説明

流体吐出用コネクタユニットおよび流体供給システム

【課題】 プリンタ用インク供給システム等の流体供給システムにおいて、単位時間当たりの流体吐出量を多くすることができ、容器内の流体残量が少なく、しかも容器交換時に流体の漏れを生じるおそれがないようにする。
【解決手段】 インク供給用コネクタユニットは、インクが充填された容器1の吐出口13に取り付けられ容器の内外両側に開口した貫通孔21を有する雌コネクタ2と、貫通孔に挿入され、内部に軸方向にのびるインク通路31を有し先端付近にインク通路に通じるインク導入孔32を有する雄コネクタ3と、貫通孔に挿入された雄コネクタで押されることにより貫通孔の内側開口21aから離れて同開口を開放し、貫通孔から雄コネクタが抜かれることにより貫通孔の内側開口を再封止するプラグ4とを備える。雄コネクタに、インク吐出時に容器内に置換用空気を導入するための空気取り入れ口30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が充填された容器から流体を吐出するのに用いられるコネクタユニットに関し、特に、工業用のインクジェットプリンタにおいて容器に充填されたインクをタンクに供給する際に好適に用いられる流体吐出用コネクタユニットに関する。
また、本発明は、上記コネクタユニットを使用した流体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、工業用のインクジェットプリンタのインク供給システムとして、インクが充填されかつ吐出口にゴム栓が嵌め込まれたインク容器と、ゴム栓に刺し込まれる中空針を一端に有しかつ他端がタンク内に位置するインク供給管とを備えたものが、従来より知られている(特許文献1参照)。
上記のインク供給システムにおいては、インク容器のゴム栓にインク供給管の中空針を刺すと、容器内のインクが中空針からインク供給管内を通ってタンクに供給されるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記のインク供給システムの場合、内径の小さい中空針を使用しているため、単位時間当たりのインクの吐出量が少なく、特に大容量のインク容器から吐出させる場合には吐出時間が長くなるという問題が生じる。
また、上記システムにおいては、ある程度の量のインクが吐出されると容器内が負圧となって、吐出がスムーズに行われなかったり、吐出が停止してしまうことがあり、容器内に多量のインクが残ってしまうという問題があった。
さらに、上記のシステムによれば、インクの吐出が終了した後、ゴム栓から中空針を引き抜いてインク容器を交換するが、ゴム栓の密閉性はそれ程高くないため、容器交換時にゴム栓から残留インクが漏れることがあった。
【特許文献1】特開2002−29041号公報
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、プリンタ用インク供給システム等の流体供給システムにおいて、単位時間当たりの流体吐出量を多くすることができ、容器内の流体残量が少なく、しかも容器交換時に流体の漏れを生じるおそれがないようにすることにある。
【0005】
上記の目的を達成する手段として、本発明は、以下のような流体吐出用コネクタユニットを提供するものである。
即ち、本発明による流体吐出用コネクタユニットは、流体が充填される容器の吐出口に取り付けられかつ容器の内外両側に開口した貫通孔を有する雌コネクタと、貫通孔に挿入され、内部に軸方向にのびる流体通路を有しかつ先端付近に流体通路に通じる流体導入孔を有する雄コネクタと、貫通孔に挿入された雄コネクタで押されることにより貫通孔の内側開口から離れて同開口を開放し、貫通孔から雄コネクタが抜かれることにより貫通孔の内側開口を再封止するプラグとを備え、雄コネクタに、流体吐出時に容器内に置換用空気を導入するための空気取り入れ口が形成されているものである。
【0006】
本発明の流体吐出用コネクタユニットにおいては、流体が充填された容器の吐出口に取り付けられている雌コネクタに雄コネクタを挿入すると、プラグが貫通孔の内側開口から離れて同開口を開放し、それによって容器内の流体が雄コネクタを介して吐出される。ここで、雄コネクタ内の流体通路の径は、雌コネクタの内径、ひいては容器の吐出口の口径に応じて比較的大きく設定することができる。従って、本発明の流体吐出用コネクタユニットによれば、中空針を使用していた従来技術と比べて、単位時間当たりの流体吐出量が大幅に増加し、従って、例えば大容量の容器から流体を吐出させる場合であっても、吐出時間を短縮することが可能となる。
また、本発明の流体吐出用コネクタユニットによれば、流体の吐出中において容器内に負圧が生じると、空気取り入れ口から雄コネクタを経て容器内に置換用空気が導入され、それによって容器内の負圧が解消されるので、流体の吐出が最後までスムーズに行われ、容器内の流体残量を減らすことができる。しかも、本発明によるコネクタユニットの場合、空気取り入れ口が雄コネクタに設けられていて、使用者は、雌コネクタに雄コネクタを挿入すること以外には特別な操作を行う必要がないため、使い勝手が良く、誰でも簡単に流体の吐出作業を行うことができる。
さらに、本発明の流体吐出用コネクタユニットによれば、流体の吐出が終了した時点で雌コネクタから雄コネクタを抜くことにより、使用済みの容器が雄コネクタから外れるとともに、雌コネクタにおける貫通孔の内側開口がプラグによって再封止されるので、容器の交換作業が簡単である上、容器内に残った流体が吐出口から漏れるおそれがない。
なお、雄コネクタに形成される空気取り入れ口は、雄コネクタの流体通路を流れる流体が漏れ出すことなく、容器内に置換用空気を導入することが可能なものであれば、その構造や配置は特に限定されない。
【0007】
本発明による流体吐出用コネクタユニットの一態様として、雄コネクタが、貫通孔に一端側が挿入される略中空軸状の雄コネクタ本体と、雄コネクタ本体の他端部に一端部が接続された流体供給管とを備えている場合がある。
この場合において、好適には、流体供給管の他端部は、容器から吐出された流体を受けるタンク内における流体表面よりも下方に位置させられている。
【0008】
上記態様のコネクタユニットの場合、雄コネクタが、雄コネクタ本体と流体供給管とで構成されるため、流体供給管のサイズや形状を適宜変更すれば、流体の供給先であるタンクの配置等に容易に対応することができる。
また、上記態様において、流体供給管の他端部をタンク内における流体表面よりも下方に位置させた構成をとれば、タンク内に供給される流体の泡立ちを防止することが可能となる。
【0009】
上記態様の流体吐出用コネクタユニットにおいて、流体供給管は、その一端部が雄コネクタ本体の他端部に嵌め被せられて固定されていて、雄コネクタ本体の他端部内には、空気取り入れ用アダプタが嵌め入れられており、空気取り入れ用アダプタは、その中心部を通る大径の流体通路と、その外周部を通る少なくとも1つの小径の空気通路とを有しているとともに、流体供給管側の端面から流体通路を延長させるように突出した筒状突出部を有しており、空気取り入れ口が、雄コネクタ本体と流体供給管との間に形成されていることがある。
【0010】
上記によれば、コネクタ本体の他端部内に空気取り入れ用アダプタを嵌め入れるとともに、空気取り入れ口を雄コネクタ本体と流体供給管との間に形成するだけで、容器内への置換用空気の導入に必要な構造が得られるので、製造が容易である上、例えば粘度が異なる流体の供給に使用する場合には、それに応じた径や本数の空気通路を有するアダプタに変更すれば、空気置換による容器内の負圧解消を適切に行うことが可能となる。
また、アダプタには、その中心部を通るように大径の流体通路が形成される一方、その外周部を通るように小径の空気通路が形成されており、また、流体供給管側の端面から流体通路を延長させるように筒状突出部が形成されているので、容器内への置換用空気の導入が、容器から吐出される流体によって妨げられることなく、スムーズに行われる。
空気取り入れ口は、例えば、流体供給管の一端部内周面、雄コネクタ本体の他端部外周面、またはこれらの面の対向位置に、所要長さのスリットを1本または複数本設けることによって形成することができる。
【0011】
本発明による流体吐出用コネクタユニットにおいて、プラグが、貫通孔の内側開口を開閉するプラグ本体と、雌コネクタの外周面に取り付けられる取付部と、プラグ本体と取付部とを連結するように設けられ、少なくとも1つの流体通過孔を有しかつプラグ本体を貫通孔の内側開口に向かって付勢するように弾性材料によって形成されている連結部とを備えている場合がある。
【0012】
上記態様のプラグにあっては、雌コネクタの貫通孔に雄コネクタが挿入されると、雄コネクタの先端部によりプラグ本体が容器内側に押されて、貫通孔の内側開口が開放され、また、雌コネクタの貫通孔から雄コネクタが抜かれると、プラグ本体が、連結部の弾性復元力により初期位置まで移動させられて、貫通孔の内側開口を再封止する。従って、上記プラグを使用すれば、雄コネクタの挿抜に伴い、貫通孔の内側開口の開放および再封止が自動的にかつ確実に行われる上、プラグ自体の構造も簡単であって安価に製造することができ、特に、上記プラグ全体をゴム等の弾性材料によって一体成形することにより、コストを抑えることができる。
【0013】
なお、プラグは、雄コネクタの挿抜によって雌コネクタの開放および再封止が可能なものであればよく、上記態様のものには限られない。
例えば、プラグのその他の態様として、プラグ本体が、スプリングにより、雌コネクタにおける貫通孔の内側開口に向かって付勢されているものや、例えば特開2005−67700号公報等に開示されている連結システムの構造を使用することができる。後者の連結システムは、雄コネクタの先端部に頭部を形成する一方、該頭部が嵌め入れられる凹部をプラグに形成し、プラグおよび雌コネクタにおける貫通孔の内側開口縁部に互いに着脱自在に係り合わせられる係合部を形成してなるものであって、雄コネクタを雌コネクタの貫通孔に挿入することにより、雄コネクタの頭部がプラグの凹部に嵌まるとともにプラグの係合部が雌コネクタの係合部から外れて、貫通孔の内側開口が開放され、雄コネクタを抜くことにより、プラグの係合部が雌コネクタの係合部に係合するとともにプラグの凹部から雄コネクタの頭部が外れて、プラグにより貫通孔の内側開口が再封止されるようになっている。
【0014】
次に、本発明による流体供給システムは、吐出口を有しかつ流体が充填された容器と、前述した本発明による流体吐出用コネクタユニットであって容器の吐出口に雌コネクタが取り付けられているものとを備えてなる。
【0015】
本発明の流体供給システムによれば、上述した空気置換機能付きコネクタユニットを使用することにより、単位時間当たりの流体吐出量が増大し、流体の吐出が最後までスムーズに行われて、容器内の流体残量を減らすことができる上、使用者は、雌コネクタに雄コネクタを挿入すること以外は特別な操作を行う必要がないため、使い勝手が良く、誰でも簡単に流体の供給作業を行うことができ、さらに、容器の交換作業も簡単である上、容器内に残った流体が吐出口から漏れるおそれがない。
【0016】
本発明による流体供給システムが好適に使用される態様として、流体がプリンタ用のインクである場合、即ち、プリンタにおけるインク供給システムへの適用が挙げられる。
もっとも、本発明の適用対象は上記に限らず、その他の様々な流体の供給システムにも利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図4には、本発明の1つの実施形態が示されている。この実施形態は、本発明を、工業用インクジェットプリンタのインク供給システムに適用したものである。
【0018】
図1には、この実施形態によるインク供給システムの概略が示されている。
このシステムは、インクが充填された容器(1)と、容器(1)の下向き吐出口(13)に接続されかつ容器内(1)のインクを容器(1)の下方に配置されたタンク(5)に供給するコネクタユニットとを備えている。
【0019】
容器(1)としては、段ボール等よりなる外箱(11)と、ブロー容器、薄層ブロー容器、フィルム製フレキシブル容器等よりなる内容器(12)とで構成されたバックインボックスタイプのものが用いられている。
吐出口(13)は、内容器(12)の底面にあけられた孔(121)の周縁部に、筒状吐出口部材(131)の上端フランジ部(131a)が接合されることにより形成されている(図2、図4参照)。
内容器(12)の容量は、特に限定されないが、後で詳しく説明するコネクタユニットを使用する結果、例えば4〜10リットル程度の大容量にすることも可能である。
【0020】
タンク(5)は、略箱状のものであって、容器(1)からコネクタユニットを経て吐出されたインクを一時的に溜めるようになっている。
【0021】
図2〜図4には、コネクタユニットの構造が詳しく示されている。
コネクタユニットは、容器(1)の吐出口(13)に取り付けられかつ容器(1)の内外両側に開口した垂直貫通孔(21)を有する雌コネクタ(2)と、貫通孔(21)に挿入され、内部に軸方向にのびるインク通路(31)を有しかつ先端付近にインク通路(31)に通じるインク導入孔(32)を有する雄コネクタ(3)と、貫通孔(21)に挿入された雄コネクタ(3)で押されることにより貫通孔(21)の内側開口(21a)から離れて同開口(21a)を開放し、貫通孔(21)から雄コネクタ(3)が抜かれることにより貫通孔(21)の内側開口(21a)を再封止するプラグ(4)とを備えている。雄コネクタ(3)には、インク吐出時に容器(1)内に置換用空気を導入するための空気取り入れ口(30)が形成されている。
【0022】
雌コネクタ(2)は、合成樹脂製または金属製であって、略筒状をしており、下から約3分の1の高さ位置に水平外向きの環状フランジ部(22)を有している。
雌コネクタ(2)の外周面におけるフランジ部(22)の上方部分には、環状凹部(23)が形成されており、この凹部(23)に、吐出口部材(131)の内周面下部に形成された環状内方凸部(131b)が強制的に嵌め入れられることにより、雌コネクタ(2)が吐出口(13)に取り付けられている。なお、雌コネクタ(2)の吐出口(13)への取付構造は図示のものには限定されず、例えば、雌コネクタおよび吐出口のうち一方に雄ネジを形成し、同他方に雌ネジを形成して、両者をネジ嵌合するようにしてもよい。
雌コネクタ(2)の外周面における上側約3分の1の部分は、吐出口(13)の内周面との間に隙間ができるようにやや縮径されており、同部分の下端位置には環状凹溝(24)が形成されている。
雌コネクタ(2)の内周面には、上端から約3分の1の高さ位置に水平な第1環状段差(251)が形成されているとともに、下端から約3分の1の高さ位置に傾斜した第2環状段差(252)が形成されていて、上から下に行くにつれて段階的に内径が大きくなるように構成されている。
【0023】
雄コネクタ(3)は、雌コネクタの貫通孔に上端側が挿入される略中空軸状の雄コネクタ本体(3A)と、雄コネクタ本体(3A)の下端部に上端部が接続されたインク供給管(3B)とを備えている。
【0024】
雄コネクタ本体(3A)は、合成樹脂製または金属製である。
雄コネクタ(3A)の上端面には、周方向に等間隔をおいた数箇所から径方向内方に向かって斜め上方にのびる傾斜軸部(301)が形成されているとともに、各傾斜軸部(31)の先端に連なるようにプラグ押圧部(302)が形成されている。プラグ押圧部(302)は、短円柱形のものであって、雄コネクタ(3A)の中心軸の上方に配置されている。
インク導入孔(32)は、隣り合う傾斜軸部(301)どうしの間の空隙部によって形成されている。
雄コネクタ本体(3A)外周面の上端側部分には、雌コネクタ(2)の貫通孔(21)に挿入した際に雌コネクタ(2)の第1環状段差(251)に当接させられる水平な第1環状段差(303)および雌コネクタ(2)の第2環状段差(252)に当接させられる傾斜した第2環状段差(304)が形成されていて、上から下に行くにつれて段階的に外径が大きくなるように構成されている。
雄コネクタ本体(3A)外周面の上端部に環状凹溝(305)が形成され、この凹溝(305)にOリング等の環状シール部材(306)が嵌入固定されている。
雄コネクタ本体(3A)には、左右1対のストッパ(33)が形成されている。各ストッパ(33)は、雄コネクタ本体(33)外周面における高さ中央よりもやや下方位置から側方にのびる水平基部(331)と、水平基部(331)の先端から上方にのびかつ先端部内側に係合爪(332a)を有する係合部(332)と、水平基部(331)の先端から斜め外方にのびた中間連結部(333)を介して下方にのびているた摘み部(334)と、雄コネクタ本体(33)外周面の下端寄りから中間連結部(333)に向かって水平にのびかつ摘み部(334)が摘まれた際に先端が中間連結部(333)に当接する規制部(335)とを備えている。
雄コネクタ本体(3A)を雌コネクタ(2)の貫通孔(21)に挿入していくと、係合部(332)先端の係合爪(332a)が雌コネクタ(2)のフランジ部(22)に当たって、係合部(332)が弾性変形してやや外側に開く。そして、係合爪(332a)がフランジ部(22)を超えたところで、係合部(332)が復元し、係合爪(332a)がフランジ部(22)に係り止められる。これによって、雄コネクタ本体(3A)が雌コネクタ(2)から抜けることが防止される。雌コネクタ(2)から雄コネクタ本体(3A)を外す際には、両ストッパ(3)の摘み部(334)を互いに近づくように手指で摘みながら行うことによって、係合部(332)が外側に開き、係合爪(332)とフランジ部(22)との係合を解除することができる。
雄コネクタ本体(3A)の内周面には、上端から約4分の1の高さ位置に水平な環状段差(307)が形成されていて、これよりも下方部分が同上方部分よりも内径が大きくなるように構成されている。
【0025】
インク供給管(3B)は、合成樹脂製または金属製であって、その上端部が雄コネクタ本体(3A)の下端部に嵌め被せられることによって、雄コネクタ本体(3A)に固定されている。
図1に示すように、インク供給管(3B)は、タンク(5)の上壁(51)を貫通させられていて、その下端部は、タンク(5)内におけるインク表面よりも下方に位置させられている。
【0026】
雄コネクタ本体(3A)の下端部内には、空気取り入れ用アダプタ(6)が嵌め入れられている。
アダプタ(6)は、その中心部を通る大径のインク通路(61)と、その外周部を通る小径の空気通路(62)とを有しているとともに、その下端面からインク通路(61)を延長させるように下方に突出した筒状突出部(63)を有している。従って、空気通路(62)の下端は、アダプタ(6)の下端面に開口している。
この実施形態では、空気通路(62)は、アダプタ(6)の外周部における図2〜図4の左側部分に1つ形成されており、同左側部分は、内側に向かってやや膨出させられることにより、その他の部分よりも厚肉となされている(図3参照)。
空気通路(62)の径は、例えば約1mm程度となされる。一方、インク通路(61)の最小径、即ち、筒状突出部(63)の内径は、例えば約7mm程度となされる。但し、これらの径は、インクの粘度や容量等に応じて適宜変更可能である。
アダプタ(6)外周面の高さ中央部に環状凹溝(64)が形成され、この凹溝(64)にOリング等のシール部材(65)が嵌入固定されている。
【0027】
空気取り入れ口(30)は、雄コネクタ本体(3A)とインク供給管(3B)との間に形成されている。
この実施形態では、雄コネクタ本体(3A)の外周面下端部に垂直なスリット(34)を設けることによって、空気取り入れ口(30)が形成されている。スリット(34)は、雄コネクタ本体(3A)の下端面から、インク供給管(3B)の上端よりも上方レベルまで達するような長さを有している。
【0028】
プラグ(4)は、雌コネクタ(2)における貫通孔(21)の内側開口(21a)を開閉するプラグ本体(41)と、雌コネクタ(2)の外周面に取り付けられる取付部(42)と、プラグ本体(41)と取付部(42)とを連結するように設けられ、インク通過孔(43a)を有しかつプラグ本体(41)を貫通孔(21)の内側開口(21a)に向かって付勢する連結部(43)とを備えており、全体がゴム等の弾性材料によって一体に形成されている。
プラグ本体(41)は、略円盤状であって、その周面(41a)は下方に向かって中心側に傾斜したテーパ面となされており、このテーパ面(41a)が弁座を構成する雌コネクタ(2)の上端面に当接または離間させられる。
取付部(42)は、雌コネクタ(2)の上端部に嵌め被せられる筒状周壁(42a)と、周壁(42a)の下端から内方にのびかつ雌コネクタ(2)の環状凹溝(24)に嵌め入れられる環状内方突起(42b)とで構成されている。
連結部(43)は、プラグ本体(41)の周面(41a)上端と取付部(42)の周壁(42a)上端とを連結するように形成された膜状のものであって、インク通過孔(43a)は、周方向に間隔をおいて複数形成されている。インク通過孔(43a)の形状は、特に限定されないが、例えば周方向にのびるスリット状となされる。
【0029】
次に、上記インク供給システムの使用方法を説明する。まず、図2に示すように、インクが充填された容器(1)を吐出口(13)を下向きにして雄コネクタ(3)の上方に配置する。なお、この状態では、容器(1)の吐出口(13)に取り付けられた雌コネクタ(2)の内側開口(21a)はプラグ(4)によって封止されている。
【0030】
そして、この状態で容器(1)を下げていくと、図4に示すように、雌コネクタ(2)の貫通孔(21)に雄コネクタ(3)が挿入されて、雄コネクタ(3)上端のプラグ押圧部(302)によってプラグ本体(41)が上方に押し上げられることにより貫通孔(21)の内側開口(21a)が開放される。これにより、容器(1)内のインクが、プラグ(4)のインク通過孔(43a)から雄コネクタ本体(3A)のインク導入孔(32)およびインク通路(31)、アダプタ(6)のインク通路(61)ならびにインク供給管(3B)を経て、タンク(5)内に吐出される。以上によって構成されるインク供給路は、中空針を使用する従来技術と比べて大きな断面積を確保できており、単位時間当たりのインク流量を十分大きくすることができる。また、インク供給管(3B)の下端はタンク(5)内におけるインク表面よりも下方に位置させられているので、吐出されたインクに泡立ちが生じるのが回避される。
インクの吐出が始まると、例えば内容器(12)が薄ブロー容器やフレキシブル容器の場合には、吐出に伴う負圧の増大に伴ってまず内容器(12)が減容するが、減容の限界が来た時点で、雄コネクタ(3)の空気取り入れ口(30)からアダプタ(6)の空気通路(62)を経て内容器(12)内に空気が導入され、内容器(12)内の負圧が解消される。これにより、インクの吐出は、途中で滞ることなく最後までスムーズに行われ、内容器(12)内のインク残量も極めて少ない。
【0031】
インクの吐出が終了したら、ストッパ(3)の解除操作を行いながら、容器(1)を上方に持ち上げる。そうすると、雌コネクタ(2)の貫通孔(21)から雄コネクタ(3)が抜け、これに伴って、プラグ本体(41)が連結部(43)の弾性復元力により下降して貫通孔(21)の内側開口(21a)を再封止する(図2参照)。従って、使用済みの容器(1)内にインクが残っていたとしても、吐出口(13)から漏れるおそれがない。
その後、上記と同様の方法により、インクが充填された新しい容器(1)に取り付けられている雌コネクタ(2)を、雄コネクタ(2)に接続して、インクの供給を行うことができる。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
上記実施形態の空気置換機構付きコネクタユニットを使用した場合における、容器内に充填する流体の粘度と、残量および吐出時間との関係を実験した。
【0033】
流体としては以下の表1に示す(A)〜(D)を用い、これらを薄層ブロー容器よりなる容器に4リットルずつ充填した。(A)は水であり、また、(B)〜(D)は水に所要量の水溶性接着剤を添加して粘度を調整したものである。実験を通じて、各流体の温度は20℃とした。
【表1】

【0034】
そして、(A)〜(D)の各流体が充填された容器からコネクタユニットを使用して流体の吐出を5回ずつ行い、それぞれについて吐出状態を観察するとともに、残量、吐出時間を測定した。残量については、吐出完了時に測定した容器(残留流体を含んでいる)の質量から流体充填前に測定した容器の質量を引くことによって算出した。また、これらの残量に基づいて残量率を算出した。吐出時間は、吐出開始から吐出完了までの時間に加えて、吐出開始から空気置換が開始されるまでの時間も計測した。結果を表2に示す。なお、残量、残量率、吐出時間は、それぞれ5回計測分の平均値である。
【表2】

【0035】
表2から明らかなように、実施例1の場合、(A)〜(D)いずれの流体についても、吐出が途中で滞ることなくスムーズに行われた。吐出時間は、流体の粘度が大きくなるに従って長くなった。一方、残量については、粘度が大きくなってもほぼ一定となっている。このことから、空気置換機構を備えたコネクタユニットを使用すれば、粘度の大きい流体についても、残量を減らすことが可能になることがわかる。
【0036】
[比較例1]
また、比較例1として、空気置換機構を有しないコネクタユニットを使用した場合について、上記実施例1と同様の実験を行った。
比較例1のコネクタユニットとしては、空気取り入れ用アダプタを雄コネクタ本体内に組み込んでいない点と、流体供給管として空気取り入れ口を形成するためのスリットを有しないものを使用した点とを除いて、図1〜図4に示すコネクタユニットと同じものを使用した。
結果を以下の表3に示す。
【表3】

【0037】
表3から明らかなように、比較例1の場合、(A)〜(D)いずれの流体についても、吐出が途中で停止し、実施例1の場合と比較して約8倍の流体が容器内に残った。この原因としては、容器が減容する範囲までは吐出可能であるが、流体の自重と容器の復元力とが均衡した時点でそれ以上の吐出が不可能になったものと考えられる。
【0038】
[実施例2]
また、上記実施形態の空気置換機構付きコネクタユニットを使用した場合における、容器内に充填する流体の容量と、残量および吐出時間との関係を実験した。
【0039】
流体としては水(表1の(A)参照)を用い、これを6リットルの容量を有する薄層ブロー容器に下記の表4の容量ずつ充填したものを用意した。
【表4】

【0040】
そして、表4の(E)〜(H)の容量の水が充填された各容器からコネクタユニットを使用して流体の吐出を5回ずつ行い、それぞれについて、実施例1と同様に、吐出状態を観察するとともに、残量、吐出時間を測定した。結果を表5に示す。
【表5】

【0041】
表5から明らかなように、実施例2の場合、(E)〜(H)いずれの容量の場合においても、吐出が途中で滞ることなくスムーズに行われた。吐出時間は、水の容量に比例して長くなったが、空気置換の開始から吐出の完了までの時間(表5の「吐出完了」−「切り替わり」)は、容量に関係なくほぼ一定であった。一方、残量については、容量が大きくなってもほとんど差は見られなかった。
【0042】
[比較例2]
さらに、比較例2として、空気置換機構を設けていないコネクタユニットを使用した場合について、上記実施例2と同様の実験を行った。
なお、比較例2のコネクタユニットは、上記比較例1で使用したものと同じである。
結果を以下の表6に示す。
【表6】

【0043】
表6から明らかなように、比較例2の場合、(E)〜(H)いずれの容量についても、吐出が途中で停止し、実施例2の場合と比較して約8倍の流体が容器内に残った。
以上のことから、実施例2のように空気置換機構を備えたコネクタユニットを使用すれば、流体の容量が大きくなっても、残量を確実に減らせることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係るインク供給システムの概略を示す図である。
【図2】図1のインク供給システムにおけるコネクタユニットの要部を拡大して示すものであって、雌コネクタと雄コネクタとが接続されていない状態の垂直断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿うコネクタユニットの水平断面図である。
【図4】図1のインク供給システムにおけるコネクタユニットの要部を拡大して示すものであって、雌コネクタと雄コネクタとが接続された状態の垂直断面図である。
【符号の説明】
【0045】
(1):容器
(13):吐出口
(2):雌コネクタ
(21):貫通孔
(21a):内側開口
(3):雄コネクタ
(3A):雄コネクタ本体
(3B):インク供給管(流体供給管)
(30):空気取り入れ口
(31):インク通路(流体通路)
(32):インク導入孔(流体導入孔)
(34):スリット
(4):プラグ
(41):プラグ本体
(42):取付部
(43):連結部
(43a):インク通過孔(流体通過孔)
(5):タンク
(6):空気取り入れ用アダプタ
(61):インク通路(流体通路)
(62):空気通路
(63):筒状突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が充填される容器の吐出口に取り付けられかつ前記容器の内外両側に開口した貫通孔を有する雌コネクタと、
前記貫通孔に挿入され、内部に軸方向にのびる流体通路を有しかつ先端付近に前記流体通路に通じる流体導入孔を有する雄コネクタと、
前記貫通孔に挿入された前記雄コネクタで押されることにより前記貫通孔の内側開口から離れて同開口を開放し、前記貫通孔から前記雄コネクタが抜かれることにより前記貫通孔の前記内側開口を再封止するプラグとを備え、
前記雄コネクタに、流体吐出時に前記容器内に置換用空気を導入するための空気取り入れ口が形成されていることを特徴とする、流体吐出用コネクタユニット。
【請求項2】
前記雄コネクタが、前記貫通孔に一端側が挿入される略中空軸状の雄コネクタ本体と、前記雄コネクタ本体の他端部に一端部が接続された流体供給管とを備えていることを特徴とする、請求項1記載の流体吐出用コネクタユニット。
【請求項3】
前記流体供給管の他端部は、前記容器から吐出された流体を受けるタンク内における流体表面よりも下方に位置させられていることを特徴とする、請求項2記載の流体吐出用コネクタユニット。
【請求項4】
前記流体供給管は、前記一端部が前記雄コネクタ本体の前記他端部に嵌め被せられて固定されていて、前記雄コネクタ本体の前記他端部内には、空気取り入れ用アダプタが嵌め入れられており、
前記空気取り入れ用アダプタは、その中心部を通る大径の流体通路と、その外周部を通る少なくとも1つの小径の空気通路とを有しているとともに、前記流体供給管側の端面から前記流体通路を延長させるように突出した筒状突出部を有しており、
前記空気取り入れ口が、前記雄コネクタ本体と前記流体供給管との間に形成されていることを特徴とする、請求項2または3記載の流体吐出用コネクタユニット。
【請求項5】
前記プラグは、前記貫通孔の前記内側開口を開閉するプラグ本体と、前記雌コネクタの外周面に取り付けられる取付部と、前記プラグ本体と前記取付部とを連結するように設けられ、少なくとも1つの流体通過孔を有しかつ前記プラグ本体を前記貫通孔の前記内側開口に向かって付勢するように弾性材料によって形成されている連結部とを備えていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の流体吐出用コネクタユニット。
【請求項6】
吐出口を有しかつ流体が充填された容器と、前記吐出口に雌コネクタが取り付けられている請求項1〜5のいずれか1つに記載の流体吐出用コネクタユニットとを備えている、流体供給システム。
【請求項7】
前記流体がプリンタ用のインクである、請求項6記載の流体供給システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate