説明

流体吐出装置

【課題】空気の消費量が少なく、吐出する液滴粒径が小さく、衝突力が大きい流体吐出装置を提供する。
【解決手段】流体が進入して混合されるチャンバと、前記チャンバ内に設置されるか、或いは前記チャンバと接続され、前記チャンバ内の流体の加速に使用される少なくとも一つの加速ユニットと、前記加速ユニットの一端と接続される流体出口部分と、を備えることを特徴とする流体吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体吐出装置に関し、特に、装置内部に通過断面積が縮小された加速ユニットが設置され、吐出させたい流体を加速させ、加速ユニットは更に二流体を均等に吐出させる機能を有する二流体噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル装置は液体霧化原理を応用したものであり、液体霧化原理は一流体および二流体の二種類に分類される。一流体ノズルは液体加圧式ノズルと称し、ポンプを利用して液体を必要な圧力まで加圧し、その後、ノズル内部の特殊機構に流し、最後に出口から分散させる。この種のノズルは平均噴霧粒径が大きいので、噴霧粒径を小さくさせたい場合、使用圧力を高めるか、或いは孔径を縮小させる必要があり、ポンプの選択に関する問題およびノズルが詰まる問題が発生する。二流体ノズルは気体補助式ノズルと称し、高圧気体(一般に空気)を液体に衝突させ、液体の表面張力を破壊して液体を微小な霧にし、出口から分散させる。一流体ノズルと比較して二流体ノズルは微細な粒径を生成することができ、ノズルの孔径も大きいので異物が詰まることも少なく、流量の調整範囲も大きい。
【0003】
二流体ノズルの霧化機構は、内部霧化(internal atomizing)および外部霧化(external atomizing)に分類することができる。外部霧化は液体がシステムを離れた後、外部において直接気体を液体に衝突させ、気体と液体を混合させて霧化し、作用区域が外部に位置するので、その圧力を再利用することができない。内部霧化はノズル本体内で気体が供給され、気体を液体に衝突させ、混合チャンバによって液体と気体が混合され、各種形式の出口孔(円形または長尺状開口など)によって必要な散布形式および効果が指定された表面上に形成される。外部霧化は通常高湿度または低気温環境で使用され、内部霧化は出口孔の設計によって、通常、物体の洗浄、液体散布または鋼片冷却に使用される。従来技術による二流体ノズルにおいては空気の消費量が少なく、液滴粒径が小さく、衝突力が大きいという三つの条件を同時に満足することは難しく、空気消費量が少ないほど、衝突力が小さく、液滴粒径が大きい。反対に、粒径が小さいほど、必要な衝突力が大きくなり、空気消費量も多くなり、多量の空気は気流から大きな比率の液滴を奪う。孔径を縮小することによって液滴速度を高めて衝突力を増加させる場合、気体速度は音速を限界点とするので孔径を縮小させることによって上述の三つの条件を同時に満足させることができない。
【特許文献1】特開2008−93564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、流体吐出装置の主体内に一つまたは多段式の加速ユニットを設置して流体速度を高める流体吐出装置を提供することにあり、流体吐出装置は二流体噴霧システムとすることができ、従来技術による二流体噴霧システムにおいては加圧空気は一度しか利用できず、大部分の加圧空気は一度の加速の後、大気中に消失するが、本発明においては、一つまたは多段式の加速ユニットが設置されることによって空気が複数回回収されて利用でき、液滴を複数回加速させることができ、必要な液滴速度に達成させることができ、液滴速度または粒径が必要とする水準に達した場合、空気圧力を低下させることができるので、加速ユニットが設置されたノズル装置によって、圧力を増加させない状況で液滴速度を高めることができ、空気消費量を低減させることができる。
本発明の第2の目的は、加速ユニットが設置されることによって更に大きな衝突力および更に小さな液滴粒径を達成することができる流体吐出装置を提供することにあり、高速な水滴であればあるほど、微細な粒径になり、速度が速ければ速いほど、粒径が小さな水滴となり、作業効率を高めることができ、鋼片の冷却、LCDガラス基板の洗浄、環境の加湿または消毒などに応用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を解決するために、請求項1の発明は、流体が進入して混合されるチャンバと、チャンバ内に設置されるか、或いはチャンバと接続され、チャンバ内の流体の加速に使用される少なくとも一つの加速ユニットと、加速ユニットの一端と接続される流体出口部分と、を備えることを特徴とする流体吐出装置である。
【0006】
請求項2の発明は、流体吐出装置は、二流体噴霧システムであることを特徴とする請求項1記載の流体吐出装置である。
【0007】
請求項3の発明は、流体吐出装置は、ノズルであることを特徴とする請求項2記載の流体吐出装置である。
【0008】
請求項4の発明は、流体吐出装置は、エアナイフ霧化システムであることを特徴とする請求項2記載の流体吐出装置である。
【0009】
請求項5の発明は、加速ユニットは、少なくとも一つのベンチュリ管であることを特徴とする請求項1記載の流体吐出装置である。
【0010】
請求項6の発明は、加速ユニットは、少なくとも一つのオリフィスであることを特徴とする請求項1記載の流体吐出装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は加速ユニットが設置された流体吐出装置を提供するものである。流体吐出装置は内部霧化の二流体噴霧装置とすることができ、加速ユニットが設置されたノズルはノズル本体内で使用することができ、気体を液体に衝突させる混合チャンバ内に少なくとも一つの加速ユニットを設置することができ、加速ユニットは図8に示すベンチュリ管または図9に示すオリフィスとすることができる。加速ユニットは空気圧力を高めない状況の下、液滴速度を高めることができ、空気を回収して再利用することができ、霧化に必要な空気圧力および消費量を低減させ、高効率に圧力を応用ことができる。図6、7に示すように、加速ユニットが設置された流体吐出装置はエアナイフ霧化システムとすることができる。エアナイフの構造において、霧化機構以外に、少なくとも一つの加速ユニットが設置され、このようにして二流体の流動は加速ユニットによる加速によって均一化され、ほぼ完全に噴霧したい表面に均一で垂直に散布を行うことができ、従来技術の複数の扇形の二流体ノズルにおける散布が不均一である問題を解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の目的、特徴および効果を示す実施例を図に沿って詳細に説明する。
【0013】
本発明は流体吐出装置に関し、特に、二流体噴霧装置に関する。
【0014】
本発明の二流体噴霧装置は内部霧化の装置に属し、気体を液体に衝突させる混合チャンバ上に少なくとも一つの断面積が縮小された加速ユニットが設置される。気体および液体が混合チャンバに進入し、混合チャンバ内で均一に混合された後、加速ユニットを通過する。加速ユニットは一端の内壁が縮小し、一端の内壁が徐々に拡大した構造のベンチュリ管702、704を有する(図8を参照)。加速ユニットの内壁が収縮した一端は混合チャンバの出口と接続され、液体または気体が収縮した内壁を流れるとき、断面積が小さくなるので、二流体の速度が増加する。加速ユニットは図9に示すような断面積が縮小されたオリフィス802、804とすることができ、それによっても二流体の速度を高めることができる。以下の実施例は加速ユニットが設置されたノズル装置と加速装置が設置されていないノズル装置を比較したものであり、出口部分の液滴速度を示したものである。液体は気体が衝突した後、微細液滴を形成して非連続相となるので、液滴が出口孔に到達したとき、運動量保存則(m=m:mは液滴質量、vは液滴速度)によって直接液滴の速度を計算できず、運動量保存則、質量保存則およびエネルギー保存則によって計算される。以下の実施例によって本発明の概念およびその効果を証明する。
【0015】
本発明の実施例一はベンチュリ管が設置された二流体ノズル200である(図2を参照)。
【0016】
以下に従来技術による加速ユニットが設置されていない二流体ノズルと本実施例による加速ユニットが設置された二流体ノズルの出口部分の液滴速度の比較を示す。
【0017】
図1は従来技術による加速ユニットが設置されていない二流体ノズル100を示し、その構造は左から右に混合チャンバ101および出口孔102が設けられる。
【0018】
以下に加速ユニットが設置されていない二流体ノズル100の各条件を示す。
【0019】
a.混合チャンバ101内
空気速度:15m/s
水滴速度7.5m/s
水滴粒径:30μm
温度:25℃
圧力:3kg/cm2G
インナーチャンバ直径D11:6m/m
b.PT11からPT12までの長さd11:5mm
c.出口孔102部分
出口孔径D12:1.8m/m
d.PT12からPT13までの長さd12:5mm
【0020】
図2は一つの加速ユニットが設置された二流体ノズル200を示し、その構造は左から右に混合チャンバ201、ベンチュリ管202、回収部203および出口孔204が設けられる。
【0021】
以下に一つの加速ユニットが設置された二流体ノズル200の各条件を示す。
【0022】
a.混合チャンバ201内
空気速度:15m/s
水滴速度7.5m/s
水滴粒径:30μm
温度:25℃
圧力:3kg/cm2G
インナーチャンバ直径D21:6m/m
b.PT21からPT22までの長さd21:5mm
c.ベンチュリ管202
最小直径D22:1.8m/m
d.PT22からPT23までの長さd22:5mm
e.回収部203
インナーチャンバ直径D23:6m/m
f.PT23からPT24までの長さd23:5mm
g.出口孔204部分
出口孔径D24:1.8m/m
h.PT24からPT25までの長さd24:5mm
【0023】
上述の二つの例は、加速ユニット以外、その他の条件は全て同一であり、上述の二つの例において、粒径の大きさが30μmの水滴が加速過程において粒径が変更しないと仮定し、1次元を計算の基礎として数値回析法による計算によって取得された結果を表1‐1〜1‐2および表2‐1〜2‐4に示す。
【表1−1】

【表1−2】

【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【0024】
表2‐4における最終行の数値は二流体ノズル200のPT25部分のデータであり、そのデータを下記に示す。
空気速度:51.8123m/s
空気温度:297.89K
圧力:0.2684*10Pa
水滴速度:68.8067m/s
【0025】
表1‐2の最終行の数値は二流体ノズル100のPT13部分(出口孔から5mmの部分)のデータであり、そのデータを下記に示す。
【0026】
空気速度:43.6308m/s
空気温度:297.81K
圧力:0.3186*10Pa
水滴速度:50.2845m/s
【0027】
以上の数値から分かるように、ベンチュリ管が設置された二流体ノズル200の出口から5mm部分の水滴速度は68.8067m/sであり、加速ユニットが設置されていない二流体ノズル100の出口から5mm部分の水滴速度は50.2845m/sであり、両者の速度差は18.5222m/sである。即ち、加速ユニットの水滴に対する加速効果は36.8%に達する。しかし、二流体ノズル200において、加速ユニットを通過してPT23に到達する圧損は10.8%であるので、再利用可能な圧力が残っており、複数の加速ユニットが設置されたノズル装置を設計することができる。従って、以下の実施例2においては二流体ノズル300内に二つのベンチュリ管302、304が設置されて加速ユニットとされる。
【0028】
本発明の実施例2は二つのベンチュリ管が設置された二流体ノズル300である(図3を参照)。
【0029】
以下は従来技術による加速ユニットが設置されていない二流体ノズル100と本実施例による二つの加速ユニットが設置された二流体ノズル300の出口部分の液滴速度の比較を示す。
【0030】
図3は二流体ノズル300内に二つのベンチュリ管302、304が設置されて加速ユニットとされ、その構造は左から右に混合チャンバ301、ベンチュリ管302、回収部303、ベンチュリ管304、回収部305および出口孔306が設けられる。
【0031】
以下に二流体ノズル300の各条件を示す。
【0032】
a.混合チャンバ301内
空気速度:15m/s
水滴速度7.5m/s
水滴粒径:30μm
温度:25℃
圧力:3kg/cm2G
インナーチャンバ直径D31:6m/m
b.PT31からPT32までの長さd31:5mm
c.ベンチュリ管302
直径D32:1.8m/m
d.PT32からPT33までの長さd32:5mm
e.回収部303
直径D3:6m/m
f.PT33からPT34までの長さd33:5mm
g.ベンチュリ管304
直径D34:1.8m/m
h.PT34からPT35までの長さd34:5mm
i.回収部305
直径D35:6m/m
j.PT35からPT36までの長さd35:5mm
k.出口孔306
出口孔径D36:2.0m/m
l.PT36からPT37までの長さd36:5mm
【0033】
上述の二つの例において、粒径の大きさが30μmの水滴が加速過程において粒径が変更しないと仮定し、1次元を計算の基礎として数値回析法による計算によって取得された結果を表3‐1、3‐2、3‐3、3‐4、3‐5、3‐6に示す。
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

表3‐6における最終行の数値は二流体ノズル300のPT37(出口から5mm)部分のデータであり、そのデータを下記に示す。
空気速度:46.8082m/s
空気温度:298.41K
圧力:0.2829E+6Pa
水滴速度:72.6306m/s
【0034】
以上の数値から分かるように、二つの加速ユニットが設置された二流体ノズル300の出口から5mm部分の水滴速度は72.6306m/sであり、加速ユニットが設置されていない二流体ノズル100の出口から5mm部分の水滴速度は50.2845m/sであり、両者の速度差は22.3461m/sであり、二つの加速ユニットの水滴に対する加速効果は44.4%に達する。
【0035】
以上の二つの実施例から分かるように、空気圧力が増加されず、加速ユニットが設置された二流体ノズル200、300の出口孔径(2m/m)が加速ユニットが設置されていない二流体ノズル100の出口孔径(1.8m/m)より小さくない状況の下、加速ユニットを通過する水滴は確実に加速される。
【0036】
図4は本発明の他の実施例を示し、一つのオリフィスを加速ユニットとした二流体ノズル装置の簡略図である。
【0037】
図5は本発明の他の実施例を示し、二つのオリフィスを加速ユニットとした二流体ノズル装置の簡略図である。
【0038】
図6は上述のベンチュリ管をエアナイフ霧化システムに応用した状態の簡略図である。上述のベンチュリ管502はエアナイフ霧化システム500に応用され、ベンチュリ管502が吐出する二流体は均一且つ液滴速度が高められた状況の下、噴霧したい物体の表面に噴霧することができる。
【0039】
図7は本発明の他の実施例を示し、オリフィスをエアナイフ霧化システムに応用した状態の簡略図である。
【0040】
以上の実施例から分かるように、本発明の加速ユニットが設置された流体吐出装置は確実に流体を加速させる効果を有する。上述の詳細な説明は本発明の好適な実施例を示したものであり、本発明の実施範囲を制限するものではない。本発明の特許請求の範囲に基づく同等効果の変更および修飾等は全て本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】加速ユニットが設置されていない二流体ノズルの構造を示す簡略図である。
【図2】一つのベンチュリ管が設置されて加速ユニットとされた二流体ノズルの構造を示す簡略図である。
【図3】二つのベンチュリ管が設置されて加速ユニットとされた二流体ノズルの構造を示す簡略図である。
【図4】本発明の他の実施例を示し、一つのオリフィスが設置されて加速ユニットとされた二流体ノズル装置を示す簡略図である。
【図5】本発明の他の実施例を示し、二つのオリフィスが設置されて加速ユニットとされた二流体ノズル装置を示す簡略図である。
【図6】ベンチュリ管が設置されて加速ユニットとされたエアナイフ装置を示す簡略図である。
【図7】オリフィスが設置された加速ユニットとされたエアナイフ装置を示す簡略図である。
【図8】ベンチュリ管の構造を示す簡略図である。
【図9】オリフィスの構造を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0042】
200 一つの加速ユニットが設置された二流体ノズル
201、301 混合チャンバ
202、302、304、502、702、704 ベンチュリ管
203、303、304、305 回収部
204、306 出口孔
300 二つの加速ユニットが設置された二流体ノズル
402、404、406、602、802、804 オリフィス
500、600 エアナイフ霧化システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が進入して混合されるチャンバと、
前記チャンバ内に設置されるか、或いは前記チャンバと接続され、前記チャンバ内の流体の加速に使用される少なくとも一つの加速ユニットと、
前記加速ユニットの一端と接続される流体出口部分と、を備えることを特徴とする流体吐出装置。
【請求項2】
前記流体吐出装置は、二流体噴霧システムであることを特徴とする請求項1記載の流体吐出装置。
【請求項3】
前記流体吐出装置は、ノズルであることを特徴とする請求項2記載の流体吐出装置。
【請求項4】
前記流体吐出装置は、エアナイフ霧化システムであることを特徴とする請求項2記載の流体吐出装置。
【請求項5】
前記加速ユニットは、少なくとも一つのベンチュリ管であることを特徴とする請求項1記載の流体吐出装置。
【請求項6】
前記加速ユニットは、少なくとも一つのオリフィスであることを特徴とする請求項1記載の流体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−64029(P2010−64029A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234076(P2008−234076)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(508276246)和旺昌噴霧股▲ふん▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】