説明

流体供給装置の管理方法

【課題】流体供給装置から一定品質の流体を安定して供給する。
【解決手段】流体供給装置の流路内に流体を一定時間封入し、その封入前後の流体の不純物成分量から、その流路内における不純物成分の単位時間当たりの変化量を求める(ステップS1〜S5)。そして、その変化量を、予め設定された許容変化量と比較することにより、流路内に封入した流体の品質や流路の清浄度を判定する(ステップS6,S7)。一定の品質が確認された後、流体供給装置からの流体の供給を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給装置の管理方法に関し、特に、流体を供給する流体供給装置の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体や気体等の流体を所定の供給先へと供給する流体供給装置は、様々な分野で広く利用されている。例えば、半導体製造工場では、ウェーハに所定の処理を行う製造装置に対して、その処理に用いる液体やガスを供給するための流体供給装置が設置されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【特許文献1】特開平06−097086号公報
【特許文献2】特開2002−143657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、流体供給装置では、たとえ外部からの受入れ時の流体が規格に適合する品質であったとしても、流路に汚染源が存在していて、その汚染源から不純物が流体に混入してしまうと、流体の供給先で適正な処理が行われない場合がある。供給先に供給する流体の品質を確認する方法の1つに、例えば、供給先に供給される流体を流体供給装置の流体出口でサンプリングして分析する方法がある。
【0004】
しかし、流体供給装置の流体出口を流れる流体を分析する方法では、不純物を含む流体中の成分の量が、流体をサンプリングするときのタイミングやそのときの流量に影響されることがあるため、供給先に供給する流体の品質を適正に判定していない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の一観点によれば、流体供給装置の流路内の流体に含まれる成分の単位時間当たりの変化量を求める工程、及びその成分の単位時間当たりの変化量を基に、流路内の流体の品質を判定する工程を有する流体供給装置の管理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
開示の流体供給装置の管理方法によれば、供給する流体の品質を適正に判定し、一定品質の流体を供給先に安定して供給することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して詳細に説明する。
図1は流体供給装置の概念図である。
図1に示すように、この流体供給装置10は、その流体入口11から導入された流体を、流体出口12から流体供給先20へと供給するようになっている。
【0008】
例えば、流体供給装置10が半導体製造で用いるものである場合、流体供給先20としては、ウェーハ洗浄装置、レジスト現像装置、ウェットエッチング装置、ドライエッチング装置、成膜装置等が挙げられる。流体供給装置10からは、そのような流体供給先20に応じた流体、即ち洗浄液(薬液や純水)、現像液、エッチング液、エッチングガス、成膜原料(原料ガス、液体原料から気化したガス)等が供給される。
【0009】
流体供給装置10は、複数の構成要素を含んでいる。流体供給装置10の構成要素には、例えば、流体を流すための配管、継ぎ手、バルブ等のほか、流体を貯留するタンク、流体を送り出すポンプ、流体中の異物等を捕捉するフィルタ等、流体供給装置10内で流体が接触する、流体の流路となる要素が含まれる。
【0010】
ここでは一例として、流体入口11から流体出口12までの間に、第1構成要素13、第2構成要素14及び第3構成要素15の3つの構成要素が存在している場合を示している。流体入口11からの流体は、第1構成要素13、第2構成要素14及び第3構成要素15を順に通過し、流体出口12へと送られる。また、ここでは、流体供給装置10に、第1構成要素13から第3構成要素15の間で流体を循環させる循環ライン16が設けられている。
【0011】
続いて、上記のような流体供給装置10の管理方法について説明する。
流体供給装置10では、例えば、その内部洗浄後に、流体が接触する部分に洗浄不足の箇所が残っていたり、流体供給装置10の構成要素に故障や欠陥が存在していたりすると、そこが汚染源となって不純物成分が流体に混入してしまう場合がある。そのような場合、流体供給装置10から流体供給先20に一定品質の流体を供給することができなくなってしまう。従って、流体供給装置10が供給する流体の品質、及び流体供給装置10の流路の清浄度(汚染源の有無等)を適正に管理する必要がある。
【0012】
図2は流体供給装置の管理フローの一例を示す図である。
ここでは、流体供給装置10の管理に当たり、その流路(系)内、即ち流体入口11から流体出口12までの第1構成要素13、第2構成要素14及び第3構成要素15内に流体を封入する。その際、まず、流体入口11から導入されて流路内に封入される流体に含まれる所定不純物成分の量(封入前の流体の不純物成分量)を求める(ステップS1)。例えば、流体供給装置10の流路内への封入時に流体入口11を流れる流体をサンプリングして分析を行い、そのサンプルの不純物成分濃度(単位流体量当たりの不純物成分量)を測定する。
【0013】
次いで、流体供給装置10の流路内に流体を一定時間封入した状態を継続する(ステップS2)。一定時間の封入後は、その封入した流体を、循環ライン16を用いて循環させ(ステップS3)、流路内で均質化する。
【0014】
その後、その循環後の流体に含まれる所定不純物成分の量(一定時間封入後の流体の不純物成分量)を求める(ステップS4)。例えば、流体出口12の流体をサンプリングして分析を行い、そのサンプルの不純物成分濃度(単位流体量当たりの不純物成分量)を測定する。
【0015】
そして、流体供給装置10の流路内に封入した流体に含まれる不純物成分の単位時間当たりの変化量を求める(ステップS5)。例えば、上記のように封入前後の流体の不純物成分濃度を測定した場合、その不純物成分の単位時間当たりの変化量Qを、次の式(1)により求める。
【0016】
Q={(Cb−Ca)×V}/T ・・・(1)
ここで、Caは封入前の流体の不純物成分濃度、Cbは一定時間封入後の流体の不純物成分濃度、Vは封入した流体の量、Tは流体を封入し循環させた時間である。
【0017】
式(1)により不純物成分の単位時間当たりの変化量Qを求めた後は、その変化量Qと、予め設定された基準値である許容変化量との比較を行う(ステップS6)。そして、変化量Qが許容変化量を上回る場合には、流路内に封入した流体が、その不純物成分について、一定の品質を満たしていないと判定する(ステップS7)。また、不純物成分の単位時間当たりの変化量Qが、予め設定された許容変化量を下回る場合には、流路内に封入した流体が、その不純物成分について、一定の品質を満たしていると判定する(ステップS7)。このようにして一定の品質が確認された場合に、流体供給装置10の流路内に封止した流体の流体供給先20への供給を開始する。
【0018】
なお、このような判定に用いる許容変化量は、流体供給装置10の種類、流体の種類、流体供給先20で行う処理の種類等を基に、予め設定される。
流体中に複数種の不純物成分が含まれる場合には、各不純物成分について、上記同様に式(1)により単位時間当たりの変化量Qを求め、各不純物成分の許容変化量との比較を行い、それぞれ一定の品質を満たしているか否かを判定することができる。
【0019】
このように、不純物成分の単位時間当たりの変化量Qを求め、それを予め設定された許容変化量と比較することにより、流体供給装置10の流路内に封入した流体の品質を判定する。
【0020】
さらに、このようにして流体供給装置10の流路内に封入した流体の品質を判定することにより、その流路の清浄度が判定される。即ち、流路内に封入した流体が一定の品質を満たす場合には、その流路は清浄である(その流路には汚染源がない)と推定することができる。また、流路内に封入した流体が一定の品質を満たさない場合には、その流路は清浄でない(その流路に汚染源がある)と推定することができる。
【0021】
ここで、比較のため、上記のように流体供給装置10の流路内に封入した流体の変化量Qによらず、流体出口12を流れる流体のサンプリング分析によって、流体供給装置10の流体の品質及び清浄度を管理する方法について説明する。
【0022】
図3は流体供給装置の別の管理方法の説明図である。
例えば、図3に示すように、流体供給装置10の第2構成要素14に汚染源30が存在している場合を想定する。
【0023】
このように流体供給装置10の流路に汚染源30が存在している場合、例えば、そこから発生して流体出口12に到達する不純物成分の量が、流体の供給初期には微量でも、その後、時間の経過に伴って増大するような現象が見られることがある。このように流体出口12における不純物成分量が経時的に変動するような場合に、流体出口12でサンプリングした流体の不純物成分分析によって品質を判定しようとすると、次のような問題が起こる。即ち、流体の品質は、あるサンプリング時点では合格と判定されるが、別のサンプリング時点では不合格と判定されてしまう。さらに言えば、あるサンプリング時点での品質合格との判定結果を基に流体供給先20に流体を供給していても、一定時間経過後には流体供給先20に不純物成分の混入した流体が供給されてしまう。このような場合、流体供給先20で流体を用いた適正な処理が行われなくなる。流体出口12でのサンプリング回数を増やし、品質の判定頻度を増やすことも可能であるが、その場合、分析に要するコスト及び時間が増加してしまう。
【0024】
また、流体出口12の流体の不純物成分分析でその品質を判定しようとする場合に、流体の流量が比較的大きいと汚染源30からの不純物成分が希釈されてその量が規格内となるが、流量が比較的小さいと規格外となるといった現象が見られることもある。このように流体出口12における不純物成分量が流量によって変動するような場合には、流体供給装置10の実際の稼動条件を基にサンプリング条件を設定しないと、次のような問題が起こる。即ち、流体出口12のサンプリングでは品質が合格と判定されても、実際の稼動条件で流体供給先20に流体を供給したときには不純物成分が混入して適正な処理が行われなくなってしまう。
【0025】
また、これらの現象のほか、流体供給装置10では、不純物成分が汚染源30の近傍に局所的に留まり、流体出口12まで到達しないといった現象が見られることもある。このような場合、流体供給先20へは不純物成分量が規格内の流体を供給することが可能である。しかし、流体出口12の流体の不純物成分分析では、流体供給装置10の流路に汚染源30が存在しているか否か、流路が清浄か否かを判定することはできない。
【0026】
また、流体供給装置10では、流路に図3に示すような汚染源30がないにもかかわらず、流体供給装置10に流体入口11から導入される流体に元々不純物成分が含有されていれば、流体出口12では不純物成分が検出されてしまう。この場合、流体に元々不純物成分が含有されていることがわからなければ、流体出口12の不純物成分分析の結果からは、流体供給装置10内の汚染源の存在が疑われるため、その確認に余計な労力と時間を費やしてしまう。
【0027】
一方、流体供給装置10の流路内に封入した流体に含まれる不純物成分の単位時間当たりの変化量Qを用いた上記管理方法によれば、以上のような現象を考慮した流体供給装置10の管理が可能である。
【0028】
即ち、上記管理方法では、流体供給装置10の流路内に流体を一定時間封入し、流路内に封入した流体に含まれる不純物成分の単位時間当たりの変化量Qを求めることで、流路内の流体の品質を判定する。そのため、上記図3について述べたような、流体出口12を流れる流体の不純物成分量が経時的に変動したり流量によって変動したりするといった現象が、品質や清浄度の判定結果に影響するのを回避することができる。
【0029】
また、流体供給装置10の流路内に流体を一定時間封入して循環させることで、その流路内に存在する不純物成分を局所に留まらせずに確実に検出することができる。さらに、封入前後の不純物成分量から変化量Qを求めるため、不純物成分量の変化が、流路内からの発生によるものか、或いは流体入口11から供給された流体に元々含有されていたことによるものかを判別することもできる。
【0030】
このように、上記管理方法によれば、流体供給装置10の流路内の流体品質を適正に判定し、さらに、その流路の清浄度を適正に判定することができる。
なお、上記図1及び図2の説明では、循環ライン16を、第1構成要素13から第3構成要素15の間で流体を循環させるように設けたが、より狭い範囲で循環流路を構成するように設けてもよい。例えば、第1構成要素13から第2構成要素14の間で流体を循環させるように設けたり、第2構成要素14から第3構成要素15の間で流体を循環させるように設けたりすることもできる。或いは、第1構成要素13、第2構成要素14又は第3構成要素15のいずれかにおいてのみ流体を循環させるように設けるようにすることもできる。
【0031】
上記図1及び図2に示したように循環ライン16を設け、そのときの不純物成分の単位時間当たりの変化量Qが許容変化量を超えた場合には、第1構成要素13、第2構成要素14及び第3構成要素15のいずれかに汚染源が存在していると判定することができる。しかし、汚染源が第1構成要素13から第3構成要素15の間のいずれの範囲にあるか、或いは第1構成要素13、第2構成要素14及び第3構成要素15のいずれであるかをさらに特定することを要する場合もある。このような場合に、流体の循環流路をより狭めるように循環ライン16を設け、上記同様にして不純物成分の単位時間当たりの変化量Qを求めるようにすることにより、汚染源となっている構成要素の範囲或いは一の構成要素を特定することが可能になる。
【0032】
上記管理方法は、流体入口11から流体出口12までの流路全体のほか、流体入口11から流体出口12までの流路の一部に対しても適用可能である。
なお、以上の説明では、このようにして流体供給装置10の所定の流路に循環ライン16を設ける場合を例示したが、流路を構成している要素の種類やその組み合わせによっては、循環ライン16を用いずに、流路内の流体を均質化することも可能である。例えば、流路内に一定時間封入した流体の、その封入の間の流体の拡散現象を利用することによって、流路内の流体を均質化するようにしてもよい。
【0033】
また、以上の説明では、不純物成分の単位時間当たりの変化量Qを、式(1)のように、流体の所定流路内への一定時間Tの封入前後の不純物成分濃度Ca,Cbを測定することによって求める場合を例示したが、その算出方法はこれに限定されるものではない。例えば、一定時間Tの封入前後の不純物成分量の相対値(封入前後の不純物成分量の比等)を用い、不純物成分の単位時間当たりの変化量を求めることも可能である。
【0034】
以下、上記のような流体供給装置の管理方法を、具体例を挙げて、より詳細に説明する。ここでは、半導体製造工場において、ウェーハ洗浄装置にウェーハ洗浄用の薬液を供給する薬液供給装置を例にして説明する。
【0035】
図4は薬液供給装置の一例を示す図である。
薬液供給装置50は、薬液が導入される導入口51、及びウェーハ洗浄装置40に向かって薬液が供給される供給口52を有している。導入口51には、例えば、タンクローリー車によって薬品メーカから納入された薬液が直接導入され、或いはタンクローリー車によって薬品メーカから納入された薬液が貯留されている上流側タンクから薬液が導入される。また、薬液供給装置50は、導入口51から導入された薬液を内部に貯留するタンク53、タンク53に貯留された薬液を送り出すポンプ54、及びポンプ54で送り出された薬液内の異物等を捕捉するフィルタ55を有している。さらに、薬液供給装置50は、フィルタ55の下流側で供給口52の手前に設けられた供給バルブ56、及びフィルタ55を通過した薬液をタンク53に戻すための循環ライン57を有している。この循環ライン57には、流量調整バルブ57aが設けられている。
【0036】
なお、図4では、配管、継ぎ手、バルブ等の構成要素については、その図示を省略している。
ウェーハ洗浄装置40に薬液を供給する際、薬液供給装置50では、タンク53に貯留された薬液がポンプ54で送り出され、フィルタ55を通過した薬液が、開弁状態の供給バルブ56及び供給口52を通過してウェーハ洗浄装置40に送られるようになっている。ウェーハ洗浄装置40では、このようにして薬液供給装置50から供給されてきた薬液を用いて、ウェーハの洗浄処理が行われる。
【0037】
このようにして用いる薬液供給装置50の管理は、例えば、次のような流れで行う。
図5は薬液供給装置の管理フローの一例を示す図である。
まず、薬液供給装置50を新規に設置するような場合には、タンク53、ポンプ54、フィルタ55等の各構成要素の設置及びそれらの配管接続等の工事を行い、さらに、各構成要素の動作テストを行う(ステップS10)。なお、薬液供給装置50が既存の場合には、このステップS10の処理は省略される。
【0038】
そして、新規に設置した、或いは既存のものについてメンテナンスや改造等を行った薬液供給装置50に対し、純水及び薬液等を用い、薬液供給装置50内において液体が接触する部分(接液部)の洗浄を行う(ステップS11)。
【0039】
このように接液部の洗浄まで行った後、ウェーハ洗浄用の薬液である硝酸、例えば濃度61%の硝酸4000kgを、導入口51を経由してタンク53に貯留する(ステップS12)。また、この導入時に、導入口51に連通するサンプリング口58aより参照サンプル(封入前の薬液)をサンプリングする(ステップS13)。
【0040】
タンク53に薬液を貯留した後は、供給バルブ56を閉弁状態にしてポンプ54を稼動し、タンク53内の薬液を、例えば2時間、循環ライン57を用いて循環させる(ステップS14)。これにより、薬液がタンク53から送り出された後、循環ライン57を通って再びタンク53に戻ってくるまでの流路内に薬液を封入する。このとき、その流路の構成要素、即ち循環流路を構成しているタンク53、ポンプ54、フィルタ55、供給バルブ56及び循環ライン57のほか、図示しない配管、継ぎ手、バルブ等を含む構成要素が、薬液と接触した状態になる。このように流路内に薬液を封入した状態を一定時間、例えば12時間、継続する(ステップS15)。なお、その間、ポンプ54は停止させていて構わない。
【0041】
薬液を一定時間封入した後は、ポンプ54を稼動し、流路内の薬液を、例えば2時間、循環ライン57を用いて再循環させる(ステップS16)。これにより、この流路内に汚染源の構成要素が存在していた場合には、封入時にその構成要素から不純物成分が混入した薬液が流路内を循環され、流路内の薬液の不純物成分濃度が均一化されるようになる。なお、タンク53に撹拌機を設けておき、循環の間、ポンプ54と共に撹拌機を使用して、流路内の薬液の不純物成分濃度を均一化するようにしてもよい。
【0042】
流路内に封入した薬液の再循環後は、その流路に連通するサンプリング口58b、ここでは供給バルブ56の手前の流路に連通するサンプリング口58bより評価サンプル(一定時間封入後の薬液)をサンプリングする(ステップS17)。
【0043】
その後、サンプリング口58aからサンプリングした参照サンプルと、サンプリング口58bからサンプリングした評価サンプルについて、不純物成分分析を行う(ステップS18)。例えば、融合結合プラズマ質量分析装置により、複数種の金属不純物成分の定量分析を行う。そして、その分析結果を用い、上記式(1)により薬液供給装置50の流路内に封入した流体の品質を判定する。
【0044】
即ち、ここでは、上記の式(1)におけるCaを参照サンプルに含まれる所定金属不純物成分の濃度[ng/kg]、Cbを評価サンプルに含まれる所定金属不純物成分の濃度[ng/kg]とする。また、式(1)のVを流路内に封入した薬液の量[kg](=4000kg)、Tを流路内に流体を封入し循環させた時間[h](=2h+12h+2h=16h)とする。
【0045】
まず、これらの値を用い、式(1)により、各金属不純物成分についてそれぞれ、単位時間当たりの変化量Q[ng/h]を求める(ステップS19)。そして、求めた単位時間当たりの変化量Qが、各金属不純物成分についてそれぞれ予め設定された許容変化量Qx未満となるか否かを判定する(ステップS20)。許容変化量Qxは、例えば、次式(2)によって予め設定することができる。
【0046】
Qx=(Ce−C0)×D ・・・(2)
ここで、Ceはウェーハ洗浄装置40における許容不純物成分濃度[ng/kg]、C0は納入された薬液中の不純物成分濃度[ng/kg]、Dはウェーハ洗浄装置40における薬液の平均消費量[kg/h]である。
【0047】
薬液中に含まれる金属不純物成分A〜Eの5成分についての分析結果とそれを用いた判定結果の例を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1には、定量分析により得られた各金属不純物成分A〜Eの濃度Ca,Cb[ng/kg]、及びそれらの濃度Ca,Cbを用いて式(1)により算出した各金属不純物成分A〜Eの単位時間当たりの変化量Q[ng/h]を示している。また、各金属不純物成分A〜Eの許容変化量Qxは、いずれも10000[ng/h]である。表1に示した各金属不純物成分A〜Eの単位時間当たりの変化量Qと許容変化量Qxとの比較により、Q<Qxの関係を満たすのは、金属不純物成分A,C,Eの3成分であり(判定○)、金属不純物成分B,Dについては、Q<Qxの関係を満たさない(判定×)。
【0050】
表1より、流路内に一定時間封入した薬液中には、その封入の間に、金属不純物成分B,Dが許容変化量Qxを上回るようなレベルで混入していることがわかる。このように、金属不純物成分A〜Eのうちで1つでも単位時間当たりの変化量Qが許容変化量Qx以上となるものがある場合には、この薬液は薬液供給装置50外へと排出し、純水及び薬液等を用いて再度薬液供給装置50内の接液部の洗浄を行う(ステップS11)。その洗浄後は、上記同様、流路内へ薬液を封入し、各金属不純物成分A〜Eについて、単位時間当たりの変化量Qを算出し、それと許容変化量Qxとの比較を行う(ステップS12〜S20)。そして、全ての金属不純物成分A〜Eについて、単位時間当たりの変化量Qが許容変化量Qx未満となるまで、このような処理を繰り返す。
【0051】
全ての金属不純物成分A〜Eについて、単位時間当たりの変化量Qが許容変化量Qx未満となった場合には(ステップS20)、薬液供給装置50の流路内の流体を品質合格と判定する。そして、供給バルブ56を開弁状態にし、供給口52からウェーハ洗浄装置40への薬液の供給を開始する(ステップS21)。
【0052】
このような薬液供給装置50の管理方法によれば、その流路内の流体の品質及びその流路の清浄度を適正に判定することができる。それにより、ウェーハ洗浄装置40に対して一定品質の薬液を安定して供給することが可能になり、ウェーハ洗浄装置40では洗浄処理が適正に行われるようになる。その結果、高品質の半導体装置を製造することが可能になる。
【0053】
なお、ここではウェーハ洗浄装置40に薬液を供給する薬液供給装置50を例にして説明したが、上記管理方法は、他の流体供給装置についても同様に適用可能である。例えば、露光後のレジストを現像するレジスト現像装置に現像液を供給する現像液供給装置についても適用可能である。このほか、ウェットエッチング装置にエッチング液を供給するエッチング液供給装置や、ドライエッチング装置にエッチングガスを供給するエッチングガス供給装置にも適用可能である。さらに、成膜装置に成膜原料(原料ガス、液体原料から気化したガス)を供給する成膜原料供給装置にも適用可能である。なお、一の供給装置内に液体流路と気体流路とが存在しているような場合には、例えば、液体流路と気体流路のそれぞれの流路について、上記管理方法を適用することができる。
【0054】
また、上記管理方法は、このような半導体製造分野で使用される装置に限らず、様々な分野の流体供給装置について広く適用可能である。
また、以上の説明では、流体供給装置の流路内に流体を一定時間封入し、その封入の間に流体中に混入した不純物成分の変化量を基に、その流路内に封入した流体の品質を判定する場合について例示した。流路内の流体の品質は、このような不純物成分の変化量のほか、流体に本来含まれている成分の変化量を基に判定することも可能である。即ち、そのような成分の量は、不純物成分の混入によって相対的に減少するため、上記同様にして流路内に流体を一定時間封入し、その封入の間の減少量を求めることで、その品質を判定することが可能である。
【0055】
このように、流体に本来含まれている成分を対象にして上記管理方法を適用しても、流体供給装置の流路内に封入した流体の品質及びその流路の清浄度を適正に判定することが可能である。
【0056】
以上説明した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 流体供給装置の流路内の流体に含まれる成分の単位時間当たりの変化量を求める工程と、
前記成分の単位時間当たりの変化量を基に、前記流路内の流体の品質を判定する工程と、
を有することを特徴とする流体供給装置の管理方法。
【0057】
(付記2) 前記流路内に流体を一定時間封入し、封入前後の流体に含まれる前記成分の量を用いて、前記一定時間における前記成分の単位時間当たりの変化量を求めることを特徴とする付記1記載の流体供給装置の管理方法。
【0058】
(付記3) 前記流路内の流体を前記流路内で循環させて、前記流路内の流体に含まれる前記成分の単位時間当たりの変化量を求めることを特徴とする付記1又は2に記載の流体供給装置の管理方法。
【0059】
(付記4) 前記流路は、循環ラインを含み、前記循環ラインを用いて前記流路内の流体を前記流路内で循環させることを特徴とする付記3記載の流体供給装置の管理方法。
(付記5) 前記流路は、前記流体供給装置の流体入口から流体出口までの流路の一部であることを特徴とする付記1から4のいずれかに記載の流体供給装置の管理方法。
【0060】
(付記6) 前記成分の単位時間当たりの変化量を、予め設定された基準値と比較することによって、前記流路内の流体の品質を判定することを特徴とする付記1から5のいずれかに記載の流体供給装置の管理方法。
【0061】
(付記7) 前記成分は、不純物成分であることを特徴とする付記1から6のいずれかに記載の流体供給装置の管理方法。
(付記8) 前記流路内の流体に含まれる複数成分についてそれぞれ単位時間当たりの変化量を求め、前記複数成分についてそれぞれ求めた単位時間当たりの変化量を基に、前記流路内の流体の品質を判定することを特徴とする付記1から7のいずれかに記載の流体供給装置の管理方法。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】流体供給装置の概念図である。
【図2】流体供給装置の管理フローの一例を示す図である。
【図3】流体供給装置の別の管理方法の説明図である。
【図4】薬液供給装置の一例を示す図である。
【図5】薬液供給装置の管理フローの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10 流体供給装置
11 流体入口
12 流体出口
13 第1構成要素
14 第2構成要素
15 第3構成要素
16,57 循環ライン
20 流体供給先
30 汚染源
40 ウェーハ洗浄装置
50 薬液供給装置
51 導入口
52 供給口
53 タンク
54 ポンプ
55 フィルタ
56 供給バルブ
57a 流量調整バルブ
58a,58b サンプリング口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給装置の流路内の流体に含まれる成分の単位時間当たりの変化量を求める工程と、
前記成分の単位時間当たりの変化量を基に、前記流路内の流体の品質を判定する工程と、
を有することを特徴とする流体供給装置の管理方法。
【請求項2】
前記流路内に流体を一定時間封入し、封入前後の流体に含まれる前記成分の量を用いて、前記一定時間における前記成分の単位時間当たりの変化量を求めることを特徴とする請求項1記載の流体供給装置の管理方法。
【請求項3】
前記流路内の流体を前記流路内で循環させて、前記流路内の流体に含まれる前記成分の単位時間当たりの変化量を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体供給装置の管理方法。
【請求項4】
前記流路は、前記流体供給装置の流体入口から流体出口までの流路の一部であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の流体供給装置の管理方法。
【請求項5】
前記成分は、不純物成分であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の流体供給装置の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−60307(P2010−60307A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223356(P2008−223356)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】