説明

活性炭

【課題】暗光下において、剥離せづ、継続的に触媒効果を発現するリン酸チタニア系化合物を広大な面積に坦持することにより効果的に酸化分解力を生じさせ、気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物が分解除去できる活性炭を提供することにある。
【解決手段】活性炭の外表面と外表面に開口した細孔内にリン酸チタニア系化合物を担持する。リン酸チタニア系化合物の前駆体としてのリン酸チタネート溶液またはリン酸チタニア分散液に界面活性剤を混合する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物の分解除去の機能を有する活性炭に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、広大な表面積を持つため物質に対して優れた吸着能を有し、気体または液体の消臭、浄化、有害物質の除去等に広く用いられている。
【0003】
しかしながら、活性炭は、気体や液体の物質成分を吸着してブレイクポイントに達すると吸着能が低化する。さらに、微生物の除去や化合物の分解除去には効果的でないとされている。
【0004】
これら活性炭の欠点を改良すべく活性炭を坦体として外表面と外表面に開口した細孔内に触媒を坦持させて、気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物の分解除去の機能を付与させた次の様な技術が提案されてきた。
【0005】
例えば銅酸化物を活性炭に坦持して、ガス中のアンモニアやアセトアルデヒドを除去する。
【0006】
さらに、チタニア(TiO)光触媒を活性炭に坦持させ、光照射下で臭気成分を分解する。
【0007】
また、光触媒活性を高めるためにバナジウム、クロム、マンガン等の金属をドーピングしたチタニア(TiO)等の光触媒を活性炭に坦持して可視光も利用できるようにして生活用品の防汚を図る。
【0008】
このように、活性炭に様々な触媒を坦持して、活性炭に機能を追加して吸着能以外に化学物質や有害物質の酸化分解、消臭、防汚等の機能を付与する技術が提案されてきた。
【0009】
しかしながら、銅酸化物を活性炭に坦持して、ガス中のアンモニアやアセトアルデヒドを除去する方法は、除去できるガス成分が限定されるということと銅酸化物が脱落しやすいと言う問題点を有する。
【0010】
チタニア(TiO)光触媒は、暗光下では触媒効果が発現しないので光源として紫外線ランプを使用しなくてはならず設備が複雑化することや、塗布膜が剥離し易いこと等の問題を有している。
【0011】
金属がドーピングされたチタニア(TiO)は紫外線より長波長の可視光下でも利用できるが、いずれにしても暗光下では触媒効果がないこと、塗布膜が剥離し易いこと等の問題を有している。
【0012】
このような経過後、生活用品などの表面に坦持させて暗光下でも抗菌、消臭および防カビ効果を発現するリン酸チタニア系化合物が提案された。
【特許文献1】特開S53−14932
【特許文献2】特開H06−170220
【特許文献3】特開H09−192496
【特許文献4】特開H10−226509
【特許文献5】特開H14−308712
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明は、暗光下において、剥離せづ、継続的に触媒効果を発現するリン酸チタニア系化合物を広大な面積に坦持することにより効果的に酸化分解力を生じさせ、気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物が分解除去できる活性炭を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、外表面と外表面に開口した細孔内にリン酸チタニア系化合物を担持し、暗光下でも気体あるいは液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物が分解除去できるようにしたことを特徴とする活性炭にある。
【0015】
第2の発明は、前記第1の態様において、リン酸チタニア系化合物の前駆体としてのリン酸チタネート溶液またはリン酸チタニア分散液に界面活性剤を混合する工程を含むことを特徴とする活性炭にある。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明では、気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物の分解除去等の機能を暗光下でも生じ、剥離することなく、継続的に発現することができる活性炭を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明に使用される活性炭の原料には、炭素質物質が使用することができる。例えば、粉末活性炭には、おが屑、硬質木材チップ、木炭等が、さらに、粒状活性炭には、ヤシ殻活性炭、石炭等が、また、繊維状活性炭には、レーヨン、石炭ピッチ、石油ピッチ等が使用される。
【0019】
活性炭は用途に応じて粉末状、粒状、繊維状等の形態で使用されるが、何れも本発明に適用することができる。
【0020】
本発明の活性炭に坦持される触媒には、リン酸チタニア系化合物(特開H14−308712)を用いる。このリン酸チタニア系化合物は生活用品の表面に坦持され暗光下でも抗菌、消臭、防カビの触媒効果を発現して自己浄化をすることに特徴がある。
【0021】
これに対して、本発明の特徴は、前記リン酸チタニア系化合物を広大な表面積を持つ活性炭に坦持し、その広大な表面積を利用して気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物の分解除去等をおこなうことにある。
【0022】
リン酸チタニア系化合物の前駆体にはリン酸チタネート溶液またはリン酸チタニア分散液を使用し、界面活性剤を添加する。
【0023】
この理由は、活性炭の表面には有機官能基が残留し疎水性であるため、水またはアルコールを分散媒または溶媒とする前記前駆体は活性炭の細孔に浸透し難い。そこで、前記前駆体に界面活性剤を添加し活性炭の細孔の奥深くまで浸透させる。
【0024】
界面活性剤にはアニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系があり、アニオン系の安価なアニオン系のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いたが、何等これに限定されるものではない。濃度は、0.001mol/l〜0.01mol/lの範囲で効果的であったが、これに限定されるものではなく、他の界面活性剤を用いれば、それに対応した上限値、下限値が設定される。
【0025】
界面活性剤入り前駆体を活性炭に塗布する方法は、界面活性剤入り前駆体を活性炭に噴霧するかまたは活性炭を界面活性剤入り前駆体に浸漬する。界面活性剤入り前駆体と活性炭の比率は概略1cc/5g程度であるが、これに限定されるものではなく活性炭の形態等によって適宜に設定する。
【0026】
次に、加熱乾燥させてリン酸チタニア系化合物を固着坦持させる。温度は、260℃から350℃が、時間は、1時間から2時間が望ましい。大気雰囲気では2時間以上焼成すると活性炭の焼損がすすむので、活性炭を入れた容器を遮断したり、窒素、アルゴン等の不活性ガスを容器内に注入する方法も焼損を避けるのに効果的である。
【0027】
本発明の活性炭は、従来使用されている産業の活性炭にそのまま置換可能である。また、外表面と外表面に開口した細孔に坦持されたリン酸チタニア系化合物はバインダーを用いずに活性炭に固着されているので脱離しにくく耐久性がある。異物等が付着しこれを除去したい時には、水洗浄後、自然乾燥又は加熱乾燥により再使用可能であり、洗浄しても触媒機能の低下はおこらないので、維持管理が容易である。
【0028】
本発明の活性炭は、気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物の分解除去等の機能を暗光下でも生じるので、バルク状にしても全体がその機能を有し、これを利用して新規な産業分野に適用できる。例えば、清酒、ワイン等の腐敗、変質防止のために低温殺菌を行っているが、この低温殺菌工程に代えて前記バルク状にした本発明の活性炭に処理前の清酒、ワイン等を流通させて殺菌することができ、加熱による品質低下の改善や、エネルギーコストの低下が図れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面と外表面に開口した細孔内にリン酸チタニア系化合物を担持し、暗光下でも気体または液体の除菌、消臭、浄化、防汚、化合物が分解除去できるようにしたことを特徴とする活性炭。
【請求項2】
請求項1に記載の活性炭において、リン酸チタニア系化合物の前駆体としてのリン酸チタネート溶液またはリン酸チタニア分散液に界面活性剤を混合する工程を含むことを特徴とする活性炭。

【公開番号】特開2007−76952(P2007−76952A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266762(P2005−266762)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(303047584)
【Fターム(参考)】