説明

活性酸素種生成装置

【課題】ポリアニリン等のレドックスポリマーの活性酸素種生成能回復のための再生工程中にも活性酸素種の生成を滞らせることなく、長期安定的に連続して活性酸素種を生成することができる活性酸素種生成装置を得る。
【解決手段】ポリアニリン等のレドックスポリマーを含む基材を有する陰極1と、陽極2と、前記両電極間に水または水分含有物を介在させ、前記陰極と前記陽極間を通電させる電圧印加手段5とを備えた活性酸素種生成装置において、前記陽極は、ポリアニリン等のレドックスポリマーを含む基材を有し、かつ、前記電圧印加手段は、前記陰極および前記陽極に対して通電方向を切り換える通電方向切換手段6を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌、抗ウイルス、防かび、脱臭に有用な活性酸素種を生成する活性酸素種生成装置に関するものである。活性酸素種とは、スーパーオキシド(O2-)、ヒドロキシラジカル(・OH)、過酸化水素(H22)、一重項酸素(12)、オゾン(O3)等、分子状酸素である三重項酸素(32)より活性化された酸素、及びその関連分子を総称する用語である。
【背景技術】
【0002】
従来、活性酸素種を生成する装置として、ポリアニリンを含む導電性基材よりなる陰極部と、他の基材よりなる陽極部を水中に配置し、両電極間を通電させることで活性酸素種を生成させる方法がある。ポリアニリンを陰極部として使用すると、ポリアニリンは還元型となるため、通電方向切換手段等によりポリアニリンを酸化型側へ移行させて基材の導電性を回復させ、活性酸素種生成能を回復させるとしている(例えば、特許文献1参照)。
また、熱交換器のフィン表面に表面皮膜としてポリアニリンを担持し、空気中の水分と接触させることにより活性酸素種を生成させた、脱臭、殺菌機能を有する熱交換器についても同様に、ポリアニリンを担持した基材とは別の基材よりなる対極を設け、通電方向切換手段等により還元型となって導電性の低下したポリアニリンを酸化型側へ移行させ、活性酸素種生成能を回復させるとしているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−299326号公報(図1)
【特許文献2】特開2008−64343号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の方法では、陰極としてポリアニリンを利用して還元型側へ移行し、活性酸素種生成能の低下したポリアニリンを再生させるためには、逆電圧を印加するなどしてポリアニリンを酸化型側へ移行させる必要があった。しかしこのような方法では、ポリアニリンの再生工程中は活性酸素種の効率的な生成を行うことができないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ポリアニリンの活性酸素種生成能回復のための再生工程中にも活性酸素種の生成を滞らせることなく、長期安定的に連続して活性酸素種を生成することができる活性酸素種生成装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る活性酸素種生成装置は、ポリアニリン等のレドックスポリマーを含む基材を有する陰極と、陽極と、前記両電極間に水または水分含有物を介在させ、前記陰極と前記陽極間を通電させる電圧印加手段とを備えた活性酸素種生成装置において、前記陽極は、ポリアニリン等のレドックスポリマーを含む基材を有し、かつ、前記電圧印加手段は、前記陰極および前記陽極に対して通電方向を切り換える通電方向切換手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成することにより、通電により還元型、あるいは酸化型へと構造変化して活性酸素種生成能が低下したポリアニリン等のレドックスポリマーの再生が可能となり、該レドックスポリマーの再生中でも活性酸素種の生成が可能となる。そのため、活性酸素種の連続生成能が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る活性酸素種生成装置の概略構成図である。
【図2】酸化還元反応によるポリアニリンの構造変化を示す図である。
【図3】ポリアニリン等のレドックスポリマーに通電補助材を混合した際の電極基材表面の一部を拡大して示す概念図である。
【図4】ポリアニリンの構造変化と吸光度の変化を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る活性酸素種生成装置の概略構成図である。
【図6】陰極の回転数と過酸化水素濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る活性酸素種生成装置の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る活性酸素種生成装置の構成を模式的に示す概略構成図であり、図2は、ポリアニリンの酸化還元反応による構造変化を示す図である。図3は、ポリアニリン等のレドックスポリマーに通電補助材を混合した際の電極基材表面の一部を拡大して示す概念図である。
本実施の形態に係る活性酸素種生成装置10は、図1に示すように、陰極1と、陽極2と、被処理水3が溜められた水槽4と、陰極1と陽極2間に被処理水3を介在させて両電極間を通電させる電圧印加手段5とを備え、さらにこの電圧印加手段5は、陰極1および陽極2に対して通電方向を正逆に切り換える通電方向切換手段6を備えている。通電方向切換手段6は例えば直流電源の極性を瞬間的に反転させる極性反転スイッチにより構成されているが、図示の構成に限定されるものではない。極性反転方法は押しボタン式、スライド式、ロータリー式を問わない。通電方向切換手段6により通電方向を切り換えると、陰極1は陽極となり、陽極2は陰極となり、再び切り換えれば、各電極はもとの極性に戻る。
【0011】
陰極1および陽極2は、図3に示すように、ポリアニリン等のレドックスポリマー7とこれに加えて通電補助材8を含む基材9より構成されている。レドックスポリマーとしては、ポリアニリン、ポリチオフェン等が好適に使用される。基材9はポリアニリン等のレドックスポリマーを担持できるものであればよく、その材質や形態は特に限定されない。金属、合成樹脂、セラミックス等何でもよい。
【0012】
通電補助材8は、ポリアニリン等のレドックスポリマーに電子を供給するための部材であり、導電性物質からなるものである。通電補助材8としては、カーボンや金属といった導電性材料、あるいは、ポリスチレンスルホン酸のようにポリアニリン等のレドックスポリマーと結合してドーパントとして作用し、ポリアニリン等のレドックスポリマーに導電性を付与する有機高分子材料を含むものである。また、通電補助材8としては、表面抵抗値は10Ω/□以下とポリアニリン等のレドックスポリマーより低く、導電性の良い材料が選ばれる。通電補助材8の形態は粒子状、針状、繊維状、板状とを問わない。特に通電補助材8が粒子状である場合は表面積が大きくなるため、ポリアニリン等のレドックスポリマーとの接触効率が上がり電子の供給をしやすくする。針状や繊維状の場合はポリアニリン等のレドックスポリマーに絡み付きやすくなり上記同様の機能、効果がある。
【0013】
図3には、ポリアニリン等のレドックスポリマー7を粒子状の通電補助材8と混合したレドックスポリマー層を基材9上に成膜した際の概念図を示す。通電補助材8は、レドックスポリマー層に混合状態で含有されている。このようなポリアニリン等のレドックスポリマーを含む基材よりなる電極では、通電補助材8を介して導通するため、ポリアニリン等のレドックスポリマー7が図2に示すような絶縁性のもの(完全還元型)の場合でも、通電補助材8を介してポリアニリン等のレドックスポリマー7に電子を供給できるため、長期連続的な活性酸素種の生成を行うことができる。
【0014】
次に動作について説明する。ここでは、レドックスポリマーとしてポリアニリンを例に説明する。
【0015】
本発明において、陰極1および陽極2はいずれも、ポリアニリン等のレドックスポリマー7を含む基材9より構成されている。ここで、レドックスポリマーとは、電子の授受により酸化型、あるいは還元型といった分子構造の変化が可逆的に起こり得る重合体のことである。例えば、ポリアニリンの場合、図2に示すように還元型から酸化型へ移行する際にポリアニリンの触媒作用により、電子と水中の酸素などが反応してスーパーオキシド(O2-)等の活性酸素種を生成する。この反応は主に陰極表面で起こるものである。
2+PAn(red)→O2-+PAn(ox) 式[1]
【0016】
しかし、通電による時間の経過と共に、陰極1のポリアニリンは還元反応により還元型側へ、陽極2のポリアニリンは酸化反応により酸化型側へと構造変化する。さらに通電を続けると、陰極1のポリアニリンは図2に示すような完全還元型となり、導電性を失い、活性酸素種生成能を失う。
【0017】
そこで、本発明では、通電方向切換手段6により通電方向を切り換えることで、酸化型側へ移行したものは還元型側へ、還元型側へ移行したものは酸化型側へ戻すことを狙ったものである。図2に示すようなポリアニリン等のレドックスポリマー7を含む基材9により構成された陰極1と陽極2を備えた活性酸素種生成装置10において、活性酸素種を安定して連続生成するためには、通電方向切換手段6を具備する電圧印加手段5により陰極1および陽極2に対する通電方向を切り換えて、還元型側へ移行した陰極1のポリアニリンは酸化型側へ、酸化型側へ移行した陽極2のポリアニリンは還元型側へ移行させる必要がある。そのため、電圧印加前の初期状態のポリアニリンは、陰極、及び陽極共に図2に示すような半酸化状態であることが望ましい。
【0018】
活性酸素種の生成は主に、還元型のポリアニリンが酸素と反応することで生成するが、従来の場合、ポリアニリンの活性酸素種生成能回復のための再生工程を実施している間は活性酸素種生成反応が停止するものであった。一方、本発明によれば、陰極1および陽極2がいずれもポリアニリン等のレドックスポリマー7を含む基材9よりなるものであり、かつ、電圧印加手段5が陰極1および陽極2に対して通電方向を切り換える通電方向切換手段6を備えているものであるので、通電方向を切り換えることにより常に還元型のポリアニリンと酸素が反応するという還元反応が生じるため、従来の方法に比べてポリアニリンの再生工程中にも連続的な活性酸素種の生成が可能となる。
【0019】
陽極のポリアニリンは完全酸化型になると溶出し易い状態になる。また、電圧の印加により、陽極のポリアニリンの電子が陰極に供給されて陽極の酸化反応が進む一方、陰極のポリアニリンは還元反応が進むと共に、式[1]の反応により電子が消費されるため、陽極の酸化型側への変化は陰極の還元型側への変化に比べて速く起こり、活性酸素種生成能が低下する原因となる。そのため、ポリアニリンの再生工程のタイミングは陽極のポリアニリンの酸化型側への移行度合いにより決定する必要がある。
【0020】
通電方向を切り換えるタイミングを検出するため、任意の時間電圧を印加し、その際の基材の吸光度を測定してポリアニリンの構造変化を確認した。ポリアニリンは構造変化すると色が変化することが知られているからである。この性質を利用し、基材の吸光度を測定することでポリアニリンの構造変化度合いを調べた。図4はポリアニリンの構造変化と吸光度の変化を示した図である。なお、図4の横軸は波長を表している。
【0021】
透明なPET(ポリエチレンテレフタラート)基材など、ポリアニリン等のレドックスポリマー層を担持できる基材9上にポリアニリン膜を成膜し、電圧−2.4Vにて任意の時間印加したところ、陽極で酸化型側へ構造変化したポリアニリンは、図4に示すように未使用のもの(ピークA)に比べてピークが低波長側へ移行する。すなわち、電圧印加直後では、酸化型Aに示すようにピークが低波長側(ピークB)へ移行し、さらに電圧を印加し続けると、酸化型Bに示すように、ピークCまで移動する。その後さらに電圧の印加を続けると、ピークCの吸光度は徐々に減少する。吸光度の減少が始まると、基材の色も赤紫色から無色へと変化していく。この際、電圧の印加時間が1分多いだけでも、次にこの基材を陰極として用いた際の過酸化水素生成能は初期の半分以下に低下する。
【0022】
陰極で還元型側へ構造変化したポリアニリンは、未使用のものに比べて全体的に吸光度は増加し、低波長側に穏やかなピーク(ピークD)があることが特徴である。この形状(状態)に到達すると、陽極側のポリアニリンのような大きなスペクトル形状の変化はない。基材の色も青色であり、大きな変化はない。
【0023】
陽極のポリアニリンは電圧印加時間が所定の時間以内であれば、通電方向を切り換えて陰極とすることで可逆反応が起こり、ポリアニリンを再生し、かつ、活性酸素種の生成を行うことが可能である。したがって、通電方向を切り換えるタイミングは、前記所定の時間以内であれば良い。すなわち、通電方向切換手段6の切換を時間(例えば、タイマー)で管理する。また、活性酸素種生成装置10が陽極の基材の吸収スペクトル計測手段を具備する場合には、長波長側から低波長側へ移動するピークが、ピークCに到達する前に通電方向を切り換えることで、つまりこのときの吸収スペクトル計測手段の計測信号で通電方向切換手段6の切換を行うことで、より確かなタイミングでの切換が可能となり、ポリアニリンを再生し、かつ、活性酸素種の生成を行うことが可能である。なお、上記の説明では、陽極の基材の吸光度測定値により通電方向の切換を行うようにしたが、陰極の基材の吸光度測定値により通電方向の切換を行うようにしてもよい。すなわち、通電切換手段6は、通電方向の切換が陰極および陽極のいずれか一方の基材の吸光度測定値により管理されていればよい。
【0024】
陰極1、及び陽極2の通電補助材8は、ポリアニリン等のレドックスポリマー7との電子の授受を円滑に進めるために添加するものである。ポリアニリン等のレドックスポリマー7は基材9の表面に塗布して膜状に成形する、あるいは、導電性樹脂の原材料等からなる通電補助材と混合して基材として成形したものでも良い。
【0025】
以上のように、陰極1、及び陽極2がポリアニリン等のレドックスポリマー7を含む基材よりなり、かつ陰極1と陽極2間を通電するための電圧印加手段5が通電方向切換手段6を具備することで、通電により還元型、あるいは酸化型へと構造変化して活性酸素種生成能が低下したポリアニリン等のレドックスポリマー7の再生が可能となり、該再生中でも活性酸素種の生成が可能となるため、従来の方法に比べて活性酸素種の連続生成能が向上するという効果がある。また、通電補助材8を基材9に配合することでさらに活性酸素種の生成の長期安定性が向上するという効果がある。
【0026】
また、通電を停止している間にも、陽極反応により酸化型となったポリアニリン等のレドックスポリマー7は還元型へ、陰極反応により還元型となったポリアニリン等のレドックスポリマー7は酸化型へと構造が変化する反応が起こり、ポリアニリン等のレドックスポリマー7の再生反応が生じる。これは、電極反応により両電極の酸化還元電位がずれたために起こる。この再生反応は陽極が白金等のように、陰極のポリアニリン等レドックスポリマー7より貴なる金属を使用した場合にも同様に生じるが、電圧印加手段5の通電方向切換手段6により通電方向を切り換えた場合に比べて反応速度は遅いため、両極にポリアニリン等レドックスポリマー7を使用した場合のような再生反応中での活性酸素種の生成は期待できない。
【0027】
また、陰極1の表面は電極反応により高pHとなっているため、スケールが結晶化して析出しやすい状態にある。陰極1と陽極2の通電方向を一定のタイミングで切り換えて陰極1を陽極とすれば、その陽極表面では低pHとなるため、スケールが溶解してスケール除去が可能という効果がある。
【0028】
なお、本明細書において使用するその他の主な用語の定義は以下の通りである。
【0029】
ポリアニリン等のレドックスポリマーとは、ポリアニリンやポリチオフェンなどを含めたものであり、化学的重合、または電気的重合と重合方法にかかわらず生成され、酸化、還元状態を可逆的に変化する物質のことである。
【0030】
被処理水とは、水道水、地下水、工業用水等を総称するものであり、飲料水、プール、浴場、海水、種々の工業施設などに供される水である。
【0031】
抗菌とは、滅菌、消毒、殺菌、除菌、抗菌を含むもので、微生物やある物質の発生、生育、増殖を抑制、あるいは死滅させることである。
【0032】
抗ウイルスとは、ウイルスの活動を抑制することをいう。
【0033】
防かびとは、かびの発生、生育、増殖を抑制することをいう。
【0034】
脱臭とは、臭いを発生する化学物質を吸着、洗浄、科学的に分解することで空間から除去することをいう。
【0035】
また、本発明において両電極は必ずしも対向させて配置する必要はない。また、両電極は水槽4内に複数配置してもよく、陰極、陽極の各電極枚数が同じでなくてもよい。さらに、両電極の間には水としての存在だけでなく、各電極に水分が接触するような水分含有物が存在すればよい。
【0036】
実施の形態2.
以上の実施の形態1では、陰極1、及び陽極2が静置された状態であるが、次に図5に示すように陰極1が回転機構を有し、陰極1側で空気中から酸素を取り込むことで活性酸素種の生成を促進する実施の形態を示す。
【0037】
図5は、本発明の実施の形態2に係る活性酸素種生成装置の概要を示すものであり、(a)は概略の断面側面図、(b)は概略の断面正面図である。
本実施の形態の活性酸素種生成装置10Aは、陰極1が回転機構を有する点で実施の形態1の活性酸素種生成装置10と基本的に異なる。陰極1と陽極2は交互に一定間隔で対向して配列され、陰極1を回転できるように中心部に嵌挿した導電性の回転軸11を有する。つまり、陰極1は回転体からなり、水中に浸漬する親水部分と水面上へ突出する突出部分とが回転軸11により交互に反転するようになっている。陽極2は被処理水3と接触するように静置されている。その他の陰極1および陽極2がポリアニリン等のレドックスポリマー7と通電補助材8を含む基材9よりなる点、電圧印加手段5が陰極1および陽極2に対して通電方向を切り換える通電方向切換手段6を備えている点などは実施の形態1と同様である。なお、導電性の回転軸11を陰極1との回転自在な通電部とすることで、配線および通電方法が容易になる。
【0038】
次に、動作について説明する。
本実施の形態の活性酸素種生成装置10Aでは、陰極1の上部を水面上に突出させ、下部を水面下に浸漬し、回転軸11を中心に回転したときに陰極表面に水膜が形成され、該水膜と大気の界面から酸素が取り込まれるので、活性酸素種生成能が増大する。つまり、陰極1が回転することで空気中の酸素を水中に取り込み、陰極1に担持されたポリアニリン等のレドックスポリマー7と反応が促進されるために、活性酸素種の生成が促進されるからである。例えば図6に示すように、回転機構を付与することで回転機構が無い場合に比べて過酸化水素濃度は増加する。
【0039】
通常の通電方向で電圧を印加している間は、陰極1は回転軸11を中心に回転するが、基本的に陽極2は回転を行わない方が良い。これは、陽極2ではポリアニリン等のレドックスポリマー7が酸化型へ移行することと関係する。空気中の酸素とポリアニリン等のレドックスポリマー7が接触すると酸化型への移行が加速する。この反応を抑制するため、陽極2は静止状態であることが好ましい。ただし、通電方向を切り換えることで陽極2が陰極に切り換わり、通常の通電方向で電圧を印加する際の陰極1のポリアニリン等レドックスポリマー7の再生を行う場合に、活性酸素種生成能を維持するためには、陽極2にも回転機構を付与する必要がある。このため、構造上、陽極2も回転軸11を中心に同軸に回転する機構(例えば、陽極2の両端の支持部を回転軸11と同軸に設ける)を有する機構(図示せず)とし、陽極として使用する際には回転を停止させることで陽極2でのポリアニリン等のレドックスポリマー7の酸化反応が促進するのを抑制するような動作を行うことが最も好ましい。
【0040】
以上のように、陰極、及び陽極がポリアニリン等のレドックスポリマー7を含む基材よりなり、かつ陰極と陽極間を通電するための電圧印加手段6が通電方向切換手段6を具備することで、通電により還元型、あるいは酸化型へと構造変化して活性酸素種生成能が低下したポリアニリン等のレドックスポリマー7の再生が可能となり、概再生中も活性酸素種の生成が可能となるため、従来の方法に比べて活性酸素種の連続生成能が向上するという効果がある。また、通電補助材8を基材に配合し、陰極1が回転機構を有することでさらに活性酸素種の生成の長期安定性が向上するだけでなく、陰極1側で空気中の酸素が取り込まれ、陰極1表面での活性酸素種の生成を促進するという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の活用例として、エアコン、加湿機、空気清浄機、除湿機、加湿空気清浄機等の各種空調機器、下水や汚水の水処理機器、水分含有物を保持する部位があり、その部位においてかびやウイルスを含む微生物の繁殖、臭いを発生する化学物質を吸着、あるいは含有する水周り機器へ利用し、抗菌、抗ウイルス、防かび、脱臭を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 陰極、2 陽極、3 被処理水、4 水槽、5 電圧印加手段、6 通電方向切換手段、7 ポリアニリン等のレドックスポリマー、8 通電補助材、9 基材、10、10A 活性酸素種生成装置、11 回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアニリン等のレドックスポリマーを含む基材を有する陰極と、陽極と、前記両電極間に水または水分含有物を介在させ、前記陰極と前記陽極間を通電させる電圧印加手段とを備えた活性酸素種生成装置において、
前記陽極は、ポリアニリン等のレドックスポリマーを含む基材を有し、かつ、前記電圧印加手段は、前記陰極および前記陽極に対して通電方向を切り換える通電方向切換手段を有することを特徴とする活性酸素種生成装置。
【請求項2】
前記陰極および前記陽極は、前記ポリアニリン等のレドックスポリマーに加えて通電補助材を含むことを特徴とする請求項1記載の活性酸素種生成装置。
【請求項3】
前記通電補助材は、前記ポリアニリン等のレドックスポリマーより表面抵抗値の低い良導電性の材料であることを特徴とする請求項2記載の活性酸素種生成装置。
【請求項4】
前記通電補助材は、前記ポリアニリン等のレドックスポリマーのドーパントとなり得る有機高分子材料であることを特徴とする請求項2記載の活性酸素種生成装置。
【請求項5】
前記通電補助材は、粒子状であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の活性酸素種生成装置。
【請求項6】
前記通電補助材は、針状または繊維状であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の活性酸素種生成装置。
【請求項7】
前記通電方向切換手段は、通電方向の切換が時間により管理されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の活性酸素種生成装置。
【請求項8】
前記通電方向切換手段は、通電方向の切換が前記陰極および前記陽極のいずれか一方の基材の吸光度測定値により管理されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の活性酸素種生成装置。
【請求項9】
前記陰極は、回転体からなり、回転により交互に反転する浸水部分と水面上への突出部分とを有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の活性酸素種生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−105972(P2011−105972A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259986(P2009−259986)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】