説明

流体制御方法及び流体制御装置

【課題】複数の流体を正確かつ迅速に目標の特性になるように混合する。
【解決手段】混合前の複数の流体を流すための流路5,7,11,13と、混合後の流体を流すための流路15,17と、流体を流路で移動させるためのポンプ19と、混合前の複数の流体の流量をそれぞれ調整するための流量調整部11b,13bと、混合後の流体の特性を光学的に測定するための測定部15aと、測定部15aの測定結果に基づいて混合後の流体が目標の特性になるように流量調整部11b,13bを制御して混合前の流体の流量を調整する制御部21と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路内を流れる流体の制御方法及び制御装置に関し、特に、複数の流体を混合して目標の特性をもつ流体にするための流体制御方法及び流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の液体を混ぜ合わせる装置において、一定時間あたりのポンプの吐出量や弁の開度により、流量を設定し、それぞれの一定時間あたりの流量の液体を混ぜ合わせて、目的の混合液を作成する技術がある(例えば特許文献1、特許文献2を参照。)。
【0003】
また、複数の液体を混合した液体を用いる技術として、例えばシリコンウェハのエッチング技術がある。シリコンウェハのエッチング液には複数種類の酸を混合した混酸が用いられる(例えば特許文献3〜5を参照。)。エッチング液はその組成によりエッチング速度が変化するので、その組成維持は非常に重要なことである。
【0004】
例えば、フッ酸、硝酸、ヘキサフルオロ珪酸を含む混酸の場合、シリコンウェハをエッチングしていく過程でフッ酸と硝酸は反応に使用されて減少していく。これに対し、ヘキサフルオロ珪酸と水は反応により生成され増加していく。エッチング処理に使用した後のエッチング液を再生する場合、減少したフッ酸及び硝酸については、フッ酸原液及び硝酸原液をエッチング液に追加すれば所望のフッ酸濃度及び硝酸濃度に戻すことができる。そして、フッ酸原液及び硝酸原液を追加することによって多少ともエッチング液中のヘキサフルオロ珪酸と水は減少する。しかし、フッ酸原液及び硝酸原液の追加によるエッチング液中のヘキサフルオロ珪酸と水の減少量には限界があるので、エッチング液の再生過程においてエッチング液を抜き取る操作が必要になる。例えば特許文献3では、抜き取ったエッチング液に対して処理を行ない、ヘキサフルオロ珪酸と水を減少させている。また、特許文献5では、エッチング槽に収容されたエッチング液の濃度測定を行ない、測定結果に基づいて、エッチング槽に酸溶液の原液を供給し、かつエッチング槽内のエッチング液を排出することによってエッチング液の再生を実現している。混酸の測定装置については例えば特許文献6に開示された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−509260号公報
【特許文献2】特開2007−155494号公報
【特許文献3】特開2005−210144号公報
【特許文献4】特開平11−194120号公報
【特許文献5】特開2005−187844号公報
【特許文献6】特許3578470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の液体を混ぜ合わせる装置において、ポンプの吐出量は、液温変化や組成変化による液の粘度変化や、ポンプ自体の吐出誤差で、時間的に変化する。また、弁の開度は、時間とともに変化したり、液の粘度変化により変化したりするので、同一開度でも流量は時間的に変化する。
【0007】
特許文献1では複数のマイクロポンプを使用しているが、それらのマイクロポンプがまったく同じ能力をもつということはありえない。そのため、混ぜ合わせた後の液には、所定の混合比からのずれが生じる。また、ポンプや弁の故障により、調合した液が目標値から大きく外れるという危険性がある。
【0008】
また、混ぜ合わせる前の液が、何かのトラブルでまったく異なった液に置き換わっていたり、揮発性の液であるために溶媒が蒸発して設定濃度よりも高濃度の液になっていたりすることがある。これらの場合、予期していた濃度とはまったく異なる濃度の液が作成される。このような液は使用時に多くの不具合を招く。例えば、製造ラインに使用している液の場合には多くの欠陥品が作製されることが懸念される。また、エンジンへの燃料供給の場合にはエンジンストップになってしまう可能性がある。また、燃料電池の場合は、発電効率の劣化が発生するという不具合を招く。
【0009】
また、特許文献2は、混合した液を一時貯めておく容器を設置して、オイル及び燃料の粘度変化にともなうポンプ背圧変化による吐出変化をなくそうとしている。この方法は、容器に液を一時貯蔵するために、容器内で不必要に液が貯留されることがあり、時間とともに液が変性することがある。また、容器内では、常に過去に作成した液が押し出されずに貯留して変成し、それが少しずつ供給側に混じり、トラブルを発生する可能性がある。さらに、混合した液の混合比率をダイナミックに変化させる制御が構造的に不可能である。また、容器のサイズが、小型化、マイクロ化を阻むという致命的な短所がある。
【0010】
また、混酸からなるエッチング液を再生する場合、特許文献6の測定技術を用いるとエッチング液中の酸濃度を迅速に正確に測定できる。しかし、エッチング液中の酸濃度はいろいろな条件で変化しやすいので、エッチング条件によって、エッチング液中の酸濃度は様々に変化する。エッチング処理前後でエッチング液中の酸濃度を高速に正確に測定することができ、その値でもって原液を追加すればプロセスが安定化するのは当然であるが、それが従来技術ではできなかった。
【0011】
また、エッチング処理に用いることによってエッチング液中で増加する成分、例えば水やヘキサフルオロ珪酸に関しては、処理が複雑になる。150℃近辺の高温条件では、水もヘキサフルオロ珪酸も、他の酸成分に比べて揮発性が高いので、減少していくが、それらの減少量を高速に正確に測定する手段がないために、処理の進行の調整ができないという問題があった。
【0012】
現状では、エッチング液を抜き取り、ある程度の量が溜まった段階で、高温及び減圧の処理を行ない、水とヘキサフルオロ珪酸をできるかぎり減少させる。その後、その液についてバッチ処理で各成分濃度の測定し、又はその液について水及びヘキサフルオロ珪酸の減少量を予測し、その液とエッチング処理に使用される前のエッチング液を所定の混合比で混ぜ合わせて、トータルでのエッチング液の量を節約している。
【0013】
また、特許文献5は、分光測定によってエッチング液中の酸濃度をリアルタイムで測定する方法を採用している。そして、酸濃度の調整は、エッチング槽内のエッチング液に対する、所定酸濃度の増減に対しての制御によって行なっている。そのため、酸溶液の原液容器も、エッチング液中の溶出物質除去装置も大がかりなものとなり、そこで貯蔵、滞留する薬液量は多く、薬液の回転率が悪い。
【0014】
本発明は、複数の流体を正確かつ迅速に目標の特性になるように混合できる流体制御方法及び流体制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る流体制御方法は、流路内を流れる混合前の複数の流体をそれぞれ流量調整しつつ混合し、流路内を流れる混合後の流体の特性を光学的に測定し、その測定結果に基づいて上記混合後の流体が目標の特性になるように上記混合前の流体の流量を調整するものである。
【0016】
本発明に係る流体制御装置は、混合前の複数の流体及びそれらの流体の混合後の流体を流すための流路と、上記混合前の複数の流体の流量をそれぞれ調整するための流量調整部と、上記流路内を流れる混合後の流体の特性を光学的に測定ための測定部と、上記測定部の測定結果に基づいて上記混合後の流体が目標の特性になるように上記流量調整部を制御して上記混合前の流体の流量を調整する制御部と、を備えたものである。
【0017】
特性、例えば濃度が既知である混合前の流体を混合する際、混合後の流体の特性を光学的に測定し、その測定結果に基づいて所定の目標値から混合後の流体の特性がどの程度ずれているかを求め、それを補正するように、混合前の流体の流量を制御して、混合後の流体が目標の混合比率に近づくようにする。混合後の流体の光学的測定は数秒以下の高速で行なうことができる。混合前の流体の流量調整も数秒以下の速い操作により行なうことができる。これにより、所定の特性をもつ流体を迅速に調合できる。
【0018】
本発明の流体制御方法において、上記混合前の複数の流体について特性をそれぞれ光学的に測定するようにしてもよい。
本発明の流体制御装置において、上記測定部は、上記混合前の複数の流体について特性をそれぞれ光学的に測定するようにしてもよい。
【0019】
本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、上記光学的測定は、スペクトル測定、又は所定波長における透過率測定もしくは吸光度測定である例を挙げることができる。例えば、上記スペクトル測定の波長範囲は、800〜2600nm(ナノメートル)の近赤外線スペクトル、400〜800nmの可視光スペクトルもしくは150〜400nmの紫外線スペクトル又はそれらの組合せである。
【0020】
本発明の流体制御方法において、上記流路内を流れる流体の温度を変化させることにより、上記流体の粘度を変化させ、上記流路内での上記流体の流量を調整する例を挙げることができる。
本発明の流体制御装置において、上記流量調整部は、上記流路内を流れる流体の温度を変化させることにより、上記流体の粘度を変化させ、上記流路内での上記流体の流量を調整する例を挙げることができる。
ただし、本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、流体の流量の調整は、温度によるものに限定されるものではなく、他の方法、例えば弁の開閉又は開度によるものであってもよい。
【0021】
本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、上記流路はチューブによって形成されている例を挙げることができる。
本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、上記流路はマイクロ流体システム内に形成されたものである例を挙げることができる。そのマイクロ流体システムの一例として、2枚の平面板で厚みの均一な間仕切り板を挟み込むことによって内部に流路が形成されたチップを挙げることができる。
例えば、流路がmm(ミリメートル)単位のチューブ配管である場合、比例制御弁で構成した配管系を用いることにより本発明の流体制御方法及び流体制御装置を実現できる。また、数mmから数μm(マイクロメートル)の基板内部にエッチング技術によって流路を作成したマイクロ流体システムで構成もできる。
【0022】
光学的測定は、流路が通常サイズならば、例えばガラスにより作られた光透過のセル部に流体を輸送して、そこに光を照射し、流体を透過した光を受光することによって行なう。マイクロ流体システムを用いる場合は、マイクロ流体システム内の流路に流体を輸送し、例えば光ファイバーにより所定のセル部分に対して投光及び受光を行なって測定する。これにより、複数の測定点の光学的測定が容易にできる。さらに、純水などを校正液として複数のセルのひとつに割り当てれば、純水を収容したセル箇所を測定することにより、光ファイバー系も含めた分光器の校正が容易になり、長期間の信頼性及び測定値の安定性を確保できる。
流体の流量制御は、例えば比例弁により行なうことができるが、温度による液の粘度変化を積極的に利用した方法を用いれば、容易にマイクロ流体システム化できる。
【0023】
本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、上記流体が液体である例を挙げることができる。ただし、本発明の流体制御方法及び流体制御装置における上記流体は液体に限定されるものではなく、流体は気体であってもよい。
【0024】
本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、上記流体の特性として、流体の温度や、流体を構成している組成の濃度を挙げることができる。ただし、本発明の流体制御方法及び流体制御装置における上記流体の特性はこれに限定されるものではない。
【0025】
本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、上記流体が液体であり、上記流体の特性が液体を構成している組成の濃度である場合、上記混合前の流体がアルコール溶液と水であり、上記混合後の流体が希釈アルコール溶液である例を挙げることができる。
【0026】
また、本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、上記流体が液体であり、上記流体の特性が液体を構成している組成の濃度である場合、上記混合前の上記流体が濃度調整前の混酸とその混酸の成分の酸溶液と水であり、上記混合後の流体が濃度調整後の混酸である例を挙げることができる。
【0027】
混合前の流体に濃度調整前の混酸が含まれる場合、本発明の流体制御方法において加熱処理もしくは減圧処理又はそれらの両方によって上記濃度調整前の混酸の水分量を減少させるようにし、また、本発明の流体制御装置において加熱処理もしくは減圧処理又はそれらの両方によって上記濃度調整前の混酸の水分量を減少させるための除去部をさらに備えているようにしてもよい。
【0028】
上記濃度調整前の混酸の一例として、上記濃度調整後の混酸が所定の処理に使用された後の溶液を挙げることができる。
上記混酸の成分の一例は、ヘキサフルオロ珪酸、フッ酸、硝酸、酢酸、リン酸、硫酸のうちいずれか2つ以上含む。
また、上記混酸の成分の他の例は、ヘキサフルオロ珪酸を含み、さらにフッ酸、硝酸、酢酸、リン酸、硫酸のうちいずれか1つ以上を含む。なお、本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、混酸の成分はこれらに限定されるものではない。
【0029】
混合前の流体にヘキサフルオロ珪酸を含む混酸が含まれる場合、本発明の流体制御方法において上記濃度調整前の混酸のヘキサフルオロ珪酸成分量を加熱処理もしくは減圧処理又はそれらの両方によって減少させるようにし、さらに同時に上記濃度調整前の混酸の水分量を減少させるようにしてもよい。また、本発明の流体制御装置において上記濃度調整後の混酸のヘキサフルオロ珪酸成分量を加熱処理もしくは減圧処理又はそれらの両方によって減少させるための除去部をさらに備えているようにしてもよい。除去部はヘキサフルオロ珪酸成分量を減少させるのと同時に濃度調整前の混酸の水分量を減少させるものであってもよい。
【0030】
本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、混合する流体のうちの1つである濃度調整前の混酸が、所定の処理に使用された後の濃度調整後の混酸である場合、上記所定の処理の例として、シリコンウェハのエッチング処理を挙げることができる。さらに、上記濃度調整前の混酸は、上記濃度調整後の混酸が単位枚数のシリコンウェハのエッチング処理に用いられたものである例を挙げることができる。上記エッチング処理の一例はスピンエッチング処理である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の流体制御方法では、流路内を流れる混合前の複数の流体をそれぞれ流量調整しつつ混合し、流路内を流れる混合後の流体の特性を光学的に測定し、その測定結果に基づいて混合後の流体が目標の特性になるように混合前の流体の流量を調整するようにした。
本発明の流体制御装置では、混合前の複数の流体及びそれらの流体の混合後の流体を流すための流路と、流体を流路内で移動させるためのポンプと、混合前の複数の流体の流量をそれぞれ調整するための流量調整部と、測定部により流路内を流れる混合後の流体の特性を光学的に測定し、制御部により測定部の測定結果に基づいて流量調整部を制御して混合後の流体が目標の特性になるように混合前の流体の流量を調整するようにした。
これにより、本発明の流体制御方法及び流体制御装置によれば、流路内で複数の流体を正確かつ迅速に目標の特性になるように混合できる。
【0032】
本発明の流体制御方法において、混合前の複数の流体について特性をそれぞれ光学的に測定するようにしてもよい。
本発明の流体制御装置において、測定部は、混合前の複数の流体について特性をそれぞれ光学的に測定するようにしてもよい。
混合前の流体についてスペクトルを測定するようにすれば、混合前の流体の特性を監視することができる。例えば、特性が不明な流体を混合前の流体として用いることができる。また、混合前の流体が何かのトラブルでまったく異なった流体に置き換わっていたり、流体が揮発性の液である場合に溶媒が蒸発して設定濃度よりも高濃度の液になっていたりする場合に対応できるようになる。
【0033】
本発明の流体制御方法及び流体制御装置において、流体が液体であり、流体の特性が液体を構成している組成の濃度であり、混合前の流体がアルコール溶液と水であり、混合後の流体が希釈アルコール溶液であれば、本発明の流体制御方法及び流体制御装置を例えば燃料電池に適用することができる。
【0034】
また、流体が液体であり、液体の特性が液体を構成している組成の濃度であり、混合前の流体が濃度調整前の混酸とその混酸の成分の酸溶液と水であり、混合後の流体が濃度調整後の混酸であって、濃度調整後の混酸が所定の処理に使用された後の溶液である場合、本発明の流体制御方法及び流体制御装置を混酸のリサイクルに適用することができる。
【0035】
所定の処理が例えばシリコンウェハに対するスピンエッチング処理である場合、エッチング液としてフッ酸、硝酸、ヘキサフルオロ珪酸を含む混酸が用いられる。エッチング液について、エッチング処理に用いる前後で酸濃度を測定する。そうすれば、各酸成分の濃度の増減が正確に判明する。減少した酸成分に対しては濃度の高い原液を追加することにより、エッチング処理に用いる前の液組成に復帰させることができる。
【0036】
フッ酸原液及び硝酸原液を追加することによって多少ともエッチング液中のヘキサフルオロ珪酸と水は減少する。しかし、増加した水とヘキサフルオロ珪酸は、ある程度は減少するが、完全にもとには戻らない。戻そうとすれば、追加するフッ酸原液及び硝酸原液の量がどんどん増加して、リサイクルによる薬品使用量の減少という主旨に反することになる。そのため、増加した水とヘキサフルオロ珪酸を減少させる処理が必要になる。
【0037】
この処理は複雑であるが、もっとも小型化できるものとして、エッチング液を高温減圧させて、水を水蒸気にし、ヘキサフルオロ珪酸を四フッ化珪素にしてガスとして分離させる方法である。従来は、バッチ式に大規模な装置で行なっていたが、エッチング処理に使用した後のエッチング液の分だけを処理するようにすれば装置の小型化が可能となる。本発明の流体制御方法及び流体制御装置では、水とヘキサフルオロ珪酸の減少量を正確にリアルタイムに測定できるので、適切な処理時間の設定が可能である。これにより、エッチング液の再生処理にかかる時間とエネルギーとを節約できる。
【0038】
さらに、エッチング液を貯蔵するための槽を用いることなく、リアルタイムで使用後のエッチング液の酸濃度を測定し、その測定結果に応じて水及びヘキサフルオロ珪酸を減少させ、フッ酸原液及び硝酸原液を追加してエッチング液を再生できるので、再生したエッチング液をすぐに使用することができ、また、薬品の回転率が向上する。これにより、プロセスで滞留している薬品の総量を減少させることができる。このように、本発明の流体制御方法及び流体制御装置は、例えばエッチング液を再生でき、地球環境維持に貢献できる。
【0039】
また、流路としてマイクロ流体システム内に形成されたものを用い、マイクロ流体システムは、2枚の平面板で厚みの均一な間仕切り板を挟み込むことによって内部に流路が形成されたチップであるようにすれば、チップにおける流路の深さ寸法、すなわち光路長を均一にすることができ、チップの流路内の流体の物性、例えば吸光度や濃度の測定を精度よく、かつ安定して行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】流体制御装置の一実施例の全体構成を説明するための概略図である。
【図2】同実施例の調液部を説明するための平面図と側面図である。
【図3】調液部の一部分を構成するチップを示す側面図である。
【図4】チップを構成する、接合前のガラス間仕切り板及び2枚のガラス板を示す側面図である。
【図5】チップのガラス間仕切り板を示す平面図である。
【図6】チップのガラス板を示す側面図である。
【図7】調液部を構成するチップの流路パターンを説明するための平面図である。
【図8】チップ内のミキシング部内における液体の流れを矢印で示す平面図である。
【図9】接合前のガラス間仕切り板及び2枚のガラス板を示す側面図である。
【図10】チップに配置するセンサー、ペルチェ素子及び測温体の配置を説明するための平面図と側面図を示す図である。
【図11】メタノールの水スペクトルとの差スペクトルを表す図である。
【図12】塩酸、酢酸、エタノール、グルコース、サッカロースについて、波長1700nm〜2600nmでの水スペクトルとの差スペクトルを表す図である。
【図13】塩酸、酢酸、エタノール、グルコース、サッカロース、メタノールについて、波長800nm〜1400nmでの水スペクトルとの差スペクトルを表す図である。
【図14】塩酸、酢酸、エタノール、グルコース、サッカロース、メタノールについて、波長1200nm〜1900nmでの水スペクトルとの差スペクトルを表す図である。
【図15】流体制御装置の他の実施例の全体の構成を概略的に示す図である。
【図16】同実施例の調液部を説明するための概略的な構成図である。
【図17】同実施例の測定部の構造を説明するための正面図、側面図及び上面図である。
【図18】同実施例の光学系を説明するための概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
燃料電池で、携帯機器向けの小型のものとして、直接メタノール型燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)が注目されている。DMFC型燃料電池の燃料供給には、メタノール濃度3〜5%の濃度のメタノール水溶液が用いられる。メタノール濃度が高いと、メタノールが燃料極で未反応なものが、電解質膜を透過して空気極へ到達するクロスオーバー現象が発生して、発電効率が低下するという問題が発生する。メタノール濃度が低くても、発電効率が落ちる。したがって、常に最適なメタノール濃度を供給することが望まれる。また、濃度の濃いメタノールを、水で最適な濃度に希釈して使用することができれば、DMFC型燃料電池内に収容しておくメタノール燃料の体積を減少することができ、DMFC型燃料電池をより小型にすることができる。希釈に必要な水は、空気極側で発生する水を用いてもよいし、空気中の湿度分を捕集してもよい。
【0042】
[実施例1]
図1は、流体制御装置の一実施例の全体構成を説明するための概略図である。
濃度が30%のメタノールの入った容器1と、水の入った容器3が設けられている。
メタノールの入った容器1にチューブ5の一端が接続されている。水の入った容器3にチューブ7の一端が接続されている。チューブ5,7の他端は調液部9に接続されている。
【0043】
調液部9には、チューブ5が接続された流路11と、チューブ7が接続された流路13が設けられている。チューブ5,7とは反対側の流路11,13の端部は合流されて流路15に接続されている。
【0044】
流路11にはチューブ5側から順に測定部11aと流量調整部11bが設けられている。流路13にはチューブ7側から順に測定部13aと流量調整部13bが設けられている。流路15には測定部15aが設けられている。
【0045】
測定部11a,13a,15aは、流路11,13,15内の液体のスペクトルを光学的に測定するためのものである。流量調整部11b,13bは、流路11,13内の液体の流量を調整するためのものである。
調液部9には流路15からの希釈メタノールを流すためのチューブ17も接続されている。チューブ17はポンプ19に接続されている。
【0046】
流量調整部11b,13bを制御するための制御部21が設けられている。制御部21は、測定部11a,13a,15aの測定結果に基づいて、流路15内の希釈メタノールが目標の濃度になるように、流量調整部11b,13bを制御して流路11,13内を流れるメタノールと水の流量を調整する。
【0047】
図2は、調液部9を説明するための平面図と側面図である。図3は、調液部9の一部分を構成するチップ23を示す側面図である。図4は、チップ23を構成する、接合前のガラス間仕切り板33及び2枚のガラス板35,37を示す側面図である。図5は、チップ23のガラス間仕切り板33を示す平面図である。図6は、チップ23のガラス板35,37を示す側面図である。図7は、調液部9を構成するチップ23の流路パターンを説明するための平面図である。図8は、チップ23内のミキシング部15b内における液体の流れを矢印で示す平面図である。図9は、チップ23に配置するセンサー、ペルチェ素子及び測温体の配置を説明するための平面図と側面図を示す図である。図10は、チップ23に配置する光センサーを分解して示す平面図である。
【0048】
図2に示すように、調液部13は、内部に流路が形成されたチップ23と、チップ23を支持するための金属製の枠部25と、チューブ5,7,17をチップ23に接続するための継ぎ手27,29,31を備えている。チップ23はマイクロ流体デバイスである。
【0049】
チップ23の平面サイズは12.5mm×39mm、厚みは2.2mmである。枠部25の外周平面サイズは19mm×46mm、内周平面サイズは13mm×40mm、厚みは4.2mmである。枠部25には、ネジで継手27,29,31が差し込まれている。枠部25の内側に配置されたチップ23は継手27,29,31によって押さえ込まれることによって固定されている。チップ23は、側面に継手27,29,31に対応する位置に、チップ23内部の流路につながるテーパー形状の凹部を備えている。継手27,29,31の先端がチップ23側面の凹部に差し込まれることによって流路がシールされて液漏れを防止している。
【0050】
図3及び図4に示すように、チップ23は、流路を形成するための厚みの均一なガラス間仕切り板33を2枚のガラス平面板35,37で挟み込んだ3層構造になっている。
図5に示すように、ガラス間仕切り板33は符号33a〜33eで示す5つのガラス板によって構成されている。各ガラス板33a〜33eの厚みは例えば0.2mmで均一である。
図6に示すように、ガラス平面板35,37は継ぎ手との接触部だけがテーパー形状になるように加工されている。ガラス平面板35,37の厚みは1mmである。
【0051】
ガラス間仕切り板33及びガラス平面板35,37の接合面は平坦に研磨されている。図4に示すように、ガラス平面板35,37の間にガラス間仕切り板33を配置する。具体的には、ガラス平面板37の上にガラス間仕切り板33を構成するガラス板33a〜33eを配置し、その上にガラス平面板35を配置する。ガラス間仕切り板33及びガラス平面板35,37を重ねて配置した状態で熱をかけ、オプティカルコンタクトさせると、接着剤を用いなくても、ガラス間仕切り板33及びガラス平面板35,37は接着する。そして、図3に示すようにチップ23が形成される。
【0052】
図7に示すように、チップ23内部には、チューブ5,7が接続される2つの流路11,13が設けられている。
流路11,13にセンサー部11a−1,13a−1が設けられている。センサー部11a−1はメタノールの濃度監視用に用いられる小空間である。センサー部13a−1は水の濃度監視用に用いられる小空間であり、メタノール等不純物が含まれていないかどうかが監視される。
【0053】
流路11,13には、センサー部11a−1,13a−1よりも下流側に流量制御部11b−1,13b−1も設けられている。流量制御部11b−1,13b−1は直列に接続された4つの渦巻状の流路を備えている。流量制御部11b−1,13b−1の流路幅、すなわち断面積は、チップ23の他の流路部分に比べて小さく形成されている。
流路11と流路13は、流量制御部11b−1,13b−1よりも下流側で合流されて流路15に接続されている。
【0054】
流路15に2つのミキシング部15bが設けられている。
流路15には、ミキシング部15bよりも下流側にセンサー部15a−1も設けられている。センサー部15a−1は、混合後のメタノール濃度の測定に用いられる小空間である。
【0055】
図8を参照して、ミキシング部15b内における液体の流れを説明する。
ミキシング部15bは2つの広い箇所15b−1,15b−2を備えている。上流側の広い箇所15b−1と下流側の広い箇所15b−2は2本の流路15b−3,15b−4で接続されている。
【0056】
上流側の広い箇所15b−1には、ミキシング部15bに対して上流側の流路15が接続されている。広い箇所15b−1の近傍で流路15に流路の細い箇所15b−5が設けられている。広い箇所15b−1,15b−2の間を接続する2本の流路15b−3,15b−4の上流側の端部は、細い箇所15b−5の両隣の箇所で広い箇所15b−1に接続されている。
【0057】
下流側の広い箇所15b−2には、ミキシング部15bに対して下流側の流路15が接続されている。広い箇所15b−1,15b−2の間を接続する2本の流路15b−3,15b−4の下流側の端部は、広い箇所15b−2に接続された流路15の両隣の箇所で広い箇所15b−2に接続されている。広い箇所15b−2の近傍で、流路15b−3,15b−4に流路の細い箇所15b−6,15b−7が設けられている。
【0058】
ミキシング部15bに対して上流側の流路15から細い箇所15b−5を介して広い箇所15b−1に液体が流れ込む。液体は、細い箇所15b−5を通過する際に流速が速くなるので、広い箇所15b−1内で渦を発生する(図8の箇所15b−1内の矢印を参照)。箇所15b−1内の液体は2本の流路15b−3,15b−4に流れ込む。流路15b−3,15b−4に流れ込んだ液体は、流路の細い箇所15b−6,15b−7を介して広い箇所15b−2に流れ込む。液体は、細い箇所15b−6,15b−7を通過する際に流速が速くなるので、広い箇所15b−2内で渦を発生する(図8の箇所15b−2内の矢印を参照)。これらの渦により、液体の混合が促進される。
図7に示すように、ミキシング部15bは2段に設けられているので、図8に示した混合パターンを2段繰り返すことにより、液体は完全に混合される。
【0059】
図9を参照して、チップ23に配置するセンサー、ペルチェ素子及び測温体の配置を説明する。図2では、これらのセンサー、ペルチェ素子及び測温体の図示を省略している。
チップ23の上面に2つのペルチェ素子11b−2,13b−2が貼り付けられている。ペルチェ素子11b−2はメタノールが流される流量制御部11b−1の上に配置されている。ペルチェ素子13b−2は水が流される流量制御部11b−1の上に配置されている。
【0060】
チップ23の下面に2つの測温体11b−3,13b−3が貼り付けられている。測温体11b−3,13b−3は例えば白金からなる。測温体11b−3はメタノールが流される流量制御部11b−1の下に配置されている。測温体13b−3は水が流される流量制御部11b−1の下に配置されている。
【0061】
チップ23の下面には、3つの光センサー11a−2,13a−2,15a−2も貼り付けられている。光センサー11a−2はメタノールが流される流量制御部11b−1の下に配置されている。光センサー13a−2は水が流される流量制御部13b−1の下に配置されている。光センサー15a−2は希釈メタノールが流される流量制御部15b−1の下に配置されている。
【0062】
図10に示すように、光センサー11a−2,13a−2,15a−2は、例えば、2つのInGaAs素子39,39と、InGaAs素子39,39表面に貼り付けられた干渉フィルタ41,41を備えている。干渉フィルタ41は特定の波長だけを通過させるバンドパスフィルターである。ここでは、干渉フィルタ41,41は、メタノールと水の近赤外線スペクトルの差異がある、波長2200nmと波長2260nmを通過させるように設定されている。
【0063】
この実施例において、センサー部11a−1及び光センサー11a−2は測定部11aを構成し、センサー部13a−1及び光センサー13a−2は測定部13aを構成し、センサー部15a−1及び光センサー15a−2は測定部15aを構成する。
また、流量制御部11b−1、ペルチェ素子11b−2及び測温体11b−3は流量調整部11bを構成し、流量制御部13b−1、ペルチェ素子13b−2及び測温体13b−3は流量調整部13bを構成する。
【0064】
図1から図10を参照してメタノールを希釈する動作について説明する。
ポンプ19を作動させると、容器1内のメタノールがチューブ5内に吸引され、容器3内の水がチューブ7内に吸引される。チューブ5内に吸引されたメタノール、及びチューブ7内に吸引された水は、調液部9に導かれる。調液部9に導かれたメタノール及び水は、チップ23内の流路11,13に導かれ、センサー部11a−1,13a−1及び流量制御部11b−1,13b−1を通過した後に流路15で合流し、ミキシング部15bに導かれて混合されて希釈メタノールとなる。希釈メタノールはセンサー部15a−1を通過した後、流路15からチップ23外のチューブ17に導かれ、ポンプ19を介して吐出される。
制御部21により、流量調整部11b,13bのペルチェ素子11b−2,13b−2の温度が制御され、流量制御部11b−1,13b−1の温度が調整される。メタノール及び水は温度に起因して粘度が変化する。粘度が変化すれば流路11,13内におけるメタノール及び水の流量も変化する。したがって、流路11,13内を流れるメタノール及び水の流量は、流量制御部11b−1,13b−1の温度によって流量が調整される。
【0065】
図9に示すように、タングステンランプ(図示は省略)からの光43をレンズ(図示は省略)にて集光してチップ23に照射する。センサー部11a−1,13a−1,15a−1を透過した光を光センサー11a−2,13a−2,15a−2で受光する。ここで、チップ23は、厚みの均一なガラス間仕切り板33を2枚のガラス平面板35,37で挟み込んだ3層構造になっているので、センサー部11a−1,13a−1,15a−1における流路深さ、すなわち光路長は、例えば0.2mmで均一になる。
図1に示す制御部21は、光センサー11a−2,13a−2,15a−2からの信号に基づいて、センサー部11a−1,13a−1,15a−1を透過した光の減衰量から、メタノール濃度を測定する。
【0066】
図11は、メタノールの水スペクトルとの差スペクトルを表す図である。図11において横軸は波長(nm)、縦軸は吸光度(abs)を示す。図11では、メタノール濃度が1mol/L(モル/リットル)、0.5mol/L、0.25mol/Lのものを示す。光路長は0.2mmで行なった。
【0067】
波長2260nmにメタノールのCH基に関する吸収がある。波長2200nmは、水−メタノール間にスペクトル差が少ない。したがって、波長2260nmと波長2200nmの吸光度差を測定することにより、メタノール濃度をランバートビーア則から求めることができる。
【0068】
光センサー11a−2からの信号は、センサー部11a−1におけるメタノール濃度が30%であることを確認するために用いる。センサー部11a−1におけるメタノール濃度の測定結果が30%でないならば、間違った濃度のメタノールを供給したことになるため、制御部21は警報信号を出して表示器(図示は省略)に警報を表示する。
光センサー13a−2からの信号は、センサー部13a−1における液体が水であることを確認するために用いる。そうでないならば、水でない液を供給したことになるため、制御部21は警報信号を出す。
【0069】
光センサー15a−2からの信号は、センサー部15a−1における希釈メタノールの濃度が目標の濃度であることを確認するために用いる。制御部21は光センサー15a−2からの信号に基づいて希釈メタノールの濃度を算出する。例えば目標のメタノール濃度が4%の場合で考える。
【0070】
制御部21で算出したメタノール濃度が4%よりも濃いときは、制御部21は、流量調整部11bのペルチェ素子11b−2の温度を下げることにより流量制御部11b−1の温度を下げ、流量制御部11b−1内のメタノールの粘度を上げることによって、流路11内のメタノールの流量を減少させる。さらに、制御部21は、流量調整部13bのペルチェ素子13b−2の温度を上げることにより流量制御部13b−1の温度を上げ、流量制御部13b−1内の水の粘度を下げることによって、流路13内の水の流量を増加させる。
【0071】
逆に、制御部21で算出したメタノール濃度が4%よりも薄いときは、制御部21は、流量調整部11bのペルチェ素子11b−2の温度を上げることにより流量制御部11b−1の温度を上げ、流量制御部11b−1内のメタノールの粘度を下げることによって、流路11内のメタノールの流量を増加させる。さらに、制御部21は、流量調整部13bのペルチェ素子13b−2の温度を下げることにより流量制御部13b−1の温度を下げ、流量制御部13b−1内の水の粘度を上げることによって、流路13内の水の流量を減少させる。
【0072】
制御部21は、ペルチェ素子11b−2,13b−2の温度を測温体11b−3,13b−3からの信号に基づいて測定している。
センサー部15a−1における希釈メタノールのメタノール濃度の測定は、例えば1秒間に20回行なう。そのたびに、制御部21により流量制御を行ない、ほぼリアルタイムに連続的に、メタノール濃度を一定になるように制御する。
この方法により得られる、メタノール温度と水温度とメタノール濃度の関係を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
メタノール温度はメタノール側ペルチェ素子11b−2の測温体11b−3の計測値と近く、水温度は水側ペルチェ素子13b−2の測温体13b−3の計測値と近いので、表1のメタノール温度と水温度は、測温体11b−3,13b−3の計測値で代用できる。
これにより、水側ペルチェ素子13b−2と、メタノール側ペルチェ素子11b−2の各温度を調整することにより、メタノール濃度を4%に制御することができる。
【0075】
この実施例では、液温度を変化させる材料としてペルチェ素子を用いたが、ヒーターを用いてもよい。その場合は、チップ23の流量制御部11b−1,13b−1上にそれぞれに独立した温度制御可能な面ヒーターが貼り付けられる。チップ23の下面にはヒートシンクに設置する。ヒーターのONとともに流量制御部11b−1,13b−1の温度が上昇して、流量制御部11b−1,13b−1を流れる液の温度も上昇する。面ヒーター近辺には測温体を設置しておき、測温体からの温度情報に基づいてヒーターをフィードバック制御する。ヒーターに流す電流を下げれば、放熱により、ヒートシンク温度になじむように温度が下がる。サイズがミリオーダーになると、物体の表面積と体積の比率で表面積側が圧倒的に大きくなるため、放熱スピードは日常レベルと比較して非常に早い。そのため、ヒーターによる加温素子のみでも、十分に温度制御が可能である。
【0076】
この実施例では、ミキシング部15bは、迷路のようなパターンを通過させることにより行なったが、ミキシング方法として、流路に障害物を配置する方法や超音波素子による超音波を液に照射して混合する方法などもある。
【0077】
また、この実施例では光路長は0.2mmであるが、使用する波長により、例えば1mm、10mmなど、0.2mmよりも厚い光路長でもよいし、0.2mmよりも薄い光路長でもよい。
上記では、メタノールの水による希釈例を説明したが、他の液体でも同様にして濃度調整を行なうことができる。
【0078】
図12は、塩酸、酢酸、エタノール、グルコース、サッカロースについて、波長1700nm〜2600nmでの水スペクトルとの差スペクトルを表す図である。光路長は0.2mmである。図13は、塩酸、酢酸、エタノール、グルコース、サッカロース、メタノールについて、波長800nm〜1400nmでの水スペクトルとの差スペクトルを表す図である。光路長は10mmである。図14は、塩酸、酢酸、エタノール、グルコース、サッカロース、メタノールについて、波長1200nm〜1900nmでの水スペクトルとの差スペクトルを表す図である。光路長は1mmである。
図12、図13及び図14において横軸は波長(nm)、縦軸は吸光度(abs)を示す。図12、図13及び図14では、各溶液の濃度が1mol/L、0.5mol/L、0.25mol/Lのものを示す。
【0079】
図11〜図14に示すように、液の種類によって固有の近赤外スペクトルがあり、その液に特徴ある波長を使用すれば、メタノール以外の溶液の希釈にも使用できる。
また、本発明の流体制御方法及び流体制御装置は、希釈のみならず、複数種類の液体の混合にも用いることができる。この場合、化学反応を伴うものであってもよい。
【0080】
[実施例2]
図15は、流体制御装置の他の実施例の全体の構成を概略的に示す図である。図16は、この実施例の調液部119を説明するための概略的な構成図である。図17は、この実施例の測定部109の構造を説明するための正面図、側面図及び上面図である。図18は、この実施例の光学系を説明するための概略的な構成図である。図15〜図18を参照してこの実施例を説明する。
【0081】
容器101,103,105,107が設けられている。容器101には濃度が50%のフッ酸原液が収容されている。容器103には濃度が70%の硝酸原液が収容されている。容器105には濃度が30%のヘキサフルオロ珪酸原液が収容されている。容器107には純純水が収容されている。
【0082】
容器101,103,105,107にチューブ111,113,115,117の一端が接続されている。チューブ111,113,115,117の他端は測定部109を介して調液部119に接続されている。調液部119には、チューブ121とチューブ123も接続されている。チューブ121は再生するためのエッチング液を送液するためのものである。チューブ123は、チューブ111,113,115,117,121からの液が調液部119内で混合された液を送液するためのものである。チューブ123は測定部109及びポンプ125を介してエッチング液容器127に導かれている。
【0083】
エッチング液容器127にチューブ129の一端が接続されている。チューブ129はポンプ131及び測定部109を介してエッチング装置135に導かれている。エッチング装置135は、半導体ウェハをエッチングするためのものであり、例えばスピンエッチング装置である。
【0084】
エッチング装置135に、エッチング処理後のエッチング液をエッチング装置135外に排出するためのチューブ137が接続されている。チューブ137は測定部109を介して除去部139に導かれている。除去部139は、エッチング液中の水成分とヘキサフルオロ珪酸を除去するためのものである。除去部139には、水蒸気と四フッ化珪素ガスを排出するためのチューブ141と、エッチング液を送液するためのチューブ121が接続されている。チューブ121は測定部109を介して調液部119に接続されている。
測定部109からの信号に基づいて調液部119及び除去部139の動作を制御するための制御部143が設けられている。
【0085】
図16を参照して調液部119について説明する。
調液部119には、チューブ111,121を合流するためのチューブ145と、チューブ113,145を合流するためのチューブ147と、チューブ115,147を合流するためのチューブ149が設けられている。チューブ117,149は合流されてチューブ123に接続されている。
【0086】
チューブ111,113,115,117,121に、それらのチューブ内を流れる液体の流量を調整するための電磁比例弁(流量調整部)111a,113a,115a,117a,121aが設けられている。弁111a,113a,115a,117a,121aの開度は、図15に示した制御部143によって制御される。チューブ123,145,147,149に、それらのチューブ内を流れる液を混合するための混合器123a,145a,147a,149aが設けられている。
【0087】
図17を参照して測定部109について説明する。
測定部109には、図15に示すように、チューブ111,113,115,117,121,123,129,137が導かれている。符号A〜Pで示すように、チューブ111,113,115,117,121,123,129,137には光学測定用のセル111b,113b,115b,117b,121b,123b,129b,137bが接続されている。例えば、フッ酸又はヘキサフルオロ珪酸を含有する液が流されるセル111b,115b,117b,121b,123b,129b,137bはサファイア製であり、それ以外のセル113b,117bは石英製である。これらのセルにおいて、液体は、符号A〜Pの近傍に示す矢印の方向へ流れる。
【0088】
符号151は投光側光ファイバーである。符号153は受光側光ファイバーである。符号155は投光側の凸レンズである。凸レンズ155は、光ファイバー151の射出側端面から射出した光を集光して、セル111b,113b,115b,117b,121b,123b,129b,137bのいずれかに照射する。図17では、セル123bに光が照射される。セルに照射された光は、セル内の液体を透過し、受光側の凸レンズ157を通過後、集光して、光ファイバー153の一端面に入射する。8個のセル111b,113b,115b,117b,121b,123b,129b,137bは、ステッピングモータ付きスライダー159に設置されており、図17中の双方向矢印の方向(X軸)に移動できる。スライダー159の動作によって、セル111b,113b,115b,117b,121b,123b,129b,137bのいずれかが光照射面に停止される。
【0089】
図18を参照して光学系について説明する。
分光部161が設けられている。分光部161は、光源であるタングステンランプ163と、凸レンズ165と、8個の干渉フィルタ167を備えた回転円板169と、凸レンズ171と、受光側の凸レンズ173と、受光素子179と、回転円板169を回転させるためのモータ181とを備えている。タングステンランプ163から放射された光は、凸レンズ165によって集光され、干渉フィルタ167を通過する。ここで、回転円板169に保持された干渉フィルタ167は、光を、800〜1400nmの範囲内の所定の波長の光に分光する。
干渉フィルタ167によって分光された光は、凸レンズ171によって集光され、図17に示した投光側光ファイバー151の入射側端面151aに照射される。投光側光ファイバー151は測定部109につながっている。
【0090】
投光側光ファイバー151の入射側端面151aから入射された光は、図17を参照して説明したように、投光側光ファイバー151の射出側端面から射出される。その光は、凸レンズ155を介してセル111b,113b,115b,117b,121b,123b,129b,137bのいずれかを透過し、凸レンズ157を介して受光側光ファイバー153に入射側端面に入射される。
受光側光ファイバー153の射出側端面153aは分光部161に設置されている。測定部109で受光側光ファイバー153の入射側端面に入射した光は、分光部161で、受光側光ファイバー153の射出側端面153aから凸レンズ173に入射して、集光して、受光素子179に入射される。受光素子179は、入射された光を、その強度に対応する光電流に変換する。受光素子179からの電気信号は、図15にも示した制御部143に送られる。
【0091】
回転円板169は、8枚の干渉フィルタ167を、円周方向に等角度間隔で保持し、駆動モータ181により所定の回転数、例えば1200rpm(revolutions per minute)で回転駆動される。各干渉フィルタ167は、800〜1400nmの範囲内で、測定対象に応じた、互いに異なる所定の透過波長を有している。ここで、回転円板169が回転すると、各干渉フィルタ167が、凸レンズ165,171の光軸に順次挿入される。そして、タングステンランプ163から放射された光は、干渉フィルタ167によって分光された後、投光側光ファイバー151、測定部109、受光側光ファイバー153、凸レンズ173を通過して、受光素子179に入射される。これにより、受光素子179から、各波長の光の吸光度に応じた電気信号が出力される。
【0092】
図15〜図18を参照して、エッチング液の再生について説明する。
ポンプ131を用いて、エッチング液容器127に保存されている濃度調整後のエッチング液をチューブ129によりエッチング装置135へと送液する。その途中で、チューブ129内を流れるエッチング液は符号A,Bの箇所で測定部109に導かれる。測定部109で、エッチング液はセル129bに到達する。制御部143により、スライダー159を動作させてセル129bの光透過面に光ファイバー151,153を移動させて、チューブ129内を流れるエッチング液の濃度を測定する。これにより、エッチング装置135で処理に用いられる前のエッチング液中におけるフッ酸濃度と、硝酸濃度と、水濃度と、ヘキサフルオロ珪酸濃度を求める。エッチング液の濃度の測定方法は、例えば特許文献6に開示されている方法で行なうことができる。
測定部109で濃度測定されたエッチング液は、エッチング装置135に送液され、そこでシリコンウェハのエッチングに使用される。
【0093】
一般に、エッチング処理において、フッ酸と硝酸が消費されて、ヘキサフルオロ珪酸と水が生じる。処理に使用したエッチング液は、ポンプ125が作動されることによりチューブ137を介して回収される。チューブ137内を流れる使用後のエッチング液は、符号C,Dの箇所で測定部109に導かれる。測定部109で、エッチング液はセル137bに到達する。制御部143により、スライダー159を動作させてセル137bの光透過面に光ファイバー151,153を移動させて、チューブ137内を流れるエッチング液の濃度を測定する。通常は、使用前のエッチング液と比べて、フッ酸濃度と硝酸濃度が減少し、ヘキサフルオロ珪酸濃度と水濃度が増加した測定結果が得られる。その増加した濃度量を制御部143が算出する。
【0094】
測定部109で濃度測定された使用後のエッチング液は除去部139に送られる。除去部139は、使用後のエッチング液を100℃〜150℃程度に加温し、かつ真空ポンプで減圧している。液温度を上昇させれば、水とヘキサフルオロ珪酸の減少が速くなるため、単位時間あたりの水とヘキサフルオロ珪酸除去率は、液温度を変化させることにより調節できる。制御部143は、増加したヘキサフルオロ珪酸濃度量と水濃度量に基づいて除去部139における処理温度条件を調整する。除去部139で発生した水蒸気と四フッ化珪素ガスは、チューブ141から放出され、安全な箇所まで送出されて適宜処理される。
【0095】
除去部139を通過したエッチング液は、濃度調整前のエッチング液としてチューブ121を介して調液部119に送られる。その途中で、チューブ121内を流れる濃度調整前のエッチング液は符号E,Fの箇所で測定部109に導かれる。測定部109で、濃度調整前のエッチング液はセル121bに到達する。制御部143により、スライダー159を動作させてセル121bの光透過面に光ファイバー151,153を移動させて、チューブ121内を流れるエッチング液の濃度を測定する。これにより、除去部139による水とヘキサフルオロ珪酸の除去の程度が予想通りかどうかを確認する。測定によって得られた濃度調整前のエッチング液における各成分の濃度を、フッ酸濃度:f−1、硝酸濃度:n−1、ヘキサフルオロ珪酸濃度:s−1、水濃度:w−1、とする。
【0096】
測定部109で濃度測定された濃度調整前のエッチング液は調液部119に送られる。調液部119内の構成は図16を参照して説明した。ポンプ125の作動により、チューブ111,113,115,117,121側から調液部119を介してチューブ123側へ液が送液されている。
【0097】
フッ酸容器101に収容されたフッ酸原液は、チューブ111を介して調液部119に送られる。その途中で、チューブ111内を流れるフッ酸原液は符号G,Hの箇所で測定部109に導かれる。測定部109で、フッ酸原液はセル111bに到達する。制御部143により、スライダー159を動作させてセル111bの光透過面に光ファイバー151,153を移動させて、チューブ111内を流れるフッ酸原液の濃度を測定する。これにより、フッ酸原液の濃度が所定の濃度、例えば50%であるかどうかを確認する。測定結果のフッ酸濃度をf−2とする。フッ酸原液の測定結果濃度が50%とは異なっている場合であっても、その程度によっては、調液部119でフッ酸原液を混ぜ合わせる量を調節することにより解決できる。
【0098】
硝酸容器103に収容された硝酸原液は、チューブ113を介して調液部119に送られる。その途中で、チューブ113内を流れる硝酸原液は符号I,Jの箇所で測定部109に導かれる。測定部109で、硝酸原液はセル113bに到達する。制御部143により、スライダー159を動作させてセル113bの光透過面に光ファイバー151,153を移動させて、チューブ113内を流れる硝酸原液の濃度を測定する。これにより、硝酸原液の濃度が所定の濃度、例えば70%であるかどうかを確認する。測定結果の硝酸濃度をn−2とする。硝酸原液の測定結果濃度が70%とは異なっている場合であっても、その程度によっては、調液部119で、硝酸原液を混ぜ合わせる量を調節することにより解決できる。
【0099】
ヘキサフルオロ珪酸容器105に収容されたヘキサフルオロ珪酸原液は、チューブ115を介して調液部119に送られる。その途中で、チューブ115内を流れるヘキサフルオロ珪酸原液は符号K,Lの箇所で測定部109に導かれる。測定部109で、ヘキサフルオロ珪酸原液はセル115bに到達する。制御部143により、スライダー159を動作させてセル115bの光透過面に光ファイバー151,153を移動させて、チューブ115内を流れるヘキサフルオロ珪酸原液の濃度を測定する。これにより、ヘキサフルオロ珪酸原液の濃度が所定の濃度、例えば30%であるかどうかを確認する。測定結果のヘキサフルオロ珪酸濃度をs−2とする。ヘキサフルオロ珪酸原液の測定結果濃度が30%とは異なっている場合であっても、その程度によっては、調液部119で、ヘキサフルオロ珪酸原液を混ぜ合わせる量を調節することにより解決できる。
【0100】
純水容器107に収容された純水は、チューブ117を介して調液部119に送られる。その途中で、チューブ117内を流れる純水は符号M,Nの箇所で測定部109に導かれる。測定部109で、純水はセル117bに到達する。制御部143により、スライダー159を動作させてセル117bの光透過面に光ファイバー151,153を移動させて、チューブ117内を流れる純水の濃度を測定する。これにより、純水容器107に収容された液体が純水であるかどうかを確認する。純水でなければ制御部143は警報を出す。
【0101】
各液体を混合する動作について図16を参照して説明する。
チューブ121内を流れる濃度調整前のエッチング液は、電磁比例弁121aを通過した後、チューブ111から供給されるフッ酸原液とチューブ145で合流する。フッ酸原液は、電磁比例弁111aの開度が調整されることによって不足しているフッ酸成分量だけ供給される。フッ酸原液の供給量は、チューブ121で測定した濃度調整前のエッチング液中のフッ酸濃度に基づいて決定される。チューブ145で合流したエッチング液とフッ酸原液は混合器145aで混合される。
【0102】
混合器145aを通過したエッチング液は、チューブ113から供給される硝酸原液とチューブ147で合流する。硝酸原液は、電磁比例弁113aの開度が調整されることによって不足している硝酸成分量だけ供給される。硝酸原液の供給量は、チューブ121で測定した濃度調整前のエッチング液中の硝酸濃度に基づいて決定される。チューブ147で合流したエッチング液と硝酸原液は混合器147aで混合される。
【0103】
混合器147aを通過したエッチング液はチューブ149に到達する。ここで、チューブ121で測定した濃度調整前のエッチング液中のヘキサフルオロ珪酸濃度が目的の濃度よりも低い場合は、チューブ115からチューブ149にヘキサフルオロ珪酸原液が供給される。ヘキサフルオロ珪酸原液は、電磁比例弁115aの開度が調整されることによって不足しているヘキサフルオロ珪酸成分量だけ供給される。ヘキサフルオロ珪酸原液を供給する場合の供給量は、チューブ121で測定した濃度調整前のエッチング液中のヘキサフルオロ珪酸濃度に基づいて決定される。チューブ149で合流したエッチング液とヘキサフルオロ珪酸は混合器149aで混合される。
【0104】
混合器149aを通過したエッチング液はチューブ123に到達する。ここで、チューブ121で測定した濃度調整前のエッチング液中の水濃度が目的の濃度よりも低い場合は、チューブ117からチューブ123に純水が供給される。純水は、電磁比例弁117aの開度が調整されることによって不足している水分量だけ供給される。純水を供給する場合の供給量は、チューブ121で測定した濃度調整前のエッチング液中の水濃度に基づいて決定される。チューブ123で合流したエッチング液と水は混合器123aで混合される。
【0105】
フッ酸目標濃度:f−0、硝酸目標濃度:n−0、ヘキサフルオロ珪酸目標濃度:s−0、水目標濃度:w−0、として、以下の式において各成分が目標濃度になるようにa,b,c,d,eを調整する。
[f−0]=(a×[f−1]+b×[f−2])/(a+b+c+d+e)
[n−0]=(a×[n−1]+c×[n−2])/(a+b+c+d+e)
[s−0]=(a×[s−1]+d×[s−2])/(a+b+c+d+e)
[w−0]=(a×[w−1]+e)/(a+b+c+d+e)
ここで、a,b,c,d,eは、電磁比例弁121a,111a,113a,115a,117aを通過する流量に、その液体の密度を掛け合わせた値である。
【0106】
電磁比例弁121a,111a,113a,115a,117aのそれぞれにおいて通過する液体の濃度はさほど変化しないので一定値とみなし、流量にほぼ比例するパラメータとみなしてよいので、電磁比例弁121a,111a,113a,115a,117aの開度パラメータとみなすことができる。
これにより、各成分濃度が目標値に近いエッチング液をチューブ123から排出される。この場合、水分とヘキサフルオロ珪酸を加えるd,eパラメータが大きい値の場合は、除去部139の能力が高いことを意味するので、低く抑えるように制御する。また、d,eパラメータがマイナスになる場合は、除去部139の能力が低いことを意味するので、高くなるように制御する。
【0107】
チューブ123内を流れる濃度調整後のエッチング液は、符号O,Pの箇所で測定部109に導かれる。測定部109で、濃度調整後のエッチング液はセル123bに到達する。制御部143により、スライダー159を動作させてセル123bの光透過面に光ファイバー151,153を移動させて、チューブ123内を流れる濃度調整後のエッチング液の各成分の濃度を測定する。これにより、濃度調整後のエッチング液の各成分の濃度が目標値になっているかどうかを確認する。目標値から外れている場合は、次回の再生時に、それを修正するように上記式のa,b,c,d,eを調整する。
【0108】
測定部109を通過した濃度調整後のエッチング液は、ポンプ125を通過して、エッチング液容器127に一時的に保存される。エッチング液容器127はなくてもよい。すなわち、ポンプ125,131を同時に同じ送液量で動作させるか、それらのポンプを1つのポンプで実現することにより、調液部119から排出される濃度調整後のエッチング液を直接エッチング装置135に送液してもよい。この場合は、図17のセル123b,129bに同じ液体が流れるので、セル123b、129bのいずれかが省略される。
【0109】
以上、本発明の実施例を説明したが、材料、形状、配置等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施例では、混合する流体として液体を用いているが、本発明の流体制御方法及び流体制御装置は気体の混合にも適用することができる。ここで、混合する複数の気体が化学反応を伴うものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
例えば、マイクロアレイ、微小アナリシスシステム、DNAチップ、マイクロ流体システム、統合型小型分析システムなどの微小なシステムや、半導体製造装置など、所定の特性をもつ流体を調合する際に、設定した特性の流体を確実にかつリアルタイムで作製する用途に適用できる。
【符号の説明】
【0111】
5,7,11,13,15,17 流路
11a,13a,15a 測定部
11b,13b 流量調整部
19 ポンプ
21 制御部
109 測定部
111,113,115,117,121,123 チューブ(流路)
145,147,149 チューブ(流路)
111a,113a,115a,117a,121a 電磁比例弁(流量調整部)
125 ポンプ
143 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内を流れる混合前の複数の流体をそれぞれ流量調整しつつ混合し、流路内を流れる混合後の流体の特性を光学的に測定し、その測定結果に基づいて前記混合後の流体が目標の特性になるように前記混合前の流体の流量を調整する流体制御方法。
【請求項2】
前記混合前の複数の流体について特性をそれぞれ光学的に測定する請求項1に記載の流体制御方法。
【請求項3】
前記光学的測定は、スペクトル測定、又は所定波長における透過率測定もしくは吸光度測定である請求項1又は2に記載の流体制御方法。
【請求項4】
前記スペクトル測定の波長範囲は、800〜2600nmの近赤外線スペクトル、400〜800nmの可視光スペクトルもしくは150〜400nmの紫外線スペクトル又はそれらの組合せである請求項3に記載の流体制御方法。
【請求項5】
前記流路内を流れる流体の温度を変化させることにより、前記流体の粘度を変化させ、前記流路内での前記流体の流量を調整する請求項1から4のいずれか一項に記載の流体制御方法。
【請求項6】
前記流路はチューブによって形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の流体制御方法。
【請求項7】
前記流路はマイクロ流体システム内に形成されたものである請求項1から5のいずれか一項に記載の流体制御方法。
【請求項8】
前記マイクロ流体システムは、2枚の平面板で厚みの均一な間仕切り板を挟み込むことによって内部に流路が形成されたチップである請求項7に記載の流体制御方法。
【請求項9】
前記流体が液体である請求項1から8のいずれか一項に記載の流体制御方法。
【請求項10】
前記流体の特性が流体の温度である請求項1から9のいずれか一項に記載の流体制御方法。
【請求項11】
前記流体の特性が流体を構成している組成の濃度である請求項1から9のいずれか一項に記載の流体制御方法。
【請求項12】
前記混合前の流体がアルコール溶液と水であり、前記混合後の流体が希釈アルコール溶液である請求項11に記載の流体制御方法。
【請求項13】
前記混合前の前記流体が濃度調整前の混酸とその混酸の成分の酸溶液と水であり、前記混合後の流体が濃度調整後の混酸である請求項11に記載の流体制御方法。
【請求項14】
加熱処理もしくは減圧処理又はそれらの両方によって前記濃度調整前の混酸の水分量を減少させる請求項13に記載の流体制御方法。
【請求項15】
前記濃度調整前の混酸は、前記濃度調整後の混酸が所定の処理に使用された後の溶液である請求項13に記載の流体制御方法。
【請求項16】
前記混酸の成分は、ヘキサフルオロ珪酸、フッ酸、硝酸、酢酸、リン酸、硫酸のうちいずれか2つ以上含む請求項13又は15に記載の流体制御方法。
【請求項17】
前記混酸の成分はヘキサフルオロ珪酸を含み、さらにフッ酸、硝酸、酢酸、リン酸、硫酸のうちいずれか1つ以上を含む請求項13又は15に記載の流体制御方法。
【請求項18】
前記濃度調整前の混酸のヘキサフルオロ珪酸成分量を加熱処理もしくは減圧処理又はそれらの両方によって減少させる請求項16又は17に記載の流体制御方法。
【請求項19】
同時に前記濃度調整前の混酸の水分量を減少させる請求項18に記載の流体制御方法。
【請求項20】
前記所定の処理がシリコンウェハのエッチング処理である請求項15から19のいずれか一項に記載の流体制御方法。
【請求項21】
前記濃度調整前の混酸は、前記濃度調整後の混酸が単位枚数のシリコンウェハのエッチング処理に用いられたものである請求項20に記載の流体制御方法。
【請求項22】
前記エッチング処理がスピンエッチング処理である請求項20又は21に記載の流体制御方法。
【請求項23】
混合前の複数の流体及びそれらの流体の混合後の流体を流すための流路と、
前記混合前の複数の流体の流量をそれぞれ調整するための流量調整部と、
前記流路内を流れる前記混合後の流体の特性を光学的に測定するための測定部と、
前記測定部の測定結果に基づいて前記混合後の流体が目標の特性になるように前記流量調整部を制御して前記混合前の流体の流量を調整する制御部と、を備えた流体制御装置。
【請求項24】
前記測定部は、前記混合前の複数の流体についても特性をそれぞれ光学的に測定する請求項23に記載の流体制御装置。
【請求項25】
前記測定部が行なう測定は、スペクトル測定、又は所定波長における透過率測定もしくは吸光度測定である請求項23又は24に記載の流体制御装置。
【請求項26】
前記スペクトル測定の波長範囲は、800〜2600nmの近赤外線スペクトル、400〜800nmの可視光スペクトルもしくは150〜400nmの紫外線スペクトル又はそれらの組合せである請求項25に記載の流体制御方法。
【請求項27】
前記流量調整部は、前記流路内を流れる流体の温度を変化させることにより、前記流体の粘度を変化させ、前記流路内での前記流体の流量を調整するものである請求項23から26のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項28】
前記流路はチューブによって形成されている請求項23から27のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項29】
前記流路はマイクロ流体システム内に形成されたものである請求項23から27のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項30】
前記マイクロ流体システムは、2枚の平面板で厚みの均一な間仕切り板を挟み込むことによって内部に流路が形成されたチップである請求項29に記載の流体制御装置。
【請求項31】
前記流体が液体である請求項23から30のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項32】
前記流体の特性が流体の温度である請求項23から31のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項33】
前記流体の特性が流体を構成している組成の濃度である請求項23から31のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項34】
前記混合前の流体がアルコール溶液と水であり、前記混合後の流体が希釈アルコール溶液である請求項33に記載の流体制御装置。
【請求項35】
前記混合前の前記流体が濃度調整前の混酸とその混酸の成分の酸溶液と水であり、前記混合後の流体が濃度調整後の混酸である請求項33に記載の流体制御装置。
【請求項36】
加熱処理もしくは減圧処理又はそれらの両方によって前記濃度調整前の混酸の水分量を減少させるための除去部をさらに備えている請求項35に記載の流体制御装置。
【請求項37】
前記濃度調整前の混酸は、前記濃度調整後の混酸が所定の処理に使用された後の溶液である請求項35に記載の流体制御装置。
【請求項38】
前記混酸の成分は、ヘキサフルオロ珪酸、フッ酸、硝酸、酢酸、リン酸、硫酸のうちいずれか2つ以上含む請求項35又は37に記載の流体制御装置。
【請求項39】
前記混酸の成分はヘキサフルオロ珪酸を含み、さらにフッ酸、硝酸、酢酸、リン酸、硫酸のうちいずれか1つ以上を含む請求項35又は37のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項40】
前記濃度調整後の混酸のヘキサフルオロ珪酸成分量を加熱処理もしくは減圧処理又はそれらの両方によって減少させるための除去部をさらに備えている請求項38又は39に記載の流体制御装置。
【請求項41】
前記除去部は、同時に前記濃度調整後の混酸の水分量を減少させる請求項40に記載の流体制御装置。
【請求項42】
前記所定の処理がシリコンウェハのエッチング処理である請求項37から41のいずれか一項に記載の流体制御装置。
【請求項43】
前記濃度調整前の混酸は、前記濃度調整後の混酸が単位枚数のシリコンウェハのエッチング処理に用いられたものである請求項42に記載の流体制御装置。
【請求項44】
前記エッチング処理がスピンエッチング処理である請求項42又は43に記載の流体制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−184203(P2010−184203A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30366(P2009−30366)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】