流体工学装置
本発明は、2種類以上の固有の化学種を含有するサンプルを、希望する任意の数のサブサンプルに分離することを、第1の分離プロトコールのために構成された同じ数の分離媒体にサンプルを通すことによって行うよう構成された種々の装置を考慮している。各サブサンプルは、追加の分離プロトコールによってさらに分離することができ、それによって複数のミニサンプルを得ることができ、そのそれぞれのさらなる分離および/または分析を行うことができる。本発明は、複数の分離媒体を通過する流体流路を形成するために導管を使用する簡単な方法を用いることも考慮しており、これらの媒体のそれぞれは、特定のサブサンプルを単離するよう構成されている。種々の分離媒体によって、サンプルの種々のサブサンプルを単離したあと、導管は取り外すことができ、それによって、単離されたサブサンプルのそれぞれを、他のあらゆるサブサンプルとは独立に、さらに分離および/または分析することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本出願は、2005年5月25日に出願された米国仮特許出願第60/684,177号明細書(「流体工学装置」(Fluidics Device)、ボスケッティ(Boschetti)ら)および2005年7月28日に出願された米国仮特許出願第60/702,989号明細書(「固相バッファーを使用した等電点に基づくタンパク質の分離」(Separation Of Proteins Based On Isoelectric Point Using Solid−Phase Buffers)、ボスケッティ(Boschetti)ら)の優先日の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
特定の生物学的サンプル中の化学種を簡単に単離するための現在の材料および方法は、そのような混合物のすべての成分を確実に単離するためには不十分である。通常、主要な分子種は、主要な分子種の約千分の一未満の濃度で存在する分子種を隠してしまう。血液などの生物学的サンプルの場合、最も主要な2つの分子種がアルブミンおよび免疫グロブリンである。疾病マーカーと関連性を有する可能性や、創薬と関連性を有する可能性がある種々の酵素、抗体、タンパク質、または二次代謝物を同定しようとする試みは、アルブミンおよび免疫グロブリンが全体的に大量に存在するために複雑化される。その結果、2つの最も一般的に使用されている分析技術(すなわち、2次元電気泳動(2DE)および質量分析)の従来の分解能、感度、および処理能力は限定的である。たとえば、サンプル中にこのように大量のタンパク質が存在すると、他の化学種の信号の重なり(2DEの場合)または信号の抑制(質量分析の場合)が起こるために大きな信号が発生し、このため、分析が複雑になり、サンプル中に存在する分子種の一覧に関する結論が不十分となる。
【0003】
特定の分子を単離するために、さまざまな分離プロトコールが開発されている。たとえば、ゲル電気泳動においては、タンパク質が、負に帯電した洗浄剤(たとえばSDS)で均一にコーティングされ、互いに反対の電荷の電極の間の緩衝化したゲル(たとえば、ポリアクリルアミドゲル)の一端(始点)の中央に配置される。これらの電極が帯電すると、各タンパク質分子は、緩衝化されたポリアクリルアミドゲルのpHにおけるそれらの実効電荷により、反対側に帯電した電極である一方の電極に向かって移動する。ゲル中でタンパク質分子が電極に向かって移動する速度または移動度は、分子の大きさに大きく依存し、すなわち、分子が小さいほどゲルマトリックス中を速く移動する。移動度に差が生じる結果、複数の種類のタンパク質分子を分離し、それらの大きさに基づいて単離することができる。
【0004】
ゲル電気泳動の変形の1つは等電点電気泳動であり、これはタンパク質の実効電荷が環境のpHに依存することを利用している。最も一般的には、酸性pHにおいて、タンパク質は全体的に正に帯電し、一方アルカリ性pHにおいては、これらは負に帯電する。タンパク質が実効電荷を有さなくなるpHをその等電点(「pI」)と呼ぶ。等電点電気泳動は、ある電界下でタンパク質があるpH勾配中を移動する電気泳動技術の1つである。あらゆるタンパク質は、それらの等電点と同じpHに出会うまで、カソードまたはアノードに向かって移動する。この等電点において、タンパク質は電荷を失い、移動を停止する。
【0005】
等電点が異なるタンパク質は、異なる位置で停止し、それによって分離され後に同定される。したがって、同様の速度で移動しうる同様の大きさの分子は、異なるpI値を有するため、異なるpH点で停止した後で分離することができる。さらに、非常に複雑な混合物からのタンパク質種の分離を向上させるために、特定の緩衝化されたゲル中の大きさによる移動と、等電点による移動とを交差させる場合があり、この場合に使用される技術は二次元電気泳動と呼ばれる。残念ながら、これらの技術による電気泳動ゲル網目構造内のタンパク質の移動は、非常に遅いプロセスであり、一般に分取目的では受け入れられていない。
【0006】
それに応じて、分離速度を増加させながら、その実施による精度は維持されるように試みられた種々のさらなるプロトコールが開発されている。たとえばモノフィラメントスクリーン、膜、ゲル、フィルター、フリットディスクなどの隔壁(一括して「膜」)によって互いに分離された2つ以上の副区画を含む多くの種類の装置が存在する。一般に、これらの装置は、1つ以上の膜によって互いに分離された複数の実質的に平行なフレームまたはスペーサーから組み立てられる。
【0007】
大体積および大量のタンパク質を均一に処理するために、等電膜を有する多区画エレクトロライザーセレクトロライザー(electrolizerselectrolyzer)が導入されている。たとえば、P.G.リゲッティ(Righetti)ら、「イモビリン膜を有する多区画電解槽中のタンパク質分取精製」(Preparative Protein Purification in a Multi− Compartment Electrolyser with Immobiline Membranes),475 J.CHROMATOGRAPHY 293−309頁(1989年);P.G.リゲッティ(Righetti)ら、「モビリン膜を有する多区画電解槽中のヒトモノクローナル抗体アイソフォームの分取精製」(Preparative Purification of Human Monoclonal Antibody Isoforms in a Multi−Compartment Electrolyser with Immobiline Membranes),500 J.CHROMATOGRAPHY 681−696頁(1990年);P.G.リゲッティ(Righetti)ら、「固定pH勾配を有する場合および有さない場合の分取電気泳動」(Preparative Electrophoresis with and without Immobilized pH Gradients),5 ADVANCES IN ELECTROPHORESIS 159−200(1992)を参照されたい。等電点電気泳動に基づくと、この精製の概念は再利用条件下で発展している。タンパク質マクロイオンは、槽の中に維持され、両性イオン膜が取り付けられた多区画電解槽にわたって電界が連続的に通される。
【0008】
このシステムでは、タンパク質は、「チャネル」とも呼ばれる液脈内に常に維持される。したがって、クロマトグラフィー手順で通常発生するような表面上への吸着によって、タンパク質が失われることがない。むしろ、分離されるタンパク質のpI値を含むpI値を有する2つの膜によって画定されるチャンバー内に、タンパク質が閉じ込められる。したがって、連続滴定法によって、非等電性であるか、異なるpI値を有するかのいずれかであるあらゆる他の不純物は、チャンバーから強制的に追い出される。結局、対象の等電性/等イオン性タンパク質が、チャンバー内の唯一の化学種として最終的には存在するようになる。しかし、タンパク質の等電点および等イオン点は、対イオンが存在するとある程度変化する場合があることを理解すべきである。
【0009】
米国特許第4,971,670号明細書にはこの方法が記載されている。等電膜は、米国特許第4,243,507号明細書においても扱われている。米国特許第5,834,272号明細書には、溶液中、したがって均一触媒反応条件下に酵素を維持する酵素の固定化が記載されている。米国特許第4,362,612号明細書には、隣接する区画は、電気泳動的に異なるpH値に調整されるように機能的に設計されており、それによって等電点により溶解したタンパク質が分離される。類似の複数の副区画の装置が、米国特許第4,971,670号明細書、第5,173,164号明細書、第4,963,236号明細書、および第5,087,338号明細書に記載されている。これらの特許のそれぞれには、膜によって互いに分離され、副区画の実質的に平行な配列を提供する一連の平行なスペーサーで構成される装置が開示されている。
【0010】
同様に、アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)は、直列に配列された複数のpI選択性膜を使用したアイソプライム(IsoPrime)フィルターを販売している。この装置では、pI選択性が増加するまたは減少するように複数の膜が配列されている。溶液がこれらの膜を通過すると、2つの連続した膜の間のpI値を有する分子が、これらの膜の間に捕捉される。しかし、この方法は、完了するまでに数時間程度を要する。インビトロジェン・インコーポレイテッド(Invitrogen,Inc.)は、アイソプライム(IsoPrime)装置に実質的に類似しているが、膜を個別に交換可能である装置のズームIEFフラクショネーター(ZOOM IEF Fractionator)を販売している。しかし、アイソプライム(IsoPrime)と同様に、このズームIEFフラクショネーター(ZOOM IEF Fractionator)も完了までに数時間程度を要する。
【0011】
さまざまな別の分離プロトコールとしては:細胞下分画(ロペス(Lopez),M.F.,Electrophoresis,2000年,21:1082−1093頁;ホーフシュトラッサー(Hochstrasser),D.F.ら,Electrophoresis,2000年,21:1104−1115頁;ドレガー(Dreger),M.,Mass Spectrometry Reviews,2003年,22:27−56頁;パットン(Patton),W.F.,J.Chromatography B,1999年,722:203−223頁;マクドナルド(McDonald) T.G.ら,Basic Res.Cardiol,2003年,98:219−227頁;パットン(Patton),W.F.ら,Electrophoresis,2001年,22:950−959頁;ガーナー(Gerner) C.ら、Mol.and Cellular Proteomics,2002年,7:528−537頁)、分子サイジング(イサク(Issaq),J.H.ら 2003年,ホーフシュトラッサー(Hochstrasser)ら 2000年)、イオン交換(ロペス(Lopez),M.F.,2000年,17)、カルシウム結合タンパク質のための固定化金属相互作用クロマトグラフィー(「IMAC」)(ロペス(Lopez),M.F.ら,Electrophoresis,2000年,21:3427−3440頁)、あるいはリンタンパク質(ハント(Hunt),D.F.ら,Nat.Biotechnol,2002年,20:301−305頁)、疎水性(ロペス(Lopez),2000年)、ヘパリン(ホーフシュトラッサー(Hochstrasser)ら 2000年)、またはレクチン(ホーフシュトラッサー(Hochstrasser)ら 2000年、ロペス(Lopez),2000年;レニエ(Regnier),F.ら,J.Chromatography B,2001年,752:293−306頁)のアフィニティークロマトグラフィー、ならびに液体クロマトグラフィー(イサク(Issaq),J.H.ら 2002年、ホーフシュトラッサー(Hochstrasser)ら 2000年)が挙げられる。
【0012】
無傷のタンパク質分画、またはそれらのトリプシン消化物のために使用される二次元液体クロマトグラフィーでは、一般に、第2の次元に逆相(「RP」)が使用され、第1のクロマトグラフィーステップとしての、イオン交換(イエーツ(Yates),J.R.,Nature Biotech.,1999年、17:676−682頁、アンガー(Unger),K.K.ら,Anal.Chem.,2002年,74:809−820頁)、クロマトフォーカシング(ウォール(Wall),D.ら,Anal.Chem.,2000年,72:1099−1111頁)、サイズ排除(オピテック(Opiteck),G.,Anal.Biochem.,1998年,258:349−361頁)、アフィニティー(レニエ(Regnier)2001年)、または別のRP(チッチ(Chicz) R.ら、Rapid Commun.in Mass Spectrometry,2003年,17:909−916頁)と併用される。
【0013】
残念ながら、管理(pH調整、脱塩、第2の次元における再注入)および分析を行うべき分画が多数存在し、特に2DEなどの時間のかかる分析メソッズメソッド(methodsmethod)の場合には、最終的なボトルネックとなるために、プロテオーム分画における多次元クロマトグラフィーは、一般に二次元を超えることがない。さらに、関連する従来技術の欠点の1つは、特定の分離プロトコールへの種々の装置の適合が相対的にできないことである。たとえば、技術者が1つのサンプル中の20種類の異なるタンパク質を同定しようと望む場合、たとえば、8種類の分離媒体しか含まないシステムでは不十分な場合がある。言い換えると、0.1のpH単位で徐々に増加するpI値を有する20種類の異なるタンパク質を1つのサンプルが勧誘する場合、8種類の分離媒体しか有さない装置では、タンパク質を十分に分離することができない。結果として、各分離媒体によって捕捉されたタンパク質(たとえばpI値に基づく)は、同じ種類の分離(たとえばpI値に基づく)を使用する第2の分離プロトコールによって分離する必要が生じうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、前述したような従来の実施において遭遇する少なくとも1つの不備に対処する装置および方法および装置が必要とされている。より詳細には、タンパク質などの分子を迅速かつ正確に分離する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
本発明の実施形態は、特に、プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置を扱う。この装置は、プレートの一方の側の上の第1の面と、プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有する。各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部を有し、他方の面に出口開口部を有する。複数のチャンバーは、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管は、1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続している。これらのチャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口を、すべての中間チャンバーのそれぞれを介して、最終チャンバーの出口まで接続する流体経路が画定される。
【0016】
この装置のさらに別の一実施形態においては、少なくとも一部の導管は、プレートを貫通して、第2の面の出口開口部を第1の面の入口開口部に接続することができる。さらに、さらに別の一実施形態においては、すべての導管が、第2の面の出口開口部を第1の面の入口開口部に接続することができる。
【0017】
この装置のさらに別の一実施形態においては、系列中の複数のチャンバーを、直線系列(たとえば、横列または縦列)で配列することができる。各チャンバーは、両面で開放するチャネルに隣接することができる。少なくとも1つの出口および入口の間の流体流路は、チャネルを通過することができる。
【0018】
この装置のさらに別の一実施形態においては、少なくとも一部の導管は、第1の面の出口開口部を第1の面の入口開口部に接続することができるか、または第2の面の出口開口部を第2の面の入口開口部に接続することができる。さらに、さらに別の一実施形態においては、少なくとも1つの導管は、第2の面の出口開口部を第2の面の入口開口部に接続することができる。少なくとも1つの導管は、第1の面の出口開口部を第1の面の入口開口部に接続することができる。
【0019】
この装置のさらに別の一実施形態においては、導管が装置から取り外し可能である。
【0020】
この装置のさらに別の一実施形態においては、系列中の少なくとも1つのチャンバーは分離媒体を含有することができる。さらに、さらに別の一実施形態においては、系列中のすべてのチャンバーが分離媒体を含有することができる。さらに、系列中の複数のチャンバーが異なる分離媒体を含有することができる。
【0021】
この装置のさらに別の一実施形態においては、分離媒体の系列は、流体流路の方向に沿って:(a)高選択性媒体、中間の選択性の媒体、および低選択性媒体;あるいは(b)低選択性媒体、中間の選択性の媒体、および高選択性媒体、を含むことができる。
【0022】
この装置のさらに別の一実施形態においては、装置中の複数のチャンバーは8の倍数であってよい。
【0023】
この装置のさらに別の一実施形態においては、装置中の複数のチャンバーは12の倍数であってよい。
【0024】
この装置のさらに別の一実施形態においては、チャンバーを、少なくとも1つのライナー系列で配列することができる。
【0025】
この装置のさらに別の一実施形態においては、チャンバーを、複数の横列および縦列で配列することができる。さらに、さらに別の一実施形態においては、これらのチャンバーを8×12の配列で配列することができる。
【0026】
この装置のさらに別の一実施形態においては、この装置は、流体流路を画定する複数の系列のチャンバーおよび導管をさらに含むことができる。
【0027】
この装置のさらに別の一実施形態においては、この装置は、装置のチャンバーに対応して、横列および縦列で配列された複数のウェルを含む収集プレートをさらに含むことができる。収集プレートの各ウェルは入口を有する。導管を外すと、収集プレートのウェルの入口は、装置のチャンバーと位置合わせされるように構成することができる。
【0028】
この装置のさらに別の一実施形態においては、この装置は、流体流路に沿って流体サンプルを押圧する、または吸引するように構成されたポンプを含むことができる。
【0029】
この装置のさらに別の一実施形態においては、この装置は、チャンバーに対応したウェルを含むドリップスルー(drip−through)マイクロタイタープレートをさらに含むことができる。
【0030】
本発明の別の一実施形態は、装置であって、特に:(a)特に、チャンバーの少なくとも1つの横列を含むプレートであって、各チャンバーが、特に、プレートの第1の面の上の入口と、プレートの反対側の第2の面の上の出口とを含む、プレートと;(b)プレートの第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:(I)1組の奇数番目のウェルの入口に位置合わせされた複数の開口部と、(II)1組の偶数番目のウェルに位置合わせされた複数の開放端導管とを含み、これらの導管が、偶数番目のウェルの入口から出口までを通る、第1の部材と;(c)第1の部材に密封係合する取り外し可能な第2の部材であって:(I)第1のチャンバーの入口に位置合わせされることによって、第1のチャンバーへの入口を形成する開口部と;(II)複数の導管とを含み、各導管が、第1の部材の開口部を第1の部材の導管に接続する、第2の部材と;(d)プレートの第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、チャンバーの出口に位置合わせされた複数の開口部を含む、ガスケットと;(e)ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、ガスケット内の開口部に位置合わせされた複数の溝を含み、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、奇数番目のウェルの出口を偶数番目のウェルの出口に接続する、第3の部材とを含む、装置を扱う。チャンバーと導管との組み合わせによって、奇数番目のウェルを入口から出口まで貫通し、さらに偶数番目のウェルを出口から入口まで貫通する流体流路が画定される。
【0031】
この装置のさらに別の一実施形態においては、奇数番目のチャンバーのそれぞれが分離媒体を含有することができる。
【0032】
本発明の別の一実施形態は、装置であって、特に:(a)特に、チャンバーの少なくとも1つの横列を含むプレートであって、各チャンバーが、特に、プレートの第1の面の上の第1の開口部と、プレートの反対側の第2の面の上の第2の開口部とを含み、これらの開口部が、各チャンバーの入口および出口を画定する、プレートと;(b)プレートの第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:(I)第1の開口部に位置合わせされ、横列中の第1のチャンバーの入口として機能するように構成された入口ポートと、(II)横列中の他の複数のチャンバーの第1の開口部の組を連続的に接続する複数の導管とを含む、第1の部材と;(c)プレートの第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、チャンバーの第2の開口部に位置合わせされた複数の開口部を含むガスケットと;(d)ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、横列中の他の複数のチャンバーの第2の開口部の組を連続的に接続する複数の導管を含む、第3の部材とを含む、装置を扱う。ウェルと導管との組み合わせによって、チャンバーの入口から横列中の最終チャンバーの出口まで通る流体流路が画定される。
【0033】
この装置のさらに別の一実施形態においては、奇数番目のウェルのそれぞれが分離媒体を含有することができる。
【0034】
本発明の別の一実施形態は、装置であって、特に:(a)プレートであって、特に、ウェルの第1および第2の横列の少なくとも1組を含み、各ウェルが、特に、プレートの第1の面の上の入口と、プレートの反対側の第2の面の上の出口とを含む、プレートと;(b)プレートの第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって、特に:(I)第1の横列中のウェルの入口に位置合わせされ、それによってチャンバーが画定される複数の開口部と、(II)第2の横列中のウェルに位置合わせされた複数の開放端チャネルであって、ウェルの入口から出口まで通る導管を画定する、複数の開放端チャネルとを含む、第1の部材と;(c)第1の部材に密封係合する取り外し可能な第2の部材であって、特に:(I)第1の横列中の第1のウェルの入口に位置合わせされた第1の部材中の開口部に位置合わせされ、それによって第1のチャンバーに入口を形成する開口部と;(II)第1の部材の開口部に位置合わせされた複数の溝であって、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、第1の横列中のウェルのn番目の入口を、第2の横列中のウェルのn番目の入口に接続する、複数の溝とを含む、第2の部材と;(d)プレートの第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、特に、ウェルの出口に位置合わせされた複数の開口部を含む、ガスケットと;(e)ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、特に:(I)ガスケット内の開口部に位置合わせされた複数の溝であって、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、第1の横列中のウェルのn番目の出口を、第2の横列中のウェルのn+1番目の出口に接続する、複数の溝と;(II)最終チャンバーの出口に位置合わせされた開口部とを含む、第3の部材とを含む、装置を扱う。ウェルと導管との組み合わせによって、第1の横列中のウェルの入口から出口まで通る流体流路が画定される。
【0035】
この装置のさらに別の一実施形態においては、第2の取り外し可能な部材は、特に、第1の副部品と第2の副部品とを含むことができ:(1)第1の副部品は、特に、第1の部材中の開口部に位置合わせされた開口部を含み、(2)第2の副部品は、特に、第1の部材中の開口部に位置合わせされた開口部と、第1の副部品を第2の副部品に押し付けた場合に溝を形成する複数の開口部とを含む。さらに、第3の取り外し可能な部材は、特に、第3の副部品と第4の副部品とを含むことができ:(1)第3の副部品は、特に、最終チャンバーの出口に位置合わせされた開口部を含み、(2)第4の副部品は、特に、最終チャンバーの出口に位置合わせされた開口部と、第3の副部品を第4の副部品に押し付けた場合に溝を形成する複数の開口部とを含む。
【0036】
この装置のさらに別の一実施形態においては、奇数番目のウェルは分離媒体を含有することができる。
【0037】
本発明の別の一実施形態は、可能なステップの中でも特に:(a)特に、プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを提供するステップであって、(i)この装置は、プレートの一方の側の上の第1の面と、プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、(ii)各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部、および他方の面に出口開口部を有し;(iii)複数のチャンバーは、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管は1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;(iv)チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口から、すべての中間チャンバーのそれぞれを通って、最終チャンバーの出口までを接続する流体流路が画定され;(v)系列中の各チャンバーは異なる分離媒体を含有する、ステップと;(b)特に複数の検体を含むサンプルを、流体流路に沿って、第1のチャンバーの入口から、最終チャンバーの出口に通すことによって、分離媒体が、その媒体に対して親和性を有する検体を捕捉するステップと;(c)出口と入口を接続する導管を装置から取り外すステップと;(d)捕捉された検体を独立にチャンバーから溶出させるステップと;(e)溶出した検体を収集するステップとを含む、方法を扱う。
【0038】
この方法のさらに別の一実施形態においては、この方法は、少なくとも1つのチャンバーから溶出した検体を検出するステップをさらに含むことができる。さらに、この方法のさらに別の一実施形態においては、検体を検出するステップは、質量分析またはゲル電気泳動によって実施することができる。
【0039】
この方法のさらに別の一実施形態においては、溶出ステップは、少なくとも1つのチャンバーから複数の分画を溶出させるステップを含むことができる。
【0040】
この方法のさらに別の一実施形態においては、サンプルは、血液、尿、脳脊髄液、およびそれらの派生物からなる群より選択することができる。
【0041】
この方法のさらに別の一実施形態においては、この方法は、(b)(1)分離媒体によって捕捉された少なくとも1つの検体を2つ以上のミニサンプルに分離するステップをさらに含むことができる。
【0042】
この方法のさらに別の一実施形態においては、この方法は、(b)(1)質量分析、等電点電気泳動、疎水性、および/または親水性の1つ以上のプロトコールを使用することで、分離媒体によって捕捉された少なくとも1つの検体を、2つ以上のミニサンプルに分離するステップをさらに含むことができる。
【0043】
本発明の別の一実施形態はキットを扱う。このキットは、特に:(a)特に、プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置であって、(i)この装置は、プレートの一方の側の上の第1の面と、プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、(ii)各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部、および他方の面に出口開口部を有し;(iii)複数のチャンバーは、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管は1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;(iv)チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口から、すべての中間チャンバーのそれぞれを通って、最終チャンバーの出口までを接続する流体流路が画定される、装置と;(b)分離媒体を含有する少なくとも1つの容器とを含む。
【0044】
本発明の別の一実施形態は、検体の多次元分離方法であって:(a)サンプル中の検体を複数の第1のアリコートに分離するステップであって:(i)連続的に配列され最初から最終まで流体連通している複数の異なる第1の収着剤の第1の系列を提供することと;(ii)サンプルを、第1の系列の最初から最終まで流すことによって、サンプルを異なる収着剤に連続的に接触させ、第1の収着剤は、第1の物理的化学的性質に基づいて検体を捕捉し、第1の収着剤の順序は、第1の物理的化学的性質に関する選択性が低下する順序で最初から最終まで配列され、それによって収着剤がサンプル中の検体に結合し、それによってそれぞれの収着剤が、異なる組の検体を捕捉することと;(iii)検体を複数の収着剤から複数の第1のアリコートに溶出させることとによるステップと;(b)複数の第1のアリコートのそれぞれの中の検体を複数の第2のアリコートに分離するステップであって、独立に:(i)連続的に配列され最初から最終まで流体連通している複数の異なる第2の収着剤の第2の系列を提供することと;(ii)第1のアリコートを、第2の系列の最初から最終まで流すことによって、サンプルを異なる収着剤に連続的に接触させ、第2の収着剤は、第2の異なる物理的化学的性質に基づいて検体を捕捉し、第2の収着剤の順序は、第2の物理的化学的性質に関する選択性が低下する順序で最初から最終まで配列され、それによって収着剤がサンプル中の検体に結合し、それによってそれぞれの収着剤が、異なる組の検体を捕捉することと;(iii)検体をそれぞれの収着剤から複数の第2のアリコートに溶出させることとによるステップと;(c)複数の第2のアリコート中の検体を質量分析によって分離するステップとを含む、方法を扱う。
【0045】
この方法のさらに別の一実施形態においては、収着剤の第1の系列は、等電点に基づいて検体に結合することができ、最高等電点から最低等電点まで、または最低等電点から最高等電点までの順序で検体を捕捉することができる。
【0046】
この方法のさらに別の一実施形態においては、第1の収着剤のそれぞれは、固体バッファーおよびイオン交換材料を含むことができる。さらに、収着剤の第2の系列は、疎水性インデックスに基づいて検体に結合することができ、最高の疎水性から最低の疎水性までの順序で検体を捕捉することができる。さらに、第2の収着剤のそれぞれは、炭化水素鎖およびアミンリガンドを含むことができる。さらに、この系列中の各収着剤の炭化水素鎖は、前の収着剤の炭化水素鎖よりも多くの炭素を含むことができる。
【0047】
この方法のさらに別の一実施形態においては、収着剤の第1の系列は、疎水性インデックスに基づいて検体に結合することができ、最高の疎水性から最低の疎水性までの順序で検体を捕捉することができる。第1の収着剤のそれぞれは、炭化水素鎖およびアミンリガンドを含むことができる。この系列中の各収着剤の炭化水素鎖は、前の収着剤の炭化水素鎖よりも多くの炭素を含むことができる。収着剤の第2の系列は、等電点に基づいて検体に結合することができ、最高等電点から最低等電点まで、または最低等電点から最高等電点までの順序にすることができる。第2の収着剤のそれぞれは、固体バッファーおよびイオン交換材料を含むことができる。
【0048】
この方法のさらに別の一実施形態においては、質量分析がレーザー脱離/イオン化質量分析であってよい。
【0049】
この方法のさらに別の一実施形態においては、質量分析がエレクトロスプレー質量分析であってよい。
【0050】
本発明の別の一実施形態は装置を扱う。この装置は、特に、プレート内に配列された交差する複数の横列および縦列を含む。各横列は、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは横列中の他のチャンバーに流体接続されるように構成されている。各縦列は、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは横列内の他のチャンバーに流体接続されるように構成されている。1つの横列中の少なくとも一部のチャンバーは、特定の範囲内のpI値を有する分子を捕捉するように構成されたクロマトグラフィー分離媒体を含み、チャンバーのクロマトグラフィー分離媒体は、その横列のチャンバー内で、最低から最高または最高から最低となるよう連続して配列される。少なくとも1つの縦列中の少なくとも一部のチャンバーは、特定の範囲内の疎水性値を有する分子を捕捉するように構成された疎水性分離媒体を含み、チャンバーの疎水性分離媒体は、縦列中のチャンバー内で最低から最高または最高から最低となるように連続して配列される。
【0051】
本発明の別の一実施形態は、検体の多次元分離方法を扱う。この方法は、可能なステップの中でも特に:(a)プレート内に配列された交差する複数の横列および縦列を含む装置を提供するステップであって、各横列が、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは横列中の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、各縦列が、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは横列内の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、1つの横列中の少なくとも一部のチャンバーは、特定の範囲内のpI値を有する分子を捕捉するように構成されたクロマトグラフィー分離媒体を含み、チャンバーのクロマトグラフィー分離媒体は、その横列のチャンバー内で、最低から最高または最高から最低となるよう連続して配列されており、少なくとも1つの縦列中の少なくとも一部のチャンバーは、特定の範囲内の疎水性値を有する分子を捕捉するように構成された疎水性分離媒体を含み、チャンバーの疎水性分離媒体は、縦列中のチャンバー内で最低から最高または最高から最低となるように連続して配列されているステップと;(b)クロマトグラフィー分離媒体を含有するチャンバーを含む横列中の第1のチャンバーにサンプルを供給するステップと;(c)横列中のクロマトグラフィー分離媒体の系列にサンプルを通過させることによって、サンプルを複数のサブサンプルに分離し、それぞれを横列の各チャンバーに供給するステップと;(d)縦列中の疎水性分離媒体の系列にサンプルを通過させることによって、横列の少なくとも1つのチャンバー中のサブサンプルを複数のミニサンプルに分離し、それぞれ交差する縦列の各チャンバーに供給するステップとを含む。
【0052】
本発明のこれらおよびその他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、図面において示される付随する代表的な実施形態によってより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
詳細な説明
本発明の現在好ましい実施形態を図面で説明する。複数の図面で同じ参照番号を使用して同じまたは類似の部分を示している。
【0054】
本発明は、プレート内に配列されたチャンバーの系列を含み、取り外し可能な導管によって接続された入口および出口を有する流体工学装置を提供する。本発明のプレートは、好ましくは、ドリッププレートなどのマイクロタイタープレート、またはフィルタープレートである。しかし、別の実施形態においては、プレートは、孔などのチャネルを含む部品を含むことができ、この孔はこの部品のいずれかの側で開いており、導管が孔の開口部に取り付けられるとチャンバーを画定する。好ましくは、複数のチャンバーが実質的に1つの面内に配列される。
【0055】
チャンバーと導管との組み合わせによって流体流路が画定され、これによってチャンバー間で流体を圧送することができる。好ましくは、系列中の各チャンバーは、複合サンプル中の異なるサブセットの検体を捕捉することができる異なる分散媒体を含む。この装置に独特の有用性は、導管が取り外し可能であるために、任意のチャンバー中の分離媒体によって捕捉された検体が、たとえば、チャンバーから検体を溶出させることによって単離できることにある。単離した後、利用可能なあらゆる方法によって検体の検出または分析を行うことができる。
【0056】
本発明の現在好ましい実施形態を図面で説明する。複数の図面で同じまたは類似の参照番号を使用して同じまたは類似の部分を示している。
【0057】
以下に詳細に説明する本発明の各実施形態は、たとえば、典型的な96チャンバー(8つの横列×12の縦列)フォーマットで配列された標準的なマイクロタイター濾過プレートを使用することができる。他のフォーマットを使用することもでき、たとえば、あらゆる8の倍数のチャンバー、あらゆる12の倍数のチャンバー、あらゆる96の倍数のチャンバーを有するプレート(たとえば、386チャンバープレート)などを使用することもできる。濾過プレートの各チャンバーは、特定の種類の分離媒体を含有することができ、たとえば、クロマトグラフィー樹脂(たとえば、充填床または流動床)を含有することができる。
【0058】
第1の実施形態(図1〜4に関して以下に説明する)において、流体は強制的に、系列(たとえば、縦列または横列)内の1つのチャンバーを下向きに通され、系列の次のチャンバーを上向きに通され、系列の次のチャンバーを下向きに通され、系列の次のチャンバーを上向きに通される、などを交互に繰り返す。より具体的には、系列(たとえば、縦列または横列)内の第1のチャンバーの底部開口部は、その系列中の第2のチャンバーの底部開口部に接続することができる。この第2のチャンバーの上部開口部は、その横列(または縦列)中の第3のチャンバーの上部開口部に接続することができる。底部と底部および上部と上部の接続の連続によって、第1のチャンバーを上部から底部へと移動し、次に第2のチャンバーを底部から上部へと移動し、次に第3のチャンバーを上部から底部へと移動するなどの流路が形成される。
【0059】
第2の実施形態(図5〜7に関して後に説明する)においては、流体は強制的に、各チャンバーを下向きに通される。より具体的には、縦列(または横列)中の第1のチャンバーの底部開口部は、その縦列(または横列)中の第2のチャンバーの上部開口部に接続することができる。その第2のチャンバーの底部開口部は、その横列(または縦列)中の第3のチャンバーの上部開口部に接続することができる。底部と上部の接続が連続することによって、第1のチャンバーを上部から底部へと移動し、第2のチャンバーを上部から底部へと移動し、第3のチャンバーを上部から底部へと移動するなどの流路が形成される。
【0060】
別の実施形態においては、これらの配列を組み合わせることができ、たとえば、底部と底部/上部と上部の接続および底部と上部の接続の両方を含むことができる。
【0061】
上記実施形態のいずれにおいても、一連の並行分離プロトコールは、縦列(または横列)のそれぞれに沿って同時に行うことができる。言い換えると、異なるサンプルを、特定の縦列(または横列)中の第1のチャンバーに供給することができる。次に各サンプルをそのそれぞれの横列中の各チャンバー(およびその中の種々の分離)に通すことができる。特定のサンプルが通過するそれぞれの分離媒体は、サンプルの一部を捕捉する役割を果たし、そのため、特定の横列中の最終チャンバーに到達したときには、サンプルが通過した各チャンバー中にサンプルのさまざまな部分が保持される。さらに、サンプルの分離が完了すると、サンプルの一部(または「サブサンプル」)のそれぞれを、収集プレートに移すことができ、希望するならさらなる分析(たとえば、質量分析、ゲル電気泳動など)または分離を行うことができる。
【0062】
より具体的には、各サンプルは、特定の縦列(または横列)中の第1のチャンバーを介して装置に導入することができる。次に、サンプルは、たとえば、蠕動ポンプ(種々の好適な流速で)を介して装置中を通過するよう圧送することができ、その縦列(または横列)中の各チャンバー中のすべての分離媒体をサンプルが通過するまで圧送を続けることができる。サンプルがすべての分離媒体を通過した後、すべての接続チューブおよび/または導管を取り外すことができる。その結果、この装置は、バッチまたは連続流方式で操作される通常のサンプルが充填されたフィルタープレートとして機能させることができる。しかし、希望するなら、各分離媒体は、あらゆる他の分離媒体とは独立に処理することもできる。さらに、たとえば、真空または遠心分離によってマイクロタイタープレートの各チャンバーからサンプルを取り出すことができる。
【0063】
これより第1の実施形態を図1〜4に関して説明する。図1に示されるように、マイクロタイタープレート100は、横列および縦列のマトリックスで配列された複数のチャンバー102を含む。各チャンバー102は、マイクロタイタープレート100の上面および下面110、112によって画定される面内に実質的に存在する。図示されているように、マイクロタイタープレート100は、たとえば、8×12マトリックス中に配列された96のチャンバーを含むことができる。しかし、チャンバー102の数も横列/縦列の数も、本発明においては重要ではない。むしろ、あらゆる好適な数のチャンバー102を使用することができる。さらに技術者は、含まれるチャンバー数、および個別の分離プロトコールに必要な対応するチャンバー数に基づいてマイクロタイタープレートを選択することができる。
【0064】
図2Bは、マイクロタイタープレート100の断面を示している。図2Bに示されるように、マイクロタイタープレート100の各チャンバー102は、2つの開口部104を有し、その一方は入口106として機能し、他方は出口108として機能する。しかし、特定のチャンバー102の開口部104が入口106または出口108のいずれとして機能するかは、後に詳細に説明するようにチャンバー102を通過する流れの方向に依存する。すなわち、チャンバー内の特定の開口部が入口または出口のいずれとなるかは、開口部が開いている面とは無関係である。
【0065】
マイクロタイタープレート100の上部および下部には、それぞれ第1および第2の導管プレート120、140が配置される。第1の導管プレート120(図2Aに示される)は、入口ポート122および出口ポート126を含む。入口および出口ポート122、126の間には、導管124の系列が存在する。図示されているように、たとえば、第1のプレート120は、マイクロタイタープレート100中のチャンバー102の特定の組(たとえば横列)に対応する3つの導管124A、124B、124Cを有することができる。
【0066】
第1のプレート120と同様に、第2のプレート140も複数の導管144を含む。図示されているように、第2のプレート140は、たとえば、マイクロタイタープレート100中のチャンバー102の特定の組(たとえば横列)に対応する4つの導管144A、144B、144C、144Dを含むことができる。さらに、図示される実施形態の第2のプレート140は入口および/または出口ポートを含まないが、本発明の別の実施形態(たとえば、分離が奇数のチャンバーを含む場合)は、第2のプレート140中に出口(または入口)を含むことができる。
【0067】
この実施形態のある変形は、下部プレート140とマイクロタイタープレート100との間に配置されるように構成されたガスケット160を含むこともできる。ガスケット160は、下部プレート140をマイクロタイタープレート100に封止する機能を果たすことができる。
【0068】
第1および第2のプレート120、140が、それぞれマイクロタイタープレート100の上面および下面110、112に接続(そして場合によりガスケット160によって封止)されると、流体流路(図3中に矢印で示されている)が形成される。この流体流路は、たとえば、ある横列中の第1のチャンバー102Aとその横列中の最終チャンバー102Hとの間に延在する。より具体的には、サンプルは、第1のプレート120中の入口ポート122を通過し、第1のチャンバー102Aの入口106Aを通過することができる。このサンプルのサブサンプルの1つは、たとえば、チャンバー内に提供された分離媒体(図示せず)によって、第1のチャンバー102A内に保持することができる。サンプルの残りは、第1のチャンバー102Aの出口108Aを通過し、第2のプレート140中の第1の導管144Aを通過し、第2のチャンバー102Bの入口106Bを通過する。続いて、別のサブサンプルを、第2のチャンバー102B内に供給された異なる分離媒体(図示せず)によって、第2のチャンバー102B内に保持することができる。同様に、元のサンプルの残り(第1および第2のチャンバー102A、102B内の分散媒体を通過した後)は、第2のチャンバー102Bの出口108Bを通過し、第1のプレート120中の導管124Aを通過し、第3のチャンバー102Cの入口106Cを通過し、そこで別のサブサンプルを保持することができる。
【0069】
この反復するプロセスは、サンプルの残りが、最終チャンバー102H内の分離媒体(図示せず)を通過するまで続く。この時点で、実施形態に依存するが、第1のプレート120の出口ポート126によって、残ったサンプルを最終チャンバー102Hから取り出すことができる。しかし、別の実施形態においては:(a)最終チャンバー102Hの出口108Hを異なる横列(または縦列)中のチャンバー102の入口106に接続する、第1のプレート120中の別の導管124(図示せず)を提供すること;または(b)第1のプレート120中の出口ポート126を異なる横列(または縦列)中のチャンバー102の入口106に接続することのいずれかによって、異なる横列(または縦列)中で分離を続けることができる。
【0070】
サンプルが通過するチャンバー102の数とは無関係に、サンプルの移動を補助するための多数の手段が存在する。たとえば、ポンプ(たとえば蠕動ポンプ)を第1のプレート120の入口ポート122に接続することができ、このポンプがサンプルを押し出すことで、チャンバー102を通過させることができる。あるいは(またはこれに加えて)、ポンプ(たとえば蠕動ポンプ)を第1のプレート120の出口ポート126に接続することができ、このポンプがサンプルを吸引することで、チャンバー102を通過させることができる。
【0071】
この実施形態の他の関連する装置は、複合(または「二次元」)分離プロトコールを考慮している。たとえば、1つのサンプルを特定の横列中で8つのサブサンプル(たとえば、チャンバー102A〜102H)に分離するために、第1および第2のプレート120、140を使用する場合、これらのサブサンプルのそれぞれは、そのそれぞれの縦列に沿って複数(たとえば12)のミニサンプルにさらに分離することができる。
【0072】
このような一実施形態において、第1および第2のプレート120、140は、プレートの特定の縦列中のチャンバーを接続する導管を含む別のプレート(図示せず)と交換することができる。結果として、第1の分離プロトコール(第1および第2のプレート120、140を使用)が特定の横列に沿っており、第1の分離プロトコールに基づく場合、種々の縦列中の残りのチャンバーのそれぞれを使用して、第2の分離プロトコールに基づいたさらなる分離を行うことができる。言い換えると、各サブサンプルは、それらのそれぞれの縦列のチャンバー内の分離媒体を通過させることができる。その結果、たとえば、8×12マトリックスのチャンバーを使用する場合、第1の分離プロトコール後に、8つのサブサンプルを得ることができる。そして、第2の分離プロトコール後には、96の個別のミニサンプルを得ることができる。
【0073】
以上の複合分離に加えて、たとえば、特定の縦列中のチャンバー内の各ミニサンプルは、別のマイクロタイタープレート(図示せず)の類似の大きさの縦列に移すことができ(後に詳述する手段によって)、そこで、それらの横列に沿って第3の分離プロトコールによってさらに分離することができる。あるいは、またはこれに加えて、個別のミニサンプルのそれぞれは、従来のあらゆる他の分析または分離のプロトコール(たとえば、クロマトグラフィー、等電点電気泳動、疎水性、親水性、サイズ排除、質量分析、ゲル電気泳動、イオン交換、種々の他の分離プロトコール(その一部は本発明の実施形態として後述する)など)を使用してさらなる分析および/または分離を行うことができ、それによって元のサンプルの分離にさらに別の次元を付け加えることができる。さらに、たとえば、追加のクロマトグラフィー分離プロトコールが使用される場合は、あらゆる従来のクロマトグラフィー技術(たとえば、イオン交換、疎水性固相、アフィニティー収着剤、金属キレート化樹脂、ゲル濾過材料、ハイドロキシアパタイト結晶など)を使用することができる。
【0074】
たとえば、横列、縦列、またはマトリックスのミニサンプルのそれぞれを、より長期間用の保管装置に移動させるために、図4に示される種類の収集プレート200を使用することができる。この実施形態において、第2のプレート140(ガスケット160を有する場合も有さない場合もある)は、マイクロタイタープレート100から取り外すことができ、マイクロタイタープレート100の下側にある開口部104を収集プレート200中のウェル202の位置に合わせすることができる。サブサンプル(または複合分離後のミニサンプル)は、たとえば重力、真空などのあらゆる従来手段によって、収集プレート200中のウェル202内に入れることができる。
【0075】
同様に、関連する他の実施形態においては、上部120を取り外すことで、チャンバー上部開口部104を介して、チャンバー102内に収容されたサブサンプル/ミニサンプル(たとえば検体)に1種類以上の溶媒を加えることができる。さらに、溶媒を使用することで、チャンバー102チャンバーの下部開口部104を介したサブサンプル/ミニサンプルの排出を促進することができる(すなわち、サブサンプル/ミニサンプルをチャンバー102から、たとえば収集プレート200内に滴下することができる)。
【0076】
これより本発明の別の一実施形態を、図5〜7に関して論じる。この実施形態において、分離可能な導管502が、たとえば、標準的な8×12マイクロタイタープレート500中の種々のチャンバー510の出口と入口を接続している。図5に示されるように、この実施形態の利点の1つは、技術者が希望する数のチャンバー510に容易に接続できることである。より具体的には、図示されるように、技術者は、入口ポート512を第1のチャンバー510Aの入口506に接続することができる。続いて、次に導管502を、たとえば、系列中の全部で16のチャンバー510−A〜510−Pに接続することができる。最後に、その系列中の最終チャンバー510−Pの出口508を、出口ポート514に接続することができる。分離が行われる直線系列中のチャンバー510−A〜510−Pに隣接して、アクセスチャネル520−A〜520−Pが設けられ、これらのアクセスチャネルは、ある実施形態においては、分離プロトコールの実施に使用されない別のチャンバーであってもよい。
【0077】
図6に示されるように、アクセスチャネル520−A〜520−Pによって、導管502がマイクロタイタープレート500を貫通することができ、それによって、プレート500の一方の側(下側)の上の第1のチャンバー(たとえば510A)の出口508を、プレート500の第2の側(上側)の上の第2のチャンバー(たとえば510B)の入口506に接続することができる。これは可撓性の構造であるため、技術者は希望する数のチャンバー510を容易に接続することができる。さらに、チャンバー510が接続されると、サンプルはほぼ矩形波型で上部から底部までチャンバーを通過することができる。
【0078】
サンプルが通過するチャンバー510の数とは無関係に、サンプルの移動を補助するための多数の手段が存在する。たとえば、ポンプ(たとえば蠕動ポンプ)を第1のチャンバー510Aの入口ポート512に接続することができ、このポンプがサンプルを押し出すことで、チャンバー510−A〜510−Pを通過させることができる。あるいは(またはこれに加えて)、ポンプ(たとえば蠕動ポンプ)を最終チャンバー510−Pの出口ポート514に接続することができ、このポンプがサンプルを吸引することで、チャンバー510−A〜510−Pを通過させることができる。
【0079】
サブサンプル(または複合分離のミニサンプル)のそれぞれは、別のマイクロタイタープレート中のチャンバーに移すことができ、そこで、より長期間保管したり、さらなる分析(たとえば、質量分析、ゲル電気泳動などを使用して)を行ったり、および/または分離(たとえば疎水性を使用して)を行ったりすることができる。サブサンプル(またはミニサンプル)のそれぞれを、より長期間用の保管装置に移動させるために、図7に示される種類の収集プレート200を使用することができる。この実施形態において、導管502を出口508から取り外すことができ、出口508を、収集プレート200中のウェル202の位置に合わせることができる。たとえば重力、真空などのあらゆる従来手段によって、サブサンプル(または複合分離後のミニサンプル)を収集プレート200のウェル202内に入れることができる。
【0080】
同様に、関連する別の実施形態においては、導管502を取り外すことで、チャンバー入口506を介して、チャンバー510内に収容されたサブサンプル/ミニサンプル(たとえば検体)に1種類以上の溶媒を加えることができる。さらに、溶媒を使用することで、チャンバー出口508を介したサブサンプル/ミニサンプルの排出を促進することができる(すなわち、サブサンプル/ミニサンプルをチャンバー510から、たとえば収集プレート200内に滴下することができる)。
【0081】
図1〜4の前述の実施形態と同様に、技術者が、マイクロタイタープレート500を使用して第1の分離プロトコールによって、サンプルを複数のサブサンプルに分離した後、技術者は第2の分離プロトコールを実施することができる。第2の分離プロトコールによって、1つ以上のサブサンプルを複数のミニサンプルにさらに分離することができる。
【0082】
図8Aは、別の実施形態断面図であり、この場合、図1〜4の実施形態の上部プレート120が2つの分離した部品120A、120Bに分割され、それによって、図5〜7に示される実施形態と類似の上部から底部までの機能を有する装置が形成される。より具体的には、下部部品120Bの長いキャピラリー部分128は、チャンバー102全体を通過するように構成されており、すなわち、それぞれの長い部分128によって、サンプルが、長い部分128が提供されたチャンバー102を実質的に回避するようにすることができる。言い換えると、長いキャピラリー部分128によって、サンプルは、第1のチャンバーの出口108から、下部プレート140中の導管144を通過して、長い部分128が配置された第2のチャンバー102を直接通過することができる。結果として、サンプルは、(上部プレート120A中の導管124を通って)第3のチャンバー102の入口106に直接移動することができる。したがって、この実施形態は、図5〜7に示されたものと類似の上部から底部型の装置である。
【0083】
図8Aに示される実施形態のさらなる変形においては、(図示しているように)1つ以上のガスケット160を提供することで、種々のプレート120A、120B、100、140の間の封止を向上させることができる。
【0084】
図8Bは、別の一実施形態のプレート500’を示している。図8Aに示される実施形態と同様に、この実施形態において、図5〜7に示される実施形態の導管502が、一連のプレート550、560、580で置き換えられており、理解しやすいように分離した状態で示している。使用する場合、プレート500、550、560、580を互いに挟むことで、図8Aに示される実施形態と同様に、ほぼ矩形波の形状の上部から底部への流体流路が形成される。
【0085】
この別の実施形態においては、上部プレート550は、入口ポート552、複数の導管554、および出口ポート556を有する。入口ポート552は、チャネルプレート560の入口チャネル566の入口562に位置合わせされ、さらに入口562は、第1のチャンバー510Aの入口506Aと位置合わせされて直線系列になるように構成されている。同様に、出口ポート556は、チャネルプレート560の出口チャネル564の出口508’に位置合わせされ、さらに出口508’は(後述の導管584Fを介して)最終チャンバー510Fの出口508Fと位置合わせされて直線系列となるように構成されている。上部プレート550中の導管554は、チャネルプレート560内の出口チャネル564の出口508’を、入口チャネル566の入口506’に接続するように構成されている。複数の導管584を有する下部プレート580は、マイクロタイタープレート500’の他方の側の上に配置される。その結果、サンプルは:(a)たとえば第1のチャンバー510Aの出口508Aから、(b)下部プレート580内の導管584Aを通って、チャネルプレート560内の出口チャネル564Aを通り、(c)出口チャネル564Aを通り、(d)上部プレート550内の導管554Aを通り、(e)第2のチャンバー510Bの入口506Bに入ることができる。結果として、サンプルは、上部から底部への(ほぼ矩形波の形状)の経路で各チャンバー510を通過する。
【0086】
図8Aに示される実施形態の長いキャピラリー部分128とは対照的に、この実施形態において、チャネルプレート560のチャンバー部分568は、チャンバーを実質的にふさぐ大きさであり、マイクロタイタープレート500’内のチャネルとして機能する。結果として、チャネルプレート560内の出口チャネル564のそれぞれは、図8Aに示される実施形態の長いキャピラリー部分128の直径とは異なる直径を有することができる。さらに、チャンバー部分568によって、この系は全体的により良好な封止状態を実現することができる。
【0087】
この実施形態のマイクロタイタープレート500’もガスケット570(図示している)を使用できることが容易に理解できるであろう。さらに、上部プレートおよび底部プレート550、580は、内部の導管554、584の洗浄を容易にするために、複数の部品から形成することができる。
【0088】
前述の実施形態と同様に、技術者が、図8Aまたは8Aに示される実施形態のマイクロタイタープレートを使用して第1の分離プロトコールによって、サンプルを複数のサブサンプルに分離した後、技術者は第2の分離プロトコールを実施することができる。第2の分離プロトコールによって、1つ以上のサブサンプルを複数のミニサンプルにさらに分離することができる。
【0089】
図9A〜9Iは本発明の別の一実施形態を示している。この実施形態において、複数のチャンバー1102を有するプレート1100(図9D)を、上部カバープレート610(図9A)、上部導管プレート600(図9B)、下部導管プレート700(図9F)、および下部カバープレート710(図9G)と組み合わせることによって、2つの隣接する横列中に配置された複数のチャンバー1102A〜1102Iを通過する流路を形成することができる。さらに、チャネルプレート730(図9C)を、プレート1100と上部導管プレート600との間に設けることができる。同様に、ガスケット740(図9E)を、プレート1100と下部導管プレート700との間に設けることができる。
【0090】
この実施形態において、上部カバープレート610内の入口ポート612は、上部導管プレート600内の入口ポート602およびチャネルプレート730内の入口ポート732と位置合わせすることができる。入口ポート602、612、732を合わせたものは、第1の横列R1中の第1のチャンバー1102Aの入口を形成することができる。(入口ポート602、612、732を介して)第1のチャンバー1102Aに供給されたサンプルは、第1のチャンバー1102Aを上部から底部へと通過して、下部導管プレート700内の第1の斜め導管708A内に到達することができる。第1の斜め導管708Aから、サンプル(またはその一部)は、第1の横列R1の後方にある第2の横列R2中にある第2のチャンバー1102B(その中に分離媒体を有する場合も有さない場合もある)中のチャネル734A内に流れることができる。第2のチャンバー1102B中のチャネル734Aを底部から上部へと通過した後、サンプル(またはその一部)は、(上部導管プレート600中の)第1の横導管606Aを通って、第1のチャンバー1102Aと同様に第1の横列R1中にある第3のチャンバー1102Cに流れることができる。次に、サンプルは、第3のチャンバー1102Cを上部から底部へと通過し、(図示されるように)第1の横列中に存在することができる最終チャンバー1102Iに到達するまで、この前方から後方/底部から上部、後方から前方/上部から底部への経路を続けることができる。次に、下部導管プレート700および下部カバープレート710の中にそれぞれ形成された出口ポート702、712によって、サンプル(またはその一部)を最終チャンバー1102Iから取り出すことができる。出口ポート702、712を合わせたものが1つの出口として機能することができる。
【0091】
ある実施形態においては、上部カバープレート610と上部導管プレート600とを一体的に形成することができる。これに加えて、またこれとは別に、下部カバープレート710と下部導管プレート700とを一体的に形成することもできる。
【0092】
本発明の別の関連の実施形態を図10に示す。この場合、プレート1200内のチャンバーの第1の直線系列(たとえば、縦列または横列)中の各チャンバーは、分離媒体を含有し、その中をサンプルが同じ方向(たとえば、上部から底部)で流れ、隣接する直線系列中のチャンバーは、サンプルが反対方向(たとえば底部から上部)に流れるチャネルとして機能する。この実施形態において、たとえば、チューブなどの導管を、第1の直線系列中の第1のチャンバー1Aの底部の出口に接続することができ、第2の直線系列中の第2のチャンバー2Bに上向きに通すことができ、そして第1の直線系列中の第3のチャンバー1Bの上部の入口に接続することができる。別の導管を、第3のチャンバー1Bの底部の出口に接続して、第2の直線系列中の第4のチャンバー2Cに上向きに通すことができ、さらに第1の直線系列中の第5のチャンバー1Cの上部の入口に接続することなどが可能である。希望するなら、プレートの上部に斜めに配列された導管を配置することができる(図9A〜9Iに示される実施形態と同様)。
【0093】
図10は同じプレート1200上の分離プロトコール10A〜10Fを示しているが、この並行機能がこの実施形態に限定されるわけではない。むしろ、前述のあらゆる実施形態が、図10に示される実施形態と同様に、1つのプレート上で並列した複数の分離プロトコールを含むことができる。
【0094】
前述のいずれか実施形態の一部の別の実施形態においては、接続導管の構成に依存して、種々の分離媒体を通過する流動方向を、充填床方式、流動床方式、または充填床と流動床との組み合わせで操作することができる。
【0095】
分離媒体は、何らかの特定の種類に限定されるものではないことは容易に理解できるであろう。むしろ、分離媒体は、限定するものではないが、ビーズ、不規則粒子、膜、モノリスなどの固体材料(多孔質および非多孔質の両方)を含めたあらゆる種類であってよい。
【0096】
例として、複数の異なる生体分子成分を含む複合混合物を含有するサンプル溶液を、後述するように少なくとも部分的に分割するために、チャンバーの系列中の第1のチャンバー102/510に導入することができる。サンプルが通過する各チャンバー102/510は、たとえば、異なる収着材料を含むことができる。より具体的には、チャンバー102/510内の種々の収着剤によって、サンプルの実質的にすべての別個の生体分子成分が捕捉されるように、収着材料を選択することができる。複数の生体分子成分の種々のサブセットを捕捉した後、捕捉された生体分子成分を含む収着剤は、単離(すなわち、チャンバーから取り出す)したり、またはその他の方法で取り出したりして、前述のようにさらに処理することができる。
【0097】
本明細書において使用される場合、「捕捉」は、チャンバー102/510を通過する間にサンプルから生体分子成分の特定のサブセットサンプルが実質的に除去されるように、サンプル溶液中の1種類以上の生体分子成分を引きつけて可逆的に保持する収着剤の能力を意味する。タンパク質精製などの生物起源の化学物質の混合物を分離する分野の当業者であれば、生体分子成分を保持する固有の収着剤の能力が、収着剤と溶液とが接触する周囲条件(たとえば、チャンバー102/510を通過する溶液の温度およびイオン強度またはpH)下で収着剤と生体分子成分との間の相互作用によって決定される特定の生体分子成分に対する収着剤の特異性を含むことを理解しているであろう。この相互作用は、周知のあらゆる物理化学的相互作用であってよく、この相互作用が、収着剤による生体分子成分(または生体分子成分のサブセットサンプル)の収着を引き起こし、生体分子成分(またはサブセットサンプル)の溶液を実質的に完全に枯渇させるが、なお捕捉された生体分子成分を後に溶出させることが可能となるのに十分であると考えることができる。
【0098】
典型的な収着剤−生体分子成分の相互作用としては:イオン交換(陽イオンまたは陰イオン);疎水性相互作用;生物学的親和性(染料およびリガンドとタンパク質との間の相互作用、あるいはレクチンと複合糖質、グリカン、グリコペプチド、多糖、およびその他の細胞成分との間の相互作用など);免疫親和性(すなわち、抗原−抗体相互作用またはそれらのフラグメント間の相互作用);金属−キレートまたは金属−イオン相互作用、タンパク質とチオフィリック材料との間の相互作用、タンパク質とハイドロキシアパタイトとの間の相互作用、ならびにサイズ排除が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような材料の多くは、タンパク質または核酸の精製の当業者には周知である。これらの材料は、周知の技術および材料を使用して製造したり、商業的に購入したりすることができる。これらの材料およびそれらの製造方法の例に関する説明は、「タンパク質精製プロトコール」(Protein Purification Protocols)第2版、カトラー(Cutler)編著,ヒュマーナ・プレス(Humana Press)2004年に記載されており、この記載内容全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0099】
イオン交換材料としては、強および弱の陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が挙げられる。強の一部は後述の表4に記載している。強陽イオン交換リガンドの例としては、スルホプロピル(SP)およびスルホン酸メチル(S)が挙げられる。弱陽イオン交換リガンドの弱い例(WeakExample)としては、カルボキシメチル(CM)が挙げられる。強陰イオン交換リガンドの強い例(StrongExample)としては、第4級アンモニウムおよび第4級アミノエチル(QAE)が挙げられる。弱陰イオン交換リガンドの弱い例(WeakExample)としては、ジエチルアミノエチル(DEAE)が挙げられる。好適なイオン交換材料の例としては、商品名:Q−、S−、DEAE−およびCM セラミック・ハイパーD(CERAMIC HYPERD)(登録商標);DEAE−、CM−、およびSP トリスアクリル(TRISACRYL)(登録商標);M−、LS−;DEAE−、およびSP スフェロデックス(SPHERODEX)(登録商標)LS;ならびにQMA スフェロジル(SPHEROSIL)(登録商標)LSでポール・コーポレーション(Pall Corporation)(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills,NY)(カリフォルニア州フリーモント(Fremont,CA))より販売される材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の好適なイオン交換材料が、商品名:ウノスフィア(UNOSPHERE)、マクロ−プレップ(MACRO−PREP)(ハイQ(HIGH Q)、ハイS(HIGH S)、DEAE、およびCMなど)、およびAG、ならびにバイオ−レックス(Bio−Rex)で、カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules,CA)のバイオ−ラド・ラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories)より販売されている。さらにより好適な市販のイオン交換材料は、商品名:DEAE−トリスアクリル(DEAE−TRISACRYL)(登録商標)、DEAEセファロース(DEAE SEPHAROSE)(登録商標)、DEAE−セルロース、ジエチルアミノエチル・セファセル(DIETHYLAMINOETHYL SEPHACEL)(登録商標)、DEAEセファデックス(DEAE SEPHADEX)(登録商標)、QAEセファデックス(QAE SEPHADEX)(登録商標)、アンバージェット(AMBERJET)(登録商標)、アンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)、コレスチラミン樹脂、CMセファロース(CM SEPHAROSE)(登録商標)、SPセファロース(SP SEPHAROSE)(登録商標)、SP−トリスアクリル(SP−TRISACRYL)(登録商標)、リン酸セルロース、CM−セルロース、CM セファデックス(CM SEPHADEX)(登録商標)、SPセファデックス(SP SEPHADEX)(登録商標)、およびアンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)が、シグマ−アルドリッチ・カンパニー(Sigma−Aldrich Co.)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))より販売されている。イオン交換材料のその他の商業的供給元としては、アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)(www.amersham.com)が挙げられる。さらに別の材料はタンパク質精製の当業者には周知である。
【0100】
疎水性相互作用の利用(疎水性相互作用クロマトグラフィー、「HIC」)に好適な材料としては、商品名:フェニル・セファロース・6・ファースト・フロー(PHENYL SEPHAROSE 6 FAST FLOW)、ブチル・セファロース・4・ファースト・フロー(BUTYL SEPHAROSE 4 FAST FLOW)、オクチル・セファロース・4・ファースト・フロー(OCTYL SEPHAROSE 4 FAST FLOW)、フェニル・セファロース・ハイ・パフォーマンス(PHENYL SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE)、フェニル・セファロースCL−4B(PHENYLSEPHAROSE CL−4B)、オクチル・セファロースCL−4B(OCTYL SEPHAROSE CL−4B)、ソース(SOURCE)(商標)15ETH、ソース15ISO(SOURCE 15IS0)、およびソースPHE(SOURCEPHE)で、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway,NJ)のアマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)より販売されているものが挙げられる。フラクトゲル(FRACTOGEL)(登録商標)EMD・プロピル(PROPYL)(S)およびフラクトゲル(FRACTOGEL)(登録商標)EMD・フェニル(PHENYL)I(S)としてVWRインターナショナル(VWR International)(www.chromatography.uk.co)より販売される材料も入手可能である。さらに別の市販のHIC材料としては、商品名:トーヨーパール(TOYOPEARL)およびTSKゲル(TSKGEL)で、ペンシルバニア州モンゴメリービル(Montgomeryville,PA)のトーソー・バイオサイエンスLLC(Tosoh Bioscience LLC)より販売される材料が挙げられる。同等の材料は、商品名MEPハイパーセル(MEP HYPERCEL)でポール・コーポレーション(Pall Corporation)(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills,NY))より市販されている。さらに別の材料は、タンパク質精製の当業者には周知であろう。
【0101】
親和性材料としては、抗体−抗原、酵素−リガンド、核酸−結合タンパク質、ホルモン−受容体などの、生体分子成分とリガンドとの間の構造的相互作用に基づいて生体分子成分を引き寄せて収着するのに有効なあらゆる材料が挙げられる。これらの相互作用は、天然または合成のリガンドと生体分子成分との間に存在することができる。リガンドは、単一特異的(たとえば、ホルモンまたは基質)または群特異的(たとえば、酵素補助因子、植物レクチン、およびプロテインA)のいずれであってもよい。本発明に好適な一般的な群特異的リガンドの例を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
したがって、親和性材料を使用することで、多種多様の生体分子材料を収着させることができる。市販の親和性材料としては、商品名:プロテインA・セラミック・ハイパーD(PROTEIN A CERAMIC HYPERD)(登録商標)F、ブルー・トリスアクリル(BLUE TRISACRYL)(登録商標)M、ヘパリン・ハイパーD(HEPARIN HYPERD)(登録商標)M、およびリジン・ハイパーD(LYSINE HYPERD)(登録商標)で、ポール・コーポレーション(Pall Corporation)(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills,NY))より販売されるものが挙げられる。さらに別の市販の材料は、アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)(www.amershambiosciences.com)およびシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(www.sigmaaldrich.com)などの商業的供給元によって提供されている。さらに別の材料は、タンパク質精製の当業者には周知であろう。
【0104】
本発明のある実施形態においては、親和性材料は、反応性染料から誘導され、収着剤を形成するために使用される。染料−リガンド収着剤は、キナーゼおよびデヒドロゲナーゼなどの核酸補助因子を使用するタンパク質および酵素の結合に有用となることが多い。しかし、血清アルブミンなどの他のタンパク質も、同様にこれらの収着剤を使用して効率的に識別することができる。好適な市販の材料の例は、商品名リアクティブ・ブルー(REACTIVE BLUE)、リアクティブ・レッド(REACTIVE RED)、リアクティブ・イエロー(REACTIVE YELLOW)、リアクティブ・グリーン(REACTIVE GREEN、およびリアクティブ・ブラウン(REACTIVE BROWN)(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich));ダイマトリックス・ゲル・ブルー(DYEMATRIX GEL BLUE)、ダイマトリックス・ゲル・レッド(DYEMATRIX GEL RED)、ダイマトリックス・ゲル・オレンジ(DYEMATRIX GEL ORANGE)、およびダイマトリックス・ゲル・グリーン(DYEMATRIX GEL GREEN)(マサチューセッツ州ビルリカのミリポア(Millipore,Billerica,MA));ならびにブルーH−B(Blue H−B)(シバクロン・ブルー(Cibacron Blue))、ブルーMX−R(Blue MX−R)、レッドHE−3B(Red HE−3B)、イエローH−A(Yellow H−A)、イエローMX−3r(Yellow MX−3r)、グリーンH−4G(Green H−4G)、グリーンH−E4BD (Green H−E4BD)、ブラウンMX−5BR(Brown MX−5BR)として知られるプロシオン(Procion)染料で販売されるものが挙げられる。さらに別のものは、タンパク質精製の当業者には周知であろう。
【0105】
有用な収着剤は、複合糖質、グリカン、グリコペプチド、多糖、可溶性細胞成分、および細胞の分離および単離を行うためにレクチンから構成することもできる。好適なレクチンとしては、表2に示されるものが挙げられる。
【0106】
【表2】
【0107】
市販のレクチンとしては、商品名:AFFI 10、AFFI 15、AFFI PREP 10、およびAFFI PREP 15(カリフォルニア州ハーキュリーズのバイオ−ラド(Bio−Rad,Hercules,CA));CNBRアルギノース(CNBR ARGINOSE)、エポキシ活性化アラグノース(EPOXY−ACTIVATED ARAGROSE)、CDIアガロース(CDI AGAROSE)、およびポリアクリルヒドラジドアガロース(POLYACRYLHYDRAZIDE AGAROSE)(ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO);ならびにリアクティ6X(REACTI 6X)(イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce,Rockford,IL))で販売されるものが挙げられる。
【0108】
免疫親和性材料は、タンパク質精製の当業者には周知の標準的な方法および材料を使用して製造することができる(たとえば、「タンパク質精製プロトコール」(Protein Purification Protocols)参照)。市販の免疫親和性材料としては、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(www.sigmaaldrich.com)およびアマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)(www.amersham.com)より販売されるものが挙げられる。同様に、金属イオン親和性(IMAC)材料は、周知の材料および方法を使用して調製することができるし(たとえば、「タンパク質精製プロトコール」(Protein Purification Protocols)参照)、または商業的に購入することもできる(たとえば、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(www.sigmaaldrich.com)またはアマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)(www.amersham.com)より)。一般的な金属としては、Ni(II)、Zn(II)、およびCu(II)が挙げられる。これらの材料の一部の例を表3に示している。
【0109】
【表3】
【0110】
ハイドロキシアパタイト(HT/HTP)およびチオフィリック(TAC)収着剤の合成も、タンパク質精製の当業者には周知である(たとえば、「タンパク質精製プロトコール」(Protein Purification Protocols)参照)。商業的供給元としては、カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules,CA)のバイオ−ラド(Bio−Rad)(商品名CHT)、ポール・コーポレーション(Pall Corporation)(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills,NY))(商品名HAウルトロゲル(HA ULTROGEL)(登録商標))、およびカリフォルニア州サンリアンドロ(San Leandro,CA)のバークレー・アドバンスト・バイオマテリアルズ(Berkeley Advanced Biomaterials)(商品名HAP)が挙げられる。チオフィリック収着剤も、当技術分野またはタンパク質精製において周知の方法および材料を使用して製造することができるし、あるいは、商品名:MEP ハイパーセル(MEP HYPERCEL)(カリフォルニア州フリーモントのサイファージェン・バイオシステムズ(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA))、チオフィリック・ユニフロー(THIOPHILIC UNIFLOW)およびチオフィリック・スーパーフロー(THIOPHILIC SUPERFLOW)(カリフォルニア州パロアルトのクローンテック(Clonetech,Palo Alto,CA))、チオソルブ(THIOSORB)(マサチューセッツ州ビルリカのミリポア(Millipore,Billerica,MA))、T−ゲル(T−GEL)(ベルギーのアンスリエージュのアフィランド(Affiland,Ans−Liege,Belgium)、AFFI−T(デンマークのコペンハーゲンのケン−エン−テック(Ken−en−Tec,Copenhagen,Denmark))、HI−TRAP(ニュージャージー州ピスカタウェイのアマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)、ならびにフラクトゲル(FRACTOGEL)(英国ドーセット州プールのメルクKgA(Merck KgA,Poole Dorset UK))で商業的に購入することもできる。
【0111】
上述の収着材料は、異なる生体分子成分に対して異なる程度の特異性を有する。これに関して、用語「特異性」は、特定のサンプル中の、収着剤が結合することができる異なる生体分子種に関連している。一態様においては、収着剤は、特異性の相対程度によって分類することができ、たとえば、高特異性収着剤、中間の特異性の収着剤、および低特異性収着剤と分類することができる。
【0112】
高特異性材料としては、特定の生体分子または生体分子のサブセットの収着に対して強い選択性を一般に有する材料が挙げられる。多くの場合、このような材料は、抗体−エピトープ認識、受容体−リガンド、または酵素−受容体の相互作用などの高い生体特異的収着相互作用を有する。このような収着剤の例としては、プロテインA結合収着剤、プロテインG結合収着剤、抗体結合収着剤、受容体結合収着剤、およびアプタマー結合収着剤が挙げられる。中間の特異性の収着剤としては、ある程度の生体特異的相互作用を有するが高特異性収着剤よりもその程度が低い材料が挙げられ、そのようなものとしては:MEP、MBI、疎水性収着剤、ならびにヘパリン結合材料、染料結合材料、金属キレート化剤結合材料が挙げられる。多くの「混合モード」材料は中間の特異性を有する。これらの一部は、たとえば、疎水性相互作用およびイオン性相互作用によって分子に結合する。低特異性材料収着剤としては、全体的な分子特性(酸−塩基、双極子モーメント、分子の大きさ、または表面静電ポテンシャルなど)を使用して生体分子成分に執着する材料が挙げられ、そのようなものとしては:ジルコニア、シリカ、フェニルプロピルアミンセルロース、セラミックス、チタニア、アルミナ、およびイオン交換体(陽イオンまたは陰イオン)が挙げられる。
【0113】
本発明の一実施形態においては、生体分子成分溶液を、高特異性収着剤、中間の特異性の収着剤、および低特異性収着剤の中の少なくとも2種類の異なる収着剤に接触させることができる。ある実施形態においては、溶液を、同程度の特異性の1、2、3、またはそれを超える種類の材料(たとえば、中間の特異性の2種類の材料、または低特異性の3種類の材料)に接触させる。別の一実施形態においては、溶液を、高特異性から低特異性への推移を示す複数の収着剤に接触させることができる。別の一実施形態においては、溶液を、高特異性から低特異性への推移を示す複数の収着剤に接触させることができる。さらに別の一実施形態においては、収着材料は、特異性が実質的に直線状に推移するよう配列することができる。さらに別の一実施形態においては、収着材料は、実質的な連続体を形成することができる。さらに別の一実施形態においては、収着剤が互いに直交することができ、すなわち、各収着剤の能力が、固有の生体分子成分または生体分子成分のサブセットに対して実質的に選択的となることができる。別の一実施形態においては、少なくとも1種類の収着剤が高特異性収着剤となる、少なくとも1種類の別の収着剤が中間の特異性または低特異性のいずれかの収着剤となるように、収着剤を選択することができる。さらに別の一実施形態においては、少なくとも1種類の収着剤のそれぞれが高特異性収着剤、中間の特異性の収着剤、および低特異性収着剤となるように、収着剤を選択することができる。さらに別の一実施形態においては、少なくとも2種類の収着剤を、高特異性収着剤、中間の特異性の収着剤、および低特異性収着剤の2つの種類から選択することができる。別の一実施形態においては、少なくとも2種類の収着剤が高特異性収着剤であってよく、少なくとも1種類の収着剤が低特異性収着剤であってよい。
【0114】
高特異性から低特異性への推移は、特に有用な目的を果たす。特に、サンプル中のタンパク質を大きな排他的であるが複雑性が減少した群に分画することができる。したがって、種々の分画中のタンパク質をより容易に分割することができる。たとえば、低特異性または中間の特異性の樹脂は、非常に高濃度のものなどのサンプル中の多くの生体分子に対して親和性を有したり結合したりすることができる。しかし、中間の特異性の収着剤に曝露する前に、高濃度のタンパク質に対する高特異性収着剤にサンプルを曝露すると、高濃度のタンパク質の大部分またはすべてを除去することができる。このように、中間の特異性の収着剤によって捕捉される生体分子のセットは、この高濃度の生体分子をほとんどまたは全く含まない。この結果、中間の特異性の収着剤によって捕捉されるタンパク質のセットの複雑性が低下する。したがって、この計画は、分画プロセスの後の段階で収着剤によって捕捉される生体分子、たとえばタンパク質を早い段階に除去することであり、それによって、各チャンバー102/510において、次のチャンバー102/510に移動する生体分子の複雑性は低下する。
【0115】
一実施形態において、最高濃度の生体分子材料が最初に除去されるように、収着剤を選択することができる。たとえば、プロテインA収着剤およびシバクロン・ブルー(Cibacron Blue)収着剤が最初の2つの収着剤となるように収着剤を配列することによって、ヒト血清のダイナミックレンジを減少させることができる。ヒト血清のタンパク質組成の90パーセントは:アルブミン、IgG、トランスフェリン、α−1抗トリプシン、IgA、IgM、フィブリノゲン、α−2−マクログロブリン、および補体C3を含む。残りの10%の内、約99%は:アポリポタンパク質A1およびB;リポタンパク質A;H因子;セルロプラスム(ceruloplasm);プレアルブミン;補体因子B; 補体因子C4、C8、C9、およびC19;ならびにα−糖タンパク質を含む。多くの場合、サンプル中の残りのあらゆる生体分子成分を捕捉するために、最終チャンバー102/510中にフェニルプロピルアミンセルロースなどの収着剤を入れると有用である。一般に、最初の収着剤があまり汎用的すぎると(すなわち低特異性を有する)、非常に多くの材料が最初の2種類の収着剤で分離されることがあり、残りの収着剤の有用性が損なわれる。しかし、最初の収着剤の特異性が高すぎる場合(すなわち、高特異性を有する)は、サンプルのダイナミックレンジが大きいために、残りの収着材料の効率が低下しうる。一実施形態においては、第1の収着剤、あるいは第1および第2の収着剤との組み合わせによって、サンプルのダイナミックレンジが少なくとも10分の1、特に少なくとも100分の1、さらに特に少なくとも1,000分の1に減少するように、収着剤が選択される。
【0116】
本発明の多重分離方法は、少なくとも1000種類、少なくとも100,000種類、または少なくとも10,000,000種類の異なる生体分子種(たとえば、タンパク質)を含むサンプルなどの複雑な混合物中の検体の分画に特に有用である。本発明の方法は、生物学的サンプルから生体分子を分離する場合に特に有用である。そのようなサンプルとしては、たとえば、羊水、血液、脳脊髄液、関節内液、眼液、リンパ液、乳汁、汗 血漿、唾液 精液、精漿、血清、痰、滑液、涙、臍帯液、尿、生検ホモジネート、細胞培養液、細胞抽出物、細胞ホモジネート、ならし培地、発酵ブロス、組織ホモジネート、およびこれらの派生物を挙げることができる。
【0117】
本発明の利点の1つは、本発明の装置が、希望するあらゆる数の分離のために使用することができ、そのような分離に使用され、そのような分離に容易に適応可能なことである。さらに、たとえば、蠕動ポンプおよび/または真空ステーションなどの一部の基本的な実験室用設備以外に、装置を追加する必要がない。
【0118】
別の一実施形態においては、本発明の装置は、サンプル中の検体混合物に対して二次元分離方法を行うために使用される。したがって、この方法は2つのステップを含む。第1のステップは、複数の第1の収着剤を使用して、第1の物理的化学的性質の程度に基づいて、検体を第1のアリコートのセットに分画することを含む。適切な収着剤を選択することによって、各分画またはアリコートが特定の範囲内にある検体を含有するように、検体を分配することができる。第2のステップは、複数の異なる第2の収着剤を使用して、異なる第2の物理的化学的性質の程度に基づいて、複数のアリコート(または少なくとも1つアリコート)を第2のアリコートのセットに分画することを含む。次に、第2のアリコートをさらに分析して、たとえば、質量分析などによって、さらなる第3の次元の分画を行うことができる。「物理的化学的性質」とは、測定可能であり、検体分離のための基礎となることができる検体の性質を意味する。好ましくは、この方法に使用される物理的化学的性質は、程度が変動する性質である。たとえば、タンパク質は、等電点によって特徴付けられ、これは物理的化学的性質の1つであり、低pI(たとえば、pI3)から高pI(たとえば、pI10)までの尺度で測定される。当技術分野において周知であるように、タンパク質は、等電点電気泳動またはイオン交換クロマトグラフィーなどを使用して、等電点に基づいて分離することができる。疎水性インデックスは、検体(特にポリペプチド検体)を特徴付ける別の物理的化学的性質であり、低疎水性インデックスから高疎水性インデックスまでの尺度で測定することができる。これも当技術分野において周知であるように、タンパク質は、疎水性の(逆相)収着剤または順相収着剤を使用して、疎水性インデックスに基づいて分離することができる。タンパク質を分画するために使用できる別の物理的化学的性質は大きさであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)がこの目的のために有用となる。タンパク質を分画するために使用できる別の物理的化学的性質は、金属結合能力である。この場合、異なる金属が充填された金属キレート収着剤の系列を使用することができる。質量は、ポリペプチド検体の別の物理的化学的性質であり、分離の基礎となることができる。しかし、この目的のためには、質量分析およびゲル電気泳動がクロマトグラフィーよりも好ましい。
【0119】
三次元分離方法は当技術分野において周知である。一例がLC−LC−MSである。しかし、この方法の欠点の1つは、通常、この方法は分離媒体からの検体の逐次溶出を伴い、これが時間がかかることである。これは、収着剤から検体を区別して溶出させるためにバッファー系の変更を伴う場合もある。この方法を多重化させようとする既存の試みは、複数のクロマトグラフィーカラムを並行して使用することを含み、これは非常に費用がかかる可能性がある。しかし、本発明の装置を、適合性の水性溶媒系を使用するクロマトグラフィー媒体と併用することによって、時間および費用の両方の障害を大きく改善することができる。
【0120】
本発明の好ましい一実施形態は、二次元としてpIおよび疎水性を使用することを含み、検体をクロマトグラフィーで分離した後、質量分析を使用して質量に基づいて分離する。好都合には、この方法は、pI分離用の固体バッファーと、疎水性インデックスによる分離のための疎水性収着剤とを使用する。固体バッファーは、2005年7月28日に出願された米国仮特許出願第60/702,989号明細書(「固相バッファーを使用した等電点に基づくタンパク質の分離」(Separation of proteins based on isoelectric point using solid−phase buffers)ボスケッティ(Boschetti)ら)に記載されている。これらは、段階的なpI分画を得るために、電気泳動分離や異なるバッファー系を使用せずにpIにより分離を行うため、本発明において特に有用である。あらゆる系列の逆相収着剤を使用することができる。これらの多くは市販されている。生理学的条件下での疎水性分離に有用な別の収着剤が、国際公開第2005/073711号パンフレット(「生理学的イオン強度においてタンパク質を吸着させるためのクロマトグラフィー材料」(Chromatographic material for the adsorption of proteins at physiological ionic strength)、ボスケッティ(Boschetti)ら)に記載されている。検体の分離のための最低の疎水性から最高の疎水性までの系列での疎水性材料の配列は、2004年7月27日に出願された米国仮特許出願第60/591,319号明細書(「マルチケミストリー分画法」(Multichemistry fractionation)、ゲリエ(Guerrier))にも記載されている。これらすべての文献が本明細書に援用される。
【0121】
方法の1つは以下のように進められる。本発明の装置の1つの横列(または縦列)中の複数の区画に、等電点に基づいて検体に結合するクロマトグラフィー材料を充填する。たとえば、固相バッファーを使用することができる。流体の流れによって、高pIから低pIまで(または逆に低pIから高pIまで)、したがって、最高の特異性から最低の特異性までの検体が結合する収着剤の系列にサンプル混合物が通されるように、これらの材料が配列される。たとえば、系列中の第1の収着剤は、9を超えるpIを有するすべてのタンパク質を捕捉することができ、したがって除去することができる。第2の収着剤は、7を超えるpIを有するすべてのタンパク質を捕捉することができる。この収着剤は、7〜9の間のpIのタンパク質を分配する。系列中の後に続く区画中の収着剤は、5を超えるpIを有するタンパク質を捕捉することができ、したがって、5〜7の間のpIのタンパク質を分配する、などとなる。
【0122】
次のステップでは、装置の流体導管は、経路が切り替えられ、それによって、横列系列中の区画に接続される代わりに、これによって横列中の各区画が縦列中の区画に接続される(逆に、第1の分離が縦列中で行われる場合、導管は横列中に経路が切り替えられる)。各縦列中の区画の系列は、逆相収着剤の系列が充填され、その系列中の収着剤は、前の収着剤よりも疎水性が高い(したがって、特異性が低い)。バッファーが導管中に圧送されることで、各等電性収着剤上に捕捉され検体が疎水性収着剤の系列を順次通過する。たとえば、系列中の疎水性収着剤のバッファーは、C4鎖、C8鎖、C12鎖、C18鎖を含むことができる。この結果、それぞれが特定のpI範囲内および疎水性インデックス範囲内にある複数のアリコートが得られる。
【0123】
この二次元分離方法は、すべてを本発明の装置上で行う必要はないし、本発明の装置を全く使用しなくてもよい。たとえば、本発明の装置を使用して第1の次元で検体を分離した後、異なる装置を使用して第2の次元の分離を行うことができる。このような一実施形態においては、第1の次元における検体の分配の後、液体導管を取り外すことができ、装置は、ドリッププレートのスタックまたは分離可能な縦列上に配置することができ、それによって、区画の出口をプレートのウェルまたは縦列に位置合わせする。装置の出口の下に位置合わせされたスタック中のプレートの各ウェルには、第2の分離次元に基づいて捕捉されるクロマトグラフィー材料の系列の1つを充填することができる。したがって、たとえば、本発明の装置は、8つの横列A〜Hと12の縦列1〜12とを有する96ウェルフォーマット中に配列された区画を有することができる。第1の分離において、カラム1の区画、たとえば区画1A〜1Hを使用して第1の分離を行うことができる。次に、この装置を、同様に96ウェルフォーマットである8つのフィルタープレートのスタック(プレート1〜8)のスタックの上に配置することができ、すべてのプレートの区画/ウェル1Aを、下のプレートスタックの区画1Aと位置合わせする。各プレート中のカラム1のウェルは、第2の分離次元用に同じクロマトグラフィー材料を含有し、通常これらは最上部で最も選択性が高く、最低部で最も選択制が低くなる順序で配列されている。次に溶出バッファーをスタック中に圧送して、すべてのウェル1A、すべてのウェル1Bなどに同時に通す。これによって、プレートのウェル中に8×8の分離セットが得られる。次に、捕捉された検体をこれら64のウェルのそれぞれから溶出させて、質量分析計上での質量による検体の分離などのさらなる分析を行うことができる。
【0124】
あるいは、すぐ上で述べた二次元分離は、クロマトグラフィー媒体が物理的に分離され、別々に検体を分離することができるあらゆる装置または複数の装置の組み合わせの上で行うことができる。たとえば、この方法は、96ウェルフォーマットのドリッププレート上で全体的に実施することができる。このような一実施形態においては、クロマトグラフィー材料の第1の系列を、8つの異なるフィルタープレートのそれぞれのウェル1A中に配置することができる。これらのプレートは、適切な順序で互いに積み重ねることができ、第1の分離次元用の特異性がより高いクロマトグラフィー材料(たとえば、陰イオン交換体をさらに含むpI10の固体バッファー)を含有するスタックの最上部の第1のウェル中にサンプルを入れることができる。次に、積み重ねた8つのプレートのウェル1Aの縦列を通過するようにバッファーを圧送することができ、検体は、第1の物理的化学的特徴(この例ではpI)により適切に分離される。溶出液は、底部プレートから収集することができる。ここで、これらのプレートのそれぞれは、フィルタープレートのスタックの上部に独立に積層することができ、フィルタープレートのウェル1Aには、第2の物理的化学的性質により検体を分離するために配列されたクロマトグラフィー材料の系列が充填されている。再び、ウェル1Aの縦列にバッファーを圧送して、第2の次元において検体を分画することができる。次に、すべてのウェル1Aに含まれる検体を、溶出させ、たとえば質量によってさらに分画することができる。
【0125】
この方法のために使用することができる別の装置は、積み重ね可能で分離可能なカラムの組である。このようなカラムは、クロマトグラフィー媒体が分離される区画を有する。これらは、留め具またはねじり機構などによって別のカラムに積み重ねることができる。
【0126】
それぞれ固体バッファーとイオン交換樹脂とを含む、本発明のクロマトグラフィー材料の系列を使用して、pIに基づいて混合物からタンパク質を分離することができる。各固体バッファーは、水溶液を所定のpHにする両性高分子を含む。したがって、各クロマトグラフィー材料によって特定のpHが得られる。クロマトグラフィー材料を通過し、そのクロマトグラフィー材料とは異なるpIを有するタンパク質は、そのpIがクロマトグラフィー材料のpHよりも低いか、高いか、または同じであるかに依存して、それぞれ実効正電荷または実効負電荷のいずれかを有するか、あるいは中性となる。その環境のpHにおいてイオン交換樹脂とは反対の電荷を有するタンパク質は、そのイオン交換体に結合し、一方、中性または同じ電荷のタンパク質は、結合しないままであり、そのクロマトグラフィー材料を通過する。すなわち、たとえば、固体バッファーのpHにおいて負に帯電しているタンパク質は、陰イオン交換樹脂に結合する。次に、捕捉されたタンパク質は、そのクロマトグラフィー材料から溶出させることができる。本発明の一実施形態においては、クロマトグラフィー材料(固体バッファーとイオン交換樹脂との混合物)の系列、異なるpHが得られる各固体バッファーは直列に配列される。異なるタンパク質は異なるpHで帯電するため、系列中の各クロマトグラフィー材料のイオン交換樹脂は、混合物中のタンパク質のあるサブセットを捕捉する。この方法では、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、および可溶性組織抽出物などの生物学的流体からのタンパク質は、それらの等電点によって分離することができる。
【0127】
本発明のクロマトグラフィー材料は、イオン交換樹脂とともに固体バッファーを含む。好ましい実施形態においては、これらのそれぞれが固相に取り付けられる。特に、本発明は、イオン交換樹脂と混合された固体バッファーのビーズまたは粒子を含む組成物を考慮している。別の一実施形態においては、固体バッファーおよびイオン交換樹脂は、固相に取り付けられない。別の一実施形態においては、緩衝特性およびイオン交換特性が同じ粒子内で得られる。
【0128】
用語「固体バッファー」は、それぞれ異なるpKを有するイオン化可能なモノマーから得られる両性の架橋した不溶性高分子を意味する。固体バッファーは、希薄電解質水溶液を所定のpHを付与し、酸性またはアルカリ性の分子が加えられてもpHを維持する。これらの物理化学的性質に加えて、本明細書において有用な固体バッファーは、細孔を含み、それによってたとえば5000Da未満の低い排除限界の材料となる。
【0129】
排除限界が低いと、架橋したモノマー内部への拡散が防止されながら、小さなイオンの十分な拡散は維持される。このような限定された拡散によって、固体バッファーへの非特異的結合の危険性が最小限になる。ある実施形態においては、固体バッファーは、5000Da未満、4000Da未満、または3000Da未満の排除限界を有する。細孔を有する両性高分子は、比較的高濃度のモノマー溶液およびまたは架橋度の高いモノマーを使用することによって生成することができる。
【0130】
一態様においては、固体バッファーはポリマーであってよい。たとえば、固体バッファーは、ポリアクリルアミドまたはブロックコポリマーであってよい。別の例では、所定のpH付近で緩衝力を得るために、異なるpKの複数のアクリルアミドモノマーを組み合わせることで、固体バッファーを製造することができる。
【0131】
固体バッファーは、ポリマー化学および生化学の技術分野で使用される日常的な化学物質および方法を使用して調製することができる。一般に、特定のpHのための固体バッファーを得るために、対応するpKを有するモノマーを選択し(数mMから数百mMまでの範囲をとりうる濃度で)、そのpK付近のpHまで、相補的なモノマーを使用して滴定を行う。たとえば、選択されたモノマーのpKが8.0である場合には、pKが4.5未満であるモノマーを使用してpH8.0付近まで滴定を行う。所望のpKのモノマーが入手できない場合、複数のモノマー(所望のpKの上および下のpK)の混合物を使用することができ、続いて2つのpKの間のpHまで滴定することができる。次に、pHを調整したモノマー溶液に、適切な架橋試薬および重合触媒を、固体バッファーの粒子を製造するための重合を引き起こすのに十分な比率で加える。
【0132】
さまざまなモノマーが市販されている。代表的なモノマーとしては、N−アクリロイルグリシン、4−アクリルアミドブチル酸(4−acrylamidobutyrric acid)、2−モルホリノ−エチルアクリルアミド、3−モルホリノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。イモビリン(Immobiline)を使用して固体バッファーを製造することもできる。
【0133】
イモビリン(Immobiline)は一般式:
【化1】
に従うアクリルアミド誘導体であり、上式中、Rは、特徴的なpIを提供する基を含む。たとえば、米国特許第4,971,670号明細書を参照されたい。原則的にこの特性決定は多くの分子を含んでいるが、アマシャム(Amersham)は、商標イモビリン(IMMOBILINE)(登録商標)で販売され、等電性ゲルおよびポリマーの生成に特に適している分子を製造している。イモビリン(IMMOBILINE)(登録商標)コレクションの分子としては、括弧内に示されるpIを有する以下の分子が挙げられる:N−アクリロイルグリシン(pK3.6);4−アクリルアミドブチル酸(4−acrylamidobutyrric acid)(pK4.6);2−モルホリノエチル−アクリルアミド(pK6.2);3−モルホリノプロピルアクリルアミド(pK7.0);N,N−ジメチルアミノ−エチルアクリルアミド(pK8.5);およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(pK9.3)(一括して「イモビリン」と呼ぶ)。いずれのイモビリンも、モノマーとして組み合わし、アクリルアミドおよびN,N’−メチレンビスアクリルアミドまたは別の好適な架橋剤と共重合させることで、所望のpI特異性ポリマーを生成することができる。アクリルアミドは、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルアクリルアミド、メチロールアクリルアミド ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアクリルアミドなどの別の非イオン性アクリルアミド誘導体で置き換えることができる。
【0134】
特定のpHを有する固体バッファーを生成するために、モノマーの組み合わせおよび濃度の選択に役立てるために、さまざまな情報資源を利用できる。たとえば、モノマーの組み合わせの配合表は、JOURNAL OF CHROMATOGRAPHIC LIBRARY,VOLUME 63 Chapter 12(リゲッティ(Righetti)、ストヤノフ(Stoyanov)、およびジューコフ(Zhukov)編,2001年)に提供されている。アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)は、自社の「プロトコールガイド1:アイソプライム精製のためのタンパク質の等電膜の処方」(Protocol Guide # 1:Isoelectric Membrane Formulas for IsoPrime Purification of Proteins)の中で類似の配合表を提供している。www4.amershambioscieces.com/aptrix/upp00919.nsf/(FileDownload)?OpenAge nt&docid=FD3302088BD37BC6C1256EB400417E5C&file=80635018.pdfを参照されたい。
【0135】
モノマーの濃度を選択するためのアルゴリズムの入手可能である。たとえば、ファフレダ(Giaffreda)ら,J.Chromatog.,630:313−327頁(1993年)を参照されたい。さらに、ポリマーのpIを求めるための技術は当技術分野において周知である。そのような方法の例としては、リベイロ(Ribeiro)ら,Computers in Biology and Medicine 20:235−42頁(1990年)、リベイロ(Ribeiro)ら,上記引用文献,21:131−41頁(1991年)、およびシレロ(Sillero)ら,Analytical Biochemistry 179:319−25頁(1989年)が挙げられる。
【0136】
一実施形態においては、国際出願PCT/US2005/007762号明細書(この記載内容を本明細書に援用する)に記載される粒子を固体バッファーとして使用することができる。
【0137】
別の一実施形態においては、固体支持体の空隙内で固体バッファーの重合が行われる。別の実施形態においては、粒子内の空隙の内部細孔容積によって形成される内面および外面などの、固体支持体の内面および外面上に、固体バッファーが堆積される。この体積は、化学結合またはその他の手段によるものであってよい。
【0138】
アミノ酸およびペプチドは、それらが明確な等電点を有するときに、このような表面層を提供することができる。したがって、ある実施形態においては、固体バッファーは2種類以上のアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は20種類の天然アミノ酸のいずれかであってよいし、アミノ酸は合成アミノ酸であってもよい。有用なアミノ酸としては、20種類の天然アミノ酸の中で、イオン化可能な側鎖を有するものが挙げられ、たとえば、リジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、システイン、スレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミンが挙げられる。さらに、前述の粒子内面および外面に取り付けることができ明確なpI値を有するその他の化合物も本発明に使用できることが、当業者には理解できるであろう。粒子表面上に取り付け部位を形成するためにリンカーを使用することができる。
【0139】
一般に、固体バッファーは、タンパク質自体を吸着可能となるべきではなく、イオン交換体と同じ密度を有するべきであり、所望のpHにおいて良好な緩衝能力を有するべきである。
【0140】
用語「固体支持体」は、低濃度でのポリマーの崩壊を防止するためにイオン交換ポリマーまたは固体バッファーを取り付けたり充填したりすることができる固体の多孔質の材料を意味する。
【0141】
クロマトグラフィー材料は、さまざまな固体支持体を利用することができる。この場合の固体支持体の例は、粒子、膜、およびモノリスである。「モノリス」は、クロマトグラフィーのリガンドを取り付けることができる一般に多孔質である一体構造の材料である。一般に、モノリスは、ビーズよりもはるかに大きな体積を有し、たとえばモノリス1cm3当たりで0.5mLを超える。
【0142】
一実施形態において、固体支持体は、表面から内側に延在する複数の空隙を有する実質的に多孔質の粒子を含む。これらの粒子は、好ましくは、生物抽出物の分離に適合する大きさ、機械的強度、および浮力を有する。一実施形態において、これらの粒子は、シリカ、チタニア、ジルコニア、ハフニア、アルミナ、ガリア、スカンジア、イットリア、アクチニア、または希土類鉱物酸化物などの1種類以上の鉱物酸化物を含む。
【0143】
多孔質粒子が、固体バッファー固体支持体として使用される場合、比較的大きな粒子を使用することで、粒子体積に対する外部表面積を最小限にすることができ、それによって、タンパク質が非特異的に結合する危険性を軽減することができる。ある実施形態においては、これらの粒子は、約50μmを超える、または約100μmを超える、または約200μmを超える直径を有する。一例では、約150μmの粒子が、固体バッファーの固体支持体として使用される。粒子の細孔容積は、全体の粒子体積の10〜70%の範囲とすることができる。
【0144】
あるいは、多孔質プラスチックビーズを固体支持体として機能させることができる。ポリスチレンは、クロマトグラフィー用に細孔を有するビーズに成形可能なよく知られたポリマーである。他の合成ポリマーを使用することもでき、たとえば、メチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ならびに多孔質ナイロン、多孔質ポリビニルプラスチック、およびポリカーボネートを主成分とするものを使用することができる。多孔質粒子体のさらなる例は、米国特許第6,613,234号明細書、第5,470,463号明細書、第5,393,430号明細書、および第5,445,732号明細書に記載されており、これらのそれぞれを本明細書に援用する。
【0145】
イオン交換クロマトグラフィーは、化合物をそれらの実効電荷に基づいて分離する。布または正に帯電した官能基は、固体支持体マトリックスと共有結合して、それぞれ陽イオン交換体または陰イオン交換体のいずれかが得られる。帯電した化合物を、反対の電荷の交換体に加えると、その化合物は吸着するが、中性または同じ電荷の化合物は、カラムの空の容積内に溶出される。帯電した化合物の結合は可逆的であり、吸着した化合物は、一般に塩またはpHグラジエントを使用して溶出させる。
【0146】
用語「イオン交換樹脂」は、正または負の符号の1種類の基であるイオン化可能な基を有する固体の多孔質網目構造(無機または有機または複合材料)を意味する。正に帯電したイオン性基(陰イオン交換体)は、たとえば、第4級、第3級、および第2級のアミンおよびピリジンの誘導体である。負に帯電したイオン性基(陽イオン交換体)は、たとえば、スルホネート、カルボキシレート、およびホスフェートである。
【0147】
イオン交換樹脂の選択は、分離される化合物の性質に依存する。両性化合物の場合、その化合物のpIおよび種々のpH値におけるその安定性によって、分離計画が決定される。そのpIを超えるpHにおいて、対象となる化合物は負に帯電し、そのpIよりも小さいpHにおいては、その化合物は正に帯電する。したがって、その化合物がそのpIよりも大きいpHにおいて安定であれば、陰イオン交換樹脂が使用される。逆に,その化合物がそのpIよりも小さいpHで安定であれば、陽イオン交換樹脂が使用される。作業時のpHによっても、使用される交換体の種類が決まる。強イオン交換樹脂は広いpH範囲で能力を維持するが、弱イオン交換樹脂は、pHがその官能基のpKaに一致しなくなると能力が損なわれる。
【0148】
陰イオン交換体は、弱または強のいずれかに分類することができる。弱陰イオン交換体上の電荷基は弱塩基であり、脱プロトンするので、高いpHにおいてその電荷を失う。DEAE−セルロースは弱陰イオン交換体の一例であり、pH約9未満でそのアミノ基が正に帯電することができ、より高いpH値では徐々にその電荷を失う。他方で、強陰イオン交換体は、第4級アミンなどの強塩基を含有し、これは、イオン交換クロマトグラフィーに通常使用されるpH範囲(pH2〜12)全体で正に帯電した状態を維持する。
【0149】
陽イオン交換体も、弱または強のいずれかに分類することができる。強陽イオン交換体は、pH1〜14で帯電した状態を維持する強酸(スルホプロピル基など)を含有し、一方、弱陽イオン交換体は弱酸(カルボキシメチル基など)を含有し、これはpHが4または4.5未満に減少すると、その電荷を徐々に失う。
【0150】
本発明の一実施形態においては、第4級アミンまたはスルホン酸などの強イオン交換体が使用される。5〜8の間のpIを有するタンパク質を分離する場合などには、第3級アミンおよびカルボン酸などの弱イオン交換体を使用することもできる。
【0151】
表4は一般的なイオン交換体の一覧である。
【0152】
【表4】
【0153】
イオン交換樹脂は当技術分野において周知である。本発明に有用な市販のイオン交換体としては、QハイパーD(Q HyperD)、SハイパーD(S HyperD)、Qセファロース(Q Sepharose)、Sセファロース(S Sepharose)、QハイパーZ(Q HyperZ)、およびCMハイパーZ(CM HyperZ)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂を固体バッファービーズなどと混合して、たとえば、本発明のクロマトグラフィー材料を製造することができる。
【0154】
クロマトグラフィー材料は、5%〜95%の体積のイオン交換体を含むことができ、残部は固体バッファーである。
【0155】
タンパク質をそれらのpIに基づいて混合物から分離するために有用なクロマトグラフィー材料は、固体バッファーをイオン交換樹脂と混合することによって製造される。一実施形態において、それぞれ異なる固体支持体に取り付けた固体バッファーおよびイオン交換樹脂を組み合わせて混合物を形成する。さらに、この混合物を混合粒子の床とすることができる。
【0156】
別の一実施形態においては、クロマトグラフィー材料は、膜またはモノリスなどの1種類の固体支持体に取り付けられた固体バッファーおよびイオン交換樹脂を含む。別の例では、イオン交換樹脂が、1種類の粒子上の固体バッファーと混合される。この実施形態において、粒子に取り付けられた固体バッファーを最初に調製した後、イオン交換特性を有し大きな孔を有するポリマーを固体バッファーの上に形成する。
【0157】
本発明のクロマトグラフィー材料を通過するタンパク質は(たとえば、カラム、またはチャンバー102の系列を通過)は、固体バッファーによって生じるpHよりもそれぞれ下、上、または同じのいずれであるかに依存して、実効正電荷または実効負電荷のいずれかを有するか、あるいは中性となる。その環境のpHにおいてイオン交換樹脂とは反対の電荷を有するタンパク質は、そのイオン交換体に結合し、一方、中性または同じ電荷のタンパク質は、結合しないままであり、そのクロマトグラフィー材料を通過する。すなわち、たとえば、固体バッファーのpHにおいて負に帯電しているタンパク質は、イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂である場合には、そのイオン交換樹脂に結合する。次に、捕捉されたタンパク質は、そのクロマトグラフィー材料から溶出させることができる。したがって、本発明のクロマトグラフィー材料は、pIに基づいたタンパク質の分離に有用である。
【0158】
別の一実施形態においては、タンパク質は、クロマトグラフィー材料の系列を使用して、それぞれのpIに基づいて混合物から分離される。異なるクロマトグラフィー材料で構成される多段階カラム(またはチャンバー102の系列)中で、pHの不連続なグラジエントが発生する。このようなカラム(またはチャンバー102の系列)を通過する混合物中のタンパク質は、カラム(またはチャンバー102の系列)中での位置によって異なってイオン化され始める。あるタンパク質がイオン交換樹脂と反対側の電荷を有するようになると、そのタンパク質はイオン交換樹脂に結合する。したがって、カラム(またはチャンバー102の系列)を通過して移動する混合物は、カラム(またはチャンバー102の系列)の異なる区域を通過するときに、1つの分類のタンパク質が失われる。
【0159】
したがって、図1〜10に示される分離装置の1つは、装置のチャンバー102内に連続的に配置されたクロマトグラフィー材料の系列を含むことができる。このクロマトグラフィー材料の系列は、それぞれpH9、7、および5(上部から底部で)の陽イオン交換体および固体バッファーを含むことができる。生物抽出物のサンプルを、最初に、9の固体バッファーを保持する容器に適用する。pH9を超えるpIを有するタンパク質は、この環境で正に帯電し、したがって、最初のチャンバー102中のクロマトグラフィー材料のイオン交換体部分に結合し、大部分の生物抽出物の中では、これは少数のタンパク質種である。中性または負に帯電したタンパク質は結合せず、第1のチャンバー102/510から溶出する。次に、この溶出液を、pH7の固体バッファーを保持する第2のチャンバー102/510に装入する。このpHにおいて、7を超えるpIを有するタンパク質は正に帯電し、イオン交換体に結合する。中性および正に帯電したタンパク質は結合せず、そのクロマトグラフィー材料を保持する第2のチャンバー102/510から溶出する。したがって、この区分のクロマトグラフィー材料は、7〜9の間のpIを有するタンパク質を捕捉し、9を超えるpIを有するタンパク質は第1のチャンバー102/510中に既に捕捉されている。次に、この第2の溶出液を、pH5の固体バッファーを有するクロマトグラフィー材料を保持する第3のチャンバー102/510に装入する。上述の機構と類似の機構により、5〜7の間のpIのタンパク質が陽イオン交換体によって捕捉され、5以下のpIを有するタンパク質は捕捉されず、溶出液中に存在する。サブサンプルとなる結合したタンパク質は、種々のチャンバー102から従来手段によって後に溶出させることができる。したがって、タンパク質は、9を超えるpIを有するサブサンプル、7〜9の間のpIを有するサブサンプル、5〜7の間のpIを有するサブサンプル、および5未満のpIを有するサブサンプルに分画される。同様の方法で、次第に増加するpHの固体バッファーで構成されるクロマトグラフィー材料を使用して、陽イオン交換クロマトグラフィーによってタンパク質を分画することができる。
【0160】
一態様においては、系列は、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、10種類、11種類、または12種類の異なるクロマトグラフィー材料を含むことができる。前述したように、陰イオン交換体または陽イオン交換体のいずれが使用されるかに依存して、それぞれ、pHが増加する、または減少する順で、クロマトグラフィー材料が、カラムまたはチャンバー102内に配列される。
【0161】
クロマトグラフィー用アドーベント(adorbent)上に装入するための溶液の調製において、たとえば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの単塩などの電解質を使用することができる。しかし、生体分子が電解質として作用する場合は、何も含まない水を使用することができる。タンパク質の凝集を防止するために、混合物に改質剤を加えることもできる。このような改質剤の例としては、グリコール、ならびに尿素または非イオン性洗剤などの非イオン性カオトロピック剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0162】
結合したタンパク質は、イオン交換樹脂からタンパク質を溶出させることができるあらゆる化学成分を使用して脱着させることができる。最も一般的には、塩溶液を使用してタンパク質を脱着させるが、pHの変化やディスプレーサーを利用することもできる。
【0163】
別の一実施形態においては、容器の系列を含む装置が提供され、系列中の第1の容器は、流体入口を含み、系列中の最終容器は流体出口を含み、系列中の各容器は、系列の次の容器と流体連通しており、系列中の各容器は、異なるクロマトグラフィー材料を含み、これらの容器は、クロマトグラフィー材料のpHが増加または減少する順序で配列される。
【0164】
このような一実施形態においては、クロマトグラフィー材料は、入口および出口を有するカートリッジまたは容器のセグメント内に収容される。これらのセグメントは、互いに積み重ね可能であり、互いに取り外し可能である。各セグメントは、異なるクロマトグラフィー材料を含有する。これらは、クロマトグラフィー材料を所定の位置に保持するためのフィルターまたは膜を有することができる。終端通しが取り付けられる場合、それらのセグメントは、溶液を注ぎ入れることができる1つのカラムを形成する。すべてのセグメントに流体を通した後、セグメントは互いに取り外すことができ、捕捉されたタンパク質は各セグメントから溶出させることができる。たとえば、国際公開第03/036304号パンフレット(シュルツ(Schultz)ら)を参照されたい。
【0165】
このような別の一実施形態においては、容器は、図1〜3に示されるもののようなマイクロタイタープレートのウェルであり、系列中の各容器は、取り外し可能な導管に接続されたチャンバー102/510によって画定される。前述したように、このプレートは、ドリッププレートまたはフィルタープレートであってよい。しかし、別の実施形態においては、プレートは、孔などのチャネルを含む部品を含むことができ、このチャネルは部品のいずれかの側で開いており、導管を孔の開口部に取り付けると、チャンバーが画定される。好ましくは、チャンバー102は、実質的に1つの面内に配列される。
【0166】
以下の実施例は単に説明を目的としており、それらを考慮した種々の修正または変更は、当業者によって提案され、それらが本出願の意図および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲の中に含まれることを理解されたい。
【実施例】
【0167】
実施例2:pH8.5の固体バッファーの調製
pH8.5の固相バッファーの調製は、pK8.5を有するN,N−ジメチル−アミノプロピル−アクリルアミド10mmol(これは1420mgの遊離塩基である)を50mLの水中に溶解させることによって行うことができる。この溶液を、pK3.1のモノマーのアクリルアミドグリコール酸(遊離酸)をゆっくり添加することによって、pH8.5まで滴定する。次に、30gのアクリルアミドおよび2gのメチレン−ビス−アクリルアミドをこの溶液に加える。次に、この溶液の体積を100mLまで増加させる。この最終溶液に、過硫酸アンモニウムおよびTEMEDなどの重合触媒を加える。次に、この溶液を、多孔質粒子の含浸などに使用する。ヒドロゲルが粒子の細孔内で重合してから、材料を洗浄して、副生成物および過剰の試薬を除去する。この固相バッファーは、20%エタノールの存在下で保管することができる。
【0168】
実施例3:pH4.6の固体バッファーの調製
pH4.6の固相バッファーの調製は、100mMのN−アクリロイルグリシン(pK4.6)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、N,N,N−トリエチルアミノエチルアクリルアミドの濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH4.6まで滴定する。得られた溶液に、200グラムのアクリルアミドおよび10グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加える。この混合物を完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に溶液に加える。38mLの最終溶液を、約75μM(100グラムで細孔容積が38mL)の多孔質ジルコニアビーズ100mLに加え、この無機ビーズの多孔質容積内に溶液が完全に吸収されるまで混合する。次に、含浸させたビーズを、交互に窒素を導入しながら真空下で3回脱気する。次に、この混合物を、モノマーが重合するまで窒素の存在下、室温で保管する。得られた固体バッファーは、水、同じpHのバッファー(たとえば、酢酸バッファーpH4.6)、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0169】
実施例4:pH9.3の固体バッファーの調製
pH9.3の固体バッファーの調製は、100mMのN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(pK9.3)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、アクリル酸の濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH9.3まで滴定する。得られた溶液に、200グラムのジメチル−アクリルアミドおよび10グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加える。得られた混合物を、完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。38mLの最終溶液を、約75μM(100グラムで細孔容積が38mL)の多孔質ジルコニアビーズ100mLに加え、このビーズの多孔質容積内に溶液が完全に吸収されるまで混合する。次に、含浸させたビーズを、交互に窒素を導入しながら真空下で3回脱気する。次に、この混合物を、モノマーが重合するまで窒素の存在下、室温で保管する。得られた材料は、水、同じpHのバッファー(たとえば、Tris−HClバッファー、pH9.3)、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0170】
実施例5:pH7.7の固体バッファーの調製
pH7.7の固体バッファーの調製は、50mMの3−モルホリノプロピルアクリルアミド(pK7.0)および50mMのN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(pK8.5)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH7.7まで滴定する。得られた溶液に、200グラムのアクリルアミドおよび10グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加え、得られた混合物を、完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。38mLの最終溶液を、約75μM(100グラムで細孔容積が38mL)の多孔質ジルコニアビーズ100mLに加え、このビーズの多孔質容積内に溶液が完全に吸収されるまで混合する。次に、含浸させたビーズを、交互に窒素を導入しながら真空下で3回脱気する。次に、この混合物を、モノマーが重合するまで窒素の存在下、室温で保管する。得られた材料は、水、同じpHのバッファー(たとえば、モルホリン−HClバッファーpH7.7)、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0171】
実施例6:混合モードクロマトグラフィー材料(pH4.6の固体バッファーおよび陽イオン交換体)の調製
pH4.6の固体バッファーは、150mMのN−アクリロイルグリシン(pK4.6)および10mMのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、N,N,N−トリエチルアミノエチルアクリルアミドの濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH4.6まで滴定する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。
【0172】
別に、5%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩、5%のジメチルアクリルアミド、ならびに1%およびmMのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドで構成される第2の水溶液を調製する。次にこの溶液のpHを、塩基または酸を加えることによって4.6に調整する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。
【0173】
約75μM(100グラムで細孔容積が40mL)の多孔質ジルコニアビーズ100mLを、20mLの第1のモノマー溶液と混合し、前述の実施例の重合までのところに記載されるようにして処理する。この中間生成物を、水、同じpHのバッファー(たとえば、酢酸バッファーpH4.6)、さらに再び水で十分に洗浄する。洗浄した生成物は、乾燥エタノールおよびアセトンで繰り返し洗浄することなどによって乾燥させる。
【0174】
次に、この乾燥した中間生成物を、20mLの第2のモノマー溶液と混合する(無機ビーズの全多孔質容積を満たすまで)。上述のように第2の重合プロセスを開始する。最終的なクロマトグラフィー材料を、酢酸バッファーpH4.6、および蒸留水で十分に洗浄する。
【0175】
実施例7:pH6.5の固体バッファーの調製
pH6.5の固体バッファーの調製は、150mMの3−モルホリノプロピルアクリルアミド(pK7.0)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、N−アクリロイルグリシン(pK3.6)の濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH6.5まで滴定する。得られた溶液に、400グラムのアクリルアミドおよび30グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加え、得られた混合物を、完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’、N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。100mLのこの溶液を、3%のアラセル(arlacel)C(油溶性乳化剤)を含有する500mLのパラフィン油中に分散させる。この懸濁液を65℃で3時間撹拌し続けて、モノマーをともに共重合させる。重合中に形成されたヒドロゲルビーズを、濾過により回収し、非極性溶媒で十分に洗浄して、微量のパラフィン油を除去する。次に、このビーズを、水、同じpHのバッファー、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0176】
実施例8:不規則な粒子を使用したpH9.0の固体バッファーの調製
pH6.5の固体バッファーの調製は、150mMのN,N,N−トリエチル−アミノエチル−アクリルアミド(pK12)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、アクリルアミドグリコール酸(pK3.1)の濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH9.0まで滴定する。得られた溶液に、300グラムのジメチル−アクリルアミドおよび20グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加え、得られた混合物を、完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。次にこの溶液を、窒素下で65℃の温浴に入れる。5時間後、充満したヒドロゲル下で重合が完了する。このヒドロゲルを小さな断片に切断し、粉砕して約100μmの粒子を得る。次に、粒子となった生成物を、水、次に同じpHのバッファー、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0177】
実施例9:3種類の異なる固体バッファーと混合した陰イオン交換体を使用したpIに基づくタンパク質の分離
3種類のクロマトグラフィー材料の系列を、相互接続された部分カラムまたはチャンバー102/510(先行の出口が後続の入口と出会う)カラムまたはチャンバー102/510の系列として組み立てる。各クロマトグラフィー材料は、同じ陰イオン交換体(QハイパーZ(Q HyperZ)収着剤)を含むが、異なるpH、特にそれぞれ5.4、7.7、および9.5の異なる固体バッファーを含む。クロマトグラフィー部分カラムまたはチャンバー102は、pHが増加する順序で位置合わせされ、すなわち、第1の部分カラムまたはチャンバー102/510がpH5.4を有し、最終の吸着剤がpH9.5を有する。
【0178】
このQ陰イオン収着剤は、固相バッファーによって誘導されるすべてのpH範囲(5.4〜9.5)内で正に帯電する。
【0179】
5種類のタンパク質(リゾチーム(pIが11)、チトクロムc(pIが9.0)、ミオグロビン(pIが7.0)、ヒトアルブミン(pIが6.0)、およびフェチュイン(pI<5.0))を含有するサンプルを、10mMの塩化カリウム中で調製する。タンパク質間の相互作用を回避するため、2M尿素を加える。次にサンプルをカラム上または第1のチャンバー102/510中に装入する。
【0180】
第1のクロマトグラフィー材料においては、pH5.4において負に帯電する唯一のタンパク質であるため、フェチュインのみが吸着される。残りの4種類のタンパク質は、カラム中の第2のクロマトグラフィー材料または第2のチャンバー102/510中まで進む。
【0181】
第2のクロマトグラフィー材料においては、pH5.4でアルブミンおよびミオグロビンの両方が負に帯電する。したがってこれらはこのイオン交換体によって捕捉される。
【0182】
カラムまたは第3のチャンバー102/510中の第3のクロマトグラフィー材料においては、サンプル中に残留しpH9.5において負に帯電する唯一のタンパク質であるため、チトクロムCのみが吸着される。
【0183】
リゾチームは、pH9.5において実効正電荷を有する。したがって、これは、カラムまたは第3のチャンバー102/510を通り抜けて出てくる。
【0184】
吸着段階が終わってから、クロマトグラフィー材料を取り外し、タンパク質を脱着させるために別々に処理を行う。結合したタンパク質は1M塩化カリウムを使用することで脱着され、それによって複数のサブサンプルが得られる。
【0185】
実施例10:3種類の異なる固体バッファーと混合した陽イオン交換体を使用したpIに基づくタンパク質の分離
3種類のクロマトグラフィー材料の系列を、相互接続された部分カラムまたはチャンバー102(先行の出口が後続の入口と出会う)カラムの系列として組み立てる。各クロマトグラフィー材料は、同じ陽イオン交換体を含むが、異なるpH、特にそれぞれ5.4、7.7、および9.5の異なる固体バッファーを含む。クロマトグラフィー部分カラムまたはチャンバー102は、pHが減少する順序で位置合わせされ、すなわち、第1の部分カラムまたはチャンバー102/510がpH9.5を有し、最終の吸着剤がpH5.4を有する。
【0186】
この陽イオン交換体は、固相バッファーによって誘導されるすべてのpH範囲(5.4〜9.5)内で負に帯電する。
【0187】
5種類のタンパク質(リゾチーム(pIが11)、チトクロムc(pIが9.0)、ミオグロビン(pIが7.0)、ヒトアルブミン(pIが6.0)、およびフェチュイン(pI<5.0))を含有するサンプルを、10mMの塩化カリウム中で調製する。タンパク質間の相互作用を回避するため、2M尿素を加える。次にサンプルをカラム上または第1のチャンバー102/510中に装入する。
【0188】
第1のクロマトグラフィー材料においては、pH9.5において負に帯電する唯一のタンパク質であるため、リゾチームのみが吸着される。残りの4種類のタンパク質は、カラム中の第2のクロマトグラフィー材料または第2のチャンバー102/510まで進む。
【0189】
第2のクロマトグラフィー材料においては、サンプル中に残留しpH7.7において負に帯電する唯一のタンパク質であるため、チトクロムCのみが吸着される。残りのタンパク質は、カラム中の第3のクロマトグラフィー材料または第3のチャンバー102/510まで進む。
【0190】
第3のクロマトグラフィー材料においては、pH5.4でアルブミンおよびミオグロビンの両方が負に帯電する。したがってこれらのタンパク質はこの陰イオン交換体によって捕捉される。
【0191】
フェチュインは、pH5.4において実効正電荷を有する。したがって、フェチュインはカラムまたは第3のチャンバー102/510を通り抜けて出てくる。
【0192】
吸着段階が終わってから、クロマトグラフィー材料を取り外し、タンパク質を脱着させるために別々に処理を行う。結合したタンパク質は1M塩化カリウムを使用することで脱着され、それによって複数のサブサンプルが得られる。
【0193】
IV.疎水性インデックスに基づく分画
本明細書において本発明者らが説明する方法以外に疎水性インデックスによる他の分離方法が存在するのであれば、それらについて言及すべきである。
【0194】
本発明の別の一実施形態は、従来可能であったよりも高い感度および効率を実現しながら、生体分子成分の単離および検出を行うことによって、生体分子成分(すなわち、タンパク質、核酸、脂質、代謝物などの生体内作用によって生成される化学種)を含有する複合混合物の複雑性を軽減するための方法およびシステムを提供する。
【0195】
図12は、1000における本発明の一実施形態を説明している。後述のように少なくとも部分的に分割するために、複数の異なる生体分子成分1001を含む複合混合物を含有するサンプル溶液を、サンプル分画用カラム1002(またはチャンバー102/510の系列)に導入する。カラム1002(またはチャンバー102/510の系列)は、連続して(たとえば、連続するチャンバー102/510中)配列された複数の収着材料1004、1006、1008、および1010を含み、それらの中をサンプル溶液1001が連続的に通過することによって、各収着材料の単離が行われ、残りすべての溶液は容器1012に溶出させることができる。
【0196】
本発明の一実施形態においては、収着剤1004、1006、1008、1010によって実質的にすべての生体分子成分が捕捉されるように、収着剤量が選択される。本発明のより具体的な一実施形態においては、収着剤1004、1006、1008、1010のそれぞれが、複数の生体分子成分の実質的に固有のサブセットを捕捉する。したがって、収着剤1004はサブサンプル1014を捕捉するために有効であり、収着剤1006はサブサンプル1016を捕捉するために有効であり、収着剤1008はサブサンプル1018を捕捉するために有効であり、収着剤1010はサブサンプル1020を捕捉するために有効である。サンプル溶液1001中の複数の生体分子成分の種々のサブサンプルが捕捉された後、捕捉された生体分子成分を含む収着剤は、より長時間単離することができる(すなわち、カラムまたはチャンバー102/510から取り出すことができる)。サブサンプルは、収着剤から溶離させたり、他の方法で取り出したりすることによって、より詳細に後述するように、多次元分離プロトコールによりさらに処理することができる。
【0197】
本発明の多重分離方法は、少なくとも1000種類、少なくとも100,000種類、または少なくとも10,000,000種類の異なる生体分子種(たとえば、タンパク質)を含むサンプルなどの複雑な混合物中の検体の分画に特に有用である。本発明の方法は、生物学的サンプルから生体分子を分離する場合に特に有用である。そのようなサンプルとしては、たとえば、羊水、血液、脳脊髄液、関節内液、眼液、リンパ液、乳汁、汗 血漿、唾液 精液、精漿、血清、痰、滑液、涙、臍帯液、尿、生検ホモジネート、細胞培養液、細胞抽出物、細胞ホモジネート、ならし培地、発酵ブロス、組織ホモジネート、およびこれらの派生物を挙げることができる。
【0198】
本発明の利点の1つは、本発明の装置が、希望するあらゆる数の分離のために使用することができ、そのような分離に容易に適応可能なことである。さらに、たとえば、蠕動ポンプおよび/または真空ステーションなどの一部の基本的な実験室用設備以外に、装置を追加する必要がない。
【0199】
別の一実施形態においては、本発明はキットを提供する。本発明のキットは、本発明の装置と、分離媒体を含む少なくとも1つの容器とを含む。このようなキットは、分離媒体を含むチャンバーの個別の配列、および分離媒体の個別の系列をどのようにするかを使用者が決定できるため有用となる。したがって、ある実施形態においては、本発明のキットは、複数の異なる分離媒体を含む。本発明のキットは、場合により、装置の使用中にあるチャンバーから別のチャンバーにサンプルを移動させるためのバッファーなどの流体を含む少なくとも1つの容器を含むことができる。
【0200】
実施例:
前述の実施形態の1つを使用したヒト血清の分離プロトコールの1つを以下に説明する。
【0201】
ステップ1:図10に示される種類の96チャンバー(8×12)マイクロタイターフィルタープレート(米国ニュージャージー州のプリンストン・セパレーションズ(Princeton Separations,NJ,USA)、長いドリップノズル、25μMの膜孔径)の縦列内のチャンバーに、以下の機能の樹脂を150μl(全充填床体積)充填した:プロテインA、ブルー・トリスアクリル(blue trisacryl)、MEP、ヘパリン、緑色染料リガンド、およびフェニルプロピル。
【0202】
ステップ2:プラスチックチューブを使用して、(a)第1のチャンバーの出口の第2のチャンバーの入口への接続し、(b)第2のチャンバーの出口の第3のチャンバーの入口への接続(など)を行った後、蠕動ポンプ(バイオ−ラド・モデルEP−1エコノ・ポンプ(Bio−Rad model EP−1 Econo Pump))を第1のチャンバーの入口に接続した。次に、20体積の結合バッファー(1×PBSpH7[16体積]、1MTris−HClバッファーpH8[9体積]、および脱イオン水[75体積])を、チャンバー内(すなわち、樹脂の系列を通過させる)に0.2ml/分の流速で圧送した。
【0203】
ステップ3:結合バッファーを平衡化させた後、40μlの変性血清(米国ジョージア州ノークロスのインタージェン(Intergen,Norcross,GA,USA)のヒト血清、2mlの血清に2.5mLの9M尿素、2%のCHAPS(3−[(コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−1−プロパンスルホネート)を加えて室温で1時間で変性させた)を結合バッファー中1:5で希釈した。希釈した血清を、次に、第1のチャンバーの入口に導入した。
【0204】
ステップ4:結合バッファーを使用して、チャンバーを通過する流れを0.02ml/分の速度に再設定した。最初の60分間は、最終チャンバーの出口からの溶出液は廃棄した。
【0205】
ステップ5:最初の60分の後、次の60分間で溶出液を収集した。
【0206】
ステップ6:合計120分後、流れを停止させ、すべてのプラスチックチューブをマイクロタイタープレートから取り外した。
【0207】
ステップ7:各ウェル内の過剰のバッファーは真空によって除去し、廃棄した。
【0208】
ステップ8:次に、各ウェルで捕捉されたタンパク質は、(i)TFA(0.8体積)−水(79.2体積)−ACN(6.6体積)−IPA(13.4体積)、または(ii)水酸化アンモニウム(8体積)−水(72体積)−ACN(6.6体積)−IPA(13.4体積)のいずれかを使用して、個別に溶出させた。特に、20分間穏やかに混合しながら収着剤をインキューベートすることによって、タンパク質の溶出を行った。
【0209】
ステップ9:各収着剤からの上澄みは、真空濾過によって収集プレート中に回収し、凍結させ、凍結乾燥させた。凍結乾燥した残分を次に100μLの25mMのTris−HClバッファーpH7.5または150μlの50mMのヘペス(Hepes)0.1%OGPバッファー中に再溶解させた。凍結乾燥した残分を再溶解させたもののアリコートを、次にSELDI−質量分析(米国カリフォルニア州フリーモントのサイファージェン・バイオシステムズ・インコーポレイテッド(Ciphergen Biosystems Inc.,Fremont,CA,USA))によって分析した。この方法を使用して、流出分を含めて合計8つの分画が各サンプルから得られた。
【0210】
ステップ10:Q10プロテインチップ・アレイ(Q10 ProteinChip array)(サイファージェン・バイオシステムズ・インコーポレイテッド(Ciphergen Biosystems Inc.))の各スポットについて、製造元の取扱説明書に記載されている通り、記載のアレイ特異的結合バッファー150μLを使用した5分間の平衡化を2回行った。次に、各スポット表面に、あらかじめアレイ結合バッファーで半分に希釈しておいたサンプル30μL(150μLの溶解バッファーには50μL)を装入した。
【0211】
ステップ11:激しい振盪下30分のインキュベーション時間の後、各スポットについて、150μLの結合バッファーを5分間使用した洗浄を2回行って、吸着していないタンパク質を除去した。続いて、各スポットを脱イオン水で迅速に洗浄した。
【0212】
ステップ12:すべての表面を乾燥させ、ACN(49.5体積)−TFA(0.5体積)−脱イオン水(50体積)の混合物中のSPAの飽和溶液0.5μLを2回装入し、再び乾燥させた。
【0213】
ステップ13:次に、質量分析計読取機を、正イオンモードにおいて、イオン加速電位20kVおよび検出器電圧2.8kVで使用して、すべてのアレイを分析した。質量分析計によって調べた分子量範囲m/z0〜300であった。焦点質量は、高質量範囲および低質量範囲でそれぞれ30および7に設定した。スポット表面上のタンパク質の脱離/イオン化に関与するレーザー強度は、高質量範囲および低質量範囲でそれぞれ200単位および180単位に設定し、検出器の感度は9単位に設定した。
【0214】
ステップ14:質量分析の結果を図11に示しており、これはヒト血清の分画のチャートである。
【0215】
以上に本発明の実施形態を説明してきたが、本発明がそのように限定されるものではない。本発明の範囲および意図から逸脱せずに、開示した本発明の実施形態に対する種々の修正および変形を行えることは、当業者には明らかであろう。
【0216】
たとえば、前述のチューブ/導管は、図12A〜12Fに示されるような一連のバルブで置き換え、および/または強化が可能である。具体的には、図12Aに示されるように、標準的な96ウェルプレート中の各チャンバーは、バルブが中に存在する導管によって、同じ横列および縦列でそのチャンバーに隣接する3つまたは4つのチャンバーのそれぞれに接続することができる。図12Bに示される第1の分離プロトコール(たとえばpI分離)中、特定の横列に沿った各チャンバーのそれぞれを接続するバルブを開放することができ、他のすべてのバルブは閉じられる。その結果、横列中のバルブが開放された導管を介して、第1の分離プロトコールを進行させることができる。続いて、図12Cに示されるように、横列に沿った各バルブを閉じた後、この横列と交差する1つ以上の縦列中の各バルブを開くことができる。次に、図12Dに示されるように、縦列中のバルブが開放された導管を介して、第2の分離プロトコール(たとえば疎水性分離)を進行させることができる。さらに、図12D中の第2の分離プロトコールが1つの縦列のみを介して進行した場合は、図12Eに示されるように、その縦列に沿った各バルブを閉じた後、その縦列と交差する1つ以上の他の横列中の各バルブを開放することができる。次に、図12Fに示されるように、それらの横列中のバルブが開放された導管を介して、第3の分離プロトコール(たとえば質量分析)を進行させることができる。
【0217】
したがって、これらの別の流体工学装置および関連する分離方法は、完全に本発明の範囲内にある。したがって、本明細書に記載される流体装置および方法は、単なる説明であり、特許請求の範囲に示される本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】8×12マトリックスで配列された96のチャンバーを含み、本発明の第1の実施形態において使用されるマイクロタイタープレートの斜視図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態による上部導管プレートの断面図である。
【図2B】線IIB−IIBに沿った図1のマイクロタイタープレートの断面図である。
【図2C】本発明の第1の実施形態による下部導管プレートの断面図である。
【図3】それぞれ図2A〜2Cの上部プレート、マイクロタイタープレート、および下部プレートの組立断面図である。
【図4】収集プレートに位置合わせされた図1および3のマイクロタイタープレートの断面図である。
【図5】8×12マトリックスで配列された96のチャンバーを含み、本発明の第2の実施形態において使用されるマイクロタイタープレートの斜視図である。
【図6】図5のマイクロタイタープレートの断面図であり、あるチャンバーの出口から他のチャンバーの入口まで延在する複数の導管を示している。
【図7】収集プレートに位置合わせされた図6のマイクロタイタープレートの断面図であり、チャンバーの出口から導管が取り外された様子を示している。
【図8A】第3の実施形態の断面図であり、図1〜4の実施形態の上部プレートが2つの別々の部品に分割され、それによってこの実施形態図5〜7に示される実施形態のように機能させることができる。
【図8B】図8Aに示されるマイクロタイタープレートの別の実施形態である。
【図9A】本発明の第4の実施形態による上部カバープレートの上面図である。
【図9B】本発明の第4の実施形態による上部導管プレートの上面図である。
【図9C】本発明の第4の実施形態による上部ガスケットプレートの上面図である。
【図9D】チャンバーの2つの横列を含み、本発明の第4の実施形態に使用可能なマイクロタイタープレートの上面図である。
【図9E】本発明の第4の実施形態による底部ガスケットプレートの上面図である。
【図9F】本発明の第4の実施形態による底部導管プレートの上面図である。
【図9G】本発明の第4の実施形態による底部カバープレートの上面図である。
【図9H】矢印9Hで示される線に沿った図9A−9Gのプレートの側断面図である。
【図9I】矢印9Iで示される線に沿った図9A−9Gのプレートの側断面図である。
【図10】隣り合って配列された複数のサンプル経路の上面図である。
【図11】クロマトグラフィー樹脂の一系列を介したヒト血清の分画のチャートである。
【図12A】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12B】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12C】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12D】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12E】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12F】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【技術分野】
【0001】
背景
本出願は、2005年5月25日に出願された米国仮特許出願第60/684,177号明細書(「流体工学装置」(Fluidics Device)、ボスケッティ(Boschetti)ら)および2005年7月28日に出願された米国仮特許出願第60/702,989号明細書(「固相バッファーを使用した等電点に基づくタンパク質の分離」(Separation Of Proteins Based On Isoelectric Point Using Solid−Phase Buffers)、ボスケッティ(Boschetti)ら)の優先日の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
特定の生物学的サンプル中の化学種を簡単に単離するための現在の材料および方法は、そのような混合物のすべての成分を確実に単離するためには不十分である。通常、主要な分子種は、主要な分子種の約千分の一未満の濃度で存在する分子種を隠してしまう。血液などの生物学的サンプルの場合、最も主要な2つの分子種がアルブミンおよび免疫グロブリンである。疾病マーカーと関連性を有する可能性や、創薬と関連性を有する可能性がある種々の酵素、抗体、タンパク質、または二次代謝物を同定しようとする試みは、アルブミンおよび免疫グロブリンが全体的に大量に存在するために複雑化される。その結果、2つの最も一般的に使用されている分析技術(すなわち、2次元電気泳動(2DE)および質量分析)の従来の分解能、感度、および処理能力は限定的である。たとえば、サンプル中にこのように大量のタンパク質が存在すると、他の化学種の信号の重なり(2DEの場合)または信号の抑制(質量分析の場合)が起こるために大きな信号が発生し、このため、分析が複雑になり、サンプル中に存在する分子種の一覧に関する結論が不十分となる。
【0003】
特定の分子を単離するために、さまざまな分離プロトコールが開発されている。たとえば、ゲル電気泳動においては、タンパク質が、負に帯電した洗浄剤(たとえばSDS)で均一にコーティングされ、互いに反対の電荷の電極の間の緩衝化したゲル(たとえば、ポリアクリルアミドゲル)の一端(始点)の中央に配置される。これらの電極が帯電すると、各タンパク質分子は、緩衝化されたポリアクリルアミドゲルのpHにおけるそれらの実効電荷により、反対側に帯電した電極である一方の電極に向かって移動する。ゲル中でタンパク質分子が電極に向かって移動する速度または移動度は、分子の大きさに大きく依存し、すなわち、分子が小さいほどゲルマトリックス中を速く移動する。移動度に差が生じる結果、複数の種類のタンパク質分子を分離し、それらの大きさに基づいて単離することができる。
【0004】
ゲル電気泳動の変形の1つは等電点電気泳動であり、これはタンパク質の実効電荷が環境のpHに依存することを利用している。最も一般的には、酸性pHにおいて、タンパク質は全体的に正に帯電し、一方アルカリ性pHにおいては、これらは負に帯電する。タンパク質が実効電荷を有さなくなるpHをその等電点(「pI」)と呼ぶ。等電点電気泳動は、ある電界下でタンパク質があるpH勾配中を移動する電気泳動技術の1つである。あらゆるタンパク質は、それらの等電点と同じpHに出会うまで、カソードまたはアノードに向かって移動する。この等電点において、タンパク質は電荷を失い、移動を停止する。
【0005】
等電点が異なるタンパク質は、異なる位置で停止し、それによって分離され後に同定される。したがって、同様の速度で移動しうる同様の大きさの分子は、異なるpI値を有するため、異なるpH点で停止した後で分離することができる。さらに、非常に複雑な混合物からのタンパク質種の分離を向上させるために、特定の緩衝化されたゲル中の大きさによる移動と、等電点による移動とを交差させる場合があり、この場合に使用される技術は二次元電気泳動と呼ばれる。残念ながら、これらの技術による電気泳動ゲル網目構造内のタンパク質の移動は、非常に遅いプロセスであり、一般に分取目的では受け入れられていない。
【0006】
それに応じて、分離速度を増加させながら、その実施による精度は維持されるように試みられた種々のさらなるプロトコールが開発されている。たとえばモノフィラメントスクリーン、膜、ゲル、フィルター、フリットディスクなどの隔壁(一括して「膜」)によって互いに分離された2つ以上の副区画を含む多くの種類の装置が存在する。一般に、これらの装置は、1つ以上の膜によって互いに分離された複数の実質的に平行なフレームまたはスペーサーから組み立てられる。
【0007】
大体積および大量のタンパク質を均一に処理するために、等電膜を有する多区画エレクトロライザーセレクトロライザー(electrolizerselectrolyzer)が導入されている。たとえば、P.G.リゲッティ(Righetti)ら、「イモビリン膜を有する多区画電解槽中のタンパク質分取精製」(Preparative Protein Purification in a Multi− Compartment Electrolyser with Immobiline Membranes),475 J.CHROMATOGRAPHY 293−309頁(1989年);P.G.リゲッティ(Righetti)ら、「モビリン膜を有する多区画電解槽中のヒトモノクローナル抗体アイソフォームの分取精製」(Preparative Purification of Human Monoclonal Antibody Isoforms in a Multi−Compartment Electrolyser with Immobiline Membranes),500 J.CHROMATOGRAPHY 681−696頁(1990年);P.G.リゲッティ(Righetti)ら、「固定pH勾配を有する場合および有さない場合の分取電気泳動」(Preparative Electrophoresis with and without Immobilized pH Gradients),5 ADVANCES IN ELECTROPHORESIS 159−200(1992)を参照されたい。等電点電気泳動に基づくと、この精製の概念は再利用条件下で発展している。タンパク質マクロイオンは、槽の中に維持され、両性イオン膜が取り付けられた多区画電解槽にわたって電界が連続的に通される。
【0008】
このシステムでは、タンパク質は、「チャネル」とも呼ばれる液脈内に常に維持される。したがって、クロマトグラフィー手順で通常発生するような表面上への吸着によって、タンパク質が失われることがない。むしろ、分離されるタンパク質のpI値を含むpI値を有する2つの膜によって画定されるチャンバー内に、タンパク質が閉じ込められる。したがって、連続滴定法によって、非等電性であるか、異なるpI値を有するかのいずれかであるあらゆる他の不純物は、チャンバーから強制的に追い出される。結局、対象の等電性/等イオン性タンパク質が、チャンバー内の唯一の化学種として最終的には存在するようになる。しかし、タンパク質の等電点および等イオン点は、対イオンが存在するとある程度変化する場合があることを理解すべきである。
【0009】
米国特許第4,971,670号明細書にはこの方法が記載されている。等電膜は、米国特許第4,243,507号明細書においても扱われている。米国特許第5,834,272号明細書には、溶液中、したがって均一触媒反応条件下に酵素を維持する酵素の固定化が記載されている。米国特許第4,362,612号明細書には、隣接する区画は、電気泳動的に異なるpH値に調整されるように機能的に設計されており、それによって等電点により溶解したタンパク質が分離される。類似の複数の副区画の装置が、米国特許第4,971,670号明細書、第5,173,164号明細書、第4,963,236号明細書、および第5,087,338号明細書に記載されている。これらの特許のそれぞれには、膜によって互いに分離され、副区画の実質的に平行な配列を提供する一連の平行なスペーサーで構成される装置が開示されている。
【0010】
同様に、アマシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)は、直列に配列された複数のpI選択性膜を使用したアイソプライム(IsoPrime)フィルターを販売している。この装置では、pI選択性が増加するまたは減少するように複数の膜が配列されている。溶液がこれらの膜を通過すると、2つの連続した膜の間のpI値を有する分子が、これらの膜の間に捕捉される。しかし、この方法は、完了するまでに数時間程度を要する。インビトロジェン・インコーポレイテッド(Invitrogen,Inc.)は、アイソプライム(IsoPrime)装置に実質的に類似しているが、膜を個別に交換可能である装置のズームIEFフラクショネーター(ZOOM IEF Fractionator)を販売している。しかし、アイソプライム(IsoPrime)と同様に、このズームIEFフラクショネーター(ZOOM IEF Fractionator)も完了までに数時間程度を要する。
【0011】
さまざまな別の分離プロトコールとしては:細胞下分画(ロペス(Lopez),M.F.,Electrophoresis,2000年,21:1082−1093頁;ホーフシュトラッサー(Hochstrasser),D.F.ら,Electrophoresis,2000年,21:1104−1115頁;ドレガー(Dreger),M.,Mass Spectrometry Reviews,2003年,22:27−56頁;パットン(Patton),W.F.,J.Chromatography B,1999年,722:203−223頁;マクドナルド(McDonald) T.G.ら,Basic Res.Cardiol,2003年,98:219−227頁;パットン(Patton),W.F.ら,Electrophoresis,2001年,22:950−959頁;ガーナー(Gerner) C.ら、Mol.and Cellular Proteomics,2002年,7:528−537頁)、分子サイジング(イサク(Issaq),J.H.ら 2003年,ホーフシュトラッサー(Hochstrasser)ら 2000年)、イオン交換(ロペス(Lopez),M.F.,2000年,17)、カルシウム結合タンパク質のための固定化金属相互作用クロマトグラフィー(「IMAC」)(ロペス(Lopez),M.F.ら,Electrophoresis,2000年,21:3427−3440頁)、あるいはリンタンパク質(ハント(Hunt),D.F.ら,Nat.Biotechnol,2002年,20:301−305頁)、疎水性(ロペス(Lopez),2000年)、ヘパリン(ホーフシュトラッサー(Hochstrasser)ら 2000年)、またはレクチン(ホーフシュトラッサー(Hochstrasser)ら 2000年、ロペス(Lopez),2000年;レニエ(Regnier),F.ら,J.Chromatography B,2001年,752:293−306頁)のアフィニティークロマトグラフィー、ならびに液体クロマトグラフィー(イサク(Issaq),J.H.ら 2002年、ホーフシュトラッサー(Hochstrasser)ら 2000年)が挙げられる。
【0012】
無傷のタンパク質分画、またはそれらのトリプシン消化物のために使用される二次元液体クロマトグラフィーでは、一般に、第2の次元に逆相(「RP」)が使用され、第1のクロマトグラフィーステップとしての、イオン交換(イエーツ(Yates),J.R.,Nature Biotech.,1999年、17:676−682頁、アンガー(Unger),K.K.ら,Anal.Chem.,2002年,74:809−820頁)、クロマトフォーカシング(ウォール(Wall),D.ら,Anal.Chem.,2000年,72:1099−1111頁)、サイズ排除(オピテック(Opiteck),G.,Anal.Biochem.,1998年,258:349−361頁)、アフィニティー(レニエ(Regnier)2001年)、または別のRP(チッチ(Chicz) R.ら、Rapid Commun.in Mass Spectrometry,2003年,17:909−916頁)と併用される。
【0013】
残念ながら、管理(pH調整、脱塩、第2の次元における再注入)および分析を行うべき分画が多数存在し、特に2DEなどの時間のかかる分析メソッズメソッド(methodsmethod)の場合には、最終的なボトルネックとなるために、プロテオーム分画における多次元クロマトグラフィーは、一般に二次元を超えることがない。さらに、関連する従来技術の欠点の1つは、特定の分離プロトコールへの種々の装置の適合が相対的にできないことである。たとえば、技術者が1つのサンプル中の20種類の異なるタンパク質を同定しようと望む場合、たとえば、8種類の分離媒体しか含まないシステムでは不十分な場合がある。言い換えると、0.1のpH単位で徐々に増加するpI値を有する20種類の異なるタンパク質を1つのサンプルが勧誘する場合、8種類の分離媒体しか有さない装置では、タンパク質を十分に分離することができない。結果として、各分離媒体によって捕捉されたタンパク質(たとえばpI値に基づく)は、同じ種類の分離(たとえばpI値に基づく)を使用する第2の分離プロトコールによって分離する必要が生じうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、前述したような従来の実施において遭遇する少なくとも1つの不備に対処する装置および方法および装置が必要とされている。より詳細には、タンパク質などの分子を迅速かつ正確に分離する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
本発明の実施形態は、特に、プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置を扱う。この装置は、プレートの一方の側の上の第1の面と、プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有する。各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部を有し、他方の面に出口開口部を有する。複数のチャンバーは、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管は、1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続している。これらのチャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口を、すべての中間チャンバーのそれぞれを介して、最終チャンバーの出口まで接続する流体経路が画定される。
【0016】
この装置のさらに別の一実施形態においては、少なくとも一部の導管は、プレートを貫通して、第2の面の出口開口部を第1の面の入口開口部に接続することができる。さらに、さらに別の一実施形態においては、すべての導管が、第2の面の出口開口部を第1の面の入口開口部に接続することができる。
【0017】
この装置のさらに別の一実施形態においては、系列中の複数のチャンバーを、直線系列(たとえば、横列または縦列)で配列することができる。各チャンバーは、両面で開放するチャネルに隣接することができる。少なくとも1つの出口および入口の間の流体流路は、チャネルを通過することができる。
【0018】
この装置のさらに別の一実施形態においては、少なくとも一部の導管は、第1の面の出口開口部を第1の面の入口開口部に接続することができるか、または第2の面の出口開口部を第2の面の入口開口部に接続することができる。さらに、さらに別の一実施形態においては、少なくとも1つの導管は、第2の面の出口開口部を第2の面の入口開口部に接続することができる。少なくとも1つの導管は、第1の面の出口開口部を第1の面の入口開口部に接続することができる。
【0019】
この装置のさらに別の一実施形態においては、導管が装置から取り外し可能である。
【0020】
この装置のさらに別の一実施形態においては、系列中の少なくとも1つのチャンバーは分離媒体を含有することができる。さらに、さらに別の一実施形態においては、系列中のすべてのチャンバーが分離媒体を含有することができる。さらに、系列中の複数のチャンバーが異なる分離媒体を含有することができる。
【0021】
この装置のさらに別の一実施形態においては、分離媒体の系列は、流体流路の方向に沿って:(a)高選択性媒体、中間の選択性の媒体、および低選択性媒体;あるいは(b)低選択性媒体、中間の選択性の媒体、および高選択性媒体、を含むことができる。
【0022】
この装置のさらに別の一実施形態においては、装置中の複数のチャンバーは8の倍数であってよい。
【0023】
この装置のさらに別の一実施形態においては、装置中の複数のチャンバーは12の倍数であってよい。
【0024】
この装置のさらに別の一実施形態においては、チャンバーを、少なくとも1つのライナー系列で配列することができる。
【0025】
この装置のさらに別の一実施形態においては、チャンバーを、複数の横列および縦列で配列することができる。さらに、さらに別の一実施形態においては、これらのチャンバーを8×12の配列で配列することができる。
【0026】
この装置のさらに別の一実施形態においては、この装置は、流体流路を画定する複数の系列のチャンバーおよび導管をさらに含むことができる。
【0027】
この装置のさらに別の一実施形態においては、この装置は、装置のチャンバーに対応して、横列および縦列で配列された複数のウェルを含む収集プレートをさらに含むことができる。収集プレートの各ウェルは入口を有する。導管を外すと、収集プレートのウェルの入口は、装置のチャンバーと位置合わせされるように構成することができる。
【0028】
この装置のさらに別の一実施形態においては、この装置は、流体流路に沿って流体サンプルを押圧する、または吸引するように構成されたポンプを含むことができる。
【0029】
この装置のさらに別の一実施形態においては、この装置は、チャンバーに対応したウェルを含むドリップスルー(drip−through)マイクロタイタープレートをさらに含むことができる。
【0030】
本発明の別の一実施形態は、装置であって、特に:(a)特に、チャンバーの少なくとも1つの横列を含むプレートであって、各チャンバーが、特に、プレートの第1の面の上の入口と、プレートの反対側の第2の面の上の出口とを含む、プレートと;(b)プレートの第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:(I)1組の奇数番目のウェルの入口に位置合わせされた複数の開口部と、(II)1組の偶数番目のウェルに位置合わせされた複数の開放端導管とを含み、これらの導管が、偶数番目のウェルの入口から出口までを通る、第1の部材と;(c)第1の部材に密封係合する取り外し可能な第2の部材であって:(I)第1のチャンバーの入口に位置合わせされることによって、第1のチャンバーへの入口を形成する開口部と;(II)複数の導管とを含み、各導管が、第1の部材の開口部を第1の部材の導管に接続する、第2の部材と;(d)プレートの第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、チャンバーの出口に位置合わせされた複数の開口部を含む、ガスケットと;(e)ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、ガスケット内の開口部に位置合わせされた複数の溝を含み、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、奇数番目のウェルの出口を偶数番目のウェルの出口に接続する、第3の部材とを含む、装置を扱う。チャンバーと導管との組み合わせによって、奇数番目のウェルを入口から出口まで貫通し、さらに偶数番目のウェルを出口から入口まで貫通する流体流路が画定される。
【0031】
この装置のさらに別の一実施形態においては、奇数番目のチャンバーのそれぞれが分離媒体を含有することができる。
【0032】
本発明の別の一実施形態は、装置であって、特に:(a)特に、チャンバーの少なくとも1つの横列を含むプレートであって、各チャンバーが、特に、プレートの第1の面の上の第1の開口部と、プレートの反対側の第2の面の上の第2の開口部とを含み、これらの開口部が、各チャンバーの入口および出口を画定する、プレートと;(b)プレートの第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:(I)第1の開口部に位置合わせされ、横列中の第1のチャンバーの入口として機能するように構成された入口ポートと、(II)横列中の他の複数のチャンバーの第1の開口部の組を連続的に接続する複数の導管とを含む、第1の部材と;(c)プレートの第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、チャンバーの第2の開口部に位置合わせされた複数の開口部を含むガスケットと;(d)ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、横列中の他の複数のチャンバーの第2の開口部の組を連続的に接続する複数の導管を含む、第3の部材とを含む、装置を扱う。ウェルと導管との組み合わせによって、チャンバーの入口から横列中の最終チャンバーの出口まで通る流体流路が画定される。
【0033】
この装置のさらに別の一実施形態においては、奇数番目のウェルのそれぞれが分離媒体を含有することができる。
【0034】
本発明の別の一実施形態は、装置であって、特に:(a)プレートであって、特に、ウェルの第1および第2の横列の少なくとも1組を含み、各ウェルが、特に、プレートの第1の面の上の入口と、プレートの反対側の第2の面の上の出口とを含む、プレートと;(b)プレートの第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって、特に:(I)第1の横列中のウェルの入口に位置合わせされ、それによってチャンバーが画定される複数の開口部と、(II)第2の横列中のウェルに位置合わせされた複数の開放端チャネルであって、ウェルの入口から出口まで通る導管を画定する、複数の開放端チャネルとを含む、第1の部材と;(c)第1の部材に密封係合する取り外し可能な第2の部材であって、特に:(I)第1の横列中の第1のウェルの入口に位置合わせされた第1の部材中の開口部に位置合わせされ、それによって第1のチャンバーに入口を形成する開口部と;(II)第1の部材の開口部に位置合わせされた複数の溝であって、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、第1の横列中のウェルのn番目の入口を、第2の横列中のウェルのn番目の入口に接続する、複数の溝とを含む、第2の部材と;(d)プレートの第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、特に、ウェルの出口に位置合わせされた複数の開口部を含む、ガスケットと;(e)ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、特に:(I)ガスケット内の開口部に位置合わせされた複数の溝であって、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、第1の横列中のウェルのn番目の出口を、第2の横列中のウェルのn+1番目の出口に接続する、複数の溝と;(II)最終チャンバーの出口に位置合わせされた開口部とを含む、第3の部材とを含む、装置を扱う。ウェルと導管との組み合わせによって、第1の横列中のウェルの入口から出口まで通る流体流路が画定される。
【0035】
この装置のさらに別の一実施形態においては、第2の取り外し可能な部材は、特に、第1の副部品と第2の副部品とを含むことができ:(1)第1の副部品は、特に、第1の部材中の開口部に位置合わせされた開口部を含み、(2)第2の副部品は、特に、第1の部材中の開口部に位置合わせされた開口部と、第1の副部品を第2の副部品に押し付けた場合に溝を形成する複数の開口部とを含む。さらに、第3の取り外し可能な部材は、特に、第3の副部品と第4の副部品とを含むことができ:(1)第3の副部品は、特に、最終チャンバーの出口に位置合わせされた開口部を含み、(2)第4の副部品は、特に、最終チャンバーの出口に位置合わせされた開口部と、第3の副部品を第4の副部品に押し付けた場合に溝を形成する複数の開口部とを含む。
【0036】
この装置のさらに別の一実施形態においては、奇数番目のウェルは分離媒体を含有することができる。
【0037】
本発明の別の一実施形態は、可能なステップの中でも特に:(a)特に、プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを提供するステップであって、(i)この装置は、プレートの一方の側の上の第1の面と、プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、(ii)各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部、および他方の面に出口開口部を有し;(iii)複数のチャンバーは、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管は1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;(iv)チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口から、すべての中間チャンバーのそれぞれを通って、最終チャンバーの出口までを接続する流体流路が画定され;(v)系列中の各チャンバーは異なる分離媒体を含有する、ステップと;(b)特に複数の検体を含むサンプルを、流体流路に沿って、第1のチャンバーの入口から、最終チャンバーの出口に通すことによって、分離媒体が、その媒体に対して親和性を有する検体を捕捉するステップと;(c)出口と入口を接続する導管を装置から取り外すステップと;(d)捕捉された検体を独立にチャンバーから溶出させるステップと;(e)溶出した検体を収集するステップとを含む、方法を扱う。
【0038】
この方法のさらに別の一実施形態においては、この方法は、少なくとも1つのチャンバーから溶出した検体を検出するステップをさらに含むことができる。さらに、この方法のさらに別の一実施形態においては、検体を検出するステップは、質量分析またはゲル電気泳動によって実施することができる。
【0039】
この方法のさらに別の一実施形態においては、溶出ステップは、少なくとも1つのチャンバーから複数の分画を溶出させるステップを含むことができる。
【0040】
この方法のさらに別の一実施形態においては、サンプルは、血液、尿、脳脊髄液、およびそれらの派生物からなる群より選択することができる。
【0041】
この方法のさらに別の一実施形態においては、この方法は、(b)(1)分離媒体によって捕捉された少なくとも1つの検体を2つ以上のミニサンプルに分離するステップをさらに含むことができる。
【0042】
この方法のさらに別の一実施形態においては、この方法は、(b)(1)質量分析、等電点電気泳動、疎水性、および/または親水性の1つ以上のプロトコールを使用することで、分離媒体によって捕捉された少なくとも1つの検体を、2つ以上のミニサンプルに分離するステップをさらに含むことができる。
【0043】
本発明の別の一実施形態はキットを扱う。このキットは、特に:(a)特に、プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置であって、(i)この装置は、プレートの一方の側の上の第1の面と、プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、(ii)各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部、および他方の面に出口開口部を有し;(iii)複数のチャンバーは、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管は1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;(iv)チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口から、すべての中間チャンバーのそれぞれを通って、最終チャンバーの出口までを接続する流体流路が画定される、装置と;(b)分離媒体を含有する少なくとも1つの容器とを含む。
【0044】
本発明の別の一実施形態は、検体の多次元分離方法であって:(a)サンプル中の検体を複数の第1のアリコートに分離するステップであって:(i)連続的に配列され最初から最終まで流体連通している複数の異なる第1の収着剤の第1の系列を提供することと;(ii)サンプルを、第1の系列の最初から最終まで流すことによって、サンプルを異なる収着剤に連続的に接触させ、第1の収着剤は、第1の物理的化学的性質に基づいて検体を捕捉し、第1の収着剤の順序は、第1の物理的化学的性質に関する選択性が低下する順序で最初から最終まで配列され、それによって収着剤がサンプル中の検体に結合し、それによってそれぞれの収着剤が、異なる組の検体を捕捉することと;(iii)検体を複数の収着剤から複数の第1のアリコートに溶出させることとによるステップと;(b)複数の第1のアリコートのそれぞれの中の検体を複数の第2のアリコートに分離するステップであって、独立に:(i)連続的に配列され最初から最終まで流体連通している複数の異なる第2の収着剤の第2の系列を提供することと;(ii)第1のアリコートを、第2の系列の最初から最終まで流すことによって、サンプルを異なる収着剤に連続的に接触させ、第2の収着剤は、第2の異なる物理的化学的性質に基づいて検体を捕捉し、第2の収着剤の順序は、第2の物理的化学的性質に関する選択性が低下する順序で最初から最終まで配列され、それによって収着剤がサンプル中の検体に結合し、それによってそれぞれの収着剤が、異なる組の検体を捕捉することと;(iii)検体をそれぞれの収着剤から複数の第2のアリコートに溶出させることとによるステップと;(c)複数の第2のアリコート中の検体を質量分析によって分離するステップとを含む、方法を扱う。
【0045】
この方法のさらに別の一実施形態においては、収着剤の第1の系列は、等電点に基づいて検体に結合することができ、最高等電点から最低等電点まで、または最低等電点から最高等電点までの順序で検体を捕捉することができる。
【0046】
この方法のさらに別の一実施形態においては、第1の収着剤のそれぞれは、固体バッファーおよびイオン交換材料を含むことができる。さらに、収着剤の第2の系列は、疎水性インデックスに基づいて検体に結合することができ、最高の疎水性から最低の疎水性までの順序で検体を捕捉することができる。さらに、第2の収着剤のそれぞれは、炭化水素鎖およびアミンリガンドを含むことができる。さらに、この系列中の各収着剤の炭化水素鎖は、前の収着剤の炭化水素鎖よりも多くの炭素を含むことができる。
【0047】
この方法のさらに別の一実施形態においては、収着剤の第1の系列は、疎水性インデックスに基づいて検体に結合することができ、最高の疎水性から最低の疎水性までの順序で検体を捕捉することができる。第1の収着剤のそれぞれは、炭化水素鎖およびアミンリガンドを含むことができる。この系列中の各収着剤の炭化水素鎖は、前の収着剤の炭化水素鎖よりも多くの炭素を含むことができる。収着剤の第2の系列は、等電点に基づいて検体に結合することができ、最高等電点から最低等電点まで、または最低等電点から最高等電点までの順序にすることができる。第2の収着剤のそれぞれは、固体バッファーおよびイオン交換材料を含むことができる。
【0048】
この方法のさらに別の一実施形態においては、質量分析がレーザー脱離/イオン化質量分析であってよい。
【0049】
この方法のさらに別の一実施形態においては、質量分析がエレクトロスプレー質量分析であってよい。
【0050】
本発明の別の一実施形態は装置を扱う。この装置は、特に、プレート内に配列された交差する複数の横列および縦列を含む。各横列は、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは横列中の他のチャンバーに流体接続されるように構成されている。各縦列は、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは横列内の他のチャンバーに流体接続されるように構成されている。1つの横列中の少なくとも一部のチャンバーは、特定の範囲内のpI値を有する分子を捕捉するように構成されたクロマトグラフィー分離媒体を含み、チャンバーのクロマトグラフィー分離媒体は、その横列のチャンバー内で、最低から最高または最高から最低となるよう連続して配列される。少なくとも1つの縦列中の少なくとも一部のチャンバーは、特定の範囲内の疎水性値を有する分子を捕捉するように構成された疎水性分離媒体を含み、チャンバーの疎水性分離媒体は、縦列中のチャンバー内で最低から最高または最高から最低となるように連続して配列される。
【0051】
本発明の別の一実施形態は、検体の多次元分離方法を扱う。この方法は、可能なステップの中でも特に:(a)プレート内に配列された交差する複数の横列および縦列を含む装置を提供するステップであって、各横列が、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは横列中の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、各縦列が、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは横列内の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、1つの横列中の少なくとも一部のチャンバーは、特定の範囲内のpI値を有する分子を捕捉するように構成されたクロマトグラフィー分離媒体を含み、チャンバーのクロマトグラフィー分離媒体は、その横列のチャンバー内で、最低から最高または最高から最低となるよう連続して配列されており、少なくとも1つの縦列中の少なくとも一部のチャンバーは、特定の範囲内の疎水性値を有する分子を捕捉するように構成された疎水性分離媒体を含み、チャンバーの疎水性分離媒体は、縦列中のチャンバー内で最低から最高または最高から最低となるように連続して配列されているステップと;(b)クロマトグラフィー分離媒体を含有するチャンバーを含む横列中の第1のチャンバーにサンプルを供給するステップと;(c)横列中のクロマトグラフィー分離媒体の系列にサンプルを通過させることによって、サンプルを複数のサブサンプルに分離し、それぞれを横列の各チャンバーに供給するステップと;(d)縦列中の疎水性分離媒体の系列にサンプルを通過させることによって、横列の少なくとも1つのチャンバー中のサブサンプルを複数のミニサンプルに分離し、それぞれ交差する縦列の各チャンバーに供給するステップとを含む。
【0052】
本発明のこれらおよびその他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、図面において示される付随する代表的な実施形態によってより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
詳細な説明
本発明の現在好ましい実施形態を図面で説明する。複数の図面で同じ参照番号を使用して同じまたは類似の部分を示している。
【0054】
本発明は、プレート内に配列されたチャンバーの系列を含み、取り外し可能な導管によって接続された入口および出口を有する流体工学装置を提供する。本発明のプレートは、好ましくは、ドリッププレートなどのマイクロタイタープレート、またはフィルタープレートである。しかし、別の実施形態においては、プレートは、孔などのチャネルを含む部品を含むことができ、この孔はこの部品のいずれかの側で開いており、導管が孔の開口部に取り付けられるとチャンバーを画定する。好ましくは、複数のチャンバーが実質的に1つの面内に配列される。
【0055】
チャンバーと導管との組み合わせによって流体流路が画定され、これによってチャンバー間で流体を圧送することができる。好ましくは、系列中の各チャンバーは、複合サンプル中の異なるサブセットの検体を捕捉することができる異なる分散媒体を含む。この装置に独特の有用性は、導管が取り外し可能であるために、任意のチャンバー中の分離媒体によって捕捉された検体が、たとえば、チャンバーから検体を溶出させることによって単離できることにある。単離した後、利用可能なあらゆる方法によって検体の検出または分析を行うことができる。
【0056】
本発明の現在好ましい実施形態を図面で説明する。複数の図面で同じまたは類似の参照番号を使用して同じまたは類似の部分を示している。
【0057】
以下に詳細に説明する本発明の各実施形態は、たとえば、典型的な96チャンバー(8つの横列×12の縦列)フォーマットで配列された標準的なマイクロタイター濾過プレートを使用することができる。他のフォーマットを使用することもでき、たとえば、あらゆる8の倍数のチャンバー、あらゆる12の倍数のチャンバー、あらゆる96の倍数のチャンバーを有するプレート(たとえば、386チャンバープレート)などを使用することもできる。濾過プレートの各チャンバーは、特定の種類の分離媒体を含有することができ、たとえば、クロマトグラフィー樹脂(たとえば、充填床または流動床)を含有することができる。
【0058】
第1の実施形態(図1〜4に関して以下に説明する)において、流体は強制的に、系列(たとえば、縦列または横列)内の1つのチャンバーを下向きに通され、系列の次のチャンバーを上向きに通され、系列の次のチャンバーを下向きに通され、系列の次のチャンバーを上向きに通される、などを交互に繰り返す。より具体的には、系列(たとえば、縦列または横列)内の第1のチャンバーの底部開口部は、その系列中の第2のチャンバーの底部開口部に接続することができる。この第2のチャンバーの上部開口部は、その横列(または縦列)中の第3のチャンバーの上部開口部に接続することができる。底部と底部および上部と上部の接続の連続によって、第1のチャンバーを上部から底部へと移動し、次に第2のチャンバーを底部から上部へと移動し、次に第3のチャンバーを上部から底部へと移動するなどの流路が形成される。
【0059】
第2の実施形態(図5〜7に関して後に説明する)においては、流体は強制的に、各チャンバーを下向きに通される。より具体的には、縦列(または横列)中の第1のチャンバーの底部開口部は、その縦列(または横列)中の第2のチャンバーの上部開口部に接続することができる。その第2のチャンバーの底部開口部は、その横列(または縦列)中の第3のチャンバーの上部開口部に接続することができる。底部と上部の接続が連続することによって、第1のチャンバーを上部から底部へと移動し、第2のチャンバーを上部から底部へと移動し、第3のチャンバーを上部から底部へと移動するなどの流路が形成される。
【0060】
別の実施形態においては、これらの配列を組み合わせることができ、たとえば、底部と底部/上部と上部の接続および底部と上部の接続の両方を含むことができる。
【0061】
上記実施形態のいずれにおいても、一連の並行分離プロトコールは、縦列(または横列)のそれぞれに沿って同時に行うことができる。言い換えると、異なるサンプルを、特定の縦列(または横列)中の第1のチャンバーに供給することができる。次に各サンプルをそのそれぞれの横列中の各チャンバー(およびその中の種々の分離)に通すことができる。特定のサンプルが通過するそれぞれの分離媒体は、サンプルの一部を捕捉する役割を果たし、そのため、特定の横列中の最終チャンバーに到達したときには、サンプルが通過した各チャンバー中にサンプルのさまざまな部分が保持される。さらに、サンプルの分離が完了すると、サンプルの一部(または「サブサンプル」)のそれぞれを、収集プレートに移すことができ、希望するならさらなる分析(たとえば、質量分析、ゲル電気泳動など)または分離を行うことができる。
【0062】
より具体的には、各サンプルは、特定の縦列(または横列)中の第1のチャンバーを介して装置に導入することができる。次に、サンプルは、たとえば、蠕動ポンプ(種々の好適な流速で)を介して装置中を通過するよう圧送することができ、その縦列(または横列)中の各チャンバー中のすべての分離媒体をサンプルが通過するまで圧送を続けることができる。サンプルがすべての分離媒体を通過した後、すべての接続チューブおよび/または導管を取り外すことができる。その結果、この装置は、バッチまたは連続流方式で操作される通常のサンプルが充填されたフィルタープレートとして機能させることができる。しかし、希望するなら、各分離媒体は、あらゆる他の分離媒体とは独立に処理することもできる。さらに、たとえば、真空または遠心分離によってマイクロタイタープレートの各チャンバーからサンプルを取り出すことができる。
【0063】
これより第1の実施形態を図1〜4に関して説明する。図1に示されるように、マイクロタイタープレート100は、横列および縦列のマトリックスで配列された複数のチャンバー102を含む。各チャンバー102は、マイクロタイタープレート100の上面および下面110、112によって画定される面内に実質的に存在する。図示されているように、マイクロタイタープレート100は、たとえば、8×12マトリックス中に配列された96のチャンバーを含むことができる。しかし、チャンバー102の数も横列/縦列の数も、本発明においては重要ではない。むしろ、あらゆる好適な数のチャンバー102を使用することができる。さらに技術者は、含まれるチャンバー数、および個別の分離プロトコールに必要な対応するチャンバー数に基づいてマイクロタイタープレートを選択することができる。
【0064】
図2Bは、マイクロタイタープレート100の断面を示している。図2Bに示されるように、マイクロタイタープレート100の各チャンバー102は、2つの開口部104を有し、その一方は入口106として機能し、他方は出口108として機能する。しかし、特定のチャンバー102の開口部104が入口106または出口108のいずれとして機能するかは、後に詳細に説明するようにチャンバー102を通過する流れの方向に依存する。すなわち、チャンバー内の特定の開口部が入口または出口のいずれとなるかは、開口部が開いている面とは無関係である。
【0065】
マイクロタイタープレート100の上部および下部には、それぞれ第1および第2の導管プレート120、140が配置される。第1の導管プレート120(図2Aに示される)は、入口ポート122および出口ポート126を含む。入口および出口ポート122、126の間には、導管124の系列が存在する。図示されているように、たとえば、第1のプレート120は、マイクロタイタープレート100中のチャンバー102の特定の組(たとえば横列)に対応する3つの導管124A、124B、124Cを有することができる。
【0066】
第1のプレート120と同様に、第2のプレート140も複数の導管144を含む。図示されているように、第2のプレート140は、たとえば、マイクロタイタープレート100中のチャンバー102の特定の組(たとえば横列)に対応する4つの導管144A、144B、144C、144Dを含むことができる。さらに、図示される実施形態の第2のプレート140は入口および/または出口ポートを含まないが、本発明の別の実施形態(たとえば、分離が奇数のチャンバーを含む場合)は、第2のプレート140中に出口(または入口)を含むことができる。
【0067】
この実施形態のある変形は、下部プレート140とマイクロタイタープレート100との間に配置されるように構成されたガスケット160を含むこともできる。ガスケット160は、下部プレート140をマイクロタイタープレート100に封止する機能を果たすことができる。
【0068】
第1および第2のプレート120、140が、それぞれマイクロタイタープレート100の上面および下面110、112に接続(そして場合によりガスケット160によって封止)されると、流体流路(図3中に矢印で示されている)が形成される。この流体流路は、たとえば、ある横列中の第1のチャンバー102Aとその横列中の最終チャンバー102Hとの間に延在する。より具体的には、サンプルは、第1のプレート120中の入口ポート122を通過し、第1のチャンバー102Aの入口106Aを通過することができる。このサンプルのサブサンプルの1つは、たとえば、チャンバー内に提供された分離媒体(図示せず)によって、第1のチャンバー102A内に保持することができる。サンプルの残りは、第1のチャンバー102Aの出口108Aを通過し、第2のプレート140中の第1の導管144Aを通過し、第2のチャンバー102Bの入口106Bを通過する。続いて、別のサブサンプルを、第2のチャンバー102B内に供給された異なる分離媒体(図示せず)によって、第2のチャンバー102B内に保持することができる。同様に、元のサンプルの残り(第1および第2のチャンバー102A、102B内の分散媒体を通過した後)は、第2のチャンバー102Bの出口108Bを通過し、第1のプレート120中の導管124Aを通過し、第3のチャンバー102Cの入口106Cを通過し、そこで別のサブサンプルを保持することができる。
【0069】
この反復するプロセスは、サンプルの残りが、最終チャンバー102H内の分離媒体(図示せず)を通過するまで続く。この時点で、実施形態に依存するが、第1のプレート120の出口ポート126によって、残ったサンプルを最終チャンバー102Hから取り出すことができる。しかし、別の実施形態においては:(a)最終チャンバー102Hの出口108Hを異なる横列(または縦列)中のチャンバー102の入口106に接続する、第1のプレート120中の別の導管124(図示せず)を提供すること;または(b)第1のプレート120中の出口ポート126を異なる横列(または縦列)中のチャンバー102の入口106に接続することのいずれかによって、異なる横列(または縦列)中で分離を続けることができる。
【0070】
サンプルが通過するチャンバー102の数とは無関係に、サンプルの移動を補助するための多数の手段が存在する。たとえば、ポンプ(たとえば蠕動ポンプ)を第1のプレート120の入口ポート122に接続することができ、このポンプがサンプルを押し出すことで、チャンバー102を通過させることができる。あるいは(またはこれに加えて)、ポンプ(たとえば蠕動ポンプ)を第1のプレート120の出口ポート126に接続することができ、このポンプがサンプルを吸引することで、チャンバー102を通過させることができる。
【0071】
この実施形態の他の関連する装置は、複合(または「二次元」)分離プロトコールを考慮している。たとえば、1つのサンプルを特定の横列中で8つのサブサンプル(たとえば、チャンバー102A〜102H)に分離するために、第1および第2のプレート120、140を使用する場合、これらのサブサンプルのそれぞれは、そのそれぞれの縦列に沿って複数(たとえば12)のミニサンプルにさらに分離することができる。
【0072】
このような一実施形態において、第1および第2のプレート120、140は、プレートの特定の縦列中のチャンバーを接続する導管を含む別のプレート(図示せず)と交換することができる。結果として、第1の分離プロトコール(第1および第2のプレート120、140を使用)が特定の横列に沿っており、第1の分離プロトコールに基づく場合、種々の縦列中の残りのチャンバーのそれぞれを使用して、第2の分離プロトコールに基づいたさらなる分離を行うことができる。言い換えると、各サブサンプルは、それらのそれぞれの縦列のチャンバー内の分離媒体を通過させることができる。その結果、たとえば、8×12マトリックスのチャンバーを使用する場合、第1の分離プロトコール後に、8つのサブサンプルを得ることができる。そして、第2の分離プロトコール後には、96の個別のミニサンプルを得ることができる。
【0073】
以上の複合分離に加えて、たとえば、特定の縦列中のチャンバー内の各ミニサンプルは、別のマイクロタイタープレート(図示せず)の類似の大きさの縦列に移すことができ(後に詳述する手段によって)、そこで、それらの横列に沿って第3の分離プロトコールによってさらに分離することができる。あるいは、またはこれに加えて、個別のミニサンプルのそれぞれは、従来のあらゆる他の分析または分離のプロトコール(たとえば、クロマトグラフィー、等電点電気泳動、疎水性、親水性、サイズ排除、質量分析、ゲル電気泳動、イオン交換、種々の他の分離プロトコール(その一部は本発明の実施形態として後述する)など)を使用してさらなる分析および/または分離を行うことができ、それによって元のサンプルの分離にさらに別の次元を付け加えることができる。さらに、たとえば、追加のクロマトグラフィー分離プロトコールが使用される場合は、あらゆる従来のクロマトグラフィー技術(たとえば、イオン交換、疎水性固相、アフィニティー収着剤、金属キレート化樹脂、ゲル濾過材料、ハイドロキシアパタイト結晶など)を使用することができる。
【0074】
たとえば、横列、縦列、またはマトリックスのミニサンプルのそれぞれを、より長期間用の保管装置に移動させるために、図4に示される種類の収集プレート200を使用することができる。この実施形態において、第2のプレート140(ガスケット160を有する場合も有さない場合もある)は、マイクロタイタープレート100から取り外すことができ、マイクロタイタープレート100の下側にある開口部104を収集プレート200中のウェル202の位置に合わせすることができる。サブサンプル(または複合分離後のミニサンプル)は、たとえば重力、真空などのあらゆる従来手段によって、収集プレート200中のウェル202内に入れることができる。
【0075】
同様に、関連する他の実施形態においては、上部120を取り外すことで、チャンバー上部開口部104を介して、チャンバー102内に収容されたサブサンプル/ミニサンプル(たとえば検体)に1種類以上の溶媒を加えることができる。さらに、溶媒を使用することで、チャンバー102チャンバーの下部開口部104を介したサブサンプル/ミニサンプルの排出を促進することができる(すなわち、サブサンプル/ミニサンプルをチャンバー102から、たとえば収集プレート200内に滴下することができる)。
【0076】
これより本発明の別の一実施形態を、図5〜7に関して論じる。この実施形態において、分離可能な導管502が、たとえば、標準的な8×12マイクロタイタープレート500中の種々のチャンバー510の出口と入口を接続している。図5に示されるように、この実施形態の利点の1つは、技術者が希望する数のチャンバー510に容易に接続できることである。より具体的には、図示されるように、技術者は、入口ポート512を第1のチャンバー510Aの入口506に接続することができる。続いて、次に導管502を、たとえば、系列中の全部で16のチャンバー510−A〜510−Pに接続することができる。最後に、その系列中の最終チャンバー510−Pの出口508を、出口ポート514に接続することができる。分離が行われる直線系列中のチャンバー510−A〜510−Pに隣接して、アクセスチャネル520−A〜520−Pが設けられ、これらのアクセスチャネルは、ある実施形態においては、分離プロトコールの実施に使用されない別のチャンバーであってもよい。
【0077】
図6に示されるように、アクセスチャネル520−A〜520−Pによって、導管502がマイクロタイタープレート500を貫通することができ、それによって、プレート500の一方の側(下側)の上の第1のチャンバー(たとえば510A)の出口508を、プレート500の第2の側(上側)の上の第2のチャンバー(たとえば510B)の入口506に接続することができる。これは可撓性の構造であるため、技術者は希望する数のチャンバー510を容易に接続することができる。さらに、チャンバー510が接続されると、サンプルはほぼ矩形波型で上部から底部までチャンバーを通過することができる。
【0078】
サンプルが通過するチャンバー510の数とは無関係に、サンプルの移動を補助するための多数の手段が存在する。たとえば、ポンプ(たとえば蠕動ポンプ)を第1のチャンバー510Aの入口ポート512に接続することができ、このポンプがサンプルを押し出すことで、チャンバー510−A〜510−Pを通過させることができる。あるいは(またはこれに加えて)、ポンプ(たとえば蠕動ポンプ)を最終チャンバー510−Pの出口ポート514に接続することができ、このポンプがサンプルを吸引することで、チャンバー510−A〜510−Pを通過させることができる。
【0079】
サブサンプル(または複合分離のミニサンプル)のそれぞれは、別のマイクロタイタープレート中のチャンバーに移すことができ、そこで、より長期間保管したり、さらなる分析(たとえば、質量分析、ゲル電気泳動などを使用して)を行ったり、および/または分離(たとえば疎水性を使用して)を行ったりすることができる。サブサンプル(またはミニサンプル)のそれぞれを、より長期間用の保管装置に移動させるために、図7に示される種類の収集プレート200を使用することができる。この実施形態において、導管502を出口508から取り外すことができ、出口508を、収集プレート200中のウェル202の位置に合わせることができる。たとえば重力、真空などのあらゆる従来手段によって、サブサンプル(または複合分離後のミニサンプル)を収集プレート200のウェル202内に入れることができる。
【0080】
同様に、関連する別の実施形態においては、導管502を取り外すことで、チャンバー入口506を介して、チャンバー510内に収容されたサブサンプル/ミニサンプル(たとえば検体)に1種類以上の溶媒を加えることができる。さらに、溶媒を使用することで、チャンバー出口508を介したサブサンプル/ミニサンプルの排出を促進することができる(すなわち、サブサンプル/ミニサンプルをチャンバー510から、たとえば収集プレート200内に滴下することができる)。
【0081】
図1〜4の前述の実施形態と同様に、技術者が、マイクロタイタープレート500を使用して第1の分離プロトコールによって、サンプルを複数のサブサンプルに分離した後、技術者は第2の分離プロトコールを実施することができる。第2の分離プロトコールによって、1つ以上のサブサンプルを複数のミニサンプルにさらに分離することができる。
【0082】
図8Aは、別の実施形態断面図であり、この場合、図1〜4の実施形態の上部プレート120が2つの分離した部品120A、120Bに分割され、それによって、図5〜7に示される実施形態と類似の上部から底部までの機能を有する装置が形成される。より具体的には、下部部品120Bの長いキャピラリー部分128は、チャンバー102全体を通過するように構成されており、すなわち、それぞれの長い部分128によって、サンプルが、長い部分128が提供されたチャンバー102を実質的に回避するようにすることができる。言い換えると、長いキャピラリー部分128によって、サンプルは、第1のチャンバーの出口108から、下部プレート140中の導管144を通過して、長い部分128が配置された第2のチャンバー102を直接通過することができる。結果として、サンプルは、(上部プレート120A中の導管124を通って)第3のチャンバー102の入口106に直接移動することができる。したがって、この実施形態は、図5〜7に示されたものと類似の上部から底部型の装置である。
【0083】
図8Aに示される実施形態のさらなる変形においては、(図示しているように)1つ以上のガスケット160を提供することで、種々のプレート120A、120B、100、140の間の封止を向上させることができる。
【0084】
図8Bは、別の一実施形態のプレート500’を示している。図8Aに示される実施形態と同様に、この実施形態において、図5〜7に示される実施形態の導管502が、一連のプレート550、560、580で置き換えられており、理解しやすいように分離した状態で示している。使用する場合、プレート500、550、560、580を互いに挟むことで、図8Aに示される実施形態と同様に、ほぼ矩形波の形状の上部から底部への流体流路が形成される。
【0085】
この別の実施形態においては、上部プレート550は、入口ポート552、複数の導管554、および出口ポート556を有する。入口ポート552は、チャネルプレート560の入口チャネル566の入口562に位置合わせされ、さらに入口562は、第1のチャンバー510Aの入口506Aと位置合わせされて直線系列になるように構成されている。同様に、出口ポート556は、チャネルプレート560の出口チャネル564の出口508’に位置合わせされ、さらに出口508’は(後述の導管584Fを介して)最終チャンバー510Fの出口508Fと位置合わせされて直線系列となるように構成されている。上部プレート550中の導管554は、チャネルプレート560内の出口チャネル564の出口508’を、入口チャネル566の入口506’に接続するように構成されている。複数の導管584を有する下部プレート580は、マイクロタイタープレート500’の他方の側の上に配置される。その結果、サンプルは:(a)たとえば第1のチャンバー510Aの出口508Aから、(b)下部プレート580内の導管584Aを通って、チャネルプレート560内の出口チャネル564Aを通り、(c)出口チャネル564Aを通り、(d)上部プレート550内の導管554Aを通り、(e)第2のチャンバー510Bの入口506Bに入ることができる。結果として、サンプルは、上部から底部への(ほぼ矩形波の形状)の経路で各チャンバー510を通過する。
【0086】
図8Aに示される実施形態の長いキャピラリー部分128とは対照的に、この実施形態において、チャネルプレート560のチャンバー部分568は、チャンバーを実質的にふさぐ大きさであり、マイクロタイタープレート500’内のチャネルとして機能する。結果として、チャネルプレート560内の出口チャネル564のそれぞれは、図8Aに示される実施形態の長いキャピラリー部分128の直径とは異なる直径を有することができる。さらに、チャンバー部分568によって、この系は全体的により良好な封止状態を実現することができる。
【0087】
この実施形態のマイクロタイタープレート500’もガスケット570(図示している)を使用できることが容易に理解できるであろう。さらに、上部プレートおよび底部プレート550、580は、内部の導管554、584の洗浄を容易にするために、複数の部品から形成することができる。
【0088】
前述の実施形態と同様に、技術者が、図8Aまたは8Aに示される実施形態のマイクロタイタープレートを使用して第1の分離プロトコールによって、サンプルを複数のサブサンプルに分離した後、技術者は第2の分離プロトコールを実施することができる。第2の分離プロトコールによって、1つ以上のサブサンプルを複数のミニサンプルにさらに分離することができる。
【0089】
図9A〜9Iは本発明の別の一実施形態を示している。この実施形態において、複数のチャンバー1102を有するプレート1100(図9D)を、上部カバープレート610(図9A)、上部導管プレート600(図9B)、下部導管プレート700(図9F)、および下部カバープレート710(図9G)と組み合わせることによって、2つの隣接する横列中に配置された複数のチャンバー1102A〜1102Iを通過する流路を形成することができる。さらに、チャネルプレート730(図9C)を、プレート1100と上部導管プレート600との間に設けることができる。同様に、ガスケット740(図9E)を、プレート1100と下部導管プレート700との間に設けることができる。
【0090】
この実施形態において、上部カバープレート610内の入口ポート612は、上部導管プレート600内の入口ポート602およびチャネルプレート730内の入口ポート732と位置合わせすることができる。入口ポート602、612、732を合わせたものは、第1の横列R1中の第1のチャンバー1102Aの入口を形成することができる。(入口ポート602、612、732を介して)第1のチャンバー1102Aに供給されたサンプルは、第1のチャンバー1102Aを上部から底部へと通過して、下部導管プレート700内の第1の斜め導管708A内に到達することができる。第1の斜め導管708Aから、サンプル(またはその一部)は、第1の横列R1の後方にある第2の横列R2中にある第2のチャンバー1102B(その中に分離媒体を有する場合も有さない場合もある)中のチャネル734A内に流れることができる。第2のチャンバー1102B中のチャネル734Aを底部から上部へと通過した後、サンプル(またはその一部)は、(上部導管プレート600中の)第1の横導管606Aを通って、第1のチャンバー1102Aと同様に第1の横列R1中にある第3のチャンバー1102Cに流れることができる。次に、サンプルは、第3のチャンバー1102Cを上部から底部へと通過し、(図示されるように)第1の横列中に存在することができる最終チャンバー1102Iに到達するまで、この前方から後方/底部から上部、後方から前方/上部から底部への経路を続けることができる。次に、下部導管プレート700および下部カバープレート710の中にそれぞれ形成された出口ポート702、712によって、サンプル(またはその一部)を最終チャンバー1102Iから取り出すことができる。出口ポート702、712を合わせたものが1つの出口として機能することができる。
【0091】
ある実施形態においては、上部カバープレート610と上部導管プレート600とを一体的に形成することができる。これに加えて、またこれとは別に、下部カバープレート710と下部導管プレート700とを一体的に形成することもできる。
【0092】
本発明の別の関連の実施形態を図10に示す。この場合、プレート1200内のチャンバーの第1の直線系列(たとえば、縦列または横列)中の各チャンバーは、分離媒体を含有し、その中をサンプルが同じ方向(たとえば、上部から底部)で流れ、隣接する直線系列中のチャンバーは、サンプルが反対方向(たとえば底部から上部)に流れるチャネルとして機能する。この実施形態において、たとえば、チューブなどの導管を、第1の直線系列中の第1のチャンバー1Aの底部の出口に接続することができ、第2の直線系列中の第2のチャンバー2Bに上向きに通すことができ、そして第1の直線系列中の第3のチャンバー1Bの上部の入口に接続することができる。別の導管を、第3のチャンバー1Bの底部の出口に接続して、第2の直線系列中の第4のチャンバー2Cに上向きに通すことができ、さらに第1の直線系列中の第5のチャンバー1Cの上部の入口に接続することなどが可能である。希望するなら、プレートの上部に斜めに配列された導管を配置することができる(図9A〜9Iに示される実施形態と同様)。
【0093】
図10は同じプレート1200上の分離プロトコール10A〜10Fを示しているが、この並行機能がこの実施形態に限定されるわけではない。むしろ、前述のあらゆる実施形態が、図10に示される実施形態と同様に、1つのプレート上で並列した複数の分離プロトコールを含むことができる。
【0094】
前述のいずれか実施形態の一部の別の実施形態においては、接続導管の構成に依存して、種々の分離媒体を通過する流動方向を、充填床方式、流動床方式、または充填床と流動床との組み合わせで操作することができる。
【0095】
分離媒体は、何らかの特定の種類に限定されるものではないことは容易に理解できるであろう。むしろ、分離媒体は、限定するものではないが、ビーズ、不規則粒子、膜、モノリスなどの固体材料(多孔質および非多孔質の両方)を含めたあらゆる種類であってよい。
【0096】
例として、複数の異なる生体分子成分を含む複合混合物を含有するサンプル溶液を、後述するように少なくとも部分的に分割するために、チャンバーの系列中の第1のチャンバー102/510に導入することができる。サンプルが通過する各チャンバー102/510は、たとえば、異なる収着材料を含むことができる。より具体的には、チャンバー102/510内の種々の収着剤によって、サンプルの実質的にすべての別個の生体分子成分が捕捉されるように、収着材料を選択することができる。複数の生体分子成分の種々のサブセットを捕捉した後、捕捉された生体分子成分を含む収着剤は、単離(すなわち、チャンバーから取り出す)したり、またはその他の方法で取り出したりして、前述のようにさらに処理することができる。
【0097】
本明細書において使用される場合、「捕捉」は、チャンバー102/510を通過する間にサンプルから生体分子成分の特定のサブセットサンプルが実質的に除去されるように、サンプル溶液中の1種類以上の生体分子成分を引きつけて可逆的に保持する収着剤の能力を意味する。タンパク質精製などの生物起源の化学物質の混合物を分離する分野の当業者であれば、生体分子成分を保持する固有の収着剤の能力が、収着剤と溶液とが接触する周囲条件(たとえば、チャンバー102/510を通過する溶液の温度およびイオン強度またはpH)下で収着剤と生体分子成分との間の相互作用によって決定される特定の生体分子成分に対する収着剤の特異性を含むことを理解しているであろう。この相互作用は、周知のあらゆる物理化学的相互作用であってよく、この相互作用が、収着剤による生体分子成分(または生体分子成分のサブセットサンプル)の収着を引き起こし、生体分子成分(またはサブセットサンプル)の溶液を実質的に完全に枯渇させるが、なお捕捉された生体分子成分を後に溶出させることが可能となるのに十分であると考えることができる。
【0098】
典型的な収着剤−生体分子成分の相互作用としては:イオン交換(陽イオンまたは陰イオン);疎水性相互作用;生物学的親和性(染料およびリガンドとタンパク質との間の相互作用、あるいはレクチンと複合糖質、グリカン、グリコペプチド、多糖、およびその他の細胞成分との間の相互作用など);免疫親和性(すなわち、抗原−抗体相互作用またはそれらのフラグメント間の相互作用);金属−キレートまたは金属−イオン相互作用、タンパク質とチオフィリック材料との間の相互作用、タンパク質とハイドロキシアパタイトとの間の相互作用、ならびにサイズ排除が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような材料の多くは、タンパク質または核酸の精製の当業者には周知である。これらの材料は、周知の技術および材料を使用して製造したり、商業的に購入したりすることができる。これらの材料およびそれらの製造方法の例に関する説明は、「タンパク質精製プロトコール」(Protein Purification Protocols)第2版、カトラー(Cutler)編著,ヒュマーナ・プレス(Humana Press)2004年に記載されており、この記載内容全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0099】
イオン交換材料としては、強および弱の陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂が挙げられる。強の一部は後述の表4に記載している。強陽イオン交換リガンドの例としては、スルホプロピル(SP)およびスルホン酸メチル(S)が挙げられる。弱陽イオン交換リガンドの弱い例(WeakExample)としては、カルボキシメチル(CM)が挙げられる。強陰イオン交換リガンドの強い例(StrongExample)としては、第4級アンモニウムおよび第4級アミノエチル(QAE)が挙げられる。弱陰イオン交換リガンドの弱い例(WeakExample)としては、ジエチルアミノエチル(DEAE)が挙げられる。好適なイオン交換材料の例としては、商品名:Q−、S−、DEAE−およびCM セラミック・ハイパーD(CERAMIC HYPERD)(登録商標);DEAE−、CM−、およびSP トリスアクリル(TRISACRYL)(登録商標);M−、LS−;DEAE−、およびSP スフェロデックス(SPHERODEX)(登録商標)LS;ならびにQMA スフェロジル(SPHEROSIL)(登録商標)LSでポール・コーポレーション(Pall Corporation)(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills,NY)(カリフォルニア州フリーモント(Fremont,CA))より販売される材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の好適なイオン交換材料が、商品名:ウノスフィア(UNOSPHERE)、マクロ−プレップ(MACRO−PREP)(ハイQ(HIGH Q)、ハイS(HIGH S)、DEAE、およびCMなど)、およびAG、ならびにバイオ−レックス(Bio−Rex)で、カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules,CA)のバイオ−ラド・ラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories)より販売されている。さらにより好適な市販のイオン交換材料は、商品名:DEAE−トリスアクリル(DEAE−TRISACRYL)(登録商標)、DEAEセファロース(DEAE SEPHAROSE)(登録商標)、DEAE−セルロース、ジエチルアミノエチル・セファセル(DIETHYLAMINOETHYL SEPHACEL)(登録商標)、DEAEセファデックス(DEAE SEPHADEX)(登録商標)、QAEセファデックス(QAE SEPHADEX)(登録商標)、アンバージェット(AMBERJET)(登録商標)、アンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)、コレスチラミン樹脂、CMセファロース(CM SEPHAROSE)(登録商標)、SPセファロース(SP SEPHAROSE)(登録商標)、SP−トリスアクリル(SP−TRISACRYL)(登録商標)、リン酸セルロース、CM−セルロース、CM セファデックス(CM SEPHADEX)(登録商標)、SPセファデックス(SP SEPHADEX)(登録商標)、およびアンバーライト(AMBERLITE)(登録商標)が、シグマ−アルドリッチ・カンパニー(Sigma−Aldrich Co.)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))より販売されている。イオン交換材料のその他の商業的供給元としては、アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)(www.amersham.com)が挙げられる。さらに別の材料はタンパク質精製の当業者には周知である。
【0100】
疎水性相互作用の利用(疎水性相互作用クロマトグラフィー、「HIC」)に好適な材料としては、商品名:フェニル・セファロース・6・ファースト・フロー(PHENYL SEPHAROSE 6 FAST FLOW)、ブチル・セファロース・4・ファースト・フロー(BUTYL SEPHAROSE 4 FAST FLOW)、オクチル・セファロース・4・ファースト・フロー(OCTYL SEPHAROSE 4 FAST FLOW)、フェニル・セファロース・ハイ・パフォーマンス(PHENYL SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE)、フェニル・セファロースCL−4B(PHENYLSEPHAROSE CL−4B)、オクチル・セファロースCL−4B(OCTYL SEPHAROSE CL−4B)、ソース(SOURCE)(商標)15ETH、ソース15ISO(SOURCE 15IS0)、およびソースPHE(SOURCEPHE)で、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway,NJ)のアマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)より販売されているものが挙げられる。フラクトゲル(FRACTOGEL)(登録商標)EMD・プロピル(PROPYL)(S)およびフラクトゲル(FRACTOGEL)(登録商標)EMD・フェニル(PHENYL)I(S)としてVWRインターナショナル(VWR International)(www.chromatography.uk.co)より販売される材料も入手可能である。さらに別の市販のHIC材料としては、商品名:トーヨーパール(TOYOPEARL)およびTSKゲル(TSKGEL)で、ペンシルバニア州モンゴメリービル(Montgomeryville,PA)のトーソー・バイオサイエンスLLC(Tosoh Bioscience LLC)より販売される材料が挙げられる。同等の材料は、商品名MEPハイパーセル(MEP HYPERCEL)でポール・コーポレーション(Pall Corporation)(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills,NY))より市販されている。さらに別の材料は、タンパク質精製の当業者には周知であろう。
【0101】
親和性材料としては、抗体−抗原、酵素−リガンド、核酸−結合タンパク質、ホルモン−受容体などの、生体分子成分とリガンドとの間の構造的相互作用に基づいて生体分子成分を引き寄せて収着するのに有効なあらゆる材料が挙げられる。これらの相互作用は、天然または合成のリガンドと生体分子成分との間に存在することができる。リガンドは、単一特異的(たとえば、ホルモンまたは基質)または群特異的(たとえば、酵素補助因子、植物レクチン、およびプロテインA)のいずれであってもよい。本発明に好適な一般的な群特異的リガンドの例を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
したがって、親和性材料を使用することで、多種多様の生体分子材料を収着させることができる。市販の親和性材料としては、商品名:プロテインA・セラミック・ハイパーD(PROTEIN A CERAMIC HYPERD)(登録商標)F、ブルー・トリスアクリル(BLUE TRISACRYL)(登録商標)M、ヘパリン・ハイパーD(HEPARIN HYPERD)(登録商標)M、およびリジン・ハイパーD(LYSINE HYPERD)(登録商標)で、ポール・コーポレーション(Pall Corporation)(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills,NY))より販売されるものが挙げられる。さらに別の市販の材料は、アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)(www.amershambiosciences.com)およびシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(www.sigmaaldrich.com)などの商業的供給元によって提供されている。さらに別の材料は、タンパク質精製の当業者には周知であろう。
【0104】
本発明のある実施形態においては、親和性材料は、反応性染料から誘導され、収着剤を形成するために使用される。染料−リガンド収着剤は、キナーゼおよびデヒドロゲナーゼなどの核酸補助因子を使用するタンパク質および酵素の結合に有用となることが多い。しかし、血清アルブミンなどの他のタンパク質も、同様にこれらの収着剤を使用して効率的に識別することができる。好適な市販の材料の例は、商品名リアクティブ・ブルー(REACTIVE BLUE)、リアクティブ・レッド(REACTIVE RED)、リアクティブ・イエロー(REACTIVE YELLOW)、リアクティブ・グリーン(REACTIVE GREEN、およびリアクティブ・ブラウン(REACTIVE BROWN)(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich));ダイマトリックス・ゲル・ブルー(DYEMATRIX GEL BLUE)、ダイマトリックス・ゲル・レッド(DYEMATRIX GEL RED)、ダイマトリックス・ゲル・オレンジ(DYEMATRIX GEL ORANGE)、およびダイマトリックス・ゲル・グリーン(DYEMATRIX GEL GREEN)(マサチューセッツ州ビルリカのミリポア(Millipore,Billerica,MA));ならびにブルーH−B(Blue H−B)(シバクロン・ブルー(Cibacron Blue))、ブルーMX−R(Blue MX−R)、レッドHE−3B(Red HE−3B)、イエローH−A(Yellow H−A)、イエローMX−3r(Yellow MX−3r)、グリーンH−4G(Green H−4G)、グリーンH−E4BD (Green H−E4BD)、ブラウンMX−5BR(Brown MX−5BR)として知られるプロシオン(Procion)染料で販売されるものが挙げられる。さらに別のものは、タンパク質精製の当業者には周知であろう。
【0105】
有用な収着剤は、複合糖質、グリカン、グリコペプチド、多糖、可溶性細胞成分、および細胞の分離および単離を行うためにレクチンから構成することもできる。好適なレクチンとしては、表2に示されるものが挙げられる。
【0106】
【表2】
【0107】
市販のレクチンとしては、商品名:AFFI 10、AFFI 15、AFFI PREP 10、およびAFFI PREP 15(カリフォルニア州ハーキュリーズのバイオ−ラド(Bio−Rad,Hercules,CA));CNBRアルギノース(CNBR ARGINOSE)、エポキシ活性化アラグノース(EPOXY−ACTIVATED ARAGROSE)、CDIアガロース(CDI AGAROSE)、およびポリアクリルヒドラジドアガロース(POLYACRYLHYDRAZIDE AGAROSE)(ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO);ならびにリアクティ6X(REACTI 6X)(イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce,Rockford,IL))で販売されるものが挙げられる。
【0108】
免疫親和性材料は、タンパク質精製の当業者には周知の標準的な方法および材料を使用して製造することができる(たとえば、「タンパク質精製プロトコール」(Protein Purification Protocols)参照)。市販の免疫親和性材料としては、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(www.sigmaaldrich.com)およびアマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)(www.amersham.com)より販売されるものが挙げられる。同様に、金属イオン親和性(IMAC)材料は、周知の材料および方法を使用して調製することができるし(たとえば、「タンパク質精製プロトコール」(Protein Purification Protocols)参照)、または商業的に購入することもできる(たとえば、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(www.sigmaaldrich.com)またはアマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)(www.amersham.com)より)。一般的な金属としては、Ni(II)、Zn(II)、およびCu(II)が挙げられる。これらの材料の一部の例を表3に示している。
【0109】
【表3】
【0110】
ハイドロキシアパタイト(HT/HTP)およびチオフィリック(TAC)収着剤の合成も、タンパク質精製の当業者には周知である(たとえば、「タンパク質精製プロトコール」(Protein Purification Protocols)参照)。商業的供給元としては、カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules,CA)のバイオ−ラド(Bio−Rad)(商品名CHT)、ポール・コーポレーション(Pall Corporation)(ニューヨーク州イーストヒルズ(East Hills,NY))(商品名HAウルトロゲル(HA ULTROGEL)(登録商標))、およびカリフォルニア州サンリアンドロ(San Leandro,CA)のバークレー・アドバンスト・バイオマテリアルズ(Berkeley Advanced Biomaterials)(商品名HAP)が挙げられる。チオフィリック収着剤も、当技術分野またはタンパク質精製において周知の方法および材料を使用して製造することができるし、あるいは、商品名:MEP ハイパーセル(MEP HYPERCEL)(カリフォルニア州フリーモントのサイファージェン・バイオシステムズ(Ciphergen Biosystems,Fremont,CA))、チオフィリック・ユニフロー(THIOPHILIC UNIFLOW)およびチオフィリック・スーパーフロー(THIOPHILIC SUPERFLOW)(カリフォルニア州パロアルトのクローンテック(Clonetech,Palo Alto,CA))、チオソルブ(THIOSORB)(マサチューセッツ州ビルリカのミリポア(Millipore,Billerica,MA))、T−ゲル(T−GEL)(ベルギーのアンスリエージュのアフィランド(Affiland,Ans−Liege,Belgium)、AFFI−T(デンマークのコペンハーゲンのケン−エン−テック(Ken−en−Tec,Copenhagen,Denmark))、HI−TRAP(ニュージャージー州ピスカタウェイのアマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)、ならびにフラクトゲル(FRACTOGEL)(英国ドーセット州プールのメルクKgA(Merck KgA,Poole Dorset UK))で商業的に購入することもできる。
【0111】
上述の収着材料は、異なる生体分子成分に対して異なる程度の特異性を有する。これに関して、用語「特異性」は、特定のサンプル中の、収着剤が結合することができる異なる生体分子種に関連している。一態様においては、収着剤は、特異性の相対程度によって分類することができ、たとえば、高特異性収着剤、中間の特異性の収着剤、および低特異性収着剤と分類することができる。
【0112】
高特異性材料としては、特定の生体分子または生体分子のサブセットの収着に対して強い選択性を一般に有する材料が挙げられる。多くの場合、このような材料は、抗体−エピトープ認識、受容体−リガンド、または酵素−受容体の相互作用などの高い生体特異的収着相互作用を有する。このような収着剤の例としては、プロテインA結合収着剤、プロテインG結合収着剤、抗体結合収着剤、受容体結合収着剤、およびアプタマー結合収着剤が挙げられる。中間の特異性の収着剤としては、ある程度の生体特異的相互作用を有するが高特異性収着剤よりもその程度が低い材料が挙げられ、そのようなものとしては:MEP、MBI、疎水性収着剤、ならびにヘパリン結合材料、染料結合材料、金属キレート化剤結合材料が挙げられる。多くの「混合モード」材料は中間の特異性を有する。これらの一部は、たとえば、疎水性相互作用およびイオン性相互作用によって分子に結合する。低特異性材料収着剤としては、全体的な分子特性(酸−塩基、双極子モーメント、分子の大きさ、または表面静電ポテンシャルなど)を使用して生体分子成分に執着する材料が挙げられ、そのようなものとしては:ジルコニア、シリカ、フェニルプロピルアミンセルロース、セラミックス、チタニア、アルミナ、およびイオン交換体(陽イオンまたは陰イオン)が挙げられる。
【0113】
本発明の一実施形態においては、生体分子成分溶液を、高特異性収着剤、中間の特異性の収着剤、および低特異性収着剤の中の少なくとも2種類の異なる収着剤に接触させることができる。ある実施形態においては、溶液を、同程度の特異性の1、2、3、またはそれを超える種類の材料(たとえば、中間の特異性の2種類の材料、または低特異性の3種類の材料)に接触させる。別の一実施形態においては、溶液を、高特異性から低特異性への推移を示す複数の収着剤に接触させることができる。別の一実施形態においては、溶液を、高特異性から低特異性への推移を示す複数の収着剤に接触させることができる。さらに別の一実施形態においては、収着材料は、特異性が実質的に直線状に推移するよう配列することができる。さらに別の一実施形態においては、収着材料は、実質的な連続体を形成することができる。さらに別の一実施形態においては、収着剤が互いに直交することができ、すなわち、各収着剤の能力が、固有の生体分子成分または生体分子成分のサブセットに対して実質的に選択的となることができる。別の一実施形態においては、少なくとも1種類の収着剤が高特異性収着剤となる、少なくとも1種類の別の収着剤が中間の特異性または低特異性のいずれかの収着剤となるように、収着剤を選択することができる。さらに別の一実施形態においては、少なくとも1種類の収着剤のそれぞれが高特異性収着剤、中間の特異性の収着剤、および低特異性収着剤となるように、収着剤を選択することができる。さらに別の一実施形態においては、少なくとも2種類の収着剤を、高特異性収着剤、中間の特異性の収着剤、および低特異性収着剤の2つの種類から選択することができる。別の一実施形態においては、少なくとも2種類の収着剤が高特異性収着剤であってよく、少なくとも1種類の収着剤が低特異性収着剤であってよい。
【0114】
高特異性から低特異性への推移は、特に有用な目的を果たす。特に、サンプル中のタンパク質を大きな排他的であるが複雑性が減少した群に分画することができる。したがって、種々の分画中のタンパク質をより容易に分割することができる。たとえば、低特異性または中間の特異性の樹脂は、非常に高濃度のものなどのサンプル中の多くの生体分子に対して親和性を有したり結合したりすることができる。しかし、中間の特異性の収着剤に曝露する前に、高濃度のタンパク質に対する高特異性収着剤にサンプルを曝露すると、高濃度のタンパク質の大部分またはすべてを除去することができる。このように、中間の特異性の収着剤によって捕捉される生体分子のセットは、この高濃度の生体分子をほとんどまたは全く含まない。この結果、中間の特異性の収着剤によって捕捉されるタンパク質のセットの複雑性が低下する。したがって、この計画は、分画プロセスの後の段階で収着剤によって捕捉される生体分子、たとえばタンパク質を早い段階に除去することであり、それによって、各チャンバー102/510において、次のチャンバー102/510に移動する生体分子の複雑性は低下する。
【0115】
一実施形態において、最高濃度の生体分子材料が最初に除去されるように、収着剤を選択することができる。たとえば、プロテインA収着剤およびシバクロン・ブルー(Cibacron Blue)収着剤が最初の2つの収着剤となるように収着剤を配列することによって、ヒト血清のダイナミックレンジを減少させることができる。ヒト血清のタンパク質組成の90パーセントは:アルブミン、IgG、トランスフェリン、α−1抗トリプシン、IgA、IgM、フィブリノゲン、α−2−マクログロブリン、および補体C3を含む。残りの10%の内、約99%は:アポリポタンパク質A1およびB;リポタンパク質A;H因子;セルロプラスム(ceruloplasm);プレアルブミン;補体因子B; 補体因子C4、C8、C9、およびC19;ならびにα−糖タンパク質を含む。多くの場合、サンプル中の残りのあらゆる生体分子成分を捕捉するために、最終チャンバー102/510中にフェニルプロピルアミンセルロースなどの収着剤を入れると有用である。一般に、最初の収着剤があまり汎用的すぎると(すなわち低特異性を有する)、非常に多くの材料が最初の2種類の収着剤で分離されることがあり、残りの収着剤の有用性が損なわれる。しかし、最初の収着剤の特異性が高すぎる場合(すなわち、高特異性を有する)は、サンプルのダイナミックレンジが大きいために、残りの収着材料の効率が低下しうる。一実施形態においては、第1の収着剤、あるいは第1および第2の収着剤との組み合わせによって、サンプルのダイナミックレンジが少なくとも10分の1、特に少なくとも100分の1、さらに特に少なくとも1,000分の1に減少するように、収着剤が選択される。
【0116】
本発明の多重分離方法は、少なくとも1000種類、少なくとも100,000種類、または少なくとも10,000,000種類の異なる生体分子種(たとえば、タンパク質)を含むサンプルなどの複雑な混合物中の検体の分画に特に有用である。本発明の方法は、生物学的サンプルから生体分子を分離する場合に特に有用である。そのようなサンプルとしては、たとえば、羊水、血液、脳脊髄液、関節内液、眼液、リンパ液、乳汁、汗 血漿、唾液 精液、精漿、血清、痰、滑液、涙、臍帯液、尿、生検ホモジネート、細胞培養液、細胞抽出物、細胞ホモジネート、ならし培地、発酵ブロス、組織ホモジネート、およびこれらの派生物を挙げることができる。
【0117】
本発明の利点の1つは、本発明の装置が、希望するあらゆる数の分離のために使用することができ、そのような分離に使用され、そのような分離に容易に適応可能なことである。さらに、たとえば、蠕動ポンプおよび/または真空ステーションなどの一部の基本的な実験室用設備以外に、装置を追加する必要がない。
【0118】
別の一実施形態においては、本発明の装置は、サンプル中の検体混合物に対して二次元分離方法を行うために使用される。したがって、この方法は2つのステップを含む。第1のステップは、複数の第1の収着剤を使用して、第1の物理的化学的性質の程度に基づいて、検体を第1のアリコートのセットに分画することを含む。適切な収着剤を選択することによって、各分画またはアリコートが特定の範囲内にある検体を含有するように、検体を分配することができる。第2のステップは、複数の異なる第2の収着剤を使用して、異なる第2の物理的化学的性質の程度に基づいて、複数のアリコート(または少なくとも1つアリコート)を第2のアリコートのセットに分画することを含む。次に、第2のアリコートをさらに分析して、たとえば、質量分析などによって、さらなる第3の次元の分画を行うことができる。「物理的化学的性質」とは、測定可能であり、検体分離のための基礎となることができる検体の性質を意味する。好ましくは、この方法に使用される物理的化学的性質は、程度が変動する性質である。たとえば、タンパク質は、等電点によって特徴付けられ、これは物理的化学的性質の1つであり、低pI(たとえば、pI3)から高pI(たとえば、pI10)までの尺度で測定される。当技術分野において周知であるように、タンパク質は、等電点電気泳動またはイオン交換クロマトグラフィーなどを使用して、等電点に基づいて分離することができる。疎水性インデックスは、検体(特にポリペプチド検体)を特徴付ける別の物理的化学的性質であり、低疎水性インデックスから高疎水性インデックスまでの尺度で測定することができる。これも当技術分野において周知であるように、タンパク質は、疎水性の(逆相)収着剤または順相収着剤を使用して、疎水性インデックスに基づいて分離することができる。タンパク質を分画するために使用できる別の物理的化学的性質は大きさであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)がこの目的のために有用となる。タンパク質を分画するために使用できる別の物理的化学的性質は、金属結合能力である。この場合、異なる金属が充填された金属キレート収着剤の系列を使用することができる。質量は、ポリペプチド検体の別の物理的化学的性質であり、分離の基礎となることができる。しかし、この目的のためには、質量分析およびゲル電気泳動がクロマトグラフィーよりも好ましい。
【0119】
三次元分離方法は当技術分野において周知である。一例がLC−LC−MSである。しかし、この方法の欠点の1つは、通常、この方法は分離媒体からの検体の逐次溶出を伴い、これが時間がかかることである。これは、収着剤から検体を区別して溶出させるためにバッファー系の変更を伴う場合もある。この方法を多重化させようとする既存の試みは、複数のクロマトグラフィーカラムを並行して使用することを含み、これは非常に費用がかかる可能性がある。しかし、本発明の装置を、適合性の水性溶媒系を使用するクロマトグラフィー媒体と併用することによって、時間および費用の両方の障害を大きく改善することができる。
【0120】
本発明の好ましい一実施形態は、二次元としてpIおよび疎水性を使用することを含み、検体をクロマトグラフィーで分離した後、質量分析を使用して質量に基づいて分離する。好都合には、この方法は、pI分離用の固体バッファーと、疎水性インデックスによる分離のための疎水性収着剤とを使用する。固体バッファーは、2005年7月28日に出願された米国仮特許出願第60/702,989号明細書(「固相バッファーを使用した等電点に基づくタンパク質の分離」(Separation of proteins based on isoelectric point using solid−phase buffers)ボスケッティ(Boschetti)ら)に記載されている。これらは、段階的なpI分画を得るために、電気泳動分離や異なるバッファー系を使用せずにpIにより分離を行うため、本発明において特に有用である。あらゆる系列の逆相収着剤を使用することができる。これらの多くは市販されている。生理学的条件下での疎水性分離に有用な別の収着剤が、国際公開第2005/073711号パンフレット(「生理学的イオン強度においてタンパク質を吸着させるためのクロマトグラフィー材料」(Chromatographic material for the adsorption of proteins at physiological ionic strength)、ボスケッティ(Boschetti)ら)に記載されている。検体の分離のための最低の疎水性から最高の疎水性までの系列での疎水性材料の配列は、2004年7月27日に出願された米国仮特許出願第60/591,319号明細書(「マルチケミストリー分画法」(Multichemistry fractionation)、ゲリエ(Guerrier))にも記載されている。これらすべての文献が本明細書に援用される。
【0121】
方法の1つは以下のように進められる。本発明の装置の1つの横列(または縦列)中の複数の区画に、等電点に基づいて検体に結合するクロマトグラフィー材料を充填する。たとえば、固相バッファーを使用することができる。流体の流れによって、高pIから低pIまで(または逆に低pIから高pIまで)、したがって、最高の特異性から最低の特異性までの検体が結合する収着剤の系列にサンプル混合物が通されるように、これらの材料が配列される。たとえば、系列中の第1の収着剤は、9を超えるpIを有するすべてのタンパク質を捕捉することができ、したがって除去することができる。第2の収着剤は、7を超えるpIを有するすべてのタンパク質を捕捉することができる。この収着剤は、7〜9の間のpIのタンパク質を分配する。系列中の後に続く区画中の収着剤は、5を超えるpIを有するタンパク質を捕捉することができ、したがって、5〜7の間のpIのタンパク質を分配する、などとなる。
【0122】
次のステップでは、装置の流体導管は、経路が切り替えられ、それによって、横列系列中の区画に接続される代わりに、これによって横列中の各区画が縦列中の区画に接続される(逆に、第1の分離が縦列中で行われる場合、導管は横列中に経路が切り替えられる)。各縦列中の区画の系列は、逆相収着剤の系列が充填され、その系列中の収着剤は、前の収着剤よりも疎水性が高い(したがって、特異性が低い)。バッファーが導管中に圧送されることで、各等電性収着剤上に捕捉され検体が疎水性収着剤の系列を順次通過する。たとえば、系列中の疎水性収着剤のバッファーは、C4鎖、C8鎖、C12鎖、C18鎖を含むことができる。この結果、それぞれが特定のpI範囲内および疎水性インデックス範囲内にある複数のアリコートが得られる。
【0123】
この二次元分離方法は、すべてを本発明の装置上で行う必要はないし、本発明の装置を全く使用しなくてもよい。たとえば、本発明の装置を使用して第1の次元で検体を分離した後、異なる装置を使用して第2の次元の分離を行うことができる。このような一実施形態においては、第1の次元における検体の分配の後、液体導管を取り外すことができ、装置は、ドリッププレートのスタックまたは分離可能な縦列上に配置することができ、それによって、区画の出口をプレートのウェルまたは縦列に位置合わせする。装置の出口の下に位置合わせされたスタック中のプレートの各ウェルには、第2の分離次元に基づいて捕捉されるクロマトグラフィー材料の系列の1つを充填することができる。したがって、たとえば、本発明の装置は、8つの横列A〜Hと12の縦列1〜12とを有する96ウェルフォーマット中に配列された区画を有することができる。第1の分離において、カラム1の区画、たとえば区画1A〜1Hを使用して第1の分離を行うことができる。次に、この装置を、同様に96ウェルフォーマットである8つのフィルタープレートのスタック(プレート1〜8)のスタックの上に配置することができ、すべてのプレートの区画/ウェル1Aを、下のプレートスタックの区画1Aと位置合わせする。各プレート中のカラム1のウェルは、第2の分離次元用に同じクロマトグラフィー材料を含有し、通常これらは最上部で最も選択性が高く、最低部で最も選択制が低くなる順序で配列されている。次に溶出バッファーをスタック中に圧送して、すべてのウェル1A、すべてのウェル1Bなどに同時に通す。これによって、プレートのウェル中に8×8の分離セットが得られる。次に、捕捉された検体をこれら64のウェルのそれぞれから溶出させて、質量分析計上での質量による検体の分離などのさらなる分析を行うことができる。
【0124】
あるいは、すぐ上で述べた二次元分離は、クロマトグラフィー媒体が物理的に分離され、別々に検体を分離することができるあらゆる装置または複数の装置の組み合わせの上で行うことができる。たとえば、この方法は、96ウェルフォーマットのドリッププレート上で全体的に実施することができる。このような一実施形態においては、クロマトグラフィー材料の第1の系列を、8つの異なるフィルタープレートのそれぞれのウェル1A中に配置することができる。これらのプレートは、適切な順序で互いに積み重ねることができ、第1の分離次元用の特異性がより高いクロマトグラフィー材料(たとえば、陰イオン交換体をさらに含むpI10の固体バッファー)を含有するスタックの最上部の第1のウェル中にサンプルを入れることができる。次に、積み重ねた8つのプレートのウェル1Aの縦列を通過するようにバッファーを圧送することができ、検体は、第1の物理的化学的特徴(この例ではpI)により適切に分離される。溶出液は、底部プレートから収集することができる。ここで、これらのプレートのそれぞれは、フィルタープレートのスタックの上部に独立に積層することができ、フィルタープレートのウェル1Aには、第2の物理的化学的性質により検体を分離するために配列されたクロマトグラフィー材料の系列が充填されている。再び、ウェル1Aの縦列にバッファーを圧送して、第2の次元において検体を分画することができる。次に、すべてのウェル1Aに含まれる検体を、溶出させ、たとえば質量によってさらに分画することができる。
【0125】
この方法のために使用することができる別の装置は、積み重ね可能で分離可能なカラムの組である。このようなカラムは、クロマトグラフィー媒体が分離される区画を有する。これらは、留め具またはねじり機構などによって別のカラムに積み重ねることができる。
【0126】
それぞれ固体バッファーとイオン交換樹脂とを含む、本発明のクロマトグラフィー材料の系列を使用して、pIに基づいて混合物からタンパク質を分離することができる。各固体バッファーは、水溶液を所定のpHにする両性高分子を含む。したがって、各クロマトグラフィー材料によって特定のpHが得られる。クロマトグラフィー材料を通過し、そのクロマトグラフィー材料とは異なるpIを有するタンパク質は、そのpIがクロマトグラフィー材料のpHよりも低いか、高いか、または同じであるかに依存して、それぞれ実効正電荷または実効負電荷のいずれかを有するか、あるいは中性となる。その環境のpHにおいてイオン交換樹脂とは反対の電荷を有するタンパク質は、そのイオン交換体に結合し、一方、中性または同じ電荷のタンパク質は、結合しないままであり、そのクロマトグラフィー材料を通過する。すなわち、たとえば、固体バッファーのpHにおいて負に帯電しているタンパク質は、陰イオン交換樹脂に結合する。次に、捕捉されたタンパク質は、そのクロマトグラフィー材料から溶出させることができる。本発明の一実施形態においては、クロマトグラフィー材料(固体バッファーとイオン交換樹脂との混合物)の系列、異なるpHが得られる各固体バッファーは直列に配列される。異なるタンパク質は異なるpHで帯電するため、系列中の各クロマトグラフィー材料のイオン交換樹脂は、混合物中のタンパク質のあるサブセットを捕捉する。この方法では、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、および可溶性組織抽出物などの生物学的流体からのタンパク質は、それらの等電点によって分離することができる。
【0127】
本発明のクロマトグラフィー材料は、イオン交換樹脂とともに固体バッファーを含む。好ましい実施形態においては、これらのそれぞれが固相に取り付けられる。特に、本発明は、イオン交換樹脂と混合された固体バッファーのビーズまたは粒子を含む組成物を考慮している。別の一実施形態においては、固体バッファーおよびイオン交換樹脂は、固相に取り付けられない。別の一実施形態においては、緩衝特性およびイオン交換特性が同じ粒子内で得られる。
【0128】
用語「固体バッファー」は、それぞれ異なるpKを有するイオン化可能なモノマーから得られる両性の架橋した不溶性高分子を意味する。固体バッファーは、希薄電解質水溶液を所定のpHを付与し、酸性またはアルカリ性の分子が加えられてもpHを維持する。これらの物理化学的性質に加えて、本明細書において有用な固体バッファーは、細孔を含み、それによってたとえば5000Da未満の低い排除限界の材料となる。
【0129】
排除限界が低いと、架橋したモノマー内部への拡散が防止されながら、小さなイオンの十分な拡散は維持される。このような限定された拡散によって、固体バッファーへの非特異的結合の危険性が最小限になる。ある実施形態においては、固体バッファーは、5000Da未満、4000Da未満、または3000Da未満の排除限界を有する。細孔を有する両性高分子は、比較的高濃度のモノマー溶液およびまたは架橋度の高いモノマーを使用することによって生成することができる。
【0130】
一態様においては、固体バッファーはポリマーであってよい。たとえば、固体バッファーは、ポリアクリルアミドまたはブロックコポリマーであってよい。別の例では、所定のpH付近で緩衝力を得るために、異なるpKの複数のアクリルアミドモノマーを組み合わせることで、固体バッファーを製造することができる。
【0131】
固体バッファーは、ポリマー化学および生化学の技術分野で使用される日常的な化学物質および方法を使用して調製することができる。一般に、特定のpHのための固体バッファーを得るために、対応するpKを有するモノマーを選択し(数mMから数百mMまでの範囲をとりうる濃度で)、そのpK付近のpHまで、相補的なモノマーを使用して滴定を行う。たとえば、選択されたモノマーのpKが8.0である場合には、pKが4.5未満であるモノマーを使用してpH8.0付近まで滴定を行う。所望のpKのモノマーが入手できない場合、複数のモノマー(所望のpKの上および下のpK)の混合物を使用することができ、続いて2つのpKの間のpHまで滴定することができる。次に、pHを調整したモノマー溶液に、適切な架橋試薬および重合触媒を、固体バッファーの粒子を製造するための重合を引き起こすのに十分な比率で加える。
【0132】
さまざまなモノマーが市販されている。代表的なモノマーとしては、N−アクリロイルグリシン、4−アクリルアミドブチル酸(4−acrylamidobutyrric acid)、2−モルホリノ−エチルアクリルアミド、3−モルホリノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。イモビリン(Immobiline)を使用して固体バッファーを製造することもできる。
【0133】
イモビリン(Immobiline)は一般式:
【化1】
に従うアクリルアミド誘導体であり、上式中、Rは、特徴的なpIを提供する基を含む。たとえば、米国特許第4,971,670号明細書を参照されたい。原則的にこの特性決定は多くの分子を含んでいるが、アマシャム(Amersham)は、商標イモビリン(IMMOBILINE)(登録商標)で販売され、等電性ゲルおよびポリマーの生成に特に適している分子を製造している。イモビリン(IMMOBILINE)(登録商標)コレクションの分子としては、括弧内に示されるpIを有する以下の分子が挙げられる:N−アクリロイルグリシン(pK3.6);4−アクリルアミドブチル酸(4−acrylamidobutyrric acid)(pK4.6);2−モルホリノエチル−アクリルアミド(pK6.2);3−モルホリノプロピルアクリルアミド(pK7.0);N,N−ジメチルアミノ−エチルアクリルアミド(pK8.5);およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(pK9.3)(一括して「イモビリン」と呼ぶ)。いずれのイモビリンも、モノマーとして組み合わし、アクリルアミドおよびN,N’−メチレンビスアクリルアミドまたは別の好適な架橋剤と共重合させることで、所望のpI特異性ポリマーを生成することができる。アクリルアミドは、N−イソプロピルアクリルアミド、メチルアクリルアミド、メチロールアクリルアミド ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアクリルアミドなどの別の非イオン性アクリルアミド誘導体で置き換えることができる。
【0134】
特定のpHを有する固体バッファーを生成するために、モノマーの組み合わせおよび濃度の選択に役立てるために、さまざまな情報資源を利用できる。たとえば、モノマーの組み合わせの配合表は、JOURNAL OF CHROMATOGRAPHIC LIBRARY,VOLUME 63 Chapter 12(リゲッティ(Righetti)、ストヤノフ(Stoyanov)、およびジューコフ(Zhukov)編,2001年)に提供されている。アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences)は、自社の「プロトコールガイド1:アイソプライム精製のためのタンパク質の等電膜の処方」(Protocol Guide # 1:Isoelectric Membrane Formulas for IsoPrime Purification of Proteins)の中で類似の配合表を提供している。www4.amershambioscieces.com/aptrix/upp00919.nsf/(FileDownload)?OpenAge nt&docid=FD3302088BD37BC6C1256EB400417E5C&file=80635018.pdfを参照されたい。
【0135】
モノマーの濃度を選択するためのアルゴリズムの入手可能である。たとえば、ファフレダ(Giaffreda)ら,J.Chromatog.,630:313−327頁(1993年)を参照されたい。さらに、ポリマーのpIを求めるための技術は当技術分野において周知である。そのような方法の例としては、リベイロ(Ribeiro)ら,Computers in Biology and Medicine 20:235−42頁(1990年)、リベイロ(Ribeiro)ら,上記引用文献,21:131−41頁(1991年)、およびシレロ(Sillero)ら,Analytical Biochemistry 179:319−25頁(1989年)が挙げられる。
【0136】
一実施形態においては、国際出願PCT/US2005/007762号明細書(この記載内容を本明細書に援用する)に記載される粒子を固体バッファーとして使用することができる。
【0137】
別の一実施形態においては、固体支持体の空隙内で固体バッファーの重合が行われる。別の実施形態においては、粒子内の空隙の内部細孔容積によって形成される内面および外面などの、固体支持体の内面および外面上に、固体バッファーが堆積される。この体積は、化学結合またはその他の手段によるものであってよい。
【0138】
アミノ酸およびペプチドは、それらが明確な等電点を有するときに、このような表面層を提供することができる。したがって、ある実施形態においては、固体バッファーは2種類以上のアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は20種類の天然アミノ酸のいずれかであってよいし、アミノ酸は合成アミノ酸であってもよい。有用なアミノ酸としては、20種類の天然アミノ酸の中で、イオン化可能な側鎖を有するものが挙げられ、たとえば、リジン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、システイン、スレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミンが挙げられる。さらに、前述の粒子内面および外面に取り付けることができ明確なpI値を有するその他の化合物も本発明に使用できることが、当業者には理解できるであろう。粒子表面上に取り付け部位を形成するためにリンカーを使用することができる。
【0139】
一般に、固体バッファーは、タンパク質自体を吸着可能となるべきではなく、イオン交換体と同じ密度を有するべきであり、所望のpHにおいて良好な緩衝能力を有するべきである。
【0140】
用語「固体支持体」は、低濃度でのポリマーの崩壊を防止するためにイオン交換ポリマーまたは固体バッファーを取り付けたり充填したりすることができる固体の多孔質の材料を意味する。
【0141】
クロマトグラフィー材料は、さまざまな固体支持体を利用することができる。この場合の固体支持体の例は、粒子、膜、およびモノリスである。「モノリス」は、クロマトグラフィーのリガンドを取り付けることができる一般に多孔質である一体構造の材料である。一般に、モノリスは、ビーズよりもはるかに大きな体積を有し、たとえばモノリス1cm3当たりで0.5mLを超える。
【0142】
一実施形態において、固体支持体は、表面から内側に延在する複数の空隙を有する実質的に多孔質の粒子を含む。これらの粒子は、好ましくは、生物抽出物の分離に適合する大きさ、機械的強度、および浮力を有する。一実施形態において、これらの粒子は、シリカ、チタニア、ジルコニア、ハフニア、アルミナ、ガリア、スカンジア、イットリア、アクチニア、または希土類鉱物酸化物などの1種類以上の鉱物酸化物を含む。
【0143】
多孔質粒子が、固体バッファー固体支持体として使用される場合、比較的大きな粒子を使用することで、粒子体積に対する外部表面積を最小限にすることができ、それによって、タンパク質が非特異的に結合する危険性を軽減することができる。ある実施形態においては、これらの粒子は、約50μmを超える、または約100μmを超える、または約200μmを超える直径を有する。一例では、約150μmの粒子が、固体バッファーの固体支持体として使用される。粒子の細孔容積は、全体の粒子体積の10〜70%の範囲とすることができる。
【0144】
あるいは、多孔質プラスチックビーズを固体支持体として機能させることができる。ポリスチレンは、クロマトグラフィー用に細孔を有するビーズに成形可能なよく知られたポリマーである。他の合成ポリマーを使用することもでき、たとえば、メチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ならびに多孔質ナイロン、多孔質ポリビニルプラスチック、およびポリカーボネートを主成分とするものを使用することができる。多孔質粒子体のさらなる例は、米国特許第6,613,234号明細書、第5,470,463号明細書、第5,393,430号明細書、および第5,445,732号明細書に記載されており、これらのそれぞれを本明細書に援用する。
【0145】
イオン交換クロマトグラフィーは、化合物をそれらの実効電荷に基づいて分離する。布または正に帯電した官能基は、固体支持体マトリックスと共有結合して、それぞれ陽イオン交換体または陰イオン交換体のいずれかが得られる。帯電した化合物を、反対の電荷の交換体に加えると、その化合物は吸着するが、中性または同じ電荷の化合物は、カラムの空の容積内に溶出される。帯電した化合物の結合は可逆的であり、吸着した化合物は、一般に塩またはpHグラジエントを使用して溶出させる。
【0146】
用語「イオン交換樹脂」は、正または負の符号の1種類の基であるイオン化可能な基を有する固体の多孔質網目構造(無機または有機または複合材料)を意味する。正に帯電したイオン性基(陰イオン交換体)は、たとえば、第4級、第3級、および第2級のアミンおよびピリジンの誘導体である。負に帯電したイオン性基(陽イオン交換体)は、たとえば、スルホネート、カルボキシレート、およびホスフェートである。
【0147】
イオン交換樹脂の選択は、分離される化合物の性質に依存する。両性化合物の場合、その化合物のpIおよび種々のpH値におけるその安定性によって、分離計画が決定される。そのpIを超えるpHにおいて、対象となる化合物は負に帯電し、そのpIよりも小さいpHにおいては、その化合物は正に帯電する。したがって、その化合物がそのpIよりも大きいpHにおいて安定であれば、陰イオン交換樹脂が使用される。逆に,その化合物がそのpIよりも小さいpHで安定であれば、陽イオン交換樹脂が使用される。作業時のpHによっても、使用される交換体の種類が決まる。強イオン交換樹脂は広いpH範囲で能力を維持するが、弱イオン交換樹脂は、pHがその官能基のpKaに一致しなくなると能力が損なわれる。
【0148】
陰イオン交換体は、弱または強のいずれかに分類することができる。弱陰イオン交換体上の電荷基は弱塩基であり、脱プロトンするので、高いpHにおいてその電荷を失う。DEAE−セルロースは弱陰イオン交換体の一例であり、pH約9未満でそのアミノ基が正に帯電することができ、より高いpH値では徐々にその電荷を失う。他方で、強陰イオン交換体は、第4級アミンなどの強塩基を含有し、これは、イオン交換クロマトグラフィーに通常使用されるpH範囲(pH2〜12)全体で正に帯電した状態を維持する。
【0149】
陽イオン交換体も、弱または強のいずれかに分類することができる。強陽イオン交換体は、pH1〜14で帯電した状態を維持する強酸(スルホプロピル基など)を含有し、一方、弱陽イオン交換体は弱酸(カルボキシメチル基など)を含有し、これはpHが4または4.5未満に減少すると、その電荷を徐々に失う。
【0150】
本発明の一実施形態においては、第4級アミンまたはスルホン酸などの強イオン交換体が使用される。5〜8の間のpIを有するタンパク質を分離する場合などには、第3級アミンおよびカルボン酸などの弱イオン交換体を使用することもできる。
【0151】
表4は一般的なイオン交換体の一覧である。
【0152】
【表4】
【0153】
イオン交換樹脂は当技術分野において周知である。本発明に有用な市販のイオン交換体としては、QハイパーD(Q HyperD)、SハイパーD(S HyperD)、Qセファロース(Q Sepharose)、Sセファロース(S Sepharose)、QハイパーZ(Q HyperZ)、およびCMハイパーZ(CM HyperZ)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂を固体バッファービーズなどと混合して、たとえば、本発明のクロマトグラフィー材料を製造することができる。
【0154】
クロマトグラフィー材料は、5%〜95%の体積のイオン交換体を含むことができ、残部は固体バッファーである。
【0155】
タンパク質をそれらのpIに基づいて混合物から分離するために有用なクロマトグラフィー材料は、固体バッファーをイオン交換樹脂と混合することによって製造される。一実施形態において、それぞれ異なる固体支持体に取り付けた固体バッファーおよびイオン交換樹脂を組み合わせて混合物を形成する。さらに、この混合物を混合粒子の床とすることができる。
【0156】
別の一実施形態においては、クロマトグラフィー材料は、膜またはモノリスなどの1種類の固体支持体に取り付けられた固体バッファーおよびイオン交換樹脂を含む。別の例では、イオン交換樹脂が、1種類の粒子上の固体バッファーと混合される。この実施形態において、粒子に取り付けられた固体バッファーを最初に調製した後、イオン交換特性を有し大きな孔を有するポリマーを固体バッファーの上に形成する。
【0157】
本発明のクロマトグラフィー材料を通過するタンパク質は(たとえば、カラム、またはチャンバー102の系列を通過)は、固体バッファーによって生じるpHよりもそれぞれ下、上、または同じのいずれであるかに依存して、実効正電荷または実効負電荷のいずれかを有するか、あるいは中性となる。その環境のpHにおいてイオン交換樹脂とは反対の電荷を有するタンパク質は、そのイオン交換体に結合し、一方、中性または同じ電荷のタンパク質は、結合しないままであり、そのクロマトグラフィー材料を通過する。すなわち、たとえば、固体バッファーのpHにおいて負に帯電しているタンパク質は、イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂である場合には、そのイオン交換樹脂に結合する。次に、捕捉されたタンパク質は、そのクロマトグラフィー材料から溶出させることができる。したがって、本発明のクロマトグラフィー材料は、pIに基づいたタンパク質の分離に有用である。
【0158】
別の一実施形態においては、タンパク質は、クロマトグラフィー材料の系列を使用して、それぞれのpIに基づいて混合物から分離される。異なるクロマトグラフィー材料で構成される多段階カラム(またはチャンバー102の系列)中で、pHの不連続なグラジエントが発生する。このようなカラム(またはチャンバー102の系列)を通過する混合物中のタンパク質は、カラム(またはチャンバー102の系列)中での位置によって異なってイオン化され始める。あるタンパク質がイオン交換樹脂と反対側の電荷を有するようになると、そのタンパク質はイオン交換樹脂に結合する。したがって、カラム(またはチャンバー102の系列)を通過して移動する混合物は、カラム(またはチャンバー102の系列)の異なる区域を通過するときに、1つの分類のタンパク質が失われる。
【0159】
したがって、図1〜10に示される分離装置の1つは、装置のチャンバー102内に連続的に配置されたクロマトグラフィー材料の系列を含むことができる。このクロマトグラフィー材料の系列は、それぞれpH9、7、および5(上部から底部で)の陽イオン交換体および固体バッファーを含むことができる。生物抽出物のサンプルを、最初に、9の固体バッファーを保持する容器に適用する。pH9を超えるpIを有するタンパク質は、この環境で正に帯電し、したがって、最初のチャンバー102中のクロマトグラフィー材料のイオン交換体部分に結合し、大部分の生物抽出物の中では、これは少数のタンパク質種である。中性または負に帯電したタンパク質は結合せず、第1のチャンバー102/510から溶出する。次に、この溶出液を、pH7の固体バッファーを保持する第2のチャンバー102/510に装入する。このpHにおいて、7を超えるpIを有するタンパク質は正に帯電し、イオン交換体に結合する。中性および正に帯電したタンパク質は結合せず、そのクロマトグラフィー材料を保持する第2のチャンバー102/510から溶出する。したがって、この区分のクロマトグラフィー材料は、7〜9の間のpIを有するタンパク質を捕捉し、9を超えるpIを有するタンパク質は第1のチャンバー102/510中に既に捕捉されている。次に、この第2の溶出液を、pH5の固体バッファーを有するクロマトグラフィー材料を保持する第3のチャンバー102/510に装入する。上述の機構と類似の機構により、5〜7の間のpIのタンパク質が陽イオン交換体によって捕捉され、5以下のpIを有するタンパク質は捕捉されず、溶出液中に存在する。サブサンプルとなる結合したタンパク質は、種々のチャンバー102から従来手段によって後に溶出させることができる。したがって、タンパク質は、9を超えるpIを有するサブサンプル、7〜9の間のpIを有するサブサンプル、5〜7の間のpIを有するサブサンプル、および5未満のpIを有するサブサンプルに分画される。同様の方法で、次第に増加するpHの固体バッファーで構成されるクロマトグラフィー材料を使用して、陽イオン交換クロマトグラフィーによってタンパク質を分画することができる。
【0160】
一態様においては、系列は、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、10種類、11種類、または12種類の異なるクロマトグラフィー材料を含むことができる。前述したように、陰イオン交換体または陽イオン交換体のいずれが使用されるかに依存して、それぞれ、pHが増加する、または減少する順で、クロマトグラフィー材料が、カラムまたはチャンバー102内に配列される。
【0161】
クロマトグラフィー用アドーベント(adorbent)上に装入するための溶液の調製において、たとえば、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの単塩などの電解質を使用することができる。しかし、生体分子が電解質として作用する場合は、何も含まない水を使用することができる。タンパク質の凝集を防止するために、混合物に改質剤を加えることもできる。このような改質剤の例としては、グリコール、ならびに尿素または非イオン性洗剤などの非イオン性カオトロピック剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0162】
結合したタンパク質は、イオン交換樹脂からタンパク質を溶出させることができるあらゆる化学成分を使用して脱着させることができる。最も一般的には、塩溶液を使用してタンパク質を脱着させるが、pHの変化やディスプレーサーを利用することもできる。
【0163】
別の一実施形態においては、容器の系列を含む装置が提供され、系列中の第1の容器は、流体入口を含み、系列中の最終容器は流体出口を含み、系列中の各容器は、系列の次の容器と流体連通しており、系列中の各容器は、異なるクロマトグラフィー材料を含み、これらの容器は、クロマトグラフィー材料のpHが増加または減少する順序で配列される。
【0164】
このような一実施形態においては、クロマトグラフィー材料は、入口および出口を有するカートリッジまたは容器のセグメント内に収容される。これらのセグメントは、互いに積み重ね可能であり、互いに取り外し可能である。各セグメントは、異なるクロマトグラフィー材料を含有する。これらは、クロマトグラフィー材料を所定の位置に保持するためのフィルターまたは膜を有することができる。終端通しが取り付けられる場合、それらのセグメントは、溶液を注ぎ入れることができる1つのカラムを形成する。すべてのセグメントに流体を通した後、セグメントは互いに取り外すことができ、捕捉されたタンパク質は各セグメントから溶出させることができる。たとえば、国際公開第03/036304号パンフレット(シュルツ(Schultz)ら)を参照されたい。
【0165】
このような別の一実施形態においては、容器は、図1〜3に示されるもののようなマイクロタイタープレートのウェルであり、系列中の各容器は、取り外し可能な導管に接続されたチャンバー102/510によって画定される。前述したように、このプレートは、ドリッププレートまたはフィルタープレートであってよい。しかし、別の実施形態においては、プレートは、孔などのチャネルを含む部品を含むことができ、このチャネルは部品のいずれかの側で開いており、導管を孔の開口部に取り付けると、チャンバーが画定される。好ましくは、チャンバー102は、実質的に1つの面内に配列される。
【0166】
以下の実施例は単に説明を目的としており、それらを考慮した種々の修正または変更は、当業者によって提案され、それらが本出願の意図および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲の中に含まれることを理解されたい。
【実施例】
【0167】
実施例2:pH8.5の固体バッファーの調製
pH8.5の固相バッファーの調製は、pK8.5を有するN,N−ジメチル−アミノプロピル−アクリルアミド10mmol(これは1420mgの遊離塩基である)を50mLの水中に溶解させることによって行うことができる。この溶液を、pK3.1のモノマーのアクリルアミドグリコール酸(遊離酸)をゆっくり添加することによって、pH8.5まで滴定する。次に、30gのアクリルアミドおよび2gのメチレン−ビス−アクリルアミドをこの溶液に加える。次に、この溶液の体積を100mLまで増加させる。この最終溶液に、過硫酸アンモニウムおよびTEMEDなどの重合触媒を加える。次に、この溶液を、多孔質粒子の含浸などに使用する。ヒドロゲルが粒子の細孔内で重合してから、材料を洗浄して、副生成物および過剰の試薬を除去する。この固相バッファーは、20%エタノールの存在下で保管することができる。
【0168】
実施例3:pH4.6の固体バッファーの調製
pH4.6の固相バッファーの調製は、100mMのN−アクリロイルグリシン(pK4.6)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、N,N,N−トリエチルアミノエチルアクリルアミドの濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH4.6まで滴定する。得られた溶液に、200グラムのアクリルアミドおよび10グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加える。この混合物を完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に溶液に加える。38mLの最終溶液を、約75μM(100グラムで細孔容積が38mL)の多孔質ジルコニアビーズ100mLに加え、この無機ビーズの多孔質容積内に溶液が完全に吸収されるまで混合する。次に、含浸させたビーズを、交互に窒素を導入しながら真空下で3回脱気する。次に、この混合物を、モノマーが重合するまで窒素の存在下、室温で保管する。得られた固体バッファーは、水、同じpHのバッファー(たとえば、酢酸バッファーpH4.6)、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0169】
実施例4:pH9.3の固体バッファーの調製
pH9.3の固体バッファーの調製は、100mMのN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(pK9.3)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、アクリル酸の濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH9.3まで滴定する。得られた溶液に、200グラムのジメチル−アクリルアミドおよび10グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加える。得られた混合物を、完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。38mLの最終溶液を、約75μM(100グラムで細孔容積が38mL)の多孔質ジルコニアビーズ100mLに加え、このビーズの多孔質容積内に溶液が完全に吸収されるまで混合する。次に、含浸させたビーズを、交互に窒素を導入しながら真空下で3回脱気する。次に、この混合物を、モノマーが重合するまで窒素の存在下、室温で保管する。得られた材料は、水、同じpHのバッファー(たとえば、Tris−HClバッファー、pH9.3)、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0170】
実施例5:pH7.7の固体バッファーの調製
pH7.7の固体バッファーの調製は、50mMの3−モルホリノプロピルアクリルアミド(pK7.0)および50mMのN,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(pK8.5)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH7.7まで滴定する。得られた溶液に、200グラムのアクリルアミドおよび10グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加え、得られた混合物を、完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。38mLの最終溶液を、約75μM(100グラムで細孔容積が38mL)の多孔質ジルコニアビーズ100mLに加え、このビーズの多孔質容積内に溶液が完全に吸収されるまで混合する。次に、含浸させたビーズを、交互に窒素を導入しながら真空下で3回脱気する。次に、この混合物を、モノマーが重合するまで窒素の存在下、室温で保管する。得られた材料は、水、同じpHのバッファー(たとえば、モルホリン−HClバッファーpH7.7)、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0171】
実施例6:混合モードクロマトグラフィー材料(pH4.6の固体バッファーおよび陽イオン交換体)の調製
pH4.6の固体バッファーは、150mMのN−アクリロイルグリシン(pK4.6)および10mMのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、N,N,N−トリエチルアミノエチルアクリルアミドの濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH4.6まで滴定する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。
【0172】
別に、5%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩、5%のジメチルアクリルアミド、ならびに1%およびmMのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドで構成される第2の水溶液を調製する。次にこの溶液のpHを、塩基または酸を加えることによって4.6に調整する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。
【0173】
約75μM(100グラムで細孔容積が40mL)の多孔質ジルコニアビーズ100mLを、20mLの第1のモノマー溶液と混合し、前述の実施例の重合までのところに記載されるようにして処理する。この中間生成物を、水、同じpHのバッファー(たとえば、酢酸バッファーpH4.6)、さらに再び水で十分に洗浄する。洗浄した生成物は、乾燥エタノールおよびアセトンで繰り返し洗浄することなどによって乾燥させる。
【0174】
次に、この乾燥した中間生成物を、20mLの第2のモノマー溶液と混合する(無機ビーズの全多孔質容積を満たすまで)。上述のように第2の重合プロセスを開始する。最終的なクロマトグラフィー材料を、酢酸バッファーpH4.6、および蒸留水で十分に洗浄する。
【0175】
実施例7:pH6.5の固体バッファーの調製
pH6.5の固体バッファーの調製は、150mMの3−モルホリノプロピルアクリルアミド(pK7.0)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、N−アクリロイルグリシン(pK3.6)の濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH6.5まで滴定する。得られた溶液に、400グラムのアクリルアミドおよび30グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加え、得られた混合物を、完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’、N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。100mLのこの溶液を、3%のアラセル(arlacel)C(油溶性乳化剤)を含有する500mLのパラフィン油中に分散させる。この懸濁液を65℃で3時間撹拌し続けて、モノマーをともに共重合させる。重合中に形成されたヒドロゲルビーズを、濾過により回収し、非極性溶媒で十分に洗浄して、微量のパラフィン油を除去する。次に、このビーズを、水、同じpHのバッファー、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0176】
実施例8:不規則な粒子を使用したpH9.0の固体バッファーの調製
pH6.5の固体バッファーの調製は、150mMのN,N,N−トリエチル−アミノエチル−アクリルアミド(pK12)を1リットルの蒸留水中に溶解させることによって行うことができる。次にこの溶液を、アクリルアミドグリコール酸(pK3.1)の濃厚溶液(水中50%)を加えることによって、pH9.0まで滴定する。得られた溶液に、300グラムのジメチル−アクリルアミドおよび20グラムのN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドを加え、得られた混合物を、完全に溶解するまで撹拌する。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンおよび過硫酸アンモニウムで構成される触媒系を使用直前に加える。次にこの溶液を、窒素下で65℃の温浴に入れる。5時間後、充満したヒドロゲル下で重合が完了する。このヒドロゲルを小さな断片に切断し、粉砕して約100μmの粒子を得る。次に、粒子となった生成物を、水、次に同じpHのバッファー、さらに再び水で十分に洗浄する。続いて、この固体バッファーは、イオン交換体の存在下ですぐに使用することができる。
【0177】
実施例9:3種類の異なる固体バッファーと混合した陰イオン交換体を使用したpIに基づくタンパク質の分離
3種類のクロマトグラフィー材料の系列を、相互接続された部分カラムまたはチャンバー102/510(先行の出口が後続の入口と出会う)カラムまたはチャンバー102/510の系列として組み立てる。各クロマトグラフィー材料は、同じ陰イオン交換体(QハイパーZ(Q HyperZ)収着剤)を含むが、異なるpH、特にそれぞれ5.4、7.7、および9.5の異なる固体バッファーを含む。クロマトグラフィー部分カラムまたはチャンバー102は、pHが増加する順序で位置合わせされ、すなわち、第1の部分カラムまたはチャンバー102/510がpH5.4を有し、最終の吸着剤がpH9.5を有する。
【0178】
このQ陰イオン収着剤は、固相バッファーによって誘導されるすべてのpH範囲(5.4〜9.5)内で正に帯電する。
【0179】
5種類のタンパク質(リゾチーム(pIが11)、チトクロムc(pIが9.0)、ミオグロビン(pIが7.0)、ヒトアルブミン(pIが6.0)、およびフェチュイン(pI<5.0))を含有するサンプルを、10mMの塩化カリウム中で調製する。タンパク質間の相互作用を回避するため、2M尿素を加える。次にサンプルをカラム上または第1のチャンバー102/510中に装入する。
【0180】
第1のクロマトグラフィー材料においては、pH5.4において負に帯電する唯一のタンパク質であるため、フェチュインのみが吸着される。残りの4種類のタンパク質は、カラム中の第2のクロマトグラフィー材料または第2のチャンバー102/510中まで進む。
【0181】
第2のクロマトグラフィー材料においては、pH5.4でアルブミンおよびミオグロビンの両方が負に帯電する。したがってこれらはこのイオン交換体によって捕捉される。
【0182】
カラムまたは第3のチャンバー102/510中の第3のクロマトグラフィー材料においては、サンプル中に残留しpH9.5において負に帯電する唯一のタンパク質であるため、チトクロムCのみが吸着される。
【0183】
リゾチームは、pH9.5において実効正電荷を有する。したがって、これは、カラムまたは第3のチャンバー102/510を通り抜けて出てくる。
【0184】
吸着段階が終わってから、クロマトグラフィー材料を取り外し、タンパク質を脱着させるために別々に処理を行う。結合したタンパク質は1M塩化カリウムを使用することで脱着され、それによって複数のサブサンプルが得られる。
【0185】
実施例10:3種類の異なる固体バッファーと混合した陽イオン交換体を使用したpIに基づくタンパク質の分離
3種類のクロマトグラフィー材料の系列を、相互接続された部分カラムまたはチャンバー102(先行の出口が後続の入口と出会う)カラムの系列として組み立てる。各クロマトグラフィー材料は、同じ陽イオン交換体を含むが、異なるpH、特にそれぞれ5.4、7.7、および9.5の異なる固体バッファーを含む。クロマトグラフィー部分カラムまたはチャンバー102は、pHが減少する順序で位置合わせされ、すなわち、第1の部分カラムまたはチャンバー102/510がpH9.5を有し、最終の吸着剤がpH5.4を有する。
【0186】
この陽イオン交換体は、固相バッファーによって誘導されるすべてのpH範囲(5.4〜9.5)内で負に帯電する。
【0187】
5種類のタンパク質(リゾチーム(pIが11)、チトクロムc(pIが9.0)、ミオグロビン(pIが7.0)、ヒトアルブミン(pIが6.0)、およびフェチュイン(pI<5.0))を含有するサンプルを、10mMの塩化カリウム中で調製する。タンパク質間の相互作用を回避するため、2M尿素を加える。次にサンプルをカラム上または第1のチャンバー102/510中に装入する。
【0188】
第1のクロマトグラフィー材料においては、pH9.5において負に帯電する唯一のタンパク質であるため、リゾチームのみが吸着される。残りの4種類のタンパク質は、カラム中の第2のクロマトグラフィー材料または第2のチャンバー102/510まで進む。
【0189】
第2のクロマトグラフィー材料においては、サンプル中に残留しpH7.7において負に帯電する唯一のタンパク質であるため、チトクロムCのみが吸着される。残りのタンパク質は、カラム中の第3のクロマトグラフィー材料または第3のチャンバー102/510まで進む。
【0190】
第3のクロマトグラフィー材料においては、pH5.4でアルブミンおよびミオグロビンの両方が負に帯電する。したがってこれらのタンパク質はこの陰イオン交換体によって捕捉される。
【0191】
フェチュインは、pH5.4において実効正電荷を有する。したがって、フェチュインはカラムまたは第3のチャンバー102/510を通り抜けて出てくる。
【0192】
吸着段階が終わってから、クロマトグラフィー材料を取り外し、タンパク質を脱着させるために別々に処理を行う。結合したタンパク質は1M塩化カリウムを使用することで脱着され、それによって複数のサブサンプルが得られる。
【0193】
IV.疎水性インデックスに基づく分画
本明細書において本発明者らが説明する方法以外に疎水性インデックスによる他の分離方法が存在するのであれば、それらについて言及すべきである。
【0194】
本発明の別の一実施形態は、従来可能であったよりも高い感度および効率を実現しながら、生体分子成分の単離および検出を行うことによって、生体分子成分(すなわち、タンパク質、核酸、脂質、代謝物などの生体内作用によって生成される化学種)を含有する複合混合物の複雑性を軽減するための方法およびシステムを提供する。
【0195】
図12は、1000における本発明の一実施形態を説明している。後述のように少なくとも部分的に分割するために、複数の異なる生体分子成分1001を含む複合混合物を含有するサンプル溶液を、サンプル分画用カラム1002(またはチャンバー102/510の系列)に導入する。カラム1002(またはチャンバー102/510の系列)は、連続して(たとえば、連続するチャンバー102/510中)配列された複数の収着材料1004、1006、1008、および1010を含み、それらの中をサンプル溶液1001が連続的に通過することによって、各収着材料の単離が行われ、残りすべての溶液は容器1012に溶出させることができる。
【0196】
本発明の一実施形態においては、収着剤1004、1006、1008、1010によって実質的にすべての生体分子成分が捕捉されるように、収着剤量が選択される。本発明のより具体的な一実施形態においては、収着剤1004、1006、1008、1010のそれぞれが、複数の生体分子成分の実質的に固有のサブセットを捕捉する。したがって、収着剤1004はサブサンプル1014を捕捉するために有効であり、収着剤1006はサブサンプル1016を捕捉するために有効であり、収着剤1008はサブサンプル1018を捕捉するために有効であり、収着剤1010はサブサンプル1020を捕捉するために有効である。サンプル溶液1001中の複数の生体分子成分の種々のサブサンプルが捕捉された後、捕捉された生体分子成分を含む収着剤は、より長時間単離することができる(すなわち、カラムまたはチャンバー102/510から取り出すことができる)。サブサンプルは、収着剤から溶離させたり、他の方法で取り出したりすることによって、より詳細に後述するように、多次元分離プロトコールによりさらに処理することができる。
【0197】
本発明の多重分離方法は、少なくとも1000種類、少なくとも100,000種類、または少なくとも10,000,000種類の異なる生体分子種(たとえば、タンパク質)を含むサンプルなどの複雑な混合物中の検体の分画に特に有用である。本発明の方法は、生物学的サンプルから生体分子を分離する場合に特に有用である。そのようなサンプルとしては、たとえば、羊水、血液、脳脊髄液、関節内液、眼液、リンパ液、乳汁、汗 血漿、唾液 精液、精漿、血清、痰、滑液、涙、臍帯液、尿、生検ホモジネート、細胞培養液、細胞抽出物、細胞ホモジネート、ならし培地、発酵ブロス、組織ホモジネート、およびこれらの派生物を挙げることができる。
【0198】
本発明の利点の1つは、本発明の装置が、希望するあらゆる数の分離のために使用することができ、そのような分離に容易に適応可能なことである。さらに、たとえば、蠕動ポンプおよび/または真空ステーションなどの一部の基本的な実験室用設備以外に、装置を追加する必要がない。
【0199】
別の一実施形態においては、本発明はキットを提供する。本発明のキットは、本発明の装置と、分離媒体を含む少なくとも1つの容器とを含む。このようなキットは、分離媒体を含むチャンバーの個別の配列、および分離媒体の個別の系列をどのようにするかを使用者が決定できるため有用となる。したがって、ある実施形態においては、本発明のキットは、複数の異なる分離媒体を含む。本発明のキットは、場合により、装置の使用中にあるチャンバーから別のチャンバーにサンプルを移動させるためのバッファーなどの流体を含む少なくとも1つの容器を含むことができる。
【0200】
実施例:
前述の実施形態の1つを使用したヒト血清の分離プロトコールの1つを以下に説明する。
【0201】
ステップ1:図10に示される種類の96チャンバー(8×12)マイクロタイターフィルタープレート(米国ニュージャージー州のプリンストン・セパレーションズ(Princeton Separations,NJ,USA)、長いドリップノズル、25μMの膜孔径)の縦列内のチャンバーに、以下の機能の樹脂を150μl(全充填床体積)充填した:プロテインA、ブルー・トリスアクリル(blue trisacryl)、MEP、ヘパリン、緑色染料リガンド、およびフェニルプロピル。
【0202】
ステップ2:プラスチックチューブを使用して、(a)第1のチャンバーの出口の第2のチャンバーの入口への接続し、(b)第2のチャンバーの出口の第3のチャンバーの入口への接続(など)を行った後、蠕動ポンプ(バイオ−ラド・モデルEP−1エコノ・ポンプ(Bio−Rad model EP−1 Econo Pump))を第1のチャンバーの入口に接続した。次に、20体積の結合バッファー(1×PBSpH7[16体積]、1MTris−HClバッファーpH8[9体積]、および脱イオン水[75体積])を、チャンバー内(すなわち、樹脂の系列を通過させる)に0.2ml/分の流速で圧送した。
【0203】
ステップ3:結合バッファーを平衡化させた後、40μlの変性血清(米国ジョージア州ノークロスのインタージェン(Intergen,Norcross,GA,USA)のヒト血清、2mlの血清に2.5mLの9M尿素、2%のCHAPS(3−[(コラミドプロピル)ジメチルアミノ]−1−プロパンスルホネート)を加えて室温で1時間で変性させた)を結合バッファー中1:5で希釈した。希釈した血清を、次に、第1のチャンバーの入口に導入した。
【0204】
ステップ4:結合バッファーを使用して、チャンバーを通過する流れを0.02ml/分の速度に再設定した。最初の60分間は、最終チャンバーの出口からの溶出液は廃棄した。
【0205】
ステップ5:最初の60分の後、次の60分間で溶出液を収集した。
【0206】
ステップ6:合計120分後、流れを停止させ、すべてのプラスチックチューブをマイクロタイタープレートから取り外した。
【0207】
ステップ7:各ウェル内の過剰のバッファーは真空によって除去し、廃棄した。
【0208】
ステップ8:次に、各ウェルで捕捉されたタンパク質は、(i)TFA(0.8体積)−水(79.2体積)−ACN(6.6体積)−IPA(13.4体積)、または(ii)水酸化アンモニウム(8体積)−水(72体積)−ACN(6.6体積)−IPA(13.4体積)のいずれかを使用して、個別に溶出させた。特に、20分間穏やかに混合しながら収着剤をインキューベートすることによって、タンパク質の溶出を行った。
【0209】
ステップ9:各収着剤からの上澄みは、真空濾過によって収集プレート中に回収し、凍結させ、凍結乾燥させた。凍結乾燥した残分を次に100μLの25mMのTris−HClバッファーpH7.5または150μlの50mMのヘペス(Hepes)0.1%OGPバッファー中に再溶解させた。凍結乾燥した残分を再溶解させたもののアリコートを、次にSELDI−質量分析(米国カリフォルニア州フリーモントのサイファージェン・バイオシステムズ・インコーポレイテッド(Ciphergen Biosystems Inc.,Fremont,CA,USA))によって分析した。この方法を使用して、流出分を含めて合計8つの分画が各サンプルから得られた。
【0210】
ステップ10:Q10プロテインチップ・アレイ(Q10 ProteinChip array)(サイファージェン・バイオシステムズ・インコーポレイテッド(Ciphergen Biosystems Inc.))の各スポットについて、製造元の取扱説明書に記載されている通り、記載のアレイ特異的結合バッファー150μLを使用した5分間の平衡化を2回行った。次に、各スポット表面に、あらかじめアレイ結合バッファーで半分に希釈しておいたサンプル30μL(150μLの溶解バッファーには50μL)を装入した。
【0211】
ステップ11:激しい振盪下30分のインキュベーション時間の後、各スポットについて、150μLの結合バッファーを5分間使用した洗浄を2回行って、吸着していないタンパク質を除去した。続いて、各スポットを脱イオン水で迅速に洗浄した。
【0212】
ステップ12:すべての表面を乾燥させ、ACN(49.5体積)−TFA(0.5体積)−脱イオン水(50体積)の混合物中のSPAの飽和溶液0.5μLを2回装入し、再び乾燥させた。
【0213】
ステップ13:次に、質量分析計読取機を、正イオンモードにおいて、イオン加速電位20kVおよび検出器電圧2.8kVで使用して、すべてのアレイを分析した。質量分析計によって調べた分子量範囲m/z0〜300であった。焦点質量は、高質量範囲および低質量範囲でそれぞれ30および7に設定した。スポット表面上のタンパク質の脱離/イオン化に関与するレーザー強度は、高質量範囲および低質量範囲でそれぞれ200単位および180単位に設定し、検出器の感度は9単位に設定した。
【0214】
ステップ14:質量分析の結果を図11に示しており、これはヒト血清の分画のチャートである。
【0215】
以上に本発明の実施形態を説明してきたが、本発明がそのように限定されるものではない。本発明の範囲および意図から逸脱せずに、開示した本発明の実施形態に対する種々の修正および変形を行えることは、当業者には明らかであろう。
【0216】
たとえば、前述のチューブ/導管は、図12A〜12Fに示されるような一連のバルブで置き換え、および/または強化が可能である。具体的には、図12Aに示されるように、標準的な96ウェルプレート中の各チャンバーは、バルブが中に存在する導管によって、同じ横列および縦列でそのチャンバーに隣接する3つまたは4つのチャンバーのそれぞれに接続することができる。図12Bに示される第1の分離プロトコール(たとえばpI分離)中、特定の横列に沿った各チャンバーのそれぞれを接続するバルブを開放することができ、他のすべてのバルブは閉じられる。その結果、横列中のバルブが開放された導管を介して、第1の分離プロトコールを進行させることができる。続いて、図12Cに示されるように、横列に沿った各バルブを閉じた後、この横列と交差する1つ以上の縦列中の各バルブを開くことができる。次に、図12Dに示されるように、縦列中のバルブが開放された導管を介して、第2の分離プロトコール(たとえば疎水性分離)を進行させることができる。さらに、図12D中の第2の分離プロトコールが1つの縦列のみを介して進行した場合は、図12Eに示されるように、その縦列に沿った各バルブを閉じた後、その縦列と交差する1つ以上の他の横列中の各バルブを開放することができる。次に、図12Fに示されるように、それらの横列中のバルブが開放された導管を介して、第3の分離プロトコール(たとえば質量分析)を進行させることができる。
【0217】
したがって、これらの別の流体工学装置および関連する分離方法は、完全に本発明の範囲内にある。したがって、本明細書に記載される流体装置および方法は、単なる説明であり、特許請求の範囲に示される本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】8×12マトリックスで配列された96のチャンバーを含み、本発明の第1の実施形態において使用されるマイクロタイタープレートの斜視図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態による上部導管プレートの断面図である。
【図2B】線IIB−IIBに沿った図1のマイクロタイタープレートの断面図である。
【図2C】本発明の第1の実施形態による下部導管プレートの断面図である。
【図3】それぞれ図2A〜2Cの上部プレート、マイクロタイタープレート、および下部プレートの組立断面図である。
【図4】収集プレートに位置合わせされた図1および3のマイクロタイタープレートの断面図である。
【図5】8×12マトリックスで配列された96のチャンバーを含み、本発明の第2の実施形態において使用されるマイクロタイタープレートの斜視図である。
【図6】図5のマイクロタイタープレートの断面図であり、あるチャンバーの出口から他のチャンバーの入口まで延在する複数の導管を示している。
【図7】収集プレートに位置合わせされた図6のマイクロタイタープレートの断面図であり、チャンバーの出口から導管が取り外された様子を示している。
【図8A】第3の実施形態の断面図であり、図1〜4の実施形態の上部プレートが2つの別々の部品に分割され、それによってこの実施形態図5〜7に示される実施形態のように機能させることができる。
【図8B】図8Aに示されるマイクロタイタープレートの別の実施形態である。
【図9A】本発明の第4の実施形態による上部カバープレートの上面図である。
【図9B】本発明の第4の実施形態による上部導管プレートの上面図である。
【図9C】本発明の第4の実施形態による上部ガスケットプレートの上面図である。
【図9D】チャンバーの2つの横列を含み、本発明の第4の実施形態に使用可能なマイクロタイタープレートの上面図である。
【図9E】本発明の第4の実施形態による底部ガスケットプレートの上面図である。
【図9F】本発明の第4の実施形態による底部導管プレートの上面図である。
【図9G】本発明の第4の実施形態による底部カバープレートの上面図である。
【図9H】矢印9Hで示される線に沿った図9A−9Gのプレートの側断面図である。
【図9I】矢印9Iで示される線に沿った図9A−9Gのプレートの側断面図である。
【図10】隣り合って配列された複数のサンプル経路の上面図である。
【図11】クロマトグラフィー樹脂の一系列を介したヒト血清の分画のチャートである。
【図12A】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12B】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12C】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12D】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12E】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【図12F】バルブの系列で相互接続されたチャンバーのマトリックスで実施される別の実施形態の多次元分離プロトコールを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置であって、
(i)前記装置は、前記プレートの一方の側の上の第1の面と、前記プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、
(ii)各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部を有し、他方の面に出口開口部を有し、
(iii)複数の前記チャンバーは、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管は、1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;
(iv)前記チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口を、すべての中間チャンバーのそれぞれを介して、最終チャンバーの出口まで接続する流体経路が画定される、装置。
【請求項2】
少なくとも一部の前記導管が、前記プレートを貫通して、前記第2の面の出口開口部を前記第1の面の入口開口部に接続している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記導管のすべてが、前記第2の面の出口開口部を前記第1の面の入口開口部に接続している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記系列中の複数の前記チャンバーが、ライナー系列で配列しており、前記チャンバーのそれぞれが、両面で開放するチャネルに隣接しており、少なくとも1つの出口および入口の間の前記流体流路が前記チャネルを貫通している、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも一部の前記導管が、前記第1の面の出口開口部を前記第1の面の入口開口部に接続するか、または前記第2の面の出口開口部を前記第2の面の入口開口部に接続する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記導管が、前記第2の面の出口開口部を前記第2の面の入口開口部に接続し、少なくとも1つの前記導管が前記第1の面の出口開口部を前記第1の面の入口開口部に接続する、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記導管が前記装置から取り外し可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記系列中の少なくとも1つチャンバーが分離媒体を含有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記系列中の前記チャンバーのそれぞれが分離媒体を含有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記系列中の複数の前記チャンバーが異なる分離媒体を含有する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記分離媒体の系列が、前記流体流路の方向に沿って:(a)高選択性媒体、中間の選択性の媒体、および低選択性媒体;あるいは(b)低選択性媒体、中間の選択性の媒体、および高選択性媒体、を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置中の前記複数のチャンバーが8の倍数である、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記装置中の前記複数のチャンバーが12の倍数である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記チャンバーが少なくとも1つの直線系列で配列されている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記チャンバーが複数の横列および縦列で配列されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記チャンバーが、8×12の配列で配列されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
流体流路を画定する複数の系列のチャンバーおよび導管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記装置の前記チャンバーに対応して、横列および縦列で配列された複数のウェルを含む収集プレートをさらに含み:
前記収集プレートの前記ウェルのそれぞれが入口を有し;
前記導管を外すと、前記収集プレートの前記ウェルの前記入口が、前記装置の前記チャンバーと位置合わせされるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記流体流路に沿って流体サンプルを押圧する、または吸引するように構成されたポンプをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記チャンバーに対応したウェルを含むドリップスルー(drip−through)マイクロタイタープレートをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
装置であって:
(a)チャンバーの少なくとも1つの横列を含むプレートであって、各チャンバーが、前記プレートの第1の面の上の入口と、前記プレートの反対側の第2の面の上の出口とを含むプレートと;
(b)前記プレートの前記第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:
(I)1組の奇数番目のウェルの入口に位置合わせされた複数の開口部と、
(II)1組の偶数番目のウェルに位置合わせされた複数の開放端導管とを含み、前記導管が、前記偶数番目のウェルの入口から出口までを通る、第1の部材と;
(c)前記第1の部材に密封係合する取り外し可能な第2の部材であって:
(I)第1のチャンバーの前記入口に位置合わせされることによって、前記第1のチャンバーへの入口を形成する開口部と;
(II)複数の導管と、を含み、前記導管のそれぞれが、前記第1の部材の開口部を前記第1の部材の導管に接続する、第2の部材と;
(d)前記プレートの前記第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、前記チャンバーの前記出口に位置合わせされた複数の開口部を含むガスケットと;
(e)前記ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、前記ガスケット内の前記開口部に位置合わせされた複数の溝を含み、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、奇数番目のウェルの前記出口を偶数番目のウェルの前記出口に接続する、第3の部材と、を含み、
前記チャンバーと導管との組み合わせによって、奇数番目のウェルを入口から出口まで貫通し、偶数番目のウェルを出口から入口まで貫通する流体流路が画定される、装置。
【請求項22】
前記奇数番目のチャンバーのそれぞれが分離媒体を含有する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
装置であって:
(a)チャンバーの少なくとも1つの横列を含むプレートであって、各チャンバーが、前記プレートの第1の面の上の第1の開口部と、前記プレートの反対側の第2の面の上の第2の開口部とを含み、前記開口部が、前記チャンバーのそれぞれの入口および出口を画定する、プレートと;
(b)前記プレートの前記第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:
(I)前記第1の開口部に位置合わせされ、前記横列中の第1の前記チャンバーの、入口として機能するように構成された入口ポートと、
(II)前記横列中の他のチャンバーの前記第1の開口部の組を連続的に接続する複数の導管とを含む、第1の部材と;
(c)前記プレートの前記第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、前記チャンバーの前記第2の開口部に位置合わせされた複数の開口部を含むガスケットと;
(d)前記ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、前記横列中の他のチャンバーの前記第2の開口部の組を連続的に接続する複数の導管を含む、第3の部材と、を含み、
前記ウェルと導管との組み合わせによって、前記横列中の前記チャンバーの入口から前記最終チャンバーの前記出口まで通る流体流路が画定される、装置。
【請求項24】
奇数番目のウェルのそれぞれが分離媒体を含有する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
装置であって:
(a)プレートであって、ウェルの第1および第2の横列の少なくとも1組を含み、各ウェルが、前記プレートの第1の面の上の入口と、前記プレートの反対側の第2の面の上の出口とを含む、プレートと;
(b)前記プレートの前記第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:
(I)第1の横列中のウェルの前記入口に位置合わせされ、それによってチャンバーが画定される複数の開口部と、
(II)第2の横列中のウェルに位置合わせされた複数の開放端チャネルであって、前記ウェルの前記入口から前記出口まで通る導管を画定する、複数の開放端チャネルと、を含む第1の部材と;
(c)前記第1の部材に密封係合する取り外し可能な第2の部材であって:
(I)第1の横列中の第1のウェルの入口に位置合わせされた前記第1の部材中の開口部に位置合わせされ、それによって前記第1のチャンバーに前記入口を形成する開口部と;
(II)前記第1の部材の前記開口部に位置合わせされた複数の溝であって、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、第1の横列中のウェルのn番目の入口を、第2の横列中のウェルのn番目の入口に接続する、複数の溝と、を含む第2の部材と;
(d)前記プレートの前記第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、前記ウェルの前記出口に位置合わせされた複数の開口部を含む、ガスケットと;
(e)前記ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって:
(I)前記ガスケット内の前記開口部に位置合わせされた複数の溝であって、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、第1の横列中のウェルのn番目の出口を、第2の横列中のウェルのn+1番目の出口に接続する、複数の溝と;
(II)最終チャンバーの出口に位置合わせされた開口部と、を含む第3の部材と、を含み;
前記ウェルと導管との組み合わせによって、第1の横列中の前記ウェルの入口から出口まで通る流体流路が画定される、装置。
【請求項26】
(i)前記第2の取り外し可能な部材が、第1の副部品と第2の副部品とを含み:
(1)前記第1の副部品が、前記第1の部材中の前記開口部に位置合わせされた開口部を含み、
(2)前記第2の副部品が、前記第1の部材中の前記開口部に位置合わせされた開口部と、前記第1の副部品を前記第2の副部品に押し付けた場合に前記溝を形成する複数の開口部と、を含み;
(ii)前記第3の取り外し可能な部材が、第3の副部品と第4の副部品とを含み:
(1)前記第3の副部品が、前記最終チャンバーの前記出口に位置合わせされた開口部を含み、
(2)前記第4の副部品が、前記最終チャンバーの前記出口に位置合わせされた開口部と、前記第3の副部品を前記第4の副部品に押し付けた場合に前記溝を形成する複数の開口部とを含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
奇数番目のウェルが分離媒体を含有する、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
a)プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置を提供するステップであって、
(i)前記装置が、前記プレートの一方の側の上の第1の面と、前記プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、
(ii)各チャンバーが、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部、および他方の面に出口開口部を有し;
(iii)複数の前記チャンバーが、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管が1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;
(iv)前記チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口を、すべての中間チャンバーのそれぞれを介して、最終チャンバーの出口まで接続する流体流路が画定され;
(v)前記系列中の各チャンバーは異なる分離媒体を含有する、ステップと;
b)複数の検体を含むサンプルを、前記流体流路に沿って、第1のチャンバーの前記入口から、前記最終チャンバーの前記出口に通すことによって、前記分離媒体が、前記媒体に対して親和性を有する検体を捕捉するステップと;
c)出口と入口を接続する前記導管を前記装置から取り外すステップと;
d)捕捉された検体を独立に前記チャンバーから溶出させるステップと;
e)前記溶出した検体を収集するステップと、を含む方法。
【請求項29】
少なくとも1つのチャンバーから溶出した検体を検出するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記検体を検出するステップが質量分析またはゲル電気泳動によって実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記溶出ステップが、少なくとも1つのチャンバーから複数の分画を溶出させるステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記サンプルが、血液、尿、脳脊髄液、およびそれらの派生物からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
(b)(1)前記分離媒体によって捕捉された少なくとも1つの前記検体を2つ以上のミニサンプルに分離するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
(b)(1)前記分離媒体によって捕捉された少なくとも1つの前記検体を、質量分析、等電点電気泳動、疎水性、および/または親水性の1つ以上のプロトコールを使用して、2つ以上のミニサンプルに分離するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
キットであって:
プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置であって、
(i)前記装置が、前記プレートの一方の側の上の第1の面と、前記プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、
(ii)各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部、および他方の面に出口開口部を有し;
(iii)複数の前記チャンバーが、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管が1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;
(iv)前記チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口を、すべての中間チャンバーのそれぞれを介して、最終チャンバーの出口まで接続する流体流路が画定される、装置と;
分離媒体を含有する少なくとも1つの容器と、を含むキット。
【請求項36】
検体の多次元分離方法であって:
a.サンプル中の検体を複数の第1のアリコートに分離するステップであって:
i.連続的に配列され最初から最終まで流体連通している異なる第1の収着剤の第1の系列を提供することと;
ii.前記サンプルを、前記第1の系列の最初から最終まで流すことによって、前記サンプルを前記異なる収着剤に連続的に接触させ、前記第1の収着剤が、第1の物理的化学的性質に基づいて検体を捕捉し、前記第1の収着剤の順序は、それによって前記収着剤が前記サンプル中の検体に結合する前記第1の物理的化学的性質に関する選択性が低下する順序で最初から最終まで配列され、それによってそれぞれの前記収着剤が、異なる組の検体を捕捉することと:
iii.検体を複数の前記収着剤から前記複数の第1のアリコートに溶出させることと、によるステップと;
b.複数の前記第1のアリコートのそれぞれの中の検体を複数の第2のアリコートに分離するステップであって、独立に:
i.連続的に配列され最初から最終まで流体連通している異なる第2の収着剤の第2の系列を提供することと;
ii.第1のアリコートを、前記第2の系列の最初から最終まで流すことによって、前記サンプルを前記異なる収着剤に連続的に接触させ、前記第2の収着剤は、第2の異なる物理的化学的性質に基づいて検体を捕捉し、前記第2の収着剤の順序は、それによって前記収着剤が前記サンプル中の検体に結合する前記第2の物理的化学的性質に関する選択性が低下する順序で最初から最終まで配列され、それによってそれぞれの前記収着剤が、異なる組の検体を捕捉することと;
iii.検体をそれぞれの前記収着剤から前記複数の第2のアリコートに溶出させることと、によるステップと;
c.複数の第2のアリコート中の前記検体を質量分析によって分離するステップと、を含む方法。
【請求項37】
収着剤の前記第1の系列が、等電点に基づいて検体に結合し、最高等電点から最低等電点まで、または最低等電点から最高等電点までの順序で検体を捕捉するように配列される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の収着剤のそれぞれが、固体バッファーとイオン交換材料とを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
収着剤の前記第2の系列が、疎水性インデックスに基づいて検体に結合し、最高の疎水性から最低の疎水性までの順序で検体を捕捉するように配列される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の収着剤のそれぞれが、炭化水素鎖およびアミンリガンドを含み、前記系列中の各収着剤の前記炭化水素鎖が、前の収着剤の炭化水素鎖よりも多くの炭素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
収着剤の前記第1の系列が、疎水性インデックスに基づいて検体に結合し、最高の疎水性から最低の疎水性までの順序で検体を捕捉するように配列される、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の収着剤のそれぞれが、炭化水素鎖およびアミンリガンドを含み、前記系列中の各収着剤の前記炭化水素鎖が、前の収着剤の炭化水素鎖よりも多くの炭素を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
収着剤の前記第2の系列が、等電点に基づいて検体に結合し、最高等電点から最低等電点まで、または最低等電点から最高等電点までの順序となる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の収着剤のそれぞれが、固体バッファーとイオン交換材料とを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記質量分析がレーザー脱離/イオン化質量分析である、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記質量分析がエレクトロスプレー質量分析である、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
装置であって:
プレート内に配列された交差する複数の横列および縦列を含み、
前記横列のそれぞれが、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは前記横列中の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、
前記縦列のそれぞれが、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは前記横列内の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、
1つの前記横列中の少なくとも一部の前記チャンバーが、特定の範囲内のpI値を有する分子を捕捉するように構成されたクロマトグラフィー分離媒体を含み、前記チャンバーの前記クロマトグラフィー分離媒体が、前記横列中の前記チャンバー内で、最低から最高または最高から最低となるよう連続して配列されており、
少なくとも1つの前記縦列中の少なくとも一部の前記チャンバーが、特定の範囲内の疎水性値を有する分子を捕捉するように構成された疎水性分離媒体を含み、前記チャンバーの前記疎水性分離媒体は、前記縦列中の前記チャンバー内で最低から最高または最高から最低となるように連続して配列されている、装置。
【請求項48】
検体の多次元分離方法であって:
(a)プレート内に配列された交差する複数の横列および縦列を含む装置を提供するステップであって、前記横列のそれぞれが、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは前記横列中の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、前記縦列のそれぞれが、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは前記横列内の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、1つの前記横列中の少なくとも一部の前記チャンバーが、特定の範囲内のpI値を有する分子を捕捉するように構成されたクロマトグラフィー分離媒体を含み、前記チャンバーの前記クロマトグラフィー分離媒体が、前記横列中のチャンバー内で、最低から最高または最高から最低となるよう連続して配列されており、少なくとも1つの前記縦列中の少なくとも一部の前記チャンバーが、特定の範囲内の疎水性値を有する分子を捕捉するように構成された疎水性分離媒体を含み、前記チャンバーの前記疎水性分離媒体は、前記縦列中の前記チャンバー内で最低から最高または最高から最低となるように連続して配列されているステップと;
(b)前記クロマトグラフィー分離媒体を含有する前記チャンバーを含む前記横列中の第1のチャンバーにサンプルを供給するステップと;
(c)前記横列中の前記クロマトグラフィー分離媒体の系列に前記サンプルを通過させることによって、前記サンプルを複数のサブサンプルに分離し、それぞれを前記横列の前記チャンバーのそれぞれに供給するステップと;
(d)前記縦列中の前記疎水性分離媒体の系列に前記サンプルを通過させることによって、前記横列の少なくとも1つの前記チャンバー中の前記サブサンプルを複数のミニサンプルに分離し、それぞれを交差する前記縦列の前記チャンバーのそれぞれに供給するステップと、を含む方法。
【請求項1】
プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置であって、
(i)前記装置は、前記プレートの一方の側の上の第1の面と、前記プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、
(ii)各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部を有し、他方の面に出口開口部を有し、
(iii)複数の前記チャンバーは、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管は、1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;
(iv)前記チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口を、すべての中間チャンバーのそれぞれを介して、最終チャンバーの出口まで接続する流体経路が画定される、装置。
【請求項2】
少なくとも一部の前記導管が、前記プレートを貫通して、前記第2の面の出口開口部を前記第1の面の入口開口部に接続している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記導管のすべてが、前記第2の面の出口開口部を前記第1の面の入口開口部に接続している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記系列中の複数の前記チャンバーが、ライナー系列で配列しており、前記チャンバーのそれぞれが、両面で開放するチャネルに隣接しており、少なくとも1つの出口および入口の間の前記流体流路が前記チャネルを貫通している、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも一部の前記導管が、前記第1の面の出口開口部を前記第1の面の入口開口部に接続するか、または前記第2の面の出口開口部を前記第2の面の入口開口部に接続する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの前記導管が、前記第2の面の出口開口部を前記第2の面の入口開口部に接続し、少なくとも1つの前記導管が前記第1の面の出口開口部を前記第1の面の入口開口部に接続する、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記導管が前記装置から取り外し可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記系列中の少なくとも1つチャンバーが分離媒体を含有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記系列中の前記チャンバーのそれぞれが分離媒体を含有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記系列中の複数の前記チャンバーが異なる分離媒体を含有する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記分離媒体の系列が、前記流体流路の方向に沿って:(a)高選択性媒体、中間の選択性の媒体、および低選択性媒体;あるいは(b)低選択性媒体、中間の選択性の媒体、および高選択性媒体、を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置中の前記複数のチャンバーが8の倍数である、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記装置中の前記複数のチャンバーが12の倍数である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記チャンバーが少なくとも1つの直線系列で配列されている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記チャンバーが複数の横列および縦列で配列されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記チャンバーが、8×12の配列で配列されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
流体流路を画定する複数の系列のチャンバーおよび導管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記装置の前記チャンバーに対応して、横列および縦列で配列された複数のウェルを含む収集プレートをさらに含み:
前記収集プレートの前記ウェルのそれぞれが入口を有し;
前記導管を外すと、前記収集プレートの前記ウェルの前記入口が、前記装置の前記チャンバーと位置合わせされるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記流体流路に沿って流体サンプルを押圧する、または吸引するように構成されたポンプをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記チャンバーに対応したウェルを含むドリップスルー(drip−through)マイクロタイタープレートをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
装置であって:
(a)チャンバーの少なくとも1つの横列を含むプレートであって、各チャンバーが、前記プレートの第1の面の上の入口と、前記プレートの反対側の第2の面の上の出口とを含むプレートと;
(b)前記プレートの前記第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:
(I)1組の奇数番目のウェルの入口に位置合わせされた複数の開口部と、
(II)1組の偶数番目のウェルに位置合わせされた複数の開放端導管とを含み、前記導管が、前記偶数番目のウェルの入口から出口までを通る、第1の部材と;
(c)前記第1の部材に密封係合する取り外し可能な第2の部材であって:
(I)第1のチャンバーの前記入口に位置合わせされることによって、前記第1のチャンバーへの入口を形成する開口部と;
(II)複数の導管と、を含み、前記導管のそれぞれが、前記第1の部材の開口部を前記第1の部材の導管に接続する、第2の部材と;
(d)前記プレートの前記第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、前記チャンバーの前記出口に位置合わせされた複数の開口部を含むガスケットと;
(e)前記ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、前記ガスケット内の前記開口部に位置合わせされた複数の溝を含み、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、奇数番目のウェルの前記出口を偶数番目のウェルの前記出口に接続する、第3の部材と、を含み、
前記チャンバーと導管との組み合わせによって、奇数番目のウェルを入口から出口まで貫通し、偶数番目のウェルを出口から入口まで貫通する流体流路が画定される、装置。
【請求項22】
前記奇数番目のチャンバーのそれぞれが分離媒体を含有する、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
装置であって:
(a)チャンバーの少なくとも1つの横列を含むプレートであって、各チャンバーが、前記プレートの第1の面の上の第1の開口部と、前記プレートの反対側の第2の面の上の第2の開口部とを含み、前記開口部が、前記チャンバーのそれぞれの入口および出口を画定する、プレートと;
(b)前記プレートの前記第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:
(I)前記第1の開口部に位置合わせされ、前記横列中の第1の前記チャンバーの、入口として機能するように構成された入口ポートと、
(II)前記横列中の他のチャンバーの前記第1の開口部の組を連続的に接続する複数の導管とを含む、第1の部材と;
(c)前記プレートの前記第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、前記チャンバーの前記第2の開口部に位置合わせされた複数の開口部を含むガスケットと;
(d)前記ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって、前記横列中の他のチャンバーの前記第2の開口部の組を連続的に接続する複数の導管を含む、第3の部材と、を含み、
前記ウェルと導管との組み合わせによって、前記横列中の前記チャンバーの入口から前記最終チャンバーの前記出口まで通る流体流路が画定される、装置。
【請求項24】
奇数番目のウェルのそれぞれが分離媒体を含有する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
装置であって:
(a)プレートであって、ウェルの第1および第2の横列の少なくとも1組を含み、各ウェルが、前記プレートの第1の面の上の入口と、前記プレートの反対側の第2の面の上の出口とを含む、プレートと;
(b)前記プレートの前記第1の面に密封係合する取り外し可能な第1の部材であって:
(I)第1の横列中のウェルの前記入口に位置合わせされ、それによってチャンバーが画定される複数の開口部と、
(II)第2の横列中のウェルに位置合わせされた複数の開放端チャネルであって、前記ウェルの前記入口から前記出口まで通る導管を画定する、複数の開放端チャネルと、を含む第1の部材と;
(c)前記第1の部材に密封係合する取り外し可能な第2の部材であって:
(I)第1の横列中の第1のウェルの入口に位置合わせされた前記第1の部材中の開口部に位置合わせされ、それによって前記第1のチャンバーに前記入口を形成する開口部と;
(II)前記第1の部材の前記開口部に位置合わせされた複数の溝であって、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、第1の横列中のウェルのn番目の入口を、第2の横列中のウェルのn番目の入口に接続する、複数の溝と、を含む第2の部材と;
(d)前記プレートの前記第2の面に密封係合する取り外し可能なガスケットであって、前記ウェルの前記出口に位置合わせされた複数の開口部を含む、ガスケットと;
(e)前記ガスケットに密封係合する取り外し可能な第3の部材であって:
(I)前記ガスケット内の前記開口部に位置合わせされた複数の溝であって、これらを合わせたものが複数の導管を形成し、各導管が、第1の横列中のウェルのn番目の出口を、第2の横列中のウェルのn+1番目の出口に接続する、複数の溝と;
(II)最終チャンバーの出口に位置合わせされた開口部と、を含む第3の部材と、を含み;
前記ウェルと導管との組み合わせによって、第1の横列中の前記ウェルの入口から出口まで通る流体流路が画定される、装置。
【請求項26】
(i)前記第2の取り外し可能な部材が、第1の副部品と第2の副部品とを含み:
(1)前記第1の副部品が、前記第1の部材中の前記開口部に位置合わせされた開口部を含み、
(2)前記第2の副部品が、前記第1の部材中の前記開口部に位置合わせされた開口部と、前記第1の副部品を前記第2の副部品に押し付けた場合に前記溝を形成する複数の開口部と、を含み;
(ii)前記第3の取り外し可能な部材が、第3の副部品と第4の副部品とを含み:
(1)前記第3の副部品が、前記最終チャンバーの前記出口に位置合わせされた開口部を含み、
(2)前記第4の副部品が、前記最終チャンバーの前記出口に位置合わせされた開口部と、前記第3の副部品を前記第4の副部品に押し付けた場合に前記溝を形成する複数の開口部とを含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
奇数番目のウェルが分離媒体を含有する、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
a)プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置を提供するステップであって、
(i)前記装置が、前記プレートの一方の側の上の第1の面と、前記プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、
(ii)各チャンバーが、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部、および他方の面に出口開口部を有し;
(iii)複数の前記チャンバーが、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管が1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;
(iv)前記チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口を、すべての中間チャンバーのそれぞれを介して、最終チャンバーの出口まで接続する流体流路が画定され;
(v)前記系列中の各チャンバーは異なる分離媒体を含有する、ステップと;
b)複数の検体を含むサンプルを、前記流体流路に沿って、第1のチャンバーの前記入口から、前記最終チャンバーの前記出口に通すことによって、前記分離媒体が、前記媒体に対して親和性を有する検体を捕捉するステップと;
c)出口と入口を接続する前記導管を前記装置から取り外すステップと;
d)捕捉された検体を独立に前記チャンバーから溶出させるステップと;
e)前記溶出した検体を収集するステップと、を含む方法。
【請求項29】
少なくとも1つのチャンバーから溶出した検体を検出するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記検体を検出するステップが質量分析またはゲル電気泳動によって実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記溶出ステップが、少なくとも1つのチャンバーから複数の分画を溶出させるステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記サンプルが、血液、尿、脳脊髄液、およびそれらの派生物からなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
(b)(1)前記分離媒体によって捕捉された少なくとも1つの前記検体を2つ以上のミニサンプルに分離するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
(b)(1)前記分離媒体によって捕捉された少なくとも1つの前記検体を、質量分析、等電点電気泳動、疎水性、および/または親水性の1つ以上のプロトコールを使用して、2つ以上のミニサンプルに分離するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
キットであって:
プレート内に配列された少なくとも3つのチャンバーを含む装置であって、
(i)前記装置が、前記プレートの一方の側の上の第1の面と、前記プレートの反対側の第2の側の上の第2の面とを有し、
(ii)各チャンバーは、あらゆる他のチャンバーとは独立に、一方の面に入口開口部、および他方の面に出口開口部を有し;
(iii)複数の前記チャンバーが、取り外し可能な導管を介して連続的に直列に接続され、各導管が1つのチャンバーの出口を別のチャンバーの入口に接続し;
(iv)前記チャンバーおよび導管の系列によって、第1のチャンバーの入口を、すべての中間チャンバーのそれぞれを介して、最終チャンバーの出口まで接続する流体流路が画定される、装置と;
分離媒体を含有する少なくとも1つの容器と、を含むキット。
【請求項36】
検体の多次元分離方法であって:
a.サンプル中の検体を複数の第1のアリコートに分離するステップであって:
i.連続的に配列され最初から最終まで流体連通している異なる第1の収着剤の第1の系列を提供することと;
ii.前記サンプルを、前記第1の系列の最初から最終まで流すことによって、前記サンプルを前記異なる収着剤に連続的に接触させ、前記第1の収着剤が、第1の物理的化学的性質に基づいて検体を捕捉し、前記第1の収着剤の順序は、それによって前記収着剤が前記サンプル中の検体に結合する前記第1の物理的化学的性質に関する選択性が低下する順序で最初から最終まで配列され、それによってそれぞれの前記収着剤が、異なる組の検体を捕捉することと:
iii.検体を複数の前記収着剤から前記複数の第1のアリコートに溶出させることと、によるステップと;
b.複数の前記第1のアリコートのそれぞれの中の検体を複数の第2のアリコートに分離するステップであって、独立に:
i.連続的に配列され最初から最終まで流体連通している異なる第2の収着剤の第2の系列を提供することと;
ii.第1のアリコートを、前記第2の系列の最初から最終まで流すことによって、前記サンプルを前記異なる収着剤に連続的に接触させ、前記第2の収着剤は、第2の異なる物理的化学的性質に基づいて検体を捕捉し、前記第2の収着剤の順序は、それによって前記収着剤が前記サンプル中の検体に結合する前記第2の物理的化学的性質に関する選択性が低下する順序で最初から最終まで配列され、それによってそれぞれの前記収着剤が、異なる組の検体を捕捉することと;
iii.検体をそれぞれの前記収着剤から前記複数の第2のアリコートに溶出させることと、によるステップと;
c.複数の第2のアリコート中の前記検体を質量分析によって分離するステップと、を含む方法。
【請求項37】
収着剤の前記第1の系列が、等電点に基づいて検体に結合し、最高等電点から最低等電点まで、または最低等電点から最高等電点までの順序で検体を捕捉するように配列される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の収着剤のそれぞれが、固体バッファーとイオン交換材料とを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
収着剤の前記第2の系列が、疎水性インデックスに基づいて検体に結合し、最高の疎水性から最低の疎水性までの順序で検体を捕捉するように配列される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の収着剤のそれぞれが、炭化水素鎖およびアミンリガンドを含み、前記系列中の各収着剤の前記炭化水素鎖が、前の収着剤の炭化水素鎖よりも多くの炭素を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
収着剤の前記第1の系列が、疎水性インデックスに基づいて検体に結合し、最高の疎水性から最低の疎水性までの順序で検体を捕捉するように配列される、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の収着剤のそれぞれが、炭化水素鎖およびアミンリガンドを含み、前記系列中の各収着剤の前記炭化水素鎖が、前の収着剤の炭化水素鎖よりも多くの炭素を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
収着剤の前記第2の系列が、等電点に基づいて検体に結合し、最高等電点から最低等電点まで、または最低等電点から最高等電点までの順序となる、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の収着剤のそれぞれが、固体バッファーとイオン交換材料とを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記質量分析がレーザー脱離/イオン化質量分析である、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記質量分析がエレクトロスプレー質量分析である、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
装置であって:
プレート内に配列された交差する複数の横列および縦列を含み、
前記横列のそれぞれが、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは前記横列中の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、
前記縦列のそれぞれが、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは前記横列内の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、
1つの前記横列中の少なくとも一部の前記チャンバーが、特定の範囲内のpI値を有する分子を捕捉するように構成されたクロマトグラフィー分離媒体を含み、前記チャンバーの前記クロマトグラフィー分離媒体が、前記横列中の前記チャンバー内で、最低から最高または最高から最低となるよう連続して配列されており、
少なくとも1つの前記縦列中の少なくとも一部の前記チャンバーが、特定の範囲内の疎水性値を有する分子を捕捉するように構成された疎水性分離媒体を含み、前記チャンバーの前記疎水性分離媒体は、前記縦列中の前記チャンバー内で最低から最高または最高から最低となるように連続して配列されている、装置。
【請求項48】
検体の多次元分離方法であって:
(a)プレート内に配列された交差する複数の横列および縦列を含む装置を提供するステップであって、前記横列のそれぞれが、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは前記横列中の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、前記縦列のそれぞれが、複数のサンプルチャンバーを含み、それらは前記横列内の他のチャンバーに流体接続されるように構成されており、1つの前記横列中の少なくとも一部の前記チャンバーが、特定の範囲内のpI値を有する分子を捕捉するように構成されたクロマトグラフィー分離媒体を含み、前記チャンバーの前記クロマトグラフィー分離媒体が、前記横列中のチャンバー内で、最低から最高または最高から最低となるよう連続して配列されており、少なくとも1つの前記縦列中の少なくとも一部の前記チャンバーが、特定の範囲内の疎水性値を有する分子を捕捉するように構成された疎水性分離媒体を含み、前記チャンバーの前記疎水性分離媒体は、前記縦列中の前記チャンバー内で最低から最高または最高から最低となるように連続して配列されているステップと;
(b)前記クロマトグラフィー分離媒体を含有する前記チャンバーを含む前記横列中の第1のチャンバーにサンプルを供給するステップと;
(c)前記横列中の前記クロマトグラフィー分離媒体の系列に前記サンプルを通過させることによって、前記サンプルを複数のサブサンプルに分離し、それぞれを前記横列の前記チャンバーのそれぞれに供給するステップと;
(d)前記縦列中の前記疎水性分離媒体の系列に前記サンプルを通過させることによって、前記横列の少なくとも1つの前記チャンバー中の前記サブサンプルを複数のミニサンプルに分離し、それぞれを交差する前記縦列の前記チャンバーのそれぞれに供給するステップと、を含む方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【公表番号】特表2008−542712(P2008−542712A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513451(P2008−513451)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/001687
【国際公開番号】WO2006/127056
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(595154074)バイオ−ラド ラボラトリーズ インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/001687
【国際公開番号】WO2006/127056
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(595154074)バイオ−ラド ラボラトリーズ インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
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