説明

活性薬剤を送達するためのアリールケトン化合物および組成物

本発明は、活性薬剤の送達を容易にするアリールケトン化合物およびそれを含む組成物を提供する。そのアリールケトン化合物は式Iを有するかその塩である。式中、n=1〜9であり、R1〜R5は独立に、水素、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C2〜C4アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシル、-NH-C(O)-CH3または-O-C6H5である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年5月14日出願の米国仮出願番号第60/571090号および2004年5月14日出願の米国仮出願番60/571092号の利益を主張するものである。これらの出願全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、活性薬剤を標的に送達するためのアリールケトン化合物に関する。これらの化合物は、動物に経口や他の経路で投与するための、活性薬剤と非共有結合型混合物を形成するのによく適している。そうした組成物の調製および投与方法も開示する。
【背景技術】
【0003】
活性薬剤を送達するための従来の手段は、生物学的、化学的かつ物理的障害によってしばしば厳しく制約される。一般に、これらの障害は、それを介して送達を行う環境、送達のための標的の環境および/または標的自体によって付与される。生物学的かつ化学的に活性な薬剤はそうした障害に対して特に脆弱である。
生物学的に活性でかつ化学的に活性な薬理活性剤や治療剤の動物への送達において、障害は身体によって付与される。物理的障害の例は、皮膚、上皮、脂質二重層、および特定の活性薬剤に対して比較的不浸透性であるが、循環系などの標的に到達する前に横断しなければならない様々な器官膜である。化学的障害には、これらに限定されないが、胃腸(GI)管におけるpHの変動や分解酵素が含まれる。
【0004】
これらの障害は経口送達系の設計において特に重要である。もし生物学的、化学的かつ物理的障害がなければ、動物への投与のためには、多くの活性薬剤の経口送達が、経路として選択されることになろう。一般に経口投与に向いていない多くの薬剤には、カルシトニンおよびインスリンなどの生物学的にまたは化学的に活性なペプチド;これらに限定されないが、ヘパリンを含むムコ多糖などの多糖;;ヘパリノイド;抗生物質および他の有機物質がある。これらの薬剤は、酸加水分解、酵素等によって、胃腸管の中で急速に効果がなくなるか破壊される可能性がある。さらに、巨大分子薬物のサイズや構造が吸収を阻害する可能性がある。
【0005】
脆弱な薬理活性剤を経口で投与するための従来の方法は、アジュバント(例えば、レゾルシノール、ならびにポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルなどの非イオン性界面活性剤)を同時投与して腸壁の透過性を人為的に増大させることと、酵素阻害剤(例えば、膵臓トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFF)およびトラシロール(trasylol))を同時投与して酵素的分解を阻害することに依存してきた。リポソームも、インスリンやヘパリンのための薬物送達系として記載されている。しかし、以下の理由からそうした薬物送達系の広範囲にわたる使用は妨げられている:(1)その送達系が有害な量のアジュバントまたは阻害剤を必要とする;(2)適切な低分子量積荷すなわち活性薬剤が得られない;(3)送達系の安定性が劣り、その有効期間が不十分である;(4)送達系が製造困難である;(5)送達系が活性薬剤(積荷)を保護することができない;(6)送達系が活性薬剤を有害なものへと変えてしまう;あるいは、(7)送達系が、活性薬剤の吸収を不可能とする、または促進することができない。
【0006】
プロテイノイドミクロスフィアが医薬品を送達するのに用いられてきた。例えば、米国特許第5401516号、同5443841号;およびRe.35862を参照されたい。さらに、ある種の改変アミノ酸が医薬品を送達するのに用いられてきた。例えば、米国特許第5629020号、同5643957号、同5766633号、同5776888号および同5866536号、ならびにWO98/49135、WO00/06534、WO00/07979、WO00/40203、WO00/47188、WO00/50386、WO00/59863、WO01/32130、WO01/32596、WO01/44199、WO01/51454、WO02/02509、WO02/15959、WO02/16309、WO02/20466、WO02/19969、WO02/69937およびWO03/45306を参照されたい。
【0007】
より最近では、連結基を介してポリマーを改変アミノ酸またはその誘導体とコンジュゲートさせてポリマー系送達剤を提供している。WO00/40203を参照されたい。
【特許文献1】米国仮出願番号第60/571090号
【特許文献2】米国仮出願番60/571092号
【特許文献3】米国特許第5401516号、
【特許文献4】米国特許第5443841号
【特許文献5】米国特許第5629020号
【特許文献6】米国特許第5643957号
【特許文献7】米国特許第5766633号
【特許文献8】米国特許第5776888号
【特許文献9】米国特許第5866536号
【特許文献10】WO98/49135
【特許文献11】WO00/06534
【特許文献12】WO00/07979
【特許文献13】WO00/40203
【特許文献14】WO00/47188
【特許文献15】WO00/50386
【特許文献16】WO00/59863
【特許文献17】WO01/32130
【特許文献18】WO01/32596
【特許文献19】WO01/44199
【特許文献20】WO01/51454
【特許文献21】WO02/02509
【特許文献22】WO02/15959
【特許文献23】WO02/16309
【特許文献24】WO02/20466
【特許文献25】WO02/19969
【特許文献26】WO02/69937
【特許文献27】WO03/45306
【特許文献28】WO02/47712
【特許文献29】米国特許出願第2002/0141985号
【非特許文献1】Tatemoto、Proc Natl Acad Sci U.S.A.79:2514〜8頁、1982
【非特許文献2】Eberlein、Eysseleinら、Peptides10:797〜803頁(1989)
【非特許文献3】Grandy、Schimiczekら、Regul Pept51:151〜9頁(1994)
【特許文献30】WO98/20885
【特許文献31】米国特許第4421685号
【特許文献32】米国特許第5474978号
【特許文献33】米国特許第5534488号
【非特許文献4】Physicians' Desk Reference(58th Ed.、2004、Medical Economics Company,Inc.、Montvale、NJ)
【非特許文献5】Henry,J.B.、Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods、Philadelphia、PA、W.B.Saunders(1979)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、容易に調製でき、かつ様々な経路により活性薬剤を送達できる簡単で安価な送達系が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、活性薬剤の送達を容易にするアリールケトン化合物およびそれらを含む組成物を提供する。そのアリールケトン化合物は以下の化学式を有するか、その塩である。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
n=1〜9であり、
R1〜R5は独立に、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C2〜C6アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシル、-NH-C(O)-CH3または-O-C6H5である)。
R1〜R5は独立に、水素、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C2〜C4アルケニル、ハロゲンまたはヒドロキシルであることが好ましい。
【0012】
1つの好ましい実施形態では、n=2〜8である。
【0013】
他の好ましい実施形態では、n=8である。
【0014】
他の好ましい実施形態では、n=7である。
【0015】
他の好ましい実施形態では、n=6である。
【0016】
他の好ましい実施形態では、n=5である。
【0017】
他の好ましい実施形態では、n=4である。
【0018】
他の好ましい実施形態では、n=3である。
【0019】
他の好ましい実施形態では、n=2であり、R1〜R5は水素である。
【0020】
他の好ましい実施形態では、n=8であり、R1〜R5は水素である。
【0021】
他の好ましい実施形態では、n=7であり、R1〜R5は水素である。
【0022】
他の好ましい実施形態では、n=6であり、R1〜R5は水素である。
【0023】
他の好ましい実施形態では、n=5であり、R1〜R5は水素である。
【0024】
他の好ましい実施形態では、n=4であり、R1〜R5は水素である。
【0025】
他の好ましい実施形態では、n=3であり、R1〜R5は水素である。
【0026】
他の好ましい実施形態では、R1およびR5は水素である。
【0027】
他の好ましい実施形態では、R1およびR5は水素であり、n=2である。
【0028】
他の好ましい実施形態では、R3はヒドロキシルである。
【0029】
他の好ましい実施形態では、R3はヒドロキシルであり、n=8である。
【0030】
他の好ましい実施形態では、R1はヒドロキシルである。
【0031】
他の好ましい実施形態では、R1はヒドロキシルであり、n=8である。
【0032】
他の好ましい実施形態では、R3はメトキシである。
【0033】
他の好ましい実施形態では、R3はメトキシであり、n=2である。
【0034】
他の好ましい実施形態では、R3はメトキシであり、n=3である。
【0035】
他の好ましい実施形態では、R2およびR4は独立にハロゲンであり、n=2である。
【0036】
他の好ましい実施形態では、R2およびR4はフッ素である。
【0037】
他の好ましい実施形態では、R2およびR4はフッ素であり、n=2である。
【0038】
他の好ましい実施形態では、R1およびR3はメチルである。
【0039】
他の好ましい実施形態では、R1およびR3はメチルであり、n=2である。
【0040】
他の好ましい実施形態では、R2およびR4はメチルであり、R3はメトキシであり、n=4である。
【0041】
他の好ましい実施形態では、R3はイソプロピルである。
【0042】
他の好ましい実施形態では、R3はイソプロピルであり、n=3である。
【0043】
他の好ましい実施形態では、R1はメトキシである。
【0044】
他の好ましい実施形態では、R1はメトキシであり、n=2である。
【0045】
他の好ましい実施形態では、R3はハロゲンである。
【0046】
他の好ましい実施形態では、R3はハロゲンであり、n=2である。
【0047】
他の好ましい実施形態では、R3はフッ素であり、n=2である。
【0048】
他の好ましい実施形態では、R3はメトキシである。
【0049】
他の好ましい実施形態では、R3はメトキシであり、n=4である。
【0050】
他の好ましい実施形態では、R2およびR4はメチルである。
【0051】
他の好ましい実施形態では、R2およびR4はメチルであり、n=2である。
【0052】
他の好ましい実施形態では、R2およびR4はメチルであり、n=4である。
【0053】
他の好ましい実施形態では、R2およびR4はメチルであり、n=6である。
【0054】
他の好ましい実施形態では、R2およびR3はメチルであり、n=4である。
【0055】
他の好ましい実施形態では、R2およびR3はメチルであり、n=2である。
【0056】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4はメチルであり、n=2である。
【0057】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4は独立にハロゲンである。
【0058】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4は独立にハロゲンであり、n=2である。
【0059】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4は独立にハロゲンであり、n=4である。
【0060】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4は塩素である。
【0061】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4は塩素であり、n=2である。
【0062】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4は塩素であり、n=4である。
【0063】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4はヒドロキシルである。
【0064】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4はヒドロキシルであり、n=8である。
【0065】
他の好ましい実施形態では、R1およびR4はフッ素である。R2、R3およびR5は水素であることがより好ましい。
【0066】
他の好ましい実施形態では、R1およびR3はフッ素である。R2、R4およびR5は水素であることがより好ましい。
【0067】
他の好ましい実施形態では、R3はエチルである。R1、R2、R4およびR5は水素であることがより好ましい。
【0068】
他の好ましい実施形態では、R3はブトキシまたはヘキシルオキシなどのC1〜6アルコキシである。R1、R2、R4およびR5は水素であることがより好ましい。
【0069】
他の好ましい実施形態では、R3はメチル、プロピルまたはペンチルなどのC1〜6アルキルである。R1、R2、R4およびR5は水素であることがより好ましい。
【0070】
他の好ましい実施形態では、R3は塩素などのハロゲンである。R1、R2、R4およびR5は水素であることがより好ましい。
【0071】
他の好ましい実施形態では、R3はフェノキシ(-O-C6H5)である。R1、R2、R4およびR5は水素であることがより好ましい。
【0072】
本発明は、上記R基およびnの定義の任意の組合せも含む。
【0073】
好ましい化合物には、これらに限定されないが、以下に示す化合物およびその塩が含まれる。
【0074】
【化2】

【0075】
【化3】

【0076】
【化4】

【0077】
【化5】

【0078】
【化6】

【0079】
【化7】

【0080】
【化8】

【0081】
【化9】

【0082】
【化10】

【0083】
【化11】

【0084】
【化12】

【0085】
【化13】

【0086】
【化14】

【0087】
【化15】

【0088】
【化16】

【0089】
【化17】

【0090】
【化18】

【0091】
【化19】

【0092】
【化20】

【0093】
【化21】

【0094】
【化22】

【0095】
【化23】

【0096】
【化24】

【0097】
【化25】

【0098】
【化26】

【0099】
【化27】

【0100】
【化28】

【0101】
【化29】

【0102】
【化30】

【0103】
【化31】

【0104】
【化32】

【0105】
【化33】

【0106】
【化34】

【0107】
【化35】

【0108】
【化36】

【0109】
【化37】

【0110】
【化38】

【0111】
【化39】

【0112】
【化40】

【0113】
【化41】

【0114】
【化42】

【0115】
【化43】

【0116】
これらの送達剤化合物の混合物も用いることができる。
【0117】
本発明は、本発明の送達剤化合物の少なくとも1つと少なくとも1つの活性薬剤とを含む組成物(例えば、薬剤組成物)も提供する。これらの組成物は、送達剤化合物を含まない活性薬剤の投与と比べて、活性薬剤の生物学的利用能を増大させるか改善して、選択された生物学的系に活性薬剤を送達する。適切な活性薬剤には、これらに限定されないが、ムコ多糖およびポリペプチドが含まれる。好ましい活性薬剤には、これらに限定されないが、ヘパリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(pTH[1-34]などのその断片を含む)、インスリンおよびPYY[3-36]が含まれる。より好ましい活性薬剤はインスリンである。
【0118】
一実施形態によれば、活性薬剤はヘパリンである(例えば、未分別のヘパリンまたは低分子量ヘパリン)。
【0119】
他の実施形態によれば、活性薬剤はカルシトニンである。
【0120】
さらに他の実施形態によれば、活性薬剤は副甲状腺ホルモンまたはその断片(pTH[1-34]など)である。
【0121】
さらに他の実施形態によれば、活性薬剤はPYYまたはPYY作用薬(例えば、PYY[3-36])である。
【0122】
さらに他の実施形態によれば、活性薬剤はインスリンである。
【0123】
本発明の組成物を含む投与単位形態も提供する。投与単位形態は、錠剤、カプセル剤または粉剤もしくはサシェイを含む粒子状物などの液体または固体の形態であってよい。
【0124】
他の実施形態は、本発明の送達剤化合物の少なくとも1つと活性薬剤とを含む組成物を動物に投与することによって、動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に活性薬剤を投与するための方法である。投与の経路には、経口、結腸内および肺の経路が含まれる。
【0125】
さらに他の実施形態は、本発明の組成物または投与単位形態を投与することによって、動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)において、疾患を治療するか、または所望の生理学的効果を達成するための方法である。一般に、動物はそうした治療を必要としている。
【0126】
さらに他の実施形態は、少なくとも1つの本発明の送達剤化合物と少なくとも1つの活性薬剤を混合することによって、本発明の組成物または投与単位形態を調製する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0127】
(送達剤化合物)
本明細書で用いる「アルキル」、「アルコキシ」、「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、直鎖および分岐のアルキル、アルコキシ、アルケニルおよびアルキニル置換基をそれぞれ含む。
【0128】
「C1〜C6アルキル」という用語は、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含む。
【0129】
「C1〜C6アルコキシ」という用語は、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシを含む。
【0130】
本発明の送達剤化合物は、適当な出発材料を用いて以下の実施例の化合物1を調製するのと同じ方法によって調製することができる。
【0131】
送達剤化合物はカルボン酸またはその塩(例えば、薬剤として許容されるその塩)の形態であってよい。適切な塩には、これらに限定されないが、有機塩および無機塩、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウムまたはバリウムなどのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;リジンまたはアルギニンなどの塩基性アミノ酸;ならびにジメチルアミンまたはピリジンなどの有機アミンが含まれる。塩はナトリウム塩であることが好ましい。塩はモノナトリウム塩およびジナトリウム塩などの一価または多価の塩であってよい。塩は、エタノール溶媒和物を含む溶媒和物および水和物であってもよい。
【0132】
本発明の送達剤化合物の塩は、当技術分野で周知の方法によって調製することができる。例えば、ナトリウム塩は、送達剤化合物をエタノール中に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を加えて調製することができる。
【0133】
送達剤化合物は、再結晶化か、あるいは単独かタンデム型の1つもしくは複数の固体クロマトグラフィー支持体を用いた分別によって精製することができる。再結晶化の適切な溶媒系には、これらに限定されないが、エタノール、水、ヘプタン、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、メタノールおよびテトラヒドロフラン(THE)ならびにその混合物が含まれる。分別は、移動相としてメタノール/n-プロパノール混合物を用いたアルミナなどの適切なクロマトグラフィー支持体;移動相としてトリフルオロ酢酸/アセトニトリル混合物を用いた逆相クロマトグラフィー;および移動相として水または適当な緩衝液を用いたイオン交換クロマトグラフィーで実施することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーを行う場合、0〜500mMの塩化ナトリウムグラジエントを用いることが好ましい。
【0134】
送達剤は、-NHC(O)NH-、-C(O)NH-、-NHC(O)、-OOC-、-COO-、-NHC(O)O-、-OC(O)NH-、-CH2NH-NHCH2-、-CH2NHC(O)O-、-OC(O)NHCH2-、-CH2NHCOCH2O-、-OCH2C(O)NHCH2-、-NHC(O)CH2O-、-OCH2C(O)NH-、-NH-、-O-および炭素-炭素結合からなる群から選択される連結基によってそれにコンジュゲートしたポリマーを含むことができる。一実施形態によれば、ポリマー系送達剤はポリペプチドまたはポリアミノ酸ではない。ポリマーは、これらに限定されないが、哺乳動物で用いるのに安全である交互コポリマー、ブロックコポリマーおよびランダムコポリマーを含む任意のポリマーであってよい。好ましいポリマーには、これらに限定されないが、ポリエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(オキシエチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体ならびにこれらの組合せが含まれる。ポリマーの分子量は一般に、約100から約200,000ダルトンの範囲である。ポリマーの分子量は好ましくは約200から約10,000ダルトンの範囲である。一実施形態では、ポリマーの分子量は約200から約600ダルトンの範囲であり、より好ましくは約300から約550ダルトンの範囲である。
【0135】
(活性薬剤)
本発明で用いるのに適した活性薬剤には、これらに限定されないが、殺虫剤、薬理活性剤、および治療剤を含む生物学的に活性な薬剤および化学的に活性な薬剤が含まれる。適切な活性薬剤は、酸加水分解、酵素などによって、胃腸管内における効果をより少なくされるか、無効にされるか破壊されるものを含む。経口で投与された場合に、サイズ、構造または電荷を含むその生理化学的特性が吸収を阻害するか妨げる巨大分子薬剤も、適切な活性薬剤に含まれる。
【0136】
例えば、体内に入るか、あるいは例えば経口生物学的利用能が限られているか存在しない場合に、送達を含む薬物動態の改善の恩恵を受けられる薬剤である。これらの薬剤は、本発明での使用に適した生物学的または化学的に活性な薬剤であり、これらに限定されないが、タンパク質およびジペプチドを含むポリペプチドを含むペプチドなどの巨大分子;ホルモン;および単糖、二糖を含む多糖、ムコ多糖の混合物を含む糖類;炭水化物;脂質;および小さい極性有機分子(すなわち、500ダルトン以下の分子量を有する極性有機分子);ヌクレオシド、他の有機化合物;ならびに、特に、胃腸粘膜をそれら自体が通過しないか(または投与された用量の一部だけが通過する)、かつ/または胃腸管中の酸および酵素による化学的開裂の影響を受け易い化合物を含む、経口生物学的利用能を有していないか生経口物学的利用能が限られている化合物;あるいは、これらの任意の組合せを含む。
【0137】
他の例には、これらに限定されないが、その合成、天然または組換えのソースを含む以下のものを含み、
【0138】
【表1A】

【表1B】

【0139】
これらの化合物の分泌促進物質、類似物、断片、模倣物またはポリエチレングリコール(PEG)改変誘導体;あるいはその任意の組合せを含む。
【0140】
「ペプチドYY」または「PYY」は、任意の種から得られるか誘導されるペプチドYYポリペプチドを意味する。すなわち、「PYY」という用語は、WO02/47712(これは米国特許出願第2002/0141985号のPCT対応特許である。これを参照により本明細書に組み込む)およびTatemoto、Proc Natl Acad Sci U.S.A.79:2514〜8頁、1982のSEQ ID NO:2で示されているヒトの全長、36個のアミノ酸ペプチドならびに、例えば、ネズミ、ハムスター、ニワトリ、ウシ、ラットおよびイヌのPYYを含むPYYの種のバリアントの両方を含む。「PYY作用薬」は、PYYの効果を引き出して栄養利用能を低減させる任意の化合物を意味する。例えば、(1)WO02/47712および米国特許出願第2002/0141985号の実施例1、2、5または6に記載の食物摂取、胃内容排出、膵臓分泌または重量損失アッセイにおいて活性を有する化合物、および、(2)Y受容体アッセイ(WO02/47712および米国特許出願第2002/0141985号の実施例10)か、または、例えば、最後野を含む多くのY受容体を有する特定の組織からの標識化したPYYもしくはPYY[3-36]との競合的結合アッセイ(WO02/47712および米国特許出願第2002/0141985号の実施例9)において特異的に結合する化合物である。但し、そのPYY作用薬は膵臓ポリペプチドではない。PYY作用薬は、そうしたアッセイにおいて、約1μMを超える親和性、より好ましくは約1nM超から約5nMの親和性で結合することが好ましい。
【0141】
そうした作用薬は、機能的なPYYドメイン、PYYの活性断片または化合物(chemical)もしくは小分子を有するポリペプチドを含むことができる。PYY作用薬はペプチド化合物であっても非ペプチド化合物であってもよく、PYY受容体、またはPYY自体と相互作用して生物学的応答を誘発することができる1つもしくは複数の他の受容体と結合するか、あるいは、それらと直接または間接的に相互作用することによって、典型的に、PYY活性を有し、且つ、PYYと構造的に類似した任意の化合物を指す「PYY作用薬類似物」を含む。そうした化合物には、PYYの誘導体、PYYの断片、36個を超えるアミノ酸を有する伸長PYY分子、36個未満のアミノ酸を有する切断されたPYY分子、および1つまたは複数の異なるアミノ酸を有する置換PYY分子、あるいは上記の任意の組合せが含まれる。そうした化合物は、ペグ化、アミド化、グリコシル化、アシル化、硫酸化、リン酸化、アセチル化および環化などのプロセスによって改変することもできる。
【0142】
1つのそうしたPYY作用薬類似物は、WO02/47712および米国特許出願第2002/0141985号;Eberlein、Eysseleinら、Peptides10:797〜803頁(1989);ならびにGrandy、Schimiczekら、Regul Pept51:151〜9頁(1994)のSEQ ID NO:3として特定されているPYY[3-36]である。括弧内に数値を有するポリペプチドは、括弧内のアミノ酸位置にわたるペプチドの全長配列を有する切断されたポリペプチドを指す。したがって、PYY[3-36]は、アミノ酸3から36にわたるPYYと一致する配列を有する。PYY[3-36]は、ヒトおよびイヌの腸抽出物における合計ペプチドYY様免疫反応性の約40%を含み、絶食状態の約36%から食事後の50%を若干超までの合計血漿ペプチドYY免疫反応性を含む。それは明らかにペプチドYYのジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP4)開裂生成物である。ペプチドYY[3-36]は、Y2受容体およびY5受容体における選択的リガンドと報告されており、それは、N-末端で切断された神経ペプチドY類似物(すなわち、そのC末端断片)を好む点で薬理学的に独特のようである。PYY作用薬は、より高いかより低い親和性でPYY受容体と結合するか、in vivoまたはin vitroでより長いかより短い半減期を示すか、あるいは未変性のPYYより多少効果的であり得る。
【0143】
他の適切なPYY作用薬には、WO98/20885に記載されているものが含まれる。これを参照により本明細書に組み込む。
【0144】
本明細書で用いる「ヘパリン」という用語は、これらに限定されないが、未分別のヘパリン、ヘパリノイド、デルマタン、コンドロイチン、低分子量ヘパリン(例えば、チンザパリン(チンザパリンナトリウムを含む))、非常に低い分子量のヘパリンおよび超低分子量のヘパリンを含むすべての形態のヘパリンを指す。非限定的な例には、ヘパリンナトリウム(例えば、Waunakee,WIのScientific Protein Labsから入手できるヘパリンナトリウムUSP)などの未分別のヘパリンが含まれる。ヘパリンは、通常、約1,000または5,000から約30,000ダルトンの分子量を有する。「低分子量ヘパリン」という用語は、通常、ヘパリンの少なくとも約80%(重量で)が約3000〜約9000ダルトンの分子量を有するヘパリンを指す。低分子量ヘパリンの非限定的な例には、チンザパリン、エノキサプリンおよびダルチパリンが含まれる。チンザパリンは、ワルファリンナトリウムと併用して投与した場合に肺塞栓症を伴うか伴わないで急性症候性深部静脈血栓症を治療するために、米国食品医薬品局により承認されている。チンザパリンのナトリウム塩は、Pharmion Corporation of Boulder, CO.からInnohepe(登録商標)という商品名で入手することができる。「非常に低い分子量のヘパリン」という用語は、ヘパリンの少なくとも約80%(重量で)が約1500〜約5000ダルトンの分子量を有するヘパリンを指す。非常に低い分子量のヘパリンの非限定的な例はベミパリン(bemiparin)である。「超低分子量のヘパリン」という用語は、一般に、ヘパリンの少なくとも約80%(重量で)が約1000〜約2000ダルトンの分子量を有するヘパリンを指す。超低分子量のヘパリンの非限定的な例はフォンジパリナックスである。
【0145】
「インスリン」という用語は、これらに限定されないが、米国特許第4421685号、同5474978号および同5534488号(そのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み込む)に記載のものなどの天然由来のインスリンおよび合成形態のインスリンを含むすべての形態のインスリンを指す。一実施形態によれば、インスリンは、1日当たりレシピエントのキログラム体重当たり約0.025から約1.0(mg/kg/日)の用量、約0.06から約0.25mg/kg/日または約0.09から約0.19mg/kg/日(活性薬剤の重量に基づいて)で投与する。所望の用量は単一用量または分割用量で投与することができる。
【0146】
(送達系)
本発明の組成物は本発明の1つまたは複数の送達剤化合物と1つまたは複数の活性薬剤とを含む。一実施形態では、投与する前に活性薬剤を混合して投与組成物を形成することによって、送達剤化合物の1つもしくは複数あるいは、これらの化合物の塩、あるいはこれらの化合物または塩がその1つまたは複数の単位を形成するポリアミノ酸またはペプチドを、送達剤として使用することができる。
【0147】
投与組成物は液剤の形態であってよい。溶液媒体は、水(例えば、サケカルシトニン、副甲状腺ホルモンまたはエリスロポエチンのため)、25%プロピレングリコール水溶液(例えばヘパリンのため)およびリン酸塩緩衝液(例えばrhGHのため)であってよい。他の投与ビヒクルにはポリエチレングリコールが含まれる。投薬溶液は、投与する前に、送達剤化合物の溶液と活性薬剤の溶液を混合することによって調製することができる。あるいは、送達剤化合物(または活性薬剤)の溶液を、固体状の活性薬剤(または送達剤化合物)と混合することができる。送達剤化合物と活性薬剤を乾燥粉末として混合することもできる。送達剤化合物と活性薬剤を製造の過程で混合することもできる。
【0148】
投薬溶液は、リン酸塩緩衝液、クエン酸、グリコールまたは他の分散剤などの添加剤を任意選択で含むことができる。安定化用添加剤を、好ましくは約0.1〜20%(重量/容積)の範囲の濃度で溶液中に混ぜ込むことができる。
【0149】
あるいは、投与組成物は錠剤、カプセル剤または粉剤もしくはサシェイなどの粒子状物などの固体の形態であってよい。固体剤形は、固体状の化合物を固体状の活性薬剤と混合して調製することができる。あるいは、固体は、化合物と活性薬剤の溶液から、フリーズドライ(凍結乾燥)、沈降、結晶化および固体分散などの当技術分野で周知の方法で得ることができる。
【0150】
本発明の投与組成物は1つまたは複数の酵素阻害剤も含むことができる。そうした酵素阻害剤には、これらに限定されないが、アクチノニンまたはエピアクチノニンおよびその誘導体などの化合物が含まれる。他の酵素阻害剤には、これらに限定されないが、アプロチニン(Trasylol)およびバウマンーバーク(Bowman-Birk)阻害剤が含まれる。
【0151】
本発明の投与組成物で用いる活性薬剤の量は、標的の徴候のために特定の活性薬剤の目的を達成するのに有効な量である。組成物中の活性薬剤の量は典型的に、薬理学的、生物学的、治療的または化学的に効果的な量である。しかし、投与単位形態は、複数の送達剤化合物/活性薬剤組成物を含むか、または分割された薬理学的、生物学的、治療的または化学的に効果的な量を含むことができるので、組成物を投与単位形態で使用する場合、その量は、上記量より少なくてよい。したがって、全有効量を、有効量の活性薬剤を合計して含む累積単位で投与することができる。投与単位形態が持続放出形態などでの延長投薬を目的とする場合、その量は典型的な量より多くてよい。
【0152】
使用する活性薬剤の合計量は当業者に周知の方法で決定することができる。しかし、本発明の組成物は、活性薬剤だけを含む組成物より効率的に活性薬剤を送達することができるので、従来の投与単位形態または送達系で用いられる量より少ない量の生物学的または化学的に活性な薬剤を対象に投与することができ、同時に同じ血中濃度および/または治療効果を達成することができる。
【0153】
一般に、送達剤と活性薬剤の重量比は、約0.1:1から約1000:1、好ましくは約1:1から約300:1の範囲である。その重量比は、活性薬剤、およびそのために活性薬剤を投与する具体的な徴候に応じて変化することになる。
【0154】
本発明で開示する送達剤化合物は、経口、経鼻、舌下、胃、十二指腸内、空腸およびイレウル(ileul)送達を含む腸、皮下、頬側、結腸内、経直腸、経膣、粘膜、肺、経皮、皮内、腸管外、静脈内、筋肉内および眼球系、ならびに血液脳関門の横断を含む生物学的かつ化学的に活性な薬剤の送達を可能にし、かつ/または容易にする。
【0155】
投与単位形態は、賦形剤、希釈剤、崩壊剤、滑剤、可塑剤、着色剤、香味剤、味覚マスキング剤、糖類、甘味剤、塩および、これらに限定されないが水、1,2-プロパンジオール、エタノール、オリーブ油、またはその任意の組合せを含む投与ビヒクルのいずれか1つまたはその組合せも含むことができる。
【0156】
本発明の化合物および組成物は、これらに限定されないが、ニワトリなどのトリ、昆虫、ならびにこれらに限定されないが、齧歯動物、水生哺乳動物、イヌやネコなどの家庭用動物、ヒツジ、ブタ、ウシおよびウマなどの家畜および霊長類好ましくはヒトを含む哺乳動物を含む任意の動物に生物学的または化学的に活性な薬剤を投与するのに有用である。
【0157】
この送達系は、そうでない場合、活性薬剤がその標的区域(すなわち、送達組成物の活性薬剤が放出される領域)に到達する前に、投与される動物の体内で遭遇する状態により破壊されるか効果を低減される化学的または生物学的に活性な薬剤を送達するのに特に有利である。特に、本発明の化合物および組成物は、活性薬剤、特に通常は経口送達できないか送達の改善が望まれる活性薬剤を経口投与するのに有用である。
【0158】
この化合物および活性薬剤を含む組成物は、選択された生物学的系への活性薬剤の送達において有用であり、また、送達剤のない活性薬剤の投与に比べて、活性薬剤の生物学的利用能を増大させるか改善するのに有用である。送達は、より活性な薬剤を長期間にわたって送達することによるか、または活性薬剤を特定の期間で送達するか(例えば、より速くか遅延して送達を行う)、または活性薬剤を特定の時間もしくはある期間(持続的送達など)にわたって送達して改善することができる。
【0159】
本発明の他の実施形態は、本発明の組成物を投与することによって、動物において以下の表にまとめたものなどの、疾患を治療するか予防するための方法、あるいは所望の生理学的効果を達成するための方法である。所望の疾患を治療するか予防するため、あるいは所望の生理学的を達成するために有効な量の組成物を投与することが好ましい。活性薬剤のための具体的な指示は、Physicians' Desk Reference(58th Ed.、2004、Medical Economics Company,Inc.、Montvale、NJ)に見ることができる。この文献を参照により本明細書に組み込む。以下の表の活性薬剤には、その分泌促進物質、類似物、断片、模倣物およびポリエチレングリコール改変誘導体が含まれる。
【0160】
【表2A】

【表2B】

【表2C】

【0161】
例えば本発明の一実施形態は、インスリンと本発明の送達剤化合物の少なくとも1つを投与することによって、糖尿病を有するか糖尿病にかかり易い患者を治療するための方法である。
【0162】
投与に続いて、組成物または投与単位形態中に存在する活性薬剤は循環系に取り込まれる。薬剤の生物学的利用能は、血液中の既知の薬理学的活性、例えばヘパリンによって引き起こされる血液凝固時間の増加、またはカルシトニンによって引き起こされる循環カルシウムレベルの減少を測定することによって容易に評価することができる。あるいは、活性薬剤自体の循環レベルを直接測定することができる。
【実施例】
【0163】
以下の実施例は非限定的に説明される。別段の指定のない限りすべての部は重量表示である。
【0164】
以下に挙げる化合物のためのプロトン核磁気共鳴(1H NMR)分析は、300MHz
Bruker(登録商標)分光計(Braker-Physik AG、Silberstreifen、GERMANY)または400MHz JEOL分光計(JEOL USA,Inc.、Peabody、MA)によって、別段の指定のない限り、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を用いて実施した。
【0165】
液体クロマトグラフ/質量分析計(LC-MS)分析は、以下のパラメータを有するAgilent Technologies,LC/MSD1100(単一四極子(single quad))を用いて実施した。
移動相A:50:950:5アセトニトリル:水:酢酸(容積/容積/容積)
移動相B:950:50:5アセトニトリル:水:酢酸(容積/容積/容積)
グラジエント溶出:4分間リニアグラジエント0〜100%のB;注入当たりの合計時間は11分間
注入容積:5uL
カラム:ZORBAX Rapid Resolution Cartrige、SB-C18、2.1x30mm、3.5um
粒子サイズ、カタログ#873700-902
カラム温度:40℃
244nmでUV検出
MSDパラメータ:
電源:
API-ES、正極性
スキャンパラメータ:
質量範囲:125.00〜600.00
フラグメンター:60V
ゲイン:1.0EMV
閾値:150
スプレーチャンバー:
ガス温度350℃
乾燥用ガス:12.0 l/分
噴霧圧力(Neb.Pressure);40psig
VCap 4000V正/負
【0166】
(実施例1:化合物の調製)
化合物は、化合物1の調製のための反応に従って、適当な出発材料を用いて調製した。
【0167】
<化合物1> 4-オキソ-4-フェニル-酪酸:
10g(56ミリモル)の3-ベンゾイルプロピオン酸(例えばAldrich Corp.(St.Louis、MO)から、カタログ番号13802を購入)に10mLの水を加えた。混合物を撹拌し、28mLの2N水酸化ナトリウム(水溶液)を加えた。得られた溶液を2時間撹拌し、溶液を凍結乾燥した後、固形生成物を収集した。1H NMR(d6-DMSO):δ7.9、d、2H、(アリールH);δ7.6、t、1H、(アリールH);δ7.5、t、2H、(アリールH);δ3.1、t、2H(カルボニルのα位のCH2);δ2.2、t、2H(COOHのα位のCH2);サンプル中に水が存在したためCOOHのピークは観察されなかった。
化合物1もAldrichからカタログ番号B13802を購入した。
【0168】
<化合物2> 4-(4-アセチルアミノ-フェニル)-4-オキソ-酪酸:
機械的攪拌子を備えた500mLフラスコに、不活性雰囲気下でアセトアニリド(50g、370ミリモル)、無水コハク酸(37g、370ミリモル)および200mL二硫化炭素を加えた。反応容器を外部氷浴で冷却しながら、三塩化アルミニウム(III)(185g、1390ミリモル)を1時間かけて加えた。追加の二硫化炭素(75mL)を加え、反応物を外部氷浴しながら1時間撹拌し、次いで室温で18時間撹拌した。反応容器を外部氷浴で冷却し、氷(75mL)を反応液に加えてクエンチした。混合物を2Lビーカーに移し、最終容積が1400mLになるまで氷を加えた。吸引ろ過によって不溶物を集め、2×100mLの水で洗浄した。次いで、固形物を1000mLの8%重炭酸ナトリウム水溶液中に溶解して3時間撹拌し、追加の200mLの水で希釈し、ろ過して不溶性の不純物除去した。ろ過した溶液を1M塩酸水溶液でpH=2まで酸性化した。粗製の生成沈殿物をろ取し、熱水(80〜85℃)(1250mL)中に再溶解し、デカントして不溶物を除去し、混合物を4℃に冷却した。ろ過により生成物(8.45g、10%)を黄白色の結晶として単離した。実測値:C 61.20、H 5.63%、N 5.94%;C12H23NO4計算値C:61.27、H:5.58%、N:5.96%;1H NMR(d6-DMSO):δ12.2、s、1H(COOH);δ10.3、s、1H(NH);δ7.9、d、2H(アリールH);δ7.7 d、2H(アリールH);3.2、t、2H(カルボニルのα位のCH2);δ2.6、t、2H(COOHのα位のCH2);δ2.1、s、3H(CH3)。
【0169】
<化合物3> 10-(4-ヒドロキシ-フェニル)-10-オキソ-デカン酸:
還流冷却器を備えた500mLフラスコに、不活性雰囲気下でデカンニ酸(20g、296ミリモル)と無水酢酸(280mL、2.96モル)を仕込んだ。混合物を5時間加熱還流した。減圧下で酢酸と過剰の無水酢酸を除去した。生成物をさらに精製することなく使用した。
【0170】
機械的攪拌子を備えた500mLフラスコに、不活性雰囲気下で、先に調製したオキサシクロウンデカン-2,11-ジオン(20g、108.5ミリモル)、フェノール(10.22g、108.5ミリモル)および200mL二硫化炭素を加えた。三塩化アルミニウム(III)(72.34g、542ミリモル)を加え、反応物を72時間撹拌した。二硫化炭素をデカントして除き、混合物の殆んどが溶解するまで氷を注意深く加えた。不溶物を吸引ろ過によって集め、2×100mLの水で洗浄した。次いで固形物を100mLの1M水酸化ナトリウム水溶液中に溶解し、pH=7.5になるまで1M塩酸水溶液で注意深く酸性化させた。生成した固形物をろ過によって取り除き、母液を引き続きpH2.5まで酸性化した。粗製の生成沈殿物をろ過により集め1×100mL水で洗浄した。粗生成物を100mLの1M水酸化ナトリウム水溶液中に溶解し、次いでpH=7.5になるまで1M塩酸水溶液で注意深く酸性化させ、沈殿した不純物をろ別した。母液をさらにpH2まで酸性化した。粗生成物をろ取し2×50mLの水で洗浄した。生成物をアセトンで再結晶化させた。単離した生成物(1.2g、4%)をろ取した。実測値:C 69.00、H 7.81%;C16H22O4計算値C:69.04、H:7.97% 1H NMR(d6-DMSO):δ12.0、bs、1H(COOH);δ10.3、bs、1H(アリール-ヒドロキシル);δ7.8 d、2H(アリールH);δ6.8、d、2H、(アリールH);δ2.9、t、2H(カルボニルのα位のCH2);δ2.2、t、2H(COOHのα位のCH2);δ1.5、多重項、4H(カルボニルのβ位&COOHのβ位のCH2)、δ1.3、多重項、8H(残りのCH2)。
【0171】
<化合物4> 10-(2-ヒドロキシ-フェニル)-10-オキソ-デカン酸:
100mLフラスコに塩化メチレン(50mL)、9-ブロモノナノール(7.63g、34.2ミリモル)およびトリメチルシリルクロリド(4.5mL、35.5ミリモル)を加え、窒素雰囲気下で20分間撹拌した。次いでトリエチルアミン(5.0mL、35.9ミリモル)を加え、得られた反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで反応混合物を80mLのヘキサンで希釈し、ろ過して減圧下で濃縮した。得られた残留物を80mLのヘキサンで再度希釈し、ろ過し次いで減圧下で濃縮して9.7g(96%)の黄色液体を得た。これをさらに精製することなく使用した。
【0172】
先に調製した(9-ブロモ-ノニルオキシ)-トリメチル-シラン5.69g(19.3ミリモル)をマグネシウム金属(0.59g、24.3ミリモル)、20mLテトラヒドロフランを入れた50mLフラスコに不活性雰囲気下で滴下し、ヨウ素の小さい結晶を加えてグリニャール反応を開始させた。100mLフラスコ中、不活性雰囲気下で、20mLのテトラヒドロフラン中のサリチルアルデヒド(2.1mL、19.7ミリモル)の溶液を外部氷浴で冷却した。次いで冷却したアルデヒド溶液を1.0Mリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(20.0mL、20ミリモル)で処理した。1時間撹拌した後、グリニャール反応液を外部氷浴で冷却した。次いで、撹拌を続けながら、冷却したグリニャール反応液をアルデヒド溶液にカニューレで5分間かけて滴下した。得られた反応混合物を室温まで加温し、終夜撹拌を続行した。反応液を40mLの酢酸エチルの中に注加し、15mLの飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチした。有機層を分離し、2×25mL部の4%塩酸水溶液で洗浄し、続いて1×20mL部のブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水してろ過し、溶媒を減圧下で除去した。残留するサリチルアルデヒドをクーゲルロール(Kugelrohr)蒸留装置で除去し、得られた残留物をさらに精製することなく使用した。
【0173】
100mLフラスコに、先に調製した1-(2-ヒドロキシ-フェニル)-ウンデカン-1,11-ジオール(5.0g、18.9ミリモル)と50mLのジメチルホルムアミドを加えた。これに重クロム酸ピリジニウム(32.9g、87.5ミリモル)を加えた(この添加により若干発熱した)。反応混合物を室温で終夜撹拌した。反応混合物を50mLの酢酸エチルに注加し、200mLの水、30mLの4%塩酸水溶液、30mL水で洗浄し、最後に30mLのブラインで洗浄した。次いで、有機層を10gのシリカゲルと15分間撹拌し、硫酸ナトリウムで脱水してろ過し、溶媒を減圧下で除去した。灰白色の粗生成物をエタノール/水で再結晶化させた。生成物(0.5g、10%)を灰白色の固形物として単離した。mp85〜87℃。燃焼分析:実測値:C 69.01、H 8.36%;C16H22O4計算値C:69.54、H:8.02% 1H NMR(d6-DMSO):δ12.0、s、1H(COOH);δ7.9 dd、1H(アリールH);δ7.5、dt、1H、(アリールH);δ6.9、複合多重項、2H(アリールH)、3.1、t、2H(カルボニルのα位のCH2);δ2.2、t、2H(COOHのα位のCH2);δ1.6、多重項、2H(カルボニルのβ位のCH2)、δ1.5、多重項、2H(COOHのβ位のCH2)、δ1.3、多重項、8H(残りのCH2)。
【0174】
<化合物5> 4-(4-メトキシ-フェニル)-4-オキソ-酪酸:
磁気撹拌子を備えた500mL丸底フラスコに、不活性雰囲気(窒素ガス)下で5.25mL(48.3ミリモル)のアニソール、4.83g(48.3ミリモル)の無水コハク酸、125mLの1,1,2,2-テトラクロロエタンおよび125mLのニトロベンゼンを加えた。反応容器を外部氷浴で冷却し、30分間撹拌した。三塩化アルミニウム(14.2g、106.4ミリモル)をその淡黄色溶液に加えると、溶液は暗赤褐色に変色した。氷浴を取り外し、反応物を室温で36時間撹拌した。反応を外部氷浴で再度冷却した。氷で満たした100mLビーカー中に1N塩化水素溶液を注加して酸性溶液を調製した。この溶液を、最初に反応液が白色沈殿物を伴って透明になるまで、反応混合物に注意深く滴下した。その後、反応性をチェックするため10mL部を注意深く加え、次いで氷/酸混合物の残りを加えた。第2の100mLの氷/酸混合物を加え、外部氷浴を取り外し、薄い乳濁液を2時間撹拌した。白色沈殿物を吸引ろ過によって乳濁液から収集した。この固形物を300mLの0.3M水酸化ナトリウム中に溶解し、100mLの酢酸エチルで洗浄し、1M塩酸で約pH1まで酸性化させた。真空ろ過により集めた白色沈殿物を3×100mL脱イオン水で洗浄し乾燥した。生成物(4.7g、47%)を白色固形物として単離した。mp149〜150℃。燃焼分析:実測値:C 63.52、H 5.78%;C11H12O4計算値C:63.45、H:5.81% 1H NMR(d6-DMSO):δ12.2、s、1H(COOH);δ7.9 d、2H(アリールH);δ7.0、d、2H、(アリールH);δ3.8、s、3H(OMeのH);δ3.2、t、2H(カルボニルのα位のCH2);δ2.5、t、2H(COOHのα位のCH2)。
【0175】
<化合物6> 5-(4-メトキシ-フェニル)-5-オキソ-ペンタン酸:
この化合物を、無水コハク酸の代わりにグルタル酸無水物を用いること以外は化合物5と同様にして調製した。mp141〜142℃。実測値:C 64.65、H 6.34%;C12H14O4計算値C:64.85、H:6.35% 1H NMR(d6-DMSO):δ12.2、s、1H(COOH);δ7.9 d、2H(アリールH);δ7.0、d、2H、(アリールH);δ3.8、s、3H(OMeのH);δ3.0、t、2H(カルボニルのα位のCH2);δ2.3、t、2H(COOHのα位のCH2));δ1.8 五重線、2H(他の2つの間にあるCH2)。
【0176】
化合物7はAldrich Corp.(St.Louis、MO)から、カタログ番号514683を購入した。
化合物8はAldrichから、カタログ番号B12687を購入した。
化合物9はAldrichから、カタログ番号S346810を購入した。
化合物10はRieke Metals,Inc.(Lincoln、Nebraska)から、カタログ番号7013Dを購入した。
化合物11はRiekeから、カタログ番号7148Cを購入した。
【0177】
<化合物11> 5-(4-イソプロピル-フェニル)-5-オキソ-ペンタン酸ナトリウム塩:
化合物11は以下のようにして調製した。5-(4-イソプロピル-フェニル)-5-オキソ-ペンタン酸(5g、21.3ミリモル)を250mLフラスコ中の75mLエタノール中に溶解した。水酸化ナトリウム(0.85g、21.3ミリモル)を加え、反応液を減圧下でロータリーエバポレーターにかけながら終夜撹拌した。固形物を真空下で乾燥し、これをさらに精製することなく使用した。実測値:C 60.24、H 6.66、Na 9.21%;C14H17O3Na計算値C:61.28、H:6.98、Na 8.38%。1H NMR(D2O):δ7.7、d、2H(アリール-H);δ7.2 d、2H(アリールH);δ2.9、t、2H(カルボニルのα位のCH2);δ2.8、多重項、1H、(イソプロピル基のCH);δ2.1、t、2H(COOHのα位のCH2);δ1.8、q、2H(カルボニルのβ位&COOHのβ位のCH2)、δ1.1、d、6H(イソプロピル基のCH3)。
【0178】
化合物12はRiekeから、カタログ番号7060Bを購入した。
化合物13はAcros Organics USA(Morris Plains、NJ)から、カタログ番号17.522.62を購入した。
化合物14はRiekeから、カタログ番号7011Dを購入した。
化合物15はRiekeから、カタログ番号7036Bを購入した。
化合物16はRiekeから、カタログ番号7012Dを購入した。
化合物17はRiekeから、カタログ番号7012Bを購入した。
化合物18はRiekeから、カタログ番号7055Bを購入した。
化合物19はRiekeから、カタログ番号7005bを購入した。
化合物20はRiekeから、カタログ番号7036Fを購入した。
化合物21はRiekeから、カタログ番号7144Dを購入した。
化合物22はRiekeから、カタログ番号7144Bを購入した。
化合物23はRiekeから、カタログ番号7036Dを購入した。
【0179】
<化合物24> 10-(2,5-ジヒドロキシ-フェニル)-10-オキソ-デカン酸:
還流冷却器を備えた500mLフラスコに、不活性雰囲気下でデカンニ酸(20g、296ミリモル)と無水酢酸(280mL、2.96モル)を仕込んだ。混合物を5時間還流加熱した。酢酸と過剰の無水酢酸を減圧下で除去した。生成物をさらに精製することなく使用した。
【0180】
機械的攪拌子を備えた500mLフラスコに、不活性雰囲気下で、先に調製したオキサシクロウンデカン-2,11-ジオン(37.95g、206ミリモル)、1,4-ジアセトキシ-ベンゼン(20g、103ミリモル)および200mL二硫化炭素を加えた。三塩化アルミニウム(III)(68.7g、515ミリモル)を加え、反応液を72時間撹拌した。二硫化炭素をデカントして除去し、混合物の大部分が溶解するまで氷を注意深く加えた。不溶物を吸引ろ過して集め、2×100mLの水で洗浄した。次いで、固形物を50mLの1M水酸化ナトリウム水溶液中に溶解し1時間撹拌した。溶液を1M塩酸水溶液でpH=2まで酸性化させた。粗製の生成沈殿物をろ取し、アセトニトリル(50mL)と塩化メチレン(15mL)の中に再溶解し、1週間かけて徐々に沈殿させた。得られた茶色の粉体をろ取し、10:3酢酸:水で再結晶化させた。ろ過により生成物(0.8g、3%)を単離した。実測値:C 65.55、H 7.69%;C16H22O5計算値C:65.29、H:7.53% 1H NMR(d6-DMSO):δ12.0、s、1H(COOH);δ11.4、s、1H(アリール-ヒドロキシル);δ9.2、s、1H(アリール-ヒドロキシル);δ7.2 d、1H(アリールH);δ7.0、dd、1H、(アリールH);δ6.8、d、1H(アリールH)、3.0、t、2H(カルボニルのα位のCH2);δ2.2、t、2H(COOHのα位のCH2);δ1.6、多重項、2H(カルボニルのβ位のCH2)、δ1.5、多重項、2H(COOHのβ位のCH2)、δ1.3、多重項、8H(残りのCH2)。
【0181】
化合物25はLancaster Synthesis Inc.(Windham NH)から、カタログ番号8395を購入した。
化合物26はRiekeから、カタログ番号7067Dを購入した。
化合物27はLancasterから、カタログ番号8431を購入した。
化合物28はAcrosから、カタログ番号34434を購入した。
化合物29はAlfa Aesar(Ward Hill、MA)から、カタログ番号B20767を購入した。
化合物30はRiekeから、カタログ番号7066Bを購入した。
化合物31はMaybridge Chemicals(Cornwall、England)から、カタログ番号BTB10247を購入した。
化合物32はMaybridgeから、カタログ番号BTB09815を購入した。
化合物33はMaybridgeから、カタログ番号BTB09813を購入した。
化合物34はMaybridgeから、カタログ番号BTB10249を購入した。
化合物35はRiekeから、カタログ番号7067Bを購入した。
化合物36はAcrosから、カタログ番号335595000を購入した。
化合物37はRiekeから、カタログ番号7048Dを購入した。
化合物38はTCI America(Portland、Oregon)から、カタログ番号M1377を購入した。
化合物39はTCIから、カタログ番号B2182を購入した。
化合物40〜42は、適当な出発材料で置き換えて、上記方法により調製することができる。
【0182】
(実施例2:実験データ)
<ヘパリン送達 経口/結腸内送達>
25%プロピレングリコール水溶液中に送達剤化合物とヘパリンナトリウムUSPを含む経口強制 (PO)および/または結腸内(IC)投薬溶液を調製した。化合物のナトリウム塩を用いるか、または遊離酸を1当量の水酸化ナトリウムでナトリウム塩に転換させた。典型的に、乾燥粉末として送達剤化合物とヘパリン(約166〜182IU/mg)をボルテックスに供した。この乾燥混合物を25%容積/容積プロピレングリコール水溶液中に溶解し、ボルテックスに供し、超音波処理器(約37℃)中に入れた。pHをNaOH(2N)水溶液で約7(6.5〜8.5)に調整した。投薬溶液を超音波処理して透明な溶液を得た。最終容積を3.0mLに調整した。最終的な送達剤化合物用量、ヘパリン用量および容積投与量を以下の表2に示す。
【0183】
典型的な投薬およびサンプリング手順は以下の通りであった。275〜350gの体重のオスのスプラーグドーリーラットを24時間断食させ、投薬の直前に筋肉内で塩酸ケタミン(88mg/kg)を用いて麻酔した。5匹のラットの投薬グループに、投薬溶液のうちの1つを投与した。経口強制 (PO)投薬については、11cm Rusch8フレンチカテーテルを、ピペットチップで1mLシリンジにはめ込んだ。カテーテルを通して、溶液を吸い込んでシリンジを投薬溶液で満たし、次いでそれを拭き取って乾かした。カテーテルを、ラットの門歯からチューブを1cm残して食道中に押し込んだ。シリンジプランジャーを押して溶液を投与した。結腸内(IC)投薬については、7.5cm 8fr Ruschカテーテルを、ピペットチップで1mlシリンジにはめ込んだ。投薬カテーテルを、チューブが見えなくなるまで肛門を通して結腸内に挿入した。投薬溶液を緩やかに結腸内に絞り出した。
【0184】
クエン酸血サンプルを心臓穿刺によって集め、続いて、典型的に0.25時間、0.5時間、1.0時間および1.5時間でケタミン(88mg/kg)を投与した。ヘパリン活性は、Henry,J.B.、Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods、Philadelphia、PA、W.B.Saunders(1979)の方法による活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を用いて測定した。先行試験では約20秒のベースライン値が示された。各グループでの5匹のラットによる結果を各時間について平均した。最大値を以下の表2に示す。
【0185】
【表3】

【0186】
<副甲状腺ホルモン送達(PTH1-34) 経口/結腸内送達>
水の中で送達剤化合物とヒト副甲状腺ホルモン残留物1-34(PTH)の経口強制 (PO)および/または結腸内(IC)投薬溶液を調製した。化合物の溶液は、化合物のナトリウム塩を用いるか、または遊離酸をそのナトリウム塩に転換させて作製した。典型的に、ナトリウム塩を作製する場合、化合物の溶液は水の中で撹拌し、1当量の水酸化ナトリウム(1.0N)を加えて調製した。化合物をPTHストック溶液(典型的に5mg PTH/mlの濃度を有する)と混合し、所望の容積(通常3.0ml)に希釈して、最終投薬溶液を調製した。最終的な化合物、PTHおよび容積投与量を以下の表4に示す。
【0187】
典型的な投薬およびサンプリング手順は以下の通りであった。200〜250gの体重のオスのスプラーグドーリーラットを24時間断食させ、投薬の15分前にケタミン(44mg/kg)とクロルプロマジン(1.5mg/kg)を投与した。5匹のラットの投薬グループに、投薬溶液のうちの1つを投与した。経口強制 (PO)投薬については、11cm Rusch8フレンチカテーテルを、ピペットチップで1mLシリンジにはめ込んだ。カテーテルを通して溶液を吸い込んでシリンジを投薬溶液で満たし、次いでそれを拭き取って乾かした。カテーテルを、ラットの門歯からチューブを1cm残して食道中に押し込んだ。シリンジプランジャーを押して溶液を投与した。結腸内(IC)投薬については、7.5cm Ruschカテーテルチューブ(French8または6)を、Eppendorfピペットチップでシリンジにはめ込んだ。カテーテルチューブを通して溶液を吸い込んでシリンジを投薬溶液で満たした。カテーテルチューブを拭き取って乾かした。K-Yゼリーをチップに塗ってチューブの穴(eye)との接触を避け、チューブを、チューブが見えなくなるまで肛門を通して結腸内に挿入した。シリンジプランジャーを押して溶液を注入し、チューブを取り外した。
【0188】
血液サンプルを、典型的に、経口については0分、15分、30分、45分、60分および90分に、IC投薬については0分、10分、20分、30分、60分および90分に尾部動脈から逐次採取した。血清PTH濃度をPTHラジオイムノアッセイキット(Peninsula Laboratories,Inc.San Carlos、CAからのKit # RIK6101)で定量した。先行試験では約ゼロのベースライン値が示された。各グループでの5匹のラットによる結果を各時間について平均した。最大値を以下の表3に示す。
【0189】
【表4】

【0190】
<インスリン-経口送達>
送達剤化合物およびヒトインスリン-亜鉛(最少26IU/mg、Calbiochem-Novabiochem Corp、La Jolla、CAから入手可能)の経口投薬(PO)組成物を脱イオン水中に調製した。典型的に、500mgの送達剤化合物を1.5mlの水に加えた。得られた溶液を撹拌しながら、1当量の水酸化ナトリウムを加えて送達剤化合物の遊離酸をナトリウム塩に転換させた。溶液をボルテックスに供し、次いで加熱し(約37℃)、超音波処理した。NaOHまたはHClでpHを約7〜8.5に調整した。必要なら追加のNaOHを加えて均一に溶解させ、pHを約7〜8.5に再調整した。次いで水を加えて全容積を約2.4mlにしてボルテックスに供した。インスリンストック溶液(15mg/mlのインスリンストック溶液を、0.5409gのインスリンおよび18mlの脱イオン水を出発原料として、HClおよびNaOHを用いてpHを8.15へと調整して、40mlの濃塩酸、25mlの10N NaOHおよび50mlの1N NaOHを使用して透明な溶液を得た)からの約1.25mgインスリンをその溶液に加え、逆さにして混合させた。最終的な送達剤化合物投与量、インスリン投与量および容積投与量を示す。
【0191】
典型的な投薬およびサンプリング手順は以下の通りであった。約200〜250gの体重のオスのスプラーグドーリーラットを24時間断食させ、投薬の15分前にケタミン(44mg/kg)とクロルプロマジン(1.5mg/kg)を投与し、必要に応じて再度麻酔を維持させた。5匹の動物の投薬グループに、投薬溶液のうちの1つを投与した。経口投薬については、11cm Rusch8フレンチカテーテルを、ピペットチップで1mlシリンジにはめ込んだ。カテーテルを通して溶液を吸い込んでシリンジを投薬溶液で満たし、次いでそれを拭き取って乾かした。カテーテルを、ラットの門歯からチューブを1cm残して食道中に押し込んだ。シリンジプランジャーを押して溶液を投与した。
【0192】
血液サンプルを、典型的に、15分、30分、60分、120分および180分に、尾部動脈から逐次採取した。本発明の手順で用いるサンプルの容積と濃度のために、感度と標準曲線の直線範囲を最適化すべく標準的手順を改変して、インスリンELISAテストキット(Diagnostic Systems Laboratories,Inc.、Webster、TXからのKit# DSL-10-1600)を用いて血清インスリンレベルを測定した。各投薬グループの5匹の動物のそれぞれについて、血清ヒトインスリン濃度(μU/ml)を各時間点で測定した。各時間点について5つの値を平均し、結果を血清インスリン濃度対時間でプロットした。(事前の実験では、ヒトインスリンだけでの経口投薬に続く、測定可能なレベルのヒトインスリンは存在しなかった)。最大(ピーク)と曲線下の面積(AUC)を以下の表5に示す。血液グルコースについてのベースラインからの変化率%については、ONE TOUCH(登録商標)(Life Scan、Johnson & Johnson、New Brunswick、New Jersey)。
【0193】
【表5】

【0194】
<実施例-ラットでのPYY[3-36]の固体経口送達>
食事制限したラットへの固体PYY3-36の投与。
脱イオン水で調製したPYY[3-36]ストック溶液(80mg/ml)を用いた。
【0195】
約0.08mg/錠剤(約0.3mg/kg)のPYY(約1μl)を、約13.5mg/錠剤か約27mg/錠剤(約50mg/kgまたは100mg/kg)の送達剤のどちらかに加えてブレンドした。Natoli Engineering Company,Inc.から販売されているCaplet形状モデルを有するCarver4350手動ペレットプレスの上部パンチ、下部パンチおよびダイをステアリン酸マグネシウム(0.1%)で処理した。約13.58mgまたは約27.08mgの混合粉末をダイの中に供給し、約1000PSIバールの圧力でミニビーズ状の錠剤を作製した。得られた固体剤形は、27.08mgサイズのものについてはおおよそ標準カプセル剤サイズ9(約2.65mm直径と約8.40mm長さ)のサイズであり、13.58mg固体については約2.65mm直径と約4.20mm長さである。
【0196】
オスのスプラーグドーリーラット(約260〜約280g)を終夜断食させ、次いで約10〜30秒間の標準的なCO2吸入技術で麻酔させ、約1分間未満、好ましくは約10から約30秒間の麻酔状態が得られた。
【0197】
経口投薬チューブを用いた。投薬チューブをラットの口に挿入し、ラットの体重に応じて約8cmから約15cm(典型的に約11cm)、ラットの咽頭から食道に注意深くねじ込んだ。経口投薬チューブのプランジャーを押して、固体剤形を食道の末端部および/または胃に送達した。
【0198】
血液サンプルを、尾部動脈から、心臓穿刺によって、または、この場合眼窩後部から、典型的に0分、15分、30分、60分および90分に逐次採取した。PYY[3-36]ラジオイムノアッセイ(Phoenix Pharmaceuticals,Inc.、Belmont、CAからのカタログ#RK-059-02)を用いて血清PYY濃度を定量化した。各グループの動物からの結果を各時間について平均した。これらの平均の最大値(すなわち平均ピーク血清PYY[3-36]濃度±標準偏差(SD))を以下に示す。
【0199】
【表6】

【0200】
上記特許、出願、試験方法および出版物のその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0201】
上記詳細な説明に照らせば、本発明の多くの変更形態がそれ自体で当業者に示唆されよう。そうした明らかなすべての変更形態は添付の特許請求の範囲に完全に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択される化合物またはその塩。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【請求項2】
(A)少なくとも1つの活性薬剤;および
(B)以下の式の化合物またはその塩
【化10】

(式中、
nは1〜9の整数であり、
R1〜R5は独立に、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C2〜C6アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシル、-NH-C(O)-CH3または-O-C6H5である)
を含む組成物。
【請求項3】
前記化合物が、化合物1〜42およびその塩から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性薬剤が、生物学的に活性な薬剤および化学的に活性な薬剤からなる群から選択される、またはそれらの組み合わせである、請求項2または3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記生物学的に活性な薬剤が、少なくとも1つのペプチド、ムコ多糖、炭水化物または脂質を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記生物学的に活性な薬剤がペプチドを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記生物学的に活性な薬剤がムコ多糖を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記生物学的に活性な薬剤が、以下の表の化合物からなる群から選択される、またはそれらの組み合わせである、請求項2または3に記載の組成物。
【表1A】

【表1B】

【請求項9】
前記生物学的に活性な薬剤が、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、インスリン、ヘパリン、低分子量ヘパリン、クロモリンナトリウム、PYY、抗微生物剤、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、エリスロポエチンまたはその任意の組合せを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記生物学的に活性な薬剤がインスリンを含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項11】
前記生物学的に活性な薬剤がヘパリンを含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項12】
前記生物学的に活性な薬剤が低分子量ヘパリンを含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項13】
前記生物学的に活性な薬剤がPYYまたはPYY作用薬を含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項14】
前記生物学的に活性な薬剤がPYY[3-36]を含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項15】
前記生物学的に活性な薬剤が副甲状腺ホルモンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
(A)請求項2から15のいずれかに記載の組成物、および
(B)(a)賦形剤、
(b)希釈剤、
(c)崩壊剤、
(e)可塑剤、
(f)着色剤、
(g)投与ビヒクル、または
(h)その任意の組合せ
を含む投与単位形態。
【請求項17】
活性薬剤を必要とする動物に、生物学的に活性な薬剤を投与する方法であって、請求項2から15のいずれかに記載の組成物を前記動物に経口投与することを含む方法。
【請求項18】
組成物を調製する方法であって、
(A)少なくとも1つの活性薬剤;および
(B)少なくとも1つの次式の化合物またはその塩
【化11】

(式中、
nは1〜9の整数であり、
R1〜R5は独立に、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C2〜C6アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシル、-NH-C(O)-CH3または-O-C6H5である)
を混合することを含む方法。

【公表番号】特表2007−538014(P2007−538014A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513482(P2007−513482)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/017339
【国際公開番号】WO2005/117854
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(500139958)エミスフェアー・テクノロジーズ・インク (28)
【Fターム(参考)】