説明

流体動圧軸受用潤滑油基油、該基油を含有する流体動圧軸受用潤滑油及び該潤滑油を備えたスピンドルモータ

【課題】高温域で流体動圧軸受が回転体の荷重を十分に支持できる粘度領域を満たし、かつ低温域での粘度上昇を抑制すること。
【解決手段】脂肪族二価アルコールと脂肪族モノカルボン酸のジエステルを含有する流体動圧軸受用潤滑油基油であって、
脂肪族二価アルコールが直鎖状の炭素原子数11以上の二価アルコールであり、脂肪族モノカルボン酸が分岐鎖状の炭素原子数7以下の脂肪族モノカルボン酸であり、
前記基油の100℃における動粘度が2.90〜3.20mm2/sであり、
前記基油の粘度指数が160以上である、
流体動圧軸受用潤滑油基油。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広い温度範囲で使用しても粘度変化の少ない流体動圧軸受用潤滑油基油、該基油を含有する流体動圧軸受用潤滑油及び該潤滑油を備えたスピンドルモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、DVDのモータの回転軸受には、ボールベアリングや流体動圧軸受が使用されている。
ボールベアリングは長時間使用すると軸受に対する負荷が大きくなり、振動、騒音が発生しやすい。一方、流体動圧軸受は、軸の回転によって潤滑油が流れることで圧力を発生させて回転を支持し、軸と軸受部が直接触れ合わないため、摩擦抵抗が小さく、低振動、低騒音にも優れる。従って、近年では流体動圧軸受が使用されることが多い。
流体動圧軸受は、モータの連続回転時など潤滑油が高温域にある場合、潤滑油が熱膨張してその粘度が低下すると軸受剛性が低下し、回転体の荷重を十分に支持できなくなる恐れがある。このため、使用する潤滑油には高温域での高い粘度が要求される。一方、モータの始動時など潤滑油が低温域にある場合、潤滑油の粘度が高いと回転時の粘性抵抗が大きくなり、モータの電力損失が大きくなる。このため、使用する潤滑油には低温域になっても粘度上昇が小さいことが要求される。従って流体動圧軸受用潤滑油には、高温域では高い粘度で、低温域になっても粘度上昇しないという一見相反する粘度特性が要求される。
流体動圧軸受用潤滑油としては、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールのジn−オクチル酸エステル等が報告されており、ポリ−α−オレフィン、ジオクチルセバケート、ネオペンチルグリコールとノナン酸とのエステルやペンタエリスリトールのエステル等と比べて、低温流動性に優れていることが報告されている(特許文献1)。
また、軸受用潤滑油として、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ヘプタン酸及び/又はn−オクタン酸のジエステル等が、広範囲の温度領域で低粘度であると報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−321691号公報
【特許文献2】特開2003−119482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、モータの電力損失を更に少なくする目的で、粘性抵抗の小さい流体動圧軸受用潤滑油が必要とされている。従来の流体動圧軸受用潤滑油は、温度に対する粘度変化が大きいため、高温域での粘度を高くすると、低温域での粘度も大きくなるためモータの電力損失が大きくなる。逆に低温域での粘度を低くすると、高温域での粘度も低くなるため回転体の荷重を十分に支持できなくなる。
従って、本発明が解決しようとする課題は、高温域で流体動圧軸受が回転体の荷重を十分に支持できる粘度領域を満たし、かつ低温域での粘度上昇を抑制することである。
本発明の目的は、高温域で流体動圧軸受が回転体の荷重を十分に支持できる粘度領域を満たし、かつ低温域での粘度の上昇を抑制する流体動圧軸受用潤滑油基油を提供することである。
本発明の別の目的は、該基油を含有する潤滑油を提供することである。
本発明の更なる目的は、該潤滑油を備えたスピンドルモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこの課題に対し、特定の脂肪族二価アルコールと特定の脂肪族モノカルボン酸とから構成され、100℃における動粘度が2.90〜3.20mm2/sであり、粘度指数が160以上であるジエステルにより、上記課題を解決した。
即ち、本発明により、以下の流体動圧軸受用潤滑油基油、該基油を含有する流体動圧軸受用潤滑油及び該潤滑油を備えたスピンドルモータを提供する:
1. 脂肪族二価アルコールと脂肪族モノカルボン酸のジエステルを含有する流体動圧軸受用潤滑油基油であって、
脂肪族二価アルコールが直鎖状の炭素原子数11以上の二価アルコールであり、脂肪族モノカルボン酸が分岐鎖状の炭素原子数7以下の脂肪族モノカルボン酸であり、
前記基油の100℃における動粘度が2.90〜3.20mm2/sであり、
前記基油の粘度指数が160以上である、
流体動圧軸受用潤滑油基油。
2. 脂肪族モノカルボン酸が、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、前記1項記載の流体動圧軸受用潤滑油基油。
3. 脂肪族二価アルコールが直鎖状の1,12−ドデカンジオールである、前記1又は2項記載の流体動圧軸受用潤滑油基油。
4. 脂肪族二価アルコールが直鎖状の1,12−ドデカンジオールであり、脂肪族モノカルボン酸が2−メチルペンタン酸又は2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸との混合物である、前記1〜3のいずれか1項記載の流体動圧軸受用潤滑油基油。
5. 請求項1〜4のいずれか1項記載の流体動圧軸受用潤滑油基油を含有する流体動圧軸受用潤滑油。
6. さらにアミン系酸化防止剤を0.01〜5質量%及び、又はフェノール系酸化防止剤0.01〜5質量%を含有する前記5項記載の流体動圧軸受用潤滑油。
7. さらに帯電防止剤を0.01〜0.1質量%含有する前記5又は6記載の流体動圧軸受用潤滑油。
8.ステータを有する静止部と、
ロータマグネットを有する回転部と、
静止部に対して回転部を回転自在に支持する流体動圧軸受と、
前記5〜7のいずれか1項に記載の流体動圧軸受用潤滑油と、
を備えたスピンドルモータ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高温域で流体動圧軸受が回転体の荷重を十分に支持できる粘度領域を満たし、かつ低温域での粘度の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】スピンドルモータの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔基油〕
本発明の流体動圧軸受用潤滑油基油は、脂肪族二価アルコールとモノカルボン酸とのジエステルである。
脂肪族二価アルコールは、炭素原子数11以上の直鎖状の脂肪族二価アルコールである。炭素原子数11〜14の直鎖状の二価アルコールが好ましい。脂肪族二価アルコールの具体例としては、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール等が挙げられる。中でも1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオールが好ましい。特に、1,12−ドデカンジオールが好ましい。上記脂肪族二価アルコールは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
脂肪族モノカルボン酸は、炭素原子数7以下の分岐鎖状の脂肪族モノカルボン酸である。分岐鎖状の飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましい。炭素原子数6〜7の分岐鎖状飽和脂肪族モノカルボン酸がより好ましい。分岐鎖状の脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、イソヘプタン酸等が挙げられる。このうち、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸及びこれらの混合物が好ましい。中でも、2−メチルペンタン酸及び2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸との混合物が特に好ましい。脂肪族モノカルボン酸は単独または2種類以上混合して用いることができる。
とりわけ、1,12−ドデカンジオールと、2−メチルペンタン酸又は2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸との混合物とから構成されるジエステルが好ましい。
【0009】
本発明の流体動圧軸受用潤滑油基油は、その性能を低下させない範囲で、他の潤滑油基油、すなわち、鉱物油、ポリα−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、動植物油、有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニールエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を適宣併用することも可能である。併用するその他の基油の量は本発明の流体動圧軸受用潤滑油基油に対して0〜50質量%が好ましく、低温性を損なわないためには本発明の流体動圧軸受用潤滑油基油に対して0〜20質量%であることが好ましい。すなわち、本発明の基油が、炭素原子数11以上の直鎖状の脂肪族二価アルコールと、炭素原子数7以下の分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸とのジエステルからなり、他の潤滑油基油を含まないのが最も好ましい。
【0010】
脂肪族二価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化反応は、当業界において公知の方法により行うことができる。通常、150〜300℃、好ましくは200〜250℃で行われる。反応時間は、反応のスケール等により変わるため、特に限定されないが、好ましくは1〜10時間である。圧力は常圧または減圧で実施するが、減圧の場合は通常0.1〜80kPaである。脂肪族二価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステルはフルエステルであることが好ましい。エステル中に水酸基が残ると熱安定性が低下するので、モノエステルの生成を防止するように反応条件を選択する。このため、脂肪族二価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との仕込みモル比は、好ましくは1.0:1.5〜3.0、さらに好ましくは1.0:1.8〜2.0とすることが望ましい。
エステル化反応においては触媒を使用しても良く、この場合の該触媒の使用量は、原料仕込み量の0.01〜0.5質量%が好ましい。この場合の触媒としては、例えば、硫酸、p−トルエンスルホン酸、スズ酸化物、アルキルチタネート等が挙げられる。
【0011】
本発明の流体動圧軸受用潤滑油基油の100℃における動粘度は、2.90〜3.20mm2/s、好ましくは2.90〜3.10mm2/sである。潤滑油が熱膨張して2.90mm2/s未満になると軸受剛性が低下し、回転体の荷重を十分に支持できなくなる恐れがある。
本発明の流体動圧軸受用潤滑油基油の粘度指数は、低温域での粘度上昇を抑制する観点から、160以上、好ましくは160〜180である。なお、粘度指数とは、温度変化に伴う潤滑油の粘度変化を示す実験的に求められる指数である。一般的に、粘度指数が大きい潤滑油ほど、温度変化に伴う粘度の変化が小さく、粘度指数が小さい潤滑油ほど、温度変化に伴う粘度の変化が大きい。
本発明の流体動圧軸受用潤滑油基油の流動点は、−20℃以下であるのが好ましい。
【0012】
〔添加剤〕
本発明の基油は、潤滑油として使用することができる。本発明の潤滑油は、その性能を向上させるため、必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤等を含ませることができる。
酸化防止剤としては、アミン系酸化防止剤及び、又はフェノール系酸化防止剤を組み合わせて添加する場合が好ましい。特に、アミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤を組み合わせて添加する場合が好ましい。アミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤を組み合わせて添加すると、単独で使用したした場合と比較して高温条件下で長期間にわたって優れた低揮発性を潤滑油に付与することができる。アミン系酸化防止剤の含有量は、流体動圧軸受用潤滑油に対して、好ましくは0.01〜5質量%添加される。フェノール系酸化防止剤の含有量は、流体動圧軸受用潤滑油に対して、好ましくは0.01〜5質量%添加される。
帯電防止剤は、流体動圧軸受用潤滑油に対して、好ましくは0.01〜0.1質量%添加される。
【0013】
以下、好適な実施形態につき、図面も参照して説明する。
図1は、スピンドルモータの構成を示す縦断面図である。スピンドルモータは、静止部2と、回転部4とを有している。回転部4は、本実施形態の流体動圧軸受3により、静止部2に対して回転自在に支持されている。なお、好適な実施形態の説明において、各部材の位置関係や方向を上下左右で説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
ベースプレート10は、ベースプレート10の中央に設けられた平坦部11と、平坦部11の中央に設けられたボス部13と、を有する。ボス部13と平坦部11の外周部に設けられた環状段部14との間は、環状の凹部となっている。平坦部11に対して固定されたステータ17と、後述するハブ31に固定されたロータマグネット34とは、環状の凹部内に配置される。ボス部13の径方向外側には、ステータ17が配置されている。
【0014】
ボス部13の径方向内側には、流体動圧軸受3の一部を構成する軸受静止部20が配置されている。軸受静止部20は、略円筒形状のスリーブ21と、スリーブ21の下端開口を閉塞するカウンタプレート22と、を有している。
回転部4は、カップ状のハブ31と、ハブ31の回転中心位置に配置されたシャフト32と、を有している。
ハブ31の円板部31aの外側には、円筒部31bが配置されている。円筒部31bの下端には、径方向外側に延びるフランジ部31cが配置されている。円筒部31bの内側には、環状壁31dが配置されている。
シャフト32の外周面とスリーブ21の内周面とは、微小隙間を介して径方向に対向している。
シャフト32の下端には、環状部材33が固定されている。環状部材33の外径は、シャフト32の外径より大きい。
【0015】
ハブ31の円筒部31bの内側には、周方向に複数の磁極を配列してなる環状のロータマグネット34が配置されている。ロータマグネット34は、ステータ17を外周から囲む位置に配置されている。
ハブ31のフランジ部31cには、一枚又は複数枚の、円板状の記録ディスクが載置される。本実施形態では、記録ディスクとして、ハードディスクが用いられる。
スリーブ21およびカウンタープレート22とシャフト32および環状部材33との間、及び、ハブ31の円板部31aの下面とスリーブ21の上端面との間には、それぞれ微小間隙が構成されている。微小間隙は、潤滑油40で満たされている。
潤滑油40は、環状壁31dの内周面と該内周面と径方向に対向するスリーブ21の外周面とで構成された毛細管シール部41において外気と接している。毛細管シール部41には、潤滑油40におけるメニスカス状の気液界面が位置している。毛細管シール部41は、上方に進むに従って間隙が縮小するテーパ形状を有する。
【0016】
スリーブ21の内周面とシャフト32の外周面との間には、ヘリングボーン形状の動圧発生溝列を有する一対のラジアル動圧軸受42,43が構成されている。ラジアル動圧発生溝列は、スピンドルモータが所定の方向に回転する際に、シャフト32を径方向に支持する支持力を発生する。また、スリーブ21の上端面と円板部31aの下面との間には、スパイラル状のスラスト動圧発生溝列を有するスラスト動圧軸受部44が構成されている。スラスト動圧溝列は、スピンドルモータが所定の方向に回転する際に、スラスト動圧発生溝列が配置されている領域よりも径方向内側における潤滑油の圧力を高める。また、ハブ31を軸方向上方に向けて浮上させる支持力を生ずる。
なお、本実施形態では、シャフト32が回転する軸回転型のスピンドルモータについて説明したが、これに限らない。たとえば、本発明は、シャフトが回転しない軸固定型のスピンドルモータにも好適に適用することができる。
また、本発明は、流体動圧軸受を用いた各種産業用モータに好適に適用することができる。
【実施例】
【0017】
〔実施例1〕
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却器付きの脱水管を取り付けた3Lの4つ口フラスコを用意し、1,12−ドデカンジオール(809.3g)(4モル)と、2−メチルペンタン酸(1393.9g)(12モル)を仕込み、常圧で200℃、8時間反応させた。減圧(3mmHg)下、過剰の脂肪酸を留去した後、20%の水酸化ナトリウム水溶液(630g)(80℃)で洗浄し、さらに1Lの水で4回水洗し、減圧下脱水(275℃以下、4mmHg以下)を2時間行った。さらに上記の残留物から、4mmHg減圧下、280〜283℃で目的のジエステルを得た。
【0018】
〔実施例2,比較例1〜8〕
表1に示した脂肪族二価アルコール及び脂肪族モノカルボン酸を使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2及び比較例1〜8のジエステルを得た。なお、比較例2は、特許文献1に記載の実施例1に相当する。比較例6〜8は特開2008−69234号公報に記載の実施例1〜3に相当する。
【0019】
〔実施例3〕
実施例3の潤滑油は、実施例1で調製した潤滑油基油に、アミン系酸化防止剤及び帯電防止剤を添加することにより調製した。
〔実施例4〕
実施例5の潤滑油は、実施例1で調製した潤滑油基油に、アミン系酸化防止剤と、フェノール系酸化防止剤と、帯電防止剤を添加することにより調製した。
〔実施例5〕
実施例5の潤滑油は、実施例2で調製した潤滑油基油に、アミン系酸化防止剤及び帯電防止剤を添加することにより調製した。
<試験方法>
・動粘度及び粘度指数
100℃及び40℃における動粘度を、動粘度測定用精密恒温槽(離合社製、Cat.No.403DS)とウベローデ粘度計(粘度計番号:0B(100℃)、1A(40℃))を用いて、JIS K 2283 3.:1983の規定に従って測定した。粘度指数は、測定した動粘度の数値からJIS K 2283 4.:1983の規定に従って算出した。
・流動点
流動点は、流動点試験器(離合社製、Cat.No.520R・14L)を用いて、JIS K 2269:1987の規定に従って測定した。
【0020】
<評価基準>
・動粘度(100℃)
× < 2.90mm2/s
2.90mm2/s ≦ ○ ≦ 3.20mm2/s
3.20mm2/s < ×
・粘度指数
160 ≦ ○
× < 160
【0021】
【表1】

【0022】
表中、添加剤の単位「%」は、上で得られたエステルと、アミン系酸化防止剤と、フェノール系酸化防止剤と、耐電防止剤との合計質量を基準とする。実施例1、2及び比較例1〜8は基油の動粘度及び粘度指数を、実施例3〜5は潤滑油の動粘度及び粘度指数を表す。
表1、表2から明らかなように、本発明の流体動圧軸受用潤滑油基油及び潤滑油は、高温域で流体動圧軸受が回転体の荷重を十分に支持できる粘度領域を満たし、かつ低温域での粘度上昇が小さい優れた粘度特性を示す。従って、本発明は、流体動圧軸受用潤滑油基油及び潤滑油として好適である。
【符号の説明】
【0023】
2 静止部
3 流体動圧軸受
4 回転部
10 ベースプレート
11 平坦部
13 ボス部
14 環状段部
17 ステータ
20 軸受静止部
21 スリーブ
22 カウンタプレート
31 ハブ
31a 円板部
31b 円筒部
31c フランジ部
31d 環状壁
32 シャフト
33 環状部材
34 ロータマグネット
40 潤滑油
41 毛細管シール部
42,43 ラジアル動圧軸受
44 スラスト動圧軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族二価アルコールと脂肪族モノカルボン酸のジエステルを含有する流体動圧軸受用潤滑油基油であって、
脂肪族二価アルコールが直鎖状の炭素原子数11以上の二価アルコールであり、脂肪族モノカルボン酸が分岐鎖状の炭素原子数7以下の脂肪族モノカルボン酸であり、
前記基油の100℃における動粘度が2.90〜3.20mm2/sであり、
前記基油の粘度指数が160以上である、
流体動圧軸受用潤滑油基油。
【請求項2】
脂肪族モノカルボン酸が、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載の流体動圧軸受用潤滑油基油。
【請求項3】
脂肪族二価アルコールが直鎖状の1,12−ドデカンジオールである、請求項1又は2記載の流体動圧軸受用潤滑油基油。
【請求項4】
脂肪族二価アルコールが直鎖状の1,12−ドデカンジオールであり、脂肪族モノカルボン酸が2−メチルペンタン酸又は2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸との混合物である、請求項1〜3のいずれか1項記載の流体動圧軸受用潤滑油基油。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の流体動圧軸受用潤滑油基油を含有する流体動圧軸受用潤滑油。
【請求項6】
さらにアミン系酸化防止剤0.01〜5質量%及び、又はフェノール系酸化防止剤0.01〜5質量%を含有する請求項5記載の流体動圧軸受用潤滑油。
【請求項7】
さらに帯電防止剤を0.01〜0.1質量%含有する請求項5又は6記載の流体動圧軸受用潤滑油。
【請求項8】
ステータを有する静止部と、
ロータマグネットを有する回転部と、
静止部に対して回転部を回転自在に支持する流体動圧軸受と、
請求項5〜7のいずれか1項に記載の流体動圧軸受用潤滑油と、
を備えたスピンドルモータ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−43897(P2013−43897A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180625(P2011−180625)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】