説明

活性炭等を内蔵した編物用糸材、その編物および製造方法

【課題】廃油や流出油等の吸着力をよくできる安価な編物用糸材や編物を提供する。
【解決手段】芯糸1のまわりに活性炭や備長炭の微粉末3の十分な量を被覆するとともにそのまわりに薄い不織布4を被覆し、上記活性炭や備長炭の微粉末3を被覆した不織布4のまわりにロックミシン等によって合成繊維や綿繊維の繊維糸5を巻縫いする。この編物用糸材1を経糸および/または縫糸に使用して織物、その他の編物14を編成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染油の回収や汚れ、あか等を除去できる活性炭等を内蔵した織物や、その
他の編物用糸材、その編物および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、養殖が盛んに行われつつあるが、漁船の廃油の流出等によってその海面や水面が
汚染される。そのため、オイルフェンスやオイル回収装置も開発されている。
【0003】
しかし、従来のオイルフェンスやオイル回収装置は、大掛かりなものが多く、またコス
トの負担も大きいものであった。
【0004】
そのため、特開2002−302861号公報のような起毛様不織布による編物製品の
油吸着材が提案されている。しかし、これにあっては、住宅等の汚れ除去の拭き材として
は優れているが、油の吸着材としては吸着力がよくないものである。
【特許文献1】特開2002−302861号公報
【0005】
また、実開平5−35885号公報のように油の吸着性がよい活性炭を添着した活性炭
添着繊維が提案されている。しかし、活性炭微粉末を繊維に含浸しているもので、その含
浸のために活性炭微粉末を分離してエマルジョンとして含浸するものであり、含浸後に乾
燥する必要があって、手間がかかるとともに、繊維に多量の活性炭微粉末を被覆できなく
、油の吸着力が乏しいものである。
【特許文献2】実開平5−35885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、本発明は、活性炭微粉末を十分に被覆できて、廃油や流出油等の吸着力がよ
くできる安価な編物用糸材、編物を開発するのが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みたもので、上記の課題を解決するために、芯糸のまわ
りに活性炭や備長炭の微粉末の十分な量を被覆するとともにそのまわりに不織布を被覆し
、上記活性炭や備長炭の微粉末を被覆した不織布のまわりをロックミシン等によって合成
繊維や綿繊維の繊維糸を巻縫いしたことを特徴とする活性炭等を内蔵した編物用糸材を提
供するにある。
【0008】
また、不織布を0.1〜0.2mm厚さの薄い細長いテープ状のもので袋状として長尺
の太糸や紐状に縫着して形成した活性炭等を内蔵した編物用糸材を提供するにある。
【0009】
さらに、上記編物用糸材を経糸および/または縫糸に使用して編物を編成した活性炭等
を内蔵した編物を提供するにある。
【0010】
さらにまた、芯糸のまわりに活性炭や備長炭の微粉末を被覆して芯糸ガイド内を挿通し
、ついで薄いテープ状の不織布を供給する不織布供給ガイドの中央に挿通して芯糸のまわ
りの活性炭や備長炭の微粉末を薄い不織布で被覆し、この活性炭や備長炭の微粉末を被覆
した不織布のまわりをロックミシン等によって合成繊維や綿繊維の繊維糸を巻縫いするこ
とを特徴とする活性炭等を内蔵した編物用糸材を提供するにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性炭等を内蔵した編物用糸材は、芯糸のまわりに活性炭や備長炭の微粉末の
十分な量を被覆するとともにそのまわりに不織布を被覆し、上記活性炭や備長炭の微粉末
を被覆した不織布のまわりをロックミシン等によって合成繊維や綿繊維の繊維糸を巻縫い
したことによって、活性炭や備長炭の微粉末の十分な量を収容できて不織布を介してこぼ
れ出ないように被覆でき、ロックミシン等で繊維糸を巻縫いして活性炭等を内蔵した編物
用糸材にできるものである。
【0012】
また、不織布を0.1〜0.2mm厚さの薄い細長いテープ状のもので袋状として長尺
の太糸や紐状に縫着して形成するようにすることによって、上記した活性炭等を内蔵した
編物用糸材を長尺のものに容易に形成できて、織物や、その他の編物の経糸や緯糸に利用
できる。
【0013】
さらに、上記編物用糸材を経糸および/または縫糸に使用して編物を編成することによ
って、上記のように活性炭等を内蔵した編物用糸材を利用した編物で、養殖の海面や湖水
面や釣り堀等に浮遊した廃油や流出油等を活性炭や備長炭の微粉末を介して有効に吸着で
き、そのまわりの不織布に多量に付着させて養殖場や釣り堀の水質を浄化できたり、また
浴槽内に浮かべてアカの吸着除去や脱臭、マイナスイオンを発生、壁面内や畳内に装着し
てホルムアルデヒド等の有害物質の吸着除去、脱臭、マイナスイオンを発生するようにで
きる。
【0014】
さらにまた、芯糸を活性炭や備長炭の微粉末を被覆して芯糸ガイド内を挿通し、ついで
薄いテープ状の不織布を供給する不織布供給ガイドの中央に挿通して芯糸のまわりの活性
炭や備長炭の微粉末を薄い不織布で被覆し、この活性炭や備長炭の微粉末を被覆した不織
布のまわりをロックミシン等によって合成繊維や綿繊維の繊維糸を巻縫いすることによっ
て、上記した活性炭等を内蔵した編物用糸材を容易に製造できて、活性炭等を内蔵した織
物、その他の編物を形成でき、上記のように利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の活性炭等を内蔵した編物用糸材、その編物および製造方法は、芯糸のまわりに
活性炭や備長炭の微粉末の十分な量を被覆するとともにそのまわりに不織布を被覆し、上
記活性炭や備長炭の微粉末を被覆した不織布のまわりをロックミシン等によって合成繊維
や綿繊維の繊維糸を巻縫いし、織物、その他の編物を編成することを特徴としている。
【0016】
活性炭等を内蔵した編物用糸材1は、図1(a)、(b)に示すように1本または複数
本のアクリル等の合成糸や綿糸等の芯糸2のまわりに活性炭や備長炭の微粉末3の十分な
量を被覆し、さらにそのまわりに薄い不織布4を被覆して所定の長さとしている。
【0017】
そして、この活性炭や備長炭の微粉末3を内装した不織布4のまわりに合成繊維や綿繊
維の繊維糸5を巻縫いして、活性炭等を内蔵した太糸状や紐状の編物用糸材としている。
【0018】
上記芯糸2は、使用目的に対応して極細糸から太糸までの所定径のものが利用でき、1
本ないし撚り糸の適宜のものが利用でき、また不織布4もできるだけ薄くて活性炭や備長
炭の微粉末3を被覆できる0.05〜0.5mm厚さ、好ましくは0.05〜0.1mm
厚さの編物用糸材1のほぼ外周分の所定幅のテープ状の安価な適宜のものが利用でき、特
に規格外品等の廃品を利用するのが製造費を低減できて好ましい。
【0019】
このような活性炭等を内蔵した編物用糸材1は、たとえば図2のように所定容量のホッ
パー6に活性炭や備長炭の微粉末3を装填し、その中に芯糸2を挿通し、ホッパー6に1
〜5mm径の細径の1〜2m長さのパイプの芯糸ガイド7を接続してその中に芯糸2を挿
通し、ホッパー6に装填した活性炭や備長炭の微粉末3を芯糸2のまわりに均一状に十分
に被覆できるようにしている。その量としては、0.1〜1.0g/mとすることができ
、特に0.5g/m位が好ましく、0.1g/m以下では効果が乏しく、1.0g/m以
上でもよいが、材料費が高くなる。
【0020】
そして、上記芯糸ガイド7の先端部を図2のように筒状の不織布供給ガイド8に挿入し
、この不織布供給ガイド8の後部側の上下等の対向する方向から所定幅のテープ状の薄い
不織布4、4をそれぞれ供給し、芯糸2のまわりに活性炭や備長炭の微粉末3を均一な被
覆状態にテープ状の不織布4、4をそれぞれ上下から包み込むようにして1〜2重状に被
覆して前方へ繰り出せるようにしている。
【0021】
このようにして芯糸2のまわりに活性炭や備長炭の微粉末3の均一な十分な量を被覆状
態として不織布4、4で活性炭等を内蔵した編物用中間糸材9を図3のようにメローミシ
ン等のオーバーロックミシン10等に供給し、搖動昇降するミシン針11を介してその針
糸の合成繊維や綿繊維の繊維糸5に上糸12、下糸13をかがり縫いして巻縫いし、活性
炭等を内蔵した編物用糸材1を形成していくようにできる。
【0022】
上記のように形成した活性炭等を内蔵した編物用糸材1は、所要の編織機(図示せず)
に緯糸および/または経糸として使用し、これらを適宜のピッチで供給して図4のように
平織り等の所定の大きさの織物、その他の編物14に編成できるものである。
【0023】
なお、活性炭等を内蔵した編物用糸材1は、緯糸として両側端部で折り返して編成し、
経糸には活性炭を内蔵しないものを使用して長尺の編物14とすると、この編物14を適
宜の長さに切断しても活性炭の微粉末がこぼれ出なく使用できて好ましい。
【0024】
上記した編物14は、適宜の寸法に切断して養殖の海面や湖水面、釣り堀の水面に適当
な間隔で浮遊させると、これらの海面や水面に浮かんでいる廃油や流出油等を有効に吸着
できて、養殖場や釣り堀を浄化できる。この際、不織布4は、合成繊維のものが浮力を生
じるようにできて好ましい。
【0025】
また、風呂や浴槽に浮かべても、浮遊しているアカ等を吸着して除去したり、水質の浄
化ができ、さらに壁面形成のボード面に貼り付けたり、ベッドや畳床内に内装して屋内に
発生するホルムアルデヒド等の有害物質を吸着除去して空気の浄化やマイナスイオンを生
じるようにできる。
【0026】
さらにまた、活性炭等を内蔵した編物用糸材1を極細状や細状に形成して所要の形状に
して枕カバー、シーツ、カーテンに利用したり、靴の中敷やブーツの内周面に装着したり
、おむつ、ペットのトイレ用マット、その他にも利用することもでき、さらに空間層を適
宜に設けた表裏両面層を形成する織物に袋状部を設けて、その袋状部に内装して室内外用
装置品の編物14にも適用できる。なお、必要により、これらは洗濯して繰り返して使用
可能である。
【実施例】
【0027】
図1以下は、本発明の一実施例を示すものである。図2のように所要のホッパー6にア
クリルの3芯の撚り糸の2〜3mm径とした芯糸2を挿通し、ホッパー6に活性炭の微粉
末3を装填し、上記芯糸2を芯糸2よりやや口径の大きい芯糸ガイド7に挿通してさらに
不織布供給ガイド8に挿通して適宜の速度で前方へ繰り出すようにしている。
【0028】
そして、この不織布供給ガイド8には、図2のように上下に不織布供給パイプ片15、
16をそれぞれ上記した芯糸2を包み込むように不織布供給ガイド8に嵌装状態にそれぞ
れ配設し、上下から供給する0.1mm厚さの細テープ状の不織布4、4でそれぞれ包み
込むようにして二重状に被覆するように供給している。
【0029】
したがって、不織布供給ガイド8から突き出した芯糸2、上下のテープ状の不織布4、
4を巻き込み装置(図示せず)で引き出すと、芯糸2のまわりにホッパー4の活性炭の微
粉末が十分に被覆していくとともに、不織布供給ガイド8部で上下から供給されるテープ
状の不織布4、4が上下からU字状、逆U字状になって二重状に包み込んで、図1(a)
、(b)のように芯糸2まわりの活性炭の微粉末3を被覆して前方へ太糸状や紐状となっ
て繰り出して形成されていく。
【0030】
このように太糸状や紐状とした活性炭等を内蔵した編物用糸中間材9を、図3のように
ロックミシン10等に供給し、搖動昇降するミシン針11を介してその針糸の合成繊維や
綿繊維の繊維糸5に上糸12、下糸13をかがり縫いして巻縫いして活性炭等を内蔵した
編物用糸材1を形成し、この編物用糸材1を編成機に緯糸や経糸として供給して編成する
と、図4のように所要の活性炭等を内蔵した織物の編物14を製造することができる。
【0031】
この編物14を適宜の長さに切断して、上記したように所要の養殖場や釣り堀、風呂、
浴槽、壁、畳等に使用して廃油や流出油等を有効に吸着できて、養殖場や釣り堀を浄化し
たり、浮遊しているアカ等を吸着して除去して水質を浄化でき、さらに壁面のボード面に
貼り付けたり、畳床内に内装して屋内に発生するホルムアルデヒド等の有害物質を吸着除
去して空気を浄化するようにできる。
【0032】
上記では、活性炭を使用したが、同様の効果を有する備長炭やシリカゲル等も利用する
こともできるものである。
【0033】
なお、上記編物には、上記したように経糸と緯糸とを交錯して織成する織物を含み、ま
たメリヤス製品等のいわゆるニット製品をも含む概念であり、本発明の趣旨にもとづいて
活性炭等を内蔵した上記の編物用糸材1を適宜に編成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例の拡大側断面図(a)と拡大縦断面図(b)、
【図2】同上の芯糸に活性炭等を被覆する説明用概要図、
【図3】同上のロックミシンで巻縫いする説明用図、
【図4】同上の活性炭や備長炭の微粉末内蔵の編物の説明用図。
【符号の説明】
【0035】
1…編物用糸材 2…芯糸 3…活性炭等の微粉末 4…不織布
5…繊維糸 6…ホッパー 7…芯糸ガイド 8…不織布供給ガイド
10…ロックミシン 14…編物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸のまわりに活性炭や備長炭の微粉末の十分な量を被覆するとともにそのまわりに不
織布を被覆し、
上記活性炭や備長炭の微粉末を被覆した不織布のまわりをロックミシン等によって合成
繊維や綿繊維の繊維糸を巻縫いしたことを特徴とする活性炭等を内蔵した編物用糸材。
【請求項2】
不織布を0.1〜0.2mm厚さの薄い細長いテープ状のもので袋状として長尺の太糸
状や紐状に縫着して形成した請求項1に記載の活性炭等を内蔵した編物用糸材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の編物用糸材を経糸および/または縫糸に使用して編物を編成
した活性炭等を内蔵した編物。
【請求項4】
芯糸のまわりに活性炭や備長炭の微粉末を被覆して芯糸ガイド内を挿通し、ついで薄い
テープ状の不織布を供給する不織布供給ガイドの中央に挿通して芯糸のまわりの活性炭や
備長炭の微粉末を薄い不織布で被覆し、この活性炭や備長炭の微粉末を被覆した不織布の
まわりをロックミシン等によって合成繊維や綿繊維の繊維糸を巻縫いすることを特徴とす
る活性炭等を内蔵した編物用糸材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−138295(P2008−138295A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322698(P2006−322698)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(594134877)宮田布帛有限会社 (6)
【Fターム(参考)】