説明

流体式マウント

【課題】多軸ダンピングが可能で、軸方向にコンパクトな構造の流体式マウントを提供する。
【解決手段】エラストマー材料からなる円錐台状の弾性体3によって重なり合って支持された受け台1および支持台2、ならびに、ダンパー流体で満たされた作用室4と調整室5とを備え、作用室4と調整室5とが隔壁7によって軸方向8で互いに空間的に分離されているとともに軸方向8に作用する振動を減衰させるための第1のダンパー手段9によって流体流通可能に接続されている。弾性体3は、中間筒部10によって接続された弾性体部3a、3bを含み、作用室4内には径方向12に作用する振動を減衰させるための第2のダンパー手段11が配置され、中間筒部10と第2のダンパー手段11とは互いにつながり形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー材料からなる基本的に円錐台状の弾性体によって重なり合って支持された受け台および支持台ならびに、それぞれダンパー流体で満たされてダンパー手段によって流体流通可能に接続されている作用室および調整室を備えた流体式マウントに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の流体式マウントは、たとえばドイツ特許公開公報第10037954号から一般に知られている。すでに公知のこの流体式マウントにおいて、受け台は内側の第1の支持体として形成され、外側の第2の支持体により径方向間隔を保って包囲されており、その際、第1および第2の支持体は第1の弾性体および第2の弾性体によって接続されている。第1の弾性体および第2の弾性体は、軸方向に延びる流体式マウントの軸に対して横向きに、基本的に互いに径方向に対向して配置され、第2のダンピング孔を通して流体流通可能に接続されている、ダンパー流体で満たされた少なくとも2個の空間を境界付けている。したがって、既知のこの流体式マウントは2個のダンパー手段を含んでおり、その際、一方のダンパー手段は、軸方向に延びる主作用方向のダンピングのためにダンパー流体が作用室から第1のダンパー手段を通って調整室へ、また再びその逆に移動させられる構造の通例の流体式マウントのダンパー手段と同じである。主作用方向に対して横向きに、径方向から流体式マウントに作用する振動を減衰させるための第2のダンパー手段は第1のダンパー手段に対して軸方向に空間的に隣接して配置されており、その際、双方のダンパー手段の互いに軸方向において向かい合う側はそれぞれ円錐台状の弾性体によって互いに分離されている。すでに公知のこの流体式マウントは軸方向に大きな寸法を有し、それゆえ、相応に大きな取り付けスペースを必要とすると共に、このタイプの流体式マウントの製造に必要とされる材料コストはその構造ゆえに比較的大きなものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許公開公報第10037954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来タイプの流体式マウントを改良し、特に軸方向にコンパクトな構造を実現するとともに、多軸ダンピングを可能にすることである。その際、この流体式マウント製造コストを、使用部材を抑制することで、下げることも意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、エラストマー材料からなる円錐台状の弾性体によって重なり合って支持された受け台および支持台、ならびに、ダンパー流体で満たされた作用室と調整室とを備え、前記作用室と前記調整室とが前記隔壁によって軸方向で互いに空間的に分離されているとともに軸方向に作用する振動を減衰させるための第1のダンパー手段によって流体流通可能に接続されており、さらに
前記弾性体は、中間筒部によって接続された少なくとも2個の弾性体部を含み、前記作用室内には径方向に作用する振動を減衰させるための第2のダンパー手段が配置され、前記中間筒部と前記第2のダンパー手段とは互いにつながり形成されている流体式マウントによって解決される。
【0006】
本発明によれば、前記課題を解決するために、前記弾性体は中間筒部によって接続された少なくとも2個の弾性体部を含み、前記作用室内には径方向に作用する振動を減衰させるための第2のダンパー手段が配置され、前記中間筒部と前記第2のダンパー手段とはつながり合って形成されている。
このような構成の利点は、この本発明による流体式マウントの寸法ならびに前記寸法から必然となる所要の取り付けスペースに関して、軸方向を主作用方向とした減衰をもたらす従来の構成の流体式マウントと実質的な違わないということである。
【0007】
本発明による流体式マウントにおいて、前記第2のダンパー手段は前記作用室内に組み込まれている。この流体式マウントは、特に軸方向におけるコンパクトな寸法にもかかわらず、多軸ダンピングを達成する。前記第1のダンパー手段は軸方向に延びる主作用方向から流体式マウントに作用する振動を減衰させ、その際、このダンピングは振動が軸方向から流体式マウントに作用する際にダンパー流体が前記作用室から前記第1のダンパー手段と前記隔壁とを通って前記調整室へと、また再びその逆に移動させられることによって行われる。
【0008】
他方、振動が径方向から流体式マウントに作用する場合、前記第2のダンパー手段が機能を発揮する。前記第2のダンパー手段は、好ましくは、1個または2個の空間対を形成する2個または4個の作用室を含んでいる。一方の空間対の一方の空間からダンパー流体が押し出される程度に応じて、他方の空間は押し出された前記ダンパー流体を受け入れる。これにより、前記第2のダンパー手段のダンピングは非常に効果的である。
【0009】
前記第2のダンパー手段は、好ましくは、ダンパー流体で満たされ、流体式マウントの規定どおりの使用中において前記作用室に対して液密封止されている。これにより、前記双方のダンパー手段は機能的には互いに独立している。
流体式マウントの内圧が高い場合、例えば、車両において急激な操向が行われる場合の、圧力補償が可能である。こうした弁機能によって、不当に高い内圧に起因する流体式マウントの損傷が回避される。
【0010】
前記中間筒部は前記作用室内に配置された第1の実施態様による前記中間筒部の内周側領域に、前記第2のダンパー手段と接続された保持部を有していてもよい。この実施態様の採用により、前記作用室内への前記第2のダンパー手段の構造的に簡易な取り付けが可能である。もたらされた振動のダンピングを軸方向に延びる主作用方向でのみ可能とする従来の構成の流体式マウントにおいてすでに、前記弾性体を2個の弾性体部に分割して、流体式マウントの使用特性を必要に応じてそれぞれの使用ケースに良好に適合させることを可能とする中間筒部が知られている。しかしながら、こうした中間筒部は、所望の弾性特性を達成するために前記双方の弾性体部を互いに切り離すという以外の機能を有していない。
【0011】
前記保持部は、前記第2のダンパー手段と摩擦結合および/またはかみ合い形状結合によって接続される保持フックとして形成することができる。この場合の利点は、一種のユニットシステムのように、複数の第2のダンパー手段のうちから適切なダンパー手段を選んで、このダンパー手段を保持フックによって流体式マウントの前記作用室内に取り付けることが可能なことである。
【0012】
別な実施態様において、前記中間筒部と前記第2のダンパー手段とはつながり合って一体に形成されてもよい。この場合の利点は、上述したように、保持部と、前記装置とは別個に製造された第2のダンパー手段とが必ずしも必要とはならないことである。この場合の第2のダンパー手段は前記中間筒部に一体統合された構成要素を形成する。その結果、流体式マウントは特に簡易かつ部品点数の少ない構造を有すると共に、組み付けミスが生ずる危険は最小限に抑えられる。
【0013】
前記第2のダンパー手段は流路部材と封止部材とを含み、前記流路部材と前記封止部材とは径方向から作用する振動を減衰させるための少なくとも1本のダンパー流路を限界していてよい。前記ダンパー流路は、流れ方向の両側で、それぞれ前記第2のダンパー手段内に配置されてダンパー流体で満たされた作用室に合流していてよく、その際、径方向から作用する振動を減衰させるために、前記ダンパー流路内のダンパー流体は往復移動運動させられる。これによって、高いダンピング効果が達成される。
【0014】
前記ダンパー流路はスパイラル状でかつ軸方向に二段式に形成されてもよい。この場合の利点は、前記ダンパー流路は特に大きな長さを有し、これによって、前記ダンパー流路内に大量のダンパー流体が収容され、往復移動運動するこうした大量のダンパー流体によって低周波で大振幅の振動を特に効果的に減衰させることができる点にある。
【0015】
さらに別な実施態様において、前記第2のダンパー手段は、軸方向で見て互いに隣接配置されて、互いに液密に分離された2本のダンパー流路を含むように形成することができる。これによって、前記第2のダンパー手段は4個の作用室を有する。この種の実施態様の利点は、前記ダンパー流路の各々がそれぞれ、径方向に互いに対向配置された2個の流体空間を連結することができ、その際、一方の流路の流体空間は、他方の流路の流体空間を基準にして、たとえば互いに90°変位して配置されている。これによって、径方向から流体式マウントに作用する振動、たとえば、車両走行方向の径方向から流体式マウントに作用する振動および車両走行方向に対して横向きの径方向から流体式マウントに作用する振動をそれぞれ異なる方向に向けて減衰させることが可能になる。
【0016】
前記受け台は、流体式マウントの縦断面で見て、実質的にT字形に形成すると好都合である。前記受け台は中心に配置された固定装置を備えてもよい。この種の固定装置は、たとえば、前記受け台の基本的にディスク状の上面から突き出した固定ねじ付きボルトによって構成することができる。または、この別形態として、前記固定装置は、前記受け台のディスク状上面と軸突起とによって境界づけられたねじ付きの袋穴によって形成されてもよい。
【0017】
前記受け台の前記軸突起は前記第2のダンパー手段に対して径方向に相対可動し、これによって、流体式マウントに径方向から振動が作用する際に前記第2のダンパー手段の活性化を生ずる。前記受け台の前記軸突起が前記第2のダンパー手段に対して径方向に相対移動変位する際、前記空間内のダンパー流体は前記第2のダンパー手段のダンパー流路(単数/複数)を経て往復移動運動させられる。これによって、径方向から作用する振動は減衰させられる。
【0018】
前記受け台は軸方向において前記作用室の方向に延びる連動部を含み、前記受け台と前記連動部とは一体となって、前記第2のダンパー手段の軸方向長さと基本的に等しい軸方向長さを有する構成を採用することも好適である。この種の実施態様では、前記第2のダンパー手段は特に正確に作動することが可能となる。前記受け台の前記軸突起と前記連動部とはそれぞれ強靭な材料たとえば金属材料からなっている。これによって、前記第2のダンパー手段の前記空間内のダンパー流体への前記受け台の径方向相対移動変位の伝達は特に直接かつじかに行われることが可能である。
【0019】
できるだけ容易かつ低コストで流体式マウントを製造可能とするために、前記受け台と前記連動部とはつながり合って一体に形成されていてよい。
あるいは、これとは異なり、前記連動部が別個に製造されて、好ましくは、前記受け台と同軸的に接続されるようにすることも可能である。これによって、種々異なる連動部を種々異なる受け台および種々異なる弾性体と組み合わせて、流体式マウントの使用特性をそれぞれの使用ケースにできるだけ良好に適合させるようにすることが可能である。
【0020】
多くの適用分野において、この流体式マウントが、軸方向ならびに径方向のダンピングに加えて、減衰機能も有するように構成することは好都合である。
そのため、前記作用室内に制振流路が配置されてもよい。前記制振流路は、内燃機関のアイドリング振動を減衰させるために、前記制振流路内に配されたダンパー流体が前記作用室から、移相(位相シフト)によって、好ましくは軸方向において逆位相に、往復移動するように寸法設計されている。前記制振流路は、そのため、前記作用室と流体流通可能に接続されている。
【0021】
前記制振流路は、少なくとも部分的に、前記第2のダンパー手段の前記封止部材によって境界付けられる。これによって、前記制振流路の形成はさらに容易となる。
【0022】
前記制振流路の径方向外側は前記第2のダンパー手段の前記流路部材によって包囲されてもよい。この流体式マウントは前記第2のダンパー手段に前記制振流路を組み入れることによって簡易かつ部品点数の少ない構造を有しており、低コストで製造可能である。したがって、減衰機能を付与するための独立した別個の部品は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下、図1〜20を参照して、本発明による流体式マウントの10種の実施形態を詳細に説明する。これらの図はそれぞれ以下を概略的に示している。
【図1】流体式マウントの第一の実施形態の縦断面を示す図であり、この場合、中間筒部と第2のダンパー手段とはつながり合って一体に形成されている。
【図2】図1に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【図3】第2のダンパー手段が異なった態様で形成された、図1に示した流体式マウントに類似した第二の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図4】図3に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【図5】第2のダンパー手段のダンパー流路がスパイラル状に形成された第三の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図6】図5に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【図7】第2のダンパー手段が互いに液密に分離された2本のダンパー流路を含んでいる第四の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図8】図7に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【図9】さらに軸方向に減衰機能を有するようにした第五の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図10】図9に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【図11】さらに別の軸方向減衰器を含んでいる、図9に示した流体式マウントに類似した第六の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図12】図11に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【図13】二体式の中間筒部と二体式の弾性体とを有する第七の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図14】図13に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【図15】第2のダンパー手段がさらに、高周波小振幅の振動を絶縁するためのダイアフラムを有する第八の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図16】図15に示した流体式マウントの平面図である。
【図17】中間筒部が第2のダンパー手段を取り付けるための保持フックとして形成された保持部を有する第九の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図18】図17に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【図19】受け台と連動部とがつながり合って一体に形成された、図3に示した流体式マウントに類似した第十の実施形態の流体式マウントを示す図である。
【図20】図19に示した流体式マウントの横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜20には、円錐台状に形成された弾性体3によって重なり合って支持された受け台1と支持台2とを備え、エンジンマウントとして使用される流体式マウントの10種の実施形態が示されている。弾性体3は、中間筒部10によって接続された2個の弾性体部3a、3bを含んでいる。受け台1と支持台2とはそれぞれ金属材料からなり、弾性体3はエラストマー材料からなる。受け台1および支持台2は、前記とは異なり、それぞれプラスチックからなるかまたは複合材料によって形成されていてもよい。流体式マウントは作用室4と調整室5とを含み、調整室5は軸方向で見て作用室4とは反対側が、基本的に蛇腹状に形成されたダイアフラム24によって境界付けられている。作用室4と調整室5とはそれぞれダンパー流体6で満たされていると共に、隔壁7によって軸方向8に互いに空間的に切り離されている。隔壁7は軸方向に作用する振動を減衰させるための第1のダンパー手段9を含んでいる。
【0025】
隔壁7は、本願明細書に図示した実施形態において、上側ノズルディスク26と下側ノズルディスク27とを備えたノズルケージ25を有し、これら双方のノズルディスク26、27はそれらの外周領域で、低周波大振幅の振動を減衰させるための流路28を境界付けている。第1のダンパー手段9は、図示された実施形態では、隔壁7の構成要素となっている。
【0026】
双方のノズルディスク26、27の間には、エラストマー材料からなる隔離ダイアフラム29が配置されており、前記隔離ダイアフラムはノズルディスク26、27の間に弾性可撓配置されて、作用室4および調整室5からのダンパー流体の作用を受ける。隔離ダイアフラム29の役割は、小振幅高周波の振動を絶縁することである。この種の振動は、たとえば、エンジンのガス圧および体積力によって生み出される。
【0027】
これらの流体式マウントは、軸方向8の方向のダンピングに加えて、少なくとも径方向12の方向のダンピングも実現している。径方向12の方向のダンピングは第2のダンパー手段11によって達成され、この場合、第2のダンパー手段11は作用室4内に配置され、中間筒部10に取り付けられている。
【0028】
これらの流体式マウントの寸法ならびに所要取り付けスペースは流体式マウントが中間筒部を有して形成されているかあるいは中間筒部なしで軸方向8の方向のダンピングのみが実現されるように形成されているかによって実際に相異することはない。本発明による流体式マウントは、全体としてコンパクトな寸法を有すると共に、部品点数の少ない構造を有しており、それゆえ、低コストで製造可能である。
【0029】
径方向12に作用する振動を減衰させるために、受け台1は第2のダンパー手段11に対して相対変位し、それによって、第2のダンパー手段11のダンパー流路18、19内のダンパー流体13の往復移動運動が導かれる。
【0030】
図示された実施形態のいずれにおいても、第2のダンパー手段11は、通常運転による規定どおりの使用中においては、作用室4と前記空間内にあるダンパー流体6に対して液密封止されている。
【0031】
図1および図2には第一の実施形態が示されている。第2のダンパー手段11は流路部材16と封止部材17とを含み、その際、封止部材17は流路部材16の円周方向に延びるダンパー流路18を作用室4に対して液密封止している。流路部材16は中間筒部10とつながり合って一体をなし、前記中間筒と同一の材料で形成されている。
【0032】
図2には、図1に示した流体式マウントの横断面が示されている。ダンパー流路はまず円周方向に延びている。
【0033】
図3および図4には、図1および図2に示した実施形態に類似した、第二の実施形態の流体式マウントが示されている。この場合にも、第2のダンパー手段11は流路部材16と封止部材17とを含んでいるが、ただし、図1および図2に示した第一の実施形態に比較して、異なる態様で形成されている。流路部材16はダンパー流路18を径方向の内外面で限界しており、その際、ダンパー流路18は軸方向で見て作用室4に向いた前面側が封止部材17によって封止されている。
【0034】
図5および図6には、主として第2のダンパー手段11がスパイラル状でかつ軸方向8に二段式に形成された特に長いダンパー流路18を有する点で上述の2種の実施形態とは相違した第三の実施形態の流体式マウントが示されている。図3および図4に示した第二の実施形態とまったく同様に、封止部材17はダンパー流路18を軸方向で見て作用室4の方向を向いた前面側で封止している。
【0035】
図7および図8には、主として第2のダンパー手段11が軸方向8で見て互いに隣接配置されかつ互いに液密に分離された2本のダンパー流路18、19を含む点で、図5および6に示した第三の実施形態とは相違する第四の実施形態の流体式マウントが示されている。したがって、この第2のダンパー手段は空間対34、35を形成する4個の空間30、31;32、33を有している。こうした実施態様によって得られる利点は、各々のダンパー流路18、19の空間対34、35の位置を異なる径方向であるX、Y方向のダンピングが達成されるように配置することができるという点である。
【0036】
図8には、図7に示した流体式マウントの横断面が示されている。同図から、空間対34、35の空間30、31;32、33は互いに90°ずらして配置されているため、流体式マウントに径方向から作用する振動は、図示したように、X方向およびY方向に減衰させることが可能である旨看取することができる。
【0037】
図9および図10には第五の実施形態が示されている。この流体式マウントでは、第1と第2のダンパー手段9、11に加えて、たとえば内燃機関の始動時に発生する類の振動を減衰させることのできる少なくとも1つの制振流路23(この場合、2本の制振流路23a、23b)が設けられている。これらの制振流路23a、23bは第2のダンパー手段11の封止部材17に組み込まれ、制振空間36を作用室4と流体流通可能に接続している。
X方向の振動減衰は第2のダンパー手段11によって行われ、Y方向の振動減衰は空間36aおよび23aならびに36bおよび23bによって行われる。
【0038】
図11および図12には、図9および図10に示した第五の実施形態に類似した第六の実施形態が示されている。封止部材17はさらに、別の空間38に開口する孔37を有している。この場合、Y空間38a、38bがダンパー流体を支障なく大きな孔37a、37bを通して空間4内に流入させるため、径方向のY方向の減衰が最小化されることが利点である。
【0039】
図13および図14には、2個の弾性体部3a、3bの間に二体式に形成された中間筒部10a、10bが配置された第七の実施形態が示されている。この二体式の中間筒部10a、10bによって第2のダンパー手段11が形成されており、この場合、流体式マウントの機能は図11および12に示した流体式マウントの機能と基本的に同じである。
【0040】
図15および図16には第八の実施形態の流体式マウントが示されている。第2のダンパー手段11は、上述した一連の実施形態とは異なり、さらに、軸方向8において、一方で第2のダンパー手段11の空間対を限界すると共に、軸方向8において、他方で流体式マウントの周囲圧力の作用を受ける隔離ダイアフラム39を含んでいる。この隔離ダイアフラム39によって、径方向から流体式マウントに作用する高周波小振幅の振動を絶縁することができる。隔離ダイアフラム39の機能は流体式マウントの稼動中、径方向ダンピングシステムが動的硬化し、同時に、ガス圧および体積力に由来する車両縦方向ないし横方向の振動励起が絶縁される場合、特に明確に感じられる。
【0041】
図16には、図15に示した流体式マウントの平面図が示されている。
【0042】
図17および1図8には、中間筒部10が作用室4内に配置された前記中間筒の内周側領域14に保持フックとして形成されて第2のダンパー手段11を収容する保持部15を有する点で、上述した一連の流体式マウントとは相違する第九の実施形態の流体式マウントが示されている。この場合の利点は、種々異なって形成されて種々異なる効果を有する第2のダンパー手段11を保持部15によって収容し得ることである。これによって、種々相異する第2のダンパー手段をその他の点では同一の流体式マウントと組み合わせることが可能である。それゆえ、この種の流体式マウントは使用されるケースにおけるそれぞれの所与条件に特に容易かつ効果的に適合させることが可能である。
【0043】
図19および図20には、図3および図4に示した第二の実施形態と基本的に同じ第十の実施形態の流体式マウントが示されている。受け台1は、上述した一連の実施形態と同様に、流体式マウントの縦断面で見て基本的にT字形に形成されているが、さらに、軸方向8の方向に延びる連動部20を有している。受け台1と連動部2とは一体となって、第2のダンパー手段11の軸方向長さ22と基本的に等しい軸方向長さ21を有している。これによって、第2のダンパー手段11への径方向から作用する振動の伝達は特にじかに行われる。
【0044】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 受け台
2 支持台
3 弾性体
3a 第1の弾性体部
3b 第2の弾性体部
4 作用室
5 調整室
7 隔壁
8 軸方向
9 第1のダンパー手段
10 中間筒部
11 第2のダンパー手段
12 径方向
13 11内のダンパー流体
14 10の内周側領域
15 保持部
16 流路部材
17 封止部材
18 第1のダンパー流路
19 第2のダンパー流路
20 連動部
21 受け台と連動部とを合わせた軸方向長さ
22 第2のダンパー手段の軸方向長さ
23 制振流路
23a 制振流路
23b 制振流路
24 ダイアフラム
29 隔離ダイアフラム
39 隔離ダイアフラム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー材料からなる円錐台状の弾性体(3)によって重なり合って支持された受け台(1)および支持台(2)、ならびに、ダンパー流体で満たされた作用室(4)と調整室(5)とを備え、前記作用室(4)と前記調整室(5)とが前記隔壁(7)によって軸方向(8)で互いに空間的に分離されているとともに軸方向(8)に作用する振動を減衰させるための第1のダンパー手段(9)によって流体流通可能に接続されている流体式マウントであって、
前記弾性体(3)は、中間筒部(10)によって接続された少なくとも2個の弾性体部(3a、3b)を含み、前記作用室(4)内には径方向(12)に作用する振動を減衰させるための第2のダンパー手段(11)が配置され、前記中間筒部(10)と前記第2のダンパー手段(11)とは互いにつながり形成されていることを特徴とする流体式マウント。
【請求項2】
前記第2のダンパー手段(11)はダンパー流体で満たされ、前記作用室(4)に対して液密封止されていることを特徴とする請求項1に記載の流体式マウント。
【請求項3】
前記中間筒部(10)は前記作用室(4)内に配置された前記中間筒部(10)の内周側領域(14)に、前記第2のダンパー手段(11)と接続された保持部(15)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の流体式マウント。
【請求項4】
前記保持部(15)は保持フックとして形成され、前記第2のダンパー手段(11)と摩擦結合またはかみ合い形状結合あるいはその両方による結合によって接続されていることを特徴とする請求項3に記載の流体式マウント。
【請求項5】
前記中間筒部(10)と前記第2のダンパー手段(11)とはつながり合って一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の流体式マウント。
【請求項6】
前記第2のダンパー手段(11)は流路部材(16)と封止部材(17)とを含み、前記流路部材(16)と前記封止部材(17)とは径方向に作用する振動を減衰させるための少なくとも1つのダンパー流路(18)を境界付けていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の流体式マウント。
【請求項7】
前記ダンパー流路(18)はスパイラル状でかつ軸方向(8)に二段式に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の流体式マウント。
【請求項8】
前記第2のダンパー手段(11)は、軸方向(8)で見て互いに隣接配置されて、互いに液密に分離された2本のダンパー流路(18、19)を含むことを特徴とする請求項6に記載の流体式マウント。
【請求項9】
前記受け台(1)は、流体式マウントの縦断面で見て、T字形に形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の流体式マウント。
【請求項10】
前記受け台(1)は軸方向において前記作用室(4)の方向に延びる連動部(20)を含み、前記受け台(1)と前記連動部(20)とは一体となって、前記第2のダンパー手段(11)の軸方向長さ(22)と等しい軸方向長さ(21)を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の流体式マウント。
【請求項11】
前記受け台(1)と前記連動部(20)とはつながり合って一体に形成されていることを特徴とする請求項10に記載の流体式マウント。
【請求項12】
前記作用室(4)内に制振流路(23)が組み込まれていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の流体式マウント。
【請求項13】
前記制振流路(23)は、少なくとも部分的に、前記第2のダンパー手段(11)の封止部材(17)によって境界付けられていることを特徴とする請求項12に記載の流体式マウント。
【請求項14】
前記制振流路(23)の径方向外側は前記第2のダンパー手段(11)の前記流路部材(16)によって包囲されていることを特徴とする請求項12または13に記載の流体式マウント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−241906(P2012−241906A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114472(P2012−114472)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(510057615)カール・フロイデンベルク・カー・ゲー (19)
【Fターム(参考)】