説明

流体払出装置

【課題】1つの調節弁を用いてヘッダ配管の急激な圧力変動の抑制とLNGポンプのサージング防止とを実現する。
【解決手段】タンクに貯留された流体をポンプで払い出しヘッダ配管を介して需要先に供給すると共にポンプで払い出した流体の一部を還流配管を介してタンクに還流する流体払出装置であって、還流配管に設けられた制御弁と、ポンプを通過する流体の流量を検出する流量計と、流量計の検出値に基づいて制御弁をフィードバック制御するものであって、ポンプが起動すると第1の流量を流量設定値として制御弁を制御し、ポンプの停止が指示されると第1の流量よりも大きな第2の流量を流量設定値として制御弁を制御し、またポンプが停止すると第1の流量を流量設定値として制御弁を制御する制御器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体払出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、LNG(液化天然ガス)基地は、LNGタンクに貯留したLNGを気化器を用いて気化させ、当該気化器から出力された天然ガスを火力発電所等の需要者に燃料として提供する施設である。このようなLNG基地は専用の払出ポンプ(LNGポンプ)を用いてLNGタンクから気化器にLNGを供給するが、現在稼動しているLNG基地には、LNGポンプと気化器を接続する配管(ヘッダ配管)の内圧がLNGポンプの起動/停止によって急激に変動することを防止するためにLNGポンプの出口側に出口流量調節弁が設けられると共に、LNGポンプのサージング防止用にLNGポンプの出口側とLNGタンクとの間に少量のLNGを通過させる還流配管(ミニフロー配管)が設けられたものがある。このミニフロー配管には、LNGタンクへの還流量を調節するための流量調節弁(ミニフロー流量調節弁)が備えられている。
このようなLNG基地におけるLNGタンクからのLNGの払い出しに関する技術については、例えば下記特許文献1,2に開示されている。
【特許文献1】特開平10−318499号公報
【特許文献2】特開平08−285194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記既存のLNG基地では、LNGタンクからのLNGの払い出しに際して、2つの調節弁(出口流量調節弁及びミニフロー流量調節弁)を設けるので、調節弁自体やその制御系に関する設備コストが嵩むと共にメンテナンスの作業量が増えるという問題がある。また、2つの調節弁を設けるためには、相応の設置スペースを確保する必要があるが、この設置スペースを確保するためにLNG基地における各機器の配置が制約されるという問題もある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、1つの調節弁を用いてヘッダ配管の急激な圧力変動の抑制とLNGポンプのサージング防止とを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、タンクに貯留された流体をポンプで払い出しヘッダ配管を介して需要先に供給すると共にポンプで払い出した流体の一部を還流配管を介してタンクに還流する流体払出装置であって、還流配管に設けられた制御弁と、ポンプを通過する流体の流量を検出する流量計と、流量計の検出値に基づいて制御弁をフィードバック制御するものであって、ポンプが起動すると第1の流量を流量設定値として制御弁を制御し、ポンプの停止が指示されると第1の流量よりも大きな第2の流量を流量設定値として制御弁を制御し、またポンプが停止すると第1の流量を流量設定値として制御弁を制御する制御器とを備える、という手段を採用する。
第2の解決手段として、上記第1の手段において、制御器は、ポンプの停止が指示されると、流量設定値を所定の変化率で第1の流量から第2の流量に緩やかに変更する、という手段を採用する。
第3の解決手段として、上記第1または第2の手段において、制御器は、ポンプが停止すると、流量設定値を所定の変化率で第2の流量から第1の流量に緩やかに変更する、という手段を採用する。
第4の解決手段として、上記第1〜第3いずれかの手段において、タンクに貯留された流体としての液化天然ガス(LNG)を気化させて外部に出力するLNG基地において、タンクから液化天然ガスを払い出して需要先である気化器に供給する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポンプが起動すると、第1の流量を流量設定値として制御弁が制御されるので、制御弁は全開状態となって還流配管を流れる流体の流量は徐々に増加して第1の流量となり、これに伴って制御弁は開度が徐々に低下して全閉状態となって、ヘッダ配管に供給される流体の流量が徐々に増加する。そして、このような状態でポンプが運転した後にポンプの停止が指示されると、上記第1の流量よりも大きな第2の流量を流量設定値として制御弁が制御されるので、制御弁は開度が上昇して還流配管を流れる流体の流量が徐々に増加すると共に当該増加に伴ってヘッダ配管に供給される流体の流量が徐々に減少してゼロとなる。そして、ポンプが停止すると、上記第1の流量を流量設定値として制御弁が制御されるので、制御弁は開度が上昇して全開状態となると共に還流配管を流れる流体の流量が減少してゼロとなる。
このような作用を奏する本発明によれば、還流配管に設けられた1つの制御弁によって、ヘッダ配管に供給される流体の流量が比較的少ない場合は還流配管に流体が流れることによってポンプのサージングを防止し、かつ、ヘッダ配管の流体の流量が緩やかに変化することによってヘッダ配管の急激な圧力変動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るLNG払出装置のシステム構成図である。この図において、符号1A,1BはLNGタンク、2A1,2A2,2B1,2B2はLNGポンプ、3A1,3A2,3B1,3B2は流量計、4A1,4A2,4B1,4B2はミニフロー配管、5A1,5A2,5B1,5B2はミニフロー流量調節弁(制御弁)、6A1,6A2,6B1,6B2は制御器、7A1,7A2,7B1,7B2はヘッダ配管、8A,8Bは開閉弁、9は気化器である。
【0008】
これら複数の構成要素のうち、LNGポンプ2A1,2A2、流量計3A1,3A2、ミニフロー配管4A1,4A2、ミニフロー流量調節弁5A1,5A2、制御器6A1,6A2及びヘッダ配管7A1,7A2は、LNGタンク1Aに関するLNG払出装置を構成し、LNGポンプ2B1,2B2、流量計3B1,3B2、ミニフロー配管4B1,4B2、ミニフロー流量調節弁5B1,5B2、制御器6B1,6B2及びヘッダ配管7B1,7B2は、LNGタンク1Bに関するLNG払出装置を構成している。また、これら複数の構成要素は、LNG(液化天然ガス)を気化させて外部の燃料需要施設(例えば火力発電所や都市ガス供給施設)に出力するLNG基地を構成するものである。
【0009】
LNGタンク1Aは、流体の一種であるLNG(液化天然ガス)を貯留する地上型あるいは地中埋設型の構造物であり、内部に2つのLNGポンプ2A1,2A2が設けられている。LNGタンク1Bは、上記LNGタンク1Aと同様にLNG(液化天然ガス)を貯留する地上型あるいは地中埋設型の構造物であり、内部に2つのLNGポンプ2B1,2B2が設けられている。LNGポンプ2A1は、LNGタンク1AからLNGを払い出してミニフロー配管4A1及びヘッダ配管7A1に供給する払出用ポンプである。LNGポンプ2A2は、LNGタンク1AからLNGを払い出してミニフロー配管4A2及びヘッダ配管7A2に供給する払出用ポンプである。LNGポンプ2B1は、LNGタンク1BからLNGを払い出してミニフロー配管4B1及びヘッダ配管7B1に供給する払出用ポンプである。LNGポンプ2B2は、LNGタンク1BからLNGを払い出してミニフロー配管4B2及びヘッダ配管7B2に供給する払出用ポンプである。
【0010】
流量計3A1は、LNGポンプ2A1の出口側(LNGの吐出側)に設けられており、LNGポンプ2A1を通過するLNGの流量を検出し、当該流量を示す流量検出信号を制御器6A1に出力する。流量計3A2は、LNGポンプ2A2の出口側(LNGの吐出側)に設けられており、LNGポンプ2A2を通過するLNGの流量を検出し、当該流量を示す流量検出信号を制御器6A2に出力する。流量計3B1は、LNGポンプ2B1の出口側(LNGの吐出側)に設けられており、LNGポンプ2B1を通過するLNGの流量を検出し、当該流量を示す流量検出信号を制御器6B1に出力する。流量計3B2は、LNGポンプ2B2の出口側(LNGの吐出側)に設けられており、LNGポンプ2B2を通過するLNGの流量を検出し、当該流量を示す流量検出信号を制御器6B2に出力する。
【0011】
ミニフロー配管4A1は、LNGポンプ2A1の出口側とLNGタンク1Aとの間に敷設されており、LNGポンプ2A1がLNGタンク1Aから払い出したLNGの一部を当該LNGタンク1Aに還流するための還流配管である。ミニフロー配管4A2は、LNGポンプ2A2の出口側とLNGタンク1Aとの間に敷設されており、LNGポンプ2A2がLNGタンク1Aから払い出したLNGの一部を当該LNGタンク1Aに還流するための還流配管である。ミニフロー配管4B1は、LNGポンプ2B1の出口側とLNGタンク1Bとの間に敷設されており、LNGポンプ2B1がLNGタンク1Bから払い出したLNGの一部を当該LNGタンク1Bに還流するための還流配管である。ミニフロー配管4B2は、LNGポンプ2B2の出口側とLNGタンク1Bとの間に敷設されており、LNGポンプ2B2がLNGタンク1Bから払い出したLNGの一部を当該LNGタンク1Bに還流するための還流配管である。
【0012】
ミニフロー流量調節弁5A1は、上記ミニフロー配管4A1の途中部位に設けられており、制御器6A1によって制御されることによりミニフロー配管4A1を通過するLNGの流量を調節する。ミニフロー流量調節弁5A2は、上記ミニフロー配管4A2の途中部位に設けられており、制御器6A2によって制御されることによりミニフロー配管4A2を通過するLNGの流量を調節する。ミニフロー流量調節弁5B1は、上記ミニフロー配管4B1の途中部位に設けられており、制御器6B1によって制御されることによりミニフロー配管4B1を通過するLNGの流量を調節する。ミニフロー流量調節弁5B2は、上記ミニフロー配管4B2の途中部位に設けられており、制御器6B2によって制御されることによりミニフロー配管4B2を通過するLNGの流量を調節する。
【0013】
制御器6A1,6A2,6B1,6B2は、MPU(Micro Processing Unit)、メモリ及び各種インタフェース回路等から構成されており、メモリに予め記憶された所定の制御プログラム、流量計3A1,3A2,3B1,3B2から入力されるLNG流量及び上位制御系であるポンプ制御系から入力されるポンプ制御情報(LNGポンプ2A1,2A2,2B1,2B2の制御状態を示す情報)に基づいてMPUが所定の情報処理を実行することにより各々のミニフロー流量調節弁5A1,5A2,5B1,5B2をフィードバック制御する。
【0014】
制御器6A1は、上記流量計3A1から入力される流量検出信号及びポンプ制御系から入力されるポンプ制御情報に基づいて上記ミニフロー流量調節弁5A1をフィードバック制御する。制御器6A2は、上記流量計3A2から入力される流量検出信号及びポンプ制御系から入力されるポンプ制御情報に基づいて上記ミニフロー流量調節弁5A2をフィードバック制御する。制御器6B1は、上記流量計3B1から入力される流量検出信号及びポンプ制御系から入力されるポンプ制御情報に基づいて上記ミニフロー流量調節弁5B1をフィードバック制御する。制御器6B2は、上記流量計3B2から入力される流量検出信号及びポンプ制御系から入力されるポンプ制御情報に基づいて上記ミニフロー流量調節弁5B2をフィードバック制御する。
なお、このような各制御器6A1,6A2,6B1,6B2の制御動作については後に詳しく説明する。
【0015】
ヘッダ配管7A1は、LNGポンプ2A1の出口側と気化器9との間に敷設されており、LNGポンプ2A1がLNGタンク1Aから払い出したLNGをLNG払出装置の需要先である気化器9に供給するための供給配管である。ヘッダ配管7A2は、LNGポンプ2A2の出口側と気化器9との間に敷設されており、LNGポンプ2A2がLNGタンク1Aから払い出したLNGをLNG払出装置の需要先である気化器9に供給するための供給配管である。ヘッダ配管7B1は、LNGポンプ2B1の出口側と気化器9との間に敷設されており、LNGポンプ2B1がLNGタンク1Bから払い出したLNGをLNG払出装置の需要先である気化器9に供給するための供給配管である。ヘッダ配管7B2は、LNGポンプ2B2の出口側と気化器9との間に敷設されており、LNGポンプ2B2がLNGタンク1Bから払い出したLNGをLNG払出装置の需要先である気化器9に供給するための供給配管である。
【0016】
図示するように、上記各ヘッダ配管7A1,7A2,7B1,7B2のうち、LNGタンク1Aから払い出したLNGを気化器9に供給する一対のヘッダ配管7A1,7A2は途中で合流し、またLNGタンク1Bから払い出したLNGを気化器9に供給する一対のヘッダ配管7B1,7B2は途中で合流すると共に、さらに合流して最終的に1本の配管となって2つのLNGタンク1A,1Bから払い出したLNGを気化器9に供給する。
【0017】
開閉弁8Aは、一対のヘッダ配管7A1,7A2の合流した部位に設けられており、開閉弁8Bは、一対のヘッダ配管7B1,7B2の合流した部位に設けられている。これら2つの開閉弁8A,8Bは、通常は何れも開状態とされ、2つのLNGタンク1A,1Bから気化器9へのLNGの供給を可能とするが、何れかのLNGタンク1A,1Bからの気化器9へのLNGの供給を停止する場合には、停止側が閉状態とされる。気化器9は、上記各LNG払出装置の需要先であり、各LNG払出装置から供給された極低温のLNGを例えば海水を用いて気化させて出力するものである。
【0018】
次に、このように構成されたLNG払出装置の動作、特にLNG払出装置の特徴的動作であるミニフロー流量調節弁5A1,5A2,5B1,5B2の制御動作について、図2〜図4をも参照して詳しく説明する。
【0019】
最初に、本LNG払出装置における各LNGポンプ2A1,2A2,2B1,2B2は、ミニフロー流量調節弁5A1,5A2,5B1,5B2を制御対象とする制御器6A1,6A2,6B1,6B2の上位制御系であるポンプ制御系によって起動、運転及び停止が制御される。これに対して、各制御器6A1,6A2,6B1,6B2は、上記ポンプ制御系から提供されるポンプ制御情報(LNGポンプ2A1,2A2,2B1,2B2の制御状態を示す情報)と流量計3A1,3A2,3B1,3B2から入力される流量検出信号とに基づいてミニフロー流量調節弁5A1,5A2,5B1,5B2をフィードバック制御する。
なお、各制御器6A1,6A2,6B1,6B2の動作は基本的に同じなので、以下では制御器6A1を例にとって本LNG払出装置の特徴的動作を説明する。
【0020】
図2は、制御プログラムに即した制御器6A1の制御動作を示すフローチャートである。制御器6A1は、上記ポンプ制御情報の1つとしてLNGポンプ2A1の起動指令が入力されると(ステップS1)、流量計3A1から入力される流量検出信号を質量流量(kg/s)に変換する(ステップS2)。すなわち、上記流量検出信号は例えば電流値(A:アンペア)によって流量を示す信号であり、制御器6A1は、このような流量検出信号を電流値に応じた質量流量(kg/s)に変換することによって、LNGポンプ2A1の出口側におけるLNG流量を認識する。
【0021】
続いて、制御器6A1は、ミニフロー流量調節弁5A1の制御目標値である流量設定値の決定処理を行い(ステップS3)、当該ステップS3において決定された流量設定値と上記ステップS2で演算された質量流量(kg/s)との差分を流量誤差として演算する(ステップS4)。そして、制御器6A1は、流量誤差にPID演算(比例積分微分演算)を施すことによりPID操作量を演算する(ステップS5)。そして、制御器6A1は、上記ポンプ制御情報に基づいてLNGポンプ2A1の制御モードが自動モード/手動モードの何れに設定されているかを判断し(ステップS6)、自動モードの場合は上記PID操作量をミニフロー流量調節弁5A1に出力する(ステップS7)一方、手動モードの場合にはポンプ制御情報の1つとしてポンプ制御系から入力された手動操作量をミニフロー流量調節弁5A1に出力する(ステップS8)。
【0022】
制御器6A1は、上述したように流量検出信号及びポンプ制御情報を制御プログラムに基づいて情報処理することによりミニフロー流量調節弁5A1をフィードバック制御するが、制御器6A1は、以下のように流量設定値を決定することによって、ミニフロー配管4A1を介してLNGポンプ2A1の出口側からLNGタンク1Aに還流するLNGの流量を調節してLNGポンプ2A1のサージング(周期的に吐出圧力や吐出流量が変動してLNGポンプ2A1に機械的ダメージを与え得る現象)の発生を防止すると共に、ヘッダ配管7A1における急激な圧力変動を抑制する。
【0023】
図3は、上記流量設定値の決定処理の詳細を示すフローチャートである。
制御器6A1は、LNGポンプ2A1の起動指令が入力された状態において、図4の「流量設定値」に示すように流量設定値を予め規定された標準値とする(ステップS3a)。ここで、図4に示すLNGポンプ2A1の停止期間では、LNGポンプ2A1の出口側におけるLNG流量は「ゼロ」である。
【0024】
そして、LNGポンプ2A1が起動指令に基づいて起動すると、LNG流量が徐々に増加するが、制御器6A1は、図4の「弁開度」に示すようにミニフロー流量調節弁5A1の開度を全開状態に設定するので、LNGポンプ2A1から吐出したLNGの殆どは、図4の「ミニフロー流量」及び「ヘッダ流量」に示すようにヘッダ配管7A1よりも圧力が低いミニフロー配管4A1に流れてLNGタンク1Aに還流する。すなわち、LNGポンプ2A1の吐出流量が比較的小さい状態、つまりLNGポンプ2A1がサージングを起こし易い状態では、ミニフロー配管4A1にLNGが流れてLNGポンプ2A1のサージング発生を防止する。
【0025】
また、LNGポンプ2A1の起動後、吐出流量が徐々に増加するに従って上記流量誤差は徐々に小さくなるので、制御器6A1は、図4の「弁開度」に示すように、ミニフロー流量調節弁5A1の開度を全開状態から徐々に低下させ、最終的に流量誤差が「ゼロ」になった時点で全閉状態とする。したがって、図4の「ミニフロー流量」及び「ヘッダ流量」に示すように、LNGポンプ2A1から吐出するLNGのうち、ミニフロー配管4A1に流れるLNGは徐々に減少して最終的に「ゼロ」となる一方、ヘッダ配管7A1に流れるLNGは徐々に増加して上記標準値を中心として変動する状態となる。
【0026】
すなわち、LNGポンプ2A1の起動時において、ヘッダ配管7A1に流れるLNGは徐々に増加するので、ヘッダ配管7A1における急激な圧力変動が抑制される。
なお、上記ミニフロー流量調節弁5A1の全閉状態は、図4に示すLNGポンプ2A1の定常運転期間であり、ヘッダ配管7A1のLNGの供給量は気化器の要求量となる。
【0027】
このような定常運転状態において、LNGポンプ2A1の停止指令がポンプ制御情報として入力されると(ステップS3b)、制御器6A1は、図4の「流量設定値」に示すように、流量設定値を一定の変化率で上記標準値から上限値に緩やかに増加させる(ステップS3c)。この流量設定値の増加に伴なって上記流量誤差が増大するので、制御器6A1は、ミニフロー流量調節弁5A1の開度を全閉状態から徐々に上昇させて、これによって図4の「ミニフロー流量」に示すように、ミニフロー配管4A1に流れるLNGは徐々に増加する。
【0028】
この一方、LNGポンプ2A1は、上記停止指令に基づいて吐出量が徐々に低下して最終的に完全停止状態となる。上記停止指令からLNGポンプ2A1が完全停止するまでの期間は、図4に示す停止準備期間である。この停止準備期間では、図4の「ミニフロー流量」及び「ヘッダ流量」に示すように、ヘッダ配管7A1に流れるLNGは徐々に減少して最終的に「ゼロ」となるが、ミニフロー配管4A1に流れるLNGは徐々に増加する。すなわち、LNGポンプ2A1の吐出流量が徐々に小さくなる停止準備期間はLNGポンプ2A1がサージングを起こし易い状態であるが、ヘッダ配管7A1に代えてミニフロー配管4A1にLNGが流れるので、この停止準備期間でもLNGポンプ2A1のサージングが防止されると共にヘッダ配管7A1における急激な圧力変動が抑制される。
【0029】
さらに、LNGポンプ2A1の停止(完全停止)がポンプ制御情報として入力されると(ステップS3d)、制御器6A1は、図4の「流量設定値」に示すように、流量設定値を一定の変化率で上限値から標準値に緩やかに減少させる(ステップS3e)。この流量設定値の減少に伴なって上記流量誤差が増大するので、制御器6A1は、ミニフロー流量調節弁5A1の開度をさらに上昇させて全開状態とするが、LNGポンプ2A1が停止したことによってミニフロー配管4A1を流れるLNGの流量はゼロとなる。
【0030】
このような本実施形態によれば、各ミニフロー配管4A1,4A2,4B1,4B2に各々1個設けたミニフロー流量調節弁5A1,5A2,5B1,5B2の開度を制御することによって、LNGポンプ2A1,2A2,2B1,2B2の起動時及び停止時におけるサージングの防止及びヘッダ配管7A1,7A2,7B1,7B2の急激な圧力変動を抑制することができる。
【0031】
例えば、4台のLNGポンプ2A1,2A2,2B1,2B2のうち、LNGポンプ2A1が停止してもヘッダ配管7A1の急激な圧力変動が抑制されるので、他のヘッダ配管7A2,7B1,7B2を介した気化器9へのLNGの供給に外乱を与えることが少なく、よって他のヘッダ配管7A2,7B1,7B2を介して気化器9に安定してLNGを供給することができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、LNGポンプ2A1の停止指令を判定すると、流量設定値を一定の変化率で標準値から上限値に緩やかに増加させるようにしたが、流量設定値の変化率は必ずしも緩やかに設定する必要はない。例えば、ミニフロー流量調節弁5A1,5A2,5B1,5B2のフィードバック制御系における「制御遅れ要素」が比較的大きい場合、流量設定値の変化率を急峻に設定しても、ヘッダ配管7A1,7A2,7B1,7B2に流れるLNGの流量は急激に変化しないので、「制御遅れ要素」を考慮して流量設定値の変化率をある程度急峻にしても良い。
【0033】
(2)上記実施形態では、LNGポンプ2A1の停止(完全停止)を判定すると、流量設定値を一定の変化率で上限値から標準値に緩やかに減少させるようにしたが、流量設定値の変化率は必ずしも緩やかに設定する必要はない。例えば、ミニフロー流量調節弁5A1,5A2,5B1,5B2のフィードバック制御系における「制御遅れ要素」が比較的大きい場合、流量設定値の変化率を急峻に設定しても、ヘッダ配管7A1,7A2,7B1,7B2に流れるLNGの流量は急激に変化しないので、「制御遅れ要素」を考慮して流量設定値の変化率をある程度急峻にしても良い。
【0034】
(3)上記実施形態では、LNGポンプ2A1の停止指令及び停止(完全停止)を判定すると、流量設定値を一定の変化率、つまりランプ波形状に変化させるが、これに変えて段階的に、つまり階段波状に変化させても良い。
【0035】
(4)上記実施形態では、2つのLNGタンク1A,1Bから各々払い出したLNGを最終的に1本化された4本のヘッダ配管7A1,7A2,7B1,7B2を介して気化器9に供給する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。単独のLNGタンクからLNGを払い出して気化器に供給するようにしても良い。すなわち、2つのLNGタンク1A,1Bのいすれか一方を削除すると共に、当該削除した側のLNG払出装置を削除した構成を採用しても良い。
【0036】
(5)上記実施形態では、2つのLNGタンク1A,1Bが各々に2つのLNGポンプ2A1,2A2,2B1,2B2、2つの流量計3A1,3A2,3B1,3B2、2つのミニフロー配管4A1,4A2,4B1,4B2、2つのミニフロー流量調節弁5A1,5A2,5B1,5B2、2つの制御器6A1,6A2,6B1,6B2及び2つのヘッダ配管7A1,7A2,7B1,7B2を備える構成としたが、各LNGタンクに各々1つのLNGポンプ、流量計、ミニフロー配管、ミニフロー流量調節弁、制御器及びヘッダ配管を備える構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係わるLNG払出装置のシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わるLNG払出装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係わるLNG払出装置の流量設定処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係わるLNG払出装置の動作変化を示す特性図である。
【符号の説明】
【0038】
1A,1B…LNGタンク、2A1,2A2,2B1,2B2…LNGポンプ、3A1,3A2,3B1,3B2…流量計、4A1,4A2,4B1,4B2…ミニフロー配管(還流配管)、5A1,5A2,5B1,5B2…ミニフロー流量調節弁(制御弁)、6A1,6A2,6B1,6B2…制御器、7A1,7A2,7B1,7B2…ヘッダ配管、8A,8B…開閉弁、9…気化器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに貯留された流体をポンプで払い出しヘッダ配管を介して需要先に供給すると共に前記ポンプで払い出した流体の一部を還流配管を介して前記タンクに還流する流体払出装置であって、
前記還流配管に設けられた制御弁と、
ポンプを通過する流体の流量を検出する流量計と、
前記流量計の検出値に基づいて前記制御弁をフィードバック制御するものであって、前記ポンプが起動すると第1の流量を流量設定値として前記制御弁を制御し、前記ポンプの停止が指示されると前記第1の流量よりも大きな第2の流量を流量設定値として前記制御弁を制御し、また前記ポンプが停止すると前記第1の流量を流量設定値として前記制御弁を制御する制御器と
を備えることを特徴とする流体払出装置。
【請求項2】
前記制御器は、前記ポンプの停止が指示されると、流量設定値を所定の変化率で前記第1の流量から第2の流量に緩やかに変更することを特徴とする請求項1記載の流体払出装置。
【請求項3】
前記制御器は、前記ポンプが停止すると、流量設定値を所定の変化率で前記第2の流量から第1の流量に緩やかに変更することを特徴とする請求項1または2記載の流体払出装置。
【請求項4】
前記タンクに貯留された流体としての液化天然ガス(LNG)を気化させて外部に出力するLNG基地において、前記タンクから液化天然ガスを払い出して需要先である気化器に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体払出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−250379(P2009−250379A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100526(P2008−100526)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】