説明

流体圧開閉弁

【課題】バルブ部材の損傷を軽減し、バルブ全体の寿命が延ばし、保守に要する時間・経費を節約する。
【解決手段】バルブスリーブ25内に主弁体1を移動可能に配置し、主弁体1は、バルブスリーブ内を前進することでバルブスリーブの弁座26bに当接して弁流路を閉じ、後退して弁流路を開く。主弁体の後向面側に一次流体の流体圧力が付加される受圧面6aを設け、受圧面に圧力を付加する流体圧側と二次流体圧側とを連通させる圧抜き流路4を設け、主弁体に、主弁体に対し移動可能でかつ主弁体に対する後退量が規制された副弁体10を配置する。副弁体10は、前進することで主弁体に設けた弁座に当接して圧抜き流路4を閉じ、後退することで圧抜き流路を開く。副弁体10に、副弁体を前記軸方向に沿って移動させるアクチュエータの作動部50を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば水圧源(一次流体圧側)と水圧シリンダー(二次流体圧側)をつなぐ配管流路の間に設けられて、開閉することで水圧シリンダーの作動・停止などを可能とする流体圧開閉弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水圧鍛造プレス・水圧押出しプレス等の圧力30MPaに至る水圧駆動システムに用いられる開閉弁には、2種類の方式が知られている。その1種類は、図4に示す「突上げ式ポペット型」(非特許文献1参照)であり、またもう1種類は、特許文献1に提案されている「作業機用水圧バルブ」における「レバー式スプール型」である。
【0003】
先ず、図4に示す「突上げ式ポペット型」について説明する。本図は非特許文献1から引用したものである。
本水圧バルブは、ポペット部(A)、突上げロッド部(B)、揺動リンク部(C)、およびバランスロッド部(D)から構成されている。
【0004】
ポペット部(A)の詳細を図5に示し、以下に説明する。
親バルブ26はバルブブロック21に組込まれたバルブスリーブ25をガイドとして上下に作動するように構成されている。バルブスリーブ25は親バルブ押え28によってバルブブロック21に固定され、外部シール32、内部シール33によって外気と一次側圧力ポート22と二次側圧力ポート24を分離している。親バルブ26の上部には上部チャンバー23が形成されており、該上部チャンバー23には、バルブスリーブ25に設けられたチャンバー導通穴25aを通じて一次側圧力ポート22の圧力が導かれている。この圧力によって親バルブ26が常に下方に押付けられ、バルブスリーブ25の弁座26bに当接して親バルブシート面が全閉状態となる。これにより一次側から二次側への水の流れが遮断される。
【0005】
工場の高圧アキュムレータにつながっている一次側圧力ポート22は、例えば常に30MPaの高圧力状態であり、圧力チャンバー23も同圧である。二次側圧力ポート24は主にシリンダ負荷側につながり、負荷圧力によって回路中のタンク圧力から一次圧力の間の値をとる。従って開弁状態下では必ず一次側から二次側へ水は流れようとする。
次に、突上げロッド34を上昇させることによって親バルブ26内部に設置した子バルブ29の先端のへそ状に突き出た部分(以下へそ部29cと呼ぶ)を親バルブ26内部へ押し込む。これにより子バルブ29のシート面29bが開き、上部チャンバー23内の水の圧縮ボリューム分が子バルブ29の内部空間および子バルブ導通穴29a、親バルブ導通穴26aをとおして瞬時に二次側圧力ポート24側に流出し、上部チャンバー23内圧力は二次側圧力ポート24と同圧まで降下する。上下の圧力バランスがとれることで親バルブ26は突上げロッド34の先端に乗った状態で抵抗無く上昇することが可能となる。これにより親バルブ26のシート面26bが開く。すなわち上記突上げロッド34を上昇・下降させ、親バルブ26を開閉する構造によって「突上げ式水圧開閉弁」を構成している。
【0006】
突上げロッド部(B)は、図4に示すように突上げロッド34、ロッドガイド35、Vパッキン36、パッキン押え37から構成されておりロッド駆動時のガイドと水圧のシールを行っている。
揺動リンク部(C)はストローク調整ねじ38、揺動ロッド39、揺動プレート40から構成されていて親バルブ26の突上げ位置の調整を行っている。
バランスロッド部(D)は突上げロッド部(B)と同一の構造および寸法となっており、二次側圧力ポート24の圧力によって発生する突上げロッド34の押し下げをキャンセルさせている。
【0007】
次に、特許文献1に示され、フォークリフト等の作業機用水圧バルブとして用いられる「スプール型」開閉弁について説明する。
このバルブは、シリンダと、スプール駆動によって流入口ポートまたは流出口ポートに連通するチェック弁下部室との間の流路に装備される。作業機の作動時に流入口ポートからの加圧水で開放され、作業機の設定位置保持時に、流出口ポートからの加圧水排出で低下するチェック弁下部室内圧力とシリンダ内の加圧水の差圧で流路を遮断する。このため、差圧によりチェックバルブは流路を面シートで閉鎖し、作動流体に加圧水を使用しても、隙間からの漏洩はバルブでほとんど阻止でき、特に作業機の一定位置に保持時には、加圧水の使用でも漏洩がほとんど無く、設定位置・設定姿勢を正確に保持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−106736号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ernst Mu¨ller著、Ventilantrieb mit entraster Hebestange.、「Hydrauliche Schmiedepressen und Kraftwasseranlagen」、Springer−Verlag社発行、1952年、abb.100、124頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来のバルブのうち、前者の「突上げ式ポペット型」では、下記3点において欠点があった。
(1)1点目は、突上げロッド34の突上げ動作によってへそ部29c下端が塑性変形し、さらには磨耗して、突き出し高さが著しく減少してへそ部29cが無いに等しい状況になりやすいというものである。
へそ部29c高さが大きく減少すると子バルブ29のリフト量が大きく減少して、上部チャンバー23の圧力が抜けづらくなり、突上げロッド34の突上げ量に比例した親バルブ26のリフトが得られなくなり開閉動作が不能となる欠点があった。
また、まれには子バルブ29のへそ部29cが折損し子バルブ29を開くことができず、その結果、親バルブ26が開くことが不可能になり水圧バルブとして機能しない事態となる欠点があった。
【0011】
へそ部29c下端が塑性変形し、さらには磨耗および折損する現象は次の原因による。 1つ目には、下方より突上げられる子バルブ29の構造上、突上げられるへそ部直径寸法は子バルブシート面29cの最小直径寸法より、圧抜きに必要な隙間分だけ更に小さい寸法に制限せざるを得ないため、接触面積が大きくとれないことが原因である。このため突上げロッド34により突上げられる度に、へそ部下端29cの接触面圧が非常に高い値となっていることが塑性変形および磨耗する現象となっている。また、この塑性変形および磨耗を軽減する目的でへそ部29cのみを表面焼入れまたは部分焼入れで硬度を上げることを試みることがあったが、その場合の多くはへそ部29cが折損する現象が発生した。2つ目には、硬度が上がることによる反面、靭性の低下の影響を受け、繰返し作用する突上げ時の衝撃に耐えられないことが原因と考える。
【0012】
(2)2点目としては、親バルブ26が突上げロッド34によって開いている状態の下で、さらに一次側圧力ポート22と二次側圧力ポート24の圧力がどちらも同一値30MPaかあるいは非常に近い値になっている場合に、突上げロッド34の下降動作に対して親バルブ26が追従しない欠点があった。すなわち突上げロッド34が瞬間的に下降を開始しても親バルブは下降を開始せずに残っており、一呼吸おいてから降下する現象があった。これは突上げロッド34が、親バルブ26と結合されていないという構造上の問題である。突上げロッド34が下降することで子バルブ26が閉じ、上部チャンバー23にチャンバー導通穴25aからの圧水が入り込み親バルブ26を閉じようとするが、親バルブ26上下の圧力に差が無いとチャンバー導通穴25aから上部チャンバー23に圧水が入り込めず親バルブ26が下向きに降りて来ることができない状態になるためである。これに対して突上げロッド34は極めて高い応答速度の油圧サーボで制御されるため親バルブ26は突上げロッド34に対して必ず応答遅れを起こす欠点があった。
【0013】
チャンバー導通穴25aは一次側圧力ポート22の圧力を親バルブ26の上部チャンバー23に導き、一次側圧力によって親バルブシート面26bをバルブスリーブ25に押付けて、親バルブ26の閉弁状態を維持する機能を持っている。親バルブ26の開弁・閉弁動作時の過渡状態を考えると、この導通穴25aの大きさを適切に決定することは非常に難しい。開弁動作時には子バルブ29が突上げロッド34によって突上げられることで上部チャンバー23内の圧抜きが瞬時に行なわれ、親バルブ26をバルブスリーブ25に押付ける力が消失し、引き続き、突上げロッド34によって親バルブ26が瞬時に開弁する訳であるが、導通穴25aが大きすぎる場合には、子バルブ29が突上げロッド34によって突上げられたとしても上部チャンバー23内の圧抜きが完全に行なわれず、圧力が残存する。従って親バルブ26をバルブスリーブ25に押付ける力が残存し、突上げロッド34によって親バルブ26が開弁できない。または開弁に時間がかかる現象が発生する。
閉弁動作時には、逆に導通穴25aが小さすぎる場合に、上部チャンバー23に流入する水量が不足し、親バルブ26の閉弁速度が遅くなり、閉弁に時間がかかる現象が発生する。
以上述べた様に、突上げロッド34が、親バルブ26と結合されていないという構造上の問題から、導通穴25aを適切な大きさに決めることが非常に難しかった。
【0014】
(3)3点目としては、親バルブ26を比例弁として使用した場合、バルブ下端部の形状から言って、ロッド34のリフト量の変化量に対し急激に通過面積が増大し、一次比例した開度面積が得られないため、バルブ通過水量をロッド34のリフト量の変化量に対し直線的に比例制御することが難しいという欠点があった。
【0015】
また従来のバルブのうち、後者では、シリンダー等、機器の位置を一定に保持するためにチェック弁およびチェック弁のコントロール機器と組合わせて用いられる必要があり、バルブ全体として大型で複雑なものとなり、維持管理が難しいという欠点が予想された。
【0016】
本発明は、上記事情を背景としたものであり、従来のバルブに存在している子バルブのへそ部を廃止して、へそ部の塑性変形・磨耗・突き出し高さの著しい減少に伴って発生する比例制御不能および開弁不能の欠点をなくすことを可能としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明の流体圧開閉弁のうち、請求項1記載の発明は、一次流体圧側と二次流体圧側の間の配管流路に設けられて開度を設定する流体圧開閉弁であって、一次流体圧側と二次流体圧側とにそれぞれ連通し、互いに弁流路を介して連通する一次流体圧側ポートと二次流体圧側ポートとを有するバルブスリーブ内に主弁体が軸方向に移動可能に配置されており、該主弁体は、バルブスリーブ内を前進することでバルブスリーブに設けた弁座に当接して前記弁流路を閉じ、後退することで弁流路を開くように構成されているとともに、その後向面側に一次流体の流体圧力が付加される受圧面が設けられ、さらに該受圧面に圧力を付加する流体圧側と二次流体圧側とを連通させる圧抜き流路を有しており、この主弁体に、該主弁体に対し軸方向に移動可能でかつ主弁体に対する後退量が規制された副弁体が配置されており、該副弁体は、主弁体に対し前進することで主弁体に設けた弁座に当接して前記圧抜き流路を閉じるとともに、後退することで圧抜き流路を開くように構成されており、該副弁体に、該副弁体を前記軸方向に沿って移動させるアクチュエータの作動部が連結されており、前記副弁体は、前記作動部のフランジ状先端係合部を後方側で支持する副弁体キャップと、前記先端係合部を前方側から後方に向けて付勢する作動部付勢手段とを備えており、これら副弁体キャップと作動部付勢手段とによって前記作動部が前記副弁体に連結されていることを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の流体圧開閉弁の発明は、請求項1記載の発明において、前記主弁体外に、該主弁体の閉弁時に前記二次流体圧側の流体を前記受圧面に圧力を付加する流体圧側に瞬時に補給するべく、受圧面に圧力を付加する流体圧側と二次流体圧側とを導通させるチェック弁導通路を有しており、該チェック弁導通路に、二次流体圧側から前記受圧面に圧力を付加する流体圧側にのみ流体の導入を可能とするチェック弁が介設されていることを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の流体圧開閉弁の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記主弁体は、前記副弁体を後方側で支持する主弁体キャップと、前記副弁体を前方側から後方に向けて付勢する主弁体付勢手段とを備えていることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の流体圧開閉弁の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記バルブスリーブは、その側壁に一次流体圧側ポートが設けられ、先端のスリーブ穴が二次流体圧側ポートに割り当てられていることを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の流体圧開閉弁の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記主弁体は、前記バルブスリーブ弁座に対する離接動作によって切替弁として動作するものであることを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の流体圧開閉弁の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記主弁体は、前記バルブスリーブ弁座に対する離接動作に従って比例弁として動作するものであることを特徴とする。
【0023】
請求項7記載の流体圧開閉弁の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記主弁体は、環状のバルブスリーブ弁座に対し離接動作によってその離接量に一次比例した開度面積が得られるノーズを有していることを特徴とする。
【0024】
すなわち、本発明によれば、弁閉時には、アクチュエータ作動部によって副弁体を前進位置に置いて主弁体の圧抜き流路を閉じておくことで一次流体側の圧力が主弁体の受圧面に加わって主弁体が前進位置に置かれる。この結果、主弁体がバルブスリーブの弁座に当接して弁流路が閉じられる。
また、弁開時には、アクチュエータ作動部によって副弁体を後進させると、主弁体の圧抜き流路が開放され、受圧面に圧力を付加している一次流体圧側の流体が圧抜き流路を通して二次流体圧側に流出し、受圧面に付加されている圧力が低減し、主弁体をバルブスリーブの弁座に当接させている応力が低減もしくは失われる。アクチュエータ作動部をさらに後退させると、主弁体に対する副弁体の後退が規制され、副弁体とともに主弁体が後退し、バルブスリーブの当座に対する主弁体の当接が解かれて弁流路が開放される。
【0025】
また、副弁体を、主弁体に設けられて後方側から支持する主弁体キャップと、前方側から後方に向けて付勢する副弁体付勢手段とによって支持することで、主弁体と副弁体とが一体になって移動する際に、両者の位置関係を一定にすることができる。
また、アクチュエータの作動部を、後方側で支持する副弁体キャップと、前方側から後方に向けて付勢する作動部付勢手段とによって支持することで、アクチュエータ作動部と副弁体との位置関係を一定にすることができる。上記構成との組み合わせによりアクチュエータ作動部と主弁体との位置関係を一定にすることができる。
【0026】
上記主弁体の弁座に対する離接動作を流路の開閉動作に適用することで、開閉の切替を円滑に行うことができる。また、主弁体の弁座に対する離接動作を開閉量を調整する比例弁として行えば、開閉量を適切に調整することができる。
この発明の構成に関して、比例弁においては上記解決の手段に付け加えて、主弁体の先端に弁口径とほぼ同一高さのノーズを付け、主弁体の単位リフト量に対する流量変化を小さくする構造にできる。ノーズ形状はリフト変化量に対して開度面積がほぼ一次に増加する形状としてもよい。これによって比例弁として使用した場合、アクチュエータ作動部のリフト量の変化量に対し、通過面積が緩やかに増大し、一次比例した開度面積が得られるため、バルブ通過水量を作動部のリフト量の変化量に対しほぼ直線的に比例制御することが可能になる。
【0027】
さらに、受圧面に圧力を付加する流体圧側と二次流体圧側とを導通させるチェック弁導通路を設け、このチェック弁導通路に、二次流体圧側から前記受圧面に圧力を付加する流体圧側に圧力差によって流体の導入を可能とするチェック弁を介設すれば、閉弁動作時に主弁体の前進に伴って必要となる受圧面側への流体の供給が二次側流体圧力側からチェック弁とチェック弁導通路を通して容易に行われる。これにより閉弁が瞬時に行われ、アクチュエータによる位置制御によって応答遅れなく機械的に同期して主弁体位置を制御することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、一次流体圧側と二次流体圧側の間の配管流路に設けられて開度を設定する流体圧開閉弁であって、一次流体圧側と二次流体圧側とにそれぞれ連通し、互いに弁流路を介して連通する一次流体圧側ポートと二次流体圧側ポートとを有するバルブスリーブ内に主弁体が軸方向に移動可能に配置されており、該主弁体は、バルブスリーブ内を前進することでバルブスリーブに設けた弁座に当接して前記弁流路を閉じ、後退することで弁流路を開くように構成されているとともに、その後向面側に一次流体の流体圧力が付加される受圧面が設けられ、さらに該受圧面に圧力を付加する流体圧側と二次流体圧側とを連通させる圧抜き流路を有しており、この主弁体に、該主弁体に対し軸方向に移動可能でかつ主弁体に対する後退量が規制された副弁体が配置されており、該副弁体は、主弁体に対し前進することで主弁体に設けた弁座に当接して前記圧抜き流路を閉じるとともに、後退することで圧抜き流路を開くように構成されており、該副弁体に、該副弁体を前記軸方向に沿って移動させるアクチュエータの作動部が連結されているので、基本構造として従来の「突上げ式」から新しい方式(「引上げ式」(縦配置の一例))を採用することとなる。
さらに、アクチュエータの作動部を、後方側で支持する副弁体キャップと、前方側から後方に向けて付勢する作動部付勢手段とによって支持することで、アクチュエータ作動部と副弁体との位置関係を一定にすることができる。
【0029】
そして、上記構成によれば、副弁体の損傷を軽減することができ、バルブ全体の寿命が延び、保守に要する時間・経費が節約される効果がある。また従来、突上げロッドと親バルブが分離構造であったものが、作動部先端部分を副弁体の中にはさみこみ一体構造可能にするなどして連結することによって、作動部の動きが直接的に副弁体および主弁体の動きに置き換わり、水圧などの流体圧バルブとして高い応答性の比例制御が可能となった。 また従来、上部チャンバーには一次側圧力ポートとの導通穴のみしか無かったが、新しくチェック弁を介して二次側圧力ポートとの導通路を設けることを可能にしたので、主弁体前進時に上部チャンバーへ瞬時に水などの流体を補給することが可能となり、高い応答性の開閉制御に効果がある。さらに主弁体をノーズ付きとすれば、リフト量に一次比例した通過水量を調整可能となりアクチュエータの位置制御および圧力制御が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態における開閉弁を含む装置を示す断面図である。
【図2】同じく実施形態の開閉弁を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態における開閉弁の一部を示す断面図である。
【図4】従来の開閉弁を含む装置を示す断面図である。
【図5】同じく開閉弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の流体圧開閉弁の一実施形態を図1、2に基づいて説明する。
流体圧開閉弁は、図1に示すように、ポペット部+引上げロッド部(A)および制御シリンダ部(B)から構成されている。なお、この実施形態において図4、5に示す従来例と同様の構造については同一の符号を付している。
【0032】
先ず、ポペット部+引上げロッド部(A)の構成と機能を述べる。
バブルブロック21に、一次側圧力ポート22と二次側圧力ポート24とが設けられており、その間にバルブスリーブ25が介設されている。バルブスリーブ25は、上記バルブブロック21に固定され、外部シール32、内部シール33によって外気と一次側圧力ポート22と二次側圧力ポート24を分離している。また、バルブスリーブ25は、側壁に形成した側壁ポート22aを介して一次側圧力ポート22に連通し、先端開口ポート24aを介して二次側圧力ポート24と連通しており、側壁ポート22aと先端開口ポート24a間のバルブスリーブ25内空間が弁流路に割り当てられている。
【0033】
前記バルブスリーブ25内には、これをガイドとして上下に移動可能な円筒状の主弁体1が配置されている。主弁体1は、先端側に、環状段部2を介して先端に向けて径が小さくなるノーズ3を有しており、該ノーズ3内には主弁体内空間1aに後端が連なり、先端が二次側圧力ポート24側に開口する圧抜き流路4が軸方向に沿って形成されている。また、前記バルブスリーブ25には、側壁ポート22aを超える先端側内壁に、主弁体1が前進した際に上記環状段部2が当接して側壁ポート22aと先端開口ポート24a間の弁流路を閉じる環状の弁座26bが設けられている。前記ノーズ3は、弁座26bで囲まれる弁口径とほぼ同一高さで、軸方向移動量に対して開度面積がほぼ一次に増加する形状を有しており、比例弁として機能する。
【0034】
また、主弁体1の内部空間1aには、主弁体1に対し上下に移動可能とした円筒状の副弁体10が配置されている。該副弁体10は、先端に小円筒状の突き当て部11を有しており、該突き当て部11の先端部は、副弁体10が前進した際に前記圧抜き流路4の一端にある弁座4aに当接して圧抜き流路4を閉じる。上記副弁体10と主弁体1の内部空間1aの先端内壁との間には、主弁体付勢部材として圧縮コイルバネ5が配置されており、副弁体10を後方に付勢している。一方、主弁体1の後端には、主弁体キャップ6が嵌め込み固定されて主弁体1と一体化されており、該主弁体キャップ6によって副弁体10の後進位置を規制している。これにより副弁体10は、上記圧縮コイルバネ5と主弁体キャップ6とで挟まれて支持されている。
【0035】
また、副弁体10は、自身の内部空間10aと突き当て部11の周囲の主弁体内部空間1aとを連通する副弁体導通路12が形成されている。さらに副弁体10の内部空間10aには、上方から前記主弁体キャップ6を貫通した作動ロッド50の先端が位置している。作動ロッド50は、本発明のアクチュエータ作動部に相当する。作動ロッド50の先端部には、副弁体10の内部空間10aの内径よりもやや小径としたフランジ部材52が固定されており、該フランジ部材52と、内部空間10aの先端内壁との間に副弁体付勢部材として圧縮コイルバネ15が配置されており、フランジ部材52を後方に付勢している。一方、副弁体10の後端には、副弁体キャップ16が嵌め込み固定されて副弁体10と一体化されており、フランジ部材52の後進位置を規制している。これによりフランジ部材52は、上記圧縮コイルバネ15と副弁体キャップ16とで挟まれて支持されており、副弁体10と作動ロッド50とが連結されている。
【0036】
なお、作動ロッド50には、主弁体1の後方に位置する上部チャンバー23に一端が連通するロッド導通路50aが形成されており、該ロッド導通路50aは、ロッド50内を前方に伸長して副弁体10の内部空間10aに開口している。また、上記上部チャンバー23は、バルブスリーブ25に設けたチャンバー導通穴25aによって、一次側圧力ポート22に連通している。すなわち、一次側の圧力がチャンバー導通穴25aを通して主弁体1に加えられており、主弁体1の後端面が、主弁体キャップ6の後端面とともに本発明の受圧面6aに割り当てられている。
【0037】
次に制御シリンダ部(B)の構成と機能を述べる。
バルブブロック21の上方に、結合ボルト53を介して切換弁またはサーボ弁54を搭載した油圧シリンダ55がバルブカバー56に取り付けられている。油圧シリンダ55は、本発明のアクチュエータに相当し、シリンダロッド55aを下向きにして配置されている。
シリンダロッド55aの先端には結合ナット67を介して前記作動ロッド50が連結されている。
【0038】
作動ロッド50は、バルブカバー56内に組込まれたロッドガイド57に沿って上下に摺動可能となっており、Vパッキン58、パッキン押え59により上部チャンバー23の内圧30MPaをシールしている。またバルブカバー56にはチェック弁62を組み込み、前記上部チャンバー23と二次側圧力ポート24側とを該チェック弁62を介してチェック弁導通路63で連通可能にしている。チェック弁62は、上部チャンバー23から二次側圧力ポート24側への流体移動は阻止され、差圧によって二次側圧力ポート24側から上部チャンバー23への流体の移動が可能になっている。また、油圧シリンダ55の上方には、シリンダロッド55aと連動する検出ロッド55bが伸長して位置センサー65によりシリンダロッド55a、すなわち作動ロッド50の作動量が検出可能になっている。
【0039】
上記構成では、作動ロッド50による副弁体10の引き上げがない状態で、上部チャンバー23にバルブスリーブ25に設けられたチャンバー導通穴25aを通じて一次側圧力ポート22の圧力が導かれ、主弁体1を常に下方に押付ける。これにより主弁体1の環状段部2がバルブスリーブ25の弁座26bに当接して弁流路が全閉状態となり、一次側から二次側への水の流れが遮断される。
【0040】
開弁動作状態においては、油圧シリンダ55を作動させ、シリンダロッド55aを介して、作動ロッド50を上昇させる。すると作動ロッド50の先端にあるフランジ部52が副弁体10の上端に取り付けられた副弁体キャップ16を副弁体10とともに引き上げる。これにより副弁体10が上昇して、突き当て部11が圧抜き流路4の一端にある弁座4aから離れて圧抜き流路4を開き、上部チャンバー23内の圧縮ボリューム分がロッド導通路50aを通過し副弁体導通路12および圧抜き流路4を通って二次側圧力ポート24側に瞬時に流出し、上部チャンバー23内圧力は二次側圧力ポート24と同圧まで降下する。上下の圧力バランスがとれることで主弁体1を流体によって押し下げる力は消失し、主弁体キャップ6が副弁体10の上面に乗った状態で主弁体1が抵抗無く上昇する。すると、主弁体の環状段部2がバルブスリーブ25の弁座26bから離れ、シール面が開いて弁流路が開放される。
【0041】
工場の高圧アキュムレータにつながっている一次側圧力ポート22は常に30MPaの圧力状態であり、上部チャンバー23も同圧である。二次側圧力ポート24は主にシリンダ負荷側につながり、負荷圧力によって回路中のタンク圧力から一次圧力の間の値をとる。従って開弁状態下では必ず一次側から二次側へ水は流れようとする。
【0042】
さらに比例弁においては、主弁体1の下端に弁口径とほぼ同一高さで、リフト変化量に対して開度面積がほぼ一次に増加する形状のノーズ3を有するので、比例弁として使用した場合、作動ロッド50のリフト量の変化量に対し、通過面積が緩やかに増大し一次比例した開度面積が得られ、バルブ通過水量を作動ロッド50のリフト量の変化量に対しほぼ直線的に比例制御することができる。またこの際に、作動ロッド50の位置は油圧シリンダ55に取付けられた位置センサー65により常に検出されているので弁開度量の制御も容易に行うことができる。
【0043】
一方、閉弁動作状態においては、油圧シリンダ55を作動させ、シリンダロッド55aを介して、作動ロッド50を下降させることによって主弁体1および副弁体10が下降する。すると主弁体1の環状段部2がバルブスリーブ25の弁座26bに着座する。その際には、圧縮コイルバネ15が収縮することで着座時の衝撃を緩和する。さらに下降を進めると、着座して停止している主弁体1に対し、副弁体10がさらに下降し、遂には突き当て部11が弁座4aに当接する。この際にも圧縮コイルバネ5が収縮することで当接時の衝撃を緩和する。この当接によって圧抜き流路4が閉じられて上部チャンバー23内圧力は主弁体1の受圧面6aに加わって流体によって主弁体1を押し下げて弁座との当接を確実かつ強固なものとする。
【0044】
なお、圧抜き流路4が閉じられる際には、チェック弁導通路63およびチェック弁62を介して二次側圧力ポート24から上部チャンバー23に瞬時に水が補給される。すなわち閉弁動作時、親バルブ26の下降に伴って必要となる上部チャンバー23への圧水の供給が二次側圧力ポート24からこのチェック弁62を押し開き、チェック弁導通路63を通して容易に行われ、これにより閉弁が瞬時に行われ油圧シリンダ55の位置制御によって応答遅れなく、さらに機械的に同期して主弁体1の位置が制御されることを可能としている。
【0045】
本発明により、図5に示すような従来存在していた子バルブへそ部の設置を廃止し、開弁動作状態におけるへそ部の塑性変形・磨耗・突き出し高さの著しい減少に伴って発生する開弁不能および比例制御不能の欠点をなくすことを可能とした。
さらに、この構造を採用することで作動ロッドが副弁体を引き上げる接触面積が圧抜き流路によって制約されることがなく、在来の突上げ式に比べて約2倍の値にとることが可能となり、接触面積増加により従来のような塑性変形・磨耗・折損という問題が新たに発生しないことを可能とした。
【0046】
なお、閉弁動作状態においては作動ロッド50が上側・下側を副弁体キャップ16と圧縮バネ15ではさまれた状態で副弁体10の中に組込まれており、また副弁体10自体が上側・下側を主弁体キャップ6と圧縮バネ5ではさまれて主弁体1の中に組込まれているため、主弁体1の位置は作動ロッド50の位置と常に一致しており、たとえ二次側圧力が一次側圧力30MPaと等しくなった場合においても切換弁またはサーボ弁54による油圧シリンダ55の位置制御によって、応答遅れなく機械的に同期して主弁体の位置が開閉動作および任意に位置制御されることを可能としている。
【0047】
なお、上記実施形態では、開閉弁を比例弁として用いる場合について説明した。
本発明は、前記したように比例弁として用いる他に切替弁としても用いることができる。
図3は、主弁体の構成を変更したものであり、主弁体100の先端には、比例弁として動作するためのノーズを設けず、バルブスリーブ25の弁座に当接可能な円錐部によってシール面を構成している。この開閉弁によれば、主弁体の上昇、下降動作に伴って弁の開閉切替動作を円滑に行うことができる。
【0048】
以上、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態の説明に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 主弁体
2 環状段部
3 ノーズ
4 圧抜き流路
4a 弁座
5 圧縮コイルバネ
6 主弁体キャップ
6a 受圧面
10 副弁体
11 突き当て部
12 副弁体導通路
15 圧縮コイルバネ
16 副弁体キャップ
22 一次側圧力ポート
23 上部チャンバー
24 二次側圧力ポート
25 バルブスリーブ
25a チャンバー導通穴
26 親バルブ
26b 弁座
50 作動ロッド
50a ロッド導通路
52 フランジ部
55 油圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次流体圧側と二次流体圧側の間の配管流路に設けられて開度を設定する流体圧開閉弁であって、一次流体圧側と二次流体圧側とにそれぞれ連通し、互いに弁流路を介して連通する一次流体圧側ポートと二次流体圧側ポートとを有するバルブスリーブ内に主弁体が軸方向に移動可能に配置されており、該主弁体は、バルブスリーブ内を前進することでバルブスリーブに設けた弁座に当接して前記弁流路を閉じ、後退することで弁流路を開くように構成されているとともに、その後向面側に一次流体の流体圧力が付加される受圧面が設けられ、さらに該受圧面に圧力を付加する流体圧側と二次流体圧側とを連通させる圧抜き流路を有しており、この主弁体に、該主弁体に対し軸方向に移動可能でかつ主弁体に対する後退量が規制された副弁体が配置されており、該副弁体は、主弁体に対し前進することで主弁体に設けた弁座に当接して前記圧抜き流路を閉じるとともに、後退することで圧抜き流路を開くように構成されており、該副弁体に、該副弁体を前記軸方向に沿って移動させるアクチュエータの作動部が連結されており、前記副弁体は、前記作動部のフランジ状先端係合部を後方側で支持する副弁体キャップと、前記先端係合部を前方側から後方に向けて付勢する作動部付勢手段とを備えており、これら副弁体キャップと作動部付勢手段とによって前記作動部が前記副弁体に連結されていることを特徴とする流体圧開閉弁。
【請求項2】
前記主弁体外に、該主弁体の閉弁時に前記二次流体圧側の流体を前記受圧面に圧力を付加する流体圧側に瞬時に補給するべく、受圧面に圧力を付加する流体圧側と二次流体圧側とを導通させるチェック弁導通路を有しており、該チェック弁導通路に、二次流体圧側から前記受圧面に圧力を付加する流体圧側にのみ流体の導入を可能とするチェック弁が介設されていることを特徴とする請求項1記載の流体圧開閉弁。
【請求項3】
前記主弁体は、前記副弁体を後方側で支持する主弁体キャップと、前記副弁体を前方側から後方に向けて付勢する副弁体付勢手段とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の流体圧開閉弁。
【請求項4】
前記バルブスリーブは、その側壁に一次流体圧側ポートが設けられ、先端のスリーブ穴が二次流体圧側ポートに割り当てられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体圧開閉弁。
【請求項5】
前記主弁体は、前記バルブスリーブ弁座に対する離接動作によって切替弁として動作するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体圧開閉弁。
【請求項6】
前記主弁体は、前記バルブスリーブ弁座に対する離接動作に従って比例弁として動作するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流体圧開閉弁。
【請求項7】
前記主弁体は、環状のバルブスリーブ弁座に対し離接動作によってその離接量に一次比例した開度面積が得られるノーズを有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の流体圧開閉弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−203618(P2010−203618A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106034(P2010−106034)
【出願日】平成22年5月1日(2010.5.1)
【分割の表示】特願2004−205863(P2004−205863)の分割
【原出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(504269578)株式会社シビテックリサーチ (3)
【Fターム(参考)】