説明

流体塗布用装置

【課題】押出または噴霧の際のアクセスのしやすさを向上し、それにより、工具を取り替える必要なく続行することができるようにすること;第1の噴霧方向から第2の噴霧方向への調節に必要な調節時間を少なくすること;途中で工具の交換を行わずに、例えば噴霧と押出のような、異なる加工工程間の移行を可能にする。
【解決手段】異なる位置および方向間で調節可能な保持装置上に工具として装着するように意図された、表面上への流体塗布用装置であって、該装置は、1つまたは幾つかの加圧された流体を、該工具上に装着された、該流体を排出するための少なくとも2つのノズル38,39に供給するための供給手段4を備える、装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の流体塗布用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在のタイプの装置は、多数のスプレーノズルを有し且つロボットの形態の制御装置に装着されるように設計された回転式スプレーガンとして、実用化されている。
【0003】
スプレーガンは、ガス、液体、プラスチック材料などの流体を表面上に噴霧または押出する場合に用いられる。塗布の分野の1つの例は自動車産業にあり、ボディの表面を処理する場合または接合部を封止する場合である。もちろん、他の塗布の分野も当然可能である。ガンを用いる場合、材料を塗布する表面に対して慎重にガンを配置しなければならない。従来のスプレーガンは、通常、固定された塗布方向を有する1つのノズルを備えている。従って、ノズルの向きを変えるにはガン全体を回さなければならず、これにはやや時間がかかり、限られたスペースではアクセスのしやすさの問題が生じ得る。スプレーガンの方向を変える場合、精度良く正確な塗布を達成するために、ロボットの制御命令に対する要求は大きい。
【0004】
幾つかのノズルを有する回転式スプレーアセンブリは、例えば、WO 80/02278から既知である。しかし、この公報は、すべてのノズルに同時に供給するスプレーアセンブリを示しており、これは、アセンブリの使用範囲をかなり制限してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、例えば、押出または噴霧の際のアクセスのしやすさを向上し、それにより、工具を取り替える必要なく続行することができるようにすることである。
【0006】
本発明の別の目的は、第1の噴霧方向から第2の噴霧方向への調節に必要な調節時間を少なくすることである。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、途中で工具の交換を行わずに、例えば噴霧と押出のような、異なる加工工程間の移行を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって以下が提供される。
(項目1)異なる位置および方向間で調節可能な保持装置上に工具として装着するように意図された、表面上への流体塗布用装置であって、該装置は、1つまたは幾つかの加圧された流体を、該工具上に装着された、該流体を排出するための少なくとも2つのノズル(38〜41)に供給するための供給手段(4)を備え、該装置が、該供給手段(4)から、各バルブ手段と対応のノズルとの間に延びるチャネル(28、29、30、32、36)を介する各ノズルへの流体の供給を別個に制御するための、各ノズル(38〜41)に関連する少なくとも1つのバルブ手段(26)を備えることを特徴とする、装置。
(項目2)異なる位置および方向間で調節可能であり且つ回転の動きを工具上の少なくとも1つのノズル(38〜41)に伝達するように配設される保持装置上に、工具として装着するように意図された、表面上への流体塗布用装置であって、該工具が、供給手段(4)が接続されるハウジング(10)と、一方では該ハウジングにおいて回転可能に保持され他方では該ノズルを担持するシャフト(8)とを有するスイベル手段(2)と、該ハウジングを介する該回転可能なシャフトへの該流体の通路を形成する少なくとも1つの第1のチャネル(15)と、該回転可能なシャフトの回転位置に関わらず、該第1のチャネルから該回転可能なシャフトへの流体を供給するための少なくとも1つの第2のチャネル(19)と、該シャフトに配設され、該第2のチャネルから該ノズルに該流体を供給するための少なくとも1つの第3のチャネル(22、27、29、31、35、36)とを備えることを特徴とする、装置。
(項目3)前記第2のチャネルが、前記シャフト(8)の長手方向の軸(A)に垂直な方向に延びる環状チャネル(19)を備えることを特徴とする、項目2に記載の装置。
(項目4)ノズル(38〜41)の数が3つであり、各ノズルが異なる方向に向けられることを特徴とする、項目1または2に記載の装置。
(項目5)前記ハウジング(10)には、前記供給手段(4)からそれぞれのノズル(38〜41)への流体の供給を制御するための少なくとも1つのバルブ手段(26)が配設され、該バルブ手段が、前記第2のチャネル(19)と前記第3のチャネル(22、27、29、31、35、36)との間に接続されることを特徴とする、項目2に記載の装置。
(項目6)前記第2のチャネル(19)が、前記ハウジングの内周面(12)の少なくとも一部分に向かって開いている、開いた環状チャネルから構成されることを特徴とする、項目2または5に記載の装置。
(項目7)前記第3のチャネル(22、27、29、31、35、36)が、前記ハウジング(10)と前記シャフト(8)との移行部に配設され且つそれらの周囲の少なくとも一部分に沿って開いている、各々のバルブ手段(26)およびノズル(38〜41)のための環状チャネル(32)を備えることを特徴とする、項目5に記載の装置。
(項目8)前記工具は、モジュール式に構成され、前記スイベル手段(2)のための1つのモジュールと、各々のバルブ手段(26)のための1つのモジュールと、前記ノズル(38〜41)が配置されるノズルヘッド(6)のための1つのモジュールと、該スイベル手段と該ノズルヘッドとの間に配設されるモジュールであって、押出チャネル(36)が該スイベル手段のシャフト(8)から該ノズルヘッドに流体を供給するための各々のバルブ手段およびノズルのために配設される位置決めランス(5)のための1つのモジュールとを備えることを特徴とする、項目2または5に記載の装置。
【0009】
これらの目的は本発明による装置によって達成され、この装置の特徴は、添付の請求項1に開示されている。
【0010】
異なるノズル間の切換が可能であるため、装置の利用度を増加することができ、これにより、加工時間が少なくなり、なおかつ生産コストも削減される。
【0011】
以下に、本発明の幾つかの実施形態を添付の図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0012】
図面から明らかであるように、流体塗布用装置は、5つの主構成要素、即ち、ガンをロボットアーム(図示せず)に接続する役割を果たすアダプタ1と、回転の動きを伝達することができるスイベル手段2と、ガス、液体、プラスチック材料などの流体用の供給手段4(図2参照)への接続3と、位置決めランス5と、多数の噴霧または押出ノズルを有するヘッド6とを備えるガン工具として設計される。以下に、これらの異なる主構成要素の構成およびそれぞれの機能をさらに説明する。
【0013】
アダプタは、任意の既知のタイプのロボットアームに直接または中間アダプタを介して装着するように構成される。ロボットアームは、通常、6つの自由度の動き、即ち、3方向x、y、zの動作と、互いに垂直であり且つロボットアームの長手方向に対して直角である第1および第2の軸y、zを中心とする回転と、ロボットアームの長手方向に延びる第3の軸xを中心とする回転とを行う。アダプタ1は、この第3の軸を中心とする回転を伝達する。これは、アダプタがしっかりと回転するため、またはアダプタに配置されるシャフト7がアダプタに関係して回転するためである。アダプタに配置されるシャフトは、スイベル手段2に回転可能に保持されるシャフト8に接続される。このシャフトは、シャフト7と一体に連続するものであってもよい。この場合、シャフト7および8は、一片として作られたシャフトからなり、これは、ロック用ピン9によって、回転するように固定してアダプタ1に接続され、ロボットアームによって回転されるように配設される。
【0014】
スイベル手段2は、外部マントル面11と、円筒形内壁12と、2つの端面13および14とを有するハウジング10によって外側に制限される。ハウジングのマントル面は実質的に円筒形であるが、もちろん、ハウジングのマントル面は、他の形状であってもよい。
【0015】
第1の貫通チャネル15は、ハウジングのマントル面を貫通するように配設される。この貫通チャネルは、入口開口部16と、出口17とを有する。入口開口部は、貫通チャネルを供給チャネル18に接続し、プラスチック材料用の供給手段4からこの供給チャネルを介して、押出または噴霧される材料が供給される。供給チャネル18は、スイベル手段2を供給手段4に接続する接続手段3において形成される。
【0016】
出口17は、チャネル19に接続される。このチャネルは、ハウジング10の内壁20に沿って延び、第1の貫通チャネル15を多数の第2の貫通チャネル21に接続する。第2の貫通チャネルの各々は、入口開口部22と、出口23とを有する。
【0017】
チャネル19は、好ましくは、シャフト8上に配設された軸受リング24において環状溝の形状にされる。あるいは、この溝は、ハウジングの内壁を削って(mill)形成されてもよい。
【0018】
溝は、必ずしも閉じられていなくてもよく、即ち、必ずしもリング状でなくてもよく、1つ以上の終端部を有する分岐溝としてこの溝を構成することも可能である。
【0019】
各々の出口17は、それぞれの貫通チャネル21を、バルブ手段26に続く入力チャネル25に接続する。バルブ手段は操作可能であり、何らかの既知の態様で開閉することができる。バルブ手段は、ハウジングの内部で、好ましくは、実質的に、ガンの長手方向の軸Aと一致するハウジングの長手方向の軸に沿って延びるチャネル29の入口28に接続される出口チャネル27からなる。
【0020】
チャネル29は、ハウジングの内壁20とチャネル29との間に延びるチャネル30に接続される。チャネル30は出口31を有し、この出口はシャフト8の周りに環状に延びるチャネル32に接続される。このチャネルは、シャフトの周囲面33によって部分的に制限される。このチャネルは、ハウジング10でシャフト8を回転可能に保持する構造34の部分によってさらに制限される。チャネル32は、長手方向のチャネル35に通じる入口34に接続される。このチャネルは、ここで示す実施例の場合、押出チャネル36とヘッド6における対応のチャネル42とを介して、噴霧または押出ノズル38の出口37に接続され得る。
【0021】
押出チャネル36は、モジュール構成タイプのランス5に形成され、工具の使用に適切な長さのランスと容易に交換することができる。ヘッドもまた他のノズルタイプ、他の寸法、または他の位置のヘッドとモジュール式に交換できるように、ランス5は何らかの既知の態様でヘッド6およびスイベル手段2に取り付けられる。
【0022】
チャネル32がシャフト8の周りで環状に延びているため、出口31は、シャフト8が回転している間絶えずチャネル32と連通する。この回転のため、材料の供給のとぎれは起こらない。
【0023】
スプレーガンは、少なくとも2つ、ここで示した実施例では3つの噴霧または押出ノズル38から41を有する。ガンを確実に機能させるために、ノズルの各々は、共通チャネル19とノズルとの間にチャネルを有する。そのようなチャネルの各々は、説明したチャネルのように、第1のノズル38に対応する態様で配設される。各チャネルには、操作可能なバルブ手段が配設される。このことは、各ノズルを他のノズルから独立して開閉できることを意味する。このため、同時に1つ以上のノズルを開閉することが可能となる。
【0024】
軸受構造は、好ましくは、シャフトを削って形成された溝であってそれぞれのボール軸受独自の溝に延びる多数のボール軸受を備える。多数の環状チャネル32、42、43は、それぞれのノズル用のチャネルであって、ハウジングとシャフトとの間に介挿されるシーリング手段44によって形成され、これらのシーリング手段はシャフトの周囲に接する。これらの手段は、好ましくはハウジングに固定されるが、回転がハウジングの内壁に抗して起こることも考えられる。チャネル19は、シャフトとハウジングとの間に介挿される手段45によって形成されることも可能である。
【0025】
ハウジングは、第1および第2の端片46、47によって軸方向に閉じられる。
【0026】
スプレーガンのヘッドは、上述のように、少なくとも2つ、例えば3つの噴霧または押出ノズルを備えて構成され、これらのノズルの各々は、ここで示す実施例では、異なる面および/または方向に向いている。図1の実施例によれば、ノズルは、好ましくは、実質的に軸Aの方向、即ち、x方向に向けられる。第2のノズル38は、好ましくは、長手方向の軸Aに実質的に垂直な方向、即ち、y方向に向けられる。第3のノズル40は、x/y面に向けられ、好ましくは、x軸と40°から50°の角度を形成する。
【0027】
図2に示した実施例では、2つのノズル38、39が示されているが、これらのノズルの一方は軸方向に向けられ、他方は長手方向の軸Aに対して垂直な方向に向けられる。第3のノズルはヘッドの後ろに隠れているが、例えば、他の2つのノズル38、39に対して垂直な方向に向けられるか、または他のノズルのうちの一方に対してより小さいもしくはより大きい角度を形成する。
【0028】
バルブ手段26は、たとえば、図2および図3に示すように、ばね51によって閉位置に付勢されてシートの上に載せられるボール50の形状のバルブボディを有するボールバルブの形態に形成される。バルブの開閉は、ここで示した実施例では、軸方向に移動可能なニードル52の形態の制御手段を用いて行われる。このニードルは、エアシリンダ54内で移動可能な空気手段、例えば空気制御ピストン53によって移動され、このエアシリンダを介して図示しないエアホースが空気制御装置に接続される。対応の制御手段52、53、54とチャネル25、27とを備える各バルブ手段26も、容易に取り替え可能なモジュールに組み立てられる。
【0029】
本発明は、上の説明にも図面に示した実施例にも限定されず、添付の請求の範囲に示す範囲内で変更することができる。例えば、2つ以上のノズルが同じ動作方向を有することも可能である。入ってくる流体のための供給手段は、異なる流体を供給するための1つ以上のチャネルを有することも可能である。例えば、別個のチャネルに空気を加えて、例えばそれぞれが各々の流体用のホールである2つのノズルホールを有する専用ノズルまではるばる送ることも可能である。各々の流体のために、別個の環状チャネルがバルブの前に必要である。ロボットアームの代わりに、異なる位置および/または加工工程間での調節を自動化するための他のタイプの移動可能な保持装置にガンを装着することも可能である。バルブ手段26を、スイベル手段2およびガンから離して装着することも可能である。ノズルの数は、2つ以上であることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明による装置の、第1のノズルヘッドを有する実施例の外部構成を斜視図で示している。
【図2】図2は、第2の実施例を部分縦断面図で示しており、ここで、装置は第2のノズルヘッドを有している。
【図3】図3は、装置に属するスイベル手段のモジュールの縦断面図をより大きい縮尺で示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる位置および方向間で調節可能な保持装置上に工具として装着するように意図された、表面上への流体塗布用装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−190552(P2007−190552A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53536(P2007−53536)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【分割の表示】特願平9−505744の分割
【原出願日】平成8年7月5日(1996.7.5)
【出願人】(591127560)アーベー ボルボ (3)
【氏名又は名称原語表記】AKTIEBOLAG VOLVO
【Fターム(参考)】