説明

活性物質放出のためのフィルム成形された溶解可能な製剤およびこれらの製造方法

【課題】口蓋および口粘膜の他の表面に付着する、これらのフィルム成形投与形態は、使用する人または患者において不快な感覚を生じ得、即ちウェーハにより生じた「マウスフィール(mouthfeel)」は、不快であり、不安を誘発することになる。これを改善する方法の提供。
【解決手段】水性媒体に溶解可能であり、ヒトまたは動物体中に物質を投与するために用いられるフィルム成形製剤に関し、前述の製剤は、少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む。製剤に、湿気の影響の下で、または水性媒体の存在下で、または高温変性が発生した際にガスを発生する1種または数種の成分を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体中で崩壊可能であり、水溶性ポリマーに基づいて製造され、ヒトまたは動物体への物質の投与のために用いることができる、フィルム成形製剤(film-shaped preparation)に関する。本発明はさらに、このような製剤の製造方法およびこれらの薬学的投与形態としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水性環境において崩壊し、活性物質の口腔中または他の開口部または体の腔中での迅速な放出を可能にする、平坦な形状の投与形態、特に経口投与形態は、すでに知られている。このような投与形態を、例えば「ウェーハ」の形態で構成することができる。これらの小さい層の厚さおよび崩壊可能性または溶解可能性により、これらのフィルム成形された、平坦な投与形態は、口腔における医薬および他の活性物質の迅速な放出に特に適する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ヒトまたは動物体に物質を送達するための、平坦な形状の、ウェーハ状のフィルムは、一般に、フィルム形成性の、水溶性のポリマーから製造されている。これらのウェーハが、水または体液(例えば唾液)と接触する際には、ポリマーは溶解し、従って活性物質を放出する。水性液体が、ウェーハの内部の領域に一層迅速に到達するに従って、ウェーハは、一層迅速に崩壊する。従って、崩壊速度は、層の厚さが増大するに従って減少する。
【0004】
このような系の厚さは、次に、大きい程度に、案内されるべき活性物質の量およびタイプにより決定される。厚いウェーハは、これらの平坦な形状およびこれらの遅延された崩壊のために、口蓋に付着する不快な特性を有する。これは、一方において、表面的に溶解し、従ってドロドロした、および付着性のフィルムを形成するポリマー層のためであり、他方において、口蓋の上側から下側への圧力勾配のために口の粘膜との接触により口蓋に付着する投与形態のためである。
【0005】
口蓋および口粘膜の他の表面に付着する、これらのフィルム成形投与形態の特性は、関連する人または患者において不快な感覚を生じ得、即ちウェーハにより生じた「マウスフィール(mouthfeel)」は、不快であり、不安を誘発し、従って改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明の目的は、前述のタイプのフィルム成形製剤であって、迅速に崩壊する投与形態の既知の利点を有し、同時に、加速された活性成分放出をもたらす改善された崩壊特性を特徴とする、前記フィルム成形製剤を提供することにあった。追加の目的は、口の粘膜に接着するかまたは付着する傾向を減少させ、従って製剤を経口投与形態として用いる場合に改善された「マウスフィール」がもたらされるようにすることにあった。
他の目的は、前述の改善された特性を有するフィルム成形製剤を得ることができる方法を示すことにあった。
【0007】
この目的は、驚異的なことに、主要な請求項の前文に記載の特徴を有し、さらに、水分の作用により、または水性媒体の存在下で、または温度の変化が生じる場合にガスを発生する1種または2種の成分を含む、フィルム成形製剤を提供することにより達成される。このガスは、これが例えば口腔中に配置され、唾液と接触する場合に、製剤から放出される。フィルム成形製剤(「ウェーハ」)の経口摂取の間の気泡の形成は、ウェーハの内部構造に強力に影響し、これを複数の断片に迅速に崩壊させる。従って、ウェーハは、この内部に形成する気泡により実質的に発泡される(blown-up)。これにより、有用な表面における突然の増大がもたらされ、これにより、活性物質の加速された放出がもたらされる。
【0008】
さらに、気泡がウェーハの表面において逃散するという事実により、ウェーハが粘膜に付着することが妨げられる。次に、これにより、ウェーハの両側へのさらなる液体の供給が補助される。対照的に、粘膜に付着する系の場合においては、慣用のウェーハにおいて生じ得るように、一方の側のみが増大した液体吸収のために用いられるにすぎないのである。
【0009】
本発明のウェーハの経口的な適用の場合において、気泡のウェーハの表面における逃散は、さらに、ウェーハが、口粘膜または舌に接着し得ず、気泡の破裂により粘膜から持続的に分離されるため、改善された「マウスフィール」を生じる。
【0010】
この目的は、さらに、請求項13〜16に記載の製造方法により達成される。前述の請求項により、水性媒体中で崩壊可能である主要な請求項によるフィルム成形製剤の製造が可能である。これらの方法の本質的な利点は、製剤の製造の間に、水または水分により活性化することができるガス生成成分を、製剤を製造している間に早すぎるガス生成の発生を伴わずに加えることが可能であることである。
【0011】
本発明の製剤は、少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む、平坦な形状のフィルムである。水溶性ポリマー(1種または2種以上)は、製剤のマトリックスとも呼ばれる基本構造を形成する。マトリックスの組成は、さらに、フィルムの化学的および物理的特性がさらに影響される、極めて異なるタイプの補助物質を含むことができる。水溶性ポリマー(1種または2種以上)の重量含量は、好ましくは、各々の場合において全体の製剤(乾燥物体)に対して、10〜95重量%の範囲内、特に好ましくは15〜70重量%の範囲内である。
【0012】
この目的のために用いるマトリックス形成ポリマー成分は、水溶性であるか、または少なくとも部分的に水溶性である;これらは、熱可塑性であっても熱可塑性でなくてもよい。フィルム成形製剤の製造において、熱可塑性配合物を、熱の下で押し出すことができる一方、熱可塑性ではないポリマーを、高粘性溶液として押し出すことができる。
部分的な水溶性は、多数のポリマーの、水または水性媒体中で膨潤可能である特性を意味するものと理解される。水分子は、この場合において、ポリマー物質中にゆっくりと進入し、これにより、膨潤およびゲルの形成がもたらされる。膨潤したゲルの真の溶液へのその後の崩壊は発生しない。このことは、特に、極めて高い分子量を有するポリマーまたは架橋したポリマーについてあてはまる。
【0013】
以下のポリマーを、この目的のために用いることができる:
ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド、メチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマー、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ナトリウム−カルボキシメチルセルロース(NaCMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルエチルセルロース(HPEC)、デンプンおよびデンプン誘導体、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、アラビアゴム、プルランまたはアクリレート。前述のポリマーの2種または3種以上の混合物もまた用いることができる。
【0014】
当業者に一般に知られている補助物質として、以下の群からの物質を用いることが可能である:
充填剤、例えばSiO
着色剤、例えばキノリンイエローまたはTiO
崩壊剤、それぞれ、水をマトリックス中に吸引し、マトリックスを内部から破裂させる、吸上剤、例えばエアロシル(aerosil);
乳化剤、例えばトゥイーン(Tween)(ポリエトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル)、Brij(ポリエトキシル化脂肪族アルコール);
甘味剤、例えばアスパルテーム、ナトリウムシクラメートおよびサッカリン;
柔軟剤、例えばPEG(ポリエチレングリコール)またはグリセロール;
保存剤、例えばソルビン酸またはこの塩。これらの添加剤の含量は、好ましくは、各々全体の製剤に対して30重量%まで、特に1〜20重量%の量であることができる。
【0015】
水分の作用により、または水性媒体の存在下で、または温度の変化の場合において、ガスを生成する成分は、原則的に、当業者に知られている。好ましくは、本発明のフィルム成形製剤は、炭酸塩、特に炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、および炭酸水素塩、特に炭酸水素ナトリウム、および酸、特にカルボン酸、例えばクエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、酒石酸、および酸調節剤、特に酢酸の塩、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムを含む群から選択されている1種または2種以上のガス生成成分を含む。
【0016】
ガス生成は、好ましくは、2種または3種以上の成分を混ぜ合わせることにより、特にアルカリ土類金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩を、カルボン酸と混ぜ合わせることにより生じる。好適な炭酸塩または炭酸水素塩は、特に、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウムである。特に好ましいカルボン酸は、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸および酒石酸を含む群からのものである。炭酸水素ナトリウムとクエン酸との組み合わせが、特に好ましい。
【0017】
1種または2種以上のガス生成成分の比率は、製剤の乾燥物体に対して70重量%までとすることができる;好ましくは、含量は、5〜60重量%の範囲内である。
【0018】
前述のガス生成成分の場合において、水性媒体の作用により生成したガスは二酸化炭素である。しかし、これにより、異なるガス生成化合物または化合物の混合物を用いた際に他のガス、例えば窒素が生成する可能性は、排除されない。水または水性媒体の存在下で生成したガスはCOであり、このことは、体内における活性物質の改善された吸収が達成されるという点で、本発明のフィルム成形投与形態のさらなる利点をもたらす。好ましい態様において、本発明の製剤は、水または水性媒体の存在において、酸性環境を形成することを特徴とする。
【0019】
ガスの生成に関与する前述の成分に加えて、フィルム成形製剤は、さらに、1種または2種以上の酸調節剤を含むことができる。この目的のために好適なのは、特に、酢酸の塩、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウム、酒石酸ナトリウムおよびアスコルビン酸ナトリウムである。
【0020】
ガス生成の活性化は、好ましくは、水、水分または水性媒体の作用の下で起こる。フィルム成形製剤を、さらに、ガス生成が、例えばフィルム成形製剤が経口的に摂取され、このプロセスにおいて体温の影響の下で加熱される場合(例えば、この温度が、25〜35℃より高温に上昇する場合)に、熱条件の変化により活性化されるように構成することができる。熱的な活性化によるガス生成は、発泡剤を用いることにより達成され、この中には、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニア水塩(炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムおよびカルバミン酸アンモニウムの混合物)並びに炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)の、酸リン酸塩、酸ピロリン酸塩、クエン酸または酒石酸との混合物がある。
【0021】
有利に用いることができる他の可能性は、ガス生成を、例えばフィルム成形製剤の経口投与の後のpH値の変化により活性化させることである。唾液と接触することによる水分のアクセスにより、ガス生成成分(一方で炭酸塩および/または炭酸水素塩並びに他方で酸成分)間の反応が可能になる。CO放出反応は、炭酸塩または炭酸水素塩成分の酸性化(pH活性化)のためである。
【0022】
本発明の意味において、「水性媒体」は、特に、水、水溶液、懸濁液、分散体、水性溶媒混合物および生理学的液体または体液(例えば体の分泌物、唾液、粘液)を意味するものと理解される。
【0023】
これらのガス生成能力のために、本発明のフィルム成形製剤は、これらの改善された崩壊特性が顕著になる。これらの製剤を、好ましくは、迅速に崩壊するフィルムとして構成し、即ち、これらは、1秒〜5分の範囲内、好ましくは1秒〜1分の範囲内、特に好ましくは1秒〜30秒の範囲内の崩壊時間を有する。
【0024】
フィルム成形製剤は、5μm〜3mm、好ましくは10μm〜1mm、特に好ましくは20μm〜500μmの範囲内の厚さを有することができる。
本発明のフィルム成形製剤は、一般的に、単層構造を有する。しかし、好ましい態様において、製剤が、互いに接合された少なくとも2つの層から構成されていることができることが、提供される。
【0025】
1つの特定の態様において、フィルム成形製剤は、水または水性媒体に膨潤可能であることが提供される。このことは、例えば親水性ポリアクリレート、親水性ポリメタクリレート、アニオン性またはカチオン性ヒドロゲル、寒天、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、トラガカント、ゼラチンおよび膨潤可能なイオン交換樹脂を含む群からの、1種または2種以上の膨潤可能な物質の内容物を提供することにより、達成される。
【0026】
フィルム成形製剤は、医薬物質を投与するための投与形態として用いるのに、有利に適する。この理由により、好ましい態様において、このような製剤が、医薬活性物質または2種もしくは3種以上の医薬活性物質の組み合わせを含むものとして、提供される。活性物質(1種または2種以上)は、溶解された、分散された、懸濁された、または乳化された形態で、存在することができる。
随意に、他の放出可能な物質、例えば風味物質または甘味物質を含むことができる。
【0027】
活性物質として適するのは、限定されるものではないが、ヒトまたは動物において治療効果を有する物質である。これらは、以下の群から発生することができる:感染症を処置するための剤;ウイルス停止薬(virostatics);鎮痛薬、例えばフェンタニル、スフェンタル、ブプレノルフィン;麻酔薬;食欲低下薬;関節炎および喘息を処置するための活性物質、例えばテルブタリン;抗けいれん薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;抗ヒスタミン薬;止痢剤;片頭痛に対する剤;かゆみ、悪心および吐き気、運動病および船酔いに対する剤;例えばスコポラミンおよびオンダンセトロン;抗悪性腫瘍剤;抗パーキンソン病剤;抗精神病剤;解熱薬;鎮痙薬;抗コリン薬;潰瘍に対する剤、例えばラニチジン;交感神経模倣薬;カルシウムチャネルブロッカー;例えばニフェジピン;ベータブロッカー;ベータアゴニスト、例えばドブタミンおよびリトドリン;抗不整脈薬;降圧剤、例えばアテノロール;ACE阻害剤、例えばエナラプリル;ベンゾジアゼピンアゴニスト、例えばフルマゼニル;冠血管、末梢血管および脳血管拡張薬;中枢神経系を刺激する物質;ホルモン;催眠薬;免疫抑制剤;筋肉弛緩薬;プロスタグランジン;タンパク質、ペプチド;覚醒剤;鎮静薬;精神安定薬。
【0028】
好適な活性物質は、さらに、例えば副交感神経遮断薬(例えばスコポラミン、アトロピン、バーラクチジン)、副交感神経作動薬、コリン作動薬(例えばフィソスチグミン、ニコチン)、神経遮断薬(例えばクロロプロマジン、ハロペリドール)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えばトラニルシプロミン、セレジリン)、交感神経模倣薬(例えばエフェドリン、D−ノルプソイドエフェドリン、サルブタモール、フェンフルラミン)、交感神経遮断薬および抗交感神経薬(antisympathotonic)(例えばプロプラノロール、チモロール、ブプラノロール、クロニジン、ジヒドロエルゴタミン、ナファゾリン)、抗不安薬(例えばジアゼパム、トリアゾラム)、局所的麻酔薬(例えばリドカイン)、中枢鎮痛薬(例えばフェンタニル、スフェンタニル)、抗リウマチ薬(例えばインドメタシン、ピロキシカム、ロルノキシカム)、冠血管治療薬(例えば三硝酸グリセロール、二硝酸イソソルビド)、エストロゲン、ゲスタゲンおよびアンドロゲン、抗ヒスタミン薬(例えばジフェンヒドラミン、クレマスチン、テルフェナジン)、プロスタグランジン誘導体、ビタミン(例えばビタミンE、コレカルシフェロール)、細胞分裂停止および心臓作用性グリコシド、例えばジギトキシンおよびジゴキシンの活性物質群中に見出される。
【0029】
また、本発明のフィルム成形製剤を、1種または2種以上の風味物質、例えばメントールまたはレモン風味剤を口腔中に放出するために用いることができる。しかし、風味物質(1種または2種以上)はまた、製剤中に、1種または2種以上の医薬活性物質と組み合わせて存在することができる。
活性物質内容物または風味剤(1種もしくは2種以上)の内容物は、各々の場合において、フィルム成形製剤の乾燥物体に対して、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは1〜25重量%である。
【0030】
本発明は、さらに、水性媒体中で崩壊可能であり、ガス生成成分を含み、水分の作用の下で、または水性媒体の存在下でガスを生じる、フィルム成形製剤の製造を可能にする方法を含む。これらの方法は、特に、請求項1およびこれに従属する請求項に記載されたようにフィルム成形製剤を製造するのに適する。
本発明の方法は、先ずマトリックスポリマー(1種または2種以上)、ガス生成物質(1種または2種以上)、活性剤(1種または2種以上)および/または風味剤(1種または2種以上)および随意に他の補助物質を含む被覆化合物を調製し、前述の被覆化合物を、その後支持体上に塗布し、次に乾燥するという基本的原理に基づく。
【0031】
本発明の製剤の製造において、水溶性(または水崩壊可能な)フィルムの製造において、原則として、水または水溶性媒体を溶媒として用いることを考慮しなければならない。ガス生成成分は、水または水分により活性化されるため、所望のガス生成反応は、水溶性マトリックスポリマーおよびガス生成成分を含む被覆化合物の製造の間に尚早に起こることも想定される。
【0032】
本発明において、この問題を、以下に記載する手段により解決することができる:
本発明の第1の製造方法において、1種または2種以上のガス生成成分を含む製剤の成分を含む被覆化合物の製造を、成分を、水を実質的に含まない溶媒または懸濁剤、例えばエタノール中に溶解するかまたは懸濁させることにより行うものとして提供される。これにより、ガス生成反応が、被覆化合物の製造の間にすでに誘発されることが防止される。被覆し、乾燥した後に、水分との接触によりガス生成を示し、所望の特性を示す、水溶性フィルムが残留する。
【0033】
「実質的に水を含まない」とは、水含量が、8重量%より少ない、好ましくは5重量%より少ない、特に好ましくは1重量%より少ないことを意味する。
【0034】
第2の本発明の製造方法により、1種または2種以上のガス生成成分を含む製剤の成分を含む被覆化合物の製造を、成分を溶融させることにより行うものとして提供される。その後、溶融した被覆化合物を、支持体(担体層)上に、好ましくはスロットダイを用いて押出す。次に、冷却したフィルムが、さらなる加工のために得られる。この方法の変法において、熱可塑性水溶性ポリマーまたはポリマー混合物を、マトリックス形成ポリマーとして用いる。この方法においては水を用いないため、ガス生成の早すぎる活性化は起こり得ない。
【0035】
クレームされた特性を有するフィルム成形製剤を製造する他の可能な方法は、最初に2枚のフィルムを2種の被覆化合物から製造し、その後フィルムを組み合わせ、各々の被覆化合物が、ガスの生成に必要な成分の単一の化合物のみを含むことである。例えば、炭酸水素ナトリウムを有する水性ポリマー溶液およびクエン酸を有する他の水性ポリマー溶液を先ず製造し、これらの溶液からの水溶性フィルムの製造を、これらの全体(mass)を、支持体として作用するそれぞれの加工フィルム(例えばポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムまたは金属箔)上に塗布し、その後乾燥することにより行う。
【0036】
ガス生成を活性化させるために、両方の成分が存在しなければならないため、水または水性媒体を溶媒または懸濁剤として用いる場合においても、被覆化合物の製造の間に早すぎるガス生成は起こらない。従って、ガス生成プロセスは、ガス生成に必要な成分は最初に別個のフィルム中に存在するため、起こり得ない。その後、1枚のフィルムが得られるように、2枚のフィルムを−例えば積層により−接合する。適用がなされた(例えば経口投与)後にのみ、フィルム成形製剤は水を吸収し、2種のガス生成化合物が、互いに接触し、そのことによってガス生成が誘発される。
【0037】
この製造方法は、以下の工程を含む:先ず、第1のガス生成成分およびフィルム成形製剤の他の成分を含む第1の被覆化合物を製造する。これは、前述の成分を、水性溶媒または懸濁剤に溶解、懸濁または分散させることにより行うことができる。第2の被覆化合物を、同様の様式で製造する;この被覆化合物は、第2のガス生成成分およびフィルム成形製剤の他の成分を含む。第1のおよび第2の成分は、ガス生成反応に必要な反応パートナーである。2種の被覆化合物の各々を、支持体上に塗布し、乾燥し、これにより第1のおよび第2のフィルムを形成する。2枚のフィルムを、1枚のフィルムを他方の上に積層させることによって、組み合わせる。
【0038】
第4の本発明の製造方法は、少なくとも1種のガス生成成分またはガス生成成分の混合物を、被覆化合物(1種または2種以上)の製造の間にマイクロカプセル封入された形態で提供する手段を用いる。このようなカプセル封入により、ガス生成反応は、化合物の製造の間は防止される。例えば、フィルムの経口摂取−口腔中に存在する条件、例えばpH値または体温の下で−の際にのみ、ガス生成反応が活性化される。マイクロカプセル封入粒子に適する方法および補助物質は、当業者に知られている。
【0039】
この方法においては、ガス生成成分を含む製剤の成分を含み、ガス生成成分の少なくとも1種が、マイクロカプセル封入された形態で存在する被覆化合物を製造する。被覆化合物の製造を、成分を溶媒または懸濁剤に溶解、懸濁または分散させることにより行うことができる。ガスの生成の活性化は、マイクロカプセル封入により防止されるため、この方法においても、水性媒体を溶媒または懸濁剤として用いることが可能である。その後、被覆化合物を支持体上に塗布し、乾燥する。
【0040】
本発明のフィルム成形崩壊可能製剤は、有利には、治療目的のための薬学的に活性な物質を投与するための投与形態として、特に経口、直腸内または膣内投与のために用いるのに適する。
【0041】
本発明を、以下の態様の例により例示する:
例1:
【表1】

【0042】
例2:
【表2】

【0043】
例1および2の化合物の製造:
No.1を、先ず提供し、次にNo.2を、これに加え、この間15%ポリマー溶液が得られるように攪拌する。その後、No.3、5および6を加え、全体が均一になるまで攪拌し、その後No.4を加え、これを全体が均一になるまで攪拌する。その全体を、加工フィルム上に薄いフィルムとして塗布し、60〜80℃で15分乾燥する。次に、乾燥したフィルムをウェーハに分離する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質をヒトまたは動物の体に投与するための、少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む、水性媒体中で崩壊可能なフィルム成形製剤であって、前記製剤は、水分の作用により、または水性媒体の存在下で、または温度の変化の場合においてガスを発生する1種または2種以上の成分を含むことを特徴とする、前記フィルム成形製剤。
【請求項2】
1種または2種以上のガス生成成分が、炭酸塩、特に炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、および炭酸水素塩、特に炭酸水素ナトリウム、および酸、特にクエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、酒石酸、および酸調節剤、特に酢酸の塩、リン酸二水素ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムを含む群から選択されていることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム成形製剤。
【請求項3】
少なくとも1種のガス生成成分(a)および少なくとも1種のガス生成成分(b)の組み合わせを含み、1種または2種以上の前記成分は、
(a)カルボン酸類の群から、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸および酒石酸を含む群から選択されており、
および前記1種または2種以上の成分は、
(b)炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウムを含む群から選択されている
ことを特徴とする、請求項2に記載のフィルム成形製剤。
【請求項4】
COまたはNを、好ましくは水または水性媒体または水分の作用の下で生成することができることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム成形製剤。
【請求項5】
水の存在下で酸性環境を生じることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム成形製剤。
【請求項6】
水または水性媒体の存在下で、1秒〜5分以内に、好ましくは1秒〜1分以内に、特に好ましくは1秒〜30秒以内に崩壊することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム成形製剤。
【請求項7】
水性媒体中で膨潤可能であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム成形製剤。
【請求項8】
1種の薬学的に活性な物質または2種もしくは3種以上の薬学的に活性な物質の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム成形製剤。
【請求項9】
少なくとも1種の風味剤、好ましくはメントールを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム成形製剤。
【請求項10】
少なくとも2つの層を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のフィルム成形製剤。
【請求項11】
5μm〜3mm、好ましくは10μm〜1mm、特に好ましくは20μm〜500μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載のフィルム成形製剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の製剤の、薬学的に活性な物質の経口、直腸内または膣内投与のための使用。
【請求項13】
被覆化合物を支持体上に被覆することによる、請求項1〜11のいずれかに記載の製剤の製造方法であって、下記の工程を含む前記方法:
−実質的に水を含まない溶媒または懸濁剤中に、成分を溶解するかまたは懸濁させることにより、1種または2種以上のガス生成成分を含む製剤の成分を含む被覆化合物を製造する工程;
−この被覆化合物を、支持体上に塗布し、乾燥する工程。
【請求項14】
被覆化合物を支持体上に被覆することによる、請求項1〜11のいずれかに記載の製剤の製造方法であって、下記の工程を含む、前記方法:
−ガス生成成分を溶融することにより、1種または2種以上のガス生成成分を含む製剤の成分を含む被覆化合物を製造する工程;
−溶融被覆化合物を支持体上に、スロットダイにより押出す工程。
【請求項15】
被覆化合物を支持体上に被覆するための、請求項1〜11のいずれかに記載の製剤の製造方法であって、下記の工程を含む、前記方法:
−第1のガス生成成分およびフィルム形成製剤の他の成分を含む第1の被覆化合物を、前記成分を水性溶媒または懸濁剤に溶解または懸濁させることにより調製する工程;
−第2のガス生成成分およびフィルム成形製剤の他の成分を含む第2の被覆化合物を、前記成分を水性溶媒または懸濁剤に溶解または懸濁させることにより調製し、前記第1のおよび前記第2の成分が、ガス生成反応の反応パートナーとする工程;
−第1の被覆化合物を支持体上に塗布し、乾燥し、このようにして第1のフィルムを形成する工程;
−第2の被覆化合物を支持体上に塗布し、乾燥し、このようにして第2のフィルムを形成する工程;
−2つのフィルムを互いの上に積層する工程。
【請求項16】
被覆化合物を支持体上に被覆することによる、請求項1〜11のいずれかに記載の製剤の製造方法であって、下記の工程を含む、前記方法:
−ガス生成成分を含む製剤の成分を含む被覆化合物を、前記成分を溶媒または懸濁剤に溶解または懸濁することにより調製し、ガス生成成分の少なくとも1種をマイクロカプセル封入された形態で存在せしめる工程;
−この被覆化合物を、支持体上に塗布し、乾燥する工程。

【公開番号】特開2010−209104(P2010−209104A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115167(P2010−115167)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【分割の表示】特願2004−508778(P2004−508778)の分割
【原出願日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】