流体制御弁
【課題】閉弁時にバルブ部材と弁座との間において確実にシール力を発生することができる小型で低コストの流体制御弁の提供。
【解決手段】エア調圧弁4は、モータアッセンブリ42により、バルブシャフト44とともにバルブ部材45を、バルブハウジング41内において軸方向に移動させている。バルブ部材45は、調圧弁座411fに対し着座あるいは離間することによりエア調圧弁4を開閉している。バルブ部材45は、シール部材452が取り付けられたバルブフレーム451を有し、バルブフレーム451の取付部451dは、バルブシャフト44の先端部の連結部444に対し傾き可能に取り付けられている。連結部444には軸心に直交するようにボール孔445が貫通し、ボール孔445内には鋼球446が回転可能、かつ、ボール孔445の軸方向に移動可能に配置されている。取付部451dは、鋼球446に対してかしめられて固定されている。
【解決手段】エア調圧弁4は、モータアッセンブリ42により、バルブシャフト44とともにバルブ部材45を、バルブハウジング41内において軸方向に移動させている。バルブ部材45は、調圧弁座411fに対し着座あるいは離間することによりエア調圧弁4を開閉している。バルブ部材45は、シール部材452が取り付けられたバルブフレーム451を有し、バルブフレーム451の取付部451dは、バルブシャフト44の先端部の連結部444に対し傾き可能に取り付けられている。連結部444には軸心に直交するようにボール孔445が貫通し、ボール孔445内には鋼球446が回転可能、かつ、ボール孔445の軸方向に移動可能に配置されている。取付部451dは、鋼球446に対してかしめられて固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
弁軸に円形のバルブ体が垂直に取り付けられ、バルブ体が弁軸とともに軸方向に作動することにより、真円状の弁座に着座するポペットバルブ式の開閉弁は、従来より内燃機関の吸排気弁等において広く使用されている。
特許文献1に開示された開閉弁は、燃料電池システムの酸化ガス供給路上に設けられ、ダイヤフラムで互いに区分けされた一対の圧力室に選択的にエアを導入している。これにより、ダイヤフラムに接続されたバルブ体を、供給路上に形成された弁座に対して当接あるいは離間させて供給路を断続している。
この従来技術に開示されたポペットバルブ式の開閉弁は、閉弁時に一方向からの高圧に対する耐力が高く、エアコンプレッサから吐出された高圧の酸化ガスを十分にシールすることができる。
【0003】
しかしながら、その一方、上述したポペットバルブ式の開閉弁においては、その設計上あるいは製造上の誤差に起因して、バルブ体の平面方向と弁座のシール面との間の平行度において精度のばらつきが発生することがある。互いに当接するバルブ体と弁座のシール面との間の平行度に、精度上のばらつきがあった場合、開閉弁のシール不良につながることがあり、これを回避するための対策が必要であった。
【0004】
このためには、これまで、バルブ体が弁座に着座する際に、バルブ体と弁座との間の平行度のばらつきを、弾性材料にて形成されたシール部材を部分的に潰すことによって吸収してきた。これによって、バルブ体と弁座のシール面とが平行でなくても、弁座の全面にシール部材が当接するようになり、開閉弁のシール不良を防止することができる。
【0005】
ところが、特許文献1に開示されたような開閉弁は、所定量の流体の通過を許容しなければならず、そのシール部材が一定のシール径を備えていなければならない。したがって、シール径が大きくなった場合、シール部材の潰し代を大きくする必要があり、バルブ体を押圧する荷重も増大させる必要がある。このため、開閉弁自体が大型化し、高コスト化するという問題が発生する。
【0006】
これに対して、特許文献2に開示された開閉弁においては、弁座に着座するバルブ体が取り付けられた弁体取付軸の上部と主軸の下部とを、双方の軸に垂直な方向に挿入した連結ピンを介して接続したものである。これによれば、主軸に対して弁体取付軸が首振り可能に連結されているため、弁座のシール面に対して主軸が垂直でなくても、バルブ体を弁座のシール面に倣った方向に向かせ、双方の間においてシール力を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−146924号公報
【特許文献2】実開昭62−87275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された開閉弁においては、弁体取付軸と主軸とが連結ピンを介して接続されたものであり、弁体取付軸と主軸との間のガタは、弁体取付軸、主軸および連結ピンの3部品の寸法によって決定されるため、双方の間のガタが増大する恐れがある。弁体取付軸と主軸との間のガタが大きいと、バルブ体の振動および振動に伴う騒音が増大し、開閉弁を通過する流体においても流量変動が発生する。
特に、弁体取付軸と主軸との間の軸方向のガタが大きい場合には、開閉弁の流量特性にヒステリシスが発生する。このため、開閉弁を流体の流量を制御する流体制御弁に使用した場合、流体の流量を精度よく制御することに困難を伴う。
【0009】
これに対して、弁体取付軸と主軸との間のガタを低減しようとすれば、各部品の寸法精度を向上させなければならず、コストの増大を余儀なくされていた。
さらに、開閉弁内に水分や異物が浸入する恐れがある場合、これらから開閉弁の首振り機構を保護するために首振り機構全体を覆うシール部材を必要とする。このため、シール部材によって開閉弁が一層大型化し、さらなるコスト高を招いていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、閉弁時にバルブ部材と弁座との間において確実にシール力を発生することができる小型で低コストの流体制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る流体制御弁の発明の構成は、内部に流体の流入口と流出口とが形成されたバルブハウジングと、バルブハウジングに取り付けられた駆動源と、駆動源によって、バルブハウジング中において軸方向に移動する弁軸と、弁軸の軸心に対し半径方向に延びるように取り付けられ、弁軸とともに移動することにより、一側の面においてバルブハウジング内に形成された弁座に対して着座あるいは離間し、流入口と流出口との間を断続するバルブ部材と、を備え、バルブ部材は、弁軸との間に半径方向隙間を有した状態で弁軸が挿入される筒状部と、筒状部から弁軸に対し半径方向に拡がった延在部と、一端が筒状部または延在部に連続するとともに、他端が袋状に閉じ、内部に弁軸の先端を収容した取付部と、を有するバルブフレームと、延在部に取り付けられ、弁座に対して当接可能なシール部材と、により形成されており、弁軸の取付部内に収容された部位には、軸心に直交する方向に貫通孔を設け、貫通孔内には回転可能な球体が配置されており、取付部は球体に対しかしめにより固定されていることである。
【0011】
請求項2に係る発明の構成は、請求項1の流体制御弁において、弁軸において貫通孔が形成された部位は、筒状部内に挿入された部位に比べて小径に形成され、球体は貫通孔の両端部から突出していることである。
【0012】
請求項3に係る発明の構成は、請求項2の流体制御弁において、弁軸において貫通孔が形成された部位は、外周面において対向する一対の平坦面を有する二面幅形状に形成され、貫通孔の両端部は、対向した平坦面に直交するようにそれぞれ開口することである。
【0013】
請求項4に係る発明の構成は、請求項1乃至3のうちのいずれかの流体制御弁において、弁軸の外周面と筒状部の内周面との間には、リング状のシール部材が介装されていることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る流体制御弁によれば、バルブ部材は、弁軸との間に半径方向隙間を有した状態で弁軸が挿入される筒状部と、筒状部から弁軸に対し半径方向に拡がった延在部と、一端が筒状部または延在部に連続するとともに、他端が袋状に閉じ、内部に弁軸の先端を収容した取付部と、を有するバルブフレームと、延在部に取り付けられ、弁座に対して当接可能なシール部材と、により形成されており、弁軸の取付部内に収容された部位には、軸心に直交する方向に貫通孔を設け、貫通孔内には回転可能な球体が配置されており、取付部は球体に対しかしめにより固定されていることにより、バルブ部材の平面方向と弁座のシール面との間の平行度に精度のばらつきがあった場合、球体が回転して、バルブ部材が弁軸に対して半径方向隙間が埋まるまで傾くことができ、構成部品の寸法精度を向上させたり流体制御弁を大型化せずに、バルブ部材と弁座との間のシール性を確保することができる。
【0015】
また、弁軸とバルブ部材との間の軸方向の隙間は、球体と貫通孔との間の隙間以上には増大しないため、流体制御弁の流量特性においてヒステリシスを低減し、流量制御の精度を向上させることができる。
さらに、弁軸の先端部を収容した取付部は袋状に形成されているため、特別のシール部材を使用せずに流体制御弁を大型化することもなく、取付部内への水分や異物の浸入を低減することができる。
【0016】
請求項2に係る流体制御弁によれば、弁軸において貫通孔が形成された部位は、筒状部内に挿入された部位に比べて小径に形成され、球体は貫通孔の両端部から突出していることにより、取付部の内周面が弁軸に当接することなく、取付部を球体に対して強固にかしめることができる。
【0017】
請求項3に係る流体制御弁によれば、弁軸において貫通孔が形成された部位は、外周面において対向する一対の平坦面を有する二面幅形状に形成されていることにより、取付部内に収容された弁軸において、容易に小径の部位を形成することができる。
【0018】
請求項4に係る流体制御弁によれば、弁軸の外周面と筒状部の内周面との間には、リング状のシール部材が介装されていることにより、取付部のシール性をさらに向上させ、取付部内への水分や異物の浸入をいっそう低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1による燃料電池システムを示したブロック図
【図2】図1に示したエア調圧弁の部分断面図
【図3】図2に示したエア調圧弁の閉弁時の部分断面図
【図4】図2に示したエア調圧弁に含まれたステッピングモータの出力シャフトとバルブシャフトとの係合状態を示した簡略的な断面図
【図5】図4のA−A断面図
【図6】バルブシャフトをバルブフレームの取付部に挿入する時の状態を示した斜視図
【図7】バルブ部材がボール孔の軸方向に傾く場合を説明するための拡大図
【図8】バルブ部材がボール孔の軸中心に傾く場合を説明するための拡大図
【図9】実施形態1によるエア調圧弁の変形実施形態を説明するための断面図
【図10】本発明の実施形態2による三方弁を示した部分断面図
【図11】図10に示した三方弁のバイパス弁座が閉じた時の部分断面図
【図12】図10に示した三方弁の制御弁座が閉じた時の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
図1乃至図9に基づき、本発明の実施形態1によるエア調圧弁4について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態によるエア調圧弁4(流体制御弁に該当する)は、車両に搭載された燃料電池システム1の酸素系2に適用されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるべきものではなく、燃料供給系システムあるいは油圧ブレーキシステムといった、車両用流体制御弁として広範囲に使用することが可能であり、また、家庭用機器もしくは一般産業機械用の流体制御弁としても適用することが可能である。
【0022】
また、以下、図2における上方および下方を、それぞれエア調圧弁4の上方および下方とし、図2における右方および左方を、それぞれエア調圧弁4の右方および左方として説明しているが、車両におけるエア調圧弁4の実際の取付方向とは無関係である。
図1に示すように、燃料電池システム1は、酸素系2、燃料系5、電池スタック6、動力系7、冷却系8および制御装置9とから形成されている。
【0023】
電池スタック6は、これに限定されるべきものではないが、複数の固体高分子型の単セルが積層されることで形成されている。複数の単セルは電気的に直列に接続されており、各々の単セルは電解質膜と、これを挟むアノード極およびカソード極(いずれも図示せず)を含んでいる。また、単セルのアノードセパレータ(図示せず)には、アノード極に対して水素ガスを供給するためのアノード流路61が形成されており、カソードセパレータ(図示せず)には、カソード極に対して空気を供給するためのカソード流路62が形成されている。
【0024】
酸素系2は酸素系供給配管21aを備えており、酸素系供給配管21aは電池スタック6内のカソード流路62の一端と接続されている。酸素系供給配管21a上には、電池スタック6に向けて順に、エアフィルタ22、エアコンプレッサ23、インタークーラ24および三方弁3が形成されている。
カソード流路62の他端には酸素系排出配管21bの一端が接続されており、酸素系排出配管21b上には、2ポートの流体制御弁であるエア調圧弁4が設けられている。また、前述した三方弁3は3ポートの流体制御弁であって、バイパス管路21cの一端が接続されており、バイパス管路21cの他端は、酸素系排出配管21bのエア調圧弁4よりも下流側部位(電池スタック6が接続されていない側)に接続されている。
【0025】
一方、燃料系5は、燃料系供給配管51aの一端に水素タンク52が接続されており、燃料系供給配管51a上には遮断弁53が形成されている。燃料系供給配管51aの他端は、電池スタック6内のアノード流路61の一端と接続されている。アノード流路61の他端には、燃料系排出配管51bが接続されており、燃料系排出配管51b上には、電池スタック6に近い側から順に、気液分離器54、排気排水弁55および排出ガス希釈器56が形成されている。排出ガス希釈器56には、上述した酸素系排出配管21bの他端が接続されている。
【0026】
また、気液分離器54は燃料系循環路51cを介して、燃料系供給配管51a上の遮断弁53とアノード流路61との接続部との間の部位に接続されている。燃料系循環路51c上には循環ポンプ57が設けられており、気液分離器54からアノード流路61に向けて水素ガスを循環させている。
動力系7は、車両を走行させるための電動モータ71を備えている。電動モータ71は電池スタック6の正極および負極と接続されており、電池スタック6の発電によって駆動される。
【0027】
また、冷却系8は水冷ポンプ81を備え、電池スタック6内に冷却水を循環させて電池スタック6を冷却している。
制御装置9は、エアコンプレッサ23、三方弁3、エア調圧弁4、遮断弁53、循環ポンプ57および冷却ポンプ81と電気的に接続されている。制御装置9は車両の走行状態に応じて算出された電池スタック6の必要な発電量に基づき、これらの各構成要素の作動を制御している。
上述した構成により、車両が運転開始すると、制御装置9はエアコンプレッサ23を作動させてカソード流路62へ空気を供給するとともに、遮断弁53および循環ポンプ57を作動させてアノード流路61へ水素ガスを供給し、電池スタック6において発電を行う。
【0028】
酸素系2において、エアフィルタ22を介して吸引された酸素を含んだ空気は、エアコンプレッサ23において圧縮された後、インタークーラ24によって冷却される。三方弁3は、電池スタック6の発電量に応じてバルブ部材の位置を変位させ、インタークーラ24から供給された空気を分流してバイパス配管21cへ逃すことにより、電池スタック6への空気の流量を制御している。
また、エア調圧弁4は、その開度を調整し電池スタック6内に残存した空気の排出量を調整することにより、電池スタック6内の圧力を制御している。
【0029】
アノード流路61から排出される水素オフガス(燃料ガスオフガス)には発電に使用されなかった水素ガスと発電によって生成された水(水蒸気)が含まれている。気液分離器54は水素ガスと水を分離する機能を有している。気液分離器54で分離された水素ガスは循環ポンプ57により燃料系循環路51cを介して燃料系供給配管51aに供給され循環される。気液分離器54で分離された水(液状)は排気排水弁55が開状態になったとき、水素ガスとともに排出ガス希釈器56に送られる。気液分離器54から排出ガス希釈器56に排出された水素ガスは、排出ガス希釈器56において、酸素系排出配管21bから供給された空気により希釈化された後、水とともに外部へと放出される。
【0030】
次に、エア調圧弁4の構造について詳細に説明する。図2に示したように、エア調圧弁4は、バルブハウジング41の外周面にモータアッセンブリ42(駆動源に該当する)が取り付けられて形成されている。バルブハウジング41は、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材料にて形成されたバルブボデー411と、金属板により一体に形成されたバルブカバー412とを互いに結合させて形成されている。尚、本実施形態においては、駆動源として電動モータを使用したモータアッセンブリ42を使用しているが、ソレノイドアクチュエータやガス圧によって駆動されるアクチュエータなどを使用してもよい。
【0031】
バルブボデー411には、バルブカバー412の取り付け用の金属製のカバー取付スリーブ411aがインサートされている。また、バルブボデー411のフランジ部411bには、エア調圧弁4を車両に取り付けるための金属スリーブ411cがインサートされている。カバー取付スリーブ411aおよび金属スリーブ411cの内周面には、雌螺子が形成されている。
【0032】
バルブボデー411には、図2において右方に開口する調圧弁インレット411d(流入口に該当する)が形成されている。調圧弁インレット411dは、上述した酸素系排出配管21bを介して、電池スタック6のカソード流路62の他端に接続されている(図1示)。また、バルブボデー411には、調圧弁インレット411dに対し垂直方向に開口(図2において下方に開口)する調圧弁アウトレット411e(流出口に該当する)が形成されている。調圧弁アウトレット411eは、上述した酸素系排出配管21bを介して、排出ガス希釈器56に接続されている。
さらに、バルブボデー411の内周面において、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとの間には調圧弁座411f(弁座に該当する)が形成されている。調圧弁座411fは平坦な円環状に形成されている。
【0033】
バルブカバー412は、貫通させた取付ボルト413をカバー取付スリーブ411aに締め付けることによって、バルブボデー411の上端面に取り付けられている。バルブカバー412は、バルブボデー411への取付面412aと、取付面412aから上方へと突出したモータ取付部412bと、モータ取付部412bの中央部において段付状に下降し、下端部が開口したシャフト収容部412cとにより形成されている。また、モータ取付部412bの上面には、複数の雌螺子穴412dが設けられている。バルブカバー412は、金属板をプレス成型することにより、上述した取付面412a、モータ取付部412bおよびシャフト収容部412cが一体に形成されている。
【0034】
モータ取付部412bの上面には、上述したモータアッセンブリ42が取り付けられている。モータアッセンブリ42は、モータケース421の機構収容部421aの外周面を、シャフト収容部412cの内周面に嵌合させた状態で、取付フランジ421bに貫通させた複数の取付スクリュー43を、モータ取付部412bの雌螺子穴412dに締め付けることによってバルブカバー412に固定される。取付スクリュー43は取付フランジ421bに形成された貫通孔(図示せず)に対して遊嵌しており、バルブカバー412は、シャフト収容部412cの内周面が機構収容部421aの外周面に当接することにより、その位置決めが行われる。
【0035】
図4に示したように、モータケース421の内壁には、ステッピングモータ422が固定されている。ステッピングモータ422の出力シャフト422aの先端は円筒形状を呈しており、その軸心部には駆動孔422bが形成されている。駆動孔422bの内周面には所定の長さの雌螺子が形成されており、バルブシャフト44(弁軸に該当する)の端部外周面に形成された雄螺子部441と螺合している。
【0036】
バルブシャフト44はステンレス等の金属材料にて形成され、その雄螺子部441の下方には二面幅部442が形成されている。二面幅部442は、モータケース421の下端部に形成された一対の対向面421cと係合しており、これによって、バルブシャフト44はモータケース421に対して回転不能となっている(図5示)。したがって、ステッピングモータ422の出力シャフト422aが一方向に回転すると、バルブシャフト44がバルブハウジング41内において軸方向に下降し、出力シャフト422aが反対方向に回転すると、バルブシャフト44は上昇する。
【0037】
上述したバルブシャフト44の雄螺子部441と、出力シャフト422aの雌螺子とは、ともに台形ネジにより形成されており、バルブシャフト44と出力シャフト422aとの間の逆効率がほぼ0に設定されていることが望ましい。これにより、バルブシャフト44と出力シャフト422aとの間の動作の伝達が不可逆的に形成され、エア調圧弁4が閉じられている状態で、バルブシャフト44から出力シャフト422aに向けて戻し荷重が働いた場合に、出力シャフト422aは開弁する方向に回転せず、不用意にエア調圧弁4が開弁することがない。
【0038】
図2に示したように、バルブシャフト44の二面幅部442の下方には、モータケース421から突出し一定の径により軸方向に延びた円柱部443が形成されている。円柱部443の外周面は、バルブカバー412のシャフト収容部412cの下端に形成されたシャフトリテーナ部412eにより、軸方向に移動可能に支持されている。互いに当接する円柱部443の外周面またはシャフトリテーナ部412eには無電解ニッケルメッキ等が施され、その摺動面の耐摩耗性を向上させている。
【0039】
さらに、円柱部443の先端部には、円柱部443よりも小径に形成された連結部444(取付部内に収容された部位に該当する)が一体に形成されている。連結部444は、外周面において対向する一対の平坦面444a(図6において1面のみ示す)を有する二面幅形状に形成されている。また、平坦面444aは、互いに対向した一対の側面部444b(図6において1面のみ示す)によって互いに接続されている。
【0040】
連結部444には、軸心に直交する方向にボール孔445(貫通孔に該当する)が貫通しており、ボール孔445の両端部は、対向した平坦面444aに直交するようにそれぞれ開口している。ボール孔445内には、鋼球446(球体に該当する)が配置されている。鋼球446の直径は、平坦面444a同士の距離(二面幅の厚み)よりも大きく設定されており、鋼球446はボール孔445の両端部から突出している。また、鋼球446の直径は、ボール孔445の直径よりも僅かに小さく、鋼球446はボール孔445内において回転可能、かつ、ボール孔445内をボール孔445の軸方向に移動可能に収容されている。
【0041】
バルブシャフト44の先端部に設けられた鋼球446には、バルブシャフト44の軸心に対し半径方向に延びるように、バルブ部材45が取り付けられている。バルブ部材45のバルブフレーム451は、ステンレス等の金属板がプレス成形されて形成されている。バルブフレーム451は、バルブシャフト44の軸心に対し、半径方向に円板状に延びた平板部451aを有しており、平板部451aには外周縁を覆うようにシール部材452が固着されている。
【0042】
シール部材452は、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)またはEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)といった耐熱性を有する合成ゴム材料にて形成されている。シール部材452の下面には、バルブ部材45の下降により、バルブボデー411に形成された調圧弁座411fと当接可能なシールリップ452aが突出している。図2に示したように、シールリップ452aは、発電停止時に、電池スタック6内に残留した水素ガスと酸素の反応や電池スタック6の温度低下による残留水蒸気の凝縮などによって発生する負圧によりセルフシールするように、半径方向内向き(調圧弁アウトレット411eに向いて)に形成されている。
【0043】
バルブフレーム451には、平板部451aの半径方向中心部に連続した段部451b(平板部451aおよび段部451bを包括した構成が延在部に該当する)が形成されている。段部451bはバルブシャフト44の軸方向に延びており、径方向の段差が軸方向に並ぶように2箇所に形成されている。
また、バルブフレーム451は、一端が段部451bに連続した円筒部451c(筒状部に該当する)を有している。円筒部451cは、平板部451aに対して垂直方向に延び、バルブシャフト44の円柱部443が挿入されている。さらに、バルブフレーム451は、円筒部451cの他端に連続して形成され、先端が袋状に閉じていることにより、バルブシャフト44の連結部444を収容することが可能な取付部451dを有している。
【0044】
図6に示したように、取付部451dは、バルブシャフト44の連結部444が収容された場合に、それぞれ連結部444の平坦面444aと対向するように一対の固定壁451eを有している。各々の固定壁451eからは、取付部451d内に連結部444を挿入した際に、鋼球446を収容可能な嵌合部451fが突出している。また、取付部451dには、固定壁451e同士を繋ぐように、対向した一対の接続面部451gが形成されている。
【0045】
双方の固定壁451eの内周面間の距離は、連結部444の平坦面444a同士の距離(二面幅の厚み)よりも大きく、双方の接続面部451gの内周面間の距離は、連結部444の側面部444b同士の距離よりも大きく設定されている。
バルブシャフト44にバルブ部材451を取り付ける場合、ボール孔445内に鋼球446を配置した状態で、平坦面444aから突出した鋼球446が嵌合部451f内に収容されるように、連結部444を取付部451d内に挿入する(図6示)。その後、鋼球446に対して、双方の固定壁451eをかしめることによりかしめ部451hが形成され、取付部451dが鋼球446に固定される(図7示)。
【0046】
連結部444を取付部451d内に挿入する際、嵌合部451fによって鋼球446の位置決めが行われるため、連結部444を取付部451d内に円滑に挿入することができる。図7に示すように、鋼球446に対するかしめは、ボール孔445の開口部において、それぞれ上下2か所において行われる。固定壁451eをかしめた後、鋼球446は、バルブシャフト44のバルブ部材45からの抜け止めとして機能する。
図7に示したように、バルブフレーム451がバルブシャフト44に取り付けられた状態において、鋼球446と連結部444のボール孔445との間においては、軸方向に僅かな隙間しか存在せず、双方の間には、図7における上下方向に実質的ながたは発生しない。
【0047】
また、バルブフレーム451がバルブシャフト44に取り付けられた状態において、円筒部451cの内周面と、挿入されたバルブシャフト44の円柱部443の外周面との間には、バルブシャフト44の軸心に対する半径方向の隙間ε(以下、半径方向隙間εという)が形成されている。図7に示したように、半径方向隙間εは、円筒部451cの内周面と円柱部443の外周面との間において全周に渡って形成されている。半径方向隙間εを設けたことによって、バルブ部材45はバルブシャフト44に対し傾き可能に形成されている。
【0048】
バルブシャフト44に取り付けられたバルブ部材45が、ボール孔445の貫通方向(図7において、時計回りまたは反時計回り)に傾く場合、バルブフレーム451と一体となった鋼球446は、ボール孔445内において回転可能であるとともに、ボール孔445内をボール孔445の軸方向左右に移動することができる。
したがって、バルブ部材45が、図7において左方に傾く場合、バルブフレーム451の内周面下方が、連結部444の下端部の左隅(左端)と当接した状態で、円筒部451cの右側内周面と円柱部443の右側外周面との間の隙間εが埋まるまで左方に傾くことができる(図7において破線にて示す)。
【0049】
また、バルブ部材45が、図7において右方に傾く場合、バルブフレーム451の内周面下方が、連結部444の下端部の右隅(右端)と当接した状態で、円筒部451cの左側内周面と円柱部443の左側外周面との間の隙間εが埋まるまで右方に傾くことができる(図7において二点鎖線にて示す)。
したがって、バルブ部材45が図7において左右方向に傾く場合、バルブ部材45の最大傾き角度は、半径方向隙間εと連結部444の下端部の隅を中心とした回転半径に基づいて規制される。
【0050】
一方、バルブ部材45が連結部444の平坦面444aが延びる方向(図8において、時計回りまたは反時計回り)に傾く場合、ボール孔445の軸心(鋼球446の中心)を中心として回動することができる。すなわち、バルブフレーム451と一体となった鋼球446が、ボール孔445内で回転することにより、円筒部451cの内周面と円柱部443の外周面との間の隙間εが埋まるまで、バルブ部材45が左右に傾いていく(図8において、それぞれ破線および二点鎖線にて示す)。したがって、この場合、バルブ部材45の最大傾き角度は、半径方向隙間εとボール孔445の軸心を中心とした回転半径に基づいて規制される。
【0051】
このように、いずれの方向に傾く場合でも、半径方向隙間εにより、バルブ部材45のバルブシャフト44に対する傾き角度が規制されている。
半径方向隙間εの大きさは、バルブ部材45がバルブボデー411の調圧弁座411fに着座する際にシール可能なように、調圧弁座411fに倣って、バルブ部材45がバルブシャフト44に対して所定量だけ傾くように、シール部材452の調圧弁座411fに対するシール部の直径に基づいて設定されている。
【0052】
図2に戻って、バルブフレーム451の段部451bの内周面には、上方からスプリングリテーナ453が圧入固定されている。スプリングリテーナ453は、金属板がプレス工程にて絞られて形成されている。スプリングリテーナ453は、段部451bの下方に形成された段差と円柱部443との間に位置する円筒状の固定部453aと、固定部453aから半径方向外方へと拡がった肩部453bとを有している。
【0053】
スプリングリテーナ453の固定部453aは、肩部453bがバルブフレーム451の平板部451aの上面に当接するまで、バルブフレーム451の段部451bの内周面に圧入されている。段部451bに圧入された固定部453aは、バルブシャフト44の円柱部443の外周面との間には隙間を有しているため、バルブ部材45のバルブシャフト44に対する傾きを妨げることはない。
【0054】
また、段部451bの上方に形成された段差と固定部453aとの間には、シール部材であるOリング454が介装されている。Oリング454は、バルブフレーム451と固定部453aとの間においてシール機能を発揮し、エア調圧弁4内に浸入した水分または異物等が、バルブフレーム451の取付部451dあるいは後述するダイヤフラム46で区分けされた空気室415まで浸入することを防止している。
さらに、スプリングリテーナ453は、肩部453bから上方へと延びた連結部453cと、連結部453cから半径方向外方へと拡がる締付部453dとを備えている。
【0055】
また、ダイヤフラム保持体455は、半径方向内端にバルブシャフト44の軸方向に延びる係合部455aを有し、係合部455aの上端からは、押圧部455bが半径方向に延びている。押圧部455bの下面がスプリングリテーナ453の連結部453cの上端に当接するまで、係合部455aが連結部453cの内周面に圧入されることにより、スプリングリテーナ453とダイヤフラム保持体455は一体化されている。
【0056】
スプリングリテーナ453の締付部453dとダイヤフラム保持体455の押圧部455bとの間には、ダイヤフラム46の内周縁が固定されている。ダイヤフラム46は合成ゴム材料にて一体的に形成されており、略中央部には表裏を貫通する装着孔461が形成されている。装着孔461の周縁は、締付部453dと押圧部455bとにより上下方向に挟圧され、双方の間において液密的に固定されている。
【0057】
ダイヤフラム46の外周縁は、前述したバルブボデー411の上端面とバルブカバー412のモータ取付部412bの下端との間において挟圧され、液密的に固定されている。このように、ダイヤフラム46がバルブハウジング41の内周面とバルブ部材45とに取り付けられることにより、ダイヤフラム46およびバルブ部材45によって、バルブハウジング41の内部が2つに区分けされている。すなわち、バルブハウジング41の内部は、調圧弁インレット411d、調圧弁アウトレット411eおよび調圧弁座411fを含み供給された流体が通過する流体室414と、流体等の進入が防止され空気が充填されている空気室415とが形成されている。空気室415は、バルブカバー412に設けられた図示しない通気孔により外気に連通している。
【0058】
スプリングリテーナ453の肩部453bと、バルブカバー412のシャフト収容部412cの段部との間には、バルブシャフト44を円周方向に取り囲むようにコイルスプリング47が介装されている。コイルスプリング47は、スプリングリテーナ453とバルブカバー412との間に弾発的に装着され、バルブ部材45をバルブシャフト44の先端方向に向けて付勢している。
【0059】
調圧弁インレット411dからバルブハウジング41の内部に、空気等の所定の圧力を有した流体が供給されると、上述したダイヤフラム46が流体から圧力を受けて、バルブ部材45の上部は、ダイヤフラム46により円周上を均等に引っ張られて、バルブシャフト44の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト44の軸心に対して傾かずに保持される。
【0060】
また、上述したコイルスプリング47のバルブシャフト44の先端方向に向けた付勢力により、バルブ部材45の下方部も、バルブシャフト44の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト44の軸心に対して傾かずに保持される。また、コイルスプリング47の付勢力により、エア調圧弁4の開弁状態における鋼球446とボール孔445との間の上下方向の隙間が埋まり、バルブ部材45の振動およびそれに伴う騒音の発生を防止することができる。
【0061】
このようなダイヤフラム46およびコイルスプリング47の保持力によって、エア調圧弁4の作動時における、バルブ部材45の振動およびそれに伴う騒音の発生が防止され、エア調圧弁4の内部を通過する流体の流量変動を低減することができる。尚、コイルスプリング47は、スプリングリテーナ453とバルブカバー412との間に設ける代わりに、ダイヤフラム保持体455の押圧部455bとバルブカバー412との間に介装されていてもよい。
【0062】
次に、エア調圧弁4の作動方法について簡単に説明する。バルブシャフト44が上方にあり、バルブ部材45のシール部材452が調圧弁座411fから離間している時、エア調圧弁4は開状態にある(図2示)。この状態において、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとが連通しており、双方の間の空気等の流体の流通は許容されている。
【0063】
制御装置9からの駆動信号により、ステッピングモータ422が一方向に回転すると、バルブ部材45がバルブシャフト44とともに軸方向に下降し、シール部材452が調圧弁座411fに着座する(図3示)。これにより、エア調圧弁4は閉状態となり、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとの間の連通が遮断され、双方の間の流体の流通は断たれる。
【0064】
シール部材452が調圧弁座411fに対して着座する時に、シール部材452と調圧弁座411fの双方のシール面の間において平行度の精度にばらつきがあった場合、調圧弁座411fのシール面に倣って、バルブ部材45が、コイルスプリング47を撓ませながらバルブシャフト44に対して傾き、バルブ部材45と調圧弁座411fとの間のシール性を確保することができる。
【0065】
本実施形態によれば、バルブ部材45は、バルブシャフト44との間に半径方向隙間εを有した状態でバルブシャフト44が挿入される円筒部451cと、円筒部451cからバルブシャフト44に対し半径方向に拡がった平板部451aと、一端が円筒部451cに連続するとともに、他端が袋状に閉じ、内部にバルブシャフト44の先端を収容した取付部451dと、を有するバルブフレーム451と、平板部451aの外周面を覆うように取り付けられ、調圧弁座411fに対して当接可能なシール部材452と、により形成されており、バルブシャフト44の取付部内に収容された部位である連結部444には、軸心に直交する方向にボール孔445を設け、ボール孔445内には回転可能な鋼球446が配置されており、取付部451dは鋼球446に対しかしめにより固定されていることにより、バルブ部材451の平面方向と調圧弁座411fのシール面との間の平行度に精度のばらつきがあった場合、鋼球446が回転することにより、バルブ部材451がバルブシャフト44に対して半径方向隙間が埋まるまで傾くことができ、構成部品の寸法精度を向上させたりエア調圧弁4を大型化せずに、バルブ部材451と調圧弁座411fとの間のシール性を確保することができる。
【0066】
また、バルブシャフト44とバルブ部材451との間の軸方向の隙間は、鋼球446とボール孔445との間の隙間以上には増大しないため、エア調圧弁4の流量特性においてヒステリシスを低減し、流量制御の精度を向上させることができる。
また、バルブ部材45は、鋼球446の中心または連結部444の下端を中心に規則的に傾き、半径方向隙間εで規制される所定角度以上には傾かないため、バルブ部材45の振動およびそれに伴う騒音の発生が防止され、エア調圧弁4の内部を通過する空気の流量変動を低減することができ、エア調圧弁4の流量制御性能を向上させことができる。
また、バルブシャフト44の連結部444を挿入した後、取付部451dをかしめてバルブ部材45とバルブシャフト44とを接続することにより、簡単な構成で低コストに、所定量だけバルブ部材45がバルブシャフト44に対して傾くことができるエア調圧弁4を形成することができる。
【0067】
また、バルブシャフト44の先端部を収容した取付部451dは袋状に形成されているため、特別のシール部材を使用せずにエア調圧弁4を大型化することもなく、取付部451d内への水分や異物の浸入を低減することができる。特に、車両において、エア調圧弁4が図2に示したような上下方向に搭載されている場合、下方からの取付部451d内への水等の浸入を十分に防止することができる。
【0068】
また、バルブシャフト44においてボール孔445が形成された連結部444は、円筒部451c内に挿入された円柱部443に比べて小径に形成され、鋼球446はボール孔445の両端部から突出していることにより、取付部451dの内周面がバルブシャフト44に当接することなく、取付部451dを鋼球446に対して強固にかしめることができる。
【0069】
また、連結部444は、外周面において対向する一対の平坦面444aを有する二面幅形状に形成されていることにより、取付部451d内に収容されたバルブシャフト44において、容易に小径の部位を形成することができる。
また、バルブ部材45をバルブシャフト44に取り付ける際、鋼球446をボール孔445に配置した状態で、連結部444を取付部451d内に挿入するため、組付作業性のよいエア調圧弁4にすることができる。
【0070】
また、バルブ部材45の傾き機構は、鋼球446とボール孔445とにより形成されているため、傾き機構自体を小型化することができる。
また、モータアッセンブリ42の駆動力は、鋼球446とボール孔445との接触点を介してバルブ部材45に伝達されるため、荷重の伝達部位が常に一定箇所にあることにより、バルブ部材45を調圧弁座411fに押し付けて流体を遮断する場合、より安定したシール性能を得ることができる。
【0071】
次に、図9に基づいて、実施形態1の変形実施形態について説明する。尚、説明中において、実施形態1によるエア調圧弁4と同様の構成には同じ符号を用いて説明する。本変形実施形態においても実施形態1の場合と同様に、連結部444には軸心に直交する方向にボール孔445が貫通しており、ボール孔445内には、鋼球447(球体に該当する)が配置されている。鋼球447の直径は、ボール孔445の直径よりも僅かに小さく、鋼球447はボール孔445内において回転可能、かつ、ボール孔445内をボール孔445の軸方向に移動可能に収容されている。しかしながら、鋼球447の直径は、平坦面444a同士の距離(二面幅の厚み)よりも小さく設定されており、鋼球447はボール孔445の両端から突出することはない。
【0072】
一方、バルブフレーム451は、実施形態1の場合と同様に、先端が袋状に閉じていることにより、バルブシャフト44の連結部444を収容することが可能な取付部451dを有している。本変形実施形態の場合、双方の固定壁451e上に嵌合部451fは形成されていない。
バルブシャフト44にバルブ部材451を取り付ける場合、ボール孔445内に鋼球447が収容された状態で、取付部451d内に連結部444を挿入する。その後、双方の固定壁451eをボール孔445内に進入させ、鋼球447に対してかしめることにより、取付部451dが鋼球447に固定される。尚、本変形実施形態の場合、双方の固定壁451e上において、かしめ部451hはそれぞれ1か所のみに形成されている。
本変形実施形態においても、バルブフレーム451の円筒部451cとバルブシャフト44の円柱部443との間の半径方向隙間εに基づいて、バルブ部材45がバルブシャフト44に対し傾くことが可能であることは言うまでもない。
【0073】
<実施形態2>
次に、本発明を適用した実施形態2による三方弁3(流体制御弁に該当する)の構造について、図10乃至図12に基づき詳細に説明する。尚、以下、図10における上方および下方を、それぞれ三方弁3の上方および下方とし、図10における右方および左方を、それぞれ三方弁3の右方および左方として説明しているが、車両における三方弁3の実際の取付方向とは無関係である。
【0074】
図10に示したように、三方弁3も実施形態1によるエア調圧弁4と同様に、バルブハウジング31の外周面にモータアッセンブリ32(駆動源に該当する)が取り付けられて形成されている。バルブハウジング31は、ともにポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材料にて形成された第1ボデー311と第2ボデー312とを、互いに液密的に嵌合させて形成している。
【0075】
第1ボデー311には、図10において右方に開口する三方弁インレット311a(流入口に該当する)が形成されている。三方弁インレット311aは、上述した酸素系供給配管21aを介して、インタークーラ24に接続されている(図1示)。また、第2ボデー312には、三方弁インレット311aに対し垂直方向に開口(図10において下方に開口)する三方弁アウトレット312a(流出口に該当する)が形成されている。三方弁アウトレット312aは、上述した酸素系供給配管21aを介して、電池スタック6のカソード流路62の一端に接続されている(図1示)。また、第1ボデー311には、図10において左方に開口するバイパス口311bが形成されている。バイパス口311bは、上述したバイパス配管21cを介して、排出ガス希釈器56に接続されている(図1示)。
【0076】
また、第2ボデー312の内周面において、三方弁インレット311aと三方弁アウトレット312aとの間には制御弁座312b(弁座に該当する)が形成されている。制御弁座312bは平坦な円環状に形成されている。
また、第1ボデー311の内部上面からは、円筒状の着座体311cが下方に延びている。着座体311cの下端は平坦に形成され、三方弁インレット311aおよび三方弁アウトレット312aと、バイパス口311bとの間に位置するバイパス弁座311dが形成されている。また、第1ボデー311の内周上面からは、着座体311cの半径方向内方に位置するように、円筒形のシャフト支持部311eが突出している。
【0077】
実施形態1によるエア調圧弁4と同様に、バルブハウジング31の上面には、上述したモータアッセンブリ32が取り付けられている。モータアッセンブリ32は、モータケース321の機構収容部321aの外周面を、第1ボデー311の上端部に形成されたモータ取付ボス311fの内周面に嵌合させた状態で、モータケース321に貫通させた図示しない複数の取付スクリューを、第1ボデー311に締め付けることによって第1ボデー311に固定される。取付スクリューはモータケース321に形成された貫通孔(図示せず)に対して遊嵌しており、モータアッセンブリ32は、機構収容部321aの外周面がモータ取付ボス311fの内周面に当接することにより、その位置決めが行われる。
【0078】
エア調圧弁4と同様に、モータケース321内には、ステッピングモータ422が固定されており、ステッピングモータ422の出力シャフト422aの回転運動は直進運動に変換され、バルブシャフト33(弁軸に該当する)に伝達される。バルブシャフト33は、上述したシャフト支持部311eの内周面において、その軸方向に移動可能に支持されている。
【0079】
バルブシャフト33の長さ方向の略中央部には、一定の径により軸方向に延びた円柱部331が形成されている。また、円柱部331の上方には、円柱部331と同径の第1ランド部332が設けられており、円柱部331と第1ランド部332との間には、第1シール溝333が円周上に形成されている。第1シール溝333内には、合成ゴム材料にて形成されたシールパッキン34が装着されている。シールパッキン34は、バルブシャフト33の外周面とシャフト支持部311eの内周面との間でシール性能を発揮し、モータアッセンブリ32内への水、異物等の浸入を防止している。
【0080】
バルブシャフト33の先端部には、円柱部331よりも小径の連結部334(取付部内に収容された部位に該当する)が一体に形成されている。エア調圧弁4と同様に、連結部334は、外周面において対向する一対の平坦面334aを有する二面幅形状に形成されている。
連結部334には、軸心に直交する方向にボール孔335(貫通孔に該当する)が貫通しており、ボール孔335の両端部は、対向した平坦面334aに直交するようにそれぞれ開口している。ボール孔335内には、鋼球336(球体に該当する)が回転可能、かつ、ボール孔335の軸方向に移動可能に配置されている。連結部334、ボール孔335および鋼球336の寸法関係は、実施形態1によるエア調圧弁4の場合と同様に設定されている。
【0081】
エア調圧弁4と同様に、連結部334にはバルブ部材35が取り付けられている。バルブ部材35のバルブフレーム351は、バルブシャフト33の軸心に対し、半径方向に円板状に延びた平板部351aを有しており、平板部351aにはその外周面(上面および外周縁)を覆うように、合成ゴム材料にて形成されたシール部材352が被覆されている。
シール部材352の下面には、バルブ部材35の下降により、第2ボデー312に形成された制御弁座312bと当接可能なシールリップ352aが突出している。図10に示したように、シールリップ352aは、電池スタック6内に残留した水素ガスと酸素の反応によって発生する負圧によりセルフシールするように、半径方向外向きに形成されている。また、シール部材352の上面は平坦に形成され、バルブ部材35の上昇により、第1ボデー311に形成されたバイパス弁座311dと当接可能となっている。
【0082】
バルブフレーム351には、平板部351aの半径方向中心部において、バルブシャフト33の先端方向に窪んだ凹部351b(平板部351aおよび凹部351bを包括した構成が延在部に該当する)が形成されている。また、バルブフレーム351は、一端が凹部351bの内周端に連続した円筒部351c(筒状部に該当する)を有している。円筒部351cは、平板部351aに対して垂直方向に延び、バルブシャフト33の円柱部331が挿入されている。
【0083】
さらに、バルブフレーム351は、エア調圧弁4と同様に、円筒部351cの他端に連続して形成され、バルブシャフト33の連結部334を受け入れる取付部351dを有している。取付部351dはボール孔335から突出した鋼球336に対しかしめられ、鋼球336に対し脱落不能に固定されている。
尚、図10において、バルブ部材35をバルブシャフト33に取り付けるために、取付部351dに形成される構成のうち、エア調圧弁4と同様の構成については、あえて符号を省略している。
【0084】
エア調圧弁4と同様に、バルブフレーム351はバルブシャフト33に取り付けられた状態において、円筒部351cの内周面と、バルブシャフト33の円柱部331の外周面との間には、バルブシャフト33の軸心に対する半径方向隙間εが全周上に形成されている。
バルブシャフト33において、上述した連結部334の上方には円柱部331と同径の第2ランド部337が設けられており、円柱部331の下端と第2ランド部337との間には、第2シール溝338が円周上に形成されている。第2シール溝338内には、合成ゴム材料にて形成されたリング状のシャフトシール36(リング状のシール部材に該当する)が装着されている。シャフトシール36は、バルブシャフト33の外周面とバルブフレーム351の円筒部351cの内周面との間でシール性能を発揮し、バルブフレーム351の円筒部351cおよび取付部351d内への水、異物等の浸入を防止している。
【0085】
シャフトシール36は、バルブシャフト33の外周面とバルブフレーム351の円筒部351cの内周面との間に弾発的に設けられ、双方の間において所定の摺動抵抗を発生させている。このため、シャフトシール36によって、バルブ部材35は、バルブシャフト33の軸心を中心として保持され(センタリング)、バルブ部材35のバルブシャフト33に対する振動および振動に伴う騒音を低減することができ、三方弁3の内部を通過する流体の流量変動を低減することができる。
【0086】
また、バルブフレーム351の凹部351bと、第1ボデー311の内部上面との間には、バルブスプリング37が介装されている。バルブスプリング37の内周面は、上述したシャフト支持部311eの外周面に嵌着している。バルブスプリング37は、バルブフレーム351と第1ボデー311との間に弾発的に装着され、バルブ部材35をバルブシャフト33の先端方向に向けて付勢している。バルブスプリング37の付勢力により、バルブ部材35はバルブシャフト33の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト33の軸心を中心として傾かずに保持される。
【0087】
次に、三方弁3の作動方法について簡単に説明する。バルブシャフト33が上方にある時、バルブ部材35のシール部材352の上面がバイパス弁座311dに着座するとともに、制御弁座312bから離間している(図11示)。この時、三方弁インレット311aと三方弁アウトレット312aとは連通し、双方の間の空気等の流体の流通が許容されるとともに、三方弁インレット311aおよび三方弁アウトレット312aと、バイパス口311bとの間の連通は遮断され、これらの間の流体の流通は断たれる。
【0088】
シール部材352がバイパス弁座311dに対して着座する時に、シール部材352とバイパス弁座311dのシール面との間において平行度の精度にばらつきがあった場合、鋼球336が回転することにより、バイパス弁座311dのシール面に倣って、バルブ部材35が、バルブスプリング37を撓ませながらバルブシャフト33に対して傾き、バルブ部材35とバイパス弁座311dとの間のシール性を確保することができる。
【0089】
制御装置9からの駆動信号により、ステッピングモータが一方向に回転すると、バルブ部材35がバルブシャフト33とともに軸方向に下降し、シール部材352の上面がバイパス弁座311dから離間するとともに、シールリップ352aが制御弁座312bに着座する(図12示)。この時、三方弁インレット311aとバイパス口311bとが連通し、双方の間の空気等の流体の流通が許容されるとともに、三方弁インレット311aおよびバイパス口311bと、三方弁アウトレット312aとの間の連通は遮断され、これらの間の流体の流通は断たれる。
【0090】
シール部材352が制御弁座312bに対して着座する時に、シール部材352と制御弁座312bの双方のシール面の間において平行度の精度にばらつきがあった場合、鋼球336が回転することにより、制御弁座312bのシール面に倣って、バルブ部材35が、バルブスプリング37を撓ませながらバルブシャフト33に対して傾き、バルブ部材35と制御弁座312bとの間のシール性を確保することができる。
三方弁3において、バルブ部材35は、制御弁座312bとバイパス弁座311dとの間において任意の位置をとることにより、三方弁インレット311aから供給された流体の、三方弁アウトレット312aおよびバイパス口311bへそれぞれ分流される流量を、流体が通過する通路の断面積に基づき制御することができる(図10示)。
【0091】
本実施形態によれば、バルブシャフト33の外周面と円筒部351cの内周面との間には、リング状のシャフトシール36が介装されていることにより、取付部351dのシール性をさらに向上させ、取付部351d内への水分や異物の浸入をいっそう低減することができる。
【0092】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
エア調圧弁4のバルブフレーム451の内周面とバルブシャフト44の外周面との間にシール部材を弾発的に介装させることにより、双方の間において発生する摺動抵抗を利用して、バルブシャフト44の軸心を中心としてバルブ部材45を保持し(センタリング)、バルブ部材45のバルブシャフト44に対する振動および振動に伴う騒音を低減することができる。
【0093】
また、実施形態1の変形実施形態において、連結部444を円柱部443に対して小径にせずに、その断面形状を円柱部443と同径の真円状としてもよい。
また、図2および図10に示したバルブ部材35、45において、円筒部351c、451cの下方に平板部351a、451aを形成し、さらに、平板部351a、451aの下方に、平板部351a、451aに連続するように取付部351d、451dを形成してもよい。
【符号の説明】
【0094】
図面中、3は三方弁(流体制御弁)、4はエア調圧弁(流体制御弁)、31,41はバルブハウジング、32,42はモータアッセンブリ(駆動源)、33,44はバルブシャフト(弁軸)、35,45はバルブ部材、36はシャフトシール(リング状のシール部材)、311aは三方弁インレット(流入口)、312aは三方弁アウトレット(流出口)、312bは制御弁座(弁座)、334,444は連結部(取付部内に収容された部位)、334a,444aは平坦面、335,445はボール孔(貫通孔)、336,446,447は鋼球(球体)、351,451はバルブフレーム、351a,451aは平板部(延在部)、351bは凹部(延在部)、351c,451cは円筒部(筒状部)、351d,451dは取付部、352,452はシール部材、411dは調圧弁インレット(流入口)、411eは調圧弁アウトレット(流出口)、411fは調圧弁座(弁座)、451bは段部(延在部)を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流れを制御する流体制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
弁軸に円形のバルブ体が垂直に取り付けられ、バルブ体が弁軸とともに軸方向に作動することにより、真円状の弁座に着座するポペットバルブ式の開閉弁は、従来より内燃機関の吸排気弁等において広く使用されている。
特許文献1に開示された開閉弁は、燃料電池システムの酸化ガス供給路上に設けられ、ダイヤフラムで互いに区分けされた一対の圧力室に選択的にエアを導入している。これにより、ダイヤフラムに接続されたバルブ体を、供給路上に形成された弁座に対して当接あるいは離間させて供給路を断続している。
この従来技術に開示されたポペットバルブ式の開閉弁は、閉弁時に一方向からの高圧に対する耐力が高く、エアコンプレッサから吐出された高圧の酸化ガスを十分にシールすることができる。
【0003】
しかしながら、その一方、上述したポペットバルブ式の開閉弁においては、その設計上あるいは製造上の誤差に起因して、バルブ体の平面方向と弁座のシール面との間の平行度において精度のばらつきが発生することがある。互いに当接するバルブ体と弁座のシール面との間の平行度に、精度上のばらつきがあった場合、開閉弁のシール不良につながることがあり、これを回避するための対策が必要であった。
【0004】
このためには、これまで、バルブ体が弁座に着座する際に、バルブ体と弁座との間の平行度のばらつきを、弾性材料にて形成されたシール部材を部分的に潰すことによって吸収してきた。これによって、バルブ体と弁座のシール面とが平行でなくても、弁座の全面にシール部材が当接するようになり、開閉弁のシール不良を防止することができる。
【0005】
ところが、特許文献1に開示されたような開閉弁は、所定量の流体の通過を許容しなければならず、そのシール部材が一定のシール径を備えていなければならない。したがって、シール径が大きくなった場合、シール部材の潰し代を大きくする必要があり、バルブ体を押圧する荷重も増大させる必要がある。このため、開閉弁自体が大型化し、高コスト化するという問題が発生する。
【0006】
これに対して、特許文献2に開示された開閉弁においては、弁座に着座するバルブ体が取り付けられた弁体取付軸の上部と主軸の下部とを、双方の軸に垂直な方向に挿入した連結ピンを介して接続したものである。これによれば、主軸に対して弁体取付軸が首振り可能に連結されているため、弁座のシール面に対して主軸が垂直でなくても、バルブ体を弁座のシール面に倣った方向に向かせ、双方の間においてシール力を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−146924号公報
【特許文献2】実開昭62−87275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された開閉弁においては、弁体取付軸と主軸とが連結ピンを介して接続されたものであり、弁体取付軸と主軸との間のガタは、弁体取付軸、主軸および連結ピンの3部品の寸法によって決定されるため、双方の間のガタが増大する恐れがある。弁体取付軸と主軸との間のガタが大きいと、バルブ体の振動および振動に伴う騒音が増大し、開閉弁を通過する流体においても流量変動が発生する。
特に、弁体取付軸と主軸との間の軸方向のガタが大きい場合には、開閉弁の流量特性にヒステリシスが発生する。このため、開閉弁を流体の流量を制御する流体制御弁に使用した場合、流体の流量を精度よく制御することに困難を伴う。
【0009】
これに対して、弁体取付軸と主軸との間のガタを低減しようとすれば、各部品の寸法精度を向上させなければならず、コストの増大を余儀なくされていた。
さらに、開閉弁内に水分や異物が浸入する恐れがある場合、これらから開閉弁の首振り機構を保護するために首振り機構全体を覆うシール部材を必要とする。このため、シール部材によって開閉弁が一層大型化し、さらなるコスト高を招いていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、閉弁時にバルブ部材と弁座との間において確実にシール力を発生することができる小型で低コストの流体制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る流体制御弁の発明の構成は、内部に流体の流入口と流出口とが形成されたバルブハウジングと、バルブハウジングに取り付けられた駆動源と、駆動源によって、バルブハウジング中において軸方向に移動する弁軸と、弁軸の軸心に対し半径方向に延びるように取り付けられ、弁軸とともに移動することにより、一側の面においてバルブハウジング内に形成された弁座に対して着座あるいは離間し、流入口と流出口との間を断続するバルブ部材と、を備え、バルブ部材は、弁軸との間に半径方向隙間を有した状態で弁軸が挿入される筒状部と、筒状部から弁軸に対し半径方向に拡がった延在部と、一端が筒状部または延在部に連続するとともに、他端が袋状に閉じ、内部に弁軸の先端を収容した取付部と、を有するバルブフレームと、延在部に取り付けられ、弁座に対して当接可能なシール部材と、により形成されており、弁軸の取付部内に収容された部位には、軸心に直交する方向に貫通孔を設け、貫通孔内には回転可能な球体が配置されており、取付部は球体に対しかしめにより固定されていることである。
【0011】
請求項2に係る発明の構成は、請求項1の流体制御弁において、弁軸において貫通孔が形成された部位は、筒状部内に挿入された部位に比べて小径に形成され、球体は貫通孔の両端部から突出していることである。
【0012】
請求項3に係る発明の構成は、請求項2の流体制御弁において、弁軸において貫通孔が形成された部位は、外周面において対向する一対の平坦面を有する二面幅形状に形成され、貫通孔の両端部は、対向した平坦面に直交するようにそれぞれ開口することである。
【0013】
請求項4に係る発明の構成は、請求項1乃至3のうちのいずれかの流体制御弁において、弁軸の外周面と筒状部の内周面との間には、リング状のシール部材が介装されていることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る流体制御弁によれば、バルブ部材は、弁軸との間に半径方向隙間を有した状態で弁軸が挿入される筒状部と、筒状部から弁軸に対し半径方向に拡がった延在部と、一端が筒状部または延在部に連続するとともに、他端が袋状に閉じ、内部に弁軸の先端を収容した取付部と、を有するバルブフレームと、延在部に取り付けられ、弁座に対して当接可能なシール部材と、により形成されており、弁軸の取付部内に収容された部位には、軸心に直交する方向に貫通孔を設け、貫通孔内には回転可能な球体が配置されており、取付部は球体に対しかしめにより固定されていることにより、バルブ部材の平面方向と弁座のシール面との間の平行度に精度のばらつきがあった場合、球体が回転して、バルブ部材が弁軸に対して半径方向隙間が埋まるまで傾くことができ、構成部品の寸法精度を向上させたり流体制御弁を大型化せずに、バルブ部材と弁座との間のシール性を確保することができる。
【0015】
また、弁軸とバルブ部材との間の軸方向の隙間は、球体と貫通孔との間の隙間以上には増大しないため、流体制御弁の流量特性においてヒステリシスを低減し、流量制御の精度を向上させることができる。
さらに、弁軸の先端部を収容した取付部は袋状に形成されているため、特別のシール部材を使用せずに流体制御弁を大型化することもなく、取付部内への水分や異物の浸入を低減することができる。
【0016】
請求項2に係る流体制御弁によれば、弁軸において貫通孔が形成された部位は、筒状部内に挿入された部位に比べて小径に形成され、球体は貫通孔の両端部から突出していることにより、取付部の内周面が弁軸に当接することなく、取付部を球体に対して強固にかしめることができる。
【0017】
請求項3に係る流体制御弁によれば、弁軸において貫通孔が形成された部位は、外周面において対向する一対の平坦面を有する二面幅形状に形成されていることにより、取付部内に収容された弁軸において、容易に小径の部位を形成することができる。
【0018】
請求項4に係る流体制御弁によれば、弁軸の外周面と筒状部の内周面との間には、リング状のシール部材が介装されていることにより、取付部のシール性をさらに向上させ、取付部内への水分や異物の浸入をいっそう低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1による燃料電池システムを示したブロック図
【図2】図1に示したエア調圧弁の部分断面図
【図3】図2に示したエア調圧弁の閉弁時の部分断面図
【図4】図2に示したエア調圧弁に含まれたステッピングモータの出力シャフトとバルブシャフトとの係合状態を示した簡略的な断面図
【図5】図4のA−A断面図
【図6】バルブシャフトをバルブフレームの取付部に挿入する時の状態を示した斜視図
【図7】バルブ部材がボール孔の軸方向に傾く場合を説明するための拡大図
【図8】バルブ部材がボール孔の軸中心に傾く場合を説明するための拡大図
【図9】実施形態1によるエア調圧弁の変形実施形態を説明するための断面図
【図10】本発明の実施形態2による三方弁を示した部分断面図
【図11】図10に示した三方弁のバイパス弁座が閉じた時の部分断面図
【図12】図10に示した三方弁の制御弁座が閉じた時の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
図1乃至図9に基づき、本発明の実施形態1によるエア調圧弁4について説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態によるエア調圧弁4(流体制御弁に該当する)は、車両に搭載された燃料電池システム1の酸素系2に適用されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるべきものではなく、燃料供給系システムあるいは油圧ブレーキシステムといった、車両用流体制御弁として広範囲に使用することが可能であり、また、家庭用機器もしくは一般産業機械用の流体制御弁としても適用することが可能である。
【0022】
また、以下、図2における上方および下方を、それぞれエア調圧弁4の上方および下方とし、図2における右方および左方を、それぞれエア調圧弁4の右方および左方として説明しているが、車両におけるエア調圧弁4の実際の取付方向とは無関係である。
図1に示すように、燃料電池システム1は、酸素系2、燃料系5、電池スタック6、動力系7、冷却系8および制御装置9とから形成されている。
【0023】
電池スタック6は、これに限定されるべきものではないが、複数の固体高分子型の単セルが積層されることで形成されている。複数の単セルは電気的に直列に接続されており、各々の単セルは電解質膜と、これを挟むアノード極およびカソード極(いずれも図示せず)を含んでいる。また、単セルのアノードセパレータ(図示せず)には、アノード極に対して水素ガスを供給するためのアノード流路61が形成されており、カソードセパレータ(図示せず)には、カソード極に対して空気を供給するためのカソード流路62が形成されている。
【0024】
酸素系2は酸素系供給配管21aを備えており、酸素系供給配管21aは電池スタック6内のカソード流路62の一端と接続されている。酸素系供給配管21a上には、電池スタック6に向けて順に、エアフィルタ22、エアコンプレッサ23、インタークーラ24および三方弁3が形成されている。
カソード流路62の他端には酸素系排出配管21bの一端が接続されており、酸素系排出配管21b上には、2ポートの流体制御弁であるエア調圧弁4が設けられている。また、前述した三方弁3は3ポートの流体制御弁であって、バイパス管路21cの一端が接続されており、バイパス管路21cの他端は、酸素系排出配管21bのエア調圧弁4よりも下流側部位(電池スタック6が接続されていない側)に接続されている。
【0025】
一方、燃料系5は、燃料系供給配管51aの一端に水素タンク52が接続されており、燃料系供給配管51a上には遮断弁53が形成されている。燃料系供給配管51aの他端は、電池スタック6内のアノード流路61の一端と接続されている。アノード流路61の他端には、燃料系排出配管51bが接続されており、燃料系排出配管51b上には、電池スタック6に近い側から順に、気液分離器54、排気排水弁55および排出ガス希釈器56が形成されている。排出ガス希釈器56には、上述した酸素系排出配管21bの他端が接続されている。
【0026】
また、気液分離器54は燃料系循環路51cを介して、燃料系供給配管51a上の遮断弁53とアノード流路61との接続部との間の部位に接続されている。燃料系循環路51c上には循環ポンプ57が設けられており、気液分離器54からアノード流路61に向けて水素ガスを循環させている。
動力系7は、車両を走行させるための電動モータ71を備えている。電動モータ71は電池スタック6の正極および負極と接続されており、電池スタック6の発電によって駆動される。
【0027】
また、冷却系8は水冷ポンプ81を備え、電池スタック6内に冷却水を循環させて電池スタック6を冷却している。
制御装置9は、エアコンプレッサ23、三方弁3、エア調圧弁4、遮断弁53、循環ポンプ57および冷却ポンプ81と電気的に接続されている。制御装置9は車両の走行状態に応じて算出された電池スタック6の必要な発電量に基づき、これらの各構成要素の作動を制御している。
上述した構成により、車両が運転開始すると、制御装置9はエアコンプレッサ23を作動させてカソード流路62へ空気を供給するとともに、遮断弁53および循環ポンプ57を作動させてアノード流路61へ水素ガスを供給し、電池スタック6において発電を行う。
【0028】
酸素系2において、エアフィルタ22を介して吸引された酸素を含んだ空気は、エアコンプレッサ23において圧縮された後、インタークーラ24によって冷却される。三方弁3は、電池スタック6の発電量に応じてバルブ部材の位置を変位させ、インタークーラ24から供給された空気を分流してバイパス配管21cへ逃すことにより、電池スタック6への空気の流量を制御している。
また、エア調圧弁4は、その開度を調整し電池スタック6内に残存した空気の排出量を調整することにより、電池スタック6内の圧力を制御している。
【0029】
アノード流路61から排出される水素オフガス(燃料ガスオフガス)には発電に使用されなかった水素ガスと発電によって生成された水(水蒸気)が含まれている。気液分離器54は水素ガスと水を分離する機能を有している。気液分離器54で分離された水素ガスは循環ポンプ57により燃料系循環路51cを介して燃料系供給配管51aに供給され循環される。気液分離器54で分離された水(液状)は排気排水弁55が開状態になったとき、水素ガスとともに排出ガス希釈器56に送られる。気液分離器54から排出ガス希釈器56に排出された水素ガスは、排出ガス希釈器56において、酸素系排出配管21bから供給された空気により希釈化された後、水とともに外部へと放出される。
【0030】
次に、エア調圧弁4の構造について詳細に説明する。図2に示したように、エア調圧弁4は、バルブハウジング41の外周面にモータアッセンブリ42(駆動源に該当する)が取り付けられて形成されている。バルブハウジング41は、ポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材料にて形成されたバルブボデー411と、金属板により一体に形成されたバルブカバー412とを互いに結合させて形成されている。尚、本実施形態においては、駆動源として電動モータを使用したモータアッセンブリ42を使用しているが、ソレノイドアクチュエータやガス圧によって駆動されるアクチュエータなどを使用してもよい。
【0031】
バルブボデー411には、バルブカバー412の取り付け用の金属製のカバー取付スリーブ411aがインサートされている。また、バルブボデー411のフランジ部411bには、エア調圧弁4を車両に取り付けるための金属スリーブ411cがインサートされている。カバー取付スリーブ411aおよび金属スリーブ411cの内周面には、雌螺子が形成されている。
【0032】
バルブボデー411には、図2において右方に開口する調圧弁インレット411d(流入口に該当する)が形成されている。調圧弁インレット411dは、上述した酸素系排出配管21bを介して、電池スタック6のカソード流路62の他端に接続されている(図1示)。また、バルブボデー411には、調圧弁インレット411dに対し垂直方向に開口(図2において下方に開口)する調圧弁アウトレット411e(流出口に該当する)が形成されている。調圧弁アウトレット411eは、上述した酸素系排出配管21bを介して、排出ガス希釈器56に接続されている。
さらに、バルブボデー411の内周面において、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとの間には調圧弁座411f(弁座に該当する)が形成されている。調圧弁座411fは平坦な円環状に形成されている。
【0033】
バルブカバー412は、貫通させた取付ボルト413をカバー取付スリーブ411aに締め付けることによって、バルブボデー411の上端面に取り付けられている。バルブカバー412は、バルブボデー411への取付面412aと、取付面412aから上方へと突出したモータ取付部412bと、モータ取付部412bの中央部において段付状に下降し、下端部が開口したシャフト収容部412cとにより形成されている。また、モータ取付部412bの上面には、複数の雌螺子穴412dが設けられている。バルブカバー412は、金属板をプレス成型することにより、上述した取付面412a、モータ取付部412bおよびシャフト収容部412cが一体に形成されている。
【0034】
モータ取付部412bの上面には、上述したモータアッセンブリ42が取り付けられている。モータアッセンブリ42は、モータケース421の機構収容部421aの外周面を、シャフト収容部412cの内周面に嵌合させた状態で、取付フランジ421bに貫通させた複数の取付スクリュー43を、モータ取付部412bの雌螺子穴412dに締め付けることによってバルブカバー412に固定される。取付スクリュー43は取付フランジ421bに形成された貫通孔(図示せず)に対して遊嵌しており、バルブカバー412は、シャフト収容部412cの内周面が機構収容部421aの外周面に当接することにより、その位置決めが行われる。
【0035】
図4に示したように、モータケース421の内壁には、ステッピングモータ422が固定されている。ステッピングモータ422の出力シャフト422aの先端は円筒形状を呈しており、その軸心部には駆動孔422bが形成されている。駆動孔422bの内周面には所定の長さの雌螺子が形成されており、バルブシャフト44(弁軸に該当する)の端部外周面に形成された雄螺子部441と螺合している。
【0036】
バルブシャフト44はステンレス等の金属材料にて形成され、その雄螺子部441の下方には二面幅部442が形成されている。二面幅部442は、モータケース421の下端部に形成された一対の対向面421cと係合しており、これによって、バルブシャフト44はモータケース421に対して回転不能となっている(図5示)。したがって、ステッピングモータ422の出力シャフト422aが一方向に回転すると、バルブシャフト44がバルブハウジング41内において軸方向に下降し、出力シャフト422aが反対方向に回転すると、バルブシャフト44は上昇する。
【0037】
上述したバルブシャフト44の雄螺子部441と、出力シャフト422aの雌螺子とは、ともに台形ネジにより形成されており、バルブシャフト44と出力シャフト422aとの間の逆効率がほぼ0に設定されていることが望ましい。これにより、バルブシャフト44と出力シャフト422aとの間の動作の伝達が不可逆的に形成され、エア調圧弁4が閉じられている状態で、バルブシャフト44から出力シャフト422aに向けて戻し荷重が働いた場合に、出力シャフト422aは開弁する方向に回転せず、不用意にエア調圧弁4が開弁することがない。
【0038】
図2に示したように、バルブシャフト44の二面幅部442の下方には、モータケース421から突出し一定の径により軸方向に延びた円柱部443が形成されている。円柱部443の外周面は、バルブカバー412のシャフト収容部412cの下端に形成されたシャフトリテーナ部412eにより、軸方向に移動可能に支持されている。互いに当接する円柱部443の外周面またはシャフトリテーナ部412eには無電解ニッケルメッキ等が施され、その摺動面の耐摩耗性を向上させている。
【0039】
さらに、円柱部443の先端部には、円柱部443よりも小径に形成された連結部444(取付部内に収容された部位に該当する)が一体に形成されている。連結部444は、外周面において対向する一対の平坦面444a(図6において1面のみ示す)を有する二面幅形状に形成されている。また、平坦面444aは、互いに対向した一対の側面部444b(図6において1面のみ示す)によって互いに接続されている。
【0040】
連結部444には、軸心に直交する方向にボール孔445(貫通孔に該当する)が貫通しており、ボール孔445の両端部は、対向した平坦面444aに直交するようにそれぞれ開口している。ボール孔445内には、鋼球446(球体に該当する)が配置されている。鋼球446の直径は、平坦面444a同士の距離(二面幅の厚み)よりも大きく設定されており、鋼球446はボール孔445の両端部から突出している。また、鋼球446の直径は、ボール孔445の直径よりも僅かに小さく、鋼球446はボール孔445内において回転可能、かつ、ボール孔445内をボール孔445の軸方向に移動可能に収容されている。
【0041】
バルブシャフト44の先端部に設けられた鋼球446には、バルブシャフト44の軸心に対し半径方向に延びるように、バルブ部材45が取り付けられている。バルブ部材45のバルブフレーム451は、ステンレス等の金属板がプレス成形されて形成されている。バルブフレーム451は、バルブシャフト44の軸心に対し、半径方向に円板状に延びた平板部451aを有しており、平板部451aには外周縁を覆うようにシール部材452が固着されている。
【0042】
シール部材452は、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)またはEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)といった耐熱性を有する合成ゴム材料にて形成されている。シール部材452の下面には、バルブ部材45の下降により、バルブボデー411に形成された調圧弁座411fと当接可能なシールリップ452aが突出している。図2に示したように、シールリップ452aは、発電停止時に、電池スタック6内に残留した水素ガスと酸素の反応や電池スタック6の温度低下による残留水蒸気の凝縮などによって発生する負圧によりセルフシールするように、半径方向内向き(調圧弁アウトレット411eに向いて)に形成されている。
【0043】
バルブフレーム451には、平板部451aの半径方向中心部に連続した段部451b(平板部451aおよび段部451bを包括した構成が延在部に該当する)が形成されている。段部451bはバルブシャフト44の軸方向に延びており、径方向の段差が軸方向に並ぶように2箇所に形成されている。
また、バルブフレーム451は、一端が段部451bに連続した円筒部451c(筒状部に該当する)を有している。円筒部451cは、平板部451aに対して垂直方向に延び、バルブシャフト44の円柱部443が挿入されている。さらに、バルブフレーム451は、円筒部451cの他端に連続して形成され、先端が袋状に閉じていることにより、バルブシャフト44の連結部444を収容することが可能な取付部451dを有している。
【0044】
図6に示したように、取付部451dは、バルブシャフト44の連結部444が収容された場合に、それぞれ連結部444の平坦面444aと対向するように一対の固定壁451eを有している。各々の固定壁451eからは、取付部451d内に連結部444を挿入した際に、鋼球446を収容可能な嵌合部451fが突出している。また、取付部451dには、固定壁451e同士を繋ぐように、対向した一対の接続面部451gが形成されている。
【0045】
双方の固定壁451eの内周面間の距離は、連結部444の平坦面444a同士の距離(二面幅の厚み)よりも大きく、双方の接続面部451gの内周面間の距離は、連結部444の側面部444b同士の距離よりも大きく設定されている。
バルブシャフト44にバルブ部材451を取り付ける場合、ボール孔445内に鋼球446を配置した状態で、平坦面444aから突出した鋼球446が嵌合部451f内に収容されるように、連結部444を取付部451d内に挿入する(図6示)。その後、鋼球446に対して、双方の固定壁451eをかしめることによりかしめ部451hが形成され、取付部451dが鋼球446に固定される(図7示)。
【0046】
連結部444を取付部451d内に挿入する際、嵌合部451fによって鋼球446の位置決めが行われるため、連結部444を取付部451d内に円滑に挿入することができる。図7に示すように、鋼球446に対するかしめは、ボール孔445の開口部において、それぞれ上下2か所において行われる。固定壁451eをかしめた後、鋼球446は、バルブシャフト44のバルブ部材45からの抜け止めとして機能する。
図7に示したように、バルブフレーム451がバルブシャフト44に取り付けられた状態において、鋼球446と連結部444のボール孔445との間においては、軸方向に僅かな隙間しか存在せず、双方の間には、図7における上下方向に実質的ながたは発生しない。
【0047】
また、バルブフレーム451がバルブシャフト44に取り付けられた状態において、円筒部451cの内周面と、挿入されたバルブシャフト44の円柱部443の外周面との間には、バルブシャフト44の軸心に対する半径方向の隙間ε(以下、半径方向隙間εという)が形成されている。図7に示したように、半径方向隙間εは、円筒部451cの内周面と円柱部443の外周面との間において全周に渡って形成されている。半径方向隙間εを設けたことによって、バルブ部材45はバルブシャフト44に対し傾き可能に形成されている。
【0048】
バルブシャフト44に取り付けられたバルブ部材45が、ボール孔445の貫通方向(図7において、時計回りまたは反時計回り)に傾く場合、バルブフレーム451と一体となった鋼球446は、ボール孔445内において回転可能であるとともに、ボール孔445内をボール孔445の軸方向左右に移動することができる。
したがって、バルブ部材45が、図7において左方に傾く場合、バルブフレーム451の内周面下方が、連結部444の下端部の左隅(左端)と当接した状態で、円筒部451cの右側内周面と円柱部443の右側外周面との間の隙間εが埋まるまで左方に傾くことができる(図7において破線にて示す)。
【0049】
また、バルブ部材45が、図7において右方に傾く場合、バルブフレーム451の内周面下方が、連結部444の下端部の右隅(右端)と当接した状態で、円筒部451cの左側内周面と円柱部443の左側外周面との間の隙間εが埋まるまで右方に傾くことができる(図7において二点鎖線にて示す)。
したがって、バルブ部材45が図7において左右方向に傾く場合、バルブ部材45の最大傾き角度は、半径方向隙間εと連結部444の下端部の隅を中心とした回転半径に基づいて規制される。
【0050】
一方、バルブ部材45が連結部444の平坦面444aが延びる方向(図8において、時計回りまたは反時計回り)に傾く場合、ボール孔445の軸心(鋼球446の中心)を中心として回動することができる。すなわち、バルブフレーム451と一体となった鋼球446が、ボール孔445内で回転することにより、円筒部451cの内周面と円柱部443の外周面との間の隙間εが埋まるまで、バルブ部材45が左右に傾いていく(図8において、それぞれ破線および二点鎖線にて示す)。したがって、この場合、バルブ部材45の最大傾き角度は、半径方向隙間εとボール孔445の軸心を中心とした回転半径に基づいて規制される。
【0051】
このように、いずれの方向に傾く場合でも、半径方向隙間εにより、バルブ部材45のバルブシャフト44に対する傾き角度が規制されている。
半径方向隙間εの大きさは、バルブ部材45がバルブボデー411の調圧弁座411fに着座する際にシール可能なように、調圧弁座411fに倣って、バルブ部材45がバルブシャフト44に対して所定量だけ傾くように、シール部材452の調圧弁座411fに対するシール部の直径に基づいて設定されている。
【0052】
図2に戻って、バルブフレーム451の段部451bの内周面には、上方からスプリングリテーナ453が圧入固定されている。スプリングリテーナ453は、金属板がプレス工程にて絞られて形成されている。スプリングリテーナ453は、段部451bの下方に形成された段差と円柱部443との間に位置する円筒状の固定部453aと、固定部453aから半径方向外方へと拡がった肩部453bとを有している。
【0053】
スプリングリテーナ453の固定部453aは、肩部453bがバルブフレーム451の平板部451aの上面に当接するまで、バルブフレーム451の段部451bの内周面に圧入されている。段部451bに圧入された固定部453aは、バルブシャフト44の円柱部443の外周面との間には隙間を有しているため、バルブ部材45のバルブシャフト44に対する傾きを妨げることはない。
【0054】
また、段部451bの上方に形成された段差と固定部453aとの間には、シール部材であるOリング454が介装されている。Oリング454は、バルブフレーム451と固定部453aとの間においてシール機能を発揮し、エア調圧弁4内に浸入した水分または異物等が、バルブフレーム451の取付部451dあるいは後述するダイヤフラム46で区分けされた空気室415まで浸入することを防止している。
さらに、スプリングリテーナ453は、肩部453bから上方へと延びた連結部453cと、連結部453cから半径方向外方へと拡がる締付部453dとを備えている。
【0055】
また、ダイヤフラム保持体455は、半径方向内端にバルブシャフト44の軸方向に延びる係合部455aを有し、係合部455aの上端からは、押圧部455bが半径方向に延びている。押圧部455bの下面がスプリングリテーナ453の連結部453cの上端に当接するまで、係合部455aが連結部453cの内周面に圧入されることにより、スプリングリテーナ453とダイヤフラム保持体455は一体化されている。
【0056】
スプリングリテーナ453の締付部453dとダイヤフラム保持体455の押圧部455bとの間には、ダイヤフラム46の内周縁が固定されている。ダイヤフラム46は合成ゴム材料にて一体的に形成されており、略中央部には表裏を貫通する装着孔461が形成されている。装着孔461の周縁は、締付部453dと押圧部455bとにより上下方向に挟圧され、双方の間において液密的に固定されている。
【0057】
ダイヤフラム46の外周縁は、前述したバルブボデー411の上端面とバルブカバー412のモータ取付部412bの下端との間において挟圧され、液密的に固定されている。このように、ダイヤフラム46がバルブハウジング41の内周面とバルブ部材45とに取り付けられることにより、ダイヤフラム46およびバルブ部材45によって、バルブハウジング41の内部が2つに区分けされている。すなわち、バルブハウジング41の内部は、調圧弁インレット411d、調圧弁アウトレット411eおよび調圧弁座411fを含み供給された流体が通過する流体室414と、流体等の進入が防止され空気が充填されている空気室415とが形成されている。空気室415は、バルブカバー412に設けられた図示しない通気孔により外気に連通している。
【0058】
スプリングリテーナ453の肩部453bと、バルブカバー412のシャフト収容部412cの段部との間には、バルブシャフト44を円周方向に取り囲むようにコイルスプリング47が介装されている。コイルスプリング47は、スプリングリテーナ453とバルブカバー412との間に弾発的に装着され、バルブ部材45をバルブシャフト44の先端方向に向けて付勢している。
【0059】
調圧弁インレット411dからバルブハウジング41の内部に、空気等の所定の圧力を有した流体が供給されると、上述したダイヤフラム46が流体から圧力を受けて、バルブ部材45の上部は、ダイヤフラム46により円周上を均等に引っ張られて、バルブシャフト44の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト44の軸心に対して傾かずに保持される。
【0060】
また、上述したコイルスプリング47のバルブシャフト44の先端方向に向けた付勢力により、バルブ部材45の下方部も、バルブシャフト44の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト44の軸心に対して傾かずに保持される。また、コイルスプリング47の付勢力により、エア調圧弁4の開弁状態における鋼球446とボール孔445との間の上下方向の隙間が埋まり、バルブ部材45の振動およびそれに伴う騒音の発生を防止することができる。
【0061】
このようなダイヤフラム46およびコイルスプリング47の保持力によって、エア調圧弁4の作動時における、バルブ部材45の振動およびそれに伴う騒音の発生が防止され、エア調圧弁4の内部を通過する流体の流量変動を低減することができる。尚、コイルスプリング47は、スプリングリテーナ453とバルブカバー412との間に設ける代わりに、ダイヤフラム保持体455の押圧部455bとバルブカバー412との間に介装されていてもよい。
【0062】
次に、エア調圧弁4の作動方法について簡単に説明する。バルブシャフト44が上方にあり、バルブ部材45のシール部材452が調圧弁座411fから離間している時、エア調圧弁4は開状態にある(図2示)。この状態において、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとが連通しており、双方の間の空気等の流体の流通は許容されている。
【0063】
制御装置9からの駆動信号により、ステッピングモータ422が一方向に回転すると、バルブ部材45がバルブシャフト44とともに軸方向に下降し、シール部材452が調圧弁座411fに着座する(図3示)。これにより、エア調圧弁4は閉状態となり、調圧弁インレット411dと調圧弁アウトレット411eとの間の連通が遮断され、双方の間の流体の流通は断たれる。
【0064】
シール部材452が調圧弁座411fに対して着座する時に、シール部材452と調圧弁座411fの双方のシール面の間において平行度の精度にばらつきがあった場合、調圧弁座411fのシール面に倣って、バルブ部材45が、コイルスプリング47を撓ませながらバルブシャフト44に対して傾き、バルブ部材45と調圧弁座411fとの間のシール性を確保することができる。
【0065】
本実施形態によれば、バルブ部材45は、バルブシャフト44との間に半径方向隙間εを有した状態でバルブシャフト44が挿入される円筒部451cと、円筒部451cからバルブシャフト44に対し半径方向に拡がった平板部451aと、一端が円筒部451cに連続するとともに、他端が袋状に閉じ、内部にバルブシャフト44の先端を収容した取付部451dと、を有するバルブフレーム451と、平板部451aの外周面を覆うように取り付けられ、調圧弁座411fに対して当接可能なシール部材452と、により形成されており、バルブシャフト44の取付部内に収容された部位である連結部444には、軸心に直交する方向にボール孔445を設け、ボール孔445内には回転可能な鋼球446が配置されており、取付部451dは鋼球446に対しかしめにより固定されていることにより、バルブ部材451の平面方向と調圧弁座411fのシール面との間の平行度に精度のばらつきがあった場合、鋼球446が回転することにより、バルブ部材451がバルブシャフト44に対して半径方向隙間が埋まるまで傾くことができ、構成部品の寸法精度を向上させたりエア調圧弁4を大型化せずに、バルブ部材451と調圧弁座411fとの間のシール性を確保することができる。
【0066】
また、バルブシャフト44とバルブ部材451との間の軸方向の隙間は、鋼球446とボール孔445との間の隙間以上には増大しないため、エア調圧弁4の流量特性においてヒステリシスを低減し、流量制御の精度を向上させることができる。
また、バルブ部材45は、鋼球446の中心または連結部444の下端を中心に規則的に傾き、半径方向隙間εで規制される所定角度以上には傾かないため、バルブ部材45の振動およびそれに伴う騒音の発生が防止され、エア調圧弁4の内部を通過する空気の流量変動を低減することができ、エア調圧弁4の流量制御性能を向上させことができる。
また、バルブシャフト44の連結部444を挿入した後、取付部451dをかしめてバルブ部材45とバルブシャフト44とを接続することにより、簡単な構成で低コストに、所定量だけバルブ部材45がバルブシャフト44に対して傾くことができるエア調圧弁4を形成することができる。
【0067】
また、バルブシャフト44の先端部を収容した取付部451dは袋状に形成されているため、特別のシール部材を使用せずにエア調圧弁4を大型化することもなく、取付部451d内への水分や異物の浸入を低減することができる。特に、車両において、エア調圧弁4が図2に示したような上下方向に搭載されている場合、下方からの取付部451d内への水等の浸入を十分に防止することができる。
【0068】
また、バルブシャフト44においてボール孔445が形成された連結部444は、円筒部451c内に挿入された円柱部443に比べて小径に形成され、鋼球446はボール孔445の両端部から突出していることにより、取付部451dの内周面がバルブシャフト44に当接することなく、取付部451dを鋼球446に対して強固にかしめることができる。
【0069】
また、連結部444は、外周面において対向する一対の平坦面444aを有する二面幅形状に形成されていることにより、取付部451d内に収容されたバルブシャフト44において、容易に小径の部位を形成することができる。
また、バルブ部材45をバルブシャフト44に取り付ける際、鋼球446をボール孔445に配置した状態で、連結部444を取付部451d内に挿入するため、組付作業性のよいエア調圧弁4にすることができる。
【0070】
また、バルブ部材45の傾き機構は、鋼球446とボール孔445とにより形成されているため、傾き機構自体を小型化することができる。
また、モータアッセンブリ42の駆動力は、鋼球446とボール孔445との接触点を介してバルブ部材45に伝達されるため、荷重の伝達部位が常に一定箇所にあることにより、バルブ部材45を調圧弁座411fに押し付けて流体を遮断する場合、より安定したシール性能を得ることができる。
【0071】
次に、図9に基づいて、実施形態1の変形実施形態について説明する。尚、説明中において、実施形態1によるエア調圧弁4と同様の構成には同じ符号を用いて説明する。本変形実施形態においても実施形態1の場合と同様に、連結部444には軸心に直交する方向にボール孔445が貫通しており、ボール孔445内には、鋼球447(球体に該当する)が配置されている。鋼球447の直径は、ボール孔445の直径よりも僅かに小さく、鋼球447はボール孔445内において回転可能、かつ、ボール孔445内をボール孔445の軸方向に移動可能に収容されている。しかしながら、鋼球447の直径は、平坦面444a同士の距離(二面幅の厚み)よりも小さく設定されており、鋼球447はボール孔445の両端から突出することはない。
【0072】
一方、バルブフレーム451は、実施形態1の場合と同様に、先端が袋状に閉じていることにより、バルブシャフト44の連結部444を収容することが可能な取付部451dを有している。本変形実施形態の場合、双方の固定壁451e上に嵌合部451fは形成されていない。
バルブシャフト44にバルブ部材451を取り付ける場合、ボール孔445内に鋼球447が収容された状態で、取付部451d内に連結部444を挿入する。その後、双方の固定壁451eをボール孔445内に進入させ、鋼球447に対してかしめることにより、取付部451dが鋼球447に固定される。尚、本変形実施形態の場合、双方の固定壁451e上において、かしめ部451hはそれぞれ1か所のみに形成されている。
本変形実施形態においても、バルブフレーム451の円筒部451cとバルブシャフト44の円柱部443との間の半径方向隙間εに基づいて、バルブ部材45がバルブシャフト44に対し傾くことが可能であることは言うまでもない。
【0073】
<実施形態2>
次に、本発明を適用した実施形態2による三方弁3(流体制御弁に該当する)の構造について、図10乃至図12に基づき詳細に説明する。尚、以下、図10における上方および下方を、それぞれ三方弁3の上方および下方とし、図10における右方および左方を、それぞれ三方弁3の右方および左方として説明しているが、車両における三方弁3の実際の取付方向とは無関係である。
【0074】
図10に示したように、三方弁3も実施形態1によるエア調圧弁4と同様に、バルブハウジング31の外周面にモータアッセンブリ32(駆動源に該当する)が取り付けられて形成されている。バルブハウジング31は、ともにポリフェニレンサルファイド等の合成樹脂材料にて形成された第1ボデー311と第2ボデー312とを、互いに液密的に嵌合させて形成している。
【0075】
第1ボデー311には、図10において右方に開口する三方弁インレット311a(流入口に該当する)が形成されている。三方弁インレット311aは、上述した酸素系供給配管21aを介して、インタークーラ24に接続されている(図1示)。また、第2ボデー312には、三方弁インレット311aに対し垂直方向に開口(図10において下方に開口)する三方弁アウトレット312a(流出口に該当する)が形成されている。三方弁アウトレット312aは、上述した酸素系供給配管21aを介して、電池スタック6のカソード流路62の一端に接続されている(図1示)。また、第1ボデー311には、図10において左方に開口するバイパス口311bが形成されている。バイパス口311bは、上述したバイパス配管21cを介して、排出ガス希釈器56に接続されている(図1示)。
【0076】
また、第2ボデー312の内周面において、三方弁インレット311aと三方弁アウトレット312aとの間には制御弁座312b(弁座に該当する)が形成されている。制御弁座312bは平坦な円環状に形成されている。
また、第1ボデー311の内部上面からは、円筒状の着座体311cが下方に延びている。着座体311cの下端は平坦に形成され、三方弁インレット311aおよび三方弁アウトレット312aと、バイパス口311bとの間に位置するバイパス弁座311dが形成されている。また、第1ボデー311の内周上面からは、着座体311cの半径方向内方に位置するように、円筒形のシャフト支持部311eが突出している。
【0077】
実施形態1によるエア調圧弁4と同様に、バルブハウジング31の上面には、上述したモータアッセンブリ32が取り付けられている。モータアッセンブリ32は、モータケース321の機構収容部321aの外周面を、第1ボデー311の上端部に形成されたモータ取付ボス311fの内周面に嵌合させた状態で、モータケース321に貫通させた図示しない複数の取付スクリューを、第1ボデー311に締め付けることによって第1ボデー311に固定される。取付スクリューはモータケース321に形成された貫通孔(図示せず)に対して遊嵌しており、モータアッセンブリ32は、機構収容部321aの外周面がモータ取付ボス311fの内周面に当接することにより、その位置決めが行われる。
【0078】
エア調圧弁4と同様に、モータケース321内には、ステッピングモータ422が固定されており、ステッピングモータ422の出力シャフト422aの回転運動は直進運動に変換され、バルブシャフト33(弁軸に該当する)に伝達される。バルブシャフト33は、上述したシャフト支持部311eの内周面において、その軸方向に移動可能に支持されている。
【0079】
バルブシャフト33の長さ方向の略中央部には、一定の径により軸方向に延びた円柱部331が形成されている。また、円柱部331の上方には、円柱部331と同径の第1ランド部332が設けられており、円柱部331と第1ランド部332との間には、第1シール溝333が円周上に形成されている。第1シール溝333内には、合成ゴム材料にて形成されたシールパッキン34が装着されている。シールパッキン34は、バルブシャフト33の外周面とシャフト支持部311eの内周面との間でシール性能を発揮し、モータアッセンブリ32内への水、異物等の浸入を防止している。
【0080】
バルブシャフト33の先端部には、円柱部331よりも小径の連結部334(取付部内に収容された部位に該当する)が一体に形成されている。エア調圧弁4と同様に、連結部334は、外周面において対向する一対の平坦面334aを有する二面幅形状に形成されている。
連結部334には、軸心に直交する方向にボール孔335(貫通孔に該当する)が貫通しており、ボール孔335の両端部は、対向した平坦面334aに直交するようにそれぞれ開口している。ボール孔335内には、鋼球336(球体に該当する)が回転可能、かつ、ボール孔335の軸方向に移動可能に配置されている。連結部334、ボール孔335および鋼球336の寸法関係は、実施形態1によるエア調圧弁4の場合と同様に設定されている。
【0081】
エア調圧弁4と同様に、連結部334にはバルブ部材35が取り付けられている。バルブ部材35のバルブフレーム351は、バルブシャフト33の軸心に対し、半径方向に円板状に延びた平板部351aを有しており、平板部351aにはその外周面(上面および外周縁)を覆うように、合成ゴム材料にて形成されたシール部材352が被覆されている。
シール部材352の下面には、バルブ部材35の下降により、第2ボデー312に形成された制御弁座312bと当接可能なシールリップ352aが突出している。図10に示したように、シールリップ352aは、電池スタック6内に残留した水素ガスと酸素の反応によって発生する負圧によりセルフシールするように、半径方向外向きに形成されている。また、シール部材352の上面は平坦に形成され、バルブ部材35の上昇により、第1ボデー311に形成されたバイパス弁座311dと当接可能となっている。
【0082】
バルブフレーム351には、平板部351aの半径方向中心部において、バルブシャフト33の先端方向に窪んだ凹部351b(平板部351aおよび凹部351bを包括した構成が延在部に該当する)が形成されている。また、バルブフレーム351は、一端が凹部351bの内周端に連続した円筒部351c(筒状部に該当する)を有している。円筒部351cは、平板部351aに対して垂直方向に延び、バルブシャフト33の円柱部331が挿入されている。
【0083】
さらに、バルブフレーム351は、エア調圧弁4と同様に、円筒部351cの他端に連続して形成され、バルブシャフト33の連結部334を受け入れる取付部351dを有している。取付部351dはボール孔335から突出した鋼球336に対しかしめられ、鋼球336に対し脱落不能に固定されている。
尚、図10において、バルブ部材35をバルブシャフト33に取り付けるために、取付部351dに形成される構成のうち、エア調圧弁4と同様の構成については、あえて符号を省略している。
【0084】
エア調圧弁4と同様に、バルブフレーム351はバルブシャフト33に取り付けられた状態において、円筒部351cの内周面と、バルブシャフト33の円柱部331の外周面との間には、バルブシャフト33の軸心に対する半径方向隙間εが全周上に形成されている。
バルブシャフト33において、上述した連結部334の上方には円柱部331と同径の第2ランド部337が設けられており、円柱部331の下端と第2ランド部337との間には、第2シール溝338が円周上に形成されている。第2シール溝338内には、合成ゴム材料にて形成されたリング状のシャフトシール36(リング状のシール部材に該当する)が装着されている。シャフトシール36は、バルブシャフト33の外周面とバルブフレーム351の円筒部351cの内周面との間でシール性能を発揮し、バルブフレーム351の円筒部351cおよび取付部351d内への水、異物等の浸入を防止している。
【0085】
シャフトシール36は、バルブシャフト33の外周面とバルブフレーム351の円筒部351cの内周面との間に弾発的に設けられ、双方の間において所定の摺動抵抗を発生させている。このため、シャフトシール36によって、バルブ部材35は、バルブシャフト33の軸心を中心として保持され(センタリング)、バルブ部材35のバルブシャフト33に対する振動および振動に伴う騒音を低減することができ、三方弁3の内部を通過する流体の流量変動を低減することができる。
【0086】
また、バルブフレーム351の凹部351bと、第1ボデー311の内部上面との間には、バルブスプリング37が介装されている。バルブスプリング37の内周面は、上述したシャフト支持部311eの外周面に嵌着している。バルブスプリング37は、バルブフレーム351と第1ボデー311との間に弾発的に装着され、バルブ部材35をバルブシャフト33の先端方向に向けて付勢している。バルブスプリング37の付勢力により、バルブ部材35はバルブシャフト33の軸心からずれずに(センタリング)、バルブシャフト33の軸心を中心として傾かずに保持される。
【0087】
次に、三方弁3の作動方法について簡単に説明する。バルブシャフト33が上方にある時、バルブ部材35のシール部材352の上面がバイパス弁座311dに着座するとともに、制御弁座312bから離間している(図11示)。この時、三方弁インレット311aと三方弁アウトレット312aとは連通し、双方の間の空気等の流体の流通が許容されるとともに、三方弁インレット311aおよび三方弁アウトレット312aと、バイパス口311bとの間の連通は遮断され、これらの間の流体の流通は断たれる。
【0088】
シール部材352がバイパス弁座311dに対して着座する時に、シール部材352とバイパス弁座311dのシール面との間において平行度の精度にばらつきがあった場合、鋼球336が回転することにより、バイパス弁座311dのシール面に倣って、バルブ部材35が、バルブスプリング37を撓ませながらバルブシャフト33に対して傾き、バルブ部材35とバイパス弁座311dとの間のシール性を確保することができる。
【0089】
制御装置9からの駆動信号により、ステッピングモータが一方向に回転すると、バルブ部材35がバルブシャフト33とともに軸方向に下降し、シール部材352の上面がバイパス弁座311dから離間するとともに、シールリップ352aが制御弁座312bに着座する(図12示)。この時、三方弁インレット311aとバイパス口311bとが連通し、双方の間の空気等の流体の流通が許容されるとともに、三方弁インレット311aおよびバイパス口311bと、三方弁アウトレット312aとの間の連通は遮断され、これらの間の流体の流通は断たれる。
【0090】
シール部材352が制御弁座312bに対して着座する時に、シール部材352と制御弁座312bの双方のシール面の間において平行度の精度にばらつきがあった場合、鋼球336が回転することにより、制御弁座312bのシール面に倣って、バルブ部材35が、バルブスプリング37を撓ませながらバルブシャフト33に対して傾き、バルブ部材35と制御弁座312bとの間のシール性を確保することができる。
三方弁3において、バルブ部材35は、制御弁座312bとバイパス弁座311dとの間において任意の位置をとることにより、三方弁インレット311aから供給された流体の、三方弁アウトレット312aおよびバイパス口311bへそれぞれ分流される流量を、流体が通過する通路の断面積に基づき制御することができる(図10示)。
【0091】
本実施形態によれば、バルブシャフト33の外周面と円筒部351cの内周面との間には、リング状のシャフトシール36が介装されていることにより、取付部351dのシール性をさらに向上させ、取付部351d内への水分や異物の浸入をいっそう低減することができる。
【0092】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
エア調圧弁4のバルブフレーム451の内周面とバルブシャフト44の外周面との間にシール部材を弾発的に介装させることにより、双方の間において発生する摺動抵抗を利用して、バルブシャフト44の軸心を中心としてバルブ部材45を保持し(センタリング)、バルブ部材45のバルブシャフト44に対する振動および振動に伴う騒音を低減することができる。
【0093】
また、実施形態1の変形実施形態において、連結部444を円柱部443に対して小径にせずに、その断面形状を円柱部443と同径の真円状としてもよい。
また、図2および図10に示したバルブ部材35、45において、円筒部351c、451cの下方に平板部351a、451aを形成し、さらに、平板部351a、451aの下方に、平板部351a、451aに連続するように取付部351d、451dを形成してもよい。
【符号の説明】
【0094】
図面中、3は三方弁(流体制御弁)、4はエア調圧弁(流体制御弁)、31,41はバルブハウジング、32,42はモータアッセンブリ(駆動源)、33,44はバルブシャフト(弁軸)、35,45はバルブ部材、36はシャフトシール(リング状のシール部材)、311aは三方弁インレット(流入口)、312aは三方弁アウトレット(流出口)、312bは制御弁座(弁座)、334,444は連結部(取付部内に収容された部位)、334a,444aは平坦面、335,445はボール孔(貫通孔)、336,446,447は鋼球(球体)、351,451はバルブフレーム、351a,451aは平板部(延在部)、351bは凹部(延在部)、351c,451cは円筒部(筒状部)、351d,451dは取付部、352,452はシール部材、411dは調圧弁インレット(流入口)、411eは調圧弁アウトレット(流出口)、411fは調圧弁座(弁座)、451bは段部(延在部)を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体の流入口と流出口とが形成されたバルブハウジングと、
前記バルブハウジングに取り付けられた駆動源と、
前記駆動源によって、前記バルブハウジング中において軸方向に移動する弁軸と、
前記弁軸の軸心に対し半径方向に延びるように取り付けられ、前記弁軸とともに移動することにより、一側の面において、前記バルブハウジング内に形成された弁座に対して着座あるいは離間し、前記流入口と前記流出口との間を断続するバルブ部材と、
を備え、
前記バルブ部材は、
前記弁軸との間に半径方向隙間を有した状態で前記弁軸が挿入される筒状部と、前記筒状部から前記弁軸に対し半径方向に拡がった延在部と、一端が前記筒状部または前記延在部に連続するとともに、他端が袋状に閉じ、内部に前記弁軸の先端を収容した取付部と、を有するバルブフレームと、
前記延在部に取り付けられ、前記弁座に対して当接可能なシール部材と、
により形成されており、
前記弁軸の前記取付部内に収容された部位には、軸心に直交する方向に貫通孔を設け、前記貫通孔内には回転可能な球体が配置されており、
前記取付部は、前記球体に対しかしめにより固定されている流体制御弁。
【請求項2】
前記弁軸において前記貫通孔が形成された部位は、前記筒状部内に挿入された部位に比べて小径に形成され、前記球体は前記貫通孔の両端部から突出している請求項1記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記弁軸において前記貫通孔が形成された部位は、外周面において対向する一対の平坦面を有する二面幅形状に形成され、前記貫通孔の両端部は、対向した前記平坦面に直交するようにそれぞれ開口する請求項2記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記弁軸の外周面と前記筒状部の内周面との間には、リング状のシール部材が介装されている請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の流体制御弁。
【請求項1】
内部に流体の流入口と流出口とが形成されたバルブハウジングと、
前記バルブハウジングに取り付けられた駆動源と、
前記駆動源によって、前記バルブハウジング中において軸方向に移動する弁軸と、
前記弁軸の軸心に対し半径方向に延びるように取り付けられ、前記弁軸とともに移動することにより、一側の面において、前記バルブハウジング内に形成された弁座に対して着座あるいは離間し、前記流入口と前記流出口との間を断続するバルブ部材と、
を備え、
前記バルブ部材は、
前記弁軸との間に半径方向隙間を有した状態で前記弁軸が挿入される筒状部と、前記筒状部から前記弁軸に対し半径方向に拡がった延在部と、一端が前記筒状部または前記延在部に連続するとともに、他端が袋状に閉じ、内部に前記弁軸の先端を収容した取付部と、を有するバルブフレームと、
前記延在部に取り付けられ、前記弁座に対して当接可能なシール部材と、
により形成されており、
前記弁軸の前記取付部内に収容された部位には、軸心に直交する方向に貫通孔を設け、前記貫通孔内には回転可能な球体が配置されており、
前記取付部は、前記球体に対しかしめにより固定されている流体制御弁。
【請求項2】
前記弁軸において前記貫通孔が形成された部位は、前記筒状部内に挿入された部位に比べて小径に形成され、前記球体は前記貫通孔の両端部から突出している請求項1記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記弁軸において前記貫通孔が形成された部位は、外周面において対向する一対の平坦面を有する二面幅形状に形成され、前記貫通孔の両端部は、対向した前記平坦面に直交するようにそれぞれ開口する請求項2記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記弁軸の外周面と前記筒状部の内周面との間には、リング状のシール部材が介装されている請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の流体制御弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−87803(P2013−87803A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226336(P2011−226336)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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