説明

活性薬剤構成要素および活性薬剤層の遠位に逆作用薬剤構成要素を含んでなる不正使用防止機能付き経皮的剤形

【課題】薬剤の不正使用、濫用、誤用または流用を防止または思いとどまらせるのに有用な経皮的剤形を提供する。
【解決手段】ポリマー材料中に分散した活性薬剤を含んでなる活性薬剤構成要素であって、近位の皮膚接触面および遠位表面、および前記近位と遠位表面との間を通過する少なくとも1つの溝を有している前記活性薬剤構成要素と、前記活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤構成要素と、前記活性薬剤構成要素の前記遠位表面と前記逆作用薬剤構成要素との間に挿入されるバリアとを含んでなる経皮的剤形であって、前記バリアが水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤に対して浸透性であり、さらに前記バリアが前記溶剤不在下において活性薬剤および逆作用薬剤の拡散に対して不浸透性である経皮的剤形。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オピオイドなどの活性医薬品を含有する剤形の不正使用、濫用、誤用または流用を防止または思いとどまらせるのに有用な経皮的剤形に関する。本発明はまた、患者をこのような剤形で処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的薬剤送達は、医薬品を投与するための周知の方法である。麻薬およびその他の精神活性薬などの特定の医薬品の濫用または誤用の可能性についてもまたよく知られている。したがって濫用または誤用の可能性がある物質を含有する経皮的剤形の不正使用、濫用、誤用または流用を防止するまたは思いとどまらせることが望ましい。経皮的剤形は、経皮的に薬剤を送達することが意図されるが、経口、バッカル、および静脈内をはじめとする、その他の様式によるこのような投薬の濫用が起こり得る。
【0003】
濫用可能物質を濫用可能物質の拮抗薬と組み合わせる方法が、これまでに提案されている。リー(Lee)らの米国特許第5,236,714号明細書は、濫用可能物質と、濫用可能物質の薬理効果を実質的に無効にするのに十分な量の濫用可能物質の拮抗薬とを組み合わせた混合物を含んでなり、皮膚または粘膜への局所的投与に適合された組成物について述べる。グランガー(Granger)らの米国特許第5,149,538号明細書は、皮膚浸透性オピオイド、摂取または溶剤浸漬時に放出性のオピオイド拮抗薬、およびオピオイドと拮抗薬を隔てる不浸透性バリアの手段を含んでなる誤用抵抗性剤形について述べる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では本発明は、ポリマー材料中に分散した活性薬剤を含んでなる活性薬剤構成要素、活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤構成要素、およびバリアを含んでなる、経皮的剤形を含んでなる。活性薬剤構成要素は、近位の皮膚接触面、遠位表面、および近位と遠位表面との間を通過する少なくとも1つの溝を有する。バリアは活性薬剤構成要素の遠位表面と逆作用薬剤構成要素との間に挿入される。さらにバリアは、水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤に対して浸透性であり、バリアは前記溶剤不在下で、活性薬剤および逆作用薬剤の拡散に対して不浸透性である。
【0005】
別の態様では本発明は、ポリマー材料中に分散した活性薬剤を含んでなる活性薬剤構成要素、活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤構成要素、および不連続バリアを含んでなる経皮的剤形を含んでなる。活性薬剤構成要素は近位の皮膚接触面、遠位表面、および近位と遠位表面との間を通過する少なくとも1つの溝を有する。バリアは活性薬剤構成要素の遠位表面と逆作用薬剤構成要素との間に挿入される。さらにバリアは活性薬剤および拮抗薬の拡散に対して不浸透性である。剤形は皮膚接触面と逆作用薬剤構成要素との間を通過する少なくとも1つの溝を含んでなる。
【0006】
本発明の目的は、剤形からの活性薬剤の抽出を通じた濫用または誤用に対して抵抗性の経皮的剤形を提供することである。このような抽出は、例えば溶剤中への剤形の完全な浸漬によって、活性薬剤構成要素からの活性薬剤の表面抽出によって、または剤形を唾液などの体液と接触させることで実施されても良い。
【0007】
上記の本発明の要約は、本発明の開示される各実施態様または全ての具現について述べることを意図しない。以下の図面および詳細な説明が、例証的な実施態様をより詳しく例証する。
【0008】
添付図を参照して、ここで本発明の好ましい実施態様についてより詳しく述べる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1a】活性薬剤構成要素が空気溝によって隔てられたストリップを含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面図(1a)を示す。
【図1b】活性薬剤構成要素が空気溝によって隔てられたストリップを含んでなる、本発明の実施態様の模式的平面図(1b)を示す。
【図2a】活性薬剤構成要素が中央空気溝がある環状ディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面図(2a)を示す。
【図2b】活性薬剤構成要素が中央空気溝がある環状ディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的平面図(2b)を示す。
【図3a】活性薬剤構成要素が複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面(3a)図を示す。
【図3b】活性薬剤構成要素が複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的平面図(3b)を示す。
【図4a】活性薬剤構成要素が空気溝によって隔てられたストリップを含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面(4a)図を示す。この実施態様ではバリアは空気溝によって隔てられたストリップを含んでなり、バリアは活性薬剤構成要素と整列する。
【図4b】活性薬剤構成要素が空気溝によって隔てられたストリップを含んでなる、本発明の実施態様の模式的平面図(4b)を示す。この実施態様ではバリアは空気溝によって隔てられたストリップを含んでなり、バリアは活性薬剤構成要素と整列する。
【図5a】活性薬剤構成要素が、中央空気溝がある環状ディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面図(5a)を示す。この実施態様ではバリアは中央空気溝がある環状ディスクを含んでなり、バリアは活性薬剤構成要素に整列する。
【図5b】活性薬剤構成要素が、中央空気溝がある環状ディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的平面図(5b)を示す。この実施態様ではバリアは中央空気溝がある環状ディスクを含んでなり、バリアは活性薬剤構成要素に整列する。
【図6a】活性薬剤構成要素が複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面図(6a)を示す。この実施態様ではバリアは複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなり、バリアは活性薬剤構成要素に整列する。
【図6b】活性薬剤構成要素が、複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的平面図(6b)を示す。この実施態様ではバリアは複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなり、バリアは活性薬剤構成要素に整列する。
【図7a】活性薬剤構成要素が、複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面図(7a)を示す。この実施態様ではバリアおよび逆作用薬剤構成要素は、複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなる。バリアおよび逆作用薬剤構成要素は、活性薬剤構成要素に整列する。
【図7b】活性薬剤構成要素が複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなる、本発明の実施態様の模式的平面図(7b)を示す。この実施態様ではバリアおよび逆作用薬剤構成要素は、複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなる。バリアおよび逆作用薬剤構成要素は、活性薬剤構成要素に整列する。
【図8a】活性薬剤構成要素が複数の円柱状溝があるディスクを含んでなり、溝が溶解性材料を含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面図(8a)を示す。
【図8b】活性薬剤構成要素が複数の円柱状溝があるディスクを含んでなり、溝が溶解性材料を含んでなる、本発明の実施態様の模式的平面図(8b)を示す。
【図9】活性薬剤構成要素がバリアに面する組織化表面を有する、本発明の実施態様の模式的横断面を示す。
【図10】活性薬剤構成要素がバリアから外方に向く組織化表面を有する、本発明の実施態様の模式的横断面を示す。
【図11】構造化剥離ライナーをさらに含んでなる、図10に示すのと同様の本発明の実施態様の模式的横断面を示す。
【図12】活性薬剤構成要素が皮膚接触面とバリアとの間に溝を提供する溶解性ビーズを含んでなる、本発明の実施態様の模式的横断面を示す。
【図13a】活性薬剤構成要素が複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなり、バリアが複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなり、バリアが活性薬剤構成要素に整列する(図6aと同様に)、本発明の実施態様の模式的断面図(13a)を示す。この実施態様では、バッキングおよびオーバーレイPSAは逆作用薬剤構成要素、バリア、および活性薬剤構成要素を越えて伸びる。
【図13b】活性薬剤構成要素が複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなり、バリアが複数の円柱状空気溝があるディスクを含んでなり、バリアが活性薬剤構成要素に整列する(図6bと同様に)、本発明の実施態様の模式的平面図(13b)を示す。この実施態様では、バッキングおよびオーバーレイPSAは逆作用薬剤構成要素、バリア、および活性薬剤構成要素を越えて伸びる。
【図14】オーバーレイPSAがバッキングの外面縁のみに存在する代わりに、バッキング全体に均一に被覆されること以外は、図13aに示すのと類似した本発明の実施態様の模式的横断面を示す。
【図15a】多孔性媒体が逆作用薬剤構成要素とバッキング層との間に挿入されること以外は、図1aに示すのと類似の本発明の実施態様の模式的横断面(15a)図を示す。
【図15b】多孔性媒体が逆作用薬剤構成要素とバッキング層との間に挿入されること以外は、図1bに示すのと類似の本発明の実施態様の模式的平面図(15b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1aおよび1bに示す一実施態様では本発明は、皮膚接触ポリマー材料115および活性薬剤を含んでなる活性薬剤含有構成要素110(「活性薬剤構成要素」)、活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤含有構成要素160(「逆作用薬剤構成要素」)、およびバリア150を含んでなる経皮的剤形100を含んでなる。活性薬剤構成要素は、近位の皮膚接触面120、近位表面に対向する、すなわち反対側のまたは対置する遠位表面130、および近位と遠位表面との間を通過する溝140を有する。活性薬剤構成要素の遠位表面130と逆作用薬剤構成要素160との間に配置されたバリア150は、活性薬剤構成要素の遠位表面130および逆作用薬剤構成要素160に隣り合う層として存在する。バッキング170は、剤形100の外面190を提供する位置で、逆作用薬剤構成要素160と隣接し隣り合って配置される。
【0011】
図1aおよび1bに示すように、活性薬剤構成要素110は、皮膚接触ポリマー材料および活性薬剤を含んでなる複数の活性薬剤ストリップ115を含んでなり、活性薬剤ストリップは隔てられてストリップと隣接する溝140を画定する。この実施態様では溝140は空気で充填される。一実施態様では活性薬剤ストリップ115の幅は好ましくは0.1cmを超え、より好ましくは0.2cmを超え、最も好ましくは0.4cmを超える。別の実施態様では活性薬剤ストリップの幅は、好ましくは2.0cm未満、より好ましくは1.0cm未満、最も好ましくは0.6cm未満である。
【0012】
別の態様では図2aおよび2bに示すように、活性薬剤構成要素110は、空気で充填される中央溝140を画定するように構成される、皮膚接触ポリマー材料115および活性薬剤を含んでなる環状ディスクからなる。
【0013】
さらに別の態様では図3aおよび3bに示すように、活性薬剤構成要素110は、複数の円柱状空気溝140を画定するように構成されるポリマーディスクを含んでなる。一実施態様では円柱状空気溝140の直径は好ましくは0.015cmを超え、より好ましくは0.05cmを超え、最も好ましくは0.1cmを超える。別の実施態様では、円柱状空気溝140の直径は好ましくは1.0cm未満、より好ましくは0.5cm未満、最も好ましくは0.2cm未満である。
【0014】
これらの各態様では、溝140の総表面積は皮膚接触面120の総表面積の好ましくは0.5%を超え、より好ましくは1%を超え、最も好ましくは2%を超える。溝140の総表面積は皮膚接触面120の総表面積の好ましくは40%未満、より好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満である。
【0015】
上でいくつかの具体的な形状について述べたが、溝は例えば方形、菱形、または楕円などのあらゆる形状であっても良いものと理解される。溝はまた相互連結して、活性薬剤構成要素中に皮膚接触ポリマー材料の島または半島を残しても良い。
【0016】
活性薬剤構成要素は、皮膚接触ポリマー材料および活性薬剤を含んでなる。活性薬剤は好ましくは皮膚接触ポリマー材料全体に均質に分散し、より好ましくは皮膚接触ポリマー材料中に溶解している。近位の皮膚接触面は、皮膚表面の少なくとも一部と密接に接触するように、皮膚表面に載せた際に十分に順応性であるべきである。一態様では実質的に全ての皮膚接触ポリマー材料は、皮膚接触面において皮膚表面と密接に接触する。一実施態様では活性薬剤構成要素は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、最も好ましくは50μm以上の厚さを有する。別の実施態様では皮膚接触層は、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、最も好ましくは150μm以下の厚さを有する。
【0017】
皮膚接触ポリマー材料は、好ましくはアクリレートと、天然ゴムと、ポリイソブチレン、ポリイソプレンなどの合成ゴムと、スチレンブロック共重合体と、ポリビニルエーテルと、シリコーンポリマーと、ポリウレタンと、ポリウレタン−尿素よりなる群から選択されるポリマーであるポリマーを含んでなる。ポリマーは単独で、または組み合わせで存在できる。皮膚接触ポリマー材料は、任意に例えば浸透促進剤、粘着付与剤、可塑剤、抗酸化剤、着色剤、結晶化阻害剤などのその他の添加剤を含有しても良い。
【0018】
一態様では、皮膚接触ポリマー材料は感圧接着剤を含んでなっても良い。本発明の剤形中で使用するのに好ましい感圧接着剤としては、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーンポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。有用なポリイソブチレン感圧接着剤の例は、ヴェンカテーシュワラン(Venkateshwaran)らに付与された米国特許5,985,317第号明細書で述べられている。有用なアクリレートおよびシリコーンポリマー感圧接着剤、およびそれらの混合物の例については、ミランダ(Miranda)に付与された米国特許第5,474,783号明細書で述べられている。
【0019】
アクリレートポリマーおよび共重合体が、特に好ましい感圧接着剤である。アクリレート共重合体中で使用するのに適したモノマーの例としては、イソオクチル、2−エチルヘキシル、n−ブチル、エチル、メチル、およびジメチルヘキシルなどのアルキルアクリレート、そしてラウリル、イソデシル、およびトリデシルなどのアルキルメタクリレートが挙げられる。またカルボン酸、ヒドロキシ、アミド、およびアミノなどの官能基を含有するモノマーをアクリレート共重合体中に組み込んでも良い。官能基を含有する適切なモノマーの例としては、アクリル酸と、ヒドロキシアルキル基中に2〜4個の炭素原子を含有するヒドロキシアルキルアクリレートと、アクリルアミドと、N−ビニル−2−ピロリドンと、酢酸ビニルと、アルコキシエチルアクリレートとが挙げられる。
【0020】
アクリレート共重合体は、任意にその他のモノマーと共重合性の実質的に直鎖のマクロモノマーをさらに含んでなっても良い。適切なマクロモノマーとしては、ポリメチルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル共重合体、ポリエーテル、およびポリスチレンマクロモノマーが挙げられる。有用なマクロモノマーの例とそれらの調製については、クランペ(Krampe)らに付与された米国特許第4,693,776号明細書で述べられている。
【0021】
本発明の活性薬剤は、濫用されることができるあらゆる薬剤物質であっても良い。多くの薬剤は濫用の可能性を有し、例えばモルヒネ、フェンタニル、メペリジン、コデイン、スフェンタニル、およびオキシコドンなどの麻薬、アンフェタミン、メタンフェタミン、およびメチルフェニデートなどの覚醒剤、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)などのメトキシ置換されたアンフェタミン、およびジアゼパム、オキサゼパム、およびロラゼパムなどのベンゾジアゼピンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
活性薬剤または薬物は、組成物が治療する病状に対する治療的有効量を送達するような量で存在する。この量は、使用される薬剤タイプ、治療する病状、組成物が対象の皮膚と接したままにされる時間の長さ、および当業者に知られているその他の要因に従って変動する。例えば用量および経皮的剤形中に存在するオピオイド作動活性薬剤量の情報については、2001年9月26日に出願されカントール(Cantor)らに付与された「フェンタニルの経皮的送達のための組成物(Composition for the Transdermal Delivery of Fentanyl)」と題された米国特許出願公開第2002/0119187 A1号、および2002年3月15日に出願されベンカトラマン(Venkatraman)らに付与された「フェンタニルおよびその類似体の経皮投与(Transdermal Administration of Fentanyl and Analogs Thereof)」と題された米国特許出願公開第2003/0026829 A1号で述べられている。一実施態様では、本発明の経皮的薬剤送達組成物中に存在する活性薬剤量は、組成物総重量を基準にして約0.01wt%を超え、好ましくは約1.0wt%を超える。別の実施態様では、本発明の経皮的薬剤送達組成物中に存在する活性薬剤量は、組成物総重量を基準にして約40wt%未満、好ましくは約20.0wt%未満である。
【0023】
しかし経皮的剤形中に存在するオピオイドの鎮痛性有効量は、典型的に、一実施態様では約0.01〜約50mg/cm2、別の実施態様では約0.05〜約15mg/cm2、別の実施態様では約0.05〜約5.0mg/cm2の範囲である。特定の効能に必要なオピオイドの鎮痛性有効量を容易に判定することは、十分に当業者の認識範囲内である。
【0024】
図1、2、および3では、逆作用薬剤構成要素160は一面でバリア150構成要素に結合し、別の面でバッキング170に結合する。逆作用薬剤構成要素160は、ポリマー材料、多孔性フィルム、または活性薬剤に対する拮抗薬を含有するのに適したその他の材料であることができる。好ましくは逆作用薬剤構成要素160は、活性薬剤の少なくとも1つの生物学的効果を鈍らせるまたはブロックする、または剤形100中の活性薬剤総量を吸収した患者または動物において、少なくとも1つの不快な副作用を引き起こすのに十分な拮抗薬を含有できる。この量は使用する拮抗薬のタイプ、使用する活性薬剤の量およびタイプ、および濫用様式に従って変動できる。
【0025】
さらに逆作用薬剤構成要素160は、水、エタノール、エーテル、またはそれらの混合物などの抽出溶剤と接触した際に拮抗薬を放出できなくてはならない。
【0026】
逆作用薬剤構成要素中で使用するのに適したポリマー材料としては、アクリレートと、天然ゴムと、ポリイソブチレン、ポリイソプレンなどの合成ゴムと、スチレンブロック共重合体と、ポリビニルエーテルと、シリコーンポリマーと、ポリウレタンと、ポリウレタン尿素とが挙げられる。拮抗薬は好ましくはポリマー材料全体に均質に分散する。一態様では、拮抗薬はポリマー材料中に溶解する。別の態様では、拮抗薬の固晶はポリマー材料全体に分散する。好ましくはポリマー材料は感圧接着剤である。適切な感圧接着剤としては、皮膚接触ポリマー材料として使用するのに適したものが挙げられる。さらに直接的な皮膚接触に適さない感圧接着剤は、逆作用薬剤構成要素のポリマー材料として使用するのに適することができる。
【0027】
逆作用薬剤構成要素はまた、孔が拮抗薬で少なくとも部分的に充填される、織布、多孔性またはマイクロ多孔性フィルムなどの多孔性媒体、またはその他の開放メッシュ様材料であることができる。拮抗薬は孔内に固晶または粉末材料として存在できる。代案としては、拮抗薬は粘稠な液体または半固形材料などのキャリアと混合されても良い。適切なフィルムの例としては、例えばシップマン(Shipman)に付与された米国特許第4,539,256号明細書で述べられるような、ポリエチレンまたはポリプロピレンを鉱油と共に押出して形成されるマイクロ多孔性フィルムが挙げられる。
【0028】
活性薬剤に対する拮抗薬は、活性薬剤の薬理効果を防止する、減らす、または遅延するように作用する、またはその他の様式で作用して濫用可能性を妨げる化合物または組成物である。拮抗薬としては、例えばナルトレキソン、ナロキソン、およびナルブフィンなどの麻薬拮抗薬、苦味物質、吐剤、または嘔吐薬が挙げられる。最も好ましくはナルトレキソンである麻薬拮抗薬が、好ましくは濫用可能麻薬との組み合わせで使用される。拮抗薬は好ましくは、活性薬剤の少なくとも1つの生物学的効果を鈍らせるまたはブロックするように、または活性薬剤を吸収した患者または動物において少なくとも1つの不快な副作用を引き起こすように作用する。
【0029】
図1、2、および3に示すように、バリア150は、一面で活性薬剤構成要素の遠位表面130に、別の面で逆作用薬剤構成要素160と隣接して隣り合う、実質的に連続の構成要素である。バリアは水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤に対して浸透性であり、前記溶剤不在下でバリアは、活性薬剤および拮抗薬の拡散に対して不浸透性である。
【0030】
本発明に関連して、溶剤に対するバリアの透過度は、溶剤がバリアを超えて通過できるように、または溶剤存在下で薬剤および/または拮抗薬がバリアを通過できるように、溶剤がバリアを溶解または浸食できるように画定される。バリアを越える薬剤および/または拮抗薬の動きは、剤形の特定用途、ならびに薬剤および拮抗薬の相対量とタイプ次第で変動する量および時間枠で生じるが、溶剤存在下で十分な拮抗薬がバリアを通過して、溶剤によって同時抽出されるかもしれない一定量の活性薬剤の濫用可能性に対する減衰効果を有するものと理解される。バリアが溶剤に30分未満、より好ましくは15分未満、および最も好ましくは5分未満の時間で露出した後に、拮抗薬がバリアを通過することが好ましい。バリアを通過する拮抗薬の量は、好ましくは10μgを超え、より好ましくは50μgを超え、および最も好ましくは200μgを超える。
【0031】
抽出は実験室タイプの状況(例えば溶剤ビーカー内への剤形の浸漬によって)で実施されても良いが、拮抗薬および活性薬剤の抽出は生体内(in vivo)、すなわち口腔中に存在する唾液、または胃中に存在する胃液中などの生理的状況で起こりうることも理解すべきである。
【0032】
溶剤不在下におけるバリアの活性薬剤および拮抗薬の拡散に対する不透過性は、剤形の正常な保存または使用中に、顕著な量未満の、好ましくは皆無の活性薬剤または拮抗薬がバリアを越えて拡散するようなものである。顕著な量未満の正確な量は、剤形の特定の組成物および意図される治療的な用途次第で変動するが、剤形の治療的効果を顕著に変化させない(例えば活性薬剤構成要素中の活性薬剤濃度がバリアを超えた活性薬剤の拡散によって顕著に変化しない、そして拮抗薬の薬理学的有効量がバリアを越えて活性薬剤構成要素中に拡散しない)あらゆる量の活性薬剤または拮抗薬を含むものと理解される。バリアを越えて拡散しても良い活性薬剤のあらゆる顕著でない量は、剤形中の全薬剤の好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、最も好ましくは0.1wt%未満である。バリアを越えて拡散しても良い薬剤のあらゆる顕著でない量は、好ましくは1ヶ月を超え、より好ましくは6ヶ月を超え、最も好ましくは2年を超える期間をかけて拡散する。
【0033】
好ましい実施態様では、活性薬剤は逆作用薬剤構成要素と拡散連絡しない。拡散連絡は、薬剤などの物質が、1つ以上の固形物または液体媒体を通過または越えることで、一領域から別の領域に拡散できることを意味するものと理解される。
【0034】
適切なバリアとしては、例えばポリビニルアルコールなどの溶解性フィルム、または例えば追加的材料が配合されたポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコールが挙げられる。適切なバリアとしては、多孔性またはマイクロ多孔性フィルムも挙げられる。
【0035】
バリアの厚さは、好ましくは1μmを超え、より好ましくは10μmを超え、最も好ましくは20μmを超える。バリアの厚さは好ましくは100μm未満、より好ましくは75μm未満、最も好ましくは50μm未満である。
【0036】
図4aおよび4bに示す別の実施態様では、本発明は、皮膚接触ポリマーマトリックス215および活性薬剤を含んでなる皮膚接触構成要素210である活性薬剤構成要素、活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなるレザバーまたは逆作用薬剤構成要素260、およびバリア250を含んでなる経皮的剤形200を含んでなる。皮膚接触構成要素は近位の皮膚接触面220、皮膚接触面に対向する遠位表面230、および近位と遠位表面との間を通過する溝240を有する。バリア250は、皮膚接触構成要素の遠位表面230およびレザバー構成要素260と隣接し隣り合う不連続構成要素として存在する。バッキング270はレザバー260表面と隣接し隣り合って、剤形200の外面290を提供する。
【0037】
図4aおよび4bに示すように、皮膚接触構成要素210は、皮膚接触ポリマーマトリックス215および活性薬剤を含んでなる複数のストリップを含んでなり、ストリップは溝240によって隔てられる。この実施態様では、溝240は空気で充填される。不連続バリアは、少なくとも1つの連続空気溝240が、隣接する近位の皮膚接触面220によって確定される平面からレザバー構成要素260まで通過するように、皮膚接触ポリマー材料215に整列する。一実施態様では、皮膚接触ポリマー材料215および活性薬剤を含んでなるストリップの幅は、0.1cmを超え、好ましくは0.2cmを超え、より好ましくは0.4cmを超える。別の実施態様では、皮膚接触ポリマー材料215および活性薬剤を含んでなるストリップの幅は、2.0cm未満、好ましくは1.0cm未満、より好ましくは0.6cm未満である。
【0038】
別の態様では、図5aおよび5bに示すように、活性薬剤または皮膚接触構成要素210は、空気で充填される中央溝240がある皮膚接触ポリマーマトリックス215および活性薬剤を含んでなる環状ディスクからなる。
【0039】
さらに別の態様では、図6aおよび6bに示すように、活性薬剤または皮膚接触構成要素210は、複数の円柱状空気溝240があるディスクからなる。一実施態様では、円柱状空気溝240の直径は0.015cmを超え、好ましくは0.05cmを超え、より好ましくは0.1cmを超える。別の実施態様では、円柱状空気溝240の直径は1.0cm未満、好ましくは0.5cm未満、より好ましくは0.2cm未満である。
【0040】
これらの各態様で、溝240の総表面積は、皮膚接触面220の総表面積の好ましくは0.5%を超え、より好ましくは1%を超え、最も好ましくは2%を超える。溝240の総表面積は、皮膚接触面220の総表面積の好ましくは40%未満、より好ましくは20%未満、および最も好ましくは10%未満である。
【0041】
バリア250は、図4、5、および6に示すように、一面で活性薬剤遠位表面または皮膚接触構成要素230に隣接し隣り合い、別の面で逆作用薬剤またはレザバー構成要素260と隣接し隣り合う不連続構成要素である。バリアは活性薬剤および拮抗薬の拡散に対して不浸透性である。
【0042】
活性薬剤および拮抗薬の拡散に対するバリアの不透過性は、剤形の正常な保存または使用中に、顕著な量未満の、好ましくは皆無の活性薬剤または拮抗薬がバリアを越えて拡散するようなものである。顕著な量未満の正確な量は、剤形の特定の組成物および意図される治療的な用途次第で変動するが、剤形の治療的効果を顕著に変化させない(例えば活性薬剤構成要素中の活性薬剤濃度がバリアを超えた活性薬剤の拡散によって顕著に変化しない、そして拮抗薬の薬理学的有効量がバリアを越えて活性薬剤構成要素中に拡散しない)あらゆる量の活性薬剤または拮抗薬を含むものと理解される。バリアを越えて拡散しても良い活性薬剤のあらゆる顕著でない量は、剤形中の全薬剤の好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、最も好ましくは0.1wt%未満である。バリアを越えて拡散しても良い薬剤のあらゆる顕著でない量は、好ましくは1ヶ月を超え、より好ましくは6ヶ月を超え、最も好ましくは2年を超える期間をかけて拡散する。
【0043】
バリアとして使用するのに適した不連続構成要素は、例えばポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルと、ポリプロピレンと、高密度ポリエチレンなどのポリエチレンとを含んでなるフィルムから調製できる。ポリエチレンテレフタレート−アルミニウム−ポリエチレン複合材、またはポリエチレンテレフタレート−エチレンビニル酢酸複合材などの多層フィルムもまた適する。
【0044】
バリアの厚さは、好ましくは1μmを超え、より好ましくは10μmを超え、最も好ましくは20μmを超える。バリアの厚さは、好ましくは100μm未満、より好ましくは80μm未満、最も好ましくは60μm未満である。
【0045】
図1、2、および3に示す実施態様で述べるフィルムなどの溶解性フィルムを任意に使用しても良い。
【0046】
本発明のバリアは、活性薬剤構成要素の不連続構造に引き続いてラミネートされ、またはその他の様式で付着される不連続構造を有して形成されても良い。バリアおよび皮膚接触ポリマー材料またはマトリックスが完全に整列することが好ましい。バリアが、バリア層を越えた活性薬剤および拮抗薬の拡散を妨げる役目を果たす限り、2層を完全に見当合わせする必要はない。本発明の不連続バリアはまた、皮膚接触ポリマー材料中の不連続性が形成されるのと同時に形成されても良い。例えば連続バリアフィルムは、連続皮膚接触ポリマーマトリックスで被覆されても、または連続皮膚接触ポリマーマトリックスにラミネートされても良い。開口部または孔は、整列する溝がバリアおよび皮膚接触ポリマー材料の双方の中に同時に作られるように、打ち抜きなどのあらゆる適切な孔形成工程を使用してラミネート中に作られても良い。
【0047】
本発明のバリアはまた、皮膚接触面に対向する活性薬剤構成要素の遠位表面、または活性薬剤構成要素に面する逆作用薬剤構成要素表面などの、剤形中に存在するその他の表面の1つに塗布された不浸透性表面コーティングを含んでなっても良い。適切なコーティングの例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、および/またはフッ化ビニリデンのポリマーまたは共重合体などのフルオロポリマーが挙げられる。ダイニオン(Dyneon)(登録商標)フッ素サーモプラスチックTHVなどのテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびビニリデンフッ化物のターポリマーが好ましいコーティングである。不浸透性表面コーティングの厚さは、好ましくは0.5〜10μmの厚さ、より好ましくは1〜5μmの厚さ、最も好ましくは2〜4μmの厚さである。一態様では、バリアはマイクロ多孔性フィルムを構成する逆作用薬剤構成要素表面の薄層コーティングである。
【0048】
溝340はまた、逆作用薬剤またはレザバー構成要素360中に存在しても良い。図7a、および7bに示すように、溝340は、バリア350および皮膚接触ポリマーマトリックス315中の溝と実質的に整列する複数の開口部である。レザバー構成要素360中の溝は、その他の構成要素中の溝と同様に、すなわち引き続くラミネーション/位置合わせステップとは独立に、または連続構成要素のラミネーションに続いて同時に形成されても良い。
【0049】
図4、5、6、および7に示す実施態様では、適切な皮膚接触構成要素、皮膚接触ポリマーマトリックス、活性薬剤、レザバー構成要素、および拮抗薬は、図1、2、および3に示す実施態様で述べたものと同様である。
【0050】
図8aおよび8bに示す別の実施態様では、本発明は、皮膚接触ポリマーマトリックス415および活性薬剤を含んでなる皮膚接触構成要素410である活性薬剤構成要素、活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤またはレザバー構成要素460、およびバリア450を含んでなる経皮的剤形400を含んでなる。皮膚接触構成要素は、近位の皮膚接触面420、皮膚接触面に対向する遠位表面430、および近位と遠位表面との間を通過する溝440を有する。バリア450は、皮膚接触構成要素の遠位表面430およびレザバー構成要素460と隣接し隣り合う構成要素として存在する。バッキング470は逆作用薬剤構成要素460と隣接し隣り合い、剤形400の外面490を提供する。
【0051】
図8aおよび8bに示すように、皮膚接触構成要素410は、複数の円柱状溝440があるディスクからなる。溝440は、溝440が、水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤に対して浸透性であり、溝440が前記溶剤不在下で、活性薬剤および拮抗薬の拡散に対して不浸透性であるように、溶解性、浸食性、または多孔性材料で充填される。溝440として使用するのに適した材料としては、例えばポリビニルアルコールまたは変性(改質)されたポリビニルアルコールなどの溶解性フィルムが挙げられる。適切な材料としては、多孔性またはマイクロ多孔性フィルムも挙げられる。
【0052】
一実施態様では、円柱状溝440の直径は0.015cmを超え、好ましくは0.05cmを超え、より好ましくは0.1cmを超える。別の実施態様では、円柱状空気溝440の直径は1.0cm未満、好ましくは0.5cm未満、より好ましくは0.2cm未満である。
【0053】
これらの各態様で、溝440の総表面積は皮膚接触面420の総表面積の好ましくは0.5%を超え、より好ましくは1%を超え、最も好ましくは2%を超える。溝440の総表面積は皮膚接触面420の総表面積の好ましくは40%未満、より好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満である。
【0054】
図8に示す実施態様では、適切な皮膚接触構成要素、皮膚接触ポリマーマトリックス、活性薬剤、逆作用薬剤構成要素、バリア、および拮抗薬は、図1、2、および3で示す実施態様で述べたものと同様である。
【0055】
図9で示す別の実施態様では、本発明は、皮膚接触ポリマーマトリックス515および活性薬剤を含んでなる皮膚接触構成要素510である、活性薬剤構成要素、活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤またはレザバー構成要素560、およびバリア550を含んでなる経皮的剤形500を含んでなる。皮膚接触構成要素は、近位の皮膚接触面520および皮膚接触面に対向する遠位表面530を有する。図9に示すように、皮膚接触面に対向する遠位表面530は、一連の隆線または代案としては錐体から構成される組織化表面である。バリア550は、皮膚接触構成要素の遠位表面530と隣接し隣り合う構成要素として存在するので、かみ合う隆線または錐体のパターンを有する。バリアのパターン化されていない面は、レザバー構成要素560と隣り合う。バッキング570は、レザバー構成要素560と隣り合い、剤形500の外面590を提供する。
【0056】
隆線または錐体は、マズレク(Mazurek)らに付与された米国特許第6,123,890号明細書にあるものなどのエンボス加工または微細複製されたポリマー層を調製するためのあらゆる周知の技術によって形成されても良い。
適切なバリアとしては、図1、2、および3で述べた実施態様のバリア材料が挙げられる。
【0057】
溝540は、皮膚接触面520をレザバー構成要素560に連結して形成される。図9に示すように、溝540はバリア550で充填される。バリアは、水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤中に浸透性および/または少なくとも部分的に可溶性であり、バリアは前記溶剤不在下で活性薬剤および逆作用薬剤の拡散に対して実質的に不浸透性である。皮膚接触ポリマーマトリックス515の隆線または錐体は、好ましくは隣接する隆線と錐体との間に小さな開口が存在するように形成される。図9に示すように隆線または錐体は、接点で互いに境を接する。隣接する隆線間の接点は、皮膚接触面520とレザバー構成要素560との間の溶剤の流体連通を効果的に可能にするものと理解される。さらに溝が、実質のない量の皮膚接触ポリマー材料を含有しても良いが、なおも実質的に溶剤への開放流路を提供できるものと理解される。隣接する隆線または錐体の間の連結部は、好ましくは厚さ5μm未満、より好ましくは1μm未満の実質のない量である。
【0058】
この実施態様では、適切な皮膚接触構成要素、皮膚接触ポリマーマトリックス、活性薬剤、逆作用薬剤構成要素、バリア、および拮抗薬は、図1、2、および3で示す実施態様で述べたものと同様である。
【0059】
図10に示す別の実施態様では、本発明は、皮膚接触ポリマーマトリックス615および活性薬剤を含んでなる皮膚接触構成要素610である活性薬剤構成要素、活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤またはレザバー構成要素660、およびバリア650を含んでなる経皮的剤形600を含んでなる。皮膚接触構成要素は、近位の皮膚接触面620、皮膚接触面に対向する遠位表面630、および近位と遠位表面との間を通過する溝640を有する。図10に示すように、皮膚接触ポリマーマトリックス615は、隆線または先端を切った錐体を含んでなる構造化構成要素である。
【0060】
溝640は、皮膚接触面620とバリア650との間に開放流体連通を提供する。皮膚接触構成要素610の隆線または錐体は、好ましくは隣接する隆線または錐体の間に小さな開口部が存在するように形成される。図10に示すように、隆線または錐体は、接点で互いに境を接する。隣接する隆線間の接点は、皮膚接触面620とバリア650との間の溶剤の流体連通を効果的に可能にするものと理解される。さらに溝は実質のない量の皮膚接触ポリマーマトリックスを含有しても良いが、なおも溶剤への開放流路を実質的に提供できるものと理解される。隣接する隆線または錐体間の連結部は実質のない量であり、好ましくは5μm未満、より好ましくは1μm未満の厚さである。
【0061】
図11に示すように、図10の剤形は、剤形の使用に先だって皮膚接触ポリマー材料615の組織化表面を保護する役割をする構造化剥離ライナー680をさらに含んでなっても良い。
【0062】
この実施態様では、適切な皮膚接触構成要素、皮膚接触ポリマーマトリックス、活性薬剤、レザバー構成要素、バリア、および拮抗薬は、図1、2、および3で示す実施態様で述べたものと同様である。
【0063】
図12に示す別の実施態様では、本発明は、皮膚接触ポリマーマトリックス715および活性薬剤を含んでなる皮膚接触構成要素710である活性薬剤構成要素、活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤またはレザバー構成要素760、およびバリア750を含んでなる経皮的剤形700を含んでなる。皮膚接触構成要素は、近位の皮膚接触面720、皮膚接触面に対向する遠位表面730、および実質的に完全に近位および遠位表面との間を通過する溝740を有する。皮膚接触面720をレザバー構成要素760に連結する溝740は、皮膚接触ポリマー材料715内に埋め込まれる1つ以上の溶解性、浸食性、または多孔性ビーズから形成される。1つ以上のビーズは、皮膚接触構成要素710を完全に通過しても良い。代案としては、1つ以上のビーズが、溶剤存在下で活性薬剤構成要素710を通過する溝を効果的に提供するように、互いに隣接していても良い。ビーズは、好ましくは近位の皮膚接触面720から皮膚接触面に対向する遠位表面730にまで伸びるが、ビーズ(群)の片面または両面に実質のない量の皮膚接触ポリマー材料が存在しても良いものと理解される。したがって溝は少量の皮膚接触ポリマーマトリックス715を含有しても良いが、なおも実質的に溶剤への開放流路を提供する。溝740内の皮膚接触ポリマー材料715の量は実質のない量であるが、好ましくは5μm未満、より好ましくは1μm未満の厚さである。
【0064】
これまでに述べた実施態様のいずれか1つと共に、いくつかの任意の徴群が含まれても良い。
【0065】
図13aおよび13bに示すようにオーバーレイバッキング870は、オーバーレイバッキング870の外周縁が患者の皮膚表面と接触するように、逆作用薬剤またはレザバー構成要素860、バリア850、および活性薬剤または皮膚接触構成要素810の領域を超えて十分に伸びる。
【0066】
オーバーレイバッキング870の縁は、オーバーレイバッキング870の縁を皮膚表面に固定するために使用される、オーバーレイ感圧接着剤(PSA)880で被覆される。既述のように、皮膚接触用途で使用するのに適したあらゆる感圧接着剤がオーバーレイPSA880として使用できる。本発明のために有用かもしれない従来のテープバッキングとして用いられる典型的な可撓性裏当て材の例としては、ポリプロピレンと、ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、および高密度ポリエチレンと、ポリ塩化ビニルと、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、ポリウレタンと、酢酸セルロースと、エチルセルロースなどのポリマーフィルムからできたものが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート−アルミニウム−ポリエチレン複合材などの重なり合うバッキングもまた適する。布帛および不織布もまた適する。好ましい実施態様では、オーバーレイバッキングは、シャワーおよび入浴などの活動からの逆作用薬剤構成要素中への外的水分の移入を防止する連続ポリマーフィルムである。このような連続フィルムの例としては、ポリウレタン、ポリエチレン、およびポリエステルが挙げられる。
【0067】
図14に示すように、オーバーレイバッキング870は、オーバーレイバッキング870の縁を皮膚表面に固定するために使用される、オーバーレイ感圧接着剤(PSA)880で連続的に被覆される。追加的な任意の徴群はレザバー860とオーバーレイPSA880との間に含まれる多孔性媒体865である。この実施態様では、オーバーレイPSA880は、二重の目的を果たす。オーバーレイPSA880の領域は、レザバー構成要素860、バリア850、および活性薬剤または皮膚接触構成要素810の領域を越えて伸び、剤形を皮膚表面に固定し、空気溝890を画定する役割を果たす。レザバー構成要素860を超えて伸びないオーバーレイPSA880の領域は、多孔性媒体865への(または代案としては多孔性層を有さない剤形中のレザバー構成要素860への)オーバーレイバッキング870の安定したラミネーションを提供する。
【0068】
多孔性媒体865は、織布、マイクロ多孔性フィルム、またはその他の開放メッシュ様材料などのあらゆる多孔性媒体であることができる。剤形800が溶剤浴中に浸漬されると、多孔性媒体865は溶剤と逆作用薬剤構成要素860の上面の流体連通を可能にする。逆作用薬剤構成要素とオーバーレイとの間に多孔性媒体を組み込んだ剤形の例については、2003年12月23日に出願されハート(Hart)らに付与された「濫用抵抗性経皮剤形(Abuse−Resistant Transdermal Dosage Form)」と題された米国特許出願第10/744,996号で述べられている。
【0069】
多孔性媒体865は、オーバーレイバッキング870の組み合わせで使用できるが、これらの任意の徴群を組み合わせることは必要ない。例えば多孔性媒体865は、図15aおよび15bに示すように剤形中にもまた存在しても良く、ここでは多孔性媒体865がバッキング170と逆作用薬剤構成要素160との間に挿入されること以外は、あらゆる徴群は図1aおよび1bに示すのと同一である。
【0070】
皮膚接触構成要素であっても良い活性薬剤構成要素は、ポリマー材料またはマトリックスおよび活性薬剤に加えて、いくつかの追加的構成要素を含んでなっても良い。活性薬剤構成要素の追加的構成要素としては、皮膚浸透促進剤、薬物可溶化剤、可塑剤、抗酸化剤、着色剤などが挙げられる。
【0071】
経皮的ドラッグ送達システム中で皮膚浸透促進剤または可溶化剤として有用な賦形剤の例としては、イソステアリン酸、オクタン酸、およびオレイン酸などのC8〜C24脂肪酸と、オレイルアルコールおよびラウリルアルコールなどのC8〜C24脂肪族アルコールと、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、およびラウリン酸メチルなどのC8〜C24脂肪酸の低級アルキルエステルと、モノラウリン酸グリセリルなどのC8〜C24脂肪酸のモノグリセリドと、テトラグリコール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)と、テトラエチレングリコール(エタノール,2,2’−(オキシビス(エチレンオキシ))ジグリコール)と、ポリエチレングリコールと、プロピレングリコールと、N,N−ジメチルドデシルアミン−N−オキシドと、d−リモネン、メントール、およびテルピネオールなどのテルペンとが挙げられる。
【0072】
本発明の活性薬剤構成要素の組成物中では、皮膚浸透促進剤、薬物可溶化剤、可塑剤、およびその他の添加剤が、組成物中に好ましくは実質的に均一に分散し、より好ましくは溶解する。添加剤が浸透促進剤である場合、それはピーターソン(Peterson)に付与された米国特許第5,585,111号明細書におけるような標準皮膚透過モデルを使用してこの現象を測定した際に、浸透促進剤(群)を含有しない同様の組成物と比べて、皮膚を通じた薬剤浸透を増強する量で存在する。浸透促進剤および可溶化剤の総量は、組成物総重量を基準にして一般に40wt%未満、好ましくは30%未満である。
【0073】
本発明の活性薬剤または皮膚接触構成要素組成物は、ポリマーマトリックス、活性薬剤、および(浸透促進剤などの)任意の添加剤と、有機溶剤(例えば酢酸エチル、イソプロパノール、メタノール、アセトン、2−ブタノン、エタノール、トルエン、アルカンおよびそれらの混合物)とを組み合わせてコーティング組成物を提供して調製できる。混合物は、均質なコーティング組成物が得られるまで振盪または撹拌される。得られる組成物を次に従来のコーティング方法(例えばナイフコーティングまたは押出しダイコーティング)を使用して剥離ライナーに塗布し、所定の均一厚さのコーティング組成物を提供する。ストライプ塗り、スクリーン印刷、およびインクジェット印刷などの方法を使用して、非連続のまたは不連続のコーティングを調製しても良い。
【0074】
適切な剥離ライナーとしては、適切なフルオロポリマーまたはシリコーンベースのコーティングで被覆された、ポリエステルウェブ、ポリエチレンウェブ、ポリスチレンウェブ、またはポリエチレン被覆紙などの既知のシート材料を含んでなる従来の剥離ライナーが挙げられる。次に組成物で被覆された剥離ライナーを乾燥させ、従来の方法を使用してバリア層上にラミネートする。任意のつなぎ層を使用して、皮膚接触構成要素をバリア層と結合しても良い。代案としては、皮膚接触構成要素組成物をバリア層上に直接被覆して、引き続いて乾燥させ剥離ライナー上にラミネートしても良い。
【0075】
逆作用薬剤またはレザバー構成要素が感圧接着剤または同様のポリマー材料またはマトリックスを含んでなる場合、本発明の逆作用薬剤またはレザバー構成要素組成物は、活性薬剤の代わりに拮抗薬が使用されてコーティング組成物が調製されること以外は、活性薬剤または皮膚接触構成要素を調製するためのものと類似の方法を使用して調製できる。代案としては逆作用薬剤またはレザバー構成要素は、多孔性またはマイクロ多孔性フィルムなどの多孔性媒体を含んでなることができる。拮抗薬は含浸溶剤中に溶解でき、多孔性またはマイクロ多孔性フィルムは溶剤中に十分な時間浸漬されて、拮抗薬をフィルムの孔に貫通させる。次に溶剤を乾燥させて、フィルム全体に分散された拮抗薬を残す。逆作用薬剤構成要素は、任意に熱または追加的つなぎ層を使用して、レザバー構成要素とバリアとの間の適正な接触を確保して、バリア/皮膚接触マルチラミネートのバリア側にラミネートされる。
【0076】
バッキングは、任意に熱または追加的つなぎ層を使用して、レザバー構成要素とバッキングとの間の適正な接触を確保して、逆作用薬剤表面またはバリアに対向するレザバー構成要素にラミネートされる。当業者は、剤形を含んでなる層のタイプおよび厚さ次第で、ラミネーションステップの順序を変動させることが好ましいかもしれないことを理解するであろう。
【0077】
本発明の経皮的剤形は、テープ、パッチ、シート、ドレッシングなどの物品の形態、または当業者知られているあらゆるその他の形態にできる。一般に剤形は、あらかじめ選択される量の活性薬剤を皮膚を通じて送達するのに適したサイズのパッチの形態である。
【0078】
一般に剤形は、1cm2を超え、好ましくは5cm2を超える表面積を有する。一般に剤形は、100cm2未満、好ましくは40cm2未満の表面積を有する。
【0079】
本発明の剤形は、典型的に患者による使用に先だって皮膚接触面を覆って保護する剥離ライナーを含んでなる。適切な剥離ライナーとしては、適切なフルオロポリマーまたはシリコーンベースのコーティングで被覆された、ポリエステルウェブ、ポリエチレンウェブ、ポリプロピレンウェブ、またはポリエチレン被覆紙などの既知のシート材料を含んでなる、従来の剥離ライナーが挙げられる。本発明の剤形は、典型的に保存のためにフォイル張りのポーチ内に個別に包装される。本発明の剤形は、代案としては定量供給する装置と共に使用するのに適したロールまたはスタック形態で提供されても良い。
【0080】
別の実施態様では、本発明は、以下のステップを含んでなる、濫用抵抗性剤形からの薬剤の経皮的送達の方法を含んでなる。ポリマー材料およびポリマー材料中に分散した活性薬剤を含んでなる活性薬剤構成要素を含んでなる剤形を提供するステップであって、活性薬剤構成要素が皮膚接触面を有し、逆作用薬剤構成要素が活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなり、不連続バリアが活性薬剤と逆作用薬剤の拡散に対して不浸透性であり、バリアが活性薬剤構成要素と逆作用薬剤構成要素との間に挿入されるステップ。剤形中に、活性薬剤構成要素を通過して、実質的に皮膚接触面と逆作用薬剤構成要素との間に開放流体連通を提供する少なくとも1つの溝を提供するステップ。剤形をヒト身体の外部に十分な時間被着して、所望の治療的な結果を達成するステップ。一実施態様では、剤形をヒト身体の外部に被着するステップは、剤形を提供し、剤形中に少なくとも1つの溝を提供する別の2つのステップに続く。このような剤形の溶剤による表面抽出は、溶剤が逆作用薬剤構成要素と流体連通できるようにする。したがってこのような剤形からの表面抽出は、活性薬剤と逆作用薬剤の混合物を放出する。これは未使用剤形の濫用または誤用を防止するまたは思いとどまらせる役割を果たすので、患者による使用に先だって、このような溝が剤形に中に存在することは有利である。
【実施例】
【0081】
生体外(in vitro)皮膚浸透試験方法
下の実施例に示す皮膚浸透データは、以下の試験方法を使用して得られた。試験サンプルとして使用するために、5.0cm2の経皮パッチを10.0cm2のオーバーレイパッチ(5.0cm2作用面積)の中心から型抜きした。剥離ライナーを除去して、パッチをヒト死体皮膚に被着し、圧迫して皮膚と均一に接触させた。得られたパッチ/皮膚ラミネートをパッチ面を上にして、垂直拡散セルの下位部のオリフィスを横切って置いた。拡散セルをアセンブルして、受容体流体が皮膚に接触するように、下位部に25mLの温(32℃)受容体流体(0.1Mリン酸塩緩衝液、pH6.8)を満たした。使用時以外はサンプリングポートを覆った。
【0082】
実験過程全体を通してセルを32±2℃に保った。実験全体を通して磁気撹拌機の手段によって受容体流体を撹拌し、均一なサンプルと、皮膚の真皮面における拡散バリアの低下を確実にした。受容体流体の総容積を規定の時間間隔で取り除き、即座に新鮮な流体と交換した。取り除いた流体を0.45μmのフィルターを通して濾過した。次に従来の高速液体クロマトグラフィー法を使用して、最後の1〜2mLをフェンタニルについて分析した(カラム:ゾルバックス(Zorbax)SB AQ、50×4.6mm、5μm粒度;移動相:22mMリン酸塩緩衝液中3〜20%のイソプロパノール;流速:1.5mL/min;検出器:230nmのuv;注入容積:10μL;実行時間:6分間)。皮膚を通過したフェンタニルの累積量をμg/cm2で計算して報告した。特に断りのない限り、結果は8回の反復試験の平均で報告する。
【0083】
抽出方法
試験サンプルは3.5cm2の経皮パッチであった。抽出溶液を以下の溶液の1つから選択した。酸緩衝生理食塩水(PBS、Mリン酸塩緩衝液、pH6.5、0.5M塩化ナトリウム);ジエチルエーテル(BHT防腐剤添加試薬等級);脱イオン(DI)水;エタノール(USP、無水);酢酸エチル(HPLC等級)。
【0084】
15mLの抽出溶液を40mLバイアルに添加した。パッチがバイアル開口部を完全に覆うように、パッチの皮膚接着面をバイアルの縁に被着した。ねじ留め式のテフロン(登録商標)隔壁キャップをパッチの上にはめて、バイアルを密封した。密封したバイアルをまっすぐ立てて、振盪に先だって1時間以下保管した。
【0085】
バイアルを250rpmに設定した振盪台(IKAラボルテクニック(Labortechnik)501デジタル振盪機)上で振盪した。5、15、および30分間の一定の時間間隔で、0.5mLのアリコートをシリンジを使用して中隔を通して除去した。各アリコートを1mLバイアルに入れた。抽出溶剤が酢酸エチルまたはエーテルであれば乾燥するまで蒸発させた。サンプルにメタノール(0.5mL、HPLC等級)を添加し、混合して逆相HPLCにより活性薬剤物質についてアッセイした。抽出溶剤が水またはエタノールであれば、サンプルを逆相HPLCによって活性および逆作用薬剤について直接アッセイした。
【0086】
機械的分離方法
試験サンプルは10.0cm2のオーバーレイ経皮パッチ(活性領域5.0cm2)であった。10人の個人が、各タイプの単一パッチを試験した。試験者は、パッチの個々の層を示すダイヤグラムを与えられた。被験者はまた工具として使用するための小刀、ピンセット、および接着テープを提供された。各試験者には1時間が与えられ、ナルトレキソンからのフェンタニル分離を試みるため、パッチを機械的に分離するように指示された。フェンタニルを含有しナルトレキソンを含まないと思われる分離された材料を40mLバイアルに入れて、およそ5mLのメタノールで抽出してHPLCでフェンタニルおよびナルトレキソン含量の双方について試験した。結果を各パッチから回収されたフェンタニルの平均量、各パッチから回収されたナルトレキソンの平均量、および回収されたフェンタニルとナルトレキソンの比率として報告する。
【0087】
共重合体A。イソオクチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/エルバサイト(Elvacite)(登録商標)1010共重合体溶液の調製
イソオクチルアクリレート(714.00g)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(523.00g)、エルバサイト(ELVACITE)(登録商標)1010(ICIアクリリック(Acrylics)から入手できる)のポリメチルメタクリレートマクロモノマー(52.00g)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(2.60g)、酢酸エチル(1245.50g)およびイソプロパノール(45.50g)を組み合わせて、マスターバッチを調製した。得られた溶液を等分に分割し、6本の1クォート(0.95L)こはく色ガラスびんに入れた。びんを窒素1分あたり1Lの流速で2分間パージした。びんを密封して57℃の回転水浴中に24時間入れた。24時間目にびんを回転水浴から取り出して開封し、びん毎に76gのメタノールで希釈して均質になるまで混和し、1ガロン(3.8L)のガラスジャー中で再度合わせた。得られた共重合体の固形分百分率は40.5%であった。インヘレント粘度(27℃で測定された酢酸エチル中の0.15g/dLポリマー溶液の)は、0.77dL/gであった。
【0088】
共重合体B。2−エチルヘキシルアクリレート/ジメチルアミノエチルアクリラートメチル四級塩化物/メトキシポリエチレングリコール400アクリレート共重合体溶液の調製
2−エチルヘキシルアクリレート(234g)、ジメチルアミノエチルアクリラートメチル四級塩化物(90g)、メトキシポリエチレングリコール400アクリレート(54g)、メタノール(200.84g)、およびアセトン(221.14g)を組み合わせてマスターバッチを調製した。得られた溶液を等分に分割し、2本の1クォート(0.95L)こはく色ガラスびんに入れた。びんを窒素で1分あたり1Lの流速で2分間パージした。びんを密封して57℃の回転水浴中に24時間入れた。24時間目にびんを回転水浴から取り出して冷却した。メタノール(50g)およびアセトン(50g)をそれぞれのびんに添加して、均質になるまで混和した。次に得られた溶液をラジカル重合開始剤でさらに6時間57℃で処理して、残留モノマーの量を低下させた。2本のびんの中の得られた共重合体溶液を1ガロン(3.8L)ガラスジャー中で合わせた。得られた共重合体の固形分百分率は36.3%であった。ブルックフィールド粘度は835センチポアズであった。
【0089】
共重合体C。ポリ尿素共重合体溶液
テキサス州ヒューストンのハンツマン(Huntsman Co.(Houston、TX)からのポリオキシプロピレンジアミン(198.75g)(ジェファミン(Jeffamin)(登録商標)D2000、テキサス州ヒューストンのハンツマン(Huntsman Co.(Houston、TX)からのポリオキシアルキレンアミン(66.25g、(ジェファミン(Jeffamin)(登録商標)XTJ502)、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(0.44g)、および2−プロパノール(301.14g)を1クォート(0.95L)ジャーに入れて、均質になるまで混和した。次にジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(35.70g)を2−プロパノール洗浄液と共にジャーに添加して、16時間混和してポリマー溶液を調製した。
【0090】
得られた溶液を工程中シリコーン被覆された剥離ライナー上に未乾燥塗膜厚22ミル(559μm)でナイフ被覆して、110°F(43℃)で4分間、185°F(85℃)で4分間、そして200°F(93.3℃)で4分間乾燥させた。次に乾燥共重合体(161.8g)をアセトン(242.7g)に入れて40.1%固形分溶液を調製した。
【0091】
多孔性ポリエチレンフィルム
シップマン(Shipman)に付与された米国特許第4,539,256号明細書で述べられる方法に従って、多孔性ポリエチレンフィルムを製造した。簡潔に述べると、テキサス州ヒューストンのアトフィーナ・ペトロケミカルズ(Atofina Petrochemicals(Houston、Texas)からの溶融高密度ポリエチレン(フィナセン(Finathene)(登録商標)7208)をカリフォルニア州サンラモンのシェブロン・プロダクツ(Chevron Products Co.(San Ramon、CA))からのUSP等級鉱油(シェブロン・シュペーラ(Chevron Superla)(登録商標)白色油31と混合して水冷ホイール上に押出し、そこで油充填膜を形成させた。次に溶剤で洗浄して油を除去し、続いて二軸延伸して5ミル(127μm)厚の多孔性フィルムを形成した。多孔性フィルムは多孔度74%の多孔性であり、250nmのバブルポイント孔径を有した。水冷ホイールに接触するフィルム表面は「ホイール」面と称される。多孔性フィルムは、シランおよび酸素プラズマ中での3回の逐次プラズマエッチング処理を通じて親水性にされた。
【0092】
実施例1
図7a、bに従った経皮的剤形は、次のようにして調製された。
【0093】
フェンタニル(19.5g)をメタノール(23.5g)に添加し、全てのフェンタニルが溶解するまで混合した。この溶液に、共重合体(上記共重合体Aからの251.6gのイソオクチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/エルバサイト(Elvacite)(登録商標)1010溶液)を添加して、均一のコーティング調合物が得られるまで混合した。シリコーン剥離ライナー上にコーティング調合物をナイフ被覆した。被覆されたライナーを110°F(43℃)で4分間、185°F(85℃)で4分間、および200°F(93.3℃)で4分間オーブン乾燥させた。得られた乾燥付着量は12.6mg/cm2であった。得られたコーティングは、16.0%のフェンタニルを含有した。乾燥フェンタニル−共重合体コーティングの一時的な保存のために、被覆されたライナーを工程内シリコーン剥離ライナー上にラミネートした。
【0094】
テトラヒドロフラン中で濃度0.2658g/mLのナルトレキソン溶液を調製した。ナルトレキソン溶液を上述の多孔性ポリエチレンフィルムのホイール面に被覆して、125°F(51.7℃)で20分間乾燥させた。得られたフィルムは、3.11mg/cm2のナルトレキソン濃度を有した。
【0095】
次に#5マイヤーロッドを使用して、ナルトレキソン含浸フィルムのホイール面に、アセトン中30%(w/w)のテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフッ化物ターポリマー(ミネソタ州オークデールのジネオン(Dyneon(Oakdale、MN))からのTHV220)のフルオロポリマーコーティングを塗布した。得られたフィルムは、およそ0.15ミル(4μm)の公称乾燥厚を有した。
【0096】
フェンタニルコーティングから工程内シリコーン剥離ライナーを除去して、乾燥コーティングを多孔性ポリエチレンフィルム上記のフルオロポリマーコーティングにラミネートし、マルチラミネート構造体を形成した。
【0097】
得られたマルチラミネート構造体を、3.5cm2および5.0cm2のパッチに転換した。それぞれが0.013cm2の面積である9個のほぼ均一間隔の孔を、各3.5cm2のパッチの全層を通して打ち抜いた。テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各3.5cm2パッチのフルオロポリマーコーティングに対向する多孔性ポリエチレンフィルム面に接着し、面積3.5cm2にトリミングした。それぞれが0.013cm2の面積である15個のほぼ均一間隔の孔を各5.0cm2のパッチの全層を通して打ち抜いた。図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチのフルオロポリマーコーティングに対向する多孔性ポリエチレンフィルム面に接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。
【0098】
上述の試験方法を使用して、ヒト死体皮膚を通したフェンタニルおよびナルトレキソン双方の浸透を測定した。結果を表1および2に示す。上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した。結果を表3に示す。上述の試験方法を使用して機械的分離試験を実施した。結果を表4に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
実施例2
図6a、bに従った経皮的剤形を次のようにして調製した。
【0104】
拮抗薬レザバーを次のようにして調製した。ナルトレキソン(13.55g)を共重合体(上記の共重合体Bからの149.4gの2−エチルヘキシルアクリレート/ジメチルアミノエチルアクリレートメチル四級塩化物/メトキシポリエチレングリコール400アクリレートの溶液)に添加して、均質になるまで混合した。コーティング調合物をシリコーン剥離ライナー上にナイフ被覆した。被覆したライナーを110°F(43℃)で4分間、185°F(85℃)で4分間、200°F(93.3℃)で4分間オーブン乾燥させた。得られた乾燥付着量は14.2mg/cm2であった。
【0105】
乾燥フェンタニル−共重合体コーティングを実施例1で述べるようにして調製した。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥フェンタニル−共重合体コーティングから除去し、乾燥フェンタニル−共重合体コーティングを2.0ミル(51μm)厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)とエチレンビニル酢酸のラミネートフィルム(ミネソタ州セントポールの3M(3M(St.Paul、MN))からのスコッチパック(Scotchpak)(登録商標)9732)のエチレンビニル酢酸側にラミネートした。
【0106】
得られたマルチラミネート構造体を3.5cm2および5.0cm2のパーツに転換した。それぞれが0.013cm2の面積である9個のほぼ均一間隔の孔を各3.5cm2パーツパッチの全層を通して打ち抜いた。それぞれが0.013cm2の面積である15個のほぼ均一間隔の孔を各5.0cm2パーツのパッチの全層を通して打ち抜いた。
【0107】
各マルチラミネート3.5または5.0cm2パーツのPET側を乾燥ナルトレキソンコーティングの露出面にラミネートして、マルチラミネート構造体を形成した。得られたマルチラミネート構造体をそれぞれ3.5または5cm2のパッチに転換した。
【0108】
工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各3.5cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着させ、面積3.5cm2にトリミングした。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。
【0109】
上述の試験方法を使用して、ヒト死体皮膚を通したフェンタニルおよびナルトレキソン双方の浸透を測定した。結果を表1および2に示す。上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した。結果を表3に示す。上述の試験方法を使用して機械的分離試験を実施した。結果を表4に示す。
【0110】
実施例3
図6a、bに従った経皮的剤形を次のようにして調製した。
【0111】
乾燥ナルトレキソンコーティングを次のようにして調製した。ナルトレキソン(14.00g)、アセトン(35.1g)、テトラヒドロフラン(13.1g)、および共重合体(140gの上記のポリ尿素共重合体Cのアセトン中40.1%固形分溶液)を共に加えて均質になるまで混合した。得られた組成物を工程内シリコーン被覆された剥離ライナー上に被覆して、110°F(43℃)で4分間、185°F(85℃)で4分間、200°F(93.3℃)で4分間乾燥させた。得られた乾燥コーティングは20.0%のナルトレキソンを含有した。得られた乾燥付着量はほぼ15.7mg/cm2であった。
【0112】
乾燥フェンタニル−共重合体コーティングを実施例1で述べるようにして調製した。乾燥フェンタニル−共重合体コーティングを2.0ミル(51μm)厚さのポリエチレンテレフタレートとエチレンビニル酢酸のラミネートフィルム(ミネソタ州セントポールの3M(3M(St.Paul、MN))からのスコッチパック(Scotchpak)(登録商標)9732)のポリエチレンテレフタレート側にラミネートした。
【0113】
得られたマルチラミネート構造体を3.5cm2および5.0cm2のパーツに転換した。それぞれが0.013cm2の面積である9個の均一間隔の孔を各3.5cm2パーツのパッチの全層を通して打ち抜いた。それぞれが0.013cm2の面積である15個の均一間隔の孔を各5.0cm2パーツのパッチの全層を通して打ち抜いた。
【0114】
各マルチラミネート3.5または5.0cm2パーツのエチレンビニル酢酸側を乾燥ナルトレキソンコーティングの露出面にラミネートして、マルチラミネート構造体を形成した。得られたマルチラミネート構造体をそれぞれ3.5または5cm2のパッチに転換した。
【0115】
工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各3.5cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着させ、面積3.5cm2にトリミングした。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。
【0116】
上述の試験方法を使用して、ヒト死体皮膚を通したフェンタニルおよびナルトレキソン双方の浸透を測定した。結果を表1および2に示す。上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した。結果を表3に示す。上述の試験方法を使用して機械的分離試験を実施した。結果を表4に示す。
【0117】
実施例4
図1a、bに従った経皮的薬剤送達デバイスを次のようにして調製した。
【0118】
フェンタニル(19.5g)をメタノール(23.5g)に添加して、フェンタニルが溶解するまで混合した。この溶液に、共重合体(上記の共重合体Aからの251.6gのイソオクチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/エルバサイト(Elvacite)(登録商標)1010(57/39/4)溶液)を添加して、均一のコーティング調合物が得られるまで混合した。コーティングダムを使用して接着剤のストリップを作り出し、溝付ナイフを使用してシリコーン剥離ライナー上にコーティング調合物をナイフ被覆した。被覆されたストリップはほぼ5mm幅で、ほぼ1.5mm幅の未被覆領域で隔てられた。被覆したライナーを110°F(43℃)で4分間、185°F(85℃)で4分間、200°F(93.3℃)で4分間オーブン乾燥した。得られた乾燥付着量は、被覆領域でほぼ10.5mg/cm2であった。得られたコーティングは、16.0%のフェンタニルを含有した。乾燥フェンタニル−共重合体コーティングの一時的な保存のために、被覆されたライナーを工程内シリコーン剥離ライナー上にラミネートした。
【0119】
ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを以下の原液から調製した。450.0gの脱イオン水含有するビーカーに、50.0gのポリビニルアルコール(87〜89%の加水分解、分子量124,000〜186,000)を添加して原液Aを調製した。混合物をホットプレート上で加温して、溶液が均質になるまで(ほぼ30分間)絶え間なく撹拌した。4.0gのポリアクリル酸(分子量1,250,000)を196.3gの脱イオン水添加して、均質になるまで撹拌して原液Bを調製した。22.9gのモノラウリン酸グリセリルを37.7gのイソプロピルアルコールおよび16.0gの脱イオン水に添加して、原液Cを調製した。混合物を140°F(60℃)のオーブン内で30分間加熱して、モノラウリン酸グリセリルを溶解した。原液A(305.0g)を原液B(99.8g)と均質になるまで混合した。この溶液に原液C(58.3g)を添加して、均質になるまで混合した。得られた溶液は11%の固形分、および61:4:35のポリビニルアルコール:ポリアクリル酸:モノラウリン酸グリセリルの組成を有した。
【0120】
この溶液をシリコーン被覆された剥離ライナーに未乾燥塗膜厚10ミル(254μm)でナイフ被覆した。被覆したライナーを185°F(85℃)で4分間、225°F(107℃)で6分間オーブン乾燥してPVAフィルムを形成した。得られた乾燥付着量はほぼ2mg/cm2であった。乾燥フェンタニル−共重合体コーティングから工程内シリコーン剥離ライナーを除去して、乾燥コーティングをPVAフィルムにラミネートして、PVA−フェンタニルコーティングラミネートを形成した。
【0121】
実施例2で述べるようにして、拮抗薬レザバー構成要素を調製した。得られた乾燥コーティングは、20.0%のナルトレキソンを含有した。得られた乾燥付着量はほぼ14.2mg/cm2であった。
【0122】
乾燥ナルトレキソンコーティングの露出面をPVA−フェンタニルコーティングラミネートの露出PVA表面にラミネートして、マルチラミネート構造体を形成した。
【0123】
得られたマルチラミネート構造体を3.5cm2および5.0cm2パッチに転換した。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各3.5cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着し、面積3.5cm2にトリミングした。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去し、図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。
【0124】
上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した。結果を表5に示す。上述の試験方法を使用して機械的分離試験を実施した。結果を表6に示す。
【0125】
【表5】

【0126】
【表6】

【0127】
【表7】

【0128】
実施例5
図1a、bに従った経皮的剤形を次のようにして調製した。
【0129】
フェンタニル(10.3g)をメタノール(12.4g)に添加して、全てのフェンタニルが溶解するまで混合した。この溶液に、ラウリン酸メチル(15.0g)および共重合体(上記の共重合体Aからの85.6gのイソオクチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/エルバサイト(Elvacite)(登録商標)1010溶液)を添加して、均一のコーティング調合物が得られるまで混合した。コーティングダムを使用して接着剤のストリップを作り出し、溝付ナイフを使用してシリコーン剥離ライナー上にコーティング調合物をナイフ被覆した。被覆されたストリップはほぼ5mm幅で、ほぼ1.5mm幅の未被覆領域で隔てられた。被覆したライナーを110°F(43℃)で4分間、185°F(85℃)で4分間、200°F(93.3℃)で4分間オーブン乾燥した。得られた乾燥付着量は、被覆領域でほぼ14.1mg/cm2であった。得られたコーティングは、17.1%のフェンタニルを含有した。乾燥フェンタニル−ラウリン酸メチル−共重合体コーティングの一時的な保存のために、被覆されたライナーを工程内シリコーン剥離ライナー上にラミネートした。
【0130】
実施例4で述べるようにして、PVAフィルムを調製した。乾燥フェンタニル−共重合体コーティングから工程内シリコーン剥離ライナーを除去して乾燥コーティングをPVAフィルムにラミネートし、PVA−フェンタニルコーティングラミネートを形成した。
【0131】
実施例2で述べるようにして、拮抗薬レザバー構成要素を調製した。得られた乾燥コーティングは、20.0%のナルトレキソンを含有した。得られた乾燥付着量はほぼ14.2mg/cm2であった。
【0132】
乾燥ナルトレキソンコーティングの露出面をPVA−フェンタニルコーティングラミネートの露出したPVA表面にラミネートしてマルチラミネート構造体を形成した。
【0133】
得られたマルチラミネート構造体を3.5cm2および5.0cm2のパッチに転換した。乾燥ナルトレキソンコーティングから工程内シリコーン剥離ライナーを除去して、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を3.5cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着し、面積3.5cm2にトリミングした。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。
【0134】
上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した。結果を表5に示す。上述の試験方法を使用して機械的分離試験を実施した。結果を表6に示す。
【0135】
実施例6
図1a、bに従った経皮的剤形を次のようにして調製した。
【0136】
実施例4で述べるようにしてPVA−フェンタニルコーティングラミネートを調製した。実施例3で述べるようにして乾燥ナルトレキソンコーティングを調製した。乾燥ナルトレキソンコーティングの露出面をPVA−フェンタニルコーティングラミネートの露出したPVA表面にラミネートして、マルチラミネート構造体を形成した。
【0137】
得られたマルチラミネート構造体を3.5cm2および5.0cm2パッチに転換した。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各3.5cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着し、面積3.5cm2にトリミングした。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。
【0138】
上述の試験方法を使用して、ヒト死体皮膚を通した浸透を測定した。結果を表1に示す。上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した。結果を表2に示す。
【0139】
実施例7
図1a、bに従った経皮的剤形を次のようにして調製した。
【0140】
実施例5で述べるようにしてPVA−フェンタニルコーティングラミネートを調製した。実施例3で述べるようにして乾燥ナルトレキソンコーティングを調製した。乾燥ナルトレキソンコーティングラミネートの露出面をPVA−フェンタニルコーティングの露出したPVA表面にラミネートして、マルチラミネート構造体を形成した。
【0141】
得られたマルチラミネート構造体を3.5cm2および5.0cm2パッチに転換した。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去して、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各3.5cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着し、面積3.5cm2にトリミングした。工程内シリコーン剥離ライナーを乾燥ナルトレキソンコーティングから除去し、図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチの乾燥ナルトレキソンコーティングに接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。
【0142】
上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した。結果を表5に示す。上述の試験方法を使用して機械的分離試験を実施した。結果を表6に示す。
【0143】
実施例8
図1a、bに従った経皮的剤形を次のようにして調製した。
【0144】
テトラヒドロフラン中濃度30.0%(w/w)のナルトレキソン溶液を調製した。ナルトレキソン溶液を上述の多孔性ポリエチレンフィルムのホイール面に被覆して、12分間125°F(51.7℃)で乾燥させた。得られたフィルムは3.2mg/cm2のナルトレキソン濃度を有した。
【0145】
11%の固形分、および61:4:35ポリビニルアルコール:ポリアクリル酸:モノラウリン酸グリセリルの組成を有する溶液を実施例4で述べるようにして調製した。この溶液を上述のナルトレキソン−充填多孔性ポリエチレンフィルムに#12マイヤーロッドで被覆して、140°F(60℃)で10分間オーブン乾燥して、PVA−多孔性ポリエチレンマルチラミネートを調製した。
【0146】
実施例4で述べるようにして、乾燥フェンタニル−共重合体コーティングを調製した。乾燥フェンタニル−共重合体コーティングから工程内シリコーン剥離ライナーを除去して、乾燥コーティングをPVAフィルムにラミネートし、フェンタニル−PVA−多孔性ポリエチレンマルチラミネートを形成した。
【0147】
得られたマルチラミネート構造体を3.5cm2および5.0cm2パッチに転換した。テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各3.5cm2パッチの多孔性ポリエチレンフィルムに接着して、面積3.5cm2にトリミングした。図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチの多孔性ポリエチレンフィルムに接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。
【0148】
上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した。結果を表5に示す。
【0149】
実施例9
図1a、bに従った経皮的剤形を次のようにして調製した。
【0150】
実施例5で述べたようにして、乾燥フェンタニル−ラウリン酸メチル−共重合体コーティングを調製した。
【0151】
テトラヒドロフラン中濃度29.9%(w/w)のナルトレキソン溶液を調製した。ナルトレキソン溶液を上述の多孔性ポリエチレンフィルムのホイール面に被覆して、125°F(51.7℃)で20分間乾燥した。得られたフィルムは2.99mg/cm2のナルトレキソン濃度を有した。
【0152】
11%の固形分および61:4:35ポリビニルアルコール:ポリアクリル酸:モノラウリン酸グリセリルの組成を有する溶液を実施例4で述べるようにして調製した。この溶液を上述のナルトレキソン−充填多孔性ポリエチレンフィルムのホイール面に#12マイヤーロッドで被覆して、140°F(60℃)で10分間オーブン乾燥して、PVA−多孔性ポリエチレンマルチラミネートを調製した。
【0153】
乾燥フェンタニル−ラウリン酸メチル−共重合体コーティングから工程内シリコーン剥離ライナーを除去して、乾燥コーティングをPVAフィルムにラミネートして、フェンタニル−PVA−多孔性ポリエチレンマルチラミネートを形成した。
【0154】
得られたマルチラミネート構造体を3.5cm2および5.0cm2パッチに転換した。テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各3.5cm2パッチの多孔性ポリエチレンフィルムに接着し、面積3.5cm2にトリミングした。図14に示すようにオーバーレイバッキングおよびオーバーレイPSAとして、テガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯を各5.0cm2パッチの多孔性ポリエチレンフィルムに接着した。5.0cm2パッチの縁周辺から5mm伸びるようにテガダーム(Tegaderm)(登録商標)包帯をトリミングした。上述の試験方法を使用して溶剤抽出を測定した結果を表5に示す。上述の試験方法を使用して機械的分離試験を実施した。結果を表6に示す。
【0155】
いくつかの実施態様を参照して、本発明について説明した。前述の詳細な説明および実施例は理解の明確さのためにのみ提供され、不必要な制限は意図されない。本発明の精神と範囲と逸脱することなく、説明した実施態様に多数の変更が可能なことは当業者には明らかである。したがって本発明の範囲はここで述べる組成物および構造の正確な詳細に限定されず、以下の特許請求の範囲によって限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料中に分散した活性薬剤を含んでなる活性薬剤構成要素であって、近位の皮膚接触面および遠位表面、および前記近位と遠位表面との間を通過する少なくとも1つの溝を有している前記活性薬剤構成要素と、
前記活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤構成要素と、
前記活性薬剤構成要素の前記遠位表面と前記逆作用薬剤構成要素との間に挿入されるバリアと
を含んでなる経皮的剤形であって、
前記バリアが水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤に対して浸透性であり、さらに前記バリアが前記溶剤不在下において活性薬剤および逆作用薬剤の拡散に対して不浸透性である経皮的剤形。
【請求項2】
前記溝が空気溝を含んでなる、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項3】
バッキングをさらに含んでなり、前記逆作用薬剤構成要素が前記バリアと前記バッキングとの間に挿入される、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項4】
前記バッキングが連続ポリマーフィルムである、請求項3に記載の経皮的剤形。
【請求項5】
前記バッキングがオーバーレイバッキングである、請求項4に記載の経皮的剤形。
【請求項6】
前記バリアが、水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤に可溶性である、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項7】
前記バリアが水、エタノール、およびそれらの混合物に対して浸透性である、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項8】
前記拮抗薬が麻薬拮抗薬を含んでなる、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項9】
前記逆作用薬剤構成要素が感圧接着剤を含んでなる、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項10】
前記逆作用薬剤構成要素と前記バリアを結合する接着剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項11】
前記活性薬剤構成要素の前記ポリマー材料が、アクリレート感圧接着剤を含んでなる、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項12】
前記剤形が、前記活性薬剤構成要素の前記近位と遠位表面との間を通過する複数の溝を含んでなる、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項13】
前記溝が、水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤に可溶性の材料を含んでなる、請求項12に記載の経皮的剤形。
【請求項14】
前記溝が、水、エタノール、エーテル、およびそれらの混合物よりなる群から選択される溶剤に可溶性のビーズを含んでなる、請求項12に記載の経皮的剤形。
【請求項15】
バッキングをさらに含んでなり、前記逆作用薬剤構成要素が前記バリアと前記バッキングとの間に挿入される、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項16】
前記バッキングが連続ポリマーフィルムを含んでなるオーバーレイバッキングである、請求項3に記載の経皮的剤形。
【請求項17】
前記活性薬剤が麻薬である、請求項1に記載の経皮的剤形。
【請求項18】
前記活性薬剤がフェンタニルである、請求項17に記載の経皮的剤形。
【請求項19】
ポリマー材料および前記ポリマー材料中に分散した活性薬剤を含んでなり、皮膚接触面を有する活性薬剤構成要素と、
前記活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤構成要素と、
活性薬剤および逆作用薬剤の拡散に対して不浸透性である不連続バリアと
を含んでなる、経皮的剤形であって、
前記バリアが前記活性薬剤構成要素と前記逆作用薬剤構成要素との間に挿入され、
前記剤形が前記皮膚接触面と前記逆作用薬剤構成要素との間を通過する少なくとも1つの溝を含んでなる、経皮的剤形。
【請求項20】
前記溝が空気溝を含んでなる、請求項19に記載の経皮的剤形。
【請求項21】
前記バリアが開口部を含んでなるフィルムを含んでなる、請求項19に記載の経皮的剤形。
【請求項22】
前記バリア中の前記開口部が、前記活性薬剤構成要素中の開口部と整列する、請求項21に記載の経皮的剤形。
【請求項23】
前記逆作用薬剤構成要素が、前記バリア中の前記開口部と整列する開口部を含んでなる、請求項22に記載の経皮的剤形。
【請求項24】
前記逆作用薬剤構成要素が多孔性フィルムを含んでなる、請求項19に記載の経皮的剤形。
【請求項25】
前記拮抗薬が麻薬拮抗薬を含んでなる、請求項19に記載の経皮的剤形。
【請求項26】
前記逆作用薬剤構成要素が感圧接着剤を含んでなる、請求項19に記載の経皮的剤形。
【請求項27】
前記活性薬剤構成要素の前記ポリマー材料が、アクリレート感圧接着剤を含んでなる、請求項19に記載の経皮的剤形。
【請求項28】
前記逆作用薬剤構成要素と前記バリアとを結合する接着剤をさらに含んでなる、請求項19に記載の経皮的剤形。
【請求項29】
a)請求項1に記載の経皮的剤形を提供するステップと、
b)前記剤形を所望の治療結果を達成するのに十分な期間、ヒト身体外部に被着するステップと
を含んでなる、濫用抵抗性剤形からの薬剤の経皮的送達の方法。
【請求項30】
a)請求項19に記載の経皮的剤形を提供するステップと、
b)前記剤形を所望の治療結果を達成するのに十分な期間、ヒト身体外部に被着するステップと
を含んでなる、濫用抵抗性剤形からの薬剤の経皮的送達の方法。
【請求項31】
ポリマー材料および前記ポリマー材料中に分散した活性薬剤を含んでなり、皮膚接触面を有する活性薬剤構成要素と、前記活性薬剤に対する拮抗薬を含んでなる逆作用薬剤構成要素と、活性薬剤および逆作用薬剤の拡散に対して不浸透性であり、前記活性薬剤構成要素と前記逆作用薬剤構成要素との間に挿入される不連続バリアとを含んでなる剤形を提供するステップと、
実質的に前記皮膚接触面と前記逆作用薬剤構成要素との間に開放流体連通を提供する、前記活性薬剤構成要素を通過する少なくとも1つの溝を前記剤形中に提供するステップと、
前記剤形を所望の治療結果を達成するのに十分な期間、ヒト身体外部に被着するステップと
を含んでなる、濫用抵抗性剤形からの薬剤の経皮的送達の方法。
【請求項32】
前記剤形を前記ヒト身体外部に被着する前記ステップが、前記剤形を提供するステップの後に続き、前記剤形中に少なくとも1つの溝を提供するステップの後に続く、請求項31に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【公開番号】特開2012−140453(P2012−140453A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−64165(P2012−64165)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2006−507485(P2006−507485)の分割
【原出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】