説明

流体制御弁

【課題】リードバルブの逆止弁機能を損なうことなく、メインバルブの開弁動作を有効活用して強制的にリードバルブを開弁させるようにし、小型・軽量化、低コスト化等の厳しい要求に応える電磁式2次空気制御弁を提供することにある。
【解決手段】供給すべき流体を制御するメインバルブ11と、板状弾性体よりなり、逆止弁として作用するリードバルブ17との間に、メインバルブ11の開弁動作をリードバルブ17に機械的に伝達し、かつ逆流する流体圧によるリードバルブ17の閉弁動作を許容するダンパー機構20を配設している。これにより、メインバルブ11の開弁動作によってリードバルブ17を強制的に開弁させることができ、かつメインバルブ11の開弁動作中であっても、メインバルブ11の動作に関係なく、リードバルブ17が閉弁できるため、所期の逆止弁機能を何ら損なうことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内部に形成される流体通路を流れる流体を制御する流体制御弁に関し、とりわけ、エンジンの排気浄化用2次空気供給システムおいて、エアポンプから圧送供給される2次空気を触媒コンバータに導入するための2次空気流路を開閉するのに好適な2次空気制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
従来より、エンジンの排気浄化システムとして、エンジン始動時等、排気ガス温度が低いときに、エアポンプから圧送供給される2次空気を、エンジンの燃焼室より排出される排気ガスを浄化する三元触媒コンバータに導入し、三元触媒の暖機(活性化)を促進させる2次空気供給システムが公知である。この2次空気供給システムには、電磁弁と逆止弁とを一体化した電磁式2次空気制御弁が組み込まれている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
その代表的な電磁式2次空気制御弁について、図5を参照して概説する。
この電磁式2次空気制御弁100は、全体として、流体通路Rに流体入口から流体出口に向かって直列に配置される2つの弁、即ち電磁弁101と逆止弁102とから構成されている。
電磁弁101は、図示してないエアポンプからの2次空気を制御するもので、ソレノイドコイル110と、その磁力による吸引力によって開弁方向に駆動される弁軸111および弁体112からなるメインバルブ(ポペット型バルブ)113と、弁体112により流体通過口114が開閉される第1の弁座115とを主要構成要素とし、開弁することによりエアポンプからの2次空気を矢印Aの如く導入する。
【0004】
一方、逆止弁102は、エンジンの排気管内をエキゾーストマニホールドから三元触媒コンバータへ向かう排気ガスが矢印Bの如く電磁弁101やエアポンプ側に逆流することを防止するもので、電磁弁101に設けられた第1の弁座115の下流側にこの弁座115と同軸上に配設される第2の弁座120と、その流体通過口121を開閉するリードバルブ122と、このリードバルブ122の最大開度を規制するリードストッパ123とからなり、リードバルブ122は板ばねの如き板状弾性体で形成されていて、矢印A、Bの両側から加わる圧力差に対応して流体通過口121の開閉を行なう。
【0005】
(従来技術の問題点)
このような2次空気制御弁100は、電磁弁101のメインバルブ113が開弁すると、2次空気が矢印Aの如く導入され、この流体圧により逆止弁102のリードバルブ122が開弁し、2次空気が三元触媒コンバータへ供給される。また、このようなメインバルブ113の開弁時において、過渡的、一時的に生じる排気ガスの逆流に対しては、リードバルブ122が、自身の弾性復元力と矢印A、Bから加わる圧力差によって閉弁し、排気ガスが矢印Bの如く電磁弁101やエアポンプ側に逆流するのを防止する。
しかしながら、上記2次空気制御弁100においては、メインバルブ113が駆動手段(例えばソレノイドコイル110)によって駆動されるものであるのに対し、リードバルブ122が自己開弁式であり、供給すべき2次空気の圧力によってリードバルブ122をその弾性力に抗して開弁させる基本構成であるために、リードバルブ122自体が有する弾性力が圧損となり、その分だけ、供給できる流量が制限されるという問題点を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−265482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、エアポンプとして高能力のものを採用するとか、電磁式2次空気制御弁自体を大型化する等の対応策が考えられているが、これらの対応策は、いずれも、車両に搭載する機器への小型・軽量化、低コスト化等の諸要求がますます厳しさを増す現下の情勢に明らかに逆行するものであり、小型・軽量化、低コスト化等の厳しい諸要求に即応した解決策が切望されている。
【0008】
なお、かかる課題は、上述した電磁式2次空気制御弁に限らず、大きさ・重量・価格等に厳しい要求がなされている各種システムに組み込まれる種々な型式の流体制御弁における共通の課題となっている。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的は、リードバルブの逆止弁機能を損なうことなく、メインバルブの開弁動作を有効活用して強制的にリードバルブを開弁させるようにし、小型・軽量化、低コスト化等の厳しい諸要求に応える流体制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段を採用する流体制御弁によれば、駆動手段によって駆動され、供給すべき流体を制御するメインバルブと、板状弾性体よりなり、流体圧を受けて開閉し、逆止弁として作用するリードバルブとの間に、メインバルブの開弁動作をリードバルブに機械的に伝達してリードバルブを開弁させると共に逆流する流体圧によるリードバルブの閉弁動作を許容するダンパー機構を配設していることを特徴としている。
【0011】
これにより、メインバルブの開弁時には、このメインバルブの開弁動作を有効活用してリードバルブを強制的に開弁させることができるため、エアポンプ等流体供給源の流体圧がいかなる大きさであろうとも、この流体圧を何ら犠牲にすることなく、つまりリードバルブの圧損を一切心配することなく、リードバルブを経由して所望量の流体を供給することができる。また、メインバルブが開弁動作中に逆流が発生したときには、メインバルブの動作に関係なく、その逆流圧を受けてリードバルブが閉弁するため、所期の逆止弁機能を何ら損なうことがない。
【0012】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段を採用する流体制御弁によれば、メインバルブ側の第1の弁座とリードバルブ側の第2の弁座とが同軸上に配置されており、ダンパー機構は、メインバルブの弁軸に結合されてこの弁軸と一体に動く第1部材と、この第1部材の動きをリードバルブに伝達する第2部材と、第1部材と第2部材との間に設けられ、第2部材の第1部材側への動きを許容する弾性部材とから構成されることを特徴としている。
【0013】
このような構成にすることにより、メインバルブの動きを直線的にしかも最短距離でリードバルブに伝達することができ、ダンパー機構自体も3部品という少ない部品点数で構成することができるため、流体制御弁を小型・軽量・安価なものとすることができる。
【0014】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段を採用する流体制御弁によれば、請求項2の手段による構成に加えて、特に、ダンパー機構の第1部材をメインバルブの弁軸と一体形成していることを特徴としている。
このような構成にすることにより、例えば金属の冷鍛加工によりメインバルブの弁軸を作製する際に同時に第1部材を作製することができるため、流体制御弁全体の低コスト化に一層貢献することができる。
【0015】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段を採用する流体制御弁によれば、請求項2または請求項3の手段におけるダンパー機構は、第1部材の流体出口側端部および第2部材の流体入口側端部、つまり互いに対向する部分がそれぞれ筒状部をなしていて、第2部材の筒状部が第1部材の筒状部に摺動自在に嵌合しており、弾性部材が上記の両筒状部内に伸縮可能に配設されていることを特徴としている。
このような構成にすることにより、ダンパー機構の軸方向長さを短く、かつ3部品をコンパクトにすることができるため、流体制御弁全体の小型・軽量化に一層貢献することができる。
【0016】
〔請求項5の手段〕
請求項5の手段を採用する流体制御弁によれば、請求項2〜4の手段におけるダンパー機構には、第2部材のリードバルブ側の端部に、耐熱弾性体よりなる接触子が装着されており、この接触子がリードバルブに直接当接し、このリードバルブの開弁動作(湾曲変形)に応じて弾性変形することを特徴としている。
かかる構成によれば、リードバルブの開弁時(湾曲変形時)には、接触子が追従して弾性変形するため、第2部材がメインバルブの弁軸に対して傾くことがなく、かつリードバルブとの押圧面積を十分確保して、メインバルブの開弁動作を安定してリードバルブに伝えることができるため、メインバルブに何ら支障を与えることなく、リードバルブを強制的に開弁することができる。
【0017】
〔請求項6の手段〕
請求項6の手段を採用する流体制御弁によれば、流体入口をエアポンプに接続すると共に、流体出口をエンジンの排気管に接続し、2次空気制御弁として用いることを特徴としている。
かかる構成によれば、小型・軽量化、低コスト化等の厳しい要求がなされる車載機器として好適な2次空気制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の流体制御弁の実施例1である電磁式2次空気制御弁(動作前の状態)を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1における電磁式2次空気制御弁の主要部を拡大して示すもので、通常動作時の断面図である。
【図3】図1における電磁式2次空気制御弁の主要部を拡大して示すもので、逆流防止動作時の状態を示す断面図である。
【図4】ダンパー機構の単体構造を示すもので、(a)は図1に対応する動作前の状態を説明するための断面図、(b)は図2および図3に対応する2つの動作時の状態を説明するための断面図である。
【図5】従来技術に係る流体制御弁(電磁式2次空気制御弁)の中枢部の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
[実施例1]
本実施例は、エンジンの排気浄化用2次空気供給システムに使用される2次空気制御弁、特に電磁式2次空気制御弁への適用例を示すものであって、図1〜図4に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、電磁式2次空気制御弁1の基本的な構成を図1〜図3により概説した後、本発明の特徴的な構成であるダンパー機構20を主として図4により詳述する。
【0021】
〔基本的な構成〕
電磁式2次空気制御弁1は、図1に動作前の状態、図2に通常動作時(2次空気供給時)の状態、図3に逆流防止動作時の状態が、それぞれ示されている。
この2次空気制御弁1は、エアポンプ2より圧送供給される2次空気を、車両に搭載されたエンジンの排気管3(例えば三元触媒コンバータ3aへ排気ガスを導く排気管)に導入するための流体通路4を開閉する電磁弁5と、一方向のみに空気の流れを許し、反対方向の空気の流れを阻止する逆止弁6とを備えている。この電磁弁5と逆止弁6とは、流体通路4に直列に配置されており、流体入口4a側に電磁弁5が、流体出口4b側に逆止弁6が、それぞれ位置している。
2次空気制御弁1の電磁弁5およびエアポンプ2は、エンジンの運転状態に基づいてエンジン制御ユニット(以下、ECUと略称する。)7によって制御されるものであり、エンジン始動時等、排気ガス温度が低いときに、エアポンプ2から圧送供給される2次空気を、矢印A、A’の如く流体通路4を介して三元触媒コンバータ3aへと導くことにより、三元触媒の暖機(活性化)が図られる。
【0022】
なお、本実施例では、電磁弁5を収容するバルブハウジング8と、逆止弁6を収容するケースアウトレット9との2分割された部材によって、2次空気制御弁1のハウジング10が構成されており、このハウジング10は、流体入口4aおよび流体出口4bを有する流体通路4を内部に形成すると共に、エンジンの排気管3に直接接続される2次空気流路管を構成している。バルブハウジング8およびケースアウトレット9は、それぞれアルミニウムダイカストにより個別に製造されたのち、合わせ面に気密を保持するための適宜なシール部材10Aを介在させて一体的に組み立てられている。
【0023】
電磁弁5は、流体通路4に導入する2次空気量を実質的に制御するポペット型バルブ形式のメインバルブ11と、バルブハウジング8に一体形成され、メインバルブ11にて開閉される流体通過口12aを有する弁座(第1の弁座)12と、通電されると磁気吸引力を発生し、メインバルブ11を開弁方向に駆動するソレノイドコイル13と、メインバルブ11を閉弁方向に付勢する復元スプリング14と、ソレノイドコイル13をECU7に電気的接続するためのコネクタ15とから構成されている。
【0024】
メインバルブ11は、周囲に耐熱ゴム系弾性体が焼き付け等の手段を用いて固着された円板状の弁体11aと、この弁体11aを移動させる弁軸11bと、弁体11aを挟んで弁軸11bの反対側に突出する操作棒11cとを有しており、弁体11a、弁軸11bおよび操作棒11cは例えば金属の冷鍛加工により一体形成されている。なお、弁軸11bは、ソレノイドコイル13の磁気吸引力によって吸引駆動され、復元スプリング14によって原位置に戻されるプランジャ11dに結合されている。
また、メインバルブ11の弁体11aは、バルブハウジング8の弁座12に着座することで流体通過口12aを閉じ、弁座12から離座することで流体通過口12aを開くものであり、操作棒11cは後述するダンパー機構20の一部を構成するものである。
【0025】
逆止弁6は、エンジンの排気管3内をエキゾーストマニホールドから三元触媒コンバータ3aへ向かう排気ガスが、矢印Bの如く流体通路4を通じて、電磁弁5のメインバルブ11やエアポンプ2側に逆流するのを阻止するものである。この逆止弁6は、周囲に耐熱ゴム系弾性体が焼き付け等の手段を用いて固着された流体通過口16aを有し、第2の弁座をなす金属プレート(以下、単に第2の弁座ともいう。)16と、流体通過口16aを開閉するリードバルブ17と、このリードバルブ17の開き具合(最大開度)を規制するリードストッパ18とを主要構成部品としており、第2の弁座16、リードバルブ17およびリードストッパ18は取付ネジ等の固定手段19により一体化されたのち、ケースアウトレット9に取り付けられている。
【0026】
リードバルブ17は、板ばねの如き板状弾性部材によって作製されており、自身の弾性力で第2の弁座16の流体通過口16aを常時閉じ、かつ自由端側で湾曲状に変形しながら(徐々に撓みながら)流体通過口16aを順次開いていく片持式の常閉型弁としてセットされている。
リードストッパ18は、ステンレス板の如き金属板にて作製されており、リードバルブ17の開き具合(最大開度)を規制する湾曲状のストッパ部18aと、リードバルブ17が開弁したときに流体の流通を妨げることのない通路を形成する流体通過用孔部18bとを有している。
【0027】
〔特徴的な構成〕
電磁弁5側のメインバルブ11および弁座12と、逆止弁6側の第2の弁座16およびリードバルブ17とは、同一軸線上に配置されており、この両バルブ11、17の間に図4に示す如きダンパー機構20が配設されている。このダンパー機構20の構成を、図4に基づいて説明する。
【0028】
図4において、ダンパー機構20は、操作棒11cの先端部分で構成される第1部材21と、この第1部材21に摺動自在に嵌合する第2部材22と、この両部材21、22間に介在されるコイルスプリング23と、第2部材22に装着された接触子24とから構成されている。
【0029】
第1部材21と第2部材22とは、互いに対向する部分がそれぞれ筒状部をなしている。具体的には、第1部材21の先端部(流体出口側端部)が有底の筒状部21aになっており、一方、第2部材22は例えば金属よりなる冷鍛加工製で一端側が開口する縦断面略U字状のカップ形を呈していて、その開放側端(流体入口側端部)が筒状部22aになっている。この両筒状部21a、22aは共に円筒形を呈し、第2部材22の筒状部22aの内径が第1部材21の筒状部21aの外径より大きくなっており、第2部材22の筒状部22aの内周側に第1部材21の筒状部21aが摺動可能に嵌入している。コイルスプリング23は、圧縮ばねとして構成されており、両筒状部21a、22aによって形成される空間25に収納されている。
また、第1部材21の筒状部21aと第2部材22の筒状部22aは、図4(a)の動作状態から図4(b)の2つの動作状態(実線および2点鎖線)へと相対的に移行できるような軸方向長さを有している。なお、矢印C方向を下降もしくは開弁方向、矢印D方向を上昇もしくは閉弁方向とも呼ぶ。
接触子24は、耐熱ゴム系弾性体、例えばフッ素樹脂からなる円柱体を呈しており、その一端側で第2部材22の他端面(反開放側端)に焼き付け等の手段で固着されている。したがって、接触子24の他端側が直接リードバルブ17に当接することになる。
【0030】
以上のように構成されたダンパー機構20は、図4(a)が図1に対応する動作前の状態を示しており、図4(b)が図2に対応する通常動作時の状態(実線)と図3に対応する逆流防止動作時の状態(2点鎖線)を示している。
ダンパー機構20の上記各状態における主な機能について、図2および図3も参照しながら説明する。
【0031】
本実施例では、メインバルブ11の動作前の状態(図1に示す閉弁状態)においては、ダンパー機構20の第2部材22に装着された接触子24が、閉弁しているリードバルブ17に単に当接するだけの状態を呈するように、各部の取付関係等が調整されている。また、コイルスプリング23の圧縮初期荷重および接触子24の弾性変形初期荷重は、リードバルブ17の開弁初期荷重と略同程度以上の値に設定されている。
したがって、弁軸11bの開弁方向、第1部材21(操作棒11c)の矢印C方向への動きは、第1部材21から、コイルスプリング23、第2部材22、接触子24を介して、そのままリードバルブ17に伝達される。
【0032】
かくして、電磁弁5が通電され、メインバルブ11が開弁(弁座12の流体通過口12aを開口)すると、弁軸11bの開弁方向の動きに追随して、ダンパー機構20がリードバルブ17を押し下げながら下降し、リードバルブ17を湾曲変形させて強制的に開弁(第2の弁座16の流体通過口16aを開口)させる。
【0033】
リードバルブ17の開弁動作(湾曲変形)が、リードストッパ18のストッパ部18aによって阻止され、リードバルブ17が最大開度に達すると、リードバルブ17の動きが機械的に停止されるため、それ以降は、ダンパー機構20も下降が阻止されるが、ダンパー機構20自体は収縮する。つまり、第1部材21のみが、矢印Cの如く開弁方向にコイルスプリング23を圧縮しながら移動すると共に、接触子24がリードバルブ17の湾曲形状に沿うように弾性変形し、図4(b)の実線で示す状態(図2に示す状態)となる。なお、第1部材21の動き(単独移動)は、メインバルブ11の開弁ストロークを吸収することになるため、開弁ストロークを余裕ある安全サイドで設定することが可能となる。
【0034】
一方、メインバルブ11の開弁時において、リードバルブ17に矢印B方向からの流体圧が加わると、リードバルブ17は、ダンパー機構20を更に収縮させながら、湾曲状態から直線状態へと形状変化していく。つまり、リードバルブ17の弾性復元力に矢印B方向からの流体圧が加わることにより、第2部材22が矢印Dの如くコイルスプリング23を圧縮しながら上昇する。これにより、第2部材22は、第1部材21(操作棒11c)および弁軸11bと関係なく上昇し、リードバルブ17が湾曲状態から直線状態に形状変化するのを許容する。一方、接触子24は形状変化に追従して原形に復する。
かくして、リードバルブ17および接触子24は、図4(b)において、実線で示す状態から2点鎖線で示す状態へと移行し、リードバルブ17が閉弁する(第2の弁座16の流体通過口16aを閉じる)。
【0035】
本実施例による2次空気制御弁1は、上述の如き構成を有するもので、その主たる作動並びに奏する効果について、次に説明する。
【0036】
車両のエンジン始動時等、排気ガス温度が低いときには、ECU7からの指令信号により、エアポンプ2が駆動され、2次空気の圧送を開始すると共に、電磁弁5のソレノイドコイル13に通電がなされ、メインバルブ11が図1に示す閉弁状態から図2に示す如く開弁(弁座12の流体通過口12aを開口)する。
そして、このメインバルブ11の開弁動作に呼応して、リードバルブ17も自動的(強制的)に開弁する。つまり、メインバルブ11の開弁動作過程において、弁軸11bが下降しながらダンパー機構20を介してリードバルブ17の自由端側を強制的に押し下げていくため、リードバルブ17は湾曲変形して第2の弁座16の流体通過口16aを開口(開弁)する。
かくして、リードバルブ17を、エアポンプ2からの流体圧に全く関係なく、リードバルブ17の開弁に要する圧損を一切心配することなく開弁させることができる。
これにより、エアポンプ2からの2次空気は、リードバルブ17の開弁に要する圧損を一切生じることなく、流体通路4の流体入口4aから矢印Aの如く導入され、電磁弁5側の弁座12の流体通過口12a、逆止弁6側の第2の弁座16の流体通過口16a、リードストッパ18の流体通過用孔部18aを順次経由して矢印A’の如く流体出口4bから導出され、エンジンの排気管3に供給される。
【0037】
一方、上記のリードバルブ17の強制的開弁過程において、ダンパー機構20が、メインバルブ11の開弁ストロークを効果的に吸収する機能を発揮する。
即ち、リードバルブ17の開度(湾曲変形)がリードストッパ18により規制されても、メインバルブ11の弁軸11bは、強制的に停止されることなく、ダンパー機構20の収縮作用(第1部材21がコイルスプリング23を圧縮しながら矢印Cの如く下降すること)によりメインバルブ11の設定開弁ストロークにしたがって下降を継続させることができる。このため、メインバルブ11の開弁ストロークを余裕あるストロークに設定しても、メインバルブ11に無理な負荷を与えることがない。また、接触子24は、リードバルブ17の湾曲形状に馴染むように弾性変形して、リードバルブ17との押圧面積を十分確保することができる。これにより、第2部材22が、メインバルブ11の動作軸に対して傾斜したり、第1部材21を介して弁軸11bをこじることがなく、弁軸11bの動きを安定してリードバルブ17に伝えることができる。したがって、メインバルブ11に何らの支障を与えることなく、リードバルブ17を強制的に開弁することができる。
【0038】
しかして、このような開弁時において、エンジンの排気脈動等により排気管3から2次空気制御弁1に対して排気ガスの逆流が生じた場合には、ダンパー機構20が有効に機能し、リードバルブ17を閉弁させることができる。
即ち、排気ガスの逆流が生じると、排気ガスの流体圧がリードバルブ17に加わり、ダンパー機構20が更に収縮して、リードバルブ17の閉弁動作を許容する。つまり、リードバルブ17の受圧により、ダンパー機構20は、第2部材22が、矢印Dの如くコイルスプリング23を圧縮しながら、第1部材21(操作棒11cおよび弁軸11b)と関係なく単独で上昇していくため、リードバルブ17が、図3に示す如く第2の弁座16の流体通過口16aを閉じ、閉弁する。このリードバルブ17の閉弁により、排気ガスが矢印Bの如く逆流するのを阻止することができる。
【0039】
なお、弁軸11bの復元不良等、何らかの事由によりメインバルブ11が開弁状態のままで故障した場合にも、排気ガスの逆流時にはダンパー機構20が上記と同様に機能し、リードバルブ17を閉弁させることができる。したがって、メインバルブ11の故障時にも、リードバルブ17の閉弁作用により、排気ガスが矢印Bの如く逆流するのを阻止することができる。
【0040】
[変形例]
以上、実施例1について詳述したが、ダンパー機構20の具体的構造やその配設位置は、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々変更することができるものである。
例えば、ダンパー機構20の構造面では、第1部材21をメインバルブ11の弁軸11bと一体形成してコストダウンを図る代わりに、ダンパー機構20自体を独立部品として共通使用する方が得策である場合には、操作棒11cに相当する第1部材21を独立の別部材にしてもよい。
【0041】
また、コイルスプリング23に圧縮ばねを用い、第1部材21、第2部材22の筒状部21a、22aに収納する上記実施例1によれば、ダンパー機構20の軸方向長さを短くし、かつ第1部材21、第2部材22、コイルスプリング23の3部品をコンパクトに纏め上げることが可能であるが、第1部材21、第2部材22の筒状部21a、22aを
省略して第1部材21、第2部材22の端面間にコイルスプリング23を直接介在させるようにしてもよく、第1部材21と第2部材との係合関係を変更してコイルスプリング23を引張りばねで構成してもよい。
【0042】
また、ダンパー機構20の配置面では、メインバルブ11とリードバルブ17とを同軸上に配置し、この両バルブ11、17間にダンパー機構20を配設することによって、メインバルブ11の動きを直線的にしかも最短距離でリードバルブ17に伝えることができるようにしたが、メインバルブ11とリードバルブ17とが同軸上に配置されない場合にも適用してもよい。
【0043】
なお、上述の実施例では、流体制御弁の代表例として、エンジンの排気浄化用2次空気供給システムに使用される電磁式2次空気制御弁への適用例について詳述したが、メインバルブをモータ等の電磁式以外の駆動手段で駆動するものであってもよく、要は、駆動手段によって駆動されて開閉するメインバルブと、このメインバルブの開閉による流体圧を受けて開閉するリードバルブとの組合せからなる流体制御弁であれば、同様に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 電磁式2次空気制御弁
2 エアポンプ
3 排気管
4 流体通路
4a 流体入口
4b 流体出口
10 ハウジング
11 メインバルブ
11a 弁体
11b 弁軸
12 弁座(第1の弁座)
12a 流体通過口
16 金属プレート(第2の弁座)
16a 流体通過口
17 リードバルブ
20 ダンパー機構
21 第1部材
21a 筒状部
22 第2部材
22a 筒状部
23 コイルスプリング(弾性部材)
24 接触子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口(4a)および流体出口(4b)を有する流体通路(4)が内部に形成されたハウジング(10)と、
前記流体通路(4)に前記流体入口(4a)から前記流体出口(4b)に向って直列に配置され、それぞれ流体通過口(12a、16a)を有する第1および第2の弁座(12、16)と、
駆動手段によって駆動され、前記流体入口(4a)側に位置する前記第1の弁座(12)の流体通過口(12a)を開閉するメインバルブ(11)と、
板状弾性体よりなり、前記流体通路(4)に流入する流体圧を受けて、前記流体出口(4b)側に位置する前記第2の弁座(16)の流体通過口(16a)を開閉するリードバルブ(17)と、
前記メインバルブ(11)と前記リードバルブ(17)との間に設けられ、前記メインバルブ(11)の開弁動作を前記リードバルブ(17)に機械的に伝達して前記リードバルブ(17)を開弁させると共に、前記流体出口(4b)から前記流体通路(4)に流入する流体圧による前記リードバルブ(17)の閉弁動作を許容するダンパー機構(20)と
を備えた流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載した流体制御弁において、
前記第1、第2の弁座(12、16)は、同軸上に配置されており、
前記メインバルブ(11)は、前記第1の弁座(12)に離着座する弁体(11a)とこの弁体(11a)を駆動する弁軸(11b)とを有しており、
前記ダンパー機構(20)は、前記弁軸(11b)に結合されて前記弁軸(11b)と一体に動く第1部材(21)と、この第1部材(21)の動きを前記リードバルブ(17)に伝達する第2部材(22)と、前記第1部材(21)と前記第2部材(22)との間に設けられ、前記第1部材(21)と前記第2部材(22)との相対的移動を許容する弾性部材(23)とを具備していることを特徴とする流体制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載した流体制御弁において、
前記ダンパー機構(20)は、前記第1部材(21)が前記メインバルブ(11)の弁軸(11b)と一体形成されていることを特徴とする流体制御弁。
【請求項4】
請求項2または3に記載した流体制御弁において、
前記ダンパー機構(20)は、前記第1部材(21)の流体出口側端部と前記第2部材(22)の流体入口側端部がそれぞれ筒状部(21a、22a)をなしていて、前記第2部材(22)の筒状部(22a)が前記第1部材(21)の筒状部(21a)に摺動自在に嵌合しており、前記弾性部材(23)が前記筒状部(21a、22a)内に伸縮可能に配設されていることを特徴とする流体制御弁。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1つに記載した流体制御弁において、
前記ダンパー機構(20)は、前記第2部材(22)の前記リードバルブ(17)側の端部に耐熱弾性体よりなる接触子(24)が装着されており、
前記接触子(24)が前記リードバルブ(17)に当接していることを特徴とする流体制御弁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載した流体制御弁において、
前記流体入口(4a)が2次空気を供給するエアポンプ(2)に接続されると共に、前記流体出口(4b)がエンジンの排気管(3)に接続され、2次空気制御弁(1)として用いられることを特徴とする流体制御弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−241769(P2012−241769A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111127(P2011−111127)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】