説明

流体噴射装置

【課題】ノズルのメニスカスを維持すること。
【解決手段】移動可能に設けられ、流体を噴射する複数のノズルを有する流体噴射ヘッドと、流体噴射ヘッドの流体を供給する流体供給源と、流体供給源に設けられ、流体噴射ヘッド側から流体供給源側へ向かう流体の流通を規制する逆止弁と、逆止弁を介して流体供給源に接続された上流部、及び、複数のノズルに接続され流体噴射ヘッドの移動に伴って移動可能な下流部、を有する供給経路と、上流部に設けられ、供給経路を流通する流体の流路損失を調整する第一調整部と、下流部に設けられ、第一調整部と共に流路損失を調整する第二調整部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を噴射する流体噴射装置として、例えばインクジェット式プリンタ装置(以下、「プリンタ装置」と表記する)などが知られている。プリンタ装置は、記録媒体に文字や画像等を記録する装置である。プリンタ装置は、記録ヘッドに設けられたノズルから記録媒体にインクが噴射される構成になっている。記録ヘッドは例えばキャリッジなどの移動機構に搭載され、記録媒体上を移動しながらインクを噴射する構成になっている。
【0003】
プリンタ装置にはインクカートリッジが搭載されるようになっており、当該インクカートリッジから記録ヘッドにインクが供給されるようになっている。例えばオフキャリッジ型と呼ばれるタイプのプリンタ装置は、インクカートリッジが装置のケース側に配置され、インクカートリッジから供給チューブを介して記録ヘッドにインクが供給される構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−224531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成においては、ヘッドの移動に伴って供給チューブが移動すると、供給チューブ内のインクに慣性力が働くことになる。当該慣性力により、例えばインクが供給チューブとヘッドとの間で急激に流通し、ヘッド内のメニスカスに影響を及ぼす虞がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、ノズルのメニスカスを維持することが可能な流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体噴射装置は、移動可能に設けられ、流体を噴射する複数のノズルを有する流体噴射ヘッドと、前記流体噴射ヘッドの前記流体を供給する流体供給源と、前記流体供給源に設けられ、前記流体噴射ヘッド側から前記流体供給源側へ向かう前記流体の流通を規制する逆止弁と、前記逆止弁を介して前記流体供給源に接続された上流部、及び、複数の前記ノズルに接続され前記流体噴射ヘッドの移動に伴って移動可能な下流部、を有する供給経路と、前記上流部に設けられ、前記供給経路を流通する前記流体の流路損失を調整する第一調整部と、前記下流部に設けられ、前記第一調整部と共に前記流路損失を調整する第二調整部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、供給経路の上流部に設けられ当該供給経路を流通する流体の流路損失を調整する第一調整部と、供給経路の下流部に設けられ第一調整部と共に流路損失を調整する第二調整部とを備えるので、供給経路の上流部及び下流部において、供給経路の流路損失を調整することができる。供給経路の流路損失を調整することで、当該流路損失によって流体の流通状態の急激な変化が吸収されることになる。これにより、流体噴射ヘッドと供給経路との間で流体が急激に流通するのを防ぐことができるので、流体噴射ヘッドに設けられるノズルのメニスカスを維持することができる。
【0009】
上記の流体噴射装置は、前記流体供給部を保持する保持部を更に備え、前記上流部は、前記保持部内に設けられた保持部内流路を有し、前記第一調整部は、前記保持部内流路に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、第一調整部が保持部内流路に設けられていることとしたので、保持部内流路において急激な流通状態の変化を防ぐことができる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、前記下流部は、前記流体噴射ヘッド内に設けられたヘッド内流路を有し、前記第二調整部は、前記ヘッド内流路に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、第二調整部がヘッド内流路に設けられていることとしたので、ヘッド内流路において急激な流通状態の変化を防ぐことができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記流体噴射ヘッドに連結され、前記前記流体噴射ヘッドの移動に伴って変形可能な連結部を更に備え、前記下流部は、前記連結部内に設けられた連結部内流路を有することを特徴とする。
本発明によれば、流体噴射ヘッドに連結され流体噴射ヘッドの移動に伴って変形可能な連結部を更に備え、下流部が当該連結部内に設けられた連結部内流路を有することとしたので、連結部内流路において急激な流通状態の変化を防ぐことができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記第一調整部は、前記連結部内流路の上流側に設けられ、前記第二調整部は、前記連結部内流路の下流側に設けられることを特徴とする。
本発明によれば、第一調整部と第二調整部とで、連結部内流路を上流側と下流側とで挟む位置に設けられることになるため、当該連結部内流路の急激な流通状態の変化をより確実に防ぐことができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記下流部のうち前記流体噴射ヘッドの近傍は、前記流体噴射ヘッドの移動方向に平行となるように配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、下流部のうち流体噴射ヘッドの近傍が流体噴射ヘッドの移動方向に平行となるように配置されていることとしたので、流体噴射ヘッドが移動しやすく、かつ、流体噴射ヘッドに流体が供給されやすい構成となる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記第一調整部は、前記上流部の一部を変形させる第一変形部を有することを特徴とする。
本発明によれば、第一調整部が上流部の一部を変形させる第一変形部を有するため、上流部の一部を変形させることで流路損失を調整することができる。
【0015】
上記の流体噴射装置は、前記第二調整部は、前記下流部の一部を変形させる第二変形部を有することを特徴とする。
本発明によれば、第二調整部が下流部の一部を変形させる第二変形部を有するため、下流部の一部を変形させることで流路損失を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】本実施形態に係る供給経路の構成を示す図。
【図3】印刷装置の制御装置の構成を示すブロック図。
【図4】ヘッドの移動と供給経路の圧力の変化との関係を示すグラフ。
【図5】ヘッドの移動と供給経路の圧力の変化との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷装置PRT(液体噴射装置)の概略構成を示す図である。本実施形態では、印刷装置PRTとして例えばインクジェット型の印刷装置を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に示す印刷装置PRTは、例えば、紙、プラスチックシートなどのシート状の媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。印刷装置PRTは、筐体PBと、媒体Mにインクを噴射するインクジェット機構IJと、インクジェット機構IJにインクを供給するインク供給機構SPと、媒体Mを搬送する搬送機構CVと、インクジェット機構IJの保全動作を行うメンテナンス機構MNと、これら各機構を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0019】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、水平面上の所定の方向をX方向とし、当該水平面上においてX方向に直交する方向をY方向とし、当該水平面に垂直な方向をZ方向と表記する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向とする。
【0020】
筐体PBは、例えばY方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット機構IJ、インク供給機構SP、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、例えばプラテン13が設けられている。プラテン13は、媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、例えば+X方向に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0021】
搬送機構CVは、例えば搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーターなどを有している。搬送機構CVは、例えば筐体PBの+Z側から当該筐体PBの内部に媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側、−X側あるいは+Z側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送機構CVは、筐体PBの内部において、媒体Mがプラテン13上を通過するように当該媒体Mを搬送する。搬送機構CVは、例えば制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0022】
インクジェット機構IJは、インクを噴射するヘッドHと、当該ヘッドHを保持して移動させるヘッド移動機構ACとを有している。ヘッドHは、プラテン13上に送り出された媒体Mに向けてインクを噴射する。ヘッドHは、インクを噴射する噴射面Haを有している。噴射面Haには、インクを噴射する複数のノズルNZ(図2等参照)が形成されている。各ノズルNZにおいては、安定したインク噴射を行うため、例えばメニスカスが調整された状態になっている。
【0023】
ヘッドHは、噴射面Haが水平面(XY平面)に対して傾斜状態となるように配置されている。ここで、傾斜状態とは、例えば水平面に対して垂直に配置された第一状態を含むものである。また、傾斜状態は、当該第位置状態に対して例えば0°より大きく20°未満の範囲で傾いた第二状態を含むものである。本実施形態では、噴射面Haが第一状態(水平方向に対して垂直)になっている場合を例に挙げて説明する。
【0024】
噴射面Haは、例えば−X方向に向けられている。噴射面Haは、例えばプラテン13の支持面13aに対向するように配置されている。本実施形態においては、ヘッドHの噴射面Haが−X方向に向けられた構成、すなわち、噴射面Haが水平面と垂直に配置された構成となっている。なお、噴射面Haが当該水平面と垂直な方向に対して0°〜20°程度の範囲で傾けられた構成としても構わない。
【0025】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジ4を有している。ヘッドHは、当該キャリッジ4に固定されている。キャリッジ4は、筐体PBの長手方向(Y方向)に架けられたガイド軸8に当接されている。ヘッド移動機構ACは、キャリッジ4の他、例えば不図示のパルスモーター、駆動プーリー、遊転プーリー、タイミングベルトなどを有している。キャリッジ4は、当該タイミングベルトに接続されている。キャリッジ4は、タイミングベルトの回転に伴ってY方向に移動可能に設けられている。Y方向へ移動する際、キャリッジ4は、ガイド軸8によって案内されるようになっている。
【0026】
インク供給機構SPは、ヘッドHにインクを供給する。インク供給機構SPは、例えば複数のインクカートリッジCTRを収容するカートリッジホルダCTHが設けられている。本実施形態の印刷装置PRTは、インクカートリッジCTRがヘッドHとは異なる位置(例えば、カートリッジホルダCTH)に収容される構成(オフキャリッジ型)である。インク供給機構SPは、当該供給チューブTBを介してヘッドHに接続されている。
【0027】
メンテナンス機構MNは、ヘッドHのホームポジションに配置されている。このホームポジションは、例えば媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域に設定されている。本実施形態では、例えばプラテン13の+Y側にホームポジションが設定されている。ホームポジションは、例えば印刷装置PRTの電源がオフである時や、長時間に亘って記録が行われない時などに、ヘッドHが待機する場所である。
【0028】
メンテナンス機構MNは、例えばヘッドHの噴射面Haを覆うキャッピング機構CPや、当該噴射面Haを払拭するワイピング機構WPなどを有している。キャッピング機構CPには、例えば吸引ポンプなどの吸引機構SCが接続されている。吸引機構SCにより、キャッピング機構CPは、例えば噴射面Haを覆いつつ当該噴射面Ha上の空間を吸引できるようになっている。キャッピング機構CPは、例えばヘッドHの噴射面Haの方向(+X方向)に向けられている。ヘッドHからメンテナンス機構MN側に排出された廃インクは、例えば廃液回収機構(不図示)において回収されるようになっている。
【0029】
図2は、インクカートリッジCTRからヘッドHのノズルNZまでのインクの供給経路RR(上流部R1及び下流部R2)を示す図である。図2では、複数設けられたインクカートリッジCTRのうち1つを代表させて示している。したがって、実際には、印刷装置PRTは、インクカートリッジCTRの数だけ図2に示す構成を有していることになる。
【0030】
図2に示すように、インクカートリッジCTRは、インク貯留室20A、インク供給室20B及び逆止弁20Cを有している。インク貯留室20Aは、インクを貯留させておく部分である(流体供給源)。インク供給室20Bは、インク貯留室20A内のインクを外部へ供給する部分である。逆止弁20Cは、インク供給室20B側からインク貯留室20A側へのインクの流通を規制する。したがって、インクは、インク貯留室20Aからインク供給室20Bへと一方にのみ流通するようになっている。
【0031】
インクカートリッジCTRは、例えばインク供給針31を介してカートリッジホルダCTHに接続されている。カートリッジホルダCTHは、内部にホルダ内流路RCが形成されている。ホルダ内流路RCは、上流側がインク供給針31の内部を介してインク供給室20Bに接続されている。ホルダ内流路RC及びインク供給室20Bにより、供給経路の上流部R1が形成されている。ホルダ内流路RCには、例えばチョークバルブCBが設けられている。当該チョークバルブCBは、例えばインクカートリッジCTRのインクを所期充填する際、ホルダ内流路RCの圧力を調整するために開閉するバルブである。
【0032】
カートリッジホルダCTHは、開口部OP1を有している。開口部OP1は、例えばホルダ内流路RCの一部に連通されるように形成されている。また、カートリッジホルダCTHには、当該開口部OP1を覆うように変形部材21が設けられている。変形部材21は、例えば弾性変形可能な材料によって形成された膜状部材である。変形部材21は、開口部OP1を塞ぐようにカートリッジホルダCTHの表面に例えば貼り付けられた状態になっている。
【0033】
変形部材21は、図中破線で示すように、例えばホルダ内流路RCからの圧力により、カートリッジホルダCTHの外側へ向けて変形するようになっている。変形部材21がこのように変形することで、ホルダ内流路RCの一部が変形する(膨張する)こととなる。このため、ホルダ内流路RCを流れるインクは、変形した部分にも流通するようになる。インクの流通範囲が広がることで、ホルダ内流路RCにおけるインクの流路損失がその分増加することになる。このように、変形部材21は、カートリッジホルダCTHの外側へ向けて変形することで、ホルダ内流路RCにおけるインクの流路損失を増加させることができるようになっている。また、逆にカートリッジホルダCTHの内側へ向けて変形することで、ホルダ内流路RCにおけるインクの流路損失を減少させることができるようになっている。このように、変形部材21は、ホルダ内流路RC、ひいては供給経路RRの流路損失を調整可能になっており、いわゆるダンパーとして機能する。
【0034】
ホルダ内流路RCの下流側は、例えば供給チューブTB内に形成されるチューブ内流路RTに接続されている。供給チューブTBは、例えばヘッドHの移動に伴って変形可能及び移動可能に形成されている。したがって、当該供給チューブTBの内部に設けられるチューブ内流路RTについても、ヘッドHの移動に伴って変形可能、移動可能な構成となっている。供給チューブTBのうちヘッドHとの連結部分の近傍では、当該ヘッドHの移動方向(Y方向)に平行に配置されている。このため、ヘッドHが移動しやすく、かつ、供給チューブTBからヘッドHに対してインクが供給されやすい構成となっている。
【0035】
ヘッドHの内部には、ヘッド内流路RHが形成されている。チューブ内流路RTの下流側は、当該ヘッド内流路RHに接続されている。ヘッド内流路RHは、ヘッドHの噴射面Haに向けて形成されており、各ノズルNZに接続されている。このように、チューブ内流路RT及びヘッド内流路RHにより、供給経路RRの下流部R2が形成されている。
【0036】
ヘッドHは、開口部OP2を有している。開口部OP2は、例えばヘッドHの+Y側の面からヘッド内流路RHに向けて形成されている。開口部OP2は、ヘッド内流路RHの一部とヘッドHの外部とを連通するように形成されている。ヘッドHの+Y側の面には、当該開口部OP2を覆うように変形部材22が設けられている。変形部材22は、例えば弾性変形可能な材料によって形成された膜状部材である。変形部材22として、例えば上記の変形部材21と同一の材料を用いても構わないし、異なる材料を用いても構わない。変形部材22は、開口部OP2を塞ぐようにヘッドHに貼り付けられた状態になっている。
【0037】
変形部材22は、図中破線で示すように、例えばヘッド内流路RHからの圧力により、ヘッドHの外側へ向けて変形するようになっている。変形部材22がこのように変形することで、ヘッド内流路RHの一部が変形(膨張する)することとなる。このため、ヘッド内流路RHを流れるインクは、変形した部分にも流通するようになる。インクの流通範囲が広がることで、ヘッド内流路RHにおけるインクの流路損失がその分増加することになる。このように、変形部材22は、ヘッドHの外側へ向けて変形することで、ヘッド内流路RHにおけるインクの流路損失を増加させることができるようになっている。また、逆にヘッドHの内側へ向けて変形することで、ヘッド内流路RHにおけるインクの流路損失を減少させることができるようになっている。このように、変形部材22は、ヘッド内流路RHの流路損失を調整可能であり、ひいては、変形部材21と共に供給経路RRの流路損失を調整可能になっており、いわゆるダンパーとして機能する。
【0038】
なお、変形部材21はチューブ内流路RTの上流側に配置されており、変形部材22はチューブ内流路RTの下流側に配置されていることになる。このため、変形部材21と変形部材22とは、インクの流通方向においてチューブ内流路RTを挟むように配置されている。
【0039】
図3は、印刷装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態における印刷装置PRTは、全体の動作を制御する制御装置CONTを備えている。制御装置CONTには、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、印刷装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0040】
制御装置CONTには、インクジェット機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MNなど、印刷装置PRTの各部が接続されている。印刷装置PRTは、ヘッドHに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。
【0041】
駆動信号発生器62には、ヘッドHに入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0042】
次に、上記のように構成された印刷装置PRTの動作を説明する。
ヘッドHによる印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、搬送機構CRによって記録媒体Mを上記支持面13a上に配置させる。記録媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、印刷する画像の画像データに基づいて、ヘッドHに駆動信号を入力する。この動作により、ヘッドHの噴射面Haに形成されたノズルNZからインクが−X方向に噴射され、噴射されたインクによって、記録媒体Mに所望の画像が形成される。
【0043】
制御装置CONTは、ヘッドHのメンテナンス動作として、例えばキャッピング動作、ノズルNZ内のインクの排出(クリーニング)動作などを行わせる。キャッピング動作を行わせる場合、制御装置CONTは、ヘッドHをホームポジションに移動させた状態で行う。
【0044】
印刷動作、メンテナンス動作のそれぞれにおいて、制御装置CONTは、ヘッドHをY方向に移動させる場合がある。ヘッドHをY方向に移動させると、ヘッドHの移動に伴って供給チューブTBについても移動する。例えばヘッドHを+Y方向に加速する場合(例えば、図4のグラフ(1))、供給チューブTB内のインクに対して慣性力が働く。当該慣性力により、+Y方向に移動するヘッドHに対して、インクは相対的に−Y方向に移動しようとする。このため、チューブ内流路RTからヘッド内流路RHへとインクが急激に流入することになる(例えば、図4のグラフ(2))。このため、ヘッド内流路RHの圧力が急激に変化し、例えばノズルNZのメニスカスに悪影響を及ぼす場合がある。
【0045】
これに対して、本実施形態では、供給チューブTBの下流側に変形部材22が配置されている。このため、例えばヘッドHを上記のように+Y方向に移動すると(例えば、図5のグラフ(4))、チューブ内流路RTのインクが急激にヘッド内流路RHに流れ込むものの、当該インクの流れの圧力によって例えばヘッド内流路RHの変形部材22がヘッドHの外側に変形する。変形部材22の変形により、ヘッド内流路RHが変形され、当該ヘッド内流路RHの流路損失が大きくなる。このため、ヘッド内流路RHに流れ込むインクの勢いは、流路損失によって時間の経過と共に吸収されて小さくなる(例えば、図5のグラフ(5))。
【0046】
一方、ヘッドHを−Y側に移動させる場合にも、供給チューブTB内のインクに対して慣性力が働く。当該慣性力により、−Y方向に移動するヘッドHに対して、インクは相対的に+Y方向に移動しようとする。この挙動により、ヘッド内流路RHのインクがチューブ内流路RTへと急激に流出することになる。当該インクの流出により、ヘッド内流路RHの圧力が急激に変化する(例えば、図4のグラフ(3))。
【0047】
これに対して、本実施形態では、供給チューブTBの上流側に変形部材21が配置されている。このため、例えばヘッドHを上記のように−Y方向に移動すると、ヘッド内流路RHのインクが急激にチューブ内流路RTに流れ込み、チューブ内流路RTからホルダ内流路RCに流れ込むものの、当該インクの流れの圧力によって例えばホルダ内流路RCの変形部材21がカートリッジホルダCTHの外側に変形する。変形部材21の変形により、ホルダ内流路RCが変形され、当該ホルダ内流路RCの流路損失が大きくなる。このため、ホルダ内流路RCに流れ込むインクの勢い、すなわち、ヘッド内流路RHから流れ出すインクの勢いは、流路損失によって時間の経過と共に吸収されて小さくなる(例えば、図5のグラフ(6))。
【0048】
なお、上記の図4及び図5に示すグラフ(2)、(3)、(5)、(6)は、縦軸が圧力を示しており(基準値:−1000Pa)、横軸が時間を示している。また、ヘッドHの移動を示すグラフ(1)、(4)については、縦軸が速度、横軸が時間を示している。当該グラフ(1)、(4)については、ヘッドHの移動時刻と圧力変動の時刻とを対応させるためにそれぞれ1つのグラフ内に挿入したものである。したがって、グラフ(1)、(4)の縦軸の値は相対値である。
【0049】
また、ヘッドHをY方向に往復移動させる場合、例えば+Y方向に移動させてから−Y方向に移動させる場合において、例えば+Y方向にヘッドHを移動させるとヘッドHの外側に変形した変形部材22にインクが流れ込み、その後ヘッドHを−Y方向に移動させると当該変形部材22に流れ込んだインクが流出され、当該インクが変形部材21へと流れ込むことになる。
【0050】
このように、変形部材21及び変形部材22は、両者の間でインクを往復させる。当該インクは、変形部材21と変形部材22とで挟まれたチューブ内流路RTを往復することになる。インクが供給チューブTBのチューブ内流路RTを往復移動すると、供給経路RR(上流部R1及び下流部R2)において流路損失が発生する。当該流路損失により、インクの流れる勢いが減殺され、供給経路RR内のインクの流通状態の急激な変動が抑制されることになる。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、変形部材21及び変形部材22によって供給経路RRの流路損失を調整することができるため、当該流路損失によってインクの流通状態の急激な変化が吸収されることになる。これにより、ヘッドHと供給経路RRとの間でインクが急激に流通するのを防ぐことができるので、ヘッドHに設けられるノズルNZのメニスカスを維持することができる。
【0052】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、ヘッドHの噴射面Haが水平方向に対して垂直になるように配置された第一状態となっている構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば当該第一状態に対して、噴射面Haが例えば0°より大きく20°未満の範囲で傾いた第二状態になっている構成であっても、上記説明が可能である。また、ヘッドHの噴射面Haが水平方向に平行となるように配置された構成であっても構わない。
【0053】
また、上記実施形態では、供給経路RR内の圧力の変動(若しくはインクの勢い)によって変形する変形部材21及び22を用いて供給経路RR内の流路損失を調整する構成としたが、これに限られることは無い。流路損失は、流路の長さが長くなればその分大きくなるため、これを利用することもできる。このような構成としては、例えば、供給経路RR内に経路長の異なる2つの経路を設けておき、圧力の変動に応じて経路長の長い方の経路と、経路長の短い方の経路とを切り替えてインクを流通させる構成などが挙げられる。
【0054】
また、上述の実施形態では、本発明の流体噴射装置をインクジェット式のプリンターに適用しているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用してもよい。すなわち、微小量の液滴を吐出する流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に適用可能である。なお、液滴とは、上述流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれよい。
【0055】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては、上述実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0056】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0057】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0058】
PRT…印刷装置 H…ヘッド NZ…ノズル CTR…インクカートリッジ CTH…カートリッジホルダ TB…供給チューブ RR…供給経路 R1…上流部 R2…下流部 RC…ホルダ内流路 RT…チューブ内流路 RH…ヘッド内流路 20A…インク貯留室 20B…インク供給室 20C…逆止弁 21…変形部材 22…変形部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に設けられ、流体を噴射する複数のノズルを有する流体噴射ヘッドと、
前記流体噴射ヘッドの前記流体を供給する流体供給源と、
前記流体供給源に設けられ、前記流体噴射ヘッド側から前記流体供給源側へ向かう前記流体の流通を規制する逆止弁と、
前記逆止弁を介して前記流体供給源に接続された上流部、及び、複数の前記ノズルに接続され前記流体噴射ヘッドの移動に伴って移動可能な下流部、を有する供給経路と、
前記上流部に設けられ、前記供給経路を流通する前記流体の流路損失を調整する第一調整部と、
前記下流部に設けられ、前記第一調整部と共に前記流路損失を調整する第二調整部と
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
前記流体供給部を保持する保持部を更に備え、
前記上流部は、前記保持部内に設けられた保持部内流路を有し、
前記第一調整部は、前記保持部内流路に設けられている
請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記下流部は、前記流体噴射ヘッド内に設けられたヘッド内流路を有し、
前記第二調整部は、前記ヘッド内流路に設けられている
請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記流体噴射ヘッドに連結され、前記流体噴射ヘッドの移動に伴って変形可能な連結部を更に備え、
前記下流部は、前記連結部内に設けられた連結部内流路を有する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記第一調整部は、前記連結部内流路の上流側に設けられ、
前記第二調整部は、前記連結部内流路の下流側に設けられる
請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記下流部のうち前記流体噴射ヘッドの近傍は、前記流体噴射ヘッドの移動方向に平行となるように配置されている
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記第一調整部は、前記上流部の一部を変形させる第一変形部を有する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記第二調整部は、前記下流部の一部を変形させる第二変形部を有する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224880(P2011−224880A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97293(P2010−97293)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】