説明

流体サンプル処理装置

【課題】核酸増幅反応の前に流体サンプルを精製しかつ濃縮するため、流体サンプルに所定シーケンスで一連の連続化学的または物理的処理段階を受けさせることができる装置を提供することにある。
【解決手段】(i)プラットホームを有し、該プラットホームは、(a)サンプルの受入れに適したチャンバと、(b)機能的コンポーネントとを備え、(ii)上昇および下降可能なアームを有し、該アームは、前記機能的コンポーネントがアームにより昇降されるように、機能的コンポーネントに着脱可能に取付ける手段を備え、(iii)任意のチャンバまたは機能的コンポーネントがアームに対して整合するようにプラットホームを移動させる手段を更に有することを特徴とする流体サンプル処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体サンプルを処理する装置および関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの理由から、例えば臨床サンプルまたは環境サンプル等の流体サンプルの分析が行われる。現在関心ある1つの領域は、例えば臨床サンプルまたは環境サンプル等の流体サンプル中の生物学的物質を確実に識別する方法を開発することである。このような方法は病状の早期診断を可能にし、これにより、迅速治療および感染コントロールまたは環境汚染物質等の識別が可能になる。例えばポリメラーゼ鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)による核酸増幅(nucleic acid amplification)は、このようなサンプル中の生物学的物質の確実な識別を行う有効で、広範囲に使用されている方法であるが、病気診断のために非研究所環境での個々のサンプル中の物質の迅速識別を首尾良く行うことを試みるときに幾つかの問題が存在する。1つの重要な問題は、核酸増幅に一般的な臨床サンプルまたは環境サンプルを供する前に、しばしば、サンプル自体を精製しまたは濃縮する必要があるという事実にある。これは、試薬(試薬の幾つかは危険性がある)を用いて連続処理段階により行われる。しかしながら、まさしく核酸増幅は、サンプル(特に、流体サンプル)の操作を必要とし、多くの同時的または連続的処理段階を有する、可能性ある多くの異なる技術例の1つである。これらの処理段階自体は多く存在し、例えば、可能性ある希釈段階および濃縮段階に加えて、化学的、光学的、電気的、機械的、音響的な処理、検出またはモニタリングがある。
【0003】
今日まで、このような複雑な流体処理は、通常、サンプルが、手作業で1つずつ処理されるか、多くの異なるサンプルを並列的に処理できる特殊ロボット設備を用いて処理される研究所で行われる。しかしながら、これらの方法に付随する幾つかの問題がある。これらの問題とは、これらの方法が遅いこと、資源集約的なこと、高価なこと、エラーおよび相互汚染を受けることである。他のアプローチは、流体サンプルを、一連の異なるチャンバ(各チャンバはシーケンスの単一段階に使用される)に通して連続的に流す必要がある慣用の流体処理システムを使用することである。しかしながら、このようなシステムはサンプルの損失が生じ、この損失は少量を処理する場合には重要であり、このような処理の自動化は複雑な流体組立体および処理アルゴリズムの使用を必要とする。
【0004】
いずれにせよ、一連の所定の連続段階を用いて、流体サンプル、特に少量の流体サンプルを処理して所望の目的生成物を得る改善された装置を開発する必要がある。このような装置は、例えば核酸増幅による分析の前に流体サンプル(例えば、臨床サンプルまたは環境サンプル)を操作するのに使用できる研究所トレーニングを殆どまたは全く受けていないオペレータにより、非研究所で容易に使用できるものであるべきである。このような装置は、分析結果が容易に得られ、熟練作業者によらなくても反復仕事ができ、かつ低コストでなくてはならない。また、このような装置は、後の試験の失敗を防止する充分な一貫性および精度をもつべきであり、かつ理想的には、相互汚染の傾向を最小限にしかつ殺菌の必要性をなくすため、使い捨て可能なコンポーネンツで構成すべきである。
【0005】
従来技術のサーチにより下記特許文献1が見出され、該特許文献1には、所与のプロトコルに従って流体サンプルの処理を行うのに使用できる複数のチャンバおよび可動弁本体を有する流体制御/処理システムが開示されている。このシステムは流体サンプルの処理装置の技術分野における開発を提供しているが、幾つかの問題が存在する。このような問題の1つは、流体サンプルを異なる溶液に連続的に露出させるには、弁本体を回転させ、幾つかの外部ポートを介して、サンプル処理チャンバと各処理溶液のリザーバとを連結する必要がある。このような装置は、熟練していない研究所作業者による非研究所環境で使用するには適しておらず、数ある他の理由のうち、特に外部ポートを溶液リザーバに連結する必要がある。これは非実用的であり、危険な薬品の場合には安全性上の危険がある。また、また、この装置は、各処理溶液をサンプルに供給し、次に全ての廃棄物質を除去するための単一の流体排出チャンバを使用している。このため、流体排出チャンバ内の残留物質の混合が生じかつ敏感な処理シーケンスが損なわれる可能性がある。従って、上記問題を解消できる流体サンプル処理装置を開発する必要がある。
【0006】
サンプル溶液中の目標物質を操作するのに磁気粒子を使用することは知られている。この一例が下記特許文献2に開示されており、該特許文献2は、特定結合検定(specific binding assay)を行う方法および装置を開示している。この装置は、免疫決定(immunodetermination)が行われる2つ以上の容器を有している。検体は固相(例えば磁気粒子)に結合し、次に、リムーバを用いて一方の容器から他方の容器へと連続的に移動される。各容器では分離反応および必要な他の任意の反応が行われ、最終的に、目標検体に結合された粒子が測定容器に移動される。この場合にも、サンプル操作の分野で幾分かの進歩が見られるが、装置は簡単なサンプル操作に適しているに過ぎず、例えば核酸増幅の前に精製しかつ濃縮する必要がある非常に複雑な多段階処理には適していない。依然としてこのような装置を開発する必要がある。
【0007】
今や、上記問題を解決できる装置および関連方法が開発されており、該装置は、
(i)プラットホームを有し、該プラットホームは、
(a)サンプルの受入れに適したチャンバと、
(b)機能的コンポーネントとを備え、
(ii)上昇および下降可能なアームを有し、該アームは、前記機能的コンポーネントがアームにより昇降されるように、機能的コンポーネントに着脱可能に取付ける手段を備え、
(iii)任意のチャンバまたは機能的コンポーネントがアームに対して整合するようにプラットホームを移動させる手段を更に有している。
【0008】
サンプルは第一チャンバ内に導入される。次に、アームが機能的コンポーネントの直ぐ上に位置するように、プラットホームが位置決めされる。アームが下降され、機能的コンポーネントに取付けられ、次に上昇される。次に、チャンバがアームの直ぐ下に位置するようにプラットホームが移動され、これにより下降されたアームが、機能的コンポーネントをチャンバ内に下降させる。機能的コンポーネントは、その場所に留まっている間に、チャンバと相互作用するか、チャンバ内に入っているサンプルと相互作用する。この相互作用が完了すると、アームは上昇されて機能的コンポーネントをチャンバから取出すことができる。プラットホームは移動しかつ機能的コンポーネントはプラットホーム上に配置されるか、更に下降されて、プラットホーム上の他のコンポーネントと相互作用する。或いは、アームは機能的コンポーネントから離れることができ、これによりプラットホームは、機能的コンポーネントをチャンバに取り付けたまま移動する。
【0009】
この装置は、機能的コンポーネントがサンプルと相互作用して広範囲の物理的処理を行うようにすることができる。物理的処理の例として、熱的、音響的、光学的、超音波的、電気的な処理、検出またはモニタリング技術がある。例えば、機能的コンポーネントは、上記のように操作されかつチャンバ内に配置されて、サンプルに物理的処理を施すヒータまたは超音波発生器(sonicator)で構成できる。或いは、機能的コンポーネントは、チャンバ内のサンプルから検体を除去するのにも使用できる。検体のこのような移動により、任意であるが、サンプル中の選択された検体を結合して錯体(complex)を形成できる固相結合物質を形成できる。錯体は次に、機能的コンポーネントの補助およびアームおよびプラットホームの移動によりプラットホーム上の1つのチャンバから移動されて、他のチャンバ内に沈殿される。また、機能的コンポーネントは、チャンバ自体と相互作用でき、例えばシールを穿刺するカッタで構成され、濾過膜をチャンバ内に導入しまたは必要に応じて単にチャンバをシールするもので構成できる。
【0010】
装置はまた、上記機能的コンポーネントとの相互作用に関連して流体サンプルを化学的処理するように適合させることもできる。任意のチャンバ内で、検体は機能的試薬と相互作用するか、物理的処理を受けるか、これらの両方を行うこともできる。いずれにせよ、所定のプロトコルの要求に応じて、検体が一連の処理段階を受けるように装置を設計できる。前述のように、機能的コンポーネントは、検体を、プラットホーム上でチャンバからチャンバへと移動させ、検体が1つ以上の機能的試薬と次々に反応するように使用できる。或いは、1つ以上の試薬を移動させて、該試薬をサンプルチャンバ内に次々に沈殿させ、サンプルに一連の化学的操作を受けさせることができる。
【0011】
従って、本発明による装置は非常にフレキシビリティが大きく、従って広範囲の異なるサンプル操作を遂行できるように設計できることが理解されよう。しかしながら、この装置は、核酸増幅反応、または免疫検定、或いは生物発光更にはDNAシーケンシング検定、特にピロ・シーケンシングを含む検定(assay)により、検体の増幅前の生物学的検体を有する流体サンプルを処理するのに特に適している。
【0012】
この装置は、幾つかの方法で増強される。これらの増強方法として、プラットホームが本質的に円形で、回転により移動する構成、装置に2つ以上の機能的コンポーネントを設けることにより、潜在的なサンプル操作可能性を増大させる構成、装置に更に1つ以上の他の物理的処理手段を設ける構成であって、物理的処理手段がプラットホーム上に配置されるのではなく、プラットホームより上方に配置され、必要に応じて任意の所与のチャンバ内に下降できる構成、サンプルの相互汚染を防止すべく、1つ以上のチャンバが、これを取出して廃棄しかつ置換できるようにした構成、1つ以上のチャンバに任意の機能的試薬を予配合して複雑さを少なくする構成、および装置を制御手段にリンクさせ、その作動を完全に自動化した構成がある。装置に1つ以上の着脱可能なチャンバを設ける設計は、同寸法の幾つかのチャンバを製造し、各チャンバに別々に、異なるプロトコルについて必要な試薬を充填できるという付加的長所を有する。これにより、使用者は、各場合に使用する所望のチャンバを選択しかつ挿入することにより、装置の有効性を増大させることができる。
【0013】
この装置は幾つかの長所を有している。これらの長所として、プラットホームが移動するように装置を設計することにより、アーム自体は1次元内で移動させれば良く、これにより複雑さを少なくできることがある。この装置の他の長所は、プラットホームに種々の機能的コンポーネント、例えばヒータ、フォイルカッタ、超音波発生器を設けることができることであり、また、これらの各々に着脱可能に取り付けられる単一アームの使用により、各機能的コンポーネントは、プラットホーム上に配置された1つ以上のチャンバと干渉するように操作して、予め定めたサンプル処理プロトコルを演算できる。装置は、所望の種々のプロトコルに合わせてその作動を容易に調節できるフレキシビリティを有している。また、装置を通してサンプルを移動させる流体通路およびポンプを備えた装置を必要とすることなく、複雑なサンプル処理シーケンスを確立できる。これにより、プロトコル中に試薬が互いに混合する傾向もなくなる。他の長所は、装置を完全に自動化して、使用者のエラー、サンプル汚染および使用者の危険性を低減できることである。また、装置は、現場で使用できるように、完全なポータブルとして設計できる。
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,374,684号明細書
【特許文献2】国際特許公開WO 94/18565号明細書
【特許文献3】国際特許公開WO 02/29380号明細書
【特許文献4】国際特許公開WO 98/24548号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、流体サンプルを処理する方法および関連装置を開発することにある。本発明の他の目的は、好ましくは核酸増幅反応の前に流体サンプルを精製しかつ濃縮するため、流体サンプルに所定シーケンスで一連の連続化学的または物理的処理段階を受けさせることができる装置を設計することにある。本発明の他の目的は、非研究所環境内での研究所トレーニングを殆どまたは全く受けていないオペレータが、サンプル、薬品または廃棄物に殆ど露出されることなく簡単に使用できるように、できる限りフレキシビリティを高めることにある。本発明の更に別の目的は、一回使用後に廃棄できるように、装置のサンプルコンポーネンツを安価に設計して、サンプルの相互汚染を低減させかつ多数の機器の殺菌の必要性を無くすことにある。本発明の上記および他の目的は、以下の開示から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第一態様によれば、本発明は、
(i)プラットホームを有し、該プラットホームは、
(a)サンプルの受入れに適したチャンバと、
(b)機能的コンポーネントとを備え、
(ii)上昇および下降可能なアームを有し、該アームは、前記機能的コンポーネントがアームにより昇降されるように、機能的コンポーネントに着脱可能に取付ける手段を備え、
(iii)任意のチャンバまたは機能的コンポーネントがアームに対して整合するようにプラットホームを移動させる手段を更に有する流体サンプル処理装置に関する。
第二態様によれば、本発明は、核酸増幅反応の前にサンプルを処理するのに、本発明による装置を使用する方法に関する。
【0017】
第三態様によれば、本発明は、
(i)検体を含むサンプルを、装置のプラットホーム上に配置された第一チャンバ内に置く段階と、
(ii)検体を結合物質に結合させて、検体/結合物質の錯体を形成する段階と、
(iii)錯体を可逆的に吸着する手段を第一チャンバ内に下降させて、錯体が前記吸着手段に吸着されるようにする段階と、
(iv)第一チャンバから前記吸着手段を上昇させる段階と、
(v)第二チャンバが前記錯体の可逆的吸着手段に整合するようにプラットホームを移動させる段階と、
(vi)前記錯体の可逆的吸着手段を第二チャンバ内に下降させて、錯体が前記吸着手段から離脱されるようにする段階とを有し、
前記検体は、第一チャンバまたは第二チャンバ内で物理的処理段階を受けることを特徴とする流体サンプル処理方法に関する。
【0018】
第四態様によれば、本発明は、核酸増幅反応の前にサンプルを処理するのに、本発明による方法を使用する方法に関する。
第五態様によれば、本発明は、核酸増幅反応の前にサンプルを処理するのに、本発明による方法に結合物質を使用する方法に関する。
第六態様によれば、本発明は、容器を閉じるのに適した、膜からなる蓋であって、膜が蓋内で凹状になっていることを特徴とする蓋に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書で引用する全ての刊行物は、特に断らない限り、その全体を本願に援用する。
本明細書で使用するとき、用語「流体サンプル」とは、溶媒または例えばエマルションのような1つ以上の相からなる流体系により溶媒和(solvated)されたサンプルを含むガス、液体および溶液として存在するあらゆるサンプルを意味する。また、用語「流体サンプル」とは、最初は固体または粘性液体として装置内に導入されるサンプルであるが、一定量の溶媒を添加することにより分散または溶解されるサンプルをも意味する。同様に「流体サンプル」とは、サイクロンに通されるガスサンプル中の粒状物質が適当な溶媒中に懸濁されているものをも意味する。サンプルの例として、川等の環境から収集される流体サンプル、尿サンプルのように患者から収集される流体サンプル、スワッブ(分泌物)のように患者から収集される粘性サンプル、上記特許文献3に開示されているように、空気中の粒状物質が流体収集チャンバ内に捕捉されるサイクロンに空気が通されるときに収集される流体サンプル等があるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書で使用するとき、用語「機能的薬剤(functional agent)」とは、固体薬品または本発明の装置または方法で使用される生物学的薬剤または物理的薬剤(physical agent)を意味し、固形粉末、ビーズ、カプセル、圧縮錠剤等の1つ以上の化学的薬剤または生物学的薬剤がある。試薬の適当な例として、溶菌試薬(lysis reagents)例えばカオトロフィック塩(chaotrophic salts)、核酸ターゲット、核酸合成コントロール、バクテリオファージ、親液性酵素(lyophilised enzymes)、染料、洗剤、抗生物質、抗体等があるが、これらに限定されるものではない。このような試薬は、流体サンプル中の検体、例えば抗体等で任意にコーティングされた磁気粒子に結合できる固相結合剤を含むように処理することもできる。しかしながら、用語「機能的薬剤」はまた、流体サンプルと相互作用する物理的手段を含むものと理解すべきである。これらの物理的手段として攪拌器ビード、超音波発生器、加熱手段等があるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「機能的コンポーネント」とは、装置のアームに可逆的に取付けられるように設計された装置の要素を意味する。機能的コンポーネントは、本明細書の開示から明らかなように、広範囲に使用されるように設計できる。1つ以上の機能的コンポーネントの特定用途は、装置の特定用途に基いて、当業者が容易に考え得るであろう。例えば、機能的コンポーネントには、流体サンプルと相互作用する手段を含めることができる。このような手段は、例えば加熱、冷却、光学素子、超音波のようにサンプルに何らかの物理的処理を行う。或いは、機能的コンポーネントには、例えばフォイルシールを穿刺し、チャンバをキャップし、フィルタを導入する等を行うカッタとして作用することにより、チャンバ自体と相互作用する手段を設けることができる。また、機能的コンポーネントは、これに収容されたサンプルまたは検体を、装置の他のチャンバに移動させる収集器として機能させることができる。
【0022】
本発明の装置の要素を、以下により詳細に説明する。
本発明は、
(i)プラットホームを有し、該プラットホームは、
(a)サンプルの受入れに適したチャンバと、
(b)機能的コンポーネントとを備え、
(ii)上昇および下降可能なアームを有し、該アームは、前記機能的コンポーネントがアームにより昇降されるように、機能的コンポーネントに着脱可能に取付ける手段を備え、
(iii)任意のチャンバまたは機能的コンポーネントがアームに対して整合するようにプラットホームを移動させる手段を更に有する流体サンプル処理装置に関する。
【0023】
本発明は、サンプルに1つ以上の処理段階を受けさせるのに適するように設計されている。これらの処理段階には、サンプルを希釈し、1つ以上のバッファ溶液でサンプルを連続的に洗浄し、およびサンプルと1つ以上の化学的試薬とを反応させる化学的処理段階だけでなく、例えば熱放射によりサンプルを照射し、流体サンプルに音響的処理等を受けさせる等の物理的処理段階をも含めることができる。
【0024】
本発明の装置はプラットホームを有し、該プラットホームは第一チャンバおよび機能的コンポーネントを備えている。チャンバはサンプルチャンバとして知られているもので構成できる。なぜならば、このチャンバは、好ましくは流体サンプル、より好ましくは検体を備えた流体サンプルが最初に装置内に導入されるからである。サンプルチャンバは、任意であるが、装置のプラットホーム内に一体化でき、或いはプラットホームから着脱できるようにして、いずれかの場所でサンプルを充填してプラットホーム内に置くことができるように構成できる。
【0025】
機能的コンポーネントは、装置のアームに着脱可能に取付けられるように設計される。アームおよび機能的コンポーネントは、装置の作動を完全に自動化するのに使用者のいかなる相互作用も必要とせず、装置の作動を介して互いに取付けることができる。幾つかの異なる設計も可能である。1つの簡単な解決方法は、任意の機能的コンポーネントにリップを設け、該リップの下にアームのフォーク状コンポーネントが入るように設計することである。ひとたびアームが所定位置を占めると、本質的に垂直なアームの移動により、機能的コンポーネントが本質的に同方向に移動できるようになる。この設計の1つの長所は、アームのフォークと機能的コンポーネントのリップとをインターフェースさせるのに、プラットホームの移動を使用できることである。また、機能的コンポーネントは装置のプラットホームに永久的には固定されないが、必要なときに解放できる態様で、装置のプラットホームの所定位置に保持されることも必要である。この場合も多くの設計が可能である。1つの例は、プラットホームが、機能的コンポーネントが入り込む簡単な孔を有すること、および機能的コンポーネントがプラットホームから落下するのを防止するリップを機能的コンポーネントに設けることである。
【0026】
本発明の装置はまた、昇降可能でかつ機能的コンポーネントに着脱可能に取付けられるアームを有している。このアームの設計は、その一部が、アームを機能的コンポーネントに取付ける手段の設計に基いている。前述のように、アームは、機能的コンポーネントに対して着脱可能に取付けられるように設計するのが好ましい。簡単な設計の一例は、アーム自体の平面に垂直な平面内にあるアームのベースにフォークを設け、該フォークが機能的コンポーネントの回りに嵌合できるようにすることである。スロットおよび挿入手段はアームの移動に対して本質的に垂直な態様で配向され、アームおよび機能的コンポーネントの他の取付け手段を全く不要にすることが好ましい。
【0027】
本発明の装置には、アームを好ましくは実質的に垂直方向に昇降させる手段を設けるのが好ましい。この手段は、好ましくは電気で駆動される機械的手段であるのが好ましい。アームの移動経路はできる限り簡単にすべきである。アームは、チャンバに対して上下方向に1次元内で簡単に移動するのが好ましい。プラットホーム自体を移動できるようにするこの設計は、プラットホームまたは任意の機能的コンポーネントまたはそのチャンバに対するアームの方向を調節するのに、ひとたび上昇または下降したアームを更に移動させる必要がないように確保できる。
【0028】
装置はまた、プラットホームの任意の所与のコンポーネントの位置をアームの位置に対して変えることができるようにプラットホームを移動できる手段を有している。機能的コンポーネントおよびチャンバがプラットホーム上でリニアに整合されるようにプラットホームが配置される状況では、プラットホーム自体が左右にリニア方向に移動して、機能的コンポーネンツまたはチャンバをほぼ整合させる。或いは、機能的コンポーネンツとチャンバとがプラットホーム上で1列になるようにプラットホームが配置される場合には、前記手段はプラットホームを並進させ、機能的コンポーネンツまたはチャンバをほぼ整合させる。或いは、この場合にも、機能的コンポーネンツおよびチャンバがプラットホーム上で円形態様に配置されるようにプラットホームが設計される場合には、プラットホームは、機能的コンポーネンツまたはチャンバとほぼ整合するように回転する。これはアームの移動のための機構を簡単化できる長所を有するだけでなく、複雑な多段サンプル処理反応に使用するように設計された装置では、他の物理的処理手段も必要に応じてチャンバ内に下降されるプラットホームの上方に位置決めできる。プラットホーム自体が移動できない場合には、アームおよび任意の付加物理的手段は、所望のプラットホームの機能的コンポーネントまたはチャンバを正しいシーケンスで配向しかつ次に必要に応じてプラットホームに向かって下降および上昇させるには、複雑な3次元機構を用いてプログラムされる必要がある。
【0029】
プラットホーム自体は任意のサイズおよび形状にすることができる。しかしながら、プラットホームは、本質的に円形でかつチャンバまたは機能的コンポーネンツをアームまたは他の物理的手段に対して整合させるべく回転移動できることが好ましい。またこれにより、幾つかの異なるコンポーネンツが含まれる場合に、装置のサイズを最小にできる長所を有する。任意であるが、プラットホームには、該プラットホームがアームの下またはプラットホームの上方に位置する他の物理的処理手段の下を移動するときに、機能的コンポーネントまたはチャンバの正しい位置決めを可能にする検出機構を設けることができる。
【0030】
前述のように、機能的コンポーネントは広範囲の種々の用途を有している。一方では、機能的コンポーネントには、サンプルと相互作用するように設計されたコンポーネントを設けることができる。例えば、機能的コンポーネントには、プラットホーム上に貯蔵される超音波発生器、ヒータ、光学的検出器、光学的信号を発生する手段等を含めることができる。必要な場合には、機能的コンポーネントは、装置のアームにより上昇され、所望チャンバ内に下降され、かつ必要に応じて作動される。このような場合には、機能的コンポーネントと装置のアームとの間の連結は、使用中に機能的コンポーネントに電力を充分に供給できる電気的接続であるのが有効である。
【0031】
或いは、機能的コンポーネントは、プラットホーム上に配置されたチャンバと相互作用するように設計できる。装置の所望の用途に基いて行うことができる種々の多くの相互作用がある。これらの例として、機能的コンポーネントが、装置の任意のチャンバに存在する任意のシールすなわち膜を穿刺するカッタとして作動できるように設計できる。あらゆるこのようなカッタは、カッティング手段にスリットを設けて、カッタが流体サンプルを有するチャンバのシールを切断するのに使用される場合に、流体サンプルがカッタ自体の中に吸引されないで、表面張力によってカッタ上に保持されるように設計されるのが好ましい。或いは、機能的コンポーネントは、アームにより所定位置に持上げられかつ必要に応じてチャンバの頂部上に取付けることができるフィルタで構成されるように設計できる。任意であるが、必要に応じてチャンバの頂部に取付けることができる蓋で構成されるように設計できる。また、プラットホーム上の所与の位置は、装置のアームにより移動されるプラットホーム上の所与の位置において、互いに上下に重ね合わされる幾つかのこのような機能的コンポーネントで構成できる。
【0032】
また、機能的コンポーネントは、検体または試薬を、プラットホーム上の一チャンバからプラットホーム上の他のチャンバへと移動させるのに使用できる。一実施形態では、このような機能的コンポーネントは、検体または試薬を必要に応じて錯体に結合するのに適した固相結合剤と組合せて使用される。固相結合剤および検体または化学的試薬は、錯体が形成されるように互いに接触して配置される。前述のように、錯体を移動させるのに使用される機能的コンポーネントは、次に装置のアームに取付けられて、第一チャンバ内に下降される。錯体は機能的コンポーネントに吸着され、機能的コンポーネントは上昇され、プラットホームは、第二チャンバがアームの下に配置されるように移動し、機能的コンポーネントが下降されかつ錯体が解放されて、結合された物質を一チャンバから他チャンバへと移動させる。機能的コンポーネントは、錯体を第一チャンバから取出すことができることが必要であるため、機能的コンポーネントの性質は、使用される結合物質に基いて定められる。また、機能的コンポーネントは、錯体を装置の第二チャンバ内に沈殿させることができる必要があり、このため、機能的コンポーネントと、結合された錯体との間の相互作用は必然的に可逆的(reversible)でなくてはならない。機能的コンポーネントは、結合剤が検体との錯体であるとき、および結合剤が単独であるときのいずれの場合にも結合剤を移動させることができるのが好ましい。これにより、機能的コンポーネントを、錯体を一チャンバから他チャンバへと移動させるのに使用できるだけでなく、結合剤を必要に応じて任意の所与のチャンバに(またはチャンバから)添加または除去できるという長所が得られる。
【0033】
目標検体と結合して錯体を形成できるものであれば、広範囲の種々の固相結合剤を使用できる。当業者ならば、検体およびプロトコルに基いて適当な結合物質を容易に決定できるであろう。結合物質の例として、シリカビーズ、塩、抗体またはDNA結合タンパク質と結合できる抗原を含有する試薬等がある。結合物質への検体の結合は、多くの方法で行うことができる。検体は結合物質の表面に吸着され、或いは結合物質の表面に吸収され、またはクーロン電荷により結合物質に吸着される。或いは、結合物質と検体との間にはフォーマルな化学的結合が形成される。或いは、結合物質に、対象とする特定検体を結合できる生化学的結合部位を設けることができる。検体が結合物質に付着した状態に維持されて一チャンバから他チャンバへと結合物質が移動される充分に強力な結合が得られる限り、本発明にはあらゆる結合機構が適している。結合物質への検体の結合は、反応チャンバ内で検体が結像物質から解放されて更に化学的または物理的処理を受けられるように可逆的であるのが好ましい。結合物質から検体を取出すのに使用できる任意の適当な手段として、加熱、希釈、溶解(融解)等がある。対象とする物質の添加前に、結合物質をチャンバ内に存在させるか否かは任意である。或いは、結合物質は、対象物質の添加後にチャンバに添加でき、更には、試薬の場合には、試薬が既に結合剤を有するように試薬を配合できる。
【0034】
結合物質は、磁気シリカビーズで形成するのが好ましい。適当なビーズとして、Roche社、Promega社およびEstapor社から供給されているものがある。いずれにせよ、機能的コンポーネント自体を、ビーズが吸着される磁石で形成するか、該磁石と組合せて使用できる。従って、機能的コンポーネントは、錯体を吸着する手段と錯体自体との間の界面を形成するシースで形成するのが好ましい。シースはプラットホーム上に配置され、かつ磁石がシース内にあるときに錯体がシースに吸着されるような材料で作られるのが好ましい。このような実施形態では、装置は、磁界を付与すべくシース内に下降されかつ磁界を除去すべくシースから上昇されるアームと同位置の磁石を有するのが好ましい。次にシースは、結合された錯体を有する装置のチャンバ内に配置される。磁石はシース内に下降されかつ錯体はシースに結合される。次に、シースおよび磁石が上昇される。プラットホームは新しいチャンバが整合されるように移動し、次にシースおよび磁石が下降されかつ磁石が取出される。磁石が取出されると、錯体はシースから離れて第二チャンバ内に入る。アームによるシースの小さい上下移動により、錯体がシースに結合された状態に留まることがなくかつ新しいチャンバ内で錯体と任意の試薬または溶液とが混合するように作用させることが確保される。或いは、検体は、任意の適当な手段によりビーズから溶離される。装置がこのような実施形態を有するように設計される場合には、磁石およびアームが互いに他方の作動に影響を与えることなく相互作用するように設計され、シースが、磁石を所定位置に置いて(または所定位置に置くことなく)独立的に上昇および下降させる必要がある。この作動は、プロトコル中に、錯体またはビーズ自体のいずれかを除去すべく反復できる。
【0035】
装置は、装置の1つ以上のコンポーネンツがプラットホームから取外されかつ装置から取出されるように設計されるのが好ましい。これにより、装置の作動中または使用前または使用後にチャンバを容易に置換できる。例えば、流体サンプルは遠隔でサンプルチャンバ内に充填され、次にサンプルチャンバを本発明の装置のプラットホーム内に装填する。或いは、サンプルの処理後に、処理された検体を有する最終チャンバを本発明の装置から容易に取出し、この物質を他の場所で更に操作しまたは処理することができるならば有効である。同様に、装置の特定用途に基いて、装置の1つ以上のコンポーネンツを変えることができるならば有効である。例えば、対象とする試験手順に基いて、チャンバの1つに予配合試薬、または特定の必要試薬を設けることができる。このようなチャンバが容易に交換可能であれば、使用者は、必要チャンバを選択して、使用前に該チャンバを装置内に装填できる。プラットホームがこのような交換可能なチャンバを有するならば、使用中にチャンバを所定位置に固定するロッキング手段を装置に設け、プラットホームの移動中にチャンバが移動しないようにするのが好ましい。また、このような交換可能なチャンバをカラーコード化またはバーコード等でマークしておくならば、使用者は、どの用途にはどのチャンバが必要であるかを容易に識別できる。任意であるが、装置にバーコードまたは同様なリーダを設けるならば、装置自体が使用されるチャンバを識別し、かつこの情報を用いて、予めプログラムされたサンプル処理サイクルの1つを選択することができる。
【0036】
装置は、プラットホーム全体を容易に取外して交換できるように設計するのが好ましい。これにより、所与の任意のサンプル処理シーケンスの後に、使用されかつ潜在的に汚染されたプラットホームを取外して交換し、次の処理に装置を使用することができる。装置をそのように設計されるならば、例えば簡単なロックが行えるツイストロックを用いることにより、プラットホームを装置に容易かつ確実に取付けることができる。
【0037】
任意であるが、発明の装置には、1つ以上の他のチャンバを設けることができる。装置の使用に基いて、これらの他のチャンバには幾つかの役割をもたせることができる。このようなチャンバの一例として、サンプルを希釈しまたは洗浄し、或いは一サンプルから他サンプルへとまたは一チャンバから他チャンバへと汚染物が通ることを防止するため、使用前または使用後に機能的コンポーネントを洗浄するサンプル処理プロトコルで必要とされるバッファ溶液または水を有する1つ以上のチャンバを設けることができる。或いは、装置には、所定のサンプル処理に必要な任意の特定試薬を有するチャンバを設けることができる。このようなチャンバには、製造時に必要な溶液または試薬を予め充填しておき、使用者がエラーすることを防止し、所定分野で必要とされる機器を最少にし、サンプル汚染を防止し、かつ使用者が危険物質に触れる危険を最小にすることができる。必要まチャンバおよび試薬の数は、選択される所定のサンプル処理プロトコルに基いて定まる。これらのチャンバは、前述のように、検体を一チャンバから他チャンバに移動させることにより当該プロトコルで使用できる。或いは、これも前述のように、試薬を一チャンバから他チャンバに移動できる。所与のプロトコル中に検体および試薬の両方を移動すべき場合には、結合錯体を各場合に同じものとして、物質を移動させるのに単一のコンポーネントで済むようにするのが好ましい。任意であるが、装置は、1つ以上の試薬が機能的コンポーネントの外面上に乾燥(好ましくはフリーズドライ)されるように、或いは、1つ以上の試薬が、機能的コンポーネントにより移動される適当な着脱可能なアタッチメントの外面上にフリーズドライされるように設計できる。いずれにせよ、試薬は、チャンバ内に下降されている機能的コンポーネントまたは適当な着脱可能アタッチメントによりサンプル処理プロトコル内に導入でき、試薬は機能的コンポーネントの外部から溶解される。適当な着脱可能アタッチメントは、例えば、外面上に試薬をフリーズドライできる磁気機能的コンポーネントのを使用により移動される、金属チップを備えたプラスチック本体で単に構成できる。このような機能的コンポーネントまたは適当な着脱可能アタッチメントはバッチで用意でき、かつ発生される表面張力によりときどき妨げられる小さい磁気ビーズが解放されるという問題を解決する。さらに強調すべきは、試薬は機能的コンポーネントまたはシース上に異なる高さでフリーズドライでき、これにより、フリーズドライされた物質を所望チャンバ内に次々と徐々に下降させることにより、各試薬が溶解される。これにより、異なる試薬を次々に溶解でき、或いは、異なる量の所与の薬剤が次々に溶解されるため、試薬が反応混合物に経時的に添加される。これにより、所与のプロトコルについての本発明による装置の設計のフレキシビリティが更に高められる。
【0038】
従って、任意であるが、装置には、固相結合錯体の幾つかの異なる個体群(populations:ここでは、1つ以上の異なる試薬および/または検体が各個体群に結合される)を設けることができる。このような異なる個体群は、固相結合物質に本質的に同じ特性を維持するが、小さい差を有し、異なる個体群の容易な分離が行えることが有効である。例えば、個体群はこれらの磁気特性で異ならせることができ、これにより、同じ機能的コンポーネントおよび装置設計を用いて、加えられる磁界の強度を単に変えるだけで、弱い磁気特性をもつものから強い磁気特性をもつものを分離できる。或いは、個体群を、これらのサイズ、電荷、蛍光特性または渦流が加えられたときの特性で異ならせて、これらの各々を、本発明による装置内で異なる個体群を分離するのに使用できる。これにより、所与のサンプル準備プロトコルを遂行するユニットとしての装置の能力が更に高められる。
【0039】
装置の1つ以上のチャンバ内で使用できる適当な試薬として、酢酸カリウムおよびトリス塩酸塩の水溶液、または酢酸カリウムおよびトリス塩酸塩のアルコール水溶液、またはこれらの混合物の有機溶媒、カオトロフィック塩等の溶菌試薬、1つ以上の核酸増幅試薬を含む試薬からなる群から選択されたバッファ溶液と、より好ましくは、核酸プライマ、核酸プローブ、蛍光染料、酵素バッファ、ヌクレオチド、マグネシウム塩、ウシ(牛)の血清アルブミン、抗体および変性剤からなる群から選択された試薬とがある。
【0040】
本発明での使用に適したチャンバとして、使用者が容易に選択できるように、膜により分離されかつ単一ユニットに一体化された幾つかの異なる領域を有するチャンバがある。例えば、サンプルチャンバは、所与のプロトコルに必要な試薬を収容する第二チャンバと一体化できる。或いは、チャンバは、穿刺できる膜により分離された2つの領域で構成できる。これにより、第一操作段階を第一領域で行い、膜を穿刺し、処理される物質が第二領域に流入し、次に第二操作段階を第二領域で行うことが可能になる。
【0041】
また、装置の1つ以上のチャンバは、これらも装置のアームに着脱可能に取付けられるように設計できる。これにより、必要な場合にはチャンバを装置から機械的に取外すことができる。任意であるが、プラットホームは、凹部をもつように設計して、プラットホームから取外される任意のチャンバがアームにより凹部を通って下降されるように構成し、これにより、チャンバが他の装置に直接干渉できるようにするか、使用者が手動で取外すことができるように構成できる。
【0042】
装置に使用する任意のチャンバ(特に、予配合された試薬を有するチャンバ)は、製造時点でシールして、使用前の物質の汚染または劣化を防止するのが好ましい。チャンバが膜により分離された1つ以上の異なるチャンバを有する場合には、各チャンバは個々に開かれるように別々にシールするのが好ましい。このようなチャンバをシールする好ましい手段は、金属シール、好ましくは積層金属シールを使用することである。或いは、サンプルチャンバに蓋を設け、該蓋を、フィールド内にサンプルを収集した後に蓋が閉じられサンプルチャンバを装置内に挿入する前に汚染されないように防止すべくシールする。このようなシールは、装置の蓋内で凹状の形状を有し、これにより、蓋が閉じられるときに使用者の親指または他の指がシールと接触することはない。これにより、使用者がサンプルを不意に汚染(この汚染は誤った試験結果を与える)することが防止される。これは、使用者が異なる場所から種々のサンプルを収集した場合、またはサンプルが使用者の被覆上に存在する生物学的物質を含んでいる場合に特に重要である。このような蓋には、該蓋が閉じられるときに使用者と接触する蓋の側部から凹んでいるシールを設けることができる。このシールは、蓋を閉じる前または閉じる間に使用者が不意にシールに接触しないように蓋の両側面から凹ませるのが好ましい。いずれにせよ、本発明はまた、容器を閉じるのに適した蓋に関し、該蓋は膜を有しかつ膜が蓋内で凹んでいるという特徴を有している。オペレータは、チャンバの使用前に任意のシールを除去できる。或いは、前述のように、必要に応じて任意のシールを穿刺すべく機械的に作動できるカッタを装置に設けることができる。
【0043】
任意であるが、装置の1つ以上のチャンバに捕捉部材(トラッピング部材)を設けることができる。適当な捕捉部材として、マイクロ流体チップ、固相物質、フィルタ、フィルタスタック、親和性マトリックス、磁気分離マトリックス、サイズエクスクルージョンコラム、毛管およびこれらのマトリックスがある。これらは、サンプルが最初に装置内に導入されるときにサンプルを濾過するのに使用されるか、必要に応じて、サンプル処理プロトコル中に濾過段階を構成するのに使用できる。
【0044】
前述のように、サンプルの処理には物理的処理段階を含めることができる。このような物理的処理段階として、熱的、音響的、光学的、超音波的、電気的な処理、検出またはモニタリング技術等がある。このような物理的処理段階は、多くの異なる態様で行うことができる。前述のように、これらの物理的処理は、プラットホーム上に貯蔵されかつ装置のアームにより移動される機能的コンポーネントを用いて、チャンバ内のサンプルに対して行われる。好ましくは、装置は、該装置のアームと同様な態様で、プラットホーム上方で装置内に配置された1つ以上の物理的処理手段を有している。このような手段は、所与のチャンバ内に下降され、必要なときは前記処理手段の直ぐ下に配置され、次に、もはや必要でなくなったときはチャンバから取出されるように理想的に設計される。装置のプラットホームは移動できるので、任意の所与のチャンバをこのような物理的処理手段に対して位置決めすることもできる。任意であるが、装置には、必要に応じて、プラットホームが付加物理的処理手段に対して正しく位置決めされることを確保する手段を設けることができる。このような手段の例として、チャンバの内容物を加熱する手段、チャンバの内容物に超音波を作用する手段、チャンバ内に光学的信号を導入する手段、チャンバからの光学的信号を検出する手段、電気信号をチャンバ内に導入する手段等があるが、これらに限定されるものではない。装置には、チャンバの内容物を加熱する手段またはチャンバの内容物に超音波を作用する手段の1つ以上を設けるのが好ましい。こらの手段は、増幅前に生物学的物質を有するサンプルを処理するのに使用されるときに特に有効である。
【0045】
或いは、装置の所与のチャンバは、該チャンバが収容する任意の物質が装置内で直接、または装置が必要な付加コンポーネンツを有するように変更されるとき、またはチャンバが装置の他のピースに関連して使用されるように設計される場合には、物理的処理を受けることができるように変更できる。例えば、サンプルが処理中に加熱する必要がある場合には、チャンバの壁に、チャンバの内容物を暖めることができる加熱手段を設けるか、上記特許文献4に開示されているように、チャンバの壁に導電性ポリマーをコーティングして、電流を流すことによりチャンバが加熱されるように構成できる。また、1つ以上のチャンバの壁を可撓性にして、音響的処理ができるようにするか、光の1つ以上の波長を透過できるようにして、光学的処理、検出またはモニタリングができるように構成できる。このような物理的処理が必要な場合には、チャンバが、物理的処理を必要とする任意の手段に容易かつ効率的にアクセスできるように装置を設計すべきである。装置が、核酸増幅反応の前に生物学的物質を含有するサンプルを処理するのに使用される場合には、チャンバのうちの1つが導電性ポリマーでコーティングされかつ透明窓を有しており、これにより、このチャンバを使用して増幅反応の遂行およびリアルタイムモニタリングが行なえるように構成するのが好ましい。
【0046】
装置が、物質を加熱または冷却するチャンバを備えている場合には、急速熱交換が行えるように、チャンバが高い表面積/体積比を有することが好ましい。このようなチャンバの一例として、毛管がある。これらは、少量の流体サンプルの加熱または冷却を行うのに理想的である。しかしながら、流体サンプルの表面張力により、流体サンプルを毛管内に導入するのは困難である。従って、場合によっては、プラットホームを高速回転させて、流体サンプルが遠心力により毛管内に導入されるように構成するのが好ましい。これは、本質的に円形のプラットホームを設けたことによる他の長所が得られる。装置がこのように使用される場合には、流体を収容している全てのチャンバが凹部をもつように設計され、これにより、このようなチャンバ内の全ての流体がプラットホームの回転中に解放されないように構成するのが好ましい。また、プラットホームの回転中にチャンバが自由に揺動できるように、1つ以上のチャンバをピボットを用いてプラットホームに取付け、流体が毛管内に押入れられるように構成するのが好ましい。
【0047】
従って、前述のように、本発明の装置は、任意であるが、プラットホームに取付けられかつアームを用いてサンプル処理時に作動すべく移動される物理的処理手段を備えた機能的コンポーネントを設けるように設計できる。或いは、前述のように、チャンバ内に機械的に下降されることにより所与のチャンバと相互作用できる、プラットホームの上方に配置される物理的処理手段を設けることもできる。例えばサンプル加熱手段、サンプルに超音波を作用する手段等のように高価でかつ作動電力を必要とするこれらの手段は、プラットホーム上方の装置内に永久的に配置するのが好ましい。装置の使用時に生じるサンプル汚染を防止するため、これらの手段は洗浄すべきである。或いは、洗浄試薬を保有するチャンバを設け、使用後に前記手段を前記試薬保有チャンバ内に下降させることができるようにし、かつこの洗浄作動を、装置の自動化された作動と一体化させることができる。同様に、廃棄されるように容易に設計できるこれらの機能的コンポーネントは、プラットホーム上に配置されかつ装置のアームにより移動されるように構成するのが好ましい。いずれにせよ、装置の作動の終時に、その構成コンポーネンツを含むプラットホーム全体を装置から取外して、廃棄することができ、これによりサンプル汚染を最小にできる。このようなコンポーネンツの例として、カッタ、結合された検体結合物質錯体を移動させるシース、フィルタ等がある。
【0048】
任意であるが、装置には、対象とする検体の他の操作手段または検体モニタリング手段を一体化できる。例えば装置には、反応チャンバ内の1つ以上の物質を検出できる光学的システムを設けることができる。装置が光学的検出器を有する場合、または光学的検出器と組合せて使用される場合には、光学的検出器は、入射光からの干渉を受けることなく検出が行えるように光シールされるのが好ましい。
【0049】
装置自体は広範囲の種々の設計、形状、サイズにすることができ、かつ特定用途に基いて多くの異なる材料で作ることができる。装置のコストを最小にしかつ経済的に実施できるようにするため、チャンバは、熱可塑性材料例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル、ナイロンまたはブタジエン−スチレンコポリマーまたはこれらの混合物等の安価な材料で製造するのが好ましい。装置またはその構成部品は、透明、半透明または不透明にすることができる。不慣れな使用者でも装置を正しく使用できるように補助するため、任意のチャンバをカラーコード化することができる。
【0050】
装置は、現場で使用できるようにポータブルに構成するのが好ましい。いずれにせよ、装置は、軽量、簡素なデザインおよび最小電力消費にすべきであり、また理想的には極端な温度条件下でも使用できるように設計すべきである。装置は、約−30℃〜約+50℃の温度範囲で有効に作動するように設計するのが好ましい。
【0051】
また、装置の作動は完全に自動化するのが好ましい。完全自動化は、使用の容易性および使用者のエラーの低減を含む幾つかの利益が得られる。装置を自動化するには、装置と、適当にプログラムされた内部コンピュータまたは外部コンピュータまたは他の適当な制御手段とインターフェースさせるのが有効である。任意であるが、制御手段は、該制御手段が2つ以上のプロトコルでプログラムされかつ使用者が適当なオプショナルインターフェースから所望のプロトコルを選択できるものを選択できる。装置がこのように自動化される場合には、装置が、例えばサンプルチャンバの熱サイクルおよび光学機器の制御のプログラミングおよび制御を行う制御手段を有することが好ましい。自動化のシーケンスは、サンプルの処理に要する時間を最短にするように設計するのが好ましい。
【0052】
本発明の実施形態は、所定のプロトコルに従って流体サンプルの処理を行う。
本発明はまた、核酸増幅反応の前にサンプルを処理するための本発明の装置の使用方法に関する。
他の態様によれば、本発明は、
(i)検体を含むサンプルを、装置のプラットホーム上に配置された第一チャンバ内に置く段階と、
(ii)検体を結合物質に結合させて、検体/結合物質の錯体を形成する段階と、
(iii)錯体を可逆的に吸着する手段を第一チャンバ内に下降させて、錯体が前記吸着手段に吸着されるようにする段階と、
(iv)第一チャンバから前記吸着手段を上昇させる段階と、
(v)第二チャンバが前記錯体の可逆的吸着手段に整合するようにプラットホームを移動させる段階と、
(vi)前記錯体の可逆的吸着手段を第二チャンバ内に下降させて、錯体が前記吸着手段から離脱されるようにする段階とを有し、
前記検体は、第一チャンバまたは第二チャンバ内で物理的処理段階を受けることを特徴とする流体サンプル処理方法に関する。
【0053】
物理的処理段階は超音波を作用する段階または加熱段階であるのが好ましい。また、本発明の方法および関連装置は、更に化学的処理段階を受けるように設計することもできる。いずれにせよ、この構成により、本発明の方法は、広範囲の種々のサンプル処理プロトコルにフレキシブルに適合できる。
【0054】
更に別の態様によれば、本発明は、核酸増幅反応の前にサンプルを処理するのに、本発明による方法を使用する方法に関する。核酸物質を解放するには、通常、第一段階として、サンプル内の任意の気泡質物質を溶菌(lyse)する必要がある。溶菌は、任意であるが、例えばグアニジン塩酸塩のようなカオトロフィック試薬を用いて、化学的溶菌段階により行うか、例えば超音波の付与または前記カオトロフィック試薬と超音波付与の両方を用いた物理的溶菌段階により行うことができる。サンプルの超音波付与は、存在することがある胞子の初期破裂に特に有効である。この場合、検体は、検体を洗浄するバッファを備えた2つの異なるチャンバを通して移動されるのが好ましい。バッファは、任意であるが洗浄剤を含むエタノールおよび他の任意の試薬(例えばトリス塩酸塩)を有している。次に、サンプルに、幾つかのPCR試薬、例えばプライマ、プローブ、蛍光染料、酵素、ヌクレオチド等がサンプルに添加される。任意であるが、核酸物質は、他の増幅反応剤が溶解される少量の予加熱された水を使用して、結合物質から溶離できる。最後に、反応混合物は熱サイクルを受け、増幅反応をモニタしかつ目標物質を確実に識別する任意のリアルタイム光学的分析を行う。
【0055】
更に別の態様によれば、本発明はまた、核酸増幅反応の前にサンプルを処理するための本発明の装置に結合物質を使用する方法に関する。
図1は、本発明の装置1を示す斜視図である。装置1は、ツイストロック4により所定位置に保持されるプラットホーム2を有している。プラットホーム2は幾つかのチャンバおよび機能的コンポーネントを有している(図3に詳細を示す)。プラットホーム2は、ステッパモータ6および駆動ベルト(図示せず)により回転駆動される。プラットホームの位置は、インデックスセンサ(図示せず)を用いておよびステッパモータ6の運動をモニタリングすることによりモニタされる。プラットホーム2の上方にはアーム10が配置されており、該アーム10は、プラットホーム2上の機能的コンポーネント(詳細には示さない)に着脱可能に取付けるフォーク12を有している。アーム10は、チャンバ68をプラットホーム2の上方に保持する上昇位置にあるところが示されている。装置はまた、アーム12のフォークの直ぐ上に配置された磁石14を有している。磁石14は、上昇位置にあるところが示されている。更に装置は、加熱手段16を有している。この加熱手段16もプラットホーム2の上方に配置され、上昇位置にあるところが示されている。装置は更に、サンプル(該サンプルもプラットホーム2の上方に配置されかつ上昇位置にあるところが示されている)に超音波を作用する手段18を有している。アーム10および磁石14のリニア運動は、駆動ベルト22が取付けられかつリニアアクチュエータ24により制御されるモータ20により駆動される。加熱手段16およびサンプルに超音波を作用する手段18のリニア運動も同様にモータ20により駆動されかつリニアアクチュエータ26、28によりそれぞれ別個に制御される。装置は更に、制御パネル30および電源32を有している。
【0056】
図2は、本発明の装置を示す横断面図である。ここに示すコンポーネンツは、リニアアクチュエータ24が示されていない点を除き、図1に示したコンポーネンツと同じである。この図面には更に、プラットホーム2および該プラットホームの位置を検出するセンサ42を回転させるモータ6に取付けられた駆動ベルト40が示されている。
【0057】
図3には、核酸増幅の前に流体サンプルを処理するように設計された装置のプラットホーム2を示す平面図である。プラットホーム2は、ツイストロック機構4を用いて装置に取付けられている。プラットホームは、2つの機能的コンポーネンツすなわちカッタ50およびシース52を有している。各機能的コンポーネントの両側にはリップ54が設けられており、該リップ54は、機能的コンポーネントが装置(図示せず)のアームと相互作用することを可能にする。リップ54は、プラットホーム2が回転するとき、アーム10のフォーク状コンポーネントが機能的コンポーネントのリップの下で摺動できるように配向されている。装置はまた、幾つかのチャンバ56、58、60、62、64、66、68を有している。これらの各チャンバは、後述のように、異なる役割を有している。チャンバ56、58、60、64、66は断面が楕円形であり、これらのチャンバの底部には、それぞれ円形凹部560、580、600、640が設けられている。チャンバ62は断面が円形である。チャンバ68は断面が円形で、チャンバのベースの毛管(参照番号680で示す)に向かって細くなっている。チャンバ68は更にリップ70を有し、該リップ70は、チャンバ68が装置(図示せず)のアームと相互作用することを可能にする。チャンバ68は、ソケット74に取付けられたスピンドル72を用いて装置に取付けられている。チャンバ60、62は、単一の容器76内に一緒に取付けられている。この容器76は、プラットホーム2から取外すことができる。プラットホーム2はまた、切欠部78を有している。
【0058】
核酸増幅前に流体サンプルの処理を行う装置およびプラットホームの使用方法について、上記図面およびこれらに加えて図4〜図9を参照して以下に説明する。
サンプルチャンバ60を備えた容器76は、選択される検定に基いて選択される。チャンバ62は、前記検定に必要な幾つかの試薬が予配合される。DNA検体を有する流体サンプルが収集されて、サンプルチャンバ60内に入れられる。サンプルチャンバ60には、化学的溶菌試薬(chemical lysis reagent)のグアニジン塩酸塩が予配合される。次に、磁気結合ビーズ100がサンプルに添加され、サンプル容器の蓋が閉じられる。サンプルチャンバ60およびサンプル/試薬チャンバ62を備えた容器76がプラットホーム2上に装填される。次に、プラットホーム2が装置1に装填されかつツイストロック4を用いて所定位置にロックされる。アーム10が下降されかつプラットホーム2が回転され、これによりフォーク12がカッタ50のリップ52の下面と係合する。次にアーム12が上昇されかつプラットホーム2が回転され、これにより、チャンバ56がカッタ50の下に配置される。アームが下降され、かつカッタ50が、チャンバ56を覆っている積層金属膜(図示せず)を穿刺する。このことが反復されることにより、カッタ50はチャンバ58、60、62、64、66、68を覆っている膜を連続的に穿刺する。
【0059】
図4は、装置のチャンバ(例えばチャンバ56)の頂部の積層膜(図示せず)を穿刺する機能的コンポーネント(ここではカッタ50)の作動を示す断面図である。チャンバ56はプラットホーム2に取付けられている。図4には、アーム(図示せず)のフォークと係合するのに使用される機能的コンポーネント52のリップが示されている。
【0060】
図5は、機能的コンポーネント(ここではカッタ50)をアーム10のフォーク12に取付ける部分の詳細を示す。アーム10のフォーク12は、リップ52の下面と係合する。
【0061】
装置の全ての積層膜が穿刺されたならば、プラットホーム2を回転させ、アーム10を下降させ、かつアームのフォーク12とカッタのリップ52とが離脱するようにプラットホームを回転させることにより、カッタ50がプラットホーム2上の元の位置に戻される。
【0062】
次にプラットホームが回転され、これによりサンプルチャンバ60が、サンプル18に超音波を作用する手段18の直ぐ下に配置される。サンプルに超音波を作用する手段18はサンプルチャンバ60内に下降されて、サンプルへの超音波付与が開始される。これにより、サンプル中に存在するあらゆる胞子を溶菌する物理的溶菌段階が与えられ、あらゆるDNAが解放される。同時に、化学的試薬のグアニジン塩酸塩も作用してサンプル中のあらゆる細胞の化学的溶菌が行われる。DNAが解放されると、DNAは磁気結合物質に結合して、錯体を形成する。超音波付与が完了すると、サンプルに超音波を作用する手段18がサンプルチャンバ60から取出される。サンプルに超音波を作用する手段18は、これが貯蔵される前に、2つの洗浄チャンバ56、58内で洗浄される。これらのチャンバ56、58には、適当なバッファ、例えば50%エタノール水溶液が予配合されている。サンプルに超音波を作用する手段18はサンプルチャンバ60から上昇され、プラットホーム2は、バッファチャンバ56がサンプルに超音波を作用する手段18の直ぐ下に配置されるように回転され、サンプルに超音波を作用する手段はバッファチャンバ56内に下降され、短時間付勢されて、上昇される。この手順はチャンバ58についても反復される。2回目の洗浄後に、サンプルに超音波を作用する手段18が上昇されかつ貯蔵される。
【0063】
次に、アーム10が下降され、プラットホーム12は、フォーク12がシース54のリップ52の下面と係合するように回転される。次に、アーム10が上昇され、これによりシース54がプラットホーム2の上方に上昇される。次に、プラットホーム2は、サンプルチャンバ60がシース54の直ぐ下に位置するように回転される。アーム10が下降され、これによりシース54がサンプルチャンバ60内に下降される。次に、磁石14がシース54内に下降され、磁気ビーズ100(該磁気ビーズにDNAが結合される)がシース54に吸着される。次にアーム10が上昇され、これにより、シース54が上昇されて、サンプルチャンバ60から出る。磁石14は、シース54内に留まるようにして、アーム10と同時に上昇される。
【0064】
図6は、機能的コンポーネント(ここではシース54)の作動を示す断面図であり、磁石14が、結合された検体をサンプルチャンバ60から吸引しているところを示すものである。チャンバ60はプラットホーム2に取付けられている。シース54は、アーム(図示せず)により、サンプルチャンバ60内に収容されたサンプル102内に下降される。磁石14はシース54内に挿入され、磁気ビーズ100(該磁気ビーズにDNAが錯体化される)がシース54に吸着される。
【0065】
磁気ビーズ100に結合されたDNAは、次に2つのバッファ内で洗浄される。プラットホーム2は、トリス塩酸塩バッファ溶液を収容する第一バッファチャンバ64がシース54(該シースには磁気ビーズ100が吸着されている)の直ぐ下に位置するように回転される。アーム10が下降され、これによりシース54がバッファチャンバ64内に下降される。磁石14は下降させないでおく。このことは、ビーズ100はもはやシース54に吸着されず、バッファ溶液中に落下することを意味する。アーム10の急速昇降およびこれによるシース54の小さい垂直移動により、全てのビーズ100がシース54から解放されて、バッファ溶液と良く混合されることが確保される。次にシース54が下降されて第一バッファチャンバ64内に戻される。磁石14はシース54内に下降され、依然としてDNAが結合されている磁気ビーズ100はシース54に再付着する。このプロセスは反復されて、第二バッファチャンバ66内に収容された50%エタノール水溶液からなる第二バッファ内でビーズを洗浄する。DNAが結合された磁気ビーズ100を第二バッファチャンバ66内で洗浄した後、アーム10が上昇され、これにより、シース54が上昇され、磁気ビーズ100はバッファチャンバ66内に残される。しかしながら、シース54はプラットホーム2に戻されず、アーム10に取付けられた状態に保持される。
【0066】
ここで、反応チャンバ68が加熱手段16の直ぐ下に位置するようにように、プラットホームが回転される。反応チャンバ68は、毛管680を備えた下方領域90および上方領域92を有している。下方領域90は、積層膜94により上方領域92から分離されている。上方領域92には、約100μl(マイクロリットル)の少量の水が入れられている。ここで、加熱手段16が反応チャンバ68の上方領域92内に下降され、かつ水96を約90℃の温度に加熱すべく付勢される。水96が加熱されたならば、加熱手段16が上昇されて、反応チャンバ68から取出される。次に、加熱手段16が、将来の使用のために装置1上に貯蔵される。
【0067】
図7は、装置1の1つのチャンバ(ここでは反応チャンバ68)内の一定量の溶液96を加熱するための物理的処理手段(ここでは加熱手段16)の作動を示す断面図である。反応チャンバ68はプラットホーム2に取付けられている。加熱手段は、反応チャンバ68の上方セクション92内に保持された水96を加熱する。反応チャンバ68の上方セクション92および下方セクション90は、無傷の膜94により分離されている。
【0068】
DNAが結合された状態に維持されている磁気ビーズ100を備えた第二バッファチャンバ66がシース54の直ぐ下に位置するように、プラットホームが再び回転される。アーム10が下降され、これによりシース54が第二バッファチャンバ66内に下降される。磁石14が再びシース内に下降され、ビーズ100がシース54に再び取付けられる。シース54および磁石14は両方が上昇され、プラットホームは、反応チャンバがここでシース54の直ぐ下に位置するように回転される。アーム10が下降され、シース54を反応チャンバ68の上方セクション92内に下降させる。前と同様に、磁石14は下降されないため、ビーズ100はもはやシース54に吸着されることはない。ビーズ100は反応チャンバ68の上方セクション92内に解放される。前述のように、アーム10およびシース54を僅かに昇降させることにより、全てのビーズがシース54から解放される。次に、DNAが、温水96によりビーズ100から溶離される。アーム10が上昇され、これによりシース54が反応チャンバ68から取出される。
【0069】
図8は機能的コンポーネント(ここではシース54)の作動を示す断面図であり、磁石14が、結合された検体100を反応チャンバ68内に解放するところを示すものである。磁気ビーズ100は、加熱された水96が磁気ビーズ100からDNAを溶離させる反応チャンバ68の上方セクション92内に解放される。
【0070】
プラットホームが再び回転され、これにより、反応チャンバ62(該反応チャンバ内には、核酸増幅反応のために必要な試薬が予配合されている)がシース54の直ぐ下に配置される。アーム10が下降され、これによりシース54が試薬チャンバ62内に下降される。試薬(図示せず)は、磁気ビーズ(図示せず)にも結合されるように予配合されている。シース54がひとたび試薬チャンバ62内の所定位置に位置決めされると、磁石14がシース54内に下降され、試薬が結合された磁気ビーズがシース54に吸着される。シース54および磁石14は一緒に上昇されて、試薬チャンバ62から試薬(図示せず)を除去する。次にプラットホーム2が回転され、ここで、反応チャンバ68がシース54の直ぐ下に位置決めされる。次にアーム10が下降され、これによりシース54が反応チャンバ92の上方セクション内に下降される。ここでも磁石14が下降されることはなく、このため、試薬が結合された磁気ビーズが、シース54から反応チャンバ68の上方セクション92内に解放される。試薬は温水96により磁気ビーズから溶離される。溶離の完了後に、アーム10は再びシース54とともに所定位置に下降される。磁石14はシース54内に下降され、反応チャンバ68の上方セクション92内の全ての磁気ビーズ(すなわち、検体からの試薬のためのビーズ)はシース54に吸着される。ビーズを取出すべくシース54および磁石14の両方が上昇され、かつプラットホーム2が回転される。次にビーズが、廃棄物として、使用済みのバッファチャンバの1つの中に沈殿される。ビーズがシース54から解放された後、シースは、再びアーム10の移動およびプラットホーム2の回転を用いることにより、プラットホーム2上の初期位置に戻される。
【0071】
今や、反応チャンバ68の上方セクション92は、精製された核酸と、増幅反応に必要な試薬とを有する状態になる。ここでアーム10を用いてカッタ50をピックアップする。プラットホーム2が再び回転され、反応チャンバ68がカッタ50の直ぐ下に位置決めされる。アーム10が下降され、これによりカッタ50が反応チャンバ68内に下降される。カッタ50は膜94を穿刺し、DNAおよび試薬を含有する水96が、反応チャンバ68の下方セクション90内に滴下する。アームを用いてカッタ50を取出すのではなく、カッタは、反応チャンバ68をシールするストッパとして機能する反応チャンバ68内に所定位置に残される。
【0072】
図9は反応チャンバ68の断面図であり、機能的コンポーネント(ここではカッタ50)が、反応チャンバ68をシールする所定位置にあるところを示している。カッタ50は、反応チャンバ68の上方セクション92と下方セクション90とを分離する膜94を穿刺して、DNA検体および核酸増幅反応のための試薬を含有する水96が毛管680に流入できるようにするのに使用される。カッタ50は所定位置に維持されて、増幅反応中に溶媒が反応チャンバ68から蒸発しないように反応チャンバ68をシールする。
【0073】
DNAおよび試薬を含有する水96を反応チャンバ68の毛管680内に押しやるため、プラットホーム2が高速で回転される。流体96は、遠心力によって毛管680内に押しやられる。これは、回転中に、反応チャンバ68が、ソケット74に取付けられたスピンドル手段72によりプラットホーム上で枢動されるという事実により補助される。また、高速回転中に、チャンバ56、58、60、64、66内に収容された液体がこぼれないようにするため、これらのチャンバは、図3に示すように、楕円形断面を有しかつ基部に円形凹部が設けられた構造に設計されている。この内部設計により、こぼれが完全に防止される。
【0074】
DNAおよび核酸増幅を含有する水96が毛管680に流入した後は、サンプルの核酸増幅反応が整ったことになる。この段階で、反応チャンバ68は、装置1から手で取出して、核酸増幅が行われる他の装置で使用することができる。しかしながら、この場合には、単一装置により更に核酸増幅およびその光学的検出を行うことができるようになっている。これらの作動は、装置1の下半部(図示せず)で行われる。プロセスを完全に自動化するため、反応チャンバ68は、他の機能的コンポーネンツ50、54と同様に装置アーム10により操作できるようにリップ98に適合されている。アーム10は下降され、かつプラットホーム2は、反応チャンバ68のリップ98がアーム10のフォーク12と係合するように回転される。次にアーム10が上昇され、これにより、反応チャンバ68が上昇される。上昇された反応チャンバ68が図1および図2に示されている。次に、切欠部78が上昇した反応チャンバ68の下に整合するように、プラットホームが回転される。次にアームが下降され、これにより反応チャンバが切欠部78を通って装置1の下方部分内に下降される。装置の下方部分内に配置されると、熱サイクラ(thermal cycler)を用いて核酸増幅を行ない、毛管680および光学的検出器内の反応混合物を加熱および冷却して目的生成物を検出する。これは、毛管680が導電性ポリマーでコーティングされ、これにより毛管680の迅速加熱および冷却が可能であるという事実により補助される。
【0075】
核酸増幅の完了後に、カッタ50、シース54、チャンバ56、58、60、62、64、66および反応チャンバ68を含むプラットホーム2は全て装置から取外されて、廃棄される。次に、必要な要素を含む新しいプラットホームが装置に導入され、該プラットホームは、他のサンプル操作に再び使用される。
【0076】
図10は、サンプル容器212に取付けられた凹状膜206を備えた本発明の蓋200の断面図である。サンプル210はチャンバ212内に導入される。サンプル210が汚染されないようにチャンバ212をシールするには、蓋200を使用すべきである。本発明の蓋200は膜206(例えば積層膜)を有し、該膜206は、後で更に処理すべくサンプルにアクセスするため、穿刺することができる。サンプル210が膜206から相互汚染されることを防止するため、膜206は、蓋200内で凹状にされる。これは、使用者が蓋200に触れて上側または下側から蓋を閉じるときに、使用者と膜206との間にそれぞれギャップ202または204が存在することにより達成される。いずれにせよ、使用者が膜206を汚染することはない。この場合、蓋200は、ヒンジ型フランジ208を介してサンプルチャンバ212に取付けられる。しかしながら、蓋をチャンバに取付ける必要はなく、種々のサンプル容器に広範囲に使用できるように、蓋を単独で製造することができる。
蓋200は膜206を有し、該膜206は、サンプルにアクセスするため、
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の装置全体を示す側断面図である。
【図3】プラットホームを示す平面図である。
【図4】装置のチャンバ上の積層膜を穿刺する機能的コンポーネント(ここではカッタ)の作動を示す断面図である。
【図5】アームのフォークへの機能的コンポーネント(ここではカッタ)の取付けを示す詳細図である。
【図6】機能的コンポーネント(ここではシース)の作動を示す断面図であり、結合された検体を磁石がサンプルチャンバから吸着しているところを示すものである。
【図7】装置の1つのチャンバ内の一定量の溶液を加熱する物理的処理手段(ここでは加熱手段)の作動を示す断面図である。
【図8】機能的コンポーネント(ここではシース)の作動を示す断面図であり、結合された検体を磁石が反応チャンバ内に解放しているところを示すものである。
【図9】反応チャンバの断面図であり、機能的コンポーネント(ここではカッタ)が反応チャンバをシールする所定位置にあるところを示す
【図10】凹状シールを備えた本発明の蓋を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(iv)プラットホームを有し、該プラットホームは、
(c)サンプルの受入れに適したチャンバと、
(d)機能的コンポーネントとを備え、
(v)上昇および下降可能なアームを有し、該アームは、前記機能的コンポーネントがアームにより昇降されるように、機能的コンポーネントに着脱可能に取付ける手段を備え、
(vi)任意のチャンバまたは機能的コンポーネントがアームに対して整合するようにプラットホームを移動させる手段を更に有することを特徴とする流体サンプル処理装置。
【請求項2】
前記機能的コンポーネントは円形であることを特徴とする請求項1記載の流体サンプル処理装置。
【請求項3】
前記アームは、機能的コンポーネントに機械的に着脱可能に取付けられることを特徴とする請求項1または2記載の流体サンプル処理装置。
【請求項4】
前記アームを実質的に垂直方向に昇降させる手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の流体サンプル処理装置。
【請求項5】
前記機能的コンポーネントは、チャンバ内のサンプルから検体を取出すのに使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の流体サンプル処理装置。
【請求項6】
前記チャンバは、検体との錯体を形成できる固相結合物質を有していることを特徴とする請求項5記載の流体サンプル処理装置。
【請求項7】
前記固相結合物質はシリカであることを特徴とする請求項6記載の流体サンプル処理装置。
【請求項8】
前記錯体を吸着する手段を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項記載の流体サンプル処理装置。
【請求項9】
前記錯体吸着手段は磁石であることを特徴とする請求項8記載の流体サンプル処理装置。
【請求項10】
前記機能的試薬は、錯体吸着手段と錯体自体との間の界面を形成するシースであることを特徴とする請求項8または9記載の流体サンプル処理装置。
【請求項11】
物理的処理手段を更に有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の流体サンプル処理装置。
【請求項12】
前記物理的処理手段は、チャンバの内容物を加熱する手段であることを特徴とする請求項11記載の流体サンプル処理装置。
【請求項13】
前記物理的処理手段は、チャンバの内容物に超音波を作用する手段であることを特徴とする請求項11記載の流体サンプル処理装置。
【請求項14】
前記チャンバは、少なくとも一部が導電性ポリマーでコーティングされていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項記載の流体サンプル処理装置。
【請求項15】
予め分配された試薬を備えたチャンバを有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項記載の流体サンプル処理装置。
【請求項16】
前記試薬は、他の固相結合物質に結合されていることを特徴とする請求項15記載の流体サンプル処理装置。
【請求項17】
核酸増幅反応の前にサンプルを処理するのに、請求項1記載の装置を使用することを特徴とする使用方法。
【請求項18】
(vii)検体を含むサンプルを、装置のプラットホーム上に配置された第一チャンバ内に置く段階と、
(viii)検体を結合物質に結合させて、検体/結合物質の錯体を形成する段階と、
(ix)錯体を可逆的に吸着する手段を第一チャンバ内に下降させて、錯体が前記吸着手段に吸着されるようにする段階と、
(x)第一チャンバから前記吸着手段を上昇させる段階と、
(xi)第二チャンバが前記錯体の可逆的吸着手段に整合するようにプラットホームを移動させる段階と、
(xii)前記錯体の可逆的吸着手段を第二チャンバ内に下降させて、錯体が前記吸着手段から離脱されるようにする段階とを有し、
前記検体は、第一チャンバまたは第二チャンバ内で物理的処理段階を受けることを特徴とする流体サンプル処理方法。
【請求項19】
前記物理的処理段階は超音波を作用する段階であることを特徴とする請求項17記載の流体サンプル処理方法。
【請求項20】
前記物理的処理段階は加熱段階であることを特徴とする請求項17記載の流体サンプル処理方法。
【請求項21】
前記サンプルは化学的処理段階も受けることを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項記載の流体サンプル処理方法。
【請求項22】
核酸増幅反応の前にサンプルを処理するのに、請求項17記載の方法を使用することを特徴とする方法。
【請求項23】
核酸増幅反応の前にサンプルを処理するのに、請求項17記載の方法に結合物質を使用することを特徴とする方法。
【請求項24】
容器を閉じるのに適した、膜からなる蓋において、膜が蓋内で凹状になっていることを特徴とする蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−502975(P2007−502975A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523666(P2006−523666)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003363
【国際公開番号】WO2005/019836
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】