説明

活性発泡体

【課題】副作用がなく、血行を促進し、体質改善や、癌等の病気の治癒を促進することができる活性発泡体を提供する。
【解決手段】本発明は、ジルコニウム化合物及び/又はゲルマニウム化合物を含有する天然若しくは合成ゴム又は合成樹脂製の活性発泡体であって、独立気泡構造を有し、薬物投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いることを特徴とする活性発泡体である。本活性発泡体を人体に直接又は間接的に接触させることにより、血行を促進し、体質改善や病気の治癒を促進することができる。また、副作用がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然若しくは合成ゴム又は合成樹脂製の活性発泡体に関し、血行を促進し、体質改善や、癌等の病気の治癒を促進することができる活性発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は高齢で発生する代表的な男性の癌であり、人口の高齢化、ライフスタイルの西洋化により日本でも増加している。また、腫瘍マーカー(前立腺特異抗原:PSA:prostate specific antigen)による血液検査の発達、検診の普及化により増加傾向が確認されている。わが国の前立腺癌の年齢調節罹患率(対10万人)を見てみると、1956年では3.5であるが、1990年は8.5であり、2015年には推計学的に20.3となると予測される。
【0003】
北米では前立腺癌の罹患率は際立って高く、1990年には92.4であり、米国の日系3世の前立腺癌罹患率は、北米白人の罹患率に近似している。この事実からも、脂肪過多の食事を含めたライフスタイルの西洋化が、日本での前立腺癌の増加に繋がっていると言っても過言ではない。このため2015年には、8〜10万人の前立腺癌が治療の対象となると予測されている。
【0004】
1998〜2002年における国立癌研究所(NCI:National Cancer Institute) の統計による米国の癌の年齢調節罹患率(対10万人)を見ると、全部位で469.7である。このうち、前立腺癌は76.0で第1位である。続いて乳癌(73.3)、肺癌及び気管支癌(61.0)、大腸癌(38.3)、リンパ腫(21.8)が5位までに入る。前立腺癌は男性ホルモンにより増殖し、男性ホルモンを除くとその増殖が抑えられる特徴を持つ。このため前立腺癌の増殖抑制には精巣を手術により取り除くか、精巣が働かないように薬でおさえる抗アンドロゲン治療方法が適用されることが多い。しかし、抗アンドロゲン治療方法によって、前立腺癌はある一定期間(通常1〜3年)臨床的な進行を抑えることができるが、いずれ再発する。遠隔臓器に転移(骨への転移が多い)がある場合には、ホルモン療法では10年生存率は10%以下である。
【0005】
限局した前立腺癌に対しては、根治的前立腺全摘除術(骨盤内の領域リンパ節郭清を含む)が文字通り根治的な治療法になる。また手術療法だけでなく、前立腺癌の悪性度と進展度、そして転移の有無に従って、ホルモン療法から重粒子線照射や針状の放射性物質を直接前立腺に刺入する方法を含む放射線療法や、抗ガン剤を用いる化学療法までの幅広い選択肢がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの治療法にも合併症、副作用があると同時に再発が避けられない場合が少なからず存在する。このため現在、副作用のない有効な治療法の開発が求められている。また、根本的には前立腺癌の予防的治療が求められており、米国では大々的な臨床治験によりビタミンEの服用が前立腺癌発生の抑制に有効であることが最近報告されている。実際、他の原因で死亡した人の前立腺を剖険して組織学的に調べると、前立腺癌が発見されることが多く、これをラテント癌と表現している。ラテント癌の頻度は高く、組織学的に浸潤像を示す癌も含めると報告により差はあるが、50歳以上では約3割の人に見つかる。80歳以上では約6割から7割の人に前立腺癌が認められる。このラテント癌が臨床的な癌にならないように予防方法を開発することは焦眉の問題である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、副作用がなく、血行を促進し、体質改善や、癌等の病気の治癒を促進することができる活性発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、鋭意研究した結果、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、ジルコニウム化合物及び/又はゲルマニウム化合物を含有する天然若しくは合成ゴム又は合成樹脂製の活性発泡体であって、独立気泡構造を有し、薬物投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いることを特徴とする活性発泡体である。
【0009】
本活性発泡体は、人体に直接又は間接的に接触させて用いるが、さらに、活性発泡体と人体との間で摩擦を起こせば、より効果的である。本活性発泡体は、血行を促進させ、体質改善や病気の治癒を促進させるが、そのメカニズムは解明されていない。
【0010】
ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物は、活性気泡体内に太陽等からの赤外線を集める。そして、赤外線が活性発泡体内部の多数の気泡の壁にぶつかり、乱反射と集約を繰り返すことで、人体に好影響を与える波長4〜25ミクロンの赤外線を、活性気泡体外へ発生する。この赤外線と、人体の波長とが共振することにより、体の中の水分子やタンパク質分子が活性化され、代謝促進作用によって人間が本来有している自然の治癒力が増進されると推測される。したがって、癌、高血圧、糖尿病、心臓病、肩こり、腰痛、アレルギー性疾患等の病気の治癒や、老化防止、育毛等の体質改善が促進されるものと推測される。また、本活性発泡体は、繰り返し使うことができる。
【0011】
本活性発泡体は、薬剤投与の際に、人体に直接又は間接的に接触させて用いれば、その薬剤の効果を上げることができる。また、大量に使えば副作用のある薬剤であっても、本活性発泡体を併用すれば少量ですむので、副作用を抑えることができる。
【0012】
薬剤の種類としては、例えば、注射用剤、皮膚外用剤、経粘皮用剤、経鼻腔用剤又は経口剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに具体的には、抗癌剤、抗生物質等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、薬剤は、ヒト由来の物質であるのが好ましい。ヒト由来とは、人間が元来体内に持っている物質のことである。なお、ヒト由来の物質は、人体から抽出したものであってもよく、人工的に合成したものであってもよい。
【0013】
ヒト由来の物質の中でも毒性が限りなく少ない物質を用いれば、通常量での使用では副作用がないので好ましい。例えば、その例として、ヒトの腸管内にある酪酸ナトリウム(sodium butyrate 以下、SBと称す)、酪酸エステルナトリウムが挙げられる。これらの物質は、クロマチンを非活性化するヒストン脱アセチル化酵素阻害物質(histone deacetylase inhibitor。HDACI又はHDiと略称される。以下、HDACIと称す。)であり、クロマチンを活性化し、癌抑制遺伝子を立ち上げ、癌細胞の細胞周期(分裂周期。細胞分裂を完了してから次の細胞分裂に至るまでの、細胞の生活環)を止める働き、すなわち、抗腫瘍剤としての働きがある。合成されたSB、酪酸エステルナトリウム誘導体でも毒性が少なければ有用である。これらの物質の服用と本活性発泡体の使用とを組み合わせれば、癌遺伝子の働きを抑え、癌抑制効果を上げることができる。
【0014】
また、ヒト由来の物質としては、HDACIが働くときに、共益して働く各種核内転写因子(DNA活性化因子や抑制因子)やクロマチンリモデリング物質であってもよい。すなわち、癌抑制遺伝子を活性化するようにそのDNAのプロモーター領域に働く物質であればよい。これらの物質も本活性発泡体との 組み合わせにより、癌遺伝子の働きを抑え、癌抑制効果をあげることができる。
【0015】
内部に含有する気泡は、20〜30個/mm形成するのが好ましい。このように、多数の独立気泡を高密度で内部に含有させることにより、人体に好影響を与える赤外線を発生することができる。
【0016】
活性発泡体の形態としては、例えば、持ち運びしやすい小型の三角形状ハンディタイプ、敷きマット、掛けマットなどの寝具状形態、衣服等の一部分又は全部に使用する形態としてもよいが、人体に直接又は間接的に接触できるものであれば、これら に限定されるものではない。また、活性発泡体は、人体の一部に局部的に集中して病気治癒等の効果を与えたい場合は、厚み約8mm〜5cmのシート状に形成すればよい。また、衣服の素材にする場合には、厚み約0.3〜5mmのシート状に形成すれば衣服に製造しやすい。
【0017】
ゴム成分としては、天然ゴム又は合成ゴムのいずれでもよい。合成ゴムとしては、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム (NBR)、アクリルニトリルゴム(NRP)、ブタジエンゴム (BR)、イソプレンゴム(IR)などのゴム系高分子、またはこれらを複数種混合したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
また、合成樹脂成分としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
発泡剤としては、公知の発泡剤を使用することができるが、セロゲンOTI(ユニロイヤル社製、米国)又はユニセル(ドンジン社製、韓国)が好ましい。
【0020】
ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物は、両方含有させる形態としてもよいし、いずれか一方のみを含有させる形態としてもよい。癌治療には、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物の両方を含有させると、癌の治癒を促進させる効果が向上するので好ましい。
【0021】
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウム錯化合物を用いるのが好ましい。ジルコニウム錯化合物としては、ジルコニウムとフッ素等との錯体が挙げられ、具体的には、ヘキサフルオロジルコニウム酸カリ(KZrF)又はオクタフルオロジルコニウム酸カリ(KZrF)が挙げられるが、これに限定されるものではない。ジルコニウム化合物の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、10〜80重量部含有させるのが好ましい。いずれも下限値よりも少ないと効果が乏しく、上限値よりも多くしても効果に顕著な差異は見られないため経済性の点から望ましくない。
【0022】
また、ゲルマニウム化合物としては、ゲルマニウム鉱物またはゲルマニウム錯化合物を用いるのが好ましい。ゲルマニウム鉱物としては、硫ゲルマニウム銀鉱(AgGeS、Argyrodite)や、レニエル鉱((Cu,Zn)11Fe(Ge,As)16、Renierite)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、ゲルマニウム錯化合物としては、ゲルマニウムと、ジカルボン酸又はアミン等との錯体が挙げられるが、これに限定されるものではない。ゲルマニウム化合物の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、5〜10重量部含有させるのが好ましい。いずれも下限値よりも少ないと効果が乏しく、上限値よりも多くしても効果に顕著な差異は見られないため経済性の点から望ましくない。
【0023】
さらに、本活性発泡体は、上記構成に加えて、カーボンを含有させるのが好ましい。カーボンを含有することにより、活性発泡体の強度が上がり、また、太陽等からの赤外線をより多く集めることができる。カーボンとしては、例えばカーボンブラックがあり、粉粒体のものを用いればよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、本活性発泡体は、薬剤投与の際に、人体に直接又は間接的に接触させて用いれば、その薬剤の効果を上げることができる。また、大量に使えば副作用のある薬剤であっても、本活性発泡体を併用すれば少量ですむので、副作用を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態の活性発泡体の縦断面図
【図2】血流量(ml/min/100g)の変化を示すグラフ
【図3】血液量の変化を示すグラフ
【図4】血流速度の変化を示すグラフ
【図5】体圧(hPa)の変化を示すグラフ
【図6】細胞の電子顕微鏡写真 (a)実験群 (b)対照群
【図7】Du145(ヒト前立腺癌細胞)の生細胞のcDNAマイクロアレイの結果
【図8】Du145(ヒト前立腺癌細胞)の生細胞の数の推移を示す表及びグラフであって、(+)は本活性発泡体を用いた実験群、(−)は対照群を示す
【図9】LNCap(ヒト前立腺癌細胞)の生細胞の数の推移を示す表及びグラフであって、(+)は本活性発泡体を用いた実験群、(−)は対照群を示す
【図10】PC3(ヒト前立腺癌細胞)の生細胞の数の推移を示す表及びグラフであって、(+)は本活性発泡体を用いた実験群、(−)は対照群を示す
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の活性発泡体の縦断面図である。図1に示すように、本実施形態の活性発泡体は、ゴム製の気泡シート1の表裏面に、ゴム製のカバーシート2を積層した積層体である。なお、本実施形態においては、カバーシート2をゴムシート1の表裏面に積層した形態としているが、表裏のいずれか一面にカバーシート2を積層させた形態としてもよいし、カバーシート2を積層させずに気泡シート1のみの形態としてもよい。
【0027】
気泡シート1は、ゴム又は合成樹脂を主成分とし、ジルコニウム化合物及び/又はゲルマニウム化合物と、カーボンとを含有し、独立気泡構造を有する発泡体である。独立気泡の形成は、発泡剤により発泡させて形成される。気泡シート1の断面形状は、多数の微細な気泡が形成されている。なお、気泡シート1の厚みは約1cmとされるが、これに限定されるものではない。
【0028】
表裏のカバーシート2は、気泡シート1の表裏面に接着により固定されるが、気泡シート1に積層できれば他の方法により固定してもよい。また、カバーシート2の材料は、クロロプレンゴム(CR)を主成分としたゴムシートであって、気泡を含有していないが、気泡を含有させた形態としてもよい。また、カバーシート2の材料は、クロロプレンゴムに限定されるものではなく、その他の合成ゴム、天然ゴム又はクロロスルフォン化ポリエチレン等の合成樹脂としてもよい。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を用いて、本発明の具体的実施態様をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で実施例に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【0030】
まず、気泡シート1を作成する。ゴム又は合成樹脂をベースとし、表1の配合に従って配合し、ロールで混練する。なお、材料を混合する方法は特に制限はなく、一般のゴム又は合成樹脂の配合物に対して使用される混合方法を採用することができる。次に、得られた混練物を押出機によってシート状に成形する。このシートを加熱空気で加硫及び発泡する(加硫工程)。この加硫工程は、1次と2次の2段階に分けて行う。2段階で加硫を行うことにより、気泡が気泡シート全体に均一に形成される。以上の工程により、気泡シート1が製造される。
【0031】
そして、気泡シート1の表裏面に、カバーシート2をゴム系又は合成樹脂系の接着剤で貼着する。次に、表面となる側に、高電圧を印加する。電流が1万アンペア〜80万アンペア、電圧が200〜3300V、0.1〜0.3秒の時間の条件で電圧を印加する。なお、電流は高いほど好ましい。活性発泡体は、赤外線等の電磁波を発生している。メカニズムは解明されていないが、活性発泡体の一面に高電圧を印加することにより、電磁波の方向が電圧を印加した面側へ指向性を示すように方向づけられると推測される。したがって、その面を人体に当てれば、その当てた面に集中的に電磁波を当てることができ、より病気の治癒効果等を上げることができる。以上の工程により、本活性発泡体が完成する。
【0032】
【表1】

【0033】
上記実施例におけるセロゲンOTIは、P,P´−オキシビスベンゼンスルホニールヒドラジン(ユニロイヤル社製、米国)であり、発泡剤である。ジルコンは通常珪酸塩として存在しているものをいう(ZrSiO)。また、加硫促進剤DMはジベンゾチアゾールジサルファイトをさす。硬度は、ゴム硬度計Cタイプを使用した。
【0034】
<試験1>
次に、活性発泡体を用いて、それが人間の体圧及び血流に与える影響について測定試験を行った。まず、体圧及び血流測定の試験方法について説明する。
【0035】
[試験対象]
50代の女性1名を被験者とする。
【0036】
[試験方法]
血流及び体圧測定機器(AMI3037−2、株式会社エイエムアイテクノ製)を用いて試験を行った。体圧及び血流センサーを太もも上部に取り付け、室温23℃、湿度55%RHの環境で、以下の2つの条件下で測定を行った。条件1では、椅子の上に活性発泡体を敷き、その上に30分間静止状態で座った後に、血流量(blood flow)、血液量(blood volume)、血流速度(blood velocity)及び体圧(body surface contact pressure)を10分間測定した。条件2では、対照例として、活性発泡体を敷いていない椅子の上に30分間静止状態で座った後、血流量等を10分間測定した。その結果を表2、図2〜図5に示す。表2は、10分間の血流量等の測定値の平均値を示す。図2〜図5は、10分間の血流量等の測定値の推移を示す。なお、血流量は、人体組織100g中当たり1分間に流れる血流量のことであり、毛細血管中の赤血球に反射した光量から計測する。血液量は、人体組織100gの断面積当たりの血液量のことであり、血液量と血流速度との積がほぼ血流量となる関係にある。
【0037】
[試験結果]
【表2】

【0038】
上記表2、図2〜図5より、本活性発泡体を使用すれば、血行がよくなり、体圧が下がることが分かる。
【0039】
<試験2>
[試験対象]
ヒト由来の培養前立腺癌細胞(Du145、 PC3、LNCap)を用いた。LNCap はホルモン依存性の前立腺癌細胞であり、Du145とPC3はホルモン非依存性の前立腺癌細胞である。
【0040】
[試験方法]
培養液15mlが入れられた直径10cmの培養皿に、各前立腺癌細胞(Du145、LNCap、 PC3)を10 cell / plateずつ散布し、37℃、5%COの条件下で7〜10日間培養した後に(準備期間)、試験を始めた。なお、1つの培養皿に、1種類の前立腺癌細胞を散布するものとする。また、この準備期間においては、活性発泡体を用いていない。
【0041】
そして、試験開始後、実験群は、各培養皿を上下から活性発泡体で挟んだ状態で培養した。対照群は、活性発泡体無しの状態で培養した。培養液は平均して3日に一度交換し、各細胞が飽和状態になる前に新しい培養皿に継代した。継代する日は各細胞により異なったが、各細胞の対照群と実験群では同じ日に継代した。
【0042】
試験開始直前を0日とし、開始後1、2 、3週目に細胞を回収し、培養3週目の細胞を固定した後に電顕的に観察した(a)。
【0043】
また、培養3週目の細胞からmRNA(messenger ribonucleic acid メッセンジャーRNA)を抽出した。抽出したmRNAは、human1.2K cDNA microarray (Clontech)にハイブリダイズし、その結果をGeneSpider(遺伝子解析ソフト:Silicon Genetics, Redwood, CA, U.S.A)を用いて解析した。アポトーシス責任遺伝子の表現についてはANOVAクラスター解析を用いた(b)。
【0044】
[試験結果]
各前立腺癌細胞の増殖は、次のような特徴が実験群に認められた。
【0045】
(a)実験群と対照群の3週目の電子顕微鏡像では、形態的な違いが認められた。すなわち、活性発泡体に3週間接触していた各ガン細胞では、対照群(図6(b))に比較して細胞質の空胞が多く、ミトコンドリアの内部構造の不鮮明化、核膜の不明瞭化が生じていた(図6(a))。すなわち、活性発泡体を用いた細胞では、アポトーシス(apoptosis)が起こっていることが分かる。
【0046】
なお、アポトーシスとは、遺伝子にプログラムされた細胞死、すなわち、細胞の自殺のことである。このアポトーシスのシステムが狂い、増殖し続けるのが癌細胞である。
【0047】
(b)また、cDNAマイクロアレイの3週目の結果について、代表例としてDU145の結果を図7に示す。mRNA発現が対照群と比較して亢進、すなわち遺伝子が活性化しているものを黒色で示し、mRNAの発現が対照群と比較して低下、すなわち遺伝子の働きが低下しているものを格子模様を施して示し、mRNA表現が対照群と比較して変化の無かったものをグレーで示す。
【0048】
Du145では、実験群は対照群と比較してFasL(2.3 倍)、 Fas (1.4 倍)、 TRADD (1.4 倍)、 CASP1、4、10 (1.7、 1.2、 1.7 倍)、DFF40 (1.7 倍)にup−regulation(増加)が認められた。 PC3では、実験群は対照群と比較してCD40(1.4 倍)、TNF (1.4 倍)にup−regulationが認められた。LNCapでは、実験群は対照群と比較してFas (1.6 倍)、CASP8(1.6 倍)、CASP3(1.3 倍) にup−regulationが認められた。なお、FasL、 Fas 、TRADD、CASP1、4、10、DFF40、CD40、TNFは、アポトーシスの回路を立ち上げる遺伝子群である。以上から、活性発泡体を用いた実験群では、対照群と比較してアポトーシスが促進されていることが分かる。
【0049】
[考察]
上記の試験から次のことが言える。活性発泡体は、ガン細胞のアポトーシス回路を立ち上げ、ガン細胞の働きを弱体化する作用を促進する。
【0050】
<試験3>
ヒト前立腺癌細胞に対して、活性発泡体と、HDACIであるSBとを用いて、癌細胞増殖抑制試験を行った。この試験は、革命的な前立腺癌の治療方法、予防方法を具体的に示すものであるとともに、原理的に全ての癌に有効である可能性を示唆するものである。ここで、HDACIについて詳しく説明する。HAT(ヒストンアセチル基転移酵素:histone acetyl transferase)が、ヒストンのリジン(lysine)をアセチル化すると、核内にてクロマチンが活性化される。クロマチンが活性化されると、核内転写因子がDNAのプロモーター(promoter)領域にアクチベーター(activator)とともに結合し、構造遺伝子が立ち上がる。また、HDAC(histone deacetylase)は、lysineの脱アセチル化を引き起し、クロマチンを再び不活性化にする。
【0051】
SBを代表とするHDACIは、この HDACによる脱アセチル化を防ぎ、クロマチンを不活性化しない。このために、HDACIは、働きが弱体化している癌抑制遺伝子などが活性化し、ガン細胞の増殖を抑えるように働くのである。
【0052】
[試験対象]
ヒト由来の培養前立腺癌細胞(Du145、 PC3、LNCap)を用いた。LNCap はホルモン依存性前立腺癌細胞であり、Du145とPC3はホルモン非依存性前立腺癌細胞である。
【0053】
[試験方法]
各々10cell / 100μlの濃度の各前立腺癌細胞(Du145、 LNCap、PC3)を96穴マイクロプレート(96well Plate)で培養した。活性発泡体を用いる実験群では、プレートに0、1、2、3mMのSBを6μl添加し、プレートを活性発泡体で上下から挟んだ。このSB入り培養液は、2日毎に培養液を交換した。対照群では、活性発泡体を用いずに培養し、0、1、2、3mMのSBを6μl添加した。0mMのSBには、PBS(Phosphate buffer saline リン酸緩衝食塩水)を同量(6μl)添加している。上記試験は、各濃度につき4系列で行った。
【0054】
培養2、5、8日目に、セルプロリファレイションキット(Cell Proliferation Kit II (XTT: Roche, Manheim, Germany))により、生細胞を光学密度(O.D.:opitical density)450nmで測定した(なお、ブランクの650を引いた)。
【0055】
なお、Cell proliferation Kit II (XTT) は、XTTが脱水素酵素の基質であり、XTTが脱水素酵素によりフォルマザンに還元される性質を利用したものであって、XTT標準混合液とミトコンドリア脱水素酵素活性によってつくられたフォルマザン色素を測定し、細胞の生存率を定量化するものである。したがって、フォルマザン量は生細胞数に対応する。
【0056】
[試験結果]
活性発泡体を用いると、各ヒト前立腺癌細胞ではホルモン依存性の有無にかかわらず、活性発泡体を用いた群ではSBが低濃度(1mM)でも、活性発泡体を用いない高濃度(3mM)のSB以上に、有意に前立腺癌細胞の増殖を抑制した(図8〜10)。すなわち、活性発泡体は、SBと共同して働き、ヒト前立腺癌細胞の増殖を明確に抑制した。
【0057】
[考察]
上記の試験から次のことが言える。図8〜10より、活性発泡体とHDACIとを同時に用いることにより、活性発泡体は、HDACIのヒト前立腺癌細胞の増殖抑制効果を促進することができる。原理的には、この方法は全ての癌に有効な治療法と考えられる。また、SBは、元来、ヒト体内の腸管内に存在するものであって、アレルギー反応などを起こさない物質である。したがって、本試験で有効性が証明された1mMの濃度では、生体に対する毒性が極めて少なく、アレルギーなどの副作用がない。
【0058】
また、余剰のHDACは、クロマチンリモデリングファクター(chromatin remodeling factor)などと共同で働き、シトシン(cytosine)をメチル化し、ガン細胞の増殖を抑える方向に働く。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本活性発泡体は、薬剤投与の際に、人体に直接又は間接的に接触させて用いれば、その薬剤の効果を上げることができる。また、大量に使えば副作用のある薬剤であっても、本活性発泡体を併用すれば少量ですむので、副作用を抑えることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 気泡シート
2 カバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム化合物及び/又はゲルマニウム化合物を含有する天然若しくは合成ゴム又は合成樹脂製の活性発泡体であって、独立気泡構造を有し、薬物投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いることを特徴とする活性発泡体。
【請求項2】
ジルコニウム化合物及び/又はゲルマニウム化合物と、カーボンとを含有する天然若しくは合成ゴム又は合成樹脂製の活性発泡体であって、独立気泡構造を有し、薬物投与の際に人体に直接又は間接的に接触させて用いることを特徴とする活性発泡体。
【請求項3】
前記薬剤は、抗癌剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の活性発泡体。
【請求項4】
前記薬剤は、ヒト由来の抗癌効果を持つ物質であることを特徴とする請求項3記載の活性発泡体。
【請求項5】
前記ヒト由来の抗癌効果を持つ物質は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)であることを特徴とする請求項4記載の活性発泡体。
【請求項6】
前記気泡は、20〜30個/mm形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の活性発泡体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−21018(P2012−21018A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213138(P2011−213138)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【分割の表示】特願2006−536494(P2006−536494)の分割
【原出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(390000055)
【出願人】(305027135)
【Fターム(参考)】