説明

流体流れの制御に使用するための結合された繊維構造

流れ制御エレメントが管状の導管を通る液体の流れを選択的に制御する使用のために提供される。流れ制御エレメントは、高分子繊維のネットワークを含む、自立する三次元構造の繊維状エレメントを含む。これらの繊維は非常に分散され、ランダムに離れた配向で配置されており、繊維エレメントを通る曲がりくねっている隙間の通路を形成するために離れた複数の接触点で互いに結合している。繊維状エレメントは実質的に均一なの密度を有し、内側の導管表面に対してしまりばめとなるように内腔中に配置される大きさに形成されており、内腔中に配置されるた場合、繊維状のエレメントは内腔を近位の内腔部と遠位の内腔部とに分割する。繊維状エレメントは導管の遠位端と導管の近位端との間の差圧が少なくとも第1の予め決められた臨界差圧に達しない場合に、遠位の内腔部から近位の内腔部への液体の通過を妨げ、導管の遠位端と導管の近位端との間の差圧が第1の予め決められた臨界差圧と等しいあるいは超えている場合に、遠位の内腔部から近位の内腔部への液体の通過を許容するように適合されている。いくつかの実施例では、また、繊維状エレメントは、導管の遠位端と導管の近位端との間の差圧が第2の予め決められた臨界差圧に等しいか超える場合に、繊維状エレメントが内腔の第1位置から第2位置まで移動するように適合させられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、結合された高分子繊維構造に関し、特に、経口から薬剤を患者に選択的に配送するために使用されるデバイス等のデバイスの流体流れコントローラとしての使用に適合された、結合された高分子繊維構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2004年7月23日に出願され、その全体が参照として本明細書に合体される米国仮特許出願第60/590,463号の優先権を主張する。
【0003】
薬の分野において、導管(例えば、一般的な飲用ストロー)と付随のフィルタデバイスとから成る薬剤配送デバイスが、患者に1回の投与量の薬剤を配送するのに一般的に使われる。ストローあるいは他の導管の中に配置されているフィルタは、投与量の薬剤(例えば、粉の形態)を支える基質として使用される。使用中に、患者はストローで流体を吸引し、その結果、投与量の薬剤を支えるフィルタおよび/またはフィルタの周りで流体を吸引する。薬剤は、液体中に溶解または懸濁されているので、患者は流体とともに薬剤を摂取することができる。
【0004】
米国特許第5,780,058号公報とウォン他の米国特許第5,985,324号公報は、そのような薬剤配送デバイスを開示している。これらのデバイスは、プラグ(栓)あるいはコントローラが配置されているチューブまたはストローを含む。プラグまたはコントローラは、一方向バルブとして働き、吸引がプラグあるいはコントローラの川下側に適用されると、流体がプラグまたはコントローラを通って、または、その周りで流れることが可能である。その構成に依存するが、プラグまたはコントローラは、多孔性あるいは多孔性でない材料から形成され得る。ウォンの米国特許第5,985,324号公報で開示された実施例において、コントローラは、互いに結合された比較的大きい繊維(0.35インチから0.25インチ直径)から形成されて円筒を形成する。
【0005】
ハルドポウラス(Haldopoulous)の米国特許第6,217,545号公報は、別の薬剤配送デバイスを開示する。ハルドポウラスは、ストローとストロー中に配置されたフィルタとを含む薬剤配送デバイスを記載している。ハルドポウラスのフィルタは、少なくとも2つの異なった領域、すなわち、密度の高い構成の中央のコア領域と密度の低い外部周囲の領域を持つように構成される。ハルドポウラスのフィルタは、静的状態であるとき、外部領域において摩擦力が適所にフィルタを維持するように構成される。導管を通って移動する液体がハルドポウラスのフィルタに接触すると、フィルタに対する液体の力は、適所にあるフィルタを保持しながら摩擦力に打ち勝って、フィルタを動かす。フィルタ中の繊維は、通常、ストローの軸方向に配列されている。ハルドポウラスのフィルタは、マルチ密度構成の複雑さと特有の変動性から生じる問題を有するかもしれない。
【特許文献1】米国特許第5,780,058号公報
【特許文献2】米国特許第5,985,324号公報
【特許文献3】米国特許第6,217,545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許で開示された繊維ベースのフィルタデバイスは、多くの欠点を有する。例えば、開示された繊維ベースのフィルタが流体と接触すると流体は繊維を濡らす傾向があるので、吸引がフィルタの反対側で適用される前に、フィルタ中におよびフィルタを通って吸引され得る。その結果、配送が開始される前に薬剤は濡れるかもしれない。
【0007】
既存のデバイスの別の問題は、フィルタを通って液体を吸引するために高い吸引力(差圧)を必要とすることである。これは小さい子供あるいは年配の人によるデバイスの使用を不可能にする場合がある。上記繊維ベースのフィルタは適用された差圧に対する一様性および一貫した応答が不足している。また、既存のデバイスは、異なるデバイスサイズや差圧の要求を満足して仕立てることも難しい。
【0008】
上記の開示された繊維ベースのデバイスの更なる別の問題は、通常使用される繊維は、時間がたつにつれて変化し得る繊維表面上の末端を有する、または、デバイスを使用するとき配送される薬剤と予想することができない反応を持っていることである。いくつかの場合、食物との接触に対する安全のために食物と薬剤の調整を満たす特別な末端が必要かもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、これらの問題を克服し、当該技術における知られたデバイスおよびアセンブリの改善を提供することである。この関連技術のある欠陥は、本背景技術等の議論で記載ているが、これらの欠陥がこれまで必ずしも欠陥として知られていないまたは認識されていないことが理解されるだろう。その上、本明細書に記載される欠陥の1つあるいはそれ以上が請求項に記載された発明の実施例で見いだされる程度まで、そのような欠陥の存在が本発明の新規性または自明でないことからそらせないし、請求項に記載された発明の範囲から実施例を取り除かないのが理解されるだろう。
【0010】
本発明の1つの態様において、流れ制御エレメントは、管状の導管を通る液体の流れを選択的に制御するための使用に提供される。導管は内側の導管表面と内側の横断面の円周を持ち、導管の近位端から導管の遠位端まで内腔(ルーメン)の広がりを定義する。流れ制御エレメントは、高分子繊維のネットワークを含む、自立し三次元の繊維状エレメントを有する。これらの繊維は、高分散のランダムに離れた配向で配置されており、かつ、繊維エレメントを通る曲がりくねっている隙間の通路を形成するために、一定間隔で離れた複数の接触点で互いに結合されている。繊維状エレメントは、実質的に一定の密度を有し、内部の導管表面に対して締まりばめ(interference fit)となるように内腔中の配置のための大きさに作られている。そのように配置されると、繊維状エレメントは内腔を内腔の遠位端部分と内腔の近位端部分とに分割する。繊維状エレメントは、少なくとも第1の予め決められた臨界差圧で導管の遠位端部分と導管の近位端部分との間の差圧がないと、内腔の遠位端部分から内腔の近位端部分への流体の通過を妨げるように適合されている。繊維状エレメントは、導管の遠位端部分と導管の近位端部分との間の差圧が第1の予め決められた臨界差圧に等しいかあるいはそれを越えた場合に、内腔の遠位端部分から内腔の近位端部分への流体の通過を許容する。また、いくつかの実施例において、繊維状エレメントは、導管の遠位端部分と導管の近位端部分との間の差圧が第2の予め決められた臨界差圧に等しいかあるいはそれを越えた場合に、内腔の第1の位置から第2の位置に繊維状エレメントが移動するように適合させられるかもしれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、参照番号がエレメント等を指定するために使用されている付随の図面とともに本発明の好ましい実施例の以下に示す詳細な説明を読むことによってより十分に理解することができる。
【0012】
本発明は、導管を通るガスの通過を可能にするが、ある特性を有する液体の通過を選択的に防ぐのが好ましい、流体導管で使用する流れ制御エレメントの様々な実施例を提供する。本発明の流れ制御エレメントは、実質的に均一、自立し、結合された繊維構造として形成される。使用される繊維は、結果物である構造が液体と接触すると、その構造が液体に対して抵抗する特別の特性を持ち得る。これは、液体が繊維を濡らすことを防ぎまたは繊維構造中に水が吸引されるのを防ぐ。しかしながら、繊維構造は予め決められた差圧が流れ制御エレメントに適用されると、液体が流体制御エレメントの中にまたは流体制御エレメントを通って吸引されるように適合されている。
【0013】
本発明の流れ制御エレメントは、上記記載された種々の薬剤配送デバイスでの使用のために十分に適合されており、薬剤が飲用ストローを通って患者に配送される。図1は本タイプの例示的な薬剤配送デバイスの透視図である。図1で示されるように、薬剤配送デバイス10は、遠位端と近位端とを有する管状の導管30の内腔32中に配置された流れ制御エレメント20を含んでいる。導管30は、流れ制御エレメント20がデバイスの外から見えるように透明または半透明材料で構成されている。導管30は、飲用ストローの形態であり得るし、あるいは選択的に薬剤を投与するシリンジあるいは他のデバイスの一部でもあり得る。図1に示されるように、粉末、錠剤または他のすぐに分散可能または溶解可能な形態の薬剤50は、流体制御エレメント20の近位の内腔32中に配置される。代わりの薬剤50は、流れ制御エレメント20の結合された繊維構造の隙間中に配置され得る。どちらの場合でも、流れ制御エレメントは薬剤50の支えを提供し、かつ導管30の遠位端から摂取された流体の溶液まで薬剤の放出を防ぐ。
【0014】
薬剤配送デバイス10は、吸引力が導管30の近位端に加えられると、流体が導管30の近位端中に吸引されるような構造となっている。差圧(ΔP)が流れ制御デバイスに適用されると、理想的に、ガス(例えば、空気)は流れ制御デバイスを通ってすぐに通過する。しかしながら、十分に高いΔPが適用されない場合には、液体は、好ましくは、中に入れない。液体が導管30の遠位端まで導入されて、十分高いΔPが適用されると、液体は流体制御エレメント20を通過しておよびまたは周囲を通って、薬剤50とであう。もしそのΔPが維持されると、液体と薬剤の混合物は、導管30の近位端まで配送される。
【0015】
通常の構成において、薬剤配送デバイス10は導管30として飲用ストローの形態を使用する。ストローの遠位端は、ユーザがストローを通って液体を吸引しストローの近位端でユーザの口の中に液体を吸引することができるように、通常、水、ジュースなどの液体中に浸される。通常の使用において、ストローの遠位端はユーザによって実際の使用の前に液体中に配置され得る。その結果、液体は要求される前にストローの内腔中に入り得る。ユーザがストローを吸引するときに、デバイスが適切に薬剤を配送するために、液体が薬剤と接触するのを防がれなければならない。
【0016】
本発明は、薬剤配送デバイス10および他の同様な応用における流れ制御エレメントとして使用し得る、結合された繊維構造を提供する。これらの構造は、予め設定されたΔPが流れエレメントに適用されないまたはΔP未満が適用される場合に、空気の通過を許容するが、液体が流れ制御エレメントを通過するまたはその周囲を通過するのを防ぐように構成されている。この構造は、指定された条件下で液体に対して効果的なシール性を維持する特別のΔPの要求を満たすようにに仕立てられ得る。また、この構造はストローの遠位端を通る固体の薬剤粒子の通過を防ぐように構成される。
【0017】
従って、本発明の実施例に基づく流れ制御エレメントは、三次元の自立する、結合された高分子繊維のネットワークを含んでいる。このネットワークは、エレメントを通る流体の通過のための曲がりくねった流れの経路を定義する。繊維の構造、密度および材料は、所望の全体のエレメントの気孔率と繊維表面積を提供するために調製され得る。繊維の材料と構成は、また、繊維がある流体を引き付けるかまたは排除するかの程度を決定する。特別の実施例において、流れ制御エレメントは、水を排除する疎水性の表面を提供する繊維を有する。
【0018】
本発明の結合された繊維構造は、熱可塑性の繊維状材料あるいは繊維ウェブで形成され得る。いくつかの実施例において、これらの繊維は、溶融吹き付けされた(melt-brown)シース(鞘)−コア2成分系繊維(sheath-core bicomponent fibers)であり、その繊維のシース成分は、疎水性高分子によって形成され、あるいは疎水性表面を発現するように被覆されている。ウェブは、高分散された連続の(例えば、フィラメント)および/または不連続(例えば、短繊維)の2成分繊維の相互接続しているネットワークとして形成され得ることができ、その繊維は、非常に高い表面積で一連の曲がりくねっている流体経路を提供するために様々な接触点で互いに結合されている。
【0019】
用語「2成分(bicomponent)」は、本発明の実施例で使用される特別の数の成分に繊維を限定するために意味するものではないことを理解されるだろう、むしろ、「2成分」の材料は、2つまたはそれ以上の材料を有する「多成分」の材料でもあり得ることが理解される。
【0020】
通常のシース・コア2成分繊維22の断面が図3で示される。シース・コア繊維22には、1つまたはそれ以上の高分子のコアの材料を含むコア領域24と、1つまたはそれ以上の高分子のシース材料を含むシース・の領域26とを有する。
【0021】
様々の共通に所有される従来技術の特許は、明確に2成分繊維を製造し、そのような繊維から3の次元で自立する構造を形成するための好ましい処理技術とデバイスを記載している。これらの特許は、その全体がそれぞれ本明細書に合体される米国特許第5,509,430号公報、第6,026,819号公報、および第6,103,181号公報を含んでいる。
【0022】
好ましい実施例において、流れ制御エレメントで使用するための結合された繊維構造は、高分散のランダムに離れた配向で配置される高分子繊維のネットワークを形成するために、複数のシース・コア2成分繊維が溶融吹き付けで作られる。溶融吹き付け紡糸ビーム(melt-blow spin beam)で繊維を引き出して減速するために、高温空気が使用され、繊維は、次に、集められ、冷却されて、ランダムに分散された緩く結合した繊維ウェブを形成する。このウェブは、次に、加熱されたダイを通って引き出されて多孔性の結合した繊維ロッドを形成し、次に、冷却されて所望の長さに切断される。
【0023】
上記のプロセスは、互いに一定間隔の離れた複数の接触点で結合している、ランダムに分布した、配向していない繊維の実質的に均質な構造を生成する、一定の溶融吹き付けされた繊維ウェブを提供する。この構造は、全体に均一な密度と気孔率を有し、再現可能な全体の気孔率を持つ規則正しい流れ制御エレメントに提供する。
【0024】
本発明の流れ制御エレメントで使用された繊維は、限定無しに、炭化水素樹脂、ポリエチレンとポリプロピレンとそれの共重合体のようなポリオレフィン;、ポリエチレン・テレフタレートとポリエチレン・テレフタレート共重合体とポリブチレン・テレフタレートとそれらの共重合体のようなポリエステル、ナイロン6とナイロン66とそれらの共重合体のようなポリアミド、フッ素樹脂、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ABS、アセタール・ホモ高分子とその共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニールアルコール、ポリエチレングリコール、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸を有するエチレン共重合体、アクリル酸エチレン、エチレン・ビニールアセテート、エチレン・メチルアクリレート、および、カチオンの2価ポリエステルとを含む群のうちの1つまたはそれ以上から形成された溶融吹きつけの2成分繊維を含み得る。
【0025】
本発明の結合された繊維構造の実施例は、疎水性の特性を示す、結合された2成分の短繊維、結合された2成分のフィラメント繊維およびそれの混合物を含み得る。上記記載されたように、このような高分子の選択において、シース・コア繊維に対し、シース成分は疎水性の特性を有し、薬剤配送において一般的に使用される水性の液体を排除するように適合させられている。
【0026】
好ましい実施例では、シース材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとメタクリル酸の共重合体、熱硬化性のフッ素樹脂のような、疎水性(すなわち、低い表面エネルギー)材料で形成されている。1つの好ましい実施例において、流れ制御エレメントで使用される結合された繊維構造は、ポリプロピレンのコア材料とエチレン/メタクリル酸共重合体のシース材料とを持っている溶融吹き付け2成分繊維を有する。別の実施例では、結合された繊維構造は、ポリプロピレンコア材料と低密度ポリエチレンのシース材料を含む。
【0027】
繊維コアは、構造的な完全性を提供するために、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6、6および他のナイロンなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリ乳酸など)、および他のポリオレフィン(シンジオタクチック、イソタクチックポリプロピレンおよびポリエチレンなど)を限定無しに含む、結晶性高分子材料を用いて形成され得る。コアの高分子は疎水性を必要としない。しかしながら、疎水性のコア材料の使用は、シース材料でコアの不完全な被覆から起こる問題を避けるために有利かもしれない。
【0028】
溶融吹きつけされた繊維の大きな利点は、仕上げ剤(finish)または潤滑液がそれらを生産するために通常使用されないことである。したがって、結果物である繊維は、繊維表面に残有する仕上げ剤を有さない。このことは、繊維の疎水性と結合された構造の性能特性とが、劣化しやすい仕上げ剤を有する構造で現れるような、時間とともに変化しないことを確実にする。
【0029】
別の実施例において、本発明の結合された繊維構造を製造するために使用される繊維は、自立する結合された繊維構造を形成するために結合される前あるいは結合された後で、疎水性の材料で被覆され得る。
【0030】
本発明の結合された繊維構造で使用される繊維の平均最大断面寸法(円形断面を有する繊維の平均直径)は、約1μmから約30μmの範囲であり得る。好ましい実施例において、繊維の平均最大断面寸法は、約15μmから約20μmの範囲である。本発明の結合された繊維構造の気孔率は、約70%から約98%の範囲であるかもしれない。好ましい実施例において、本発明の結合された繊維構造の気孔率は、約85%から約92%の範囲であるかもしれない。以前に記載されたように、繊維構造の密度は、実質的に構造全体を通して一定である。
【0031】
本発明の結合された繊維構造のための繊維を製造するための好ましい方法は、上記記載された溶融吹き付けプロセスを用いることであるが、そのようなフィルタを製造するための他の方法が代わりに使用され得ることは理解され得る。これらの方法は、ダイの複数の開口を複数の繊維が通る慣用の方法(例えば、溶融紡糸(melt spinning)、スパンボンディング、ドライスピンニング、ウェットスピンニング)によって連続的に紡糸する工程を含み、その工程では、連続的に動く表面状に繊維を集めて、高分散のランダムに離れた配向で配置された、連続した繊維のネットワークの形態で、非常にもつれているウェブを形成する。このネットワークは、複数の接触点で互いに繊維を結合するために、集められ、加熱され、ダイを通過され、次に、結合された最終繊維構造を提供するために冷却される。
【0032】
図1と図2に戻ると、流れ制御エレメント20は一般に筒状の形状であることがわかる。流体制御エレメント20の横断形状は、円、楕円、多角形、または、導管30の内壁に一致するために要求されるいかなる他の形状であり得る。上記記載されたように、流れ制御エレメントは、高分散のランダムに離れた配向で配置された繊維22のネットワークから形成される、結合された繊維構造を含む。図4は、本発明の実施例に基づく、結合された繊維構造の4倍の光学顕微鏡写真である。光学顕微鏡写真は、構造のランダムな繊維配向を示す側面図である。
【0033】
流れ制御エレメント20は、導管30内のが適所で結合あるいは他の方法によって固定される。しかしながら、好ましい実施例では、流れ制御エレメント20は、摩擦による係合によって導管30の内部の側壁に係合するように適合されている。いくつかの実施例では、流れ制御エレメント20は、その円周が導管30の内側円周よりもいくらか大きい円周であり、それにより締まりばめ(interference fit)となるように構成されている。その結果、流れ制御エレメント20は、流れ制御エレメント20と導管30の内部表面の間の静的な摩擦力に打ち勝つことができるくらいの力が適用されるまで、その位置に固定されて残り得る。
【0034】
いくつかの実施例では、流れ制御エレメント20は、導管30の直径に一致するようにわずかに圧縮されなければならない。要求される圧縮の量は、流体制御エレメント20と導管30の内側表面の間の摩擦力の量の係数である。本発明の通常の実施例では、導管30の内径に対する流れ制御エレメントの直径(または、管状でない断面に対する他の最大寸法)の有効な比率は、1.0から1.1の範囲であり得る。特別の実施例では、この比率は1.001から1.050の範囲であり得る。
【0035】
流れ制御エレメント20を動かすのに要求される力は、結合された繊維構造の様々な特性(例えば、密度、気孔率、繊維サイズおよび繊維材料)を合わせることと導管30に対する設置されていない流れ制御エレメント20のサイズとを通して制御され得る。流れ制御エレメントの移動に対する抵抗は、流体制御エレメント20と導管30の内側表面の間の摩擦力から生じる。結合された繊維構造は、流れ制御エレメント20を横切る十分に高いΔPが適用されると、この摩擦力に打ち勝つことができるように仕立てられ得る。好ましい実施例において、流れ制御エレメント20を移動するための差圧のしきい値は、液体が流れ制御エレメント20中を通るまたはその周囲を通ることが可能な差圧よりも大きいものである。
【0036】
特別の実施例において、流れ制御エレメント20は、流れ制御エレメント20を移動させるしきい値ΔPが、導管30中および導管30を通って流体を吸引するがユーザによって適用された経口の吸引力によって開始されるべき移動を許容する範囲にセットされるように、仕立てられるかもしれない。流れ制御エレメント20の移動は摩擦力によって抵抗されるので、移動のためのしきい値は、流れ制御エレメント20と導管30の内側表面の間の摩擦係数に依存することは理解され得る。上記記載されたように、しきい値は、流れ制御エレメント20の特性に依存するだろう。また、しきい値は、液体が流れ制御エレメント20を通過する、および、特に、流れ制御エレメント20の周囲を通過するかどうかに依存する。流れ制御エレメント20を通る液体流れを確立する前に流れ制御エレメント20が移動することは一般的に好ましくないので、流れ制御エレメント20は、流れ制御エレメントを通るおよびその周囲を通る場合に、かなり高い移動のしきい値ΔPを持ち、流れ制御エレメントを通るおよび/またはその周囲を通る場合に、低い移動のしきい値ΔPを持つように適合され得る。
【0037】
図1を参照すると、薬剤配送デバイス10は、内腔32中に流れ制御エレメント20の長手方向の移動に対する限定として働く一組のリブ40をもって提供され得る。リブ40は、反対端部で内腔32の内側直径を減少させ、その結果、予め決められた距離を超えて導管30中の流れ制御エレメント20の移動を防ぐように機能する。リブ40が、導管30で一つの単一部品として形成され得る、または、導管30の内部の側壁に付けられた別々のコンポーネントであり得ることは理解され得る。流れ制御エレメント20の移動を限定するたの機構は使用され得る。例えば、導管30の内側表面と流れ制御エレメントとの間の摩擦力をかなり増加させるためのいかなるメカニズムも使用され得る。これは、導管30をテーパにすること、導管30の内側表面を粗くすること、導管30の内側表面から内部へ延びる他の突起物の形態を提供することを含み得る。流れ制御エレメント20は、好ましくは、それが操作する差圧レベルで(例えば、差圧が導管30の近位端を吸引する患者によって確立される)変形しないで、近位のリブ40あるいは導管30の近位端で流れ制御エレメント20のレベルを制限するための他のメカニズムを通過してスリップする、十分に高い圧縮係数で形成されている。
【0038】
流れ制御エレメント20を通るおよび/またはその周囲を通る液体の移動と例示の実施例の流れ制御エレメント20の移動は、以下により詳細に議論されるであろう。この実施例では、流れ制御エレメントは、第1の予め決められた臨界ΔPが、特別の液体を流れ制御エレメント20を通って、および/または、その周囲から吸引するように構成されている。液体が流れ制御エレメント20を通って、および/または、その周囲から流れるのが許容されると、流れ制御エレメント20は第1の予め決められた臨界ΔPと等しいか大きい第2の予め決められた臨界ΔPで移動することが要求される。図1は導管30中の初期位置の流れ制御エレメント20を例示している。これは、患者が導管30を通って液体を吸引しようとする前の流れ制御エレメント20の位置である。図5で示されるように、導管30の遠位端34が液体60のリザーバ中に配置され、導管の近位端32に吸引力が適用されると(すなわち、流れ制御エレメント20に近い内腔中の圧力は低下する)液体60は内腔32中に吸引される。吸引力は、液体60を流れ制御エレメント20と接触する中に吸引するのに十分であるが、流れ制御エレメント20を通って吸引するのには不十分である、すなわち、第1の予め決められた臨界ΔPに達しないことが理解されるだろう。そのような情況において、流れ制御エレメント20の結合された繊維構造の疎水性の特性は、液体が流れ制御エレメント20を通って中に浸透することを防ぐであろう。もしも十分な吸引力が適用されると、流れ制御エレメント20を横切る第1の予め決められた臨界ΔPに達して、液体60は、流れ制御エレメント20を通って、および/または、流れ制御エレメント20の周囲から吸引され、液体60が液体60と薬剤50の混合物70を形成する導管30の流れ制御エレメント20に近い領域まで吸引される。
【0039】
液体60が流れ制御エレメント20を通って、および/または、流れ制御エレメント20の周囲を通過するとき、導管30中の適所に流れ制御エレメント20を保持する摩擦力は減少する。適用される吸引力が予め決められた第2臨界ΔPを超えると、導管30に対して適所に流れ制御エレメント20を保持する減少した摩擦力に打ち勝つ。これは、図6で示されるように、流れ制御エレメント20が導管30の近位端32に向かって移動させる。もしも十分な吸引力が維持されると(すなわち、第2の予め決められた臨界ΔPが維持される)、流れ制御エレメント20は、リブ40(または、他の制限デバイス)が更なる移動を防ぐ図7で示される位置に達するまで近位端の方向に移動し続けるであろう。
【0040】
多くの場合、流れ制御エレメント20を移動させるために要求される差圧(すなわち、予め決められた第2臨界ΔP)は、液体の流れが通過するために要求される差圧(すなわち、第1の臨界ΔP)よりも大きいであろう。このことは、流れ制御エレメント20が移動する前に、液体が、薬剤と混合するために流れ制御エレメントを通って、または、流れ制御エレメントの周りを通過することを保証する。しかしながら、いくつかの実施例では、流れ制御エレメント20は、摩擦力が流れ制御エレメント20を通る、および/または流れ制御エレメント20の周囲を通る液体の流れによって減少させられるまでその差圧下で移動することが許容されていないので、第2臨界ΔPは第1の臨界ΔPとほぼ等しくなるようにされるかもしれない。
【0041】
上記記載されたように、流れ制御エレメント20の移動を制限するための他の機構は使用し得る。いくつかの実施例では、流れ制御エレメント20の移動は、導管30の一方の端部に制限され得る。例えば、リブ40(テーパあるいは他の制限機構)は、導管30の近位端32の近くに配置され、遠位端34に配置されないかもしれない。
【0042】
使用中に、粉末の形態または小さい粒子の薬剤(または繊維上に可溶性コーティングで乾燥された液体の薬剤)の1回の投与量を支える、流れ制御エレメント20を含む薬剤配送デバイス10を患者に供給し得る。これらの形態で薬剤を供給するのは、薬剤が消化管で急速に吸収されるのを可能にするので、かなり有利である。上記説明したのと同様の方法で、患者は、水やジュースなどの摂取できる液体中に導管30の下側の端部を浸し、次に、流れ制御エレメント20および導管30を通って口に液体を吸引する。液体が薬剤に接触すると、薬剤は液体中に懸濁または溶解する。液体が流れ制御エレメント20を通って移動するとき、液体はまた、導管30近位端に向かって流れ制御エレメント20を動かし、患者が吸引するのを止めるとその最終的な位置で保持される。ストローのような導管を用いる消化管への高速の流れ速度によって、患者による最小の認識で薬剤の投与を可能とし、自然の嚥下反射(swallowing reflex)の利点を得ることができる。以上の応用は、子供の患者と老人の患者の両方に対する薬剤の経口投与に対して、特に、薬剤が口蓋可能でない(unpalatable)場合に、特別の利点を提供する。
【0043】
上記で説明されたように、本発明の流れ制御エレメントで使用される結合された繊維構造は、薬剤配送デバイスの応用において、ある性能の目標を達成するために特別に仕立てられるかもしれない。これらの目標は、(1)流れ制御エレメントを横切る第1の予め決められた臨界ΔPを適用する前に、液体の通過を防止する、(2)第1の予め決められた臨界ΔPと等しいまたはそれを超えるΔPが適用されると、流れ制御エレメントを通って液体が通過する、(3)第1の予め決められた臨界ΔPと等しいまたはそれを超える第2の予め決められた臨界ΔPと等しいまたはそれを超えるΔPが適用されると、流れ制御エレメントが遠くに移動することを含む。
【0044】
臨界ΔPの設計レベルは、薬剤配送デバイスの意図された使用に依存して異なるかもしれない。例えば、子供または年配者の使用のために意図されたデバイスでは、比較的低い第1および第2臨界ΔPレベルを供給することが有利かもしれない。本発明の流れ制御エレメントは、大きさにかかわらず、約1ミリバール(mbar)から約50ミリバールの範囲の予め決められた第1臨界ΔPレベルを提供するように仕立てられ得る。本発明の特別な実施例では、流れ制御エレメントは、約15ミリバールから約25ミリバールの範囲の予め決められた第1臨界ΔPレベルを提供するように仕立てられ得る。
【0045】
流れ制御エレメントは、第1の臨界ΔPに等しいかそれを超える差圧の範囲にある第2の臨界ΔPを提供するためにさらに仕立てられるかもしれない。特に、流れ制御エレメントは、第2臨界ΔPが、流れ制御エレメントが動く前に、流れ制御エレメントを通る液体の特別な流れ速度を確立するために十分なレベルであるように、仕立てられ得る。このような方法で流れ制御エレメントを仕立てることは、流れ制御エレメントがその近位方向に移動し始める前に、十分な液体が流れ制御エレメントを通って通過し、流れ制御エレメントの近位に配置された薬剤を懸濁または溶解することを保証するために使用され得る。
【0046】
上記記載された設計目標は、材料の選択と、繊維の特性および結合された繊維構造の幾何学形状を仕立てることとの組み合わせを使用することによって実現される。試験が、特別な定量的要求を満たすように仕立てる能力を確立し、流れ制御エレメントのパラメータの感度の変化、例えば、繊維直径、結合された繊維構造の密度/気孔率および繊維表面エネルギーを確立するために用いられる。
【0047】
2つの例示的な繊維材料の構成が、流れ制御エレメントを特別な条件に適合させる能力を示すために示される。第1の構成(繊維1)は、アトフィナ3860Xポリプロピレンのコア材料とヌクリール(商標登録)699エチレン/メタクリル酸共重合体のシース材料を持つ、溶融吹き付けされたシース・コア2成分繊維を使用する。第2(繊維2)は、同じアトフィナ3860Xポリプロピレンのコア材料を持つが、シース材料としてイクイスターNA270を持つ溶融吹き付けされたシース・コア2成分繊維を使用する。どちらの場合も、繊維はコア材料に対するシース材料の30:70の比率で形成されている。これらの繊維の両方は、特有の疎水性表面材料を有し、両方はよく結合された自立する三次元構造を提供する。
【0048】
以下に、本発明の流れ制御エレメントの性能を示し、性能感度を証明するためになされたテストを記載する。
【0049】
液体排除テスト手順は、水が、関心のヘッド圧下で流れ制御エレメントに浸透するのを防ぐ流れ制御エレメントの能力を達成するために用いられた。このテストで、流れ制御エレメントは、ストローの遠位端から10mmに配置された。次に、ストロー遠位端は、青い食物カラー溶液で青色に着色された水のリザーバ中に5ミリバールのヘッド圧を生むのに十分な深さまで下ろされた。ストローは15分間その場所に保持された。青色に着色された水の痕跡がフィルタの両端または近位端に観察されないときに、排除の評価基準が成功であるとされた。
【0050】
接触角テストが疎水性の一般的な標識として用いられた。接触角は、液体、ガスおよび固体が交差する3相界面で形成される角度を測定することによって、固体と接触する液体の挙動を定量化するための便利な方法である。通常、90度と等しいまたはそれ以上の接触角は、低い表面エネルギー(すなわち、疎水性)を示す。一方、ゼロに近い接触角は、固体が高い表面エネルギー(すなわち、親水性である)であることを示し、液体が表面材料に高い親和性を持っていることを意味する。0から90度の間の接触角は中間的な程度の疎水性を示す。テストが本発明の流れ制御エレメントに行われ、使用した繊維材料の水の接触角を証明した。テスト手順は、標準のテスト手順とファースト・テン・オングストローム(FTA)装置およびソフトウェアを使用して行われた。
【0051】
水の通過テストは、10ml/分の速度で流れ制御エレメントを通過して水を配送するために要求される力すなわち真空力を決定するために使用された。テスト物は、約7.2mmの内径を有する通常の飲用ストロー中に流れ制御エレメントを設置して構成した。タイゴンチューブ(商標登録)は両端でストローに接続された。ストローの一端でタイゴンチューブ(商標登録)の反対の端は、水のビーカー中に沈められて、チューブの反対側は、シリンジポンプのシリンジに接続された。バリジン(Validyne)のデジタル圧力計が圧力を検出するためにシリンジポンプとストローの間に接続された。脱イオン水は10ml/分のレートでフィルタに吸引され、静水圧低下が試験開始後50秒間記録された。データは、定常状態条件を満たすことを確認するためにデータ取得ソフトウェアパッケージを使用して記録された。
【0052】
種々の圧力差での流れ制御エレメントの移動を示すためにエレメント動作試験が行われた。これらのテストにおいて、セットアップされた水の通過試験は組み立てられたストローと流れ制御エレメントがタイマーで動作するピンチバルブをもつタイゴン(商標登録)チューブの一部と接続するように変更された。次に、チューブはストロー/流れ制御エレメントアセンブリを通って吸引された液体が集められるエアフィルタに接続された。エアフィルタの川下に、真空ゲージ、流量計、流れ制御バルブおよび真空ポンプが設置された。タイマーは空気流れ5L/分で2秒に設定された。50、75、および100ミリバールの差圧は、真空ポンプと流れ制御チューブを通して確立された。システムを通って吸引された液体の量とストローを上昇するフィルタの移動は測定された。ストローは先端10と基部0で10の等しい増分で印がつけられた。ストローの半分まで移動した流れ制御エレメントに5.0の移動スコアを与えた。
【0053】
上記テストは特別な性能の要求を満たすために仕立てられた例示の流れ制御エレメントを評価するために使用された。特別の例では、流れ制御エレメントは、7.23mmの内径を持つポリエチレン導管を有する薬剤配送デバイスに仕立てられた。この例の目的のために、薬剤配送デバイスは、第2の臨界差圧が動作液体として水で5ミリバール以上であることを必要とする。そのような条件は、通常、流れ制御エレメントが液体表面以下となるように十分に深く液体中に浸漬されるときに経験されるヘッド圧による液体の漏出がないことを保証する。液体の漏出を防ぐことによって、流れ制御エレメントは、患者が第1の臨界差圧を超えるように該エレメントを横切る差圧を生じる吸引力を適用するまで薬剤が乾いたままで残っていることを保証する。
【0054】
繊維1で形成された流れ制御エレメントは、これらの要求を満たすために首尾よく仕立てられた。この流れ制御エレメントは、7.31mmの直径、9.0mmの長さ、89.0%の平均気孔率、および15.7μmの平均繊維直径を有する結合された繊維構造を有する。この構成の流れ制御エレメントは、少なくとも5ミリバールのヘッド圧で100%の撥水性と15から25ミリバールの範囲のΔPで最初に水の通過する流れと100ミリバールの真空圧で全移動(導管の底から先端まで)を示した。水と流れ制御エレメントの接触角は128度だった。
【0055】
また、繊維2で形成された流れ制御エレメントは、提案された薬剤配送デバイスの要求を満たすために首尾よく仕立てられた。この流れ制御エレメントは、7.30mmの直径、9.0mmの長さ、88.1%の気孔率、および15.7μmの平均繊維直径を有する結合された繊維構造を有する。この構成の流れ制御エレメントもまた、5ミリバールのヘッド圧で浸漬テストを通過することによって優秀な疎水性を示し、15から25ミリバールの範囲のΔPで最初に水の通過する流れと119度の接触角を示した。この流れ制御エレメントは、また、100ミリバールの真空圧で導管の底から先端まで首尾よく移動した。
【0056】
また、上記の記載されたテストはまた、繊維特性と総合的なエレメントの幾何学的形状に対する流れ制御エレメントの性能特性の感度を確立するために使用された。
【0057】
与えられた繊維材料(繊維1)とエレメント長さ(9.0mm)に対する水を排除するテストは、繊維直径の効果(約10μmから約20μmの範囲)、結合された繊維構造の気孔率(約86%から約91%の範囲)およびストローの内径に対する設置されていない流れ制御エレメントの直径の比率(約1.001から約1.100の範囲)を証明するために行われた。20のエレメントが各データポイントに対してテストされた。
【0058】
結果は、試験されたサンプルの100%が、約18.25μmまでの平均繊維サイズで許容できる水の排除を示した。水の排除ができなくなるのは繊維サイズがさらに増加したときに起こり始めた。同様に、100%の水を排除する性能は、全繊維構造の気孔率は88%未満で達成された。水の排除ができなくなるのは気孔率がこのレベルを超えたときに起こり始めた。全比率に対して1.02または1.02を超える直径比は水の100%排除に関する2次パラメータとして見いだされた。
【0059】
与えられた繊維材料(繊維1)に対する水の通過テストは、繊維直径の効果(約12μmから約20μmの範囲)と結合された繊維構造の気孔率(約85%から約91%の範囲)を証明するために行われた。結果は、流れ制御エレメントを通って水を配送するために要求される差圧(すなわち、吸引力)は、繊維サイズとエレメントの気孔率に逆比例することを示した。全体的に見て、要求された差圧は約14.5ミリバールから約22.9ミリバールの範囲であった。
【0060】
エレメントの移動試験が、差圧レベルを変えて流れ制御エレメントの移動に対するエレメント直径比(すなわち、ストローの内径に対する設置されていない流れ制御エレメントの直径の比率)および結合された繊維構造の密度の影響を証明するために行われた。結果は、流れ制御エレメントの移動が流れ制御エレメントの密度より強くエレメント直径比率に影響されることを示した。例えば、50ミリバールの圧力レベルでは、1.001の直径比は8.3の移動スコアを生じたが、1.100の直径比は、0の移動スコア(すなわち、 移動無し)を示した。
【0061】
従って、本発明は、実質的に均質な密度とランダムな繊維配向を有する結合された繊維構造を含む流れ制御エレメントの様々な実施例を記載している。繊維構造は、水あるいは他の液体をはじくように仕立てられた材料特性を有する溶融吹き付けされた2成分繊維を含み得る。特に、繊維は、水および一般の飲料を排除するように疎水性となるように仕立てられ得る。繊維は、シース・コア繊維であり、シースが仕上げ剤無しで疎水性である、低い表面エネルギー材料を含み得る。その代わりに、繊維構造が疎水性の仕上剤げが適用された繊維を含み得る。
【0062】
本発明の流れ制御エレメントが薬剤配送デバイスでの使用に限定されないことは当業者によって理解されるだろう。これらのエレメントは、差圧に基づいて選択的に液体流れの制御を必要とするいかなる応用において使用され得る。また、本発明の流れ制御エレメントが総合的な流れ条件に依存するいかなるサイズにも合わせて調整され得ることは理解されるだろう。
【0063】
以上の記載は詳細および特異性を含んでいるが、これらがただ説明の目的のために含まれているのであり、本発明の限定として解釈されないことは理解される。上記で記載された実施例に対する変形は、本発明の精神と範囲から逸脱しないでなし得ることができ、本発明は以下の請求項およびそれらの法的な同等物を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例に基づく流体制御エレメントを有する例示の薬剤配送デバイスの透視図である。
【図2】本発明の実施例に基づく流体制御エレメントの部分的な透視図である。
【図3】本発明の様々な実施例に基づく流体制御エレメントで使用され得る例示されたシース−コア2成分繊維の部分透視図である。
【図4】本発明の実施例に基づく流体制御エレメントの結合された繊維構造の光学顕微鏡を示す図である。
【図5】薬剤配送デバイスのための使用シーケンスの一部を示す、本発明の実施例に基づく流体制御エレメントを有する薬剤配送デバイスの透視図である。
【図6】薬剤配送デバイスのための使用シーケンスの一部を示す、本発明の実施例に基づく流体制御エレメントを有する薬剤配送デバイスの透視図である。
【図7】薬剤配送デバイスのための使用シーケンスの一部を示す、本発明の実施例に基づく流体制御エレメントを有する薬剤配送デバイスの透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の導管を通る液体の流れを選択的に制御するのに使用される流れ制御エレメントであって、
前記管状の導管の近位端から遠位端まで延びる内腔(ルーメン)を定める内側の導管表面を持ち、
曲がりくねった隙間の通路を形成するために、高分散のランダムに離れた配向で配置され、かつ離れた複数の接触点で互いに結合している高分子繊維のネットワークを有する、自立する3次元構造の繊維状エレメントを含み、
前記繊維状エレメントは、
前記内側の導管表面に対して締まりばめ(interference fit)となるように前記内腔中に配置される大きさに形成されており、前記内腔中に配置された場合に前記内腔を近位の内腔部と遠位の内腔部とに分割し、
実質的に均一な密度を有し、
前記導管の遠位端と前記導管の近位端との間の差圧が少なくとも第1の予め決められた臨界差圧に達しない場合に、前記遠位の内腔部から前記近位の内腔部への前記液体の通過を妨げ、前記導管の遠位端と前記導管の近位端との間の差圧が前記第1の予め決められた臨界差圧と等しいあるいは超えている場合に、前記遠位の内腔部から前記近位の内腔部への前記液体の通過を許容するように適合されている、
ことを特徴とする流れ制御エレメント。
【請求項2】
前記繊維状エレメントは、第1位置で前記内腔内に最初に配置可能でありかつ前記第1位置に対して遠い第2位置まで移動可能であり、
前記繊維状エレメントは、前記第1位置と前記第2位置の間の移動が前記導管の遠位端部と前記導管の近位端部の間の差圧が前記第1の予め決められた臨界差圧よりも大きい第2の臨界差圧と等しいまたは超えているときにのみ起こるように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項3】
前記繊維状エレメントが前記内側の導管表面と摩擦で係合することによって前記内腔内の移動に抵抗し、前記摩擦の係合は、前記導管の近位端部と前記導管の遠位端部との間の前記差圧が前記第2の予め決められた臨界差圧と等しくないまたは超えていない場合でかつ前記液体が前記繊維状エレメントと接触していない場合に、移動を妨げる静的な摩擦力を供給することを特徴とする請求項2に記載の流れ制御エレメント。
【請求項4】
前記第1の臨界差圧は、約1ミリバールから約50ミリバールの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項5】
前記第1の臨界差圧は、約15ミリバールから約25ミリバールの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項6】
前記高分子繊維は、疎水性の表面材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項7】
前記高分子繊維は、少なくとも1つのシース材料と少なくとも1つのコア材料とを含む、溶融吹きつけされたシース・コア2成分繊維であることを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項8】
前記少なくとも1つのシース材料は、疎水性であることを特徴とする請求項7に記載の流れ制御エレメント。
【請求項9】
前記少なくとも1つのシース材料は、ポリエチレンとエチレン/メタクリル酸共重合体とからなる組のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の流れ制御エレメント。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコア材料は、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリエチレン・テレフタレート、ポリブチレン・テレフタレート、ポリプロピレン・テレフタレート、ポリ乳酸、シンジオタクティック・ポリプロピレン、イソタクティックポリプロピレンおよびポリエチレンからなる組のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7に記載の流れ制御エレメント。
【請求項11】
前記高分子繊維は、約1μmから約30μmの範囲の平均最大断面寸法を持っていることを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項12】
前記高分子繊維は、約15μmから約20μmの範囲の平均最大断面寸法を持っていることを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項13】
前記導管表面は、内腔の直径を定める円形の断面をもち、前記繊維状エレメントは、繊維状エレメントの直径を定める円形の断面をもち、前記繊維状エレメントの直径の前記内腔の直径に対する比率は、1.0から1.1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項14】
前記繊維状エレメントの直径の前記内腔の直径に対する比率は、1.001から1.050の範囲であることを特徴とする請求項13に記載の流れ制御エレメント。
【請求項15】
前記繊維状エレメントは、約70%から約98%の範囲の気孔率を有することを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項16】
前記繊維状エレメントは、約85%から約92%の範囲の気孔率を有することを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項17】
前記管状の導管は、薬剤配送デバイスの一部であり、前記繊維状エレメントは、前記内腔内に薬剤を支えるために適合されており、前記薬剤は、前記液体が前記繊維状のエレメントを通過するときに前記液体と混合することが許容されることを特徴とする請求項1に記載の流れ制御エレメント。
【請求項18】
薬剤配送デバイスの導管を通る液体の流れを選択的に制御するための流れ制御エレメントであって、
前記導管が前記導管の近位端から前記導管の遠位端まで延びる内腔を定める内側の導管表面を有し、前記薬剤配送デバイスが前記患者が前記導管の近位端を吸引することによって前記導管の遠位端でリザーバから液体を吸引し、前記内腔を通って前記薬剤と混合し、前記導管の近位端を通って外にでるように前記内腔中に配置された前記薬剤の1回の投与量を前記患者に選択的に配送するように適合されており、
曲がりくねった隙間の通路を形成するために、高分散のランダムに離れた配向で配置され、かつ離れた複数の接触点で互いに結合している前記高分子繊維のネットワークを有する、自立する3次元構造の繊維状エレメントを含み、
前記繊維状エレメントは、
前記内側の導管表面に対して締まりばめとなるように前記内腔中に配置される大きさに形成されており、前記内腔中に配置された場合に前記内腔を近位の内腔部と遠位の内腔部とに分割し、
実質的に均一な密度を有し、
前記導管の遠位端と前記導管の近位端との間の差圧が少なくとも第1の予め決められた臨界差圧に達しない場合に、前記遠位の内腔部から前記近位の内腔部への前記液体の通過を妨げ、前記導管の遠位端と前記導管の近位端との間の差圧が前記第1の予め決められた臨界差圧と等しいあるいは超えている場合に、前記遠位の内腔部から前記近位の内腔部への前記液体の通過を許容するように適合されている、
ことを特徴とする流れ制御エレメント。
【請求項19】
前記繊維状エレメントは、第1位置で前記内腔内に最初に配置可能でありかつ前記第1位置に対して遠い第2位置まで移動可能であり、
前記繊維状エレメントは、前記第1位置と前記第2位置の間の移動が前記導管の遠位端部と前記導管の近位端部の間の差圧が前記第1の予め決められた臨界差圧よりも大きい第2の臨界差圧と等しいまたは超えているときにのみ起こるように適合されていることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項20】
前記繊維状エレメントが前記内側の導管表面と摩擦で係合することによって前記内腔内の移動に抵抗し、前記摩擦の係合は、前記導管の近位端部と前記導管の遠位端部との間の前記差圧が前記第2の予め決められた臨界差圧と等しくないまたは超えていない場合でかつ前記液体が前記繊維状エレメントと接触していない場合に、移動を妨げる静的な摩擦力を供給することを特徴とする請求項19に記載の流れ制御エレメント。
【請求項21】
前記導管の遠位端部と前記導管の近位端部との間の前記差圧が前記患者によって適用される吸引力によって達成され、前記第1の予め決められた臨界差圧が患者の特性の関数であることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項22】
前記第1の臨界差圧は、約1ミリバールから約50ミリバールの範囲であることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項23】
前記第1の臨界差圧は、約15ミリバールから約25ミリバールの範囲であることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項24】
前記高分子繊維は、疎水性の表面材料を含むことを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項25】
前記高分子繊維は、少なくとも1つのシース材料と少なくとも1つのコア材料とを含む、溶融吹きつけされたシース・コア2成分繊維であることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項26】
前記少なくとも1つのシース材料は、疎水性であることを特徴とする請求項25に記載の流れ制御エレメント。
【請求項27】
前記少なくとも1つのシース材料は、ポリエチレンとエチレン/メタクリル酸共重合体とからなる組のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項25に記載の流れ制御エレメント。
【請求項28】
前記少なくとも1つのコア材料は、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリエチレン・テレフタレート、ポリブチレン・テレフタレート、ポリプロピレン・テレフタレート、ポリ乳酸、シンジオタクティック・ポリプロピレン、イソタクティックポリプロピレンおよびポリエチレンからなる組のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項25に記載の流れ制御エレメント。
【請求項29】
前記高分子繊維は、約1μmから約30μmの範囲の平均最大断面寸法を持っていることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項30】
前記高分子繊維は、約15μmから約20μmの範囲の平均最大断面寸法を持っていることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項31】
前記導管の表面は、内腔の直径を定める円形の断面をもち、前記繊維状エレメントは繊維状エレメントの直径を定める円形の断面をもち、前記繊維状エレメントの直径の前記内腔の直径に対する比率は、1.0から1.1の範囲であることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項32】
前記繊維状エレメントの直径の前記内腔の直径に対する比率は、1.001から1.050の範囲であることを特徴とする請求項31に記載の流れ制御エレメント。
【請求項33】
前記繊維状エレメントは、約70%から約98%の範囲の気孔率を有することを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項34】
前記繊維状エレメントは、約85%から約92%の範囲の気孔率を有することを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。
【請求項35】
前記繊維状エレメントは、前記薬剤を支えるために適合されており、前記内腔の近位端部内に前記薬剤を隔離していることを特徴とする請求項18に記載の流れ制御エレメント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−507356(P2008−507356A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522764(P2007−522764)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/025919
【国際公開番号】WO2006/012442
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(504090547)フィルトロナ リッチモンド, インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】FILTRONA RICHMOND, INC.
【住所又は居所原語表記】1625B Ashton Park Drive, Colonial Heights, VA 23834 U.S.A.
【Fターム(参考)】