説明

活性種発生装置

【課題】本発明は、活性種発生装置において吸着手段の劣化を長期間安定して抑制することを目的とするものである。
【解決手段】本体ケース6と、前記本体ケース6内に設けられるとともに、孔部21を有する平板形状の絶縁性基板16と、前記絶縁性基板16の一方面で、前記孔部21に対向して配置された放電電極17と、前記絶縁性基板16の孔部21の内面と前記絶縁性基板16の前記一方面表面とに設けた近傍の水分を吸着する吸着手段18と、この吸着手段18の外周部を覆うごとく設けた導電部23と、この導電部23と電気的に接続された対向電極19と、この対向電極19および前記放電電極17に電圧を印加する電源部20とを備え、前記導電部23は、金属製平板からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間の除菌や脱臭等を行う活性種発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中にラジカルなどの活性種を供給し、この活性種による清浄化作用により、この空気を清浄化する活性種発生装置が開発されている。
【0003】
従来のこの種、活性種発生装置は、本体ケースと、放電電極と、この放電電極に対向する対向電極と、これらの放電電極と対向電極とに電圧を印加する電源部と、対向電極の表面に設けた吸着手段とを備えた構成であった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−320613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の活性種発生装置では、放電電極と対向電極間に電圧を印加することで、コロナ放電を行わせ、これによって吸着手段に吸着した水分を分解し、活性種を発生させるようになっていた。
【0006】
このような構成において、コロナ放電によって放電電極と対向電極間に流れる電流は、放電電極から導電体である対向電極への最短経路に流れ易いので、放電電極近傍の狭い範囲の吸着手段に集中して電子が流れる傾向があった。
【0007】
しかしながら、吸着手段の狭い範囲に電流が集中することにより、集中的に生成した活性種が吸着手段の劣化を起こす可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、吸着手段の劣化を長期間安定して抑制し、活性種を生成する活性種発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、本体ケースと、前記本体ケース内に設けられるとともに、孔部を有する平板形状の絶縁性基板と、前記絶縁性基板の一方面で、前記孔部に対向して配置された放電電極と、前記絶縁性基板の孔部の内面と前記絶縁性基板の前記一方面の表面とに設けた近傍の水分を吸着する吸着手段と、この吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部と、この導電部と電気的に接続された対向電極と、この対向電極および前記放電電極に電圧を印加する電源部とを備え、前記導電部は、金属製平板からなることを特徴とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、本体ケースと、前記本体ケース内に設けられるとともに、孔部を有する平板形状の絶縁性基板と、前記絶縁性基板の一方面で、前記孔部に対向して配置された放電電極と、前記絶縁性基板の孔部の内面と前記絶縁性基板の前記一方面の表面とに設けた近傍の水分を吸着する吸着手段と、この吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部と、この導電部と電気的に接続された対向電極と、この対向電極および前記放電電極に電圧を印加する電源部とを備え、前記導電部は、金属製平板からなることを特徴としたもので、吸着手段の劣化を長期間安定して抑制することができる。
【0011】
すなわち、本発明においては、吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部と、この導電部と電気的に接続された対向電極と、この対向電極および前記放電電極に電圧を印加する電源部とを備えているので、放電電極と対向電極間に高電圧が印加された場合に、放電電極と対向電極間を流れる電流は、まず、放電電極から絶縁性基板に設けた放電電極の周囲に位置する吸着手段を流れ、次に、この吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部を流れた後に、対向電極へと到達することになる。
【0012】
つまり、放電電極の周囲に吸着手段が位置するので、吸着手段の広い範囲に電流が分散し、更に、吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部へ広がるように電流が流れるので、吸着手段の狭い範囲に電流が集中し、集中的に活性種を生成することなく、吸着手段の劣化を抑制することができるものである。
【0013】
また、さらに、本発明においては、前記導電部は、金属製平板からなるので、導電部を導電性インクによる印刷により形成した場合と比較して、導電部の放電による劣化が少なく、吸着手段の劣化を長期間安定して抑制することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における活性種発生装置を設置する屋内の斜視図
【図2】同活性種発生装置の断面図
【図3】同活性種発生装置の断面図
【図4】同活性種発生手段の断面図
【図5】同活性種発生手段の分解斜視図
【図6】同活性種発生手段の導電部および絶縁性基板の分解斜視図
【図7】同活性種発生手段の導電部および絶縁性基板を切断した分解斜視図
【図8】同活性種発生装置における絶縁性基板部分の断面図
【図9】同活性種発生装置におけるプラスコロナ放電の概念を示す図
【図10】同活性種発生装置におけるマイナスコロナ放電の概念を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、部屋1の床上2には、活性種発生装置3が配置されている。この活性種発生装置3は、部屋内の空気中にラジカルなどの活性種を供給することで、この活性種による清浄化作用により、空気を清浄化するものである。また、活性種を含む空気を衣類やカーテン等にあてることによって、衣類やカーテンの脱臭・除菌などの効果が期待できる。
【0017】
図2は、図1における活性種発生装置3の断面図を示している。図3は、図2とは部品配置が異なる活性種発生装置3の断面図を示している。
【0018】
活性種発生装置3は、吸気口4と排気口5を有する本体ケース6と、この本体ケース6内の送風手段7および活性種発生手段8とを備えている。
【0019】
本体ケース6は、略中央に位置する仕切板部9によって、吸気口4と排気口5とを連通する風路部10と、空間部11とに分けられている。
【0020】
送風手段7は、本体ケース6の仕切板部9に固定された電動機12と、この電動機12によって回転する羽根部13と、この羽根部13を囲むケーシング部14とから形成している。ケーシング部14の吸込口15は、本体ケース6の吸気口4に対向している。送風手段7によって、吸気口4から吸い込んだ空気は、活性種発生手段8の一部を介して、排気口5へ送風されるものである。
【0021】
活性種発生手段8は、図4〜図7に示すように絶縁性基板16と、絶縁性基板16の一方面で、孔部21に対向して配置された放電電極17と、絶縁性基板16の孔部21の内面と前記絶縁性基板16の前記一方面表面とに設けた近傍の水分を吸着する吸着手段18と、この吸着手段18の外周部を覆うごとく設けた導電部23と、この導電部23と電気的に接続された対向電極19と、この対向電極19および放電電極17に電圧を印加する電源部20(図2、図3に記載)とから形成している。
【0022】
絶縁性基板16は、図5、図6に示すごとく、平板形状で略中央に開口である孔部21を有し、絶縁性基板16の端部は、支持部材22を介して本体ケースの仕切板部9に固定されている。
【0023】
図3の部品配置では、孔部21は、本体ケース6の排気口5に対向しており、送風手段7によって、吸気口4から吸い込んだ空気の一部は、放電電極17の周囲を通り、孔部21を介して、排気口5へ送風されるものである。
【0024】
図4には、活性種発生手段8の断面図が示されている。図5は、活性種発生手段8の分解斜視図を示している。図6は、活性種発生手段8の導電部23および絶縁性基板16の分解斜視図を示している。
【0025】
活性種発生手段8は、上述のごとく絶縁性基板16と、この絶縁性基板16の一方面で、孔部21に対向して配置された放電電極17と、絶縁性基板16の孔部21の内面と前記絶縁性基板の前記一方面表面とに設けた近傍の水分を吸着する吸着手段18と、この吸着手段18の外周部を覆うごとく設けた導電部23と、この導電部23と電気的に接続された対向電極19と、電源部20を設けたものである。
【0026】
活性種発生手段8は、放電電極17を保持する支持部材22と、絶縁性基板16と固定蓋24を備えている。
【0027】
支持部材22は、仕切板部9(図2、図3に記載)に固定されている。
【0028】
絶縁性基板16は、四角平板形状であり、略中央に開口する孔部21を有している。なお、絶縁性基板の形状は円形や多角形であってもよい。
【0029】
なお、絶縁性基板16は、セラミック基板であっても、フッ素などの樹脂基板であっても良い。セラミック基板として、シリカ、アルミ、マグネシウムのうちいずれか1つを含む基板であっても、アルミナ基板であっても良い。オゾンやラジカルで腐食されにくい無機系のもの、あるいは、フッ素樹脂であれば良いためである。なお、絶縁性基板16の表面抵抗は、106から1010Ω/□であることが望ましい。
【0030】
放電電極17は、棒形状で、支持部材22の底面から垂直方向に延び、絶縁性基板16の一方面に対向している。支持部材22は多数の開口を備えて通気可能である。そして、放電電極17の先端は、絶縁性基板16から数ミリメートル〜数十ミリメートル程度の所定距離を隔てて、孔部21の外で、かつ孔部21の略中央延長線上に位置するものである。放電電極17の材質は、コロナ放電をさせるSUSなどのステンレスやタングステンなどである。放電可能であれば、炭素・スズ・SiCなどを含む電極を用いてもよい。なお、放電電極は針状のもの、繊維状、円錐状のものであってもよい。
【0031】
吸着手段18は、図6に示すように、絶縁性基板16の一方面側の表面、つまり、放電電極17と対向した面と、絶縁性基板16の孔部21の内面とに設けられている。放電電極17側から見ると、吸着手段18の形状はリング形状である。吸着手段18の表面抵抗は、106から1010Ω/□であることが望ましい。
【0032】
吸着手段18の外周部を覆う位置に導電部23を設け、この導電部23は対向電極19と吸着手段18と電気的に接続しているものである。
【0033】
導電部23は、四角形状の金属性平板であり、孔部21の外周よりも大きく、かつ、吸着手段18の外周よりも小さい貫通孔41を有する。
【0034】
対向電極19は、絶縁性基板16の角に備えられている。対向電極19は、SUSなどのステンレス、アルミ、金、銀、銅などで形成されている。なお、これらに限られること無く、導電性の素材であれば良い。対向電極19の表面抵抗は、10-1Ω/□以下であることが望ましい。
【0035】
また、対向電極19は、絶縁性基板16における一方面の裏側に位置する他方面、又は絶縁性基板16における一方面と他方面との間の外周面に接して設けられているものであっても良い。これにより、放電電極17から流れる電子が、絶縁性基板16の表面を伝って流れる際に、電子の移動する距離である、いわゆる沿面距離が伸びることで、火花放電が起こりにくくなる。
【0036】
なお、これに限られること無く、対向電極19を絶縁性基板16の表面に設ける場合には、十分な沿面距離を確保した状態で配置することが必要となる。
【0037】
図8に示すように、吸着手段18は、絶縁性基板近傍の水分を吸着する吸着剤26と、この吸着剤26と絶縁性基板16を接着する接着剤27とから形成している。吸着剤26は、水を吸着する平均粒子径0.5マイクロメートルから数十マイクロメートル程度の粒子で、表面に細孔を有しているゼオライトである。
【0038】
なお、吸着剤26としてゼオライトを例に挙げたが、吸着剤26は、ナノレベルの細孔28を有し、いわゆるKelvinの毛管凝縮現象により細孔内で水蒸気が凝縮し得るような細孔28を有する構造を有する多孔質構造体であれば、シリカ、ゼオライト、デシカイト、アロフィン、イモゴライトなどでも、これらのうち少なくともいずれか1つを含むものでも良い。
【0039】
また、粒子間の隙間を利用して水を吸着する、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、多孔質チタニアであっても良い。なお、吸着剤26は、細孔28に空気中の水蒸気を吸着させるものであるが、細孔28が接着剤27の粒子で埋まりにくい平均粒子径であれば、空気中の水蒸気を吸着することができる。なお、水蒸気を多く吸着するためには、吸着剤26は接着剤27よりも平均粒子径が大きいものが好ましい。
【0040】
接着剤27は、吸着剤26と、絶縁性基板16とを接着するコロイダルシリカである。なお、接着剤27は、ゼオライトなどの吸着剤26の平均粒子径より小さく、ゼオライトの表面に開いている細孔よりも大きい平均粒子径であれば良い。また、細孔を閉塞させなければ、接着剤27としてガラス粉や、シリケート化合物を用いてもよい。
【0041】
ここで、放電電極17にプラスの電圧を印加した場合について図9を用いて説明を行う。
【0042】
図9のように、この放電電極17に、電源部20により放電電圧をプラス約3〜10KVで印加を行うと、放電電極17表面に強い電界が形成される。放電電極17にプラスの高電圧が印加されているため、空気中に存在する遊離電子が流れ込む。このとき、対向電極19は、マイナス状態となっているので、その結果、電子が移動することで、対向電極19から放電電極17へ電子が流れる。この状態がコロナ放電であって、このコロナ放電の力で後述のごとく、OHラジカル(活性種の一例)が発生する。
【0043】
更に詳細に説明すると、吸着剤26の表面はナノレベルの細孔28を有し、空気中の水分は、この細孔28内で水蒸気が凝縮することにより、水分を吸着することが知られている(Kelvinの毛管凝縮現象)。これにより、ゼオライトなどの吸着剤26に、空気中の水分が吸着され、対向電極19から吸着剤26へ電気、すなわち電子が流れやすくなる。
【0044】
放電電極17にプラスの高電圧を印加してプラスコロナ放電を行うと、吸着剤26中の電子は、放電電極17に強い力で引き寄せられるため、電子が吸着剤26中を高速で移動する。吸着剤26の表面から飛び出した電子が、吸着剤26の近くに有る空気中の酸素分子と衝突すると、酸素分子に電子が一つ増えた状態の酸素分子の陰イオンが発生する。その後、酸素分子陰イオンが、絶縁性基板16の表面に吸着された水分子と反応をすることで、OHラジカルなどの活性種を発生する。吸着した水分の周辺でコロナ放電が起こることにより、水分が電子と反応しやすくなるため、OHラジカルの発生をより行いやすくするものである。
【0045】
導電部23は、図5〜図7に示すごとく、貫通孔41を有する四角形状の金属性平板からなる。
【0046】
吸着手段18の外周部を覆う位置に導電部23を設け、この導電部23は対向電極19と吸着手段18と電気的に接続しているものである。
【0047】
導電部23の外形を支持部材22の内部と略同一の四角形状とすれば、活性種発生手段8の組立工程において、導電部23の位置決めを容易にすることができる。
【0048】
本実施形態における特徴は、絶縁性基板16は孔部21を有し、孔部21に放電電極17が対向し、孔部21の内面と前記絶縁性基板16の一方面表面とに近傍の水分を吸着する吸着手段18を備え、この吸着手段18の外周部を覆うごとく導電部23と、この導電部23と電気的に接続された対向電極19を設け、この導電部23は、金属製平板からなる点である。これにより、放電電極17と対向電極19間に高電圧が印加された場合に、放電電極17と対向電極19間を流れる電流は、まず、放電電極17から絶縁性基板16に設けた放電電極17の周囲に位置する吸着手段18を流れ、次に、この吸着手段18の外周部を覆うごとく設けた導電部23を流れた後に、対向電極19へと到達することになる。
【0049】
つまり、放電電極17を中心として円周方向の周囲に吸着手段18が位置するので、吸着手段18の広い範囲に電流が分散することになり、広い範囲で分散して放電するため、結果として活性種を広い範囲で安定して発生させることができるものである。また、円筒棒状の放電電極17の放電部分は、先端部の断面形状が円状になっているため、放電電極17を中心として円周方向に広い範囲に分散して放電が発生する。その結果、先端が鋭利な針状の放電電極を用いる場合に比べて、局所的な放電集中が起こりにくく、放電電極17の劣化を抑制することができ、結果として活性種を安定して発生させることができるものである。
【0050】
さらに、吸着手段18の外周部を覆うごとく設けた導電部23へ広がるように電流が流れるので、吸着手段18の狭い範囲に電流が集中し、集中的に活性種を生成することなく、吸着手段18の劣化を抑制することができるものである。
【0051】
また、導電部23は、金属製平板からなるので、導電部を導電性インクによる印刷により形成した場合と比較して、導電部23の放電による劣化を抑制し、吸着手段18の劣化を長期間安定して抑制することができ、結果として活性種を安定して発生させることができるものである。
【0052】
なお、導電部23は、SUS316L、SUS316、SUS304、アルマイト処理を施したアルミニウムのいずれかからなるものであることが望ましい。これらの金属は、オゾン等の活性種に対する耐性が高いため、オゾン等の活性種により対向電極19が腐食されにくくなり、導電部23の耐久性を向上できるからである。
【0053】
なお、導電部23は、これらに限られること無く、導電性の素材であれば良い。導電部23の表面抵抗は、10-1Ω/□以下であることが望ましい。
【0054】
また、放電電極17の先端の断面形状と、絶縁性基板16の孔部21、導電部23の貫通孔41の形状は、円形であり、中心軸が略一致するように配置されている。導電部23の貫通孔41は、絶縁性基板16の孔部21よりも大きいものとする。
【0055】
すなわち、導電部23の貫通孔41の内側には、吸着手段18の表面が露出する状態となるため、吸着手段18、導電部23、対向電極19の間を流れる電気、すなわち電子の流れが遮断されない。
【0056】
また、これによれば、放電電極17の先端の周囲と、絶縁性基板16の孔部21との内面、および、導電部23の貫通孔41の周縁との距離が、均一になる。これにより、吸着手段18の広い範囲に均一に電流が分散することになり、放電電極17の放電部分も、同様に放電電極17の広い範囲から均一に分散して放電するため、放電電極17での劣化集中を抑制し、放電電極17の耐久性の向上が図れるものである。
【0057】
さらにまた、これにより、吸着手段18の広い範囲に均一に電流が分散することになり、吸着手段の広い範囲に電流が分散し、この電流が、更に、吸着手段18から吸着手段18の外周部を覆うごとく設けた導電部23へ広がるように電流が流れるので、吸着手段18の狭い範囲に電流が集中して集中的に活性種を生成することがないため、吸着手段18の劣化を抑制することができるものである。
【0058】
また、吸着手段18の広い範囲に電流が分散するので、OHラジカルの発生量が増加するものである。
【0059】
また、放電電極17の先端と対向電極19との距離は、放電電極17の先端と導電部23との距離より長いものである。具体的には、放電電極17と対向電極19間を流れる電流は、例えば放電電極17から絶縁性基板16の孔部21の内面を覆う吸着手段18を流れた後に、その内面を経由し、続いて吸着手段18を流れ、更に導電部23を介して、その後ようやく対向電極19へと到達することになり、つまり、沿面距離が長いので、その結果として火花放電が起こらず、安全性の向上が図れるものである。
【0060】
また、導電部23の表面抵抗率は、吸着手段18の表面抵抗率より小さいものである。具体的には、吸着手段18の表面抵抗率は、106から1010Ω/□であり、導電部23の表面抵抗率は、106以下であり、対向電極19の表面抵抗率は、10-1以下であることが望ましい。
【0061】
放電電極17と対向電極19間に高電圧が印加された場合に、放電電極17と対向電極19間を流れる電流は、まず、放電電極17から絶縁性基板16に設けた放電電極17の周囲に位置する吸着手段18を流れ、次に、この吸着手段18の周縁部に位置する導電部23を流れた後に、対向電極19へと到達することになる。ここで、吸着手段18の周縁部まで流れた電流は、導電部23の表面抵抗率が、吸着手段18の表面抵抗率より小さいものであるので、導電部23を介して対向電極19へ到達し易くなる。
【0062】
すなわち、吸着手段18の広い範囲に電流が分散し、更に、吸着手段18の周縁部に位置する導電部23へ広がるように電流が流れるので、吸着手段18の狭い範囲に電流が集中し、集中的に活性種を生成することなく、吸着手段18の劣化を抑制することができるものである。
【0063】
図7は活性種発生手段8の導電部23および絶縁性基板16の断面図である。
【0064】
導電部23は、貫通孔41を有する四角形状の金属性平板からなるものであり、吸着手段18の外周部を覆うごとく設けられる。
【0065】
導電部23において、外周部42と貫通孔41とは、打抜加工により形成される。
【0066】
図7に示すように、導電部23において、外周部42と貫通孔41とを打抜加工する際に、その各々の切断縁の下側の打抜下面43には、凸部44が形成される。導電部23は、凸部44が吸着手段18に接する位置に配置される。
【0067】
吸着手段18と、導電部23の貫通孔41の周縁とが、確実に接触することにより、電子が、吸着手段18から導電部23に確実に流れる。導電部23において凸部44が吸着手段18に接する位置に配置されることにより、導電部23の凸部44が吸着手段18に確実に接することとなるので、電子が、吸着手段18から凸部44を介して導電部23に確実に流れる。
【0068】
また、導電部23は、図9および図10に示すように絶縁被覆部30(図6では、図面の煩雑化をさけるために図示せず)で覆われていることを特徴とするものである。具体的には、導電部23が放電電極17と対向している面は、絶縁被覆部30により覆われているものである。これにより、放電電極17から導電部23へ電流が直接流れることを抑制できる。絶縁被覆部30は、ガラスやフッ素樹脂などで形成されている。絶縁被覆部30としては、フッ素樹脂・塩ビ樹脂などの絶縁性テープを接着する方法、ガラスペースト・セラミック系接着剤を塗布して乾燥焼成する方法などを用いることができる。
【0069】
なお、これらに限られること無く、絶縁性の素材であれば良い。なお、絶縁被覆部30は、内方へ延び、吸着手段の一部を覆っても良い。これにより、吸着手段18と導電部23との接触面も絶縁被覆部30が覆うので、更に、放電電極17から導電部23へ電流が直接流れることを抑制できる。
【0070】
なお、本実施の形態において放電電極17は、プラスに印加したものであるが、この放電電極17に印加する電圧はプラスであっても、マイナスであっても良い。
【0071】
次に、図10のように、放電電極17にマイナスの電圧を印加した場合について説明を行う。放電電極17に、電源部20により放電電圧をマイナス約3〜10KVで印加を行うと、放電電極17表面に強い電界が形成される。放電電極17にマイナスの高電圧が印加されているため、空気中に遊離電子が放出される。対向電極19に接した絶縁性基板16は、プラス側となる。その結果、電子が移動することで、対向電極19から放電電極17へ電流が流れる。
【0072】
図10の放電電極17から空気に放出された電子は、対向電極19の強い電界に強い力で引き寄せられるため、電子が高速で移動し、空気中の分子などと衝突する。このとき高速で移動している電子が、空気中の酸素分子と衝突すると、酸素分子に電子が一つ増えた状態の酸素分子の陰イオンが発生する。その後、酸素分子陰イオンが、絶縁性基板16の吸着手段18に吸着された水分子と反応をすることで、OHラジカルが発生する。
【0073】
上記のようなマイナスに印加された放電電極17からの放電であるいわゆるマイナスコロナ放電を行うことにより、吸着手段18周辺の水分が電子と反応することにより、OHラジカルの発生をより行いやすくするものである。
【0074】
さらに、このように、放電電極17と対向電極19間に吸着手段18を介して面方向に電子が流れるため、沿面距離が長くなり、絶縁性基板16の表面を電流が伝って流れるものである。
【0075】
放電電極17の先端からは、イオン風と呼ばれる気流が発生する。この気流は、放電電極17の先端から絶縁性基板16の方向に向かって流れる。図3に示した構成においては、この気流の流れによって、本体ケース6の吸気口4から室内空気が流れ込み、放電電極17の周囲を通って、絶縁性基板16の孔部21を介して排気口5から室内へ排出される排気気流が発生する。
【0076】
この場合、図2で説明した送風手段7は設けなくてもよく、活性種発生装置3を小型化でき、設置場所を選ばず、卓上等にも設置できる。
【0077】
ここで、図9、図10のようにして発生したOHラジカルなどの活性種は、この排気気流に乗って活性種発生装置3から室内へ排出される。このOHラジカルなどの活性種を含む空気を部屋内に供給することで、空気中の菌を不活化することができる。また、空気中の臭いを分解して取り除くことで、脱臭効果を発揮させることができる。また、活性種を含む空気を衣類やカーテン等にあてることによって、衣類やカーテンの脱臭・除菌などの効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように本発明は、本体ケースと、前記本体ケース内に設けられるとともに、孔部を有する平板形状の絶縁性基板と、前記絶縁性基板の一方面で、前記孔部に対向して配置された放電電極と、前記絶縁性基板の孔部の内面と前記絶縁性基板の前記一方面表面とに設けた近傍の水分を吸着する吸着手段と、この吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部と、この導電部と電気的に接続された対向電極と、この対向電極および前記放電電極に電圧を印加する電源部とを備え、前記導電部は、金属製平板からなることを特徴としたもので、吸着手段の劣化を長期間安定して抑制することができる。
【0079】
すなわち、本発明においては、吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部と、この導電部と電気的に接続された対向電極と、この対向電極および前記放電電極に電圧を印加する電源部とを備えているので、放電電極と対向電極間に高電圧が印加された場合に、放電電極と対向電極間を流れる電流は、まず、放電電極から絶縁性基板に設けた放電電極の周囲に位置する吸着手段を流れ、次に、この吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部を流れた後に、対向電極へと到達することになる。
【0080】
つまり、放電電極の周囲に吸着手段が位置するので、吸着手段の広い範囲に電流が分散し、更に、吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部へ広がるように電流が流れるので、吸着手段の狭い範囲に電流が集中し、集中的に活性種を生成することなく、吸着手段の劣化を抑制することができるものである。
【0081】
また、さらに、本発明においては、前記導電部は、金属製平板からなるので、導電部を導電性インクによる印刷により形成した場合と比較して、導電部の放電による劣化が少なく、吸着手段の劣化を長期間安定して抑制することができるものである。
【0082】
したがって、空気清浄機としての活用が期待される。
【符号の説明】
【0083】
1 部屋
2 床上
3 活性種発生装置
4 吸気口
5 排気口
6 本体ケース
7 送風手段
8 活性種発生手段
9 仕切板部
10 風路部
11 空間部
12 電動機
13 羽根部
14 ケーシング部
15 吸込口
16 絶縁性基板
17 放電電極
18 吸着手段
19 対向電極
20 電源部
21 孔部
22 支持部材
23 導電部
24 固定蓋
25 取付部
26 吸着剤
27 接着剤
28 細孔
30 絶縁被覆部
41 貫通孔
42 外周部
43 打抜下面
44 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケース内に設けられるとともに、孔部を有する平板形状の絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の一方面で、前記孔部に対向して配置された放電電極と、
前記絶縁性基板の孔部の内面と前記絶縁性基板の前記一方面の表面とに設けた近傍の水分を吸着する吸着手段と、
この吸着手段の外周部を覆うごとく設けた導電部と、
この導電部と電気的に接続された対向電極と、
この対向電極および前記放電電極に電圧を印加する電源部とを備え、
前記導電部は、金属製平板からなることを特徴とする活性種発生装置。
【請求項2】
前記導電部は、前記絶縁性基板の孔部よりも大きな貫通孔を有する金属製平板であって、
前記絶縁性基板の孔部および前記導電部の貫通孔は円形であるとともに、中心軸が略一致する位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の活性種発生装置。
【請求項3】
前記導電部は、外周部および貫通孔が打抜加工により形成され、その打抜下面が前記吸着手段に接していることを特徴とする請求項1または2に記載の活性種発生装置。
【請求項4】
前記導電部は、SUS316L、SUS316、SUS304、アルマイト処理を施したアルミニウムのいずれかからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の活性種発生装置。
【請求項5】
前記放電電極の先端と前記対向電極との距離は、前記放電電極の先端と前記導電部との距離より長いことを特徴とする請求項1または2に記載の活性種発生装置。
【請求項6】
前記導電部の表面抵抗値は、前記吸着手段の表面抵抗値より小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の活性種発生装置。
【請求項7】
前記導電部の前記吸着手段に接する面と逆の表面は、絶縁被覆部で覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の活性種発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−531(P2013−531A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137979(P2011−137979)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】