説明

流体抽出又は濾過装置、関連物質及び方法

体から流体を除去するための流体抽出又は濾過装置であって、前記体の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具える装置。流体抽出及びサンプリング複合装置及び該装置を用いた、例えば流体のサンプルにおける対象種の水準の測定、経皮的透析及び腎代替療法における方法が更に提供される。尿毒症の治療に用いられる吸収性ゲルマトリックス、及び吸収性ゲルマトリックスを具える血液透析フィルタが更に提供される。血液透析、経皮的透析及び胃腸透析を含む方法と関連してそのようなマトリックスの使用が説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を抽出又は濾過するための装置に関し、前記流体は1以上の標的分子を選択的に含有し、それは間質液、血液及び/又は胃腸液に共通の構成要素等であるがそれに限定されない。本発明は更に、このような装置の一部を形成してもよい物質、また、このような装置及びこのような物質を用いる方法に関する。前記装置、関連する材料及び方法は、医学的な分野、特に、しかし限定することなく尿毒症及び/又は腎臓/腎不全の治療にその用途を見いだされるかもしれない。
【背景技術】
【0002】
自然の腎臓は、排尿の前に膀胱において終了する、全身血管系から泌尿器系までの流体の流れを生じさせる。流体喪失のこの機能の共通であり非常に一般化された見解は、腎機能がなければ尿毒症によって数日以内に死に至るため、体から有毒な代謝廃棄物を除くことである。尿毒症は、腎臓機能が退行し、腎臓が、通常は除去しているはずの物質を尿に排出するよう機能できない医学的状態として定義されている。このように腎臓機能を失うと、その結果、尿毒症性残留生成物、即ち腎臓が機能しない結果として十分に除去されない物質が蓄積する。尿毒症毒素は、腎臓が正常に機能している場合には生じない、一般的に有害な生物学的又は生化学的活動を行うことが明らかになっている、それらの尿毒症性残留生成物と分類される。
【0003】
同様に重要である他の作用は、体液量及びイオンバランス(Na、Ca2+、K、Cl、PO等)を制御することである。体内の全水分量の約42%は細胞外であり、この水の臓器分布には大きくばらつきがあり、骨格筋の全組織液の約13%から、表皮及び結合組織の70%まで様々である。従来の透析(腹膜又は血液透析)の間、尿毒症患者の全身血管の循環から過剰流体が除去される。しかしながら、過剰流体は主に表皮及び皮下間質組織に存在する。
【0004】
間質は、代謝的に活性な区画であり(乳酸濃度は血漿より高い)、細胞を囲み、恒常性を維持して、尿毒症の個人において細胞外毒素のためのリザーバを提供する。循環系とは異なり、間質のアルブミン濃度は、脂肪組織(漿液の15%)及び骨格筋(漿液の27%)の両方において示される漿液においてより著しく低い。従来の透析によって実証されるように、細胞外間質性プールと血管の区画の間に動的平衡が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腎臓機能の喪失は、結果的に末期腎不全に至り、それは原因が多岐にわたる重要な臨床的問題である。英国では、毎年37,000人を超える人々が、15億ポンドの費用で(全NHS予算の2%)腎代替療法(RRT)を受けている。毎年新たに5,000人以上が加わり、患者数は2020年までに60,000人まで増加するだろうと英国腎臓登録は予測している。米国及びヨーロッパの先進のヘルスケアシステムにおいて付随の患者(incident patients)が同様に増加することが予想される。発展途上世界において(1970年以前の英国でそうであったように)、費用及び訓練されたヘルスケア人員の不足のため、RRTは非常に制限されるか又は存在せず、腎不全は、大多数の人にとって本質的に死の宣告である。中国及びインドの発展しつつある経済においてはその住民のための改善されたヘルスケアを支援することができ、現在利用できる治療に比べて、より技術的でない環境において、又、より安価な費用で治療を行えるならば、更なる20億―30憶の人々の腎不全を治療できる可能性がある。
【0006】
腎代替療法(RRT)という現在の選択肢は、主に先進世界のヘルスケアシステムにおいてのみ利用可能である。
【0007】
第1の選択肢は、腎移植である。1年生存率が透析では84%であるのに対し移植は97%であり、より良好な治療及び生活の質を提供するが、5,000を超える移植の順番待ちリストは更に増加している中、英国において一年に1,500の腎臓のみが利用可能である。移植を受ける可能性のある人々(平均年齢は49歳であり、心血管及び他の共存症が少ない)は、透析(腹膜は58歳、血液透析64歳)の人々より若く、そのため、移植が現実的な選択肢でない高齢患者の人口が増加する。
【0008】
現在提供される透析は、血液透析又は腹膜透析である。血液透析は、外科的に構成された動静脈瘻又はグラフトを介して、患者の血液循環を、半透膜を越えて低分子量代謝産物及び水を除去して「浄化された」血液を患者に戻す外部機械に接続することを必要とする。これは、1週間に最低3日(少なくとも3×4時間のセッション)に参加することを患者に要求する病院において主に提供される。この理学療法における重大な臨床的問題は血管アクセス障害及び敗血症を含み、患者は心血管健康の水準を満たさなければならない。患者が1週間のうち3日を病院で過ごさなければならないとしたら、生活の質は低い。頻繁な、又は連続的な透析によって患者予後が改善されたという証拠は増えているが、これは遂行上の制約を有し、現在の透析技術によって実行可能でない。
【0009】
腹膜透析は、半透膜として患者自身の腹膜(腹膜腔及び内臓の内側を覆う)を用いる。永久腹膜カテーテルが定位置にある状態で、2リットルの浸透溶液が腹膜に注入され、4時間の滞留期間の後、溶液は外に排出される。膜の無数の毛細血管からの低分子量代謝産物及び水は、浸透勾配によって、存在している透析溶液に動かされる。このシークエンスは、24時間に3又は4回繰り返される。この理学療法の自動化されたバージョンでは、患者は腹膜腔を頻繁に洗浄する機械に終夜接続されることができる。
【0010】
この理学療法における重大な臨床的問題は、膜の限外ろ過機能の障害及び過度の膜瘢痕を含み、それは技術障害に繋がる。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題の1つ以上を除去するか又は緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、体から流体を除去するための流体抽出又は濾過装置であって、前記体の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具える装置が提供される。
【0013】
尿毒症の個人の経皮性極微針による間質、優勢な細胞外溶質及び過剰流体リザーバへのアクセスのしやすさは、間質液量及び組成の制御に重要である。このように、本発明の第1の態様に係る装置は、間質液の経皮的濾過、浄化及び/又は透析を達成することができる重要な手段を提供する。
【0014】
ここで、ある量の流体の「抽出」と言及する場合、除去される、又は除去を意図される流体の量にかかわらず、単にその量の流体の「除去」と同様に考えることができる。しかしながら、ここで「濾過」と言及する場合、この用語が(生)化学的及び/又は臨床的設定において用いられる通常の方法に従って解釈されるべきであると理解されるべきである。即ち、「濾過」は、体から一般的に比較的多量の流体(例えば生体液)を除去することを指す。誤解を避けるため、特定の状況では、過剰の水のみを体からの除去が必要である「毒素」と考えることができることが当業者によって理解されるだろう。さらに、本発明に係る装置を適切に配置することによって、例えば中毒の治療において、尿素及びクレアチニンのような尿毒症性残留生成物又は外因性毒素といった標的有害物質を選択的に除去するために用いることができる。1以上の流体成分を選択的に除去することによって、濾過後に体に残留する流体の組成がその最初の組成と異なるだろうことが理解されるだろう。これに対し、「サンプリング装置」は、正常、異常両方の様々な成分の水準の検出に対する適切な分析に十分なだけの著しく小量の変更されていない流体(例えば生体液)を得るために通常用いられ、残留流体の組成は変わらない。従って、本発明に係る装置がきわめて適切である、腎不全から生じる尿毒症性残留生成物の選択的な除去又は濾過は、グルコース及び/又はコレステロールのような様々な成分の水準を測定するために単に小量の生体液のサンプルをとることとは根本的に異なる。
【0015】
本発明の第2の態様は、体内の流体に接触するための極微針の配列と、前記極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスと、前記吸収性ゲルマトリックスに有効に接続しているサンプリング手段とを具えている組み合わせられた流体抽出及びサンプリング装置であって、前記サンプリング手段は前記流体の対象種の水準を測定するために配置される流体抽出及びサンプリング複合装置を提供する。
【0016】
本発明の関連態様は、体から抽出される流体のサンプル内の対象種の水準を測定するための方法であって、前記体の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いて前記体から前記サンプルを抽出することと、流体の前記サンプルを分析して前記サンプル内の前記対象種の水準を測定することとを含む方法を提供する。
【0017】
更なる態様は、流体から対象種を濾過するか又は前記対象種を除去することによって前記流体を浄化することを必要とする患者の体内で、前記対象種を含有している前記流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的濾過又は浄化の方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、前記対象種を含有している流体が前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流れて前記対象種を前記ゲルマトリックスにおいて保持させることを含む方法を提供する。
【0018】
本発明の別の態様は、透析を必要とする患者の体内の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的透析の方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流体を流れさせることを含む方法を提供する。
【0019】
更に、腎代替療法を必要とする患者の体内の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的透析を含む腎代替療法の方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流体を流れさせることを含む方法が提供される。
【0020】
更に他の本発明の態様は、尿毒症を患っている患者の体内の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的透析を含む尿毒症の治療方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、1以上の尿毒症毒素を含有している流体を前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流れさせることを含む方法を提供する。
【0021】
本発明の更なる態様は、尿毒症を患っている患者の体内の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた、心不全のような状態における塩分及び水分過多の治療方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、1以上の尿毒症毒素を含有している流体を前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流れさせることを含む方法を提供する。
【0022】
他の本発明の関連態様は、尿毒症の治療に用いられる吸収性ゲルマトリックスを提供する。
【0023】
本発明の更なる態様は、尿毒症の治療に用いられる装置の製造に使用する吸収性ゲルマトリックスを提供する。
【0024】
本発明の第2の態様は、吸収性ゲルマトリックスを具える血液透析フィルタを提供する。
【0025】
本発明の第2の態様に関連した本発明の別の態様は、血液透析を必要とする患者から血液のサンプルをとることと、吸収性ゲルマトリックスを具える血液透析フィルタに前記血液サンプルを接触させて、前記血液サンプルから前記ゲルマトリックス内へ1以上の対象種を選択的に抽出することと、前記処理された血液サンプルを前記患者に戻すこととを含む血液透析の方法を提供する。
【0026】
本発明の更なる態様は、経皮的透析を必要とする患者から間質液のサンプルをとることと、前記間質液サンプルを吸収性ゲルマトリックスに接触させて前記間質液サンプルから前記ゲルマトリックス内へ1以上の対象種を選択的に抽出することと、前記間質液サンプルを前記患者に戻すこととを含む経皮的透析の方法を提供する。
【0027】
本発明の更なる態様は、胃腸透析を必要とする患者に吸収性ゲルマトリックスを投与し、前記ゲルマトリックスを胃腸液に接触させて前記胃腸液から前記ゲルマトリックスに1以上の対象種を選択的に抽出し、前記対象種を含む前記ゲルマトリックスを前記患者から排出させることを含む胃腸透析の方法を提供する。好ましい実施形態において、胃腸透析を必要とする患者は食用ゲルマトリックスを飲み込み、それはその後胃腸液と接触し、それを選択的に濾過して望ましくない毒素等の標的分子を除去することによって前記流体を浄化する。
【0028】
本発明の上記に定義した態様に関しては、前記対象種は水、尿毒症毒素、代謝産物、塩及びイオンからなる族から選択されることが好ましい。或いは、前記対象種は、レチノール結合タンパク質、ベータ―2―ミクログロブリン、副甲状腺ホルモン、アドレノメデュリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、非対称性ジメチルアルギニン、インドール―3―酢酸、尿酸、ホモシステイン、クレアチン、クレアチニン、P―クレゾール、シュウ酸塩、尿素及びリン酸塩からなる族から選択してもよい。
【0029】
装置の概要
本発明の好ましい実施態様において、例えば、浄化及び/又は透析の目的で、低分子量代謝産物及び水のような、しかしこれに限らない対象種を除去するために皮膚を通して間質液にアクセスする、着用可能な、連続的低速モードの濾過が提供される。本発明の第1の態様に係る装置の例示的実施形態を図1に示し、それを更に詳細に後述する。
【0030】
好ましい実施形態において、装置は、使用中に、極微針の配列が流体と接触するときに、吸収性ゲルマトリックスは流体から物理的に離れているよう構成される。ゲルマトリックスは体内、又は体外に位置することができるが、ゲルマトリックスが間質液と直接的に物理的接触していないことが好ましい。但し、もちろん、ゲルマトリックスが間質液と流体連通していることは理解されるだろう。装置を適用する前記体は、流体を保持している任意の種類の物理的な体でよいが、前記体は人間又は動物の体でもよい。上記に関わらず、装置は、使用中に、前記極微針の配列が流体と接触するときに、前記吸収性ゲルマトリックスは体外に位置するよう構成されることが更に好ましい。
【0031】
好ましくは、前記極微針の配列の第1の領域は流体と接触するよう配置され、前記極微針の配列の別の第2の領域は前記吸収性ゲルマトリックスに接続している。前記極微針の配列の前記別の第2の領域は、好ましくは前記吸収性ゲルマトリックスと接触する。このように、流体と接触する前記極微針の領域が前記ゲルマトリックスと接触する前記第2の領域と別であるか又は離間していることで、前記ゲルマトリックスは流体から物理的に離れていることが可能になる。
【0032】
好ましくは、前記吸収性ゲルマトリックスは、体から除去した後、流体を保持するように構成される。必要に応じて、保持された流体は、その後その1つ以上の成分の量を測定するためにサンプルをとることができ、そして/又はその成分のいずれかを除去する任意の適切な方法で処理することができる。吸収された流体を前記ゲルマトリックス内で永久に保持する場合、飽和したマトリックス物質を新たな、乾燥した物質と周期的に交換することが必要だろうことが理解されるだろう。そうでない場合、マトリックス物質は、なんらかの処理によって保持する流体を除去することができ、それによって装置は更に使用可能となる。
【0033】
装置が体から1つ以上の毒素を選択的に除去するように構成されることが好ましい。このように、体内に残る残留流体の組成は、前記毒素が欠如し、装置との接触前の体内の流体の組成と異なるだろう。
【0034】
本発明の好ましい実施形態は、電荷で加工されるミクロンサイズのヒドロゲルビーズとの、極微針を介した間質液の流体接触、そして、通常の及び/又は指定された毒素、イオン、塩、代謝産物を選択的に取り込み、水を吸着して最大約50―100倍に容量が腫脹する構造を必要とする。装置によって接触する流体は任意の望ましい種類の流体でよいが、該流体は、間質組織液又はその少なくとも1つの成分であることが好ましい。間質液の前記少なくとも1つの成分は、好ましくは水、尿毒症毒素、代謝産物、塩及びイオンからなる族から選択される。或いは、間質液の前記少なくとも1つの成分は、レチノール結合タンパク質、ベータ―2―ミクログロブリン、副甲状腺ホルモン、アドレノメデュリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、非対称性ジメチルアルギニン、インドール―3―酢酸、尿酸、ホモシステイン、クレアチン、クレアチニン、P―クレゾール、シュウ酸塩、尿素及びリン酸塩からなる族から選択されてもよい。
【0035】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態において、患者の肢又は胴に取り付け、毎日異なる部位へ移動させることができる様々な大きさ及び形状の自己充足的なカセット、スリーブ、包帯等が提供される。理学療法の効率が決定されると、間質液の経皮的除去のためにアクセスされる皮膚の領域は患者の透析処方の一部である。個々の患者のための流体除去の適切な速度は、当業者に知られている多くの要因に依存するだろう。例えば、最高約2000ml/日の流体除去速度が適切でもよく、より好ましくは最高約1000ml/日、又は最高約500ml/日(0.35ml/分と同等)である。流体除去速度の適切な下限は、約10ml/日でもよく、より好ましくは約50ml/日、そして最も好ましくは約100ml/日である。ミクロゲル成分の周期的な取換えが必要でもよく、例えば、毎週、毎日、又は、例えば日に2度、3度又は更に多くといったより頻繁な頻度で取換えが必要であってもよい。本発明の好ましい実施形態において、ミクロゲル成分は、適切に修復した後に再使用可能でもよく、又は単に廃棄されてもよい。全ての機能がユニット内に含まれてもよく、そうすることでユニットは電力又は他のサービスのための外部接続を必要とせず、結果的に患者の可動性又はライフスタイルは制約されない。抽出された流体の分析組成を表示する(例えば、クレアチン、乳酸、グルコース、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン酸塩及び/又は他の尿毒症毒素又は代謝産物の水準を表示する)ディスプレイが装置に更に提供されてもよい。
【0036】
極微針配列
皮膚内に薬物/ワクチンを運搬する目的で極微針を用いる概念は何年も前に提案されたが、比較的最近になって微細加工技術が十分に開発されて必要なミクロ構造の製造が可能になるまで実現されなかった。本発明の一態様では、真皮の豊かな毛細管網を浸している間質液にアクセスするための真皮を貫通するミクロンサイズの孔を作成する。該孔は実際には、日常生活で経験する皮膚剥離よりもおそらく小さいだろう。本発明の第1の態様に係る装置は極微針の配列を含み、それは例えばリソグラフィ及び反応イオンエッチングを用いてシリコンウエハから作成されてもよく、それによって約150μmの平均針高さを有する20×20の針配列を生成する。以前の作業から、このような極微針配列を用いることによって皮膚透過性が桁違いに上昇することが理解され、それによって、間質液経皮的除去が容易になる。
【0037】
極微針の配列は薬物運搬のために角質層を貫通して表皮に入るが、それらの寸法が小さいために、神経終末又は毛細管に遭遇/刺激する可能性が少なく、通常出血がなく無痛である。
【0038】
薬物送達業界はパッチリザーバから皮膚内に(即ち体外から体内へ)薬物を送るために針配列に焦点を合わせてきたが、本発明の一態様は、間質性皮膚区画から水、尿毒症毒素及び/又は代謝産物といった間質液の成分を除去するために、即ち、体内から、間質液から物理的に離れているゲル成分への流体の逆流を生じさせるために、吸着性の加工されたゲルと流体接続している中空極微針を用いることに関する。
【0039】
配列の中空針は角質層を貫通するが、少なくとも針のいくつかが側孔(それらは、選択的に端孔を含んでもよい)を形成するので、針は挿入の後も塞がれない。そうでなければ間質性皮膚区画からゲルまでの流体の流れを妨害するか又は妨げることがある。少なくとも、極微針配列の針のいくつかは、好ましくは最大約50μm、より好ましくは約10μmから30μm、そして最も好ましくは約20μmの直径の側孔を形成する。
【0040】
前記極微針配列は、特定用途に適した、任意の望ましい数の極微針を具えてもよい。配列は、最大約900本の極微針(選択的に30×30の対称配置)、最大約625本の極微針(選択的に25×25の配置)、最大約400本の極微針(選択的に20×20の配置)、最大約225本の極微針(選択的に15×15の配置)、又は最大約100本の極微針(選択的に10×10の配置)を具えてもよい。前記極微針配列の針は、実質的に対称的に、或いは非対称的に配置されることができる。例えば、100本の極微針からなる配列は、10本×10本の針の対称配置又は5本×20本の針の非対称配置を具えてもよい。極微針配列の隣接した針の間の間隔は配列の全体にわたって実質的に同一でもよく、又は、配列全体にわたって要望通り変化させてもよい。針の対称配列は、隣接した針の間の間隔が配列の全体にわたって同一であるように配置されてもよく、或いは、間隔は変化させてもよいことが理解されるべきである。針が対称的に配置されることによって針の間の間隔は必ずしも同一でなくてもよいが、特定の実施形態において好ましいかもしれない。
【0041】
配列の中の極微針はそれぞれ、直線軸、規則正しく先細りの軸、又は直線部及び先細り部の組み合わせを有することができる。極微針はそれぞれ、実質的に円形又は非円形の断面を形成する軸を有してもよい。中空極微針が用いられる好ましい実施形態において、それぞれの針は、間質液からゲルへ流体が流れるための導管を提供するために、1以上の穴を形成してもよい。好ましくは、少なくともいくつかの、より好ましくは実質的にすべての極微針の中空部分は、前記体から流体を除去するために装置を用いる前には実質的に液体がない。
【0042】
前記配列の前記又は各極微針の高さは、特定用途のために選択され、挿入される部分と挿入されない部分とを提供するのに十分に高い必要があってもよい。即ち、前記配列の針のうち少なくともいくつかは、針の第1部分が体内に存在することができ、そして第2部分が体外に存在することができるように十分に高くてもよい。前記配列の針のうち少なくともいくつかの高さは、約1μmから1mm、より好ましくは約10μmから500μm、そしてさらに好ましくは約30μmから200μmであってもよい。更なる好ましい実施形態において、前記極微針配列の針のうち少なくともいくつかは、好ましくは最大約500μm、より好ましくは最大約250μmの高さを有し、そして/又は少なくとも約50μmの高さを有する。更なる好ましい実施形態において、配列の針の少なくともいくつかが約100μmから約200μmの範囲の高さを有し、そして最も好ましくは約150μmの高さを有する。
【0043】
配列の針のうち少なくともいくつかの断面寸法が、約10nmから1mm、より好ましくは約1μm及び200μm、より好ましくは約10μm及び約100μmでもよい。
【0044】
前記又は各極微針は、シリコン、ガラス、金属又はプラスチックのような任意の適切な物質から製造することができ、高精度にマイクロ加工することができる。本発明の好ましい実施形態に係る装置への適用に適切に製造された極微針の配列の画像を図3及び4に示す。図において、配列は規則正しく間隔を置いた実質的に同一の多数の極微針又は正方形断面を含み、各々が針の先端で開口を有する面取りされた先端を形成する。極微針の配列は、異なる種類の極微針の組み合わせを含んでもよい。例えば、極微針の配列は、異なる高さ、内径及び/又は外径、断面形状及び隣接する極微針間の間隔を有する極微針を組み合わせてもよい。
【0045】
能動輸送
本発明の好ましい実施態様において、間質液及び/又はその成分の吸収性ゲルマトリックス内への経皮抽出を促進するのに電界を用いることができる。本発明の第1の態様に係る装置は、好ましくは、前記体液と吸収性ゲルマトリックスとの間の逆イオン泳動勾配を提供する働きをする電源に接続している正及び負の電極を更に具える。
【0046】
このような外部電界の使用(多くの場合「逆イオン泳動」と称される)によって、抽出処理の効率は著しく上昇する。本発明の一態様は、本発明に関する概念の1つを形成する経皮的濾過理学療法のための更なる選択性及び溶質容量モジュレータとしての逆イオン泳動の使用に関する。限定的ではないが電池(例えばリチウム電池)又は太陽電池式エネルギー源のような、直流電流電界が電気エネルギーの任意の適切な供給源によって供給されてもよい。例えば、電気エネルギー源は図2に示される方法で経皮配列に接続していることができ、それは更に詳細に後述する。
【0047】
吸収性ゲルマトリックス
本発明の一態様に係る装置は、流体/塩/毒素を取り込むために吸収性ゲルマトリックスを用いる。前記吸収性ゲルマトリックスは好ましくはヒドロゲルである。前記吸収性ゲルマトリックスは、高分子ビーズ及び/又はマイクロパターン化高分子表面被覆を含んでもよい。前記ゲルマトリックスはポリエチレングリコールアクリルアミド(PEGA)及び/又はその誘導体を含んでもよく、そのマイクロパターン化誘導体を含む。前記マトリックスは、非ポリアクリルアミド系材料を含んでもよく、それは例えばポリエチレングリコール(PEG)及び/又はその誘導体、及び/又はポリアクリラート(PAc)及び/又はその誘導体である。さらに、マトリックス物質は、アミノ―ポリエチレングリコール及び/又はポリ(2―ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)及び/又はその誘導体を含んでもよい。これらの材料のうちの1つ以上は、1以上の更なる材料(例えば一つ以上の他の特定の材料)と共重合されることができる。例えば、前記マトリックス物質は、PEGA及びPEG、PEG及びPAc、及び/又はPEGA及びpHEMAのコポリマーを含んでもよい。
【0048】
好ましい実施形態において、前記吸収性ゲルマトリックスは、最大約90%w/wの水を閉じ込める能力を示す。前記吸収性ゲルマトリックスは、それ自体の重量の最大約30倍の水を吸収する能力を示してもよい。装置の前記吸収性ゲルマトリックスは、前記体から流体を除去するために装置を用いる前に、好ましくは実質的に乾燥している。これは、特に装置が体液の濾過、即ち比較的大量の体液の抽出において用いられている本発明の実施例において有益である。すでに説明したように、この過程は単にサンプリングする適用と対比されることができ、サンプリングでは、非常に小量の流体(試験するために十分な量)のみが除去されるか又は、流体が実質的に除去されないことを確実にするために装置を体に用いる前に吸収材料が濡れているか部分的に濡れていることが好ましくてもよい。
【0049】
前記吸収性ゲルマトリックスは、最大約50から80kDa、より好ましくは約60から70kDa、そして最も好ましくは、およそアルブミンの分子量である約67kDaの分子量を有する分子に透過性を有することが好ましい。
【0050】
第1の好ましい実施例において、前記吸収性ゲルマトリックスはポリエチレングリコールアクリルアミド及び/又はその誘導体を含み、そして、このマトリックス物質を具える装置はマトリックス物質のグラム当たり、最大約15グラム、より好ましくは最大約13グラムの水を吸収する能力を示す。更に好ましくは、該装置は、マトリックス物質のグラム当たり毎時最大約15グラム、より好ましくは最大約13グラムの速度で水を吸収する能力を示す。
【0051】
第2の好ましい実施形態において、前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリエチレングリコール/ポリアクリレートコポリマーを含み、このマトリックス物質を具える装置は、マトリックス物質のグラム当たり最大約50グラムの水を吸収する能力を示す。
【0052】
前記吸収性ゲルマトリックスは選択的に1以上のアミノ酸残基又はその誘導体を含み、それは特定の対象種又は対象種の種類へのマトリックス物質の選択性を提供及び/又は強化するために用いることができる。体から選択的に除去される対象種の個々の性質によって任意の適切なアミノ酸が用いられてもよいが、前記又は各アミノ酸残基が生理的pH値で極性、荷電種であることが特に好ましい。第1の好ましいアミノ酸残基は生理的pHで極性の正電荷アミノ酸種であるアルギニンであり、第2の好ましいアミノ酸は生理的pHで極性の負電荷アミノ酸であるグルタミン酸である。アミノ酸をマトリックス物質内のポリマーに接続するための任意の適切な方法が用いられてもよいが、特に好ましい方法は、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)/N,N´―ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)又はO―ベンゾトリアゾール―N,N,N´,N´―テトラメチル―ウロニウム―ヘキサフルオロホスフェイト(HBTU)及びフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護基結合法を必要とする標準的なアミド結合法の採用である。
【0053】
間質液は通常研究のために大量に利用可能でない(血液、尿等のように)。しかしながら、尿毒症の主要な成分の水準は知られており、下記の表1に示す(それは尿毒症性血液を指す)。本発明の吸収性ゲルマトリックスの、表1に記載される物質のいくつかを吸収する能力を立証する作業が行われている。尿毒症において見られる濃度の次の成分の標準的な溶液は、レチノール結合タンパク質、ベータ2ミクログロブリン、尿酸、クレアチニン、尿素、カチオンK、Na、アニオンCl、POを含む。
【表1】

【0054】
上記に関わらず、正常被験者及び腹膜透析を受けている慢性腎臓疾患(CKD)患者の血漿、間質液及び誘発された汗の尿毒症毒素尿素の濃度を測定するために予備実験を行った。結果は表2に下に示す。
【表2】

【0055】
表2の結果は、腎不全を患っている患者において、従来の微小透析から収集される間質液(IF)及び誘発された汗が血漿よりも多くの尿素を含有したことを証明している。これらの結果は、透析及び関連処置を行うために、血液区画ではなく間質にアクセスするために本発明の装置を用いることが好ましいという見解を支持するものである。この結果によって、高水準の尿素を有する流体を提供するために発汗を効果的に誘発することができることも確認される。この知識を、尿素への選択性を有する吸収性マトリックス物質を生成する能力と組み合わせることで、本発明の装置及び方法を用いて、間質液及び/又は汗のリットルあたり従来の方法及び装置よりもはるかに多量の尿素を抽出することが可能となることが理解されるだろう。
【0056】
化学的に架橋されたアクリルアミド(例えばPEGA)及び多くの同様の非アクリルアミド(例えばPEG、PAc)系ポリマー及びコポリマーは、水にさらされると高次に水和されることができ、多数の独特の特性を有しており、それによってそれらは、水及び小分子量代謝産物の選択的な除去の用途に理想的に適したものとなる。特に適しているポリマーは、PEGA800及び関連PEGA系ポリマーを含む。
【0057】
上記の特性は以下を含む。即ち、アルブミンのようなより大きなタンパク質の保持を可能とする厳密なサイズ依存の分子量分離の調整可能な多孔性、優れた防汚性、PEGコーティングはコーティングしてないシステムよりも血液の凝固時間を2―3倍増加させること、そしてその親水性のため大量の水を閉じ込める能力(最大90%w/w)である。さらに、PEGA、PEG、PAc及び/又は関連材料を含有する粒子は多数の構造において作成することができ、ビーズ(直径がミクロンからミリメートルに及ぶ)及びマイクロパターン化表面コーティングを含む。アミン基が高分子構造で存在する場合、これらは捕獲リガンドを取り付ける化学的ハンドルとして用いられてもよく、それは特定の小さいか中間の分子の「スマートな」除去のために有用でもよい。先に説明したように、このような特異性は、アルギニン及び/又はグルタミン酸のようなアミノ酸といった1以上の生体分子を含有することによってマトリックス物質に与えられてもよい。
【0058】
従って、PEGA、PEG及び/又はPAcポリマー及びコポリマーは、本発明の装置における使用にきわめて適している。さらに、このようなポリマー及び関連材料は、血液かん流及び血液透析のための従来の膜系の代替としての用途にも適している。本発明の更なる態様は、血液かん流における吸収性ゲルマトリックス(例えばPEGA系マトリックス)の使用に関する。本発明の更なる態様は、例えば吸収性ゲルマトリックスを具える血液透析フィルタ及び血液透析におけるこのような吸収性ゲルマトリックスの使用を提供する。本発明の一態様は、尿毒症及び/又は腎臓/腎不全の1つ以上の症状の治療用の(例えばPEGA系)吸収性ゲルマトリックスを提供する。血液透析の装置の製造に使用される(例えばPEGA系)吸収性ゲルマトリックスが更に提供される。
【0059】
好ましくは例えばミクロビーズ、マクロビーズ又はスラブ構造の形の吸収性ゲルマトリックスは、PEGAのような任意の適切なポリマー(図5A及び5Bを参照)及び選択的にPEG、PAc及びpHEMAといった任意の数の望ましいポリマーのコポリマーで構成されてもよい。前記マトリックスは、誘導体化されて様々な水準の電荷を得ることができる。化学反応性官能基(例えばアミノ酸)は、間質液の特定の標的分子と反応して、それによってポリマーに標的分子を結合させるだろうポリマーに含まれることもできる。さらに、ゲルマトリックスの選択性を更に高めるように生体特異的なリガンド(biospecific ligand)」(例えば選択的結合ペプチド/タンパク質又は酵素)がポリマーに含まれてもよいことが想定される。
【0060】
標準的な間質液溶液の成分を減少させるマトリックスの能力を評価するために試験管内実験を行っている。標準的な間質液を多量の吸収性ゲルの乾燥したビーズと懸濁液において2時間混合する。そして、ビーズを遠心分離によって除去し、LC―MSの他に電極及びUV可視又は蛍光分光法を含む標準的な分析を用いて残りの成分の濃度を検査する。
【0061】
ミクロンサイズのPEGAビーズがそれ自体の重量の最大約15倍の水を吸収することができ、それは、カチオン基が含まれる場合、例えば最大約25倍に増大できることが研究により分かっている。皮下皮内間質液と接触する吸収剤として用いるこれらのミクロビーズは、分子分離に対して自由に広がる流体及び毒素の限外ろ過液を生成するために用いることができる。図6は、PEGAヒドロゲルの3時間にわたって水を吸収する能力を説明しているグラフである。図に示すように、ヒドロゲルはヒドロゲル物質のグラム当たりおよそ12mlの水で完全に飽和するのに約45分しかかからなかった。広がる溶質分子は、間質液からPEGAビーズまで静水及び浸透勾配に沿って移動する。PEGA内のアクリルアミドを、それぞれ1以上の種類の荷電したモノマー、例えば負又は正に荷電したアクリルアミド系モノマー(それぞれ、例えばスルホン酸部分を含有しているモノマー又は四級アミン基)に置き換えることによって、ゲルマトリックスが形成されるポリマーのバックボーンに永久荷電を導入し、それによって水を吸収するゲルの能力を増大させることが可能である。ポリマーのグラム当たり吸収される水の標準的な量(グラム)は、以下の通りである。中性(即ち非荷電)ポリマーは約15g、負荷電ポリマーは約17g、そして、正荷電ポリマーは約28gである。
【0062】
非荷電PEGAビーズマトリックスの好ましい形態のとき(図7及び8を参照)、アルブミンが吸収性ゲルマトリックスを貫通しないことが試験によって証明された。図7において、左の画像は30kDa蛍光標識デキストランにさらされたときの直径300μmの単一のPEGAビーズの断面を示し、右の画像は、2光子蛍光顕微鏡法を用いて40kDa蛍光標識デキストランにさらされた同じ大きさ及び組成の単一のビーズを示す。図8において、2光子顕微鏡法を用いて撮影した画像が厳密な分子量分離を示しており、アルブミン(右)を除外し、より小さな分子(左)を取り込んでいる。ここに見られるように、ポリマービーズは厳密な大きさでの分離を示した。提案された分離は、ほとんどの周知の尿毒症性溶質に適切で、通常の臨床使用の透析膜より優れた除去を達成し、それによって末期腎疾患患者の流体除去及び溶質抽出を高める。アルブミンは血液及び間質液の主要なタンパク質成分であるので、アルブミンが他の成分の除去を損なわないことが重要である。
【0063】
図12は、上記のPEGAポリマー物質の代わりに用いることができるPEG―PAcコポリマーの化学的構造を示す。図に示すように、PEG―PAcコポリマーは非常に多量の水を吸収する能力を示すため、本発明の装置への適用にきわめて適している非アクリルアミドポリマーの一例である。図13は、PEG―PAcコポリマーヒドロゲルが3時間にわたって水を吸収する能力を説明するグラフである。該ヒドロゲルは、図5及び6に関して上述したPEGAヒドロゲルより更に速く水を吸収し、ヒドロゲル物質のグラム当たりおよそ40から45mlの水で完全に飽和するのに約30分しかかからなかった。
【0064】
誘導体化されたゲルビーズは、流体除去の量と関連して毒素/配位子の除去を促進する特定の電荷及び/又は配位子を含んでいると確認された。単位流体当たりそれぞれのリガンドのための吸収性ゲルマトリックスの容量を決定する作業が進行中である。ビーズの粒子サイズ及び架橋密度は、毒素、流体及び塩除去の所望の水準を達成するために変化させて最適化されることができる。ゲル粒子は、粒径分析計を用いて大きさを決定でき、電子顕微鏡観察を用いて更に特徴づけることができる。
【0065】
結合アミノ酸の性質によって決定される、PEGA系ヒドロゲルの種々の尿素症毒素を吸収する能力を決定する実験の結果を、図9、10及び11を参照して、実施例1において以下に記載する。
【0066】
本発明に係る装置を設計するにあたって検討すべき重要な要素は、皮膚の単位面積当たりの流体除去の最大及び最小速度を評価することと、装置が現地に留まることができる最長時間を立証することと、同じ部位で繰り返し処置を行うための皮膚の回復時間を立証することと、長期の使用による痛み又は不快の副作用を立証することである。
【0067】
ゲルマトリックスの腫脹による流体除去によって、皮膚の単位面積当たりの流体除去の最小デフォルト速度が設定される。間質の水和の水準は、腎臓患者によって異なるだろう(流体過多の水準による)。直流駆動の電気浸透を用いてイオン泳動を用いる本発明の装置を用いて達成可能な流体除去の最大速度は、特定用途に適するように決定され、適切に選択されることができる。同様に、直流駆動マイクロポンプを具える本発明の他の好ましい実施形態を用いた流体除去の最大速度は、特定用途の必要性に基づいて評価されて、選択されることができる。
【0068】
本発明の更なる態様は、体の特定の部位において挿入でき、高い透水性を発現して、本発明の第1の態様に係る装置と同じか又は同様の装置の取付けのためのドッキング部位として機能する培養皮膚被覆に関する。
【0069】
或いは、又は本発明の上記で定義された態様のいずれかとの組み合せで、水、尿毒症毒素、代謝産物、イオン及び/又は塩の経皮抽出又は除去を促進させるための真空吸入装置が提供され、それは尿毒症及び/又は腎不全の治療において特定用途を見いだしてもよい。
【0070】
汗腺は、過剰塩及び水の除去だけでなく、カリウム及び尿素のような尿毒症毒素の除去においても、腎臓を模倣する自然な排出器官である。本発明の装置は、汗腺が豊富な、患者の腕及び/又は胴への適用に特に適している。装置使用プロトコルに汗誘発構造を取り入れることによって、発汗構造が過剰流体の除去を促進するため、流体除去速度を高められることが予想され、それは極微針穴を通過でき、ヒドロゲルによって取り込むことができる。
【0071】
最初の汗誘発は、流体抽出/濾過の準備ができている装置の用意をするのに役立ってもよい。極微針の穴表面を濡らして、少なくとも部分的に流体(即ち誘発された汗)を充填することによって、間質及びヒドロゲルを接続させている流体の連続的な柱が生成されて表面張力を起こし、それは間質から極微針配列を介して流体除去を開始することができる。
【0072】
発汗は熱的又は化学的に誘発されることができ、例えばイオン泳動電流によって経皮膚的に汗腺に送られることができるピロカルピンの投与によってである。室温のピロカルピンを用いた最初の実験では、最大20マイクロリットル/cm/時間を生じた。この量の汗は、間質液の極微針抽出のための理想のプライマとなる。体温を少し上回る皮膚温度(例えば100F(37.8℃))で1本の腕の腺から1時間に300mlを超える汗が得られることができることが知られるため、この排出量は、この温度に上昇させる構造を具えることによって高められるべきである。このように、温度によって誘発された発汗が、腎不全及び心不全のような様々な医学的状態のために流体過多である患者からの選択的な多量の流体の除去を促進するという大きな可能性が明確に示される。
【0073】
例えば、1以上の適した化学物質(例えばピロカルピン)の投与及び/又は尿毒症及び/又は腎不全の治療に用いられる外部熱源の適用によって水及びイオンの汗腺分泌を促進することで、流体の流れ又は体からの喪失の速度を上昇させる方法が更に提供される。
【0074】
ほんの一例として本発明の実施形態を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、本発明の第1の態様に係る装置の第1実施形態の概略図である。
【図2】図2は、本発明の第1の態様に係る装置の第2実施形態の概略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る装置への組込みに適している極微針配列の斜視図を示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る装置への組込みに適している極微針配列の平面図を示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明の様々な態様において用いる吸収性ゲルマトリックス物質の好ましい実施形態を表すPEGA系ポリマーを構成するために用いる化学的前駆体を示す。
【図5B】図5Bは、図5Aに示すモノマーから構成される本発明の様々な態様において用いるPEGA系ポリマーの化学構造を示す。
【図6】図6は、およそ3時間にわたってPEGA系ポリマーのグラム当たり吸収される水の量(グラム)を示すグラフである。
【図7】図7は、30kDa蛍光標識デキストラン(左の画像)及び40kDa蛍光標識デキストランにさらされた、図5A及び5BのPEGA系ポリマーを含む直径300μmの2つのPEGAビーズの断面の2光子蛍光顕微鏡法画像である。
【図8】図8は、蛍光アルブミン(右)を除外すると共により小さな分子(左)を取り込む、図4のPEGA系ビーズの厳密な分子量分離を示す2光子顕微鏡法断面像である。
【図9】図9は、3つの異なるPEGA系ポリマー、即ち(a)Fmoc―Arg―PEGA(ラベル「正」)、(b)Fmoc―Glu―PEGA(「負」)、(c)変更されていないPEGA(「変更されていない」)に関して、およそ3時間にわたってポリマーのグラム当たり吸収される尿素の量(グラム)を示すグラフである。
【図10】図10は、3つの異なるPEGA系ポリマー、即ち(a)Fmoc―Arg―PEGA(ラベル「正」)、(b)Fmoc―Glu―PEGA酸(「負」)、(c)変更されていないPEGA(「変更されていない」)に関して、およそ3時間にわたってポリマーのグラム当たり吸収される尿酸の量(グラム)を示すグラフである。
【図11】図11は、3つの異なるPEGA系ポリマー、即ち(a)Fmoc―Arg―PEGA(ラベル「正」)、(b)Fmoc―Glu―PEGA酸(「負」)、(c)変更されていないPEGA(「変更されていない」)に関して、およそ3時間にわたってポリマーのグラム当たり吸収されるクレアチニンの量(グラム)を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の様々な態様において用いられるPAc―PEGコポリマーの化学構造を示す。
【図13】図13は、およそ3時間にわたってPAc―PEGコポリマーのグラム当たり吸収される水の量(グラム)を示すグラフである。
【0076】
図1を参照して、装置1が概略的に表され、本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、それは経皮的濾過、浄化又は透析に用いることができる。前記装置1は、人間の体(図示せず)の皮膚表面2に置かれた状態で示している。前記装置1は吸収性の高いPEGA系ハイドロビーズゲルマトリックス3を具え、それはPEGA、PEG及びpHEMAのコポリマーを含む。前記ゲルマトリックス3は、図1に示すように、皮膚の表面2を貫通する、中空先細り状凸部の規則的な配列を形成するように配置される複数の中空シリコン極微針4と流体連通している。前記ゲルマトリックス3は、一旦それ自体の容量の最大約15―25倍の流体を吸着すると、前記ゲル3を収容するのに十分な大きさの筐体5の中で保持される。前記配列の針4はそれぞれ、高さ約150μmで、直径約20μmの側孔又は入口開口6を形成する。
【0077】
前記装置1を用いることが望ましい場合、乾燥したゲルマトリックス3を前記筐体5の中に入れ、それから前記装置1を殺菌する。皮膚表面2を殺菌性溶液で拭き、それから、前記極微針4の配列が角質層を貫通して表皮に入るのに十分な圧力をかけることによって前記装置1を前記皮膚表面2に対して押圧する。
【0078】
間質組織流動床(図示せず)の中に存在するように、極微針4は十分に高く、前記孔6は適切に位置している。このように、前記筐体5の中で皮下間質液(図示せず)と前記ゲルマトリックス3の間に流体管が設けられる。前記ゲルマトリックス3の性質の精選によって、間質液と前記ゲルマトリックス3の間に浸透及び静水勾配が設けられ、水、尿毒症毒素、代謝産物、イオン、塩などは、図1の矢印の方向に、体から選択的に抽出、濾過されることができる。
【0079】
例えば所定の期間又は前記ゲルの容量の決定に関して、一旦サイクルが完了すると、前記装置1を前記皮膚表面2から除去し、新たな乾燥したゲル3によって膨張したゲル3を除去することから始めて上記のサイクルを繰り返す。
【0080】
図2は、前記本発明の前記第1の態様によれば、経皮的濾過、浄化又は透析に用いることもできる装置7の別の実施形態の概略図を示す。装置7は図1に示す前記装置1と非常に似ているが、図2に示す装置は標的分子及び流体の経皮移動を促進する更なる構成要素を具える。図2の前記装置7は、皮膚表面8に置かれる。前記装置7は、図1の前記装置1と同じ吸収性の高いPEGA系ハイドロビーズゲルマトリックス9を含む。前記装置7は更に、中空シリコン極微針10の配列を具える。前記ゲルマトリックス9は、筐体11の中で保持される。針10はそれぞれ高さ約150μmであり、直径約20μmの側孔12を形成する。
【0081】
図2に示す前記装置7が具える新たな構成要素は、正及び負の電極14、15に接続している電池13である。前記電池13を起動すると、逆イオン泳動勾配が確立され、その結果、正電極14から負電極15までの流体の電気浸透流が生じ、それは間質液から前記ゲル9までの、前記皮膚表面8を横切るカチオン及び中性/荷電してない種の矢印の方向への輸送を促進させる。
【0082】
実施例1
代表的な尿毒症性濃度の3つの尿毒症毒素(例示的な濃度の表1を参照)を含有している流体サンプルからこれらの毒素を吸収する、3つのPEGA系マトリックス材料の能力を比較するために一連の実験を行った。以下の実験の全体にわたってPEGA800を用いた。
【0083】
試験した3つのマトリックス材料は、(i)変更されていないPEGA(図9、10及び11において「変更されていない」とラベルされる)、(ii)Fmoc保護基を有するアルギニン残基を含むよう変更されたPEGA(ラベル「正」)、及び、(iii)Fmoc保護基を有するグルタミン酸残留物を含むよう変更されたPEGA(ラベル「負」)であった。3つの尿毒症毒素は、(i)尿素、(ii)尿酸、そして(iii)クレアチニンであった。
【0084】
マトリックス物質のグラム当たり吸収される毒素の量を、比色尿素分析(QuantiChromTM、バイオアッセイシステムス)を用いて3時間にわたって測定した。
【0085】
前記実験の結果を、尿素、尿酸及びクレアチニンに関して図9、10及び11にそれぞれ示す。
【0086】
図9は、それぞれのマトリックス物質の尿素を吸収する能力を示すが、Fmoc―Arg―PEGAマトリックス物質が、Fmoc―Glu―PEGAマトリックス物質(3時間後に約60mg/g)や前記変更されていない物質(3時間後に約30mg/g)より著しく多くの尿素(3時間後に約120mg/g)を吸収したことを示している。従って、これらの結果により、Fmoc―Arg―PEGAマトリックス物質を含む装置が特に、このような治療を必要とする尿毒症患者の間質液から大量の尿素を除去することに適していることが示唆される。
【0087】
図10は尿酸吸収に関するものであるが、3時間で、Fmoc―Glu―PEGAマトリックス物質が、前記変更されていないPEGA物質(約0.8mg/g)や前記Fmoc―Arg―PEGAマトリックス物質(約0.6mg/g)より多くの尿酸(約1.2mg/g)を吸収することができることを示しており、そのためFmoc―Glu―PEGAは、尿毒症患者の尿酸の選択的除去のための装置において用いられる有望な候補となる。従来の透析によって尿酸を除去することが極めて困難であり、従って、これらの結果は、尿酸の上昇を患っている患者を治療する新たな方法を提案するため、特に重要であり、それは従来方法で治療するのが困難であることは、当業者によって理解されるだろう。
【0088】
図11はクレアチニンの吸収に関するが、変更されたPEGA材料が両方とも、変更されていないポリマーと比較してより高い吸収性を示したことを示す。3時間で、Fmoc―Arg―PEGA物質はクレアチニン(約3mg/g)を吸収する最も優れた能力を示し、Fmoc―Glu―PEGA物質(約2.5mg/g)、次いで変更されていない物質(約2mg/g)が続いた。従って、Fmoc―Arg―PEGAは、クレアチニンの抽出のために、本発明に係る装置において用いるのに現在最も好ましい物質である。
【0089】
本発明の上述した実施形態において、発明の概念を逸脱しない範囲で多数の変形が可能であり、これらの変形が本発明の範囲内に含まれることを意図されることが理解されるだろう。例えば、前記極微針が製造される大きさ、形状及び材料は、特定用途に適するように様々であってよく、配列に提供される前記極微針の数も同様である。本発明に係る経皮的濾過装置が、同じか又は異なる大きさ/形状/物質の極微針の1以上の別個の配列を含んでもよいことが理解されるだろう。さらに、上記した経皮的濾過装置を含むがこれに限らない本発明の様々な態様において用いられる前記ゲルマトリックスは、特定用途に適するように任意の適切な化学的及び物理的(例えば分子量)性質を有していてもよい。PEGA、PEG、PAc及び/又はpHEMAのポリマー及びコポリマーが本発明の好ましい実施形態であるが、特に本明細書中に別の記述がない限り、他のポリマー及びコポリマーを前記吸収性ゲルマトリックスにおいて用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体から流体を除去するための流体抽出又は濾過装置であって、前記体の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具える装置。
【請求項2】
前記装置は、使用中に、前記極微針の配列が前記流体と接触するときに、前記吸収性ゲルマトリックスは前記流体から物理的に離れているよう構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、使用中に、前記極微針の配列が前記流体と接触するときに、前記吸収性ゲルマトリックスは体外に位置するよう構成されている請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記極微針の配列の第1の領域は流体と接触するよう配置され、前記極微針の配列の別の第2の領域は前記吸収性ゲルマトリックスに接続している請求項1、2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記極微針の配列の前記第2の領域は前記吸収性ゲルマトリックスと接触する請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記吸収性ゲルマトリックスは、体から除去した後、前記流体を保持するように構成される上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項7】
前記体は人間又は動物の体である上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記人間又は動物の体から1以上の毒素の選択的な除去を行うよう構成される請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記流体は、間質組織液又はその少なくとも1つの成分である上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項10】
間質液の前記少なくとも1つの成分は、水、尿毒症毒素、代謝産物、塩及びイオンからなる族から選択される請求項9に記載の装置。
【請求項11】
間質液の前記少なくとも1つの成分は、レチノール結合タンパク質、ベータ―2―ミクログロブリン、副甲状腺ホルモン、アドレノメデュリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、非対称性ジメチルアルギニン、インドール―3―酢酸、尿酸、ホモシステイン、クレアチン、クレアチニン、P―クレゾール、シュウ酸塩、尿素及びリン酸塩からなる族から選択される請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記極微針の少なくともいくつかは中空であり、前記極微針の中空部分へのアクセスを提供するために側孔及び/又は端孔を形成する上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項13】
前記体から流体を除去するために装置を用いる前には、前記極微針の中空部分は実質的に液体がない請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記側孔は、最大約50μmの直径を有する請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
前記側孔は、約20μmの直径を有する請求項12又は13に記載の装置。
【請求項16】
前記極微針配列は、最大約900本の極微針を具える上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項17】
前記極微針配列は、最大約400本の極微針を具える請求項1乃至15の何れか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記極微針配列の針は、実質的に対称的に、或いは非対称的に配置される上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項19】
前記極微針配列の隣接した針の間の間隔は前記配列の全体にわたって実質的に同一である上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項20】
前記極微針配列の針のうち少なくともいくつかは、最大約500μmの高さを有する上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項21】
前記極微針配列の針のうち少なくともいくつかは、約50μmから約250μmの範囲の高さを有する請求項1乃至19の何れか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記極微針配列の針のうち少なくともいくつかは、約150μmの高さを有する請求項1乃至19の何れか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記極微針配列の針のうち少なくともいくつかは、最大約100μmの最大断面外径を有する上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項24】
前記吸収性ゲルマトリックスはポリマーを含む上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項25】
前記吸収性ゲルマトリックスはヒドロゲルである上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項26】
前記吸収性ゲルマトリックスは、高分子ビーズ及び/又はマイクロパターン化高分子表面被覆を含む上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項27】
前記吸収性ゲルマトリックスは、最大約90%w/wの水を閉じ込める能力を示す上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項28】
前記吸収性ゲルマトリックスは、それ自体の重量の最大約30倍の水を吸収する能力を示す上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項29】
前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリエチレングリコールアクリルアミド及び/又はその誘導体を含む上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項30】
前記装置は、マトリックス物質のグラム当たり最大約15グラムの水を吸収する能力を示す請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記装置は、マトリックス物質のグラム当たり毎時最大約15グラムの速度で水を吸収する能力を示す請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリエチレングリコール及び/又はその誘導体を含む請求項1乃至29の何れか1項に記載の装置。
【請求項33】
前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリエチレングリコール/ポリアクリレートコポリマーを含む請求項1乃至29の何れか1項に記載の装置。
【請求項34】
前記装置は、マトリックス物質のグラム当たり最大約50グラムの水を吸収する能力を示す請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリ(2―ヒドロキシエチルメタクリレート)及び/又はその誘導体を含む請求項1乃至29の何れか1項、32又は33に記載の装置。
【請求項36】
前記吸収性ゲルマトリックスは1以上のアミノ酸残基又はその誘導体を含む上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項37】
前記又は各アミノ酸残基は、アルギニン及びグルタミン酸からなる群から選択される請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記吸収性ゲルマトリックスは、最大約50から80kDaの分子量を有する分子に透過性を有する上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項39】
前記装置の前記吸収性ゲルマトリックスは、前記体から流体を除去するために該装置を用いる前に、実質的に乾燥している上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項40】
前記装置は、前記体液と吸収性ゲルマトリックスとの間の逆イオン泳動勾配を提供する働きをする電源に接続している正及び負の電極を更に具える上記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項41】
体内の流体に接触するための極微針の配列と、前記極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスと、前記吸収性ゲルマトリックスに有効に接続しているサンプリング手段とを具えている流体抽出及びサンプリング複合装置であって、前記サンプリング手段は前記流体の対象種の水準を測定するために配置される装置。
【請求項42】
体から抽出される流体のサンプル内の対象種の水準を測定するための方法であって、前記体の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いて前記体から前記サンプルを抽出することと、流体の前記サンプルを分析して前記サンプル内の前記対象種の水準を測定することとを含む方法。
【請求項43】
流体から対象種を濾過することを必要とする患者の体内で、前記対象種を含有している前記流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的濾過の方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、前記対象種を含有している流体が前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流れて前記対象種を前記ゲルマトリックスにおいて保持させることを含む方法。
【請求項44】
対象種を除去することによって流体を浄化することを必要とする患者の体内で、前記対象種を含有している前記流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的浄化の方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、前記対象種を含有している流体が前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流れて前記対象種を前記ゲルマトリックスにおいて保持させることを含む方法。
【請求項45】
透析を必要とする患者の体内の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的透析の方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流体を流れさせることを含む方法。
【請求項46】
腎代替療法を必要とする患者の体内の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的透析を含む腎代替療法の方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流体を流れさせることを含む方法。
【請求項47】
尿毒症を患っている患者の体内の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた経皮的透析を含む尿毒症の治療方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、1以上の尿毒症毒素を含有している流体を前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流れさせることを含む方法。
【請求項48】
尿毒症を患っている患者の体内の流体に接触するための極微針の配列及び該極微針の配列と流体連通する吸収性ゲルマトリックスを具えている装置を用いた、心不全のような状態における塩分及び水分過多の治療方法であって、前記極微針の配列を前記流体に接触させ、1以上の尿毒症毒素を含有している流体を前記体から前記極微針を経て前記吸収性ゲルマトリックスへと流れさせることを含む方法。
【請求項49】
尿毒症の治療に用いられる吸収性ゲルマトリックス。
【請求項50】
尿毒症の治療に用いられる装置の製造に使用する吸収性ゲルマトリックス。
【請求項51】
吸収性ゲルマトリックスを具える血液透析フィルタ。
【請求項52】
前記吸収性ゲルマトリックスはヒドロゲルである請求項51に記載のフィルタ。
【請求項53】
前記吸収性ゲルマトリックスは、高分子ビーズ及び/又はマイクロパターン化高分子表面被覆を含む請求項51又は52に記載のフィルタ。
【請求項54】
前記吸収性ゲルマトリックスは、最大約90%w/wの水を閉じ込める能力を示す請求項51、52又は53に記載のフィルタ。
【請求項55】
前記吸収性ゲルマトリックスは、それ自体の重量の最大約30倍の水を吸収する能力を示す請求項51、52、53又は54に記載のフィルタ。
【請求項56】
前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリエチレングリコールアクリルアミド及び/又はその誘導体を含む請求項51乃至55の何れか1項に記載のフィルタ。
【請求項57】
前記吸収性ゲルマトリックスは、マトリックス物質のグラム当たり最大約15グラムの水を吸収する能力を示す請求項56に記載のフィルタ。
【請求項58】
前記吸収性ゲルマトリックスは、マトリックス物質のグラム当たり毎時最大約15グラムの速度で水を吸収する能力を示す請求項56に記載のフィルタ。
【請求項59】
前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリエチレングリコール及び/又はその誘導体を含む請求項51乃至56の何れか1項に記載のフィルタ。
【請求項60】
前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリエチレングリコール/ポリアクリレートコポリマーを含む請求項51乃至56の何れか1項に記載のフィルタ。
【請求項61】
前記吸収性ゲルマトリックスは、マトリックス物質のグラム当たり最大約50グラムの水を吸収する能力を示す請求項60に記載のフィルタ。
【請求項62】
前記吸収性ゲルマトリックスは、ポリ(2―ヒドロキシエチルメタクリレート)及び/又はその誘導体を更に含む請求項51乃至56の何れか1項、59又は60に記載のフィルタ。
【請求項63】
前記吸収性ゲルマトリックスは1以上のアミノ酸残基又はその誘導体を含む請求項51乃至62の何れか1項に記載の装置。
【請求項64】
前記又は各アミノ酸残基は、アルギニン及びグルタミン酸からなる群から選択される請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記吸収性ゲルマトリックスは、最大約50から80kDaの分子量を有する分子に透過性を有する請求項51乃至64の何れか1項に記載のフィルタ。
【請求項66】
血液透析を必要とする患者から血液のサンプルをとることと、吸収性ゲルマトリックスを具える血液透析フィルタに前記血液サンプルを接触させて、前記血液サンプルから前記ゲルマトリックス内へ1以上の対象種を選択的に抽出することと、前記処理された血液サンプルを前記患者に戻すこととを含む血液透析の方法。
【請求項67】
経皮的透析を必要とする患者から間質液のサンプルをとることと、前記間質液サンプルを吸収性ゲルマトリックスに接触させて前記間質液サンプルから前記ゲルマトリックス内へ1以上の対象種を選択的に抽出することと、前記間質液サンプルを前記患者に戻すこととを含む経皮的透析の方法。
【請求項68】
胃腸透析を必要とする患者に吸収性ゲルマトリックスを投与し、前記ゲルマトリックスを胃腸液に接触させて前記胃腸液から前記ゲルマトリックス内に1以上の対象種を選択的に抽出し、前記対象種を含む前記ゲルマトリックスを前記患者から排出させることを含む胃腸透析の方法。
【請求項69】
前記対象種は水、尿毒症毒素、代謝産物、塩及びイオンからなる族から選択される請求項66、67又は68に記載の方法。
【請求項70】
前記対象種は、レチノール結合タンパク質、ベータ―2―ミクログロブリン、副甲状腺ホルモン、アドレノメデュリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、非対称性ジメチルアルギニン、インドール―3―酢酸、尿酸、ホモシステイン、クレアチン、クレアチニン、P―クレゾール、シュウ酸塩、尿素及びリン酸塩からなる族から選択される請求項66、67又は68に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−510779(P2011−510779A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545555(P2010−545555)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000357
【国際公開番号】WO2009/098487
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】