流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置
【課題】多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができる、流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置を提供する。
【解決手段】流体取扱ユニット16は、一体に形成された外側大径円筒部16aと外側小径円筒部16bと内側円筒部16cとから構成され、内側円筒部内に形成される内側流体収容室30を、内側円筒部と外側小径円筒部の間に形成される外側流体収容室28に連通させる複数のスリット16dが、内側円筒部の下端から上端まで延びるように所定の間隔で形成され、注入される液体の量が所定の量を超えるまでは、内側流体収容室内の液体の大部分が、毛管現象によってスリットを介して外側流体収容室内に流入し、注入される液体の量が所定の量を超えると、外側流体収容室内の液体が内側流体収容室内に流入する。
【解決手段】流体取扱ユニット16は、一体に形成された外側大径円筒部16aと外側小径円筒部16bと内側円筒部16cとから構成され、内側円筒部内に形成される内側流体収容室30を、内側円筒部と外側小径円筒部の間に形成される外側流体収容室28に連通させる複数のスリット16dが、内側円筒部の下端から上端まで延びるように所定の間隔で形成され、注入される液体の量が所定の量を超えるまでは、内側流体収容室内の液体の大部分が、毛管現象によってスリットを介して外側流体収容室内に流入し、注入される液体の量が所定の量を超えると、外側流体収容室内の液体が内側流体収容室内に流入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置に関し、特に、生体物質に代表される機能性物質などの試料を分析する試料分析装置として使用可能な流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンパク質などの生体物質を特異的に検出する方法として、特定の生体物質に対する抗体を用いて抗原抗体反応を起こさせ、その反応物を視覚的に認識または分光学的に測定することによってその生体物質を検出する様々な方法が知られている。
【0003】
現在、タンパク質などの生体物質の抗原抗体反応による反応物を定量する方法として、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)(酵素結合免疫吸着検定法)などの方法が広く採用されている。これらの方法では、一般にマイクロウェル(以下「ウェル」という)と呼ばれる多数の微小凹部の配列が形成されたマイクロウェルプレートと呼ばれる試料分析装置を使用し、目的物質である特定の生体物質に対する抗体を捕体としてウェルの壁面にコートし、この捕体によって目的物質を捕捉し、目的物質と抗体との間の抗原抗体反応による反応物を蛍光や発光試薬などにより測定することによって目的物質を検出する。
【0004】
一般に、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた方法では、目的物質を含む検体や抗体試薬などの液体を反応液としてウェル内に満たして反応させている。この反応は、ウェル内に満たされた液体中の成分が分子拡散によって移動し、ウェルの底面や内壁に達したときに初めて起こる。そのため、マイクロウェルプレートを静置した場合には、理論的な反応時間は、ウェル内に満たされた液体中の成分の拡散時間に依存している。液体中の分子は、周囲の分子と衝突しながら移動しているため、その拡散の速さは非常に遅く、目的物質が分子量7万程度のタンパク質である場合には、希薄な水溶液の状態(室温)で0.5〜1×10−6cm2/秒程度である。そのため、ウェル内の液体中において、ウェルの底面や内壁から離れた位置にある目的物質は、実用的な測定時間内ではほとんど反応することができない。また、マイクロウェルプレートでは、反応効率を向上させるために、反応部であるウェル内の底面や壁面を反応液と万遍なく接触させることが有効であるので、反応に必要な量の液体に比べて、より多くの量の液体が必要になる。
【0005】
このように、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた従来の方法では、抗原抗体反応が捕捉用抗体をコートしたウェルの壁面のみで進行するため、ウェルに加えた液体中に含まれる目的物質、抗体、基質などがウェル内で浮遊、還流、沈下してウェルの壁面に到達した後に反応するまで放置しなければならず、反応効率が悪いという問題がある。また、多数のウェルに細分化されているマイクロウェルプレートでは、各々のウェルに加える液体の量が制限されているので、測定感度が低下するという問題もある。
【0006】
また、ELISAなどの方法において測定感度の向上や測定時間の短縮を図るために、反応面(捕捉面)となるウェルの底面に微細な凹凸を設けることによって、反応面の表面積を大きくして測定感度を高めることができるマイクロプレートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、マイクロチップのマイクロチャネル内に反応固相として固体微粒子(ビーズ)を配置させることにより、反応面の表面積を増大して、微小空間における反応効率を高めることができるマイクロチップも提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、各ウェルの底面部の中央に小径の凹部を設けることにより、反応面の表面積を増大し且つ試料を節約することができるマイクロプレートも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平9−159673号公報(段落番号0009−0010)
【特許文献2】特開2001−4628号公報(段落番号0005−0006)
【特許文献3】特開平9−101302号公報(段落番号0010−0011)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に提案されたマイクロプレートは、測定感度を向上させることができるが、反応効率を向上させることができないという問題がある。また、特許文献2に提案されたマイクロチップは、一般にELISAなどの方法に使用されるマイクロウェルプレートではなく、マイクロチャネル構造のマイクロチップであるため、反応効率を向上させることができるものの、多検体の測定に適していない。さらに、特許文献3に提案されたマイクロプレートは、ある程度反応面の表面積を増大して反応効率や測定感度を向上させることができるものの、反応効率や測定感度の向上は十分ではない。
【0009】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができる、流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記の流体取扱装置またはそれに用いる流体取扱ユニットにおいて、分析に使用する試薬や検体などが微量の場合でも、さらに分析精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による流体取扱ユニットは、内部に流体収容部を形成するための底面部と側面部を備えるとともに上端に開口部を有する容器本体と、この容器本体の底面部から立設されて容器本体の流体収容部を第1の流体収容室と第2の流体収容室に仕切る仕切り壁部と、この仕切り壁部を貫通して第1の流体収容室と第2の流体収容室の間を連通させる連通路とを備え、連通路は、第1の流体収容室および第2の流体収容室と協働して、容器本体の開口部から流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、毛管現象により第1の流体収容室内の液体を第2の流体収容室内に流入させるとともに第2の流体収容室内の液体の第1の流体収容室内への流入を防止し、容器本体の開口部から流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えると、第2の流体収容室内の液体の第1の流体収容室内への流入を許容することを特徴とする。
【0012】
この流体取扱ユニットにおいて、仕切り壁部の高さが容器本体部の側面部よりも低いのが好ましく、連通路が、仕切り壁部を貫通して仕切り壁部の下端から上端まで延びるように形成された1つまたは複数のスリットであるのが好ましい。
【0013】
また、上記の流体取扱ユニットにおいて、第1の流体収容室が第2の流体収容室に取り囲まれているのが好ましい。この場合、容器本体部が略円筒形の形状を有し、仕切り壁部が容器本体部と略同軸に形成された略円筒形の形状を有するのが好ましく、容器本体部が、略円筒形の大径部と、この大径部の下に配置された小径の略円筒形の小径部を有し、この小径部の内側に仕切り壁部が配置されているのが好ましい。また、連通路が複数のスリットであり、これらの複数のスリットが仕切り壁部の周方向に一定の間隔で離間して形成されているのが好ましく、仕切り壁部の上端面が内側下方に傾斜しているのが好ましい。
【0014】
また、上記の流体取扱ユニットにおいて、第2の流体収容室の底面部が、第1の流体収容室に向かうにしたがって下方に傾斜し、第2の流体収容室の底面部の最も低い部分の高さが、第1の流体収容室の高さと略同一の高さであるのが好ましい。また、スリットの幅が、第2の流体収容室側よりも第1の流体収容室側の方が広くなっているのが好ましい。また、容器本体の開口部から流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、第1の流体収容室内の液体の大部分が第2の流体収容室内に流入するのが好ましい。さらに、流体取扱ユニットが一体成形されているのが好ましい。
【0015】
また、上記の流体取扱ユニットにおいて、連通路は、第1の流体収容室内に働く毛細管力と第2の流体収容室内に働く毛細管力の差により、容器本体の開口部から流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、毛管現象により第1の流体収容室内の液体を第2の流体収容室内に流入させるとともに第2の流体収容室内の液体の第1の流体収容室内への流入を防止するのが好ましい。この場合、第2の流体収容室内に働く毛細管力は、第1の流体収容室内に働く毛細管力よりも大きくなっている。
【0016】
また、本発明による流体取扱装置は、装置本体と、この装置本体上に配列された複数の流体取扱ユニットとからなり、これらの流体取扱ユニットの各々が、上記の流体取扱ユニットであることを特徴とする。この流体取扱装置において、複数の流体取扱ユニットが、装置本体上にマトリックス状に配列されているのが好ましい。この場合、複数の流体取扱ユニットを装置本体と一体成形してもよい。また、装置本体が、枠体と、この枠体上に互いに略平行に配置された複数の支持体とからなり、これらの支持体の各々に複数の流体取扱ユニットが所定の間隔で一列に配置されているのが好ましい。この場合、複数の流体取扱ユニットを支持体と一体成形してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができる、流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置を提供することができる。
【0018】
また、流体取扱装置またはそれに用いる流体取扱ユニットにおいて、分析に使用する試薬や検体などが微量の場合でも、さらに分析精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明による流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1〜図9Bは、本発明による流体取扱ユニットおよびそれを流体取扱装置の実施の形態を示している。本実施の形態の流体取扱装置10は、例えば、タンパク質などの生体物質に代表される機能性物質などを含む試料を分析する装置として使用することができ、一般にマイクロウェルプレートと呼ばれる多検体の測定を目的とした試料分析装置として使用することができる。図1に示すように、この流体取扱装置10は、装置本体部12と、この装置本体部12にマトリックス状に配列して取り付けられた複数(本実施の形態では8×12の配列の96個)の流体取扱ユニット16とから構成されている。
【0021】
図1および図2に示すように、装置本体部12は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成されており、中央に略矩形の貫通穴11aが形成されて厚さが数mm程度で一辺の長さが数cm〜十数cm程度の大きさの略矩形の枠体11と、この枠体11に載置された複数(本実施の形態では12個)の流体取扱ユニット支持体13とから構成されている。なお、枠体11の貫通穴11aは、底面を備えた凹部でもよい。また、枠体11として、例えば、SBS(Society for Biomolecular Screening)規格のマイクロプレート用の枠体のような標準的な規格の枠体を使用してもよい。流体取扱ユニット支持体13は、透明材料により形成してもよいが、本実施の形態の流体取扱装置10を蛍光測定に使用する場合には、蛍光測定時のバックグラウンドの上昇を抑えるために、流体取扱ユニット支持体13が光を透過し難い部材(例えば、黒色の部材)からなるのが好ましい。
【0022】
図2に示すように、流体取扱ユニット支持体13の各々は、枠体11の貫通穴11aの幅と略等しい長さの略直方体の細長い支持体本体部13aと、この支持体本体部13aの上部の長手方向両端から突出して支持体本体部13aの上面に沿って延びる略矩形の一対の突出部13bとから構成されている。図1に示すように、流体取扱ユニット支持体13の各々の支持体本体部13aが枠体11の貫通穴11aに挿入されて、突出部13bが枠体11の長手方向に延びる一対の上面11bに支持されるように、枠体11上に流体取扱ユニット支持体13を互いに略平行に且つ隣接して載置することにより、装置本体部12が組み立てられる。
【0023】
図3および図4に示すように、流体取扱ユニット支持体13の各々の支持体本体部13aの上面には、直径および深さが数mm程度の複数(本実施の形態では8個)の略円柱形の凹部(以下、「取付用凹部」という)14が所定の間隔で一列に配置して形成されている。これらの取付用凹部14内には、図5に示すように、流体取扱ユニット16が取り付けられるようになっている。
【0024】
図6〜図9Bは、本実施の形態の流体取扱装置10の取付用凹部14内に取り付けられる流体取扱ユニット16を拡大して示している。図6は流体取扱装置10の取付用凹部14内に取り付けられた流体取扱ユニット16の平面図、図7は図6のVII−VII線断面図である。また、図8Aは本実施の形態の流体取扱装置10の流体取扱ユニット16の平面図、図8Bは図8AのVIIIB−VIIIB線断面図、図8Cは図8BのVIIIC−VIIIC線断面図、図8Dは図8Cの一部拡大図である。また、図9Aおよび図9Bは、流体取扱ユニット16内に少量の液体を導入した状態を示す図であり、図9Aは図8Aに対応する平面図、図9Bは図8Bに対応する断面図である。
【0025】
流体取扱ユニット16は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料により形成されており、図6〜図8Bに示すように、取付用凹部14の深さと略同一の高さを有し、一体に形成された外側大径円筒部16aと外側小径円筒部16bと内側円筒部16cとから構成されている。
【0026】
外側大径円筒部16aは、流体取扱ユニット16の半分程度の高さを有し、取付用凹部14の内径と略同一の外径を有する略円筒形の部分であり、流体取扱ユニット16を取付用凹部14内に挿入して取付用凹部14に取り付ける際に、取付用凹部14に嵌合して固定されるようになっている。この外側大径円筒部16aの下端部は、外側小径円筒部16bに向かって湾曲して内側下方に傾斜し、外側小径円筒部16bの上端部に一体に接続されている。
【0027】
外側小径円筒部16bは、流体取扱ユニット16の半分程度の高さを有し、外側大径円筒部16aより小さい外径を有する略円筒形の部分であり、外側大径円筒部16aと同一の軸線方向に延びている。この外側小径円筒部16bの下端部には、内側下方に傾斜した部分が形成され、この内側下方に傾斜した部分の下端から外側小径円筒部16bの軸線方向に対して略垂直方向に延びる底面部が設けられている。この外側小径円筒部16bの底面部の下面には、内側円筒部16cの内径と略等しい直径の凹部16eが形成されている。
【0028】
内側円筒部16cは、外側小径円筒部16bの底面部の上面から外側小径円筒部16bと同一の軸線方向に上方に延び、上端の高さが外側小径円筒部16bの上部よりも低く、外側小径円筒部16bの内径より小さい外径を有する略円筒形の部分である。この内側円筒部16cには、その下端から上端まで互いに略平行に略直線状に延びて内側円筒部16cを貫通する複数(本実施の形態では8本)のスリット16dが、所定の間隔で形成されている。これらのスリット16dの幅は、数μm〜数百μmであり、内側円筒部16cの外側よりも内側の方が広くなっている。
【0029】
なお、外側大径円筒部16a内には、液体試料などの流体を注入するための注入部26としての空間が形成され、外側小径円筒部16bと内側円筒部16cの間には、反応室として使用可能な略円環状の空間である(例えば、容量が約30μL以下の)外側流体収容室28が形成され、内側円筒部16c内には、測定室として使用可能な略円柱形の空間である内側流体収容室30が形成されている。
【0030】
注入部26から少量(例えば、約30μL以下)の試薬などの液体を注入すると、内側流体収容室30および外側流体収容室28の一方または両方に導入されるが、毛細管力による液面上昇高さはZ=2Tcosθ/γ・r(θ:接触角、T:表面張力、γ:液体比重、r:細管半径)で表されるので、内側流体収容室30内の液体に働く毛細管力よりも(内側流体収容室30の直径より幅の狭い)外側流体収容室28内の液体に働く毛細管力の方が大きいために、図9Aおよび図9Bに示すように、注入部26に注入された液体の大部分が毛管現象により外側流体収容室28内に引き込まれて参照符号32で示すように外側流体収容室28内に保持されるようになっている。したがって、内側円筒部16cに形成されるスリット16dの幅W1と、略円環状の外側流体収容室28の幅(外側小径円筒部16bの内径と内側円筒部16cの外径の差)W2は、注入部26に注入された液体の大部分が外側流体収容室28内に引き込まれるように適宜設定すればよい。
【0031】
なお、注入部26に注入された液体の大部分が外側流体収容室28内に溜まっている状態から、さらに液体を注入部26から注入して所定の量(例えば、約30μL)を超えると、その液体が内側円筒部16cの上端の開口部またはスリット16dを介して内側円筒部16c内に流入し、外側流体収容室28と内側円筒部16cの内部を満たして流体取扱ユニット16内の全体に広がることができるようになっている。
【0032】
このように、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、注入部26から少量の試薬などの液体を注入すると、注入部26に注入された液体の大部分が外側流体収容室28内に引き込まれるとともに外側流体収容室28内の周方向に流れて外側流体収容室28内に保持されるようになっているため、外側流体収容室28を反応室として使用して、少ない液量の試薬で検体を検出する場合にも、液面の高さを大幅に高くして反応壁面(外側流体収容室28の内壁面)の表面積を増大させることができるとともに、検体と反応壁面との距離を短くすることができるので、反応効率を向上させ、反応時間を短縮することができるとともに、使用する試薬の量を少なくしてコストを削減することができる。
【0033】
また、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、分析に使用する試薬が微量の場合でも、反応室としての外側流体収容室28内に安定して試薬を保持しておくことができるので、さらに分析精度を向上させることができる。また、入手可能な検体が微量であり、この検体を含む溶液の検体濃度が非常に低い場合には、従来のマイクロウェルプレートでは、溶液中の検体がウェルの壁面の反応部に到達することができないために安定した分析結果が得られない場合があるが、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、反応室としての外側流体収容室28内に安定して検体を導入することができるので、従来のマイクロウェルプレートよりも分析精度を向上させることができる。
【0034】
また、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、外側流体収容室28内に試薬を導入するために注入部26の内壁に沿って試薬を注入しなくても、注入部26から内側流体収容室30内に導入された試薬が外側流体収容室28内に引き込まれて外側流体収容室28内に保持されるので、試薬の注入位置によらず、試薬が外側流体収容室28内に自動的に移動して保持され、試薬の注入操作が容易になる。
【0035】
なお、本実施の形態の流体取扱ユニット16のように、スリット16dを内側円筒部16cの外側よりも内側の方が広くなるように形成すれば、外側流体収容室28内の液面をほぼ平らにすることができるとともに、注入部26から注入される試薬などの液体が少量(外側流体収容室28の容量以下の量)であっても、その液体が外側流体収容室28の内壁面に接触する面積が、複数の流体取扱ユニット16間や各測定間においてばらつくのを抑えることができる。
【0036】
さらに、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、注入部26から十分な量の洗浄液を注入して流体取扱ユニット16の内部(注入部26と外側流体収容室28と内側流体収容室30の内部)を満たした後に、洗浄液を容易に排出することができるので、洗浄性に優れ、測定の際のバックグラウンドを低くすることができる。また、内側円筒部16cの上端の高さが外側大径円筒部16aの上端よりも低くなっているため、注入部26から十分な量の洗浄液を注入して、除去したい成分を浮き上がらせてピペットなどで排出することができるので、内側円筒部16cの上端の高さを外側大径円筒部16aの上端と同じ高さにした場合よりも洗浄性に優れている。
【0037】
なお、本実施の形態の流体取扱ユニット16は、射出成形などによって一体成形することができるので、容易に製造することができる。また、本実施の形態の流体取扱装置10の変形例として、支持体13に所定の間隔で一列に配置された複数の流体取扱ユニット16を射出成形などによって一体成形してもよいし、あるいは、図12に示すように、流体取扱ユニット支持体を設けないで、プレート状の装置本体部212にマトリックス状に配列された複数の流体取扱ユニット16を射出成形などによって一体成形してもよい。
【0038】
図10Aおよび図10Bは、本実施の形態の流体取扱ユニット16の変形例を示している。この変形例の流体取扱ユニット116は、内側円筒部116cの上端面が内側下方に傾斜している点を除いて、流体取扱ユニット16と略同一の構成を有するので、同一の部分の参照符号に100を加えて、その説明を省略する。この変形例のように、内側円筒部116cの上端面を内側下方に傾斜させて傾斜面116fを形成すると、ピペットチップを用いて流体取扱ユニット16内に液体を注入する際にピペットチップの先端が内側円筒部116cの上端に当ってもピペットチップの先端が内側流体収容室130内に滑らかに導かれるので、ピペットチップの衝突によって内側円筒部116cが変形して破損するのを防止することができる。
【実施例】
【0039】
次に、本実施の形態の流体取扱ユニット16の実施例として、流体取扱ユニットを試料分析ユニットとして使用した例について説明する。
【0040】
まず、流体取扱ユニット16の注入部26から抗TNF−α抗体100μLを注入し、25℃で2時間保持して流体取扱ユニット16の内壁に捕捉抗体を固定化した。その後、注入部26から洗浄液(PBS−0.02% Tween 20)170μLを注入して排出することにより、流体取扱ユニット16の内部を洗浄した。
【0041】
次に、注入部26からブロッキング液(PBS−1%BSA)170μLを注入し、4℃で16時間保持して流体取扱ユニット16の内壁をブロッキングした後、ブロッキング液を排出した。
【0042】
次に、注入部26からTNF−α抗原100μLを注入し、25℃で1時間保持して抗原反応(検体反応)を行った。その後、注入部26から洗浄液(PBS−0.02% Tween 20)170μLを注入して排出することにより、流体取扱ユニット16の内部を洗浄した。
【0043】
次に、注入部26からビオチンラベルされた抗体100μLを注入し、25℃で1時間保持して検出抗体反応を行った。その後、注入部26から洗浄液(PBS−0.02% Tween 20)170μLを注入して排出することにより、流体取扱ユニット16の内部を洗浄した。
【0044】
次に、注入部26から酵素(HRP Peroxidase Streptavidin)100μLを注入し、25℃で20分間保持して酵素反応を行った。その後、注入部26から洗浄液(PBS−0.02% Tween 20)170μLを注入して排出することにより、流体取扱ユニット16の内部を洗浄した。
【0045】
次に、注入部26から基質(TMB)50μLを注入し、25℃で10分間保持して基質反応を行った後、注入部26から反応停止液(1NのHCl)50μLを注入して反応を停止させ、内側流体収容室30の長手方向(鉛直方向)に波長450nmの光を当てて、内側流体収容室30内の反応液の吸光度を測定した。
【0046】
また、比較例として、本実施の形態の流体取扱装置10の取付用凹部14と同様の略円柱形のウェルを用いて同様の測定を行った。
【0047】
その結果、図11に示すように、本実施の形態の流体取扱ユニット16を使用した実施例では、比較例と比べて吸光度が2倍以上になっており、比較例と同程度の液量(捕捉抗体、検体としての抗原、検出抗体などの液量)で測定強度を大幅に高めることができるとともに、比較例と比べて非常に少ない液量で同程度の測定強度が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による流体取扱装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1の流体取扱装置の装置本体の枠体と流体取扱ユニット支持体を示す斜視図である。
【図3】図2の流体取扱ユニット支持体を拡大して示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図2の流体取扱ユニット支持体に流体取扱ユニットを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】図1の流体取扱装置の取付用凹部内に取り付けられた流体取扱ユニットを示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8A】図1の流体取扱装置の流体取扱ユニットを示す平面図である。
【図8B】図8AのVIIIB−VIIIB線断面図である。
【図8C】図8BのVIIIC−VIIIC線断面図である。
【図8D】図8Cの一部拡大図である
【図9A】本実施の形態の流体取扱ユニットに少量の液体を導入した状態を示す図であり、図8Aに対応する平面図である
【図9B】本実施の形態の流体取扱ユニットに少量の液体を導入した状態を示す図であり、図8Bに対応する断面図である
【図10A】図8A〜図8Dの流体取扱ユニットの変形例を示す平面図である。
【図10B】図10AのXB−XB線断面図である。
【図11】実施例および比較例の吸光度の測定結果を示すグラフである。
【図12】本発明による流体取扱装置の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10…流体取扱装置、11…枠体、11a…貫通穴、11b…上面、12、212…装置本体部、13…流体取扱ユニット支持体、13a…支持体本体部、13b…突出部、14…取付用凹部、16、116…流体取扱ユニット、16a、116a…外側大径円筒部、16b、116b…外側小径円筒部、16c、116c…内側円筒部、16d、116d…スリット、16e、116e…凹部、26、126…注入部、28、128…外側流体収容部、30、130…内側流体収容部、32…液体、116f…傾斜面
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置に関し、特に、生体物質に代表される機能性物質などの試料を分析する試料分析装置として使用可能な流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンパク質などの生体物質を特異的に検出する方法として、特定の生体物質に対する抗体を用いて抗原抗体反応を起こさせ、その反応物を視覚的に認識または分光学的に測定することによってその生体物質を検出する様々な方法が知られている。
【0003】
現在、タンパク質などの生体物質の抗原抗体反応による反応物を定量する方法として、ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)(酵素結合免疫吸着検定法)などの方法が広く採用されている。これらの方法では、一般にマイクロウェル(以下「ウェル」という)と呼ばれる多数の微小凹部の配列が形成されたマイクロウェルプレートと呼ばれる試料分析装置を使用し、目的物質である特定の生体物質に対する抗体を捕体としてウェルの壁面にコートし、この捕体によって目的物質を捕捉し、目的物質と抗体との間の抗原抗体反応による反応物を蛍光や発光試薬などにより測定することによって目的物質を検出する。
【0004】
一般に、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた方法では、目的物質を含む検体や抗体試薬などの液体を反応液としてウェル内に満たして反応させている。この反応は、ウェル内に満たされた液体中の成分が分子拡散によって移動し、ウェルの底面や内壁に達したときに初めて起こる。そのため、マイクロウェルプレートを静置した場合には、理論的な反応時間は、ウェル内に満たされた液体中の成分の拡散時間に依存している。液体中の分子は、周囲の分子と衝突しながら移動しているため、その拡散の速さは非常に遅く、目的物質が分子量7万程度のタンパク質である場合には、希薄な水溶液の状態(室温)で0.5〜1×10−6cm2/秒程度である。そのため、ウェル内の液体中において、ウェルの底面や内壁から離れた位置にある目的物質は、実用的な測定時間内ではほとんど反応することができない。また、マイクロウェルプレートでは、反応効率を向上させるために、反応部であるウェル内の底面や壁面を反応液と万遍なく接触させることが有効であるので、反応に必要な量の液体に比べて、より多くの量の液体が必要になる。
【0005】
このように、ELISAなどのマイクロウェルプレートを用いた従来の方法では、抗原抗体反応が捕捉用抗体をコートしたウェルの壁面のみで進行するため、ウェルに加えた液体中に含まれる目的物質、抗体、基質などがウェル内で浮遊、還流、沈下してウェルの壁面に到達した後に反応するまで放置しなければならず、反応効率が悪いという問題がある。また、多数のウェルに細分化されているマイクロウェルプレートでは、各々のウェルに加える液体の量が制限されているので、測定感度が低下するという問題もある。
【0006】
また、ELISAなどの方法において測定感度の向上や測定時間の短縮を図るために、反応面(捕捉面)となるウェルの底面に微細な凹凸を設けることによって、反応面の表面積を大きくして測定感度を高めることができるマイクロプレートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、マイクロチップのマイクロチャネル内に反応固相として固体微粒子(ビーズ)を配置させることにより、反応面の表面積を増大して、微小空間における反応効率を高めることができるマイクロチップも提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、各ウェルの底面部の中央に小径の凹部を設けることにより、反応面の表面積を増大し且つ試料を節約することができるマイクロプレートも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平9−159673号公報(段落番号0009−0010)
【特許文献2】特開2001−4628号公報(段落番号0005−0006)
【特許文献3】特開平9−101302号公報(段落番号0010−0011)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に提案されたマイクロプレートは、測定感度を向上させることができるが、反応効率を向上させることができないという問題がある。また、特許文献2に提案されたマイクロチップは、一般にELISAなどの方法に使用されるマイクロウェルプレートではなく、マイクロチャネル構造のマイクロチップであるため、反応効率を向上させることができるものの、多検体の測定に適していない。さらに、特許文献3に提案されたマイクロプレートは、ある程度反応面の表面積を増大して反応効率や測定感度を向上させることができるものの、反応効率や測定感度の向上は十分ではない。
【0009】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができる、流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記の流体取扱装置またはそれに用いる流体取扱ユニットにおいて、分析に使用する試薬や検体などが微量の場合でも、さらに分析精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による流体取扱ユニットは、内部に流体収容部を形成するための底面部と側面部を備えるとともに上端に開口部を有する容器本体と、この容器本体の底面部から立設されて容器本体の流体収容部を第1の流体収容室と第2の流体収容室に仕切る仕切り壁部と、この仕切り壁部を貫通して第1の流体収容室と第2の流体収容室の間を連通させる連通路とを備え、連通路は、第1の流体収容室および第2の流体収容室と協働して、容器本体の開口部から流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、毛管現象により第1の流体収容室内の液体を第2の流体収容室内に流入させるとともに第2の流体収容室内の液体の第1の流体収容室内への流入を防止し、容器本体の開口部から流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えると、第2の流体収容室内の液体の第1の流体収容室内への流入を許容することを特徴とする。
【0012】
この流体取扱ユニットにおいて、仕切り壁部の高さが容器本体部の側面部よりも低いのが好ましく、連通路が、仕切り壁部を貫通して仕切り壁部の下端から上端まで延びるように形成された1つまたは複数のスリットであるのが好ましい。
【0013】
また、上記の流体取扱ユニットにおいて、第1の流体収容室が第2の流体収容室に取り囲まれているのが好ましい。この場合、容器本体部が略円筒形の形状を有し、仕切り壁部が容器本体部と略同軸に形成された略円筒形の形状を有するのが好ましく、容器本体部が、略円筒形の大径部と、この大径部の下に配置された小径の略円筒形の小径部を有し、この小径部の内側に仕切り壁部が配置されているのが好ましい。また、連通路が複数のスリットであり、これらの複数のスリットが仕切り壁部の周方向に一定の間隔で離間して形成されているのが好ましく、仕切り壁部の上端面が内側下方に傾斜しているのが好ましい。
【0014】
また、上記の流体取扱ユニットにおいて、第2の流体収容室の底面部が、第1の流体収容室に向かうにしたがって下方に傾斜し、第2の流体収容室の底面部の最も低い部分の高さが、第1の流体収容室の高さと略同一の高さであるのが好ましい。また、スリットの幅が、第2の流体収容室側よりも第1の流体収容室側の方が広くなっているのが好ましい。また、容器本体の開口部から流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、第1の流体収容室内の液体の大部分が第2の流体収容室内に流入するのが好ましい。さらに、流体取扱ユニットが一体成形されているのが好ましい。
【0015】
また、上記の流体取扱ユニットにおいて、連通路は、第1の流体収容室内に働く毛細管力と第2の流体収容室内に働く毛細管力の差により、容器本体の開口部から流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、毛管現象により第1の流体収容室内の液体を第2の流体収容室内に流入させるとともに第2の流体収容室内の液体の第1の流体収容室内への流入を防止するのが好ましい。この場合、第2の流体収容室内に働く毛細管力は、第1の流体収容室内に働く毛細管力よりも大きくなっている。
【0016】
また、本発明による流体取扱装置は、装置本体と、この装置本体上に配列された複数の流体取扱ユニットとからなり、これらの流体取扱ユニットの各々が、上記の流体取扱ユニットであることを特徴とする。この流体取扱装置において、複数の流体取扱ユニットが、装置本体上にマトリックス状に配列されているのが好ましい。この場合、複数の流体取扱ユニットを装置本体と一体成形してもよい。また、装置本体が、枠体と、この枠体上に互いに略平行に配置された複数の支持体とからなり、これらの支持体の各々に複数の流体取扱ユニットが所定の間隔で一列に配置されているのが好ましい。この場合、複数の流体取扱ユニットを支持体と一体成形してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多検体の測定を行う試料分析装置として使用した場合に、簡単な構造で反応効率および測定感度を向上させ且つ反応時間および測定時間を短縮することができる、流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置を提供することができる。
【0018】
また、流体取扱装置またはそれに用いる流体取扱ユニットにおいて、分析に使用する試薬や検体などが微量の場合でも、さらに分析精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明による流体取扱ユニットおよびそれを用いた流体取扱装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1〜図9Bは、本発明による流体取扱ユニットおよびそれを流体取扱装置の実施の形態を示している。本実施の形態の流体取扱装置10は、例えば、タンパク質などの生体物質に代表される機能性物質などを含む試料を分析する装置として使用することができ、一般にマイクロウェルプレートと呼ばれる多検体の測定を目的とした試料分析装置として使用することができる。図1に示すように、この流体取扱装置10は、装置本体部12と、この装置本体部12にマトリックス状に配列して取り付けられた複数(本実施の形態では8×12の配列の96個)の流体取扱ユニット16とから構成されている。
【0021】
図1および図2に示すように、装置本体部12は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料またはガラス材料により形成されており、中央に略矩形の貫通穴11aが形成されて厚さが数mm程度で一辺の長さが数cm〜十数cm程度の大きさの略矩形の枠体11と、この枠体11に載置された複数(本実施の形態では12個)の流体取扱ユニット支持体13とから構成されている。なお、枠体11の貫通穴11aは、底面を備えた凹部でもよい。また、枠体11として、例えば、SBS(Society for Biomolecular Screening)規格のマイクロプレート用の枠体のような標準的な規格の枠体を使用してもよい。流体取扱ユニット支持体13は、透明材料により形成してもよいが、本実施の形態の流体取扱装置10を蛍光測定に使用する場合には、蛍光測定時のバックグラウンドの上昇を抑えるために、流体取扱ユニット支持体13が光を透過し難い部材(例えば、黒色の部材)からなるのが好ましい。
【0022】
図2に示すように、流体取扱ユニット支持体13の各々は、枠体11の貫通穴11aの幅と略等しい長さの略直方体の細長い支持体本体部13aと、この支持体本体部13aの上部の長手方向両端から突出して支持体本体部13aの上面に沿って延びる略矩形の一対の突出部13bとから構成されている。図1に示すように、流体取扱ユニット支持体13の各々の支持体本体部13aが枠体11の貫通穴11aに挿入されて、突出部13bが枠体11の長手方向に延びる一対の上面11bに支持されるように、枠体11上に流体取扱ユニット支持体13を互いに略平行に且つ隣接して載置することにより、装置本体部12が組み立てられる。
【0023】
図3および図4に示すように、流体取扱ユニット支持体13の各々の支持体本体部13aの上面には、直径および深さが数mm程度の複数(本実施の形態では8個)の略円柱形の凹部(以下、「取付用凹部」という)14が所定の間隔で一列に配置して形成されている。これらの取付用凹部14内には、図5に示すように、流体取扱ユニット16が取り付けられるようになっている。
【0024】
図6〜図9Bは、本実施の形態の流体取扱装置10の取付用凹部14内に取り付けられる流体取扱ユニット16を拡大して示している。図6は流体取扱装置10の取付用凹部14内に取り付けられた流体取扱ユニット16の平面図、図7は図6のVII−VII線断面図である。また、図8Aは本実施の形態の流体取扱装置10の流体取扱ユニット16の平面図、図8Bは図8AのVIIIB−VIIIB線断面図、図8Cは図8BのVIIIC−VIIIC線断面図、図8Dは図8Cの一部拡大図である。また、図9Aおよび図9Bは、流体取扱ユニット16内に少量の液体を導入した状態を示す図であり、図9Aは図8Aに対応する平面図、図9Bは図8Bに対応する断面図である。
【0025】
流体取扱ユニット16は、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの樹脂材料により形成されており、図6〜図8Bに示すように、取付用凹部14の深さと略同一の高さを有し、一体に形成された外側大径円筒部16aと外側小径円筒部16bと内側円筒部16cとから構成されている。
【0026】
外側大径円筒部16aは、流体取扱ユニット16の半分程度の高さを有し、取付用凹部14の内径と略同一の外径を有する略円筒形の部分であり、流体取扱ユニット16を取付用凹部14内に挿入して取付用凹部14に取り付ける際に、取付用凹部14に嵌合して固定されるようになっている。この外側大径円筒部16aの下端部は、外側小径円筒部16bに向かって湾曲して内側下方に傾斜し、外側小径円筒部16bの上端部に一体に接続されている。
【0027】
外側小径円筒部16bは、流体取扱ユニット16の半分程度の高さを有し、外側大径円筒部16aより小さい外径を有する略円筒形の部分であり、外側大径円筒部16aと同一の軸線方向に延びている。この外側小径円筒部16bの下端部には、内側下方に傾斜した部分が形成され、この内側下方に傾斜した部分の下端から外側小径円筒部16bの軸線方向に対して略垂直方向に延びる底面部が設けられている。この外側小径円筒部16bの底面部の下面には、内側円筒部16cの内径と略等しい直径の凹部16eが形成されている。
【0028】
内側円筒部16cは、外側小径円筒部16bの底面部の上面から外側小径円筒部16bと同一の軸線方向に上方に延び、上端の高さが外側小径円筒部16bの上部よりも低く、外側小径円筒部16bの内径より小さい外径を有する略円筒形の部分である。この内側円筒部16cには、その下端から上端まで互いに略平行に略直線状に延びて内側円筒部16cを貫通する複数(本実施の形態では8本)のスリット16dが、所定の間隔で形成されている。これらのスリット16dの幅は、数μm〜数百μmであり、内側円筒部16cの外側よりも内側の方が広くなっている。
【0029】
なお、外側大径円筒部16a内には、液体試料などの流体を注入するための注入部26としての空間が形成され、外側小径円筒部16bと内側円筒部16cの間には、反応室として使用可能な略円環状の空間である(例えば、容量が約30μL以下の)外側流体収容室28が形成され、内側円筒部16c内には、測定室として使用可能な略円柱形の空間である内側流体収容室30が形成されている。
【0030】
注入部26から少量(例えば、約30μL以下)の試薬などの液体を注入すると、内側流体収容室30および外側流体収容室28の一方または両方に導入されるが、毛細管力による液面上昇高さはZ=2Tcosθ/γ・r(θ:接触角、T:表面張力、γ:液体比重、r:細管半径)で表されるので、内側流体収容室30内の液体に働く毛細管力よりも(内側流体収容室30の直径より幅の狭い)外側流体収容室28内の液体に働く毛細管力の方が大きいために、図9Aおよび図9Bに示すように、注入部26に注入された液体の大部分が毛管現象により外側流体収容室28内に引き込まれて参照符号32で示すように外側流体収容室28内に保持されるようになっている。したがって、内側円筒部16cに形成されるスリット16dの幅W1と、略円環状の外側流体収容室28の幅(外側小径円筒部16bの内径と内側円筒部16cの外径の差)W2は、注入部26に注入された液体の大部分が外側流体収容室28内に引き込まれるように適宜設定すればよい。
【0031】
なお、注入部26に注入された液体の大部分が外側流体収容室28内に溜まっている状態から、さらに液体を注入部26から注入して所定の量(例えば、約30μL)を超えると、その液体が内側円筒部16cの上端の開口部またはスリット16dを介して内側円筒部16c内に流入し、外側流体収容室28と内側円筒部16cの内部を満たして流体取扱ユニット16内の全体に広がることができるようになっている。
【0032】
このように、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、注入部26から少量の試薬などの液体を注入すると、注入部26に注入された液体の大部分が外側流体収容室28内に引き込まれるとともに外側流体収容室28内の周方向に流れて外側流体収容室28内に保持されるようになっているため、外側流体収容室28を反応室として使用して、少ない液量の試薬で検体を検出する場合にも、液面の高さを大幅に高くして反応壁面(外側流体収容室28の内壁面)の表面積を増大させることができるとともに、検体と反応壁面との距離を短くすることができるので、反応効率を向上させ、反応時間を短縮することができるとともに、使用する試薬の量を少なくしてコストを削減することができる。
【0033】
また、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、分析に使用する試薬が微量の場合でも、反応室としての外側流体収容室28内に安定して試薬を保持しておくことができるので、さらに分析精度を向上させることができる。また、入手可能な検体が微量であり、この検体を含む溶液の検体濃度が非常に低い場合には、従来のマイクロウェルプレートでは、溶液中の検体がウェルの壁面の反応部に到達することができないために安定した分析結果が得られない場合があるが、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、反応室としての外側流体収容室28内に安定して検体を導入することができるので、従来のマイクロウェルプレートよりも分析精度を向上させることができる。
【0034】
また、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、外側流体収容室28内に試薬を導入するために注入部26の内壁に沿って試薬を注入しなくても、注入部26から内側流体収容室30内に導入された試薬が外側流体収容室28内に引き込まれて外側流体収容室28内に保持されるので、試薬の注入位置によらず、試薬が外側流体収容室28内に自動的に移動して保持され、試薬の注入操作が容易になる。
【0035】
なお、本実施の形態の流体取扱ユニット16のように、スリット16dを内側円筒部16cの外側よりも内側の方が広くなるように形成すれば、外側流体収容室28内の液面をほぼ平らにすることができるとともに、注入部26から注入される試薬などの液体が少量(外側流体収容室28の容量以下の量)であっても、その液体が外側流体収容室28の内壁面に接触する面積が、複数の流体取扱ユニット16間や各測定間においてばらつくのを抑えることができる。
【0036】
さらに、本実施の形態の流体取扱ユニット16では、注入部26から十分な量の洗浄液を注入して流体取扱ユニット16の内部(注入部26と外側流体収容室28と内側流体収容室30の内部)を満たした後に、洗浄液を容易に排出することができるので、洗浄性に優れ、測定の際のバックグラウンドを低くすることができる。また、内側円筒部16cの上端の高さが外側大径円筒部16aの上端よりも低くなっているため、注入部26から十分な量の洗浄液を注入して、除去したい成分を浮き上がらせてピペットなどで排出することができるので、内側円筒部16cの上端の高さを外側大径円筒部16aの上端と同じ高さにした場合よりも洗浄性に優れている。
【0037】
なお、本実施の形態の流体取扱ユニット16は、射出成形などによって一体成形することができるので、容易に製造することができる。また、本実施の形態の流体取扱装置10の変形例として、支持体13に所定の間隔で一列に配置された複数の流体取扱ユニット16を射出成形などによって一体成形してもよいし、あるいは、図12に示すように、流体取扱ユニット支持体を設けないで、プレート状の装置本体部212にマトリックス状に配列された複数の流体取扱ユニット16を射出成形などによって一体成形してもよい。
【0038】
図10Aおよび図10Bは、本実施の形態の流体取扱ユニット16の変形例を示している。この変形例の流体取扱ユニット116は、内側円筒部116cの上端面が内側下方に傾斜している点を除いて、流体取扱ユニット16と略同一の構成を有するので、同一の部分の参照符号に100を加えて、その説明を省略する。この変形例のように、内側円筒部116cの上端面を内側下方に傾斜させて傾斜面116fを形成すると、ピペットチップを用いて流体取扱ユニット16内に液体を注入する際にピペットチップの先端が内側円筒部116cの上端に当ってもピペットチップの先端が内側流体収容室130内に滑らかに導かれるので、ピペットチップの衝突によって内側円筒部116cが変形して破損するのを防止することができる。
【実施例】
【0039】
次に、本実施の形態の流体取扱ユニット16の実施例として、流体取扱ユニットを試料分析ユニットとして使用した例について説明する。
【0040】
まず、流体取扱ユニット16の注入部26から抗TNF−α抗体100μLを注入し、25℃で2時間保持して流体取扱ユニット16の内壁に捕捉抗体を固定化した。その後、注入部26から洗浄液(PBS−0.02% Tween 20)170μLを注入して排出することにより、流体取扱ユニット16の内部を洗浄した。
【0041】
次に、注入部26からブロッキング液(PBS−1%BSA)170μLを注入し、4℃で16時間保持して流体取扱ユニット16の内壁をブロッキングした後、ブロッキング液を排出した。
【0042】
次に、注入部26からTNF−α抗原100μLを注入し、25℃で1時間保持して抗原反応(検体反応)を行った。その後、注入部26から洗浄液(PBS−0.02% Tween 20)170μLを注入して排出することにより、流体取扱ユニット16の内部を洗浄した。
【0043】
次に、注入部26からビオチンラベルされた抗体100μLを注入し、25℃で1時間保持して検出抗体反応を行った。その後、注入部26から洗浄液(PBS−0.02% Tween 20)170μLを注入して排出することにより、流体取扱ユニット16の内部を洗浄した。
【0044】
次に、注入部26から酵素(HRP Peroxidase Streptavidin)100μLを注入し、25℃で20分間保持して酵素反応を行った。その後、注入部26から洗浄液(PBS−0.02% Tween 20)170μLを注入して排出することにより、流体取扱ユニット16の内部を洗浄した。
【0045】
次に、注入部26から基質(TMB)50μLを注入し、25℃で10分間保持して基質反応を行った後、注入部26から反応停止液(1NのHCl)50μLを注入して反応を停止させ、内側流体収容室30の長手方向(鉛直方向)に波長450nmの光を当てて、内側流体収容室30内の反応液の吸光度を測定した。
【0046】
また、比較例として、本実施の形態の流体取扱装置10の取付用凹部14と同様の略円柱形のウェルを用いて同様の測定を行った。
【0047】
その結果、図11に示すように、本実施の形態の流体取扱ユニット16を使用した実施例では、比較例と比べて吸光度が2倍以上になっており、比較例と同程度の液量(捕捉抗体、検体としての抗原、検出抗体などの液量)で測定強度を大幅に高めることができるとともに、比較例と比べて非常に少ない液量で同程度の測定強度が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による流体取扱装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1の流体取扱装置の装置本体の枠体と流体取扱ユニット支持体を示す斜視図である。
【図3】図2の流体取扱ユニット支持体を拡大して示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図2の流体取扱ユニット支持体に流体取扱ユニットを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図6】図1の流体取扱装置の取付用凹部内に取り付けられた流体取扱ユニットを示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8A】図1の流体取扱装置の流体取扱ユニットを示す平面図である。
【図8B】図8AのVIIIB−VIIIB線断面図である。
【図8C】図8BのVIIIC−VIIIC線断面図である。
【図8D】図8Cの一部拡大図である
【図9A】本実施の形態の流体取扱ユニットに少量の液体を導入した状態を示す図であり、図8Aに対応する平面図である
【図9B】本実施の形態の流体取扱ユニットに少量の液体を導入した状態を示す図であり、図8Bに対応する断面図である
【図10A】図8A〜図8Dの流体取扱ユニットの変形例を示す平面図である。
【図10B】図10AのXB−XB線断面図である。
【図11】実施例および比較例の吸光度の測定結果を示すグラフである。
【図12】本発明による流体取扱装置の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10…流体取扱装置、11…枠体、11a…貫通穴、11b…上面、12、212…装置本体部、13…流体取扱ユニット支持体、13a…支持体本体部、13b…突出部、14…取付用凹部、16、116…流体取扱ユニット、16a、116a…外側大径円筒部、16b、116b…外側小径円筒部、16c、116c…内側円筒部、16d、116d…スリット、16e、116e…凹部、26、126…注入部、28、128…外側流体収容部、30、130…内側流体収容部、32…液体、116f…傾斜面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体収容部を形成するための底面部と側面部を備えるとともに上端に開口部を有する容器本体と、この容器本体の底面部から立設されて前記容器本体の流体収容部を第1の流体収容室と第2の流体収容室に仕切る仕切り壁部と、この仕切り壁部を貫通して前記第1の流体収容室と前記第2の流体収容室の間を連通させる連通路とを備え、
前記連通路は、前記第1の流体収容室および前記第2の流体収容室と協働して、前記容器本体の開口部から前記流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、毛管現象により前記第1の流体収容室内の液体を前記第2の流体収容室内に流入させるとともに前記第2の流体収容室内の液体の前記第1の流体収容室内への流入を防止し、前記容器本体の開口部から前記流体収容部に導入される液体の量が前記所定の量を超えると、前記第2の流体収容室内の液体の前記第1の流体収容室内への流入を許容することを特徴とする、流体取扱ユニット。
【請求項2】
前記仕切り壁部の高さが前記容器本体部の側面部よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載の流体取扱ユニット。
【請求項3】
前記連通路が、前記仕切り壁部を貫通して前記仕切り壁部の下端から上端まで延びるように形成された1つまたは複数のスリットであることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体取扱ユニット。
【請求項4】
前記第1の流体収容室が前記第2の流体収容室に取り囲まれていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項5】
前記容器本体部が略円筒形の形状を有し、前記仕切り壁部が前記容器本体部と略同軸に形成された略円筒形の形状を有することを特徴とする、請求項4に記載の流体取扱ユニット。
【請求項6】
前記容器本体部が、略円筒形の大径部と、この大径部の下に配置された小径の略円筒形の小径部を有し、この小径部の内側に前記仕切り壁部が配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の流体取扱ユニット。
【請求項7】
前記連通路が前記複数のスリットであり、これらの複数のスリットが前記仕切り壁部の周方向に一定の間隔で離間して形成されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の流体取扱ユニット。
【請求項8】
前記仕切り壁部の上端面が内側下方に傾斜していることを特徴とする、請求項4乃至7のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項9】
前記第2の流体収容室の底面部が、前記第1の流体収容室に向かうにしたがって下方に傾斜し、前記第2の流体収容室の底面部の最も低い部分の高さが、前記第1の流体収容室の高さと略同一の高さであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項10】
前記スリットの幅が、前記第2の流体収容室側よりも前記第1の流体収容室側の方が広くなっていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項11】
前記容器本体の開口部から前記流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、前記第1の流体収容室内の液体の大部分が前記第2の流体収容室内に流入することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項12】
前記流体取扱ユニットが一体成形されていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項13】
前記連通路は、前記第1の流体収容室内に働く毛細管力と前記第2の流体収容室内に働く毛細管力の差により、前記容器本体の開口部から前記流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、毛管現象により前記第1の流体収容室内の液体を前記第2の流体収容室内に流入させるとともに前記第2の流体収容室内の液体の前記第1の流体収容室内への流入を防止することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項14】
前記第2の流体収容室内に働く毛細管力が、前記第1の流体収容室内に働く毛細管力よりも大きいことを特徴とする、請求項13に記載の流体取扱ユニット。
【請求項15】
装置本体と、この装置本体上に配列された複数の流体取扱ユニットとからなり、これらの流体取扱ユニットの各々が、請求項1乃至14のいずれかに記載の流体取扱ユニットであることを特徴とする、流体取扱装置。
【請求項16】
前記複数の流体取扱ユニットが、前記装置本体上にマトリックス状に配列されていることを特徴とする、請求項15に記載の流体取扱装置。
【請求項17】
前記複数の流体取扱ユニットが、前記装置本体と一体成形されていることを特徴とする、請求項15または16に記載の流体取扱装置。
【請求項18】
前記装置本体が、枠体と、この枠体上に互いに略平行に配置された複数の支持体とからなり、これらの支持体の各々に前記複数の流体取扱ユニットが所定の間隔で一列に配置されていることを特徴とする、請求項15または16に記載の流体取扱装置。
【請求項19】
前記複数の流体取扱ユニットが、前記支持体と一体成形されていることを特徴とする、請求項18に記載の流体取扱装置。
【請求項1】
内部に流体収容部を形成するための底面部と側面部を備えるとともに上端に開口部を有する容器本体と、この容器本体の底面部から立設されて前記容器本体の流体収容部を第1の流体収容室と第2の流体収容室に仕切る仕切り壁部と、この仕切り壁部を貫通して前記第1の流体収容室と前記第2の流体収容室の間を連通させる連通路とを備え、
前記連通路は、前記第1の流体収容室および前記第2の流体収容室と協働して、前記容器本体の開口部から前記流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、毛管現象により前記第1の流体収容室内の液体を前記第2の流体収容室内に流入させるとともに前記第2の流体収容室内の液体の前記第1の流体収容室内への流入を防止し、前記容器本体の開口部から前記流体収容部に導入される液体の量が前記所定の量を超えると、前記第2の流体収容室内の液体の前記第1の流体収容室内への流入を許容することを特徴とする、流体取扱ユニット。
【請求項2】
前記仕切り壁部の高さが前記容器本体部の側面部よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載の流体取扱ユニット。
【請求項3】
前記連通路が、前記仕切り壁部を貫通して前記仕切り壁部の下端から上端まで延びるように形成された1つまたは複数のスリットであることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体取扱ユニット。
【請求項4】
前記第1の流体収容室が前記第2の流体収容室に取り囲まれていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項5】
前記容器本体部が略円筒形の形状を有し、前記仕切り壁部が前記容器本体部と略同軸に形成された略円筒形の形状を有することを特徴とする、請求項4に記載の流体取扱ユニット。
【請求項6】
前記容器本体部が、略円筒形の大径部と、この大径部の下に配置された小径の略円筒形の小径部を有し、この小径部の内側に前記仕切り壁部が配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の流体取扱ユニット。
【請求項7】
前記連通路が前記複数のスリットであり、これらの複数のスリットが前記仕切り壁部の周方向に一定の間隔で離間して形成されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の流体取扱ユニット。
【請求項8】
前記仕切り壁部の上端面が内側下方に傾斜していることを特徴とする、請求項4乃至7のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項9】
前記第2の流体収容室の底面部が、前記第1の流体収容室に向かうにしたがって下方に傾斜し、前記第2の流体収容室の底面部の最も低い部分の高さが、前記第1の流体収容室の高さと略同一の高さであることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項10】
前記スリットの幅が、前記第2の流体収容室側よりも前記第1の流体収容室側の方が広くなっていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項11】
前記容器本体の開口部から前記流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、前記第1の流体収容室内の液体の大部分が前記第2の流体収容室内に流入することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項12】
前記流体取扱ユニットが一体成形されていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項13】
前記連通路は、前記第1の流体収容室内に働く毛細管力と前記第2の流体収容室内に働く毛細管力の差により、前記容器本体の開口部から前記流体収容部に導入される液体の量が所定の量を超えるまでは、毛管現象により前記第1の流体収容室内の液体を前記第2の流体収容室内に流入させるとともに前記第2の流体収容室内の液体の前記第1の流体収容室内への流入を防止することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載の流体取扱ユニット。
【請求項14】
前記第2の流体収容室内に働く毛細管力が、前記第1の流体収容室内に働く毛細管力よりも大きいことを特徴とする、請求項13に記載の流体取扱ユニット。
【請求項15】
装置本体と、この装置本体上に配列された複数の流体取扱ユニットとからなり、これらの流体取扱ユニットの各々が、請求項1乃至14のいずれかに記載の流体取扱ユニットであることを特徴とする、流体取扱装置。
【請求項16】
前記複数の流体取扱ユニットが、前記装置本体上にマトリックス状に配列されていることを特徴とする、請求項15に記載の流体取扱装置。
【請求項17】
前記複数の流体取扱ユニットが、前記装置本体と一体成形されていることを特徴とする、請求項15または16に記載の流体取扱装置。
【請求項18】
前記装置本体が、枠体と、この枠体上に互いに略平行に配置された複数の支持体とからなり、これらの支持体の各々に前記複数の流体取扱ユニットが所定の間隔で一列に配置されていることを特徴とする、請求項15または16に記載の流体取扱装置。
【請求項19】
前記複数の流体取扱ユニットが、前記支持体と一体成形されていることを特徴とする、請求項18に記載の流体取扱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−2927(P2009−2927A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9997(P2008−9997)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】
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