流体光学素子、レーザ光源装置及びレーザ加工装置
【課題】媒質の屈折率の温度依存性を利用して所望の光学特性を呈する。
【解決手段】
流体光学素子10は、入射された光が通過する互いに対向する端面11A,11Bを有する容器11に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する液体12を収容してなり、少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口14が設けられている。この流体光学素子10は、第1の波長λ1のレーザ光L1の照射により上記液体12に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果、すなわち、熱レンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記レンズ効果を付与する。
【解決手段】
流体光学素子10は、入射された光が通過する互いに対向する端面11A,11Bを有する容器11に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する液体12を収容してなり、少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口14が設けられている。この流体光学素子10は、第1の波長λ1のレーザ光L1の照射により上記液体12に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果、すなわち、熱レンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記レンズ効果を付与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質の屈折率の温度依存性を利用して所望の光学特性を呈するようにした流体光学素子、上記流体光学素子を備えるレーザ光源装置及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置では、レーザビームを熱源として用い、ビームの熱によって被処理物を局所的に加熱し、穴開け、溶接、熱処理などのレーザ加工を行う。
【0003】
炭酸ガスレーザ、YAGレーザなどは強いパワーをもつのでビームを被処理物にあてて、穴穿孔、溶接などを行うことができる。ビームパワーを減らすと熱処理のために用いることもできる。穴開けに関していえば機械的なドリルによる穿孔よりも多数の穴を短時間に穿孔できるから生産性が高いといえる。
【0004】
レーザビームを対象へ導くにはミラーやレンズが必要である。炭酸ガスレーザは波長が9μm〜11μmであり赤外光であるから、それを透過できるZnSeレンズなどを用いて集光する。YAGレーザは1.06μmであるから通常のガラス材料のレンズを用いることもある。
【0005】
レーザ発光についていえば連続的に発光させる場合とパルス的に発光させる場合がある。目的によって連続光とパルス光を使い分けることができる。Qスイッチによってエネルギーの大きいパルス光を発生させてレーザ加工をするということも多い。
【0006】
従来より、レーザビームを熱源として用いるレーザ加工装置では、レーザビームの空間的なパワー分布が加工精度などに影響するので、例えば、回折型光学素子と個体レンズからなる光学系により、入力ビームプロファイル強度分布を基本型(正規分布)からある範囲では一定のパワーをもつトップハット型変換し、トップハット型のレーザビームを被処理物に照射するようにしている(例えば、特許文献1参照) 。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−114400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の如く、回折型光学素子と個体レンズからなる光学系により、入力ビームプロファイル強度分布を基本型(正規分布)からある範囲では一定のパワーをもつトップハット型トップハット型へ変換し、トップハット型のレーザビームを被処理物に照射するようにした従来のレーザ加工装置では、固体レンズが固定焦点であり、また、非常に強いレーザ光により損傷することがある。すなわち、レンズ等の光学素子は様々な場面で用いられるが、一般に焦点距離等のパラメータが固定であり、また非常に強い強度の光の入射により損傷するという問題がある。また、入力ビームプロファイル強度分布を基本型(正規分布)からトップハット型への変換が複雑であることから、入力ビーム強度の制限と、装置コスト上昇をもたらしている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、媒質の屈折率の温度依存性を利用して所望の光学特性を呈することのでき、しかも、強い強度の光の入射により損傷する虞が少ない流体光学素子、また、上記流体光学素子を備えることにより所望のビームプロファイル強度分布のレーザ光を出射することができるようにしたレーザ光源装置及びレーザ加工装置を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
物質に光を当てると、ほとんどの光は熱に変換されて熱が放出される。その物質は熱によって屈折率変化が起きる。集光したレーザ光のような強度分布のある光を当てた場合、物質はレンズと同じ効果を示すことになる。これを熱レンズ効果と呼ぶ。
【0012】
一般に流体の屈折率は温度や照射レーザ光強度とともに変化するため、これらの分布のある流体中には屈折率分布が生じる。
【0013】
ここに別のレーザー光を照射すると、ビームプロファイル(レーザー光をスクリーンなどに映したときのビームの形、すなわちレーザー光進行方向をz軸としたときの、x、y方向の光強度[W/m2]分布)は、当該流体を通過する前後で屈折率分布に特有の変化を示す。したがって、適切な屈折率分布の形成と組み合わせでトップハット型加工、凹レンズ等を形成することができる。
【0014】
すなわち、本発明では、媒質の屈折率の温度依存性を利用して所望の光学特性を得る。
【0015】
本発明は、流体光学素子であって、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る流体光学素子において、上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有しているものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る流体光学素子は、上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与するものとすることができる。
【0018】
また、本発明に係る流体光学素子において、上記第1の波長のレーザ光は、ビームシェーパを介して強度分布が与えられた状態で照射されるものとすることができる。
【0019】
さらに、本発明に係る流体光学素子において、上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして出射する上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるものとすることができる。
【0020】
本発明は、レーザ光源装置であって、第1の波長のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、第2の波長のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することを特徴とする流体光学素子とを備え、上記レンズ効果を付与した第2の波長のレーザ光を出射することを特徴とする。
【0021】
本発明に係るレーザ光源装置において、上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有しているものとすることができる。
【0022】
また、本発明に係るレーザ光源装置は、上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与するものとすることができる。
【0023】
また、本発明に係るレーザ光源装置は、上記第1の波長のレーザ光に強度分布を与えるビームシェーパを備え、上記流体光学素子は、上記第1の波長のレーザ光が上記ビームシェーパを介して強度分布が与えられた状態で上記液体に照射されるものとすることができる。
【0024】
さらに、本発明に係るレーザ光源装置において、上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記流体光学素子から出射するレンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるものとすることができる。
【0025】
本発明は、レーザ加工装置であって、第1の波長のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、第2の波長のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与する流体光学素子と、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記流体光学素子から出射するレンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるビームシェーパを備え、上記流体光学素子により上記レンズ効果を付与して上記第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記開口から出射するレーザ光源装置と、被加工物を載置するテーブルと、上記レーザ光源装置の上記開口から出射された上記第2の波長のレーザ光と該第2の波長のレーザ光が照射される上記テーブルに載置された被加工物を相対移動させる駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るレーザ光源装置において、上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有していることを特徴とするものとすることができる。
【0027】
さらに、本発明に係るレーザ光源装置において、上記第2のレーザ光源は、上記第2の波長のレーザ光としてパルス状のレーザビームを出力するものとすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、流体光学素子の容器に収容した液体に第1の波長のレーザ光の照射により温度勾配が与えられることによって、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することができ、適正な屈折率分布の形成と組み合わせでトップハット型加工、凹レンズや凸レンズ等の所望の光学特性を形成することができる。
【0029】
本発明において、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に収容した液体は、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有するので、上記液体に第1の波長のレーザ光の照射により温度勾配が与えられることによって、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた任意のレンズ効果を付与することができ、本発明によれば、適正な屈折率分布の形成と組み合わせでトップハット型加工、凹レンズ等、所望の光学特性を形成することができる。
【0030】
また、本発明において、上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有することにより、上記第1の波長のレーザ光は吸収し、上記第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を顕著に呈するものとすることができる。
【0031】
また、本発明では、上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルをビームシェーパにより任意に設定することができ、例えば、上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして出射する上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるものとすることができる。
【0032】
さらに、本発明では、上記液体を収容した上記容器の集束光が通過する端面に開口を設けることにより、強い強度の光の入射により流体光学素子が損傷する虞が少ない。
【0033】
例えば、一対の光学レンズの組み合わせでレーザ光を集光、拡大させずにビーム系(レーザ光の進行方向と直角方向のレーザ光の直径)のみを変化させ平行光を作るコリメータでは、ビーム系縮小の場合、後段の光学レンズへは前段の光学レンズで集光されたビームが入射することから、これへのダメージを防ぐために元のレーザ光強度に大きな制約があったが、上記後段の光学レンズとして本発明に係る流体光学素子を用いることにより、アスペクト比の非常に大きな数百nm〜数百mm程度の微細孔の加工等を行うことのできるレーザ加工装置を実現できる。
【0034】
すなわち、本発明によれば、媒質の屈折率の温度依存性を利用して熱レンズ効果により所望の光学特性を呈することができ、しかも、強い強度の光の入射により損傷する虞が少ない流体光学素子、上記流体光学素子を備えることにより所望のビームプロファイル強度分布のレーザ光を出射することができるようにしたレーザ光源装置及びレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用した流体光学素子の構成例を模式的に示す要部縦断面図である。
【図2】上記流体光学素子の解析モデルを示す要部縦断面図である。
【図3】上記流体光学素子の解析モデルについて温度分布解析を行った結果を示す図である。
【図4】上記流体光学素子に検出光を入射した場合の光線追跡法による検出光伝搬モデルを示す要部縦断面図である。
【図5】本発明を適用した流体光学素子を用いたレーザ光源装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】上記レーザ光源装置における流体光学素子について、検出光の空間光強度分布の計算に用いた検出光の光強度変化モデルを示す図である。
【図7】上記レーザ光源装置における流体光学素子から出射される検出光の空間光強度分布を上記検出光の光強度変化モデルで計算した結果と撮像装置により実測した結果を示す図である。
【図8】上記レーザ光源装置において、第1の波長のレーザ光のパワーを変化させた場合と、上記流体光学素子からの撮像装置までの距離を変化させた場合の、流体光学素子を介して出射される第2の波長のレーザ光の光強度分布の変化を示す図である。
【図9】上記レーザ光源装置において、流体光学素子から出射される第2の波長のレーザ光の光強度分布として得られたトップハットプロファイルを示す図である。
【図10】上記レーザ光源装置において、トップハットプロファイルが得られる流体光学素子から撮像装置までの距離を計算して得られた予測結果を示す図である。
【図11】上記レーザ光源装置において、流体光学素子から撮像装置まで距離を変化させた場合の検出光プロファイルとビーム径の変換の様子を示す図である。
【図12】上記流体光学素子を用いてコリメータの構成例を模式的に示す要部縦断面図である。
【図13】本発明を適用したレーザ光源装置を用いたレーザ加工装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0037】
本発明に係る流体光学素子10は、媒質の屈折率の温度依存性を利用して熱レンズ効果により所望の光学特性を呈するものであって、例えば図1に示すように、入射された光が通過する互いに対向する端面11A,11Bを有する容器11に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する液体12を収容してなり、少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口14が設けられている。
【0038】
この流体光学素子10は、第1の波長λ1のレーザ光L1の照射により上記液体12に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果、すなわち、熱レンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記レンズ効果を付与する。
【0039】
ここで、上記容器11として、例えば内径30mm、肉厚10mm、高さ1mmの銅製リング11Cの両端開口部を石英ガラスの端面11A,11Bで閉じたキュベットを用い、上記液体12として、例えば、サンセットイエロー染料(6-ヒドロキシ-5-[(4-スルホナトフェニル)ジアゼニル]ナフタレン-2-スルホン酸二ナトリウム(C16H10N2Na2O7S2))を0.05g/l含有するエタノールを上記容器11に収納した流体光学素子10の試料について、その温度特性を解析するとともに実測したところ次のような結果が得られた。
【0040】
すなわち、熱伝導率[W/(m・K)]を銅=380、エタノール=0.15、石英=1.4とし、第1の波長λ1のレーザ光L1(波長λ1=473nm、パワーP=10mW、ビーム径W=0.25mm)を励起光として照射した図2に示す解析モデルについて、破線で囲んだ領域の温度分布解析を次の支配方正式により行った結果を図3の(A),(B),(C)に示す。
【0041】
【数1】
【0042】
図3の(A)は、試料内の温度分布の計算結果を示し、図3の(B)は、試料内のr軸方向すなわち半径方向の温度分布の計算結果を示し、図3の(C)は、上記図3の(B)で示されるr軸方向の温度分布で示される温度勾配dT/drに比例する屈折率αrの変化による屈折の様子を模式的に示している。
【0043】
そして、上記温度分布解析を行った試料に第2の波長λ2のレーザ光L2を検出光として入射した場合、光線追跡法による検出光の伝搬モデルは、図4のようになる。
【0044】
この伝搬モデルにおいて、光線軌道は、次の計算式にて示される温度Tにおける屈折率n(T)から求められる。
【0045】
【数2】
【0046】
また、位相φiの変化は、次の計算式にて求められる。
【0047】
【数3】
【0048】
上記流体光学素子10は、液体12の屈折率の温度依存性を利用して熱レンズ効果により所望の光学特性を呈することができ、例えば図5に示すように、出射する第2の波長λ2のレーザ光L2の光量プロファイルを任意に設定可能なレーザ光源装置1を構成することができる。
【0049】
このレーザ光源装置1は、第1の波長λ1のレーザ光(波長λ1=473nm、パワーP=10mW、ビーム径φ=0.7mm)L1を出射する第1のレーザ光源2と、ガウシャン分布の光強度分布を有する第2の波長λ2のレーザ光(波長λ2=1064nm、ビーム径φ=1.0mm)L2を出射する第2のレーザ光源3と、ビームシェーパ4と、反射鏡5と、半透鏡6と、流体光学素子10を備える。
【0050】
このレーザ光源装置1において、上記半透鏡6は、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1は反射し、上記第2のレーザ光源3から出射された第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する。そして、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1は、上記半透鏡6により反射されて、励起光として上記流体光学素子10に入射される。また、上記第2のレーザ光源3から出射された第2の波長λ2のレーザ光L2は、上記反射鏡5により反射され、上記半透鏡6を通過して検出光として上記流体光学素子10に入射される。
【0051】
ここで、このような構成のレーザ光源装置1における上記試料の流体光学素子10について、図6に示す検出光の光強度変化モデルにて検出光の空間光強度分布I’(r)を計算した結果と、CCDイメージセンサを用いた撮像装置50により検出光の空間光強度分布I’(r)を実測した結果を図7の(A),(B)に示す。
【0052】
ここで、上記検出光の光強度変化モデルにおける検出光の空間光強度分布I’(r)は、次の計算式にて求めた。
【0053】
【数4】
【0054】
また、上記レーザ光源装置1において、上記試料の流体光学素子10を介して出射される第2の波長のレーザ光L2の光強度分布は、第1の波長のレーザ光L1すなわち励起光のパワーPを変化させることにより、例えば図8の(A)ように変化し、また、上記試料の流体光学素子10からの撮像装置50までの距離dを変化させることにより、例えば図8の(B)ように変化する。
【0055】
すなわち、上記流体光学素子10は、上記第1の波長のレーザ光L1の光量プロファイルに応じた温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果、すなわち、熱レンズ効果を呈するので、このレーザ光源装置1では、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルを変更することにより、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルに応じた任意のレンズ効果を付与することができる。
【0056】
例えばレーザダイオードに流す駆動電流を調整することによりレーザパワーを可変することできる半導体レーザを上記第1のレーザ光源2に用いることにより、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルを変更することができる。
【0057】
また、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1にビームシェーパ4で所望の強度分布を与えることにより、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルを変更することもできる。上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルを上記ビームシェーパ4により任意に可変することができ、例えば、入射された第2の波長λ2のレーザ光L2をトップハットビームとして出射するレンズ効果を上記第2の波長λ2のレーザ光L2に付与する強度分布を上記ビームシェーパ4により上記第1の波長λ1のレーザ光L1に与えるようすることもできる。
【0058】
また、上記レーザ光源装置1において、上記試料の流体光学素子10を介して出射された検出光すなわち第2の波長λ2のレーザ光L2の光強度分布をCCDイメージセンサを用いた撮像装置50により測定したところ、図9に示すように、上記試料の流体光学素子10から撮像装置50まで距離が180mmの場合に、上記流体光学素子10から出射される上記第2の波長λ2のレーザ光L2の光強度分布としてトップハットプロファイルを得ることができた。
【0059】
上記流体光学素子10から上記撮像装置50まで距離が180mmは、吸収係数を1.2cm−1として計算により得られた予測結果を一致した。
【0060】
ここで、第1の波長のレーザ光(波長λ1=473nmビーム径φ=0.5mm)を励起光とし、励起光のパワーPを変化させ1〜8mWとした場合について、上記流体における第1の波長のレーザ光の吸収係数を2.0cm−1として、上記トップハットプロファイルが得られる上記流体光学素子10から上記撮像装置50までの距離を計算して得られた予測結果を図10に示す。
【0061】
また、上記レーザ光源装置1において、上記撮像装置50により検出される第2の波長λ2のレーザ光L2すなわち検出光の光強度は、ビーム中心からの距離に応じて変化し、上記流体光学素子10から上記撮像装置50まで距離dを変化させると、検出光プロファイルは図11の(A)に示すように変化する。すなわち、第2の波長λ2のレーザ光L2は、入射時のガウシャンプロファイルを維持した状態で、図11の(B)に示すようにビーム径を拡大しながら伝搬しており、上記流体光学素子10は、凹レンズとして機能している。
【0062】
このように凹レンズとして機能する上記流体光学素子10は、例えば図12示すように、凸レンズ15により集光されたレーザ光を平行光に変換するコリメータ20を構成することができる。
【0063】
なお、上記試料の流体光学素子10では、上記液体12として、サンセットイエロー染料を0.05g/l含有するエタノールを用いたが、上記第1の波長λ1のレーザ光L1(波長λ1=473nm)を吸収することにより、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルに応じた温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記レンズ効果を付与する現象自体は、染料が無くても確認することができた。すなわち、長手方向の片面冷却片面加熱の長方形セル(直交座標系でほぼ1次元的な直線温度勾配)に入るレーザ光の屈折は完全に温度分布起因で説明できる。また、上記液体12は、エタノールに限定されるものでなく、適当な吸収波長域を持ち透明の液体であれば良い。
【0064】
また、上記試料の流体光学素子10は、上記第1の波長λ1のレーザ光L1を切った直後の応答を確認したところ、ステップ的ではなしに時間経過とともに屈折率分布が元に戻るので、パルス状の第1の波長λ1のレーザ光L1を上記励起光として用いることもできる。
【0065】
そして、パルス状の第1の波長λ1のレーザ光L1を上記励起光として用いる場合、上記第1の波長λ1のレーザ光L1のオフ期間の冷却過程において、中心に近づく従って温度が低下するような逆の温度勾配の状態を生じさせることができ、上記流体光学素子10は、この逆の温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配により凸レンズの効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記凸レンズの効果を付与することができる。
【0066】
上記レーザ光源装置1に用いた流体光学素子10において、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口14が設けられている容器11に収容した液体12は、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有するので、上記液体12に第1の波長λ1のレーザ光L1の照射により温度勾配が与えられることによって、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルに応じた任意のレンズ効果を付与することができ、上記流体光学素子10では、適正な屈折率分布の形成と組み合わせでトップハット型加工、凹レンズや凸レンズ等、所望の光学特性を形成することができる。
【0067】
また、上記液体12は、上記第1の波長λ1のレーザ光L1を吸収する色素を含有することにより、上記第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、上記第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を顕著に呈するものとすることができる。
【0068】
なお、上記流体光学素子10において、容器11に収容した液体12は、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する必要がある。
【0069】
また、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルをビームシェーパ4により任意に設定することができ、例えば、上記ビームシェーパ4は、入射された第2の波長λ2のレーザ光L2をトップハットビームとして出射する上記レンズ効果を上記第2の波長λ2のレーザ光L2に付与する強度分布を上記第1の波長λ1のレーザ光L1に与えるものとすることができる。
【0070】
さらに、上記液体12を収容した上記容器11の集束光が通過する端面に開口14を設けることにより、強い強度の光の入射により流体光学素子10が損傷する虞が少ない。なお、上記開口14は、集束光が通過するだけの小さな口径に形成しておくことによって、上記容器11に収容した上記液体12は、表面張力の働きにより、上記開口14においてメニスカスを形成し、上記開口14から流れ出てしまうことはない。
【0071】
例えば、一対の光学レンズの組み合わせでレーザ光を集光、拡大させずにビーム系(レーザ光の進行方向と直角方向のレーザ光の直径)のみを変化させ平行光を作るコリメータでは、ビーム系縮小の場合、後段の光学レンズへは前段の光学レンズで集光されたビームが入射することから、これへのダメージを防ぐために元のレーザ光強度に大きな制約があったが、上記後段の光学レンズとして上記流体光学素子10を用いることにより、アスペクト比の非常に大きな数百nm〜数百mm程度の微細孔の加工等を行うことのできるレーザ加工装置を実現できる。
【0072】
例えば図13に示すように、上記レーザ光源装置1を用いてレーザ加工装置100を構成することができる。
【0073】
このレーザ加工装置100は、上記レーザ光源装置1と、被加工物を載置するテーブル110と、上記レーザ光源装置1の上記開口から出射された上記第2の波長λ2のレーザ光L2と該第2の波長λ2のレーザ光L2が照射される上記テーブル110に載置された被加工物200をx,y方向に相対移動させる駆動部120とを備える。
【0074】
上記レーザ光源装置1は、第1の波長λ1のレーザ光L1を出射する第1のレーザ光源2と、第2の波長λ2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源3と、ビームシェーパ4と、反射鏡5と、半透鏡6と、流体光学素子10を備える。
【0075】
このレーザ加工装置100において、上記レーザ光源装置1の上記第1のレーザ光源2は、例えば第1の波長λ1(λ1=1064nm)のレーザ光L1を出射する例えば半導体レーザからなり、また、上記第2のレーザ光源3は、例えば第2の波長λ2(λ2=1064nm)、パルス幅Δt(Δt=4〜7ns)のレーザ光L2を出射するYAGレーザからなる。
【0076】
すなわち、このレーザ加工装置100において、上記第2のレーザ光源2は、上記第2の波長λ2のレーザ光L2として超短パルスレーザを出力するようになっている。
【0077】
また、上記流体光学素子10は、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口14が設けられている容器11に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する液体12を収容してなり、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の照射により上記液体12に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記レンズ効果を付与する。
【0078】
また、上記ビームシェーパ4は、入射された第2の波長λ2のレーザ光L2をトップハットビームとして上記流体光学素子10から出射するレンズ効果を上記第2の波長λ2のレーザ光L2に付与する強度分布を上記第1の波長λ1のレーザ光L1に与える。
【0079】
このレーザ光源装置1において、上記半透鏡6は、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1は反射し、上記第2のレーザ光源3から出射された第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する。そして、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1は、上記半透鏡6により反射されて、励起光として上記流体光学素子10に入射される。また、上記第2のレーザ光源3から出射された第2の波長λ2のレーザ光L2は、上記反射鏡5により反射され、上記半透鏡6を通過して上記流体光学素子10に入射される。上記流体光学素子10は、上記流体12によりレンズ効果を付与して上記第2の波長λ2のレーザ光L2をトップハットビームとして上記開口14から出射する。また、上記流体光学素子10は、凹レンズとして機能し、凸レンズ15により集光されたレーザ光を平行光に変換するコリメータ20を構成している。
【0080】
このような構成のレーザ加工装置100では、レーザ光源装置1において、第2のレーザ光源2から第2の波長λ2のレーザ光L2として出射された超短パルスレーザを、凸レンズ15と流体光学素子10とにより構成されたコリメータ20を介して平行光に変換する際に上記流体光学素子10によりレンズ効果が付与されることにより、トップハットビームとして開口14から出射することができ、超短パルスレーザのトップハットビームにより高精度なレーザ加工を行うことができる。
【0081】
また、上記レーザ光源装置1は、上記超短パルスレーザをトップハットビームとして上記開口14から出射するので、第2のレーザ光源2から第2の波長λ2のレーザ光L2としてハイパワーの超短パルスレーザが入射されても上記流体光学素子10が損傷する虞が少なく、信頼性の高いレーザ加工装置100を実現することができる。
【0082】
なお、上記レーザ加工装置100において、上記流体12により吸収される励起光すなわち、上記第1のレーザ光源2から出射される第2の波長λ1のレーザ光L1と、上記流体12を通過する加工用レーザ光、すなわち、第2のレーザ光源2から出射される第2の波長λ2のレーザ光L2は、互いに波長をずらす必要があるが、被加工物200の材質や加工内容に応じて加工用レーザ光及び励起光の波長やパワーを変更し、上記加工用レーザ光及び励起光の波長の組み合わせに応じて、上記流体12として用いる媒質の種類や含有される色素の種類を選択することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 レーザ光源装置、2 第1のレーザ光源、3 第2のレーザ光源、4 ビームシェーパ、5 反射鏡、6 半透鏡、10 流体光学素子、11 容器、11A,11B 端面、11C 銅製リング、12 液体、14 開口、15 凸レンズ15、20 コリメータ、100 レーザ加工装置、110 テーブル、120 駆動部、200 被加工物、L1 第1の波長のレーザ光、L2 第2の波長のレーザ光、
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒質の屈折率の温度依存性を利用して所望の光学特性を呈するようにした流体光学素子、上記流体光学素子を備えるレーザ光源装置及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置では、レーザビームを熱源として用い、ビームの熱によって被処理物を局所的に加熱し、穴開け、溶接、熱処理などのレーザ加工を行う。
【0003】
炭酸ガスレーザ、YAGレーザなどは強いパワーをもつのでビームを被処理物にあてて、穴穿孔、溶接などを行うことができる。ビームパワーを減らすと熱処理のために用いることもできる。穴開けに関していえば機械的なドリルによる穿孔よりも多数の穴を短時間に穿孔できるから生産性が高いといえる。
【0004】
レーザビームを対象へ導くにはミラーやレンズが必要である。炭酸ガスレーザは波長が9μm〜11μmであり赤外光であるから、それを透過できるZnSeレンズなどを用いて集光する。YAGレーザは1.06μmであるから通常のガラス材料のレンズを用いることもある。
【0005】
レーザ発光についていえば連続的に発光させる場合とパルス的に発光させる場合がある。目的によって連続光とパルス光を使い分けることができる。Qスイッチによってエネルギーの大きいパルス光を発生させてレーザ加工をするということも多い。
【0006】
従来より、レーザビームを熱源として用いるレーザ加工装置では、レーザビームの空間的なパワー分布が加工精度などに影響するので、例えば、回折型光学素子と個体レンズからなる光学系により、入力ビームプロファイル強度分布を基本型(正規分布)からある範囲では一定のパワーをもつトップハット型変換し、トップハット型のレーザビームを被処理物に照射するようにしている(例えば、特許文献1参照) 。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−114400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の如く、回折型光学素子と個体レンズからなる光学系により、入力ビームプロファイル強度分布を基本型(正規分布)からある範囲では一定のパワーをもつトップハット型トップハット型へ変換し、トップハット型のレーザビームを被処理物に照射するようにした従来のレーザ加工装置では、固体レンズが固定焦点であり、また、非常に強いレーザ光により損傷することがある。すなわち、レンズ等の光学素子は様々な場面で用いられるが、一般に焦点距離等のパラメータが固定であり、また非常に強い強度の光の入射により損傷するという問題がある。また、入力ビームプロファイル強度分布を基本型(正規分布)からトップハット型への変換が複雑であることから、入力ビーム強度の制限と、装置コスト上昇をもたらしている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、媒質の屈折率の温度依存性を利用して所望の光学特性を呈することのでき、しかも、強い強度の光の入射により損傷する虞が少ない流体光学素子、また、上記流体光学素子を備えることにより所望のビームプロファイル強度分布のレーザ光を出射することができるようにしたレーザ光源装置及びレーザ加工装置を提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
物質に光を当てると、ほとんどの光は熱に変換されて熱が放出される。その物質は熱によって屈折率変化が起きる。集光したレーザ光のような強度分布のある光を当てた場合、物質はレンズと同じ効果を示すことになる。これを熱レンズ効果と呼ぶ。
【0012】
一般に流体の屈折率は温度や照射レーザ光強度とともに変化するため、これらの分布のある流体中には屈折率分布が生じる。
【0013】
ここに別のレーザー光を照射すると、ビームプロファイル(レーザー光をスクリーンなどに映したときのビームの形、すなわちレーザー光進行方向をz軸としたときの、x、y方向の光強度[W/m2]分布)は、当該流体を通過する前後で屈折率分布に特有の変化を示す。したがって、適切な屈折率分布の形成と組み合わせでトップハット型加工、凹レンズ等を形成することができる。
【0014】
すなわち、本発明では、媒質の屈折率の温度依存性を利用して所望の光学特性を得る。
【0015】
本発明は、流体光学素子であって、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る流体光学素子において、上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有しているものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る流体光学素子は、上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与するものとすることができる。
【0018】
また、本発明に係る流体光学素子において、上記第1の波長のレーザ光は、ビームシェーパを介して強度分布が与えられた状態で照射されるものとすることができる。
【0019】
さらに、本発明に係る流体光学素子において、上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして出射する上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるものとすることができる。
【0020】
本発明は、レーザ光源装置であって、第1の波長のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、第2の波長のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することを特徴とする流体光学素子とを備え、上記レンズ効果を付与した第2の波長のレーザ光を出射することを特徴とする。
【0021】
本発明に係るレーザ光源装置において、上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有しているものとすることができる。
【0022】
また、本発明に係るレーザ光源装置は、上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与するものとすることができる。
【0023】
また、本発明に係るレーザ光源装置は、上記第1の波長のレーザ光に強度分布を与えるビームシェーパを備え、上記流体光学素子は、上記第1の波長のレーザ光が上記ビームシェーパを介して強度分布が与えられた状態で上記液体に照射されるものとすることができる。
【0024】
さらに、本発明に係るレーザ光源装置において、上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記流体光学素子から出射するレンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるものとすることができる。
【0025】
本発明は、レーザ加工装置であって、第1の波長のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、第2の波長のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与する流体光学素子と、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記流体光学素子から出射するレンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるビームシェーパを備え、上記流体光学素子により上記レンズ効果を付与して上記第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記開口から出射するレーザ光源装置と、被加工物を載置するテーブルと、上記レーザ光源装置の上記開口から出射された上記第2の波長のレーザ光と該第2の波長のレーザ光が照射される上記テーブルに載置された被加工物を相対移動させる駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0026】
本発明に係るレーザ光源装置において、上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有していることを特徴とするものとすることができる。
【0027】
さらに、本発明に係るレーザ光源装置において、上記第2のレーザ光源は、上記第2の波長のレーザ光としてパルス状のレーザビームを出力するものとすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、流体光学素子の容器に収容した液体に第1の波長のレーザ光の照射により温度勾配が与えられることによって、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することができ、適正な屈折率分布の形成と組み合わせでトップハット型加工、凹レンズや凸レンズ等の所望の光学特性を形成することができる。
【0029】
本発明において、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に収容した液体は、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有するので、上記液体に第1の波長のレーザ光の照射により温度勾配が与えられることによって、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた任意のレンズ効果を付与することができ、本発明によれば、適正な屈折率分布の形成と組み合わせでトップハット型加工、凹レンズ等、所望の光学特性を形成することができる。
【0030】
また、本発明において、上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有することにより、上記第1の波長のレーザ光は吸収し、上記第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を顕著に呈するものとすることができる。
【0031】
また、本発明では、上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルをビームシェーパにより任意に設定することができ、例えば、上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして出射する上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるものとすることができる。
【0032】
さらに、本発明では、上記液体を収容した上記容器の集束光が通過する端面に開口を設けることにより、強い強度の光の入射により流体光学素子が損傷する虞が少ない。
【0033】
例えば、一対の光学レンズの組み合わせでレーザ光を集光、拡大させずにビーム系(レーザ光の進行方向と直角方向のレーザ光の直径)のみを変化させ平行光を作るコリメータでは、ビーム系縮小の場合、後段の光学レンズへは前段の光学レンズで集光されたビームが入射することから、これへのダメージを防ぐために元のレーザ光強度に大きな制約があったが、上記後段の光学レンズとして本発明に係る流体光学素子を用いることにより、アスペクト比の非常に大きな数百nm〜数百mm程度の微細孔の加工等を行うことのできるレーザ加工装置を実現できる。
【0034】
すなわち、本発明によれば、媒質の屈折率の温度依存性を利用して熱レンズ効果により所望の光学特性を呈することができ、しかも、強い強度の光の入射により損傷する虞が少ない流体光学素子、上記流体光学素子を備えることにより所望のビームプロファイル強度分布のレーザ光を出射することができるようにしたレーザ光源装置及びレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明を適用した流体光学素子の構成例を模式的に示す要部縦断面図である。
【図2】上記流体光学素子の解析モデルを示す要部縦断面図である。
【図3】上記流体光学素子の解析モデルについて温度分布解析を行った結果を示す図である。
【図4】上記流体光学素子に検出光を入射した場合の光線追跡法による検出光伝搬モデルを示す要部縦断面図である。
【図5】本発明を適用した流体光学素子を用いたレーザ光源装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】上記レーザ光源装置における流体光学素子について、検出光の空間光強度分布の計算に用いた検出光の光強度変化モデルを示す図である。
【図7】上記レーザ光源装置における流体光学素子から出射される検出光の空間光強度分布を上記検出光の光強度変化モデルで計算した結果と撮像装置により実測した結果を示す図である。
【図8】上記レーザ光源装置において、第1の波長のレーザ光のパワーを変化させた場合と、上記流体光学素子からの撮像装置までの距離を変化させた場合の、流体光学素子を介して出射される第2の波長のレーザ光の光強度分布の変化を示す図である。
【図9】上記レーザ光源装置において、流体光学素子から出射される第2の波長のレーザ光の光強度分布として得られたトップハットプロファイルを示す図である。
【図10】上記レーザ光源装置において、トップハットプロファイルが得られる流体光学素子から撮像装置までの距離を計算して得られた予測結果を示す図である。
【図11】上記レーザ光源装置において、流体光学素子から撮像装置まで距離を変化させた場合の検出光プロファイルとビーム径の変換の様子を示す図である。
【図12】上記流体光学素子を用いてコリメータの構成例を模式的に示す要部縦断面図である。
【図13】本発明を適用したレーザ光源装置を用いたレーザ加工装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0037】
本発明に係る流体光学素子10は、媒質の屈折率の温度依存性を利用して熱レンズ効果により所望の光学特性を呈するものであって、例えば図1に示すように、入射された光が通過する互いに対向する端面11A,11Bを有する容器11に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する液体12を収容してなり、少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口14が設けられている。
【0038】
この流体光学素子10は、第1の波長λ1のレーザ光L1の照射により上記液体12に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果、すなわち、熱レンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記レンズ効果を付与する。
【0039】
ここで、上記容器11として、例えば内径30mm、肉厚10mm、高さ1mmの銅製リング11Cの両端開口部を石英ガラスの端面11A,11Bで閉じたキュベットを用い、上記液体12として、例えば、サンセットイエロー染料(6-ヒドロキシ-5-[(4-スルホナトフェニル)ジアゼニル]ナフタレン-2-スルホン酸二ナトリウム(C16H10N2Na2O7S2))を0.05g/l含有するエタノールを上記容器11に収納した流体光学素子10の試料について、その温度特性を解析するとともに実測したところ次のような結果が得られた。
【0040】
すなわち、熱伝導率[W/(m・K)]を銅=380、エタノール=0.15、石英=1.4とし、第1の波長λ1のレーザ光L1(波長λ1=473nm、パワーP=10mW、ビーム径W=0.25mm)を励起光として照射した図2に示す解析モデルについて、破線で囲んだ領域の温度分布解析を次の支配方正式により行った結果を図3の(A),(B),(C)に示す。
【0041】
【数1】
【0042】
図3の(A)は、試料内の温度分布の計算結果を示し、図3の(B)は、試料内のr軸方向すなわち半径方向の温度分布の計算結果を示し、図3の(C)は、上記図3の(B)で示されるr軸方向の温度分布で示される温度勾配dT/drに比例する屈折率αrの変化による屈折の様子を模式的に示している。
【0043】
そして、上記温度分布解析を行った試料に第2の波長λ2のレーザ光L2を検出光として入射した場合、光線追跡法による検出光の伝搬モデルは、図4のようになる。
【0044】
この伝搬モデルにおいて、光線軌道は、次の計算式にて示される温度Tにおける屈折率n(T)から求められる。
【0045】
【数2】
【0046】
また、位相φiの変化は、次の計算式にて求められる。
【0047】
【数3】
【0048】
上記流体光学素子10は、液体12の屈折率の温度依存性を利用して熱レンズ効果により所望の光学特性を呈することができ、例えば図5に示すように、出射する第2の波長λ2のレーザ光L2の光量プロファイルを任意に設定可能なレーザ光源装置1を構成することができる。
【0049】
このレーザ光源装置1は、第1の波長λ1のレーザ光(波長λ1=473nm、パワーP=10mW、ビーム径φ=0.7mm)L1を出射する第1のレーザ光源2と、ガウシャン分布の光強度分布を有する第2の波長λ2のレーザ光(波長λ2=1064nm、ビーム径φ=1.0mm)L2を出射する第2のレーザ光源3と、ビームシェーパ4と、反射鏡5と、半透鏡6と、流体光学素子10を備える。
【0050】
このレーザ光源装置1において、上記半透鏡6は、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1は反射し、上記第2のレーザ光源3から出射された第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する。そして、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1は、上記半透鏡6により反射されて、励起光として上記流体光学素子10に入射される。また、上記第2のレーザ光源3から出射された第2の波長λ2のレーザ光L2は、上記反射鏡5により反射され、上記半透鏡6を通過して検出光として上記流体光学素子10に入射される。
【0051】
ここで、このような構成のレーザ光源装置1における上記試料の流体光学素子10について、図6に示す検出光の光強度変化モデルにて検出光の空間光強度分布I’(r)を計算した結果と、CCDイメージセンサを用いた撮像装置50により検出光の空間光強度分布I’(r)を実測した結果を図7の(A),(B)に示す。
【0052】
ここで、上記検出光の光強度変化モデルにおける検出光の空間光強度分布I’(r)は、次の計算式にて求めた。
【0053】
【数4】
【0054】
また、上記レーザ光源装置1において、上記試料の流体光学素子10を介して出射される第2の波長のレーザ光L2の光強度分布は、第1の波長のレーザ光L1すなわち励起光のパワーPを変化させることにより、例えば図8の(A)ように変化し、また、上記試料の流体光学素子10からの撮像装置50までの距離dを変化させることにより、例えば図8の(B)ように変化する。
【0055】
すなわち、上記流体光学素子10は、上記第1の波長のレーザ光L1の光量プロファイルに応じた温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果、すなわち、熱レンズ効果を呈するので、このレーザ光源装置1では、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルを変更することにより、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルに応じた任意のレンズ効果を付与することができる。
【0056】
例えばレーザダイオードに流す駆動電流を調整することによりレーザパワーを可変することできる半導体レーザを上記第1のレーザ光源2に用いることにより、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルを変更することができる。
【0057】
また、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1にビームシェーパ4で所望の強度分布を与えることにより、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルを変更することもできる。上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルを上記ビームシェーパ4により任意に可変することができ、例えば、入射された第2の波長λ2のレーザ光L2をトップハットビームとして出射するレンズ効果を上記第2の波長λ2のレーザ光L2に付与する強度分布を上記ビームシェーパ4により上記第1の波長λ1のレーザ光L1に与えるようすることもできる。
【0058】
また、上記レーザ光源装置1において、上記試料の流体光学素子10を介して出射された検出光すなわち第2の波長λ2のレーザ光L2の光強度分布をCCDイメージセンサを用いた撮像装置50により測定したところ、図9に示すように、上記試料の流体光学素子10から撮像装置50まで距離が180mmの場合に、上記流体光学素子10から出射される上記第2の波長λ2のレーザ光L2の光強度分布としてトップハットプロファイルを得ることができた。
【0059】
上記流体光学素子10から上記撮像装置50まで距離が180mmは、吸収係数を1.2cm−1として計算により得られた予測結果を一致した。
【0060】
ここで、第1の波長のレーザ光(波長λ1=473nmビーム径φ=0.5mm)を励起光とし、励起光のパワーPを変化させ1〜8mWとした場合について、上記流体における第1の波長のレーザ光の吸収係数を2.0cm−1として、上記トップハットプロファイルが得られる上記流体光学素子10から上記撮像装置50までの距離を計算して得られた予測結果を図10に示す。
【0061】
また、上記レーザ光源装置1において、上記撮像装置50により検出される第2の波長λ2のレーザ光L2すなわち検出光の光強度は、ビーム中心からの距離に応じて変化し、上記流体光学素子10から上記撮像装置50まで距離dを変化させると、検出光プロファイルは図11の(A)に示すように変化する。すなわち、第2の波長λ2のレーザ光L2は、入射時のガウシャンプロファイルを維持した状態で、図11の(B)に示すようにビーム径を拡大しながら伝搬しており、上記流体光学素子10は、凹レンズとして機能している。
【0062】
このように凹レンズとして機能する上記流体光学素子10は、例えば図12示すように、凸レンズ15により集光されたレーザ光を平行光に変換するコリメータ20を構成することができる。
【0063】
なお、上記試料の流体光学素子10では、上記液体12として、サンセットイエロー染料を0.05g/l含有するエタノールを用いたが、上記第1の波長λ1のレーザ光L1(波長λ1=473nm)を吸収することにより、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルに応じた温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記レンズ効果を付与する現象自体は、染料が無くても確認することができた。すなわち、長手方向の片面冷却片面加熱の長方形セル(直交座標系でほぼ1次元的な直線温度勾配)に入るレーザ光の屈折は完全に温度分布起因で説明できる。また、上記液体12は、エタノールに限定されるものでなく、適当な吸収波長域を持ち透明の液体であれば良い。
【0064】
また、上記試料の流体光学素子10は、上記第1の波長λ1のレーザ光L1を切った直後の応答を確認したところ、ステップ的ではなしに時間経過とともに屈折率分布が元に戻るので、パルス状の第1の波長λ1のレーザ光L1を上記励起光として用いることもできる。
【0065】
そして、パルス状の第1の波長λ1のレーザ光L1を上記励起光として用いる場合、上記第1の波長λ1のレーザ光L1のオフ期間の冷却過程において、中心に近づく従って温度が低下するような逆の温度勾配の状態を生じさせることができ、上記流体光学素子10は、この逆の温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配により凸レンズの効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記凸レンズの効果を付与することができる。
【0066】
上記レーザ光源装置1に用いた流体光学素子10において、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口14が設けられている容器11に収容した液体12は、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有するので、上記液体12に第1の波長λ1のレーザ光L1の照射により温度勾配が与えられることによって、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルに応じた任意のレンズ効果を付与することができ、上記流体光学素子10では、適正な屈折率分布の形成と組み合わせでトップハット型加工、凹レンズや凸レンズ等、所望の光学特性を形成することができる。
【0067】
また、上記液体12は、上記第1の波長λ1のレーザ光L1を吸収する色素を含有することにより、上記第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、上記第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を顕著に呈するものとすることができる。
【0068】
なお、上記流体光学素子10において、容器11に収容した液体12は、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する必要がある。
【0069】
また、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の光量プロファイルをビームシェーパ4により任意に設定することができ、例えば、上記ビームシェーパ4は、入射された第2の波長λ2のレーザ光L2をトップハットビームとして出射する上記レンズ効果を上記第2の波長λ2のレーザ光L2に付与する強度分布を上記第1の波長λ1のレーザ光L1に与えるものとすることができる。
【0070】
さらに、上記液体12を収容した上記容器11の集束光が通過する端面に開口14を設けることにより、強い強度の光の入射により流体光学素子10が損傷する虞が少ない。なお、上記開口14は、集束光が通過するだけの小さな口径に形成しておくことによって、上記容器11に収容した上記液体12は、表面張力の働きにより、上記開口14においてメニスカスを形成し、上記開口14から流れ出てしまうことはない。
【0071】
例えば、一対の光学レンズの組み合わせでレーザ光を集光、拡大させずにビーム系(レーザ光の進行方向と直角方向のレーザ光の直径)のみを変化させ平行光を作るコリメータでは、ビーム系縮小の場合、後段の光学レンズへは前段の光学レンズで集光されたビームが入射することから、これへのダメージを防ぐために元のレーザ光強度に大きな制約があったが、上記後段の光学レンズとして上記流体光学素子10を用いることにより、アスペクト比の非常に大きな数百nm〜数百mm程度の微細孔の加工等を行うことのできるレーザ加工装置を実現できる。
【0072】
例えば図13に示すように、上記レーザ光源装置1を用いてレーザ加工装置100を構成することができる。
【0073】
このレーザ加工装置100は、上記レーザ光源装置1と、被加工物を載置するテーブル110と、上記レーザ光源装置1の上記開口から出射された上記第2の波長λ2のレーザ光L2と該第2の波長λ2のレーザ光L2が照射される上記テーブル110に載置された被加工物200をx,y方向に相対移動させる駆動部120とを備える。
【0074】
上記レーザ光源装置1は、第1の波長λ1のレーザ光L1を出射する第1のレーザ光源2と、第2の波長λ2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源3と、ビームシェーパ4と、反射鏡5と、半透鏡6と、流体光学素子10を備える。
【0075】
このレーザ加工装置100において、上記レーザ光源装置1の上記第1のレーザ光源2は、例えば第1の波長λ1(λ1=1064nm)のレーザ光L1を出射する例えば半導体レーザからなり、また、上記第2のレーザ光源3は、例えば第2の波長λ2(λ2=1064nm)、パルス幅Δt(Δt=4〜7ns)のレーザ光L2を出射するYAGレーザからなる。
【0076】
すなわち、このレーザ加工装置100において、上記第2のレーザ光源2は、上記第2の波長λ2のレーザ光L2として超短パルスレーザを出力するようになっている。
【0077】
また、上記流体光学素子10は、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口14が設けられている容器11に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長λ1のレーザ光L1は吸収し、第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する液体12を収容してなり、上記第1の波長λ1のレーザ光L1の照射により上記液体12に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体12の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長λ2のレーザ光L2に対して上記レンズ効果を付与する。
【0078】
また、上記ビームシェーパ4は、入射された第2の波長λ2のレーザ光L2をトップハットビームとして上記流体光学素子10から出射するレンズ効果を上記第2の波長λ2のレーザ光L2に付与する強度分布を上記第1の波長λ1のレーザ光L1に与える。
【0079】
このレーザ光源装置1において、上記半透鏡6は、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1は反射し、上記第2のレーザ光源3から出射された第2の波長λ2のレーザ光L2は透過する波長選択性を有する。そして、上記第1のレーザ光源2から出射された第1の波長λ1のレーザ光L1は、上記半透鏡6により反射されて、励起光として上記流体光学素子10に入射される。また、上記第2のレーザ光源3から出射された第2の波長λ2のレーザ光L2は、上記反射鏡5により反射され、上記半透鏡6を通過して上記流体光学素子10に入射される。上記流体光学素子10は、上記流体12によりレンズ効果を付与して上記第2の波長λ2のレーザ光L2をトップハットビームとして上記開口14から出射する。また、上記流体光学素子10は、凹レンズとして機能し、凸レンズ15により集光されたレーザ光を平行光に変換するコリメータ20を構成している。
【0080】
このような構成のレーザ加工装置100では、レーザ光源装置1において、第2のレーザ光源2から第2の波長λ2のレーザ光L2として出射された超短パルスレーザを、凸レンズ15と流体光学素子10とにより構成されたコリメータ20を介して平行光に変換する際に上記流体光学素子10によりレンズ効果が付与されることにより、トップハットビームとして開口14から出射することができ、超短パルスレーザのトップハットビームにより高精度なレーザ加工を行うことができる。
【0081】
また、上記レーザ光源装置1は、上記超短パルスレーザをトップハットビームとして上記開口14から出射するので、第2のレーザ光源2から第2の波長λ2のレーザ光L2としてハイパワーの超短パルスレーザが入射されても上記流体光学素子10が損傷する虞が少なく、信頼性の高いレーザ加工装置100を実現することができる。
【0082】
なお、上記レーザ加工装置100において、上記流体12により吸収される励起光すなわち、上記第1のレーザ光源2から出射される第2の波長λ1のレーザ光L1と、上記流体12を通過する加工用レーザ光、すなわち、第2のレーザ光源2から出射される第2の波長λ2のレーザ光L2は、互いに波長をずらす必要があるが、被加工物200の材質や加工内容に応じて加工用レーザ光及び励起光の波長やパワーを変更し、上記加工用レーザ光及び励起光の波長の組み合わせに応じて、上記流体12として用いる媒質の種類や含有される色素の種類を選択することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 レーザ光源装置、2 第1のレーザ光源、3 第2のレーザ光源、4 ビームシェーパ、5 反射鏡、6 半透鏡、10 流体光学素子、11 容器、11A,11B 端面、11C 銅製リング、12 液体、14 開口、15 凸レンズ15、20 コリメータ、100 レーザ加工装置、110 テーブル、120 駆動部、200 被加工物、L1 第1の波長のレーザ光、L2 第2の波長のレーザ光、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、
上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、
入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することを特徴とする流体光学素子。
【請求項2】
上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有していることを特徴とする請求項1に記載の流体光学素子。
【請求項3】
上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与することを特徴とする請求項1に記載の流体光学素子。
【請求項4】
上記第1の波長のレーザ光は、ビームシェーパを介して強度分布が与えられた状態で照射されることを特徴とする請求項3記載の流体光学素子。
【請求項5】
上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして出射する上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えることを特徴とする請求項4記載の流体光学素子。
【請求項6】
第1の波長のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、
第2の波長のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、
入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することを特徴とする流体光学素子とを備え、
上記レンズ効果を付与した第2の波長のレーザ光を出射することを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項7】
上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有していることを特徴とする請求項6記載のレーザ光源装置。
【請求項8】
上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与することを特徴とする請求項6記載のレーザ光源装置。
【請求項9】
上記第1の波長のレーザ光に強度分布を与えるビームシェーパを備え、
上記流体光学素子は、上記第1の波長のレーザ光が上記ビームシェーパを介して強度分布が与えられた状態で上記液体に照射されることを特徴とする請求項8記載のレーザ光源装置。
【請求項10】
上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記流体光学素子から出射するレンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えることを特徴とする請求項9記載のレーザ光源装置。
【請求項11】
第1の波長のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、第2の波長のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与する流体光学素子と、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記流体光学素子から出射するレンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるビームシェーパを備え、上記流体光学素子により上記レンズ効果を付与して上記第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記開口から出射するレーザ光源装置と、
被加工物を載置するテーブルと、
上記レーザ光源装置の上記開口から出射された上記第2の波長のレーザ光と該第2の波長のレーザ光が照射される上記テーブルに載置された被加工物を相対移動させる駆動手段と
を備えるレーザ加工装置。
【請求項12】
上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有していることを特徴とする請求項11記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
上記第2のレーザ光源は、上記第2の波長のレーザ光としてパルス状のレーザビームを出力することを特徴とする請求項11記載のレーザ加工装置。
【請求項1】
入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、
上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、
入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することを特徴とする流体光学素子。
【請求項2】
上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有していることを特徴とする請求項1に記載の流体光学素子。
【請求項3】
上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与することを特徴とする請求項1に記載の流体光学素子。
【請求項4】
上記第1の波長のレーザ光は、ビームシェーパを介して強度分布が与えられた状態で照射されることを特徴とする請求項3記載の流体光学素子。
【請求項5】
上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして出射する上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えることを特徴とする請求項4記載の流体光学素子。
【請求項6】
第1の波長のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、
第2の波長のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、
入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与することを特徴とする流体光学素子とを備え、
上記レンズ効果を付与した第2の波長のレーザ光を出射することを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項7】
上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有していることを特徴とする請求項6記載のレーザ光源装置。
【請求項8】
上記第1の波長のレーザ光の光量プロファイルに応じた上記レンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与することを特徴とする請求項6記載のレーザ光源装置。
【請求項9】
上記第1の波長のレーザ光に強度分布を与えるビームシェーパを備え、
上記流体光学素子は、上記第1の波長のレーザ光が上記ビームシェーパを介して強度分布が与えられた状態で上記液体に照射されることを特徴とする請求項8記載のレーザ光源装置。
【請求項10】
上記ビームシェーパは、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記流体光学素子から出射するレンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えることを特徴とする請求項9記載のレーザ光源装置。
【請求項11】
第1の波長のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、第2の波長のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、入射された光が通過する互いに対向する端面の少なくとも高密度に集束された光が通過する側の端面に入射用又は出射用の開口が設けられている容器に、屈折率に温度依存性を有する媒質であって、第1の波長のレーザ光は吸収し、第2の波長のレーザ光は透過する波長選択性を有する液体を収容してなり、上記第1の波長のレーザ光の照射により上記液体に温度勾配が与えられ、上記温度勾配にともなう上記液体の屈折率勾配によるレンズ効果を呈し、入射される第2の波長のレーザ光に対して上記レンズ効果を付与する流体光学素子と、入射された第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記流体光学素子から出射するレンズ効果を上記第2の波長のレーザ光に付与する強度分布を上記第1の波長のレーザ光に与えるビームシェーパを備え、上記流体光学素子により上記レンズ効果を付与して上記第2の波長のレーザ光をトップハットビームとして上記開口から出射するレーザ光源装置と、
被加工物を載置するテーブルと、
上記レーザ光源装置の上記開口から出射された上記第2の波長のレーザ光と該第2の波長のレーザ光が照射される上記テーブルに載置された被加工物を相対移動させる駆動手段と
を備えるレーザ加工装置。
【請求項12】
上記液体は、上記第1の波長のレーザ光を吸収する色素を含有していることを特徴とする請求項11記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
上記第2のレーザ光源は、上記第2の波長のレーザ光としてパルス状のレーザビームを出力することを特徴とする請求項11記載のレーザ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−141515(P2012−141515A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−845(P2011−845)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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