説明

流体の制御方法

マイクロチャネル内の流体の流れを制御する方法であって、該マイクロチャネルの表面の少なくとも一部が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質から構成されている親水化部位を有しており、(1)親水化部位に光を照射してその表面の対水接触角を低下させ(親水化工程)、(2)対水接触角低下後の親水化部位の対水接触角よりも大きな対水接触角の表面を与える対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料から対水接触角増大物質を放出させ(放出工程)、(3)放出した対水接触角増大物質を親水化部位の表面に接触させ、該表面に対水接触角増大物質を付着させて親水化部位の対水接触角を増大させる(疎水化工程)ことを特徴とするマイクロチャネル内の流体制御方法およびその方法を利用したバルブに関する。これにより、可動部なしでかつ非接触型で容易にマイクロチャネル内の親水化と疎水化を行なうことができる流体の制御方法およびバルブを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体の流れの制御方法、たとえば生体物質の分析などに使用されるラボ・オン・ア・チップ(lab−on−a−chip)などに設けられたマイクロチャネル内の流体を制御する方法、およびこの制御方法を利用した光スイッチングバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ラボ・オン・ア・チップに代表される数センチないし数ミリの超小型の生化学分析デバイス(マイクロデバイス)には、マイクロポンプ、マイクロリアクタ、マイクロ電極 マイクロヒータ、制御回路、スイッチングバルブなどが設けられており、これらのリアクタやリザーバーなどとを連通し、被験試料をリアクタに導入したりリザーバーから試薬や洗浄液などを供給するためにミクロンオーダーの幅のマイクロチャネルが設けられている。
【0003】
分析に用いる液体には、たとえば血液・蛋白・遺伝子などを含む溶液、微生物・動植物細胞などの固体成分を含む溶液、各種化学物質を含む環境水、土壌抽出水など、さらにはそれらの分析に使用する各種の試薬、バッファ液、洗浄水など種々のものがある。
【0004】
また、マイクロチャネルを通る液の流れを制御するためにスイッチングバルブが必要である。そうしたマイクロスイッチングバルブとしては、つぎのものが提案されている。
【0005】
(1)MEMS(Micro Electro Mechanical System)タイプ
空気圧でマイクロチャネルを押しつぶすことにより、流れを遮断する方法。この方法は流体の種類によらず適用可能であるが、集積化には不向きである。
【0006】
(2)圧力差タイプ
マイクロチャネル内に圧力差を設け、流体の流れを制御する方法。この方法はバルブの作製は比較的容易であるが、制御が複雑になる。
【0007】
(3)ゾル・ゲル相転移タイプ(Y Shirasaki et al.,Micro Total Analysis System 2 925−927(2002))
ゾル部分を流体中に混入しておき、レーザー光を局所的に照射することによりゲル化させ流れを制御する方法。この方法は複雑な制御は可能であるが、使用流体にゾルを混入しなければならない。
【0008】
(4)pH感受性ゲルタイプ(D.J.Beebe et al.,Nature 18,404,588(2000))
pHに応じて膨張、収縮し体積が変わるゲルを流路中に配置し、流体のpHを変化することにより流れを制御する方法。この方法は異なるpH感受性ゲルの作成が可能であるため複数方向への流れの制御が可能であるが、流体中のpHを制御することが必要になる。
【0009】
(5)熱感受性樹脂タイプ(T.Saitoh et al.,Analytical Science 18,203(2002))
熱感受性樹脂であるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)で処理して、熱を加えることにより表面の対水接触角を制御する方法である。この方法によれば、表面の対水接触角は32〜33℃以上で接触角約30度、それ以下の温度で70度となる。この方法は、熱を制御手段として使えるものであるが、常にその部位を加熱、冷却により温度調整する必要がある。
【0010】
また、マイクロチャネルの分野とは異なるが、物体の表面を外部からエネルギーを加えて表面の対水接触角を親水性と疎水性に交互にする技術も知られている(特開2001−158606号公報)。この技術は、光触媒性半導体材料(たとえば酸化チタンなど)に光を照射することにより、物体表面を親水化(対水接触角を低下)させたのち、その表面に機械的な刺激(摩擦力)を加えることにより再度疎水化する技術であり、高速で親水性と疎水性とをスイッチングできると記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようにマイクロデバイス中の流体の流れを機械的、光学的、熱的に制御する提案は各種なされてはいるが、いずれも改良の余地があり、必ずしもマイクロデバイスの作製と制御を簡単にするものではない。
【0012】
本発明は、使用する流体の化学的性質を利用し、たとえばマイクロチャネル内の流体の流れを制御する方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明はまた、マイクロチャネル内に容易に設けることができ、しかも制御も容易なバルブを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは分析に使用する流体の親水性度や疎水性度に着目し、その流体の性質を利用して、たとえば流体のマイクロチャネル内での流れを制御することが可能か否かを検討し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち本発明は、流体の流れを制御する方法であって、流路の表面の少なくとも一部を光の照射に応じて対水接触角を変化させる能力を有する物質から構成し、該対水接触角を変化させる物質の対水接触角を制御することで、その表面の対水接触角を変化させ流体の流れを制御することを特徴とする流体制御方法(第1の発明)に関する。
【0016】
かかる第1の発明をマイクロチャネルに具現化した第2の発明は、マイクロチャネル内の流体の流れを制御する方法であって、該マイクロチャネルの表面の少なくとも一部が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質から構成されている親水化部位を有しており、該親水化部位に光を照射してその表面の対水接触角を低下させる(親水化工程)ことを特徴とするマイクロチャネル内の流体制御方法に関する。
【0017】
また本発明は、マイクロチャネル内の流体の流れを制御する方法であって、該マイクロチャネルの表面の少なくとも一部が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質から構成されている親水化部位を有しており、
(1)親水化部位に光を照射してその表面の対水接触角を低下させ(親水化工程)、
(2)対水接触角低下後の親水化部位の対水接触角よりも大きな対水接触角の表面を与える対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料から対水接触角増大物質を放出させ(放出工程)、
(3)放出した対水接触角増大物質を親水化部位の表面に接触させ、該表面に対水接触角増大物質を付着させて親水化部位の対水接触角を増大させる(疎水化工程)ことを特徴とするマイクロチャネル内の流体制御方法(第3の発明)に関する。
【0018】
さらに本発明は、流路中に配設されるバルブであって、該流路の内壁面の一部を光の照射に応じて対水接触角が制御可能な物質で構成し、該対水接触角が制御可能な物質で構成された内壁面の対水接触角を他の内壁面の対水接触角に対して差が出るように制御することにより流体の流路抵抗を制御するバルブに関する(第4の発明)。
【0019】
第4の発明において、対水接触角が制御可能な物質は、親水性と光触媒作用の両者を発現し得る物質であることが好ましく、特に酸化チタンであることが望ましい。
【0020】
かかる第4の発明をマイクロチャネルに具現化した第5の発明は、マイクロチャネル内に配設されるバルブであって、疎水性部位と親水化部位とを有し、該疎水性部位が光または熱を作用させることにより対水接触角増大物質を放出しうる対水接触角制御材料で作製されており、該親水化部位が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質で作製されているマイクロチャネル用バルブである。
【0021】
第3の発明において、(3)の疎水化工程に引き続き、対水接触角増大物質が付着した親水化部位に光を照射して該親水化部位表面の対水接触角を再度低下させる工程(再親水化工程)を実施し、さらに前記(2)〜(4)の工程を繰り返すことによりマイクロチャネル内の流体の流路を交互に切り替えることができる。
【0022】
前記光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質としては、光触媒作用を有する物質、特に酸化チタンが好ましい。
【0023】
対水接触角制御材料から対水接触角増大物質を放出させる手段としては、光照射または加熱手段が好適である。
【0024】
光としては紫外光が好ましく、特にレーザー光の形態であるのが好ましい。水銀ランプにバンドパスフィルターを用いて紫外波長の光のみを取り出し、光ファイバーを使用して該当部位にのみ照射するという方法でもよい。また、光の照射方法としては、たとえば光源の焦点を深度方向に変更できるレンズユニットを採用するときは、焦点を制御するだけで親水化と疎水化を制御できる。
【0025】
さらに、光遮蔽パターンを介して親水化部位の所定の領域に光を選択的に照射することにより、親水性部位と疎水性部位を選択的に設けることもできるし、遮蔽パターンを介して対水接触角制御材料の所定の領域に光または熱を選択的に加えることにより、親水性部位と疎水性部位を選択的に設けることもできる。
【0026】
対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料としては、対水接触角増大物質単独またはそれを含む液体または固体の形態で使用できる。
【0027】
対水接触角制御材料としては、たとえば低分子量の有機ケイ素化合物などの対水接触角増大物質を含むポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0028】
本発明の制御方法を実施する場合、マイクロチャネルの親水化部位以外の部分が対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料で作製されていることが好ましい。
【0029】
第4および第5の発明のバルブは、ラボ・オン・ア・チップなどのマイクロデバイスやマイクロセンサに有用である。
【0030】
本発明において、「親水性」および「疎水性」という用語は、客観的な対水接触角の数値により規定しているものではなく相対的な概念として使用しており、対水接触角により絶対的に解釈してはならない。すなわち、本発明の親水化工程前の状態および疎水化処理工程後の状態を「疎水性」とし、親水化工程後、すなわち疎水化処理工程前の状態を「親水性」とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の発明を適用するマイクロデバイスの模式的部分平面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】本発明の第3の発明の工程を説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明の第3の発明の別の実施形態を説明するための断面図である。
【図5】実施例2で用いた試験用マイクロデバイスのマイクロチャネルを説明するための模式的平面図である。
【図6】実施例3で測定した紫外線の照射時間に対する対水接触角の変化を示すグラフである。
【図7】実施例4で測定した紫外線の照射時間に対する対水接触角の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の第1の制御方法をマイクロチャネルに具現化した場合(すなわち第2の発明)について、図面により説明する。図1はマイクロデバイス1の概略部分平面図であり、リアクタ2とバッファ溜3とそれらを連通するマイクロチャネル4が設けられている。マイクロチャネル4はT字型もしくはY字形をしており、リアクタ2と連通するチャネル4aとバッファ溜3と連通するチャネル4bとそれらのチャネルと連通するチャネル4cとから構成されている。試料流体は図面上側から傾斜により供給できるように設計されている。マイクロチャネル4aおよび4bには光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質(対水接触角低下物質)からなる表面層5aおよび5bがそれぞれ設けられている。
【0033】
図2は図1のX−X線断面図であり、表面層5aおよび5bはマイクロチャネル4の一部を構成している。
【0034】
ここで、マイクロデバイス1本体は通常ガラスで作製されており、親水性である。対水接触角低下物質で構成されている表面層5aおよび5bは光を照射する(親水化処理)前は疎水性である。バッファ溜3には親水性のバッファが貯留されている。
【0035】
このような状態において、マイクロチャネル4cから流れてきた親水性の流体は対水接触角が大きな疎水性表面層5aおよび5bで表面張力の作用により通過を阻止される。バッファも表面層5bでチャネル4aへの流入が阻止されている。
【0036】
そこで親水性の流体をリアクタ2に供給するケースを想定してみると、流体がマイクロチャネル4に存在しない状態で、対水接触角低下物質からなる疎水性表面層5aに光を照射し、表面層5aを親水性にしておく。そうすると、チャネル4cを通ってきた親水性の流体は疎水性の表面層5bによりバッファ溜3方向の流入は阻止されるが、チャネル4aに設けられた表面層5aは親水性になっているので、抵抗なく通過し、リアクタ2に流入する。その後、バッファをリアクタ2に供給するためには、表面層5bを光照射し、親水性にすればよい。
【0037】
光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質(対水接触角低下物質)としては、たとえば特許第3756474号明細書や特許第3865065号明細書に記載されているような光エネルギーにより親水化する光触媒性半導体物質があげられる。好ましい光触媒性半導体物質としては、たとえばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、酸化第二鉄、チタン酸ストロンチウムなどがあげられる。これらのうち、親水化処理が容易な点から酸化チタン、特にアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
【0038】
対水接触角低下物質の表面層を形成する方法としては、たとえば特許第3756474号明細書や特許第3865065号明細書に記載されているようなシリカやシリコーン樹脂などのバインダーに分散させる方法、化学蒸着法、ゾルゲル法などが採用できる。
【0039】
照射する光としては、紫外線(波長200〜420nm)などが例示でき、使用する波長および強度は対水接触角増大物質および後述する対水接触角制御材料との関係で適宜選択するが、特に対水接触角増大物質の放出速度や装置化の容易性の点から紫外線が好ましい。この紫外線は紫外線ランプや水銀ランプからの照射でもよいし、レーザー発生装置を用いてレーザー光の形態で照射してもよい。
【0040】
親水性の程度は、疎水化後の対水接触角や使用目的などにより選択すればよいが、目安としては対水接触角として30度以下、さらには20度以下、特に10度以下が好ましい。
【0041】
第1の発明はこうしたマイクロチャネル内の流体の制御に限らず、各種のデバイスの流路内を流れる流体の制御に利用できる。
【0042】
また、第2の発明において、親水化部位に照射する光を光遮蔽パターンを介して行なうことにより、親水化部位の所定の領域のみに光を照射し、親水化することができる。すなわち、マイクロチャネル全体を親水化部位とし、光遮蔽パターンを用いて所定の部分のみを親水化して流体の流れを制御することも可能である。
【0043】
このように本発明の第1および第2の発明によれば、光を照射するだけで、マイクロチャネル内の流体の制御を行なうことができる。
【0044】
本発明の第3の発明は、第2の発明と同様な構成のマイクロチャネルにおいて、前記の親水化工程を施して親水化した表面層を疎水化する方法である。
【0045】
すなわち、マイクロチャネル内の流体の流れを制御する方法であって、該マイクロチャネルの表面の少なくとも一部が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質から構成されている親水化部位を有しており、
(1)親水化部位に光を照射してその表面の対水接触角を低下させ(親水化工程)、
(2)対水接触角低下後の親水化部位の対水接触角よりも大きな対水接触角の表面を与える対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料から対水接触角増大物質を放出させ(放出工程)、
(3)放出した対水接触角増大物質を親水化部位の表面に接触させ、該表面に対水接触角増大物質を付着させて親水化部位の対水接触角を増大させる(疎水化工程)ことを特徴とするマイクロチャネル内の流体制御方法に関する。
【0046】
第3の発明における放出工程(2)では、物体の親水性表面の対水接触角よりも大きな対水接触角の表面を与える対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料を使用する。
【0047】
放出工程(2)で使用する対水接触角増大物質は、物体の親水性表面の対水接触角よりも大きな対水接触角の表面を与えるものであれば特に制限されず、有機物質でも無機物質でもよく、また高分子量物質でも低分子量物質でもよく、液体または固体でもよい。また、増大させる対水接触角の程度(対水接触角増大物質が与える表面の対水接触角)も被処理物体の表面の対水接触角や使用目的で適宜選定すればよく、相対的なものである。
【0048】
この対水接触角増大物質により増大する対水接触角は特に制限されないが、少なくとも5度、好ましくは20度、さらには40度増大させる物質を選択することが、親水性と疎水性の区分けが明確になることから望ましい。
【0049】
この対水接触角増大物質を含み、かつ対水接触角増大物質を放出させ得る能力を有する材料が対水接触角制御材料である。かかる対水接触角制御材料も対水接触角増大物質の物性との関係で適宜選択する。対水接触角制御材料も有機材料でも無機材料でもよく、また液体でも固体でもよい。
【0050】
対水接触角制御材料中の対水接触角増大物質の量は、対水接触角増大物質の種類、放出の容易さや放出方法などのより異なり、適宜選択すればよい。
【0051】
対水接触角制御材料から対水接触角増大物質を放出させる方法としては特に制限はなく、振動を与える方法や圧力を与える方法、熱を与える方法などの物理的方法;化学反応による方法や抽出による方法などの化学的方法;光や電磁波を照射する光学的方法などが採用される。特に好ましい放出方法は、エネルギーを加える方法である。
【0052】
加えるエネルギーとしては、非接触で加えることが可能なことから、光エネルギー、熱エネルギーまたは電磁波エネルギー(電子線も含む)が好ましい。
【0053】
光としては、紫外線(波長200〜420nm)が例示でき、使用する波長および強度は対水接触角増大物質および対水接触角制御材料との関係で適宜選択するが、特に対水接触角増大物質の放出速度や装置化の容易性の点から紫外線が好ましい。この紫外線は紫外線ランプや水銀ランプからの照射でもよいし、レーザー発生装置を用いてレーザー光の形態で照射してもよい。
【0054】
熱としては、各種の熱源から発せられるものが使用でき、また赤外線の照射によって発生させることも可能である。さらに熱源を対水接触角制御材料中に埋設してもよい。加熱温度や時間は対水接触角増大物質および対水接触角制御材料との関係で適宜選択すればよい。
【0055】
電磁波としては、マイクロ波、電子線、γ線、X線などが例示できる。これらは、熱の発生を促したり、分子運動を励起したりすることにより、対水接触角増大物質を放出させる。
【0056】
放出された対水接触角増大物質はつぎの疎水化工程(3)で物体の親水性表面と接触させられ、該表面に付着することにより疎水化(対水接触角の増大)する。
【0057】
接触させる方法は特に制限されず、拡散、対流などの自然現象を利用してもよいし、強制的に流動させてもよい。また、対水接触角増大物質がイオン化していれば、電圧をかけてもよい。接触時間は使用するエネルギー印加方法や材料、物質、接触方法などにより適宜選択すればよい。
【0058】
付着量や付着状態も、使用目的や物体の種類、対水接触角増大物質の種類、量などによって異なり一概に言えないが、物体の親水性表面を全て被覆してもよいし、部分的に被覆している状態でもよい。
【0059】
第3の発明の疎水化工程(3)に引き続き、対水接触角増大物質が付着した親水化部位に光を照射して該親水化部位表面の対水接触角を再度低下させる工程(再親水化工程)(4)を実施し、さらに前記(2)〜(4)の工程を繰り返すことによりマイクロチャネル内の流体の流路を交互に切り替えることができる(スイッチング機能)。マイクロチャネルの構成材料としては、有機材料では、たとえばシリコーン樹脂(たとえばポリオルガノシロキサンなど)、アクリル樹脂(たとえばポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなど)、ポリスチレン、ポリオレフィン(たとえばポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネト(たとえばポリイソプロピリデンジフェニルカーボネートなど)、フッ素樹脂(たとえばポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリヘキサメチレンアジパミドなどの樹脂やシリコーンゴム、フッ素ゴムなどのエラストマーなどが、無機材料では、たとえばガラス、石英、アルミナ、ジルコニアなどがあげられる。
【0060】
対水接触角増大物質の非限定的な具体例としては、有機物質では、たとえばジメチルビニル基で末端封止されたジメチルシロキサン(68083−19−2。CAS番号。以下同様)、テトラキス(トリメチルシリルオキシ)シラン(3555−47−3)、トリメチルシリル基で末端封止されたジメチルシロキサンとメチルハイドロシロキサン共縮合体(68037−59−2)などの有機ケイ素化合物;エチレングリコール(107−21−1)、カテコール(120−80−9)、イソ吉草酸アルデヒド(590−86−3)などの1分子内に親水基と疎水基を有する有機化合物などがあげられる。
【0061】
対水接触角制御材料の非限定的な具体例としては、有機物質では、たとえばポリジメチルシロキサンなどの有機ケイ素化合物などがあげられる。
【0062】
これらは、使用目的、使用条件などによって適宜選択し、組み合わせて使用すればよい。
【0063】
以下、対水接触角増大物質として疎水性のオルガノシランを用い、対水接触角制御材料としてポリジメチルシロキサン(PDMS)を使用し、エネルギーとして紫外線を使用した場合の第3の発明の実施態様を図3を参照しながら説明するが、本発明はかかる実施態様に限定されるものではなく、材料、物質、印加エネルギーなどを他のものに置き換えても、本発明の思想に従って構成すれば実施可能である。
【0064】
図3は、親水化工程(図3(a))、放出工程(図3(b))、疎水化工程(図3(c))および再親水化工程(図3(d))を模式的に示す工程図である。
【0065】
図3(a)において、マイクロデバイス1は、対水接触角増大物質(オルガノシラン)8を含む対水接触角制御材料(PDMS)7と親水性表面5aが形成されているガラス基材10とから構成され、それらによりマイクロチャネル4a〜cが形成されている。
【0066】
図3(a)は第2の発明で説明した親水化工程(1)の説明図であり、ガラス製の基材10に形成されている酸化チタン6からなる疎水性の表面層5aに紫外線を照射し、表面層5aを親水化する。紫外線の照射は対水接触角制御材料(PDMS)7から対水接触角増大物質8は放出されないように、ガラス基材10側から照射することが望ましい。
【0067】
放出工程(2)はPDMSにエネルギーを加えることにより開始される。加えるエネルギーは特に制限されず、オルガノシランが放出され得るだけのエネルギーを加えられるものであればよい。好ましくは光、熱、電磁波エネルギーである。制御のしやすさから光エネルギー、特に紫外線が好ましい。
【0068】
エネルギーが加えられた対水接触角制御材料(PDMS)7からはオルガノシラン8が放出されてくる。放出されたオルガノシランは酸化チタンを含む親水化処理された表面層5aに接触し、付着し始める。そして疎水性付着層9を形成していく(図3(b))。
【0069】
最終的に図3(c)に示すように表面層5aの表面が疎水性のオルガノシラン付着層9で部分的または全部が覆われ、表面層5aの表面を疎水性にする(疎水化工程の完了)。
【0070】
図3においては、対水接触角制御材料7と表面層5aを対面させるように配置したが、対水接触角制御材料7と表面層5a(または5b)とを対面させずに位置をずらして配置してもよい。この場合、放出工程(2)と疎水化工程(3)は別の場所で独立して行なうこともできる。したがって、放出工程(2)はヒーターや赤外線などを用いて加熱することによっても可能になる。また、対水接触角制御材料7として液状の材料も使用できる。
【0071】
この段階で初期状態(疎水性)→親水化工程(親水性)→疎水化工程(疎水性)が達成できる。このサイクルを循環させるには、疎水化工程後に再度親水化工程を施せばよい。
【0072】
疎水化された物体の表面を再度親水化するには、図3(d)に示すように物体の表面層5a中の酸化チタン6に、PDMSにエネルギーが加わらないようにガラス基材10側から光エネルギー(紫外線を照射)を加えて光触媒作用を発揮させる。酸化チタン6の触媒作用は光分解作用であり、オルガノシラン付着層9を迅速に分解して取り除き、表面層5aを親水性の状態に戻す。
【0073】
なお光エネルギーの照射方法として焦点を深度方向に制御できる照射法を採用するときは、レーザーの焦点を表面層5aに合わすことができるので、親水化工程および再親水化工程において、PDMS側から表面層5aに焦点を合わせて照射してもよい。
【0074】
再親水化された表面層5aに対し、図3(b)ついで図3(c)の工程を施すと再度疎水化を実施できる。表面層5aの疎水化は対水接触角増大物質の放出がなくなるまで、繰返し可能である。
【0075】
光の照射や加熱を選択的に行ない、選択的に疎水性領域を形成させることもできる。その手段として、たとえば遮蔽パターンを使用する方法が例示できる。たとえば、対水接触角制御材料(たとえばPDMSシート)上に遮蔽パターンを載置し、疎水化が必要な部分のみに光または熱を加えてその部分のPDMSシートから対水接触角増大物質(たとえばオルガノシラン)を選択的に放出させ、親水性表面層を選択的に疎水化することもできる。
【0076】
第3の発明の別の実施形態として、光エネルギーを加える領域を交互に変えることにより、スイッチング作用を果たさせることもできる。
【0077】
すなわち、図4に示すように、図2においてマイクロデバイス1の上面を対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料7で構成する。図3で示す実施形態では親水化のための紫外線照射をガラス基材10の側から行なったが、この実施形態では対水接触角制御材料7側から紫外線を、好ましくはレーザー光として領域Aのみに照射する。照射された紫外線は対水接触角制御材料7から対水接触角増大物質8を放出すると共に表面層5aの触媒活性を活性化させるので、表面層5aに付着した対水接触角増大物質は直ちに分解され、表面層5aは親水化される。一方、紫外線が照射されていない表面層5bにも放出された対水接触角増大物質8は到達するが、表面層5bの触媒活性は活性化されていないので、そのまま付着し、表面層5bの疎水性をさらに高める。その結果、表面層5aと表面層5bの耐水接触角の差はさらに大きくなり、流体の流路の選択性が高くなる。
【0078】
ついで、領域Bに紫外線を選択的に照射すると、表面層5bの触媒活性が活性化され、上記と同様に対水接触角増大物質8を分解し、親水化される。一方、表面層5aは紫外線が照射されていないので触媒活性は活性化されておらず、領域Bの対水接触角制御材料7から発生した対水接触角増大物質8がそのまま付着し、表面を疎水化する。その結果、表面層5bが親水性に、表面層5aが疎水性となり、流体の流路の切り替えが行なわれる(スイッチング機能)。
【0079】
もちろん、領域Aに再度紫外線を照射することにより、疎水化された表面層5aを親水化する(同時に、表面層5bを疎水化する)こともできる。
【0080】
この実施形態は、表面層5aのみをみると、親水化工程(1)、(領域Bからの)放出工程(2)および疎水化工程(3)からなり、さらに再親水化工程(4)を施してもよいという第3の発明が実施されているといえる。
【0081】
ただし、照射時間が長すぎると対水接触角増大物質8の放出量が表面層5a、5bの分解能を上回ってしまうことがあるので、比較的短時間、たとえば1箇所での照射時間(min./spot)を0.5〜1.5min./spotとすることがスイッチング機能が向上することから好ましい。
【0082】
第3の発明によれば、マイクロチャネル内の特定部分に対し親水化と疎水化を交互に繰返し制御でき、いわゆるスイッチング機能を果たすことができ、たとえばスイッチングバルブなどの素子や流体の流れ方向や流量などの制御方法として有用である。
【0083】
本発明の第4の発明であるバルブは、第1の制御方法を利用したバルブに関する発明であり、流路中に配設されるバルブであって、該流路の内壁面の一部を光の照射に応じて対水接触角が制御可能な物質で構成し、該対水接触角が制御可能な物質で構成された内壁面の対水接触角を他の内壁面の対水接触角に対して差が出るように制御することにより流体の流路抵抗を制御するバルブに関する。
【0084】
本発明の第5の発明は、第3の発明の制御方法を実現したマイクロチャネル内に配設されるバルブであって、疎水性部位と親水化部位とを有し、該疎水性部位が光または熱を作用させることにより対水接触角増大物質を放出しうる対水接触角制御材料で作製されており、該親水化部位が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質で作製されているマイクロチャネルバルブである。
【0085】
第5の発明のバルブの基本構造は図3(a)または図4に示すとおりであり、この構造を採るときは図1に示すようにスイッチング機能を有するバルブとして機能する。
【0086】
かかる第4および第5のバルブは、図1で説明したようなマイクロデバイスのバルブとして、あるいはマイクロセンサのバルブとして有用である。
【実施例】
【0087】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
実施例1
石英ガラス基板に酸化チタンを厚さ500nmに蒸着して酸化チタンコート石英ガラス基板を作製した。この酸化チタンコート表面の対水接触角は70度であった。ついで、この基板をポリスチレン製のシャーレに封入し、室温(25℃)にて紫外線ランプ(Spectronics corp.製のSpectroline ENF280C)により紫外線(波長254nm光源8Wのブラックライト)を10分間照射し、酸化チタンコート表面の対水接触角を測定したところ、5度以下と大きく対水接触角が低下し、親水性になっていた。
【0089】
対水接触角は接触角計(協和界面科学(株)製の接触角計CA−A)により測定する。
【0090】
実施例2
石英ガラス基板に酸化チタンを厚さ500nmに蒸着して酸化チタンコート石英ガラス基板上にマイクロチャネル(幅400μm、深さ32μm)をT字型に形成したPDMSを接着して、図5に示す試験用のマイクロデバイスを作製した。図5は概略平面図であり、流路の全面が疎水性の酸化チタンコートされている。
【0091】
PDMSとしては、つぎのA液とB液とからなる2液型シリコーンエラストマー組成物(ダウ・コーニング社製のSYLGARD184)をA:Bが10:1(重量比)で混合し、70℃にて1時間処理して作製した。
【0092】
A液:A−1成分:ジメチルビニル基で末端封止されたジメチルシロキサン、
A−2成分:ジメチルビニル化およびトリメチル化されたシリカ
A−3成分:テトラキス(トリメチルシリルオキシ)シラン
B液:B−1成分:トリメチルシリル基で末端封止されたジメチルシロキサンとメチルハイドロシロキサン共縮合体
B−2成分:2,4,6,8−テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン
B−3成分:ジメチルビニル化およびトリメチル化されたシリカ(A−2成分と同じ)
B−4成分:ジメチルビニル基で末端封止されたジメチルシロキサン(A−1成分と同じ)
【0093】
この試験用マイクロデバイスに、チャネル4c側から青色に着色された水をマイクロシリンジで50μl/時となるように注入したところ、水はチャネル4cからチャネル4aおよびチャネル4bに流れて行った。
【0094】
水を抜き乾燥した後、図中の斜線の部分を波長325nmの紫外線レーザー光(He−Cdレーザー)で1分間流路に沿って照射した。ついで、チャネル4c側から青色に着色された水をマイクロシリンジで50μl/時となるように注入したところ、水はチャネル4cからチャネル4aに約8mm/sの流量で流れて行き、スイッチング機能が果たされていることを確認した。
【0095】
実施例3
つぎの4つの基板上にそれぞれ、2mmの距離で紫外線(波長254nm。光源:8Wのブラックライト)を照射した。照射開始から経時的に各基板の表面の対水接触角を測定した。その結果を図6に示す。
【0096】
基板1:酸化チタンコート石英ガラス(対水接触角:70度)
基板2:1%Crドープ酸化チタンコート石英ガラス(対水接触角:95度)
基板3:5%Crドープ酸化チタンコート石英ガラス(対水接触角:75度)
基板4:TiO/SrTiO(対水接触角:60度)
【0097】
図6に示すように、酸化チタンコート石英ガラス(基板1:□)およびTiO/SrTiO(基板4:△)の親水化の速度が、1%Crドープ酸化チタンコート石英ガラス(基板2:○)および5%Crドープ酸化チタンコート石英ガラス(基板3:◇)よりも極めて速いことがわかる。
【0098】
実施例4
厚さ3mm、7mmおよび18mmのPDMSシート(実施例2で用いたシリコーンエラストマー組成物をシートにしたもの)を用い、スペーサ(1mm)を介して酸化チタンコート石英ガラス基板上に載置し、PDMSシートに紫外線(波長254nm。光源:8Wのブラックライト)を照射した。照射開始から経時的に各基板の表面の対水接触角を測定した。その結果を図7に示す。
【0099】
図7に示すように、いずれのPDMSシートでも基板の表面の対水接触角を約53度まで増大させたが、その速度は3mm厚のものが最大であった。
【0100】
なお、スペーサとして25mmのものを用いて同様に紫外線を厚さ3mmのPDMSシートに照射したところ、基板の表面は依然として親水性を維持していた。
【0101】
実施例5
親水性表面を有する板状材料1を直径90mmポリスチレンシャーレに入れ、同じシャーレに対水接触角制御材料が100μl入った小さな容器を配置し、シャーレに蓋をした。このシャーレ全体に室温(25℃)にて紫外線ランプにより紫外線(波長254nm)を30分間照射した後、板状材料を取り出し、上面の対水接触角を接触角計により測定した。結果を表1に示す。
【0102】
なお使用した板状材料1は石英基板に酸化チタンを厚さ500nmに蒸着した酸化チタンコート石英基板に室温(25℃)にて紫外線ランプ(Spectronics corp.製のSpectroline ENF280C)により紫外線(波長254nm)を10分間照射して酸化チタンコート表面を親水化したもの(対水接触角5度以下)である。
【0103】
【表1】

【0104】
実施例6
実施例2で作製した図5に示す試験用のマイクロデバイスの図中の斜線の部分を波長325nmの紫外線レーザー光(He−Cdレーザー)で1分間流路に沿って1min./spotの速度で照射し、チャネル4cと4aを親水化した。ついで、チャネル4c側から青色に着色された超純水をマイクロシリンジで50μl/時となるように注入したところ、超純水はチャネル4cからチャネル4aに約8mm/sの流量(V)で流れ、チャネル4bへの流量(V)はゼロであった。
【0105】
つぎに水を抜き乾燥した後、チャネル4cと4bに対して、上記と同様の条件で紫外線レーザー光を照射して、チャネル4cと4bを親水化した後、チャネル4c側から青色に着色された超純水をマイクロシリンジで50μl/時となるように注入し、チャネル4a側に流れる超純水の量(V)とチャネル4b側に流れる超純水の量(V)を画像分析により算出し、V/Vの比を求めたところ37であった。この結果は、注入した超純水の97%が親水化されたチャネル4bに流れたことを示しており、スイッチング機能が達成されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、可動部なしでかつ非接触型で容易にマイクロチャネル内の親水化と疎水化を行なうことができ、必要なときに必要な量の流体を供給できる制御方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れを制御する方法であって、流路の表面の少なくとも一部を光の照射に応じて対水接触角を変化させる能力を有する物質から構成し、該対水接触角を変化させる物質の対水接触角を制御することで、その表面の対水接触角を変化させ流体の流れを制御することを特徴とする流体制御方法。
【請求項2】
マイクロチャネル内の流体の流れを制御する方法であって、該マイクロチャネルの表面の少なくとも一部が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質から構成されている親水化部位を有しており、該親水化部位に光を照射してその表面の対水接触角を低下させることを特徴とするマイクロチャネル内の流体制御方法。
【請求項3】
マイクロチャネル内の流体の流れを制御する方法であって、該マイクロチャネルの表面の少なくとも一部が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質から構成されている親水化部位を有しており、
(1)該親水化部位に光を照射してその表面の対水接触角を低下させ、
(2)対水接触角低下後の親水化部位の対水接触角よりも大きな対水接触角の表面を与える対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料から対水接触角増大物質を放出させ、
(3)放出した対水接触角増大物質を親水化部位の表面に接触させ、該表面に対水接触角増大物質を付着させて親水化部位の対水接触角を増大させる
ことを特徴とするマイクロチャネル内の流体制御方法。
【請求項4】
前記(3)に引き続き、(4)対水接触角増大物質が付着した親水化部位に光を照射して該親水化部位表面の対水接触角を再度低下させる請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記(2)〜(4)を繰り返すことによりマイクロチャネル内の流体の流路を交互に切り替える請求項4記載の方法。
【請求項6】
光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質が光触媒作用を有する物質である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質が酸化チタンである請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
対水接触角制御材料から対水接触角増大物質を放出させる手段が、光照射または加熱である請求項3〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
光の光源が、レーザー発生装置、紫外線ランプまたは水銀ランプである請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
光を照射する方法が、深度方向に焦点を変え得る照射方法である請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料が対水接触角増大物質単独またはそれを含む液体または固体である請求項3〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
対水接触角制御材料が対水接触角増大物質を含むポリジメチルシロキサンである請求項3〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
対水接触角増大物質が有機ケイ素化合物である請求項3〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
マイクロチャネルの親水化部位以外の部分が対水接触角増大物質を含む対水接触角制御材料で作製されている請求項3〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
光遮蔽パターンを介して親水化部位の所定の領域に光を選択的に照射して親水性部位と疎水性部位を選択的に設ける請求項2〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
遮蔽パターンを介して対水接触角制御材料の所定の領域に光または熱を選択的に加えて親水性部位と疎水性部位を選択的に設ける請求項3〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
流路中に配設されるバルブであって、該流路の内壁面の一部を光の照射に応じて対水接触角が制御可能な物質で構成し、該対水接触角が制御可能な物質で構成された内壁面の対水接触角を他の内壁面の対水接触角に対して差が出るように制御することにより流体の流路抵抗を制御するバルブ。
【請求項18】
対水接触角が制御可能な物質が、親水性と光触媒作用の両者を発現し得る物質である請求項17記載のバルブ。
【請求項19】
対水接触角が制御可能な物質が、酸化チタンである請求項18記載のバルブ。
【請求項20】
マイクロチャネル内に配設されるバルブであって、疎水性部位と親水化部位とを有し、該疎水性部位が光または熱を作用させることにより対水接触角増大物質を放出しうる対水接触角制御材料で作製されており、該親水化部位が光照射により対水接触角を低下させる能力を有する物質で作製されているマイクロチャネル用バルブ。
【請求項21】
対水接触角が制御可能な物質が、親水性と光触媒作用の両者を発現し得る物質である請求項20記載のバルブ。
【請求項22】
対水接触角が制御可能な物質が、酸化チタンである請求項21記載のバルブ。
【請求項23】
請求項17〜22のいずれかに記載のバルブを有するマイクロデバイス。
【請求項24】
請求項17〜22のいずれかに記載のバルブを有するマイクロセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/032707
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514469(P2005−514469)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014499
【国際出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】