説明

流体機械、当該流体機械を用いた冷媒回路及び廃熱利用装置

【課題】ランキン回路の異常高圧防止及び起動性向上を図りながら、ランキン回路、ひいては装置の小型化及びコスト低減を実現することができる流体機械、当該流体機械を用いた冷媒回路及び廃熱利用装置を提供する。
【解決手段】廃熱利用装置(1)はランキン回路(4)を有し、ランキン回路(4)は流体機械(10)を有する。流体機械(10)は、入口ポート(33)から流入される作動流体により駆動され、作動流体を出口ポート(45)に吐出する駆動部(22)と、入口ポートから流入される作動流体を駆動部に流入させる連通路(102)と、入口ポートから流入される作動流体を駆動部を迂回して出口ポートに導くバイパス路(104)と、入口ポートからの作動流体の流入の遮断または遮断解除を行うとともに、連通路とバイパス路とを切り換えて連通させる弁機構(106,112,124)とをハウジング内に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械、当該流体機械を用いた冷媒回路及び廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の廃熱利用装置は、熱源の廃熱により高圧にされた作動流体を膨張させて駆動力を発生する膨張機が作動流体の循環路に介挿されたランキン回路を備え、ランキン回路は、循環路に、膨張機の入口ポート側の作動流体の高圧側圧力が作用する高圧流路と、膨張機の出口ポート側の作動流体の低圧側圧力が作用する低圧流路と、ランキン回路の運転停止時に高圧流路の圧力を保持する圧力保持手段とを有している。
【0003】
そして、高圧流路に蓄圧するための開閉弁(遮断弁)、高圧流路の圧力調整を行う制御弁(圧力調整弁)、高圧流路の異常高圧を開放するためのリリーフ弁(バイパス弁)の3つの弁を循環路に配し、これらの各弁を制御することにより、ランキン回路の運転停止時における高圧流路の異常高圧を防止しつつ、ランキン回路の起動性を向上する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、作動流体の高圧部、作動流体の低圧部、駆動部、高圧部と低圧部とをバイパスして直接に連通する連通路、連通路を開閉する開閉手段(バイパス弁)が配設された膨張機が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−9897号公報
【特許文献2】特開2007−231855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、循環路に3つの弁(遮断弁、圧力調整弁、バイパス弁)を配して構成されるため、ランキン回路の回路構成が複雑になる。
そこで、これら3つの弁を上記特許文献2に記載された開閉手段(バイパス弁)の如く膨張機内に配設することが考えられるが、これでは膨張機の構成が複雑になり、いずれにせよ、膨張機、ランキン回路、ひいては廃熱利用装置の小型化及びコスト低減を実現することができないとの問題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、ランキン回路の異常高圧防止及び起動性向上を図りながら、ランキン回路、ひいては装置の小型化及びコスト低減を実現することができる流体機械、当該流体機械を用いた冷媒回路及び廃熱利用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、本発明によれば、入口ポートから流入される作動流体により駆動され、作動流体を出口ポートに吐出する駆動部と、入口ポートから流入される作動流体を駆動部に流入させる連通路と、入口ポートから流入される作動流体を駆動部を迂回して出口ポートに導くバイパス路と、入口ポートからの作動流体の流入の遮断または遮断解除を行うとともに、連通路とバイパス路とを切り換える弁機構とをハウジング内に備える流体機械が提供される(請求項1)。
【0009】
また、本発明によれば、作動流体を循環させるための循環路に請求項1に記載の流体機械を備える冷媒回路が提供される(請求項2)。
更に、本発明によれば、請求項2記載の冷媒回路として、流体機械のハウジング内に収容され、熱源の廃熱により高圧にされた作動流体を駆動部で膨張させて駆動力を発生する膨張ユニットを循環路に介挿したランキン回路を備え、ランキン回路は、入口ポートに接続され、循環路を循環する作動流体の高圧側圧力が作用する高圧流路と、出口ポートに接続され、循環路を循環する作動流体の低圧側圧力が作用する低圧流路と、高圧流路の圧力を保持する圧力保持手段とを有し、弁機構は、圧力保持手段の作動時に入口ポートからの作動流体の流入を遮断し、高圧流路の圧力が所定の第1の設定圧力以上となるとき入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除するとともにバイパス路または連通路を連通させる廃熱利用装置が提供される(請求項3)。
【0010】
好ましくは、弁機構は、ランキン回路の運転時には連通路を連通させ、ランキン回路の停止時に圧力保持手段を作動させて入口ポートからの作動流体の流入を遮断し、高圧流路の圧力が所定の第1の設定圧力以上となるとき入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除するとともにバイパス路または連通路を連通させ、ランキン回路の停止後の再起動時に連通路を連通させる(請求項4)。
【0011】
好ましくは、弁機構は、弁機構は、ランキン回路の運転時には連通路を連通させ、高圧流路の圧力が所定の第2の設定圧力未満となるときランキン回路の運転中に圧力保持手段を作動させて入口ポートからの作動流体の流入を遮断し、高圧流路の圧力が所定の第3の設定圧力以上となるとき入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除するとともに連通路を連通させる(請求項5)。
【0012】
好ましくは、弁機構は、高圧流路の圧力が所定の第1の設定圧力以上となるときバイパス路のみを連通させて入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除する(請求項6)。
好ましくは、弁機構は、連通路とバイパス路とを切り換えて連通させるとともに入口ポートの高圧側圧力が作用する弁体と、弁体を支持し、高圧側圧力に抗して弁体を押圧または押圧解除することにより入口ポートからの作動流体の流入の遮断または遮断解除を行うばね機構とからなる(請求項7)。
【0013】
好ましくは、ばね機構は、弁体を押圧するばねと、ばねが収容されるとともに入口ポートと気密に区画される収容室とからなる(請求項8)。
好ましくは、収容室は出口ポートと連通され、ばね機構は、入口ポートの高圧側圧力によって弁体に作用する力が出口ポートの低圧側圧力とばねの押圧力とによる合力よりも大きくなるとき、バイパス路を連通させて入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除する(請求項9)。
【0014】
好ましくは、収容室は大気開放され、ばね機構は、入口ポートの高圧側圧力によって弁体に作用する力が大気圧とばねの押圧力とによる合力よりも大きくなるとき、バイパス路を連通させて入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除する(請求項10)。
好ましくは、弁体はボール弁またはロータリ弁であって、所定の駆動源により回転駆動される(請求項11)。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1の流体機械は、入口ポートからの作動流体の流入の遮断または遮断解除を行うとともに、連通路とバイパス路とを切り換えて連通させる弁機構をハウジング内に備え、1つの流体機械が多機能な弁機構を有するため、簡単な構成を有する。
本発明の請求項2の冷媒回路は、作動流体を循環させるための循環路に請求項1に記載の流体機械を備え、冷媒回路に作動流体の流入の遮断または遮断解除を行う弁や、連通路とバイパス路とを切り換える弁を設ける必要がないため、簡単な構成を有する。
【0016】
本発明の請求項3の廃熱利用装置は、弁機構は、圧力保持手段の作動時に入口ポートからの作動流体の流入を遮断する一方、高圧流路の圧力が所定の設定圧力以上となるとき入口ポートからの作動流体の流入を遮断を解除するとともにバイパス路または連通路を連通させる。これにより、流体機械に、高圧流路に蓄圧するための遮断弁、高圧流路の異常高圧を防止して圧力調整するための圧力調整弁、ランキン回路の異常高圧時に作動流体の異常高圧を開放するためのバイパス弁の3つの機能を集約した1つの弁機構を設けることができるため、ランキン回路の異常高圧防止及び起動性向上を図りながら、ランキン回路、ひいては廃熱利用装置の小型化及びコスト低減を実現することができる。
【0017】
請求項4の廃熱利用装置では、弁機構は、ランキン回路の運転時には連通路を連通させ、ランキン回路の停止時に圧力保持手段を作動させて入口ポートからの作動流体の流入を遮断し、高圧流路の圧力が所定の第1の設定圧力以上となるとき入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除するとともにバイパス路または連通路を連通させ、ランキン回路の停止後の再起動時に連通路を連通させる。これにより、ランキン回路の異常高圧を防止しつつ、ランキン回路の停止時に高圧流路に蓄圧し、ランキン回路の再起動時に高圧流路に蓄圧された作動流体の圧力を利用してランキン回路を起動することができる。
【0018】
請求項5の廃熱利用装置では、弁機構は、ランキン回路の運転時には連通路を連通させ、高圧流路の圧力が所定の第2の設定圧力未満となるときランキン回路の運転中に圧力保持手段を作動させて入口ポートからの作動流体の流入を遮断し、高圧流路の圧力が所定の第3の設定圧力以上となるとき入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除するとともに連通路を連通させる。これにより、作動流体の高圧側圧力が適正圧力になるまで高圧流路に蓄圧され、作動流体の高圧側圧力が適正圧力になると連通路が連通されるため、ランキン回路を循環する作動流体の高圧側圧力を適正に保持することができる。
【0019】
請求項6の廃熱利用装置では、弁機構は、バイパス路のみを連通させて入口ポートの遮断を解除するため、連通路に異常高圧の作動流体が流入し、駆動部が高速駆動されて生じる焼き付きを防止できるため、膨張ユニット、ランキン回路、ひいては廃熱利用装置の機器保護が徹底され、廃熱利用装置の信頼性を向上することができる。
請求項7の廃熱利用装置は、弁機構は、連通路とバイパス路とを切り換えて連通させるとともに入口ポートの高圧側圧力が作用する弁体と、弁体を支持し、高圧側圧力に抗して弁体を押圧または押圧解除することにより入口ポートからの作動流体の流入の遮断または遮断解除を行うばね機構とからなるため、簡単な構成を有する。また、入口ポートの遮断解除を機械的に行うことができるため、迅速な異常高圧開放が可能であり、廃熱利用装置の信頼性を更に向上することができる。
【0020】
請求項8の廃熱利用装置は、ばね機構は、弁体を押圧するばねと、ばねが収容されるとともに入口ポートと気密に区画される収容室とからなるため、簡単な構成を有する。
請求項9の廃熱利用装置では、収容室は出口ポートと連通され、ばね機構は、入口ポートの高圧側圧力によって弁体に作用する力が出口ポートの低圧側圧力とばねの押圧力とによる合力よりも大きくなるとき、バイパス路を連通させて入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除する。これにより、高圧流路の異常高圧開放を入口ポートと出口ポート、すなわち作動流体の高圧側圧力と低圧側圧力との差圧に基づいて行うことができるため(相対圧制御)、高圧側圧力のみならず、低圧側圧力の変動をも迅速に感知して異常高圧開放の制御性を高めることができ、廃熱利用装置の信頼性を更に向上することができる。
【0021】
請求項10の廃熱利用装置では、収容室は大気開放され、ばね機構は、入口ポートの高圧側圧力によって弁体に作用する力が大気圧とばねの押圧力とによる合力よりも大きくなるとき、バイパス路を連通させて入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除する。これにより、高圧流路の異常高圧開放を入口ポートの絶対圧力、すなわち高圧側圧力のみに基づいて行うことができるため(絶対圧制御)、入口ポートの遮断を解除するための所定の設定圧力を流体機械、高圧流路、ひいてはランキン回路の設計上許容される設計最大圧力以下に設定することにより、膨張ユニット、ランキン回路、ひいては廃熱利用装置の機器保護がより一層徹底され、廃熱利用装置の信頼性を更に向上することができる。
【0022】
請求項11の廃熱利用装置では、具体的には弁体はボール弁またはロータリ弁であって、所定の駆動源により回転駆動される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る車両の廃熱利用装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の装置に適用された流体機械の概略的な縦断面図である。
【図3】(a)図2の弁機構のランキン回路の高圧保持時における作動状態を示す縦断面図、(b)図2の弁機構のランキン回路の異常高圧開放時における作動状態を示す縦断面図である。
【図4】(a)第2実施形態に係る弁機構のランキン回路の高圧保持時における作動状態を示す縦断面図、(b)第2実施形態に係る弁機構のランキン回路の異常高圧開放時における作動状態を示す縦断面図である。
【図5】(a)第3実施形態に係る流体機械の概略的な縦断面図、(b)図5(a)をA方向から見た流体機械の概略的な側面図である。
【図6】(a)図5の弁機構のランキン回路の通常運転時における作動状態を示す縦断面図、(b)図6(a)をB-B方向から見た弁機構の概略的な横断面図である。
【図7】(a)図5の弁機構のランキン回路の高圧保持時における作動状態を示す縦断面図、(b)図7(a)をB-B方向から見た弁機構の概略的な横断面図である。
【図8】(a)図5の弁機構のランキン回路の異常高圧開放時における作動状態を示す縦断面図、(b)図8(a)をB-B方向から見た弁機構の概略的な横断面図である。
【図9】(a)図5の弁機構のランキン回路のバイパス時における作動状態を示す縦断面図、(b)図9(a)をB-B方向から見た弁機構の概略的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、第1実施形態に係る車両の廃熱利用装置1を示し、装置1は、例えば、車両のエンジン(内燃機関)2から排出される排気ガスの熱を回収する。そのために装置1はランキン回路4を備え、ランキン回路4は、作動流体(熱媒体)が循環する循環路5を有する。循環路5は、例えば管やパイプによって構成される。
循環路5には、作動流体を流動させるべくポンプ6が介挿され、更に、作動流体が流動する方向でみてポンプ6の下流には、逆止弁7、加熱器8、流体機械10の膨張ユニット12、及び凝縮器14が順次介挿されている。すなわち、ポンプ6は、凝縮器14側にて作動流体を吸入し、吸入した作動流体を昇圧してから加熱器8に向けて吐出する。ポンプ6から吐出された作動流体は、低温高圧の液状態である。
【0025】
加熱器8は熱交換器であって、循環路5の一部を構成する低温の流路8aと、流路8aとの間で熱交換可能な高温の流路8bとを有する。流路8bは、例えばエンジン2から延びる排気管16に介挿されている。従って加熱器8を通過するとき、低温高圧の液状態の作動流体は、エンジン2で発生した排気ガス(熱源)の熱を受け取る。これによって作動流体は加熱され、高温高圧の過熱蒸気状態となる。
【0026】
流体機械10の膨張ユニット12は、過熱蒸気状態となった作動流体を膨張させ、これにより作動流体は、高温低圧の過熱蒸気状態になる。
凝縮器14は放熱器であり、膨張ユニット12から流出した作動流体を外気との熱交換によって凝縮させ、低温低圧の液状態にする。具体的には、凝縮器14の近傍には電動ファン(図示せず)が配置され、車両前方からの風や電動ファンからの風によって作動流体は冷却される。凝縮器14で冷却された作動流体は、再びポンプ6に吸入され、循環路5を循環する。
【0027】
ここで、前述した膨張ユニット12は、作動流体を膨張させるのみならず、作動流体の熱エネルギーをトルク(回転力)に変換して出力可能である。膨張ユニット12から出力されるトルクを利用可能なように、膨張ユニット12には発電ユニット18が連結されている。発電ユニット18には、発生した電力を使用又は蓄電する、例えばバッテリー等の電気的な負荷20が適当に接続されている。
【0028】
詳しくは、図2に示されるように、流体機械10は、膨張ユニット12、発電ユニット18が直列に連結されて構成されている。
膨張ユニット12は、例えばスクロールユニット22を駆動部としたスクロール式の膨張機である。膨張ユニット12のカップ状のケーシング32(膨張ユニット用ケーシング)の開口は、仕切り壁34によって略覆われているが、仕切り壁34の中央には貫通孔が形成されている。
【0029】
膨張ユニット用ケーシング32内には、固定スクロール36が固定され、固定スクロール36の背面側には高圧室38が区画されている。高圧室38は、膨張ユニット用ケーシング32に形成された入口ポート33及び入口ポート33に接続された循環路5の一部を介して加熱器8と連通している。
固定スクロール36の正面側には、可動スクロール40が噛み合うように配置されている。固定スクロール36と可動スクロール40との間には、作動流体を膨張させる膨張室42が区画され、可動スクロール40の周囲は、膨張した作動流体を受け入れる低圧室44として区画されている。固定スクロール36の基板の略中央には、導入孔46が貫通して形成され、この導入孔46を通じて固定及び可動スクロール36,40の径方向中央に位置する膨張室42と高圧室38とが連通する。
【0030】
径方向中央の膨張室42内で作動流体が膨張すると、膨張室42の容積が増大し且つ膨張室42が固定及び可動スクロール36,40の渦巻壁に沿って径方向外側に移動する。そして、膨張室42は、最終的には低圧室44と連通し、膨張した作動流体が低圧室44に流入する。低圧室44は、出口ポート45及び当該出口ポート45に接続された循環路5の一部を通じて、凝縮器14と連通している。
【0031】
かかる作動流体の膨張に伴い、可動スクロール40は固定スクロール36に対して旋回運動させられるが、この旋回運動は旋回機構によって回転運動に変換される。
すなわち、可動スクロール40の基板の背面にはボスが一体に形成され、ボス内には、ニードルベアリング48を介して偏心ブッシュ50が相対回転可能に配置されている。偏心ブッシュ50にはクランクピン52が挿通され、クランクピン52は円盤形状のディスク54から偏心して突出している。ディスク54におけるクランクピン52とは反対側からは同軸にて軸部56が一体に突出し、軸部56は、ボールベアリング等のラジアルベアリング58を介して、仕切り壁34によって回転可能に支持されている。すなわち、可動スクロール40の旋回運動は、軸部56の回転運動に変換される。
【0032】
なお、旋回機構は、旋回運動中の可動スクロール40の自転を阻止するとともにスラスト圧を受けるために、例えばボールカップリング60を有し、ボールカップリング60は、可動スクロール40の基板の外周部と、当該外周部と対向する仕切り壁34の部分との間に配置される。
発電ユニット18の円筒状のケーシング(発電ユニット用ケーシング)93は、仕切り壁34に当接され、膨張ユニット用ケーシング32、仕切り壁34、発電ユニット用ケーシング93は、相互に連結されることにより、流体機械10のための一つのハウジングを構成している。
【0033】
発電ユニット18の駆動軸72の一端は軸部56と一体に形成され、仕切り壁34の貫通孔まで達しており、ラジアルベアリング58を介して、仕切り壁34により回転自在に支持される。一方、駆動軸72の他端は膨張ユニット用ケーシング32の底部に固定されるラジアルベアリング74を介して回転自在に支持されており、これより軸部56と駆動軸72との間の動力伝達が許容され、軸部56と駆動軸72とが一体に回転する。
【0034】
発電ユニット用ケーシング93内を延びる駆動軸72の部分には、回転子96が固定され、回転子96は例えば永久磁石からなる。従って、回転子96は、軸部56と同軸上に配置されている。
発電ユニット用ケーシング93の内周面には、回転子96を囲むようにステータが固定され、ステータは、ヨーク98と、ヨーク98に巻回された例えば3組のコイル100とを有する。
【0035】
コイル100は、回転子96の回転に伴い、3相の交流電流を発生するように配線され、発生した交流電流は、図示しないリード線を通じて、外部の負荷20に供給される。
なお、発電ユニット18は、電動機としての機能を有さないため、ヨーク98の形状やコイル100の巻数等は、発電効率が高くなるように構成される。
このように構成される流体機械10は、そのハウジング内に、入口ポート33と膨張ユニット12とを高圧室38及び導入孔46を介して連通させる連通路102と、膨張ユニット12を迂回して入口ポート33から流入される作動流体を出口ポート45に導くバイパス路104と、連通路102とバイパス路104とを切り換えて連通させる弁機構106とを備えている。
【0036】
詳しくは、弁機構106は、例えばボール弁であって、弁体であるボール108を備え、ボール108は、固定スクロール40を支持する支持部110と、入口ポート33が形成される膨張ユニット用ケーシング32の内面32aとに、弁シートなどを介して回動自在に且つ気密に支持される。
ボール108には作動流体の流路108aがL字状をなして貫通され、ボール108を弁機構106の図示しない駆動軸によって回動させることにより、弁機構106は流路108aを介して連通路102またはバイパス路104を切り換えて連通させる。当該駆動軸は、例えば、図示しない電磁弁(駆動源)によって駆動され、電磁弁は装置1を総合的に制御する図示しないECU(電子制御装置)によって作動させられる。
【0037】
以下、上述した弁機構106の作動について、流体機械10及びランキン回路4の動作とともに説明する。
<通常運転>
ECUによってランキン回路4が起動されると、図2に示されるようにボール108が連通路102のみを連通させる位置に回動されることにより、弁機構106は矢印で示すように加熱器8から高圧室38へ作動流体を流入させ、これより膨張ユニット12が作動し、軸部56と駆動軸72とが一体に回転する。
【0038】
そして、駆動軸72の回転に伴い、発電ユニット18の回転子96が回転し、発電ユニット18が交流電流を生成する。交流電流は負荷20に供給され、負荷20によって適当に備蓄又は消費される。
<高圧保持>
ECUによってランキン回路4の作動が停止されると、図3(a)に示されるようにボール108が連通路102及びバイパス路104のどちらも連通させない位置に回動されて入口ポート33を塞ぎ、弁機構106は加熱器8から高圧室38への作動流体の流入を遮断する。このとき逆止弁7によって加熱器8からポンプ6側への作動流体の逆流は阻止されるため、循環路5には、逆止弁7から流路8aを経て膨張ユニット12に至る範囲において、作動流体の高圧側圧力が蓄圧される高圧流路5aが形成される(圧力保持手段)。一方、出口ポート45から凝縮器14を経て逆止弁7に至る循環路5の範囲には、作動流体の低圧側圧力が作用する低圧流路5bが形成される。
【0039】
また、ランキン回路4の運転中において、ECUにより高圧流路5aにおける作動流体の圧力低下が検出され、例えば作動流体の圧力が所定の適正圧力(第2の設定圧力)未満となると、図3(a)に示されるようにボール108が入口ポート33を塞ぎ、作動流体の高圧側圧力が上記適正圧力になるまで高圧流路5aに蓄圧され、作動流体の高圧側圧力が所定の適正圧力(第3の設定圧力)以上になると、図2に示されるようにボール108が連通路102のみを連通させる位置に回動される。なお、連通路102が連通される作動流体の圧力は、高圧流路5aへ蓄圧される圧力以上に設定され、このように蓄圧と連通路102連通との間の設定圧力に不感帯となるヒステリシスを設けることにより、弁機構106のハンチング動作を好適に防止することができる。
【0040】
<異常高圧開放>
ランキン回路4の運転停止時または運転中の高圧保持状態において、ECUによって高圧流路5aの圧力が所定の設定圧力(第1の設定圧力)以上となって異常高圧が検出されると、図3(b)に示されるようにボール108がバイパス路104を連通させる位置に回動されて入口ポート33の閉塞が解除され、弁機構106は矢印で示すように高圧流路5aの作動流体をバイパス路104に流し、高圧流路5aの圧力が出口ポート45を介して低圧流路5bに開放される。なお、上記所定の設定圧力は<高圧保持>において設定される各適正圧力の設定圧力よりも大きく設定される。
【0041】
<再起動>
ランキン回路4の運転停止時における高圧保持状態から、ECUによってランキン回路4が再起動されると、ボール108が図3(a)に示されるようにボール108が入口ポート33を塞ぐ位置から図2に示されるような連通路102を連通させる位置に回動され、高圧流路5aの圧力が連通路102に開放される。この開放された作動流体の圧力によって膨張ユニット12が駆動され、これにより駆動軸72が回転される。駆動軸72の回転に伴い、発電ユニット18の回転子96が回転し、発電ユニット18が交流電流を生成する。交流電流は負荷20に供給され、負荷20によって適当に備蓄又は消費される。
【0042】
上述したように、第1実施形態の廃熱利用装置1は、ランキン回路4の停止時に高圧流路5aに蓄圧するための遮断弁、高圧流路5aの異常高圧を防止して圧力調整するための圧力調整弁、高圧流路5aの異常高圧を開放するためのバイパス弁の3つの弁の機能を有する1つの弁機構106が流体機械10に設けられる。これにより、ランキン回路4の異常高圧防止及び起動性向上を図りながら、流体機械10、ランキン回路4、ひいては廃熱利用装置1の小型化及びコスト低減を実現することができる。
【0043】
また、ランキン回路の異常高圧を防止しつつ、ランキン回路4の停止時に高圧流路5aに蓄圧し、ランキン回路4の再起動時に高圧流路4に蓄圧された作動流体の圧力を利用してランキン回路4を起動することができ、ランキン回路の起動性を向上することができる。
更に、作動流体の高圧側圧力が適正圧力になるまで高圧流路5aに蓄圧され、作動流体の高圧側圧力が適正圧力になると連通路102が連通されるため、ランキン回路4を循環する作動流体の高圧側圧力を適正に保持することができる。
【0044】
更にまた、弁機構106は、バイパス路104を連通させて入口ポート33から流入される作動流体の遮断を解除することにより、連通路102に異常高圧の作動流体が流入し、スクロールユニット22が高速駆動されて生じる焼き付きを防止できるため、膨張ユニット12、ランキン回路4、ひいては廃熱利用装置1の機器保護が徹底され、廃熱利用装置1の信頼性を向上することができる。
【0045】
図4(a),(b)は、第2実施形態に係る弁機構112の概略構成を示している。なお、第1実施形態の弁機構106と同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
弁機構112は、ボール108を支持し、高圧流路5aの作動流体の高圧側圧力に抗してボール108を押圧し、または押圧解除することにより入口ポート33の遮断または遮断解除を行うばね機構114を更に備える。
【0046】
ばね機構114は、ボール108に対する押圧力を発生するばね116を有し、ばね116はボール108に当接される筒形状の当接部117を介してボール108を押圧している。
また、支持部110には入口ポート33及び高圧室38と気密に区画する収容室118が形成され、収容室118にはばね116及び当接部117が収容される。また、収容室118には導圧孔119がバイパス路104に開口され、収容室118には作動流体の低圧側圧力が作用しており、すなわち収容室118は出口ポート45と連通されている。
【0047】
以下、上述した弁機構112の作動について、高圧流路5aの異常高圧開放の場合のみを流体機械10及びランキン回路4の動作とともに説明する。
<異常高圧開放>
高圧流路5aの異常高圧によって、入口ポート33においてボール108に作用する作動流体の高圧側圧力による力Fhpが出口ポート45の作動流体の低圧側圧力Flpとばね116の押圧力Fsとによる合力よりも大きくなるとき、図4(b)に示されるようにボール108が内面32aから離間して入口ポート33の閉塞が解除され、弁機構106は矢印で示すように高圧流路5aの作動流体を連通路102及びバイパス路104に流し、高圧流路5aの圧力が出口ポート45を介して低圧流路5bに開放される。
【0048】
上述したように、第2実施形態の廃熱利用装置1は、弁機構112がばね機構114を有し、ばね機構114の収容室118は出口ポート45と連通される。これにより、弁機構112に連通路102とバイパス路104とを切り換える切換弁とECUからの信号によらないで機械的に作動する安全弁との両方の機能を持たせることができる。
また、高圧流路5aの異常高圧開放を入口ポート33と出口ポート45、すなわち作動流体の高圧側圧力と低圧側圧力との差圧に基づいて行うことができる(相対圧制御)。従って、当該第2実施形態では、弁機構112をECUからの信号によらないで機械的に作動させるとともに、高圧側圧力のみならず、低圧側圧力の変動をも迅速に感知して異常高圧開放の制御応答性を高めることができ、廃熱利用装置1の信頼性を更に向上することができる。
【0049】
図5(a),(b)は、第3実施形態に係る流体機械10を示している。なお、第1及び第2実施形態の流体機械10と同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
流体機械10の膨張ユニット用ケーシング32の外面32bには弁ユニット120が装着され、弁ユニット120は、2つのブロック120A,120Bから構成されている。
ブロック120Aには、循環路5が接続され、循環路5と連通する第1流路122が貫通して形成されており、ブロック120Aはブロック120Bにねじで締結される。
【0050】
一方、ブロック120Bには本実施形態の弁機構124の収容孔126が形成され、収容孔126には第2流路128が連通され、第1流路122と第2流路128とはブロック120Aのブロック120Bへの締結に伴い気密に連通され、換言すると、各流路122,128は入口ポート33を形成する。
第2流路128からは導圧路130が分岐されており、導圧路130はブロック120Bの収容孔126が開口される主開口部132とは反対側の最内方部133に開口されている。更に、収容孔126には連通路102及びバイパス路104が連通されている。
【0051】
一方、主開口部132には電磁弁(駆動源)134がそのハウジングによって主開口部132を覆うようにして気密にねじ締結されている。
詳しくは、図6(a),(b)に示されるように、弁機構124は、弁体136、ばね138から構成されている。
弁体136は、中空の円筒部136aとヘッド部136bとを有するピストン形状に形成されたロータリー弁であって、円筒部136aとヘッド部136bとの間には弁体136の径方向に流路124aがL字状をなして貫通され、弁体136の流路124aよりもヘッド部136b側には弁体136の外周に沿ってリング溝136cが形成される。
【0052】
電磁弁134は、そのハウジング135内に駆動軸140と、駆動軸140に固定される例えば永久磁石からなる回転子142と、回転子142を囲むようにしてハウジング135の内周面に固定される固定子144とが収容され、固定子144は、ヨークに巻回されたコイルを有し、コイルはECUにリード線を通じて接続されて適宜通電される。
電磁弁134のハウジング135からは駆動軸140と一体成形されたボス146が突出され、ボス146は収容孔126の主開口部132に収容され、収容孔126の内周面に回動自在に支持されている。
【0053】
ばね138は、一端がボス146の底面に押さえられ、他端が円筒部136aの底面に当接され、弁体136を収容孔126の最内方部133に向けて押圧付勢する。
ここで、円筒部136aの外周面とボス146の内周面とは、互いに駆動軸140の軸線方向に沿う例えばセレーション加工を施した嵌合部148によって嵌合されており、これより、ボス146と円筒部136aとの間にばね138の収容室139が形成され、収容室139は収容孔126を入口ポート33側と気密に区画する。また、収容室139に収容されるばね138の押圧方向に沿う弁体136の移動と、駆動軸140ひいてはボス146の回転に伴う弁体136の回動との両方が可能となる。
【0054】
ここで、本実施形態では、収容室139には低圧室44に連通する低圧路141が穿孔され、低圧側圧力となる作動流体が流入される。
このように構成される弁機構124は、弁体136が駆動軸140を介して時計回りあるいは反時計回りに90度の範囲に回動されることにより、流路124aを介して連通路102またはバイパス路104を切り換えて連通させる。駆動軸140は電磁弁134によって駆動され、電磁弁134はECUによって作動させられる。
【0055】
以下、上述した弁機構124の作動について、流体機械10及びランキン回路4の動作とともに説明する。
<通常運転>
ECUによってランキン回路4が起動されると、図6(a),(b)に示されるように弁体136が連通路102のみを連通させる位置に回動されることにより、弁機構124は矢印で示すように加熱器8から高圧室38へ作動流体を流入させ、これより膨張ユニット12が作動し、駆動軸72の回転に伴い、発電ユニット18の回転子96が回転し、発電ユニット18が交流電流を生成する。交流電流は負荷20に供給され、負荷20によって適当に備蓄又は消費される。
【0056】
<高圧保持>
ECUによってランキン回路4の作動が停止されると、図7(a),(b)に示されるように弁体136が連通路102及びバイパス路104のどちらも連通させない位置に回動されて第2流路128、すなわち入口ポート33を塞ぎ、弁機構124は加熱器8から高圧室38への作動流体の流入を遮断する。このとき逆止弁7によって加熱器8からポンプ6側への作動流体の逆流は阻止されて高圧流路5aが形成される一方、低圧流路5bが形成される。
【0057】
また、ランキン回路4の運転中において、ECUにより高圧流路5aにおける作動流体の圧力低下が検出され、例えば作動流体の圧力が所定の適正圧力(第2の設定圧力)未満となると、図7(a),(b)に示されるように弁体136が入口ポート33を塞ぎ、作動流体の高圧側圧力が上記適正圧力になるまで高圧流路5aに蓄圧され、作動流体の高圧側圧力が所定の適正圧力(第3の設定圧力>第2の設定圧力)以上になると、図6(a),(b)に示されるように弁体136が連通路102のみを連通させる位置に回動される。
【0058】
<異常高圧開放>
高圧流路5aの異常高圧によって、導圧路130から導圧され、弁体136のヘッド部136aに作用する作動流体の高圧側圧力による力Fhpが出口ポート45の作動流体の低圧側圧力Flpとばね116の押圧力Fsとによる合力よりも大きくなるとき、図8(a),(b)に示されるように弁体136が収容孔126の最内方部133から離間してばね138側に移動されることにより、リング溝136cが第2流路128と連通する位置に位置づけられる。これより、リング溝136cを介して第2流路128すなわち入口ポート33の遮断が解除され、弁機構136は矢印で示すように高圧流路5aの作動流体を連通路102及びバイパス路104に流し、高圧流路5aの圧力が出口ポート45を介して低圧流路5bに開放される。なお、リング溝136cのように、弁体136の外周に沿って全周に亘り溝を形成するではなく、弁体136の外周に沿って所定の範囲にのみ溝を形成すれば、入口ポート33の遮断が解除されたときの高圧流路5aの作動流体をバイパス路104のみに流れるようにすることも可能である。
【0059】
<再起動>
ECUによってランキン回路4が再起動されると、弁体136が図7(a) ,(b)に示されるように入口ポート33を塞ぐ位置から図6(a),(b)に示されるような連通路102を連通させる位置に回動され、高圧流路5aの圧力が連通路102に開放される。この開放された作動流体の圧力によって膨張ユニット12が駆動され、これにより駆動軸72が回転される。駆動軸72の回転に伴い、発電ユニット18の回転子96が回転し、発電ユニット18が交流電流を生成する。交流電流は負荷20に供給され、負荷20によって適当に備蓄又は消費される。
【0060】
<バイパス>
ランキン回路4の初期起動時にECUによってポンプ6のみを起動させる際に、弁体136が図9(a),(b)に示されるようなバイパス路104を連通させる位置に回動され、循環路5における作動流体の通液抵抗が低減され、作動流体の循環量の制御が円滑に行われる。
【0061】
また、ランキン回路4の完全停止時に弁体136がバイパス路104を連通させる位置に回動されることで、高圧流路5aの作動流体を低圧流路5bに流すことができるため、循環路5全体の作動流体の圧力を均圧にすることができ、膨張ユニット12の円滑且つ完全な停止が可能となる。
上述したように、第3実施形態の廃熱利用装置1は、第2実施形態の場合と同様に、高圧流路5aの異常高圧開放を機械的に、且つ作動流体の高圧側圧力と低圧側圧力との差圧に基づく相対圧制御によって行うことができるため、異常高圧開放の制御応答性を高めることができる。
【0062】
ここで、本実施形態では、収容室139には低圧路141を介して低圧側圧力となる作動流体が流入されるが、低圧路141の代わりに大気に開放された大気開放路148を収容室139に連通させ、収容室139を大気開放しても良い。
以下、この大気開放路148を設けた場合の弁機構124の作動について、高圧流路5aの異常高圧開放の場合のみを流体機械10及びランキン回路4の動作とともに説明する。
【0063】
<異常高圧開放>
高圧流路5aの異常高圧によって、導圧路130から導圧され、弁体136のヘッド部136aに作用する作動流体の高圧側圧力による力Fhpが大気圧による力Faとばね116の押圧力Fsとによる合力よりも大きくなるとき、図8(a),(b)に示されるように弁体136が収容孔126の最内方部133から離間することによりリング溝136cを介して入口ポート33の閉塞が解除され、弁機構136は矢印で示すように高圧流路5aの作動流体を連通路102及びバイパス路104、あるいはバイパス路104のみに流し、高圧流路5aの圧力が出口ポート45を介して低圧流路5bに開放される。
【0064】
この場合には、高圧流路5aの異常高圧開放を入口ポート33の絶対圧力、すなわち高圧側圧力のみに基づいて行うことができる(絶対圧制御)。従って、入口ポート33の遮断を解除するための所定の設定圧力を高圧流路5a、膨張ユニット12、ひいては流体機械10、ランキン回路4の設計上許容される設計最大圧力以下に設定することにより、ランキン回路4、ひいては廃熱利用装置1の機器保護がより一層徹底され、廃熱利用装置1の信頼性を更に向上することができる。
【0065】
また、ランキン回路4の初期起動時にECUによってポンプ6のみを起動させる際に、異常高圧開放時か否かに拘らず、弁体136を図9(a),(b)に示されるようなバイパス路104を連通させる位置に回動することにより、循環路5における作動流体の通液抵抗が低減され、作動流体の循環量の制御を円滑に行うことができて好ましい。
更に、ランキン回路4の完全停止時に弁体136がバイパス路104を連通させる位置に回動されることで、高圧流路5aの作動流体を低圧流路5bに流すことができるため、循環路5全体の作動流体の圧力を均圧にすることができ、膨張ユニット12の円滑且つ完全な停止が可能となる。
【0066】
本発明は上記した各実施形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
例えば、廃熱利用装置1は、排気ガスの熱を電力に変換するものであったが、エンジン2の冷却水の熱(熱源)を電力に変換するものであってもよい。更に廃熱利用装置1は、車両以外にも適用可能である。
また、膨張ユニット12と発電ユニット18とからなる流体機械10に限らず、発電ユニット18に代わるモータジェネレータユニット、及びポンプ16に代わるポンプユニットを備え、これらユニットを膨張ユニット12と駆動軸72を共有させた流体機械にも適用可能である。
【0067】
ここで、高圧流路5aに高圧保持できない場合には、ランキン回路4の再起動時に外部から電力を供給し、モータジェネレータユニットをモータとして作動させてポンプユニットを起動し、その後に循環路5内の作動流体の圧力が十分に上昇すると、その出力の一部でポンプユニットを運転し、残りの出力で発電ユニット18の回転子96を回転させて発電しても良い。
【0068】
一方、高圧流路5aに高圧保持できている場合には、高圧作動流体のエネルギーによってポンプユニットの起動が可能となるため、ポンプユニットを起動させる外部電力が不要となり、流体機械の省エネルギー化を実現できる。
更に、流体機械10に限らず、発電ユニット18を有しない単なる膨張機、動力伝達装置を介して内燃機関に膨張機出力を伝達する流体機械、その他の構成の流体機械にも適用可能である。
【0069】
更にまた、弁機構の弁体は電磁弁によって駆動されるが、これに限らず作動流体の圧力や膨張ユニットの出力を利用して弁体を駆動するようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 廃熱利用装置
4 ランキン回路(冷媒回路)
5 循環路
5a 高圧流路
5b 低圧流路
10 流体機械
12 膨張ユニット
22 スクロールユニット(駆動部)
33 入口ポート
45 出口ポート
102 連通路
104 バイパス路
106,112,124 弁機構
108 ボール(弁体)
114 ばね機構
116,138 ばね
118,139 収容室
134 電磁弁(駆動源)
136 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ポートから流入される作動流体により駆動され、作動流体を出口ポートに吐出する駆動部と、
前記入口ポートから流入される作動流体を前記駆動部に流入させる連通路と、
前記入口ポートから流入される作動流体を前記駆動部を迂回して前記出口ポートに導くバイパス路と、
前記入口ポートからの作動流体の流入の遮断または遮断解除を行うとともに、前記連通路と前記バイパス路とを切り換えて連通させる弁機構と
をハウジング内に備えることを特徴とする流体機械。
【請求項2】
作動流体を循環させるための循環路に請求項1に記載の流体機械を備えることを特徴とする冷媒回路。
【請求項3】
請求項2記載の冷媒回路として、前記流体機械の前記ハウジング内に収容され、熱源の廃熱により高圧にされた作動流体を前記駆動部で膨張させて駆動力を発生する膨張ユニットを前記循環路に介挿したランキン回路を備え、
前記ランキン回路は、前記入口ポートに接続され、前記循環路を循環する作動流体の高圧側圧力が作用する高圧流路と、前記出口ポートに接続され、前記循環路を循環する作動流体の低圧側圧力が作用する低圧流路と、前記高圧流路の圧力を保持する圧力保持手段とを有し、
前記弁機構は、前記圧力保持手段の作動時に前記入口ポートからの作動流体の流入を遮断し、前記高圧流路の圧力が所定の第1の設定圧力以上となるとき前記入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除するとともに前記バイパス路または前記連通路を連通させることを特徴とする廃熱利用装置。
【請求項4】
前記弁機構は、前記ランキン回路の運転時には前記連通路を連通させ、前記ランキン回路の停止時に前記圧力保持手段を作動させて前記入口ポートからの作動流体の流入を遮断し、前記高圧流路の圧力が前記所定の第1の設定圧力以上となるとき前記入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除するとともに前記バイパス路または前記連通路を連通させ、前記ランキン回路の停止後の再起動時に前記連通路を連通させることを特徴とする請求項3に記載の廃熱利用装置。
【請求項5】
前記弁機構は、前記ランキン回路の運転時には前記連通路を連通させ、前記高圧流路の圧力が所定の第2の設定圧力未満となるとき前記ランキン回路の運転中に前記圧力保持手段を作動させて前記入口ポートからの作動流体の流入を遮断し、前記高圧流路の圧力が所定の第3の設定圧力以上となるとき前記入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除するとともに前記連通路を連通させることを特徴とする請求項3または4に記載の廃熱利用装置。
【請求項6】
前記弁機構は、前記高圧流路の圧力が前記所定の第1の設定圧力以上となるとき前記バイパス路のみを連通させて前記入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除することを特徴とする請求項3に記載の廃熱利用装置。
【請求項7】
前記弁機構は、前記連通路と前記バイパス路とを切り換えて連通させるとともに前記入口ポートの前記高圧側圧力が作用する弁体と、前記弁体を支持し、前記高圧側圧力に抗して前記弁体を押圧または押圧解除することにより前記入口ポートからの作動流体の流入の遮断または遮断解除を行うばね機構とからなることを特徴とする請求項3に記載の廃熱利用装置。
【請求項8】
前記ばね機構は、前記弁体を押圧するばねと、前記ばねが収容されるとともに前記入口ポートと気密に区画される収容室とからなることを特徴とする請求項7に記載の廃熱利用装置。
【請求項9】
前記収容室は前記出口ポートと連通され、
前記ばね機構は、前記入口ポートの前記高圧側圧力によって前記弁体に作用する力が前記出口ポートの前記低圧側圧力と前記ばねの押圧力とによる合力よりも大きくなるとき、前記バイパス路を連通させて前記入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除することを特徴とする請求項8に記載の廃熱利用装置。
【請求項10】
前記収容室は大気開放され、
前記ばね機構は、前記入口ポートの前記高圧側圧力によって前記弁体に作用する力が大気圧と前記ばねの押圧力とによる合力よりも大きくなるとき、前記バイパス路を連通させて前記入口ポートからの作動流体の流入の遮断を解除することを特徴とする請求項8に記載の廃熱利用装置。
【請求項11】
弁体はボール弁またはロータリ弁であって、所定の駆動源により回転駆動されることを特徴とする請求項7に記載の廃熱利用装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−236360(P2010−236360A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81838(P2009−81838)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】