、睡眠薬及び精神安定剤、神経安定剤、抗不安薬、精神刺激薬、抗うつ剤、皮膚治療薬、ステロイド及びホルモン、アンフェタミン、食欲抑制剤、ノンアナルジージクペインキラー(nonanalgesic painkiller)、バルビツール酸系催眠薬、ベンゾジアゼピン、下剤、向精神薬、並びにこれらの製品の組み合わせである。
【0140】
本発明に従う製剤を、経口的に、非経口的に、経鼻的に、膣内に、眼球に、皮下に、静脈内に、筋肉内に、皮内に、経皮的に、腹腔内に、脳内に、又は口腔内に投与することができる。
【0141】
他の態様によれば、本発明は、少なくとも一つの活性成分を持続放出するためのポリマーPOに基づいた製剤を調製する方法を提供するものであり、該製剤は、特に上述のものであり、前記方法は、
1)3〜6.5の間のpH値で、ポリアミノ酸ポリマー(PO)の水性コロイド溶液を準備する工程であって、陽イオン基(CG)、疎水基(GH)、任意の中性基(NG)及び任意のグルタミン酸塩の各モル分率が、1mlの前記製剤が体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿するほどである工程と;
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を工程1において得られたポリマー(PO)に加える工程であって、前記活性成分が前記ポリマーのコロイド溶液の粒子と非共有で会合している工程と、
を備える。
【0142】
本発明に従う方法の必須の特徴は、高分子電解質ポリマー(PO)粒子のコロイド溶液と活性成分(AP)との単純な混合によって、活性成分を持つ粒子が3〜6.5の間のpHfにて自発的に形成されることである。
【0143】
タンパク質、ペプチド又は小分子等の活性成分は、ポリアミノ酸タイプのポリマー(PO)と自発的に会合することができる。
【0144】
本発明の特定の実施において、活性成分(AP)による高分子電解質ポリマー(PO)ナノ粒子の積み込みは、活性成分(AP)の溶液を高分子電解ポリマー(PO)のコロイド溶液と単純に混合することによって行われる。この会合は、純粋に物理的であり、活性成分(AP)とポリマー(PO)間の共有結合の形成を必要としない。理論に制限されるものではないが、この非特異的な会合は、ポリマー(PO)と活性成分(AP)間の疎水的及び/又は静電気的な相互作用によって起こると考えられる。ペプチドの性質を持つ特定の受容体又は抗原/抗体もしくは酵素/基質タイプの特定の受容体を介して、APをPOナノ粒子に結合する必要がなく、多くの場合、望ましくないことさえあることに注意すべきである。
【0145】
本発明に従う方法の好ましい実施形態においては、該方法は、得られた粒子の化学的な架橋の工程を含まない。従って、得られる粒子は、化学的に架橋されないが、それでも持続時間にわたって活性成分(AP)を放出する。この化学的な架橋がないことは、決定的な利点である。これは、化学的な架橋がないことによって、活性成分(AP)を備える粒子を架橋する工程の間に起こり得る活性成分(AP)の化学分解を避けることができるからである。これは、かかる化学的な架橋が一般に重合可能なものの活性化によって行われ、UV放射物又はグルタルアルデヒド等の変性剤を元来含むからである。
【0146】
有利には、本発明に従う方法は、乾燥粉末の形態で粒子を得るために、例えば凍結乾燥によって、液体製剤を脱水する工程を備える。
【0147】
また、本発明は、上述した水性懸濁液を備える液体製剤から得られた乾燥粉末の形態を備える少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための固体の製剤に関するものである。
【0148】
乾燥粉末は、本発明に従う液体製剤をpH7にして生体外でそれを沈殿させ、次いで、例えば凍結乾燥によってそれを脱水することで得られることができる。
【0149】
有利には、かかる固体製剤は、吸入投与及び肺内投与に使用される。
【0150】
他の態様によれば、本発明の対象は、薬剤を調製する方法であり、特に、経口、経鼻、肺、膣又は眼球経路による、非経口、粘膜、皮下、筋内、皮内、経皮、腹腔内もしくは脳内投与又は腫瘍への投与用の薬剤を調製する方法であり、前記方法は、上述の製剤の少なくとも一つを用いることから本質的になる。
【実施例】
【0151】
1)合成
a)比較:疎水基を有する陰イオン高分子電解質ポリマーPOの合成(合成起源のα−トコフェロールでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
ポリオキシエチレン基準に対して約16900Daに相当する重量のα−L−ポリグルタミン酸15gを80℃で加熱しながらジメチルホルムアミド(DMF)288ml中に溶解させ、ポリマーを溶解させた。その溶液を15℃に冷却し、あらかじめ8mlのDMF中に溶解させた2.5gのD,L-α−トコフェロール(>98%、Fluka(登録商標)から得られる)と、あらかじめ1mlのDMF中に溶解させた280mgの4−ジメチルアミノピリジンと、あらかじめ6mlのDMF中に溶解させた1.6gのジイソプロピルカルボジイミドとを続けて加える。3時間攪拌した後、反応媒体を、15%の塩化ナトリウムと塩酸を含む水1200ml(pH2)に注ぎ込む。その後、沈澱したポリマーを濾過によって回収し、0.1Nの塩酸、水、及びジイソプロピルエーテルで洗浄する。その後、ポリマーを真空下40℃のオーブン中で乾燥させる。およそ90%の収率を得る。モル質量を立体排除クロマトグラフィーによって測定したところ、ポリオキシエチレン基準に対して15500である。グラフトしたトコフェロールのレベルをプロトンNMR分光法によって測定したところ、5.1モル%である。
【0152】
b)陽イオン高分子電解質ポリマーPO−A1の合成(合成起源のα−トコフェロールとヒスチジンアミドとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化8】
指数及び基:m=11、p=209、q=0、T=D,L−α−トコフェロール(T)
【0153】
5%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)3gをNMP38ml中に80℃で加熱することにより溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、2.74gのクロロギ酸イソブチルと、次いで2.2mlのN−メチルモルホリンとを加える。0℃にて温度を維持しながら反応媒体を10分間攪拌する。同時に、8.65gのヒスチジンアミド・二塩酸塩を108mlのNMP中に懸濁させる。その次に、10.6mlのトリエチルアミンを加え、得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの溶液をヒスチジンアミド懸濁液に加える。反応媒体を0℃で2時間攪拌した後、20℃で一晩攪拌する。その後、0.62mlの35%HClと、次いで83mlの水とを加える。その後、得られた溶液をpH3〜4の水500mlに注ぎ込む。その後、その溶液を8分量の食塩水(0.9%のNaCl)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過する。その後、ポリマー溶液を300mlの体積に濃縮する(ポリマー濃度は18mg/gである)。グラフトしたヒスチジンアミドの割合は、D2O中での1H NMRにより測定したところ、95%である。
【0154】
c)陽イオン高分子電解質ポリマーPO−A2の合成(合成起源のα−トコフェロールとヒスチジンアミドとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化9】
指数及び基:m=44、p=154、q=22、T=D,L−α−トコフェロール(T)
【0155】
20%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)10gをNMP125ml中に80℃で加熱することにより溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、5.5gのクロロギ酸イソブチルと、次いで4.4mlのN−メチルモルホリンとを加える。0℃にて温度を維持しながら、反応媒体を10分間攪拌する。同時に、12.9gのヒスチジンアミド・二塩酸塩を161mlのNMP中に懸濁させる。その次に、15.8mlのトリエチルアミンを加え、得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの溶液をヒスチジンアミド懸濁液に加える。反応媒体を0℃で2時間攪拌した後、20℃で一晩攪拌する。その後、1.46mlの35%HClと、次いで200mlの水とを加える。更に、200mlの水と、その後に650mlのエタノールを加え、その次に、pH3〜4の水650ml中に注ぎ込む。その後、その溶液を8分量の食塩水(0.9%のNaCl)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過する。最終的に、ポリマー溶液を250mlの体積に濃縮する(ポリマー濃度は50mg/gである)。グラフトしたヒスチジンアミドの割合は、D2O中での1H NMRにより測定したところ、70%である。
【0156】
d)陽イオン高分子電解質ポリマーPO−Bの合成(合成起源のα−トコフェロールと、エタノールアミンと、アルギニンアミドとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化10】
指数及び基:T=D,L−α−トコフェロール(T)、p=11、q=88、r=48、s=73
【0157】
5%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)10gをNMP125ml中に80℃で溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、5.6mlのクロロギ酸イソブチルと、次いで4.8mlのN−メチルモルホリンとを加える。この反応混合物を0℃で15分間攪拌する。同時に、7.4gのアルギニンアミド・二塩酸塩をNMP93ml中に懸濁させ、次いで4.7mlのトリエチルアミンと、1.2mlのエタノールアミンとを加える。得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの乳濁液をこの懸濁液に加え、反応混合物を0℃で2時間攪拌した後、20℃で一晩攪拌する。2.07mlの35%HCl溶液と、次いで200mlの水とを加えた後、反応混合物を、HClによってpH=3まで酸性にされた水670ml中に滴下し、該pHは1NのHCl溶液で約3に維持される。得られた溶液を8分量の食塩水(0.9%)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過し、約250mlの体積に濃縮する。グラフトしたアルギニンアミドとグラフトしたエタノールアミンの割合は、D2O中でのプロトンNMRにより測定したところ、それぞれ40%と22%である。
【0158】
2)例1(比較):陽イオン誘導体を有していないポリマーPOに基づく製剤(合成a)
合成a)に従って得られたポリマーPOを用いる。
PO溶液12.64gを水2.19gで希釈することで、ポリマーPOのコロイド溶液24mg/gを得る。その次に、必要量のNaCl水溶液とNaOH溶液とをそれぞれ導入することによって、コロイドPO溶液のオスモル濃度及びそのpHを290mOsm及びpH6.95に調整する。
以下、得られた製剤の特性を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表1】
上述のポリマーPOに基づく製剤は、該製剤1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿しない。
【0159】
3)例2:ポリマーPO−A1に基づく製剤
3.1)例2.1:PO−A1の濃度が10mg/gと等しく、IFN-αを備える
a)PO−A1のコロイド溶液の調製
上述の合成b)に従って得られたポリマーPO−A1を用いる。
PO−A1を水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表2】
得られたポリマーPO−A1に基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、それは沈殿因子PF=860であることを特徴とする。ポリマーPO−A1は、pH*が6.5に等しいことを特徴とする。
【0160】
b)タンパク質のポリマーPO−A1との会合
2.4mg/gのタンパク質IFN−α2.18gをPO−A1のコロイド溶液8gに加え、適切なNaCl溶液(0.18g)で希釈することによって、最終濃度を調整する。
【0161】
c)25℃で一晩の会合
以下、最終製剤の特徴を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表3】
【0162】
3.2)例2.2:PO−A1の濃度が45mg/gに等しい
上述の合成b)に従って得られたポリマーPO−A1を用いる。
PO−A1を水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表4】
得られたポリマーPO−A1に基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿せず、沈殿因子PFが166に等しいことを特徴とする。
【0163】
3.3)例2.3:PO−A1の濃度が10mg/gに等しく、IFN-α及び陽イオンZn++を備える
a)0.5eq.のZn++を備えるPO−A1のコロイド溶液の調製
上述の合成b)に従って得られたポリマーPO−A1を用いる。
PO−A1を水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表5】
【0164】
b)タンパク質のポリマーPO−A1との会合
2.4mg/gのタンパク質IFN−α2.17gを段階a)で調製したPO−A1のコロイド溶液7.96gに加え、適切なNaCl溶液(0.18g)で希釈することによって、最終濃度を調整する。
【0165】
c)25℃で一晩の会合
【0166】
d)陽イオンZn++の添加
溶液中に存在する陽イオン誘導体当たり0.5モル当量の陽イオンZn++を達成するため、濃縮された204mg/gのZnCl2溶液の必要量を先の製剤に加える。
以下、最終製剤の特徴を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表6】
得られたポリマーPO−A1に基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、沈殿因子PFが860に等しいことを特徴とする。陽イオン誘導体当たり0.5モル当量の陽イオンZn++を備えるポリマーPO−A1は、pH*が4.8に等しいことを特徴とする。
【0167】
4)例3:IFN−αを備える30mg/gのポリマーPO−A2に基づく製剤
a)PO−A2のコロイド溶液の調製
上述の合成c)に従って得られたポリマーPO−A2を用いる。
PO−A2を水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表7】
得られたポリマーPO−A2に基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、沈殿因子PFが840に等しいことを特徴とする。ポリマーPO−A2は、pH*が6.5に等しいことを特徴とする。
【0168】
b)タンパク質のポリマーPO−A2との会合
2.4mg/gのタンパク質IFN−α2.18gをPO−A2のコロイド溶液8gに加え、適切なNaCl溶液(0.18g)で希釈することによって、最終濃度を調整する。
【0169】
c)25℃で一晩の会合
以下、最終製剤の特徴を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表8】
【0170】
5)例4:IFN−αを備えるか又は備えていないポリマーPO−Bに基づく製剤
5.1)例4.1:PO−Bの濃度が10mg/gに等しく、IFN-αを備える
a)PO−Bのコロイド溶液の調製
上述の合成d)に従って得られたポリマーPO−Bを用いる。
PO−Bを水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表9】
得られたポリマーPO−Bに基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、沈殿因子PFが1150に等しいことを特徴とする。ポリマーPO−Bは、pH*が5に等しいことを特徴とする。
【0171】
b)タンパク質のポリマーPO−Bとの会合
2.7mg/gのタンパク質IFN−α1.8gをPO−Bのコロイド溶液8gに加え、適切なNaCl溶液で希釈することによって、最終濃度を調整する。
【0172】
c)25℃で一晩の会合
粒径をT'テストに従って測定する。
以下、最終製剤の特徴を表に示す。
【表10】
上記のようにして得た製剤は、Qテストにおいて保持因子RQが5より大きいことを特徴とする(RQ=5での遊離IFN−αの割合についてのELISAテスト:8%)。
【0173】
5.2)例4.2:PO−Bの濃度が45mg/gに等しい
上述の合成d)に従って得られたポリマーPO−Bを用いる。
PO−Bを水で希釈し、pHを(適切なNaOH溶液で)調整し、オスモル濃度を(適切なNaCl溶液で)調整する。
【表11】
得られたポリマーPO−Bに基づくコロイド溶液は、該溶液1mlを緩衝溶液Tp1mlに加える間に沈殿し、沈殿因子PFが256に等しいことを特徴とする。ポリマーPO−Bは、pH*が5に等しいことを特徴とする。
【0174】
6)例5(比較):IFN−αを備えるPOに基づく粒子の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPOを用いる。
ポリマーPOを水中に溶解することで、ポリマーPOのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.52に調整する。必要量のNaCl水溶液を導入することで溶液のオスモル濃度を108mOsmに調整する。ポリマーPOの濃度を29.05mg/gに調整する。
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−αを先のポリマーPOコロイド溶液に加える。25℃で一晩、会合を形成する。
以下、得られた粒子の特徴を表に示す。
粒径をT'テストに従って測定する。
【表12】
【0175】
7)例2、3及び5の生体外での結果
このために、本発明に従う製剤からの活性成分の放出をLテストによって測定する。
Lテストにおける放出を時間と共に放出されるタンパク質の割合の形式で図1に示す。
比較の例5の製剤は、POの粒子を23mg/gで含んでおり、10時間で放出されたタンパク質が93%であることを特徴とする放出プロファイルを示す。
例2.1及び3の製剤は、48時間でそれぞれ67%及び65%の注入されたタンパク質を放出するという遅延放出プロファイルを示す。
例2.3の粒子の場合、実験の終わりでゼロにならない放出流量の形成が観察され、48時間で注入されたタンパク質の59%が放出される。
【0176】
8)例2、3及び5の生体内での結果
44匹のラットを8又は12匹の5グループに分け、並行して即時放出IR製剤もしくは比較の例5に対応する持続放出製剤、又は本発明の例2及び3の製剤の一つを300μg/kgの投与量で受けた。
以下、薬物動態の結果を表に示す。
【表13】
【0177】
Cmaxは、すべての動物に対するタンパク質の平均最大血漿中濃度を示す。
Tmax中央値は、血漿中濃度が最大となる時間の中央値を示す。
AUCは、時間の関数として血漿中濃度の曲線下平均面積を示す。
T50%AUCは、曲線下面積がその合計値の50%に到する平均時間を示す。
RBAは、検討中の製剤の曲線下面積のIFN IR製剤の曲線下面積に対する比を示す。
【0178】
すべての製剤は、IRに対してCmaxの低下を伴う持続放出プロファイルを示す。
比較例5との比較すると、本発明に従う全ての製剤の終わりの傾きがより小さく、持続した残留吸着を示唆する。
例2.1及び例3の製剤(10mg/g PO−A1および30mg/g PO−A2)に関しては、それぞれのRBA値が57%及び約100%を示す5日以上かけての持続放出に(比較例5の製剤の約3日と比較して)注目すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する液体製剤であって、前記製剤は、少なくとも一つの活性成分(AP)と、ポリマー(PO)又はその製剤可能な塩のコロイド粒子を基にした水性懸濁液とを備えてなり、以下の4つの条件:
(a)ポリマー(PO)が、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸であり、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、前記中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であること;
(b)前記製剤のpHのpHf値が、3.0〜6.5の間であること;
(c)前記pHf値にて、ポリマー(PO)が、活性成分(AP)と自発的に非共有で会合しているコロイド溶液を形成すること;及び
(d)1mlの前記製剤が、体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿すること、
を満たすことを特徴とする製剤。
【請求項2】
前記製剤が、200より大きい、好ましくは400より大きい、好ましくは800より大きい、更に好ましくは1500より大きい沈殿因子PFを有することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤が、5より大きい、好ましくは10より大きい、好ましくは15より大きい、更に好ましくは20より大きい保持因子RQを有することを特徴とする請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
ポリマー(PO)は、pGlu(x)GH(y)CG(z)NG(1−x−y−z)の構造で、合計の重合度(DP)が50〜300の間、好ましくは100〜250の間である構造を有し、ここで、(x)は0〜0.45の間で、(y)は0.02〜0.3の間で、(z)は0.4〜0.98の間で、(1−x−y−z)は0〜0.5の間であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
前記陽イオン基(CG)は、半中和pHが7.0未満の弱塩基から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記陽イオン基(CG)は、少なくとも一つの第4級アンモニウム又は少なくとも一つの強塩基を含む陽イオン基から選択され、半中和pHが8.0より大きいことを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記陽イオン基(CG)が、以下の基:
−NH−(CH2)w−NH3+,Z−(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH2)4−NH−C(=NH)−NH3+,Z−、
−O−(CH2)2−NH3+,Z−、
−O−(CH2)2−N+(CH3)3,Z−、及び
下記式:
【化1】
(式中、−R1は、アルコキシ、好ましくは−OMeもしくは−OEtであるか、又は−R1は、−NH2、アルキルアミノ−、好ましくは−NH−CH3もしくは−N(CH3)2であり;−R13は、−(CH2)4−NH3+,Z−、−(CH2)3−NH−C(=NH)−NH3+,Z−、−(CH2)3−NH3+,Z−である)のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体、
から選択され、Z−が、塩化物、硫酸塩もしくはリン酸塩又は酢酸塩であり、好ましくは塩化物であることを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
xが10〜55%の間であり、
yが2〜30%の間であり、
zが10%より大きいか又は10%と等しく、(x−10)%から(x+15)%の間であり、
中性基の数は100%に到達するための追加のパーセンテージに相当しており、任意には0と等しくすることができることを特徴とする請求項3、6及び7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
xが20〜55%の間であり、
yが2〜7.5%の間であり、
zが20%より大きいか又は20%と等しく、(x−10)%から(x+15)%の間であり、
中性基の数は100%に到達するための追加のパーセンテージに相当しており、任意には0と等しくすることができることを特徴とする請求項3、6及び7のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
前記疎水基(GH)が、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができる直鎖又は分岐C8〜C30アルキル、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができるC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル、並びに
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができるC8〜C30(多)環式化合物、
からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
前記中性基(NG)が、ヒドロキシエチルアミノ−ラジカル、ヒドロアルキルオキシ−ラジカル及びポリオキシアルキレンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記ポリマー(PO)が、グルタミン酸塩残基に結合したポリアルキレン(好ましくはポリエチレン)グリコールタイプのグラフト部を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記ポリアミノ酸(PO)が、下記式(I):
【化2】
(式(I)中、
・Aは、独立して、
−NHR基(ここで、RはH、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルを示す)、
次式:
【化3】
(式中:
R7は、OH、OR9又はNHR10であり、
R8、R9及びR10は、独立して、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルである)の末端アミノ酸残基又は末端アミノ酸誘導体、
であり;
・Bは、直接結合、又は二価、三価もしくは四価の結合基であり、好ましくは−O−、−NH−、−N(C1〜C5アルキル)−、アミノ酸(好ましくは天然アミノ酸)残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基、アミノアルコール残基又は1〜6の炭素原子を有するヒドロキシ酸残基のラジカルから選択され;
・Dは、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アシル基又はピログルタミン酸塩であり;
・疎水基GHは、それぞれが互いに独立して、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができる直鎖又は分岐C8〜C30アルキル、又は
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができるC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル、又は
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができるC8〜C30(多)環式化合物、
から選択される基であり;
・R70は、
−NH−(CH2)w−NH3+(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH2)4−NH−C(=NH)−NH3+、
−O−(CH2)2−NH3+、
−O−(CH2)2−N+(CH3)3、
下記式:
【化4】
(式中、−R11は、−H、−CO2H、アルキルエステル(好ましくは−COOMe及び−COOEt)、−C(=O)−NH2、−C(=O)−NH−CH3又は−C(=O)−N(CH3)2である)を有する基、
次式:
【化5】
(式中、Xは、−O−又は−NH−で、R12は、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルで、R13は、−(CH2)4−NH3+、−(CH2)3NH−C(=NH)−NH3+、−(CH2)3NH3+である)のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体、
から選択される基であり、
前記R70の対アニオンが、便宜の基であり、好ましくは塩化物であり;
・R90は、ヒドロキシエチルアミノ−、ヒドロキシアルキルオキシ−、又はポリオキシアルキレンであり;
・p,q,r及びsは、正の整数であり;
・(p)/(p+q+r+s)は、疎水基GHのモルグラフト度として定義され、2〜30モル%の範囲であり、但し、各コポリマー鎖は、平均して、少なくとも三つの疎水性グラフト部を有しており;
・(q)/(p+q+r+s)は、陽イオン基のモルグラフト度として定義され、10〜98モル%の範囲であり;
・(p+q+r+s)は、50〜300の範囲であり、好ましくは100〜250の間であり;
・(r)/(p+q+r+s)は、0〜78モル%の範囲であり;
・(s)/(p+q+r+s)は、0〜55モル%の範囲である)を有することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
ポリマー(PO)又はその製剤可能な塩の濃度が、前記製剤中4〜50mg/mlの間であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
活性成分(AP)濃度のポリマー(PO)又はその製剤可能な塩の濃度に対する比Rが、0.0001〜1.5の間であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
二価の陽イオンZn++を、陽イオン基(CG)のモル濃度に対して0.05〜2モル当量の割合で備えることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
前記製剤が、追加される二価の陽イオンを備えていないことを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
前記活性成分(AP)が、タンパク質、糖タンパク質、一つ又はそれ以上のポリアルキレングルコール鎖と結合したタンパク質[好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG):「PEG化タンパク質」]、ペプチド、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
更に好ましくは、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダーベポエチン等のエリスロポエチン、ヘモグロビンラフィマー、それらの類似体又はそれらの誘導体;オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、造血を刺激する因子及びそれらの混合物の他、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、第VII(a)因子又は第VII因子等の血液因子;ヘモグロビン、シトクロム、アルブミン、プロラクチン、ルリベリンの他、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン又はナファレリン等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及び類似体;LHRHアンタゴニスト、LHRH競合体、ヒト、ブタ又はウシの成長ホルモン(GHs)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン又はそれらの混合物(IL−2,IL−11,IL−12)の他、インターフェロンアルファ、アルファ−2b、ベータ、ベータ−1a又はガンマ等のインターフェロン;ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンジオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)の他、ベクラペルミン、トラフェルミン、アンセスチム又はケラチノサイト成長因子等の成長因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、VEG−F、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、エタネルセプト、イミグルセラーゼ、ドロトレコギンアルファ、シクロスポリン及び合成類似体、並びに酵素、サイトカイン、抗体、抗原及びワクチンの製剤可能な活性修飾体及び断片、リツキシマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、エファリズマブ及びセツキシマブ等の抗体の下位群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の液体製剤から得られた乾燥粉末の形態を備えることを特徴とする少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する固体の製剤。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載の少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する製剤を調製する方法であって、
1)3〜6.5の間のpH値で、ポリアミノ酸ポリマー(PO)の水性コロイド溶液を準備する工程であって、前記ポリアミノ酸ポリマー(PO)がグルタミン酸残基を含み、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、前記中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であり;
陽イオン基(CG)、疎水基(GH)、任意の中性基(NG)及び任意のグルタミン酸塩の各モル分率は、1mlの前記製剤が体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿するほどである工程と;
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を工程1において得られたポリマー(PO)に加える工程であって、前記活性成分が前記ポリマーのコロイド溶液の粒子と非共有で会合している工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項1】
少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する液体製剤であって、前記製剤は、少なくとも一つの活性成分(AP)と、ポリマー(PO)又はその製剤可能な塩のコロイド粒子を基にした水性懸濁液とを備えてなり、以下の4つの条件:
(a)ポリマー(PO)が、グルタミン酸残基を含むポリアミノ酸であり、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、前記中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であること;
(b)前記製剤のpHのpHf値が、3.0〜6.5の間であること;
(c)前記pHf値にて、ポリマー(PO)が、活性成分(AP)と自発的に非共有で会合しているコロイド溶液を形成すること;及び
(d)1mlの前記製剤が、体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿すること、
を満たすことを特徴とする製剤。
【請求項2】
前記製剤が、200より大きい、好ましくは400より大きい、好ましくは800より大きい、更に好ましくは1500より大きい沈殿因子PFを有することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤が、5より大きい、好ましくは10より大きい、好ましくは15より大きい、更に好ましくは20より大きい保持因子RQを有することを特徴とする請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
ポリマー(PO)は、pGlu(x)GH(y)CG(z)NG(1−x−y−z)の構造で、合計の重合度(DP)が50〜300の間、好ましくは100〜250の間である構造を有し、ここで、(x)は0〜0.45の間で、(y)は0.02〜0.3の間で、(z)は0.4〜0.98の間で、(1−x−y−z)は0〜0.5の間であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
前記陽イオン基(CG)は、半中和pHが7.0未満の弱塩基から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記陽イオン基(CG)は、少なくとも一つの第4級アンモニウム又は少なくとも一つの強塩基を含む陽イオン基から選択され、半中和pHが8.0より大きいことを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記陽イオン基(CG)が、以下の基:
−NH−(CH2)w−NH3+,Z−(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH2)4−NH−C(=NH)−NH3+,Z−、
−O−(CH2)2−NH3+,Z−、
−O−(CH2)2−N+(CH3)3,Z−、及び
下記式:
【化1】
(式中、−R1は、アルコキシ、好ましくは−OMeもしくは−OEtであるか、又は−R1は、−NH2、アルキルアミノ−、好ましくは−NH−CH3もしくは−N(CH3)2であり;−R13は、−(CH2)4−NH3+,Z−、−(CH2)3−NH−C(=NH)−NH3+,Z−、−(CH2)3−NH3+,Z−である)のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体、
から選択され、Z−が、塩化物、硫酸塩もしくはリン酸塩又は酢酸塩であり、好ましくは塩化物であることを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
xが10〜55%の間であり、
yが2〜30%の間であり、
zが10%より大きいか又は10%と等しく、(x−10)%から(x+15)%の間であり、
中性基の数は100%に到達するための追加のパーセンテージに相当しており、任意には0と等しくすることができることを特徴とする請求項3、6及び7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
xが20〜55%の間であり、
yが2〜7.5%の間であり、
zが20%より大きいか又は20%と等しく、(x−10)%から(x+15)%の間であり、
中性基の数は100%に到達するための追加のパーセンテージに相当しており、任意には0と等しくすることができることを特徴とする請求項3、6及び7のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
前記疎水基(GH)が、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができる直鎖又は分岐C8〜C30アルキル、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができるC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル、並びに
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子を有することができるC8〜C30(多)環式化合物、
からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
前記中性基(NG)が、ヒドロキシエチルアミノ−ラジカル、ヒドロアルキルオキシ−ラジカル及びポリオキシアルキレンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記ポリマー(PO)が、グルタミン酸塩残基に結合したポリアルキレン(好ましくはポリエチレン)グリコールタイプのグラフト部を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記ポリアミノ酸(PO)が、下記式(I):
【化2】
(式(I)中、
・Aは、独立して、
−NHR基(ここで、RはH、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルを示す)、
次式:
【化3】
(式中:
R7は、OH、OR9又はNHR10であり、
R8、R9及びR10は、独立して、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルである)の末端アミノ酸残基又は末端アミノ酸誘導体、
であり;
・Bは、直接結合、又は二価、三価もしくは四価の結合基であり、好ましくは−O−、−NH−、−N(C1〜C5アルキル)−、アミノ酸(好ましくは天然アミノ酸)残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基、アミノアルコール残基又は1〜6の炭素原子を有するヒドロキシ酸残基のラジカルから選択され;
・Dは、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アシル基又はピログルタミン酸塩であり;
・疎水基GHは、それぞれが互いに独立して、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができる直鎖又は分岐C8〜C30アルキル、又は
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができるC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル、又は
・任意には少なくとも一つの不飽和結合及び/又は少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはO及び/又はN及び/又はS)を有することができるC8〜C30(多)環式化合物、
から選択される基であり;
・R70は、
−NH−(CH2)w−NH3+(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH2)4−NH−C(=NH)−NH3+、
−O−(CH2)2−NH3+、
−O−(CH2)2−N+(CH3)3、
下記式:
【化4】
(式中、−R11は、−H、−CO2H、アルキルエステル(好ましくは−COOMe及び−COOEt)、−C(=O)−NH2、−C(=O)−NH−CH3又は−C(=O)−N(CH3)2である)を有する基、
次式:
【化5】
(式中、Xは、−O−又は−NH−で、R12は、H、直鎖C2〜C10もしくは分岐C3〜C10アルキル又はベンジルで、R13は、−(CH2)4−NH3+、−(CH2)3NH−C(=NH)−NH3+、−(CH2)3NH3+である)のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体、
から選択される基であり、
前記R70の対アニオンが、便宜の基であり、好ましくは塩化物であり;
・R90は、ヒドロキシエチルアミノ−、ヒドロキシアルキルオキシ−、又はポリオキシアルキレンであり;
・p,q,r及びsは、正の整数であり;
・(p)/(p+q+r+s)は、疎水基GHのモルグラフト度として定義され、2〜30モル%の範囲であり、但し、各コポリマー鎖は、平均して、少なくとも三つの疎水性グラフト部を有しており;
・(q)/(p+q+r+s)は、陽イオン基のモルグラフト度として定義され、10〜98モル%の範囲であり;
・(p+q+r+s)は、50〜300の範囲であり、好ましくは100〜250の間であり;
・(r)/(p+q+r+s)は、0〜78モル%の範囲であり;
・(s)/(p+q+r+s)は、0〜55モル%の範囲である)を有することを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
ポリマー(PO)又はその製剤可能な塩の濃度が、前記製剤中4〜50mg/mlの間であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
活性成分(AP)濃度のポリマー(PO)又はその製剤可能な塩の濃度に対する比Rが、0.0001〜1.5の間であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
二価の陽イオンZn++を、陽イオン基(CG)のモル濃度に対して0.05〜2モル当量の割合で備えることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
前記製剤が、追加される二価の陽イオンを備えていないことを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
前記活性成分(AP)が、タンパク質、糖タンパク質、一つ又はそれ以上のポリアルキレングルコール鎖と結合したタンパク質[好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG):「PEG化タンパク質」]、ペプチド、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
更に好ましくは、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダーベポエチン等のエリスロポエチン、ヘモグロビンラフィマー、それらの類似体又はそれらの誘導体;オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、造血を刺激する因子及びそれらの混合物の他、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、第VII(a)因子又は第VII因子等の血液因子;ヘモグロビン、シトクロム、アルブミン、プロラクチン、ルリベリンの他、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン又はナファレリン等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)及び類似体;LHRHアンタゴニスト、LHRH競合体、ヒト、ブタ又はウシの成長ホルモン(GHs)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン又はそれらの混合物(IL−2,IL−11,IL−12)の他、インターフェロンアルファ、アルファ−2b、ベータ、ベータ−1a又はガンマ等のインターフェロン;ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンジオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)の他、ベクラペルミン、トラフェルミン、アンセスチム又はケラチノサイト成長因子等の成長因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、VEG−F、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、エタネルセプト、イミグルセラーゼ、ドロトレコギンアルファ、シクロスポリン及び合成類似体、並びに酵素、サイトカイン、抗体、抗原及びワクチンの製剤可能な活性修飾体及び断片、リツキシマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、エファリズマブ及びセツキシマブ等の抗体の下位群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の液体製剤から得られた乾燥粉末の形態を備えることを特徴とする少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する固体の製剤。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれかに記載の少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する製剤を調製する方法であって、
1)3〜6.5の間のpH値で、ポリアミノ酸ポリマー(PO)の水性コロイド溶液を準備する工程であって、前記ポリアミノ酸ポリマー(PO)がグルタミン酸残基を含み、ここで、
一部のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの陽イオン基(CG)を有し、前記陽イオン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、
他のグルタミン酸残基は、それぞれがペンダントの疎水基(GH)を有し、前記疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、それぞれペンダントの中性基(NG)を有し、前記中性基(NG)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
任意には、更に他のグルタミン酸残基が、未変性であり;
陽イオン基(CG)、疎水基(GH)、任意の中性基(NG)及び任意のグルタミン酸塩の各モル分率は、1mlの前記製剤が体積1mlのテスト緩衝溶液Tpとの混合中に沈殿するほどである工程と;
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を工程1において得られたポリマー(PO)に加える工程であって、前記活性成分が前記ポリマーのコロイド溶液の粒子と非共有で会合している工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【図1】
【公表番号】特表2010−526041(P2010−526041A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504756(P2010−504756)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055506
【国際公開番号】WO2008/135562
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505437321)フラメル・テクノロジーズ (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055506
【国際公開番号】WO2008/135562
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505437321)フラメル・テクノロジーズ (14)
【Fターム(参考)】
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