説明

流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステムおよび方法

【課題】 流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】 本発明の流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステム200は、実質的に平面の層225と、前記層の上に配置された受け入れ部分235と、前記層の下に配置された少なくとも一つの棚230と、前記受け入れ部分の周辺部の内部にあり、前記層を通って延在するホール240と、を有するホルダ205と、スルー・ホール260と、前記受け入れ部分の内部形状に実質的に一致する外部形状とを有するガイド210と、を含み、前記ガイドが前記受け入れ部分の中に受け入れられると、前記ホールと前記スルー・ホールは互いに位置合わせされ、さらに前記ホールと前記スルー・ホールは試験部位と位置合わせされるように配置され、前記少なくとも一つの棚に隣接して配置された電極270をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、比較的小さな体積の流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステムおよび方法に関する。より詳しくは、本発明は、ヒトの涙液のモル浸透圧濃度を測定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライ・アイ症候群(DES)は、乾性角結膜炎(KCS)としても知られ、涙液膜からの水分の減少に起因して発生する症状であり、検眼士に寄せられる最も普通の苦情の一つである。研究によって、DESは、50歳を過ぎた患者の約15%で普通に見られ、罹患率は年齢とともに増加することが分っている。一般に、ドライ・アイは、涙液膜蒸発を増加させるすべての状態によって、または、涙液の生成を減少させるすべての状態によって引き起こされる。例えば、蒸発は、眼が大きい(すなわち、蒸発が起こる表面積が大きい)結果として増加し得る。涙液の生成は、長時間のコンタクト・レンズ着用、レーザ眼球手術、第5神経へのトラウマ、およびある種のウイルス感染等など、角膜知覚を低下させるすべての状態によって減少することもある。
【0003】
DESの治療は、症状の重さに依る。患者によっては、さまざまな人工涙の使用によって軽減を得る。他の患者は、オメガ‐3を含む補助食品を利用する。さらに他の患者は、涙液の排出を止めるために、涙管プラグの挿入に頼る。しかし、効果的な治療は、効果的な診断で始まる。
【0004】
DESを診断するためには、冒された眼の中の涙液のモル浸透圧濃度を測定すると有用である。モル浸透圧濃度は、溶液中の浸透圧活性化学種の濃度の尺度であり、溶液のリットルあたりの溶質のオスモル数(osmoles)で定量的に表すことができる。涙液膜の水分が低下すると、塩濃度および蛋白質濃度が水の量に対して増加し、その結果、モル浸透圧濃度が増加することが知られている。従って、DES患者を診断し、治療するためには、治療にあたる医師が、試料涙液流体のモル浸透圧濃度を定量することが望ましい。
【0005】
モル浸透圧濃度を測定するための現行の技法は、浸透圧測定、凝固点降下分析、蒸気圧測定および電気抵抗測定を含む。一手法では、浸透圧計を用いて、半透膜を通して溶液が及ぼす浸透圧を測定する。浸透圧は、溶液のモル浸透圧濃度に換算することができる。
【0006】
別の手法では、試料流体の凝固点を分析することを含む生体外(エクス・ビボ)技法によって、試料流体のモル浸透圧濃度を測定してもよい。試料流体の凝固点の摂氏0度からの偏移は、試料流体の中の溶質レベルに比例し、モル浸透圧濃度を示す。
【0007】
さらに別の既知の生体外技法では、患者のまぶたの下に濾紙を一枚置いて涙液流体を吸収させる。濾紙を取り外し、露点を測定する装置の中に置く。水の露点に対する露点の低下量を、モル浸透圧濃度の値に変換することができる。
【0008】
最後に、流体試料の電気伝導率を測定することによって、モル浸透圧濃度を測定してもよい。電極をまぶたの下に配置することによって、測定を生体内(イン・ビボ)にしてもよい。あるいは、患者から試料を集め、試料を測定値装置へ移動させることによって、測定を生体外にしてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記で説明した技法のような、モル浸透圧濃度を測定するための既知の技法は、例えば、反射的な反応によって涙が流れること、および流体試料が蒸発することを含む弱点があるため、正確な結果も、信頼できる結果も得られることは滅多にない。涙を採取するときに患者の涙腺が刺激されると、反射的に涙が流れる。刺激によって余分な量の液体が生成され、その結果、誤った読み取り値(例えば高すぎる含水量)が得られることがある。逆に、反射的に出る涙の影響を受けないように非常に少量の試料を採取すると、多くの場合、少量の試料はすぐに蒸発し始め、その結果、誤った読み取り値(例えば低すぎる含水量)が得られることがある。
【0010】
従って、上述したモル浸透圧濃度を測定するための従来の方法における問題および限界を克服する必要が存在する。本発明は、この問題を解決することができる、例えばヒト涙液などの流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステム200であって、実質的に平面の層225と、前記層の上に配置された受け入れ部分235と、前記層の下に配置された少なくとも一つの棚230と、前記受け入れ部分の周辺部の内部にあり、前記層を通って延在するホール240と、を有するホルダ205と、スルー・ホール260と、前記受け入れ部分の内部形状に実質的に一致する外部形状とを有するガイド210とを含み、前記ガイドが前記受け入れ部分の中に受け入れられると、前記ホールと前記スルー・ホールは互いに位置合わせされ、さらに前記ホールと前記スルー・ホールは試験部位と位置合わせされるように配置され、前記少なくとも一つの棚に隣接して配置された電極270をさらに含むシステムが提供される。
【0012】
本発明では、流体のモル浸透圧濃度を測定するための方法であって、実質的に平面の層225と、前記層の上に配置された受け入れ部分235と、前記層の下に配置された少なくとも一つの棚230と、前記受け入れ部分の周辺部内にあり、前記層を通って延在するホール240と、を有するホルダ205を準備するステップを含み、前記ホルダは、前記流体の試料38を受け取るための試験部位36を有するチップ10を受け入れるように構築され、配置され、スルー・ホール260と、前記受け入れ部分の内部形状に実質的に一致する外部形状と、を有するガイド210を準備するステップと、前記ガイドを前記受け入れ部分の中に挿入し、コレクタ215を用いて前記試料を採取し、前記スルー・ホールとホールとを通して前記コレクタを挿入し、前記試料を前記試験部位の上に放出する、ように命令を与えるステップと、をさらに含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による試験チップを示す。
【図2】本発明の一実施形態による測定装置の概略図を示す。
【図3】本発明の一実施形態による試験チップを示す。
【図4】本発明の一実施形態による試験チップを示す。
【図5】本発明の一実施形態によるシステムを示す。
【図6】本発明の一実施形態によるホルダを示す。
【図7】本発明の一実施形態による方法のフロー図を示す。
【図8】本発明の別の一実施形態による方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、流体のモル浸透圧濃度は、流体の少なくとも一つの電気的特性(例えば、抵抗、電気伝導率等)を測定することによって、ナノリットル・スケールで、臨床的に実行可能な方法で測定し、蒸発を少なくすることができる。こうして、本発明の一実施形態を用いて、正確で確実なモル浸透圧濃度測定値を提供し、それによって、病態の診断および治療を容易にすることができる。
【0015】
図1は、本発明のシステムに装着され測定される一実施形態のチップ10を示す。チップ10には、少なくとも二つの回路部分が設けられ、これらの回路部分は、流体で接続されると、単一の回路を形成し、この回路を用いて流体の電気的特性(例えば抵抗、電気伝導率)を測定することができる。次に、測定した電気的特性との既知の関係式によって、流体のモル浸透圧濃度を求めることができる。
【0016】
チップ10は、第1の側縁15、第2の側縁20および上面22を有する。チップ10は、任意の適当なサイズで構築し、配置してよく、任意の適当な材料で構成してよい。一実施形態では、チップ10は、第1の側縁15と第2の側縁20とがそれぞれ7ミリメートルの長さの層状構造体(例えば、複数の個別化された層を積層し、焼結することによって形成されたセラミックのラミネート構造体)で構成される。チップ10は、例えば、ガラスセラミックの6つの層を含み、各層は、シリカ、アルミナ、マグネシア(酸化マグネシウム)およびバインダ(結合材)(例えば有機バインダ)の混合物で構成するとよい。
【0017】
図1に示した一実施形態では、チップ10の上面22の上に2つの回路部分24、26が配置されている。それぞれの回路部分24、26は、導電性材料の複数のライン(配線)28を含む。それぞれの回路部分24、26のライン28は、電極領域30、ブリッジ領域32および試験部位領域34を形成するように配置される。一実施形態では、電極領域の幅「a」は、約1.5ミリメートルであるとよく、試験部位領域の幅「b」は、約2.0ミリメートルであるとよい。それぞれの試験部位領域34は、例えば、100ミクロン未満のギャップ36で離れている。一実施形態では、ギャップは、30ミクロンと50ミクロンとの間である。ギャップ36は、試験部位を構成する。ギャップ36(すなわち試験部位)の上に涙滴などの流体試料38を置くと、2つの回路部分24、26は接続されて一つの回路を形成し、下記で説明するように、本発明のシステムを用いて流体の電気的特性(例えば抵抗、コンダクタンス)を測定することができる。さらに、チップの上面22は、下記で説明する位置決めマーキング39を含んでもよい。
【0018】
導電性材料のライン28は、例えば、金、銀、銅、ニッケル、白金等、およびそれらの複合体など、任意の適当な材料で構成してもよい。一実施形態では、ライン28は、低い電気抵抗と高い耐酸化性とを提供する銅、ニッケルおよびガラスの混合物で構成される。さらに詳しくは、導電性材料は、例えば、体積基準で約56%の銅、約14%のニッケル、および約30%のガラス(例えばガラス・セラミック)の混合物であるとよい。ライン28は、任意の適当な方法で、上面22の上にプリントしてもよく、あるいは堆積してもよい。複数のラインを用いると冗長性が提供され、ラインの一つまたはいくつかが損傷するか、または切断しても、回路を完成することができる。さらに、複数の薄いライン(厚いラインではなく)を用いると、熱膨張係数の不整合に起因する焼結収縮または切断もしくはこれらの両方などの悪影響を回避することによって、製造時のチップ10全体の機械的保全を確実にする。ガラス・セラミック・チップの上にプリントされた銅‐ニッケル‐ガラス・ラインの組み合わせによって、親水性(例えば、水を引きつける)の比較的粗い表面が提供され、従って滑らかな(例えば、親水性でない)デバイスに必要な表面仕上げの必要がなくなる。一実施形態では、個々のチップまたは複数のチップを保護用の真空気密バッグの中にパッケージしてもよい。
【0019】
図2は、流体試料38のモル浸透圧濃度を測定するための測定装置40の概略を示す。一実施形態では、チップ10の電極領域30のそれぞれに、導電性プローブ42a、42bが接続される。例えば、第1のプローブ42a(例えば、ポーゴ・プローブ、ワニクチ・クリップ等)を一方の電極領域30の上に置くか、クリップ止めするか、または滑らせて接触させ、同様に第2のプローブ42bを他方の電極領域30と接触させるとよい。一実施形態では、プローブ42a、42bは、測定デバイス44、ブリッジ45、および電流発生器46にも接続される。例えば、測定デバイス44はrms電圧計を含んでもよく、ブリッジ45は100Kohm(キロオーム)抵抗器を含んでもよく、電流発生器46は信号発生器を含んでもよい。ギャップ36の上に流体試料38が置かれ、回路を閉じると、例えば、発生器46からの100kHz正弦波信号などの電流を回路に流し、当業者には自明のように、流体の少なくとも一つの電気的特性を測定することができる。流体の特定の電気的特性(例えば電気伝導率、抵抗)は、既知の方法で、流体のイオン濃度に直接関連付けられる。イオン濃度は、流体のモル浸透圧濃度に関連付けられるので、少なくとも一つの電気的特性の測定値から、モル浸透圧濃度を求めることができる。
【0020】
一実施形態では、測定装置40は、測定デバイス44からの測定値を表示する表示装置50を含む。例えば、表示装置50は、流体の電気的特性の測定値に対応する数値を表示するLCD表示装置を含むとよい。ユーザは、電気的特性の測定値とモル浸透圧濃度との間の既知の関係式にもとづく参照チャートを利用して、表示された数値をモル浸透圧濃度の値に変換してもよい。任意選択で、電気的特性の測定値をモル浸透圧濃度に自動換算する換算デバイス55を、測定デバイス44と表示装置50との間に配置してもよい。換算デバイス55は、例えば、電気的特性の測定値を受け取り、ルック・アップ・テーブルまたは換算式を利用することによって電気的特性の測定値をモル浸透圧濃度の値に変換し、モル浸透圧濃度の値を表示装置に出力するコンピュータ・プロセッサを含んでもよい。
【0021】
図3および4は、試験チップの代替の一実施形態を示す。図3に示した一実施形態で、チップ10’の上面は2つの回路を有し、それぞれの回路はギャップ36’で分断されたそれぞれの回路部分を有し、ギャップ36’の上に流体試料38’を配置することができる。このようにして、チップの同じ側に複数の試験部位を配置し、それによって、同じチップを用いて複数の測定を行うことができるようにしてもよい。図3のチップの上面の上には、2つの回路(従って、2つの試験部位)を示したが、上面の上に任意の数および構成の回路を配置してもよい。さらに、同じチップの上面(図に示した)と下面(図には示していない)との両方の上に回路(従って試験部位)を配置することも可能である。
【0022】
さらに、図4に示すように、試験部位領域のそれぞれの長さ方向に(既に示した、試験部位領域のそれぞれの長さに対して横向きでなく)ギャップ36”を設けてもよい。こうすれば、より大きな試験部位を提供し、それによって、チップ10”の上に流体試料38”を置くとき、要求される精密さの程度を低くすることができる。
【0023】
図5は、本発明のシステムの一実施形態を示す。この一実施形態では、システム200は、ホルダ205、ガイド210およびコレクタ215を含む。システム200は、上記で説明した任意のチップ10を備えることができる。システム200は、後述するように上記で説明した測定装置40とともに用いることができる。こうすることにより、このシステムを用いて流体のモル浸透圧濃度を測定することができる。
【0024】
一実施形態では、ホルダ205は、チップ10を受け入れるように構築され、配置されたスタンド220を備える。スタンド220は、例えば、全体として平面の層225を含む。層225の下には、チップ10を滑らせて受け入れることができる棚230が配置される。棚230は、略平行に配置された第1および第2の2つの棚を含む。層225の上に、受け入れ構造体235が置かれる。図5に示した実施形態では、受け入れ構造体235は、中心に配置されたホール(穴)を有する、全体として円筒形の壁である。受け入れ構造体の中にホール240が配置され、層225を通って延在する。ホルダ205は、チップ10の基準点(例えば、外部チップ縁15および20、光位置決めマーキング39等)を捕える構成要素を用いて、チップ10をホール240に位置合わせする。ホルダ205は、ホルダを他の装置と位置合わせするための突起部250を含んでもよい。ホルダ205は、任意の適切な材料で作ってもよい。一実施形態では、ホルダ205は、プラスチック材料で構成され、射出成形によって形成される。
【0025】
図5に示したシステムは、ガイド210も備える。ガイド210は、受け入れ構造体235の内部形状に一致する外部形状を有するボディ255を含み、その結果、ガイド210を受け入れ構造体235の中にぴったりと挿入することができる。ボディ255を通ってスルー・ホール260が延在する。ガイド210を受け入れ構造体235の中に受け入れると、スルー・ホール260は、層225の中のホール240と位置合わせされる。ボディ255は、任意の適切な材料で作ってもよい。一実施形態では、ボディは、例えば、ネオプレン、シリコーン等など、比較的柔らかなエラストマで構成される。
【0026】
図5をさらに参照すると、システムは、コレクタ215も備える。一実施形態では、コレクタ215は、マイクロピペットまたは毛細管を含み、試験する流体試料を採取するために用いられる。例えば、当分野で知られているように、マイクロピペットを用いて、毛管作用によって、反射的な涙液の分泌を誘発せずに、ヒトの眼から涙を採取することができる。コレクタは、ガイド210のスルー・ホール260、さらにホルダ205のホール240にも適合するようなサイズにする。
【0027】
システム200の構成部品は、チップ10をホルダ205の中に配置すると、試験部位(例えばギャップ36)をホール240と位置合わせするように、設計される。さらに、ガイド210を受け入れ構造体235の中に挿入すると、スルー・ホール260も試験部位と位置合わせされる。従って、コレクタ215をガイド210の中に挿入すると、試験部位とも位置合わせされる。こうすれば、システム200を用いて、流体試料をコレクタ215から試験部位へ正確に移動させ、流体試料がチップ10の誤った領域(例えば、ギャップ36の上でない)に置かれる可能性を低くすることができる。
【0028】
単一の受け入れ構造体235およびホール240を有するホルダを示し、説明してきたが、ホルダ205は、複数の受け入れ構造体およびホールを有してもよい。すなわち、ホルダ205は、それぞれの受け入れ構造体235およびホール240がチップの上の各試験部位と位置合わせされるように構築し、配置してもよい。さらに、受け入れ構造体の形状は、円筒形に限定されない。
【0029】
一実施形態では、図6に示すように、ホルダ205は、棚230の各々の近くにある2つの電極270を含む。ホルダ205とチップ10とは、チップ10をホルダ205の中に保持すると、それぞれの電極270がチップ10のそれぞれの電極領域30と接触するように、構築し、配置するとよい。電極270は、上記で説明したように、例えば、測定装置40のプローブ42a、42bに対応する。測定装置40の他の要素は、ホルダ205の内部に収容され(例えば一部として)てもよく、またはホルダ205の外部にあってもよい。例えば、ホルダ205および測定装置40は、チップ10を挿入し、コレクタ215を介して試験部位の上へ流体試料を置くと、上記で説明したように、流体のモル浸透圧濃度の値を自動的に表示する単一のハンド・ヘルドまたはデスクトップ・デバイスに一体化してもよい。
【0030】
<使用方法>
図7および8は、本発明の方法の一実施形態のフロー図である。図7および8のステップのいくつかは、クライアント・サーバ接続されたサーバに実装し、実行するか、または、上記で概略を説明したナビゲーションを作り出すユーザ・ワークステーションに動作情報を送って、ユーザ・ワークステーション上で実行してもよい。さらに、本発明の方法の一実施形態は、ハードウェアだけの実施形態、ソフトウェアだけの実施形態、またはハードウェア要素とソフトウェア要素との両方を含む実施形態の形をとってもよい。
【0031】
一実施形態では、本発明の方法は、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含むが、それらに限定されないソフトウェアに実装される。さらに、本発明の一実施形態では、コンピュータまたは任意の命令実行システムによって用いられるか、または接続して用いられるプログラムコードを提供する、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータ・プログラムの形をとってもよい。この説明において、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置またはデバイスによって用いられるか、または接続して用いられるプログラムを収容し、記憶し、通信し、普及し、または輸送することができる任意の装置であってよい。媒体は、電子、磁気、光学、電磁気、赤外または半導体システム(あるいは装置またはデバイス)、あるいは普及媒体であってよい。コンピュータ可読媒体の例は、半導体またはソリッド・ステート・メモリ、磁気テープ、リムーバブル・コンピュータ・ディスケット、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリー・メモリ(ROM)、剛体磁気ディスクおよび光ディスクを含む。現在の光ディスクの例は、コンパクト・ディスク‐リード・オンリー・メモリ(CD‐ROM)、コンパクト・ディスク‐リード/ライト(CD‐R/W)およびDVDを含む。
【0032】
図7は、本発明の一実施形態による第1の方法400を示す。ステップ405で、流体のモル浸透圧濃度を測定する目的で、流体の試料を採取する。当業者には自明のように、例えば、患者(例えばヒト、イヌ、ネコ等)から流体(例えば涙、血液等)を吸引するマイクロピペットまたは毛管を用いて、試料を採取するとよい。
【0033】
ステップ410で、試料を試験部位の上に置く。一実施形態では、これは、試料がチップの上のギャップ36を埋めるように、既に説明したシステム200を用いてチップ10の上に試料を置くことを含む。例えば、チップ10は、ギャップ36をホール240と位置合わせするように、ホルダ205の棚230の上にスライドさせるとよい。次に、ガイド210を受け入れ構造体235の中に挿入するとよい。コレクタをスルー・ホール260の中に挿入して、ホール240を通して延在させる。チップ10またはコレクタ215もしくはこれら両方を損傷しないように、コレクタ215をチップ10と接触させないよう注意する必要がある。
【0034】
ステップ410をさらに参照すると、ステップ405でコレクタ215の中に採取した流体試料を、コレクタから試験部位の上に放出する。一実施形態では、これは、コレクタの中に保持した試料の背後の空気圧を増加することによって実現される。これは、例えば、弾力的な球、空気ポンプ、エア・コンプレッサ等を用いることなど、任意の既知の方法で実現するとよい。空気圧が増加して試料をコレクタ215から押し出す。コレクタは、試験部位と位置合わせされているので、試料は、試験部位の上(例えば、ギャップ36の上)に放出され、それによって回路を完成する。
【0035】
ステップ415で、流体の少なくとも一つの電気的特性を測定する。一実施形態では、これは、上記で説明した測定装置40を用いて実現される。例えば、電流を回路に流し、既知の方法で流体の抵抗(またはコンダクタンス)を測定するとよい。
【0036】
ステップ420で、流体の少なくとも一つの電気的特性の測定値を流体のモル浸透圧濃度の値に換算する。一実施形態では、これは、電気的特性の測定値にルック・アップ・テーブルまたは関係式を適用するマイクロプロセッサを用いて実現される。
【0037】
ステップ425で、モル浸透圧濃度の値が表示される。一実施形態では、値は、LCD、コンピュータ・スクリーンまたは類似の表示装置に表示される。
【0038】
図8は、本発明の一実施形態による第2の方法430を示す。ステップ405’、410’および415’は、第1の方法400のステップ405、410および415と類似の方法で実行するとよい。しかし、第2の方法430では、ステップ440で特性の測定値をモル浸透圧濃度に換算する前に、ステップ435で表示する。例えば、特性の測定値に対応する電圧など、ステップ435で、例えば、特性の測定値を表示する。それから、ステップ440で、例えば、書かれたチャートを参照することによって、ユーザが手動でこの値をモル浸透圧濃度の値に換算する。こうすると、第2の方法430は、自動換算デバイス(例えばマイクロプロセッサ)を用いずに、実施することができる。
【0039】
ヒトの涙液のモル浸透圧濃度を測定することに関して本発明を説明してきたが、本発明は、そのような用途に限定されない。本発明は、例えば血液、尿、汗、血漿、精液等など、その他の流体に対して用いてもよい。さらに、本発明を用いて、ヒトの流体だけでなく、任意の源(例えば飲料水)からの浸透性流体を試験してもよい。
【0040】
本発明を実施形態によって説明してきたが、変更を施し、各請求項の技術思想および範囲内で本発明を実施することができることは、当業者には自明である。
【符号の説明】
【0041】
10、10’、10” チップ
15 第1の側縁
20 第2の側縁
22 上面
24、26 回路部分
28 導電ライン(導電配線)
30 電極領域
32 ブリッジ領域
34 試験部位領域
36、36’、36” ギャップ
38、38’、38” 流体試料
39 光位置決めマーキング
40 測定装置
42a、42b 導電性プローブ
44 測定デバイス
45 ブリッジ
46 電流発生器
50 表示装置
55 換算デバイス
200 システム
205 ホルダ
210 ガイド
215 コレクタ
220 スタンド
225 平面層
230 棚
235 受け入れ構造体
240 ホール
250 突起部
255 ボディ
260 スルー・ホール
270 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステムであって、
実質的に平面の層と、前記層の上に配置された受け入れ部分と、前記層の下に配置された少なくとも一つの棚と、前記受け入れ部分の周辺部の内部にあり、前記層を通って延在するホールと、を有するホルダと、
スルー・ホールと、前記受け入れ部分の内部形状に実質的に一致する外部形状とを有するガイドと、を含み、
前記ガイドが前記受け入れ部分の中に受け入れられると、前記ホールと前記スルー・ホールは互いに位置合わせされ、さらに前記ホールと前記スルー・ホールは試験部位と位置合わせされるように配置され、
前記少なくとも一つの棚に隣接して配置された電極をさらに含む、システム。
【請求項2】
前記電極は、前記試験部位を含むチップの回路の部分と接触するように構築され、配置された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも一つの棚は、第1の棚と第2の棚とを含み、
前記電極は、前記第1の棚に隣接して配置された第1の電極と、前記第2の棚に隣接して配置された第2の電極とを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電極は、第1の電極と第2の電極とを含み、
前記第1の電極と前記第2の電極とに接続され、流体の電気的特性の値を測定するように構築され、配置されたデバイスと、
前記デバイスに接続された表示装置と、をさらに含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
流体試料を採取するためのコレクタをさらに含み、前記コレクタは、前記スルー・ホールと前記ホールとを通って延在するように構築され、配置された、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステムであって、
実質的に平面の層と、前記層の上に配置された受け入れ部分と、前記層の下に配置された少なくとも一つの棚と、前記受け入れ部分の周辺部の内部にあり、前記層を通って延在するホールと、を有するホルダと、
スルー・ホールと、前記受け入れ部分の内部形状に実質的に一致する外部形状とを有するガイドと、を含み、
前記ガイドが前記受け入れ部分の中に受け入れられると、前記ホールと前記スルー・ホールは互いに位置合わせされ、さらに前記ホールと前記スルー・ホールは試験部位と位置合わせされるように配置され、
流体試料を採取するためのコレクタをさらに含み、前記コレクタは、前記スルー・ホールと前記ホールとを通って延在するように構築され、配置された、システム。
【請求項7】
流体のモル浸透圧濃度を測定するためのシステムであって、
実質的に平面の層と、前記層の上に配置された受け入れ部分と、前記層の下に配置された少なくとも一つの棚と、前記受け入れ部分の周辺部の内部にあり、前記層を通って延在するホールと、を有するホルダと、
スルー・ホールと、前記受け入れ部分の内部形状に実質的に一致する外部形状とを有するガイドと、を含み、
前記ガイドが前記受け入れ部分の中に受け入れられると、前記ホールと前記スルー・ホールは互いに位置合わせされ、さらに前記ホールと前記スルー・ホールは試験部位と位置合わせされるように配置され、
前記少なくとも一つの棚に隣接して配置された電極をさらに含み、前記電極は、前記試験部位を含むチップの回路の部分と接触するように構築され、配置され、
前記電極に接続され、流体の電気的特性の値を測定するように構築され、配置されたデバイスと、
前記デバイスに接続された表示装置と、
流体試料を採取するためのコレクタと、をさらに含み、
前記コレクタは、前記スルー・ホールと前記ホールとを通って延在するように構築され、配置された、システム。
【請求項8】
流体のモル浸透圧濃度を測定するための方法であって、
実質的に平面の層と、前記層の上に配置された受け入れ部分と、前記層の下に配置された少なくとも一つの棚と、前記受け入れ部分の周辺部内にあり、前記層を通って延在するホールと、を有するホルダを準備するステップを含み、
前記ホルダは、前記流体の試料を受け取るための試験部位を有するチップを受け入れるように構築され、配置され、
スルー・ホールと、前記受け入れ部分の内部形状に実質的に一致する外部形状と、を有するガイドを準備するステップと、
前記ガイドを前記受け入れ部分の中に挿入し、コレクタを用いて前記試料を採取し、前記スルー・ホールとホールとを通して前記コレクタを挿入し、前記試料を前記試験部位の上に放出する、ように命令を与えるステップと、をさらに含む、方法。
【請求項9】
流体のモル浸透圧濃度を測定するための方法であって、
実質的に平面の層と、前記層の上に配置された受け入れ部分と、前記層の下に配置された少なくとも一つの棚と、前記受け入れ部分の周辺部内にあり、前記層を通って延在するホールと、を有するホルダを準備するステップを含み、
前記ホルダは、前記流体の試料を受け取るための試験部位を有するチップを受け入れるように構築され、配置され、
スルー・ホールと、前記受け入れ部分の内部形状に実質的に一致する外部形状と、を有するガイドを準備するステップと、
前記試験部位を有するチップを準備するステップと、をさらに含み、
前記ホルダは、前記少なくとも一つの棚に隣接して配置された第1の電極および第2の電極を含み、
前記第1の電極および前記第2の電極は、前記試験部位を含むチップの回路の部分と接触し、かつ流体の電気的特性の値を測定するデバイスに接続するように構築され、配置され、
前記デバイスは、測定された前記流体の電気的特性の値と、当該流体の電気的特性の値を変換して得られる前記流体のモル浸透圧濃度とを表示する表示装置に接続される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−37010(P2013−37010A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228505(P2012−228505)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【分割の表示】特願2007−217830(P2007−217830)の分割
【原出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【復代理人】
【識別番号】100134740
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 文雄
【Fターム(参考)】