説明

流体スプレーヘッド

流体スプレーヘッド
流体スプレーヘッドであって、スプレー開口部(1)が設けられた放出チャネルと前記放出チャネルの端部壁に形成されたスプレープロフィール(10)とを有し、前記スプレープロフィール(10)は非放射状スプレーチャネル(11)を有し、当該非放射状スプレーチャネルは、前記スプレー開口部(1)のすぐ上流に配置された中央スプレーチャンバ(12)に開いており、前記スプレー開口部(1)の中心軸(X)はスプレーチャンバ(12)の中心軸(Y)からずれており、当該ずれの距離は0.12mm未満であって、好ましくは0.08mm未満であることである、というスプレーヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体スプレーヘッドおよびそうしたヘッドを製造するためのマシーンに関する。
【背景技術】
【0002】
流体ディスペンサヘッドは、特に薬品の分野において公知である。細粒スプレーを投与するため、一般的に、ヘッドはスプレー開口部のすぐ上流に配置されたスプレープロフィールを有する。スプレー特性、特に液滴のサイズ分布とそうした特性の再現性は、前記スプレープロフィールの形状によるところが大きい。ヘッド成形中の製造誤差により、特に医薬の流体ディスペンサ装置の殆どにおいて、性能が一定でないことがわかった。具体的に言えば、このことは、特にスプレー開口部には極めて小さな寸法を要することから説明がつく。そのためには当然、比較的脆いパンチを使うことになるからである。既存の装置において、スプレープロフィールはコアピンを用いてヘッドの内部で成形される。このコアピンは、ヘッドキャビティに挿入され、また、前面にはプロフィールを有し、当該プロフィールは、ヘッド内部に形成される放出チャネルの端面に作られるスプレープロフィールに対し相補的である。一般的に、スプレー開口部を作るために使われるパンチは、ヘッド成形用のキャビティの端部壁に設けられている。したがって、注入は決して完全に同心的にはならず、その間、相当な力が前記パンチに加えられるが、このパンチは寸法が小さいため、プロフィールが形作られたピンに対しずれてしまう。このことにより、スプレー開口部の中心軸が、スプレーチャンバの中心軸からずれてしまう。こうしたずれは無視できないものとなり、特にヘッド同士の間で大きく異なってしまう可能性がある。これにより、一定のスプレー特性は実現されにくくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題を生じない流体スプレーヘッドを提供することを目的とする。
さらに具体的に言えば、本発明は、共通する鋳型から作られたヘッドであれば全てが一定かつ再現可能な流体スプレーの特性と性能とを有する、という流体スプレーヘッドを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、製造および組み立てが簡単かつ低コストな流体スプレーヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、流体スプレーヘッドであって、スプレー開口部が設けられた放出チャネルと前記放出チャネルの端部壁に形成されたスプレープロフィールとを有し、前記スプレープロフィールは非放射状スプレーチャネルを有し、当該非放射状スプレーチャネルは、前記スプレー開口部のすぐ上流に配置された中央スプレーチャンバに通じており、特徴となるのは、前記スプレー開口部の中心軸はスプレーチャンバの中心軸からずれており、当該ずれの距離は0.12mm未満であって、好ましくは0.08mm未満であることである、
というスプレーヘッドを提供する。
【発明の効果】
【0005】
効果的な構成として、前記スプレーチャンバの直径は、1mmであることとする。
効果的な構成として、前記スプレー開口部(1)の直径は、0.3mmであることとする。
さらに、本発明は、共通する鋳型キャビティから製造されるスプレーヘッドのセットであって、前記ヘッドは上述したとおり作られている、というセットを提供する。
【0006】
効果的な構成として、スプレーチャンバの中心軸に対するスプレー開口部の中心軸のずれに関する標準偏差は、共通する鋳型キャビティで作られたスプレーヘッド全てにおいて、0.03mm未満であって、効果的な構成として0.01mm未満であることとする。
さらに、本発明は、上述したヘッドを有する流体ディスペンサ装置を提供する。
さらに、本発明は、上述したスプレーヘッドを製造するためのマシーンを提供する。マシーンは、前記ヘッドの鋳型キャビティを少なくとも1つ備えた鋳型を少なくとも1つ有し、さらに、当該マシーンは、各鋳型キャビティに1本ずつのコアピンを有し、前記ピンの前面にはプロフィールが組み込まれており、当該プロフィールはヘッドのスプレープロフィールに相補的であって、当該プロフィールは、非放射状チャネルとスプレーチャンバとを形成する突起部分で作られており、前記ピンにはパンチがさらに組み込まれており、当該パンチによりディスペンサ開口部が形成される。
【0007】
効果的な構成として、前記パンチは前記ピンから取り外し可能であって、ピンを交換せず前記パンチを取替えられることとする。このため、前記パンチが成形中加えられた圧力によって破損すれば、パンチが仮に前記ピンと一体的に作られている場合そうせざるを得ないようにピン全体を交換する必要なく、パンチのみを取替えることができる。
効果的な構成として、前記パンチはニードルに固着されており、当該ニードルは、ピンの内部をその長さの相当な部分にわたって縦に延びていることとする。
【0008】
この実施の形態により、パンチの挿入、および特にパンチの取替えが必要な際の当該パンチのピンからの取り出しをより容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の他の特徴と効果とに関しては、添付図面を参照しながら、非限定的な例として示す以下の本発明の効果的な実施の形態についての詳細な説明を読めば、さらに明らかになるだろう。
本発明は、あらゆる種類の流体スプレーヘッドに適用できる。しかし、ここでは、細長いヘッド(たとえば、ヘッドの軸に沿って方向づけられたスプレー開口部を有する鼻用ディスペンサヘッド)を参照しながら説明を行う。当然のことながら、本発明は、いかなる種類のヘッド(具体的には、スプレーが横方向に投与されるヘッド)にも適用できる。
【0010】
本発明において、流体スプレーヘッドは放出チャネル(図示せず)を有し、当該放出チャネルには、スプレー開口部1と当該スプレー開口部1より上流に配置されたスプレープロフィール10とが設けられている。スプレープロフィール10は放出チャネルの端部壁に形成されており、公知の方法においては、非放射状スプレーチャネル11を有し、当該非放射状スプレーチャネルは、前記スプレー開口部1よりすぐ上流に配置された中央スプレーチャンバ12に通じている。チャネルの数は、図1において示されるように3つとすることができるが、他の何らかの形を考えることもできる。一般的に、前記放出チャネルにはインサート20が設けられ、デッドボリュームを制限し、前記スプレープロフィール10のカバーを形成している。効果的な構成として、インサートは針といったシンプルで細長い形状をしており、ヘッドの内部を通る形で挿入され、内部ノズルを形成している。このことにより、装置の駆動中にノズルが押し出される危険は完全に排除される。好ましい構成として、スプレープロフィールはヘッドの端部に設けられ、ヘッドは2つの部分、すなわち、ヘッドが形成された外側部分およびインサートが形成された内側部分のみで形成されている、という形になっている。したがって、前記インサートを囲む放出チャネルを通って流れた流体は、前記インサートの前面において、非放射状チャネル11に達する。それから流体は、渦を巻いてスプレーチャンバ12の中に入り、その後スプレー開口部1を通ってスプレーの形で放出される。
【0011】
本発明の特徴となるのは、可能な限り、スプレー開口部1の中心軸Xはスプレーチャンバ12の中心軸Yと一致する、ということである。さらに厳密に言えば、2本の軸X、Yはずれているとしても、その距離は0.12mmより小さく、0.08mmより小さくすることが好ましい。特に効果的な1つの実施の形態は、スプレーチャンバ12の直径がほぼ1mm、スプレー開口部1の直径がほぼ0.3mmである、というディスペンサヘッドに関する。軸X、Yの間のずれが大きいほど、スプレーの性能は劣化することがわかっている。さらに、軸同士の間のずれがヘッド1つ1つにより異なる場合、スプレーの特性および性能の一定性に悪影響を与えてしまう。残念ながら、標準的な方法では、後に説明するように、スプレー開口部1を形成するパンチがコアピンにではなくヘッド成形用キャビティに固着されており、共通の鋳型キャビティで作られたヘッド同士の間でも、軸Xと軸Yとの間のずれに関して相当大きな偏差が見られる。
【0012】
それに対し、本発明は、効果的な構成として、以下のものを考案する。それは、共通の鋳型キャビティで作られたスプレーヘッドでは、スプレー開口部1の中心軸Xとスプレーチャンバ12の中心軸Yとの間のずれに関して見られる標準偏差の大きさが、0.3mmより小さく、0.02mmより小さいことが効果的で、0.01mmより小さいことが好ましい、というものである。この比較的小さなずれの値と現存する標準偏差よりはるかに小さな標準偏差とは、後に説明する方法と製造マシーンとによって実現できる。これら方法と製造マシーンとにおいては、スプレー開口部1を形作るパンチが、ピンに固着され、当該ピンはヘッドキャビティの内部に配置されスプレープロフィールを形作っている、という形で形成されている。
【0013】
次のグラフは、軸X、Y同士の間のずれをmmを単位として示し、共通の鋳型キャビティで作られた30個のヘッドそれぞれについて対応するずれの値を表している。留意すべき点として、標準的な方法では、ずれの値が大きいだけでなく、標準偏差もまた相当なものであり、そのため、スプレー特性の一定性に悪影響を与えてしまう。一方、本発明は、安定した一定の値を保証する。

【0014】
次の表は、液滴サイズ分布(Droplet Size Distribution: DSD)テストを行った際の、本発明の方法と標準的な方法との比較を示している。

【0015】
この表におけるデータは、次のように理解される必要がある。すなわち、「D10平均値」については、液滴の10%が、本発明の方法では24μm未満のサイズであり、標準的な方法では25μm未満のサイズであることを意味する。留意すべき点として、本発明の「D10の標準偏差」は、標準的な方法を用いた場合のそれに比べて極めて小さい。さらに、この結論は、「D50の平均値」および「D75の平均値」にも当てはまるため、これにより、本発明によって、標準的な製造方法に比べ、より均一かつ一定で、より良い特性と性能とを有するスプレーを得ることが可能になる、ということが実証される。
【0016】
さらに具体的に図2乃至5を参照する。これらの図は、本発明のヘッドを製造するためのマシーンの部分を示している。さらに具体的に言えば、図2に示すのは、ヘッド用キャビティ(図示せず)の内部に置かれるピン100であって、前記ピンには、前面にスプレープロフィールの端部が形作られていると共に、中央放出チャネルが形作られている。このため、ピン100の前面は、ディスペンサヘッドのスプレープロフィール10に相補的なプロフィール110を有する。プロフィール110は、図5においてさらに厳密に示されているように、非放射状チャネル11とスプレーチャンバ12とを形成する突起部分を有する形にできる。本発明において、ピン100にはディスペンサ開口部1を形成するためのパンチ120がさらに組み込まれている。この実施の形態により、スプレー開口部の中心軸Xとスプレーチャンバの中心軸Yとの間のずれが一定となることが保証される。パンチ120の寸法は極めて小さい(たとえば、0.3mmである)ため、当該パンチは成形中破損することがよくある。ピン100全体を交換しなくてもよいように、パンチを取り外し可能なニードル130に固着された形にすることが効果的であり、当該ニードルは、ピンの内部に延び、ピン全体を交換しなくとも取替えるのに適したものとする。効果的な構成として、ニードル130は前記ピン100の長さの大部分にわたって延びており、場合によっては側面穴を介してそのもう一方の端部を押すだけで取り出すことができる。
【0017】
このように、本発明によれば、流体ディスペンサヘッドから投与されるスプレーの特性と性能とを改良し、さらに、それら特性の一定性を向上させる、という形で、流体ディスペンサヘッドを改良することができる。
ここまで、本発明について、その特定の実施の形態を参照しながら説明してきたが、明らかなように、本発明は前記実施の形態により限定されるものではない。それどころか、当業者であれば、本特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を逸脱しない形で、本発明に全ての有用な変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のディスペンサヘッドのスプレープロフィールの水平断面における概略図である。
【図2】本発明の実施の形態を構成する製造マシーンのコアピンを示す概略側面図である。
【図3】図2のピンの断面図である。
【図4】図3の細部Aの拡大図である。
【図5】図4に示された細部Aの概略斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体スプレーヘッドであって、
スプレー開口部(1)が設けられた放出チャネルと前記放出チャネルの端部壁に形成されたスプレープロフィール(10)とを有し、前記スプレープロフィール(10)は非放射状スプレーチャネル(11)を有し、当該非放射状スプレーチャネルは、前記スプレー開口部(1)のすぐ上流に配置された中央スプレーチャンバ(12)に開いており、
特徴となるのは、
前記スプレー開口部(1)の中心軸(X)はスプレーチャンバ(12)の中心軸(Y)からずれており、当該ずれの距離は0.12mm未満であって、好ましくは0.08mm未満であることである、
というスプレーヘッド。
【請求項2】
前記スプレーチャンバ(12)の直径は、1mmであること、
を特徴とする請求項1に記載のスプレーヘッド。
【請求項3】
前記スプレー開口部(1)の直径は、0.3mmであること、
を特徴とする請求項1または2に記載のスプレーヘッド。
【請求項4】
共通する鋳型キャビティから製造されるスプレーヘッドのセットであって、
特徴となるのは、
前記ヘッドが請求項1乃至3のいずれかにより作られていることである、
という前記セット。
【請求項5】
スプレーチャンバ(12)の中心軸(Y)に対するスプレー開口部(1)の中心軸(X)のずれに関する標準偏差は、共通する鋳型キャビティで作られたスプレーヘッド全てにおいて、0.03mm未満であって、効果的な構成として0.01mm未満であること、
を特徴とする請求項4に記載のセット。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載のスプレーヘッドを有すること、
を特徴とする流体ディスペンサ装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載のスプレーヘッドを製造するためのマシーンであって、前記ヘッドの鋳型キャビティを少なくとも1つ備えた鋳型を少なくとも1つ有し、
特徴となるのは、
各鋳型キャビティに1本ずつのコアピン(100)を有し、前記ピン(100)の前面にはプロフィール(110)が組み込まれており、当該プロフィールはヘッドのスプレープロフィール(10)に相補的であって、当該相補的プロフィール(110)は、非放射状チャネル(11)とスプレーチャンバ(12)とを形成する突起部分で作られており、前記ピン(100)にはパンチ(120)がさらに組み込まれており、当該パンチによりディスペンサ開口部(1)が形成されることである、
という前記マシーン。
【請求項8】
前記パンチ(120)は前記ピン(100)から取り外し可能であって、ピン(100)を交換せず前記パンチ(120)を取替えられること、
を特徴とする請求項7に記載のマシーン。
【請求項9】
前記パンチ(120)はニードル(130)に固着されており、当該ニードルは、ピン(100)の内部をその長さの相当な部分にわたって縦に延びていること、
を特徴とする請求項8に記載のマシーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−501113(P2007−501113A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522368(P2006−522368)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002005
【国際公開番号】WO2005/018820
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】