説明

流体ディスペンサヘッド

流体ディスペンサヘッドであって、ポンプである流体ディスペンサ部材(2)と、ダクト(43)によってノズル(45)に接続されたディスペンサ終端部材(4)と、手動で軸方向に上下移動させられることでディスペンサ終端部材(4)を移動させて流体を吐出する押下部材(6,7)と、押下部材(6,7)を保管位置と駆動可能位置との間で軸方向に移動させる回転式の制御用フープ(8)と、を備え、更に、押下部材(6,7)をその軸を中心に回転させることなく案内する軸方向案内手段(36)と、制御用フープ(8)によって回転させられる回転カム手段(56)と、を備え、回転することなく軸方向に移動するよう、押下部材(6,7)はカム手段(56)と係合している、という流体ディスペンサヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体貯蔵器と組み合わされるか、又は流体貯蔵器に取り付けられる流体ディスペンサヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ここでの「ディスペンサヘッド」との用語は、貯蔵器に取り付けられて流体ディスペンサを構成するユニット全体を指す。ディスペンサヘッドを駆動することで、流体が貯蔵器から取り出され、吐出口から吐出される。こうしたディスペンサヘッドは、香水、化粧品、更には医薬の分野において多く用いられる。
通常の形として、ディスペンサヘッドは、ポンプや弁などの流体ディスペンサ部材を有する。前記ディスペンサ部材は、全体的な構成としては、貯蔵器に対して動かない状態で取り付けられる本体と、当該本体に対して軸方向に上下移動が可能な弁ロッドとを含む。ディスペンサヘッドはまた、押下部材を有し、当該押下部材は、弁ロッドに取り付けられて、軸方向に上下移動することで弁ロッドを駆動する。流体を放出するために、ディスペンサヘッドはまた、弁ロッドに接続した吐出口を有する。従って、1本以上の指を用いて押下部材を押して弁ロッドをディスペンサ部材の本体に押し込めば、流体が貯蔵器から吐出されることになる。定量の流体が放出される構成とすることもできるが、必須ではない。
【0003】
こうした通常のディスペンサヘッドでは、押下部材に可能な移動は軸方向の上下移動のみである。そうした移動は、押下部材に形成された押圧面をユーザが1本以上の指を用いて押下することで生じる。押下部材は弁ロッドに直に取り付けられているため、弁ロッドは押下部材の移動によって直接的に動かされることになる。言い換えると、押下部材と弁ロッドとは互いに固定されており、単一の部材として一緒に、そして同時に移動させられる。
【0004】
また、従来技術におけるディスペンサヘッドには、移動軸を中心に回転運動することで押下部材に対するロック機能が実現される、という構成の押下部材を備えるものも知られている。こうした押下部材は、ロック位置と駆動可能位置との間を回転の形で移動することができる。ロック位置とは、押下部材が軸方向に移動できない位置であり、駆動可能位置とは、ロックが解除され、押下部材をユーザの押下によって軸方向に上下移動させて流体を吐出することが可能な位置である。しかしながら、押下部材は常に、弁ロッドに直接連結された状態を保ち、両者は一緒に、そして同時に軸方向移動させられることになる。
【0005】
従来技術としては、仏国特許公報第2904294号に記載されたものも知られている。ここに記載された流体ディスペンサヘッドは、ポンプと、可撓性ホースによってポンプに接続された吐出口を備える押下部材と、押下部材を回転させると共に軸方向低位置と軸方向高位置との間で軸方向移動させることのできる駆動手段と、から成る。内部カムシステムによって、押下部材の回転運動を軸方向移動に変換することができる。当該内部カムシステムを駆動するために、ユーザが手動で回転させる回転式制御用フープ(hoop)が設けられている。つまり、押下部材は、回転運動と軸方向移動との両方を強いられる。吐出口は押下部材に固定されており、ポンプは動かないため、押下部材の軸方向移動は必然的に、吐出口をポンプに接続する可撓性ホースが塑性変形することを意味する。すなわち、従来技術のディスペンサヘッドでは、ディスペンサヘッドが駆動される時だけでなく、押下部材が駆動手段によって回転させられる時にも、吐出口は押下部材と共に軸方向移動する。しかし、可撓性ホースが必ずしも望んだ通りに変形するものではないことは、経験則から分かっている。可撓性ホースが捩れる形で変形してしまい、ホース内を流体が流れることができなくなる、という事態も生じ得る。可撓性ホースには決定的に柔軟性が不足しており、こうした柔軟性の問題を軽減するための許容可能な解決策は、オーバーモールド(over-molding)法によって可撓性ホースを製造することである。しかしながら、オーバーモールド法には特別な型が必要であり、ディスペンサヘッドの原価は大きく上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許公報第2904294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、従来とは異なるが、それでも回転式制御用フープとカムシステムとによって移動させることの可能な押下部材を有する、という設計のディスペンサヘッドを定義することで、上述した従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の達成のために、本発明は、流体貯蔵器に取り付けられてディスペンサを構成する流体ディスペンサヘッドであって、流体貯蔵器に対して動かない状態で取り付けられる本体と軸方向に上下移動が可能な弁ロッドとを有するポンプである流体ディスペンサ部材と、弁ロッド上で回転するように取り付けられ、ダクトによってノズルに接続されたディスペンサ終端部材と、手動で軸方向に上下移動させられることでディスペンサ終端部材及び弁ロッドを移動させて流体を吐出する押下部材と、手動で、軸方向に移動することなく回転させられることによって押下部材を保管位置と駆動可能位置との間で軸方向に移動させる回転式の制御用フープと、を備え、押下部材をその軸を中心に回転させることなく、軸方向に、回転することなく案内する軸方向案内手段と、制御用フープによって、軸方向に移動することなく回転させられる回転カム手段と、を更に備え、回転することなく軸方向に移動するよう、押下部材はカム手段と係合している、という流体ディスペンサヘッドを提供する。
【発明の効果】
【0009】
上述した従来技術文献の場合とは異なり、ディスペンサヘッドの押下部材は制御用フープによって回転させられることはない。軸方向にのみ移動し、回転成分の運動はない。言い換えると、押下部材は貯蔵器に対して回転しない。よって、押下部材は、貯蔵器に対して方向を決め、位置決めする(index)ことができる。これは、目に見える押下部材の頂上部にロゴなどの表記がある場合に、貯蔵器に対する当該標記の位置を常に一定に定めることができるため、特に効果的である。実際、回転式制御用フープによって終端部材とカム手段とは動かされるが、軸方向案内手段によって回転を妨げられている押下部材が回転式制御用フープによって動かされることはない。本発明のディスペンサヘッドが備える全体的な形状は、先行技術文献の仏国特許公報第2904294号に示された形状にかなり類似しているが、本発明では、回転式制御用フープにより、押下部材が回転の形で動くことはなく、その一方でカム手段は回転する。
【0010】
特定の実施の形態では、ノズルが制御用フープと一体に回転させられる構成とする。また、軸方向にも移動可能とするのが効果的である。また、制御用フープによって回転させられるノズルによってディスペンサ終端部材が回転させられること、とするのが効果的である。また、ダクトが、流体吐出中の押下部材の手動による軸方向移動が可能なように、可撓性を有すること、とするのが好ましい。また、カム手段がダクトによって回転されること、とするのが効果的である。また、変形例として、ダクトを堅いものとすれば、カム手段とディスペンサ終端部材とを単一の部材として成形することも可能であろう。
【0011】
本発明の別の側面として、押下部材は、軸方向案内手段と係合する少なくとも1つの軸方向案内突起と、カム手段と係合する少なくとも1つのカムピンとを有すること、とする。また、効果的な構成として、押下部材は、円筒形であって内壁及び外壁を有するスカートを有し、軸方向案内突起は外壁に、カムピンは内壁に配されているか、その反対に、軸方向案内突起は内壁に、カムピンは外壁に配されていること、とする。
【0012】
本発明の別の特徴として、軸方向案内手段は、ディスペンサ部材を囲んで動かない状態で係合する案内スリーブに形成されていること、とする。また、効果的な構成として、案内スリーブは径方向スロットを有し、制御用フープの駆動中、ノズルは当該径方向スロット内を移動すること、とする。また、保管状態において、押下部材は案内スリーブに当接していること、とするのが好ましい。
【0013】
また、本発明の効果的な実施の形態では、カム手段は、ディスペンサ終端部材の周囲と押下部材の内側とに係合しているカムシリンダによって形成されていること、とする。
また、効果的な構成として、カムシリンダは、ダクトが嵌められたドライブスロットを有すること、とする。
まとめると、制御用フープはそれ自身の軸を中心に動かない案内スリーブ上で回転し、案内スリーブは、押下部材の回転を防ぐ一方で、押下部材を軸方向に案内する。更に、制御用フープがノズルを回転させると、これに伴い、ノズルがディスペンサ終端部材とカム手段とを回転させる。ディスペンサヘッドの構成要素の相対的な移動の結果として、押下部材は、回転式制御用フープに固定されたノズルと共に、軸方向にのみ移動する。終端部材はノズルと共に回転するので、終端部材をノズルに接続するダクトに高い可撓性を持たせる必要はない。ダクトの可撓性が利用されるのは、押下部材が手で押下されて流体が吐出されている間だけである。終端部材が軸方向に移動させられている間も、ノズルはフープに対しては静止したままである。
【0014】
留意すべきは、本発明のディスペンサヘッドが少数の部品(すなわち、ポンプを数えなければ、5つの部品)しか用いないという点である。
以下、非限定的な例としての本発明の実施の形態を示す添付図面を参照しながら、本発明についてより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の非限定的な実施の形態における流体ディスペンサを示す分解斜視図である。
【図2】図1の流体ディスペンサヘッドを示す拡大分解斜視図である。
【図3】図1、2のディスペンサヘッドを、組立後の状態で、非動作保管状態において示す縦断面図である。
【図4】図1、2のディスペンサを動作時の駆動可能状態において示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、図1を参照しながら、本発明のディスペンサヘッドの各種構成要素の構造を詳細に説明する。
ディスペンサヘッドは、本体10とネック部11とを含む流体貯蔵器1と組み合わされるものである。本体10によって、貯蔵器の容積である作業容量が定められる。ネック部11には、本体10の内部を外部に連通させる開口部が形成されている。効果的な構成として、ネック部11には、下向きの肩部12が形成された突出外周縁部が形成されている。肩部12はディスペンサヘッドを貯蔵器に留める働きをする。ここに示す本発明の特定の実施の形態では、貯蔵器は円筒形であるが、他の形状も考えられるであろう。
【0017】
この特定の実施の形態におけるディスペンサヘッドは、6つの別々の構成要素から成る(すなわち、ディスペンサ部材2、案内スリーブ3、ディスペンサ終端部材4、カムシリンダ5、押下部材6、7、そして回転式制御用フープ(hoop)8)。これら構成要素は全て、適当なプラスチック材料の射出成形で製造することができる。いくつかの構成要素(例えば、回転制御部材や押下部材)については、金属で製造することも可能である。
【0018】
ディスペンサ部材2は、底部取込口が形成された本体20を有するポンプ又は弁とすればよい。底部取込口にはディップチューブを設けても構わない。ポンプ又は弁はまた、本体内部で軸方向に上下移動可能な弁ロッド又は駆動ロッド21を有する。通常の構成として、弁ロッド21には流体用の内部流路が形成されており、当該内部流路は、出口弁によって選択的に本体20の内部と連通させられる。また、ポンプ又は弁には、ネック部11の肩部12の下に嵌る留め用タブを備えた留めリング22を装着することもできる。本実施の形態では、留めリング22はディスペンサ部材の構成要素として示してある。しかし、留めリングについては、ディスペンサ部材とは別個の要素の形とした上で、ディスペンサ部材に固定することも可能である。しかしながら、本実施の形態における留めリングは、ディスペンサ部材と一体化して1つの部分を形成するものと見なす。こうした設計は、香水、化粧品、更に医薬の分野におけるポンプ又は弁に関しては、完全に従来通りのものである。弁ロッド21が押下されることで出口弁(図示せず)が開き、そうすると、本体20に格納されている流体は弁ロッド21を通って流れ出ることが可能となる。
【0019】
ディスペンサ部材2には、案内スリーブ3が、動かない状態で取り付けられており、取り付けについては、永続的な形とするのが好ましい。つまり、案内スリーブ3は貯蔵器1に対して、軸方向に移動することも、回転の形で動くこともない。案内スリーブ3は複数の異なる技術的機能を果たす。それら機能については、ディスペンサヘッドの他の構成要素について説明した上で後述する。以下、案内スリーブ3の構造について述べる。ディスペンサヘッドの他の構成要素の大部分と同様、案内スリーブ3は、プラスチック材料の射出成形によって製造することができる。案内スリーブの全体的な形状はほぼ円筒形で、断面は円形であり、内部は中空となっている。案内スリーブは両端とも開口している。案内スリーブの下部では壁が二重となっており、その二重壁によって環状の隙間が形成されている。その内側の壁32はロック用スカートとして用いられ、貯蔵器のネック部を囲む形に係合した留めリング22をロックする。図3、4に見られるように、ロック用スカート32は留めリング22を囲む形に係合しており、それによって、留めリング22がネック部11に形成された肩部12の下から外れる事態を防止している。ロック用スカート32を囲む形で、これと同軸となる位置に外壁が延びており、当該外壁には、後述するように回転式制御用フープ8と協働する可撓性留め用タブ38が、1又は複数形成されている。案内スリーブ3の上部には、案内スリーブ上端で開口している軸方向縦ノッチ35が形成されている。当該縦ノッチ35の下端は、案内スリーブの周縁の一部にわたって設けられた径方向スロット34に接続している。一例として、スロット34は、案内スリーブの周縁の4分の1又は3分の1にわたって設けられた構成とすることができる。こうした構成により、スロット34は、縦ノッチ35を介して案内スリーブの上端に通じている。加えて、案内スリーブ3の内壁の上部には、軸方向案内手段36が形成されている。当該軸方向案内手段36は、具体的には、案内スリーブの内壁に形成された縦溝の形をしており、当該案内スリーブの上端において開口している。この縦溝については、図2に部分的に見て取ることができる。縦溝の下端は、案内スリーブの頂上から高さの約4分の1下がった位置にある。
【0020】
ディスペンサ終端部材4は、単一の部品として製造してもよいが、図2に見られるように、2つの部品として製造するのが好ましい。ディスペンサ終端部材4は、1つ目の部品としてキャップ42を有し、当該キャップ42は、ダクト43を介してノズル保持部44に接続されている。ダクト43は、ある程度の可撓性を備えるものとするのが好ましい。更に、終端部材4は、ノズル保持部44内に嵌ったノズル45を有し、当該ノズル45には吐出口46が形成されている。キャップ42は、ディスペンサ部材2の弁ロッド21の自由端に取り付けられる。よって、ロッド21から来る流体は、キャップ42、ダクト43、ノズル45を通って進み、最後に吐出口46に達する。組み立てられた状態では、図3、4に示すように、キャップ42は弁ロッド21を覆っており、ダクト43は径方向外向きに延びている。ノズル保持部44は径方向スロット34に嵌め込まれており、後述するように、スロットの長さ方向に移動可能である。径方向スロット34にノズル保持部44を嵌め込むには、軸方向ノッチ35からノズル保持部44を挿入する。図4に示すように、ノズル保持部44は径方向スロット34の外に突出している。
【0021】
カムシリンダは、ほぼ円筒形の部品であり、空洞のない形としてもよい。しかしながら、ここでのカムシリンダは下端が開口しており、キャップ42を収容するためのハウジング52を形成している。カムシリンダの外壁には、傾斜した形又は螺旋形の窪んだカム経路の形をした、1又は複数のカム手段56が形成されている。一例として、カムシリンダ5の周囲に3本のカム経路を設けることができる。やはり留意すべき点として、カムシリンダ5には、縦方向に設けられたドライブスロット54が形成されており、当該ドライブスロットはシリンダ下端において開口している。ドライブスロット54は、図4に見られるように、ディスペンサ終端部材4のダクト43を収容するためのものである。こうした構成により、ノズル保持部44が径方向スロット34内で移動する時、ダクト34がカムシリンダ5を回転させることになる。組み立てられた状態では、図3、4に示すように、カムシリンダ5は案内スリーブ3に嵌め込まれており、キャップ42はシリンダのハウジング52内に嵌っている。
【0022】
本実施の形態では、押下部材は2つの部品から成る。ただし、異なる構成として、押下部材を単一の部品で作ることも可能であろう。図に示す実施の形態では、押下部材は押下部材本体6と押下部材カバー7とから成る。本体6はプラスチック材料から製造すればよく、カバー7は金属製とすればよい。押下部材本体6は、全体的には円筒形の形状を有し、下端は開口している。更に上端も開口した構成とすることもできる。下端が開口した構成により、押下部材本体6には、外壁及び内壁を有した実質的に円筒形のスカート61が形成されている。外壁には、径方向外向きに突出した複数の案内突起63が設けられている。案内突起は、図3、4に見られるように、案内スリーブ3の軸方向案内溝36内で摺動するように嵌め込まれている。また、スカート61の内壁には、径方向内向きに突出したカムピン65が設けられている。ピン65は図3、4に見られる。ピン65は、カムシリンダ5に形成されたカム経路56に嵌っていることが見て取れる。カバー7は単なるキャップの形で、押下部材本体6のスカート61に、これを囲む形で嵌っている。このように、押下部材6、7は、案内溝36に嵌った案内突起63によって案内スリーブ3と係合している。そして更に、カム経路56に嵌ったカムピン65によって、カムシリンダ5とも係合している。こうした構成により、押下部材は、案内スリーブ3内部で軸方向にのみ移動が許され、当該軸方向の移動は、傾斜したカム経路56内でのカムピン65の移動によって生じる。
【0023】
回転式制御用フープ8については、実質的に円筒形のケース82を有しており、当該ケースの頂上部は、開口86を除き、ディスク81で閉じられている。更に、ケース82はノズル孔84を有する。制御用フープ8は案内スリーブ3に、これを囲む形で嵌められており、特定の角度、例えば90度だけ、スリーブ3を中心に回転させることができる。これを実現するために、フープ8内には、径方向の凹部83が1又は複数形成されており、これら凹部は、スナップ留め式でスリーブ3の固定用タブ38と係合する。こうした構成により、制御用フープ8は、限定された様態で、スリーブ3を中心に回転することができるが、凹部83に嵌ったタブ38によって保持されているため、スリーブ3から取り外すことはできない。図3、4を見ると、押下部材6、7はディスク81の開口86を通る形で延びていることが分かる。留意すべき点としては、ノズル保持部44がノズル45と共に孔84に嵌められ、当該孔に固定されており、その結果、制御用フープ8が回転されると、ノズル保持部及びノズルも回転することになる。
【0024】
ここで、図3、4をより具体的に参照する。以下、ヘッドの各種構成要素の相互作用及び相対的な動きを理解するために、操作サイクルを開始から終了まで通して説明する。図3では、カバー7の頂上がディスク81と同じ面に位置していることが見て取れる。つまり、押下部材全体が制御用フープ8内に収容されている。この状態では、案内突起63が案内溝36の底部に当接していることから、押下部材を駆動することはできない。変形例として、あるいは追加する形で、押下部材の底部エッジがスリーブのライザ(riser)に当接する構成としてもよい。カムシリンダ5は完全に押下部材6、7の内部に嵌め込まれており、カムピン65はカム経路56の最も低い位置にある。図には示していないが、ノズル45は径方向スロット34の一方の端の位置にある。
【0025】
この非動作保管状態から、ユーザは、一方の手で貯蔵器を掴み、他方の手で制御用フープ8を回転させることができる。また、一方の手だけで、貯蔵器を掴んでフープを回転させることも可能である。フープ8の回転運動により、ヘッドの特定の構成要素に軸方向移動及び/又は回転運動が生じる。より厳密に言えば、ノズル及びノズル保持部は、孔84の内部に動かない状態で嵌っているため、制御用フープ8に対して固定されている。従って、ノズル及びノズル保持部は回転させられることになり、そうすると、ダクト43及びキャップ42が、弁ロッド21を中心に、あるいは弁ロッド21上で回転する。加えて、ダクト43が軸方向スロット54に嵌っていることの結果として、カムシリンダ5はディスペンサ終端部材4と共に回転させられる構成となっているので、カムシリンダ5も回転させられることになる。忘れてならないのは、案内スリーブ3がディスペンサ部材2に対して動かない状態で係合していること、すなわち、ディスペンサ部材2に対する案内スリーブ3の軸方向移動や回転運動が防止されていることである。加えて、案内溝36に案内突起63が嵌っているため、押下部材はスリーブ3内での回転運動ができない。一方、カムピン65が傾斜カム経路56に係合していることから、押下部材はカムシリンダ5の回転の作用で軸方向移動させられることになる。ヘッドの各種構成要素間の相互作用は、最終的には、押下部材を、回転運動の要素なしに、軸方向にのみ移動させるという結果をもたらす。これは、図3、図4を比べて見ればはっきり分かる。これらの図からは、以下のことが見て取れる。すなわち、図4に示す動作時の駆動可能状態にある時、押下部材は制御用フープ8の外に突出しており、ユーザが手動で押下して流体を吐出できる状態となっている。ユーザの指から押下部材に加えられる力は、ロッド21に係合したキャップ42を内部に収容しているカムシリンダ5によって、駆動ロッド21に伝えられる。
【0026】
以下、ディスペンサヘッドの各種構成要素の移動運動をより深く理解できるように、各構成要素の移動可否を一覧にして示す:
・ディスペンサ部材2:貯蔵器に対して軸方向移動も回転運動もしない;
・案内スリーブ3:貯蔵器に対して軸方向移動も回転運動もしない;
・ディスペンサ終端部材4:貯蔵器に対して回転運動可能であるが、軸方向成分の移動はない(駆動中を除く);
・カムシリンダ5:貯蔵器に対して回転運動可能であるが、軸方向成分の移動はない(駆動中を除く);
・押下部材6、7:貯蔵器1に対して軸方向移動は可能であるが、回転運動はできない;
・回転式制御用フープ8:貯蔵器に対して回転運動可能であるが、軸方向成分の移動はない。
【0027】
言い換えると、ディスペンサ部材2とスリーブ3とは互いに強固に固定されており、貯蔵器に対して移動しない;ディスペンサ終端部材4とシリンダ5とは互いに強固に固定されており、貯蔵器に対して回転運動は可能であるが、押下部材の手動駆動中を除いて、軸方向成分の移動はない;制御用フープ8とノズル45とは、貯蔵器に対して回転運動が可能であるが、軸方向成分の移動はない;押下部材6、7は軸方向にのみ移動が可能であり、回転成分の運動はない。
【0028】
なお、本発明の範囲から逸脱しない形の変形例として、以下が考えられる:
− 貯蔵器、案内スリーブ、押下部材及び/又は制御用フープの断面は、円形以外の形としてもよい。例えば、押下部材のスカート61が円形でない場合は、案内突起63をなくすこともできる。案内スリーブ内での押下部材の回転が、押下部材自体の形状によって妨げられるからである。その場合、押下部材の成形はより容易になる。ただし、フープの開口86の形状及び/又はサイズについては、押下部材が回転しないように定める必要がある。
【0029】
− ダクト43は必ずしも可撓性とする必要はない。堅いものとしてもよいが、その場合は、長方形のノズル孔84を設けて、押下部材の手動駆動中にノズル及びノズル保持部が当該長方形の孔の中で軸方向に摺動できる構成とする必要がある。そうした場合でも、ノズル及びノズル保持部は、やはりフープと共に回転させられることになる。こうした構成とすれば、終端部材4はカムシリンダ5と一体に成形することすら可能であり、その場合、ノズルは別個の部材として装着してもよいし、そうしなくてもよい。このようにした場合、構成要素の数を1つ減らすことができる。
【0030】
− 案内スリーブ3は必ずしも、貯蔵器のネック部へのディスペンサ部材の固定に関与する必要はない。
− ディスペンサ終端部材4は、2つ、あるいは3つの別個の部品(キャップ、ダクト、ノズル保持部)として成形することができる。
本発明のディスペンサヘッドによれば、制御用フープを回転させることなく、押下部材を低い非動作保管位置と高い動作時駆動可能位置との間で移動させることができる。加えて、ユーザによる押下部材の手動駆動中は静止しているフープに係合しているため、流体が吐出されている間、ノズルは完全に静止している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯蔵器(1)に取り付けられてディスペンサを構成する流体ディスペンサヘッドであって、
流体貯蔵器(1)に対して動かない状態で取り付けられる本体(20)と軸方向に上下移動が可能な弁ロッド(21)とを有するポンプである流体ディスペンサ部材(2)と、
弁ロッド(21)上で回転するように取り付けられ、ダクト(43)によってノズル(45)に接続されたディスペンサ終端部材(4)と、
手動で軸方向に上下移動させられることでディスペンサ終端部材(4)及び弁ロッド(21)を移動させて流体を吐出する押下部材(6,7)と、
手動で、軸方向に移動することなく回転させられることによって押下部材(6,7)を保管位置と駆動可能位置との間で軸方向に移動させる回転式の制御用フープ(8)と、を備え、
押下部材(6,7)をその軸を中心に回転させることなく、軸方向に、回転することなく案内する軸方向案内手段(36)と、
制御用フープ(8)によって、軸方向に移動することなく回転させられる回転カム手段(56)と、を更に備え、
回転することなく軸方向に移動するよう、押下部材(6,7)はカム手段(56)と係合していること、
を特徴とする流体ディスペンサヘッド。
【請求項2】
ノズル(45)が制御用フープ(8)と一体に回転させられる構成であること、
を特徴とする請求項1に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項3】
制御用フープ(8)によって回転させられるノズル(45)によってディスペンサ終端部材(4)が回転させられること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項4】
ノズル(45)は、制御用フープ(8)と一体に回転させられると共に軸方向に移動せられ、ダクト(43)が、流体吐出中の押下部材の手動による軸方向移動が可能なように、可撓性を有すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項5】
ダクト(43)は堅く、カム手段(56)及びディスペンサ終端部材(4)は単一の部材として成形されていること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項6】
カム手段(56)がダクト(43)によって回転されること、
を特徴とする請求項4に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項7】
押下部材(6,7)は、軸方向案内手段(36)と係合する少なくとも1つの軸方向案内突起(63)と、カム手段(56)と係合する少なくとも1つのカムピン(65)とを有すること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項8】
押下部材(6,7)は、円筒形であって内壁及び外壁を有するスカート(61)を有し、軸方向案内突起(63)は外壁に、カムピン(65)は内壁に配されているか、その反対に、軸方向案内突起(63)は内壁に、カムピン(65)は外壁に配されていること、
を特徴とする請求項7に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項9】
軸方向案内手段(36)は、ディスペンサ部材(2)を囲んで動かない状態で係合する案内スリーブ(3)に形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項10】
案内スリーブ(3)は径方向スロット(34)を有し、制御用フープ(8)の駆動中、ノズル(45)は当該径方向スロット(34)内を移動すること、
を特徴とする請求項9に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項11】
保管状態において、押下部材(6,7)は案内スリーブ(3)に当接していること、
を特徴とする請求項9又は10に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項12】
カム手段(56)は、ディスペンサ終端部材(4)の周囲と押下部材(6,7)の内側とに係合しているカムシリンダ(5)によって形成されていること、
を特徴とする請求項1又は11に記載の流体ディスペンサヘッド。
【請求項13】
カムシリンダ(5)は、ダクト(43)が嵌められたドライブスロット(54)を有すること、
を特徴とする請求項12に記載の流体ディスペンサヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−513529(P2013−513529A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542601(P2012−542601)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052630
【国際公開番号】WO2011/070285
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(502343252)アプター フランス エスアーエス (144)
【Fターム(参考)】