説明

流体の調剤、作成および希釈のための方法と装置

混合用バイアルが、免疫組織反応とインシチュ・ハイブリッド形成反応において染色組織サンプルのために使用される自動化生物学的反応装置のために使用される。混合用バイアルは、試薬が装置内で混合させて、追加のまたは混合された試薬を生成する。ロボットアームに取り付けられた投与装置は、試薬容器から試薬を回収し、それを混合用バイアルに入れる。複数の試薬が各バイアルに入れられる。混合は、バイアル内の試薬を回収し、そのバイアルに試薬に戻すことにより行われる。混合は、装置により行われる他の作業の間に行ってもよく、予定表作成装置は、本装置における処理において混合試薬が要求される前に、提供できることを保証するために使用される。本装置は、どの混合試薬が要求されるか、また、サンプルを染色する時間を最小にする適当な予定表を作成して混合試薬がいつ加えられねばならないかを自動的に識別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体を調剤し作成する装置と方法が記載される。1つの形態では、この装置と方法は、自動化生物学的反応装置によりサンプルの上に調剤するために液体を作成することに関連する。
【背景技術】
【0002】
反応に使用されるいくつかの流体は、短い貯蔵寿命をもつ。したがって、流体は、特定された時間枠内に使用されないと、むだになる。さらに、いくつかの流体の性質は、時間と共に変化し、要求されたときに新鮮な試薬を利用できることは有用である。典型的には、化学反応または試験の間に使用される試薬などの新鮮な流体は、サンプルへ加えることが要求されるときに手動で作成されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の機器において、処理時間を最小にするため、スライドへの流体の投与を予定表に入れることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの形態では、本発明は、自動化生物学的反応装置において混合試薬を作成する方法に関する。この方法では、
混合試薬が要求されているかを確め、
次に、その使用が要求される前に、その混合試薬を作成する。
【0005】
好ましくは、ロボットアームに取り付けられた投与装置により試薬容器から混合用バイアルへ試薬が移動される。
【0006】
1つの形態では、投与装置は試薬を共に混合する。
【0007】
好ましくは、前記混合は、前記試薬の成分を混合用バイアルの中で混合し、混合用バイアルから流体を回収し、その混合用バイアルにその流体を再投与して試薬の成分の混合を促進することにより、達成される。
【0008】
他の形態では、本発明は、自動化生物学的反応装置において多数のスライドへの混合試薬の添加を予定表に入れる方法に関する。この方法では、
少なくとも1つのグループのスライドを1つのバッチとしてグループ化し、
混合試薬がそのバッチの中でいずれかのスライドに加えられるべきであるかを確かめ、
そのスライドに前記混合試薬を加える前に、前記混合試薬の作成を予定表に入れる。
【0009】
好ましくは、前記の予定表に入れる処理において、前記バッチに行われる複数のステップを分割して、どのステップが前記混合試薬の添加を要求するかを確かめ、次に、前記試薬の添加が要求される前に前記混合試薬の作成のステップを挿入する。
【0010】
1つの形態では、前記混合試薬を作成するために試薬を取り出すことがバッチの中に分類され、他のバッチと共に予定表が作成される。
【0011】
1つの形態では、混合試薬作成の時間を記録し、失効時間と予定の添加時間を比較して、混合試薬が新鮮であることを保証する。
【0012】
他の形態では、混合用バイアルに試薬の個々の成分を所定部だけ入れ、生じた試薬の1部を投与装置に回収し、次に、その流体を再投与して試薬の成分の混合を促進する。
【0013】
他の形態では、自動化生物学的反応装置は、混合容器、複数の試薬容器、試薬容器からスライドまたは混合用バイアルへ試薬が投与される投与装置を備えるロボットアーム、混合用バイアル、および、制御コンピュータを備える。ここで、混合試薬は、試薬を混合用バイアルに投与することにより生成される。
【0014】
1つの形態では、混合用バイアルは、取付部、複数の混合容器および識別手段を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、試薬などの流体(液体)をサンプルに加えるために使用される自動化生物学的反応装置の例を示す。自動化生物学的反応装置は、リモートコンピュータ(図示しない)と処理モジュール10を含む。自動化生物学的反応装置のこの例は、本出願人による2002年6月20日に提出された、「自動化生物学的反応装置」と題するオーストラリア国仮特許出願(PS3114)に記載されている。この文書の内容は、参照により個々に組み込まれる。
【0016】
処理モジュール10は、ロボットアーム16を含み、このロボットアーム16は、チュビング29によりポンプ(複数)に接続されているピペット28を備える。この装置は、多数のバルク(大容量)の試薬容器20、スライドトレイ15、試薬ラックを収容する試薬ラック収容部36を備える。1つの試薬ラック34は、図2に示されるように、多数の試薬容器39を支持できる。
【0017】
この例では、処理モジュール10は、図4に示されるように、1以上のスライドトレイ15を載せられる。各スライドトレイ15は、少なくとも1枚のスライド(図示しない)をもち、各スライドは典型的には組織のサンプル(図示しない)を含む。スライドと組織サンプルは、たとえば、組織試験のために一般に使用されている、薄い組織サンプルを上に置いた顕微鏡スライドである。このスライドは、また、スライドとその上の組織を一意に識別するためバーコードなどのスライド識別子を含む。この実施の形態では、スライドの上のサンプルは、カバータイル17により覆われる。カバータイル17は、サンプルを脱水化から保護し、試薬のための反応室を提供する。この試薬は、処理モジュール10のピペット28により加えられる(添加される)。
【0018】
スライドトレイ15が載せられると、図9に示されるように、ロボットアーム16は、スライドトレイ15の近くに移動し、ロボットアームに取り付けられたバーコード・リーダー5などの電子スキャナが、各スライドの上のバーコードを読む。スライドの関連した情報は、処理モジュール10のために制御器(図示しない)のメモリに格納され、リモートコンピュータは、スライド識別情報を送られる。リモートコンピュータは、各スライドに関連したプロトコル情報を保持するデータベースを含む。プロトコル情報は、組織試験(たとえば免疫組織試験、インシチュ・ハイブリッド形成試験、蛍光インシチュ・ハイブリッド形成試験など)を実行するためのすべての情報を含む。本発明は、試験の特定の種類には限定されないが、試薬の添加を含む多数のステップと試薬の添加に続く培養期間を含むような種類の試験に有用である。他の実施の形態では、情報を保持するデータベースは、処理モジュール10内に含まれる。
【0019】
通常は、限られた数の試薬容器39が処理モジュール10により利用できる。この例の処理モジュール10では、4個の試薬トレイ34があり、それぞれ、最大で9個の試薬容器39を保持し、合わせて最大で36個の試薬容器を保持する。各試薬容器は、他の試薬容器と独立であり、各試薬容器は、バーコード、光学的に読み取り可能な文字などの一意の識別子(図示しない)を持つ。多数の試薬容器39を含む試薬ラック34が処理モジュール10の上に載せられるとき、ロボットアーム16は、試薬ラック34にそって動き、バーコード・リーダー5で各試薬容器39の上の識別子をスキャンする。個々の試薬容器の試薬量と位置に関連する情報は、処理モジュール10の制御器の中に格納される。
【0020】
バルクの試薬容器20などの他の試薬容器は、スライドの上に投与可能な試薬の種類に追加して、処理モジュール10の本体12の中に含まれる。いくつかのバルクの試薬容器20は、サンプルを洗浄し水和するために必要な流体を入れている。
【0021】
1つの形態では、試薬ラック34は、検出キットを入れるために使用される。検出キットは、1以上のサンプルについて試験をするために使用される別々の試薬容器39の中の多数の試薬からなる。そのような検出キットは、たとえば、1つの試験をするためのたとえば9個の試薬容器を含むが、この例では、他のスライドに利用できる試薬容器39の数を27に減らす。
【0022】
スライド上のサンプルに加えられる典型的な試薬は、ノバカストラ・ラボラトリーズ(Novacastra Laboratories)社より販売されている1次抗体などの1次抗体を含む。これらの試薬は、通常は、試薬容器39に、典型的には7ml〜30mlの量で供給される。他の試薬やバッファ液や他の脱イオン水などの流体は、典型的には1〜4リットルの容積のバルク試薬容器20に保持できる。
【0023】
いくつかの試薬は、一度サンプルへの添加のために生成されると、比較的短い寿命を持つ。したがって、その試薬は、すぐに使用できる処方で予め混合されて供給されて、注文から短期間内に使用されねばならないか、または、使用の前に研究室の人により作成され、適当な試薬容器の中に置かれる。3’,3−ジアミノ・ベンジデン(DAB)などのいくつかの試薬は、最終的な形態では、作成されると直ちに劣化し始め、24時間経過すると使用できない。このことは、新しいバッチを毎日作成し、古いバッチを使用後に廃棄することを要求する。さらに、プロテアーゼなどの酵素は、組織の種類、加えられる他の試薬などの因子に依存して変化する濃度で加えられねばならない。このことは、試薬の多数のバッチがサンプルに加えられる前に作成されることを、正確な添加、失効日時、正確な混合、追跡および追跡可能性などの関連する問題とともに、要求する。
【0024】
濃縮された1次抗体もまた、使用の前の生成を要求し、サンプルに添加する前の希釈を要求する。1次抗体は、濃縮した形態でも、予め希釈された直ちに使用できる状態でも提供できる。しかし、1つの処理モジュールについて同じ抗体の複数の希釈を備える必要があるか、そうでなければ、試薬ラック34において複数の位置をとる。1次抗体は、ビジョン・バイオシステムズ(Vision_BioSystems)社により販売されているABDIL_9352などの1次抗体希釈液により希釈される。
【0025】
処理モジュール10のこの実施形態では、図2に示されるように、混合所122が設けられる。混合所112は、図3に示されるように、6個の混合用バイアルを備える挿入体130のための設備を備える。この例における挿入体130は、6個のバイアルを備え、各バイアルは、異なる試薬を保持できる。なおバイアルの数は変更できる。バイアル132はすべて同じ容積をもつが、必要ならば変えてもよい。典型的な容積はバイアルあたり7mlである。
【0026】
また、タブ134が挿入体130に取り付けられる。タブ134は、バーコードなどの識別子を用いることなどにより、挿入体130を識別するために使用される。挿入体130は使い捨てできるが、取り替える前に多数回再使用できると予想される。挿入体の中の各バイアルは、異なる試薬を入れることができ、使用中に、また使用されていない間に、洗浄できる。挿入体130上のバーコードは、挿入体を識別するために使用でき、制御器はいつその挿入体を廃棄するかを知ることができ、新しい挿入体の混合所への装填を要求する。これは、所定の期間または所定使用数の後に予め決定できる。
【0027】
また、挿入体130には、流出開口135が備えられる。流出開口135は、いずれかのバイアルがあふれると、挿入体から余分な流体を排出させる。
【0028】
動作を説明すると、複数のスライドを載せてスキャンした後で、スライドのバーコードからの情報がリモートコンピュータ内のデータベースで異なる観点から検証され、どの一連の試薬が各スライドに添加されるかを確定する。次に、処理モジュール10は、要求される試薬を、現在挿入されている試薬と比較する。もし、ある試薬が、要求されたものであると識別され、作成が要求される種類の試薬であるならば、作成処理が、処理モジュール10において企画されているタスクの順番の中に予定表に組み込まれる。処理モジュール10は、試験のために要求されている試薬を識別し、試薬を、最終形態の試薬(混合されるべきでない試薬)と混合される試薬とに分類する。処理モジュール10は、要求されると、試薬トレイの中に載せられるべき試薬を要求する。これは、混合試薬の1部である試薬(すべての部分が使用可能でないとしても)を含む。こうして、処理モジュール10は、すべての必要な試薬が、染色の実行を開始する前に装置内に積み込まれていることを保証できる。
【0029】
1つの例では、3個の試薬容器(試薬ラック34の中に位置される試薬容器39と同じ)が処理モジュール10上で位置が見つけられる。各試薬容器は、DABなどの混合試薬の成分A,B,Cを備える。この例では、DABは、A1部、B25部、C1部の比に混合される。DABのバッチを混合してすぐに使用できるようにするため、ロボットアーム16は、まず、成分Aを収容する試薬容器へ動き、所定量の試薬の成分Aを引き出す。ロボットアーム16は、次に、混合所におけるバイアル132の1つへ動き、その所定量をバイアルの中にあずける。次に、ピペット28は、混合所のとなりにある洗浄所へ動き、そこで、ピペットの外側と内側が洗浄される。清浄になると、ロボットアーム16はピペット28を、試薬の成分Aを含む試薬容器へ動かす。ピペット28は、試薬(成分Aの量の25倍)を回収し、成分Aを含むバイアルへ動く。バイアルに置かれると、ピペット28は、洗浄所に動き、試薬の成分Cを保持する試薬容器へ動く前に、前に再び洗浄される。成分Aを保持する容器から移動されたのと同じ容積が、取り出され、ピペット28は元のバイアルへ動き。その試薬を他の試薬とともに置かれる。しかし、試薬を混合用バイアルの中に初めに置くと、追加の混合は、一部またはすべての試薬をバイアル132からピペット28の中に回収し、次に、試薬をバイアル132の中に再び置くことにより達成できる。ピペットは、混合処理を助けるために置くときに先端が流体レベルの上にあることを保証するために、縦に動くことができる。再び置くためのエネルギーは、試薬(複数)をより容易に混合させる。この混合処理は、所望の回数だけ行える。試薬が十分に混合された後に、もしサンプルに加えられる次の試薬がDABでなければ、ピペット28は洗浄所に進む。バイアル(容量)のこの容量とピペットにより回収される量は、サンプルに対する多くの用途のために充分な量を提供する。DABが要求されるときはいつでも、ロボットアーム16はピペット28をバイアルへ動かし、そこでDABが混合され、試薬の混合が行われるバイアルの位置が制御器により記録される。所定の時間の後で、混合された試薬が廃棄できるように、生成の時間も記録される。これは、生成された試薬が失効した後で使用されることを防止する。多数のバイアルが、混合された試薬を同時に収容し、各バイアルの位置が記録される。
【0030】
その日のための試験が終了した後で、または、DABの失効のときに、DAB(または失効した任意の他の試薬)を含むバイアル132が、後で説明するように、清浄にできる。
【0031】
上述の例は、自動化された処理にでき、ここで、サンプルのプロトコルが入力され、スライド識別子と相関される。処理モジュール10は、どの試薬が実行の完了を要求されるかを決定できる。
【0032】
上述の処理が自動化される一方、使用される資源(ロボットアーム16とピペット28)は、サンプルへの一般的な試薬の添加における重要な期間のために利用でき、したがって、処理モジュールにおける重要な資源である。ロボットアーム16は、2つの作業を同時に実行できない。したがって、1つの作業を予定表するとき、他の作業は遅延されねばならない。遅延は、問題を生じることがある。たとえば、水和流体を加えるときに遅延があると組織試料が乾いてしまうことがあり、また、洗浄流体を加えるときに遅延があると、組織試料が所望時間より長く試薬に曝されることがある。重要なのは、試験結果の変わりやすさが種々の種類の試験において避けられることである。この理由で、処理モジュール10は、試料がないときに試薬を生成するようにプログラムでき、容積と濃度はユーザインタフェース(図示しない)によりユーザーが決定できる。しかし、処理モジュール10の重要な資源(たとえばロボットアーム16)が使用されていないときがあるので、試料の処理の間に要求される複数の試薬の混合を予定表に入れることもできる。これは下記の多くの利点を生じる。
(1)(混合試薬を生成する必要性をあらかじめ省くことにより)試験をする時間を短縮すること。
(2)(各スライドに加えられるプロトコルの決定の自動的性質により)要求される混合試薬の種類と容量の確実性を提供すること。
(3)混合試薬の廃棄を減少すること。
(4)(混合が実行の前ではなく、実行の後に部分的に起こり、混合試薬が作られた時刻を機器が正確に認定することにより)使用される混合試薬が新鮮であることを保証すること。
(5)処理モジュール10が(バルクの試薬を除いて)混合試薬(複数)の各成分をスキャンするとき、混合試薬と追跡して、したがって、品質の問題があるとき、各成分がどのバッチから由来するものかを知ること。
(6)処理モジュール10に同じ作業を何度も行わせることにより試験結果の変わりやすさを減少して、実験室内での人間による変わりやすさを減少すること。
【0033】
他の利点は、ピペット28による混合試薬の混合を含む。これは、生成された試薬が、試料に加えられる前に十分に混合されることを保証し、試料に試薬の成分を直接に加えて試薬のうえで混合するよりも、混合の一様性をよくする。
【0034】
処理モジュール10での混合から利点を得る試薬の他の例は、プロテアーゼを含む。プロテアーゼは、多くの濃度で加えられることが要求されることがある。上述の例では、プロテアーゼのただ1つの試薬容器が試薬トレイ34において要求され、いくつかの濃度のプロテアーゼは、試薬容器39の中に、または、装置内でバルクの試薬容器20に格納されている希釈剤を用いて、処理モジュール10により生成できる。これらの異なる濃度は、後で異なるバイアルの中に置かれる。
【0035】
(予定表作成)
1つのバッチ内での予定表作成に関連して、予定表作成の詳細が、2003年2月24日に提出されたオーストラリアの仮特許出願(予定表作成方法)に開示されており、この引用によりここに組み込まれる。
【0036】
プロトコルの種類はシステムにより予め定義されているので、登録の間に単にリストから1つを選択するだけである。ユーザー自身のプロトコルを生成することもでき、後で使うために、それをリストに保存できる。
【0037】
処理モジュール10の動作の1例において、処理モジュール10にスライドを処理させるため、少なくとも1つの登録されたスライドを含むスライドトレイが処理モジュール10の中に載せられる。この点で、バーコード・リーダー5を含むロボットアーム16は、トレイ15の中のすべてのスライドのバーコードを読み、それらのバーコードIDを検索する。バーコードIDは、スライドIDに対応し、スライドIDは、1次抗体情報とプロトコル情報に関連される。プロトコル情報は、加えられるべき全ての試薬のリストと、サンプルが試薬に曝される期間のリストを含む。プロトコル内の時間はある幅、たとえば5〜8分、を持っていてもよい。
【0038】
この処理は、スライドトレイ(たとえばスライドトレイ1)におけるすべての異なるスライドについて行われる。すべてのスライドを再調査して、要求される1次抗体とプロトコルの情報を確かめた後で、処理モジュール10は、装置内でこの情報が正しい型と十分な量の試薬であることを調べる。これは、1つのプロトコルがすべてのスライドについて構成される場合である。これは複雑ではない。というのは、この例では、トレイ内のすべてのスライドが同じ(または一貫性がある)プロトコルを持たねばならないためである。これが意味するのは、異なる1次抗体は1つのスライドのうえの各試料に加えられるが、異なるプロトコル内でのタイミングはほぼ同じである。プロトコル内の情報は、操作ステップの順番を含み、各操作についての情報は以下のとおりである。
(1)各操作の時間
(2)1つの操作についての可能な開放時間
各操作時間は、2つの時間、すなわち使用時間と開放時間を含む。
(1)使用時間は、共用資源が使用中である時間である。典型的には、これは、ロボットアームであるが、ボンド(Bond)機器の他のハードウェアであってもよい。
(2)自由時間は、操作の時間が完了していないが共用資源が使用中でない時間である。典型的には、これは、試薬が加えられた後での試料の定温放置の間である。
【0039】
1例として、スライドがサンプルに加えられた1次抗体を備えるべきであるなら、その操作を企てる時間が、ロボットアーム16を正しい試薬容器へ動かすこと、ピペットを用いて正しい量の試薬を取り出すこと、スライドへ移動すること、抗体を分配すること、および、洗浄所へ移動してピペットを洗浄することを含む。しかし、1次抗体は、洗浄される前に所定の時間、試料と接触していなければならない。したがって、1次抗体が洗浄されるまで、この操作は終了しない。しかし、ロボットアーム16は、定温放置の間、洗浄操作まで、要求されない。
【0040】
また、1つの操作は、1つのスライドについてだけのものではなく、トレイが載せられたときにトレイの中にあるすべてのスライドについてのものである。もしスライドが10枚のスライドを持っていれば、すべてのスライドが1つの操作で処理される。1つの例は、各スライドに対する分配の間である。複数のプロトコルはすべて互換性がなければならないが、1次抗体はすべて異なっている。しかし、この例における処理モジュール10は、異なる1次抗体が、すべて同じ定温放置時間を持つように設計されている。同じ定温放置時間は、したがって、異なる試薬容器から由来するものであるか否か、また、定温放置時間が終わるのを待つ前に、1次抗体を変えるときロボットアーム16が試薬容器からスライドへ動き、1次抗体を各スライドの上に分配するときのピペット洗浄の要請とは別である。
【0041】
また、1つの操作は、必ずしも、スライドに関連されていなくてもよい。たとえば、実行が始まった後で、初期の操作の1つはDABの混合である。この操作は、混合試薬が加えられる前に用意できているように、処理モジュールの一連の操作の中に挿入されねばならない。
【0042】
上述のように、もし1つの操作(たとえばスライドからの1次抗体の洗浄)が他の操作(たとえばDABの混合試薬の生成)の挿入により遅延されるならば、試験に有害であるかもしれない。プロトコルにおいて、この最大の許容時間は、開放時間という。
開放時間:次の「ブロック」が遅延できる最大の規定の時間。
こうして、システムは、スライドトレイ1のためのプロトコルを生成する。このプロトコルは、それぞれ多数の操作からなる多数のブロックからなり、各ステップは使用時間を有する。ブロックは開放時間により分離される。開放時間が最大時間として格納され、それは、その最大時間とゼロの間の任意の時間である。プロトコルにおいて使用される実際の開放時間の量は、予定表が最終的に決定されるまで、わからない。
【0043】
図5において、高い矩形101は、使用時間(たとえばロボットアームの使用時間)を表し、短い矩形102は自由時間(重要な資源が使用されていない、たとえば定温放置時間)を表し、細長い矩形103は、最大の許容可能な開放時間を表す。水平軸104は、時間であり、矩形101,102,103の幅はその期間を表す。
【0044】
バッチのためのプロトコル104は、図6に示すように、1以上のこれらのブロック100からなる。
【0045】
予定表は、ボンド(Bond)装置の中におかれた各スライドトレイのために作成される。各スライドトレイは、10枚までのスライドをもつ。各スライドトレイは、異なるプロトコルを使用できるが、しかし、プロトコルは、トレイ内の各スライドについて互換性があるかまたは同一であるべきである。
【0046】
すべてのトレイが入れられ、各トレイまたはバッチについてのプロトコルが決定された後、予定表作成装置は、システムの全体の実行時間を最小にする1つの予定表を作成するために、各トレイのための個々の予定表を間に挟むことを試みる。典型的には、これは、2以上のトレイが同時に開始するとき、または、1つのトレイがすでに開始していて、1以上のトレイが処理モジュール10に載せられたときに、起こる。しかし、処理モジュール10がトレイを載せられ、スライド識別子をスキャンして、混合試薬が要求されていることを確認したとき、装置内にはまだ存在していないことが起こり得る。
【0047】
処理モジュール10は、各プロトコルを多くのブロックに分ける。それらのブロックは、少なくとも1つの操作を含む。各操作は、少なくとも使用時間をもち、しばしば開放時間ももつ。上述のとおり、複数のブロックは開放時間により分けられる。もし操作の間に開放時間がないならば、第2の操作が、前の操作が終わると直ちに始められねばならない。したがって、開放時間をゼロとする規則を破ることなしに2つのブロックの間にいずれかの操作を入れることは不可能であるので、これらの操作は、予定表作成装置により1つのブロック内にまとめられる。
【0048】
したがって、1つのトレイのスライドを読み、混合試薬が要求されていると決定した後に、処理モジュール10は、予定表として格納されている2つのバッチを持つ。ここに各バッチは多数のブロックに分けられ、各ブロックは開放時間により分けられている。予定表プログラムは、第1のバッチを見て、そのバッチの中で各ステップの使用時間と自由時間を決定する。考慮するべきいくつかの事実、すなわち、使用時間違反と開放時間違反、がある。
【0049】
使用時間違反は、重要な資源が同時に2つのバッチにより使用が要求されていることである。これは物理的には起こることができない。たとえば、ロボットアームは、同時に2つの場所にあることはできず、したがって、同時に流体を2つの異なる場所に投与できない。従って、予定表作成装置は、複数のブロックが重なるなら、1つのブロック内の開放時間が重ならないことを保証しなければならない。
【0050】
図7において、左側で予定表110は、バッチ104,105を示すが、それらは、ともに、同じ資源を同時に使用しようとしている。これは使用時間違反である。右側の使用時間は重ならず、したがって、違反はない。
【0051】
使用時間違反を避けるため、予定表の中の複数のブロック100は遅延できる。しかし、複数のブロックは無制限には遅延できない。1つのブロックが、予定の開放時間を越えたある時間だけ遅延されると、これは、開放時間違反という。たとえば、スライドのうえの試料の乾燥を防ぐため、スライドは所定の時間(たとえば10分)内に流体を加えることができる。もし予定表がこの所定時間内に流体を加えることを許さないならば、これは、開放時間違反である。これは、一貫性のない染色を生じるか、または、組織の乾燥を生じることがある。
【0052】
図5において、左側での線または矩形103は、ブロック100についての開放時間を表し、これは、同じブロックからの前のブロックが終わった後にそのブロックが遅延できる最大時間である。そのブロックの開放時間が違反されるのを防止するために、この線103は、前のブロックと重ならねばならず、または、予定表の開始時間を延長しなければならない。
【0053】
図8において、上の部分110は、開放時間が違反されているブロック100を示す。下の部分112は、開放時間が違反されないように調整されたこのブロックの開示時間113を示す。
【0054】
予定表作成のための最悪の場合のシナリオでは、第1のバッチが処理を完了するまで、第2のバッチが開始されない。最良の場合では、第2のバッチの終了時点が第1のバッチにより遅延されない。典型的には、典型的にはこれらの2つの時点の間に1つの解決があり、1以上の解決を見出すために多数の計算が行われる。計算能力は、コンピュータが解決を得るべき解決の数を制限し、典型的には複数の成功した予定表が達成されるならば、複数の予定表が比較され、最良の予定表が選択される。
【0055】
この例において、ロボットアームが第1の試薬容器に動き、試薬のサンプルを引き出し、混合用バイアルへ動いてその試薬を入れることにより、混合試薬39は混合のバッチにおいて作成される。通常、この操作の前と後で投与装置(ディスペンサ)を洗浄することが必要である。洗浄の操作と投与の操作は、試薬を混合するためのバッチの1つのブロックの使用時間を作る。この場合、定温放置時間や反応時間が一般に必要でないので自由時間はない。しかし、もし反応時間が必要ならば、これは、ロボットアームが使用中でアル必要がない自由時間になる。ブロックの間の開放時間は、試薬がそれ自体一般に安定であるので、非常に大きい場合がある。こうして、(DABのための)混合のバッチの初めの3ブロックは、3つの試薬の引き出しと投与および関連する洗浄ステップと関連される。第4のブロックは、混合用バイアルからの一部のまたはすべての流体の引き出し、そして、試薬の混合を助けるためにその流体を再投与することによる、試薬の混合である。これらの4ブロックは、他のバッチのブロックに対して間に挟めて、混合試薬を処理モジュール10内で提供できる。理想的には、混合バッチのブロックは、染色バッチ(スライドトレイの上のサンプルと関連されるバッチ)の自由時間の中に割り当てられる。しかし、もし染色バッチの中に適当な自由時間がなければ、開放時間(理想的にはゼロであるが、予め決められた最大時間まで延長可能である)が使用できる。1以上の染色バッチがあるならば、上記の事項は維持される。
【0056】
混合試薬が要求される前に混合のバッチが完了することを保証するために、予定表作成における制限が用いられる。混合のバッチにおける最後のブロックは、混合試薬を要求する染色のバッチにおける他の任意のブロックに対してスレーブブロックである。スレーブブロックであるので、マスターブロックの予定表作成の前に完了しなければならない。この制限を用いて、混合のバッチは、それにより作成される混合試薬が要求される前に、完了される。
【0057】
[洗浄]
混合試薬は、作成された後に、試料に加えられる。残ったまたは無効になった混合試薬はアスピレータにより吸い上げられ廃棄される。次に、バイアル132は洗浄できる。要求された試薬が投与された後に残っている作成された試薬を排出することにより、洗浄が行われる。排出はピペット28で行われ、排出された流体は内部が鉛で張られたバルクの廃棄物容器の中に導かれる。実質的に空になると、すすぎサイクルが行われる。このすすぎサイクルは、洗浄液を使用できる。洗浄液は、たとえば、バイアル132の中に投与されるIMSなどのアルコールを含むことがある。洗浄液はつぎにピペット28により排出される。2以上のすすぎサイクルを行うことができる。最後のすすぎの後に洗浄液を除いた後で、残っている洗浄液は蒸発させられて、バイアルを完全に空にする。
【0058】
別の実施の形態では、試薬容器39は、混合用のバイアルとして使用できる。1つの形態では、試薬容器39は空であり、容器を一意に識別するバーコードラベルなどの識別手段をもつ。他の形態では、試薬容器は、他の試薬の追加を要求する試薬を含んでいて、混合は、上に説明したのと同様に起こる。混合の後に、処理モジュール10が、使用される試料容器の内容の正確な記録を常に持つように、その試薬容器の内容に関連する情報を含むデータベースは更新できる。試薬容器の種類は、ボンド型の機器について使用されるノバカストラ・ラボラトリーズ社により供給される試薬容器と同様であるか、または、他の適当な種類の試薬容器が使用される。一般的に、要求されるすべてのことは、試薬容器の中江のピペットの接近であり、したがって、試薬容器の構成は重要でない。
【0059】
また、試薬容器または混合用バイアルおよびその容器の追跡は要求されないならば、一意の識別手段により混合用バイアルを識別させることは必要でない。しかし、一意の識別手段と処理モジュール10でのスキャナの使用は、自動化における利点を与え、使用される試薬の監査の手がかりを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】混合所を備える自動化生物学的染色装置の第1の等距離図
【図2】図1の混合所の第2の等距離図
【図3】図2の混合所の挿入体のための等距離図
【図4】自動化生物学的反応装置とともに使用されるスライドラックの等距離図
【図5】図1の自動化生物学的反応装置について予定表が作成される複数のバッチの図
【図6】図1の自動化生物学的反応装置について予定表が作成される複数のバッチの図
【図7】図1の自動化生物学的反応装置について予定表が作成される複数のバッチの図
【図8】図1の自動化生物学的反応装置について予定表が作成される複数のバッチの図
【図9】図1の自動化生物学的反応装置でロボットアームに取り付けられる投与装置の部分的等距離図
【符号の説明】
【0061】
5 バーコード・リーダー、 10 処理モジュール、 15 スライドトレイ、 16 ロボットアーム、 28 ピペット、 20 バルク試薬容器、 34 試薬ラック、 36 試薬ラック収容部、 39 試薬容器、 104 プロトコル、 110 予定表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化生物学的反応装置において混合試薬を作成する方法であって、
混合試薬が要求されているか否かを確め、
その混合試薬を、使用が要求される前に、作成する
混合試薬作成方法。
【請求項2】
前記自動化生物学的反応装置において試薬容器の含有量を自動的に決定することにより、前記混合試薬の作成に必要な構成成分が入手可能か否かを確かめることを特徴とする、請求項1に記載された混合試薬作成方法。
【請求項3】
前記前記自動化生物学的反応装置に載せられる各スライドについて要求されるプロトコルを自動的に決定し、そのプロトコルから、要求される試薬を決定することにより、前記混合試薬が要求されているか否かを確かめることを特徴とする、請求項1または2に記載された混合試薬作成方法。
【請求項4】
ロボットアームに取り付けられた投与装置により試薬容器から混合用バイアルへ試薬が移動されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載された混合試薬作成方法。
【請求項5】
前記投与装置は混合用バイアルの中で混合試薬の成分を混合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された混合試薬作成方法。
【請求項6】
前記混合試薬の成分の混合の処理は、前記試薬の成分を混合用バイアルの中で混合し、混合用バイアルから流体を回収し、前記混合用バイアルにその流体を再投与して試薬の成分の混合を促進することにより達成されることを特徴とする、請求項5に記載された混合試薬作成方法。
【請求項7】
混合試薬が要求されているか否かを確める処理は、前記スライドに適用される前記プロトコルに関する情報を保持するリモートコンピュータから情報を要求することを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載された混合試薬作成方法。
【請求項8】
自動化生物学的反応装置において多数のスライドへの混合試薬の添加を予定表に入れる方法であって、
少なくとも1つのグループのスライドを1つのバッチとして集め、
混合試薬がそのバッチの中でいずれかのスライドに加えられるべきであるかを確かめ、
スライドに前記混合試薬を加える前に、前記混合試薬の作成を予定表に入れる
予定表作成方法。
【請求項9】
前記の予定表に入れる処理において、前記バッチに行われる複数のステップを分割して、どのステップが前記混合試薬の添加を要求するかを確かめ、次に、前記試薬の添加が要求される前に前記混合試薬の作成のステップを挿入することを特徴とする、請求項8に記載された予定表作成方法。
【請求項10】
それぞれ複数のスライドを保持する多数のトレイが装置に載せられることを特徴とする請求項9に記載された予定表作成方法。
【請求項11】
各トレイのスライドが1つのバッチとしてまとめられることを特徴とする請求項10に記載された予定表作成方法。
【請求項12】
前記混合試薬を作成するために試薬を取り出すことがバッチの中に分類され、他のバッチと共に予定表作成されることを特徴とする請求項11に記載された予定表作成方法。
【請求項13】
混合容器、
複数の試薬容器、
試薬容器からスライドまたは混合用バイアルへ試薬が投与される投与装置を備えるロボットアーム、
混合用バイアル、および
制御コンピュータ
を備える自動化生物学的反応装置。
【請求項14】
取付部、複数の混合容器および識別手段を備える混合用バイアル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−521542(P2006−521542A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503987(P2006−503987)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000407
【国際公開番号】WO2004/088327
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(504466373)ビジョン・バイオシステムズ・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】VISION BIOSYSTEMS LIMITED
【Fターム(参考)】