説明

流体封入式能動型防振装置

【課題】オリフィス通路による受動的な防振効果と、外部から及ぼされる加振力による能動的な防振効果とが、何れも有効に発揮される、新規な構造の流体封入式能動型防振装置を提供すること。
【解決手段】仕切部材64の収容空所106に可動膜122が配設されており、可動膜122の厚さ方向一方の面と対向する収容空所106の壁部にはフィルタオリフィス114が形成されていると共に、可動膜122の厚さ方向他方の面と対向する収容空所106の壁部には開放孔116が形成されており、収容空所106がフィルタオリフィス114と開放孔116を通じて受圧液室66と加振液室68の各一方に連通されている。更に、可動膜122には厚さ方向に貫通する通孔126が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のエンジンマウント等に適用される流体封入式防振装置に係り、特に、外部から及ぼされる加振力に基づいて能動的な防振効果が発揮されるようにされた、流体封入式能動型防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車のエンジンマウント等に適用される防振装置の一種として、内部に封入された流体の流動作用等を利用する流体封入式防振装置が知られている。この流体封入式防振装置は、第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されていると共に、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された受圧液室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡液室が、オリフィス通路によって相互に連通された構造を有している。更に、特開2009−92235号公報(特許文献1)等においては、電磁式アクチュエータや空気圧式アクチュエータの加振力を流体室に及ぼすことで能動的な防振効果が発揮されるようにした、流体封入式能動型防振装置も提案されている。流体封入式能動型防振装置は、受圧液室に連通された加振液室を備えており、加振液室の壁部の一部が加振部材で構成されていると共に、加振部材がアクチュエータによって加振変位されるようになっている。そして、アクチュエータの発生駆動力が、加振力として加振液室に及ぼされて受圧液室に伝達されることにより、入力振動に対する相殺的な防振効果が発揮されるようになっている。
【0003】
ところで、流体封入式能動型防振装置では、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動が入力された場合に、受圧液室の内圧変動が加振部材の変位によって吸収されて、オリフィス通路を通じての流体流動量が減少する結果、防振性能が低下するという問題があった。そこで、特許文献1では、受圧液室と加振液室を隔てる仕切部材に収容空所が設けられており、収容空所が受圧液室と加振液室に連通されていると共に、その収容空所内に変形を制限された可動板が配設されている。これによれば、低周波大振幅振動の入力時には、可動板が収容空所の上下壁面に密着して、収容空所の受圧液室又は加振液室への連通孔を遮断することで、受圧液室の圧力変動が加振部材の変位によって吸収されることなく効率的に惹起される。しかも、高周波小振幅振動の入力時には、可動板が収容空所内で微小変位することによって、受圧液室と加振液室が収容空所を通じて連通されて、加振液室に及ぼされる加振力が受圧液室に伝達されることにより、能動的な防振効果が発揮される。
【0004】
しかしながら、特許文献1のような可動板を利用した切替機構では、大振幅の振動入力によって硬質の可動板が収容空所の上下壁面に密着して加振液室が密閉されると、アクチュエータによる加振部材の加振変位が加振液室の液圧等によって妨げられるおそれがある。それ故、車両の要求特性によっては、能動的な防振効果をより安定して且つ高度に発揮可能とされた構造が求められ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−92235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、オリフィス通路による受動的な防振効果と、外部から及ぼされる加振力による能動的な防振効果とが、何れも有効に発揮される、新規な構造の流体封入式能動型防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様は、第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されており、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で形成された受圧液室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡液室が形成されていると共に、それら受圧液室と平衡液室を相互に連通するオリフィス通路が形成されている一方、該第2の取付部材によって支持された仕切部材を挟んで該受圧液室と反対側には壁部の一部が加振部材で構成された加振液室が形成されており、該第2の取付部材によって支持されるアクチュエータの発生駆動力が該加振部材を介して該加振液室に及ぼされるようにした流体封入式能動型防振装置において、前記仕切部材の内部には収容空所が形成されていると共に、該収容空所には外周部分を該仕切部材によって支持された可動膜が配設されている一方、該可動膜の厚さ方向一方の面と対向する該収容空所の壁部には前記オリフィス通路よりも高周波数にチューニングされたフィルタオリフィスが形成されて、該収容空所が該フィルタオリフィスを通じて該受圧液室と該加振液室の何れか一方に連通されていると共に、該可動膜の厚さ方向他方の面と対向する該収容空所の壁部には開放孔が形成されて、該収容空所が該開放孔を通じて該受圧液室と該加振液室の何れか他方に連通されており、更に該可動膜には厚さ方向に貫通する通孔が形成されていることを、特徴とする。
【0008】
このような第1の態様に従う構造とされた流体封入式能動型防振装置によれば、可動膜には厚さ方向に貫通する通孔が形成されていることから、アクチュエータによる加振部材の変位時には、可動膜の微小変形に加えて、受圧液室と加振液室の間で通孔を通じた流体流動が生じ得る。これにより、加振部材は、加振液室の液圧によって拘束されることなく、容易に変位可能とされることから、大きな加振振幅が確保されて、中乃至高周波数の入力振動に対して目的とする能動的な防振効果を有効に得ることができる。
【0009】
また、低周波大振幅振動の入力時には、可動膜が収容空所の壁面に当接して拘束されることにより、可動膜の微小変形による受圧液室と加振液室の間での液圧の伝達が防止されて、受圧液室の内圧変動が効率的に惹起されることから、オリフィス通路を通じた流体の流動量が確保されて、流体の流動作用に基づいた受動的な防振効果が有効に発揮される。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された流体封入式能動型防振装置において、前記可動膜の厚さ方向一方の面が前記収容空所の壁面に対して離隔して対向していると共に、該可動膜の厚さ方向他方の面が該収容空所の壁面に対して重ね合わされており、前記開放孔の断面積が前記フィルタオリフィスの断面積よりも大きくされているものである。
【0011】
第2の態様によれば、大振幅振動の入力によって可動膜が厚さ方向一方の側に大きく変形すると、可動膜が収容空所の壁面に密着して、フィルタオリフィスが可動膜によって閉塞される。また、大振幅振動の入力によって可動膜が厚さ方向他方の側に大きく変形しようとする場合には、可動膜が開放孔の開口周縁部への当接によって拘束されて、可動膜の変形量が制限される。これらによって、受圧液室と加振液室の間での流体流動が可動膜で制限されることから、受圧液室の圧力が加振液室に伝達されて加振部材の変位で吸収されるのを防ぐことができる。従って、受圧液室と平衡液室の相対的な圧力差が大きくなって、オリフィス通路を通じての流体流動量が確保されることから、流体の流動作用に基づいた防振効果を有効に得ることができる。
【0012】
一方、可動膜の厚さ方向一方の側への微小変形が、可動膜と収容空所の壁面との対向面間のスペースによって許容されていると共に、可動膜の厚さ方向他方の側への微小変形が、可動膜が開放孔に入り込むことで許容されている。それ故、高周波小振幅振動の入力時には、アクチュエータの発生駆動力が、可動膜の微小変形によっても加振液室から受圧液室に伝達されて、振動の相殺作用等に基づいた能動的な防振効果が有効に発揮される。
【0013】
特に、開放孔の断面積がフィルタオリフィスの断面積よりも大きくされていることから、可動膜の開放孔側への弾性変形量が、小振幅振動に対する能動的な防振作用を充分に得ることができる程、充分に大きく確保される。それ故、可動膜の変形が不必要に小さくなるのを防ぐことができて、目的とする防振効果が有効に発揮される。
【0014】
しかも、収容空所内で自由に変位する可動板とは異なり、可動膜は、それ自体の弾性に基づいて初期位置に復帰するようになっている。そして、可動膜は、初期位置において、収容空所の壁面との対向面間のスペースと、開放孔とによって微小変形を許容されている。それ故、加振液室に及ぼされる加振力(アクチュエータの発生駆動力)が安定して受圧液室に伝達されて、目的とする防振効果が有効に発揮される。
【0015】
また、可動膜の厚さ方向他方の面が収容空所の壁面に重ね合わされており、可動膜の微小変形が開放孔によって許容される構造によれば、可動膜の厚さ方向での微小変形が、厚さ方向両側において収容空所の壁面との対向面間のスペースで許容される場合に比して、仕切部材の軸方向寸法を小さくすることができる。これにより、コンパクトな流体封入式能動型防振装置を実現することができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載された流体封入式能動型防振装置において、前記開放孔を通じて前記加振液室と前記収容空所が連通されていると共に、前記通孔が該開放孔と位置合わせされて相互に連通されている一方、前記加振部材が前記第2の取付部材に対してばね手段で弾性連結されており、該加振部材が前記アクチュエータの発生駆動力によって前記仕切部材に対して離隔変位すると共に、該アクチュエータの発生駆動力の解除によって該ばね手段の弾性に基づいて初期位置に復帰するようにしたものである。
【0017】
第3の態様によれば、アクチュエータの発生駆動力によって加振部材が仕切部材から離隔する方向に変位する際に、通孔が開放孔と位置合わせされて相互に連通されていることにより、受圧液室から加振液室への通孔を通じた流体の流入が許容されて、加振部材の変位による加振液室の液圧変動が低減される。それ故、加振部材の加振振幅が効率的に得られて、能動的な防振効果が有効に発揮される。
【0018】
また、可動膜が収容空所の受圧液室側の壁面に当接した状態では、面積の大きい開放孔を通じて可動膜に作用する加振液室の液圧に基づいた力が、面積の小さいフィルタオリフィスを通じて可動膜に作用する受圧液室の液圧に基づいた力に比して、支配的になる。それ故、加振部材の加振変位に対する受圧液室の液圧の影響が抑えられて、能動的な防振効果を安定して得ることができる。
【0019】
また、大振幅振動の入力時に問題となり易いばね手段の弾性に基づく液圧吸収は、可動膜の変形が仕切部材への当接で制限されることによって、回避される。それ故、オリフィス通路を通じての流体流動による防振効果が有効に発揮されて、優れた防振性能を実現することができる。
【0020】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された流体封入式能動型防振装置において、前記通孔の通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)が、前記フィルタオリフィスの通路断面積と通路長の比以上とされているものである。
【0021】
第4の態様によれば、フィルタオリフィスが反共振によって実質的に閉塞される周波数領域まで通孔を通じた受圧液室と加振液室の間での流体流動が維持されることから、能動的な防振効果がより有利に発揮される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、可動膜に厚さ方向で貫通する通孔が形成されていることによって、アクチュエータによる加振部材の加振時に、可動膜の変形に加えて、通孔を通じて受圧液室と加振液室の間で流体の流動が生じることから、加振液室の液圧の作用による加振部材の拘束を緩和することができる。それ故、加振部材の加振振幅を大きくすることができて、目的とする能動的な防振効果を有効に得ることができる。加えて、大振幅振動の入力時には、可動膜の変形が収容空所の壁面によって制限されることによって、オリフィス通路を通じての流体流動量が確保され、流体の流動作用に基づいた受動的な防振効果が有効に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の1実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。
【図2】図1に示されたエンジンマウントを構成する第1隔壁板の平面図。
【図3】図1に示されたエンジンマウントを構成する第2隔壁板の平面図。
【図4】図1に示されたエンジンマウントを構成する可動膜の平面図。
【図5】図1に示されたエンジンマウントを構成する仕切部材の分解斜視図。
【図6】本発明の別の1実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式能動型防振装置の1実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有しており、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言う。
【0026】
より詳細には、第1の取付部材12は、全体として小径の略段付き円柱形状を呈しており、逆向きの略円錐台形状とされた下側固着部18と、下側固着部18の上端部よりも小径で上方に向かって突出する円柱状の上側嵌合部20とを、一体的に備えている。更に、第1の取付部材12には、中心軸上を延びて上面に開口するボルト孔22が形成されており、内周面に螺子山が形成されている。
【0027】
第2の取付部材14は、薄肉大径の円環状とされており、略円筒形状とされた中間筒状部24の上端から軸方向上方に向かって次第に拡径する上端テーパ部26が延び出していると共に、下端から軸直角方向外方に向かって下端かしめ部28が延び出している。
【0028】
そして、第1の取付部材12が第2の取付部材14の上方に同一中心軸上で配置されて、それら第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状を呈しており、小径側端部が第1の取付部材12の下側固着部18に加硫接着されていると共に、大径側端部が第2の取付部材14の上端テーパ部26に加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16は、第1の取付部材12と第2の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。また、第1の取付部材12における下側固着部18の上面および上側嵌合部20の外周面には、本体ゴム弾性体16と一体形成されたゴム層が加硫接着されている。
【0029】
さらに、本体ゴム弾性体16には、大径凹所30が形成されている。大径凹所30は、本体ゴム弾性体16の大径側端面に開口する凹所であって、第2の取付部材14の内径よりも小さい逆向きの略すり鉢状を呈している。
【0030】
更にまた、本体ゴム弾性体16における大径凹所30の開口周縁部からは、シールゴム層32が下方に向かって延び出している。このシールゴム層32は、薄肉大径の円筒形状を呈するゴム弾性体であって、第2の取付部材14の内周面を覆うように被着形成されている。
【0031】
また、第2の取付部材14には、可撓性膜34が取り付けられている。可撓性膜34は、全体として環状であって、外周端の円筒部36と内周端の円環板部38とを円弧状の湾曲部40で連結した構造とされている。更に、可撓性膜34の円環板部38よりも内周側には、環状の固着部42が一体形成されている。
【0032】
さらに、可撓性膜34の外周端部には、外周固定部材44が加硫接着されている。外周固定部材44は、全体として略円筒形状を呈しており、上端部にフランジ部46が設けられていると共に、下端部に段差部47を介して筒状のかしめ片48が一体形成されている。そして、フランジ部46を含めた外周固定部材44の上端部に可撓性膜34の外周端部が加硫接着されている。なお、可撓性膜34と一体形成された被覆ゴム層50が、外周固定部材44の内周面におけるかしめ片48を除いた略全体に亘って被着形成されている。
【0033】
更にまた、可撓性膜34の内周端部を構成する固着部42には、内周固定部材52が加硫接着されている。内周固定部材52は、円環状とされており、軸方向に延びる円筒状とされた中間部分の両端から外周側に向かってそれぞれ端部フランジが延び出した形状とされている。そして、内周固定部材52の外周面に固着部42が加硫接着されることにより、可撓性膜34が内周固定部材52に加硫接着されている。なお、可撓性膜34は、外周固定部材44と内周固定部材52を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0034】
このような構造とされた可撓性膜34は、外周固定部材44のかしめ片48が第2の取付部材14の下端かしめ部28にかしめ固定されることにより、外周部分を第2の取付部材14によって支持されている。更に、可撓性膜34は、内周固定部材52が第1の取付部材12の上側嵌合部20に外嵌されることにより、内周部分が第1の取付部材12に取り付けられている。
【0035】
なお、第2の取付部材14の中間筒状部24および上端テーパ部26が、外周固定部材44に対して全周に亘って内周側に離隔していると共に、本体ゴム弾性体16において中間筒状部24の上端部と上端テーパ部26との外周面に固着された部分が、外周固定部材44に対して被覆ゴム層50を介して密着している。これにより、第2の取付部材14の中間筒状部24および上端テーパ部26と、外周固定部材44との間には、環状のスペースが形成されている。
【0036】
また、第2の取付部材14の下側開口部には、加振部材54が配設されている。加振部材54は、略円板形状の加振板部56と、加振板部56の中心軸上で下方に向かって延び出す連結ロッド部58とを、一体的に備えている。
【0037】
また、加振部材54は、第2の取付部材14によって弾性支持されている。即ち、加振部材54の外周側には、略円環形状乃至は円板形状とされた支持部材60が、所定距離を隔てて配設されており、この支持部材60が外周固定部材44のかしめ片48によって第2の取付部材14に対して固定されている。また、支持部材60と加振板部56の径方向間には、ばね手段としての支持ゴム弾性体62が配設されている。支持ゴム弾性体62は、外周側に向かって下傾する略円環板形状を有しており、内周面が加振板部56の外周面に加硫接着されていると共に、外周面が外周固定部材44の内周面に加硫接着されている。これにより、加振部材54の加振板部56と支持部材60が支持ゴム弾性体62によって相互に弾性連結されて、加振部材54が第2の取付部材14によって弾性支持されている。
【0038】
また、加振部材54の上方には、仕切部材64が配設されている。仕切部材64は、全体として中央部分が上方に突出する略段付き円板形状を呈しており、外周部分が支持部材60の上面に重ね合わされて、第2の取付部材14によって支持されていると共に、中央部分が加振部材54および支持ゴム弾性体62の上方に所定距離を隔てて配設されている。
【0039】
そして、仕切部材64を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される受圧液室66が形成されていると共に、仕切部材64を挟んだ下側には、壁部の一部が加振部材54で構成された加振液室68が形成されている。要するに、加振液室68は、受圧液室66に対して、仕切部材64を挟んで反対側に設けられている。
【0040】
さらに、本体ゴム弾性体16を挟んで受圧液室66と反対側(本体ゴム弾性体16の外周側)には、壁部の一部が可撓性膜34で構成されて、容積変化が許容される平衡液室70が形成されている。なお、受圧液室66と、加振液室68と、平衡液室70には、何れも非圧縮性流体が封入されている。この非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等が好適に採用される。更に、後述する流体の流動作用に基づいた防振効果を有利に得るためには、封入流体として0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
【0041】
また、第2の取付部材14と外周固定部材44の間に形成された環状のスペースが、第2の取付部材14の中間筒状部24およびシールゴム層32を径方向に貫通する第1連通孔72を通じて受圧液室66に連通されていると共に、第2の取付部材14の上端テーパ部26および本体ゴム弾性体16を貫通する第2連通孔74を通じて平衡液室70に連通されている。これにより、受圧液室66と平衡液室70を相互に連通するオリフィス通路76が形成されている。このオリフィス通路76は、壁ばね剛性を考慮しつつ、通路断面積(A)と通路長(L)の比を調節することによって、チューニング周波数がエンジンシェイクに相当する10Hz程度に設定されている。なお、第2の取付部材14と外周固定部材44の間に形成された環状のスペースは、本体ゴム弾性体16と一体形成された図示しない隔壁部が周上の一部に設けられることで、一周弱の長さに区切られている。
【0042】
一方、加振部材54の下方には、アクチュエータ78が配設されている。アクチュエータ78は、第2の取付部材14によって支持される固定子80と、固定子80に対する軸方向での相対変位を許容される可動子82とを備えた、所謂、電磁式アクチュエータとされている。
【0043】
固定子80は、外周固定部材44のかしめ片48によって第2の取付部材14にかしめ固定されるハウジング84を備えている。ハウジング84は、底壁部中央に円形の貫通孔が形成された略有底円筒形状のハウジング本体86と、鉤状断面を呈するフランジ状の取付部88とを備えている。更に、取付部88には、複数の脚部89が外嵌固定されている。なお、ハウジング本体86の底壁部中央に形成された貫通孔は、異物の侵入を防ぐ等の目的で閉塞されていても良い。
【0044】
さらに、ハウジング84には、コイル部材90が取り付けられている。コイル部材90は、円筒形状を呈するコイル92の上面および内周面上部に上ヨーク94が重ね合わされていると共に、コイル92の外周面および下面に下ヨーク96が重ね合わされることによって形成されている。上ヨーク94と下ヨーク96は、何れも強磁性材料で形成されており、コイル92への通電時に磁路を形成するようになっている。また、上ヨーク94の内周端部と下ヨーク96の内周端部は上下に離隔しており、コイル92への通電時に、上下ヨーク94,96の内周端部間に磁気ギャップが生じて、上ヨーク94の内周端部と下ヨーク96の内周端部に互いに異なる磁極が形成されるようになっている。そして、コイル部材90は、上ヨーク94がハウジング本体86の周壁部に嵌着されると共に、下ヨーク96がハウジング本体86の周壁部および底壁部に重ね合わされて嵌着されることにより、ハウジング84に固定されている。
【0045】
また、コイル部材90の中心孔には、可動子82が挿入されている。可動子82は、逆向きの略有底円筒形状を呈する強磁性体で形成されており、上底壁部の中央部分に円形の貫通孔が形成されている。この可動子82は、上端が上ヨーク94の内周端部下面よりも上方に位置していると共に、下端が下ヨーク96の内周端部上面よりも上方に位置している。
【0046】
そして、図示しない外部電源からコイル92に給電されることにより、上下ヨーク94,96の内周端部にそれぞれ磁極が形成されて、可動子82が磁力によって下方に吸引されるようになっている。
【0047】
このような構造とされたアクチュエータ78は、第2の取付部材14によって支持されている。即ち、ハウジング84の取付部88が外周固定部材44のかしめ片48によってかしめ固定されることにより、固定子80が第2の取付部材14に取り付けられている。
【0048】
一方、アクチュエータ78の可動子82は、加振部材54に取り付けられている。即ち、加振部材54の連結ロッド部58が可動子82に挿通されて、連結ロッド部58の下端部に螺着されたナット100に対して可動子82の上底壁部が軸方向に係止されることにより、可動子82が加振部材54の連結ロッド部58に対して抜け止めされて取り付けられている。なお、例えば、特開2006−17134号公報のように、加振板部56と可動子82の軸方向対向面間にコイルスプリング等の付勢手段が配設されて、可動子82が加振部材54に対して下方に付勢されることで、可動子82がナット100に押し付けられて、ナット100の緩みが防止されていても良い。
【0049】
そして、アクチュエータ78では、コイル92への給電によって可動子82が固定子80に対して軸方向下方に吸引変位されると、可動子82とナット100の係止によって加振部材54が可動子82と共に下方に変位する。その後、コイル92への給電を中止すると、可動子82に作用する磁気的な吸引力が解除されることから、加振部材54が支持ゴム弾性体62の弾性に基づいた復元力によって、初期位置に復帰する。上記の動作を、所定の周期で繰り返すことにより、加振部材54が目的とする周波数で上下に加振変位されて、アクチュエータ78の発生駆動力が加振力として加振液室68に及ぼされるようになっている。なお、加振部材54の初期位置への復帰時に、可動子82も加振部材54と共に初期位置へ復帰する。
【0050】
また、受圧液室66と加振液室68は、仕切部材64に設けられた流体流路を通じて相互に連通されている。より詳細には、仕切部材64は、第1隔壁板102と第2隔壁板104を含んで構成されている。第1隔壁板102は、図1,図2に示されているように、中央部分が上方に突出する略段付き円板形状(ハット状)とされている。一方、第2隔壁板104は、図1,図3に示されているように、第1隔壁板102と同様に中央部分が上方に突出する略段付き円板形状(ハット状)とされており、中央部分の突出高さが第1隔壁板102よりも小さくされていると共に、段差部が第1隔壁板102よりも内周側に位置している。なお、第1隔壁板102と第2隔壁板104は、互いに略同じ厚さ寸法の板材で形成されており、例えば、プレス加工によって得ることができる。
【0051】
そして、第1隔壁板102が第2隔壁板104に対して上方から重ね合わされており、第1隔壁板102の段差部が第2隔壁板104の段差部に外嵌されている。かかる第1隔壁板102と第2隔壁板104の組付け状態において、第1隔壁板102の中央部分と第2隔壁板104の中央部分が軸方向で離隔して対向配置されている。これにより、仕切部材64の内部には、第1隔壁板102と第2隔壁板104の軸方向対向面間の領域を利用して、収容空所106が形成されている。この収容空所106は、略円柱形状乃至は厚肉円板形状を呈する領域であって、上側の壁面が第1隔壁板102の中央部分で構成されていると共に、下側の壁面が第2隔壁板104の中央部分で構成されている。
【0052】
また、収容空所106の軸方向上側壁部には、フィルタオリフィス114が形成されている。フィルタオリフィス114は、図2に示されているように、収容空所106の上側壁面を構成する第1隔壁板102の中央部分に形成された孔であって、周上で等間隔に設けられて、軸方向に貫通する8つの円形孔によって構成されている。また、このフィルタオリフィス114は、その通路断面積と通路長の比が、オリフィス通路76の通路断面積と通路長の比よりも大きくされており、オリフィス通路76よりも高周波数にチューニングされている。なお、フィルタオリフィス114は、後述する能動的な防振効果によって防振すべき振動の周波数に応じてチューニング周波数を設定されており、例えば、アドリング振動に相当する十数Hz程度の中周波数や、走行こもり音に相当する数十Hz程度の高周波数域にチューニングされる。
【0053】
また、収容空所106の軸方向下側壁部には、開放孔116が形成されている。開放孔116は、図3に示されているように、第2隔壁板104において収容空所106の下側壁面を構成する中央部分に設けられた孔であって、径方向中央を軸方向に貫通する中央開放孔118と、その周囲に形成されて軸方向に貫通する4つの外周開放孔120とによって構成されている。中央開放孔118は、フィルタオリフィス114を構成する円形孔よりも大径の円形横断面を有しており、中心軸上を軸方向に貫通して形成されている。外周開放孔120は、周方向に所定の長さで延びる横断面形状を有しており、中央開放孔118を外周側に外れた位置で第2隔壁板104の中央部分を軸方向に貫通して形成されている。
【0054】
さらに、開放孔116は、フィルタオリフィス114よりも大きな断面積で形成されている。即ち、本実施形態では、中央開放孔118と4つの外周開放孔120の断面積の合計が、8つの円形孔で構成されたフィルタオリフィス114の断面積よりも大きくなっている。更に、中央開放孔118の断面積および各外周開放孔120の断面積が、フィルタオリフィス114を構成する各円形孔の断面積よりも大きくなっている。加えて、第1隔壁板102におけるフィルタオリフィス114の形成部分と、第2隔壁板104における開放孔116の形成部分は、軸方向で略同じ厚さとされており、開放孔116を通じて流動する流体の共振周波数が、フィルタオリフィス114のチューニング周波数よりも、高周波数に設定されている。なお、開放孔116やフィルタオリフィス114の断面積が長さ方向で変化する場合には、それらの断面積の最小値をいう。
【0055】
そして、収容空所106は、軸方向一方(上側)の壁部に形成されたフィルタオリフィス114を通じて受圧液室66に連通されていると共に、軸方向他方(下側)の壁部に形成された開放孔116を通じて加振液室68に連通されている。
【0056】
また、収容空所106には、可動膜122が配設されている。可動膜122は、図1,図4に示されているように、略円板形状を呈するゴム弾性体であって、収容空所106の内径寸法よりも小さな外径寸法で形成されている。また、可動膜122の外周端部には、環状の挟持部124が上方に向かって突出するように一体形成されており、外周端部が軸方向に厚肉とされている。
【0057】
さらに、可動膜122には、挟持部124よりも内周側に複数の通孔126が形成されている。この通孔126は、厚さ方向(上下方向)に貫通する小径の円形孔であって、周上に8つが形成されている。なお、本実施形態では、通孔126における通路断面積と通路長の比が、後述するフィルタオリフィス114における通路断面積と通路長の比よりも小さくされており、通孔126を通じて流動する流体の共振周波数が、フィルタオリフィス114を通じて流動する流体の共振周波数(チューニング周波数)よりも低周波数に設定されている。
【0058】
かくの如き構造とされた可動膜122は、図1,図5に示されているように、第1隔壁板102と第2隔壁板104の対向面間で挟持部124を軸方向に挟み込まれて、収容空所106内で軸直角方向に広がるように配設されている。これにより、可動膜122の厚さ方向一方の面(上面)に、フィルタオリフィス114を通じて受圧液室66の圧力が及ぼされていると共に、可動膜122の厚さ方向他方の面(下面)に、開放孔116を通じて加振液室68の圧力が及ぼされている。なお、可動膜122は、外周部分が仕切部材64によって固定的に支持されていると共に、中央部分が軸方向(厚さ方向)の弾性変形を許容されている。
【0059】
また、可動膜122の厚さ方向一方の面(上面)は、収容空所106の軸方向一方の壁面(第1隔壁板102で構成された上側壁面)に対して、下方に離隔して軸方向に対向している。更に、可動膜122の厚さ方向他方の面(下面)は、第2隔壁板104で構成された収容空所106の軸方向他方の壁面(第2隔壁板104で構成された下側壁面)に対して、略全面に亘って当接して重ね合わされている。これにより、外力の作用しない静置状態において、フィルタオリフィス114が受圧液室66と収容空所106の何れに対しても連通されていると共に、開放孔116の収容空所106側の開口部が可動膜122によって覆蓋されている。
【0060】
さらに、可動膜122に形成された通孔126の少なくとも1つが、開放孔116に対して位置合わせされて、開放孔116と直列的に連通されている。これにより、静置状態において、収容空所106と加振液室68が通孔126を通じて相互に連通されており、受圧液室66と加振液室68を相互に連通する流体流路が、フィルタオリフィス114および開放孔116、収容空所106と通孔126とを含んで形成されている。なお、本実施形態では、8つの通孔126のうち1つ置きに4つの通孔126が開放孔116上に位置合わせされて配置されている。また、可動膜122の外周端部に形成された挟持部124は、外周開放孔120よりも外周側に外れて位置しており、全周に亘って第1隔壁板102と第2隔壁板104の間で挟持されている。
【0061】
また、可動膜122は、厚さ方向での弾性変形をある程度まで許容されている。即ち、可動膜122は、収容空所106の上側内面を構成する第1隔壁板102に対して、軸方向下方に離隔して配設されており、厚さ方向上向きの弾性変形が、第1隔壁板102との対向面間距離分だけ許容されている。一方、可動膜122によって覆蓋された開放孔116は、フィルタオリフィス114よりも大きな断面積で形成されており、可動膜122の厚さ方向下側への弾性変形が開放孔116を通じてある程度まで許容されるようになっている。
【0062】
特に、中央開放孔118の断面積と、各外周開放孔120の断面積が、何れも、フィルタオリフィス114を構成する各円形孔の断面積よりも大きくされていることから、可動膜122の下向きの弾性変形が開放孔116によって必要な振幅で許容されるようになっている。
【0063】
なお、中央開放孔118と外周開放孔120は、何れも、平面視における面積中心からの最大寸法が最小寸法に対して10倍以下に設定されていることが望ましい。これによれば、中央開放孔118又は外周開放孔120の開口周縁部からの自由長が大きく確保されて、可動膜122の下向きの弾性変形が効率的に許容される。
【0064】
一方、可動膜122は、厚さ方向での過大な弾性変形が制限されている。即ち、可動膜122の厚さ方向上向きの弾性変形が、第1隔壁板102への当接によって制限されるようになっていると共に、可動膜122の厚さ方向下向きの弾性変形が、開放孔116の開口周縁部に対する当接によって制限されるようになっている。
【0065】
なお、上記の如き可動膜122の弾性変形量は、可動膜122と第1隔壁板102との対向面間距離と、開放孔116の断面積と開口形状とによって、調節することが可能である。即ち、可動膜122と第1隔壁板102との対向面間距離を大きくすると共に、開放孔116の断面積を大きく且つ開放孔116の開口部において面積中心からの最小寸法を大きくするに従って、可動膜122に許容される弾性変形量が大きくなる。
【0066】
このような構造とされたエンジンマウント10は、ブラケット等(図示せず)を介して、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、アクチュエータ78のハウジング84が脚部89において図示しない車両ボデーにボルト固定されることにより、第2の取付部材14が車両ボデーに取り付けられる。これにより、エンジンマウント10が車両に装着されて、パワーユニットが車両ボデーによって防振支持されるようになっている。
【0067】
エンジンマウント10の車両への装着状態において、第1の取付部材12と第2の取付部材14の間にエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、受圧液室66と平衡液室70の相対的な圧力変動に基づいて、オリフィス通路76を通じての流体流動が生じるようになっている。これにより、流体の流動作用に基づいた防振効果(高減衰効果)が発揮されるようになっている。
【0068】
その際、可動膜122は、第1, 第2隔壁板102,104への当接によって変形を制限されて、液圧吸収作用が抑えられている。即ち、低周波大振幅振動の入力によって受圧液室66に正圧が発生すると、可動膜122は、受圧液室66と加振液室68の相対的な圧力差に基づいて、開放孔116を通じて下方に凸となるように変形するが、入力振動の振幅に対して不充分な変位量だけが許容されて、可動膜122が開放孔116の開口周縁部への当接によって変形を制限される。これにより、受圧液室66の液圧が、加振液室68に伝達されて、支持ゴム弾性体62の変形で吸収されるのを、防ぐことができる。それ故、受圧液室66の内圧変動が効率的に惹起されて、受圧液室66と平衡液室70の間でオリフィス通路76を通じての流体流動量が充分に確保されることにより、流体の流動作用に基づいた防振効果が有効に発揮される。
【0069】
さらに、低周波大振幅振動の入力によって受圧液室66に負圧が発生すると、可動膜122は、第1隔壁板102に下方から張り付いて変形を拘束される。これにより、可動膜122の弾性変形による液圧吸収作用の発揮が防止されて、受圧液室66の内圧変動が、加振液室68に逃げることなく確保される。なお、本実施形態では、可動膜122の配設状態における収容空所106の容積(収容空所106における可動膜122よりも上側領域の容積)が、低周波大振幅振動入力時の有効ピストン面積と入力振動の振幅との積(本体ゴム弾性体16の弾性変形に伴って受圧液室66に流入する流体の体積)よりも、小さくされている。それ故、低周波大振幅振動の入力時には、可動膜122が第1隔壁板102に張り付くようになっている。
【0070】
さらに、第1隔壁板102に形成されたフィルタオリフィス114は、断面積が開放孔116に比して小さいことから、可動膜122のフィルタオリフィス114に入り込む変形が、フィルタオリフィス114の開口周縁部に対する可動膜122の当接によって速やかに制限される。しかも、可動膜122は、第1隔壁板102に当接するまでに大きく変形しており、断面積の小さいフィルタオリフィス114に入り込む変形は生じ難くなっている。それ故、可動膜122がフィルタオリフィス114に入り込んで弾性変形することによる液圧の逃げは、実質的に問題にならない。
【0071】
また、第1の取付部材12と第2の取付部材14の間に、アイドリング振動に相当する中乃至高周波小振幅振動が入力されると、アクチュエータ78が入力振動に応じた周波数の発生駆動力を生じて、加振部材54が軸方向に加振変位されるようになっている。そして、加振部材54の加振変位によって加振液室68に及ぼされる加振力は、可動膜122の通孔126を通じた流体流動によって加振液室68から受圧液室66に伝達されるようになっている。
【0072】
すなわち、受圧液室66と加振液室68の間には、仕切部材64に形成されたフィルタオリフィス114および開放孔116、収容空所106と、可動膜122に形成された通孔126とによって、それら受圧液室66と加振液室68を相互に連通する流体流路が形成されている。そして、加振部材54がアクチュエータ78によって加振されると、受圧液室66と加振液室68の間に相対的な圧力差が生じることから、上記流体流路を通じて、受圧液室66と加振液室68の間で流体流動が生じる。かかる流体流動によって、加振液室68に及ぼされた能動的な加振力が、受圧液室66に伝達されて、入力振動が能動的な加振力によって相殺されて低減される。
【0073】
しかも、可動膜122に形成された通孔126は、静置状態において、開放孔116に対して相対的に位置合わせされて連通されていると共に、フィルタオリフィス114に対して軸方向下方に離隔していることで収容空所106を介して連通されている。それ故、アクチュエータ78の発生駆動力によって加振部材54が下方に変位する際に、通孔126(流体流路)を通じた流体流動が生じて、受圧液室66内の流体が加振液室68に流入する。これによって、加振部材54の変位による加振液室68内の液圧低下が抑えられて、負圧の作用による加振部材54の拘束が低減乃至は回避されることから、加振部材54がアクチュエータ78の発生駆動力によって容易に下方へ変位する。従って、加振部材54の加振振幅が大きく確保されて、目的とする能動的な防振効果を有効に得ることができる。
【0074】
また、加振液室68に及ぼされた加振力は、通孔126を通じた流体流動に加えて、可動膜122の弾性変形によっても、受圧液室66に伝達されるようになっている。即ち、アクチュエータ78の発生駆動力によって加振部材54が加振されて、加振液室68に加振力が及ぼされると、可動膜122が厚さ方向で加振力の周波数および振幅に応じた微小変形を生ずる。かかる可動膜122の微小変形は、厚さ方向一方の側において、可動膜122が第1隔壁板102に対して離隔して配設されていることにより、許容されていると共に、厚さ方向他方の側において、可動膜122がフィルタオリフィス114よりも大きな断面積で形成された開放孔116に入り込むように変形することで、許容されている。これにより、加振液室68に及ぼされた加振力が、可動膜122の厚さ方向での微小変形によって、受圧液室66に伝達されて、入力振動に対する相殺的な防振効果が有効に発揮される。
【0075】
しかも、能動的な加振力の加振液室68から受圧液室66への伝達経路上にフィルタオリフィス114が設けられていることから、高調波による振動状態への悪影響等が防止されて、入力振動に対する能動的な防振効果がより効果的に発揮されるようになっている。
【0076】
さらに、開放孔116の断面積がフィルタオリフィス114の断面積よりも大きくされていることから、可動膜122には、加振液室68の液圧に基づく下向きの力が、受圧液室66の液圧に基づく上向きの力に比して、支配的に作用する。それ故、可動膜122が第1隔壁板102に張り付いた状態で加振部材54が下方に吸引されても、可動膜122が、速やかに第1隔壁板102から離隔して、加振部材54の変位に追従して下方に変形する。これにより、加振部材54が支持ゴム弾性体62の弾性に基づいて初期の中立位置に復帰する際には、可動膜122と第1隔壁板102の対向面間にスペースが形成されており、可動膜122が加振部材54の変位に追従して上方に変形する。このように、エンジンマウント10では、可動膜122が第1隔壁板102に張り付いた状態に保持されることで加振力の伝達が妨げられるのを回避できて、加振力が受圧液室66に安定して伝達されるようになっている。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、通孔126の断面積(A)と長さ(L)の比(A/L)が、フィルタオリフィス114の断面積と長さの比よりも小さくされていたが、図6に示されているように、通孔126の断面積と長さの比が、フィルタオリフィス114の断面積と長さの比よりも大きくされていても良い。これによれば、通孔126を通じて流動する流体の共振周波数が、フィルタオリフィス114を通じて流動する流体の共振周波数(チューニング周波数)よりも高周波数とされることから、フィルタオリフィス114が反共振等によって実質的に閉塞される周波数領域まで通孔126が実質的な連通状態に保持される。その結果、受圧液室66と加振液室68の間で通孔126を通じた流体流動が有効に生じて、目的とする能動的な防振効果を有効に得ることができる。尤も、能動的な防振効果が求められる周波数領域がフィルタオリフィス114が実質的に閉塞される周波数領域よりも低周波数である場合には、前記実施形態のように、通孔126の断面積と長さの比がフィルタオリフィス114の断面積と長さの比以下とされていても、目的とする能動的な防振効果が有効に発揮され得る。
【0078】
また、可動膜122は、必ずしも厚さ方向の何れかの面が収容空所106の内面に重ね合わされている必要はなく、可動膜122の厚さ方向両面が、何れも収容空所106の内面に対して所定の距離を隔てて対向配置されていても良い。この場合には、可動膜122に形成される通孔126は、開放孔116やフィルタオリフィス114に対して、必ずしも位置合わせされている必要はない。また、可動膜122は、厚さ方向一方の面が収容空所106の内面に重ね合わされて、フィルタオリフィス114の開口を覆蓋するように配設されていても良く、この場合には、通孔126がフィルタオリフィス114に対して位置決めされて、直列的に連通される。
【0079】
また、フィルタオリフィス114が加振液室68と収容空所106を連通するように形成されていると共に、開放孔116が受圧液室66と収容空所106を連通するように形成されていても良い。
【0080】
また、フィルタオリフィス114を構成する孔の形状や数、形成位置等は、あくまでも例示であって、前記実施形態のものに限定されない。同様に、開放孔116を構成する孔(前記実施形態の中央開放孔118および外周開放孔120)の形状や数、形成位置等も、限定的に解釈されるものではない。
【0081】
また、アクチュエータとしては、前記実施形態で示した電磁式アクチュエータ以外にも、負圧による吸引力等を利用した空気圧式アクチュエータ等も採用され得る。
【0082】
また、本発明の適用範囲は、自動車用の流体封入式能動型防振装置に限定されるものではなく、例えば、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等に用いられる流体封入式能動型防振装置にも適用可能である。更に、本発明に係る流体封入式能動型防振装置は、エンジンマウントとしてのみ用いられるものではなく、サブフレームマウントやボデーマウント、デフマウント等としても用いられ得る。
【符号の説明】
【0083】
10:エンジンマウント、12:第1の取付部材、14:第2の取付部材、16:本体ゴム弾性体、34:可撓性膜、54:加振部材、60:支持ゴム弾性体(ばね手段)、64:仕切部材、66:受圧液室、68:加振液室、70:平衡液室、76:オリフィス通路、78:アクチュエータ、106:収容空所、114:フィルタオリフィス、116:開放孔、118:中央開放孔、120:外周開放孔、122:可動膜、126:通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体によって弾性連結されており、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で形成された受圧液室と、壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡液室が形成されていると共に、それら受圧液室と平衡液室を相互に連通するオリフィス通路が形成されている一方、該第2の取付部材によって支持された仕切部材を挟んで該受圧液室と反対側には壁部の一部が加振部材で構成された加振液室が形成されており、該第2の取付部材によって支持されるアクチュエータの発生駆動力が該加振部材を介して該加振液室に及ぼされるようにした流体封入式能動型防振装置において、
前記仕切部材の内部には収容空所が形成されていると共に、該収容空所には外周部分を該仕切部材によって支持された可動膜が配設されている一方、
該可動膜の厚さ方向一方の面と対向する該収容空所の壁部には前記オリフィス通路よりも高周波数にチューニングされたフィルタオリフィスが形成されて、該収容空所が該フィルタオリフィスを通じて該受圧液室と該加振液室の何れか一方に連通されていると共に、該可動膜の厚さ方向他方の面と対向する該収容空所の壁部には開放孔が形成されて、該収容空所が該開放孔を通じて該受圧液室と該加振液室の何れか他方に連通されており、更に該可動膜には厚さ方向に貫通する通孔が形成されていることを特徴とする流体封入式能動型防振装置。
【請求項2】
前記可動膜の厚さ方向一方の面が前記収容空所の壁面に対して離隔して対向していると共に、該可動膜の厚さ方向他方の面が該収容空所の壁面に対して重ね合わされており、前記開放孔の断面積が前記フィルタオリフィスの断面積よりも大きくされている請求項1に記載の流体封入式能動型防振装置。
【請求項3】
前記開放孔を通じて前記加振液室と前記収容空所が連通されていると共に、前記通孔が該開放孔と位置合わせされて相互に連通されている一方、前記加振部材が前記第2の取付部材に対してばね手段で弾性連結されており、該加振部材が前記アクチュエータの発生駆動力によって前記仕切部材に対して離隔変位すると共に、該アクチュエータの発生駆動力の解除によって該ばね手段の弾性に基づいて初期位置に復帰するようにした請求項2に記載の流体封入式能動型防振装置。
【請求項4】
前記通孔の通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)が、前記フィルタオリフィスの通路断面積と通路長の比以上とされている請求項1〜3の何れか1項に記載の流体封入式能動型防振装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−11314(P2013−11314A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145052(P2011−145052)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】