説明

流体流通部材の腐食検知システム

【課題】EGRクーラの冷却管やインタークーラの冷却管などの流体流通部材に発生した凝縮水の腐食の強さを検知することができる流体流通部材の腐食検知システムを提供する。
【解決手段】流体流通部材と同材質の第1の導電性部材90と、流体流通部材とイオン化傾向の異なる材質の第2の導電性部材91と、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91を互いに絶縁する絶縁手段92とを備えてなるセンサ部80と、内部に生成された凝縮水が第1の導電性部材90および第2の導電性部材91に跨って付着することで第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間に流れる電流を計測する電流計測部81と、電流計測部81により得られた電流値が予め設定した電流閾値を超えたこと、あるいは電流値の積算値が予め設定した積算閾値を超えたことを条件として、流体流通部材の内壁部が凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断する判断部82aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された流体流通部材の腐食検知システムに関し、特に、内燃機関のEGR(Exhaust Gas Recirculation排出ガス再循環)システムのEGRクーラやインタークーラで発生した凝縮水による流体流通部材の腐食の強さや程度を検知する流体流通部材の腐食検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関の排気浄化性能に対する要求の高度化に伴って、NOx低減に効果的な排出ガス再循環を行うEGRシステムを搭載した内燃機関が普及してきている。近年では、EGRシステムの効果として、NOx低減に加え、ポンピングロスの低下による燃費向上が着目されている。
【0003】
EGRシステムでは、高温のEGRガスが多量に吸気に混合されると、吸気充填効率が低下して内燃機関の出力が下がってしまうおそれがある。このため、再循環される排気の温度を下げるEGRクーラが多用されている。
【0004】
EGRクーラは、一般に、ケース内にステンレス製の冷却管を設けて構成される。そして、冷却管の内部に排気再循環される排出ガスを流通させるとともに、冷却管の外部に冷却水を流通させる。そして、冷却管の壁部を介在して、排出ガスと冷却水との間で熱交換が行われ、これにより吸気側に再循環される排出ガスが冷却されるようになっている。
【0005】
排出ガスは、水蒸気(HO)および炭酸ガス(CO)を多く含み、その他に亜硫酸ガス(SO)や窒素酸化物(NO)などを含んでいる。冷却管において高温の排出ガスが冷却されることにより、排出ガス中の水蒸気が凝縮されて凝縮水となり冷却管の内壁部に付着することがある。
【0006】
内壁部に付着した凝縮水に亜硫酸ガスが溶解すると、硫酸(HSO)や無水硫酸(SO)が生成される。あるいは、凝縮水に窒素酸化物が溶解すると、硝酸(NHO)が生成される。
【0007】
また、内燃機関の燃料であるガソリンには原則として塩素(Cl)は含まれないものの、国や地域によってはガソリンに塩素が含まれている場合がある。また、エンジンオイルや大気には塩素が含まれる。このため、ガソリンやエンジンオイルや大気の塩素は内燃機関の燃焼室で排出ガス中に残留し、これにより排出ガス中に塩素が含まれていることがある。そして、EGRクーラにおいて排出ガス中の塩素が凝縮水に溶解した場合は、塩酸(HCl)が生成される。
【0008】
これら硫酸、硝酸および塩酸のような強酸性の凝縮水が冷却管の内壁部に付着することにより、冷却管の内壁部が腐食されるおそれがある。
【0009】
冷却管の腐食を防止するために、冷却管の内壁部の腐食の程度を検知するシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。この腐食検知システムでは、冷却管の内壁部が、芯材と被覆材との積層構造により形成されている。そして、被覆材が、排出ガスに接触するように設けられている。また、被覆材と芯材との電位差を計測する電位差計が設置されている。
【0010】
排出ガスが冷却され酸性の凝縮水が発生して被覆材に付着すると、被覆材が腐食する場合がある。この場合、腐食によって被覆材が薄くなることにより、被覆材と芯材との電位差が小さくなる。この電位差の減少を電位差計によって検出することにより、被覆材の腐食を検知することができる。
【0011】
さらに、計測した電位差が予め設定した閾値より小さくなったとき、被覆材の腐食が所定の程度に達したと判断して、運転者に警告を発するようにする。これにより、腐食が大きく進行する前に、冷却管を交換するなどの処置を施すことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−185673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述のような従来の腐食検知システムにあっては、被覆材と芯材との電位差を計測するとともに、被覆材と芯材との電位差は計測時点での凝縮水の有無には無関係に決まるものである。このため、従来の腐食検知システムにあっては、計測時点での被覆材の腐食の程度は検出できるものの、計測時点での凝縮液による腐食の強さを検知することは困難である。このため、例えば強酸性の凝縮水が発生したときのように腐食が急速に進行する場合でも、予め設定された程度まで腐食しないと運転者には警告されず、運転者に早期に警告できないという問題があった。
【0014】
また、腐食の強さが大きい強酸性の凝縮水により冷却管の腐食が急速に進行することを考慮すると、警告は早めに発せられる方が好ましい。しかし、警告を早めに発するように設定すると、腐食の強さが小さい凝縮水により冷却管の腐食が緩慢に進行した場合は、まだ長期間使用できるにも関わらず、必要以上に早期に対処することになるという問題もあった。
【0015】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、EGRクーラの冷却管やインタークーラの冷却管などの流体流通部材に発生した凝縮水の腐食の強さを検知することができる流体流通部材の腐食検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る内燃機関の流体流通部材の腐食検知システムは、上記目的達成のため、(1)内燃機関の排出ガスまたは吸入ガスを流通させる導電性の流体流通部材の内部に設けられるとともに、前記流体流通部材と同材質からなる第1の導電性部材と、前記流体流通部材とイオン化傾向の異なる材質からなる第2の導電性部材と、前記第1の導電性部材および前記第2の導電性部材を互いに絶縁する絶縁手段とを備えてなるセンサ部と、前記内部に生成された凝縮水が前記第1の導電性部材および前記第2の導電性部材に跨って付着することで前記第1の導電性部材および前記第2の導電性部材の間に流れる電流を計測する電流計測部と、前記電流計測部により得られた前記電流値が予め設定した電流閾値を超えたこと、あるいは前記電流値の積算値が予め設定した積算閾値を超えたことを条件として、前記流体流通部材の内壁部が前記凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断する判断部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成により、流体流通部材の内部で排出ガスまたは吸入ガスが冷却されて酸性の凝縮水が発生し、凝縮水が第1の導電性部材と第2の導電性部材とに跨って付着した場合、第1の導電性部材と第2の導電性部材との間に電流が流れる。ここで、凝縮水が第1の導電性部材と第2の導電性部材とに跨って付着する形態としては、水滴状の凝縮水が液体として第1の導電性部材と第2の導電性部材とに接触して導通する場合はもちろん、霧状の凝縮水が水蒸気として第1の導電性部材と第2の導電性部材とに接触して導通する場合をも含む。
【0018】
そして、第1の導電性部材と第2の導電性部材との間に流れた電流が、電流計測部により計測され、電流値が得られる。得られた電流値が予め設定した電流閾値を超えた場合は、判断部が、凝縮水の腐食の強さは所定の閾値より大きいと判断する。また、計測した電流値の積算値が予め設定した積算閾値を超えた場合は、判断部が、凝縮水による内壁部の腐食は所定の程度より大きいと判断する。判断部は、凝縮水の腐食の強さまたは内壁部の腐食の程度から、内壁部が凝縮水により腐食しやすい環境にあるか否かを判断する。
【0019】
これにより、発生した凝縮水の付着に伴う第1の導電性部材と第2の導電性部材との間の電流を電流計測部が検出することにより、凝縮水の腐食の強さあるいは内壁部の腐食の程度を判断部が検知することができる。このため、従来のように内壁部の腐食の程度のみを検知する場合に比べて、内壁部が凝縮水により腐食しやすい環境にあるか否かをより高精度に検知することができる。
【0020】
上記(1)に記載の流体流通部材の腐食検知システムにおいては、(2)前記第1の導電性部材は、前記内壁部であることが好ましい。この構成により、第1の導電性部材を腐食の検知対象である内壁部と兼用できるので、第1の導電性部材を実際の腐食環境下に配置することができる。これにより、部品点数を削減できるとともに、より高精度の検知が可能になる。
【0021】
上記(1)または(2)に記載の流体流通部材の腐食検知システムにおいては、(3)前記第2の導電性部材の材質は、前記第1の導電性部材の材質よりもイオン化傾向が小さいことが好ましい。
【0022】
この構成により、第1の導電性部材と第2の導電性部材とに酸性の凝縮水が跨って接触した場合、イオン化傾向の大きい第1の導電性部材は凝縮水に溶け出すとともに、イオン化傾向の小さい第2の導電性部材は凝縮水に溶け出さない。このため、内壁部と同一材質である第1の導電性部材が腐食して、これにより発生する電流値が計測されるので、内壁部の腐食をより高精度に検知することができるようになる。
【0023】
上記(1)から(3)に記載の流体流通部材の腐食検知システムにおいては、(4)前記判断部が前記内壁部は前記凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断したことを条件として、前記内壁部が前記凝縮水により腐食しやすい環境にあることを警告する警告部を有することが好ましい。
【0024】
この構成により、警告部が警告を発することで、内燃機関の利用者が内壁部は腐食しやすい環境にあることを認識できる。このため、例えば内燃機関が車両に搭載されたエンジンである場合は、利用者が車両を修理工場に持ち込むなど、適切な処置を行うことができる。
【0025】
上記(1)から(4)に記載の流体流通部材の腐食検知システムにおいては、(5)前記判断部が前記内壁部は前記凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断したことを条件として、前記内壁部が前記凝縮水により腐食しやすい環境にあることから回避する処理を行う回避処理部を有することが好ましい。この構成により、回避処理部が回避処理を行うので、内壁部が凝縮水により腐食しやすい環境から脱することができる。
【0026】
上記(5)に記載の流体流通部材の腐食検知システムにおいては、(6)前記回避処理部は、前記凝縮水を加熱する加熱手段であることが好ましい。この構成により、判断部が内壁部は凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断したことを条件として加熱手段が凝縮水を加熱するので、凝縮水は蒸発して内壁部の腐食が防止されるか、あるいは凝縮水に塩素が含まれる場合は凝縮水から塩素が気化して凝縮水の腐食の強さが低減される。これにより、内壁部が凝縮水により腐食しやすい環境から脱することができる。
【0027】
上記(1)から(6)に記載の流体流通部材の腐食検知システムにおいては、(7)前記流体流通部材は、EGRクーラに設けられた前記排出ガスを流通させる管部材であることが好ましい。この構成により、EGRクーラの排出ガスを流通させる管部材における内壁部が凝縮水により腐食しやすい環境にあるかが判断されるようになる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、計測された電流値が予め設定した電流閾値を超えたこと、あるいは電流値の積算値が予め設定した積算閾値を超えたことを条件として、流体流通部材の内壁部が凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断する判断部を備えているので、EGRクーラの冷却管などの流体流通部材に発生した凝縮水の腐食の強さを検知することができる流体流通部材の腐食検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システムが搭載された内燃機関を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システムが装着されたEGRクーラを示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システムの主要部を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システムでの電流値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の流体流通部材の腐食検知システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態では、流体流通部材の腐食検知システムは、車両に搭載される内燃機関のEGRシステムのEGRクーラにおいて、発生した凝縮水による腐食の強さや程度を検知するものとしている。
【0031】
まず、本実施の形態に係る内燃機関(以下、単にエンジンと呼ぶ)の構成について説明する。本実施の形態のエンジンは、ピストンが2往復する間に吸気行程と圧縮行程と膨張行程と排気行程とからなる一連の4行程を行う4サイクルのガソリンエンジンによって構成されている。
【0032】
図1に示すように、エンジン1は、エンジン本体2と、吸気装置3と、排気装置4と、EGRシステム5とを備えている。
【0033】
エンジン本体2は、複数のシリンダ(図示せず)と、ウォータジャケット(図示せず)とを有している。ウォータジャケットは、各シリンダの周囲に設けられ、内部に冷却水20を流通させることによりエンジン本体2を冷却するようになっている。
【0034】
吸気装置3は、吸気管30と、エアクリーナ31と、スロットルバルブ32と、吸気マニホールド33とを含んで構成されている。エアクリーナ31は、フィルタにより吸入空気を浄化するようになっている。スロットルバルブ32は、吸気管30の下流部に設けられるとともに、電子制御式で各シリンダに供給される吸入空気の吸入空気量を調節するようになっている。
【0035】
吸気マニホールド33は、吸気管30と各シリンダとを接続している。吸入空気は、吸気管30からエアクリーナ31および吸気マニホールド33を経て各シリンダに流入されるようになっている。また、吸気マニホールド33と各シリンダとの接続により、エンジン本体2と吸気装置3とが接続されている。
【0036】
排気装置4は、排気マニホールド40と、触媒コンバータ41と、排気管42と、排気マフラ43と、テールパイプ44とを順に連結して構成されている。
【0037】
排気マニホールド40は、各シリンダから排出された排出ガス45を流通させる。この排気マニホールド40と各シリンダとの接続により、エンジン本体2と排気装置4とが接続されている。
【0038】
触媒コンバータ41は、酸化触媒と還元触媒と助触媒とからなる三元触媒を含んで構成されている。触媒コンバータ41は、例えば、排出ガス45のNOxを還元してNOやNOにし、さらに炭化水素や一酸化炭素と反応させて窒素ガスにしたり、あるいは排出ガス45の炭化水素や一酸化炭素を酸化して水や二酸化炭素にすることができる。このように、触媒コンバータ41により、排出ガス45の一酸化炭素や窒素酸化物や炭化水素などの有害物質が浄化されるようになっている。
【0039】
排気マフラ43は、排出ガス45の圧力により排出ガス45の通路面積を調整可能な可変バルブ(図示せず)を備えている。可変バルブは、アイドリング時やエンジン1の低回転時には閉じていて、排出ガス45の通路を縮小して消音効果を高める。また、可変バルブは、エンジン1の高回転時には開いていて、排出ガス45の通路を拡大して低背圧になって排出効率を高めるようになっている。
【0040】
テールパイプ44の下流側端部は大気に開放されている。このため、排気マフラ43から排出された排出ガス45は、テールパイプ44を経て大気に放出されるようになっている。
【0041】
EGRシステム5は、上流管50と、EGRクーラ51と、腐食検知システム52と、中間管53と、EGRバルブ54と、下流管55とを含んで構成されている。上流管50と、EGRクーラ51と、中間管53と、EGRバルブ54と、下流管55とは、順に連結されている。
【0042】
上流管50は、排気装置4の排気管42に連結される。また、下流管55は、吸気装置3の吸気マニホールド33に連結されている。すなわち、EGRシステム5は、排気装置4の排出ガス45の一部を吸気装置3に還流させる排気再循環装置として機能するようになっている。
【0043】
図2に示すように、EGRクーラ51は、ケース60と、冷却媒体流入管61と、冷却媒体流出管62と、排出ガス冷却管63と、流体流通部材および管部材としての排出ガス流入管64と、排出ガス流出管65とを備えている。冷却媒体としては、エンジン1の冷却水20を使用している。
【0044】
EGRクーラ51は、排出ガス流出管65を排出ガス流入管64より上方に位置するように傾斜して設けられている。本実施の形態では、水平線Hに対して傾斜角θだけ傾斜するようにしている。傾斜角θは車種に応じて適宜設定される。
【0045】
ケース60は、略円筒形状のケース本体70と、上流側支持プレート71と、下流側支持プレート72とを備えている。ケース本体70の内部では、軸方向に沿って冷却水20が流通する(図2中、白矢頭矢印で示す)。
【0046】
上流側支持プレート71は、ケース本体70の冷却水20の流通方向の上流側の端部に、該端部を塞ぐように設けられている。上流側支持プレート71は、複数の貫通孔71aを有している。下流側支持プレート72は、ケース本体70の冷却水20の流通方向の下流側の端部に、該端部を塞ぐように設けられている。下流側支持プレート72は、複数の貫通孔72aを有している。上流側支持プレート71の貫通孔71aと下流側支持プレート72の貫通孔72aとは、同数設けられるとともに、ケース本体70を挟んでそれぞれ対向する位置に設けられている。
【0047】
排出ガス冷却管63はステンレス製で、上流側端部73と、下流側端部74と、壁部75とを備えている。排出ガス冷却管63は排出ガス45を流通させるようになっている(図2中、黒矢頭矢印で示す)。排出ガス冷却管63は、対向する一組の上流側支持プレート71の貫通孔71aおよび下流側支持プレート72の貫通孔72aに貫通される。上流側端部73は、上流側支持プレート71の貫通孔71aに圧入されて、上流側支持プレート71により支持される。上流側端部73には、排出ガス流入管64から排出ガス45が供給される。下流側端部74は、下流側支持プレート72の貫通孔72aに圧入されて、下流側支持プレート72により支持される。下流側端部74から排出ガス流出管65に排出ガス45が排出される。
【0048】
壁部75は、上流側端部73および下流側端部74の間に設けられるとともに、排出ガス45が流通される方向に延在した環状に形成されている。排出ガス冷却管63では、内部を流通する排出ガス45が、外部を流通する冷却水20との間で熱交換されて冷却される。また、排出ガス冷却管63の内部で排出ガス45が冷却されることにより、排出ガス冷却管63の内部で凝縮水21が発生する場合がある。EGRクーラ51は排出ガス流出管65を排出ガス流入管64より上方に位置するように傾斜して設けられているので、排出ガス冷却管63の内部で発生した凝縮水21は、排出ガス流入管64の方向に流れるようになっている。
【0049】
冷却媒体流入管61は、ケース本体70の冷却水20の流通方向の上流側の端部付近の下部に設けられている。冷却媒体流入管61は、ケース60に冷却水20を流入させるようになっている。冷却媒体流入管61の上流側端部は、冷却媒体供給管76に連結されている。冷却媒体供給管76の上流側端部は、エンジン本体2のウォータジャケットを介して冷却水20の供給ポンプ(図示せず)に連結されている。
【0050】
冷却媒体流出管62は、ケース本体70の冷却水20の流通方向の下流側の端部付近の上部に取り付けられている。冷却媒体流出管62は、ケース60から冷却水20を流出させるようになっている。冷却媒体流出管62の下流側端部は、冷却媒体排出管77に連結されている。冷却媒体排出管77の下流側端部は、例えばラジエータ(図示せず)に連結されている。
【0051】
排出ガス流入管64は、ステンレス製で、ケース本体70の排出ガス45の流通方向の上流側の端部に取り付けられて、排出ガス冷却管63に連結されている。排出ガス流入管64の上流側端部は、上流管50に連結されている。排出ガス流入管64の上流側端部は、排出ガス流入管64の下流側端部よりも細くなるように形成されている。これにより、排出ガス冷却管63から流れてきた凝縮水21は、上流管50に流れることなく、排出ガス流入管64の下部に貯留するようになっている。
【0052】
排出ガス流出管65は、ステンレス製で、ケース本体70の排出ガス45の流通方向の下流側の端部に取り付けられて、排出ガス冷却管63に連結されている。排出ガス流出管65の下流側端部は、中間管53に連結されている。
【0053】
図3に示すように、腐食検知システム52は、センサ部80と、電流計測部81と、ECU(Electronic Control Unit)82と、警告部83とを含んで構成されている。図2に示すように、センサ部80は、排出ガス流入管64の下部の内壁部64aに設けられるとともに、第1の導電性部材90と、第2の導電性部材91と、絶縁手段92とを含んで構成されている。
【0054】
第1の導電性部材90は、排出ガス流入管64の内壁部64aから構成されている。すなわち、第1の導電性部材90は、排出ガス流入管64と同材質のステンレスからなる。絶縁手段92は、1辺10mm程度の略正方形のゴム製のシート材からなる。絶縁手段92は、排出ガス流入管64の下部の内壁部64aに接着により固着されている。絶縁手段92は、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91を互いに絶縁する。
【0055】
第2の導電性部材91は、1辺8mm程度の略正方形の銀(Ag)製の板材からなる。ここで、第1の導電性部材90はステンレス製であり、第2の導電性部材91は銀製であることから、第1の導電性部材90のイオン化傾向は第2の導電性部材91のイオン化傾向よりも大きいものとなる。
【0056】
図3に示すように、電流計測部81は、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91に接続されている。ここで、EGRクーラ51の内部で発生した酸性の凝縮水21が第1の導電性部材90および第2の導電性部材91に跨って付着するとともに、電流計測部81が第1の導電性部材90および第2の導電性部材91を導通することにより、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間に電流が流れる。
【0057】
このとき、第1の導電性部材90と凝縮水21との間で生ずる化学変化は以下となる。
Fe→Fe2++2e
【0058】
また、第2の導電性部材91と凝縮水21との間で生ずる化学変化は以下となる。
2H+2e→H
【0059】
さらに、電流計測部81は第1の導電性部材90および第2の導電性部材91を連結しているので、電流計測部81には電子が通過する。電流計測部81は、電流計測部81を通過する電子を計測することにより、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間に流れる電流を計測するようになっている。
【0060】
ECU82は判断部82aを備えている。判断部82aは、電流計測部81で得られた電流値を取得するとともに、電流値を積算して積算値を算出する。また、判断部82aは、予め電流閾値および積算閾値を設定しておく。この電流閾値および積算閾値は、凝縮水21の接触し得る排出ガス流入管64および排出ガス冷却管63の耐食性を考慮して設定する。
【0061】
判断部82aは、電流計測部81により得られた電流値が電流閾値を超えたときは、センサ部80に瞬間的に多数の電子が流れていることから、凝縮水21の酸性度が高いか、あるいは凝縮水21が多量に発生していると判断する。これにより、排出ガス流入管64の内壁部64aが、凝縮水21により腐食しやすい環境にあると判断する。
【0062】
また、判断部82aは、電流計測部81により得られた電流値の積算値が積算閾値を超えたときは、センサ部80に累積的に多数の電子が流れていることから、長期間に亘り凝縮水21が発生していると判断する。これにより、排出ガス流入管64の内壁部64aが、凝縮水21により腐食しやすい環境にあると判断する。
【0063】
警告部83は、インストルメントパネルに設けられた警告ランプからなる。判断部82aは、排出ガス流入管64の内壁部64aが凝縮水21により腐食しやすい環境にあると判断したときに、警告部83を発光させる。警告部83の発光により、運転者は、排出ガス流入管64の内壁部64aが凝縮水21により腐食しやすい環境にあることを警告されるようになっている。
【0064】
図1に示すように、EGRバルブ54は、ステッピングモータ54aと、バルブ本体(図示せず)とを備えている。バルブ本体は、ステッピングモータ54aの駆動により開閉するようになっている。ステッピングモータ54aの回転のステップ数に応じてEGRバルブ54の開度が調整され、排気管42から吸気管30への排出ガス45の流量が調整されるようになっている。EGRバルブ54における排出ガス45の流量の調整は、機関回転速度と機関負荷率に基づいたマップによって決定される。
【0065】
ECU82は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)と、固定されたデータの記憶を行うROM(Read Only Memory)と、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)と、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、入出力インターフェース回路とを含んで構成されている。
【0066】
次に、本実施の形態における流体流通部材の腐食検知システム52の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。このフローチャートは、ECU82のCPUによって、RAMを作業領域として実行される流体流通部材の腐食検知システム52の作動プログラムの実行内容を表す。なお、流体流通部材の腐食検知システム52は、腐食検知システム52に通電されて作動する限り実行可能であり、エンジン1の稼働中は勿論、エンジン1の停止中であっても実行可能となっている。
【0067】
処理が開始されると、ECU82が電流計測部81を作動させて、電流計測部81が第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間の電流を測定する(ステップS1)。ここで、酸性の凝縮水21が第1の導電性部材90および第2の導電性部材91に跨って付着することで、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間に電流が流れる。第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間に流れる電流が、電流計測部81により測定される。電流計測部81により得られた電流値は、ECU82の判断部82aに送信される。
【0068】
判断部82aは、電流値と予め設定した電流閾値とを比較する(ステップS2)。判断部82aにより、電流値が電流閾値を超えていると判断されたときは(ステップS2;YES)、凝縮水21の酸性度が高いか、あるいは凝縮水21が多量に発生していると判断される。
【0069】
これにより、判断部82aは、排出ガス流入管64の内壁部64aが凝縮水21により腐食しやすい環境にあると判断して、警告部83に警告を発せさせる(ステップS3)。具体的には、判断部82aはインストルメンツパネルの警告ランプを点灯させる。警告部83の警告を確認した運転者は、車両を速やかにディーラーや修理工場に持ち込み、点検を受け、必要に応じて燃料を交換したり、あるいはEGRクーラ51を交換することが可能になる。
【0070】
判断部82aにより、電流値が電流閾値を超えていないと判断されたときは(ステップS2;NO)、判断部82aは、電流値の積算値と予め設定した積算閾値とを比較する(ステップS4)。判断部82aにより、積算値が積算閾値を超えていると判断されたときは(ステップS4;YES)、長期間に亘り凝縮水21が発生していると判断される。これにより、判断部82aは、排出ガス流入管64の内壁部64aが凝縮水21により腐食しやすい環境にあると判断して、警告部83に警告を発せさせる(ステップS3)。具体的には、判断部82aはインストルメンツパネルの警告ランプを点灯させる。
【0071】
判断部82aにより、積算値が積算閾値を超えていないと判断されたとき(ステップS4;NO)、あるいは警告部83が警告を発した後(ステップS3)は、処理が終了され、必要に応じて再度処理が行われる。
【0072】
以上のように、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、凝縮水21の付着により第1の導電性部材90と第2の導電性部材91との間に発生した電流を電流計測部81が検出する。そして、判断部82aは、得られた電流値から凝縮水21の腐食の強さを判断するとともに、電流値の積算値から凝縮水21が接触する排出ガス流入管64の内壁部64aの腐食の程度を検知することができる。
【0073】
さらに、判断部82aは、凝縮水21の腐食の強さまたは内壁部64aの腐食の程度から、内壁部64aが腐食しやすい環境にあるか否かを判断することができる。このため、流体流通部材の腐食検知システム52は、従来のように腐食の程度のみを検知する場合に比べて、凝縮水21の接触する内壁部64aが腐食しやすい環境にあるか否かをより高精度に検知することができる。
【0074】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、第1の導電性部材90は排出ガス流入管64の内壁部64aからなるので、第1の導電性部材90を腐食の検知対象である排出ガス流入管64と兼用することができる。このため、部品点数を削減することができる。しかも、第1の導電性部材90を実際の腐食環境下に配置できることから、凝縮水21の接触する内壁部64aが腐食しやすい環境にあるか否かをより高精度に検知することができる。
【0075】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、第2の導電性部材91の材質は銀であるとともに第1の導電性部材90の材質はステンレスであるので、第2の導電性部材91のイオン化傾向は第1の導電性部材90のイオン化傾向より小さい。このため、第1の導電性部材90と第2の導電性部材91とに凝縮水21が跨って付着すると、第1の導電性部材90のみが腐食するようになる。したがって、排出ガス流入管64と兼用される第1の導電性部材90のみが腐食することにより、排出ガス流入管64の実際に腐食しやすい環境にあるか否かをより高精度に検知することができる。
【0076】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、判断部82aが、排出ガス流入管64の内壁部64aが腐食しやすい環境にあることを警告する警告部83を有するので、警告後に運転者は適切な処置を採ることができるようになる。
【0077】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、排出ガス冷却管63は、排出ガス流出管65側を排出ガス流入管64側より上方に位置するように傾斜して設けられている。このため、排出ガス冷却管63の内部で発生した凝縮水21は、排出ガス冷却管63の傾斜によって排出ガス流入管64に流下して貯留する。そして、EGRバルブ54はEGRクーラ51の排出ガス流出管65側に接続されているので(図1参照)、凝縮水21がEGRバルブ54に流れ込むことを防止できる。
【0078】
上述した本実施の形態の流体流通部材の腐食検知システム52においては、判断部82aは、電流値と電流閾値とを比較して凝縮水21の腐食の強さを判断するとともに、電流値の積算値と積算閾値とを比較して凝縮水21が接触する内壁部64aの腐食の程度を判断している。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、判断部82aは、例えば電流値と電流閾値とを比較して、凝縮水21の腐食の強さを判断するのみで、電流値の積算値と積算閾値とを比較しないようにしてもよい。あるいは、判断部82aは、例えば電流値の積算値と積算閾値とを比較して、凝縮水21が接触する内壁部64aの腐食の程度を判断するのみで、電流値と電流閾値とを比較しないようにしてもよい。
【0079】
また、上述した本実施の形態の流体流通部材の腐食検知システム52においては、第1の導電性部材90は排出ガス流入管64と兼用したものとしている。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、第1の導電性部材90は排出ガス流入管64と別部材からなるものとしてもよい。
【0080】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、第2の導電性部材91の材質は銀としている。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、第2の導電性部材91の材質は第1の導電性部材90のイオン化傾向より小さい材質であればよく、例えば金や白金であってもよい。これらの場合も、凝縮水21の接触する内壁部64aが実際に腐食しやすい環境にあるか否かをより高精度に検知することができる。
【0081】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、第2の導電性部材91の材質のイオン化傾向は第1の導電性部材90の材質のイオン化傾向よりも小さくしている。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、第2の導電性部材91の材質のイオン化傾向は第1の導電性部材90の材質のイオン化傾向より大きいものとしてもよい。この場合も、凝縮水21の付着で第1の導電性部材90と第2の導電性部材91との間に発生した電流を電流計測部81が検出して、凝縮水21の接触する内壁部64aが腐食しやすい環境にあるか否かを判断することができる。
【0082】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、内壁部64aが腐食しやすい環境にあることを警告する警告部83を有している。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、警告部83の代わりに、凝縮水21が接触する排出ガス流入管64や排出ガス冷却管63が腐食しやすい環境にあることから回避する処理を行う回避処理部を備えるようにしてもよい。この場合、回避処理部が、凝縮水21が接触する排出ガス流入管64や排出ガス冷却管63を腐食しやすい環境から回避する処理を行う。
【0083】
ここで、回避処理部は、凝縮水21を加熱する加熱手段とすることができる。加熱手段としては、例えば高温の排出ガス45が挙げられる。この場合、EGRバルブ54を開放して、排出ガス45をEGRクーラ51に流通させる。このとき、EGRクーラ51に冷却水20は流通させない。これにより、高温の排出ガス45が、排出ガス流入管64から排出ガス冷却管63および排出ガス流出管65を順に流通するので、排出ガス流入管64や排出ガス冷却管63に付着していた凝縮水21が100℃以上に加熱されて蒸発される。あるいは、凝縮水21に塩素が含まれる場合は、凝縮水21が蒸発しなくても、加熱された凝縮水21から塩素が気化して凝縮水21の腐食の強さが低減される。これにより、凝縮水21に接触する排出ガス流入管64や排出ガス冷却管63が、腐食しやすい環境から脱するようになる。
【0084】
あるいは、加熱手段としては、例えば凝縮水21の付着部位を外部から加熱する加熱装置が挙げられる。この場合、EGRクーラ51に排出ガス45および冷却水20は流通させず、排出ガス流入管64や排出ガス冷却管63を加熱装置により加熱する。これにより、排出ガス流入管64や排出ガス冷却管63に付着する凝縮水21が100℃以上に加熱されて蒸発される。あるいは、凝縮水21に塩素が含まれる場合は、凝縮水21が蒸発しなくても、加熱された凝縮水21から塩素が気化して凝縮水21の腐食の強さが低減される。これにより、凝縮水21に接触する排出ガス流入管64や排出ガス冷却管63が、腐食しやすい環境から脱するようになる。
【0085】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、センサ部80は排出ガス流入管64の下部の内壁部64aに設けられている。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、センサ部80の設置個所は凝縮水21の接触する可能性のある部位であればよく、例えば排出ガス冷却管63の内壁部や、EGRクーラ51を水平に設置した場合には排出ガス流出管65の下部の内壁部に設けるようにしてもよい。
【0086】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、絶縁手段92は1辺10mm程度の略正方形であるとともに、第2の導電性部材91は1辺8mm程度の略正方形であるようにしている。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、絶縁手段92および第2の導電性部材91の大きさや形状は、EGRクーラ51の大きさや形状、あるいはセンサ部80の設置位置に合わせて適宜設定することができる。
【0087】
また、上述した本実施の形態の流体流通部材の腐食検知システム52においては、図2に示すように、排出ガス冷却管63は、排出ガス流出管65側を排出ガス流入管64側より上方に位置するように傾斜して設けられている。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、例えば排出ガス冷却管63が水平、あるいは排出ガス流出管65側を排出ガス流入管64側より下方に位置するように傾斜して設けるようにしてもよい。いずれの場合も、センサ部80の設置個所は、凝縮水21の接触する可能性のある部位であればよく、適宜設定することができる。
【0088】
また、本実施の形態に係る流体流通部材の腐食検知システム52によれば、腐食検知システム52をEGRクーラ51に装着している。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、内燃機関の排出ガスまたは吸入ガスを流通させる導電性の流体流通部材であって凝縮水の接触する部材であれば他の部材に装着するようにしてもよい。例えば、流体流通部材の腐食検知システムが、インタークーラの内部で吸入ガスが接触する管部材に装着されるようにしてもよい。
【0089】
また、上述した本実施の形態の流体流通部材の腐食検知システム52においては、図2に示すように、EGRクーラ51は多数の排出ガス冷却管63を備えるとともに、排出ガス冷却管63において排出ガス45と冷却水20との熱交換を行っている。しかしながら、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムにおいては、これに限られず、例えばEGRクーラはチューブおよびフィンを備えるとともに、チューブおよびフィンにおいて排出ガスと冷却水との熱交換を行うようにしてもよい。ここで、チューブは排出ガスと冷却水とを分離する隔壁からなるとともに、フィンはチューブに挟まれて排出ガスの冷却面積を大きく取るものとする。
【0090】
以上説明したように、本発明に係る流体流通部材の腐食検知システムは、内燃機関のEGRシステムのEGRクーラやインタークーラで発生した凝縮水による流体流通部材の腐食の強さや程度を検知する場合に好適な流体流通部材の腐食検知システムに有用である。
【実施例】
【0091】
上述した流体流通部材の腐食検知システム52を用いて、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間の電流を測定した。その結果を、横軸が計測時間(単位秒)、かつ縦軸が電流値(単位logA)のグラフとして図5に示す。
【0092】
(実施例1)
エンジン1の始動後、EGRバルブ54を閉じておいた。所定時間経過後、EGRバルブ54を開き、さらに所定時間経過後、EGRバルブ54を閉じた。この時の第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間の電流値の変化を図5に実線で示す。
【0093】
エンジン始動直後のEGRバルブ54の閉塞時には(符号CL1)、EGRクーラ51が比較的低温であった。このため、排気装置4からEGRクーラ51に入り込んだ排出ガス45が冷却されて、センサ部80の周囲の湿度が上昇したり、あるいは一部では僅かに凝縮水21が発生した。これにより、エンジン始動直後のEGRバルブ54の閉塞時には(符号CL1)、図5に実線で示すように、電流値が徐々に上昇した。
【0094】
そして、EGRバルブ54の開放時には(符号OP)、EGRクーラ51に多量の排出ガスが導入されて冷却されることにより、多量の凝縮水21が発生した。これにより、EGRバルブ54の開放時には(符号OP)、図5に実線で示すように、電流値が急激に上昇した。
【0095】
さらに、その後のEGRバルブ54の閉塞時には(符号CL2)、EGRクーラ51には余熱があった。このため、センサ部80の周囲の湿度が低下したり、あるいは凝縮水21が蒸発した。これにより、その後のEGRバルブ54の閉塞時には(符号CL2)、図5に実線で示すように、電流値が徐々に低下した。
【0096】
(比較例1)
エンジン1の始動後、EGRバルブ54を閉じたままとした。第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間の電流値の変化を図5に破線で示す。
【0097】
実施例1と同様に、エンジン始動直後には(符号CL1)、EGRクーラ51が比較的低温であった。このため、排気装置4からEGRクーラ51に入り込んだ排出ガス45が冷却されて、センサ部80の周囲の湿度が上昇したり、あるいは一部では僅かに凝縮水21が発生した。これにより、エンジン始動直後には(符号CL1)、図5に破線で示すように、電流値が徐々に上昇した。
【0098】
その後、エンジン1の熱がEGRバルブ54に伝達され、EGRクーラ51が加熱された(符号CL2)。このため、センサ部80の周囲の湿度が低下したり、あるいは凝縮水21が蒸発した。これにより、EGRクーラ51の加熱後には(符号CL2)、図5に実線で示すように、電流値が徐々に低下した。
【0099】
以上のことから、排出ガス45が冷却されて凝縮水21が発生すると、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間に大きな電流が流れる場合のあることが確認された。また、第1の導電性部材90および第2の導電性部材91の間に大きな電流が流れた場合に、大きな電流を流体流通部材の腐食検知システム52により検知して、運転者に警告可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0100】
1 エンジン(内燃機関)
5 EGRシステム
21 凝縮水
45 排出ガス
51 EGRクーラ
52 腐食検知システム
64 排出ガス流入管(流体流通部材、管部材)
64a 内壁部(第1の導電性部材)
80 センサ部
81 電流計測部
82 ECU
82a 判断部
83 警告部
90 第1の導電性部材
91 第2の導電性部材
92 絶縁手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排出ガスまたは吸入ガスを流通させる導電性の流体流通部材の内部に設けられるとともに、前記流体流通部材と同材質からなる第1の導電性部材と、前記流体流通部材とイオン化傾向の異なる材質からなる第2の導電性部材と、前記第1の導電性部材および前記第2の導電性部材を互いに絶縁する絶縁手段とを備えてなるセンサ部と、
前記内部に生成された凝縮水が前記第1の導電性部材および前記第2の導電性部材に跨って付着することで前記第1の導電性部材および前記第2の導電性部材の間に流れる電流を計測する電流計測部と、
前記電流計測部により得られた前記電流値が予め設定した電流閾値を超えたこと、あるいは前記電流値の積算値が予め設定した積算閾値を超えたことを条件として、前記流体流通部材の内壁部が前記凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断する判断部と、
を備えたことを特徴とする流体流通部材の腐食検知システム。
【請求項2】
前記第1の導電性部材は、前記内壁部であることを特徴とする請求項1に記載の流体流通部材の腐食検知システム。
【請求項3】
前記第2の導電性部材の材質は、前記第1の導電性部材の材質よりもイオン化傾向が小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体流通部材の腐食検知システム。
【請求項4】
前記判断部が前記内壁部は前記凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断したことを条件として、前記内壁部が前記凝縮水により腐食しやすい環境にあることを警告する警告部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の流体流通部材の腐食検知システム。
【請求項5】
前記判断部が前記内壁部は前記凝縮水により腐食しやすい環境にあると判断したことを条件として、前記内壁部が前記凝縮水により腐食しやすい環境にあることから回避する処理を行う回避処理部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の流体流通部材の腐食検知システム。
【請求項6】
前記回避処理部は、前記凝縮水を加熱する加熱手段であることを特徴とする請求項5に記載の流体流通部材の腐食検知システム。
【請求項7】
前記流体流通部材は、EGRクーラに設けられた前記排出ガスを流通させる管部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の流体流通部材の腐食検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−247253(P2012−247253A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118055(P2011−118055)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】