流体噴射装置およびその製造方法
【課題】本発明は、流体収容パックの大容量化に対応可能な流体噴射装置を提供する。
【解決手段】プリンタ10は、印刷用紙900に対してインクを吐出する印刷機構部50と、印刷機構部50を収容した本体筐体20と、噴射用のインクを収容したインクパック310と、回動軸350を中心に回動して開閉可能に本体筐体20に軸着され、インクパック310を収容した上部筐体30とを備える。
【解決手段】プリンタ10は、印刷用紙900に対してインクを吐出する印刷機構部50と、印刷機構部50を収容した本体筐体20と、噴射用のインクを収容したインクパック310と、回動軸350を中心に回動して開閉可能に本体筐体20に軸着され、インクパック310を収容した上部筐体30とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を噴射する流体噴射装置に関し、特に、噴射用の流体を収容した流体収容パックを流体噴射装置に配置する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の代表的なものとしては、例えば、紙やプラスチック等の薄板状の記録媒体に対してインク滴を噴射して文字や図形を記録するインクジェット式プリンタがある。その他、流体噴射装置としては、液晶ディスプレー,プラズマディスプレー,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー,面発光ディスプレー(Field Emission Display、FED)等を製造するディスプレー製造装置において、色材や電極等を形成する液体状の各種材料を、画素形成領域や電極形成領域に対して噴射するものがある。
【0003】
流体噴射装置は、流体を噴射対象物に噴射する噴射ヘッドを搭載したキャリッジを備え、キャリッジおよび記録媒体の少なくとも一方を移動させることによって、噴射対象物に対して流体が噴射される位置を調整する。流体噴射装置には、噴射用の流体を収容した流体収容パックをキャリッジから分離して配置した方式(いわゆるオフキャリッジ方式)を採用することによって、キャリッジを駆動する負荷の軽減を図ったものがある。下記特許文献1には、インクパックを収容したインクカートリッジを、プリンタ本体に挿入したオフキャリッジ方式のプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−47258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、流体収容パックの大容量化に対応可能な構成について十分に考慮されていなかった。例えば、大容量化した流体収容パックを配置する空間を装置内に確保することの困難性や、流体収容パックの増加した重さが隣接する他のパックに伸し掛かり流体漏れを発生させる虞といった問題があった。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、流体収容パックの大容量化に対応可能な流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]適用例1の流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射装置であって、噴射対象物に対して流体を吐出する流体吐出部と、前記流体吐出部を収容した本体筐体と、噴射用の流体を収容した流体収容パックと、回動軸を中心に回動して開閉可能に前記本体筐体に軸着され、前記流体収容パックを収容した収容ケースとを備えることを特徴とする。適用例1の流体噴射装置によれば、収容ケースを開閉することにより、収容ケースによって覆われた本体筐体の内部に対して接触することができるため、流体収容パックを配置する位置の自由度を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1の流体噴射装置であって、前記収容ケースは、前記流体吐出部の上方を開閉可能に前記本体筐体に軸着されても良い。適用例2の流体噴射装置によれば、本体筐体に収容された流体吐出部のカバーとして、収容ケースを利用すると共に、収容ケースを開閉することにより、本体筐体に収容された流体吐出部や紙搬送部における流体の吐出不良や噴射対象物の詰まり等に対処するためのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0010】
[適用例3]適用例1または2の流体噴射装置であって、前記流体収容パックは、袋部を有する複数の流体収容パックであり、前記回動軸は、前記収容ケースの内側底面に略沿った軸であり、前記流体噴射装置は、更に、前記収容ケースに内設され、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した傾斜板を有し、前記流体収容パックにおける袋部の一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置した複数のホルダを備え、前記複数のホルダは、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設されたものとすることができる。適用例3の流体噴射装置によれば、流体収容パックの各々がホルダの傾斜板にそれぞれ載置されるため、複数の流体収容パックを重ねて効率よく収容しながら、流体収容パックの重さが隣接するパックに伸し掛かるのを防止することができる。
【0011】
[適用例4]適用例3の流体噴射装置であって、前記ホルダの前記傾斜板は、前記収容ケースの閉状態から開状態を通じて重力方向の下方から前記流体収容パックに当接する角度で、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜しても良い。適用例3の流体噴射装置によれば、収容ケースの閉状態から開状態を通じて、流体収容パックが下方から保持されるため、流体収容パックが自重によって隣接するホルダに過度に押し付けられてしまうのを防止することができる。
【0012】
[適用例5]適用例3または4の流体噴射装置であって、前記複数のホルダは、前記収容ケースの前記回動軸の軸方向に略沿って並設されても良い。適用例5の流体噴射装置によれば、収容ケースの閉状態から開状態を通じて、収容ケースに保持された流体収容パックの各々の高さが略同一となるため、流体収容パックの各々に収容された流体の圧力水頭を略同一に揃えることができる。これによって、流体の噴射品質を向上させることができる。
【0013】
[適用例6]適用例6の流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射装置であって、噴射対象物に対して流体を吐出する流体吐出部と、前記流体吐出部を収容した本体筐体と、噴射用の流体を収容した複数の流体収容パックと、前記複数の流体収容パックを収容した収容ケースと、前記収容ケースに内設され、前記収容ケースの内側底面に対して傾斜した傾斜板を有し、前記流体収容パックの一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置した複数のホルダとを備えたことを特徴とする。適用例6の流体噴射装置によれば、流体収容パックの各々がホルダの傾斜板にそれぞれ載置されるため、流体収容パックの重さが隣接するパックに伸し掛かるのを防止することができる。
【0014】
[適用例7]適用例6の流体噴射装置であって、前記複数のホルダは、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設されても良い。適用例7の流体噴射装置によれば、流体収容パックの各々がホルダの傾斜板にそれぞれ載置されるため、複数の流体収容パックを重ねて効率よく収容することができる。
【0015】
[適用例8]適用例3ないし7のいずれかの流体噴射装置であって、更に、前記収容ケースの前記内側底面に設けられ、前記並設された複数のホルダのうち前記傾斜板が傾斜する側の端に位置するホルダにおける前記傾斜板の下方に向けて立設されたホルダ補助リブを備えても良い。これによって、傾斜板が傾斜する方向の力に対してホルダを補強することができる。
【0016】
[適用例9]適用例3ないし8のいずれかの流体噴射装置であって、更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記並設された複数のホルダのうち前記傾斜板が傾斜する側とは反対の端に位置するホルダに載置された前記流体収容パックの上方に沿って垂設された端部補助リブを備えても良い。これによって、傾斜板が傾斜する側とは反対の端に位置するホルダに載置された流体収容パックが過度に変形してしまうのを抑制することができる。
【0017】
[適用例10]適用例3ないし9のいずれかの流体噴射装置であって、更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方のうち、前記一方のホルダと前記他方のホルダとの間に挟まれた部位に沿って垂設された中間補助リブを備えても良い。これによって、隣接するホルダの傾斜板の裏面でサポートされない流体収容パックの上方が過度に変形してしまうのを抑制することができる。
【0018】
[適用例11]適用例3ないし10のいずれかの流体噴射装置であって、前記ホルダは、前記収容ケースの前記内側底面に固設され、更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記ホルダにおける前記傾斜板の上端に係合する係合部を備えても良い。これによって、ホルダが過度に変形してしまうのを抑制することができる。
【0019】
[適用例12]適用例12の製造方法は、流体を噴射する流体噴射装置の製造方法であって、噴射用の流体を収容した流体収容パックを、回動軸を中心に回動して開閉可能に本体筐体に軸着された収容ケースに収容するパック収容工程と、前記流体収容パックを収容した収容ケースを封着するケース封着工程とを備えることを特徴とする。適用例10の製造方法によれば、本体筐体に収容された流体吐出部や紙搬送部における流体の吐出不良や噴射対象物の詰まり等に対処するためのメンテナンスに際し、収容ケースを開閉することによりメンテナンスを容易に行うことができる流体噴射装置を製造することができる。
【0020】
[適用例13]適用例12の製造方法であって、前記流体収容パックは、扁平な袋部を有する複数の流体収容パックであり、前記回動軸は、前記収容ケースの内側底面に略沿った軸であり、前記パック収容工程は、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した傾斜板を有する複数のホルダに、前記流体収容パックの一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置する工程と、前記流体収容パックを載置した複数のホルダを、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設する工程とを含むものとすることができる。適用例11の製造方法によれば、複数の流体収容パックを重ねて効率よく収容しながら、流体収容パックの重さが隣接するパックに伸し掛かるのを防止することができる。
【0021】
[適用例14]適用例14の製造方法は、流体を噴射する流体噴射装置の製造方法であって、噴射用の流体を収容した流体収容パックを、該流体収容パックを収容する収容ケースの内側底面に対して傾斜した傾斜板を有するホルダに、前記流体収容パックの一方の側面が前記傾斜板の上面に当接するように載置して、前記収容ケースに収容するパック収容工程と、前記流体収容パックを収容したケースを封着するケース封着工程とを備えたことを特徴とする。適用例14の製造方法によれば、ホルダで下方から保持した状態で流体収容パックを収容ケースに収容することができるため、収容ケースへの収容作業中に流体収容パックが損傷してしまうのを防止することができる。
【0022】
[適用例15]適用例12ないし14のいずれかの製造方法であって、前記パック収容工程は、前記流体収容パックを流体吐出部に連通させる工程を含むとしても良い。適用例15の製造方法によれば、流体収容パックを収容ケースに収容する作業と同時に、流体収容パックを流体吐出部に連通させる作業を実施することができるため、流体噴射装置の製造工程における作業工数を削減することができる。
【0023】
本発明の形態は、流体噴射装置やその製造方法に限るものではなく、流体収容パックを収容する構造を有する他の形態に適用することもできる。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】プリンタ10の概略構成を示す説明図である。
【図2】上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図3】上部筐体30を開けた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図4】上部筐体30の内部を示す上面図である。
【図5】インクパック310を載置したホルダ380を上部筐体30の内部に固定する様子を示す説明図である。
【図6】図4のA−A断面においてインクパック310をインク供給部330に接続する前の様子を示す説明図である。
【図7】図4のA−A断面においてインクパック310をインク供給部330に接続した様子を示す説明図である。
【図8】プリンタ10の印刷機構部50の構成を示す説明図である。
【図9】プリンタ10を製造する製造方法を示すフローチャートである。
【図10】他の実施形態における上部筐体30の内部を示す上面図である。
【図11】他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図12】他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図13】他の実施形態における上部筐体30を開けた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図14】他の実施形態におけるプリンタ10の印刷機構部50周りの構成を示す説明図である。
【図15】供給チューブ340の断面を示す説明図である。
【図16】他の実施形態における支持部420の構成を示す説明図である。
【図17】他の実施形態におけるホルダ380と下部ハウジング360との接合構成を示す説明図である。
【図18】他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図19】他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図20】他の実施形態におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。
【図21】他の実施形態におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した流体噴射装置について説明する。なお、本実施形態では、流体噴射装置の一形態である画像記録装置に代表されるインクジェット式プリンタを例に挙げて説明する。
【0026】
A.実施例:
図1は、プリンタ10の概略構成を示す説明図である。プリンタ10は、記録媒体である印刷用紙900に対してインク滴を噴射して文字や図形を記録するインクジェット式プリンタである。プリンタ10は、印刷用紙900に対してインク滴を吐出する流体吐出部である印刷機構部50を収容する本体筐体20を備え、本体筐体20には、印刷機構部50へと供給される印刷用紙900を本体筐体20の内部に導入する給紙トレイ12と、印刷機構部50から排出された印刷用紙900を本体筐体20の外部に導出する排紙トレイ14とが配設されている。印刷機構部50の詳細な構成については後述する。
【0027】
本体筐体20には、プリンタ10の各部を制御する制御部40が収容されている。本実施例では、制御部40は、セントラルプロセッシングユニット(Central Processing Unit、CPU)と、リードオンリメモリ(Read Only Memory、ROM)と、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)などのハードウェアを備えたASIC(Application Specific Integrated Circuits)を含む。制御部40には、プリンタ10の各種機能を実現させるソフトウェアがインストールされている。
【0028】
本体筐体20の上面には、各色の液体インクをそれぞれ収容した複数のインクパック310を収容する収容ケースである上部筐体30が配設されている。上部筐体30は、回動軸350を中心にして開閉可能に本体筐体20に軸着されている。
【0029】
本実施例では、インクパック310は、可撓性シートにより略楕円断面を有する略長方形の扁平な袋部として形成され、その短辺側の一方に、インクを導出可能なパック口60が設けられている。パック口60の詳細な構成については後述する。本実施例では、複数のインクパック310は、その長辺側の一方を持ち上げて斜めに重なり合う状態で保持されている。本実施例では、ブラック,シアン,マゼンダ,イエロの四色のインク毎に四つのインクパック310が上部筐体30に収容されている。他の実施形態として、これら4色に加え、ライトシアン,ライトマゼンダを加えた計六色のインクで印刷を行うプリンタでは、ライトシアン,ライトマゼンダを加えた計六色のインク毎に六つのインクパック310を上部筐体30に収容することができる。
【0030】
印刷機構部50に対するインク供給装置を構成する上部筐体30には、インクを導出可能にインクパック310に接続されたインク供給部330が配設されている。インク供給部330には、インクパック310からインク供給部330に導出されたインクを印刷機構部50へと流下する液体流路を形成する供給チューブ340が接続されている。供給チューブ340は、気体透過性を有する材料、例えば、オレフィン系やスチレン系などの熱可塑性エラストマで作製することができる。
【0031】
図2は、上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図3は、上部筐体30を開けた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図4は、上部筐体30の内部を示す上面図である。上部筐体30は、上部筐体30の内側底面を構成する下部ハウジング360と、上部筐体30の内側天井を構成する上部ハウジング370とを備える。下部ハウジング360には、下部ハウジング360によって構成された内側底面の一部である複数のホルダガイド362が、回動軸350に略平行であって相互に略等間隔に配設されている。図3に示すように、本実施例では、上部筐体30を開けることによって、本体筐体20に収容された印刷機構部50の上方が開放される。
【0032】
図2に示すように、上部筐体30には、インクパック310を載置した複数のホルダ380が内設されている。ホルダ380は、ホルダガイド362に対して傾斜した傾斜板381を有する。ホルダ380の傾斜板381の上面には、インクパック310の扁平な袋部の一方の側面が当接する状態で、インクパック310が載置されている。本実施例では、インクパック310は、ホルダ380の傾斜板381との当接する面の少なくとも一部分で両面テープによって接着されている。ホルダ380における傾斜板381の下方部には、ホルダガイド362に挿嵌可能なベース部382が形成されている。ベース部382がホルダガイド362に挿嵌された後、ホルダ380は、締結部材である固定ネジ388,389で下部ハウジング360に締結され固定される。複数のホルダ380は、傾斜板381が傾斜する側で隣り合う他のホルダ380に載置されたインクパック310の上方に、一方のホルダ380の傾斜板381が重なる状態で、下部ハウジング360の内側底面に沿ってずらして並設されている。図2および図3に示すように、ホルダ380の傾斜板381は、上部筐体30の閉状態から開状態を通じて重力方向の下方からインクパック310に当接する傾斜角θhで、下部ハウジング360のホルダガイド362に対して傾斜する。本実施例では、上部筐体30が回動軸350を中心に開閉可能な可動角θcが約45度であるのに対して、ホルダガイド362に対する傾斜板381の傾斜角θhは約40度である。
【0033】
図2に示すように、ホルダ380における傾斜板381の裏面には、隣接するホルダ380に載置されたインクパック310に沿った板状の裏面補助リブ384が垂設されている。下部ハウジング360の内側底面には、並設された複数のホルダ380のうち傾斜板381が傾斜する側の端に位置するホルダ380における傾斜板381の下方に向けて立設された板状のホルダ補助リブ364が設けられている。本実施例では、ホルダ補助リブ364の上部は、ホルダ380の傾斜板381の裏面に当接する。上部ハウジング370の内側天井には、並設された複数のホルダ380のうち傾斜板381が傾斜する側とは反対側の端に位置するホルダ380に載置されたインクパック310の上方に沿った板状の端部補助リブ374が垂設されている。上部ハウジング370の内側天井には、ホルダ380に載置されたインクパック310の上方のうち、二つのホルダ380間に挟まれた部位に沿って板状の中間補助リブが垂設されている。上部ハウジング370の内側天井には、ホルダ380における傾斜板381の上端部383に係合する係合部373が配設されている。
【0034】
なお、図2および図3に示すように、上部筐体30の下部ハウジング360は、インクパック310が設置される部分が下方に突出した形状となっている。これにより、インクパック310の設置のための上部筐体30内部のスペースを増大させることができる。なお、本実施例のプリンタ10は、インクを収容した容器がキャリッジから分離して配置されたいわゆるオフキャリッジ方式のプリンタであるため、インク収容容器がキャリッジ上に配置されたいわゆるオンキャリッジ方式のプリンタと比較して、印刷機構部50の高さを低くすることが可能である。そのため、本実施例のプリンタ10では、下部ハウジング360の一部を印刷機構部50に干渉させることなく下方に突出させることが比較的容易に実現可能である。従って、例えば上部筐体30に相当する部分にスキャナ機構を備えた既存のオンキャリッジ方式のプリンタ用の筐体を、下部ハウジング360の形状変更といった些少の変更を行うだけで、本実施例のプリンタ10の筐体として流用することが可能である。
【0035】
図4に示すように、インク供給部330には、インクパック310のパック口60との接続部の上方を覆うガードプレート332が配設されている。ガードプレート332には、ホルダ380を下部ハウジング360に固定する固定ネジ388を締め付ける工具を挿入可能な開口部333が形成されている。
【0036】
図5は、インクパック310を載置したホルダ380を上部筐体30の内部に固定する様子を示す説明図である。ホルダ380には、インクパック310のパック口60に隣接する位置に、固定ネジ388に貫通して係合する貫通孔386が形成され、インクパック310のパック口60とは反対側に隣接する位置に、固定ネジ389に貫通して係合する貫通孔387が形成されている。上部筐体30の下部ハウジング360には、インクパック310を載置したホルダ380を固定する固定位置において、ホルダ380の貫通孔386を貫通した固定ネジ388と螺合するネジ穴368と、ホルダ380の貫通孔387を貫通した固定ネジ389と螺合するネジ穴369とが形成されている。
【0037】
インクパック310を載置したホルダ380を上部筐体30の内部に固定する際には、まず、インクパック310を載置したホルダ380のベース部382を、下部ハウジング360のホルダガイド362の上部から嵌め合わせる。その後、ホルダガイド362に沿ってホルダ380を供給針320へとスライドさせて、インクパック310のパック口60に供給針320を挿嵌する。その後、ホルダ380を固定ネジ388,389で下部ハウジング360に締結する。
【0038】
図6は、図4のA−A断面においてインクパック310をインク供給部330に接続する前の様子を示す説明図である。図7は、図4のA−A断面においてインクパック310をインク供給部330に接続した様子を示す説明図である。インク供給部330には、供給チューブ340に連通する中空流路322が形成された供給針320が配設されている。供給針320の一端は、テーパ状の尖端324として形成されている。供給針320の尖端324には、中空流路322に連通する供給溝326が形成されている。供給針320の供給溝326は、供給針320の尖端324から、供給針320の軸心に略沿った側壁321に亘って形成されている。図7に示すように、供給針320の供給溝326は、供給針320の軸心に略沿った縦面326aと、供給針320の軸心に交差する横面326bとによって区画される。供給針320の供給溝326は、本実施例では、供給針320の軸心を交点とする十字状(「+(プラス)」状)に形成されている。本実施例では、供給針320は、金型を用いてインク供給部330と共に一体成型された樹脂製部品である。
【0039】
インクパック310に配設されたパック口60には、インクパック310の内部に連通する供給口612が形成された供給口部610が配設されている。供給口612の入口には、供給口612に挿入された供給針320と密嵌する貫通孔642を有する筒状のパッキング640が配設されている。供給口612に配設されたパッキング640は、供給口部610に嵌合するキャップ620によって供給口612に圧入されている。
【0040】
供給口612の内部には、パッキング640に密着する封止面634を有する弁体630が収容されている。供給口612に収容された弁体630は、弾性部材であるコイルバネ650によって供給口612の内部からパッキング640に向けて付勢され、パッキング640の貫通孔642を封止する。弁体630には、供給口612の中心軸に略沿って供給口612の内面に当接する複数のガイド638が配設され、これら複数のガイド638の各間には、供給口612の内面と離間する離間面636が形成されている。弁体630においてパッキング640に当接する側には、供給針320の尖端324と嵌合する嵌合面632が形成されている。
【0041】
図7に示すように、パッキング640の貫通孔642に供給針320が挿入されると、供給針320の尖端324が弁体630の嵌合面632に嵌合した状態で、弁体630は、供給口612におけるインクパック310側へと押し込まれる。その際、供給針320の供給溝326は、弁体630の嵌合面632を超えて尖端324から側壁321に亘って形成されているため、供給口612と連通する。これによって、インクパック310の内部は、弁体630の離間面636と、供給針320の供給溝326とを通じて、供給針320の中空流路322に連通する。
【0042】
図8は、プリンタ10の印刷機構部50の構成を示す説明図である。印刷機構部50は、印刷用紙900に対するインク滴の噴射が実施される印刷領域に配設された長方形状のプラテン530を備える。プラテン530の上には、印刷用紙900が紙送り機構(図示しない)によって給送される。印刷機構部50は、供給チューブ340に接続され噴射ヘッド810を搭載したキャリッジ80を備える。キャリッジ80は、ガイドロッド520に沿ってプラテン530の長手方向へ移動可能に支持され、キャリッジ駆動部であるキャリッジモータ510によりタイミングベルト512を介して駆動される。これによって、キャリッジ80は、プラテン530の上を長手方向に往復運動する。本体筐体20の内部において、プラテン530が配設された印刷領域から一端側に外れた非印刷領域には、キャリッジ80を待機させるホームポジションが設けられている。そのホームポジションには、キャリッジ80をメンテナンスするメンテナンス機構部70が配設されている。
【0043】
図9は、プリンタ10を製造する製造方法を示すフローチャートである。プリンタ10にインクパック310を搭載する際には、まず、インクが充填されたインクパック310をホルダ380の傾斜板381に載置する(ステップS110)。その後、インクパック310を載置したホルダ380を、下部ハウジング360のホルダガイド362に挿嵌した後、ホルダ380を固定ネジ388,389で下部ハウジング360に固定して、複数のホルダ380を下部ハウジング360に並設する(ステップS120)。本実施例では、複数のホルダ380を下部ハウジング360に並設する工程において(ステップS120)、インクパック310のパック口60を供給針320に接続して、インクパック310の内部を、流体吐出部である印刷機構部50の噴射ヘッド810に連通させる。その後、複数のホルダ380を並設した下部ハウジング360に上部ハウジング370を封着することによって、上部筐体30の内部に複数のインクパック310を収容する(ステップS130)。
【0044】
以上説明した実施例のプリンタ10によれば、上部筐体30を開閉することにより、上部筐体30によって覆われた本体筐体20の部分に対して接触することができるため、インクパック310を配置する位置の自由度を向上させることができる。また、上部筐体30は、印刷機構部50の上方を開閉可能に本体筐体20に軸着されているため、インクパック310を収容する上部筐体30を印刷機構部50のカバーとして利用すると共に、上部筐体30を開閉することにより、本体筐体20に収容された印刷機構部50を容易にメンテナンスすることができる。
【0045】
また、インクパック310の各々がホルダ380の傾斜板381にそれぞれ載置されるため、複数のインクパック310を重ねて効率よく収容しながら、インクパック310の重さが隣接するインクパック310に伸し掛かるのを防止することができる。また、上部筐体30の閉状態から開状態を通じて、インクパック310が下方から保持されるため、インクパック310が自重によって隣接するホルダ380に過度に押し付けられてしまうのを防止することができる。
【0046】
また、下部ハウジング360にホルダ補助リブ364を立設することよって、傾斜板381が傾斜する方向の力に対してホルダ380を補強することができる。また、上部ハウジング370に端部補助リブ374を垂設することによって、傾斜板381が傾斜する側とは反対の端に位置するホルダ380に載置されたインクパック310が過度に変形してしまうのを抑制することができる。また、上部ハウジング370に中間補助リブ376を垂設することによって、隣接するホルダの傾斜板381の裏面でサポートされないインクパック310の上方が過度に変形してしまうのを抑制することができる。また、ホルダ380における傾斜板381の上端部383が、上部ハウジング370に設けられた係合部373に係合するため、ホルダ380が過度に変形してしまうのを抑制することができる。
【0047】
B.その他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。例えば、上部筐体30を本体筐体20に軸着するのではなく、上部筐体30を本体筐体20にスライド可能に取り付けても良い。これによって、上部筐体30にインクパック310をより安定した状態で収容することができる。
【0048】
また、下部ハウジング360にホルダ380を配設する向きを、図10に示すように、回動軸350の軸方向に略沿ってホルダ380を配設しても良い。図10の形態によれば、上部筐体30の閉状態から開状態を通じて、上部筐体30に保持されたインクパック310の各々の高さが略同一となるため、インクパック310の各々に収容されたインクの圧力水頭を略同一に揃えることができる。これによって、噴射ヘッド810から噴射されるインクの噴射品質を向上させることができる。また、図11に示すように、傾斜板381が傾斜する方向を回動軸350に向けてホルダ380を配設しても良い。図11の形態によれば、図2および図3に示すように傾斜板381が傾斜する方向を回動軸350とは反対側に向けてホルダ380を配設するよりも、上部筐体30の開状態にした場合においてインクパック310をホルダ380の傾斜板381により安定した状態で載置することができる。
【0049】
本発明の流体噴射装置が対象とする流体としては、上述したインク等の液体に限定するものではなく、金属ペースト,粉体,液晶等、各種の流体を対象とする趣旨である。流体噴射装置の代表例としては、上述したような画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置があるが、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置や、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射装置、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー,面発光ディスプレー(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用することができる。
【0050】
図12は、他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。また、図13は、他の実施形態における上部筐体30を開けた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図12および図13は、図2および図3に示した断面とは反対側から見た断面を示している。また、図14は、他の実施形態におけるプリンタ10の印刷機構部50周りの構成を示す説明図である。
【0051】
図12,13,14に示すように、供給チューブ340は、インク供給部330と印刷機構部50のキャリッジ80とを接続し、インクパック310内のインクをキャリッジ80へと供給する。供給チューブ340は、インク供給部330から回動軸350方向へと略水平(上部筐体30閉時)に伸びる部分(以下「第1水平部H1」と呼ぶ)と、第1水平部H1より下方の略水平面内に位置し回動軸350と略直交する方向に伸びる部分(以下「第2水平部H2」と呼ぶ)と、回動軸350に略平行な部分(以下「第3水平部H3」と呼ぶ)と、が順に連なった構成を有している。
【0052】
図15は、供給チューブ340の断面を示す説明図である。図15(a)には、第2水平部H2における供給チューブ340のインク流通方向に垂直な断面(図14のS1−S1断面)を示し、図15(b)には、第3水平部H3における供給チューブ340のインク流通方向に垂直な断面(図14のS2−S2断面)を示している。図15(a)および図15(b)に示すように、供給チューブ340には、4つのインクパック310に対応した4つの中空状のインク流路342が設けられている。なお、図15(a)に示すように、第2水平部H2においては、供給チューブ340のインク流通方向周りの向きは、4つのインク流路342が略水平に並ぶような向き(以下「横配置」とも呼ぶ)となっている。第1水平部H1における供給チューブ340の向きも同様である。一方、図15(b)に示すように、第3水平部H3においては、供給チューブ340のインク流通方向周りの向きは、4つのインク流路342が略垂直に並ぶような向き(以下「縦配置」とも呼ぶ)となっている。
【0053】
供給チューブ340の第1水平部H1と第2水平部H2との間(回動軸350付近)には、鉛直な半円弧に沿って湾曲した部分(以下「第1湾曲部R1」と呼ぶ)が設けられている。第1水平部H1および第2水平部H2は共に横配置であり、第1湾曲部R1はねじれを有していない。また、第2水平部H2と第3水平部H3との間には、水平な半円弧に沿って湾曲した部分(以下「第2湾曲部R2」と呼ぶ)が設けられている。第2水平部H2は横配置である一方、第3水平部H3は縦配置であるため、第2湾曲部R2は約90度のねじれを有している。また、第3水平部H3とキャリッジ80との間には、水平な半円弧に沿って湾曲した部分(以下「第3湾曲部R3」と呼ぶ)が設けられている。
【0054】
供給チューブ340は、図12および図13に示すように、上部筐体30を開ける動作に対し、回動軸350近辺に設けられた第1湾曲部R1の変形によって追随する。そのため、インク供給部330と印刷機構部50との間を比較的長い供給チューブ340で接続するプリンタ10においても、供給チューブ340の存在が上部筐体30の開閉に支障を及ぼすことが抑制される。
【0055】
なお、供給チューブ340は、図12および図13に示すように、継手410を有するとしてもよい。そして、供給チューブ340の継手410より印刷機構部50側の部分は、比較的柔軟性の高い材料(例えばポリエチレン系エラストマー)により形成されているとしてもよい。このようにすれば、供給チューブ340の第1湾曲部R1等の非直線形状部分を容易に形成することができると共に、第1湾曲部R1に良好な可撓性を持たせることができる。また、供給チューブ340の継手410よりインク供給部330側の部分は、比較的柔軟性の低い材料(例えばポリプロピレン)により形成されているとしてもよい。
【0056】
供給チューブ340は、第2湾曲部R2を挟んだ2つの位置に配設された支持部420および430により支持されている。支持部420および430は、直接または間接的にプリンタ10の本体筐体20に固着されている。そのため、供給チューブ340は、支持部420および430を介して、プリンタ10本体に支持される。
【0057】
図16は、他の実施形態における支持部420の構成を示す説明図である。図16(a)には、支持部420の上側平面を示し、図16(b)には、支持部420のインク流通方向に垂直な断面(図16(a)のS3−S3断面)を示している。図16(b)に示すように、支持部420は、水平方向に配置された長辺部材422と、長辺部材422の断面両端から上方に突出した短辺部材424と、短辺部材424の断面上端から内側に向かって水平方向に突出した浮き防止部426と、を有している。浮き防止部426は、図16(a)に示すように、1つの短辺部材424あたり2つ設けられており、インク流通方向に沿った位置は、2つの短辺部材424に設けられた浮き防止部426が同じ位置とならないように、互い違いに設定されている。長辺部材422と短辺部材424と浮き防止部426とは、供給チューブ340を収納する略長方形断面形状の空間を形成しており、供給チューブ340は、当該空間に納められる。このとき、浮き防止部426は、供給チューブ340の浮き・外れを防止する。
【0058】
支持部420は、さらに、短辺部材424の上記空間側に隣接した位置決め部材428を有する。図16の例では、位置決め部材428は3組設けられており、各組の位置決め部材428は供給チューブ340を挟んで互いに向かいあうような位置に配置されている。そのため、位置決め部材428は、2つの短辺部材424間の内法寸法を小さくする。位置決め部材428により、供給チューブ340は長辺方向に押さえられ、供給チューブ340のインク流通方向に沿った移動は抑制される。従って、供給チューブ340がプリンタ10の他の部分に干渉することが抑制される。
【0059】
なお、図15に示すように、供給チューブ340のインク流路342の断面は、円形ではなく、インク流路342が並ぶ方向(図15(a)の左右方向)に長い楕円形となっている。これは、例えば、第1湾曲部R1や第2湾曲部R2(図14参照)において供給チューブ340を湾曲させやすくするために、供給チューブ340の断面を楕円が結合した形状として、供給チューブ340の高さを小さく抑えるためである。ここで、図16(b)に示すように、支持部420の位置決め部材428が設けられた位置においては、供給チューブ340が両側の位置決め部材428から押されるため、インク流路342の断面が円形に近づき、インク流路342の断面積が増加する。従って、支持部420の位置決め部材428により、供給チューブ340内の流路抵抗を減少させることができる。
【0060】
なお、支持部430(図14参照)の構成は、図16に示した支持部420の構成と同様であるが、支持部420によって供給チューブ340の移動は抑制可能であるため、支持部430は位置決め部材428を有さなくてもよい。また、支持部430の配設される向きは、供給チューブ340の向きに合わせ、支持部420を略90度回転させた向きとなる。
【0061】
なお、支持部420および430は、ひねりを有するために位置ずれが発生しやすい第2湾曲部R2を挟んだ位置に配設されているため、供給チューブ340を安定的に支持可能となっている。
【0062】
図17は、他の実施形態におけるホルダ380と下部ハウジング360との接合構成を示す説明図である。図17(a)にはホルダ380の斜視図を示し、図17(b)には下部ハウジング360の斜視図を示し、図17(c)にはホルダ380と下部ハウジング360との嵌合部分の断面を示している。図17(a)に示すように、ホルダ380は、2つの接合部395を有している。一方、図17(b)に示すように、下部ハウジング360は、それぞれのホルダ380が設置されるべき位置に2つの接合部365を有している。ホルダ380は、ホルダ380の接合部395と下部ハウジング360の接合部365とが嵌合するように、横方向にスライドしながら下部ハウジング360に設置される。図17(c)に示すように、ホルダ380が下部ハウジング360に設置された状態では、ホルダ380の接合部395のL字部396と下部ハウジング360の接合部365のL字部366とが嵌合している。この嵌合により、ホルダ380と下部ハウジング360との相対移動が抑制される。そのため、例えばプリンタ10に衝撃が加えられた場合であってもホルダ380が下部ハウジング360から離脱するのを抑制することができる。また、外部の温湿度環境の変化等の影響によるホルダ380や下部ハウジング360の変形を抑制することができる。
【0063】
図18は、他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図18に示した実施形態では、インクパック310の設置態様が図2に示した実施例と異なる。すなわち、図2に示した実施例では、インクパック310が上部筐体30に設けられたホルダ380に固定されて設置される態様を採用しているが、図18に示した実施形態では、ホルダ380は設けられず、インクパック310が単体として上部筐体30内に設置される態様を採用している。このように、上部筐体30内へのインクパック310の設置には必ずしもホルダ380を用いる必要はなく、インクパック310を上部筐体30内に直接載置することも可能である。
【0064】
図19は、他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図19に示した実施形態では、インクパックの形状や設置態様が図2に示した実施例と異なる。すなわち、図19に示した実施形態では、箱形形状のインクパック310aが採用されており、また、インクパック310aは図18に示した実施形態と同様に上部筐体30内に直接載置されている。このように、インクパックの形状は、可撓性シートにより形成された袋形状に限られず、箱形形状といった他の形状を採用可能である。
【0065】
図20は、他の実施形態におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。図20に示した実施形態では、インクパック310の設置態様が図1に示した実施例と異なる。すなわち、図20に示した実施形態では、インクパック310は上部筐体30の内部に収納されず、プリンタ10の外部に配置される。図20に示した実施形態においても、インクパック310のパック口60は、上部筐体30に設けられた穴32を介して、インク供給部330に接続される。このように、インクパック310は、必ずしも上部筐体30の内部に収納される必要はなく、プリンタ10の外部に配置されるとしてもよい。
【0066】
また、図21は、変形例におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。図21に示した変形例では、インクの供給態様が図1に示した実施例と異なる。すなわち、図21に示した変形例では、インク供給部330にインクパック310のパック口60(図6参照)が接続され、パック口60とインクを収容したインクタンク990との間にチューブ980が設置されている。インクタンク990内のインクは、チューブ980、パック口60、インク供給部330を介して印刷機構部50へと供給される。図21に示した変形例は、例えばインクパック310内のインクを使い切った後に、インクパック310のパック口60のみを残してインクパック310を除去し、チューブ980およびインクタンク990を設置することにより実現される。
【符号の説明】
【0067】
10…プリンタ、12…給紙トレイ、14…排紙トレイ、20…本体筐体、30…上部筐体、32…穴、40…制御部、50…印刷機構部、60…パック口、70…メンテナンス機構部、80…キャリッジ、310…インクパック、320…供給針、321…側壁、322…中空流路、324…尖端、326…供給溝、326a…縦面、326b…横面、330…インク供給部、332…ガードプレート、333…開口部、340…供給チューブ、342…インク流路、350…回動軸、360…下部ハウジング、362…ホルダガイド、364…ホルダ補助リブ、365…接合部、368,369…ネジ穴、370…上部ハウジング、373…係合部、374…端部補助リブ、376…中間補助リブ、380…ホルダ、381…傾斜板、382…ベース部、383…上端部、384…裏面補助リブ、386,387…貫通孔、388,389…固定ネジ、395…接合部、410…継手、420…支持部、422…長辺部材、424…短辺部材、426…浮き防止部、428…位置決め部材、430…支持部、510…キャリッジモータ、512…タイミングベルト、520…ガイドロッド、530…プラテン、610…供給口部、612…供給口、620…キャップ、630…弁体、632…嵌合面、634…封止面、636…離間面、638…ガイド、640…パッキング、642…貫通孔、650…コイルバネ、810…噴射ヘッド、900…印刷用紙、980…チューブ、990…インクタンク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を噴射する流体噴射装置に関し、特に、噴射用の流体を収容した流体収容パックを流体噴射装置に配置する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の代表的なものとしては、例えば、紙やプラスチック等の薄板状の記録媒体に対してインク滴を噴射して文字や図形を記録するインクジェット式プリンタがある。その他、流体噴射装置としては、液晶ディスプレー,プラズマディスプレー,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー,面発光ディスプレー(Field Emission Display、FED)等を製造するディスプレー製造装置において、色材や電極等を形成する液体状の各種材料を、画素形成領域や電極形成領域に対して噴射するものがある。
【0003】
流体噴射装置は、流体を噴射対象物に噴射する噴射ヘッドを搭載したキャリッジを備え、キャリッジおよび記録媒体の少なくとも一方を移動させることによって、噴射対象物に対して流体が噴射される位置を調整する。流体噴射装置には、噴射用の流体を収容した流体収容パックをキャリッジから分離して配置した方式(いわゆるオフキャリッジ方式)を採用することによって、キャリッジを駆動する負荷の軽減を図ったものがある。下記特許文献1には、インクパックを収容したインクカートリッジを、プリンタ本体に挿入したオフキャリッジ方式のプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−47258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、流体収容パックの大容量化に対応可能な構成について十分に考慮されていなかった。例えば、大容量化した流体収容パックを配置する空間を装置内に確保することの困難性や、流体収容パックの増加した重さが隣接する他のパックに伸し掛かり流体漏れを発生させる虞といった問題があった。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、流体収容パックの大容量化に対応可能な流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]適用例1の流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射装置であって、噴射対象物に対して流体を吐出する流体吐出部と、前記流体吐出部を収容した本体筐体と、噴射用の流体を収容した流体収容パックと、回動軸を中心に回動して開閉可能に前記本体筐体に軸着され、前記流体収容パックを収容した収容ケースとを備えることを特徴とする。適用例1の流体噴射装置によれば、収容ケースを開閉することにより、収容ケースによって覆われた本体筐体の内部に対して接触することができるため、流体収容パックを配置する位置の自由度を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1の流体噴射装置であって、前記収容ケースは、前記流体吐出部の上方を開閉可能に前記本体筐体に軸着されても良い。適用例2の流体噴射装置によれば、本体筐体に収容された流体吐出部のカバーとして、収容ケースを利用すると共に、収容ケースを開閉することにより、本体筐体に収容された流体吐出部や紙搬送部における流体の吐出不良や噴射対象物の詰まり等に対処するためのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0010】
[適用例3]適用例1または2の流体噴射装置であって、前記流体収容パックは、袋部を有する複数の流体収容パックであり、前記回動軸は、前記収容ケースの内側底面に略沿った軸であり、前記流体噴射装置は、更に、前記収容ケースに内設され、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した傾斜板を有し、前記流体収容パックにおける袋部の一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置した複数のホルダを備え、前記複数のホルダは、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設されたものとすることができる。適用例3の流体噴射装置によれば、流体収容パックの各々がホルダの傾斜板にそれぞれ載置されるため、複数の流体収容パックを重ねて効率よく収容しながら、流体収容パックの重さが隣接するパックに伸し掛かるのを防止することができる。
【0011】
[適用例4]適用例3の流体噴射装置であって、前記ホルダの前記傾斜板は、前記収容ケースの閉状態から開状態を通じて重力方向の下方から前記流体収容パックに当接する角度で、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜しても良い。適用例3の流体噴射装置によれば、収容ケースの閉状態から開状態を通じて、流体収容パックが下方から保持されるため、流体収容パックが自重によって隣接するホルダに過度に押し付けられてしまうのを防止することができる。
【0012】
[適用例5]適用例3または4の流体噴射装置であって、前記複数のホルダは、前記収容ケースの前記回動軸の軸方向に略沿って並設されても良い。適用例5の流体噴射装置によれば、収容ケースの閉状態から開状態を通じて、収容ケースに保持された流体収容パックの各々の高さが略同一となるため、流体収容パックの各々に収容された流体の圧力水頭を略同一に揃えることができる。これによって、流体の噴射品質を向上させることができる。
【0013】
[適用例6]適用例6の流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射装置であって、噴射対象物に対して流体を吐出する流体吐出部と、前記流体吐出部を収容した本体筐体と、噴射用の流体を収容した複数の流体収容パックと、前記複数の流体収容パックを収容した収容ケースと、前記収容ケースに内設され、前記収容ケースの内側底面に対して傾斜した傾斜板を有し、前記流体収容パックの一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置した複数のホルダとを備えたことを特徴とする。適用例6の流体噴射装置によれば、流体収容パックの各々がホルダの傾斜板にそれぞれ載置されるため、流体収容パックの重さが隣接するパックに伸し掛かるのを防止することができる。
【0014】
[適用例7]適用例6の流体噴射装置であって、前記複数のホルダは、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設されても良い。適用例7の流体噴射装置によれば、流体収容パックの各々がホルダの傾斜板にそれぞれ載置されるため、複数の流体収容パックを重ねて効率よく収容することができる。
【0015】
[適用例8]適用例3ないし7のいずれかの流体噴射装置であって、更に、前記収容ケースの前記内側底面に設けられ、前記並設された複数のホルダのうち前記傾斜板が傾斜する側の端に位置するホルダにおける前記傾斜板の下方に向けて立設されたホルダ補助リブを備えても良い。これによって、傾斜板が傾斜する方向の力に対してホルダを補強することができる。
【0016】
[適用例9]適用例3ないし8のいずれかの流体噴射装置であって、更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記並設された複数のホルダのうち前記傾斜板が傾斜する側とは反対の端に位置するホルダに載置された前記流体収容パックの上方に沿って垂設された端部補助リブを備えても良い。これによって、傾斜板が傾斜する側とは反対の端に位置するホルダに載置された流体収容パックが過度に変形してしまうのを抑制することができる。
【0017】
[適用例10]適用例3ないし9のいずれかの流体噴射装置であって、更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方のうち、前記一方のホルダと前記他方のホルダとの間に挟まれた部位に沿って垂設された中間補助リブを備えても良い。これによって、隣接するホルダの傾斜板の裏面でサポートされない流体収容パックの上方が過度に変形してしまうのを抑制することができる。
【0018】
[適用例11]適用例3ないし10のいずれかの流体噴射装置であって、前記ホルダは、前記収容ケースの前記内側底面に固設され、更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記ホルダにおける前記傾斜板の上端に係合する係合部を備えても良い。これによって、ホルダが過度に変形してしまうのを抑制することができる。
【0019】
[適用例12]適用例12の製造方法は、流体を噴射する流体噴射装置の製造方法であって、噴射用の流体を収容した流体収容パックを、回動軸を中心に回動して開閉可能に本体筐体に軸着された収容ケースに収容するパック収容工程と、前記流体収容パックを収容した収容ケースを封着するケース封着工程とを備えることを特徴とする。適用例10の製造方法によれば、本体筐体に収容された流体吐出部や紙搬送部における流体の吐出不良や噴射対象物の詰まり等に対処するためのメンテナンスに際し、収容ケースを開閉することによりメンテナンスを容易に行うことができる流体噴射装置を製造することができる。
【0020】
[適用例13]適用例12の製造方法であって、前記流体収容パックは、扁平な袋部を有する複数の流体収容パックであり、前記回動軸は、前記収容ケースの内側底面に略沿った軸であり、前記パック収容工程は、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した傾斜板を有する複数のホルダに、前記流体収容パックの一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置する工程と、前記流体収容パックを載置した複数のホルダを、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設する工程とを含むものとすることができる。適用例11の製造方法によれば、複数の流体収容パックを重ねて効率よく収容しながら、流体収容パックの重さが隣接するパックに伸し掛かるのを防止することができる。
【0021】
[適用例14]適用例14の製造方法は、流体を噴射する流体噴射装置の製造方法であって、噴射用の流体を収容した流体収容パックを、該流体収容パックを収容する収容ケースの内側底面に対して傾斜した傾斜板を有するホルダに、前記流体収容パックの一方の側面が前記傾斜板の上面に当接するように載置して、前記収容ケースに収容するパック収容工程と、前記流体収容パックを収容したケースを封着するケース封着工程とを備えたことを特徴とする。適用例14の製造方法によれば、ホルダで下方から保持した状態で流体収容パックを収容ケースに収容することができるため、収容ケースへの収容作業中に流体収容パックが損傷してしまうのを防止することができる。
【0022】
[適用例15]適用例12ないし14のいずれかの製造方法であって、前記パック収容工程は、前記流体収容パックを流体吐出部に連通させる工程を含むとしても良い。適用例15の製造方法によれば、流体収容パックを収容ケースに収容する作業と同時に、流体収容パックを流体吐出部に連通させる作業を実施することができるため、流体噴射装置の製造工程における作業工数を削減することができる。
【0023】
本発明の形態は、流体噴射装置やその製造方法に限るものではなく、流体収容パックを収容する構造を有する他の形態に適用することもできる。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】プリンタ10の概略構成を示す説明図である。
【図2】上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図3】上部筐体30を開けた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図4】上部筐体30の内部を示す上面図である。
【図5】インクパック310を載置したホルダ380を上部筐体30の内部に固定する様子を示す説明図である。
【図6】図4のA−A断面においてインクパック310をインク供給部330に接続する前の様子を示す説明図である。
【図7】図4のA−A断面においてインクパック310をインク供給部330に接続した様子を示す説明図である。
【図8】プリンタ10の印刷機構部50の構成を示す説明図である。
【図9】プリンタ10を製造する製造方法を示すフローチャートである。
【図10】他の実施形態における上部筐体30の内部を示す上面図である。
【図11】他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図12】他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図13】他の実施形態における上部筐体30を開けた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図14】他の実施形態におけるプリンタ10の印刷機構部50周りの構成を示す説明図である。
【図15】供給チューブ340の断面を示す説明図である。
【図16】他の実施形態における支持部420の構成を示す説明図である。
【図17】他の実施形態におけるホルダ380と下部ハウジング360との接合構成を示す説明図である。
【図18】他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図19】他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。
【図20】他の実施形態におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。
【図21】他の実施形態におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した流体噴射装置について説明する。なお、本実施形態では、流体噴射装置の一形態である画像記録装置に代表されるインクジェット式プリンタを例に挙げて説明する。
【0026】
A.実施例:
図1は、プリンタ10の概略構成を示す説明図である。プリンタ10は、記録媒体である印刷用紙900に対してインク滴を噴射して文字や図形を記録するインクジェット式プリンタである。プリンタ10は、印刷用紙900に対してインク滴を吐出する流体吐出部である印刷機構部50を収容する本体筐体20を備え、本体筐体20には、印刷機構部50へと供給される印刷用紙900を本体筐体20の内部に導入する給紙トレイ12と、印刷機構部50から排出された印刷用紙900を本体筐体20の外部に導出する排紙トレイ14とが配設されている。印刷機構部50の詳細な構成については後述する。
【0027】
本体筐体20には、プリンタ10の各部を制御する制御部40が収容されている。本実施例では、制御部40は、セントラルプロセッシングユニット(Central Processing Unit、CPU)と、リードオンリメモリ(Read Only Memory、ROM)と、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)などのハードウェアを備えたASIC(Application Specific Integrated Circuits)を含む。制御部40には、プリンタ10の各種機能を実現させるソフトウェアがインストールされている。
【0028】
本体筐体20の上面には、各色の液体インクをそれぞれ収容した複数のインクパック310を収容する収容ケースである上部筐体30が配設されている。上部筐体30は、回動軸350を中心にして開閉可能に本体筐体20に軸着されている。
【0029】
本実施例では、インクパック310は、可撓性シートにより略楕円断面を有する略長方形の扁平な袋部として形成され、その短辺側の一方に、インクを導出可能なパック口60が設けられている。パック口60の詳細な構成については後述する。本実施例では、複数のインクパック310は、その長辺側の一方を持ち上げて斜めに重なり合う状態で保持されている。本実施例では、ブラック,シアン,マゼンダ,イエロの四色のインク毎に四つのインクパック310が上部筐体30に収容されている。他の実施形態として、これら4色に加え、ライトシアン,ライトマゼンダを加えた計六色のインクで印刷を行うプリンタでは、ライトシアン,ライトマゼンダを加えた計六色のインク毎に六つのインクパック310を上部筐体30に収容することができる。
【0030】
印刷機構部50に対するインク供給装置を構成する上部筐体30には、インクを導出可能にインクパック310に接続されたインク供給部330が配設されている。インク供給部330には、インクパック310からインク供給部330に導出されたインクを印刷機構部50へと流下する液体流路を形成する供給チューブ340が接続されている。供給チューブ340は、気体透過性を有する材料、例えば、オレフィン系やスチレン系などの熱可塑性エラストマで作製することができる。
【0031】
図2は、上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図3は、上部筐体30を開けた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図4は、上部筐体30の内部を示す上面図である。上部筐体30は、上部筐体30の内側底面を構成する下部ハウジング360と、上部筐体30の内側天井を構成する上部ハウジング370とを備える。下部ハウジング360には、下部ハウジング360によって構成された内側底面の一部である複数のホルダガイド362が、回動軸350に略平行であって相互に略等間隔に配設されている。図3に示すように、本実施例では、上部筐体30を開けることによって、本体筐体20に収容された印刷機構部50の上方が開放される。
【0032】
図2に示すように、上部筐体30には、インクパック310を載置した複数のホルダ380が内設されている。ホルダ380は、ホルダガイド362に対して傾斜した傾斜板381を有する。ホルダ380の傾斜板381の上面には、インクパック310の扁平な袋部の一方の側面が当接する状態で、インクパック310が載置されている。本実施例では、インクパック310は、ホルダ380の傾斜板381との当接する面の少なくとも一部分で両面テープによって接着されている。ホルダ380における傾斜板381の下方部には、ホルダガイド362に挿嵌可能なベース部382が形成されている。ベース部382がホルダガイド362に挿嵌された後、ホルダ380は、締結部材である固定ネジ388,389で下部ハウジング360に締結され固定される。複数のホルダ380は、傾斜板381が傾斜する側で隣り合う他のホルダ380に載置されたインクパック310の上方に、一方のホルダ380の傾斜板381が重なる状態で、下部ハウジング360の内側底面に沿ってずらして並設されている。図2および図3に示すように、ホルダ380の傾斜板381は、上部筐体30の閉状態から開状態を通じて重力方向の下方からインクパック310に当接する傾斜角θhで、下部ハウジング360のホルダガイド362に対して傾斜する。本実施例では、上部筐体30が回動軸350を中心に開閉可能な可動角θcが約45度であるのに対して、ホルダガイド362に対する傾斜板381の傾斜角θhは約40度である。
【0033】
図2に示すように、ホルダ380における傾斜板381の裏面には、隣接するホルダ380に載置されたインクパック310に沿った板状の裏面補助リブ384が垂設されている。下部ハウジング360の内側底面には、並設された複数のホルダ380のうち傾斜板381が傾斜する側の端に位置するホルダ380における傾斜板381の下方に向けて立設された板状のホルダ補助リブ364が設けられている。本実施例では、ホルダ補助リブ364の上部は、ホルダ380の傾斜板381の裏面に当接する。上部ハウジング370の内側天井には、並設された複数のホルダ380のうち傾斜板381が傾斜する側とは反対側の端に位置するホルダ380に載置されたインクパック310の上方に沿った板状の端部補助リブ374が垂設されている。上部ハウジング370の内側天井には、ホルダ380に載置されたインクパック310の上方のうち、二つのホルダ380間に挟まれた部位に沿って板状の中間補助リブが垂設されている。上部ハウジング370の内側天井には、ホルダ380における傾斜板381の上端部383に係合する係合部373が配設されている。
【0034】
なお、図2および図3に示すように、上部筐体30の下部ハウジング360は、インクパック310が設置される部分が下方に突出した形状となっている。これにより、インクパック310の設置のための上部筐体30内部のスペースを増大させることができる。なお、本実施例のプリンタ10は、インクを収容した容器がキャリッジから分離して配置されたいわゆるオフキャリッジ方式のプリンタであるため、インク収容容器がキャリッジ上に配置されたいわゆるオンキャリッジ方式のプリンタと比較して、印刷機構部50の高さを低くすることが可能である。そのため、本実施例のプリンタ10では、下部ハウジング360の一部を印刷機構部50に干渉させることなく下方に突出させることが比較的容易に実現可能である。従って、例えば上部筐体30に相当する部分にスキャナ機構を備えた既存のオンキャリッジ方式のプリンタ用の筐体を、下部ハウジング360の形状変更といった些少の変更を行うだけで、本実施例のプリンタ10の筐体として流用することが可能である。
【0035】
図4に示すように、インク供給部330には、インクパック310のパック口60との接続部の上方を覆うガードプレート332が配設されている。ガードプレート332には、ホルダ380を下部ハウジング360に固定する固定ネジ388を締め付ける工具を挿入可能な開口部333が形成されている。
【0036】
図5は、インクパック310を載置したホルダ380を上部筐体30の内部に固定する様子を示す説明図である。ホルダ380には、インクパック310のパック口60に隣接する位置に、固定ネジ388に貫通して係合する貫通孔386が形成され、インクパック310のパック口60とは反対側に隣接する位置に、固定ネジ389に貫通して係合する貫通孔387が形成されている。上部筐体30の下部ハウジング360には、インクパック310を載置したホルダ380を固定する固定位置において、ホルダ380の貫通孔386を貫通した固定ネジ388と螺合するネジ穴368と、ホルダ380の貫通孔387を貫通した固定ネジ389と螺合するネジ穴369とが形成されている。
【0037】
インクパック310を載置したホルダ380を上部筐体30の内部に固定する際には、まず、インクパック310を載置したホルダ380のベース部382を、下部ハウジング360のホルダガイド362の上部から嵌め合わせる。その後、ホルダガイド362に沿ってホルダ380を供給針320へとスライドさせて、インクパック310のパック口60に供給針320を挿嵌する。その後、ホルダ380を固定ネジ388,389で下部ハウジング360に締結する。
【0038】
図6は、図4のA−A断面においてインクパック310をインク供給部330に接続する前の様子を示す説明図である。図7は、図4のA−A断面においてインクパック310をインク供給部330に接続した様子を示す説明図である。インク供給部330には、供給チューブ340に連通する中空流路322が形成された供給針320が配設されている。供給針320の一端は、テーパ状の尖端324として形成されている。供給針320の尖端324には、中空流路322に連通する供給溝326が形成されている。供給針320の供給溝326は、供給針320の尖端324から、供給針320の軸心に略沿った側壁321に亘って形成されている。図7に示すように、供給針320の供給溝326は、供給針320の軸心に略沿った縦面326aと、供給針320の軸心に交差する横面326bとによって区画される。供給針320の供給溝326は、本実施例では、供給針320の軸心を交点とする十字状(「+(プラス)」状)に形成されている。本実施例では、供給針320は、金型を用いてインク供給部330と共に一体成型された樹脂製部品である。
【0039】
インクパック310に配設されたパック口60には、インクパック310の内部に連通する供給口612が形成された供給口部610が配設されている。供給口612の入口には、供給口612に挿入された供給針320と密嵌する貫通孔642を有する筒状のパッキング640が配設されている。供給口612に配設されたパッキング640は、供給口部610に嵌合するキャップ620によって供給口612に圧入されている。
【0040】
供給口612の内部には、パッキング640に密着する封止面634を有する弁体630が収容されている。供給口612に収容された弁体630は、弾性部材であるコイルバネ650によって供給口612の内部からパッキング640に向けて付勢され、パッキング640の貫通孔642を封止する。弁体630には、供給口612の中心軸に略沿って供給口612の内面に当接する複数のガイド638が配設され、これら複数のガイド638の各間には、供給口612の内面と離間する離間面636が形成されている。弁体630においてパッキング640に当接する側には、供給針320の尖端324と嵌合する嵌合面632が形成されている。
【0041】
図7に示すように、パッキング640の貫通孔642に供給針320が挿入されると、供給針320の尖端324が弁体630の嵌合面632に嵌合した状態で、弁体630は、供給口612におけるインクパック310側へと押し込まれる。その際、供給針320の供給溝326は、弁体630の嵌合面632を超えて尖端324から側壁321に亘って形成されているため、供給口612と連通する。これによって、インクパック310の内部は、弁体630の離間面636と、供給針320の供給溝326とを通じて、供給針320の中空流路322に連通する。
【0042】
図8は、プリンタ10の印刷機構部50の構成を示す説明図である。印刷機構部50は、印刷用紙900に対するインク滴の噴射が実施される印刷領域に配設された長方形状のプラテン530を備える。プラテン530の上には、印刷用紙900が紙送り機構(図示しない)によって給送される。印刷機構部50は、供給チューブ340に接続され噴射ヘッド810を搭載したキャリッジ80を備える。キャリッジ80は、ガイドロッド520に沿ってプラテン530の長手方向へ移動可能に支持され、キャリッジ駆動部であるキャリッジモータ510によりタイミングベルト512を介して駆動される。これによって、キャリッジ80は、プラテン530の上を長手方向に往復運動する。本体筐体20の内部において、プラテン530が配設された印刷領域から一端側に外れた非印刷領域には、キャリッジ80を待機させるホームポジションが設けられている。そのホームポジションには、キャリッジ80をメンテナンスするメンテナンス機構部70が配設されている。
【0043】
図9は、プリンタ10を製造する製造方法を示すフローチャートである。プリンタ10にインクパック310を搭載する際には、まず、インクが充填されたインクパック310をホルダ380の傾斜板381に載置する(ステップS110)。その後、インクパック310を載置したホルダ380を、下部ハウジング360のホルダガイド362に挿嵌した後、ホルダ380を固定ネジ388,389で下部ハウジング360に固定して、複数のホルダ380を下部ハウジング360に並設する(ステップS120)。本実施例では、複数のホルダ380を下部ハウジング360に並設する工程において(ステップS120)、インクパック310のパック口60を供給針320に接続して、インクパック310の内部を、流体吐出部である印刷機構部50の噴射ヘッド810に連通させる。その後、複数のホルダ380を並設した下部ハウジング360に上部ハウジング370を封着することによって、上部筐体30の内部に複数のインクパック310を収容する(ステップS130)。
【0044】
以上説明した実施例のプリンタ10によれば、上部筐体30を開閉することにより、上部筐体30によって覆われた本体筐体20の部分に対して接触することができるため、インクパック310を配置する位置の自由度を向上させることができる。また、上部筐体30は、印刷機構部50の上方を開閉可能に本体筐体20に軸着されているため、インクパック310を収容する上部筐体30を印刷機構部50のカバーとして利用すると共に、上部筐体30を開閉することにより、本体筐体20に収容された印刷機構部50を容易にメンテナンスすることができる。
【0045】
また、インクパック310の各々がホルダ380の傾斜板381にそれぞれ載置されるため、複数のインクパック310を重ねて効率よく収容しながら、インクパック310の重さが隣接するインクパック310に伸し掛かるのを防止することができる。また、上部筐体30の閉状態から開状態を通じて、インクパック310が下方から保持されるため、インクパック310が自重によって隣接するホルダ380に過度に押し付けられてしまうのを防止することができる。
【0046】
また、下部ハウジング360にホルダ補助リブ364を立設することよって、傾斜板381が傾斜する方向の力に対してホルダ380を補強することができる。また、上部ハウジング370に端部補助リブ374を垂設することによって、傾斜板381が傾斜する側とは反対の端に位置するホルダ380に載置されたインクパック310が過度に変形してしまうのを抑制することができる。また、上部ハウジング370に中間補助リブ376を垂設することによって、隣接するホルダの傾斜板381の裏面でサポートされないインクパック310の上方が過度に変形してしまうのを抑制することができる。また、ホルダ380における傾斜板381の上端部383が、上部ハウジング370に設けられた係合部373に係合するため、ホルダ380が過度に変形してしまうのを抑制することができる。
【0047】
B.その他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。例えば、上部筐体30を本体筐体20に軸着するのではなく、上部筐体30を本体筐体20にスライド可能に取り付けても良い。これによって、上部筐体30にインクパック310をより安定した状態で収容することができる。
【0048】
また、下部ハウジング360にホルダ380を配設する向きを、図10に示すように、回動軸350の軸方向に略沿ってホルダ380を配設しても良い。図10の形態によれば、上部筐体30の閉状態から開状態を通じて、上部筐体30に保持されたインクパック310の各々の高さが略同一となるため、インクパック310の各々に収容されたインクの圧力水頭を略同一に揃えることができる。これによって、噴射ヘッド810から噴射されるインクの噴射品質を向上させることができる。また、図11に示すように、傾斜板381が傾斜する方向を回動軸350に向けてホルダ380を配設しても良い。図11の形態によれば、図2および図3に示すように傾斜板381が傾斜する方向を回動軸350とは反対側に向けてホルダ380を配設するよりも、上部筐体30の開状態にした場合においてインクパック310をホルダ380の傾斜板381により安定した状態で載置することができる。
【0049】
本発明の流体噴射装置が対象とする流体としては、上述したインク等の液体に限定するものではなく、金属ペースト,粉体,液晶等、各種の流体を対象とする趣旨である。流体噴射装置の代表例としては、上述したような画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置があるが、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置や、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射装置、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー,面発光ディスプレー(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用することができる。
【0050】
図12は、他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。また、図13は、他の実施形態における上部筐体30を開けた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図12および図13は、図2および図3に示した断面とは反対側から見た断面を示している。また、図14は、他の実施形態におけるプリンタ10の印刷機構部50周りの構成を示す説明図である。
【0051】
図12,13,14に示すように、供給チューブ340は、インク供給部330と印刷機構部50のキャリッジ80とを接続し、インクパック310内のインクをキャリッジ80へと供給する。供給チューブ340は、インク供給部330から回動軸350方向へと略水平(上部筐体30閉時)に伸びる部分(以下「第1水平部H1」と呼ぶ)と、第1水平部H1より下方の略水平面内に位置し回動軸350と略直交する方向に伸びる部分(以下「第2水平部H2」と呼ぶ)と、回動軸350に略平行な部分(以下「第3水平部H3」と呼ぶ)と、が順に連なった構成を有している。
【0052】
図15は、供給チューブ340の断面を示す説明図である。図15(a)には、第2水平部H2における供給チューブ340のインク流通方向に垂直な断面(図14のS1−S1断面)を示し、図15(b)には、第3水平部H3における供給チューブ340のインク流通方向に垂直な断面(図14のS2−S2断面)を示している。図15(a)および図15(b)に示すように、供給チューブ340には、4つのインクパック310に対応した4つの中空状のインク流路342が設けられている。なお、図15(a)に示すように、第2水平部H2においては、供給チューブ340のインク流通方向周りの向きは、4つのインク流路342が略水平に並ぶような向き(以下「横配置」とも呼ぶ)となっている。第1水平部H1における供給チューブ340の向きも同様である。一方、図15(b)に示すように、第3水平部H3においては、供給チューブ340のインク流通方向周りの向きは、4つのインク流路342が略垂直に並ぶような向き(以下「縦配置」とも呼ぶ)となっている。
【0053】
供給チューブ340の第1水平部H1と第2水平部H2との間(回動軸350付近)には、鉛直な半円弧に沿って湾曲した部分(以下「第1湾曲部R1」と呼ぶ)が設けられている。第1水平部H1および第2水平部H2は共に横配置であり、第1湾曲部R1はねじれを有していない。また、第2水平部H2と第3水平部H3との間には、水平な半円弧に沿って湾曲した部分(以下「第2湾曲部R2」と呼ぶ)が設けられている。第2水平部H2は横配置である一方、第3水平部H3は縦配置であるため、第2湾曲部R2は約90度のねじれを有している。また、第3水平部H3とキャリッジ80との間には、水平な半円弧に沿って湾曲した部分(以下「第3湾曲部R3」と呼ぶ)が設けられている。
【0054】
供給チューブ340は、図12および図13に示すように、上部筐体30を開ける動作に対し、回動軸350近辺に設けられた第1湾曲部R1の変形によって追随する。そのため、インク供給部330と印刷機構部50との間を比較的長い供給チューブ340で接続するプリンタ10においても、供給チューブ340の存在が上部筐体30の開閉に支障を及ぼすことが抑制される。
【0055】
なお、供給チューブ340は、図12および図13に示すように、継手410を有するとしてもよい。そして、供給チューブ340の継手410より印刷機構部50側の部分は、比較的柔軟性の高い材料(例えばポリエチレン系エラストマー)により形成されているとしてもよい。このようにすれば、供給チューブ340の第1湾曲部R1等の非直線形状部分を容易に形成することができると共に、第1湾曲部R1に良好な可撓性を持たせることができる。また、供給チューブ340の継手410よりインク供給部330側の部分は、比較的柔軟性の低い材料(例えばポリプロピレン)により形成されているとしてもよい。
【0056】
供給チューブ340は、第2湾曲部R2を挟んだ2つの位置に配設された支持部420および430により支持されている。支持部420および430は、直接または間接的にプリンタ10の本体筐体20に固着されている。そのため、供給チューブ340は、支持部420および430を介して、プリンタ10本体に支持される。
【0057】
図16は、他の実施形態における支持部420の構成を示す説明図である。図16(a)には、支持部420の上側平面を示し、図16(b)には、支持部420のインク流通方向に垂直な断面(図16(a)のS3−S3断面)を示している。図16(b)に示すように、支持部420は、水平方向に配置された長辺部材422と、長辺部材422の断面両端から上方に突出した短辺部材424と、短辺部材424の断面上端から内側に向かって水平方向に突出した浮き防止部426と、を有している。浮き防止部426は、図16(a)に示すように、1つの短辺部材424あたり2つ設けられており、インク流通方向に沿った位置は、2つの短辺部材424に設けられた浮き防止部426が同じ位置とならないように、互い違いに設定されている。長辺部材422と短辺部材424と浮き防止部426とは、供給チューブ340を収納する略長方形断面形状の空間を形成しており、供給チューブ340は、当該空間に納められる。このとき、浮き防止部426は、供給チューブ340の浮き・外れを防止する。
【0058】
支持部420は、さらに、短辺部材424の上記空間側に隣接した位置決め部材428を有する。図16の例では、位置決め部材428は3組設けられており、各組の位置決め部材428は供給チューブ340を挟んで互いに向かいあうような位置に配置されている。そのため、位置決め部材428は、2つの短辺部材424間の内法寸法を小さくする。位置決め部材428により、供給チューブ340は長辺方向に押さえられ、供給チューブ340のインク流通方向に沿った移動は抑制される。従って、供給チューブ340がプリンタ10の他の部分に干渉することが抑制される。
【0059】
なお、図15に示すように、供給チューブ340のインク流路342の断面は、円形ではなく、インク流路342が並ぶ方向(図15(a)の左右方向)に長い楕円形となっている。これは、例えば、第1湾曲部R1や第2湾曲部R2(図14参照)において供給チューブ340を湾曲させやすくするために、供給チューブ340の断面を楕円が結合した形状として、供給チューブ340の高さを小さく抑えるためである。ここで、図16(b)に示すように、支持部420の位置決め部材428が設けられた位置においては、供給チューブ340が両側の位置決め部材428から押されるため、インク流路342の断面が円形に近づき、インク流路342の断面積が増加する。従って、支持部420の位置決め部材428により、供給チューブ340内の流路抵抗を減少させることができる。
【0060】
なお、支持部430(図14参照)の構成は、図16に示した支持部420の構成と同様であるが、支持部420によって供給チューブ340の移動は抑制可能であるため、支持部430は位置決め部材428を有さなくてもよい。また、支持部430の配設される向きは、供給チューブ340の向きに合わせ、支持部420を略90度回転させた向きとなる。
【0061】
なお、支持部420および430は、ひねりを有するために位置ずれが発生しやすい第2湾曲部R2を挟んだ位置に配設されているため、供給チューブ340を安定的に支持可能となっている。
【0062】
図17は、他の実施形態におけるホルダ380と下部ハウジング360との接合構成を示す説明図である。図17(a)にはホルダ380の斜視図を示し、図17(b)には下部ハウジング360の斜視図を示し、図17(c)にはホルダ380と下部ハウジング360との嵌合部分の断面を示している。図17(a)に示すように、ホルダ380は、2つの接合部395を有している。一方、図17(b)に示すように、下部ハウジング360は、それぞれのホルダ380が設置されるべき位置に2つの接合部365を有している。ホルダ380は、ホルダ380の接合部395と下部ハウジング360の接合部365とが嵌合するように、横方向にスライドしながら下部ハウジング360に設置される。図17(c)に示すように、ホルダ380が下部ハウジング360に設置された状態では、ホルダ380の接合部395のL字部396と下部ハウジング360の接合部365のL字部366とが嵌合している。この嵌合により、ホルダ380と下部ハウジング360との相対移動が抑制される。そのため、例えばプリンタ10に衝撃が加えられた場合であってもホルダ380が下部ハウジング360から離脱するのを抑制することができる。また、外部の温湿度環境の変化等の影響によるホルダ380や下部ハウジング360の変形を抑制することができる。
【0063】
図18は、他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図18に示した実施形態では、インクパック310の設置態様が図2に示した実施例と異なる。すなわち、図2に示した実施例では、インクパック310が上部筐体30に設けられたホルダ380に固定されて設置される態様を採用しているが、図18に示した実施形態では、ホルダ380は設けられず、インクパック310が単体として上部筐体30内に設置される態様を採用している。このように、上部筐体30内へのインクパック310の設置には必ずしもホルダ380を用いる必要はなく、インクパック310を上部筐体30内に直接載置することも可能である。
【0064】
図19は、他の実施形態における上部筐体30を閉じた状態のプリンタ10の概略構成を示す断面図である。図19に示した実施形態では、インクパックの形状や設置態様が図2に示した実施例と異なる。すなわち、図19に示した実施形態では、箱形形状のインクパック310aが採用されており、また、インクパック310aは図18に示した実施形態と同様に上部筐体30内に直接載置されている。このように、インクパックの形状は、可撓性シートにより形成された袋形状に限られず、箱形形状といった他の形状を採用可能である。
【0065】
図20は、他の実施形態におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。図20に示した実施形態では、インクパック310の設置態様が図1に示した実施例と異なる。すなわち、図20に示した実施形態では、インクパック310は上部筐体30の内部に収納されず、プリンタ10の外部に配置される。図20に示した実施形態においても、インクパック310のパック口60は、上部筐体30に設けられた穴32を介して、インク供給部330に接続される。このように、インクパック310は、必ずしも上部筐体30の内部に収納される必要はなく、プリンタ10の外部に配置されるとしてもよい。
【0066】
また、図21は、変形例におけるプリンタ10の概略構成を示す説明図である。図21に示した変形例では、インクの供給態様が図1に示した実施例と異なる。すなわち、図21に示した変形例では、インク供給部330にインクパック310のパック口60(図6参照)が接続され、パック口60とインクを収容したインクタンク990との間にチューブ980が設置されている。インクタンク990内のインクは、チューブ980、パック口60、インク供給部330を介して印刷機構部50へと供給される。図21に示した変形例は、例えばインクパック310内のインクを使い切った後に、インクパック310のパック口60のみを残してインクパック310を除去し、チューブ980およびインクタンク990を設置することにより実現される。
【符号の説明】
【0067】
10…プリンタ、12…給紙トレイ、14…排紙トレイ、20…本体筐体、30…上部筐体、32…穴、40…制御部、50…印刷機構部、60…パック口、70…メンテナンス機構部、80…キャリッジ、310…インクパック、320…供給針、321…側壁、322…中空流路、324…尖端、326…供給溝、326a…縦面、326b…横面、330…インク供給部、332…ガードプレート、333…開口部、340…供給チューブ、342…インク流路、350…回動軸、360…下部ハウジング、362…ホルダガイド、364…ホルダ補助リブ、365…接合部、368,369…ネジ穴、370…上部ハウジング、373…係合部、374…端部補助リブ、376…中間補助リブ、380…ホルダ、381…傾斜板、382…ベース部、383…上端部、384…裏面補助リブ、386,387…貫通孔、388,389…固定ネジ、395…接合部、410…継手、420…支持部、422…長辺部材、424…短辺部材、426…浮き防止部、428…位置決め部材、430…支持部、510…キャリッジモータ、512…タイミングベルト、520…ガイドロッド、530…プラテン、610…供給口部、612…供給口、620…キャップ、630…弁体、632…嵌合面、634…封止面、636…離間面、638…ガイド、640…パッキング、642…貫通孔、650…コイルバネ、810…噴射ヘッド、900…印刷用紙、980…チューブ、990…インクタンク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する流体噴射装置であって、
噴射対象物に対して流体を吐出する流体吐出部と、
前記流体吐出部を収容した本体筐体と、
噴射用の流体を収容した流体収容パックと、
回動軸を中心に回動して開閉可能に前記本体筐体に軸着され、前記流体収容パックを収容した収容ケースと
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
前記収容ケースは、前記流体吐出部の上方を開閉可能に前記本体筐体に軸着された請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の流体噴射装置であって、
前記流体収容パックは、袋部を有する複数の流体収容パックであり、
前記回動軸は、前記収容ケースの内側底面に略沿った軸であり、
前記流体噴射装置は、更に、前記収容ケースに内設され、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した傾斜板を有し、前記流体収容パックにおける前記袋部の一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置した複数のホルダを備え、
前記複数のホルダは、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設された流体噴射装置。
【請求項4】
前記ホルダの前記傾斜板は、前記収容ケースの閉状態から開状態を通じて重力方向の下方から前記流体収容パックに当接する角度で、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した請求項3記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記複数のホルダは、前記収容ケースの前記回動軸の軸方向に略沿って並設された請求項3または4記載の流体噴射装置。
【請求項6】
更に、前記収容ケースの前記内側底面に設けられ、前記並設された複数のホルダのうち前記傾斜板が傾斜する側の端に位置するホルダにおける前記傾斜板の下方に向けて立設されたホルダ補助リブを備える請求項3ないし5のいずれか記載の流体噴射装置。
【請求項7】
更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記並設された複数のホルダのうち前記傾斜板が傾斜する側とは反対の端に位置するホルダに載置された前記流体収容パックの上方に沿って垂設された端部補助リブを備える請求項3ないし6のいずれか記載の流体噴射装置。
【請求項8】
更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方のうち、前記一方のホルダと前記他方のホルダとの間に挟まれた部位に沿って垂設された中間補助リブを備える請求項3ないし7のいずれか記載の流体噴射装置。
【請求項9】
請求項3ないし8のいずれか記載の流体噴射装置であって、
前記ホルダは、前記収容ケースの前記内側底面に固設され、
更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記ホルダにおける前記傾斜板の上端に係合する係合部を備える流体噴射装置。
【請求項10】
流体を噴射する流体噴射装置の製造方法であって、
噴射用の流体を収容した流体収容パックを、回動軸を中心に回動して開閉可能に本体筐体に軸着された収容ケースに収容するパック収容工程と、
前記流体収容パックを収容した収容ケースを封着するケース封着工程と
を備える製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法であって、
前記流体収容パックは、袋部を有する複数の流体収容パックであり、
前記回動軸は、前記収容ケースの内側底面に略沿った軸であり、
前記パック収容工程は、
前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した傾斜板を有する複数のホルダに、前記流体収容パックの一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置する工程と、
前記流体収容パックを載置した複数のホルダを、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設する工程と
を含む製造方法。
【請求項12】
前記パック収容工程は、前記流体収容パックを流体吐出部に連通させる工程を含む請求項10または11記載の製造方法。
【請求項1】
流体を噴射する流体噴射装置であって、
噴射対象物に対して流体を吐出する流体吐出部と、
前記流体吐出部を収容した本体筐体と、
噴射用の流体を収容した流体収容パックと、
回動軸を中心に回動して開閉可能に前記本体筐体に軸着され、前記流体収容パックを収容した収容ケースと
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
前記収容ケースは、前記流体吐出部の上方を開閉可能に前記本体筐体に軸着された請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の流体噴射装置であって、
前記流体収容パックは、袋部を有する複数の流体収容パックであり、
前記回動軸は、前記収容ケースの内側底面に略沿った軸であり、
前記流体噴射装置は、更に、前記収容ケースに内設され、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した傾斜板を有し、前記流体収容パックにおける前記袋部の一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置した複数のホルダを備え、
前記複数のホルダは、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設された流体噴射装置。
【請求項4】
前記ホルダの前記傾斜板は、前記収容ケースの閉状態から開状態を通じて重力方向の下方から前記流体収容パックに当接する角度で、前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した請求項3記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記複数のホルダは、前記収容ケースの前記回動軸の軸方向に略沿って並設された請求項3または4記載の流体噴射装置。
【請求項6】
更に、前記収容ケースの前記内側底面に設けられ、前記並設された複数のホルダのうち前記傾斜板が傾斜する側の端に位置するホルダにおける前記傾斜板の下方に向けて立設されたホルダ補助リブを備える請求項3ないし5のいずれか記載の流体噴射装置。
【請求項7】
更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記並設された複数のホルダのうち前記傾斜板が傾斜する側とは反対の端に位置するホルダに載置された前記流体収容パックの上方に沿って垂設された端部補助リブを備える請求項3ないし6のいずれか記載の流体噴射装置。
【請求項8】
更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方のうち、前記一方のホルダと前記他方のホルダとの間に挟まれた部位に沿って垂設された中間補助リブを備える請求項3ないし7のいずれか記載の流体噴射装置。
【請求項9】
請求項3ないし8のいずれか記載の流体噴射装置であって、
前記ホルダは、前記収容ケースの前記内側底面に固設され、
更に、前記収容ケースの内側天井に設けられ、前記ホルダにおける前記傾斜板の上端に係合する係合部を備える流体噴射装置。
【請求項10】
流体を噴射する流体噴射装置の製造方法であって、
噴射用の流体を収容した流体収容パックを、回動軸を中心に回動して開閉可能に本体筐体に軸着された収容ケースに収容するパック収容工程と、
前記流体収容パックを収容した収容ケースを封着するケース封着工程と
を備える製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法であって、
前記流体収容パックは、袋部を有する複数の流体収容パックであり、
前記回動軸は、前記収容ケースの内側底面に略沿った軸であり、
前記パック収容工程は、
前記収容ケースの前記内側底面に対して傾斜した傾斜板を有する複数のホルダに、前記流体収容パックの一方の側面が前記傾斜板の上面に当接する状態で、前記流体収容パックの各々をそれぞれ載置する工程と、
前記流体収容パックを載置した複数のホルダを、前記傾斜板が傾斜する側で隣り合う他方のホルダに載置された前記流体収容パックの上方に、一方のホルダの前記傾斜板が重なる状態で、前記収容ケースの前記内側底面に沿ってずらして並設する工程と
を含む製造方法。
【請求項12】
前記パック収容工程は、前記流体収容パックを流体吐出部に連通させる工程を含む請求項10または11記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−183830(P2012−183830A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95379(P2012−95379)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2010−256530(P2010−256530)の分割
【原出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【分割の表示】特願2010−256530(P2010−256530)の分割
【原出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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