説明

流体封入式防振装置

【課題】収容領域に可動膜を備えた仕切部材を、防振装置本体への取付け作業前に、空気中で予め組み立てておくことができると共に、非圧縮性流体の封入時に収容領域内の空気を容易に排除することができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供する。
【解決手段】仕切部材64を構成する第1隔壁板100と第2隔壁板102の中央部分の重ね合わせ面間に収容領域120が形成されていると共に、第1隔壁板100と第2隔壁板102の外周部分の各対応する位置に爪状部138と挿通窓136とが形成されており、爪状部138が挿通窓136の周縁部に係止されて固定手段134が構成されている。可動膜124の外周面と収容領域120の内周面との間には対向面間距離を大きくされた拡幅領域146が設けられていると共に、第1隔壁板100と第2隔壁板102の何れか一方において拡幅領域146の壁部を構成する部分に第1エア抜孔148が貫通形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンマウント等として用いられる防振装置に係り、特に、内部に非圧縮性流体が封入された流体室を有する流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装されて、それら部材を相互に防振連結乃至は防振支持する防振装置が知られている。この防振装置は、振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第1の取付部材と、振動伝達系を構成する他方の部材に取り付けられる第2の取付部材が、本体ゴム弾性体によって相互に弾性連結された構造を有している。更に、防振装置の一種として、内部に非圧縮性流体が封入された複数の流体室を有する流体封入式防振装置も知られている。流体封入式防振装置には、非圧縮性流体が封入された流体室が形成されていると共に、その流体室が仕切部材によって仕切られて第1流体室と第2流体室が形成されている。更に、仕切部材に設けられた収容領域には、外周部分を仕切部材によって挟持された可動膜が配設されており、仕切部材に形成された連通孔を通じて可動膜の各一方の面に第1流体室と第2流体室の圧力が及ぼされている。そして、第1流体室と第2流体室の相対的な圧力差に基づいて可動部材が微小変形又は微小変位することで、目的とする防振効果が発揮されるようになっている。例えば、特開2006−17134号公報(特許文献1)が、それであって、加振液室に及ぼされたアクチュエータの加振力が可動部材の微小変位によって受圧液室に伝達されて、能動的な防振効果が発揮されるようになっている。
【0003】
ところで、特許文献1の流体封入式防振装置では、仕切部材がそれぞれプレート状とされた第1隔壁板と第2隔壁板とを厚さ方向で重ね合わせて構成されており、それら第1隔壁板と第2隔壁板との間に収容領域が形成されて、可動部材が配設されている。
【0004】
ところが、第1隔壁板と第2隔壁板を組み合わせる作業(仕切部材の形成作業)は、空気中で行うと、それら第1隔壁板と第2隔壁板の間に空気が残留するおそれがあることから、非圧縮性流体を満たした水槽内で行う必要が生じて、仕切部材の形成作業が難しくなる。特に、可動部材が外周部分を第1隔壁板と第2隔壁板の間で挟持される可動膜である場合には、空気の残留が生じ易く、非圧縮性流体中での組付け作業が必要とされる。更に、仕切部材を水槽内から空気中に取り出すと、再び空気が侵入することから、本体ゴム弾性体の一体加硫成形品等に対する仕切部材の取付け作業を、仕切部材を水槽から取り出すことなく同時に行う必要があって、液中での複雑な作業を求められる。
【0005】
加えて、液中での組み合わせ作業前の段階では、仕切部材が第1隔壁板と第2隔壁板と可動部材の少なくとも3つの部品に分かれており、部品の管理や運搬が煩雑になるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−17134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、収容領域に可動膜を備えた仕切部材を、防振装置本体への取付け作業前に、空気中で予め組み立てておくことができると共に、非圧縮性流体の封入時に収容領域内の空気を容易に排除することができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体によって連結されている一方、非圧縮性流体が封入された流体室が形成されており、第2の取付部材で支持された仕切部材で該流体室が仕切られることによって第1流体室と第2流体室が形成されていると共に、該仕切部材に設けられた収容領域に可動膜が収容配置されて該可動膜の外周部分が該仕切部材で厚さ方向に挟持されており、該仕切部材に形成された連通孔を通じて該可動膜の各一方の面に対して該第1流体室と該第2流体室の圧力が及ぼされてそれら第1流体室と第2流体室の圧力差により該可動膜に弾性変形が生ぜしめられる流体封入式防振装置において、第1隔壁板と第2隔壁板を重ね合わせて前記仕切部材が構成されており、該第1隔壁板と該第2隔壁板の中央部分の重ね合わせ面間に前記収容領域が形成されていると共に、該第1隔壁板と該第2隔壁板の外周部分の各対応する位置に爪状部と挿通窓とが形成されており、該爪状部が該挿通窓の周縁部に係止されて該第1隔壁板と該第2隔壁板とを固定する固定手段が構成されている一方、前記可動膜の外周面と該収容領域の内周面との間には周上で部分的に対向面間距離を大きくされた拡幅領域が設けられていると共に、該第1隔壁板と該第2隔壁板の少なくとも一方において該拡幅領域の壁部を構成する部分に第1エア抜孔が貫通形成されていることを、特徴とする。
【0009】
第1の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、仕切部材が第1隔壁板と第2隔壁板を重ね合わせて形成されていることから、第1隔壁板と第2隔壁板の重ね合わせ面間に収容領域を容易に形成することができる。
【0010】
しかも、第1隔壁板と第2隔壁板は、固定手段によって外周部分で相互に固定されていることから、可動膜を備えた仕切部材を予め形成して準備しておくことが可能とされている。これによって、非圧縮性流体を満たした水槽内で行われる流体封入式防振装置の組立作業において、部品点数を少なくして作業を簡略化することができることから、製造効率の向上が図られ得る。加えて、第1隔壁板と第2隔壁板と可動膜とを大気中で予め組み立てておくことにより、部品の管理や運搬を容易にする効果も期待できる。
【0011】
また、可動膜の外周面と収容空所の内周面との間の隙間には、周上で部分的に大きくされた拡幅領域が設けられており、その拡幅領域が第1エア抜孔を通じて外部に連通されている。そして、大気中で仕切部材を形成する際に可動膜と第1隔壁板および第2隔壁板との間に入り込んだ空気は、仕切部材を非圧縮性流体を満たした水槽内等で第2の取付部材に取り付ける際に、拡幅領域において仕切部材に対する吸着が抑えられて、第1エア抜孔を通じて容易に外部に放出される。これにより、流体室内に不要な空気が残留するのを防ぐことができて、空気の圧縮性による防振性能への悪影響等が回避される。
【0012】
しかも、水流等を利用して仕切部材に残留する空気を積極的に排除する場合には、水流が第1エア抜孔を通じて拡幅領域に入ることから、水流が、可動膜の外周面と収容空所の内周面との間に設けられた隙間の奥まで容易に侵入する。これにより、拡幅領域内に残留する空気のみならず、隙間における拡幅領域を外れた部分の空気も、水流によって押し出して効率的に排除することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第1隔壁板の中央部分と前記第2隔壁板の中央部分が何れも厚さ方向一方の側に突出していると共に、該第1隔壁板の中央部分が該第2隔壁板の中央部分よりも大径とされており、該第1隔壁板の中央部分に該第2隔壁板の中央部分が挿入されて、それら第1隔壁板の中央部分と第2隔壁板の中央部分との径方向間に環状領域が形成されていると共に、該環状領域の壁部には第2エア抜孔が貫通形成されているものである。
【0014】
第2の態様によれば、第1隔壁板と第2隔壁板の重ね合わせ面間に環状領域が形成されていることから、大気中での仕切部材の形成時に第1隔壁板と第2隔壁板の間に保持された空気は、環状領域において界面張力等に基づいた仕切部材への吸着力が低減されて、第2エア抜孔を通じて容易に外部に放出される。これにより、第1隔壁板と第2隔壁板との間への空気の残留が防止されて、第1隔壁板と第2隔壁板の大気中での固定が、防振性能に悪影響を防ぎつつ実現される。
【0015】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第1隔壁板と前記第2隔壁板にそれぞれ前記第2エア抜孔が形成されていると共に、該第2エア抜孔の少なくとも一方が前記第2の取付部材による前記仕切部材の支持状態で閉塞されているものである。
【0016】
第3の態様によれば、環状領域内の空気が、第1隔壁板に形成された第2エア抜孔と、第2隔壁板に形成された第2エア抜孔とを通じて、外部に放出されることから、環状領域への空気の残留がより効果的に防止される。特に、水流によって積極的に空気を排除する場合には、第1隔壁板の第2エア抜孔と第2隔壁板の第2エア抜孔との何れか一方から入った水流が、何れか他方の第2エア抜孔から外部に出ることで、環状領域内の空気が効率的に排除される。
【0017】
しかも、仕切部材が第2の取付部材に取り付けられることで、第2エア抜孔の少なくとも一方が閉塞されることから、仕切部材の第2の取付部材への装着状態において、第1流体室と第2流体室の間で第2エア抜孔および環状領域を通じた流体流動は生じ得ない。それ故、第2エア抜孔および環状領域が仕切部材を貫通して設けられていても、それら第2エア抜孔および環状領域を通じての液圧の逃げ等に起因する防振性能への悪影響は、回避されている。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記収容領域の内周面が円形状とされていると共に、前記可動膜の外周面が多角形状とされており、該可動膜の辺部の外周面と該収容空所の内周面との間に前記拡幅領域が形成されていると共に、該可動膜の角部の外周面と該収容空所の内周面との間に該拡幅領域よりも狭幅の狭幅領域が形成されているものである。
【0019】
第4の態様によれば、多角形状とされた可動膜の辺部の外周面が円形状とされた収容領域の内周面から大きく離隔することを利用して、周上の広い範囲に亘って拡幅領域が形成される。それ故、可動膜の外周面と収容領域の内周面との間に入り込んだ空気が、周上のより広い範囲で効率的に外部に排出される。
【0020】
また、可動膜の角部の外周面と収容領域の内周面は狭い対向面間距離で近接しており、可動膜が収容領域内である程度の位置決めをされるようになっている。それ故、可動膜を収容領域の所定位置に容易に配設することができて、目的とする防振特性を安定して得ることが可能となる。
【0021】
さらに、狭幅領域は、多角形状とされた可動膜の角部を利用して形成されており、周方向に狭い範囲で設けられていることから、狭幅領域に入り込んだ空気が容易に拡幅領域へ移動して、第1エア抜孔を通じて外部に放出される。しかも、拡幅領域と狭幅領域が周方向で相互に連通されていることから、水流による空気の積極的な排除作業を行う場合には、第1エア抜孔から拡幅領域に流入する水流の液圧によって、狭幅領域内の空気が、水流によって隣接する他の拡幅領域に移動して、その拡幅領域の壁部に開口する第1エア抜孔から外部に放出される。このように、狭幅領域の空気を水流によって周方向で隣接する拡幅領域に押し出すことで、容易に排除することができる。
【0022】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記可動膜には厚さ方向で貫通する通孔が形成されているものである。
【0023】
第5の態様によれば、可動膜の仕切部材による挟持部分よりも内周側において収容領域内に入り込んだ空気が、可動膜の通孔を通じて非圧縮性流体を流動させることによって、効率的に外部に放出される。特に、外部から水流を吹き付けて空気を押し出す場合には、通孔を通じて水流が可動膜の厚さ方向反対側にも作用することから、空気の排除が効率的に実現される。
【0024】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記爪状部の少なくとも1つが該挿通窓の周縁部に係止されて前記固定手段が構成されていると共に、該爪状部の少なくとも1つが前記流体室の内周面に当接されて前記仕切部材を該流体室内において前記第1隔壁板と前記第2隔壁板との重ね合わせ方向に直交する方向で位置決めする位置決め手段が構成されているものである。
【0025】
第6の態様によれば、複数の爪状部の一部が変形されて挿通窓の周縁部に係止されることにより、固定手段が構成されていると共に、他の爪状部が第1隔壁板と第2隔壁板の重ね合わせ方向で突出して流体室の内周面に重ね合わされることにより、位置決め手段が構成されている。それ故、固定手段によって、流体封入式防振装置の組立工程の前に、第1隔壁板と第2隔壁板を固定して仕切部材を予め形成しておくことができると共に、位置決め手段によって、仕切部材の第2の取付部材への取付けに際して、仕切部材を第2の取付部材に対して容易に位置決めして、所定の位置に取り付けることができる。
【0026】
本発明の第7の態様は、第1〜第6の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第1流体室が、壁部の一部を前記本体ゴム弾性体で構成された受圧液室とされている一方、前記第2流体室が、壁部の一部を加振部材で構成された加振液室とされていると共に、該加振部材に加振力を及ぼして該加振液室に能動的な圧力変動を及ぼすアクチュエータが設けられて前記第2の取付部材で支持されているものである。
【0027】
第7の態様によれば、高度な防振性能を要求される能動型の流体封入式防振装置において、第1隔壁板と第2隔壁板と可動膜とが大気中で予め組み合わされて仕切部材が形成されることにより、製造容易性が実現されると共に、流体室への空気の混入を防ぐことで、目的とする高度な防振性能を有効に得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、仕切部材が第1隔壁板と第2隔壁板を重ね合わせて構成されており、それら第1隔壁板と第2隔壁板を固定する固定手段が、爪状部が挿通窓の周縁部に対して係止されることで構成されている。それ故、非圧縮性流体中で行われる仕切部材の第2の取付部材への取付け作業に先んじて、第1隔壁板と第2隔壁板を大気中で固定しておくことで、非圧縮性流体中での作業が簡略化されて、製造の容易化が図られる。しかも、第1隔壁部と第2隔壁部と可動膜をそれぞれ個別に管理する場合に比して、部品の管理や運搬が容易になる。更に、可動膜の外周面と収容領域の内周面との間には、周上で部分的に対向面間距離を大きくされた拡幅領域が設けられていると共に、仕切部材を構成する第1隔壁板と第2隔壁板の何れか一方には、拡幅領域の壁部を構成する部分に、第1エア抜孔が貫通形成されている。これにより、大気中で仕切部材を組み立てる際に、可動膜の外周面と収容領域の内周面との間に入り込んだ空気が、拡幅領域および第1エア抜孔を通じて容易に外部に放出されて、流体室への空気の残留が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の1実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。
【図2】図1に示されたエンジンマウントを構成する第1隔壁板の平面図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】図1に示されたエンジンマウントを構成する第2隔壁板の平面図。
【図5】図4のV−V断面図。
【図6】図1に示されたエンジンマウントを構成する可動膜の平面図。
【図7】図6に示された可動膜の正面図。
【図8】図1に示されたエンジンマウントを構成する仕切部材の分解斜視図。
【図9】図8に示された仕切部材を示す斜視図であって、爪状部で第1隔壁板と第2隔壁板が固定される前の状態を示す図。
【図10】図9に示された仕切部材の平面図。
【図11】図8に示された仕切部材を示す斜視図であって、爪状部で第1隔壁板と第2隔壁板が固定された後の状態を示す図。
【図12】図11に示された仕切部材の平面図。
【図13】図6に示された可動膜が図4に示された第2隔壁部の収容凹所内に配置された状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式能動型防振装置の1実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結された構造を有しており、第1の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向を言う。
【0032】
より詳細には、第1の取付部材12は、全体として小径の略段付き円柱形状を呈しており、逆向きの略円錐台形状とされた下側固着部18と、下側固着部18の上端部よりも小径で上方に向かって突出する円柱状の上側嵌合部20とを、一体的に備えている。更に、第1の取付部材12には、中心軸上を延びて上面に開口するボルト孔22が形成されており、内周面に螺子山が形成されている。
【0033】
第2の取付部材14は、薄肉大径の円環状とされており、略円筒形状とされた中間筒状部24の上端から軸方向上方に向かって次第に拡径する上端テーパ部26が延び出していると共に、下端から軸直角方向外方に向かって下端かしめ部28が延び出している。
【0034】
そして、第1の取付部材12が第2の取付部材14の上方に同一中心軸上で配置されて、それら第1の取付部材12と第2の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状を呈しており、小径側端部に第1の取付部材12の下側固着部18が加硫接着されていると共に、大径側端部に第2の取付部材14の上端テーパ部26が加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16は、第1の取付部材12と第2の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。また、第1の取付部材12における下側固着部18の上面および上側嵌合部20の外周面には、本体ゴム弾性体16と一体形成されたゴム層が加硫接着されている。
【0035】
さらに、本体ゴム弾性体16には、大径凹所30が形成されている。大径凹所30は、本体ゴム弾性体16の大径側端面に開口する凹所であって、第2の取付部材14の内径よりも小さい逆向きの略すり鉢状を呈している。
【0036】
更にまた、本体ゴム弾性体16における大径凹所30の開口周縁部からは、シールゴム層32が下方に向かって延び出している。このシールゴム層32は、薄肉大径の円筒形状を呈するゴム弾性体であって、第2の取付部材14の内周面を覆うように被着形成されている。
【0037】
また、第2の取付部材14には、可撓性膜34が取り付けられている。可撓性膜34は、全体として環状であって、外周端の円筒部36と内周端の円環板部38とを円弧状の湾曲部40で連結した構造とされている。更に、可撓性膜34の円環板部38よりも内周側には、環状の固着部42が一体形成されている。
【0038】
さらに、可撓性膜34の外周端部には、外周固定部材44が加硫接着されている。外周固定部材44は、全体として略円筒形状を呈しており、上端部にフランジ部46が設けられていると共に、下端部に段差部47を介して筒状のかしめ片48が一体形成されている。そして、フランジ部46を含めた外周固定部材44の上端部に可撓性膜34の外周端部が加硫接着されている。なお、可撓性膜34と一体形成された被覆ゴム層50が、外周固定部材44の内周面におけるかしめ片48を除いた略全体に亘って被着形成されている。
【0039】
更にまた、可撓性膜34の内周端部を構成する固着部42には、内周固定部材52が加硫接着されている。内周固定部材52は、円環状とされており、軸方向に延びる円筒状とされた中間部分の両端から外周側に向かってそれぞれ端部フランジが延び出した形状とされている。そして、内周固定部材52の外周面に固着部42が加硫接着されることにより、可撓性膜34が内周固定部材52に加硫接着されている。なお、可撓性膜34は、外周固定部材44と内周固定部材52を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0040】
このような構造とされた可撓性膜34は、外周固定部材44のかしめ片48が下端部を内周側に折り曲げられて、第2の取付部材14の下端かしめ部28にかしめ固定されることにより、外周部分が第2の取付部材14によって支持されている。更に、可撓性膜34は、内周固定部材52が第1の取付部材12の上側嵌合部20に外嵌されることにより、内周部分が第1の取付部材12に取り付けられている。
【0041】
なお、第2の取付部材14の中間筒状部24および上端テーパ部26が、外周固定部材44に対して全周に亘って内周側に離隔していると共に、本体ゴム弾性体16において中間筒状部24の上端部と上端テーパ部26との外周面に固着された部分が、外周固定部材44に対して被覆ゴム層50を介して密着している。これにより、第2の取付部材14の中間筒状部24および上端テーパ部26と、外周固定部材44との間には、環状のスペースが形成されている。
【0042】
また、第2の取付部材14の下側開口部には、加振部材54が配設されている。加振部材54は、略円板形状の加振板部56と、加振板部56の中心軸上で下方に向かって延び出す連結ロッド部58とを、一体的に備えている。
【0043】
また、加振部材54は、第2の取付部材14によって弾性支持されている。即ち、加振部材54の外周側には、略円環形状乃至は円板形状とされた支持部材60が、所定距離を隔てて配設されており、この支持部材60が外周固定部材44のかしめ片48によって第2の取付部材14に対して固定されている。また、支持部材60と加振板部56の径方向間には、ばね手段としての支持ゴム弾性体62が配設されている。支持ゴム弾性体62は、外周側に向かって下傾する略円環板形状を有しており、内周面が加振板部56の外周面に加硫接着されていると共に、外周面が外周固定部材44の内周面に加硫接着されている。これにより、加振部材54の加振板部56と支持部材60が支持ゴム弾性体62によって相互に弾性連結されて、加振部材54が第2の取付部材14によって弾性支持されている。
【0044】
このように加振部材54が第2の取付部材14によって支持されることで、第2の取付部材14の下側開口部が流体密に閉塞されている。そして、本体ゴム弾性体16と加振部材54の軸方向対向面間には、外部から密閉された流体室63が形成されており、この流体室63には、非圧縮性流体が封入されている。この非圧縮性流体は、特に限定されるものではないが、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等が好適に採用される。更に、後述する流体の流動作用に基づいた防振効果を有利に得るためには、封入流体として0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。
【0045】
また、加振部材54の上方には、仕切部材64が配設されている。仕切部材64は、全体として中央部分が上方に突出する略段付き円板形状を呈しており、外周部分が支持部材60の上面に重ね合わされて、第2の取付部材14によって支持されていると共に、中央部分が加振部材54および支持ゴム弾性体62の上方に所定距離を隔てて配設されている。
【0046】
そして、仕切部材64が流体室63内で軸直角方向に広がるように配設されることで、流体室63が仕切部材64で仕切られて、上下に二分されている。即ち、仕切部材64を挟んだ上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が惹起される第1流体室としての受圧液室66が形成されていると共に、仕切部材64を挟んだ下側には、壁部の一部が加振部材54で構成された第2流体室としての加振液室68が形成されている。要するに、加振液室68は、受圧液室66に対して、仕切部材64を挟んで反対側に設けられている。
【0047】
さらに、本体ゴム弾性体16を挟んで受圧液室66と反対側(本体ゴム弾性体16の外周側)には、壁部の一部が可撓性膜34で構成されて、容積変化が許容される平衡液室70が形成されている。なお、平衡液室70には、受圧液室66および加振液室68と同様の非圧縮性流体が封入されている。
【0048】
また、第2の取付部材14と外周固定部材44の間に形成された環状のスペースが、第2の取付部材14の中間筒状部24およびシールゴム層32を径方向に貫通する第1接続孔72を通じて受圧液室66に連通されていると共に、第2の取付部材14の上端テーパ部26および本体ゴム弾性体16を貫通する第2接続孔74を通じて平衡液室70に連通されている。これにより、受圧液室66と平衡液室70を相互に連通するオリフィス通路76が形成されている。このオリフィス通路76は、壁ばね剛性を考慮しつつ、通路断面積(A)と通路長(L)の比を調節することによって、チューニング周波数がエンジンシェイクに相当する10Hz程度に設定されている。なお、第2の取付部材14と外周固定部材44の間に形成された環状のスペースは、本体ゴム弾性体16と一体形成された図示しない隔壁部が周上の一部に設けられることで、一周弱の長さに区切られている。
【0049】
一方、加振部材54の下方には、アクチュエータ78が配設されている。アクチュエータ78は、第2の取付部材14によって支持される固定子80と、固定子80に対する軸方向での相対変位を許容される可動子82とを備えた、所謂、電磁式アクチュエータとされている。
【0050】
固定子80は、外周固定部材44のかしめ片48によって第2の取付部材14にかしめ固定されるハウジング84を備えている。ハウジング84は、底壁部中央に円形の貫通孔が形成された略有底円筒形状のハウジング本体86と、鉤状断面を呈するフランジ状の取付部88とを備えている。更に、取付部88には、複数の脚部89が外嵌固定されている。なお、ハウジング本体86の底壁部中央に形成された貫通孔は、異物の侵入を防ぐ等の目的で閉塞されていても良い。
【0051】
さらに、ハウジング84には、コイル部材90が取り付けられている。コイル部材90は、円筒形状を呈するコイル92の上面および内周面上部に上ヨーク94が重ね合わされていると共に、コイル92の外周面および下面に下ヨーク96が重ね合わされることによって形成されている。上ヨーク94と下ヨーク96は、何れも強磁性材料で形成されており、コイル92への通電時に磁路を形成するようになっている。また、上ヨーク94の内周端部と下ヨーク96の内周端部は上下に離隔しており、コイル92への通電時に、上下ヨーク94,96の内周端部間に磁気ギャップが生じて、上ヨーク94の内周端部と下ヨーク96の内周端部に互いに異なる磁極が形成されるようになっている。そして、コイル部材90は、上ヨーク94がハウジング本体86の周壁部に嵌着されると共に、下ヨーク96がハウジング本体86の周壁部および底壁部に重ね合わされて嵌着されることにより、ハウジング84に固定されている。
【0052】
また、コイル部材90の中心孔には、可動子82が挿入されている。可動子82は、逆向きの略有底円筒形状を呈する強磁性体で形成されており、上底壁部の中央部分に円形の貫通孔が形成されている。この可動子82は、上端が上ヨーク94の内周端部下面よりも上方に位置していると共に、下端が下ヨーク96の内周端部上面よりも上方に位置している。
【0053】
そして、図示しない外部電源からコイル92に給電されることにより、上下ヨーク94,96の内周端部にそれぞれ磁極が形成されて、可動子82が磁力によって下方に吸引されるようになっている。
【0054】
このような構造とされたアクチュエータ78は、第2の取付部材14によって支持されている。即ち、ハウジング84の取付部88が外周固定部材44のかしめ片48によってかしめ固定されることにより、固定子80が第2の取付部材14に取り付けられている。
【0055】
一方、アクチュエータ78の可動子82は、加振部材54に取り付けられている。即ち、加振部材54の連結ロッド部58が可動子82に挿通されて、連結ロッド部58の下端部に螺着されたナット98に対して可動子82の上底壁部が軸方向に係止されることにより、可動子82が加振部材54の連結ロッド部58に対して抜け止めされて取り付けられている。なお、例えば、特開2006−17134号公報のように、加振板部56と可動子82の軸方向対向面間にコイルスプリング等の付勢手段が配設されて、可動子82が加振部材54に対して下方に付勢されることで、可動子82がナット98に押し付けられて、ナット98の緩みが防止されていても良い。
【0056】
そして、アクチュエータ78においてコイル92への給電によって可動子82が固定子80に対して軸方向下方に吸引変位されると、可動子82とナット98の係止によって加振部材54が可動子82と共に下方に変位する。その後、コイル92への給電を中止すると、可動子82に作用する磁気的な吸引力が解除されることから、加振部材54が支持ゴム弾性体62の弾性に基づいた復元力によって、初期位置に復帰する。上記の動作を、所定の周期で繰り返すことにより、加振部材54が目的とする周波数で上下に加振変位されて、加振液室68に所定の圧力変動が及ぼされるようになっている。なお、加振部材54の初期位置への復帰時に、可動子82も加振部材54と共に初期位置へ復帰する。
【0057】
また、受圧液室66と加振液室68は、仕切部材64に設けられた流体流路を通じて実質的に連通されており、加振液室68に及ぼされる加振力が、受圧液室66に伝達されるようになっている。
【0058】
より詳細には、仕切部材64は、第1隔壁板100と第2隔壁板102を含んで構成されている。第1隔壁板100は、図2,図3に示されているように、略段付き円板形状とされており、径方向中間部分に設けられた環状の外周段差部104よりも中央側が外周側に対して上方に位置するハット形状を呈している。更に、第1隔壁板100の外周段差部104よりも中央側には、連通孔としての上側連通孔106が形成されている。この上側連通孔106は、第1隔壁板100を厚さ方向に貫通しており、円形断面を有する中央連通孔108と、その周囲に形成されて周方向に所定の長さで延びる4つの外周連通孔110とを含んで構成されている。
【0059】
第2隔壁板102は、図4,図5に示されているように、略段付き円板形状とされており、径方向中間部分に設けられた環状の内周段差部112よりも中央側が外周側に対して上方に位置するハット形状を呈している。また、上方に突出した第2隔壁板102の中央部分には、収容凹所114が形成されている。この収容凹所114は、上方に開口する円形の凹所であって、その底面に複数の連通孔としての下側連通孔116が厚さ方向で貫通して形成されている。更に、収容凹所114の形成によって、第2隔壁板102の中央部分には、収容凹所114の周囲を環状に延びる当接突部118が設けられている。なお、第1隔壁板100の外周段差部104が、第2隔壁板102の内周段差部112よりも大径とされている。
【0060】
そして、第1隔壁板100が第2隔壁板102に対して上方から重ね合わされて、第1隔壁板100の外周段差部104に第2隔壁板102の内周段差部112が挿入されていると共に、外周部分が相互に当接して上下に重ね合わされて、仕切部材64が構成されている。また、第1隔壁板100の中央部分と第2隔壁板102の当接突部118が全周に亘って上下に当接しており、第2隔壁板102に設けられた収容凹所114の開口部が第1隔壁板100の中央部分によって覆蓋されていることによって、円形の内周面を有する収容領域120が仕切部材64に形成されている。この収容領域120は、後述する仕切部材64の第2の取付部材14による支持状態において、上側連通孔106を通じて受圧液室66に連通されていると共に、下側連通孔116を通じて加振液室68に連通されており、受圧液室66と加振液室68を相互に連通する流体流路が、上側連通孔106と収容領域120と下側連通孔116とによって形成されている。
【0061】
さらに、第1隔壁板100の外周段差部104が第2隔壁板102の内周段差部112よりも大径とされており、それら外周段差部104と内周段差部112が径方向で所定の距離を隔てて対向している。これにより、外周段差部104と内周段差部112の径方向間には、全周に亘って連続して延びる環状領域122が形成されている。この環状領域122は、第2隔壁板102の当接突部118が第1隔壁板100に軸方向で当接することによって、収容領域120と隔てられている。また、環状領域122は、受圧液室66や収容領域120等と同様に、非圧縮性流体で満たされている。なお、環状領域122の形状や断面積等は、特に限定されないが、後述する空気を抜く作業時に、外周段差部104と内周段差部112の間に空気が残留することなく外部に排出され得る大きさとされる必要があって、例えば、空気抜きの作業で用いられる水流の強さ等に応じて設定される。
【0062】
また、収容領域120には、可動膜124が配設されている。可動膜124は、図6,図7に示されているように、全体として薄肉板形状のゴム弾性体で形成されており、略円板形状とされた中央部分の上端に、平面視(軸方向視)で角部を面取りされた略8角形の外形を呈する外周部分が一体形成されてなる板状部126を備えている。更に、板状部126の中央部分と外周部分の境界部には、軸方向下方に向かって突出する環状の挟持部128が一体形成されている。更にまた、可動膜124には、板状部126から挟持部128と反対側に向かって突出する環状のシール突部130が一体形成されている。なお、本実施形態の可動膜124では、板状部126の外周面が略8角形状とされていると共に、挟持部128の外周面が略円形とされており、上部と下部で外周面の形状が異なっている。
【0063】
さらに、可動膜124には、複数の通孔132が形成されている。通孔132は、小径の円形孔であって、略一定の断面形状で挟持部128よりも内周側において板状部126を厚さ方向上下に貫通している。
【0064】
そして、可動膜124は、図1,図8に示されているように、第1隔壁板100と第2隔壁板102の重ね合わせ面間に形成された収容領域120に対して軸直角方向に広がって配設されており、外周端の挟持部128が第1隔壁板100と第2隔壁板102との軸方向対向面間で挟持されている。また、可動膜124のシール突部130は、第1隔壁板100に押し当てられて軸方向に圧縮されており、可動膜124と第1隔壁板100の重ね合わせ面間がシール突部130によって流体密に封止されている。また、平面視で略8角形状を呈する可動膜124は、その角部143の外周面が、円形とされた収容領域120の内周面と近接して配置されるようになっており、可動膜124の配設位置が収容領域120内で軸直角方向に大きくずれるのを防止されている。なお、仕切部材64が第1隔壁板100と第2隔壁板102とを軸方向に重ね合わせて形成されていることから、可動膜124が収容領域120内に容易に配設される。
【0065】
なお、後述する仕切部材64の第2の取付部材14への取付け状態において、可動膜124は、収容領域120と上下の連通孔106,116とによって構成される流体流路上に配設されており、可動膜124の弾性変形が許容されることで、流体流路が実質的な連通状態とされると共に、可動膜124の弾性変形が制限されることで、流体流路が実質的な遮断状態とされる。更に、可動膜124には、その上面に対して上側連通孔106を通じて受圧液室66の圧力が及ぼされていると共に、その下面に対して下側連通孔116を通じて加振液室68の圧力が及ぼされている。そして、可動膜124は、受圧液室66と加振液室68の相対的な圧力差に基づいて、厚さ方向に弾性変形されるようになっている。
【0066】
また、第1隔壁板100と第2隔壁板102は、外周部分において相互に固定する固定手段134が設けられており、可動膜124がそれら第1隔壁板100と第2隔壁板102の間で挟持されて収容領域120内に位置決めされている。より具体的には、第1隔壁板100と第2隔壁板102を重ね合わせた状態において、それら第1,第2隔壁板100,102の外周部分の各対応する位置には、それぞれ複数の挿通窓136と爪状部138が形成されており、それら挿通窓136と爪状部138の各複数を含んで固定手段134が構成されている。
【0067】
挿通窓136は、第1隔壁板100の外周段差部104よりも外周側を厚さ方向に貫通する孔であって、周方向に所定の長さで延びる断面形状を有する12個の挿通窓136が略同一周上に等間隔で設けられている。
【0068】
爪状部138は、第2隔壁板102の厚さ方向に突出する舌片形状を呈しており、第2隔壁板102の内周段差部112よりも外周側に一体形成されている。更に、爪状部138は、挿通窓136に挿通可能となるように、挿通窓136と対応する位置に形成されており、12個の爪状部138が略同一周上に等間隔で設けられている。なお、爪状部138は、例えば、第2隔壁板102の外周部分に対して、打抜孔140を、外周側の縁部から径方向内側に向かって突出する舌片が残るように打抜き形成すると共に、その舌片を屈曲変形させて上方に突出させることにより、形成されている。
【0069】
そして、第1隔壁板100と第2隔壁板102が上下に重ね合わされることによって、複数の爪状部138が、複数の挿通窓136にそれぞれ挿通される(図9,図10参照)。更に、挿通窓136に挿通された爪状部138の少なくとも1つが、軸直角方向に広がる平面に対して傾斜角度が小さくなるように変形されて、挿通窓136の周縁部に係止される(図11,図12参照)。本実施形態では、周方向で1つ置きに6つの爪状部138が塑性変形されて、挿通窓136の周縁部に係止されている。これにより、第1隔壁板100と第2隔壁板102が、爪状部138と挿通窓136の周縁部との係止によって、軸方向で相互に位置決めされており、もって、第1隔壁板100と第2隔壁板102を相互に固定して仕切部材64を形成する固定手段134が、各6つの挿通窓136と爪状部138を含んで構成されている。
【0070】
かかる第1隔壁板100と第2隔壁板102の固定は、仕切部材64を第2の取付部材14に取り付ける作業とは別に、予め大気中で行うことが可能であり、それによって爪状部138を簡単に加工して挿通窓136の周縁部に係止させることができる。また、第2の取付部材14への取付け作業よりも前に、第1隔壁板100と第2隔壁板102と可動膜124とを仕切部材64を構成するように組み合わせておくことで、1つの部品として取り扱うことができて、部品の管理や運搬が容易になり得る。
【0071】
また、図13に示されているように、第1隔壁板100と第2隔壁板102の対向面間に形成される収容領域120の内径寸法は、可動膜124の軸直角方向での最大寸法(対角方向での長さ寸法)に比して、大きくされている。これにより、可動膜124の外周面と収容領域120の内周面とが、軸直角方向で全周に亘って離隔して対向配置されており、それら可動膜124の外周面と収容領域120の内周面との対向面間に外周領域142が形成されている。この外周領域142は、全周に亘って連続する環状の領域であって、第2隔壁板102の当接突部118を挟んで環状領域122よりも内周側に形成されている。
【0072】
さらに、外周領域142の第2隔壁板102側(図1中、下側)は、円形とされた可動膜124の挟持部128の外周面と、円形とされた収容領域120の内周面との対向面間に形成されており、全周に亘って略一定の幅寸法(径方向寸法)を有している。一方、外周領域142の第1隔壁板100側(図1中、上側)は、略8角形とされた可動膜124の板状部126の外周面と、円形とされた収容領域120の内周面との対向面間に形成されており、幅寸法が周上で変化している。即ち、板状部126の角部143の外周面と、収容領域120の内周面との対向面間に、幅寸法の小さい狭幅領域144が形成されていると共に、板状部126の辺部145の外周面と、収容領域120の内周面との対向面間に、狭幅領域144に比して幅寸法の大きい拡幅領域146が形成されている。要するに、外周領域142には、狭幅領域144と拡幅領域146が周上においてそれぞれ部分的に設けられており、周方向で交互に配置されている。
【0073】
また、第1隔壁板100には、空気排出孔148が形成されている。空気排出孔148は、図2,図3に示されているように、第1隔壁板100の中央部分における外周連通孔110よりも外周側を厚さ方向に貫通する孔であって、同一周上に配された4つの空気排出孔148がそれぞれ周方向に所定の長さで延びている。
【0074】
さらに、空気排出孔148は、図1,図12に示されているように、径方向での形成位置が第2隔壁板102の当接突部118と対応する周上とされていると共に、当接突部118の上端面に比して、径方向寸法(幅寸法)が大きくされている。これにより、空気排出孔148は、幅方向の中央部分が当接突部118によって下方から覆蓋されている一方、外周側の端部が環状領域122に連通されていると共に、内周側の端部が外周領域142に連通されている。そして、環状領域122と外周領域142が、それぞれ空気排出孔148を通じて外部に開放されている。なお、空気排出孔148は、当接突部118よりも外周側が、第1隔壁板100において環状領域122の壁部を構成する部分に貫通形成された第2エア抜孔とされている。
【0075】
更にまた、空気排出孔148は、図12に破線で示されているように、周方向で可動膜124の隣接する角部143間に跨って形成されており、周方向の両端部分が狭幅領域144に連通されていると共に、周方向の中央部分が拡幅領域146に連通されている。なお、空気排出孔148は、当接突部118よりも内周側が、第1隔壁板100において外周領域142の壁部を構成する部分に貫通形成された第1エア抜孔とされており、各空気排出孔148が、第1エア抜孔と第2エア抜孔の両方の機能を発揮するようになっている。
【0076】
また、第2隔壁板102に形成された打抜孔140は、その内周側の端部が環状領域122の壁部にまで延び出しており、環状領域122が打抜孔140を通じて外部に開放されている。このように、打抜孔140は、第2隔壁板102において環状領域122の壁部を構成する部分に貫通形成されており、本実施形態におけるもう1つの第2エア抜孔とされている。
【0077】
このような構造とされた仕切部材64は、非圧縮性流体を満たした水槽内(以下、「液中」ともいう)で第2の取付部材14に対して取り付けられる。即ち、仕切部材64の外周端部は、第2の取付部材14と支持部材60の軸方向間に挟み込まれており、外周固定部材44のかしめ片48で第2の取付部材14と支持部材60がかしめ固定されることにより、仕切部材64が第2の取付部材14に対して固定されている。
【0078】
また、第1, 第2隔壁板100,102と可動膜124が大気中で予め仕切部材64として組み立てられており、仕切部材64の第2の取付部材14への取付け作業時には、それら第1, 第2隔壁板100,102と可動膜124を1つの部品として取り扱えるようにされている。それ故、部品の管理や運搬等が容易になると共に、液中での組立て作業において、実質的な部品点数が少なくなって、作業の能率化が図られ得る。
【0079】
さらに、挿通窓136に挿通された爪状部138において、固定手段134を構成しない他の6つの爪状部138は、第2の取付部材14の中間筒状部24に挿入されて、少なくとも基端部において流体室63の内周面に重ね合わされる。これにより、仕切部材64は、第2の取付部材14への固定前に流体室63内において、第1隔壁板100と第2隔壁板102の重ね合わせ方向に直交する方向(軸直角方向)で位置決めされており、仕切部材64の外周端部が全周に亘って第2の取付部材14と支持部材60の軸方向間で挟持される。このように、固定手段134を構成しない他の6つの爪状部138によって、仕切部材64を流体室63内で軸直角方向に位置決めする位置決め手段150が構成されている。なお、爪状部138の先端のエッジがシールゴム層32に接触するのを防ぐために、爪状部138の軸直角方向に広がる平面からの傾斜角度(起き上がりの角度)は、90°よりも小さいことが望ましい。
【0080】
また、第1隔壁板100と第2隔壁板102と可動膜124を大気中で予め組み合わせて形成された仕切部材64を、非圧縮性流体を満たした水槽内で第2の取付部材14に装着する際に、第1隔壁板100と第2隔壁板102の間に入り込んだ空気が容易に除去されるようになっている。
【0081】
すなわち、予め大気中で形成された仕切部材64は、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品および可撓性膜34の一体加硫成形品、更には支持ゴム弾性体62の一体加硫成形品に対して、液中で取り付けられる。その際、収容領域120の壁部と可動膜124との間に入り込んだ空気は、挟持部128よりも内周側では、上下の連通孔106,116を通じて外部(液中)に排出される。特に、本実施形態では、可動膜124に厚さ方向で貫通する通孔132が形成されていることから、可動膜124を挟んで下側に入った空気が通孔132を通じて抜けることも期待される。
【0082】
また、挟持部128よりも外周側の外周領域142に入った空気は、空気排出孔148を通じて外部(液中)に排出される。しかも、外周領域142には、周上の複数箇所において、収容領域120の内周面と可動膜124の外周面との対向面間距離が大きくされた拡幅領域146が設けられていると共に、第1隔壁板100において拡幅領域146の壁部を構成する部分に空気排出孔148が形成されている。これにより、拡幅領域146では界面張力等に基づいた空気の保持力が抑えられると共に、大きな気泡が形成されることで気泡の浮力が増すことから、外周領域142に入り込んだ空気が拡幅領域146の壁部に形成された空気排出孔148を通じて効率的に除去される。
【0083】
さらに、本実施形態では、拡幅領域146が可動膜124の外周面形状と収容領域120の内周面形状を異ならせることによって形成されており、拡幅領域146が周上の広い範囲に亘って形成されている。即ち、可動膜124の外周面が平面視で略8角形とされていると共に、収容領域120が平面視で略円形とされており、可動膜124の辺部145の外周面と収容領域120内周面との対向面間距離が、可動膜124の角部143の外周面と収容領域120の内周面との対向面間距離に比して大きくなるのを利用して、拡幅領域146が形成されている。それ故、拡幅領域146が外周領域142における周上の広い範囲に亘っており、外周領域142の空気の保持力が抑えられている。
【0084】
なお、外周領域142に残留する空気は、水流(非圧縮性流体の噴流)を用いて排除することも可能である。即ち、空気排出孔148から拡幅領域146に入った水流は、その拡幅領域146から周方向両側に進行して、他の拡幅領域146に連通する他の空気排出孔148を通じて外部に流出する。これにより、外周領域142内の空気がより効果的に排除されて、空気の残留を防止することができる。
【0085】
しかも、空気排出孔148が拡幅領域146の壁部に形成されていることから、水流に作用する流動抵抗が抑えられて、水流が外周領域142に入り込み易くなっており、外周領域142内の空気が水流によって押し流され易くなっている。
【0086】
加えて、本実施形態では、可動膜124の挟持部128の外周面と収容領域120の内周面との対向面間に形成された外周領域142の下側部分が、可動膜124の板状部126の外周面と収容領域120の内周面との対向面間に形成された上側部分に比して、幅広とされている。それ故、拡幅領域146に入った水流は、流動抵抗の大きくなる狭幅領域144において阻止されることなく、周方向に流動して、全周に亘って空気を外部に排除することができる。なお、狭幅領域144は、軸方向で狭い範囲であることから、下側部分を水流が流動することにより、流速による負圧に基づいて狭幅領域144の空気が水流側に吸い出されて、空気の残留が充分に防止され得る。
【0087】
また、第1隔壁板100と第2隔壁板102の重ね合わせ面間に入り込んだ空気は、それら第1隔壁板100と第2隔壁板102の重ね合わせ面間に形成された環状領域122から空気排出孔148および打抜孔140を通じて外部に排出されるようになっている。即ち、第1隔壁板100と第2隔壁板102の重ね合わせ面間に、充分に大きな幅(径方向寸法)と高さ(軸方向寸法)を有する環状領域122が設けられることによって、環状領域122では界面張力等に基づいた空気の保持力が抑えられていると共に、大きな気泡が形成されることで気泡の浮力が増す。それ故、第1隔壁板100と第2隔壁板102の重ね合わせ面間(環状領域122)に入り込んだ空気が、仕切部材64から離れ易くなって、液中で速やかに外部に放出される。
【0088】
要するに、第1隔壁板100と第2隔壁板102が大気中で予め固定されることから、特別な位置決め構造を設けることなく、第1隔壁板100と第2隔壁板102との軸直角方向で容易に位置決めして固定することができる。それ故、第1隔壁板100の外周段差部104と第2隔壁板102の内周段差部112との当接による位置決めが不要となって、それら外周段差部104と内周段差部112の対向面間に空気抜きのための環状領域122を形成することができるのである。
【0089】
なお、環状領域122に残留する空気は、水流(非圧縮性流体の噴流)を用いて排除することも可能である。即ち、空気排出孔148から環状領域122に入った水流は、環状領域122内を周方向に進行して、他の空気排出孔148から外部に流出する。その際、環状領域122に残留する空気が、水流の圧力で押し流されて、水流と共に外部に排出されることから、環状領域122内の空気が積極的に排除されて、空気の環状領域122内への残留を防止することができる。本実施形態では、空気排出孔148が外周領域142と環状領域122の両方に連通されていることから、空気排出孔148に水流を吹き付けることによって、外周領域142の空気と環状領域122の空気が同時に排除され得る。
【0090】
さらに、環状領域122の壁部には、第2隔壁板102に形成された打抜孔140が開口している。それ故、空気排出孔148から入った水流が打抜孔140を通じても外部に排出されて、環状領域122内の空気の排除がより効果的に実現される。しかも、この打抜孔140は、第2の取付部材14による仕切部材64の支持状態において、支持部材60で覆蓋されて閉塞されることから、防振性能への悪影響が回避されている。
【0091】
かくの如くして、仕切部材64が大気中で予め組み立てられる際に第1, 第2隔壁板100,102と可動膜124との各部材間に入り込む空気が、液中において容易に排除されて、流体室63への空気の混入が防止される。それ故、空気の圧縮性等に起因する防振性能の低下が回避されて、目的とする防振効果を有効に得ることができる。また、高度な防振性能が要求される能動型のエンジンマウント10においても、流体室63に空気が混入するのを防ぐことで、要求特性を満たし得る優れた防振性能を実現することが可能となるのである。
【0092】
なお、流体室63への空気の混入を防止しつつ形成されたエンジンマウント10は、第1の取付部材12が図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられると共に、第2の取付部材14がアクチュエータ78のハウジング84(脚部89)を介して図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、車両に装着される。
【0093】
かかる車両装着状態において、第1の取付部材12と第2の取付部材14の間にエンジンシェイクに相当する低周波大振幅振動が入力されると、受圧液室66と平衡液室70の間でオリフィス通路76を通じた流体の流動が生じて、流体の共振作用等の流動作用に基づいた防振効果(高減衰効果)が発揮される。更に、可動膜124は、第1, 第2隔壁板100,102によって弾性変形を制限されることから、入力振動の振幅に追従し切れず、受圧液室66と加振液室68が実質的に遮断されて、支持ゴム弾性体62の弾性変形による液圧吸収が防止される。それ故、オリフィス通路76を通じての流体流動量が効率的に確保されて、目的とする防振効果が有効に発揮される。
【0094】
一方、アイドリング振動や走行こもり音等に相当する高周波小振幅振動の入力時には、オリフィス通路76が反共振によって実質的に閉塞されると共に、可動膜124の微小変形によって受圧液室66と加振液室68が実質的に連通される。更に、アクチュエータ78によって加振部材54が入力振動に対応する周波数と振幅で加振されて、加振液室68に能動的な加振力が及ぼされる。この加振力が受圧液室66に伝達されることで、入力振動に対する相殺的な防振効果が発揮されて、オリフィス通路76の閉塞による高動ばね化が回避される。特に、本実施形態では、可動膜124に通孔132が形成されており、加振液室68の加振力が、可動膜124の微小変形に加えて、通孔132を通じての流体流動によっても、受圧液室66に伝達されることから、能動的な防振効果がより効率的に発揮され得る。
【0095】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、可動膜124の外周面が多角(8角)形状とされていると共に、収容領域120の内周面が円形状とされていることによって、拡幅領域146が形成されていたが、拡幅領域は、必ずしも多角形状の可動膜と円形状の収容領域の組み合わせによって形成されるものに限定されない。即ち、例えば、可動膜の外周面が円形状とされていると共に、収容領域の内周面が多角形状とされていれば、可動膜の外周面と収容領域の角部の内周面との間に拡幅領域が形成される。更に、例えば、可動膜の外周面上と収容領域の内周面上との少なくとも一方に開口して、厚さ方向の全長に亘って連続する凹所が形成されることによっても、かかる凹所の形成部分に拡幅領域が形成される。
【0096】
また、収容領域120の外周側に設けられた環状領域122は、第1隔壁板および第2隔壁板の構造によっては、省略される場合もあって、必須ではない。具体的には、例えば、第1隔壁板および第2隔壁板の中央部分がそれぞれ厚さ方向に突出することなく厚さ方向に重ね合わされる構造等では、環状領域が省略され得る。
【0097】
また、第1エア抜孔と第2エア抜孔は、前記実施形態の空気排出孔148のように1つの孔を共用して形成されたものに限定されず、相互に独立して形成されていても良い。更に、第1エア抜孔は、第2隔壁部102に貫通形成されていても良く、第1,第2隔壁部100,102の両方に形成されて、少なくとも一方が第2の取付部材14による仕切部材64の支持状態で遮断されるようになっていても良い。更にまた、前記実施形態では、第2エア抜孔として、第1隔壁板100に形成された空気排出孔148と、第2隔壁板102に形成された打抜孔140が設けられていたが、第2エア抜孔は、第1隔壁板100と第2隔壁板102の何れか一方だけに形成されていても良い。
【0098】
また、前記実施形態では、12個の爪状部138のうち6つだけが、挿通窓136への挿通後に変形されて、挿通窓136の周縁部に係止されることで、固定手段134を構成するようになっていたが、全ての爪状部138が挿通窓136の周縁部に係止されて固定手段134を構成するようになっていても良い。
【0099】
さらに、爪状部138と挿通窓136の形成数は、あくまでも例示であって、何れも1つ以上の任意の数で形成され得る。また、爪状部138が第1隔壁部100に形成されていると共に、挿通窓136が第2隔壁部102に形成されていても良いし、各隔壁部100,102にそれぞれ挿通窓136と爪状部138の両方が形成されていても良い。
【0100】
また、前記実施形態では、加振部材54に加振力を及ぼすアクチュエータとして、電磁式のアクチュエータ78が例示されているが、例えば、加振部材54の下面に外部から周期的に負圧を及ぼすことで、負圧吸引力を加振部材54に加振力として作用させる空気圧式のアクチュエータを採用することも可能である。
【0101】
また、本発明の適用範囲は、必ずしも能動的な加振力によって防振効果を得る流体封入式能動型防振装置に限定されるものではなく、アクチュエータ78や加振部材54、支持ゴム弾性体62等を持たない受動型の流体封入式防振装置にも適用可能である。
【0102】
具体的には、例えば、第1の取付部材12と第2の取付部材14の上端部が本体ゴム弾性体16によって連結されていると共に、第2の取付部材14の下端部には薄肉円板形状乃至はドーム形状の可撓性膜が取り付けられており、本体ゴム弾性体16と可撓性膜の軸方向対向面間に流体室が形成されている。また、その流体室には、第1隔壁板100と第2隔壁板102の間に可動膜124を配してなる仕切部材64が軸直角方向に広がって配設されており、仕切部材64の外周端部が第2の取付部材14で支持されている。更に、流体室が仕切部材64を挟んで上下に二分されて、一方の側には壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成された受圧液室66が形成されていると共に、他方の側には壁部の一部が可撓性膜で構成された平衡液室70が形成されており、仕切部材64に形成されたオリフィス通路を通じて、それら受圧液室66と平衡液室70が相互に連通されている。このような構造とされた受動型の流体封入式防振装置においても、本発明が適用されて、可動膜124を備えた仕切部材64の形成を大気中で行うことが可能であると共に、空気の残留を防ぐこともできる。なお、上記構造の流体封入式防振装置においては、受圧液室66が第1流体室とされていると共に、平衡液室70が第2流体室とされている。
【0103】
また、本発明の適用範囲は、自動車用の流体封入式能動型防振装置に限定されるものではなく、例えば、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両等に用いられる流体封入式能動型防振装置にも適用可能である。更に、本発明に係る流体封入式能動型防振装置は、エンジンマウントとしてのみ用いられるものではなく、サブフレームマウントやボデーマウント、デフマウント等としても用いられ得る。
【符号の説明】
【0104】
10:エンジンマウント(流体封入式防振装置)、12:第1の取付部材、14:第2の取付部材、16:本体ゴム弾性体、54:加振部材、63:流体室、64:仕切部材、66:受圧液室(第1流体室)、68:加振液室(第2流体室)、78:アクチュエータ、100:第1隔壁板、102:第2隔壁板、106:上側連通孔(連通孔)、116:下側連通孔(連通孔)、120:収容領域、122:環状領域、124:可動膜、132:通孔、134:固定手段、136:挿通窓、138:爪状部、140:打抜孔(第2エア抜孔)、144:狭幅領域、146:拡幅領域、148:空気排出孔(第1エア抜孔、第2エア抜孔)、150:位置決め手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の取付部材と第2の取付部材が本体ゴム弾性体によって連結されている一方、非圧縮性流体が封入された流体室が形成されており、第2の取付部材で支持された仕切部材で該流体室が仕切られることによって第1流体室と第2流体室が形成されていると共に、該仕切部材に設けられた収容領域に可動膜が収容配置されて該可動膜の外周部分が該仕切部材で厚さ方向に挟持されており、該仕切部材に形成された連通孔を通じて該可動膜の各一方の面に対して該第1流体室と該第2流体室の圧力が及ぼされてそれら第1流体室と第2流体室の圧力差により該可動膜に弾性変形が生ぜしめられる流体封入式防振装置において、
第1隔壁板と第2隔壁板を重ね合わせて前記仕切部材が構成されており、該第1隔壁板と該第2隔壁板の中央部分の重ね合わせ面間に前記収容領域が形成されていると共に、
該第1隔壁板と該第2隔壁板の外周部分の各対応する位置に爪状部と挿通窓とが形成されており、該爪状部が該挿通窓の周縁部に係止されて該第1隔壁板と該第2隔壁板とを固定する固定手段が構成されている一方、
前記可動膜の外周面と該収容領域の内周面との間には周上で部分的に対向面間距離を大きくされた拡幅領域が設けられていると共に、該第1隔壁板と該第2隔壁板の少なくとも一方において該拡幅領域の壁部を構成する部分に第1エア抜孔が貫通形成されていることを特徴とする流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記第1隔壁板の中央部分と前記第2隔壁板の中央部分が何れも厚さ方向一方の側に突出していると共に、該第1隔壁板の中央部分が該第2隔壁板の中央部分よりも大径とされており、該第1隔壁板の中央部分に該第2隔壁板の中央部分が挿入されて、それら第1隔壁板の中央部分と第2隔壁板の中央部分との径方向間に環状領域が形成されていると共に、該環状領域の壁部には第2エア抜孔が貫通形成されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記第1隔壁板と前記第2隔壁板にそれぞれ前記第2エア抜孔が形成されていると共に、該第2エア抜孔の少なくとも一方が前記第2の取付部材による前記仕切部材の支持状態で閉塞されている請求項2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記収容領域の内周面が円形状とされていると共に、前記可動膜の外周面が多角形状とされており、該可動膜の辺部の外周面と該収容空所の内周面との間に前記拡幅領域が形成されていると共に、該可動膜の角部の外周面と該収容空所の内周面との間に該拡幅領域よりも狭幅の狭幅領域が形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
前記可動膜には厚さ方向で貫通する通孔が形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項6】
各複数の前記爪状部と前記挿通窓が形成されており、該爪状部の少なくとも1つが該挿通窓の周縁部に係止されて前記固定手段が構成されていると共に、該爪状部の少なくとも1つが前記流体室の内面に当接されて前記仕切部材を該流体室内において前記第1隔壁板と前記第2隔壁板との重ね合わせ方向に直交する方向で位置決めする位置決め手段が構成されている請求項1〜5の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項7】
前記第1流体室が、壁部の一部を前記本体ゴム弾性体で構成された受圧液室とされている一方、前記第2流体室が、壁部の一部を加振部材で構成された加振液室とされていると共に、該加振部材に加振力を及ぼして該加振液室に能動的な圧力変動を及ぼすアクチュエータが設けられて前記第2の取付部材で支持されている請求項1〜6の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−11315(P2013−11315A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145053(P2011−145053)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】